説明

アミノ基末端増粘剤、これにより得られる生成物、及びそれらの使用

本発明は、アミノ基末端増粘剤を具体化する化合物に関し、それにより得られる製品、及びその使用に関する。本発明の増粘剤は式(I)で示され、式中、Rはカルボキシル基末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーから末端カルボキシル基を除いた二価の基を表す。開示する化合物は、それらを用いて配合した組成物の粘度を増大させる。グリシジル基を含む化合物が、それらから得られ、熱硬化性一成分型エポキシ樹脂接着剤に用いることができる生成物として特に重要である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化剤分野、それらの誘導体、及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
液状ゴムは確立されており、とりわけ靭性を高める用途を含めた用途を有している。化学反応基、例えば、ヒドロキシル、カルボキシル、ビニル、又はアミノ基などの使用を通じて、そのような液状ゴムはマトリクス中に化学的に組み込まれうる。したがって、例えば、ブタジエン/アクリロニトリルポリマー骨格を有する反応性液状ゴムが長らく存在しており、これらのゴムはB.F. Goodrich社又はNoveon社によって、商品名Hycar(登録商標)の名称で提供されている。
【0003】
この種の公知のアミノ末端液状ゴム、例えば、Hycar(登録商標)ATBN製品シリーズとして市販されているものは、硬化性成分として、その衝撃強度を高めるために、エポキシ樹脂用に特に用いられる。しかし、これらの公知のアミノ末端液状ゴムは、アミノ基を有し、その構造に応じて容易に利用可能であって、それによって高反応性であり、かつ時々第三級アミノ基を有する。この種のアミノ末端液状ゴムが、イソシアネート基又はエポキシド基を含むプレポリマー又はコンパウンドを調製するために用いられる場合、望ましくない架橋反応は、貯蔵安定な組成物が不可能であることを意味する。
【特許文献1】米国特許第5669227号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、したがって、新しいアミノ末端強化剤、より特に、アミノ末端液状ゴムを提供し、それらからイソシアネート基又はエポキシド基を有する貯蔵安定なプレポリマー又はコンパウンドが調製できる。
【0005】
驚くべきことに、本願請求項1記載のアミノ末端化合物が、従来技術の上記の欠点を取り除く強化剤であることがわかった。
【0006】
これらのアミノ末端化合物を用いて、それらと配合し且つ硬化した組成物の靭性、より特には、衝撃強度の向上が得られるさらなる誘導物を形成することができる。より特に、本アミノ末端化合物とイソホロンジイソシアネートから、ポリイソシアネート類及びポリウレタンプレポリマーをそれぞれ調製することができ、これらは貯蔵時に安定であり、かつグリシジル末端化合物の調製に用いることができることがわかった。
【0007】
本アミノ末端強化剤を用いて、あるいはそれらから調製したグリシジル末端化合物を用いて、それぞれ、高耐衝撃性エポキシ樹脂接着剤、より特に、高耐衝撃性で熱硬化性の一成分形エポキシ樹脂接着剤を製造することができる。
【0008】
本発明はアミノ末端強化剤、それらの誘導体、及びそれらの使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の強化剤は下記式(I)の化合物である。
【化1】

【0010】
この式中、Rは、末端カルボキシル基を取り除いたあとのカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーの二価の基である。
【0011】
本発明については、加えて、R基が、2つの一級アミノ基を取り除いたあとの脂環式1,2-ジアミンの二価の基、又は2つの一級アミノ基を取り除いたあとの芳香族o-ジアミンの二価の基であることが重要である。
【0012】
さらに、R及びRは、互いに独立して、Hであるか又は下記式(II)の基である。
【化2】

【0013】
この式中のRは、アルキル基又はアリル基である。好ましくはRがアリル基(-CH2-CH=CH2)を表す。
【0014】
最後に、R及びRは両方ともHであるか、両方とも下記式(III)の基である。
【化3】

【0015】
破線は、ここで及び本明細書を通じて、別の基との結合部位を記号化している。
【0016】
基として好ましいものは、より特に、式(IV)又は(V)の基であり、破線は式(I)中の2つの対応する窒素原子への結合部位を表している。
【化4】

【0017】
脂環式1,2-ジアミンに、又は芳香族o-ジアミンに由来する構造要素が、本発明の必須要素を構成することを発見した。本発明の化合物が貯蔵時の高い安定性を特徴とする事実は、より特に、この構造要素に起因するものであり、より特に、それぞれ、イソホロンジイソシアネートに由来する構造要素との、又はマレイン酸ジエステルに由来する構造要素との組み合わせに起因するものである。次に、特に、必要がある場合には存在可能であるアミドプロトン及びウレアプロトンが、架橋反応の原因となりうる反応性化合物による攻撃に対して保護される。さらに、貯蔵安定なエポキシ樹脂組成物の形成のためのこれらの化合物又はそれらの誘導体の利用については、いかなる三級アミノ基も全く形成又は導入されないことが重要であり、なぜなら、これらの三級アミノ基は、エポキシ樹脂の単独重合を引き起こすか、あるいはそれを触媒し、したがって、これらのエポキシ樹脂の早すぎる架橋をもたらしうることが知られているからである。
【0018】
は、より特には、Noveon社からHycar(登録商標)CTBNの名称で市販されているカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーのカルボキシル基を化学式の上で取り除くことによって得られる種類の基である。
【0019】
基は好ましくは下記式(VI)を有する。
【化5】

