説明

アミンを含浸した有機金属骨格材料を用いた酸性ガスの分離方法

本発明は、少なくとも1種の酸性ガスを含むガス混合物から少なくとも1種の酸性ガスを分離する方法であって、前記ガス混合物を、前記少なくとも1種の酸性ガスを吸着し、少なくとも1種の金属イオンに配位する少なくとも1種の少なくとも二座の有機化合物を含む多孔質の有機金属骨格材料と接触させる工程を含み、且つ前記多孔質の有機金属骨格材料にはガス洗浄に好適なアミンが含浸されていることを特徴とする分離方法に関する。本発明はまたこのような含浸した有機金属骨格材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属骨格材料の存在下でガス混合物から少なくとも1種の酸性ガスを分離する方法、及びその骨格材料自体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス混合物から酸性ガスを分離することは公知の課題である。これは例えば、ガス混合物を、混合物中の不要な成分を取り除く液体に流通させることにより浄化効果がもたらされる吸収(absorption)によって行うことができる。この方法は一般にガス洗浄(gas scrub)と呼ばれている。好適な液体は同様に従来から知られている。酸性ガスの場合には、アミンがこれらと結合するため特に好適である。そのため、このアミンを使用して行う方法はアミン洗浄と称されている。
【0003】
二酸化炭素、硫黄酸化物又は窒素酸化物等の酸性ガスの液体中での吸収は別として、固体上で吸着することも可能である。この場合、例えば、ゼオライトや活性炭等が好適であることが見出されている。新しい種類の物質、すなわち有機金属骨格材料(metal-organic framework)は、特に注目を集めている。
【0004】
その二酸化炭素等のガスの吸着に対する適性も同様に知られている。特に二酸化炭素の除去については、有機金属骨格材料が文献に既に記載されており、アミンで官能化された配位子を有していてもよい。
【0005】
特許文献1(WO−A2008/061958)及び特許文献2(WO−A2008/129051)には、例えば、ガス混合物からCO2を分離することが記載されている。
【0006】
非特許文献1(G. Ferey, Chem. Soc. Rev., 2008, 37, 191);非特許文献2(B. Arstad, H. Fjellvag, K. O. Kongshaug, O. Swang, R. Blom, Adsorption, 2008, 14, 755)及び非特許文献3(P. L. Llewellyn, S. Bourrelly, C. Serre, Y. Filinchuk and G. Ferey, Angew. Chem., 2006, 118, 7915)も有機金属骨格材料に言及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO−A2008/061958
【特許文献2】WO−A2008/129051
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】G. Ferey, Chem. Soc. Rev., 2008, 37, 191
【非特許文献2】B. Arstad, H. Fjellvag, K. O. Kongshaug, O. Swang, R. Blom, Adsorption, 2008, 14, 755
【非特許文献3】P. L. Llewellyn, S. Bourrelly, C. Serre, Y. Filinchuk and G. Ferey, Angew. Chem., 2006, 118, 7915
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術で知られている方法にかかわらず、ガス混合物から酸性ガスを分離するための代替吸着剤を使用する代替法の必要性が依然として存在している。
【0010】
従って、本発明の目的は、そのような方法及び吸着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本目的は、少なくとも1種の酸性ガスを含むガス混合物から少なくとも1種の酸性ガスを分離する方法であって、
(a)前記ガス混合物を、前記少なくとも1種の酸性ガスを吸着し、少なくとも1種の金属イオンに配位する少なくとも1種の少なくとも二座の有機化合物を含む多孔質の有機金属骨格材料と接触させる工程を含み、且つ前記多孔質の有機金属骨格材料にはガス洗浄に好適なアミンが含浸されていることを特徴とする分離方法により達成される。
【0012】
本目的は、少なくとも1種の少なくとも二座の有機化合物を含む本発明に係る多孔質の有機金属骨格材料であって、該有機金属骨格材料にはガス洗浄に好適なアミンが含浸されていることを特徴とする多孔質の有機金属骨格材料によっても達成される。
【0013】
ガス混合物からの酸性ガスの分離が、特に比較的低い圧力において、ガス洗浄に好適なアミンを予め含浸した有機金属骨格材料を使用して行うことができることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0014】
酸性ガスは、好ましくは、二酸化炭素、硫黄酸化物(酸化硫黄)、窒素酸化物(酸化窒素)又は硫化水素である。複数の酸性ガスがガス混合物に存在していてもよい。特に、二酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物及び硫化水素の中から選択される複数のガスが存在していてよい。特に好ましくは、分離すべきガスは二酸化炭素である。
【0015】
ガス混合物として、少なくとも1種の酸性ガスを含むあらゆるガス混合物を使用することが原理的に可能である。ガス混合物は、好ましくは、石油ラフィネート(petroleum raffinate)、すなわち典型的に主成分として炭化水素を含むガス混合物である。ガス混合物はまた、燃焼排ガス(flue gas)、天然ガス、都市ガス又はバイオガスであってよい。このようなガス混合物の混合物を使用することも可能である。特に好ましくは、少なくとも1種の酸性ガスに加えて、メタン、エタン、n−ブタン、i−ブタン、水素、エテン、エチン、プロペン、窒素、酸素、ヘリウム、ネオン、アルゴン及びクリプトンからなるガスの群から選択されるガスのうち少なくとも1種を含むガス混合物が好ましい。
【0016】
燃焼排ガスから二酸化炭素を分離することは、1999年10月4〜6日、カナダのSaskatchenwan, saskatoonでの"Canadian Society of Chemical Engineers annual meeting"で発表されたDan G. Chapel, Carl L. Mariz, John Ernest, "Recovery of CO2 from Flue Gases: Commercial Trendsx"にも記載されている。
【0017】
