説明

アルカリ化ココア殻を含む食品およびその方法

【課題】価値のある栄養源としてアルカリ化ココア殻を含む良好なチョコレート風味を有する食品を提供する。
【解決手段】食品中のアルカリ化ココア殻とココア粉末との合計質量基準で少なくとも30質量%のアルカリ化ココア殻を含む食品、(i)アルカリ化剤を用いてココアニブから分離されたココア殻をアルカリ化し、そして(ii)アルカリ化ココア殻を食品に添加することを含む食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ココア殻を含む食品、より詳細には、アルカリ化ココア殻を含む食品に関する。当該食品の製造方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
ココア殻(ココア外皮およびココアかすとしても知られている)は、豆の内側ニブを包むココア豆の外側部分である。ココア豆の殻は、豆の全質量の約12〜15%を構成する。
【0003】
ココアニブと殻とは、ココア豆を砕いて殻を取り除くことによって典型的に分離される。ココア豆は、例えば、機械ローラおよび/または加熱処理(例えば赤外線加熱処理)を用いて砕くことができ、殻とニブとは、その異なる密度に基づいて操作される「風選」として知られているプロセスによって分離することができる。殻とニブとの分離は、ココア豆を発酵した後に実施してもよく、ある特定の風味の発生を助けることができる。ココア豆は殻とニブとの分離の前に焙炒してもよく、豆の風味と香りとを発生させることができ、そして殻の離脱を助けることができる。
【0004】
ココアニブは、殻からの分離に続き、チョコレート、ココア飲料などの種々の食品に使用するためのココア粉末を調製するのに、ニブの脂肪含量を低減し、ニブを粉砕することによって通常処理される。以下は、ココア粉末を調製する典型的なプロセスを説明する:
ココアニブを、初めに通常二段階(例えば、打ち刃ミル粉砕、続くボールミル粉砕)で粉砕して溶液(liquor)を調製する。溶液を典型的には110℃より高い温度に加熱し、高圧下(例えば、540バール)で圧搾して溶液からココアバターの部分を取り除く。次いで、得られたココアケーキは、ココア粉末を調製するのに、予め破砕されなければならず、例えば2−ピンミル(異なる寸法のピン)を使用して二段階で典型的には微粉砕される。そのようなココアニブの処理は、満足な官能特性を有するココア粉末を調製するのに要求されるエネルギーおよび設備(保守費用を含む)に関して高価である。
【0005】
脱脂され粉砕されたココアニブから調製されたココア粉末(以下、「ココア粉末」)のさらなる欠点は、食品中に苦味のある後味を生じさせることである。さらに、ココア粉末はそのカロリー含量に比例して高脂肪含量を有する。ニブの約50〜55質量%を構成するココアニブの脂性ココアバター成分を少なくとも部分的に取り除く要求は、ココア粉末調製の費用に影響する。
【0006】
ココア殻は、一般に、ココア粉末製造の望ましくない副産物とみられている。実際、1973年のEUチョコレート指針は、ココア製品中のココア殻の量を製品の全質量基準で2%を越えないように制限している。結果として、大部分のココア殻は、ココアニブからの分離後に廃棄されるか、もしくは肥料または動物の飼料に利用されている。例えば、特許文献1は、子羊および子牛などの反芻動物の食欲を増進させるために、反芻動物飼料中のココア殻の使用を開示している。
【0007】
特許文献2は、乾燥、脱脂された殻とニブとの質量基準で全ココア豆に相当する殻およびニブ内容物を有する全ココア豆製品を調製するためのプロセスを開示している。この方法は、全ココア豆(すなわち、ニブと殻の両方)の、洗浄、圧搾、粉砕、殺菌工程、乾燥およびさらなる粉砕を含む大規模な処理を要求する。全豆製品は、もし、その脂肪含量がココア殻の水準にまで低減されるべきであるならば、さらに処理されなければならない(例えば、溶媒抽出によって)。
【0008】
ココア殻の抽出物の使用も知られている。例えば、特許文献3は、酸性化エタノール溶液を用いてココア殻を抽出する方法を開示している。抽出物はココア殻残渣から(例えば、フィルタープレスを使用)分離され、清涼飲料などの食品の水溶性の着香および着色材料の調製に用いられる。ココア殻残渣は、好ましくは残渣からのエタノールを回収後に廃棄される。
【0009】