【0020】
上記の破線は、カルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーの2つのカルボキシル基の結合部位を表す。
【0021】
この式中の置換基Rは、1〜6つの炭素原子を有する、より特には4つの炭素原子を有する直鎖又は分枝したアルキレン基であり、これは任意選択で不飽和基で置換されていてもよい。特に言及するに足る一つの態様においては、置換基Rは下記式(X)の置換基であり、ここでもまた、破線は結合部位を表している。
【化6】

【0022】
さらに、上記指数qは、40と70の間、より特には50と70の間の値である。さらに、記号b及びcは、ブタジエンに由来する構造要素であり、aはアクリロニトリルに由来する構造要素である。指数n、m、及びpは順に、構造要素a、b、及びcの間の関係を記載する値である。
【0023】
指数nは0.05〜0.3の値を表し、指数mは0.5〜0.8の値を表し、指数pは0.1〜0.2の値を表すが、n、m、及びpの合計は1に等しいことを条件とする。
【0024】
当業者には、式(IV)中に示される構造は、さらには式(VII)、(VIII)、(IX)、及び(X)中に示される構造同様に、単純化された表示として理解されるべきである。したがって、a、b、及びc単位はそれぞれの場合に、互いに対して交互又はブロック形式で、ランダムに配置されうる。より特に、式(VI)はトリブロックコポリマーを必ずしも表してはいない。
【0025】
一つの好ましい態様において、置換基R、R、R、及びRはそれぞれ水素である。式(I)のこの態様は、アミノ末端液状ゴムである。この態様からは、本発明の式(I)の化合物の全ての態様とそれらの誘導体をも調製することができる。式(I)の特に好ましい態様として、この種のアミノ末端化合物は下記式(VII)の構造を有する。
【化7】

【0026】
その他の置換基と指数は、上で既に説明した定義を有する。
【0027】
さらに好ましい態様では、置換基R、R、及びRはそれぞれ水素であり、Rは式(II)の置換基である。さらに特に好ましい態様として、式(I)の化合物は式(VIII)の構造を有する。
【化8】

【0028】
その他の置換基及び指数は、上で既に説明した定義を有する。
【0029】
さらに好ましい態様では、置換基Rは水素であり、Rは式(II)の置換基であり、R及びRはそれぞれ式(III)の置換基である。さらに特に好ましい態様として、式(I)の化合物は下記式(IX)の構造を有する。
【化9】

【0030】
その他の置換基及び指数は上で既に説明した定義を有する。
【0031】
式(I)の化合物は、カルボキシル末端のブタジエン/アクリロニトリルコポリマーから、また式HOOC-R1-COOHと脂環式1,2-ジアミンもしくは芳香族o-ジアミンとからも調製できる。この調製は、アミドの調製について基本的に知られている方法で行われる。架橋反応を防止するか又は大きく低減するために、このアミド化はジアミンの化学量論大過剰において行い、かつ適当な場合は、適切な溶媒中で行う。過剰なジアミンは、必要な場合は蒸留によって分離できる。
【0032】
より特には、それらは、Hycar(登録商標)CTBNの形態で市販されているタイプのカルボキシル末端のブタジエン/アクリロニトリルコポリマーから調製することができる。
【0033】
特に好ましくは、これらの化合物はHycar(登録商標)CTBNの形態で市販されているタイプのカルボキシル末端のブタジエン/アクリロニトリルコポリマーと1,2-ジアミノシクロヘキサンとから調製することができる。
【0034】
より特に、簡単な方法で、水素がR、R、R、及びR基のそれぞれを表している式(I)の化合物、より特には、式(VII)の化合物と、マレイン酸ジアルキルエステルもしくはマレイン酸ジアリルエステル及び/又はイソホロンジイソシアネート(IPDI)との反応で式(I)の化合物を調製することができる。
【0035】
したがって、式(VIII)の化合物は、式(VII)の化合物とマレイン酸ジアルキルエステルもしくはマレイン酸ジアリルエステルとから調製できる。この場合、付加は、マレイン酸ジアルキルエステルもしくはマレイン酸ジアリルエステルの二重結合への、式(VII)の化合物の一級アミノ基のマイケル反応を介して起こる。当業者はこの反応のための条件と、化学量論比を変えることによって式(VIII)の化合物を形成するために収率を最適化することができるという事実を知っている。
【0036】
また、置換基R及びRがそれぞれ式(III)の置換基であり且つR及びRがそれぞれ水素である式(I)化合物も原理的には可能である:
【化10】

【0037】
しかし、この種の式(X)の化合物は、好ましさは低い。それらは式(VII)の化合物とイソホロンジイソシアネート(IPDI)から調製できる。
【0038】
さらに、R及びRがそれぞれ式(II)の置換基であり、かつR及びRがそれぞれ水素であるか又はそれぞれ式(III)の置換基である式(I)の化合物も可能である:
【化11】

