説明

アリピプラゾールの湿式造粒医薬組成物

本発明は、アリピプラゾールの湿式造粒医薬組成物、本組成物から錠剤を製造する方法、及び、前記湿式造粒医薬組成物の錠剤を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願番号第60/756,708号(2006年1月5日出願)の利益を請求する。
【0002】
本発明は、アリピプラゾールの湿式造粒医薬組成物、前記組成物から錠剤を製造する方法、及び前記湿式造粒医薬組成物の錠剤を包含する。
【背景技術】
【0003】
アリピプラゾールは、文献に報告されているように、複数の結晶形で存在し得る。例えば、PCT公報WO03/026659には少なくとも9の結晶形が開示されており、その中には1種の水和物と複数種の無水形、例えばタイプI(Type I)及びタイプII(Type II)が含まれている。WO03/026659によれば、第4回日韓合同分離技術シンポジウム報告書(Proceedings of the 4th Japanese-Korean Symposium on Separation Technology)(1996年10月6〜8日)に開示された手法により、極めて高吸湿性の結晶形が得られる。本報告書に開示の手法は、アリピプラゾール無水物のタイプI結晶を産生するものである。その調製は、アリピプラゾールのエタノール溶液から再結晶化することにより、或いはアリピプラゾール水和物を80℃で加熱することにより行なわれる。同報告書には、アリピプラゾール無水物のタイプI結晶を130℃から140℃で15時間加熱することにより、アリピプラゾール無水物のタイプII結晶を調製することができる旨の開示がある。タイプI及びタイプII結晶に加えて、別の無水結晶形も幾つか知られている。PCT公報WO03/026659には、無水物結晶形B、C、D、E、F、又はGと、フォームA(Form A)と命名された水和物形が開示されている。
【0004】
WO03/026659に報告されているように、これら複数の多形(polymorphs)は、一方から他方へと相互に転換し得る。例えば、WO03/026659には、無水形が湿気に晒されると、水分を吸収して水和形へと転換し得ることが開示されている。これによって、WO03/026659に述べられているように、本化合物の生物学的利用能の低下や溶解性の低下など、幾つかの不利点が生じる。アリピプラゾール結晶はその吸湿性ゆえに取り扱いが困難である。処理及び製剤時に結晶が湿気に晒されるのを防ぐために、高価で煩雑な手段を講じなければならないからである。こうした懸念はあるものの、WO03/026659には、アリピプラゾール無水物と種々の担体とを用いて医薬組成物を調製する湿式造粒プロセスが開示されている。
【0005】
WO03/026659には、従来のアリピプラゾール無水物結晶又は無水物フォームB、C、D、E、F、又はGの湿式造粒法において、得られた顆粒を70℃から100℃で乾燥し、この顆粒をサイズ化(sizing)した後、得られた顆粒を再度、70℃から100℃の温度で乾燥することが開示されている。
【0006】
他の新規の結晶アリピプラゾール形態が、PCT公報WO05/058835に開示されている。これらの他形態としては、フォーム(Form)I、II、VII、VIII、X、XI、XII、XIV、XIX、及びXXが挙げられる。
【0007】
医薬組成物の調製や製剤時において、多形転移は望ましくない場合がある。しかしながら、多形の水和や操作によってこうした不要な多形転移が生じ得る。また、製造時の処理によって、元の出発材料とは異なるアリピプラゾール多形が医薬錠剤中に導入されてしまう場合もある。こうしたアリピプラゾール多形は不要な多形であり、その薬剤の生物学的利用能を低下させてしまう場合もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、水和及び/又は予想される多形相互転換が生じるおそれのないアリピプラゾール製剤の調製方法の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によれば、本発明は、錠剤を湿式造粒法により製造する方法であって、アリピプラゾールと、少なくとも1種の希釈剤と、少なくとも1種の錠剤結合剤と、水との混合物を準備する工程、前記混合物を混和して湿潤顆粒を得る工程、前記湿潤顆粒を70℃未満の温度で乾燥し、乾燥顆粒を得る工程、及び、湿潤顆粒が乾燥前に製粉されていない場合には、乾燥顆粒を製粉する工程を含んでなる方法を含有する。中でも、前記湿潤顆粒は約60℃以下の温度で行なうことが好ましい。本方法は更に、少なくとも1種の錠剤潤滑剤を前記乾燥製粉顆粒に加える工程、及び、前記乾燥製粉顆粒を圧縮し、錠剤を得る工程を含んでいてもよい。前記混合物は更に、少なくとも1種の着色剤を含んでいてもよい。好ましい実施形態によれば、前記アリピプラゾールは、無水アリピプラゾールタイプI、タイプII、又はフォームIIのうち、少なくとも1種である。前記アリピプラゾールの粒度分布としては、d(0.9)が約300μm以下であればよい。