しかしながら、特許文献3に開示されているようなココア殻抽出物は、それらがチョコレート風味とともに添加される食品を提供することができない。抽出物はまた、不溶性の食物繊維などの有用な栄養供給源として適切でなく、食品の組織(例えば、展延性)を改善するのにも適していない。さらに、ココア殻の抽出は、特に、溶媒の無視できない量および設備の要求によって費用がかかり、そして、大部分のココア殻材料が未使用の残渣として後に残されるので、抽出は多量の廃棄物を産出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4070487号明細書
【特許文献2】国際公開第05/004619号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4156030号明細書
【特許文献4】欧州特許第1733624号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ココア殻は、食用に適した価値のある栄養源を提供する。より詳細には、ココア殻は、約55〜65質量%の食物繊維を含有し、これはココア粉末の食物繊維含量のおよそ2倍である。ココア殻はまた、標準のココア粉末および全豆ココア粉末(最小で10〜12質量%)よりも少ない脂肪(約6〜8質量%)を含有する。したがって、ココア殻は、栄養的に有利なココア粉末代替品であり、ココア粉末と比較して繊維含量を増加させ、且つ脂肪含量を低減するのに使用することができる。
【0012】
しかしながら、ココア殻は、それが添加される食品中に繊維質の穀物様風味を上昇させる。このことは、ココア粉末によって調製される食品に匹敵するチョコレート風味を示す食品の調製には好ましくない。
【0013】
したがって、本発明の目的は、食用に適した価値のある栄養源を提供し、かつ、ココア粉末とココア殻とが組み合わされた上記欠点を回避すると同時に、良好なチョコレート風味を有する食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の実施形態は、食品中のアルカリ化ココア殻とココア粉末との合計質量基準で少なくとも30質量%のアルカリ化ココア殻を含む食品である。
【0015】
驚くべきことに、アルカリ化ココア殻は、全ココア豆の全質量基準で豆の殻含量よりも著しく多い上記量で食品に添加されたとき、良好なチョコレート風味を有する食品を提供することが見出された。同時に、非アルカリ化ココア殻に関連した穀物様味およびココア粉末に関連した苦味が回避される。アルカリ化ココア殻は、食品中にシナモン風味などの望ましい果実風味を引き起こすことも見出された。
【0016】
ココア粉末の代替として食品中にアルカリ化ココア殻を上記量で組み入れることは、食品の繊維含量を増加させる。さらに、ココア殻はココアニブよりもはるかに低い脂肪含量を有するので、水圧搾または溶媒抽出などの脱脂プロセスを実施することなしに食品の脂肪含量が低減される。
【0017】
アルカリ化ココア殻は、添加された食品に、ある一定の適用に特に適した特有の組織(例えば、ゼリー様組織)を提供することがさらに見出された。具体的には、アルカリ化ココア殻は、食品の粘度を、非アルカリ化殻に比べて低下させると同時に、ココア粉末に比べて増加させるのに用いることができる。アルカリ化ココア殻は、したがって、酸性化酪農食品(例えば、クリームチーズ)やヨーグルトなどの食品の粘度を制御するのに特に有用である。
【0018】
上記量でのアルカリ化ココア殻の使用はまた、さもなければ廃棄されたであろう分離されたココア殻を、食品中のココア粉末を部分的または完全に置き換えるのに用いることができるので、経済的にも有利である。これにより、チョコレート風味付けされた食品を調製するのに要求されるココア豆の量が低減され、かくして、ココアニブの費用がかかる工程が回避される。分離されたココア殻の使用は、異なる物理化学特性を有するニブと殻とを、同一の工程処理に付する要求を回避する追加の利点を提供する。
【0019】
本発明の別の実施形態は:
(i)ココアニブから分離されたココア殻を、アルカリ化剤を用いてアルカリ化する工程;および
(ii)食品が、食品中のアルカリ化ココア殻とココア粉末との合計質量基準で少なくとも30質量%のアルカリ化ココア殻を含むように、アルカリ化ココア殻を食品に添加する工程;
を含む食品を製造するための方法である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好ましい実施形態による食品の製造方法を示すフローダイヤグラムである。
【図2】本発明の代替的な実施形態による食品の製造方法を示すフローダイヤグラムである。
【図3】天然ヨーグルトドリンクの写真である。
【図4】9質量%のアルカリ化ココア殻を含む天然ヨーグルトドリンクの写真である。
