説明

アミノフラボンに対する感応性を判定する方法

癌を処置する方法および組成物について本明細書で議論する。具体的には、治療薬を用いた処置に対する患者の感応性、患者を処置するための組成物、およびその処置方法を判定する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出願日2008年6月16日の「Methods for Determining Sensitivity to Aminoflavones」という名称の米国特許仮出願第61/129,280号の優先権を主張し、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本明細書で引用する全ての刊行物および特許について、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0003】
フラボノイドは、天然のものでも合成のものでも、様々な生物活性を示す。こうした化合物は、例えば、プロテインキナーゼC、アロマターゼ、トポイソメラーゼ、またはサイクリン依存性キナーゼ活性を阻害し、あるいは抗有糸分裂活性を示す。具体的には、5,4’−ジアミノフラボンが、ヒトの乳癌細胞系MCG−7に対して細胞毒性を示す。Akama等、J. Med. Chem.、41、2056−2067(1988)を参照されたい。
【0004】
フラボン環の6,7,8,および3’位において様々な置換基を実現する実験により、5,4’−ジアミノ−6,8,3’−トリフルオロフラボンの特に7位における置換成分の構造活性相関についてのある推測がもたらされた。溶解度などの親フラボン化合物の特定の物理的性質を、7位において、全てではなくいくつかの置換基を存在させることにより改善することができる。特定の7−置換化合物もまた、ヒトの特定の乳癌細胞系に対する細胞毒性が実証されている。Akama等、J. Med. Chem.、2061−62を参照されたい。
【0005】
アミノフラボンの派生物は、特定の乳腺腫に対して増殖阻害特性を示す(例えば、米国特許第5,539,112号および6,812,246号参照)が、他の乳腺腫は、アミノフラボンに耐性を有する(つまり、生物反応が限られている)。最近、国立癌研究所が、アミノフラボンに対する細胞系の感応性を調べるために、様々な腫瘍細胞系についてのヒト腫瘍スクリーン(「NCI60スクリーン」)を実施した。NCI60スクリーンにより、多様なヒト癌の増殖を選択的に止めるまたは阻害する化合物の能力が測定される。NCI60スクリーンの結果は、概ね、アミノフラボン(AF)およびそのプロドラッグAFP464が特定の種類のヒト固形腫瘍(例えば、非小細胞の肺癌、肝臓癌、およびメラノーマ)に対して活性を示すというものであった。米国特許第6,812,246号、図1A〜1D参照。さらに、Meng等の「Activation of Aminoflavone (NSC 686288) by a Sulfotransferase is Required for the Antiproliferative effect of the Drug and for Induction of Histone γ-H2AX」、癌研究2006;66:(19)、9656−64(2006年10月1日)参照。
【0006】
合計8個の乳癌細胞系が、NCI60スクリーンでスクリーニングされた(米国特許第6,812,246号、図1参照)。しかし、スクリーニングされた8個の細胞系のうち、2つの細胞系はアミノフラボンへの感応性があり、6つはアミノフラボンに耐性を有した。米国特許第6,812,246号、図1Bを参照されたい。この明らかな差異は、エストロゲン受容体(「ER」)の有無に起因するものであった。それら2つの感応性のある細胞系はER陽性であり、それら6つの耐性を有する細胞系はER陰性である。重要なことに、EP陽性細胞系は、10ナノモルの大きさのオーダーのAFP464に感応性を有するのに対して、ER陰性細胞系は、GI/IC50が10〜100μMものAFP464に耐性を有する。この場合、AFP464に感応性がある細胞系は、1μM未満のAFP464に対するIC50値を有するのに対して、耐性を有する細胞系は、1μM超のAFP464に対するIC50値を有する。
【0007】
したがって、ER陽性腫瘍はアミノフラボンに感応性があり、ER陰性腫瘍はアミノフラボンに感応性を有さなかった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】アリール炭化水素受容体(AhR)の選択癌細胞系における局在を示す図であって、そのAhRが、主に、AF感応性MCF−7およびMCF−TAM1乳癌細胞系の細胞質に局在するとともにAF耐性MDA−MB−231およびHs578T乳癌細胞系の核に局在する図である。
【図1B】DNA二重鎖切断のマーカであるリン酸化γ−H2AXの免疫蛍光(図1B)を示す図であって、AF:AhR複合体が細胞質から核に転移して、最終的にDNA損傷および細胞死に導くシグナル伝達カスケードを活性化したことを示す図である。
【図2】選択卵巣癌細胞系におけるAhRの免疫蛍光染色を示す図であって、AhRが、主に、AF感応性OVCAR−3卵巣癌細胞系の細胞質に局在するとともにAF耐性OVCAR−8卵巣癌細胞系の核に局在する様を示す図である。
【図3】選択「トリプル・ネガティブ」乳癌細胞系におけるAhRの免疫蛍光染色を示す図であって、核AhRを有するMX−1細胞がAFP464を用いた処置に耐性を有し(IC50=30μM)、細胞質AhRを有するHCC1937およびIGROV1系がAFP464に感応性を有する(IC50 10〜200nM)様を示し、96ウェル・プレートにおけるAFP464への5日間の細胞の連続的曝露と、メチルテトラゾリウムのホルマザンへの生細胞を用いた変換(MTTアッセイ)による細胞増殖の検出との結果として得られる3つ全ての細胞系の増殖曲線を示す図である。
【図4A】ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を用いた前処置後のER発現を示すウエスタン・ブロットの図であって、ER発現のアップレギュレーションがアミノフラボンに対する細胞の感応性に相関する様(IC50〜1μM)を示す図である。
【図4B】ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を用いた前処置後のER発現を示すウエスタン・ブロットの図であって、ER発現のアップレギュレーションがアミノフラボンに対する細胞の感応性に相関する様(IC50〜1μM)を示す図である。
【図5】ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を用いて前処置を行い、(適用可能ならば)続いてAFP464で処置される「トリプル・ネガティブ」乳癌細胞系におけるCYP1A1およびCYP1B1発現の棒グラフを示す図であって、CYP1A1およびCYP1B1の発現が、SAHA(スベロイルアニリドヒドロキサム酸)で処置し、次いでAFP464で処置した場合にアップレギュレートされる様を示す図である。
【図6】「トリプル・ネガティブ」乳癌異種移植片を使用したインビボ検査から収集されるデータを示す線グラフを示す図であって、SAHAを用いて腫瘍の前処置を行い、次いでAFP464を用いて処置を行うと、AFP464のみを使用する場合と比較して細胞増殖が減少することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、アミノフラボン化合物に対する感応性を判定する方法および処置の必要な患者にアミノフラボン化合物を投与する方法を記載する。
【0010】
「腫瘍」、「腫瘍細胞」、「癌」および「癌細胞」の語は全て、分化の喪失を伴う、あるいは伴わない制御されていない増殖によって特徴付けられる異常増殖を示す細胞を指す。「腫瘍」、「腫瘍細胞」、「癌」および「癌細胞」の語は、転移癌ならびに非転移癌を含む。
【0011】
癌「の処置」、癌「処置」、または癌を「処置する」とは、腫瘍細胞の発達の制限、安定化または退縮を含めて、有益なまたは所望の臨床結果をもたらす手法のことを指す。有益なまたは所望の臨床結果には、1つまたは複数の症状または状態の緩和または改善、病気の程度の減少、病気の状態の安定化、病気の発展の阻止、病気の拡大の阻止、病気進行を先に引き延ばすことまたは遅くすること、病気発症を先に引き延ばすことまたは遅くすること、病状の改善または緩和、および(部分的または全体的)寛解が含まれるが、これらに限定されない。〜「の処置」、〜「処置」、または〜を「処置する」とは、処置なしで予想される場合よりも患者の生存を長くすることを意味することもある。〜「の処置」、〜「処置」、または〜を「処置する」とは、病気の進行を一時的に抑制すること、および/または対象中での病気の進行を永久的に停止することを意味することもある。〜「の処置」、〜「処置」、または〜を「処置する」とは、腫瘍、腫瘍細胞もしくは癌細胞、または腫瘍細胞もしくは癌細胞群の増殖を抑止すること、これらを死滅させること、これらに対する正常な増殖を回復させること、またはこれらの増殖を遅くする手法を指すこともある。〜「の処置」、〜「処置」、〜を「処置する」とは、化合物を哺乳類に処方または投与して、進行の停止、安定化または退縮を含めて有益なまたは所望の臨床結果をもたらすことを指すこともある。
