説明

アミノ酸類高配合防腐水溶液

【課題】防腐性、特に真菌に対する保存効力、安全性に優れ、長期保存でも析出、着色、着臭などの問題がない、保存安定性に優れ、化粧料に配合することによって高い保湿効果を付与しながらべたつき感がなく、染色毛の色落ち防止といった効果を付与することが可能なアミノ酸類高配合防腐水溶液を提供する。
【解決手段】(成分A)ピロリドンカルボン酸及び/またはその塩と、(成分B)塩基性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分C)酸性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分D)中性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分E)乳酸及び/またはその塩を、特定の配合比かつpHで含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸類高配合防腐水溶液、およびそれを含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸またはその誘導体は、皮膚化粧料、毛髪化粧料をはじめとする各種化粧料に広く使用されうる有用素材である。近年天然指向の化粧料への期待から、数種のアミノ酸またはその誘導体が配合される場合が多くなってきたが、それらの品質管理や配合操作は煩雑を極めるものであった。そのため、予め汎用性があり有用なアミノ酸またはその誘導体を高濃度に溶解している水溶液が求められていた。しかし、アミノ酸を高濃度で配合した水溶液は、概して腐りやすく、配合するアミノ酸次第では析出しやすいため、実用的と呼べる製品は無かった。
【0003】
一般に防腐技術としては、パラヒドロキシ安息香酸エステル(パラベン)類、フェノキシエタノールのような、化粧料に配合可能な防腐剤の使用が挙げられる(非特許文献1)。しかし、いずれの防腐剤もそれぞれ限られた種類の微生物にしか効果がなく、特に真菌類には限られた効果しか示さないという問題があった。さらに、防腐剤は皮膚への刺激を起こすなど、安全性が低い傾向があることや、いずれも天然には存在しない成分であることから、特に敏感肌用や天然素材をコンセプトに謳うような場合、消費者に極めてネガティブなイメージで受け止められるという問題があった。
【0004】
pHを酸性にすることで、防腐を行う技術も広く知られている(非特許文献2)。しかし、本来酸性側のpH域を好む真菌類にも明らかな効果が現れるpH4以下では、酸性アミノ酸の溶解度が低下して低温で析出を生じ、製品として流通させるための溶状安定性を得られないという問題点があった。
【0005】
一方、保湿剤としても利用される乳酸ナトリウムに、防腐効果があることが報告されている(非特許文献3)。しかし、浸透圧耐性のある真菌に必ずしも効果的とはいえなかった。
【0006】
防腐性、特に真菌に対する保存効力、安全性に優れ、長期保存でも析出、着色、着臭などの問題がない、保存安定性に優れ、化粧料に配合することによって高い保湿効果を付与しながらべたつき感がなく、染色毛の色落ち防止といった効果を付与することが可能なアミノ酸類高配合防腐水溶液が求められていた。
【非特許文献1】香粧品医薬品 防腐・殺菌剤の科学
【非特許文献2】防菌防黴ハンドブック p.3 技報堂出版 1986年
【非特許文献3】Antimicrobial Effects of Lactates: A Review、Journal of Food Protection、第57巻、第5号、p.445-450 1994年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、防腐性、特に真菌に対する保存効力、安全性に優れ、長期保存でも析出、着色、着臭などの問題がない、保存安定性に優れ、化粧料に配合することによって高い保湿効果を付与しながらべたつき感がなく、染色毛の色落ち防止といった効果を付与することが可能なアミノ酸類高配合防腐水溶液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意研究を行った結果、(成分A)ピロリドンカルボン酸及び/またはその塩と、(成分B)塩基性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分C)酸性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分D)中性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分E)乳酸及び/またはその塩と(成分F)水を、特定の配合比かつpHで含有させることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は以下の態様を含む。
[1] (成分A)ピロリドンカルボン酸及び/またはその塩と、(成分B)塩基性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分C)酸性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分D)中性アミノ酸及び/又はその塩と、(成分E)乳酸及び/またはその塩と(成分F)水とを含有し、[(成分A)+(成分E)の合計重量]/[(成分A))+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)+(成分F)の合計重量](重量%)が25〜40重量%であり、(成分A)重量/[(成分A)+(成分E)の合計重量](重量%)=5〜95重量%であり、pHが3.5〜6.0であることを特徴とする、アミノ酸類高配合防腐水溶液。
[2] (成分B)がアルギニン及び/またはその塩であり、(成分B)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)が4〜25重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のアミノ酸類高配合防腐水溶液。
[3] (成分C)がアスパラギン酸及び/またはその塩であり、(成分C)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)が5〜15重量%であることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載のアミノ酸類高配合防腐水溶液。
[4](成分D)がグリシンおよび/又はその塩、アラニンおよび/又はその塩から選ばれる1種又は2種以上であり、(成分D)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)が5〜20重量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のアミノ酸類高配合防腐水溶液。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載のアミノ酸類高配合防腐水溶液を含有する化粧料。
【発明の効果】
【0010】
(成分A)ピロリドンカルボン酸及び/またはその塩と、(成分B)塩基性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分C)酸性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分D)中性アミノ酸及び/またはその塩を高配合した水溶液に、(成分E)乳酸及び/またはその塩と(成分F)水を、特定の配合比かつpHで含有させることにより、防腐性、特に真菌に対する保存効力、安全性に優れ、長期保存でも析出、着色、着臭などの問題がない、保存安定性に優れ、化粧料に配合することによって高い保湿効果を付与しながらべたつき感がなく、染色毛の色落ち防止といった効果を付与することが可能なアミノ酸類高配合防腐水溶液を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、(成分A)ピロリドンカルボン酸及び/またはその塩と、(成分B)塩基性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分C)酸性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分D)中性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分E)乳酸及び/またはその塩と(成分F)水を、特定の配合比かつpHで含有させたアミノ酸類高配合防腐水溶液である。以下、構成成分と配合割合について順次説明する。