【図5】9質量%の非アルカリ化ココア殻を含む天然ヨーグルトドリンクの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態による、食品中のアルカリ化ココア殻とココア粉末との合計質量基準で少なくとも30質量%のアルカリ化ココア殻を含む食品について、以下に詳細に説明する。
【0022】
食品は、チョコレート風味を有することが望ましい、いずれの食品であってもよい。食品の特別な例は、ココア飲料製剤およびコーヒー飲料製剤などの飲料製剤、チョコレート(チョコレートスプレッドを含む)、ビスケット、(サンドイッチなどの)中身(filling)、ムース、クリーム、ならびに酸性化酪農食品、例えばチーズ(クリームチーズ、カッテージチーズおよびクォークを含む)、サワークリーム、バターミルク、ケフィア、ヨーグルト(飲用ヨーグルトおよびスプーンですくうことができるヨーグルトを含む)およびフロマージュフレを包含する。食品は、好ましくはココア飲料製剤、ヨーグルトまたはクリームチーズ、より好ましくはココア飲料製剤である。ココア飲料製剤は、水またはミルクなどの液体に実質的に溶解する製剤、好ましくは粉末であり、チョコレート風味付けされた飲料を調製する。
【0023】
食品中のアルカリ化ココア殻とココア粉末との合計質量基準で少なくとも30質量%の量のアルカリ化ココア殻を、ヨーグルトやクリームチーズなどの食品中に組み入れることは、ココア殻の高められた水結合能により、より低い割合のアルカリ化殻を含む食品に比較して、食品の粘度を増加させる。一方、アルカリ化ココア殻は、非アルカリ化ココア殻に比較して食品の粘度を低下させるのに用いることができる。これは、殻のアルカリ化により、ココア殻タンパク質とミルクタンパク質との間の相互作用の低減によって引き起こされると考えられる。このように、アルカリ化ココア殻は、食品の粘度を制御するのに効果的である。例えば、アルカリ化ココア殻を、アルカリ化ココア殻とココア粉末との合計質量基準で少なくとも30質量%の量で含むクリームチーズスプレッドは、かなり展延性であり、かつ、独特の組織(例えば、ゼリー様組織)を有し、また、食品は、非アルカリ化ココア殻含有クリームチーズと比較して光沢のある外観を有する。さらに、食品は、冷凍および解凍に対して安定である。
【0024】
用語「ココア殻」は、豆の内側ニブ部分を包み、かつニブから分離できるココア豆の外側部分をいう。ココア殻は、ココア豆を砕き、そしてニブから殻を分離することを含む従来の方法によって得ることができる。例えば、発酵/非発酵(好ましくは発酵)された、焙炒/非焙炒(好ましくは焙炒)されたココア豆を、機械的ローラおよび/または加熱処理によって砕くことができ、そして、殻とニブとを風選によって分離することができる。
【0025】
分離されたココア殻は、さらに処理、たとえば、洗浄および乾燥など、されてもよい。
【0026】
風味発生の観点からココア殻を焙炒するのが好ましい。特に、焙炒は、メイラード反応を介してココア殻の香気を発生させるのに役立つ。ココア豆(およびこれによるココア殻)は、殻とニブとを分離する前に焙炒することができる。焙炒条件は変動してよく;例えば、ココア豆は、およそ115℃の温度で16〜18分間焙炒できる。
【0027】
用語「アルカリ化」は、そのpHを増加するために処理を施したココア殻に適用する。そのような処理を、以下に詳細に記載する。アルカリ化ココア殻のpHは、食品中の穀物様風味を回避するために、好ましくは6.0〜8.5、より好ましくは6.5〜8.0である。
【0028】
好ましい実施形態によれば、食品は、さほど苦味のある香りがしない良好なチョコレート風味を提供し、また、良好な組織を有する食品を提供する観点から、食品中のアルカリ化ココア殻とココア粉末との合計質量基準で30〜50質量%、より好ましくは30〜40質量%のアルカリ化ココア殻を含む。例えば、ココア飲料製剤は、製剤中のアルカリ化ココア殻とココア粉末との合計質量基準で、好ましくは30〜50質量%、より好ましくは30〜40質量%のアルカリ化ココア殻を含み、その結果、製剤から調製される飲料は、伝統的なココア飲料に匹敵するチョコレート味を有し、また、飲料は、良好なテクスチャ(食感)を有する。
【0029】
食品は、食品中の乾燥脱脂アルカリ化ココア殻と乾燥脱脂ココア粉末との合計質量基準で、好ましくは少なくとも30質量%、より好ましくは30〜50質量%のアルカリ化ココア殻を好ましく含む。アルカリ化殻のこの量は、全ココア豆の豆を構成する乾燥脱脂殻とニブとの合計質量基準の殻含量(およそ25質量%以下)より多い。
