説明

アモルファス吸着剤、それを得るための方法、及び油脂及び/又は油の漂白におけるその使用

本発明は、吸着剤、特に漂白土を作製する方法に関し、ここで、180乃至300m/gの表面積を有し;0.5乃至0.7ml/lの全細孔容積を有し;ここで、全細孔容積の少なくとも60%が、少なくとも140Åの細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の少なくとも40%が、250Å未満の細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の少なくとも15%が、140乃至250Åの細孔径を持つ細孔によって提供され;XRDデータに基づいてアモルファス構造を有するクレイ物質が、活性化手順によって活性化される。さらに、本発明は、その方法によって得られた吸着剤、及び油、油脂、及びバイオ燃料の精製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤、特に漂白土の作製方法、該方法によって得られた吸着剤、並びに油脂及び/又は油の漂白方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食用及び非食用の油並びに油脂の工業的生産では、いわゆる漂白土を用いて、粗油及び粗油脂から着色顔料並びに無色顔料が除去される。この吸着精製プロセスにより、油及び油脂の味、色、及び安定性までも、大きく改善することができる。精製には、様々な種類の漂白土を用いることができる。第一のグループを形成するのは、いわゆる高性能漂白土(high performance bleaching earth)(HPBE)である。HPBEは、ベントナイトクレイを沸点に近い温度の強鉱酸で浸出させることによって作製される。高性能漂白土を得るには、通常、出発物質である乾燥クレイ物質に対して約60乃至90重量%の濃縮酸が用いられる。浸出工程の間、アルミニウムイオンが他の金属イオンと共にクレイ構造から除去され、酸に溶解する。浸出後、活性化の間に形成された塩及び酸は、生成物であるクレイからろ過によって分離しなければならず、残留酸は、十分な水洗によってクレイから除去しなければならない。クレイ内に残留酸が多い場合、漂白処理した油の品質が損なわれる。残留酸が多いと、油中の脂肪酸トリグリセリドから望ましくない遊離の脂肪酸が生成される。クレイを酸による浸出工程に掛ける間、クレイから浸出されたイオンの塩、並びに残留酸を含有する廃液が生成される。このような廃液は、中和による析出工程に掛けなければならず、又は、例えば下水処理等のさらなるプロセスに用いてもよい。
【0003】
国際公開第2004/105936号パンフレットは、HPBEの製造において得られる酸懸濁液の再処理の方法を開示している。懸濁液をアルカリシリケート溶液と混合し、混合物を4より高いpHに調節する。形成された析出物を液相から分離し、任意に洗浄し、乾燥して粉砕する。この析出物は、約79.5重量%のSiO及び約6.1重量%のAlを含む。細孔容積は約0.685ml/gであり、表面積は約370m/gである。
【0004】
漂白土のさらなるグループは、基本的に乾燥させるだけで活性化される天然クレイである。このような天然活性漂白土(naturally active bleaching earth)(NABE)は、数百年前から用いられている。これは比較的低コストで作製することができるが、漂白活性が比較的低いという欠点を有する。従って、HPBEと比較して、使用しなければならない漂白土の量が多く、従って、使用した漂白土の中に残留する油のロスが多くなることを許容しなければならない。漂白活性を有する天然クレイは、鉱物のアタパルジャイト又はセピオライトが豊富で、これらは、パリゴルスカイトクレイとしても分類される。
【0005】
漂白土の第三のグループは、少量の酸を天然活性漂白土上に付着させることによって得られる、いわゆる表面改質漂白土(SMBE)である。クレイの活性化は、酸の溶液をクレイ上にスプレーし、続いて乾燥させるか、又はクレイを、例えばクエン酸等の固体酸と共に粉砕することによって実施することができる。酸をクレイ上へ付着させることにより、「in‐situ活性化」が達成される。活性化の後にクレイを水洗する必要がなく、従って、SMBEは適度なコストで作製することができる。SMBEの漂白活性は、NABEのそれよりも高いが、通常はHPBEの活性までは達しない。SMBEは、アタパルジャイト又はホルマイト(hormite)を含有するクレイから作製される。このようなクレイは、比表面積が約100乃至180m/gと非常に高く、全細孔容積は約0.2乃至0.35ml/gである。しかし、酸による活性化の間、クレイ表面に形成される塩、並びに残留酸がクレイ生成物上に残留し、そして、クレイの細孔内に付着することで出発物質のクレイと比較して細孔容積及び表面積が減少する場合がある。
【0006】
米国特許第5,008,226号明細書は、カルシウムベントナイトとアタパルジャイトクレイとの特定の天然の混合物から、酸活性化漂白土を作製するプロセスを開示している。このプロセスは、そのようなクレイを低濃度の活性化用の酸で処理する工程を含み、酸は、乾燥・粉砕クレイと混合されるか、又はクレイ‐酸混合物を含有するスラリーからスプレードライされる。このクレイの細孔容積は約0.25乃至0.50ml/g、比表面積は約100乃至150m/gである。出発物質クレイとして用いられる鉱物は、71乃至75重量%のSiO及び11乃至16重量%のAlを含む。アタパルジャイト/ベントナイト鉱物が、約25乃至100℃の温度にて、約1乃至10重量%の酸で処理される。酸で活性化された生成物は、中間の洗浄工程の必要がなく、乾燥後すぐに使用することができる。
【0007】
米国特許第5,869,415号明細書は、イオン交換容量(IEC)が少なくとも25meq/100gである層状シリケートを、酸で処理することによって活性化させるプロセスを開示している。層状シリケートは、80℃以下の温度にて、約1乃至10重量%(乾燥層状シリケートに対して)の酸によって活性化される。活性化された層状シリケートは、約200乃至400℃の温度で焼成し、所望する場合は、粉砕する。層状シリケートの比表面積は約130乃至170m/g、細孔容積は約0.27乃至0.35ml/g、及びイオン交換容量は38乃至68meq/100gである。
【0008】
国際公開第99/02256号パンフレットは、漂白土の製造方法を開示しており、ここで、水分量が約45重量%以下のクレイを酸の水溶液で処理することで、クレイの乾燥重量に対して約1乃至5重量%の範囲の酸含有量である酸性化クレイが提供される。このクレイを、平均粒子サイズが約25乃至45μmの範囲となるまで粉砕し、次に、水分量が約13重量%以下となるまで乾燥させる。出発物質としては、パリゴルスカイト‐スメクタイトクレイが用いられる。
【0009】
従来から、酸活性化漂白土の製造には、層状シリケート、特にスメクタイト及びパリゴルスカイトが用いられてきた。これらのクレイの比表面積は約100乃至180m/g、細孔容積は0.25乃至0.50ml/g、及びイオン交換容量は約40乃至70meq/100gである。最近、アモルファス構造を有し、従ってスメクタイトともパリゴルスカイトとも称することができないクレイ物質が、油及び油脂の漂白に適すると報告された。このような物質は、表面積及び細孔容積が大きく、SiOに富んでいる。これらのクレイ状物質は、天然に見ることができる。これらは、従来から漂白土として、又は酸活性化漂白土の製造に用いられてきたクレイと比較して、全く異なる構造を有する。
【0010】
国際公開第2006/131136号パンフレットは、比表面積が200m/g超、イオン交換容量が40meq/100g超;及び、窒素による細孔分布測定で測定された細孔容積が0.5ml/g超であるクレイ物質を含有する吸着剤を開示しており、ここで、細孔容積の少なくとも40%が、少なくとも14nmの細孔径を有する細孔によって提供され、細孔容積の多くとも25%が、7.5nm未満の細孔径を有する細孔によって提供される。このクレイ物質は、そのXRDデータに基づいてアモルファスであり、大量のSiOを含むため、クレイ物質が、アモルファスSiOから形成されるネットワークを含み、その中にクレイの小板(platelet)が配置されていると思われる。漂白土は、例えばパーム油等、リン脂質含量の低い油の漂白に特に適している。
【0011】
この新しい種類の漂白土は、例えば、酸の水溶液をクレイ物質上にスプレーする等による酸を用いる表面処理によってさらに活性化することができる高い漂白活性を有するという利点を提供する。その高い漂白活性のため、精製すべき油に少量の漂白土を添加するだけで、所望の精製度合いが得られる。高い漂白効率に加えて、大スケールの用途に適する漂白土は、ろ過効率及び油保持効率も高くあるべきである。高いろ過効率は、漂白後の油のろ過を適度な時間で可能とするために重要である。高い油保持効率は、使用した漂白土の中に残留する油のロスを最小限に抑えるために重要である。最適な漂白土を得るには、この三つの必須条件すべてを満たさなければならない。漂白活性効率、ろ過効率、及び油保持効率を組み合わせて全効率とし、漂白土の評価を可能とすることができる。大スケールでの油の漂白に適する漂白土は、従って、高い全効率を提供するべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2004/105936号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,008,226号明細書