【0039】
しかし、この種の式(XI)又は(XII)の化合物は、好ましさは低い。それらは式(VII)の化合物への、マレイン酸ジアルキルエステルもしくはマレイン酸ジアリルエステルの直接のマイケル付加によって、あるいはイソホロンジイソシアネート(IPDI)との引き続いての反応によって調製できる。ここで再び、反応剤の化学量論比が、それぞれの上の化合物の収率にとって重要である。
【0040】
本発明は、ポリイソシアネート化合物を調製するための方法をさらに提供する。
【0041】
この方法は以下のステップを含む:
i) xモルのカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーを、yモルの2つの一級アミノ基を有する脂環式1,2-ジアミン又は2つの一級アミノ基を有する芳香族o-ジアミンと、y/x≧2の割合で、アミド基の形成に導く条件下で反応させるステップ;
ii) 上記生成物をzモルのイソホロンジイソシアネートと、z/x+≧2の割合で、ウレア(尿素)基の形成を伴って反応させるステップ。
【0042】
反応ステップ(i)に続いて、かつ反応ステップ(ii)の前に下記の追加ステップ(i’)を行うことが好ましい:
i’) xxモルのマレイン酸ジアルキルエステル又はマレイン酸ジアリルエステルを、xx/x≧0.6、より特には、≧1の割合で、マレイン酸エステルの二重結合に対する上記一級アミノ基のマイケル付加が可能な条件下での反応。
【0043】
ステップ(i)においてアミド基の形成をもたらす、又はステップ(ii)においてウレア基の形成をもたらす、又はステップ(i’)において上記マイケル付加をもたらす条件は、当業者に非常によく知られている。
【0044】
この場合、カルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーは、特に下記式(XIII)のカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーである。
【化12】

式中、置換基及び指数は、すでに上述した好ましい態様及び定義を有する。
【0045】
特に好ましいのは、Noveon社によってHycar(登録商標)CTBNの商品名で市販されている種類のカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーを用いることである。
【0046】
より特に、脂環式1,2-ジアミン類が好ましい。最も好ましい脂環式1,2-ジアミンは、1,2-ジアミノシクロヘキサンである。
【0047】
本発明はさらに、ポリイソシアネート化合物の混合物の調製方法を提供する。この方法は、以下のステップを含む。
I) xモルのカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーを、yモルの脂環式1,2-ジアミン又は2つの一級アミノ基を有する芳香族o-ジアミンと、y/x≧2の割合で、アミド基の形成をもたらす条件下で反応させるステップ;
II) xyモルのジオール、特にxyモルのポリエーテルジオールを添加するステップ;
III) 上記生成物を、zモルのイソホロンジイソシアネートと、z/(x+xy)≧2の割合で、ウレア基の形成を伴って反応させるステップ。
【0048】
好ましくは、反応ステップ(I)に続いて、かつ反応ステップ(II)の前に、以下の追加ステップ(I’)を行う。
I’) xxモルのマレイン酸ジアルキルエステル又はマレイン酸ジアリルエステルを、xx/x≧0.6、より特に、≧1の割合で、マレイン酸エステルの二重結合への一級アミノ基のマイケル付加を可能にする条件下で反応させる。
【0049】
ステップ(I)においてアミド基の形成をもたらす条件、又はステップ(III)でウレア基の形成をもたらす条件、又はステップ(I’)で上記マイケル付加をもたらす条件は、当業者に非常によく知られている。
【0050】
この場合、カルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーは、より特に、下記式(XIII)のカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーである。
【化13】

式中、置換基及び指数は、すでに上述した好ましい態様及び定義を有する。
【0051】
特に好ましいのは、Noveon社からHycar(登録商標)CTBNの商品名で市販されている種類のカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーを用いることである。
【0052】
より特に、脂環式1,2-ジアミン類が好ましい。最も好ましい脂環式1,2-ジアミンは、1,2-ジアミノシクロヘキサンである。
【0053】
ポリエーテルジオールとしてより特に適切なものは、ポリオキシアルキレンジオール類である。特に好ましいポリエーテルジオールは、ポリ(オキシ-1,4-ブタンジイル)-α-ヒドロ-ω-ヒドロキシルであり、これは当業者にはポリTHF又はポリテトラメチレンエーテルグリコールとしても知られている。この種のポリTHFは、DuPont社からのTerathane(登録商標)又はBASF社からのPoly-THF(登録商標)の名称での製品系列として市販され入手可能である。
【0054】
カルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーとジオールとのモル質量比が1.5≧xy/x≧0.75の値を有することが特に適切であることが発見されている。
【0055】
式(I)の化合物のための出発物として用いられるカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルが既に高粘度であるため、本化合物及び/又はその誘導体の粘度も同様に高い。したがって、式(I)の化合物及び/又はその誘導体は、高粘度及びペースト状物質のために典型的に使用される手段で加工できるような粘度を有することが有利である。強化剤(靭性向上剤)としてのそれらの機能のためには、それらが、液状ゴムにおいて通常現れる種類の粘度を有するならば特に有利である。
【0056】
より特に、化合物(I)の粘度が、用いるカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーの粘度の3倍以下であるならば有利である。25℃での化合物(I)の粘度は、600Pa・s未満、より特には400Pa・s未満であることが好ましい。
【0057】
式(I)の化合物の有用性は広い。例えば、アミノ末端強化剤、より特には式(VII)のものは、誘導体のための出発生成物である。したがって、例えば、そのような化合物は、アミノ基と反応性である官能基を有する化合物と反応させることができる。この種の誘導体、より特に付加体は、次にさらに反応しうる。したがって、例えば、エポキシド末端強化剤を、ジエポキシド又はポリエポキシドを用いて上記アミノ末端強化剤から調製できる。アミノ末端強化剤の誘導体として特に興味深いものは、イソシアネート基、より特に、イソシアネート基を含む強化剤であり、より特には、R及びRについて式(III)の置換基をもつ式(I)の強化剤であり、これはアミノ末端強化剤とポリイソシアネートとから調製できる。これらのイソシアネート末端強化剤は、それらから出発して、さらなる反応を用いて、非常に広範囲の化学官能基のいずれかを有する多数の反応性強化剤、及びプレポリマーを調製することが可能である限り大きな興味がもたれる化合物である。したがって、例えば、(メタ)アクリレート、ビニル、アリル、エポキシド、ヒドロキシ、メルカプト、又はアルコキシシラン基を末端に有するプレポリマー又は強化剤を実現することができる。これらのプレポリマーはそれら自体又は樹脂の一部として硬化可能であり、あるいは、硬化剤として機能しうる。
【0058】
式(I)の化合物、より特に、アミノ官能性強化剤及び/又はそれらの誘導体も、硬化剤として特に適している。したがって、少なくともR及びR基、より特にR、R、R、及びR基がHである式(I)の化合物は、アミンと反応性である官能基を2つ以上有する化合物のための硬化剤又は硬化性成分である。より特に、それらは、エポキシ樹脂又はエポキシ樹脂組成物のための、あるいはポリイソシアネート又はイソシアネート基を含むポリウレタンプレポリマーのための硬化剤又は硬化性成分として適している。
【0059】
式(I)の化合物又はそれらの誘導体がイソシアネート基を含む場合には、これらの化合物は湿分で硬化可能であり、したがって、単独で、又は湿気硬化性システムの形態の組成物中の成分として、より特に、接着剤又はシーラントとして適している。この種の組成物は、置換基R及びRが両方とも式(III)の基である式(I)の少なくとも一種の化合物と、また少なくとも一種のポリオールと少なくとも一種のポリイソシアネートとの反応によって調製された少なくとも一種のNCO含有ポリウレタンプレポリマーとを含むことが好ましい。
【0060】
本発明の一つの具体的態様は、下記式(XIV)のグリシジル含有化合物によって表される。
【化14】