本発明の方法において、また本発明の有機金属骨格材料にとって、従来技術において原理的に知られており、分離を行う前にガス洗浄に好適なアミンを含浸する有機金属骨格材料(framework:構造体、フレームワーク)を使用することができる。
【0018】
そのような有機金属骨格材料(MOF:metal-organic framework)は、例えば、US−A5648508、EP−A−0790253、M. O'Keeffe et al., J. sol. State Chem., 152 (2000), 3-20頁, H. Li et al., Nature 402, (1999), 276頁、M. Eddaoudi et al., Topics in Catalysis 9, (1999), 105-111頁, B. Chen et al., Science 291, (2001), 1021-1023頁、DE−A−10111230、DE−A102005053430、WO−A2007/054581、WO−A2005/049892及びWO−A2007/023134に記載されている。
【0019】
最近の文献に記載されているこれらの有機金属骨格材料の特定のグループは、有機金属化合物を特定的に選択するため、その骨格材料が無限には伸長せず、多面体の形成を伴う「有限の」骨格材料である。A. C. Sudik, et al., J. Am. Chem. Soc. 127 (2005), 7110-7118には、そのような特定の骨格材料が記載されている。これらは、区別のために有機金属多面体(MOP)と呼ばれている。
【0020】
多孔質の有機金属骨格材料の更なる特定のグループは、配位子としての有機化合物が、ピロール、アルファ(α)−ピリドン及びガンマ(γ)−ピリドンからなる群から選択される複素環のうち少なくとも1つから誘導され、少なくとも2つの環窒素(ring nitrogen)を有する単環、二環又は多環式環系である骨格材料から構成される。このような骨格材料の電気化学的製造については特許文献(WO−A2007/131955)に記載されている。
【0021】
ガス及び液体を取り除くための有機金属骨格材料の全般的な適性は、例えば、WO−A2005/003622及びEP−A1702925に記載されている。
【0022】
これらの特定のグループは本発明の目的に特に好適である。
【0023】
本発明の有機金属骨格材料は、細孔、特にミクロ細孔及び/又はメソ細孔を含んでいる。ミクロ細孔とは直径が2nm以下の細孔であり、メソ細孔とは直径が2〜50nmであり、それぞれ非特許文献(Pure & Applied Chem. 57 (1983), 603-619、特に606頁)の定義に基づくものである。ミクロ細孔及び/又はメソ細孔の存在は収着(sorption)測定により確認することができ、この測定は、DIN66131及び/又はDIN66134に従って、77ケルビンでの窒素についてのMOFの吸収容量を測定するものである。
【0024】
Langmuirモデル(DIN66131、66134)に従って計算される粉末形態のMOF(含浸前)の比表面積は、好ましくは、100m2/gを超え、より好ましくは300m2/gを超え、より好ましくは700m2/gを超え、更に好ましくは800m2/gを超え、更により好ましくは1000m2/gを超え、特に好ましくは1200m2/gを超える。
【0025】
有機金属骨格材料を含む成形体はより低い活性表面積を有するが、含浸していない状態で、好ましくは150m2/gを超え、より好ましくは300m2/gを超え、更に好ましくは700m2/gを超える。
【0026】
本発明の骨格材料の金属成分は、Ia、IIa、IIIa、IVa〜VIIIa及びIb〜VIb族から選択することが好ましい。Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ln、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ro、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb及びBi(但し、Lnはランタニドである。)が特に好ましい。
【0027】
ランタニドは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、En、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybである。
【0028】
これらの元素のイオンについては、特に、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Y3+、Ln3+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V4+、V3+、V2+、Nb3+、Ta3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Mn3+、Mn2+、Re3+、Re2+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Rh2+、Rh+、Ir2+、Ir+、Ni2+、Ni+、Pd2+、Pd+、Pt2+、Pt+、Cu2+、Cu+、Ag+、Au+、Zn2+、Cd2+、Hg2+、Al3+、Ga3+、In3+、Tl3+、Si4+、Si2+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Pb4+、Pb2+、As5+、As3+、As+、Sb5+、Sb3+、Sb+、Bi5+、Bi3+及びBi+が挙げられる。
【0029】
特に好ましくは、更に、Mg、Al、Y、Sc、Zr、Ti、V、Cr、Mo、Fe、Co、Cu、Ni、Mn、Zn、Lnである。一層好ましくは、Al、Mo、Y、Sc、Mg、Fe、Cu、Mn及びZnである。極めて特に好ましくはSc、Al、Cu、Mn及びZnである。
【0030】
「少なくとも二座の有機化合物」という表現は、所定の金属イオンとの少なくとも2つの配位結合、及び/又は、2つ以上、好ましくは2つの金属原子のそれぞれと1つの配位結合を形成することができる少なくとも1つの官能基を含む有機化合物のことをいう。
【0031】
上記配位結合を形成することができる官能基として、特に、例えば次の官能基:−CO2H、−CS2H、−NO2、−B(OH)2、−SO3H、−Si(OH)3、−Ge(OH)3、−Sn(OH)3、−Si(SH)4、−Ge(SH)4、−Sn(SH3)、−PO3H、−AsO3H、−AsO4H、−P(SH)3、−As(SH)3、−CH(RSH)2、−C(RSH)3、−CH(RNH22、−C(RNH23、−CH(ROH)2、−C(ROH)3、−CH(RCN)2、−C(RCN)3(但し、Rは、例えば、好ましくは、1、2、3、4又は5個の炭素原子を有するアルキレン基、例えばメチレン、エチレン、n−プロピレン、i−プロピレン、n−ブチレン、i−ブチレン、tert−ブチレン又はn−ペンチレン基、又は1又は2個の芳香族環を含むアリール基、例えば、必要により縮合していてよく、また、それぞれ互いに独立して少なくとも1つの置換基で適切に置換されていよく、また/あるいは、互いに独立して、N、O及び/又はS等の少なくとも1つのヘテロ原子をそれぞれ含んでいてよい2つのC6環が挙げられる。同様に好ましい実施の形態では、上述した基Rが存在していない官能基が挙げられる。この場合、とりわけ、−CH(SH)2、−C(SH)3、−CH(NH22、−C(NH23、−CH(OH)2、−C(OH)3、−CH(CN)2又は−C(CN)3が挙げられる。
