説明

アルカリ剤及び酸化組成物を含む無水組成物を使用してケラチン物質を淡色化するための方法

【課題】ケラチン物質、特に髪などのケラチン繊維を淡色化するための方法であって、大量のアンモニア水の存在による、既存の組成物を用いて使用される方法の欠点を有さないと同時に、淡色化及び前記淡色化の均一性に関して少なくとも同様の効率性を維持する方法を提示すること。
【解決手段】本発明は、ケラチン繊維を淡色化するための方法であって、
(a)組成物の全質量に対して20質量%を超える量の1つまたは複数の脂肪物質、1つまたは複数の界面活性剤、ならびに有機アミン、有機アミン塩及びアンモニウム塩から選択される1つまたは複数のアルカリ剤を含む無水組成物(A)、
(b)1つまたは複数の酸化剤を含む組成物(B)
を使用する方法に関する。
本発明は、また、1つの区画に無水組成物(A)を含み、別の区画に、1つまたは複数の酸化剤を含む組成物(B)を含む、多区画デバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトのケラチン物質、特に髪を淡色化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトのケラチン繊維などのケラチン物質を淡色化するための方法は、極めて多くの場合においてアルカリpH条件下で、少なくとも1つの酸化剤を含む水性組成物を使用することを含む。この酸化剤は、髪のメラニンを分解して、存在する酸化剤の性質に応じて繊維を多少はっきりと淡色化させる役割を有する。したがって、比較的弱い淡色化では、酸化剤は、一般には過酸化水素である。より強い淡色化が求められるときは、通常は過酸化塩、例えば過硫酸塩が過酸化水素の存在下で使用される。
【0003】
問題の1つは、淡色化方法がアルカリ条件下で実施され、最も広く使用されているアルカリ剤がアンモニア水であるということから生じる。アンモニア水は、この種の方法に特に有利である。この理由は、それが、組成物のpHをアルカリpHに調整させて、酸化剤の活性化を可能にできることである。この薬剤は、また、ケラチン繊維を膨張させるとともにスケールを高めて、酸化剤の繊維への浸透を促進するため、反応の効果を増大させる。
【0004】
しかし、この塩基性化剤は、揮発性が非常に強く、使用者は、該方法を通じて放出される特徴的な強く非常に不快なアンモニア臭によって不快になる。
【0005】
また、放出されるアンモニアの量により、この損失を補償するために必要な量を上回る含有量の使用が必要となる。これは、使用者に必ず影響を及ぼし、使用者は、臭いを不快に感じるばかりでなく、より大きい不耐のリスク、例えば、頭皮の刺激(刺痛)に直面することがある。
【0006】
アンモニア水の全部または一部を1つまたは複数の他の標準的な塩基性化剤で完全に置き換える選択肢に関しては、これは、特に、これらのアルカリ剤が酸化剤の存在下で着色繊維の十分な淡色化を与えないため、アンモニア水に基づくものと同じくらい効率的な組成物はもたらさない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Walter Noll's「Chemistry and technology of Silicones」(1968) Academic Press
【非特許文献2】Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27〜32頁、Todd & Byers、「Volatile Silicone Fluids for Cosmetics」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主題の1つは、ケラチン物質、特に髪などのケラチン繊維を淡色化するための方法であって、大量のアンモニア水の存在による、既存の組成物を用いて使用される方法の欠点を有さないと同時に、淡色化及び前記淡色化の均一性に関して少なくとも同様の効率性を維持する方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的及び他の目的は、本発明によって達成され、その1つの主題は、ケラチン物質を淡色化するための方法であって、
(a)組成物の全質量に対して20質量%を超える量の1つまたは複数の脂肪物質、1つまたは複数の界面活性剤、ならびに有機アミン、有機アミン塩及びアンモニウム塩から選択される1つまたは複数のアルカリ剤を含む無水組成物(A)、
(b)1つまたは複数の酸化剤を含む組成物(B)を使用する方法である。
【0010】
本発明は、また、区画の1つに無水組成物(A)を含み、別の区画に1つまたは複数の酸化剤を含む組成物(B)を含む、多区画デバイスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の本文において、他に指定する場合を除いて、数値の範囲の限界値は、その範囲に含まれる。
【0012】
本発明による方法によって処理されるケラチン物質は、例えば、皮膚及び髪である。本発明の方法は、特に、刺激的であり得るアンモニア臭を放出することなく、髪などのケラチン物質の良好なレベルの淡色化を得ることを可能にする。
【0013】
本発明の目的では、「無水組成物」という用語は、含水量が、無水組成物の質量に対して0から3質量%未満、好ましくは2質量%未満、さらにより好ましくは1質量%未満である化粧品組成物を指す。それは、特に、結合水、例えば、塩の結晶水、または本発明による無水組成物の調製に使用される出発材料に吸収される微量の水であることに留意されたい。
【0014】
加えて、1つの特定の実施形態によれば、無水組成物(A)は、通常、ヒトケラチン繊維の染色に使用される直接染料または酸化染料前駆体(塩基及びカップラー)を含まず、あるいはそれを含む場合は、それらの全含有量が組成物の質量に対して0.005質量%を超えない。具体的には、当該含有量において、恐らく組成物のみが染色されることになる。すなわちケラチン繊維に対する染色作用は認められない。
【0015】
無水組成物(A)は、1つまたは複数の脂肪物質を含む。
【0016】
「脂肪物質」という用語は、通常の温度(25℃)及び大気圧(760mmHg)で水に不溶である(溶解度が5%未満、好ましくは1%未満、さらにより優先的には0.1%未満である)有機化合物を指す。それらは、それらの構造に、少なくとも6個の炭素原子を含む少なくとも1つの炭化水素系鎖または少なくとも2つのシロキサン基の鎖を有する。加えて、脂肪物質は、一般には、同じ温度及び圧力条件下で有機溶媒、例えば、クロロホルム、エタノール、ベンゼンまたはデカメチルシクロペンタシロキサンに可溶である。
【0017】
脂肪物質は、特に、低級アルカン、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル、油、特に鉱油、植物油、動物油または合成非シリコーン油、非シリコーンワックス及びシリコーンから選択される。
【0018】
本発明の目的では、脂肪アルコール、脂肪エステル及び脂肪酸は、より特定すると、特に1つまたは複数(特に1から4つ)のヒドロキシル基で任意に置換された、6から30個の炭素原子を含む1つまたは複数の直鎖状または分枝状の飽和または不飽和炭化水素系基を含むことが想定される。それらが不飽和である場合は、これらの化合物は、1から3つの共役または非共役炭素-炭素二重結合を含むことができる。