【0012】
「投与」または「投与すること」という語は、治療化合物または医療処置を、こうした処置が必要な患者に提供、処方、注入すること、摂取させること、あるいは、こうした処置が必要な患者に対して、治療化合物または医療処置を取得および/または導入する他の任意の方法または手段を示す。
【0013】
以下の詳細な説明では、当業者が特許請求されている発明を実施することが可能になるのに十分な詳細を提供する。他の例を用いることができること、ならびに修正および置換えを行うことができることを理解されたい。
【0014】
1つのケースでは、動物中の腫瘍を処置する方法を提供する。例えば、腫瘍を分析(例えば、生検組織試料、腫瘍マーカの分析、または循環性腫瘍細胞の分析を用いて)して、腫瘍が所定の遺伝子クラスタを有するかどうかを(例えば、ルミナル(luminal)型またはベイサル(basal)A型)を判定することができ、もしそうであれば、アミノフラボン化合物を患者に投与することが可能である。別のケースでは、腫瘍がベイサルB型の遺伝子クラスタを有する場合、アミノフラボン化合物を用いる処置の前に、例えばヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤などの遺伝子転写を改変することができる薬剤を用いた前処置が患者に施される。
【0015】
遺伝子プロファイルを判定する方法は、腫瘍細胞を患者から切除すること、この細胞を洗浄すること、および任意選択で解離すること、ならびに例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)中に再懸濁することを任意選択で含む。次いで、これらの細胞から全RNAを抽出し、これを、Affymetrix社またはIllumina社のヒトゲノム・アレイを使用して全ゲノム分析にかける。
【0016】
乳腺腫瘍は、解離されていてもされていなくても、その遺伝子的プロファイルおよび組織構造に基づいて分類することができる。例えば、Neveおよび同僚たちは、特定の乳癌細胞系を、その遺伝子的および組織構造的プロファイルで分類している。Neve R.M.等「A collection of breast cancer cell lines for the study of functionally distinct cancer subtypes」、癌細胞、2006年12月、10(6):515−27を参照されたい。これらの遺伝子的および組織構造的プロファイルは、例えば肝臓、結腸、前立腺、骨、肝臓、肺、小腸、膵臓、皮膚などの様々な癌細胞上で実施することができる。
【0017】
収集した細胞のER状態は、当技術分野で知られている方法(例えば、免疫蛍光または免疫ペルオキシターゼ・アッセイ、ウエスタン・プロット分析、ER特異なmRNAの識別、電気泳動モビリティ・アッセイ(EVSA)で測定される、3つの異なるER特異な抗体に対するER−ERE複合体の相互作用)で判定することが可能である。例えば、Averboukh等の「Classification of Breast Cancer Cells on the Basis of a Functional Assay for Estrogen」、分子医療、Vo.4、Issue 7、454−467(1998年7月)を参照されたい。例えば、TE1−11(Abcam(マサチューセッツ州ケンブリッジ)によりab16460として販売、またはCell Signaling Technology、マサチューセッツ州デンバー(#2512)により販売)などのERαに特有の抗体を、FITCとコンジュゲートされた抗マウス抗体と合わせて使用して免疫蛍光アッセイを実施することも、ホースラディッシュペルオキシダーゼと合わせて使用して、エストロゲン受容体を検出するために免疫組織化学検査を実施することも可能である。
【0018】
ルミナルまたはベイサル状態を、当技術分野で知られた方法で判定することができる。例えば、Tibshirani等の「Diagnosis of Multiple Cancer Types by Shrunken Centroids of Gene Expression」、Proc Natl Acad Sci USA 99:6567−6572(2002)によるマイクロアッセイ予測分析(PAM)を、Human Genome U133A2.0 Genechip(登録商標)Assay(Affymetrix(登録商標))と同様に使用することができる。これらのルミナルおよびベイサル状態は、ベイサルAおよびベイサルBならびにルミナルAおよびルミナルBに上で議論したものと同一の方法でさらに分けることができる。
【0019】
例えば、ERBB3−、ESR1−陽性、ESR1−陰性、CAV1−陽性、KRT5−、KRT14−遺伝子に対して既知のマーカを用いた遺伝子発現プロファイルは、(Affymetrix(登録商標)の)Human Genome U133A2.0 Genechip(登録商標)Assayで判定することができる。ルミナル細胞型乳癌細胞は、通常、ベイサル細胞型乳癌細胞と比較してERBB3−およびESR1−陽性遺伝子を過剰発現させる。同様に、ベイサル細胞型乳癌細胞は、ルミナル細胞型と比較してESR1−陰性およびCAV1−陽性遺伝子を過剰発現させる。ベイサル細胞型は、ベイサルAおよびベイサルB細胞型にさらに分けることができる。ベイサルA細胞型は、ベイサルB細胞型と比較してKRT5−およびKRT14−陽性遺伝子を過剰発現させる。ベイサルB細胞型は、ベイサルAよりもVIM−陽性遺伝子の発現が高い。「過剰発現する」または「過剰発現」といった語は、腫瘍形成性であると推測される細胞中のmRNAおよび/または遺伝子もしくは遺伝子クラスタのコピー数が、正常すなわち腫瘍形成性でないと考えられる異なる遺伝子型の細胞の少なくとも約2倍に増加することを指す。過剰発現は、例えば、実際のmRNAレベル、遺伝子または遺伝子クラスタのコピー数を核酸プローブまたは同様の技法を用いて比較することにより、あるいは、例えば、蛋白質または遺伝子もしくは遺伝子クラスタでコード化された蛋白質に対する抗体の結合の強度を、免疫蛍光もしくは放射標識抗体または同様の検出試薬を用いて測定することにより判定することができる。
【0020】
別のケースでは、先立って最多で2つの事前化学療法レジメンに失敗した乳癌患者またはホルモン処置に失敗したER−陽性患者を、まず、AFP464を用いた処置の前にボリノスタット(またはスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA))、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を用いて処置する。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、約1〜約400mg/kgの用量、好ましくは1日に約200〜約400mgの用量で投与することができる。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、AFP464の投与の2〜7日前、好ましくはAFP464の投与の3〜6日前、最も好ましくはAFP464の投与の5日前に投与することができる。
【0021】
AFP464は、好ましくは約1〜約100mg/kgの用量で、好ましくは約35〜約70mg/kgで、最も好ましくは約35mg/kgで投与する。処置スケジュールは、上で議論した任意の服用範囲で、AFP464の少なくとも1度の追加の服用を含むことがある。追加のAFP464は、初回服用後の任意の日に、好ましくは3日目、5日目、15日目、17日目、および19日目(初回服用日を1日目とする)に投与することができる。
【0022】
AFP464の投与前に、少なくとも1度のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の追加の投与を行うこともできる。例えば、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を3日間投与し、AFP464投与の1日前に再度投与することができる。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤の追加の投与は、AFP464の投与後に(AFP464の投与前の追加の服用に加えてまたはその代わりに)も行うことができる。例えば、HDACの追加の投与は、AFP464の投与後10〜15日目に、好ましくはAFP464投与後12〜14日目に行うことができる。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、AFP464の投与後12、13、および14日目に投与することもできる。
【0023】
上の記載に従って使用することのできるアミノフラボン化合物の例には以下が含まれる。
【化1】