【0030】
代替の好ましい実施形態において、食品は、食品中のアルカリ化ココア殻とココア粉末との合計質量基準で100質量%のアルカリ化ココア殻を含む。より好ましくは、食品は、チョコレート風味の唯一の供給源としてアルカリ化ココア殻を含む。すなわち、食品は、食品中の全チョコレート風味成分の全質量基準で100質量%のアルカリ化ココア殻を含む。例えば、アルカリ化ココア殻は、ヨーグルトのpHを増加させるのに、また、ココア粉末などの他のココア成分の使用なしに良好なチョコレート風味および組織を有するヨーグルトを提供するのに用いることができる。
【0031】
良好なチョコレート風味および良好な組織を有する食品を提供するために、食品は、食品の全質量基準で1〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%、最も好ましくは5〜13質量%のアルカリ化ココア殻を含むことがさらに好ましい。
【0032】
アルカリ化ココア殻は、好ましくは粉砕され、その結果、より容易に食品内に混和され、そして食品に良好な風味および食感を与える。用語「粉砕された」は、殻粒子の寸法を減少させるために粉砕、破砕、微粉砕、または何等かの他の処理に付された殻をいう。ココア殻は、従来の技法、例えば機械的ミル粉砕を用いて粉砕してよく、これにより、動いている機械部分が殻粒子のサイズを減少させる。機械的ミル粉砕システムの例は、打ち刃ミル、ピンミルおよび差動式ミルを含む。あるいは、特許文献4に記載されているような、空気渦が、殻と動いている機械部品との接触なしにココア殻粒子の寸法を減少させる渦巻き処理装置を用いて、ココア殻は粉砕されてもよい。より好ましくは、ココア殻は、高速風が殻粒子を激しい乱流に付す、ジェットミル粉砕によって粉砕される。これは、殻粒子の寸法を減少させる粒子間衝突を引き起こす。ジェットミル粉砕装置内の回転している分級ホイールが、特定の最大値未満の直径を有する殻粒子のみを通過させ、このようにして装置に存在している粉砕された殻粒子の寸法を制御する。
【0033】
食品中のアルカリ化ココア殻粒子は、最適な風味および食感を有する食品を調製する観点から、80μm未満、より好ましくは40μm未満、最も好ましくは30μm未満のD90値を有することが好ましい。また、10質量%未満、より好ましくは1質量%のアルカリ化ココア殻粒子が75μmより大きい直径を有することも好ましい。
【0034】
食品がココア粉末を含む場合、ココア粉末がアルカリ化されることが好ましい。さらに、ココア粉末はレシチンなどの界面活性剤と混合されてもよい。
【0035】
食品は非アルカリ化ココア殻を含んでもよい。しかしながら、非アルカリ化ココア殻は、食品中のアルカリ化ココア殻の質量基準で50質量%を越えない、より好ましくは30質量%を越えない量で食品中に含有されることが好ましい。食品は非アルカリ化ココア殻を含まないことが最も好ましい。
【0036】
食品は、チョコレート、糖(例えば、グルコースまたはスクロース)、クリーム、バター、ヘーゼルナッツペースト、風味料(例えば、バニラおよび/またはヘーゼルナッツ風味料)、および界面活性剤(例えば、レシチン)などの追加の成分を含んでもよい。当該追加の成分は、食品の85質量%まで、好ましくは80質量%を越えない、最も好ましくは75質量%を越えない構成であればよい。
【0037】
アルカリ化ココア殻の含水量は、殻の全質量基準で好ましくは8質量%未満、より好ましくは5質量%未満である。
【0038】
本発明の別の実施形態によれば、上記のアルカリ化ココア殻を含む食品は、
(i)ココアニブから分離されたココア殻を、アルカリ化剤を用いてアルカリ化する工程;および
(ii)食品が、食品中のアルカリ化ココア殻とココア粉末との合計量基準で少なくとも30質量%のアルカリ化ココア殻を含むように、アルカリ化ココア殻を食品に添加する工程;
を含む方法によって製造される。
【0039】
アルカリ化条件は、アルカリ化ココア殻の所望のpHおよびアルカリ化ココア殻が添加される食品の独自性に応じて変動できる。
【0040】