【0019】
低級アルカンに関しては、これらのアルカンは、好ましくは6から16個の炭素原子を含み、直鎖状または分枝状、任意選択で環式である。例として、該アルカンをヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカンならびにイソヘキサデカン及びイソデカンなどのイソパラフィンから選択することができる。
【0020】
本発明の組成物に使用できる非シリコーン油として、挙げることができる例としては、
-ペルヒドロスクアレンなどの動物由来の炭化水素系油;
-6から30個の炭素原子を含む液体脂肪酸トリグリセリド、例えば、ヘプタン酸またはオクタン酸トリグリセリド、あるいは例えばヒマワリ油、トウモロコシ油、大豆油、マロー油、ブドウ種子油、ゴマ種子油、ハシバミ油、杏仁油、マカダミア油、アララ油、ヒマワリ油、ヒマシ油、アボガド油、カプリル/カプリン酸トリグリセリド、例えば、Stearineries Dubois社が販売するもの、またはMiglyol(登録商標)810、812及び818の商品名でDynamit Nobel社が販売するもの、ホホバ油及びシアバター油などの植物由来の炭化水素系油;
-6から16個の炭素原子を含む、例えばヘキサン、ドデカンもしくはイソヘキサデカンなど、または16個を超える炭素原子を含む、例えば流動パラフィン及びその誘導体、石油ゼリー、液化石油ゼリー、Parleam(登録商標)などの水素化ポリイソブテン、好ましくは、流動パラフィン、石油ゼリー、液化石油ゼリー、ポリデセン及びParleam(登録商標)などの水素化ポリイソブテンなどの無機または合成起源の直鎖状または分枝状炭化水素
-特に炭化水素系フルオロ油が挙げられ;挙げることができるフルオロ油としては、Flutec(登録商標)PC1及びFlutec(登録商標)PC3の商品名でBNFL Fluorochmicals社が販売するペルフルオロメチルシクロペンタン及びペルフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン;ペルフルオロ-1,2-ジメチルシクロブタン;PF 5050(登録商標)及びPF 5060(登録商標)の商品名で3M社が販売するドデカフルオロペンタン及びテトラデカフルオロヘキサンなどのペルフルオロアルカン、またはForalkyl(登録商標)の商品名でAtochem社が販売するブロモペルフルオロオクチル;ノナフルオロメトキシブタン及びノナフルオロエトキシイソブタン;PF 5052(登録商標)の商品名で3M社が販売する4-トリフルオロメチルペルフルオロモルホリンなどのペルフルオロモルホリン誘導体が含まれる。
【0021】
本発明の組成物に脂肪物質として使用できる脂肪アルコールは、オキシアルキル化されていない。それらは、飽和または不飽和の直鎖状または分枝状であり、6から30個の炭素原子、より特定すると、8から30個の炭素原子を含む。セチルアルコール、ステアリルアルコール及びそれらの混合物(セチルステアリルアルコール)、オクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール、オレイルアルコールまたはリノレイルアルコールを挙げることができる。
【0022】
本発明の組成物に使用できる非シリコーンワックスは、具体的には、カルナウバロウ、カンデリラロウ、エスパルトグラスロウ、パラフィンロウ、オゾケライト、オリーブロウ、ライスロウ、水素化ホホバロウ、またはBertin社(フランス)が販売する黒スグリ花の揮発性ロウなどの花の無水ロウなどの植物ロウ、動物ロウ、例えば、蜜ロウまたは変性蜜ロウ(セラベリナ)から選択され、本発明により使用できる他のロウまたはロウ様出発材料は、特に、M82の参照名でSophim社が販売する製品などの海洋性ワックス、ポリエチレンロウまたはポリオレフィンロウ全体である。
【0023】
本発明の組成物に使用できる脂肪酸は、飽和または不飽和であってよく、6から30個の炭素原子、特に9から30個の炭素原子を含むことができる。それらは、より特定すると、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びイソステアリン酸から選択される。
【0024】
該エステルは、飽和または不飽和の、直鎖状または分枝状のC1〜C26脂肪族モノまたはポリ酸と、飽和または不飽和の、直鎖状または分枝状のC1〜C26脂肪族一価または多価アルコールのエステルであり、該エステルの全炭素数は、より特定すると、10個以上である。
【0025】
モノエステルの中でも、ベヘン酸ジヒドロアビエチル;ベヘン酸オクチルドデシル;ベヘン酸イソセチル;乳酸セチル;乳酸C12〜C15アルキル;乳酸イソステアリル;乳酸ラウリル;乳酸リノレイル;乳酸オレイル;オクタン酸(イソ)ステアリル;オクタン酸イソセチル;オクタン酸オクチル;オクタン酸セチル;オレイン酸デシル;イソステアリン酸イソセチル;ラウリン酸イソセチル;ステアリン酸イソセチル;オクタン酸イソデシル;オレイン酸イソデシル;イソノナン酸イソノニル;パルミチン酸イソステアリル;リシノール酸メチルアセチル;ステアリン酸ミリスチル;イソノナン酸オクチル;イソノナン酸2-エチルヘキシル;パルミチン酸オクチル;ペラルゴン酸オクチル;ステアリン酸オクチル;エルカ酸オクチルドデシル;エルカ酸オレイル;パルミチン酸エチル及びパルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-オクチルデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ブチル、セチル、2-オクチルドデシル、ミリスチルまたはステアリルなどのミリスチン酸アルキル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソブチル;リンゴ酸ジオクチル、ラウリル酸ヘキシル、ラウリル酸2-ヘキシルデシルを挙げることができる。
【0026】
さらにこの変形形態の範囲において、C4〜C22ジカルボン酸またはトリカルボン酸のエステル、及びC1〜C22アルコールのエステル、及びモノ、ジまたはトリカルボン酸のエステル、及びC2〜C26ジ、トリ、テトラまたはペンタヒドロキシアルコールのエステルを使用することもできる。
【0027】
特に、セバシン酸ジエチル;セバシン酸ジイソプロピル;アジピン酸ジイソプロピル;アジピン酸ジ-n-プロピル;アジピン酸ジオクチル;アジピン酸ジイソステアリル;マレイン酸ジオクチル;ウンデシレン酸グリセリル;オクチルドデシルステアロイルステアリン酸;モノリシノール酸ペンタエリスリチル;テトライソノナン酸ペンタエリスリチル;テトラペラルゴン酸ペンタエリスリチル;テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル;テトラオクタン酸ペンタエリスリチル;ジカプリン酸プロピレングリコール;エルカ酸トリデシル;クエン酸トリイソプロピル;クエン酸トリイソステアリル;トリ乳酸グリセリル;トリオクタン酸グリセリル;クエン酸トリオクチルドデシル;クエン酸トリオレイル;ジオクタン酸プロピレングリコール;ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール;ジイソノナン酸ジエチレングリコール;及びジステアリン酸ポリエチレングリコールを挙げることができる。