【0012】
本発明における、“アミノ酸類”とは、「塩基性アミノ酸またはその塩、酸性アミノ酸またはその塩、中性アミノ酸とアミノ酸誘導体であるピロリドンカルボン酸(PCA)及び/またはその塩」を対象として意味するものである。
“高配合”とは、「本構成要素である(成分A)ピロリドンカルボン酸及び/またはその塩と、(成分B)塩基性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分C)酸性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分D)中性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分E)乳酸及び/またはその塩と(成分F)水の総重量に対して、(成分A)ピロリドンカルボン酸及び/またはその塩と、(成分B)塩基性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分C)酸性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分D)中性アミノ酸及び/またはその塩の総重量が、15重量%以上、好ましくは18重量%以上、より好ましくは20重量%以上、更に好ましくは23重量%以上、更に一層好ましくは25重量%以上、殊更好ましくは28重量%以上、特に好ましくは30重量%以上のもの」を意味する。
また、“防腐水溶液”とは、「この水溶液を配合することによって配合されたものが防腐効果を呈する防腐剤としての水溶液」であることを意味するわけではなく、「この水溶液自体が特定の防腐性能を有する水溶液」であることを意味する。
【0013】
また、本文中で使用する“防腐効果”については、「第十四改正日本薬局方追補15.保存効力試験法に基づいてEscherichia coli(大腸菌)、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)の3種の細菌、およびCandida albicans(カンジダ)、Aspergillus niger(クロコウジカビ)の2種の真菌に対する保存効力試験を行ったとき、同法記載のカテゴリーIA製剤(注射剤および点耳・点眼剤を含む非経口剤)の判定基準をクリアする保存効力を示すこと」を意味する。すなわち、「細菌の生菌数は接種後14日の試験期間内に、接種した菌数に比べて0.1%以下に減少し、その後28日間の試験終了時まで、そのレベルと同等若しくはそれ以下の生菌数にとどまること」、及び、「真菌の生菌数は接種後14日と28日目まで、接種した菌数と同レベルと同等若しくはそれ以下の生菌数にとどまること」、を満たすものを意味する。なお、本願の構成が、水溶性基剤で作られた製剤に相当し、化粧品原料として取り扱いの最中に誤って眼に入る可能性が十分に予見し得るため、日本薬局方によるカテゴリーIA製剤(注射剤および点耳・点眼剤を含む非経口剤)を選択している。
【0014】
本発明に用いられる(成分A)のピロリドンカルボン酸及び/またはその塩は、本発明のアミノ酸類高配合防腐水溶液を配合する化粧料に保湿、染色毛の色落ち防止させる効果および(成分E)の乳酸またはその塩と相乗的に作用して防腐効果を有する。フリーのピロリドンカルボン酸としても、塩として使用しても良い。塩としては、通常化粧料に使用しうる塩であれば特に制限はないが、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩; カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩; アンモニウム塩、エタノールアミン塩等のアミン塩; リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられ、アルカリ金属塩が好ましい。光学活性体(L体またはD体)であっても、ラセミ体(DL体)であってもよい。これらのものは1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用しても良い。具体的には、L−ピロリドンカルボン酸、L−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、DL−ピロリドンカルボン酸カリウム、DL−ピロリドンカルボン酸アンモニウムなどが挙げられる。溶状安定性が良いという観点で、L−ピロリドンカルボン酸、L−ピロリドンカルボン酸アルカリ金属塩が好ましく、L−ピロリドンカルボン酸、L−ピロリドンカルボン酸ナトリウム塩がより好ましい。
【0015】
本発明に用いられる(成分B)の塩基性アミノ酸及び/またはその塩は、皮膚においてはコラーゲンの産生促進や血行促進効果、毛髪においては染色毛の色落ち防止を改善する効果を有する。塩基性アミノ酸は、分子内に酸性基よりもアミノ基を多く持つ化合物であれば特に制限はなく、天然のものでも非天然のものでも良く、フリーの塩基性アミノ酸として使用しても、塩として使用しても構わない。塩としては、通常化粧料に使用しうる塩であれば特に制限はないが、塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩; 酢酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩; グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸塩等が挙げられ、塩酸塩が好ましい。(但し、酸性アミノ酸塩を用いる場合には、フリーのアミノ酸同士の組合わせと看做して、塩基性アミノ酸部分を(成分B)として、酸性アミノ酸部分を(成分C)としてカテゴリー分けするものとする。)光学活性体(L体またはD体)であっても、ラセミ体(DL体)であってもよいが、L体が好ましい。これらのものは1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用しても良い。具体的には、L−リジン、D−リジン、DL−リジン、L−リジン塩酸塩、L−リジン硫酸塩、L−リジン酢酸塩、L−ヒドロキシリジン、D−ヒドロキシリジン、DL−ヒドロキシリジン、L−ヒドロキシリジン塩酸塩、L−ヒドロキシリジン硫酸塩、L−ヒドロキシリジン酢酸塩、L−アルギニン、D−アルギニン、DL−アルギニン、L−アルギニン塩酸塩、L−アルギニン硫酸塩、L−アルギニン酢酸塩、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、DL−ヒスチジン、L−ヒスチジン塩酸塩、L−ヒスチジン硫酸塩、L−ヒスチジン酢酸塩、L−オルニチン、D−オルニチン、DL−オルニチン、L−オルニチン塩酸塩、L−オルニチン硫酸塩、L−オルニチン酢酸塩、等が挙げられる。皮膚や毛髪に対する親和性が高く、幅広い効果が期待できるという点で、アルギニン及び/またはその塩、ヒスチジン及び/またはその塩、オルニチン及び/またはその塩が好ましく、L−アルギニン、L−アルギニン塩酸塩、L−ヒスチジン、L−ヒスチジン塩酸塩、L−オルニチン、L−オルニチン塩酸塩がより好ましく、アルギニン及び/またはその塩が更に好ましく、L−アルギニンまたはL−アルギニン塩酸塩が特に好ましい。
【0016】
本発明に用いられる(成分C)の酸性アミノ酸及び/またはその塩は、保湿効果を付与する効果を有する。酸性アミノ酸は、分子内にアミノ基よりもカルボキシル基やスルホン酸基などの酸性基を多く持つ化合物であれば特に制限なく、天然のものでも非天然のものでも良く、フリーの酸性アミノ酸として使用しても、塩として使用しても構わない。塩としては、通常化粧料に使用しうる塩であれば特に制限はないが、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩; カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩; アンモニウム塩、エタノールアミン塩等のアミン塩; リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられ、アルカリ金属塩が好ましい。(但し、塩基性アミノ酸塩を用いる場合には、フリーのアミノ酸同士の組合わせと看做して、塩基性アミノ酸部分を(成分B)として、酸性アミノ酸部分を(成分C)としてカテゴリー分けするものとする。)光学活性体(L体またはD体)であっても、ラセミ体(DL体)であってもよいが、L体が好ましい。これらのものは1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用しても良い。具体的には、L−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸、DL−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム塩、L−アスパラギン酸カリウム塩、L−アスパラギン酸マグネシウム塩、L−グルタミン酸、D−グルタミン酸、DL−グルタミン酸、L−グルタミン酸ナトリウム塩、L−グルタミン酸カリウム塩、L−グルタミン酸マグネシウム塩、等が挙げられる。特に優れた低温安定性が得られるという点で、アスパラギン酸及び/またはその塩が好ましく、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸アルカリ金属塩がより好ましく、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム塩が更に好ましい。