【0032】
しかしながら、官能基は複素環のヘテロ原子であってもよい。この場合、特に窒素原子が挙げられる。
【0033】
少なくとも2つの官能基は原則としてあらゆる好適な有機化合物と結合していてよいが、それは、これらの官能基を有する有機化合物が配位結合を形成することができ且つ骨格材料を製造するのに好適であることが確かである場合である。
【0034】
少なくとも2つの官能基を含む有機化合物は、飽和若しくは不飽和の脂肪族化合物若しくは芳香族化合物又は脂肪芳香族化合物から誘導されることが好ましい。
【0035】
脂肪族化合物又は脂肪芳香族化合物の脂肪族部分は、直鎖状及び/又は分枝状及び/又は環式であってよく、化合物1つ当たり複数の環を有していてもよい。脂肪族化合物又は脂肪芳香族化合物の脂肪族部分は、1〜15個、より好ましくは1〜14個、より好ましくは1〜13個、より好ましくは1〜12個、より好ましくは1〜11個、極めて特に好ましくは1〜10個の炭素原子、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を含んでいることがより好ましい。極めて特に好ましくは、とりわけ、メタン、アダマンタン、アセチレン、エチレン又はブタジエンである。
【0036】
芳香族化合物又は芳香脂肪族化合物の芳香族部分は、1つ以上の環、例えば2、3、4または5個の環を有していてよく、その環は互いに離れて存在していてよく、また/あるいは少なくとも2つの環が縮合形態で存在していてもよい。芳香族化合物又は脂肪芳香族化合物の芳香族部分は、特に好ましくは、1、2又は3個の環を有しており、1又は2個の環が特に好ましい。更に、前記化合物の環のそれぞれは、独立して、少なくとも1つのヘテロ原子(N、O、S、B、P、Si、Al等)、好ましくはN、O及び/又はSを含んでいてよい。芳香族化合物又は芳香脂肪族化合物の芳香族部分は、より好ましくは1又は2つのC6環を含み、2つの環は互いに離れて存在しているか又は縮合状態で存在している。極めて特に好ましい芳香族化合物は、ベンゼン、ナフタレン及び/又はビフェニル及び/又はビピリジル及び/又はピリジルである。
【0037】
少なくとも二座の有機化合物は、より好ましくは、官能基として2、3又は4個のカルボキシル基だけを付加的に有する、1〜18個、好ましくは1〜10個、特に6個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族の非環式又は環式の炭化水素である。
【0038】
少なくとも1つの少なくとも二座の有機化合物は、ジカルボン酸、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸から誘導されることが好ましい。
【0039】
本発明において、用語「誘導される」とは、少なくとも1種の少なくとも二座の有機化合物が部分的又は完全に脱プロトン化状態で存在することを意味する。また、用語「誘導される」とは、少なくとも1種の少なくとも二座の有機化合物が更なる置換基を有していてもよいことを意味する。そのため、ジカルボン酸、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸は、カルボン酸官能だけでなく、1つの置換基又は複数の独立した置換基、例えばアミノ基、ヒドロキシル基、メトキシ基、ハロゲン基又はメチル基も有していてよい。更なる置換基はないこと又はアミノ基のみが存在していることが好ましい。本発明において、用語「誘導される」とはまた、カルボン酸官能が硫黄類似物として存在していてもよいことを意味する。硫黄類似物は−C(=O)SH又はその互変異性体及び−C(S)SHである。
【0040】
例えば、少なくとも二座の有機化合物は、例えば、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、1,4−ブタンジカルボン酸、1,4−ブテンジカルボン酸、4−オキソピラン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、1,8−ヘプタデカンジカルボン酸、1,9−ヘプタデカンジカルボン酸、ヘプタデカンジカルボン酸、アセチレンジカルボン酸、1,2−ベンゼンジカルボン酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、ピリジン−2,3−ジカルボン酸、1,3−ブタジエン−1,4−ジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸、p−ベンゼンジカルボン酸、イミダゾール−2,4−ジカルボン酸、2−メチルキノリン−3,4−ジカルボン酸、キノリン−2,4−ジカルボン酸、キノキサリン−2,3−ジカルボン酸、6−クロロキノキサリン−2,3−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸、キノリン−3,4−ジカルボン酸、7−クロロ−4−ヒドロキシキノリン−2,8−ジカルボン酸、ジイミドジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、2−メチルイミダゾール−4,5−ジカルボン酸、チオフェン−3,4−ジカルボン酸、2−イソプロピルイミダゾール−4,5−ジカルボン酸、テトラヒドロピラン−4,4−ジカルボン酸、ペリレン−3,9−ジカルボン酸、ペリレンジカルボン酸、プルリオール(Pluriol)E200−ジカルボン酸、3,6−ジオキサオクタンジカルボン酸、3,5−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、ペンタン−3,3−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノ−1,1’−ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ベンジジン−3,3’−ジカルボン酸、1,4−ビス(フェニルアミノ)ベンゼン−2,5−ジカルボン酸、1,1’−ジナフチルジカルボン酸、7−クロロ−8−メチルキノリン−2,3−ジカルボン酸、1−アリニノアントラキノン−2,4’−ジカルボン酸、ポリテトラヒドロフラン−250−ジカルボン酸、1,4−ビス(カルボキシメチル)ピペラジン−2,3−ジカルボン酸、7−クロロキノリン−3,8−ジカルボン酸、1−(4−カルボキシフェニル)−3−(4−クロロフェニル)ピラゾリン−4,5−ジカルボン酸、1,4,5,6,7,7−ヘキサクロロ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、1,3−ジベンジル−2−オキソイミダゾリジン−4,5−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレン−1,8−ジカルボン酸、2−ベンゾイルベンゼン−1,3−ジカルボン酸、1,3−ジベンジル−2−オキソイミダゾリジン−4,5−cis−ジカルボン酸、2,2’−ビキノリン−4,4’−ジカルボン酸、ピリジン−3,4−ジカルボン酸、3,6,9−トリオキサウンデカンジカルボン酸、ヒドロキシベンゾフェノンジカルボン酸、プルリオール(Pluriol)E300−ジカルボン酸、プルリオール(Pluriol)E400−ジカルボン酸、プルリオールE600−ジカルボン酸、ピラゾール−3,4−ジカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、5,6−ジメチル−2,3−ピラジンジカルボン酸、4,4’−ジアミノ(ジフェニルエーテル)ジイミドジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルメタンジイミドジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンジイミドジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,3−アダマンダンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、8−メトキシ−2,3−ナフタレンジカルボン酸、8−ニトロ−2,3−ナフタレンジカルボン酸、8−スルホ−2,3−ナフタレンジカルボン酸、アントラセン−2,3−ジカルボン酸、2’,3’−ジフェニル−p−テルフェニル−4,4’’−ジカルボン酸、(ジフェニルエーテル)−4,4’−ジカルボン酸、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、4(1H)−オキソチオクロメン−2,8−ジカルボン酸、5−tert−ブチル−1,3−ベンゼンジカルボン酸、7,8−キノリンジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、ヘキサトリアコンタンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、1,7−ヘプタンジカルボン酸、5−ヒドロキシ−1,3−ベンゼンジカルボン酸、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ブタンジカルボン酸、ピラジン−2,3−ジカルボン酸、フラン−2,5−ジカルボン酸、1−ノネン−6,9−ジカルボン酸、エイコセンジカルボン酸、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸、1−アミノ−4−メチル−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2,3−ジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、シクロヘキセン−2,3−ジカルボン酸、2,9−ジクロロフルオルビン−4,11−ジカルボン酸、7−クロロ−3−メチルキノリン−6,8−ジカルボン酸、2,4−ジクロロベンゾフェノン−2’,5’−ジカルボン酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、1−メチルピロール−3,4−ジカルボン酸、1−ベンジル−1H−ピロール−3,4−ジカルボン酸、アントラキノン−1,5−ジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2−ニトロベンゼン−1,4−ジカルボン酸、ヘプタン−1,7−ジカルボン酸、シクロブタン−1,1−ジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、5,6−デヒドロノルボルナン−2,3−ジカルボン酸、5−エチル−2,3−ピリジンジカルボン酸又はカンファージカルボン酸等の、ジカルボン酸から誘導される。
【0041】
少なくとも二座の有機化合物は、上記で例示したジカルボン酸の1つそれ自体であることがより好ましい。
【0042】
少なくとも二座の有機化合物は、例えば、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸、7−クロロ−2,3,8−キノリントリカルボン酸、1,2,3−、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、2−ホスホノ−1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸、4,5−ジヒドロ−4,5−ジオキソ−1H−ピロロ[2,3−f]キノリン−2,7,9−トリカルボン酸、5−アセチル−3−アミノ−6−メチルベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、3−アミノ−5−ベンゾイル−6−メチルベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸又はアウリントリカルボン酸、等のトリカルボン酸から誘導することができる。
【0043】
少なくとも二座の有機化合物は、上記で例示したトリカルボン酸の1つそれ自体であることがより好ましい。
【0044】
テトラカルボン酸から誘導される少なくとも二座の有機化合物の例は、
1,1−ジオキシドペリロ[1,12−BCD]チオフェン−3,4,9,10−テトラカルボン酸、ペリレンテトラカルボン酸、例えばペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸又はペリレン−1,12−スルホン−3,4,9,10−テトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸又はメソ−1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、デカン−2,4,6,8−テトラカルボン酸、1,4,7,10,13,16−ヘキサオキシシクロオクタデカン−2,3,11,12−テトラカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,11,12−ドデカンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ヘキサンテトラカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,9,10−デカンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸及びシクロペンタンテトラカルボン酸、例えばシクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸である。
