説明

アライメント装置

【課題】 真空処理装置の処理室内において、マスクに対する基板のアライメントのために両者の位置関係を確実に検出できる簡単な構成で低コストのアライメント装置を提供する。
【解決手段】 真空チャンバ1内で相互に対向配置される基板Wとこの基板に対する処理範囲を制限するマスクWとのいずれか一方を保持する固定の保持手段5と、その他方を保持する、固定の保持手段に対して相対移動可能な可動の保持手段2とを備える。固定の保持手段内に、一端側が可動の保持手段で保持された基板またはマスクのいずれか他方に向けて開口し、その他端側が処理室を画成する壁面に向けて開口する光路52R,52Lが形成され、光路の他端側から光を入射する光源61と、この他端側から光路を通して他方を撮像する撮像手段62と、撮像手段からの出力に応じて可動の保持手段を相対移動させてアライメントを行う制御手段Cとを更に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理室内で相互に対向配置される基板とこの基板に対する処理範囲を制限するマスクとのアライメントを行うアライメント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や有機EL素子等の製造工程においては、例えば処理対象物たる基板表面に所定の薄膜を成膜する工程があり、この成膜工程には、基板に対して所定のパターンで成膜する等、特定の領域に成膜範囲を制限(限定)して成膜する場合がある。真空蒸着法にて基板に対して所定のパターンで成膜する場合を例に説明すると、処理室内に蒸発源と基板とを配置し、真空下で蒸発源から所定の材料を蒸発させる。このとき、基板の蒸発源側に、成膜範囲を限定するマスクを配置し、マスク越しに成膜することで、特定の領域にのみ成膜される。ここで、基板の特定の領域に精度よく成膜するには、処理室内で相互に対向配置される基板とマスクとを精度よくアライメントする必要がある。
【0003】
従来、精度よくアライメントを行い得るものは例えば特許文献1で知られている。このものでは、蒸発源を備えた処理室内に、固定のマスクステージと、このマスクステージに保持されたマスクに対向して基板を保持する基板ステージとを設け、基板ステージがX、Y及びZ方向に移動自在であると共にθ方向にも回転できるようになっている。また、このものでは、基板とマスクのアライメント用マークを撮影するCCDカメラ等の撮像手段が処理室外に複数設けられている。この場合、撮像手段は、基板のマスクと背向する側に設けられ、処理室に設けた透明窓を通して基板越しにマスクを撮像するようになっている。
【0004】
基板とマスクとをアライメントするとき、撮像手段により基板とマスクの夫々のアライメントマークのずれを測定し、画像処理してずれ量を検出し、これに基づいてマスクに対する基板の位置や姿勢を変更することでアライメントが行われる。然し、上記従来例のものでは、基板越しにマスクを撮像する構成であるため、基板がシリコンウエハ等の不透明なものであると、高価な赤外線カメラ等を用いない限り、マスクのアライメントマークを撮像できないという問題がある。
【0005】
このような場合、マスクと蒸発源との間に撮像手段を配置してマスク越しに基板を撮像してアライメントすることが考えられるが、撮像手段が蒸発源に近くなるため、成膜時に熱の影響等を受けないようにする必要があり、しかも、成膜時に撮像手段に蒸発材料が付着しないようにする必要がある。このため、当該撮像手段を撮像位置から退避させる機構や撮像手段への蒸発材料の付着を防止する遮熱兼用の部品も必要となり、装置構成が複雑化するだけでなく、部品点数が増えてコスト高を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006ー206980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、マスクに対する基板のアライメントのため、両者の位置関係を確実に検出できる簡単な構成で低コストのアライメント装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、処理室内で相互に対向配置される基板とこの基板に対する処理範囲を制限するマスクとのアライメントを行うアライメント装置であって、前記基板またはマスクのいずれか一方を保持する、処理室に固定の保持手段と、前記基板またはマスクのいずれか他方を保持する、固定の保持手段に対して相対移動可能な可動の保持手段とを備え、前記固定の保持手段内に、一端側が可動の保持手段で保持された基板またはマスクのいずれか他方に向けて開口し、その他端側が処理室を画成する壁面に向けて開口する光路が形成され、前記光路の他端側から光を入射する光源と、この他端側から光路を通して処理基板またはマスクのいずれか他方を撮像する撮像手段と、当該撮像手段からの出力に応じて可動の保持手段を相対移動させてアライメントを行う制御手段とを更に備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、例えば、固定の保持手段の所定の位置にマスクを位置決め保持させた後、可動の保持手段に基板を保持させる。次に、処理室内または処理室外に設けた光源から光を、光路を介して基板(または基板に形成したアライメントマーク)に照射すると共に、撮像手段にて基板(またはアライメントマーク)を撮像し、画像処理してずれ量を検出する。そして、検出したずれ量に基づいて制御部により可動のステージを、X方向及びY方向の少なくとも一方に移動させ、または、θ方向に回転させることで基板の姿勢を変更してアライメントが行われる。
【0010】
ここで、本発明では、基板の撮像に必要な光路を固定の保持手段内に形成したため、マスク側から基板を撮像し得ることで、基板の透明、不透明を問わず、かつ、撮像手段の種類を問わず、マスクに対する基板の位置を確実に撮像できる。そして、本発明のアライメント装置を成膜装置に適用した場合、光路の両端が蒸発源を指向しないように開口することになるため、蒸発した材料で光路が直ぐに塞がれて基板を撮像できなくなるといった不具合は生じない。このため、成膜時、遮熱や撮像手段への蒸発材料の付着を防止する機構や部品を不要となり、装置構成を簡素化できるだけでなく、部品点数の増加を防止でき、低廉なCCDカメラ等を用いることができることと相俟って更なる低コストを図ることができる。
【0011】
なお、本発明においては、前記光路が固定の保持手段内に埋設した光ファイバーで構成することができ、他方で、前記光路が固定の保持手段内に複数回屈曲させて穿設した貫通孔で構成され、この屈曲した個所にプリズムまたは反射レンズを組み付けてなるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態のアライメント装置を備えた真空蒸着装置を模式的に示す図。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、処理対象物たる基板をシリコンウエハ(以下、「ウエハ」という)Wとし、真空処理装置を、真空蒸着法にてウエハW表面に銅やアルミニウムなどの金属膜を成膜する真空蒸着装置とし、この真空蒸着装置に本発明の実施形態のアライメント装置を適用した場合を例として説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、真空蒸着装置EMは、処理室を画成する筒状の真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1には、図外の排気管11を介して図示省略の真空ポンプが接続され、その内部を所定の圧力に減圧保持できる。また、真空チャンバ1の上部は、その下部に比較して小径に形成され(これにより、真空チャンバ1の側壁には、水平な段差部12が形成される)、その上部空間13aには、下面に静電チャック用の電極(図示せず)を埋設したステージ(可動の保持手段)2が設けられている。そして、図外のチャック用電源から電極間に所定電圧を印加し、両電極間に生じる静電気力によりウエハWを吸着できる。ステージ2の上面には、(本実施形態では1本の)駆動軸31が連結され、駆動軸31の他端が、真空チャンバ1上面に設けたベローズ32を通って外部まで延出し、公知の構造のXYθステージ33に連結されている。このXYθステージ33により、駆動軸31で吊設されたステージ2が、真空下の上部空間13a内でX方向及びY方向の少なくとも一方に移動でき、また、θ方向に回転できる。なお、駆動軸31にエアーシリンダ等の駆動源を別途設け、Z方向にも移動自在(図1中、上下方向)としてもよい。
【0015】