【0024】
上の化学式では、RおよびRは、H、COCH−Rであり、ただし、Rは、アミノ、分岐もしくは直鎖アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、またはアルキルもしくはジアルキルアミノアルキル、あるいはαアミノ酸残基であり、ただし、RおよびRの少なくとも1つは、Hではない。
【0025】
上の化学式では、Rは、H、分岐もしくは直鎖アルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイルオキシアルキル(alkanoyloxyalkyl)、アルカノイルオキシ(alkanoyloxy)、アルコキシ、またはアルコキシアルキル、あるいは、
【0026】
薬学的に許容可能な上の物質の塩である。
【0027】
他の例には、5−アミノ−6,8−ジフルオロ−2−[3−フルオロ−4−[(L−リジル)アミノ)]フェニル]−7−メチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オンと、5−アミノ−2−[4−[2−アミノ−5−グアニジノペンタノイル(guanidinopentanoyl)]アミノ]−3−フルオロフェニル]−6,8−ジフロオロ−7−メチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オンと、6,8−ジフロオロ−7−メチル−5−(ジメチルアミノ)アセトアミド−2−[4−(ジメチルアミノ)アセトアミド−3−フルオロフェニル]−4H−1−ベンゾピラン−4−オンと、5−アミノ−6,8−ジフルオロ−7−メチル−2−[4−(ジメチルアミノ)アセトアミド−3−フルオロフェニル]−4H−1−ベンゾピラン−4−オンとが含まれる。
【0028】
上で説明したように使用することの可能なアミノフラボン化合物には、AFP464が含まれるが、これは以下の構造を有する。
【化2】