【0010】
湿式造粒製剤を用いて得られた錠剤の溶解速度は、約30分後に初期アリピプラゾールの約85重量%以上が溶解している速度である。中でも、湿式造粒製剤を用いて得られた錠剤の溶解速度としては、約30分後に初期アリピプラゾールの約90重量%以上が溶解していることが好ましく、約95重量%以上が溶解していることがより好ましい。
【0011】
別の実施形態によれば、前記希釈剤は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性及び/又は三塩基性)、硫酸カルシウム、粉末セルロース、デキストレート、デキストリン、フルクトース、カオリン、ラクチトール、無水ラクトース、ラクトース一水和物、マルトース、マンニトール、微結晶セルロース、ソルビトール、スクロース、又はスターチである。中でも、前記希釈剤はラクトース一水和物、微結晶セルロース、又はスターチであることが好ましい。ある特定の実施形態によれば、前記希釈剤は前記錠剤の重量当たり約35%から約90%の量で存在する。
【0012】
更に別の実施形態によれば、前記結合剤は、アカシア、アルギン酸、カルボマー、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グルコース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、マルトース、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、又はポビドンである。中でも、前記結合剤はヒドロキシプロピルセルロースであることが好ましい。ある特定の実施形態によれば、前記結合剤は前記錠剤の重量当たり約0.5%から約5%の量で存在する。
【0013】
別の実施形態によれば、前記潤滑剤は、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ポリエチレングリコール、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、タルク、又はステアリン酸亜鉛である。中でも、前記潤滑剤はステアリン酸マグネシウムであることが好ましい。ある特定の実施形態によれば、前記潤滑剤は、前記錠剤の重量当たり約0.5%から約2%の量で存在する。
【0014】
一実施形態によれば、本発明は、アリピプラゾールフォームII、ラクトース一水和物、スターチ、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、赤色色素、及びステアリン酸マグネシウムを含んでなる錠剤を包含する。更に別の実施形態によれば、本発明は、アリピプラゾールタイプI、ラクトース一水和物、スターチ、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びステアリン酸マグネシウムを含んでなる錠剤を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
製剤又は保存時におけるアリピプラゾールの水和に伴う上記問題ゆえに、安定なアリピプラゾールの無水形の開発に的を絞った研究が行なわれてきた。これらの無水形は、より吸湿性が低く、或いは非吸湿性であって、水和やそれに伴い予想される多形転移に耐性を示すことが望まれる。本発明は、安定なアリピプラゾールの無水形の開発に代わる方策を提供するものである。本発明は、アリピプラゾールを湿式造粒する方法と、この湿式造粒の方法論を用いて錠剤を製造する方法とを包含する。この湿式造粒の方法論は、水和を防止又は低減することにより、水和に伴い生じる多形転移を防止又は低減するものである。更には、従来技術の方法とは異なり、本方法が採用する温度によって、前記乾燥工程におけるエネルギー節約が可能となる。
【0016】
本発明は、湿式造粒法により錠剤を製造する方法と、この湿式造粒の方法論を用いて製造された錠剤とを包含する。湿式造粒法を用いた製剤には、圧縮性に乏しい(Poorly compressible)活性成分がよい。圧縮性に乏しい薬剤としては、分子量が高く、ガラス転移温度(Tg)が比較的低いものが挙げられる。これらはプレス機にくっ付き易く、及び/又は、凝集性が低い傾向がある。これらの活性成分を湿式造粒する利点としては、自由流動性の改善、粉末の均質性、圧縮性の向上、及び処理時に発生する微粉の低減等が挙げられる。
【0017】
アリピプラゾールを湿式造粒する方法が開発されたのは、無水アリピプラゾール結晶が湿式造粒法に適していることが明らかになったからである。本明細書において「アリピプラゾール」という語を使用するとき、「無水」という語は、アリピプラゾールが結晶化されている結晶形が、結晶化時の溶媒や水を、結晶格子に組み込まれた形では含有していないが、結晶格子の外部には水を含有していてもよいことを意味する。
【0018】