真空チャンバ1内の下部空間13bには蒸発源4がステージ2下面に対向させて配置されている。蒸発源4は、基板Wに成膜しようとする薄膜に応じて選択される蒸発材料41が収納される坩堝42と、蒸発材料41を蒸発させるヒータや電子銃等の加熱手段43とを備える。また、上部空間13aと下部空間13bとの境界に位置させて基板Wへの成膜範囲を制限するマスクMを保持するマスク支持体(固定の保持手段)5が設けられている。
【0016】
マスク支持体5は、平面視矩形で所定の厚さを有する板状部材で構成され、下部空間13bの側壁に固定されている。マスク支持体5の中央部には、基板Wが臨む、基板Wの輪郭に略一致した円形開口51が形成され、蒸発源4から蒸発した材料の基板W側への通過を許容する。また、マスク支持体5内には、一端側がステージ2で吸着された基板Wの周縁部に向けて開口し、その他端側が、真空チャンバ1の平坦な段差部12に向けて開口する2本の貫通孔52R、52Lが周方向に180度間隔で穿設され、本実施形態の光路を形成する。各貫通孔52R、52Lは、基板W及び段差部12の下方でマスク支持体5の上面からZ方向に垂直(Z方向)に夫々のびる垂直部52aと、両垂直部52aを橋渡すように水平(X方向)にのびる水平孔52bとで構成される。両垂直部52aと水平部52bとが交差する屈曲箇所にはプリズム53が設けられている。
【0017】
また、マスク支持体5上面で円形開口51の外周には、円形開口に同心となるようにウエハWの輪郭より僅かに大きい突条54が環状に凸設され、突条54で包囲された空間に基板Wの輪郭より大きいマスクMを設置すれば、マスクMがマスク支持体5上に位置決め保持されるようになっている。マスクとしては、例えばアルミナ製のものが用いられ、基板Wへの成膜範囲に応じて種々の形態とされる。また、マスクMの周縁部には、当該マスクMをマスク支持体5上に位置決め保持させたとき、垂直部52aの孔軸上に位置させて透孔M1が形成され、この透孔M1は、マスクMに対して基板Wをアライメントする場合のマスク用のアライメントマークとしての役割を果たす。
【0018】
真空チャンバ1の段差部12の所定位置には透明窓12aが設けられ、透明窓12aの上方には、例えば可視光や所定波長のレーザ光を照射する光源61と光路52R、52Lを通して基板Wを撮像する公知のCCDカメラ等の撮像手段62とを備え、例えば光源61からの光を光路52R、52Lへと導く図外の光学部品が内蔵されたアライメント光学手段6が設けられている。撮像手段62には画像処理手段7が付設され、画像処理手段7にて処理した画像データが制御部Cに入力されるようになっている。制御部Cは、マイクロコンピュータ、記憶素子やシーケンサ等を備えた公知のものであり、光源61、XYθステージ33や加熱手段43等の作動をも統括制御できるようになっている。この場合、光路やプリズムを備えたマスク支持体5と、アライメント光学手段6と、XYθステージ2と、制御部Cとが本実施形態のアライメント装置を構成する。以下、本実施形態のアライメント装置を用いたマスクMに対する基板Wのアライメントを説明する。
【0019】
真空チャンバ1を真空引きして所定圧力まで減圧した状態で、図外の真空搬送ロボットによりマスクMを搬送し、突条54で包囲された空間にマスクMをセットする。このとき、両垂直部52aと両透孔M1とが夫々同じ方位に位置するようにする。次に、図外の真空搬送ロボットによりウエハWを搬送し、ステージ2にウエハWを、その成膜面を下側にして吸着させる。この場合、ウエハWの成膜面外周縁部には、透孔M1より小径のアライメントマークWmが周方向に180度間隔で設けられている。
【0020】
ウエハWがステージ2に吸着されると、光源61より光を照射し、マスクMに形成した透孔M1越しに撮像手段62によりアライメントマークWmを撮像し、画像処理手段7により画像処理してマスクMに対するウエハWのずれ量を検出する。そして、この検出したデータが制御部Cに入力される。制御部Cにずれ量が入力されると、これに基づいてXYθステージ33の移動量が算出され、X方向及びY方向の少なくとも一方に移動させ、または、θ方向に回転させることでウエハWの姿勢を変更してアライメントされる。アライメントが終了すると、加熱手段43を作動させて坩堝42内の蒸発材料41が蒸発され、ウエハWに所定のパターンで成膜される。
【0021】