【0029】
限定するわけではないが、本明細書の開示内容に従って使用することの可能なアミノフラボン化合物(およびその派生物、薬学的に許容可能な塩、または代用物)には、表1に示す任意の化合物が含まれる。
【表1】

【0030】
本明細書に記載する化合物および組成物は、どのような投与経路(例えば、経口、皮下、および非経口投与)に適した形態にも調製することができる。非経口投与には、例えば、静脈内、腹膜内、肺内、および髄膜内注入が含まれる。これらの化合物および組成物は、局所的に投与することも可能である。
【0031】
さらに、スクリーニング・テスト・キットを製作し、病院、看護師、医者、および/または他の医療を職業とする人に販売することもできる。通常、病理医は、乳腺腫瘍組織の生検を実施し、この腫瘍組織に含まれる腫瘍細胞の遺伝子プロファイルを判定して、上で議論した方法のいずれかにより、腫瘍がアミノフラボン(または他のアミノフラボン・アナログもしくはプロドラッグ)に感応性を有するかどうかを判定することができる。次いで、医療提供者は、遺伝子発現プロファイルがアミノフラボンに感応性を有する場合、腫瘍を処置するためにアミノフラボンを投与することができる。この開示内容によるテスト・キットは、遺伝子発現およびコピー数を判定するのに必要な材料(例えば、核酸プローブおよび試薬またはマイクロアレイ・チップ)を含むことがある。もう1つの選択肢として、患者の遺伝子プロファイル(例えば、ベイサルB)に基づいて、医療提供者は、アミノフラボン(例えば、AFP464)の前に、またはアミノフラボンと組み合わせて、HDAC阻害剤を投与することもできる。
【0032】
スクリーニング・テスト・キットには、AhRに対する既知の抗体を用いてAhRの局在を判定するために、AhRの免疫組織化学もしくは免疫蛍光染色剤、または腫瘍生検標本もしくは循環性腫瘍細胞の量子ドット技術を用いた免疫染色剤が含まれることもある。
【0033】
別のケースでは、本明細書で開示する方法を含んだ腫瘍量を減少させる方法により、未処置の腫瘍と比較して腫瘍量を15%〜85%減少させることが可能である。本明細書で開示する方法で、未処置の腫瘍と比較して腫瘍量を25%〜75%減少させることができるのが好ましく、59%減少させるのが最も好ましい。
【0034】
別のケースでは、動物の腫瘍(例えば、乳腺、肝臓、卵巣または膵臓)の増殖を阻害および/または軽減する方法を提供する。AFP464の細胞の細胞質中のAhRとの複合体、すなわちAFP464:AhR複合体は、核に転移してCYP1A1転写を誘発する。CYP1A1は、最終的に細胞死を起こすカスケード・パスウェイ(cascade pathway)につながる。したがって、腫瘍または循環性腫瘍細胞を分析して、AhRが主として腫瘍細胞の細胞質に局在しているかどうかを判定することができ、もしそうであれば、アミノフラボン化合物をこの患者に投与することができる。例えば、腫瘍中のAhRの局在は、AhRに対する抗体を用いた、腫瘍または循環性腫瘍細胞の試料の免疫組織化学または蛍光免疫染色で判定することができる。例えば、Biomol International/Enzo Life Sciences、米国ペンシルバニア州プリマスミーティング(#SA−210)から販売されている抗体、またはAbnova(台湾)カタログ番号H00000196−M02で販売されている抗体を使用してAhRの局在を判定することができる。アリール炭化水素受容体(AhR)の局在は、当技術分野で知られた方法で判定することができる。例えば、こうした局在は、AhRに対する市販抗体(Abnova、Biomol)を含んだ懸濁液中で解離癌細胞を培養し、免疫蛍光法でAhRを検出することにより、または保管腫瘍組織を用い、免疫ペルオキシターゼをベースとする組織診断でAhRを検出することにより判定することができる。
【0035】
本開示内容のこれらおよび他の特性および利点は、詳細な説明を読むことにより当業者にとって明らかになるであろう。特定の課題または環境への本開示内容の応用は、当業者の実施可能な範囲内のことであることを理解されたい。本開示内容の実施のいくつかを、以下の非限定的例を用いて例示する。
【0036】
表2に示す乳癌細胞系のスクリーニングを実施して、上で議論した技法に従いアリール炭化水素受容体(AhR)の局在を判定した。MTTアッセイを実施して、様々な乳癌細胞系における細胞死を測定した。この例では、AFP464での処置後にIC50およびIC100値が1μM未満の乳癌細胞系は、AF感応性と判定され、AFP464での処置後にIC50およびIC100値が1μM超の乳癌細胞系は、AF耐性と判定された。AhRが主に細胞質中に存在する細胞系は全て、AF感応性であることを示した。MCF−7は、IC50値が16nMであり、IC100値が300nMであった。MCF−7 HER2−18(本質的にタモキシフェンおよびハーセプチンに耐性を有するMCF−7)は、IC50値が20nMで、IC100値が375nMであった。MCF−7 TAM1(後天的にタモキシフェンへの耐性を有するMCF−7)は、IC50値が25nMで、IC100値が200nMであった。T47Dは、IC50値が14nMで、IC100値が20nMであった。また、4つの細胞系は全て、表2に示すようにER状態が陽性であり、値が示すように、それぞれAF感応性であった。
【0037】
一方、MDA−MB−231およびMCF10A細胞系は、AF耐性と判定された。MDA−MB−231は、IC50値が25μMであり、IC100値が100μM超であった。MCF10Aは、IC50値が3μMであり、IC100値が9μMであった。これらの細胞系は両方とも、AhRが主に核内に局在した。図1Aに示すように、AhRは、主に、AF耐性MCF−7およびMCF−TAM1乳癌細胞系の細胞質内に局在する。細胞質を示すために、左側の列でTRITCを使用する。(DNAへの結合により)核を示すために、DAPIを右側の列で使用する。また、AF耐性MDA−MB−231およびHs578T乳癌細胞系における核中へのAhRの主な局在を図1Aに示す。
【0038】
図1Bは、DNA二重鎖切断のマーカであるリン酸化γ−H2AXの免疫蛍光を(2番目の列に)示す。γ−H2AX染色は、AF:AhR複合体が細胞質から核に転移して、最終的にアポトーシスに導くシグナル伝達カスケードを活性化したことを示している。リン酸化γ−H2AXは、細胞中のDNA損傷応答の指示薬である。理論に束縛されるものではないが、γ−H2AXの局在は、AF:AhR複合体がDNA損傷の原因であることを示す。
【表2】