【特許文献3】米国特許第5,869,415号明細書
【特許文献4】国際公開第99/02256号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2006/131136号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、高い全効率を有する漂白土を得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。好ましい態様は、従属請求項に定める。
【発明の効果】
【0015】
驚くべきことに、出発物質を注意深く選択することにより、高い漂白活性、高いろ過効率、及び高い油保持効率を有し、従って、全効率の高い漂白土を作製することができることが明らかとなった。本発明に従う漂白土を少量使用して、粗油の所望する精製を、短い時間、及び少ないロスで達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
全効率の算出を可能とするためには、漂白活性効率、ろ過効率、及び油保持効率に重み付けをしなければならない。漂白活性効率は、少量の漂白土での迅速な漂白を可能とするために、漂白土の使用にとって最も重要である。漂白活性効率は、油の漂白及び脱臭の後に赤色強度を測定することによって得ることができる。漂白活性効率を得るための方法の詳細は、本明細書の実験項に記載されている。漂白活性効率は、全効率の60%を占める。
【0017】
ろ過速度効率は、所定の量の所定の油を、定められたフィルターパッケージを通過させるのに必要な時間を測定することによって決定される。ろ過速度45秒を、ろ過速度効率100%と定める。ろ過速度効率は、全効率の20%を占める。
【0018】
油保持効率は、使用後の漂白土に残留する油の量を測定することによって決定される。油保持率35重量%を効率100%とみなす。油保持効率は、全効率の20%を占める。ろ過速度効率及び油保持効率を決定する方法は、本願の実験項で述べる。
【0019】
本発明に従う方法で得られた吸着剤は、細孔径が250Å(オングストローム)未満の微細孔を数多く有し、このことによって、例えばクロロフィル等の着色不純物の吸着の効率が良いと発明者らは考える。吸着剤は、さらに、細孔径が>800Åである細孔も少量有し、細孔径が>800Åの細孔が形成するのは、全細孔容積の15%未満である。このような大きな細孔は油を吸着するが、この吸着剤が有する大きな細孔は少量であることから、油の保持率は低い。大きな細孔の量が少ないことによるさらなる効果としては、優れたろ過効率であると発明者らはさらに推定する。大きな細孔が、吸着剤によって形成されたフィルターを通過する粗油によって「ブロック」され、従って、それによってろ過速度の低下が引き起こされると考えられる。大きな細孔の量が少ないことにより、本発明に従う方法によって得られた吸着剤は、従って、優れたろ過速度を有する。まとめると、定められた細孔径を有する細孔に形成される細孔容積の比率を注意深く選択することにより、全効率の高い吸着剤を得ることができる。
【0020】
従って、本発明の第一の局面によると、吸着剤、特に漂白土を作製する方法を提供し、ここで、クレイ物質は:
180乃至300m/gの表面積を有し:
0.5乃至0.7ml/lの全細孔容積を有し;
ここで、全細孔容積の少なくとも60%が、少なくとも140Åの細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の少なくとも40%が、250Å未満の細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の少なくとも15%が、140乃至250Åの細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の20%未満が、>800Åの細孔径を持つ細孔によって形成され;
該クレイ物質は、XRDデータに基づいてアモルファス構造を有し;
活性化手順によって活性化される。
【0021】
本発明に従う方法において出発物質として用いられるクレイ物質は、合成物質であってよい。しかし、好ましくは、天然源から提供されるクレイ物質が用いられる。漂白土の製造に従来まで使用されていた鉱物、層状シリケートとは逆に、X線回折パターンにおいてシャープな反射を示さないアモルファス物質が使用される。クレイ物質は、比表面積が高く、全細孔容積が大きくなければならない。発明者らは、サイズの異なる細孔内での細孔容積の分布が、高い漂白活性にとって極めて重要であると考える。特に、酸で活性化された場合、特定のサイズの細孔の一部に少量の酸が残留し、従って、脂肪酸グリセリドの開裂を引き起こすことなく漂白活性が高まると考えられる。
【0022】
クレイ物質は、好ましくは、60重量%超の大量のSiOを含み、特に好ましくは、65重量%超であり、最も好ましくは、70重量%超である。態様によると、クレイ物質は、75重量%未満のSiOを含む。従って、クレイ物質は、アモルファスSiOから作られるネットワークマトリックスを含み、その中に小クレイ粒子が入り込み、従って、それによって高い漂白活性を提供することができると考えられる。
【0023】
上述のように、発明者らは、クレイ物質がマトリックス状のSiOのネットワークを含み、その中へクレイの小板が導入されるものと考える。従って、クレイ物質は、クレイ粒子の成分を形成するアルミニウム含量が低いことが好ましい。好ましくは、クレイ物質が含有するアルミニウムの量は、Alとして算出して、15重量%未満であり、より好ましくは12重量%未満であり、特に好ましくは11重量%未満であり、最も好ましくは10重量%未満である。クレイ物質が含有するアルミニウムの量は、Alとして算出して、好ましくは2重量%超であり、より好ましくは4重量%超であり、特に好ましくは6重量%超であり、最も好ましくは8重量%超である。
【0024】
さらに、クレイ物質が含有するカルシウムの量は、CaOとして算出して、好ましくは5重量%未満であり、より好ましくは4重量%未満であり、特に好ましくは3重量%未満である。
【0025】
さらなる態様によると、クレイ物質が含有するマグネシウムの量は、MgOとして算出して、好ましくは5重量%未満であり、より好ましくは4重量%未満であり、特に好ましくは3重量%未満である。
【0026】
さらなる態様によると、クレイ物質が含有する鉄の量は、Feとして算出して、好ましくは5重量%未満であり、より好ましくは4重量%未満であり、特に好ましくは3重量%未満である。
【0027】
クレイ物質は、BET法で測定された180乃至300m/gという高い比表面積を有し、好ましくは185乃至250m/gであり、特に好ましくは190乃至230m/gである。
【0028】
クレイ物質は、さらに、0.5乃至0.7ml/lと全細孔容積が大きいことを特徴とし、好ましくは0.55乃至0.65ml/lである。全細孔容積が大きいことにより、油がクレイ小粒子へ素早く到達することができ、従って、粗油の効率的な漂白を可能とすると考えられる。
【0029】
高い漂白活性を、特に活性化された状態で得るためには、全細孔容積の少なくとも60%、好ましくは65乃至70%が、少なくとも140Åの細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは55乃至60%が、250Å未満の細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、特に好ましくは21乃至25%が、140乃至250Åの細孔径を持つ細孔によって提供されることが重要である。全細孔容積の20%未満、好ましくは15%未満、特に好ましくは10乃至14%が、>800Åの細孔径を持つ細孔によって形成される。
【0030】
好ましい態様によると、クレイ物質の全細孔容積の少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、特に好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは33乃至40%が、140Å未満の細孔径を持つ細孔によって提供される。
【0031】
さらなる態様によると、クレイ物質の全細孔容積の好ましくは少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも13%、最も好ましくは15乃至20%が、75乃至140Åの細孔径を持つ細孔によって提供される。
【0032】
さらなる態様によると、クレイ物質の全細孔容積の好ましくは40%未満、特に好ましくは35%未満、最も好ましくは25乃至33%が、250乃至800Åの細孔径を持つ細孔によって形成される。
【0033】
なおさらなる態様によると、クレイ物質の全細孔容積の好ましくは少なくとも12%、特に好ましくは少なくとも14%、最も好ましくは15乃至20%が、75Å未満の細孔径を持つ細孔によって提供される。
【0034】
さらなる好ましい態様によると、クレイ物質の全細孔容積の80%未満、好ましくは75%未満、特に好ましくは60乃至70%が、140Å超の細孔径を持つ細孔によって形成される。
【0035】
さらなる好ましい態様では、全細孔容積の60%未満、好ましくは50%未満、特に好ましくは40乃至45%が、少なくとも250Åの細孔径を持つ細孔によって形成される。
【0036】
細孔径に対する全細孔容積の好ましい範囲を以下の表にまとめる。
【0037】
【表1】