式中、記号表示、指数、及び置換基は、既に説明した定義及び好ましい態様を有する。
【0061】
さらに、Rは(t+1)価の有機基であり、次にtは1、2、3、又は4の値である。Rは式(XV)又は式(XVI)であるか、アミノ基の一つのHを除いた一級モノアミンの基であり、より特には、式(XVII)の基である。
【化15】

【0062】
上記式中のR10はH又はアルキル基、より特にメチル又はtert-ブチルである。上記式中のR11はH又はアルキル基である。
【0063】
特に好ましくは、Rは三価の有機置換基、すなわちt=3である。一つの特に好ましい基Rは、下記式(XVIII)の三価の基である。
【化16】

【0064】
特に好ましくは、Rは三価の有機置換基、すなわちt=3である。一つの特に好ましい基Rは、下記式(XVIII)の三価の基である。
【0065】
式(XIV)のグリシジル含有化合物は、好ましくは、式(XIX)のグリシジル含有化合物である。
【化17】

式中、記号表示、指数、及び置換基は、既に説明した定義及び好ましい態様を有する。
【0066】
式(XIV)の、又は式(XIX)のこの種のグリシジル含有化合物は、式(IX)もしくは式(X)もしくは式(XII)それぞれの化合物と、下記式(XX)、より特には下記式(XXI):
【化18】

の少なくとも一種のモノヒドロキシル-グリシジル化合物及び、適切な場合は、カテコール、アルキルカテコール、もしくはジアルキルカテコール、より特にtert-ブチルカテコール、もしくは一級モノアミン、との反応で得ることができる。より具体的な好適なアルキルカテコールは、4-メチルカテコール及びtert-ブチルカテコールであり、より具体的な好適なジアルキルカテコールは、3,4-ジメチルカテコール及び3,6-ジメチルカテコールである。4-tert-ブチルカテコールは、その低い融点と、毒性の点の有利さとによって特に好ましい。カテコール、アルキルカテコール、又はジアルキルカテコールの使用は、エポキシ樹脂組成物に対して特に有利であることが判明しており、なぜなら、残存するフェノール基が促進された硬化性を生じさせるからである。
【0067】
この種のモノヒドロキシル-グリシジル化合物は、例えば、フェノール類をエピクロルヒドリンと反応させることによって製造できる。反応形態に応じて、多官能アルコールとエピクロルヒドリンとの反応は、対応するモノヒドロキシル-グリシジル化合物を様々な濃度で含む副生成物を生じさせる。これらの化合物は典型的な分離操作によって単離できる。しかし、一般には、ポリオールのグリシジル化反応で得られ、かつグリシジルエーテルに対して完全な反応及び部分的反応をしたポリオールから構成されている生成混合物を用いることで充分である。そのようなヒドロキシル含有エポキシドの例は、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル(トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル中の混合物として存在する)、グリセロールジグリシジルエーテル(グリセロールトリグリシジルエーテル中の混合物として存在する)、及びペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル(ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル中の混合物として存在する)である。トリメチロールプロパンジグリシジルエーテルを用いることが好ましく、このエーテルは、通常調製されたトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル中にかなり高い割合で生じる。
【0068】
しかし、その他の同様のヒドロキシル含有グリシジル化合物、より特に、グリシドール、3-グリシジルオキシベンジルアルコール、を用いることもできる。さらには、下記式のβ-ヒドロキシエーテル(これはビスフェノールA(R’=CH)とエピクロルヒドリンから調製された市販の通常の液状エポキシ樹脂中に約15%存在している)、及びまた、下記式の相当するβ-ヒドロキシエーテル類(これはビスフェノールF(R’=H)、又はビスフェノールA及びビスフェノールFの混合物と、エピクロルヒドリンとの反応で形成される)が好ましい。
【化19】