【0045】
少なくとも二座の有機化合物は、上記で例示したテトラカルボン酸の1つそれ自体であることがより好ましい。
【0046】
配位結合が環ヘテロ原子を介して形成される場合の少なくとも二座の有機化合物としての好ましい複素環は、以下の置換又は非置換の環系である:
【0047】
【化1】

【0048】
極めて特に好ましくは、1、2、3、4又はそれ以上の環を有し、その環のそれぞれが少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてよく、2つ以上の環は同一又は異なるヘテロ原子を含んでいてもよい、任意に少なくとも一置換された芳香族ジカルボン酸、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸である。好ましくは、例えば、単環式ジカルボン酸、単環式トリカルボン酸、単環式テトラカルボン酸、二環式ジカルボン酸、二環式トリカルボン酸、二環式テトラカルボン酸、三環式ジカルボン酸、三環式トリカルボン酸、三環式テトラカルボン酸、四環式ジカルボン酸、四環式トリカルボン酸及び/又は四環式テトラカルボン酸である。好適なヘテロ原子は、例えば、N、O、S、B、Pであり、好ましいヘテロ原子はN、S及び/又はOである。この場合、有用な置換基は、とりわけ、−OH、ニトロ基、アミノ基又はアルキル若しくはアルコキシ基である。
【0049】
少なくとも二座の有機化合物として、特に好ましくは、2−メチルイミダゾレート等のイミダゾレート、アセチレンジカルボン酸(ADC)、カンファージカルボン酸(camphordicarboxylic acid)、フマル酸、コハク酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸(BDC)、アミノテレフタル酸、トリエチレンジアミン(TEDA)、ナフタレンジカルボン酸(NDC)、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等のビフェニルジカルボン酸(BPDC)、2,5−ピラジンジカルボン酸等のピラジンジカルボン酸、2,2’−ビピリジンジカルボン酸(2,2’−ビピリジン−5,5’−ジカルボン酸等)等のビピリジンジカルボン酸、1,2,3−、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸又は1,3,5−ベンゼントリカルボン酸等のベンゼントリカルボン酸(BTC)、ベンゼンテトラカルボン酸、アダマンタンテトラカルボン酸(ATC)、アダマンタンジベンゾエート(ADB)、ベンゼントリベンゾエート(BTB)、メタンテトラベンゾエート(MTB)、アダマンタンテトラベンゾエート又はジヒドロキシテレフタル酸、例えば2,5−ジヒドロキシテレフタル酸(DHBDC)、テトラヒドロピレン−2,7−ジカルボン酸(HPDC)、ビフェニルテトラカルボン酸(BPTC)、1,3−ビス(4−ピリジル)プロパン(BPP)である。
【0050】
極めて特に好ましくは、とりわけ、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、アミノBDC、TEDA、フマル酸、ビフェニルジカルボキシレート、1,5−及び2,6−ナフタレンジカルボン酸、tert−ブチルイソフタル酸、ジヒドロキシ安息香酸、BTB、HPDC、BPTC、BPPである。
【0051】
これらの少なくとも二座の有機化合物は別として、有機金属骨格材料は、ジカルボン酸、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸から誘導していない、1種以上の単座配位子及び/又は1種以上の少なくとも二座の配位子を更に含んでいてもよい。
【0052】
有機金属骨格材料を製造するのに好適な溶媒は、とりわけ、エタノール、ジメチルホルムアミド、トルエン、メタノール、クロロベンゼン、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水、過酸化水素、メチルアミン、水酸化ナトリウム溶液、N−メチルピロリドン、エーテル、アセトニトリル、塩化ベンジル、トリエチルアミン、エチレングリコール及びこれらの混合物である。MOFを製造するための、更なる金属イオン、少なくとも二座の化合物及び溶媒は、とりわけ、特許文献(US−A5648508)又は特許文献(DE−A10111230)に記載されている。
【0053】
含浸前の有機金属骨格材料の細孔径は、好適な配位子及び/又は少なくとも1種の二座の有機化合物の選択により制御することができる。一般に、有機化合物が大きくなるほど、細孔径が大きくなる。細孔径は結晶物質に基づいて好ましくは0.2nm〜30nm、特に好ましくは0.3nm〜3nmの範囲である。
【0054】
しかしながら、径分布が変わり得るより大きな細孔もまた含浸前の有機金属骨格材料を含む成形体内で生じる。しかしながら、全体の細孔容積の50%超、特に75%超が、1000nmまでの細孔径を有する細孔により形成されていることが好ましい。しかしながら、細孔容積の大部分が2つの径の範囲の細孔により構成されていることが好ましい。そのため、全体の細孔容積の25%超、特に全体の細孔容積の50%超が、100nm〜800nmの範囲の細孔径の細孔により形成され、全体の細孔容積の15%超、特に全体の細孔容積の25%超が、10nm以下の径の細孔により形成されていることが好ましい。細孔分布は水銀ポロシメトリーにより測定することができる。
【0055】
後の含浸に付すことができる有機金属骨格材料の例を以下に示す。骨格材料、金属及び少なくとも二座の配位子の表示に加えて、溶媒及びセルパラメータ(角度α、β及びγ並びに寸法A、B及びC(単位Å)を示している。後者はX線回折により測定した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
【表5】

【0061】
【表6】

【0062】
【表7】

【0063】
【表8】

【0064】
【表9】

【0065】
【表10】

【0066】
【表11】

【0067】
【表12】

【0068】
ADC アセチレンジカルボン酸
NDC ナフタレンジカルボン酸
BDC ベンゼンジカルボン酸
ATC アダマンタンテトラカルボン酸
BTC ベンゼントリカルボン酸
BTB ベンゼントリ安息香酸
MTB メタンテトラ安息香酸
ATB アダマンタンテトラ安息香酸
ADB アダマンタンジ安息香酸
【0069】
更なる有機金属骨格材料は、MOF−2〜4、MOF−9、MOF−31〜36、MOF−39、MOF69〜80、MOF−103〜106、MOF−122、MOF−125、MOF−150、MOF−177、MOF−178、MOF−235、MOF−236、MOF−500、MOF−501、MOF−502、MOF−505、IRMOF−1、IRMOF−61、IRMOP−13、IRMOP−51、MIL−17、MIL−45、MIL−47、MIL−53、MIL−59、MIL−60、MIL−61、MIL−63、MIL−68、MIL−79、MIL−80、MIL−83、MIL−85、CPL−1〜2、SZL−1であり、これらは文献に記載されている。