【0028】
上記エステルの中でも、パルミチン酸エチル、イソプロピル、ミリスチル、セチルもしくはステアリル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-オクチルデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ブチル、セチルもしくは2-オクチルドデシルなどのミリスチン酸アルキル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソブチル;リンゴ酸ジオクチル、ラウリル酸ヘキシル、ラウリル酸2-ヘキシルデシル、イソノナン酸イソノニルまたはオクタン酸セチルを使用するのが好適である。
【0029】
該組成物は、脂肪エステルとして、C6〜C30、好ましくはC12〜C22脂肪酸の糖エステル及びジエステルを含むこともできる。「糖」という用語は、アルデヒドまたはケトン官能基を含むまたは含まない、いくつかのアルコール官能基を含み、少なくとも4個の炭素原子を含む酸素含有炭化水素系化合物を指すことが想定される。これらの糖は、単糖、オリゴ糖または多糖であってよい。
【0030】
挙げることができる好適な糖の例としては、スクロース(またはサッカロース)、グルコール、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース、ならびにそれらの誘導体、特にメチル誘導体、例えばメチルグルコースなどのアルキル誘導体が含まれる。
【0031】
脂肪酸の糖エステルを、特に、先述の糖と直鎖状または分枝状の飽和または不飽和のC6〜C30、好ましくはC12〜C22脂肪酸のエステルまたはエステルの混合物を含む群から選択することができる。それらが不飽和である場合は、これらの化合物は、1から3つの共役または非共役炭素-炭素二重結合を含むことができる。
【0032】
この変形形態によるエステルをモノ、ジ、トリ、テトラエステル及びポリエステル、ならびにそれらの混合物から選択することもできる。
【0033】
これらのエステルを、例えば、オレイン酸エステル、ラウリル酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ベヘン酸エステル、ヤシ脂肪酸エステル、ステアリン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、カプリン酸エステル及びアラキドン酸エステル、または特にオレオ-パルミチン酸、オレオ-ステアリン酸及びパルミト-ステアリン酸混合エステルなどのそれらの混合物から選択することができる。
【0034】
モノエステル及びジエステル、特にスクロース、グルコースまたはメチルグルコースのモノまたはジオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレオパルミチン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル及びオレオステアリン酸エステルを使用するのがより特に好適である。
【0035】
挙げることができる例は、ジオレイン酸メチルグルコースである、Glucate(登録商標) DOの商品名でAmercholが販売する製品である。
【0036】
挙げることができる糖と脂肪酸のエステルまたはエステルの混合物の例としては、
-それぞれ、73%のモノエステルならびに27%のジエステル及びトリエステルから、61%のモノエステルならびに39%のジエステル、トリエステル及びテトラエステルから、52%のモノエステルならびに48%のジエステル、トリエステル及びテトラエステルから、45%のモノエステルならびに55%のジエステル、トリエステル及びテトラエステルから、39%のモノエステルならびに61%のジエステル、トリエステル及びテトラエステルから形成されるパルミトステアリン酸スクロース、及びモノラウリン酸スクロースを表すF160、F140、F110、F90、F70及びSL40の商品名でCrodesta社が販売する製品;
-Ryoto Sugar Estersの商品名、例えばB370の参照名で販売され、20%のモノマー及び80%のジ、トリエステル、ポリエステルから形成されたベヘン酸スクロースに対応する製品;
-Tegosoft(登録商標)PSEの商品名でGoldschmidt社が販売するモノ-ジパルミトステアリン酸スクロースが含まれる。
【0037】
本発明の組成物に使用できるシリコーンは、変性されていない、または有機基で変性され、25℃で5×10-6から2.5m2/s、好ましくは1×10-5から1m2/sの粘度を有する、揮発性または不揮発性の環式、直鎖状または分枝状シリコーンである。
【0038】
本発明により使用できるシリコーンは、油、ロウ、樹脂またはゴムの形態であってよい。
【0039】
好ましくは、シリコーンは、ポリジアルキルシロキサン、特にポリジメチルシロキサン(PDMS)、ならびにポリ(オキシアルキレン)基、アミノ基及びアルコキシ基から選択される少なくとも1つの官能基を含む有機変性ポリシロキサンから選択される。
【0040】
有機ポリシロキサンは、Walter Noll's「Chemistry and technology of Silicones」(1968) Academic Pressにより詳細に定義されている。それらは、揮発性または不揮発性であり得る。
【0041】
それらが揮発性であるときは、シリコーンは、より特定すると、60℃から260℃の沸点を有するもの、さらにより特定すると、(i)3から7個、好ましくは4から5個の珪素原子を含む環式ポリジアルキルシロキサンから選択される。これらは、例えば、特にVolatile Silicone(登録商標)7207の商品名でUnion Carbideが、またはSilbione(登録商標)70045 V2の商品名でRhodiaが販売するオクタメチルシクロテトラシロキサン、Volatile Silicone(登録商標)7158の商品名でUnion Carbideが販売するデカメチルシクロペンタシロキサン、及びRhodiaによるSilbione(登録商標)70045 V5、ならびにそれらの混合物である。
【0042】
Union Carbide社が販売するVolatile Silicone(登録商標)FZ3109などの式:
【0043】
【化1】

【0044】
のジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサン型のシクロコポリマーを挙げることもできる。
【0045】
オクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラトリメチルシリルペンタエリスリトール(50/50)の混合物及びオクタメチルシクロテトラシロキサンとオキシ-1,1'-ビス(2,2,2',2',3,3'-ヘキサトリメチルシリルオキシ)ネオペンタンとの混合物などの環式ポリジアルキルシロキサンと有機珪素化合物の混合物;