【0038】
本発明に従う方法に用いられるクレイ物質は、水中に堆積させてもほとんど膨潤しないことが好ましい。このため、漂白手順の後、クレイ物質を油から容易に分離することができる。水中での沈降容積は、好ましくは10ml/2g未満であり、特に好ましくは8ml/2g未満である。水中での沈降容積は、好ましくは少なくとも2ml/2gであり、より好ましくは少なくとも3ml/2gであり、特に好ましくは少なくとも4ml/2gである。
【0039】
クレイ物質は、特に天然源から採掘された場合、カチオン交換容量が40meq/100g超であることが好ましく、特に好ましくは45meq/100g超であり、最も好ましくは44乃至70meq/100gの範囲内から選択される。クレイ物質を沸騰強酸で抽出することによって得られる高活性漂白土は、通常は40meq/100g未満、ほとんどの場合は30meq/100g未満という非常に低いカチオン交換容量を持つことを特徴とする。本発明に従う方法で用いられるクレイ物質は、従って、そのような高性能漂白土と明らかに区別することができる。
【0040】
本発明に従う方法で用いられるクレイ物質は、XRDデータに基づくアモルファス構造を有する。本発明の方法で用いられるクレイ物質のXRD回折図では、ノイズを超える反射はほとんど見られない。このクレイ物質、特にスメクタイト相(smectite phase)に関する反射のシグナルノイズ比は、本発明の態様によれば、1に近く、さらなる態様によれば、1乃至1.2の範囲内であり得る。しかし、例えば石英等のクレイ物質の不純物に由来するシャープな反射が回折図内に見られる場合もある。そのような反射は、シグナル/ノイズ比の測定において考慮されない。
【0041】
本発明の方法では、ベントナイト粒子の結晶構造内の層間距離を表す001反射を示さないか、又はほとんど示さないクレイ物質を用いることが好ましい。ほとんど見られないとは、スメクタイト粒子の001反射のシグナル‐ノイズ比が、好ましくは1.2未満であり、特に好ましくは1.0乃至1.1の範囲内であることを意味する。
【0042】
本発明に従う方法の意味での活性化は、例えば、AOCS Cc 13b‐45に従うロビボンドカラーインデックス(Lovibond colour index)の測定及び/又はAOCS Cc 13d‐55に従うクロロフィルAの測定によって判定することができる漂白活性の上昇を引き起こすあらゆる方法で達成される。
【0043】
粗クレイ物質の活性化は、単にクレイ物質を乾燥させることによって実施することができる。乾燥は、好ましくは180℃未満の温度で実施され、特に好ましくは150℃未満、最も好ましくは80乃至120℃の範囲内である。乾燥は、一般的な装置で実施することができ、例えば回転式オーブンである。乾燥後、クレイ物質は適切な粒子サイズへ粉砕することができる。
【0044】
しかし、活性化は、粗クレイ物質を酸で処理することによって実施することが好ましい。酸による処理を行うことにより、処理されたクレイ物質は酸反応を示し、漂白活性が高められる。天然の活性クレイ物質の10重量%スラリーが、好ましくは8.0乃至8.5の僅かに塩基性のpHを示すのに対し、酸活性化後のクレイ物質の10重量%スラリーは、<6.0のpH値を示し、好ましくは2.5乃至5.0、特に好ましくは3.0乃至4.5である。
【0045】
第一の態様によると、クレイ物質の活性化は、表面活性化によって、すなわち、酸をクレイ物質上へ付着させることによって実施される。活性化は、例えば、酸の水溶液を粗クレイ物質上へスプレーするか、又はクレイ物質を固体酸と共に粉砕することによって達成することができる。クレイ物質は、活性化の前に、20重量%HO未満の水分含量まで乾燥させることが好ましく、特に好ましくは10乃至15重量%である。適切な酸としては、リン酸、硫酸、及び塩酸である。好ましい固体酸としては、クエン酸である。しかし、クエン酸は、水溶液の形態で活性化に使用することもできる。本方法のこの態様では、クレイ物質上に付着した残留酸、及び活性化の間に生成した塩を、例えば水による洗浄等で除去する必要はない。好ましくは、酸のクレイ物質上への付着の後、いかなる洗浄工程も実施されず、酸処理されたクレイ物質は、乾燥のみが行われ、次に適切な粒子サイズへ粉砕される。
【0046】
本発明に従う方法のこの態様では、第一の工程において、任意に乾燥された上述の特徴を有する粗クレイ物質が提供される。そのクレイ物質上へ酸を付着させる。クレイ物質上へ付着させる酸の量は、水分を含有しない酸として、乾燥(水分を含有しない)クレイ物質の重量に基づいた計算において、好ましくは1乃至10重量%の範囲内で選択され、特に好ましくは2乃至6重量%である。驚くべきことに、クレイ物質の細孔容積並びに表面積は、粗クレイ物質の対応する値とほぼ同じであり、従って、表面活性化の間に塩の形成がほとんどまったく起こっていないと思われる。表面活性化の間の比表面積の変化が20%を超えないことが好ましく、10%以下の変化であることが好ましい。
【0047】
本態様によると、クレイ物質の表面活性化は、クレイ物質が水相中で活性化されるような方法で実施することができる。好ましくは微粉末の形態であるクレイ物質を、水中へ分散させることができる。次に、酸をクレイ物質のスラリーへ、濃縮酸の形で添加することができる。しかし、クレイ物質は、酸の水溶液中へ分散させることもできる。好ましい態様によると、酸の水溶液を、小塊又は微粉末の形態で提供されるクレイ物質上へスプレーすることができる。希釈酸の調製に用いられる水の量は、できるだけ少ない量が選択される。クレイ物質上に残留する水は、酸活性化の後に除去することができる。クレイ物質の水分量は、20重量%未満に調節することが好ましく、特に好ましくは10重量%未満である。活性化されたクレイ物質は、次に、適切なサイズに粉砕することができる。
【0048】
さらなる好ましい態様によると、上記で定める特徴を有する粗クレイ物質は、好ましくは高い温度にて、特には、混合物の沸点より約5乃至20℃低い温度に対応する温度にて、酸で浸出される。浸出は、HPBEの製造で用いられる酸の量と比較して少ない量の酸で実施されることが好ましい。水分を含有しない酸として、乾燥(水分を含有しない)クレイ物質に対して計算され酸の量は、好ましくは15乃至40重量%の範囲内で、特に好ましくは20乃至30重量%の範囲内で選択される。クレイの浸出に用いられる酸の量が少ないにもかかわらず、現在市場に提供されているHPBEと同等である漂白活性の著しい上昇が達成される。
【0049】
クレイの浸出は、一般的な方法で実施される。クレイ物質の酸のスラリーを、所望の温度まで加熱する。熱酸によるクレイ物質の抽出時間は、処理されるクレイ物質の量に応じて選択する。通常、漂白活性の所望する上昇を達成するには、2乃至12時間の浸出時間で十分である。次に、浸出されたクレイ物質のスラリーをろ過し、固体吸着剤物質を水で洗浄して、酸処理中に形成した塩及び残留する酸を除去する。
【0050】