この湿式造粒法により錠剤を製造する方法は、アリピプラゾールと、少なくとも1種の希釈剤と、少なくとも1種の錠剤結合剤と、水との混合物を準備する工程、前記混合物を混和して、均質な湿潤顆粒を得る工程、前記湿潤顆粒を70℃未満の温度で乾燥し、乾燥顆粒を得る工程、前記乾燥顆粒を製粉する工程、少なくとも1種の錠剤潤滑剤を前記製粉乾燥顆粒に加える工程、及び、前記乾燥顆粒を打錠機により圧縮し、錠剤を得る、湿潤顆粒が乾燥前に製粉されていない場合には、工程を含んでなる。任意ではあるが、少なくとも1種の着色剤を前記混合物に加えれば、任意の所望の着色錠剤を得ることもできる。
【0019】
前記成分を湿式造粒法で混合又は混和する方法は、当業者に知られた方法を用いて実施することが可能である。当業者であれば、実験を殆ど或いは全く行なうことなく、湿潤顆粒を得るために必要な条件を容易に決定することが可能であろう。以下に例示するように、当業者であれば水の量や造粒の時間を調節することにより、顆粒のサイズを乾燥前の湿式製粉を必要としないレベルにすることが可能であろう。
【0020】
湿潤顆粒は乾燥の前には製粉されない。本発明の方法では、顆粒中の塊状物を低減又は除去するため、湿潤顆粒の造粒を行なう。よって、以下に記載するように湿潤顆粒を乾燥することができる。即ち、乾燥による損失が約1〜2%となり、更に顆粒のサイズ化(sizing)をする必要がなくなるまで乾燥工程を続けることが好ましい。製粉された乾燥顆粒は流動性に優れ、容易に圧縮して錠剤とすることができ、得られた錠剤は、硬度範囲が約10から15ストロング−コブ(Strong-Cobb)単位であり、破砕度(friability)が約1%未満となる。
【0021】
前記乾燥工程は、約70℃未満の温度で行なわれる。中でも、前記乾燥工程は約60℃以下の入口温度で行なうことが好ましい。
【0022】
前記の圧縮工程は、錠剤化に通常使用される錠剤圧縮装置(tablet compression apparatus)を用いて行なうことができる。例えば、キリアン打錠機(Kilian tableting press)を用いて錠剤を成形することができる。
【0023】
好ましい実施形態によれば、本方法は、アリピプラゾールフォームIIと、ラクトース一水和物と、スターチと、微結晶セルロースと、ヒドロキシプロピルセルロースと、赤色色素とを混合物の状態で混和する工程、精製水を用いて前記混合物を湿式造粒し、造粒液を得る工程、入口温度約65℃の流動層乾燥機を用いて前記湿潤顆粒を乾燥する工程、振動造粒機を用いて前記乾燥顆粒を製粉する工程、前記乾燥顆粒にステアリン酸マグネシウムを混和する工程、及び、前記第2の混合物を圧縮して錠剤とする工程を含んでなる。アリピプラゾールフォームIIは、そのd(0,9)値が約25μmであることが好ましい。
【0024】
本発明の方法に使用されるアリピプラゾールは任意である。通常、湿式造粒法には、無水アリピプラゾールを使用すればよい。この無水アリピプラゾールは、タイプI、タイプII、又はフォームIIのうち、少なくとも1種であることが好ましい。タイプIのアリピプラゾールは、WO2005/058835に記載の方法に従って、エタノール中で結晶化し、乾燥することによって調製することができる。また、タイプIのアリピプラゾールは、WO03/026659のReference Examplesに従い、上記第4回日韓合同分離技術シンポジウム報告書(1996年10月6〜8日)の記載により製造することもできる。これらの文献は何れも引用によって本明細書に組み入れられる。タイプIIは、WO03/026659に開示されたReference Examplesに従い、アリピプラゾール無水物のタイプI結晶を140℃で15時間加熱することにより得ることができる。フォームIIのアリピプラゾールは、WO05/058835の開示に従って調製することができる。
【0025】
タイプIのアリピプラゾールを特徴付けるX線回折ピークは、8.8、10.6、11.1、12.1、15.0、15.8、17.7、20.4、22.1、及び29.8±0.2度の2θに存在する。タイプIIのアリピプラゾールを特徴付けるX線回折ピークは、10.1、11.7、13.9、15.1、18.2、20.8、21.8、23.5、23.8、及び28.9±0.2度の2θに存在する。アリピプラゾールタイプI及びタイプIIのXRD回折写真をそれぞれ図1及び図2に示す。フォームIIのアリピプラゾールを特徴付けるX線回折ピークは、16.5、18.7、21.9、22.4、及び23.5±0.2度の2θに存在する。
【0026】
医薬組成物中におけるアリピプラゾールの結晶形は、公知の最新技術を使用して観測することができる。これらの技術の例としては、特にX線粉末回折(XRD)や、炭素13、窒素14、又は塩素の固体NMR等の技術が使用できる。一般的には、実験室等で通常利用可能なX線粉末回折や固体NMR用の任意の機器類を、医薬組成物中におけるアリピプラゾールの結晶形を観測するためにも好適に使用できる。アリピプラゾールのX線回折を得るための一般的な方法は、例えばWO03/026659やWO05/058835に開示されている。
【0027】