【0017】
本発明に用いられる(成分D)の中性アミノ酸及び/またはその塩は、べたつき感を効果的に軽減させる効果を有する。中性アミノ酸は、分子内のアミノ基と酸性基の数が一致している化合物であれば特に制限なく、天然のものでも非天然のものでも良い。塩としては、通常化粧料に使用しうる塩であれば特に制限はないが、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩; 塩酸、硫酸等の無機酸塩等が挙げられる。光学活性体(L体またはD体)であっても、ラセミ体(DL体)であってもよいが、L体が好ましい。これらのものは1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用しても良い。具体的には、グリシン、L−アラニン、D−アラニン、DL−アラニン、L−β−アラニン、D−β−アラニン、DL−β−アラニン、L−タウリン、D−タウリン、DL−タウリン、L−バリン、D−バリン、DL−バリン、L−ロイシン、D−ロイシン、DL−ロイシン、L−イソロイシン、D−イソロイシン、DL−イソロイシン、L−セリン、D−セリン、DL−セリン、L−スレオニン、D−スレオニン、DL−スレオニン、L−フェニルアラニン、D−フェニルアラニン、DL−フェニルアラニン、L−チロシン、D−チロシン、DL−チロシン、L−プロリン、D−プロリン、DL−プロリン、L−ヒドロキシプロリン、D−ヒドロキシプロリン、DL−ヒドロキシプロリン、L−トリプトファン、D−トリプトファン、DL−トリプトファン、L−システイン、D−システイン、DL−システイン、L−メチオニン、D−メチオニン、DL−メチオニン、グリシンナトリウム塩、グリシンカリウム塩、グリシン塩酸塩、等が挙げられる。保湿性を軽減させることなしにべたつきを抑え、さらさらとした感触を付与できるという観点で、グリシンおよび/又はその塩、アラニンおよび/又はその塩が好ましく、グリシン、L−アラニン、D−アラニン、DL−アラニンがより好ましく、グリシン、L−アラニンが更に好ましい。
【0018】
本発明に用いられる(成分E)の乳酸及び/またはその塩は、(成分A)のピロリドンカルボン酸及び/またはその塩と共に、アミノ酸類高配合防腐水溶液を防腐させる効果を有する。乳酸及び/またはその塩は、フリーの乳酸としても、塩として使用しても良い。塩としては、通常化粧料に使用しうる塩であれば特に制限はないが、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩; カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩; アンモニウム塩、エタノールアミン塩等のアミン塩; リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられ、アルカリ金属塩が好ましい。光学活性体(L体またはD体)であっても、ラセミ体(DL体)であってもよい。これらのものは1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用しても良い。具体的には、L−乳酸、D−乳酸、DL乳酸、L−乳酸ナトリウム、L−乳酸ナトリウム、DL−乳酸カリウム、DL−乳酸カリウム、DL−乳酸アンモニウム等が挙げられる。溶状安定性を有するという観点でL−乳酸、DL−乳酸、L−乳酸アルカリ金属塩、DL−乳酸アルカリ金属塩が好ましく、DL−乳酸、DL−乳酸ナトリウム塩がより好ましい。
【0019】
本発明の(成分F)として使用される水は、一般に洗浄剤や化粧料に使用される程度の純度であれば、特に限定されない。具体的には、イオン交換水、井戸水、天然水、地下水、市水、硬水、軟水等が使用できる。これらのうち1種類を使用しても良いし、上記群から選ばれる2種以上を混合して使用しても構わない。本発明品の保存安定性や衛生面の観点からイオン交換水が好ましい。
【0020】
本発明のアミノ酸類高配合防腐水溶液のpHの下限値は、アミノ酸、特に酸性アミノ酸の結晶析出を引き起こさない程度であれば特に制限はないが、3.5が好ましく、4.0がより好ましく、4.3が更に好ましく、4.5が更に一層好ましく、4.8が特に好ましい。本発明のアミノ酸類高配合防腐水溶液のpHの上限値は、防腐効果を有していさえすれば特に制限はないが、特にAspergillus niger(クロコウジカビ)に対する効果を保持しているという観点で6.0が好ましく、5.8がより好ましく、5.6が更に好ましく、5.5が更に一層好ましく、5.4が特に好ましい。
【0021】
pHを調整する手法としては、特に制限は無いが、本願組成の酸性成分である(成分A)であるピロリドンカルボン酸、(成分C)である酸性アミノ酸、(成分E)である乳酸の配合量や組み合わせのみで当該pHを実現してもよく、別途クエン酸、酢酸、りんご酸、酒石酸、グリコール酸等の有機酸や塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸を配合することにより実現してもよい。優れた保湿効果を得ることができ、また、より高濃度のアミノ酸類高配合防腐水溶液を提供できるという観点で、本願組成の酸性成分である(成分A)であるピロリドンカルボン酸、(成分C)である酸性アミノ酸、(成分E)である乳酸の配合量や組み合わせのみで当該pHを実現する方が好ましい。
【0022】
本発明の(成分A)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)は30〜60重量%の範囲が好ましい。30重量%未満ではこのアミノ酸類高配合防腐水溶液を化粧品に配合したときに十分な保湿、染色毛の色落ち防止させる効果が得られない場合があり、60重量%を越える場合にはアミノ酸の析出をもたらす場合がある。(成分A)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)の下限値は、良好な保湿効果を維持しながらできるだけ高濃度のアミノ酸類高配合防腐水溶液を提供できるという観点で、31重量%がより好ましく、33重量%が更に好ましく、35重量%が更に一層好ましく、37重量%が特に好ましい。(成分A)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)の上限値は、良好な保湿効果を維持しながらできるだけ高濃度のアミノ酸類高配合防腐水溶液を提供できるという観点で、58重量%がより好ましく、55重量%が更に好ましく、53重量%が更に一層好ましく、50重量%が殊更好ましく、48重量%が取り分け好ましく、45重量%が特に好ましい。
【0023】
本発明の(成分B)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)は4〜25重量%の範囲が好ましい。4重量%未満ではこのアミノ酸類高配合防腐水溶液を化粧品に配合したときに十分な皮膚においてはコラーゲンの産生促進や血行促進効果、毛髪においては染色毛の色落ち防止を改善する効果が得られない場合があり、25重量%を越える場合にはpH調整に悪影響を与えpH範囲を逸脱させてしまう場合がある。(成分B)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)の下限値は、皮膚においてはコラーゲンの産生促進や血行促進効果、毛髪においては染色毛の色落ち防止を改善する効果を提供しつつ高濃度のアミノ酸類高配合防腐水溶液を提供できるという観点で、6重量%がより好ましく、8重量%が更に好ましく、10重量%が特に好ましい。(成分B)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)の上限値は、皮膚においてはコラーゲンの産生促進や血行促進効果、毛髪においては染色毛の色落ち防止を改善する効果を提供しつつ高濃度のアミノ酸類高配合防腐水溶液を提供できるという観点で、23重量%がより好ましく、20重量%が更に好ましく、19重量%が更に一層好ましく、18重量%が特に好ましい。