驚くべきことに、酸浸出の間、比表面積並びに細孔容積が大きく変化することはない。沸騰酸で処理したクレイ物質は、未処理のクレイ物質と比較して、細孔容積及び比表面積が20%超大きくなることのないことが好ましい。さらなる利点として、酸浸出の収率は非常に高い。収率は、乾燥クレイ物質に対して80乃至95%の範囲であることが好ましい。
【0051】
酸浸出には、無機強酸を用いることが好ましい。特に好ましい酸は、硫酸及びリン酸である。
【0052】
さらに、酸浸出クレイ物質に含まれる、Alとして算出されるアルミニウムの量は、好ましくは15重量%未満であり、より好ましくは12重量%未満であり、特に好ましくは11重量%未満であり、最も好ましくは10重量%未満である。酸浸出クレイ物質に含まれる、Alとして算出されるアルミニウムの量は、好ましくは2重量%超であり、より好ましくは4重量%超であり、特に好ましくは6重量%超であり、最も好ましくは8重量%超である。
【0053】
活性化クレイ物質を、例えば油及び油脂の漂白に使用する前に、粒子を適切な粒子サイズに調節する。活性化の前又は後に、粉砕を実施することができる。表面活性化漂白土を作製する場合、粉砕は酸活性化の後に実施することが好ましい。高性能漂白土の作製では、クレイ物質の効率的な浸出を実施することができるように、粒子サイズの調節は活性化の前に行うことが好ましい。粉砕は、漂白土の典型的な粒子サイズ分布が活性化後に調節されるように実施することが好ましい。メッシュサイズが63μmのふるい上の漂白土の乾燥残留物は、20乃至40重量%の範囲内であることが好ましく、メッシュサイズが25μmのふるい上の乾燥残留物は、50乃至65重量%の範囲内であることが好ましい。
【0054】
本発明に従う方法で用いられるクレイ物質は、高い漂白活性を有し、それは、クレイ物質を酸で処理することによって高めることができる。従って、本発明は、XRDデータに基づいてアモルファス構造を有し:
180乃至300m/gの表面積を有し:
0.5乃至0.7ml/lの全細孔容積を有し;
ここで、全細孔容積の少なくとも60%が、少なくとも140Åの細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の少なくとも40%が、250Å未満の細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の少なくとも15%が、140乃至250Åの細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の20%未満が、>800Åの細孔径を持つ細孔によって提供される、
クレイ物質にも関する。
【0055】
そのようなクレイ物質は、上述の方法によって作製することができる。クレイ物質、特に活性化された形態のクレイ物質の好ましい態様は、既に上記で説明した。従って、詳細に関しては、本発明に従う吸着剤を作製する方法の上記の説明の対応する部分を参照する。
【0056】
特に好ましいクレイ物質は、酸で活性化された形態であり、酸活性化クレイ物質の蒸留水中10重量%のスラリーのpHは、<6であり、好ましくは<5.0であり、特に好ましくは<4.5である。酸活性化クレイ物質の蒸留水中10重量%のスラリーのpHは、>1であることが好ましく、より好ましくは>2であり、特に好ましくは>2.5である。
【0057】
さらに、本発明は、油脂及び/又は油を精製する方法に関し、ここで:
動物又は植物性物質由来の粗油を提供し;
この粗油を、クレイ物質であって:
180乃至300m/gの表面積を有し:
0.5乃至0.7ml/lの全細孔容積を有し;
ここで、全細孔容積の少なくとも60%が、少なくとも140Åの細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の少なくとも40%が、250Å未満の細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の少なくとも15%が、140乃至250Åの細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の20%未満が、>800Åの細孔径を持つ細孔によって提供され;
該クレイ物質が、XRDデータに基づいてアモルファス構造を有する、
クレイ物質、を含む漂白剤で処理し;
漂白された油を、使用した漂白剤から分離する。
【0058】
本発明の方法により、ロビボンドカラーインデックスを著しく低下させ、並びに漂白処理した油の中のリン及び鉄の濃度を著しく低下させることができる。本発明に従う方法により、従って、油及び油脂の容易で効率的な精製が可能となる。
【0059】
油の精製において、通常は、まず脱ガム(degumming)工程を実施して、例えばリン脂質を除去する。粗油を、好ましくは10乃至20分間、好ましくは70乃至80℃の温度にて、雰囲気圧下で攪拌することにより水で処理する。水相を、例えば遠心分離によって分離し、次に、第二の脱ガム工程にて、酸、特にリン酸又はクエン酸を添加し、この混合物を、さらに10乃至30分間、好ましくは70乃至100℃の温度にて、雰囲気圧下で攪拌することが好ましい。脱ガムの終了にかけて、好ましくは粗油に対して1乃至2重量%の量の水を添加して、脱ガムの効率を上げることができる。温度及び攪拌時間は、処理される特定の油又は油脂に応じて調節することができる。
【0060】
漂白プロセスでは、まず、湿式漂白(wet bleaching)を実施し、続いて、真空漂白(vacuum bleaching)を実施することができる。脱ガム処理した油へ、好ましくは0.1乃至0.5重量%の量の水、及び好ましくは0.3乃至2.0重量%の量の漂白土を添加する。この混合物を、好ましくは80乃至100℃、雰囲気圧にて、好ましくは15乃至30分間攪拌する。次に、好ましくは約100mbarまで減圧し、好ましくは90乃至120℃まで加熱し、この混合物を、好ましくは30乃至45分間攪拌して脱気及び一部分の水の留去を行う。漂白処理した油を、次に使用した漂白土から、例えばフィルターを通して、分離することができる。ろ過は、好ましくは、約60乃至90℃の温度で実施する。
【0061】
油は、漂白後に脱臭することができる。脱臭では、好ましくは240乃至260℃の温度である過熱蒸気を油に通し、遊離の脂肪酸及び味又は臭いを悪化させる化合物を除去する。脱臭は、5mbar未満の減圧下で実施することが好ましく、好ましくは1乃至3mbarである。
【0062】
精製の後、油中のリン濃度は、3ppm未満、鉄濃度は、0.1ppm未満であることが好ましい。
【0063】
粗油及び粗油脂の精製方法は、酸活性化クレイ物質で実施することが好ましく、ここで、クレイ物質は、活性化がリン酸、硫酸、又はクエン酸で実施されたものが好ましい。
【0064】
クレイ物質上に付着した酸の量は、好ましくは、水分を含有しない酸として、乾燥クレイ物質の重量に基づいた計算において、2乃至5重量%の範囲内で選択される。
【0065】
特に好ましい態様では、粗油は、カノーラ油、大豆油、ナタネ油、パーム油、ヒマワリ油の群から選択される。特に好ましい態様によると、粗油は、上述のクレイ物質で漂白され、ここで、クレイ物質は、クエン酸で表面活性化されたものであることが好ましい。
【0066】
特に好ましい粗油が含有するリンの量は、100ppm未満である。