任意ではあるが、アリピプラゾールは粒子形状を有していてもよい。一般的に、粒度分布d(0.9)は約300μm以下である。アリピプラゾールタイプI又はタイプIIを使用する場合は、粒度分布d(0.9)は約180μmから約270μmである。アリピプラゾールフォームIIを使用する場合は、粒度分布d(0.9)は約25μmである。
【0028】
活性成分の単回投与量は少量であるので、不活性物質を加えて嵩を増加させることにより、錠剤を圧縮に適した実用的なサイズとしてもよい。このためには希釈剤が使用される。混合物に使用される希釈剤としては、錠剤調製に通常使用される希釈剤が挙げられる。希釈剤の例としては、これらに限定されるものではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム (二塩基性及び/又は三塩基性)、硫酸カルシウム、粉末セルロース、デキストレート、デキストリン、フルクトース、カオリン、ラクチトール、無水ラクトース、ラクトース一水和物、マルトース、マンニトール、微結晶セルロース、ソルビトール、スクロース、スターチ等が挙げられる。中でも、希釈剤はラクトース一水和物、微結晶セルロース、又はスターチであることが好ましい。通常、希釈剤は錠剤の重量当たり約35%から約90%の量で存在する。中でも、希釈剤は錠剤の重量当たり約40%から約85%の量で存在することが好ましい。
【0029】
結合剤は、粉末化された材料に凝集特性を付与するために使用される剤である。結合剤により錠剤処方に凝集性を付与することで、圧縮後の錠剤を分解しない状態のまま保つことが可能となる。混合物に使用される錠剤結合剤としては、錠剤調製に通常使用される錠剤結合剤が挙げられる。錠剤結合剤の例としては、これらに限定されるものではないが、アカシア、アルギン酸、カルボマー、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グルコース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、マルトース、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポビドン等が挙げられる。中でも、錠剤結合剤はヒドロキシプロピルセルロースであることが好ましい。通常、錠剤結合剤は錠剤の重量当たり約0.5%から約5%の量で存在する。中でも、錠剤結合剤は錠剤の重量当たり約0.7%から約2%の量で存在することが好ましい。
【0030】
潤滑剤は錠剤製造時に幾つかの機能を有する。潤滑剤の機能の例としては、特に、錠剤材料の機器への付着防止、粒子間摩擦の低減、打ち型(die cavity)からの錠剤排出の容易化等が挙げられる。均質混合物に加えられる錠剤潤滑剤としては、錠剤処方に一般に使用されるものが挙げられる。錠剤潤滑剤の例としては、これらに限定されるものではないが、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ポリエチレングリコール、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。中でも、錠剤潤滑剤はステアリン酸マグネシウムであることが好ましい。通常、錠剤潤滑剤は錠剤の重量当たり約0.5%から約2%の量で存在する。中でも、錠剤潤滑剤は錠剤の重量当たり約0.7%から約1%の量で存在することが好ましい。
【0031】
一実施形態によれば、本発明の湿式造粒法により製造される錠剤の溶解速度は、約30分後に初期アリピプラゾールの85重量%以上が溶解している速度である。中でも、錠剤の溶解速度は、約30分後に初期アリピプラゾールの90重量%以上が溶解している速度であることが好ましく、95重量%以上が溶解している速度であることがより好ましい。溶解試験については後述する。
【0032】
また、本発明は、上述した方法論を用いて製造された錠剤を包含する。一実施形態によれば、本錠剤は、アリピプラゾール、ラクトース一水和物、スターチ、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びステアリン酸マグネシウムを含んでなる。任意により、本錠剤は更に着色剤を含んでいてもよい。別の実施形態によれば、本錠剤は、アリピプラゾールフォームII、ラクトース一水和物、スターチ、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びステアリン酸マグネシウムを含んでなる。好ましい実施形態によれば、本錠剤は、アリピプラゾールフォームII(30mg/錠剤)、ラクトース一水和物(119mg/錠剤)、スターチ(30mg/錠剤)、微結晶セルロース(94mg/錠剤)、ヒドロキシプロピルセルロース(4mg/錠剤)、ステアリン酸マグネシウム(2mg/錠剤)、及び赤色色素(0.06mg/錠剤)を含んでなる。
【0033】