ココア殻は、殻を水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸アンモニウム((NH42CO3)(例えば、セスキ炭酸アンモニウム)、重炭酸アンモニウム(NH4HCO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)およびこれらの混合物から選択される1種または複数種のアルカリ化剤を含む水溶液または懸濁液と混合することによってアルカリ化することができる。好ましいアルカリ化剤は、水酸化ナトリウム、炭酸アンモニウムまたはこれらの混合物である。例えば、水酸化ナトリウムおよび炭酸アンモニウムを含む水溶液を用いてアルカリ化されたココア殻を含むココア飲料製剤は、アルカリ化殻が30質量%以上、さらには50質量%以上のココア粉末を置き換えたとき、ココア粉末を含む伝統的な飲料製剤に類似したチョコレート風味を与える。溶液中の水酸化ナトリウムの質量の炭酸アンモニウムの質量に対する比は、好ましくは0.25〜0.50である。一方で、水酸化ナトリウム単独の使用は、ヨーグルトなどの食品にチョコレート味と同じく果実の香りを与えるに用いることができる。炭酸アンモニウムを唯一のアルカリ化剤として使用するココア殻のアルカリ化は、食品にシナモン様の香りを与えるのに用いることができる。
【0041】
アルカリ化剤は、殻が添加される食品に良好な風味およびテクスチャを与えるために、乾燥脱脂殻としてのココア殻の質量基準で4〜25質量%、より好ましくは10〜20質量%、最も好ましくは13〜17質量%の量で好ましくは使用される。
【0042】
ココア殻は、ココア殻の全質量基準で30〜70質量%、最も好ましくは約35質量%の水中でアルカリ化剤と混合されることが好ましい。
【0043】
ココア殻は、StephenクッカーまたはBarthアルカリ化装置などの従来の装置を用いて、殻とアルカリ化剤とを混合することによってアルカリ化してもよい。アルカリ化は、反応物の効率的な混合を与え、また、アルカリ化の間の殻粒子の凝集を防止するために、反応槽内にホモジナイザ(ロータ−ステータ装置)を有する多機能ミキサを用いて好ましくは実施する。
【0044】
ココア殻は、殻とアルカリ化剤とを混合する前に、所定の温度、好ましくは80〜100℃に加熱してもよい。次いで、アルカリ化反応を所定の期間の間、制御条件下で実施する。特に、ココア殻とアルカリ化剤とを70〜180℃、より好ましくは90〜130℃の温度で、1〜10バール、より好ましくは2〜8バールの圧力下で、30〜120分、好ましくは40〜80分、より好ましくは約60分間混合することが好ましい。
【0045】
ココア殻は、殻がニブからの分離後に粉砕されないことを意味している「全」殻としてアルカリ化してよい。しかしながら、ココア殻は、ココアニブから分離された後(例えば、風選によって)で、かつ、殻がアルカリ化される前に粉砕されることが好ましい。これは、上述の粉砕方法を用いて達成されてよく、また、好ましくはジェットミル粉砕によって達成される。殻をアルカリ化する前のココア殻の粉砕は、殻の処理機能を改善する。特に、全ココア殻は、殻の処理、特に殻のアルカリ化を妨げ得る量で水を吸収することが見出されている。一方で、粉砕されたココア殻は全ココア殻に比べて水と結合しにくいことが見出されており、このことは、粉砕された殻をより容易にアルカリ化させる。この点で、ココア殻は、殻のアルカリ化の前に40μm未満のD90値、より好ましくは25μm以下のD90値を有することが好ましい。
【0046】
ココア殻は、アルカリ化の間に生成した殻凝集物を破壊するために、アルカリ化の後で粉砕されてもよい。そのようなアルカリ化後の粉砕は、殻の食品内へのより容易な取り込みを可能にし、これにより、良好な風味、組織(食感)および外観を食品に付与する。粉砕は、上述のいずれの方法によって実施してもよい。ココア殻がアルカリ化の前に粉砕される場合、アルカリ化殻の機械的粉砕で十分であり、殻凝集物を分離することができる。しかしながら、殻は上述の多機能撹拌装置内でアルカリ化されることが好ましい。これにより、殻凝集物の形成が多機能撹拌装置内のホモジナイザによって防止されるため、アルカリ化後に殻を粉砕する要求を回避することができる。全ココア殻がアルカリ化される場合、アルカリ化殻をジェットミル粉砕によって粉砕して殻粒子の寸法を効果的に減少させることが好ましい。
【0047】
より好ましくは、ココア殻は、殻のアルカリ化の前および後に粉砕される。
【0048】
アルカリ化ココア殻は、上記のように、好ましくは80μm未満、より好ましくは40μm未満、最も好ましくは30μm未満のD90値を有する。
【0049】
ココア殻は、アルカリ化後および食品への殻の添加の前に乾燥することがさらに好ましい。ココア殻は、殻の粉砕を容易にするために、アルカリ化後の殻の粉砕の前に乾燥してもよい。アルカリ化殻は、高温での真空下の乾燥などの従来の方法を用いて乾燥してもよい。これは、アルカリ化殻を適切に乾燥させるのに十分な期間、例えば、粉砕されたアルカリ化殻については60〜120分、全アルカリ化ココア殻についてはおよそ4時間にわたって実施すればよい。食品に添加されるアルカリ化ココア殻は、アルカリ化ココア殻の全質量基準で好ましくは8質量%未満、より好ましくは5質量%未満の含水量を有する。