(ii)2から9個の珪素原子を含み、25℃で5×10-6m2/s以下の粘度を有する直鎖状の揮発性ポリジアルキルシロキサンを挙げることもできる。例は、特にSH 200の商品名でToray Silicone社が販売するデカメチルテトラシロキサンである。この範疇に属するシリコーンは、Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27〜32頁、Todd & Byers、「Volatile Silicone Fluids for Cosmetics」に掲載された記事にも記載されている。
【0046】
不揮発性ポリジアルキルシロキサン、ポリジアルキルシロキサンゴム及び樹脂、上記有機官能基で変性されたポリ有機シロキサン、及びそれらの混合物を使用するのが好ましい。
【0047】
これらのシリコーンは、より特定すると、ポリジアルキルシロキサンから選択され、それらの中でも、主に、トリメチルシリル末端基を含むポリジメチルシロキサンを挙げることができる。シリコーンの粘度は、例えば、ASTM標準445付録Cに従って25℃で測定される。
【0048】
これらのポリアルキルシロキサンの中でも、非限定的に、以下の市販の製品を挙げることができる。
-Rhodiaが販売する40及び70047シリーズのSilbione(登録商標)油またはMirasil(登録商標)油、例えば、70047 V 500500油;
-Rhodia社が販売するMirasil(登録商標)シリーズの油;
-60000mm2/sの粘度を有するDC200などのDow Corning社の200シリーズの油;
-General ElectricのViscasil(登録商標)油及びGeneral ElectricのSFシリーズ(SF 96、SF 18)の一定の油。
【0049】
Rhodia社の48シリーズの油などの、ジメチコノール(CTFA)の名称で知られる、ジメチルシラノール末端基を含むポリジメチルシロキサンを挙げることもできる。
【0050】
この範疇のポリジアルキルシロキサンにおいて、ポリ(C1〜C20)ジアルキルシロキサンであるAbil Wax(登録商標)9800及び9801の商品名でGoldschmidt社が販売する製品を挙げることもできる。
【0051】
本発明により使用できるシリコーンゴムは、特に、単独で、または溶媒中混合物として使用されるポリジアルキルシロキサン、好ましくは、200000から1000000の高度な数平均分子量を有するポリジメチルシロキサンである。この溶媒を揮発性シリコーン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)油、ポリフェニルメチルシロキサン(PPMS)油、イソパラフィン、ポリイソブチレン、塩化メチレン、ペンタン、ドデカン及びトリデカン、またはそれらの混合物から選択することができる。
【0052】
より特に本発明により使用できる製品は、
・鎖の末端がヒドロキシ化されたポリジメチルシロキサン、またはジメチコノール(CTFA)、及びDow Corning社が販売する製品Q2 1401などのシクロメチコン(CTFA)としても知られる環式ポリジメチルシロキサンから形成された混合物;
・General Electric社の製品SF1214 Silicone Fluidなどの環式シリコーンを有するポリジメチルシロキサンゴムから形成された混合物;この製品は、デカメチルシクロペンタシロキサンに対応するSF 1202 Silicone Fluid油に溶解した数平均分子量が500000のジメチコンに対応するSF 30ゴムである;
・異なる粘度を有する2つのPDMS、より特定すると、General Electric社の製品SF 1236などのPDMゴムとPDM油の混合物などの混合物である。製品SF 1236は、20m2/sの粘度を有する、上に定義されているSE 30ゴムと、5×10-6m2/sの粘度を有するSF 96油との混合物である。この製品は、好ましくは、15%のSE 30ゴム及び85%のSF 96油を含有する。
【0053】
本発明により使用できる有機ポリシロキサン樹脂は、以下の単位を含む架橋シロキサン系である。
R2SiO2/2、R3SiO1/2、RSiO3/2及びSiO4/2
(式中、Rは、1から16個の炭素原子を含むアルキル基を表す。)。これらの製品の中でも、特に好適なのは、RがC1〜C4低級アルキル基、特にメチルを表すものである。
【0054】
これらの樹脂の中では、Dow Corning 593の商品名で販売されている製品、またはジメチル/トリメチルシロキサン構造のシリコーンである、Silicone Fluid SS 4230及びSS 4267の商品名でGeneral Electric社が販売する製品を挙げることができる。
【0055】
特にX22-4914、X21-5034及びX21-5037の商品名でShinEtsu社が販売するシロキシ珪酸トリメチル型樹脂を挙げることもできる。
【0056】
本発明により使用できる有機変性シリコーンは、上に定義されており、炭化水素系基を介して結合された1つまたは複数の有機官能基をそれらの構造内に含むシリコーンである。
【0057】
有機変性シリコーンは、上記シリコーンの他に、ポリジアリールシロキサン、特にポリジフェニルシロキサン、及び既に挙げた有機官能基で官能化されたポリアルキルアリールシロキサンであってよい。
【0058】
ポリアルキルアリールシロキサンは、特に、25℃で1×10-5から5×10-2m2/sの粘度を有する直鎖状及び/または分枝状ポリジメチル/メチルフェニルシロキサン及びポリジメチル/ジフェニルシロキサンから選択される。
【0059】
これらのポリアルキルアリールシロキサンの中で、挙げることができる例としては、
-Rhodiaの70 641シリーズのSilbione(登録商標)油;
-RhodiaのRhodoursil(登録商標)70 633及び763シリーズの油;
-Dow CorningのDow Corning 556 Cosmetic Grade Fluid油;
-製品PK20などのBayerのPKシリーズのシリコーン;
-製品PN1000及びPH1000などのBayerのPN及びPHシリーズのシリコーン;
-SF 1023、SF 1154、SF 1250及びSF 1265などのGeneral ElectricのSFシリーズの一定の油の商品名で販売されている製品が含まれる。
【0060】
有機変性シリコーンの中では、
-DC 1248の商品名でDow Corning社が販売するジメチコンコポリオール、またはUnion Carbide社によるSilwet(登録商標)L 722、L 7500、L 77及びL 711油、及びQ2 5200の商品名でDow Corning社が販売(C12)アルキルメチコンコポリオールとして知られる製品などの、C6〜C24アルキル基を任意に含む、ポリエチレンオキシ及び/またはポリプロピレンオキシ基;
-GP 4 Silicone Fluid及びGP 7100の商品名でGenesee社が販売する製品、またはQ2 8220及びDow Corning 929もしくは939の商品名でDow Corning社が販売する製品などの置換または非置換アミン基。置換アミン基は、特に、C1〜C4アミノアルキル基である;