更に別の実施形態によれば、本発明は、アリピプラゾールタイプI、ラクトース一水和物、スターチ、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びステアリン酸マグネシウムを含んでなる錠剤を包含する。好ましい実施形態によれば、本発明は、アリピプラゾールタイプI(30mg/錠剤)、ラクトース一水和物(120mg/錠剤)、スターチ(60mg/錠剤)、微結晶セルロース(60mg/錠剤)、ヒドロキシプロピルセルロース(8mg/錠剤)、及びステアリン酸マグネシウム(2mg/錠剤)を含んでなる錠剤包含する。
【0034】
本発明について、好ましい実施形態に触れながら説明してきたが、当業者であれば本明細書を考慮することにより、他の実施形態についても認識し得るであろう。以下の実施例に触れることにより、本発明を更に定義する。以下の実施例においては、アリピプラゾールの湿式造粒法、及び、湿潤顆粒を用いて得られた錠剤の溶解度について詳細に説明する。当業者には明らかなように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、材料及び方法の双方に種々の修正を加えて実施しても構わない。
【実施例】
【0035】
実施例1:アリピプラゾールフォームIIを含有する30mg錠剤の湿式造粒法による調製
アリピプラゾールフォームII(210g)、ラクトース一水和物NF(839.58g)、スターチNF(210g)、微結晶セルロースNF(658g)、ヒドロキシプロピルセルロースNF(28g)、及び赤色色素(0.42g)の混合物を作製した。アリピプラゾールフォームIIのD(0,9)値は約25μmであった。精製水を造粒液として用いて材料混合物を湿潤造粒した。この湿潤顆粒を、入口温度65℃の流動層乾燥機を用いて乾燥した。その後、この乾燥顆粒を、振動造粒機を用いて製粉又は「サイズ化(sized)」し、10分間混和した。ステアリン酸マグネシウムNF(14g)を篩過して乾燥顆粒に加え、更に5分間混和した。その後、キリアン打錠機を用いてこの混合物を圧縮し、錠剤とした。
【0036】
実施例2:アリピプラゾールタイプIを含有する30mg錠剤の湿式造粒法による調製
アリピプラゾールタイプI(105g)、ラクトース一水和物NF(420g)、スターチNF(210g)、微結晶セルロースNF(210g)、及びヒドロキシプロピルセルロースNF(28g)の混合物を作製した。材料の混合物を、精製水を造粒液として用いて湿潤造粒した。この湿潤顆粒を、入口温度60℃の流動層乾燥機を用いて乾燥した。その後、この乾燥顆粒を、振動造粒機を用いて製粉又は「サイズ化(sized)」し、10分間混和した。ステアリン酸マグネシウムNF(7g)を篩過して混和混合物に加え、更に5分間混和した。その後、キリアン打錠機を用いてこの混合物を圧縮し、錠剤とした。
【0037】
実施例3:実施例1及び2で作製された錠剤の溶解測定
上述した各実施例で得られた錠剤の溶解度を調べた。通常、各バッチの30分後の溶解速度を測定した。溶解は、USP装置II(パドル)を用いて、60rpmで、900mlの0.1N HCl中で、温度37℃で実施した。結果を表1に纏めて示す。
【0038】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】アリピプラゾールタイプIのX線回折パターンを示す。
【図2】アリピプラゾールタイプIIのX線回折パターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリピプラゾール(aripiprazole)医薬組成物を湿式造粒法により製造する方法であって、
アリピプラゾールと、少なくとも1種の希釈剤と、少なくとも1種の錠剤結合剤と、水との混合物を準備する工程、
前記混合物を混和して湿潤顆粒を得る工程、
前記湿潤顆粒を70℃未満の温度で乾燥し、乾燥顆粒を得る工程、及び
湿潤顆粒が乾燥前に製粉されていない場合には、前記乾燥顆粒を製粉して製粉乾燥顆粒を得る工程を備えてなる方法。
【請求項2】
前記乾燥工程において、温度が約60℃以下である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1種の錠剤潤滑剤を前記製粉乾燥顆粒に加える工程、及び、前記製粉乾燥顆粒を打錠機(tablet press)で圧縮し、錠剤を得る工程を更に含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記混合物が更に、少なくとも1種の着色剤を含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記アリピプラゾールが、無水アリピプラゾールタイプI、タイプII、又はフォームIIのうち、少なくとも1種である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記アリピプラゾールの粒度分布d(0.9)が約300μm以下である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記希釈剤が、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