【0024】
本発明の(成分C)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)は5〜15重量%の範囲が好ましい。5重量%未満ではこのアミノ酸類高配合防腐水溶液を化粧品に配合したときに保湿効果を付与する効果が得られない場合があり、15重量%を越える場合には低温保存時に析出を生じる場合がある。(成分C)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)の下限値は、低温保存時に析出を生じることなく良好な保湿効果を提供できるという観点で、6重量%がより好ましく、7重量%が更に好ましく、8重量%が特に好ましい。(成分C)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)の上限値は、低温保存時に析出を生じることなく良好な保湿効果を提供できるという観点で、14重量%がより好ましく、13重量%が更に好ましく、12重量%が特に好ましい。
【0025】
本発明の(成分D)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)は5〜20重量%の範囲が好ましい。5重量%未満ではこのアミノ酸類高配合防腐水溶液を化粧品に配合したときにべたつき感を軽減させる効果が不足してしまう場合があり、20重量%を越える場合には他のアミノ酸を高配合する障害となりアミノ酸の析出をもたらす場合がある。(成分D)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)の下限値は、他のアミノ酸を高配合する障害となりアミノ酸の析出をもたらすことなくべたつき感を軽減させる効果を有するという観点で、6重量%がより好ましく、7重量%が更に好ましく、8重量%が更に一層好ましく、9重量%が殊更好ましく、10重量%が特に好ましい。(成分D)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)の上限値は、他のアミノ酸を高配合する障害となりアミノ酸の析出をもたらすことなくべたつき感を軽減させる効果を有するという観点で、19重量%がより好ましく、18重量%が更に好ましく、17重量%が更に一層好ましく、16重量%が殊更好ましく、15重量%が特に好ましい。
【0026】
本発明の(成分E)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)は5〜56重量%の範囲が好ましい。5重量%未満ではアミノ酸類高配合防腐水溶液を防腐させる効果が不足してしまう場合があり、56重量%を越える場合には他のアミノ酸を高配合する障害となりアミノ酸の析出をもたらす場合がある。(成分E)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)の下限値は、他のアミノ酸を高配合する障害となりアミノ酸の析出をもたらすことなく十分な防腐効果を有するという観点で、8重量%がより好ましく、10重量%が更に好ましく、13重量%が更に一層好ましく、15重量%が殊更好ましく、20重量%が特に好ましい。(成分E)重量/[(成分A)(成分B)(成分C)(成分D)(成分E)合計重量](重量%)の上限値は、他のアミノ酸を高配合する障害となりアミノ酸の析出をもたらすことなく十分な防腐効果を有するという観点で、50重量%がより好ましく、45重量%が更に好ましく、40重量%が更に一層好ましく、35重量%が殊更好ましく、30重量%が特に好ましい。
【0027】
本発明の[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量]/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)+(成分F)の合計重量](重量%)は、29〜65重量%の範囲が好ましい。29重量%未満ではアミノ酸それぞれの効果および防腐性能が不足している場合があり、65重量%を越える場合には配合しているアミノ酸の析出を生じやすい場合がある。[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量]/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)+(成分F)の合計重量](重量%)の下限値は、配合しているアミノ酸の析出を生じさせることなく、アミノ酸それぞれの効果および防腐性能を十分に有するという観点で、32重量%がより好ましく、34重量%が更に好ましく、36重量%が更に一層好ましく、38重量%が殊更好ましく、40重量%が特に好ましい。[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量]/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)+(成分F)の合計重量](重量%)の上限値は、配合しているアミノ酸の析出を生じさせることなく、アミノ酸それぞれの効果および防腐性能を十分に有するという観点で、63重量%がより好ましく、60重量%が更に好ましく、58重量%が更に一層好ましく、55重量%が殊更好ましく、52重量%が特に好ましい。
【0028】
本発明の[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)の合計重量]/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)+(成分F)合計重量](重量%)は、アミノ酸類高配合防腐水溶液中のアミノ酸類の総重量を意味するが、15〜60重量%が好ましい。15重量%未満では、化粧料にアミノ酸を配合する際にアミノ酸の効果が希薄になってしまう場合があり、60重量%を越える場合にはアミノ酸の析出を伴ってしまう場合がある。 [(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)の合計重量]/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)+(成分F)の合計重量](重量%)の下限値は、配合しているアミノ酸の析出を生じさせることなく、アミノ酸それぞれの効果および防腐性能を十分に有するという観点で、18重量%がより好ましく、20重量%が更に好ましく、23重量%が更に一層好ましく、28重量%が殊更好ましく、30重量%が特に好ましい。[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)の合計重量]/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)+(成分F)の合計重量](重量%)の上限値は、配合しているアミノ酸の析出を生じさせることなく、アミノ酸それぞれの効果および防腐性能を十分に有するという観点で、58重量%がより好ましく、55重量%が更に好ましく、53重量%が更に一層好ましく、50重量%が殊更好ましく、45重量%が特に好ましい。
【0029】
本発明の[(成分A)+(成分E)の合計重量]/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)+(成分F)の合計重量](重量%)は、25〜40重量%の範囲で使用される。25重量%未満ではアミノ酸類高配合防腐水溶液の比重が低下して防腐効果が不十分となる場合があり、40重量%を超える場合にはアミノ酸の溶解性に悪影響を与えアミノ酸の析出させてしまう場合がある。[(成分A)+(成分E)の合計重量]/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)+(成分F)合計重量](重量%)の下限値は、良好な防腐効果を維持しながらできるだけ高濃度のアミノ酸類高配合防腐水溶液を提供できるという観点で、26重量%がより好ましく、27重量%が更に好ましく、28重量%が更に一層好ましく、29重量%が殊更好ましく、30重量%が特に好ましい。[(成分A)+(成分E)の合計重量]/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)+(成分F)の合計重量](重量%)の上限値は、良好な防腐効果を維持しながらできるだけ高濃度のアミノ酸類高配合防腐水溶液を提供できるという観点で、39重量%がより好ましく、38重量%が更に好ましく、37重量%が更に一層好ましく、36重量%が殊更好ましく、35重量%が特に好ましい。