-Silicone Copolymer F-755の商品名でSWS Siliconesが販売する製品、ならびにGoldschmidt社によるAbil Wax(登録商標)2428、2434及び2440などのアルコキシル化基を含むポリ有機シロキサンを挙げることができる。
【0061】
より特定すると、脂肪物質は、室温及び大気圧で液体またはペースト状である化合物から選択される。
【0062】
好ましくは、脂肪物質は、25℃の温度及び大気圧で液体の化合物である。
【0063】
より特定すると、脂肪物質は、脂肪酸以外である。
【0064】
脂肪物質は、好ましくは、低級アルカン、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル、油、特に鉱油、植物油または合成非シリコーン油、及びシリコーンから選択される。
【0065】
好ましくは、本発明による組成物の脂肪物質は、非シリコーンである。
【0066】
一実施形態によれば、脂肪物質は、液化石油ゼリー、ポリデセン、脂肪酸もしくは脂肪アルコールの液体エステル、またはそれらの混合物から選択される。特に本発明による組成物の脂肪物質は、非シリコーン物質である。
【0067】
好ましくは、脂肪物質は、非オキシアルキレン化または非グリセロール化物質である。
【0068】
無水組成物(A)は、少なくとも20%の脂肪物質を含む。脂肪物質濃度は、好ましくは組成物の全質量の20%から95%、さらにより優先的には40%から80%の範囲である。
【0069】
無水組成物(A)は、1つまたは複数の界面活性剤も含む。
【0070】
好ましくは、該界面活性剤は、非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤から選択される。
【0071】
アニオン界面活性剤は、例えば、以下の化合物の塩(特にアルカリ金属塩、特に、ナトリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩、アミノアルコール塩、またはマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩)から選択される。
-アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミドエーテル硫酸塩、アルキルアリールポリエーテル硫酸塩、モノグリセリド硫酸塩;
-アルキルスルホン酸塩、アルキルアミドスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩;
-アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩;
-アルキルスルホコハク酸塩、アルキルエーテルスルホコハク酸塩、アルキルアミドスルホコハク酸塩;アルキルスルホコハク酸塩;
-アルキルスルホ酢酸塩;
-アシルサルコシン酸塩;アシルイセチオン酸塩及びN-アシルタウリン酸塩;
-オレイン酸、リシノール酸、パルミチン酸もしくはステアリン酸、ヤシ油酸または水素化ヤシ油酸などの脂肪酸の塩;
-アルキル-D-ガラクトシドウロン酸塩;
-アシルラクチル酸塩;
-ポリオキシアルキレン化アルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシアルキレン化アルキルアリールエーテルカルボン酸またはポリオキシアルキレン化アルキルアミドエーテルカルボン酸、特に2から50個の酸化エチレン基を含む酸の塩;及び
-それらの混合物。
【0072】
これらの様々な化合物のアルキルまたはアシル基は、有利には、6から24個の炭素原子、好ましくは8から24個の炭素原子を含み、アリール基は、好ましくはフェニルまたはベンジル基を表すことに留意されたい。
【0073】
非イオン界面活性剤は、より特定すると、モノオキシアルキレン化またはポリオキシアルキレン化、モノグリセロール化またはポリグリセロール化非イオン界面活性剤から選択される。オキシアルキレン単位は、より特定すると、オキシエチレンもしくはオキシプロピレン単位、またはそれらの組合せ、好ましくはオキシエチレン単位である。
【0074】
挙げることができるオキシアルキレン化非イオン界面活性剤の例としては、
・オキシアルキレン化(C8〜C24)アルキルフェノール、
・飽和または不飽和の直鎖状または分枝状オキシアルキレン化C8〜C30アルコール、
・飽和または不飽和の直鎖状または分枝状オキシアルキレン化C8〜C30アミド、
・飽和または不飽和の直鎖状または分枝状C8〜C30酸及びポリエチレングリコールのエステル、
・飽和または不飽和の直鎖状または分枝状C8〜C30酸及びソルビトールのポリオキシエチレン化エステル、
・飽和または不飽和オキシエチレン化植物油、
・とりわけ単独または混合物としての酸化エチレン及び/または酸化プロピレンの縮合体が含まれる。
【0075】
これらの界面活性剤は、1から50、好ましくは2から30のいくつかのモル数の酸化エチレン及び/または酸化プロピレンを含む。有利には、非イオン界面活性剤は、オキシプロピレン単位を含まない。
【0076】
本発明の1つの好適な実施形態によれば、オキシアルキレン化非イオン界面活性剤は、オキシエチレン化C8〜C30アルコール、好ましくはオキシエチレン化C18〜C30アルコールから選択される。
【0077】
挙げることができるエトキシル化脂肪アルコールの例としては、酸化エチレンとラウリルアルコールの付加物、特に、9から50個のオキシエチレン基を含むもの、より特定すると、10から12個のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でLaureth-10からLaureth -12);酸化エチレンとベヘニルアルコールの付加物、特に、9から50個のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でBeheneth-9からBeheneth-50);酸化エチレンとセトステアリルアルコール(セチルアルコールとステアリルアルコールの混合物)の付加物、特に10から30個のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でCeteareth-10からCeteareth-30);酸化エチレンとセチルアルコールの付加物、特に10から30個のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でCeteth-10からCeteth30);酸化エチレンとステアリルアルコールの付加物、特に、10から30個のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でSteareth-10からSteareth-30);酸化エチレンとイソステアリルアルコールの付加物、特に、10から50個のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でIsosteareth-10からIsosteareth-50);及びそれらの混合物が含まれる。