以上説明したように、本実施形態によれば、ウエハWの撮像に必要な光路52R、52Lを固定の保持手段たるマスク支持体5内に内蔵したことで、撮像手段の種類を問わず、マスクに対する不透明なウエハWの位置を確実に撮像できる。また、光路52R、52Lの両端が、蒸発源4と背向して開口しているため、蒸発源4から蒸発した材料が光路52R、52Lの開口やその内部に付着、堆積し難くなり、光路が直ぐに塞がれて、ウエハWを撮像できなくなるといった不具合は生じ難い。このため、成膜時、遮熱や撮像手段への蒸発材料の付着を防止する機構や部品を必要とせず、装置構成を簡素化できるだけでなく、部品点数の増加を防止でき、CCDカメラ等の低廉な撮像手段を用いることができることと相俟って更なる低コストを図ることができる。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。上記実施形態では、マスク支持体5に貫通孔を形成して光路とし、屈曲した箇所にプリズム53を形成したものを例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、プリズム53に変えて反射鏡を設置できる。他方で、一端側がステージ2で吸着された基板Wの周縁部を指向し、その他端側が真空チャンバ1の段差部12を指向するようにマスク支持体5内に光ファイバーを埋設して光路を形成してもよい。また、上記実施形態では、貫通孔の他端側が真空チャンバ1の段差部12に向けて開口するようにしているが、蒸発源4から蒸発した材料が光路52R、52Lの開口やその内部に付着、堆積し難くできるのであれば、その位置は上記のものに限定されるものではなく、マスク支持体5が装着される真空チャンバ1の側壁に向けて開口するようにしてもよい。
【0023】
また、上記実施形態では、真空蒸発装置に本発明のアライメント装置を適用した場合を例に説明したが、スパッタリング装置、CVD装置やエッチング装置等、マスクを用いて基板に対し処理範囲を制限しつつ所定の処理を行う装置に本発明は適用できる。また、ランプヒータを内蔵する等、真空処理前から真空チャンバ内の一定以上の明度がある場合には、光源は省略することもできる。
【符号の説明】
【0024】
1…真空チャンバ(処理室)2…ステージ(可動の保持手段)、3…XYθステージ(可動の保持手段)、5…マスク支持体(固定の保持手段)、52R、52L…貫通孔(光路)、6…アライメント光学手段、61…光源、62…CCDカメラ(撮像手段)、C…制御部、M…マスク、M1…透孔(マスク用のアライメントマーク)、W…ウエハ(基板)、Wm…アライメントマーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内で相互に対向配置される基板とこの基板に対する処理範囲を制限するマスクとのアライメントを行うアライメント装置であって、
前記基板またはマスクのいずれか一方を保持する、処理室に固定の保持手段と、前記基板またはマスクのいずれか他方を保持する、固定の保持手段に対して相対移動可能な可動の保持手段とを備え、
前記固定の保持手段内に、一端側が可動の保持手段で保持された基板またはマスクのいずれか他方に向けて開口し、その他端側が処理室を画成する壁面に向けて開口する光路が形成され、
前記光路の他端側から光を入射する光源と、この他端側から光路を通して処理基板またはマスクのいずれか他方を撮像する撮像手段と、撮像手段からの出力に応じて可動の保持手段を相対移動させてアライメントを行う制御手段とを更に備えることを特徴とするアライメント装置。
【請求項2】
請求項1記載のアライメント装置において、前記光路が固定の保持手段内に埋設した光ファイバーで構成されることを特徴とするアライメント装置。
【請求項3】
請求項1記載のアライメント装置であって、前記光路が固定の保持手段内に複数回屈曲させて穿設した貫通孔で構成され、この屈曲した個所にプリズムまたは反射レンズを組み付けてなることを特徴とするアライメント装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−1947(P2013−1947A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133670(P2011−133670)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】