【0069】
また、この種の化学種は、市販の固体樹脂中に低濃度で存在する。
【0070】
さらに、(ポリ)エポキシドと、化学量論量の一価の求核剤、例えばカルボン酸、フェノール類、チオール、又は二級アミンとの反応によって調製される、β-ヒドロキシエーテル基を有する非常に広範囲のエポキシドの任意のものを用いることも可能である。
【0071】
式(XX)のモノヒドロキシル-エポキシド化合物のフリーの一級又は二級OH官能基は、イソシアネート基を含む化合物との有効な反応を可能にし、この目的のために、不釣り合いに大過剰の式(XX)のエポキシド化合物を用いることは必要とされない。
【0072】
一級のモノアミンとして、式(XXIII)のモノアミンが殊に好ましいことが、特に判明している。
【化20】

【0073】
この場合は、必要な場合には、式(IX)、(X)、又は(XII)の化合物を最初に、カテコール、アルキルカテコール、もしくはジアルキルカテコールと、又は上記一級モノアミンと反応させて付加体を形成させることが好ましい。この場合は、0.2〜0.5モル、より特に0.2〜0.3モルのカテコール、アルキルカテコール、もしくはジアルキルカテコールに対して、式(IX)、(X)、又は(XII)の約1モルの化学量論量を用いて、付加体と式(IX)、(X)、又は(XII)の化合物との混合物に導くとすれば好ましい。次に、式(XX)の少なくとも一種のモノヒドロキシル-グリシジル化合物との反応が、イソシアネート基の全てが反応するような量で行われる。
【0074】
一つの好ましい態様では、式(IX)の化合物を、この場合、カテコール、アルキルカテコール、又はジアルキルカテコール、より特に、tert-ブチルカテコールと反応させ、より特に、式(IX)とカテコール、アルキルカテコール、又はジアルキルカテコール、より特に、tert-ブチルカテコールとのモル質量比が約1:0.2〜0.5で反応させて、次にモノヒドロキシ-グリシジル化合物との反応を行う。
【0075】
式(XX)の様々なモノヒドロキシル-グリシジル化合物を用いることが特に有利であることが判明している。特に上首尾であることがわかっている反応順序は、a)式(XXI)のモノヒドロキシル-グリシジル化合物、続いてb)液状エポキシ樹脂との反応、さらに必要であれば、続いてc)固体エポキシ樹脂との反応の順であった。
【0076】
液状エポキシ樹脂は当業者に公知である。好ましい液状エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、及びビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテルである(記号「A/F」はここでは、調製において反応剤として用いたビスフェノールAとビスフェノールFとの混合物をいう)。この種の液状樹脂は、例えば、Araldite(登録商標)GY 250、Araldite(登録商標)PY 304、Araldite(登録商標)GY 282(Huntsman社)、又はD.E.R. 331(Dow社)、又はEpikote 828(Resolution社)として入手できる。
【0077】
固体エポキシ樹脂は当業者に公知である。好ましい固体エポキシ樹脂は、より高分子量の、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル類(DGEBA)又はビスフェノールFのジグリシジルエーテル類又はビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテル類である(記号「A/F」はここでは、その調製において反応剤として用いたアセトンとホルムアルデヒドの混合物を示す)。好ましい固体エポキシ樹脂は下記式(XXIV)を有する。
【化21】