【0078】
挙げることができるエトキシル化脂肪酸の例としては、酸化エチレンとラウリル酸、パルミチン酸、ステアリル酸またはベヘン酸の付加物、及びそれらの混合物、特に、9から50個のオキシエチレン基を含むもの、例えば、PEG-9からPEG-50ラウレート(CTFA名:PEG-9ラウレートからPEG-50ラウレート);PEG-9からPEG-50パルミテート(CTFA名:PEG-9パルミテートからPEG-50パルミテート);PEG-9からPEG-50ステアレート(CTFA名:PEG-9ステアレートからPEG-50-ステアレート);PEG-9からPEG-50パルミトステアレート;PEG-9からPEG-50ベヘネート(CTFA名:PEG-9ベヘネートからPEG-50ベヘネート);及びそれらの混合物が含まれる。
【0079】
脂肪アルコール及び脂肪酸のこれらのオキシエチレン化誘導体の混合物を使用することもできる。
【0080】
1つの好適な実施形態によれば、無水組成物(A)は、少なくとも1つのエトキシル化脂肪アルコールを含む。
【0081】
モノグリセロール化またはポリグリセロール化非イオン界面活性剤の例として、モノグリセロール化またはポリグリセロール化C8〜C40アルコールを使用するのが好ましい。
【0082】
特に、モノグリセロール化またはポリグリセロール化C8〜C40アルコールは、下記の式:
RO-[CH2-CH(CH2OH)-O]m-H
(式中、Rは、直鎖状または分枝状C8〜C40、好ましくはC8〜C30アルキルまたはアルケニル基を表し、mは、1から30、好ましくは1から10の範囲の数を表す。)に対応する。
【0083】
本発明の範囲において好適である化合物の例として、4モルのグリセロールを含むラウリルアルコール(INCI名:Polyglyceryl-4 Lauryl Ether)、1.5モルのグリセロールを含むラウリルアルコール、4モルのグリセロールを含むオレイルアルコール(INCI名: Polyglyceryl-4 Oleyl Ether)、2モルのグリセロールを含むオレイルアルコール(INCI名: Polyglyceryl-2 Oleyl Ether)、2モルのグリセロールを含むセテアリルアルコール、6モルのグリセロールを含むセテアリルアルコール、6モルのグリセロールを含むオレオセチルアルコール、及び6モルのグリセロールを含むオクタデカノールを挙げることができる。
【0084】
アルコールは、mの値が統計値を表すのと同様にアルコールの混合物を表すことができ、それは、市販品において、いくつかの種類のポリグリセロール化脂肪アルコールが混合物の形態で共存しうることを意味する。
【0085】
モノグリセロール化またはポリグリセロール化アルコールの中でも、1モルのグリセロールを含むC8/C10アルコール、1モルのグリセロールを含むC10/C12アルコール、及び1.5モルのグリセロールを含むC12アルコールを使用するのが特に好適である。
【0086】
無水組成物(A)における界面活性剤含有量は、より特定すると、無水組成物の質量に対して0.1質量%から50質量%、好ましくは0.5質量%から30質量%である。
【0087】
本発明に有用である無水組成物は、1つまたは複数のアルカリ剤を含む。
【0088】
アルカリ剤を単独または混合物としての有機アミン及び有機アミン塩から選択することができる。
【0089】
当該有機アミンは、好ましくは、25℃におけるpKbが12未満、好ましくは10未満、さらにより有利には6未満のものである。これは、最も高い塩基性度の官能基に対応するpKbであることに留意されたい。
【0090】
挙げることができる有機アミンの例には、1個または2個の第一級、第二級または第三級アミン官能基、及び1個または複数のヒドロキシル基を含む1つまたは複数の直鎖状または分枝状C1〜C8アルキル基を含む有機アミンが含まれる。
【0091】
1から3つの同一または異なるC1〜C4ヒドロキシアルキル基を含むモノ、ジまたはトリアルカノールアミンなどのアルカノールアミンから選択される有機アミンは、本発明における使用に特に好適である。
【0092】
挙げることができるこの種の化合物の中には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-ジメチルアミノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジメチルアミノ-1,2-プロパンジオール及びトリス(ヒドロキシメチルアミノ)メタンがある。
【0093】
下記の式:
【0094】
【化2】

【0095】
(式中、Wは、ヒドロキシル基で任意に置換された、C1〜C6アルキレン残基、またはC1〜C6アルキル基であり;Rx、Ry、Rz及びRtは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子またはC1〜C6アルキル、C1〜C6ヒドロキシアルキルもしくはC1〜C6アミノアルキル基を表す。)を有する有機アミンも使用に好適である。
【0096】
挙げることができる当該アミンの例としては、1,3-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、スペルミン及びスペルミジンが含まれる。
【0097】
本発明の別の変形形態によれば、有機アミンは、アミノ酸から選択される。
【0098】
より特定すると、使用できるアミノ酸は、L、Dまたはラセミ形の天然または合成起源であり、より特定すると、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸及びリン酸官能基から選択される少なくとも1つの酸官能基を含む。アミノ酸は、中性またはイオンの形態であってよい。
【0099】
有利には、アミノ酸は、環またはウレイド官能基に任意に含まれる、さらなるアミン官能基を含む塩基性アミノ酸である。
【0100】
当該塩基性アミノ酸は、好ましくは、下記の式(I):
【0101】
【化3】

【0102】
(式中、Rは、
【0103】
【化4】

【0104】
;-(CH2)3NH2; -(CH2)2NH2; -(CH2)2NHCONH2;
【0105】
【化5】

【0106】
から選択される基を表す。)に対応するものから選択される。
【0107】
式(I)に対応する化合物は、ヒスチジン、リシン、アルギニン、オルニチン及びシトルリンである。
【0108】
本発明に使用できるアミノ酸として、特に、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、アルギニン、オルニチン、シトルリン、アスパラギン、カルニチン、システイン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、N-フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンを挙げることができる。
【0109】
本発明の1つの好適な変形形態によれば、有機アミンは、塩基性アミノ酸から選択される。特に好適なアミノ酸は、アルギニン、リシン及びヒスチジン、またはそれらの混合物である。
【0110】