【0030】
本発明の(成分A)重量/[(成分A)+(成分E)の合計重量](重量%)は、防腐効果があって、アミノ酸の析出等に影響を与えない限り特に制限はなく、50〜95重量%の範囲が好ましい。5重量%未満では防腐効果、特にAspergillus niger(クロコウジカビ)に対する効果が不十分となる場合があり、また95重量%を越えた場合にも同様に防腐効果、特にAspergillus niger(クロコウジカビ)に対する効果が不十分となる場合がある。(成分A)重量/[(成分A)+(成分E)の合計重量](重量%)の下限値は、特にAspergillus niger(クロコウジカビ)に対する効果が有効であるという観点で、52重量%がより好ましく、54重量%が更に好ましく、56重量%が更に一層好ましく、60重量%が特に好ましい。(成分A)重量/[(成分A)+(成分E)の合計重量](重量%)の上限値は、特にAspergillus niger(クロコウジカビ)に対する効果が有効であるという観点で、90重量%がより好ましく、85重量%が更に好ましく、80重量%が更に一層好ましく、75重量%が殊更好ましく、70重量%が特に好ましい。
【0031】
本発明のアミノ酸類高配合防腐水溶液には、上記の成分に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で通常化粧品に使用される各種添加剤を添加することができる。添加剤は所望の特性に応じて当業者が適宜選択することが可能であり、その種類は特に限定されないが、透明水溶液としての性状を阻害しない水溶性の化合物が好ましく、また、化粧品原料としてその効果が最大限に活かされるために、添加剤の配合量合計はアミノ酸類高配合防腐水溶液全重量の5%以下であることが好ましい。添加剤としては例えば、有機塩、加水分解たんぱく、アルコール類、抽出物、水溶性ビタミン、酵素、抗炎症剤、抗酸化剤、キレート剤、色素、湿潤剤、保湿剤、界面活性剤、水溶性高分子等が挙げられる。
【0032】
本発明のアミノ酸類高配合防腐水溶液は、水で希釈して化粧料として使用することも、構成要素の一部として配合することにより化粧料を調製することもできる。例えば、化粧石鹸、洗顔料(クリーム・ぺースト状、液・ジェル状、エアゾール使用など)、シャンプーなどの清浄用化粧品、ヘアトリートメント剤(クリーム状、ミスト状、ジェル状その他の形態の物および枝毛コート剤を含む)、ヘアスタイリング剤(セットローション、カーラーローション、ポマード、チック、ヘアスプレー、ヘアミスト、ヘアリキッド、へアフォーム、ヘアジェル、ウォーターグリース)などの頭髪用化粧品、一般クリーム・乳液(クレンジングクリーム、コールドクリーム、バニシングクリーム、ハンドクリームなど)、ひげ剃り用クリーム(アフターシェービングクリーム、シェービングクリームなど)、化粧水(ハンドローション、一般化粧水など)、ひげ剃り用ローション(アフターシェービングローション、シェービングローションなど)、化粧油、パックなどの基礎化粧品、ファンデーション(クリーム状、液状など)、アイクリーム・アイシャドウマスカラなどのメークアップ化粧品、一般香水、練り香水、粉末香水などの香水類、日焼け・日焼け止めクリーム、日焼け・日焼け止めローションなどの日焼け・日焼け止め化粧品、爪クリーム・エナメル・エナメル除去液などの爪化粧品、アイライナー化粧品、口紅・リップクリームなどの口唇化粧品、歯磨きなどの口腔化粧品、バスソルトなどの浴用化粧品などが挙げられる。ピロリドンカルボン酸塩とアミノ酸による保湿効果、染色毛の色落ち防止効果が特に期待されるという観点で、清浄用化粧品、頭髪用化粧品、基礎化粧品が好ましく、頭髪用化粧品がより好ましく、ヘアトリートメント剤(クリーム状、ミスト状、オイル状、ジェル状その他の形態の物および枝毛コート剤を含む)、ヘアスタイリング剤(セットローション、カーラーローション、ポマード、チック、ヘアスプレー、ヘアミスト、ヘアリキッド、へアフォーム、ヘアジェル、ウォーターグリース)が更に好ましい。
【0033】
本発明のアミノ酸類高配合防腐水溶液を、構成要素の一部として配合することにより化粧料を調製する場合には、0.01〜20重量%程度配合しても良く、化粧料の種類によって適宜配合量を決定して良い。化粧料の硬さや粘度を著しく変化させることなくそれぞれのアミノ酸類の効果を充分に引き出しうるという観点で、0.02重量%〜15重量%が好ましく、0.03重量%〜10重量%がより好ましく、0.05重量%〜6重量%が特に好ましい。特にヘアシャンプーやヘアリンス、カラーリング剤、パーマ処理剤のような洗い流すタイプの毛髪化粧料として使用する場合は、0.1〜6重量%が好ましく、アウトバストリートメント、ヘアスタイリング剤、ブラッシングローションのような洗い流さないタイプの毛髪化粧料として使用する場合は、0.05〜3重量%が好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例により本発明は限定されるものではない。
【0035】
[評価方法]
以下、順次評価方法について説明する。
(保存効力試験)
第14改正日本薬局方第1追補15.保存効力試験法に基づいて試験を行った。判定は、同法記載のカテゴリーIA製剤(注射剤および点耳・点眼剤を含む非経口剤)の判定基準を参考にした。すなわち、細菌の生菌数は接種後14日の試験期間内に、接種した菌数に比べて0.1%以下に減少し、その後28日間の試験終了時まで、そのレベルと同等若しくはそれ以下の生菌数にとどまること、及び、真菌の生菌数は接種後14日と28日目まで、接種した菌数と同レベルと同等若しくはそれ以下の生菌数にとどまること、がその判定基準である。同法記載のカテゴリーIA製剤の判定基準を満たす場合は○、満たさない場合は×、同法記載のカテゴリーIA製剤の判定基準を上回る場合は◎とした。同法記載のカテゴリーIA製剤の判定基準を上回るとは、細菌に対しては、各細菌の生菌数が接種後7日の試験期間内に、接種した菌数に比べて0.1%以下に減少し、その後28日間の試験終了時まで、そのレベルと同等若しくはそれ以下の生菌数にとどまる場、真菌に対しては、その生菌数が、接種後28日目までに接種した菌数に比べて10%以下に減少する場合、である。
【0036】
(低温安定性)
容量50mLの透明ガラス瓶にアミノ酸類高配合防腐水溶液をいっぱいに入れ、蓋をして-5℃に静置した。一ヶ月後、保存庫から取り出してすぐの混合物の溶状を、以下の判定基準に基づき目視で判定した。
◎ -5℃1ヶ月保存で析出、分離、凍結がなく、溶状に変化が見られない。
○ -5℃1ヶ月保存で析出、分離、凍結のいずれかが観察されるが、25℃に1時間静置することにより無色透明の均一な溶液となる。
△ -5℃1ヶ月保存で析出、分離、凍結のいずれかが観察されるが、25℃で1時間撹拌することにより無色透明の均一な溶液となる。
× -5℃1ヶ月保存で析出、分離、凍結のいずれかが観察され、25℃で1時間以上撹拌しても均一な溶液にならない。
【0037】
(保湿効果)
下表1に示す組成のヘアリキッド処方2種を調製した。長さ約20cm、重さ約3gの毛束に各0.5mL塗布してくしでなじませながらドライヤーで乾燥させた。一時間後のしっとり感について
4:比較処方に比べて非常にしっとりする
3:比較処方に比べてややしっとりする
2:比較処方と同程度にしっとりする
1:比較処方の方がややしっとりする
0:比較処方の方が非常にしっとりする
という、5名のパネラーによる官能評価を行い、平均点が3.1以上の場合を◎、2.5〜3.0を○、2.0〜2.4を△、1.9以下を×とした。
(べたつき)
下表1に示すヘアリキッド処方を2種調製し、長さ約20cm、重さ約3gの毛束に各0.5mL塗布してくしでなじませながらドライヤーで乾燥させた。一時間後、比較処方に対する
試験処方のべたつき感について
4:比較処方に比べてはるかにべたつかない
3:比較処方に比べてややべたつかない
2:比較処方と同程度にべたつかない
1:比較処方の方がややべたつかない
0:比較処方の方がはるかにべたつかない
という、5名のパネラーによる官能評価を行い、平均点が3.1以上の場合を◎、2.5〜3.0を○、2.0〜2.4を△、1.9以下を×とした。
【表1】