【0078】
上記式中、置換基R’及びR’’は、互いに独立して、H又はCHのいずれかである。さらに、指数sは1.5より大きな価、好ましくは2〜12である。この種の固体エポキシ樹脂は、例えば、Dow社、Huntsman社、又はResolution社から市販されている。
【0079】
固体エポキシ樹脂の使用は特に有利であることが判明しており、なぜなら、ガラス転移温度Tgと同時に機械強度、より特には引張強度に関して利点をもたらすからである。
【0080】
この種のグリシジル含有化合物はより特にはエポキシ樹脂接着剤として、あるいはエポキシ樹脂接着剤への添加剤として用いるのに非常に適している。一つの特定の好ましい態様では、それらはエポキシ樹脂接着剤としての、又は熱硬化性エポキシ樹脂接着剤における用途を見出している。この種の熱硬化性接着剤は一成分形である。
【0081】
式(XIV)の、より特には式(XIX)のグリシジル含有化合物の量は、エポキシ樹脂接着剤組成物に対して2重量%と50重量%の間であることが好ましい。
【0082】
この種の熱硬化性エポキシ樹脂接着剤は、より特に、式(XIV)の、より特に式(XIX)の少なくとも一種のグリシジル含有化合物に加えて、少なくとも一種の液状エポキシ樹脂、及び高められた温度によって活性化されうる少なくとも一種の硬化剤をも含む。さらに、固体エポキシ樹脂と充填剤(フィラー)も、利点をもって使用できる成分である。
【0083】
この場合に、高められた温度で活性化されうる硬化剤は、ジシアンジアミド、グアナミン類、グアニジン類、アミノグアニジン類、及びそれらの誘導体からなる群から選択される硬化剤であることが好ましい。加えて、触媒的に活性な置換尿素類、例えば、3-クロロ-4-メチルフェニルウレア(クロルトルロン)、又はフェニルジメチルウレア類、より特に、p-クロロフェニル-N,N-ジメチルウレア(モニュロン)、3-フェニル-1,1-ジメチルウレア(フェニュロン)、又は3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチルウレア(ジウロン)が可能である。加えて、イミダゾール類及びアミン錯体の群からの化合物を用いることができる。特に好ましいものは、ジシアンジアミドである。
【0084】
有利には、硬化剤の全割合は、全体の接着剤組成物の重量に基づいて、1重量%〜10重量%、好ましくは2重量%〜8重量%である。
【0085】
一つの好ましい態様では、本接着剤組成物は少なくとも一種のフィラーを含む。これは、好ましくは、マイカ、タルク、カオリン、ウォラストナイト、長石、クロライト、ベントナイト、モンモリロナイト、炭酸カルシウム(沈降性又は粉砕品)、ドロマイト、石英、シリカ(ヒュームドシリカ又は沈降性シリカ)、クリストバライト、酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、中空セラミックビーズ、中空ガラスビーズ、中空有機ビーズ、ガラスビーズ又は着色顔料である。フィラーの語は、有機被覆された形態だけでなく、被覆されていない市販の形態及び当業者に公知の形態も意味する。特に好ましいフィラーと考えられるのは、例えば、ウォラストナイト、及びDegussa社によってAerosil(登録商標)の商品名で市販に供されている種類のヒュームドシリカである。有利には、全フィラーの合計割合は、全接着剤組成物の重量に対して3重量%〜30重量%、好ましくは5重量%〜25重量%である。
【0086】
適切な場合は、接着剤のさらなる成分として、エポキシ基を有する反応性希釈剤を用いることもでき、より特にその量は全接着剤組成物の重量を基準にして、1重量%〜7重量%、好ましくは2重量%〜6重量%である。
【0087】
本組成物は、さらに、さらなる成分、より特に、触媒、熱安定剤及び/又は光安定剤、チキソ性付与剤、可塑剤、溶媒、染料、及び顔料、を含んでもよい。
【0088】
この種の接着剤は、接着される材料と、10℃〜80℃、より特に10℃〜60℃の温度で最初に接触され、次に典型的には100〜220℃、好ましくは120〜200℃の温度で硬化される。
【0089】
そのような接着剤は熱安定材料の結合に必要とされる。熱安定材料とは、少なくとも硬化時間のあいだ、100〜220℃、好ましくは120〜200℃の硬化温度で寸法的に安定である材料を意味する。より特に、それらは金属及びプラスチック、例えばABS、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、複合材料、例えばSMC、不飽和ポリエステルGRP、複合エポキシ材料又は複合アクリレート材料である。少なくとも1つの材料が金属である用途が好ましい。特に好ましい用途は、類似した又は異なる金属の接着結合、より特には、自動車工業におけるボディーシェル構築における接着結合である。好ましい金属は特にスチール、より特には電解メッキスチール、溶融亜鉛メッキスチール、油を塗布したスチール、Bonazinc(登録商標)被覆したスチール、及び引き続いてリン酸処理したスチール、並びにアルミニウム、より特に、自動車製造において通常遭遇する種類のものである。
【0090】
式(I)の化合物及び/又はそれらの誘導体はさらに高いオイル吸収度を特徴とする。
【0091】
本発明の全ての化合物、組成物、及び接着剤は貯蔵安定である。すなわち、それらは、湿分不在下で50℃より低い温度で貯蔵した場合には、貯蔵時(これは典型的には少なくとも1ヶ月、好ましくは少なくとも3ヶ月)に架橋しない。
【0092】
原理上、式(I)の全ての化合物及びそれらの誘導体は、組成物の成分として、より特に、反応性耐衝撃性改良剤としての用途を見出している。これらの化合物及び誘導体は、ゴムに類似した性質を有する。接着剤が硬化するときにそれらが接着剤マトリクス中に組み込まれる場合に特に有利である。本明細書で対象としている化合物は、より特には式(I)の化合物、説明した方法によって調製されるポリイソシアネート化合物、及び式(XIV)のグリシジル化合物である。
【0093】
式(I)の化合物及び/又はそれらの誘導体の使用は、より特に低温(すなわち、より特に0℃より低い温度)での靭性を含めて、靭性の改良をもたらす。したがって、比較的高温においてだけでなく、特に低温、より特には0℃〜−40℃の間においても、接着の耐衝撃強度を実現可能であることが観察されている。本発明の化合物及び/又は誘導体を用いて、熱による硬化後に、DIN11343に準拠して測定して、23℃で10.0Jより大きく、かつ−40℃で5.0Jより大きな破壊エネルギーを有する熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を調製することができる。時々、23℃で12Jより大きく、かつ−40℃で7.0Jより大きな破壊エネルギーを有する組成物を配合することができる。特に有利な組成物は、23℃で14.0J、かつ−40℃で8Jより大きな破壊エネルギーさえ有していた。
特にそれらは硬化可能な反応性組成物に用いられる。
【実施例】
【0094】
〔モノヒドロキシル含有エポキシド(monohydroxyl-containing epoxide)「MHE」の調製例〕
【0095】
トリメチロールプロパングリシジルエーテルは、米国特許第5,668,227号の実施例1の方法に従って、トリメチロールプロパンとエピクロルヒドリンから、塩化テトラメチルアンモニウムと水酸化ナトリウム水溶液を用いて調製した。これによって、7.5eq/kgのエポキシ価と1.8eq/kgのヒドロキシル基量をもつ黄色生成物が得られる。HPLC−MSスペクトルから、存在するものは本質的にトリメチロールプロパンジグリシジルエーテルとトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの混合物であることが結論できる。
【0096】
〔本発明の化合物及び組成物の調製〕
表1に特定した化合物と組成物を調製した。
【0097】
カルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーを初期仕込み原料として、1,2-ジアミノシクロヘキサン又は1,3-ジアミノペンタンと、触媒としてのブチルチタネートとともに仕込み、この初期仕込み原料を約180℃の温度に加熱した。蒸留によって水を除去した後、このバッチを冷却した。
【0098】
適切な場合は、マレイン酸ジアリルエステルを次に添加した。
【0099】
B2又はB1又はRef.1から、あるいは市販のアミノ末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーHycar(登録商標)ATBNから出発して、実施例B3〜B8又は実施例B9〜B11又は比較例Ref.2、Ref.3、及びRef.4を表2にしたがってさらに反応させた。B2はポリオールと混ぜ、IPDIと混合して、加熱して反応させてイソシアネート基を含有する中間体を得た。表2に特定したイソシアネート含有量が確認された。しかし、比較例Ref.2〜Ref.4の場合は、この時点でゲル化が観察され、そのためこれらの試験は中止しなければならなかった。
【0100】
実施例B3〜B11のイソシアネート基含有化合物は、続いてモノアミン又はtert-ブチルカテコールと混合し、およそ80℃の温度で反応させた。次に、これらのさらなる生成物はモノヒドロキシル-グリシジル化合物と混合し、次に液状樹脂と混合し、最後に適当な場合は、固体樹脂と混合し、固体樹脂が完全に溶けるまで90℃で撹拌した。
【0101】
実施例B1〜B11の全てが貯蔵安定性だった。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
〔接着剤の調製〕
組成物B3〜B11を用いて、熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を調製した。この目的のために、表3のように成分をSchramoid混合機中で混ぜた。硬化剤であるジシアンジアミドの量は、同じエポキシ含有量との関連で用いた。
【0105】
接着剤K1〜K11の全てが貯蔵安定性だった。
【0106】
〔試験方法〕
[引張強度(TS)/破断伸び(DIN EN ISO 527)]
試験片の引張強度と破断伸びは、DIN EN ISO 527に準拠して、2mm/minの引っ張り速度で測定した。
【0107】
[粘度]
粘度は、コーン/プレート・レオマット(rheomat)(Bohlin CV120HR)で、20℃にて、20mmスピンドル(スピンドル4)を使用して、50s-1の剪断速度で測定した。
【0108】
[引張剪断強度(TSS)(DIN EN 1465)]
試験片は説明した実施例及び比較例の組成物から、100×25×0.8mmの寸法の電解亜鉛メッキスチール(eloZn)を用いて調製した。接着面積は25×10mmで、0.3mmの層の厚さだった。硬化は180℃で30分間行った。引張速度は10mm/minだった。
【0109】
冷却後の値を測定し、また、以下のサイクルのシーケンスでの加速試験後の値も測定した。
サイクル試験「WT1」(1週労働)
− 塩水溶液(5%NaCl、70℃)中での24時間の貯蔵
− 水(70℃)中での48時間の貯蔵
− 標準条件下で24時間(23℃/50%相対湿度)
【0110】
サイクル試験「WT2」(2週労働)
− 塩水溶液(5%NaCl、70℃)中での24時間の貯蔵
− 水(70℃)中での48時間の貯蔵
− 標準条件下で96時間(23℃/50%相対湿度)
− 塩水溶液(5%NaCl、70℃)中での24時間の貯蔵
− 水(70℃)中での48時間の貯蔵
− 標準条件下で24時間(23℃/50%相対湿度)
【0111】
[衝撃剥離エネルギー(ISO 11343)]
試験片は説明した実施例及び比較例の組成物から、90×20×0.8mmの寸法の電解亜鉛メッキスチール(eloZn)を用いて調製した。接着面積は20×30mmで、0.3mmの層の厚さだった。硬化は180℃で30分間行った。引張速度は2m/sだった。破壊エネルギーとしてジュール単位で報告した数値は、曲線の下の面積である(DIN 11343に準拠して25%〜90%)。
【0112】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の化合物。
【化1】