性及び/又は三塩基性)、硫酸カルシウム、粉末セルロース、デキストレート(dextrates)、デキストリン、フルクトース、カオリン、ラクチトール、無水ラクトース、ラクトース一水和物、マルトース、マンニトール、微結晶セルロース、ソルビトール、スクロース、又はスターチである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記希釈剤が、ラクトース一水和物、微結晶セルロース、又はスターチである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記希釈剤が、前記錠剤の重量当たり約35%から約90%の量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記結合剤が、アカシア、アルギン酸、カルボマー、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グルコース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、マルトース、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、又はポビドンである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記結合剤がヒドロキシプロピルセルロースである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記結合剤が、前記錠剤の重量当たり約0.5%から約5%の量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記潤滑剤が、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリン(glyceryl behenate)、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ポリエチレングリコール、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、タルク、又はステアリン酸亜鉛である、請求項3記載の方法。
【請求項14】
前記潤滑剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項3記載の方法。
【請求項15】
前記潤滑剤が、前記錠剤の重量当たり約0.5%から約2%の量で存在する、請求項3記載の方法。
【請求項16】
前記錠剤の溶解速度が、約30分後に初期アリピプラゾールの85重量%以上が溶解している速度である、請求項3記載の方法。
【請求項17】
前記錠剤の溶解速度が、約30分後に初期アリピプラゾールの90重量%以上が溶解している速度である、請求項3記載の方法。
【請求項18】
前記錠剤の溶解速度が、約30分後に初期アリピプラゾールの95重量%以上が溶解している速度である、請求項3記載の方法。
【請求項19】
アリピプラゾール医薬組成物を湿式造粒法により製造する方法であって、
アリピプラゾールフォームIIと、ラクトース一水和物と、スターチと、微結晶セルロースと、ヒドロキシプロピルセルロースと、赤色色素とを、混合物の状態で混和する工程、
水を造粒液として用いて前記混合物を湿式造粒する工程、
流動層乾燥機を用い、入口温度を約65℃として、前記湿潤顆粒を乾燥する工程、
振動造粒機を用いて前記乾燥顆粒を製粉する工程、
ステアリン酸マグネシウムを前記乾燥顆粒に混和し、第2の混合物を得る工程、及び、
前記第2の混合物を圧縮して錠剤とする工程を含んでなる方法。
【請求項20】
前記アリピプラゾールフォームIIのd(0,9)値が約25μmである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
アリピプラゾールフォームII、ラクトース一水和物、スターチ、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、赤色色素、及びステアリン酸マグネシウムを含んでなる錠剤。
【請求項22】
アリピプラゾールタイプI、ラクトース一水和物、スターチ、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びステアリン酸マグネシウムを含んでなる錠剤。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−531737(P2008−531737A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558352(P2007−558352)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/009279
【国際公開番号】WO2007/081366
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】