(染色毛の色落ち防止)
長さ約10cm、重さ約1gのハイブリーチ毛(ライトブラウン)毛束を、市販の酸化染毛料(赤)で、使用説明書の指示に従って染色した。アミノ酸類高配合防腐水溶液を20倍希釈した液50mLに染色した毛束を30分浸漬し、水道水ですすいだ。乾燥後、市販のヘアシャンプーで3回洗浄した後の色を、以下の基準に従って評価した。別に、染毛後イオン交換水に30分浸漬した毛束を用意し、コントロール0=ヘアシャンプーなし、コントロール1=市販のヘアシャンプーで1回洗浄、コントロール2=市販のヘアシャンプーで2回洗浄、コントロール3=市販のヘアシャンプーで3回洗浄 の4つの対照品を用意した。
◎:コントロール0と同程度の色みである
○:コントロール1と同程度の色みである
△:コントロール2と同程度の色みである
×:コントロール3と同程度の色みである
【0038】
[実施例1〜9、比較例1〜8]
下表2に示す組成のアミノ酸類高配合防腐水溶液(実施例1〜9、比較例1〜8)を調製し、保存効力、低温安定性、保湿性、べたつき、色落ちについて試験を行った。なお、表記載の各配合成分の量(表中の数値)は、組成物全体を100としたときの重量分率(%)である。
【表2】