本発明の別の変形形態によれば、有機アミンは、複素環式の有機アミンから選択される。アミノ酸において既に挙げたヒスチジンの他に、特に、ピリジン、ピペリジン、イミダゾール、1,2,4-トリアゾール、テトラゾール及びベンズイミダゾールを挙げることができる。
【0111】
本発明の別の変形形態によれば、有機アミンは、アミノ酸ジペプチドから選択される。本発明に使用できるアミノ酸ジペプチドとして、特に、カルノシン、アンセリン及びバレインを挙げることができる。
【0112】
本発明の別の変形形態によれば、有機アミンは、グアニジン官能基を含む化合物から選択される。本発明に使用できるこの種の有機アミンとしては、アミノ酸として既に挙げたアルギニンの他に、特に、クレアチン、クレアチニン、1,1-ジメチルグアニジン、1,1-ジエチルグアニジン、グリコシアミン、メトホルミン、アグマチン、N-アミジノアラニン、3-グアニジノプロピオン酸、4-グアニジノ酪酸及び2-([アミノ(イミノ)メチル]アミノ)エタン-1-スルホン酸を挙げることができる。
【0113】
好ましくは、有機アミンは、アルカノールアミンである。より優先的には、有機アミンは、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール及びモノエタノールアミン、またはそれらの混合物から選択される。さらにより優先的には、有機アミンはモノエタノールアミンである。
【0114】
アルカリ剤は、塩の形態の有機アミンであってよい。本発明の目的では、「有機アミン塩」という用語は、上記の有機アミンの有機塩または無機塩を指す。
【0115】
好ましくは、有機塩は、クエン酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩及び酒石酸塩などの有機酸の塩から選択される。
【0116】
好ましくは、無機塩は、ハロゲン化水素酸塩(例えば塩酸塩)、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、リン酸水素塩及びリン酸塩から選択される。
【0117】
本発明による無水組成物(A)に使用できるアンモニウム塩は、好ましくは、以下の酸塩、すなわち炭酸塩、重炭酸塩から選択される。特に好適には、該塩は、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩である。
【0118】
好ましくは、組成物がアンモニアまたはその塩を含む場合は、塩基性化剤の量は、(NH3で表される)アンモニアの量を超える。
【0119】
一般には、無水組成物(A)は、アルカリ剤含有量が前記組成物の質量に対して0.1質量%から40質量%、好ましくは0.5質量%から20質量%の範囲である。
【0120】
好ましくは、該無水組成物は、水溶性有機溶媒を含む。挙げることができる水溶性有機溶媒の例としては、エタノール及びイソプロパノールなどの直鎖状または分枝状C2〜C4アルカノール;ポリオール及びポリオールエーテル、例えば、2-ブトキシエタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルまたはジエチレングリコールモノメチルエーテルもしくはモノエチルエーテル、ならびにベンジルアルコールまたはフェノキシエタノールなどの芳香族アルコール、ならびにそれらの混合物が含まれる。「水溶性溶媒」という用語は、25℃及び大気圧(760mmHg)において液体であり、これらの条件下で水に少なくとも5%可溶である化合物を指す。
【0121】
無水組成物(A)は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性もしくは両性イオン性ポリマーまたはそれらの混合物;無機増粘剤、特に、クレー、タルクなどの充填剤;有機増粘剤、特に、アニオン性、カチオン性、非イオン性及び両性ポリマー結合性増粘剤;酸化防止剤、浸透剤;金属イオン封鎖剤;芳香剤;分散剤;皮膜形成剤;防腐剤;乳白剤などの、髪淡色化組成物に従来使用されている様々な補助剤を含むこともできる。
【0122】
一実施形態によれば、無水組成物は、1つまたは複数の安定化ポリマーを含む。安定化ポリマーは、好ましくは、セルソール系ポリマー、特に非イオン性、カチオン性またはアニオン性、好ましくはカチオン性セルロースエーテルである。これらの安定化ポリマーは、結合性または非結合性であってよい。挙げることができる非結合性セルロースエーテルとしてはヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースが含まれる。挙げることができる結合性セルロースエーテルは、セチルヒドロキシエチルセルロースである。
【0123】
第1の実施形態と組み合わせることができる別の実施形態によれば、無水組成物(A)は、水中油可溶性溶媒直接エマルジョンである。
【0124】
該方法は、1つまたは複数の酸化剤を含む組成物(B)を用いて実施される。
【0125】
より特定すると、酸化剤は、過酸化水素、過酸化尿素、アルカリ金属の臭素酸塩またはフェリシアン化物、及び過酸化塩、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の過硫酸塩、ペルボレート、過酸及びそれらの前駆体、ならびに過炭酸塩から選択される。
【0126】
この酸化剤は、有利には、特に水溶液としての過酸化水素(過酸化水素水溶液)によって構成され、その力価は、より特定すると、1から40容量(0.3%から12%のH2O2)、さらにより優先的には5から40容量(1.5%から12%のH2O2)の範囲であってよい。
【0127】
所望の程度の淡色化の機能として、組成物(B)(1.5%から12%のH2O2)は、過酸化水素の他に、好ましくは過酸化塩から選択されるさらなる酸化剤を含むこともできる。
【0128】
組成物(B)は、一般には、水性組成物である。本発明の目的では、「水性組成物」という用語は、20質量%を超える水、好ましくは30質量%を超える水、さらにより有利には40質量%を超える水を含む組成物を指す。
【0129】
この組成物(B)は、上記の1つまたは複数の水溶性有機溶媒を含むこともできる。それは、1つまたは複数の酸性化剤を含むこともできる。
【0130】
挙げることができる酸性化剤の例としては、無機酸または有機酸、例えば、塩酸、オルトリン酸、硫酸、カルボン酸、例えば、酢酸、酒石酸、クエン酸または乳酸及びスルホン酸が含まれる。
【0131】
通常、組成物(B)のpHは、7未満である。
【0132】
最後に、組成物(B)は、様々な形、例えば溶液、エマルジョンまたはゲルの形態である。
【0133】
無水組成物(A)及び組成物(B)を、中間濯ぎを含めずに連続的に施用することによって本発明の方法を実施することができ、その順序は重要ではない。
【0134】
別の変形形態によれば、無水組成物(A)と組成物(B)を使用時に用時混合することによって得られる組成物を施用して、ケラチン物質を湿らせる、または乾燥させる。本実施形態によれば、(A)/(B)の量の質量比は、0.1から10、好ましくは0.2から2、さらにより良好には0.3から1の範囲である。
【0135】
一変形形態によれば、先述の組成物(A)と(B)を一緒に混合した後に得られる本発明による組成物は、混合後に、脂肪物質の量が20質量%を超え、好ましくは25質量%を超え、さらにより有利には30質量%を超えるような組成物である。