【0070】
特に好ましい有機金属骨格材料は、MIL−53、Zn−tBu−イソフタル酸、Al−BDC、MOF−5、MOF−177、MOF−505、IRMOF−8、IRMOF−11、Cu−BTC、Al−NDC、Al−アミノBDC、Cu−BDC−TEDA、Zn−BDC−TEDA、Al−BTC、Cu−BTC、Al−NDC、Mg−NDC、Al−フマレート、Zn−2−メチルイミダゾレート、Zn−2−アミノイミダゾレート、Cu−ビフェニルジカルボキシレート−TEDA、MOF−74、Cu−BPP、Sc−テレフタレートである。より一層好ましくは、Sc−テレフタレート、Al−BDC及びAl−BTCである。
【0071】
例えば、特許文献(US5648508)に記載されている従来のMOFの製造方法は別として、これらは電気化学的ルートで製造することもできる。これについては、特許文献(DE−A10355087)及び特許文献(WO−A2005/049892)に言及されている。この方法で製造された有機金属骨格材料は、化学物質、特にガスの吸着及び脱着の点で特に良好な性質を有する。
【0072】
製造方法にかかわらず、有機金属骨格材料は粉末又は結晶形態で得られる。これは、その吸着剤単独で又は他の吸着剤若しくは更なる物質と共に使用することができる。これは遊離(バラバラの)材料として作用することが好ましい。更に、有機金属骨格材料は成形体に変えてもよい。この場合の好ましい方法は押出成形又は打錠(タブレット化)である。成形体の製造において、バインダー、滑剤又は他の添加剤等の更なる物質を有機金属骨格材料に添加することができる。同様に、骨格材料及び他の吸着剤(例えば活性炭)の混合物を、成形体として製造すること、又はその後成形体混合物として使用される成形体を別々に形成することも可能である。
【0073】
考えられる成形体の幾何学的構造は原理的にはいかなる制約も受けない。例えば、考えられる形状は、とりわけ、ディスク状に成形されたペレット等のペレット、錠剤状、球状、細粒状、棒状の押出物、ハニカム状、格子状又は中空体である。
【0074】
有機金属骨格材料は成形体として存在していることが好ましい。好ましい実施の形態は、錠剤状及び棒状の押出物である。成形体は、空間の少なくとも1方向に0.2mm〜30mm、より好ましくは0.5mm〜5mm、特に1mm〜3mmの範囲で伸長することが好ましい。
【0075】
これらの成形体を製造するため、全ての好適な方法を採用することが原理的に可能である。特に以下の方法が好ましい:
−骨格材料を単独で又は少なくとも1種のバインダー及び/又は少なくとも1種のペースト化剤及び/又は少なくとも1種のテンプレート化合物と共に混練して混合物を得;得られた混合物を押出等の少なくとも1種の好適な方法で成形し;その押出成形物を任意に洗浄及び/又は乾燥及び/又は焼成し;任意に仕上げ処理を行う。
−骨格材料を少なくとも1種の必要により多孔質の担体(支持)材料に施す。次いで得られた材料を上述した方法で更に処理を行い、成形体を得る。
−骨格材料を少なくとも1種の必要により多孔質の基材に施す。
【0076】
混練及び成形は、例えば非特許文献(Ullmanns Enzyklopadie der Technischen Chemie, 4th edition, volume 2 p. 313 ff. (1972))に記載されているようなあらゆる好適な方法により行うことができ、この文献の関連する内容は、参照により本特許出願に十分に組み込まれる。
【0077】
例えば、混練及び/又は成形は、ピストンプレス、少なくとも1種のバインダーの存在下又は非存在下でのローラープレス、コンパウンディング、ペレット化、打錠、押出成形、共押出、発泡、スピニング、コーティング、造粒、好ましくはスプレー造粒、吹き付け(スプレー)、噴霧乾燥又はこれらの方法の2種以上を組み合わせて行うことができる。
【0078】
極めて特に好ましくはペレット及び/又は錠剤(タブレット)を製造することが好ましい。
【0079】
混練及び/又は成形は、昇温させた温度において、例えば室温〜300℃で、及び/又は加圧下において、例えば大気圧〜数100バールにおいて、及び/又は、保護ガス雰囲気において、例えば少なくとも1種の希ガス、窒素又はこれらの2種以上の混合物の存在下において、行うことができる。
【0080】
混練及び/又は成形は、更なる実施の形態では、少なくとも1種のバインダーを添加して行われ、使用するバインダーは基本的には、混練及び/又は成形すべき組成物の混練及び/又は成形にとって所望とする粘度を確保するあらゆる化学的化合物であってよい。したがって、バインダーは、本発明において、粘度を上昇させる化合物又は粘度を減少させる化合物であってよい。
【0081】
好ましいバインダーは、例えば、特にWO94/29408に記載されている酸化アルミニウム又は酸化アルミニウムを含むバインダー、例えばEP0592050A1に記載されている二酸化ケイ素、例えばWO94/13584に記載されている二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合物、例えばJP03−037156に記載されている粘土(クレー)鉱物、例えばモンモリロナイト、カオリン、ベントナイト、ハロサイト(hallosite)、ディッカイト(dickite)、ナクライト(nacrite)及びアナウキサイト(anauxite)、EP0102544B1に記載されているアルコキシシラン、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、又は例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリブトキシシラン等のトリアルコキシシラン、アルコキシチタネート、例えば、テトラメトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、テトラブトキシチタネート等のテトラアルコキシチタネート、又は例えば、トリメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、トリプロポキシチタネート、トリブトキシチタネート等のトリアルコキシチタネート、アルコキシジルコネート、例えば、テトラメトキシジルコネート、テトラエトキシジルコネート、テトラプロポキシジルコネート、テトラブトキシジルコネート等のテトラアルコキシジルコネート、又は例えば、トリメトキシジルコネート、トリエトキシジルコネート、トリプロポキシジルコネート、トリブトキシジルコネート等のトリアルコキシジルコネート、シリカゾル、両親媒性物質及び/又はグラファイトである。グラファイトが特に好ましい。
【0082】