(式中、Rは、末端カルボキシル基を取り除いたあとのカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーの二価の基であり;
は、2つの一級アミノ基を取り除いたあとの脂環式1,2-ジアミンの二価の基、又は2つの一級アミノ基を取り除いたあとの芳香族o-ジアミンの二価の基であり;
及びRは、互いに独立して、Hであるか又は下記式(II):
【化2】

の基であり、Rは、アルキル基又はアリル基であり;
及びRは両方ともHであるか、両方とも下記式(III):
【化3】

の基である。
【請求項2】
が下記式(IV)を有することを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【化4】

(式中、破線は2つの窒素原子の結合部位を表す。)
【請求項3】
が下記式(V)を有することを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【化5】

(式中、破線は2つの窒素原子の結合部位を表す。)
【請求項4】
が下記式(VI)を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【化6】

(式中、破線は、2つのカルボキシル基の結合部位を表し;
b及びcは、ブタジエンに由来する構造要素であり、aはアクリロニトリルに由来する構造要素であり;
Rは、1〜6つの炭素原子を、より特には4つの炭素原子を有する直鎖又は分枝したアルキレン基であり、これは任意選択で不飽和基で置換されていてもよく;
qは、40と70の間、より特には50と70の間の値であり;
n=0.05〜0.3、m=0.5〜0.8、p=0.1〜0.2であり;
ただし、n+m+p=1である。)
【請求項5】
下記式(VII)を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【化7】

【請求項6】
下記式(VIII)を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【化8】

【請求項7】
下記式(IX)を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【化9】

【請求項8】
基がアリル基-CH2-CH=CH2であることを特徴とする、請求項1〜4及び6〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R基が下記式(X)を有することを特徴とする、請求項4〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【化10】