表2中、各成分を特定の割合とpHで配合した実施例1〜9は、すべての菌種に対し極めて高い防腐効果を示した。また、低温安定性、保湿性、べたつき、色落ち防止効果も優れていた。pHが特に低く4.5以下である実施例5、および(成分C)としてグルタミン酸を使用した実施例9は、やや低温安定性が劣る傾向があったが、その他の実施例は優れた低温安定性を示した。一方比較例1、2は、化粧品用途で一般に利用される防腐剤を、一般に使用される量配合してあるにも関わらず、一部の菌、特にAspergillus niger(クロコウジカビ)に対する防腐効果が不十分であった。保湿性とべたつきのなさは優れていたものの、染色毛の色落ち防止効果は不十分であった。
比較例3、比較例4は、処方のpHは本発明の範囲であるが、[(成分A)+(成分E)の合計重量]と(成分C)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量]が不足しており、Aspergillus niger(クロコウジカビ)に対する保存効力、および保湿効果が不十分であった。
比較例5、比較例6は、処方のpHが5.5より高く、いくつかの菌種に対する防腐効果が不十分であった。(成分A)、(成分E)をそれぞれ単独で配合した比較例7、8は、Aspergillus niger(クロコウジカビ)を中心に防腐効果が不十分であるうえ、保湿効果も低下する傾向があった。
【0039】
〔処方例1〕
下表3に示す組成のヘアシャンプー処方を調製した。
【表3】