粘度増大(増粘)化合物として、例えば、必要により上述の化合物に加えて、有機化合物及び/又は親水性ポリマー、例えばセルロース若しくはメチルセルロール等のセルロース誘導体及び/又はポリアクリレート及び/又はポリメタクリレート及び/又はポリビニルアルコール及び/又はポリビニルピロリドン及び/又はポリイソブテン及び/又はポリテトラヒドロフランも使用することができる。
【0083】
ペースト化剤として、とりわけ、好ましくは水又は1〜4個の炭素原子を有するモノアルコール等の少なくとも1種のアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール又は2−メチル−2−プロパノール又は水と列挙したアルコールのうち少なくとも1種の混合物、又はグリコール等の多価アルコール、好ましくは水混和性多価アルコールを、単独又は水及び/又は上述した一価のアルコールのうち少なくとも1種との混合物として使用することができる。
【0084】
混練及び/又は成形に使用することができる更なる添加剤は、とりわけ、アミン又はテトラアルキルアンモニウム化合物等のアミン誘導体又はアミノアルコール及びカーボネート含有化合物、例えば炭酸カルシウムである。このような更なる添加剤は、例えば、特許文献(EP0389041A1)、特許文献(EP0200260A1)又は特許文献(WO95/19222)に記載されている。
【0085】
成形及び混練の間のテンプレート化合物、バインダー、ペースト化剤、増粘物質等の添加剤の順序は原理的に重要ではない。
【0086】
更に好ましい実施の形態では、混練及び/又は成形により得られる成形体を、通常、25〜300℃、好ましくは50〜300℃、特に好ましくは100〜300℃の温度で行う少なくとも1回の乾燥工程に付す。同様に、減圧下又は保護ガス雰囲気下での乾燥又は噴霧乾燥による乾燥を行うこともできる。
【0087】
特に好ましい実施の形態では、添加剤として添加する化合物のうち少なくとも1つは、この乾燥過程の間に成形体から少なくともその一部が除去される。
【0088】
多孔質の有機金属骨格材料に含浸するため、骨格材料をガス洗浄に好適なアミンと接触させる。当然ながら、複数のアミンを使用することも可能である。ここでアミンは典型的には液状で存在し、多孔質の有機金属骨格材料によって取り込まれ、その後の乾燥工程は必須ではない。アミンを液状で骨格材料と接触させる場合、これは、純粋な状態で、種々のアミンの混合物として又は溶解した状態で、特に水溶液として行うことができる。溶液を使用する場合、複数のアミンが1種の溶液に存在していてもよい。同様に、複数の溶液を使用することもできる。しかしながら、アミンは気体状態で有機金属骨格材料と接触させることも可能である。
【0089】
有機金属骨格材料に対するアミンの割合は幅広くてよく、例えば、骨格材料1g当たりアミンが1〜1000mmol、典型的には骨格材料1g当たりアミンが1〜100mmol、通常は骨格材料1g当たりアミンが1〜25mmolの範囲である。
【0090】
多孔質の有機金属骨格材料にガス洗浄に好適なアミンを含浸した後、骨格材料の比表面積は典型的には著しくより小さくなる。このことは、吸収されたアミンが細孔の少なくとも一部を塞ぐことによるものと説明することができ、これによりより低い多孔性(多孔質度)が測定される。
【0091】
ガス洗浄に好適なアミンは従来技術で知られている。一般に、式R1N(R2)R3’で表わされるアミンが使用可能であり、R1、R2、R3が、それぞれ互いに独立して、水素又は1〜12個の炭素原子を有し且つ炭素鎖が1つ以上の−O−又はN(R4)基で分断されていてよい分枝又は非分枝のアルキル基であり、そのアルキル基は置換されていなくても1個以上のOH又はNH2基で置換されていてもよく、R4は水素又は1〜6個の炭素原子を有する分枝又は非分枝のアルキル基である(但し、少なくとも1つのR1、R2、R3は水素とは異なる)。
【0092】
1、R2はこれらが結合する窒素原子と共に、3〜7個の環原子を有し、必要により−O−及びN(R4)から選択される1個以上の別のヘテロ原子を有していてもよく、置換されていなくても1個以上のOH基又はNH2基で置換されていてもよい飽和脂肪族複素環(但し、R4は水素又は1〜6個の炭素原子を有する分枝又は非分枝のアルキル基である。)を任意に形成してもよい。
【0093】
1、R2、R3は、これらが結合する窒素原子と共に、7〜11個の環原子を有し、必要により、−O−及びN(R4)から選択される1個以上の別のヘテロ原子を有していてよく、置換されていなくても1個以上のOH又はNH2基で置換されていてもよい飽和脂肪族二環式複素環(但し、R4は水素又は1〜6個の炭素原子を有する分枝又は非分枝のアルキル基である)も任意に形成してもよい。
【0094】
そのため、アミンは、例えば、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン又はトリアルキルアミンであってよい。例えばジイソプロピルアミンである。また、例えば、アルキル鎖は、N(CH3)で分断(interrupted)されていてもよい。例えばジメチルアミノプロピルアミンである。また、アルキル基はヒドロキシル基で置換されていてもよい。例えば、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンである。更に、アルキル鎖は酸素で分断されていてよく、必要により、置換基としてヒドロキシル基を有していてもよい。例えばジグリコールアミンであってよい。更に、R1、R2は、必要により、NH等の更なる環ヘテロ原子を有してよい環を形成してもよい。例えばホモピペラジンである。R1、R2、R3は、二環式複素環を形成してもよい。例えばウロトロピンである。
【0095】
ガス洗浄に好適なアミンは、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロパノールアミン、ジグリコールアミン、3−ジメチルアミノプロピルアミン及びホモピペラジンからなる群から選択されるアミンであることが好ましい。ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロパノールアミン及びジグリコールアミンであることがより一層好ましい。特に好ましくはジグリコールアミンである。
【0096】
ガス混合物と、本発明に係る含浸された有機金属骨格材料とを接触させる工程は、公知の方法で行うことができる。
【0097】
接触は比較的低い絶対圧で行うことが好ましい。特に、少なくとも1種の酸性ガスの分圧は10バール以下の範囲、より好ましくは7.5バール未満、より好ましくは5バール未満、より好ましくは2.5バール未満、より好ましくは1バール未満、より好ましくは10〜500ミリバール、特に25〜250ミリバールであることが好ましい。
【0098】
接触の間の温度は、0〜50℃、より好ましくは25〜50℃であることが好ましい。
【実施例】
【0099】
実施例1 Al−2,6−NDC有機金属骨格材料の製造