【0039】
同様に、表3に示す卵巣癌細胞系のスクリーニングを実施して、アリール炭化水素受容体(AhR)の局在を判定した。下で示すように、さらに図2および3に示すように、AhRが主に細胞質中に局在する細胞系(例えば、OVCAR−3およびIGROV−1)は全て、AhRが主に核中に存在する細胞系(例えば、OVCR−8)よりもAFP464での処置に対して強い感応性を有した。OVCA−3は、IC50値が0.252μMであった。IGROV−1は、IC50値が0.42μMであった。AF耐性OVCAR−8は、IC値が13μMであった。
【0040】
AhRの局在および、細胞系がAF感応性かAF耐性であるかを判定するのにAhRの局在が影響を与えることは、処置の流れを決定するのに役立つことがある。さらに、AFP464の処置を、AhRが主に細胞質中に局在することが分かっている、例えば膵臓腫瘍などの別の種類の腫瘍にまで拡張することが可能である。
【表3】

【0041】
図3は、トリプル・ネガティブMX−1乳癌細胞系、ER陰性ベイサルA HCC1937乳癌細胞系、およびIGROV1卵巣癌細胞系におけるAhRの局在を示す。AhR局在は、上で議論したように、AFP464の細胞毒性活性に相関する。核AhRを有するMX−1は、AFP464での処置に耐性を有し(IC50=30μM)、細胞質AhRを有するHCC1937およびIGROV1系は、AFP464に感応性を有する(IC50 10〜200nM)。96ウェル・プレートにおけるAFP464への5日間の細胞の連続的曝露と、メチルテトラゾリウムのホルマザンへの生細胞を用いた変換(MTTアッセイ)による細胞増殖の検出との結果として得られる3つ全ての細胞系の増殖曲線を示す。図3の細胞系は全て、非常に活動的な形態の遺伝子乳癌および卵巣癌の原因となる欠陥をBRCA腫瘍サプレッサ遺伝子中に有する。MX−1には、BRCA1欠失およびBRCA2変異があり、HCC1937では、BRCA1が変異し完全に欠陥となり、IGROV1では、BRCA2(+/−)が欠陥である。
【0042】
感応性細胞では、AFP464は、AhR介在シトクロムP450(CYP)依存の生体異物反応および細胞死を誘発する。耐性細胞では、CYPシステムは誘発されない。リアルタイムPCRアセスメントにより、AhR依存の生体異物反応が回復するといった、MDA−MB−231細胞中でHDAC阻害剤およびAFP464を用いた処置によるCYP1A1およびCYP1B1の誘発が示された(図5、下記でさらに議論する)。
【0043】
以下の表4に示すように、11個の乳癌細胞系の遺伝子プロファイルを判定し、各細胞系をテストして、アミノフラボンの50%阻害濃度(IC50)を求めた。阻害濃度50%は、MTTアッセイでNCI DTPインビトロ・テスト手順(http://dtp.nci.nih.gov/branches/btb/ivclsp.htm)に従って求めた。独立した3度のMTTインビトロ腫瘍細胞増殖阻害実験を実施し、表4に示す平均IC50値が得られた。
【表4】

【0044】
SKBR3、T47D、MCF−7、MCF−7 Tam1、およびMCF−7 Her2−18細胞系は全て、ルミナル型遺伝子クラスタである。これらの細胞系の全ては、AF464に対して感応性を有する0.016〜0.020のμM範囲のAF IC50濃度を有する。上で議論した先のNCI細胞系スクリーン結果に基づいて、ER陰性腫瘍はアミノフラボンに耐性を有すると考えた。しかし、表4に示すように、HCC1937、BT20、MDA−MB−468(全てベイサルA型)、およびSKBR3(ルミナル型)は、全てER陰性腫瘍細胞であり、全てAFP464に感応性を有する。これらのER陰性細胞系のAF IC50濃度は、0.010〜0.020μMに過ぎない。したがって、ER状態に関連する遺伝子プロファイルのみでは、AFでの処置に対する腫瘍の感応性を予測することはできない。AFP464は、常にルミナル型組織構造であるER陽性乳癌細胞に有効であるだけでなく、ベイサルAサブタイプのER陰性乳癌にも有効である。
【0045】
別のケースでは、表5Aおよび5Bに示すように、例えばスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)などのHDAC阻害剤を用いた、ER陰性、「トリプル・ネガティブ」、またはベイサルB乳癌細胞系の前処置により、細胞系のER状態が変調され、細胞系が〜1μMのIC50でアミノフラボンへの感応性を有するようになった。こうした結果は、SAHAによるこれらの細胞系の感作が時間、スケジュール、および細胞型に依存していることを示している。
【表5A】

【表5B】

【0046】
薬品ごとに最多で8つの濃度を用い、MTTアッセイで増殖を判定することにより、固定IC50比率でChouおよびTalalayの方法(Chou, T.C.およびTalalay, P「Quantitative analysis of dose-effect relationships: The combine effects of multiple drugs or enzyme inhibitors」Adv.Enzyme Regul.、22:27−55、1984参照)に従って、組合せ検査を実施した。1つのケースでは、有効(ED)量50、75または90%での組合せ指数が1未満の場合は、2つの薬剤の相乗効果が示され、1の場合は、薬剤は相加的であり、1より大きい場合は、薬剤は拮抗的である。
【0047】
図4Aおよび4Bは、SAHA(このケースでは、ボリノスタット)で処置する際の、MDA−MB−231乳癌細胞系(図4A)およびHs578T乳癌細胞系(図4B)中のERαの誘発を示すウエスタン・ブロットを示す。図4Aおよび4Bそれぞれのレーン1は、それぞれの細胞をDMSOで処置した対照を示す。図4Aのレーン2は、SAHAを用いて60時間2.5μM(IC50)で処置したMDA−MB−231細胞を示す。図4Aのレーン3は、SAHAを用いて60時間13.5μM(IC100)で処置したMDA−MB−231細胞を示す。図示のように、ERα誘発は、SAHA処置後に増加する。図4Bのレーン2および3は同様の結果を示すが、図4Bのレーン2は、SAHAを用いて48時間8μM(IC50)で処置したHs578T乳癌細胞系を示し、図4Bのレーン3は、SAHAを用いて48時間100μM(IC100)で処置したHs578T乳癌細胞系を示すものである。
【0048】
図5は、SAHAで処置し、次いでAFP464で処置した後のMDA−MB−231乳癌細胞におけるCYP1A1およびCYP1B1経路の誘発を測定する棒グラフである。左側の棒グラフは、CYP1A1およびCYP1B1に対するRNAの発現がほとんどないことを示す対照を示す。中央のグラフは、SAHAで48時間処置し、次いでAFP464で6時間処置した後に、CYP1A1およびCYP1B1に対するRNAの発現が増加したことを示す。右側のグラフは、SAHAで48時間処置し、次いでAFP464で24時間処置した後に、CYP1A1およびCYP1B1に対するRNAの発現がほとんどないことを示し、このことは、SAHAによる感作が時間およびスケジュールに依存していることを示している。CYP1A1およびCYP1B1発現ベクター・コンストラクトを使用し、これらのベクターcDNAで標準曲線を作成することにより、免疫蛍光信号をコピー数に対して基準化した。ベースラインおよび24時間のAFP464と比較して、CYP1A1およびCYP1B1の誘発は、SAHAで前処置された細胞中でAFP464処置の6時間後に確認される。
【0049】
次いで、上で議論した発見事項を説明するインビボ検査を実施した。MDA−MB−231乳癌細胞系は、元々、テキサス州、ヒューストンのMD−Anderson Cancer Centerの患者腫瘍から確立されたものである。これらの細胞を、American Type Culture Collection(バージニア州、マナサス)から得た。この細胞系は、「トリプル・ネガティブ」乳癌のカテゴリに属し、したがって、エストロゲンおよびプロゲステロン受容体ならびにHER2/neuが欠如している。また、この細胞系は、p53変位を含んでいる。
【0050】
Ncr/nuの遺伝的背景の胸腺形成不全ヌードマウスを用いて、細胞系からのヒト腫瘍異種移植片MDA−MB−231の確立および連続的増殖を行った。腫瘍断片(〜30mmのサイズ)をヌードマウスに皮下移植し、腫瘍が〜70mmのメディアン(median)体積に達した際に処置を開始した(移植後〜10日間、初期)。この皮下異種移植片ステージング・システムは、米国国立癌研究所のDrug Development Programで定義されたものである。メディアン体積190mm(100〜400mm)の腫瘍は、進行期と称される。腫瘍サイズが63〜200mmの際に処置が開始される場合は、このモデルは初期とみなされる。Alley MC、Hollingshead MG、Dykes DJ、Waud WRの「Human tumor xenograft models in NCI drug development」、Teicher BA、Andrews PA編集、Anticancer drug development guide: preclinical screening, clinical trials, and approval、第2版、ニュージャージー州、トトワ、Humana Press社、2004、p.125−52参照。MDA−MB−231は、増殖の早い腫瘍(対数増殖における平均倍増時間〜4.5日間)であり、95%超のテーク・レート(take rate)を有するので、国立癌研究所の初期腫瘍異種移植片モデルに適した基準を満たしている。Fiebig HH、Burger AMの「Human tumor xenografts and explants」、Teicher BA編集、Animal models in cancer research、ニュージャージー州、トトワ、Humana press社、2001、p.113−37参照。また、Geran RI、Greenberg NH、MacDonald MM、Schumacher AM、Abbott BJの「Protocols for screening chemical agents and natural products against animal tumors and other biological systems」、Cancer Chemother 1972、Rep3:1−103参照。1つのグループは、両側腹部にそれぞれ1〜2個の腫瘍があるマウスを7〜8匹含んだ。
【0051】
次に、処置およびデータ評価について議論する。AFP464を5%無菌グルコース溶液(ビヒクル)中に溶解し、静脈内に投与し、ボリノスタット/SAHAをメチルセルロース/ツイーン80中で調製し、経口投与を行った。実験開始前のAFP464の最大耐量(MTD)は、静注で75mg/kg/日と判定された。SAHAを非中毒量の50mg/kg/日で経口投与した。マウス中のSAHAのMTDは175mg/kg/日である。この実験では、150mgを超えるSAHAを連続した3日間投与した(−2、−1および0日目(d0)、12〜14日目(d12〜14))。AFP464は、1、3、5、15、17、および19日目に投与した。
【0052】
腫瘍増殖の後に、連続ノギス測定、重量記録を行い、標準式(長さ×幅)/2を用いて腫瘍体積を算出した。ただし、長さは、最大寸法であり、幅は、長さに垂直な最小寸法である。mmでの腫瘍体積が、この式から導き出される適当な変数である一方で、1mmが1mgの腫瘍重量に等しいことに留意しなければならない。皮下増殖ヒト腫瘍異種移植片における抗癌剤効果のアセスメント向けの国立癌研究所ガイドラインを用いて、データを評価した。具体的に指定されたソフトウェア(Study Director)を使用して、メディアン相対腫瘍体積を時間に対してプロットした。各腫瘍について、X日目の腫瘍体積を0日目の腫瘍体積で除することにより(無作為時間)、相対腫瘍体積を算出した。対照に対して処置した最大腫瘍阻害/最適腫瘍阻害%(T/C)について、増殖曲線を分析したが、ただし、処置(T)および対照(C)グループごとの腫瘍体積(δTV)の変化を日ごとに算出した。初めの処置日(ステージング日)のメディアン腫瘍体積を、指定の観察日のメディアン腫瘍重量から減ずることにより腫瘍を測定した。これらの値を用いて、%T/Cを以下のように算出した。
【0053】
%T/C=(ΔT/ΔC)×100、ただしΔT>0、または
%T/C=(ΔT/T)×100、ただしΔT<0でT=処置開始時のメディアン腫瘍体積である。
【0054】
得られた最適(最小)値を用いて抗腫瘍活性を定量化し、この効果が生じる日にちを示す。腫瘍阻害を、50未満の最適T/Cと定義する。部分的腫瘍退縮を、腫瘍体積が処置開始時の腫瘍体積の50%以下に減少することと定義する。完全退行とは、実験期間の任意の時間に、腫瘍量が63mm未満に減少する例である。
【0055】
図6および表6は、結果ならびにインビボ検査の処置スケジュールを示す。対照グループのメディアン相対腫瘍体積は、予想されたとおり、絶えずその他のグループのものよりも大きかった。予想に反してその他のグループのものよりも小さかったのは、SAHA+AFP464 35mg/kgのグループであった。これらの結果は、SAHAを用いた前処置およびAFを用いた処置により、こうした処置を取らなければ耐性乳癌である腫瘍のパーセント増殖阻害を増大させることができることを示している。
【表6】