【0067】
さらなる好ましい態様によると、上述のクレイ物質、特にその酸で活性化された形態を用いて、エステル交換の後のバイオディーゼル油を精製することができる。バイオディーゼル油は、植物又は動物由来の油脂及び油から作製することができる。エステル交換プロセスでは、トリグリセリドが低分子量アルコール、特にメタノールによる加アルコール分解によって開裂し、グリセロール及び脂肪酸アルキルエステルが得られる。エステル交換は、アルカリ性化合物、例えば、ナトリウムメタノラートによって触媒される。バイオディーゼル油の製造に関する詳細は、M.Mittelbach,C.Remschmidt,”Biodiesel The comprehensive Handbook”,Graz,2004;ISBN 3‐200‐00249‐2、に記載されている。
【実施例】
【0068】
以下に示す例は、本発明をより十分に説明し、例証するために提示するものである。これらの例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0069】
本発明に従う吸着剤を特徴付けるために用いられる物理的特徴は、以下のようにして測定される。
【0070】
比表面積
比表面積は、Micrometricsの自動窒素ポロシメータ(automatic nitrogen‐porosimeter)、タイプASAP2010により、BET法(DIN66131に従う、窒素を用いる一点法)で測定した。細孔容積は、BJH法(E.P.Barrett,L.G.Joyner,P.P.Hienda,J.Am.Chem.Soc.73(1951)373)を用いて測定した。所定の範囲の細孔径の細孔容積は、BJH法による吸着等温線から決定された増加分の細孔容積を足し上げることによって求めた。全細孔容積とは、2から350nmまでの細孔径を持つ細孔のことである。
【0071】
油の分析
油のカラーインデックス(ロビボンドカラーインデックス)は、AOCS Cc 13b‐45に従って測定した。クロロフィルAは、AOCS Cc 13d‐55に従って測定した。
【0072】
水分含量
吸着剤に含まれる水の量は、105℃にて、DIN/ISO‐787/2に従って測定した。
【0073】
シリケートの分析
クレイ物質を完全に解砕した。固体を溶解した後、化合物を、例えばICP等の特定の方法によって分析し、定量した。
【0074】
a)サンプルの解砕
クレイ物質のサンプル10gを粉砕して微粉末とし、105℃のオーブンにて、重量が一定となるまで乾燥させる。約1.4gの乾燥サンプルを白金ボウル(platinum bowl)へ投入し、重量を0.001gの精度で測定する。次に、サンプルを、4乃至6倍の過剰量(重量)の炭酸ナトリウムと炭酸カリウムとの混合物(1:1)と混合する。この白金ボウル中の混合物をサイモンミューラーオーブン(Simon‐Muller‐oven)に入れ、800乃至850℃の温度にて2乃至3時間溶融させる。白金ボウルをオーブンから取り出し、室温まで冷却する。凝固した溶融物を蒸留水に溶解し、ビーカーに移す。次に、濃塩酸を注意深く添加する。ガスの発生が止まった後、水を蒸発させて乾燥残渣を得る。この残渣を20mlの濃塩酸に溶解し、続いて液体を蒸発させる。濃塩酸への溶解及び液体の蒸発のプロセスを再度繰り返す。次に、残渣を5乃至10mlの塩酸水溶液(12%)で湿潤させる。約100mlの蒸留水を添加し、この混合物を加熱する。不溶性SiOを除去するために、サンプルをろ過し、ろ紙上の残渣を、ろ液に塩素が検出されなくなるまで熱塩酸(12%)及び蒸留水でよく洗浄する。
【0075】
b)シリケートの分析
SiOをろ紙と共に灰化し、残渣を秤量する。
【0076】
c)アルミニウム、鉄、カルシウム、及びマグネシウムの定量
ろ液をメスフラスコ(calibrated flask)に移し、蒸留水を較正目盛(calibration mark)まで添加する。溶液中のアルミニウム、鉄、カルシウム、及びマグネシウムの量をFAASで測定する。
【0077】
d)カリウム、ナトリウム、及びリチウムの定量
サンプル500mgを、0.1mgの精度で白金ボウル中へ秤量する。このサンプルを、約1乃至2mlの蒸留水で湿潤させ、次に、濃硫酸を4滴添加する。約10乃至20mlの濃フッ化水素酸を添加し、砂浴中で液相を蒸発させて乾燥状態とする。このプロセスを3回繰り返す。最後に、HSOを乾燥残渣に添加し、この混合物をオーブンプレート上で蒸発させて乾燥状態とする。白金ボウルを焼成し、室温まで冷却後、蒸留水40ml及び塩酸(18%)5mlを残渣に添加し、この混合物を加熱して沸騰させる。この溶液を250mlのメスフラスコへ移し、較正目盛まで水を添加する。溶液中のナトリウム、カリウム、及びリチウムの量をEASで測定する。
【0078】
燃焼時のロス
焼成し秤量した白金ボウルへ、約0.1gのサンプルを0.1mgの精度で量り入れる。白金ボウルをオーブン中、1000℃にて2時間焼成する。次に、白金ボウルを乾燥器(exsiccator)へ移して秤量する。
【0079】
イオン交換容量
試験クレイ物質を150℃にて2時間乾燥した。次に、この乾燥物質を、還流下、大過剰のNHCl水溶液と1時間反応させた。室温で16時間静置後、この物質をろ過した。フィルターケーキを洗浄、乾燥、そして粉砕し、クレイ物質中のNH含有量をケルダール法で測定した。交換された金属イオンの量と種類は、ICP分光分析法で測定した。
【0080】
X線回折
XRDスペクトルは、Cuアノードを装備した粉末回折計X’‐Pert‐MPD(PW 3040)(Phillips)を用いて測定した。
【0081】
沈降容積の測定:
100mlのガラス製メスシリンダーを、100mlの蒸留水、又は1%炭酸ナトリウム及び2%ポリリン酸三ナトリウムの水溶液で満たす。2gの分析化合物を、スパチュラにて約0.1乃至0.2gずつ水面へ投入する。1回分が沈んでから、次の分の化合物を添加する。分析化合物2gを添加後、メスシリンダーを室温で1時間保持する。次に、沈降容積(ml/2g)を目盛りから読み取る。
【0082】
pH測定
蒸留水中10重量%のクレイ物質のスラリーを沸点まで加熱し、次に、窒素雰囲気下で室温まで冷却する。pH値は、校正済みガラス電極で測定する。
【0083】
漂白性悪化インデックス(Deterioration of bleachability Index)(DOBI)
DOBIは、446nmにおける分光吸光度の269nmにおけるそれに対する数値比である。測定は、パーム油をヘキサン中へ溶解し、次に、分光光度計で吸光度を測定することで行った。
【0084】
実施例1
クレイ物質の同定
本発明に従う方法に適するクレイ物質(Tonsil(登録商標)Supreme 526 FF,Sud‐Chemie de Mexico S.A. de C.V.)をその物理的特徴について分析した。データを表1に示す。比較のために、国際公開第2006/131136号に開示の公知のクレイ物質(Tonsil(登録商標)419 FF,Sud‐Chemie AG,モースブルグ(Moosburg),ドイツ)のデータも含める。
【0085】
【表2】