【0040】
〔処方例2〕
下表4に示す組成のヘアシャンプー処方を調製した。
【表4】

【0041】
〔処方例3〕
下表5に示す組成のヘアコンディショナー処方を調製した。
【表5】

【0042】
〔処方例4〕
下表6に示す組成のヘアコンディショナー処方を調製した。
【表6】

【0043】
〔処方例5〕
下表7に示す組成のアウトバストリートメント処方を調製した。
【表7】

【0044】
〔処方例6〕
下表8に示す組成のヘアリキッド処方を調製した。
【表8】

【0045】
〔処方例7〕
下表9に示す組成の洗顔料処方を調製した。
【表9】

【0046】
〔処方例8〕
下表10に示す組成のシャワージェル処方を調製した。
【表10】

【0047】
〔処方例9〕
下表11に示す組成の洗顔ジェル処方を調製した。
【表11】

【0048】
〔処方例10〕
下表12に示す組成のスキンケアクリーム処方を調製した。
【表12】

【産業上の利用可能性】
【0049】
(成分A)ピロリドンカルボン酸及び/またはその塩と、(成分B)塩基性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分C)酸性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分D)中性アミノ酸及び/またはその塩を高配合した水溶液に、(成分E)乳酸及び/またはその塩と(成分F)水を、特定の配合比かつpHで含有させることにより、防腐性、特に真菌に対する保存効力、安全性に優れ、長期保存でも析出、着色、着臭などの問題がない、保存安定性に優れ、化粧料に配合することによって高い保湿効果を付与しながらべたつき感がなく、染色毛の色落ち防止といった効果を付与することが可能なアミノ酸類高配合防腐水溶液を提供できるようになった。更にこれを配合することにより、高い保湿効果を付与しながらべたつき感がなく、染色毛の色落ち防止といった効果を有する各種化粧料を提供できるようになったことは意義深い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)ピロリドンカルボン酸及び/またはその塩と、(成分B)塩基性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分C)酸性アミノ酸及び/またはその塩と、(成分D)中性アミノ酸及び/又はその塩と、(成分E)乳酸及び/またはその塩と(成分F)水とを含有し、[(成分A)+(成分E)の合計重量]/[(成分A))+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)+(成分F)の合計重量](重量%)が25〜40重量%であり、(成分A)重量/[(成分A)+(成分E)の合計重量](重量%)=5〜95重量%であり、pHが3.5〜6.0であることを特徴とする、アミノ酸類高配合防腐水溶液。
【請求項2】
(成分B)がアルギニン及び/またはその塩であり、(成分B)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)が4〜25重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のアミノ酸類高配合防腐水溶液。
【請求項3】
(成分C)がアスパラギン酸及び/またはその塩であり、(成分C)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)が5〜15重量%であることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載のアミノ酸類高配合防腐水溶液。
【請求項4】
(成分D)がグリシンおよび/又はその塩、アラニンおよび/又はその塩から選ばれる1種又は2種以上であり、(成分D)重量/[(成分A)+(成分B)+(成分C)+(成分D)+(成分E)の合計重量](重量%)が5〜20重量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のアミノ酸類高配合防腐水溶液。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のアミノ酸類高配合防腐水溶液を含有する化粧料。

【公開番号】特開2008−260733(P2008−260733A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106161(P2007−106161)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】