特許文献(WO−A2008/052916)の実施例1と同様の方法で、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の存在下で塩化アルミニウム六水和物及び2,6−ナフタレンジカルボン酸からAl−2,6−NDC有機金属骨格材料を製造した。Langmuir法により測定して得られた比表面積は2018m2/gであった。
【0100】
実施例2 アミノジグリコールの含浸
実施例1で得られた骨格材料0.562gを、少しずつ加えた1.107gのアミノジグリコール(2−(2−アミノエトキシ)エタノール)とプラスチックバッグ内で混合し、震盪した。Langmuir法により測定して得られた比表面積は3m2/gであった。
【0101】
実施例3 3−(ジメチルアミノ)プロピルアミンの含浸
実施例1で得られた骨格材料0.519gを、少しずつ加えた0.830gのジメチルアミノプロピルアミンとプラスチックバッグ内で混合し、震盪した。Langmuir法により測定して得られた比表面積は8m2/gであった。
【0102】
実施例4 ホモピペラジンの含浸
80℃で一晩加熱した実施例1で得られた骨格材料0.731gをプラスチックバッグ内に仕込んだ。60℃で溶融させた1.173gのホモピペラジンを滴下して添加した。次いで混合物を浸透した。
【0103】
実施例5 含浸した骨格材料での二酸化炭素の吸着
実施例1の骨格材料及び実施例2の含浸した有機金属骨格材料を、CO2パルス化学吸着(pulse chemisorption)を用いた温度プログラム化脱着(TPD:temperature-programmed desorption)に付した。
【0104】
ここで、骨格材料のサンプルをまず30〜100℃の温度勾配(5℃/min、30min)でヘリウム下(50cm3/min)で前処理を行った。次に、複数の100%CO2パルス(1パルスは160μmolのCO2を含む)を40℃で与えた。
【0105】
本発明に係る含浸した有機金属骨格材料の場合には、飽和が生じる前の4パルスまでは吸着されたCO2が増加した。その飽和値は、骨格材料1g当たり蓄積吸着したCO2が3250μgである。対照的に、含浸していない骨格材料は実質的に吸着を示さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の酸性ガスを含むガス混合物から少なくとも1種の酸性ガスを分離する方法であって、
(a)前記ガス混合物を、前記少なくとも1種の酸性ガスを吸着し、少なくとも1種の金属イオンに配位する少なくとも1種の少なくとも二座の有機化合物を含む多孔質の有機金属骨格材料と接触させる工程を含み、且つ前記多孔質の有機金属骨格材料にはガス洗浄に好適なアミンが含浸されており、そのアミンの割合が骨格材料1g当たり1〜100mmolであることを特徴とする分離方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種の酸性ガスが、二酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物及び硫化水素からなるガスの群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガス混合物が、石油ラフィネート、天然ガス、都市ガス、バイオガス、燃焼排ガス又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の金属イオンが、Mg、Al、Y、Sc、Zr、Ti、V、Cr、Mo、Fe、Co、Cu、Ni、Mn、Zn及びランタニドからなる金属の群から選択される請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の少なくとも二座の有機化合物が、ジカルボン酸、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸から誘導される請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ガス洗浄に好適なアミンが、式R1N(R2)R3[但し、
1、R2、R3は、それぞれ互いに独立して、水素又は1〜12個の炭素原子を有し且つ炭素鎖が1つ以上の−O−又はN(R4)基で分断されていてよい分枝若しくは非分枝のアルキル基であり、該アルキル基は、置換されていなくても1個以上のOH基又はNH2基で置換されていてもよく、R4は水素又は1〜6個の炭素原子を有する分枝若しくは非分枝のアルキル基であり(但し、少なくとも1つのR1、R2、R3は水素とは異なる。);
1、R2はこれらと結合する窒素原子と共に、3〜7個の環原子を有し、必要により−O−及びN(R4)から選択される1個以上の別のヘテロ原子を有していてよく、置換されていなくても1個以上のOH又はNH2基で置換されていてもよい飽和脂肪族複素環(但し、R4は水素又は1〜6個の炭素原子を有する分枝若しくは非分枝のアルキル基である。)を任意に形成してよく;
1、R2、R3はこれらが結合する窒素原子と共に、7〜11個の環原子を有し、必要により−O−及びN(R4)から選択される1個以上の別のヘテロ原子を有していてよく、置換されていなくても1個以上のOH又はNH2基で置換されていてもよい飽和脂肪族二環式複素環(但し、R4は水素又は1〜6個の炭素原子を有する分枝又は非分枝のアルキル基である。)を任意に形成してもよい。]
で表わされるアミンである請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ガス洗浄に好適なアミンが、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロパノールアミン、ジグリコールアミン、3−ジメチルアミノプロピルアミン及びホモピペラジンからなる群から選択される請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
接触を0℃〜50℃の範囲の温度で行う請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種の酸性ガスの分圧が10バール以下である請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1種の金属イオンに配位する少なくとも1種の少なくとも二座の有機化合物を含む、請求項1〜9の何れか1項に記載の多孔質の有機金属骨格材料であって、
前記多孔質の有機金属骨格材料にはガス洗浄に好適なアミンが含浸されており、そのアミンの割合が骨格材料1g当たり1〜100mmolであることを特徴とする有機金属骨格材料。

【公表番号】特表2012−520756(P2012−520756A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500254(P2012−500254)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053530
【国際公開番号】WO2010/106133
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】