【0086】
さらに、表1で同定した両方のクレイ物質について、細孔容積、及び所定の細孔径の細孔によって形成される細孔容積の割合の分析を行った。結果を表2a乃至2cにまとめる。
【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
活性化クレイ物質の作製
a)表面活性化漂白土(Tonsil(登録商標)Supreme 1204 FF)
10%HOまで乾燥させたTonsil(登録商標)Supreme 526 FFの100gを125gの水と混合し、次に、4重量%のHSO(3.75g HSO、96%)を添加し、この混合物をビーカー内で混練することで活性化した。この混合物を110℃で水分含量14.6gまで乾燥し、次に、微粉末へ粉砕した(メッシュサイズ63μmのふるい上の乾燥残留物:23.9%;平均粒子サイズ:35.3μm)。
【0091】
b)高性能漂白土(Tonsil(登録商標)Supreme 1206 FF)
表1で同定したクレイ物質を20%硫酸水溶液で抽出した。
【0092】
100gのTonsil Supreme 526 FFによる固形分20%の水性スラリーを、20%の濃硫酸(20.8g HSO、96%)を添加することで活性化、及び抽出し、沸点にて、ゆっくり攪拌して沈降を防ぎながら大気圧下で8時間煮沸する。
【0093】
活性化されたクレイ物質を残留酸性度が0.5%となるまで水洗し、次に110℃にて水分含量が15.1重量%となるまで乾燥した。メッシュサイズ63μmのふるい上の乾燥残留物が23.4%、平均粒子サイズが29.6μmである微粉末が得られた。
【0094】
このクレイ物質の物理データを表3にまとめる。
【0095】
【表6】