【0136】
加えて、用いられる変形形態に無関係に、((A)及び(B)の用時混合またはそれらの部分的または全体的な連続的施用により得られる)ケラチン物質上に存在する混合物は、一定時間、一般には約1分から1時間、好ましくは5分から30分間にわたって放置される。
【0137】
該方法を通じての温度は、従来的に室温(15から25℃)から80℃、好ましくは室温から60℃である。
【0138】
処理後に、ケラチン物質は、水で濯ぎ、任意選択で洗浄後に水で濯いでから乾燥、または放置して乾燥される。
【0139】
好ましくは、ケラチン物質は、ヒトの髪である。
【0140】
最後に、本発明は、第1の区画に無水組成物(A)を含み、第2の区画に、1つまたは複数の酸化剤を含む水性組成物(B)を含む、多区画デバイスに関する(これらの組成物は既に記載されている)。
【0141】
(実施例)
(実施例1)
以下の組成物を調製する。
【0142】
【表1】

【0143】
使用時に、組成物A1(水中油可溶性溶媒直接エマルジョン)を、20容量のH2O2を含み、pH2.2の水性酸化性組成物と同質量で混合する。
【0144】
次いで、該混合物を自然の栗茶色の髪(色深度=4)の房に施用する。混合物/髪房の浴比は10/1(g/g)である。放置時間は、27℃で30分である。この時間の後、髪房を濯ぎ、次いでElviveマルチビタミンシャンプーで洗浄し、濯いで乾燥させる。
【0145】
(実施例2)
以下の組成物を調製する。
【0146】
【表2】

【0147】
使用時に、組成物A2を、20容量のH2O2を含み、pH2.2の水性酸化性組成物(B2)と同質量で混合する。
【0148】
次いで、該混合物を自然の栗茶色の髪(色深度=4)の房に施用する。混合物/髪房の浴比はそれぞれ10/1(g/g)である。放置時間は、27℃で30分である。この時間の後、髪房を濯ぎ、次いでElviveマルチビタミンシャンプーで洗浄し、濯いで乾燥させる。
【0149】
結果
本発明のエマルジョンA1及びA2は、不快臭を発しない。また、本発明のエマルジョンを用いて得られた淡色化のレベルは、完全に許容可能であり、従来のアンモニア系淡色化組成物と同じレベルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維を淡色化するための方法であって、
(a)無水組成物(A)であって、前記無水組成物の全質量に対して20質量%を超える量の1つまたは複数の脂肪物質、1つまたは複数の界面活性剤、ならびに有機アミン、有機アミン塩及びアンモニウム塩から選択される1つまたは複数のアルカリ剤を含む、無水組成物(A)、
(b)1つまたは複数の酸化剤を含む組成物(B)
を使用する方法。
【請求項2】
無水組成物(A)が、無水組成物(A)の質量に対して40質量%から80質量%の脂肪物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脂肪物質が、室温及び大気圧で液体またはペースト状、好ましくは液体の化合物から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
脂肪物質が、C6〜C16アルカン、非オキシアルキレン化脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル、炭素原子が16個を超える鉱油、植物油、動物油または合成非シリコーン油、シリコーン及び非シリコーンワックスから選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
脂肪物質が、液化石油ゼリー、ポリデセン及び脂肪酸もしくは脂肪アルコールの液体エステル、またはそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
無水組成物(A)が、1つまたは複数の非イオン界面活性剤、より特定すると、モノオキシアルキレン化またはポリオキシアルキレン化、及びモノグリセロール化またはポリグリセロール化非イオン界面活性剤から選択される1つまたは複数の非イオン界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
有機アミンが、好ましくは、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、モノエタノールアミンまたはそれらの混合物から選択されるアルカノールアミン、ならびにアルギニン、ヒスチジン及びリシンまたはそれらの混合物から選択される塩基性アミノ酸であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
無水組成物が、1つまたは複数の結合性または非結合性セルロースエーテルを含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
無水組成物が、1つまたは複数の水溶性溶媒を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
無水組成物が、無水水中油可溶性溶媒直接エマルジョンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
水性組成物(B)が、過酸化水素、過酸化尿素、アルカリ金属の臭素酸塩またはフェリシアン化物、及び過酸化塩、例えば、過硫酸塩、ペルボレート、過酸及びそれらの前駆体、ならびにアルカリ金属またはアルカリ土類金属の過炭酸塩から選択され、好ましくは過酸化水素である1つまたは複数の酸化剤を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
水性組成物(B)が、組成物の全質量に対して、20質量%を超える水、好ましくは30%を超え、さらにより良好には40%を超える水を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
使用時に無水組成物(A)と組成物(B)を用時混合することによって得られる組成物をケラチン物質に施用することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
無水組成物(A)及び水性組成物(B)を連続的に、中間洗浄を含めずにケラチン物質に施用し、施用の順序は重要でないことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ケラチン物質が、ヒトの髪であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
第1の区画に請求項1から10の一項に記載の無水組成物(A)を含み、別の区画に請求項11及び12のいずれかに記載の水性組成物(B)を含む、多区画デバイス。

【公開番号】特開2010−143921(P2010−143921A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−288210(P2009−288210)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】