(式中、破線は結合部位を表す。)
【請求項10】
以下のステップ:
i) xモルのカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーを、yモルの2つの一級アミノ基を有する脂環式1,2-ジアミン又は2つの一級アミノ基を有する芳香族o-ジアミンと、y/x≧2の割合で、アミド基の形成に導く条件下で反応させるステップ;
ii) 上記生成物をzモルのイソホロンジイソシアネートと、z/x+≧2の割合で、ウレア基の形成を伴って反応させるステップ
を含む、ポリイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項11】
前記反応ステップ(i)に続き、かつ反応ステップ(ii)の前に下記のステップ(i’):
i’) xxモルのマレイン酸ジアルキルエステル又はマレイン酸ジアリルエステルを、xx/x≧0.6の割合で、前記マレイン酸エステルの二重結合に対する前記一級アミノ基のマイケル付加が可能な条件下で反応させるステップ
を行うことを特徴とする、請求項10に記載のポリイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項12】
前記脂環式1,2-ジアミンが1,2-ジアミノシクロヘキサンであることを特徴とする、請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
以下のステップ:
I) xモルのカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーを、yモルの脂環式1,2-ジアミン又は2つの一級アミノ基を有する芳香族o-ジアミンと、y/x≧2の割合で、アミド基の形成をもたらす条件下で反応させるステップ;
II) xyモルのジオール、特にxyモルのポリエーテルジオールを添加するステップ;
III) 上記生成物を、zモルのイソホロンジイソシアネートと、z/(x+xy)≧2の割合で、ウレア基の形成を伴って反応させるステップ
を含む、ポリイソシアネート化合物の混合物の製造方法。
【請求項14】
前記反応ステップ(I)に続いて、かつ前記反応ステップ(III)の前に、下記ステップ(I’):
I’) xxモルのマレイン酸ジアルキルエステル又はマレイン酸ジアリルエステルを、xx/x≧0.6の割合で、前記マレイン酸エステルの二重結合への一級アミノ基のマイケル付加を可能にする条件下で反応させるステップ
を行うことを特徴とする、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ポリエーテルジオールが、ポリ(オキシ-1,4-ブタンジイル)-α-ヒドロ-ω-ヒドロキシルであることを特徴とする、請求項13又は14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記割合が1.5≧xy/x≧0.75であることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記脂環式1,2-ジアミンが1,2-ジアミノシクロヘキサンであることを特徴とする、請求項13〜16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
下記式(XIV)のグリシジル含有化合物。
【化11】

[式中、
b及びcはブタジエンに由来する構造要素であり、aはアクリロニトリルに由来する構造要素であり;
Rは、1〜6つの炭素原子を、より特には4つの炭素原子を有する直鎖又は分枝したアルキレン基であり、これは任意選択で不飽和基で置換されていてもよく;
qは、40と70の間、より特には50と70の間の値であり;
n=0.05〜0.3、m=0.5〜0.8、p=0.1〜0.2であり;
ただし、n+m+p=1であり;
及びRは、互いに独立して、Hであるか又は下記式(II):
【化12】

の基であり、Rは、アルキル基又はアリル基であり;
は(t+1)価の有機基であり;
tは1、2、3、又は4の値であり;
は下記式(XV)又は下記式(XVI)であるか、アミノ基の一つのHを除いた一級モノアミンの基であり、より特には、下記式(XVII)の基である。
【化13】

(式中、R10はH又はアルキル基、より特にメチル又はtert-ブチルであり、かつR11はH又はアルキル基である。)]
【請求項19】
t=2であり、且つR基が下記式(XVIII)を有することを特徴とする、請求項18に記載のグリシジル含有化合物。
【化14】

【請求項20】
R基が下記式(X)を有することを特徴とする、請求項18又は19に記載のグリシジル含有化合物。
【化15】

(式中、破線は結合部位を表す。)
【請求項21】
及びR基がHである請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物の、アミンと反応性の官能基を2つ以上の有する化合物のための硬化剤としての使用。
【請求項22】
エポキシ樹脂のための硬化剤としての、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
ポリイソシアネートのための、又はイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーのための硬化剤としての、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
エポキシ樹脂接着剤として、又はエポキシ樹脂接着剤の成分としての、請求項18〜20のいずれか一項に記載のグリシジル含有化合物の使用。
【請求項25】
熱硬化性エポキシ樹脂接着剤として、又は熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の成分としての、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
反応性耐衝撃性改良剤としての、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物の、請求項10〜17のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される化合物の、又は請求項18〜20のいずれか一項に記載のグリシジル含有化合物の使用。
【請求項27】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物、請求項10〜17のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される化合物、又は請求項18〜20のいずれか一項に記載のグリシジル含有化合物を含む組成物。
【請求項28】
請求項18〜20のいずれか一項に記載の少なくとも一種のグリシジル含有化合物と、少なくとも一種の液状エポキシ樹脂とを含むことを特徴とする、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記式(I)(式中R及びRが両方とも前記式(III)の基である)の少なくとも一種の化合物と、少なくとも一種のポリオールと少なくとも一種のポリイソシアネートとの反応によって調製される少なくとも一種のNCO含有ポリウレタンプレポリマーとを含むことを特徴とする、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物、請求項10〜17のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される化合物、又は請求項18〜20のいずれか一項に記載のグリシジル含有化合物と、反応性である化合物との反応によって得られる、硬化した組成物。

【公表番号】特表2009−504863(P2009−504863A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526495(P2008−526495)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065342
【国際公開番号】WO2007/020266
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】