【0050】
ココア殻は、殻のアルカリ化後および殻の食品への添加の前にさらに加工してよい。例えば、アルカリ化殻は、レシチン化されてもよい。
【0051】
あるいは、ココア殻は、アルカリ化装置中にある間にレシチン化することができる。
【0052】
ココア殻は焙炒されることが好ましい。殻は、ココアニブから分離される前および後、ならびに殻のアルカリ化の前および後に焙炒してよい。好ましくは、順次、ココア豆(およびこれによる殻)が焙炒され、殻がニブから分離され、そして殻がアルカリ化される。
【0053】
ココア豆は、豆の任意選択的な焙炒の前ならびにニブおよび殻の分離の前に滅菌工程に付してもよい。滅菌は、いずれの従来の方法によって実施してもよい。例えば、ココア豆は、Buhler法を用いて滅菌することができ、これにより豆は、加熱(130〜250℃)および加圧(300〜550kPa)された蒸気によって短時間(0.5〜5分)で処理される。
【0054】
アルカリ化ココア殻は、殻を食品と混和することによって食品に添加してよい。混和は、従来の方法を用いて実施してよい;例えば、アルカリ化ココア殻を食品中に密に混和するために、Thermomix(商標)ミキサ、Roversi(商標)クッカー、リボンブレンダ、APV−リクイバータ(liquiverter)、Stephenクッカーまたは同様の設備などの従来の混合設備を用いてアルカリ化ココア殻を食品と混和することができる。添加されたアルカリ化ココア殻を有する食品は、例えばココア飲料製剤の場合には凝集および/もしくはレシチン化、または例えば酸性化酪農食品の場合には低温殺菌および/もしくは充填などのさらなる加工に付してもよい。充填工程は、高温充填(>65℃)であってもよく、または衛生的な低温充填(<40℃)であってもよい。
【0055】
特に好ましい実施形態によれば、生ココア豆を滅菌し、焙炒し、そして豆のニブおよび殻を風選によって分離する。次いで、殻をジェットミル粉砕によって粉砕し、アルカリ化し、乾燥し、そして、殻を食品に添加する前に、任意選択的に機械的に粉砕して凝集物を分離する。この方法を図1に示す。
【0056】
代替の実施形態によれば、生ココア豆を滅菌し、焙炒し、豆のニブおよび殻を風選によって分離する。次いで、全殻をアルカリ化し、乾燥し、そして食品に添加する前にジェットミル粉砕によって粉砕する。この方法を図2に示す。
【0057】
本発明のさらなる実施形態は、チョコレート風味を有する食品を提供するための、アルカリ化ココア殻の使用である。食品は上記の通りであり、好ましくはココア飲料製剤、酸性化酪農食品またはヨーグルトである。好ましくは、アルカリ化ココア殻は、唯一のチョコレート風味料として食品に使用する。アルカリ化殻を上記のように粉砕することも好ましい。
【実施例】
【0058】
本発明を以下の実施例によって説明する。別途記載しない限り、全ての量は、食品の全重量基準による質量パーセント(質量%)である。
【0059】
レーザ回折による粒径の決定
ココア殻/ココア粉末粒子の寸法を体積分布に基づいた相当直径として測定した。例えば、40μmのD90値は、90体積%の粒子が、体積分布に基づいて40μm以下の相当直径を有することを意味する。
【0060】
ココア殻/ココア粉末試料の体積分布は、Mie光散乱に基づいて操作するMalvern装置においてレーザビームを介してサンプルの分散物を循環させることによって生じたレーザ回折パターンを解析することによって作成された。
【0061】
回折パターンは、Fraunhofer理論を用いて解析され、仮想球形粒子を基準にした相当直径(D90値)から粒径分布を作成することで、測定された。
【0062】
分散試料は、ココア殻/ココア粉末試料を反転および撹拌によって容器中で激しく最初に混合することによって調製した。次いで、サンプル約2gを少量のAkomed R(商標)と混合して滑らかなペーストを形成した。ペーストの一定量(160mg±20mg)を秤量して、きれいな丸底チューブ内に入れ、これに20mlのAkomed R(商標)を添加した。超音波プローブを2分間最大移動量で用いてサンプルを分散させた。
【0063】
スティーブンス値の決定
食品のスティーブンス値は、特定の温度での食品の堅さを示す。
【0064】