【0096】
【表7】

【0097】
試験のレファレンス例としては、Sud‐Chemie de Mexico,S.A.de C.V.,プエブラ,メキシコ、より入手可能である以下の漂白土を使用した。
【0098】
【表8】

【0099】
実施例2:油の漂白
脱ガム化及び脱酸を行った油を、105℃の温度、20mbarの圧力で30分間漂白した。添加した漂白土の量を表4に示す。漂白後、漂白土はろ過によって取り除き、油のカラーインデックスを、ロビボンド法に従い、5
1/4インチキュベット中で測定した。漂白処理した油の一部をさらに過熱水蒸気(250℃、120分、3mbar)で処理して脱臭した。脱臭処理した油をロビボンド法に従って分析した。油の精製の試験は、大豆油及びカノーラ油で行った。結果を表4及び5にまとめる。
【0100】
【表9】

【0101】
【表10】

【0102】
実施例3:漂白土の全効率の測定
漂白活性
脱ガム化を行うために、粗パーム油(DOBI=2.79又は1.7)へ、0.05重量%のクエン酸水溶液(20%)を添加し、この混合物を、攪拌しながら常圧下にて30分間80℃まで加熱する。水相を分離後、表9及び10に示す量に対応する漂白土を脱ガム化したパーム油へ添加し、この混合物を、減圧下(80mbar)、110℃にて30分間攪拌した。この油をろ紙でろ過した。次に、ろ過したパーム油を、過熱蒸気(入り口温度:260℃)を減圧下(3mbar)にて120分間導入することにより脱臭した。
【0103】
脱臭処理したパーム油の赤色を、5
1/4インチのセル中、「the Tintometer Limited,英国」より入手した「Lovibond Tintometer Colourscan PFX 960」を用い、AOCS Cc 13j‐97に従って測定した。油は、ろ過助剤(珪藻土)で処理し、折り畳んだろ紙でろ過し、赤色を、45乃至50℃にてロビボンドスケール(Lovibond scale)で測定する。
【0104】
最も性能の良い漂白土の赤色を、効率100%とみなす。赤色に関して分析したサンプルの効率は、以下の式に従って算出した:
漂白効率(%)=((最も効率の高い漂白土の赤色)/(サンプルの赤色インデックス))×100
【0105】
脱臭処理したサンプルの重金属含量を、Perkin Elmer,米国、より入手した分光光度計ICPプラズマモデルOptima3100XLを用いて測定する。ICP装置では、製造元の説明書によると、油が高温アルゴンプラズマ中へ注入され、ここで、原子が気化、励起され、続いて、測定可能な光が発せられる。
【0106】
最終的な脱臭処理した油の油安定性インデックス(Oil Stability Index)は、Archer Daniels Midland Co.(ADM)のライセンス供与を受けたOmnion Inc.製の「Oxidative stability instrument」を用い、AOCS Cd 12b‐92に従う方法で測定する。油及び油脂は、その飽和度、天然の若しくは添加された抗酸化剤、酸化促進剤の含有量、又はこれまでの誤用に応じての酸化に対する耐性を有する。この耐性を上回るまでは酸化をゆっくりであるが、その時点で酸化が加速し非常に急なものとなる。この酸化の急な加速までの時間の長さが、酸化に対する耐性の尺度であり、一般に、「誘導期(Induction period)」と称される。誘導期を測定するこの方法では、清浄空気流を、密封され、加熱された反応容器内の油サンプルに通す。この処理によってサンプル中の油分子が酸化し、一次酸化生成物としてまず過酸化物が形成される。ある時間の経過後、脂肪酸は完全に破壊され、形成される二次酸化生成物としては、低分子量有機酸、並びにその他の揮発性有機化合物が挙げられる。これらは、空気流中を、蒸留水が入った第二の容器へと運ばれる。容器の導電性を連続的に記録する。有機酸は、導電性の上昇によって検出することができる。これらの二次反応生成物が現れるまでの経過時間が、誘導時間、誘導期、又は油安定性インデックス(OSI)として知られるものである。
【0107】
ろ過速度効率
ろ過速度は、以下の手順で測定した:
【0108】
一度漂白を行った大豆油100gを漂白クレイサンプルに添加し、サーマルブロック(thermal block)中、120℃にて、マグネティックスターラーバーを用いて250rpmでゆっくり20分間攪拌する。続いて、油‐クレイ懸濁液を直ちに、いずれもSchleicher & Schuell製である標準的な円形ろ紙DN100mm、タイプ595を用いた吸引フィルターGV100に通し、エルレンマイヤー型の2000mlろ過フラスコへ50mbar未満で減圧ろ過する。ろ過時間は、ストップウォッチを用いて計測し、ろ過フラスコの底面に油の最初の一滴が落ちてからフィルターケーキが完全に形成されて「乾燥した外観」となるまでの時間とする。
【0109】
標準試験でのろ過速度が45秒である漂白土を、効率100%と見なした。
【0110】
分析サンプルのろ過速度効率は、以下の式に従って算出した:
ろ過速度効率(%)=((サンプルのろ過速度)/45)×100
【0111】
油保持効率
ろ過速度の方法に続いて、同じ減圧下にてさらに5分間吸引することで油保持率を測定する。続いて、真空引きを止め、ろ紙と共にフィルターケーキを吸引フィルターから取り出す。油含有フィルターケーキを、油で湿潤したろ紙から定量的に分離し、その重量を測定する。次に、油含有フィルターケーキに対する漂白クレイの量を差し引き、同じ油含有フィルターケーキの重量で割り算し、最後に100を掛けることで油保持率(%)を算出する。
【0112】
標準試験における油保持率35%を効率100%と見なした。分析サンプルの油保持効率は、以下の式に従って算出した:
油保持効率(%)=((サンプルの油保持率(%))/35%)×100
【0113】
全効率
全効率は、以下の式に従って算出した:
全効率(%)=(漂白活性(%))×0.6+(ろ過速度効率(%))×0.2+(油保持効率(%))×0.2
【0114】
市販のいくつかの漂白土並びに本発明に従う漂白土を、その物理的特性並びに油保持率及びろ過速度について分析した。結果を表8にまとめる。
【0115】
【表11】

【0116】
さらに、表8に特徴を示す漂白土を用い、上述の手順に従って、DOBIがそれぞれ2.79及び1.7である2種類のパーム油のサンプルの漂白を行った。結果を表9及び10にまとめる。
【0117】
【表12】