【0056】
癌患者の処置について以下で議論する。腫瘍の生検を患者から得ることができる。当明細書に記載するように、この生検を組織学的技法で分析し、かつ/または遺伝子クラスタを分析することができる。患者がER陽性乳癌を有する場合、アミノフラボン化合物をこの患者に投与して、患者血漿中で約1μMの濃度を達成する。患者がホルモン療法に耐性を有する乳癌を有する場合、アミノフラボン化合物をこの患者に投与する。患者がホルモン療法とハーセプチン療法との両方に耐性を有する乳癌を有する場合、アミノフラボン化合物をこの患者に投与する。
【0057】
乳癌の遺伝子プロファイルを判定し、腫瘍がルミナルまたはベイサルA型の遺伝子クラスタを示す場合、アミノフラボン化合物を患者に投与する。患者がER陰性、「トリプル・ネガティブ」、ベイサルB型の遺伝子クラスタを伴う乳癌を有する場合、患者に、アミノフラボン化合物を用いた処置の前に、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を用いた前処置を行う。HDAC阻害剤を用いた前処置により、エストロゲン受容体シグナリングが変調され、細胞がアミノフラボンに対して感応性を有するようになる。
【0058】
他の例では、腫瘍(例えば、乳癌、卵巣癌、肝臓癌または膵臓癌)におけるアリール炭化水素受容体(AhR)の局在を判定し、この腫瘍が主に細胞質に局在するAhRを有する場合、アミノフラボン化合物を患者に投与する。
【0059】
もう1つの選択肢として、または上記に加えて、単一薬剤AFP464を74mg/mで、21日周期のうちの1日目および8日目(D1およびD8)に静脈内投与して、ホルモン処置に失敗した患者を処置することもできる。任意選択で、最多で2つの事前化学療法レジメンに失敗した患者を、21日周期のうちのD1およびD8の74mg/mの用量でのAFP464の各静脈内投与の前5日間、400mg/日 POでSAHAを用いて処置することもできる。病状が悪化するか、または毒性が許容可能でなくなるまで処置を行うことができる。AFP464は、74mg/mで3時間の静脈内注入として投与することができる。ボリノスタットは、各AFP464服用の5日前に経口投与することができる。
【0060】
上の説明および図面は、本明細書の開示内容を例示するものである。当業者は、上の開示内容に、置換、追加、削除、改変および/または他の変更を行うことができることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳腺腫瘍体積を減少させる方法であって、
前記乳腺腫瘍がエストロゲン受容体陰性ルミナル・サブタイプ遺伝子クラスタおよびベイサルAサブタイプ遺伝子クラスタからなる群から選択される型の細胞を含むかどうかを判定するステップと、
前記乳腺組織試料がエストロゲン受容体陰性ルミナル・サブタイプ遺伝子クラスタおよびベイサルAサブタイプ遺伝子クラスタからなる群から選択される型の細胞を含む場合、前記乳腺腫瘍を有する哺乳類に有効量の化合物を投与するステップと、
を含み、
前記化合物が、以下の一般式を有し、
【化1】

前記一般式では、RおよびRは、H、COCH−Rであり、ただし、Rは、アミノ、分岐もしくは直鎖アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、またはアルキルもしくはジアルキルアミノアルキル、あるいはαアミノ酸残基であり、ただし、RおよびRの少なくとも1つは、Hではなく、
前記一般式では、Rは、H、分岐もしくは直鎖アルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイルオキシアルキル、アルカノイルオキシ、アルコキシ、またはアルコキシアルキルであり、あるいは、薬学的に許容可能な、前記物質の塩であり、
前記乳腺腫瘍の体積が、少なくとも約15%減少される方法。
【請求項2】
前記化合物が以下の一般式の物質である、請求項1に記載の方法。
【化2】