10℃での食品のスティーブンス値(St10値)は、2mm/秒の貫入速度で10mmの深さまで食品の試料内に投与された円錐(45°)プローブのピークの貫入力(グラム)をスティーブンスLFRAテクスチャアナライザを用いて測定することによって測定した。試料を200gの量でタブに収容した。試験の前に、試料を混合することなく10℃の温度で2日間貯蔵してサンプルを平均化した。
【0065】
報告された食品のスティーブンス値は、3つの食品試料について記録されたスティーブンス値の平均であり、試料のスティーブンス値の標準偏差は10%以下である。
【0066】
評価
パネル試験
Kraft Foods GTQ Munichの乳製品および製菓部門からの10人の官能試験の専門家により、パネル試験によって食品を評価した。食品を目隠しして味わい、風味、組織および外観を格付けした。結果は、各試験者によって与えられた格付けの平均である。
【0067】
参考例
基準ココア飲料は、20gの以下の下記ココア飲料製剤(KABA(商標)、Kraft Foods社製)を200mlの冷蔵ミルク(6〜10℃;1.5%脂肪)と混合することにより調製された。
【0068】
KABA(商標)組成:
氷砂糖 58.11%
デキストロース一水和物 21.63%
アルカリ化、レシチン化ココア粉末 19.21%
水凝縮物 0.70%
塩化ナトリウム 0.30%
風味料 0.05%
総脂質: 3.0%
総繊維: 5.6%
上記組成のココア粉末は、大豆レシチンを添加した減脂(11質量%脂肪)アルカリ化ココア粉末である。ココア粉末は、健康な、十分に発酵した西アフリカ産ココア豆(主にコートジボワール地域から)のニブから調製される。ココア粉末は20.07μmのD90値を有し、ココア粉末の含水量はココア粉末の質量基準で2.5質量%である。
【0069】
[実施例1]−ココア飲料製剤
コートジボワール地域からのココア豆を115℃で焙炒し、豆の殻およびニブを従来の風選によって分離した。次いで、ジェットミル粉砕装置を用いて、焙炒された全ココア殻を15〜21℃の温度および6.9バールの圧力で粉砕した。殻は、75kg/時間の速度で装置内に供給され、装置内の圧縮空気の流量は27〜35m3/分であった。粉砕されたココア殻粒子は24.50μmのD90値および5.05のpHを有した。
【0070】
焙炒され、粉砕されたココア殻の8kgをBarthアルカリ化装置内に供給し、そして20分間、90℃の温度に加熱した。2800mlの水中、295gの水酸化ナトリウムの水溶液(乾燥脱脂ココア殻としてのココア殻の質量基準で4.05質量%のNaOH、およびココア殻の質量基準で35質量%の水)を5分間にわたってクッカー内に注入し、そして反応混合物を2.3バールの圧力下で134℃に加熱した。60分後、混合物を115℃で60分間、真空下で乾燥した。
【0071】
アルカリ化ココア殻は、32.00μmのD90値を有した。アルカリ化殻のpHは6.53であった。アルカリ化殻の質量基準で、殻の含水量は3.90質量%であり、殻の脂肪含量は7.00質量%であった。
【0072】
上記KABA(商標)製剤中のアルカリ化レシチン化ココア粉末の30質量%を上記アルカリ化ココア殻で置き換えたことを別にして、KABA(商標)製剤に相当するココア飲料製剤を製造した。殻は、従来の混和機を用いてココア飲料製剤と混和された。得られたココア飲料製剤は以下の組成を有した:
氷砂糖 58.11%
デキストロース一水和物 21.63%
アルカリ化レシチン化ココア粉末 13.45%
アルカリ化粉砕ココア殻 5.76%
水凝縮物 0.70%
塩化ナトリウム 0.30%
風味料 0.05%
全脂肪: 2.81%
全繊維: 6.0%
プラスチックカップ中で20gの上記ココア飲料製剤を200mlの冷蔵ミルク(6〜10℃;1.5%脂肪)と混合し、ココア飲料を調製した。ココア飲料の外観および風味を参考例で調製した基準ココア飲料に対して評価した。結果を以下の表1にまとめる。
【0073】
[実施例2および3]
ココア飲料製剤中のアルカリ化ココア殻の量およびココア粉末の量を以下の表1に示すような量に変更したことを除いて、実施例1の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0074】
[実施例4]
2800mlの水中295gのセスキ炭酸アンモニウムの水溶液(乾燥脱脂ココア殻としてのココア殻の質量基準で4.05質量%のNH2CO2NH4・NH4HCO3、およびココア殻の質量基準で35質量%の水)を用いてココア殻をアルカリ化したことを除いて、実施例1の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0075】