【0118】
【表13】

【0119】
表8乃至10に示す数値から算出された効率を表11にまとめる。
【0120】
【表14】

【0121】
効率の全体的な評価では、本発明に従う漂白土であるTonsil(登録商標) Supreme 526 FFは、Tonsil 419 FFと比較して、漂白効率は低いが、ろ過効率及び油保持効率が高い。従って、全効率では、Tonsil(登録商標) Supreme 526 FFは、Tonsil 419 FFよりも優れた性能を有する。
【0122】
実施例4 バイオディーゼル油の精製
大豆油/パーム油からのバイオディーゼル油の製造:
精製、漂白、及び脱臭した(RBD)大豆油又はパーム油からバイオディーゼル油を作製する方法としては、エステル交換が圧倒的に最も一般的な方法である。エステル交換反応の間、この植物油は、触媒(通常は塩基)の存在下、アルコール(通常はメタノール)と反応して、対応する油及びグリセロール中に見られる脂肪酸混合物の対応するメチルエステルを生成する。
【0123】
バイオディーゼル油の精製は、公知の吸着剤(Magnesol(登録商標),The Dallas Group of America,Inc.,米国)、及び本発明に従う吸着剤(Biosil(商標),Sud‐Chemie de Mexico,S.A.de C.V.,プエブラ,メキシコ)を用いて実施した。Biosil(商標)の特性を表12にまとめる。
【0124】
【表15】

【0125】
精製試験:
メタノール20%及びNaOH0.25%(油重量に対して)をRBD大豆油又はパーム油に添加する。この混合物を、ウォーターバス中50℃にて、400rpmで60分間攪拌し、次に、8時間沈降させた後、デカンテーションによってグリセロールから分離した。得られたバイオディーゼル油を(さらなる水洗を行わず)濃硫酸(96%)で中和し、1%(バイオディーゼル油の重量に対して)のクレイ吸着剤(Biosil(商標),Sud‐Chemie de Mexico,S.A.de C.V.,プエブラ,メキシコ)又はMagnesol(登録商標)(the Dallas Group of America,Inc.,米国、より入手の合成マグネシウムシリケート)で、周囲条件下、250rpmにて20分間処理し、最後に適切なろ紙でろ過して精製バイオディーゼル油から吸着剤を分離した。得られたバイオディーゼル油を、上述のように、AOCS Ca 2e‐84(97)の方法に従うカールフィッシャー水分(Karl‐Fischer moisture)(%)、AOCS Cd 3a‐63の方法に従う酸価、mgKOH/g、AOCS Cd 12b‐92の方法に従う酸化安定性インデックス(OSI)、及び重金属含量(ICP)について分析した。
【0126】
Biosil(商標)及びMagnesol(登録商標)によって実施された精製の結果を表13(大豆由来バイオディーゼル油)及び14(パーム油由来バイオディーゼル油)にまとめる。
【0127】
【表16】

【0128】
【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤、特に漂白土を作製する方法であって、ここで、クレイ物質は:
180乃至300m/gの表面積を有し;
0.5乃至0.7ml/lの全細孔容積を有し;
ここで、全細孔容積の少なくとも60%が、少なくとも140Åの細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の少なくとも40%が、250Å未満の細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の少なくとも15%が、140乃至250Åの細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の20%未満が、>800Åの細孔径を持つ細孔によって形成され;
該クレイ物質は、XRDデータに基づいてアモルファス構造を有し;
活性化手順によって活性化される、方法。
【請求項2】
前記のクレイ物質の全細孔容積の少なくとも20%が、140Å未満の細孔径を持つ細孔によって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記のクレイ物質の全細孔容積の少なくとも10%が、75乃至140Åの細孔径を持つ細孔によって提供される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記のクレイ物質の全細孔容積の40%未満が、250乃至800Åの細孔径を持つ細孔によって形成される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記のクレイ物質の全細孔容積の少なくとも12%が、75Å未満の細孔径を持つ細孔によって提供される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記のクレイ物質の全細孔容積の80%未満が、140Åを超える細孔径を持つ細孔によって形成される、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
全細孔容積の60%未満が、少なくとも250Åの細孔径を持つ細孔によって形成される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記のクレイ物質が、アルミニウムを、Alとして算出して、10重量%未満の量含有する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記のクレイが、該クレイ物質を酸と接触させることによって活性化される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記の酸が、水を含まない酸として、乾燥クレイ物質の重量に対して算出して、2乃至5重量%の量で前記のクレイ上に付着される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記のクレイ物質が、前記の酸によって浸出される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
酸の量が、水を含まない酸として、乾燥クレイ物質の重量に対して算出して、15乃至40重量%の範囲内で選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記のクレイ物質が、抽出後に酸から分離され、洗浄され、乾燥され、任意に粉砕される、請求項11又は12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記の酸が、リン酸、硫酸、及びクエン酸の群より選択される、請求項9乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
XRDデータに基づいてアモルファス構造を有し:
180乃至300m/gの表面積を有し;
0.5乃至0.7ml/lの全細孔容積を有し;
ここで、全細孔容積の少なくとも60%が、少なくとも140Åの細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の少なくとも40%が、250Å未満の細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の少なくとも15%が、140乃至250Åの細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の20%未満が、>800Åの細孔径を持つ細孔によって形成される、
クレイ物質。
【請求項16】
前記のクレイ物質が、酸で活性化され、該クレイ物質の蒸留水中の10重量%スラリーが、pH<6を有する、請求項15に記載のクレイ物質。
【請求項17】
油脂及び/又は油を漂白する方法であって、ここで、
動物又は植物性物質由来の粗油を提供し;
クレイ物質であって:
180乃至300m/gの表面積を有し:
0.5乃至0.7ml/lの全細孔容積を有し;
ここで、全細孔容積の少なくとも60%が、少なくとも140Åの細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の少なくとも40%が、250Å未満の細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の少なくとも15%が、140乃至250Åの細孔径を持つ細孔によって提供され、全細孔容積の20%未満が、>800Åの細孔径を持つ細孔によって形成され;
該クレイ物質が、XRDデータに基づいてアモルファス構造を有する、
クレイ物質、を含む漂白剤で該粗油を処理し;
漂白処理された油を、使用した漂白剤から分離する、
方法。
【請求項18】
前記のクレイ物質が、酸活性化クレイ物質である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記の酸が、リン酸、硫酸、及びクエン酸の群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記のクレイ物質上に付着される酸の量が、水を含まない酸として、乾燥クレイ物質の重量に対して算出して、2乃至5重量%の範囲内から選択される、請求項18又は19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記の粗油が、カノーラ油、大豆油、ナタネ油、パーム油、ヒマワリ油の群から選択される、請求項17乃至20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記の油が含有するリンの量が100ppm未満である、請求項17乃至21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記の粗油が、前記のクレイ物質で処理される前に、メタノールでエステル交換される、請求項17乃至20のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−508147(P2010−508147A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535626(P2009−535626)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009655
【国際公開番号】WO2008/055675
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(507294959)ジュート−ヒェミー アクチェンゲゼルシャフト (21)
【Fターム(参考)】