【請求項3】
前記化合物が、5−アミノ−6,8−ジフルオロ−2−[3−フルオロ−4−[(L−リジル)アミノ)]フェニル]−7−メチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オンと、5−アミノ−2−[4−[2−アミノ−5−グアニジノペンタノイル]アミノ]−3−フルオロフェニル]−6,8−ジフロオロ−7−メチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オンと、6,8−ジフロオロ−7−メチル−5−(ジメチルアミノ)アセトアミド−2−[4−(ジメチルアミノ)アセトアミド−3−フルオロフェニル]−4H−1−ベンゾピラン−4−オンと、5−アミノ−6,8−ジフルオロ−7−メチル−2−[4−(ジメチルアミノ)アセトアミド−3−フルオロフェニル]−4H−1−ベンゾピラン−4−オンとからなる群から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が、経口、非経口、または局所投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記局所投与が、静脈内投与、腹膜内投与、肺内投与、または髄膜内投与からなる群から選択される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞型を判定する前記ステップが、遺伝子発現プロファイルを実施するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞型を判定する前記ステップが、前記乳腺組織試料の細胞中のERBB−3およびESR−1遺伝子が過剰発現しているかどうかを判定するステップを含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記乳腺組織試料中のERBB−3またはEST−1遺伝子の発現が、非腫瘍形成性乳腺組織中のERBB−3またはEST−1遺伝子の発現よりも、少なくとも約2倍多い、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞型を判定する前記ステップが、前記乳腺組織試料の細胞中のKRT5およびKRT14遺伝子が過剰発現しているかどうかを判定するステップを含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項10】
KRT5またはKRT14遺伝子の発現が、非腫瘍形成性乳腺組織中のKRT5またはKRT14遺伝子の発現よりも、少なくとも約2倍多い、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
処置の必要な患者の腫瘍の増殖を阻害する方法であって、
前記患者にヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を投与するステップと、
次いで、前記患者に、以下の一般式を有する化合物を投与するステップと
を含み、
【化3】

前記一般式では、RおよびRは、H、COCH−Rであり、ただし、Rは、アミノ、分岐もしくは直鎖アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、またはアルキルもしくはジアルキルアミノアルキル、あるいはαアミノ酸残基であり、ただし、RおよびRの少なくとも1つは、Hではなく、
前記一般式では、Rは、H、分岐もしくは直鎖アルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイルオキシアルキル、アルカノイルオキシ、アルコキシ、またはアルコキシアルキルであり、あるいは、薬学的に許容可能な、前記物質の塩であり、
前記腫瘍の増殖が、約15〜約85%減少される方法。
【請求項12】
前記化合物が以下の一般式の物質である、請求項11に記載の方法。
【化4】

【請求項13】
前記化合物が、5−アミノ−6,8−ジフルオロ−2−[3−フルオロ−4−[(L−リジル)アミノ)]フェニル]−7−メチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オンと、5−アミノ−2−[4−[2−アミノ−5−グアニジノペンタノイル]アミノ]−3−フルオロフェニル]−6,8−ジフロオロ−7−メチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オンと、6,8−ジフロオロ−7−メチル−5−(ジメチルアミノ)アセトアミド−2−[4−(ジメチルアミノ)アセトアミド−3−フルオロフェニル]−4H−1−ベンゾピラン−4−オンと、5−アミノ−6,8−ジフルオロ−7−メチル−2−[4−(ジメチルアミノ)アセトアミド−3−フルオロフェニル]−4H−1−ベンゾピラン−4−オンとからなる群から選択される、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記処置化合物を前記患者に投与する前記ステップにより、前記患者の血漿中の前記増殖阻害化合物の濃度が約0.1μM〜約500μMになる、
請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記HDAC阻害剤が、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)である、
請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記増殖阻害化合物の投与の2〜7日前に前記HDAC阻害剤を投与する、
請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記増殖阻害化合物の投与の3〜6日前に前記HDAC阻害剤を投与する、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記増殖阻害化合物の投与の5日前に前記HDAC阻害剤を投与する、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記HDAC阻害剤を経口投与する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記HDAC阻害剤を約1〜約100mg/kgの用量で投与する、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記HDAC阻害剤を約25〜約75mg/kgの用量で投与する、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記HDAC阻害剤を約50mg/kgの用量で投与する、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記化合物がAFP464である、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物を約1〜約100mg/kgの用量で投与する、
請求項11に記載の方法。
【請求項25】
前記化合物を約35〜約70mg/kgの用量で投与する、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記化合物を約35mg/kgの用量で投与する、
請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記化合物の投与の後にHDAC阻害剤の第2の投与を実施するステップをさらに含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項28】
前記増殖阻害化合物の前記投与の後10〜15日に前記HDAC阻害剤を投与する、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記増殖阻害化合物の前記投与の後12〜14日に前記HDAC阻害剤を投与する、
請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記増殖阻害化合物の前記投与の後の12〜14日それぞれの日に連続して前記HDAC阻害剤を投与する、
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記HDAC阻害剤の前記第2の投与の後に前記化合物の少なくとも1度の追加投与を実施するステップをさらに含む、
請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記HDAC阻害剤の前記第2の投与の3日後に、前記化合物の前記少なくとも1度の追加投与を実施する、
請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記化合物の少なくとも1度の追加投与を約35mg/kgの服用量で実施する、
請求項33に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−524374(P2011−524374A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513758(P2011−513758)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/047480
【国際公開番号】WO2010/008731
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(510328412)ティグリス ファーマスーティカルズ,インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】TIGRIS PHARMACEUTICALS,INC.
【住所又は居所原語表記】3359 Woods Edge Circle,Suite 103,Bonita Springs,Florida 34134,United States of America
【Fターム(参考)】