アルカリ化ココア殻は31.50μmのD90値を有した。アルカリ化殻のpHは5.65であり、殻の含水量はアルカリ化殻の質量基準で4.00質量%であった。
【0076】
[実施例5および6]
ココア飲料製剤中のアルカリ化ココア殻の量およびココア粉末の量を以下の表1に示すように変更したことを除いて、実施例4の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0077】
[実施例7]
2800mlの水中960gのセスキ炭酸アンモニウムの水溶液(乾燥脱脂ココア殻としてのココア殻の質量基準で13.19質量%のNH2CO2NH4・NH4HCO3、およびココア殻の質量基準で35質量%の水)を用いてココア殻をアルカリ化したことを除いて、実施例1の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0078】
アルカリ化ココア殻は27.30μmのD90値を有した。アルカリ化殻のpHは5.77であった。アルカリ化殻の質量基準で、殻の含水量は4.80質量%であり、殻の脂肪分は8.60質量%であった。
【0079】
[実施例8および9]
ココア飲料製剤中のアルカリ化ココア殻の量およびココア粉末の量を以下の表1に示すように変更したことを除いて、実施例7の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0080】
[実施例10]
2800mlの水中960gのセスキ炭酸アンモニウムおよび295gの水酸化ナトリウムの水溶液(乾燥脱脂ココア殻としてのココア殻の質量基準で13.19質量%のNH2CO2NH4・NH4HCO3、および4.05質量%のNaOH、ならびにココア殻の質量基準で35質量%の水)を用いてココア殻をアルカリ化したことを除いて、実施例1の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0081】
アルカリ化ココア殻は34.10μmのD90値を有した。アルカリ化殻のpHは7.87であった。アルカリ化殻の質量基準で、殻の含水量は5.60質量%であり、殻の脂肪分は7.65質量%であった。
【0082】
[実施例11]
ココア飲料製剤中のアルカリ化ココア殻の量およびココア粉末の量を以下の表1に示すように変更したことを除いて、実施例10の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0083】
[実施例12]
2800mlの水中510gの炭酸カリウムの水溶液(乾燥脱脂ココア殻としてのココア殻の質量基準で7.0質量%のK2CO3、およびココア殻の質量基準で35質量%の水)を用いてココア殻をアルカリ化したことを除いて、実施例1の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0084】
アルカリ化ココア殻は32.80μmのD90値を有した。アルカリ化殻のpHは6.74であった。アルカリ化殻の質量基準で、殻の含水量は7.30質量%であり、殻の脂肪分は7.65質量%であった。
【0085】
[実施例13]
ココア飲料製剤中のアルカリ化ココア殻の量およびココア粉末の量を以下の表1に示すように変更したことを除いて、実施例12の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0086】
(比較例1)
焙炒され、粉砕されたココア殻をアルカリ化しないことを除いて、実施例1の飲料と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0087】
(比較例2〜4)
ココア飲料製剤中の非アルカリ化ココア殻の量およびココア粉末の量を以下の表1に示すように変更したことを除いて、比較例1の記載と同様の方法でココア飲料を調製した。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
表1の結果により、製剤中のアルカリ化ココア殻とココア粉末との合計質量基準で少なくとも30質量%の量でアルカリ化ココア殻を含む製剤から調製されたココア飲料は、許容されるチョコレート風味を有する一方で、非アルカリ化ココア殻に関連する穀物様の香りを回避することを示す。アルカリ化ココア殻は他の独特の風味も提供する。同時に、アルカリ化ココア殻はココア粉末と比較して栄養的利益(より高い繊維含量およびより低い脂肪含量)および経済的利益(加工費用の低減および殻の低減された廃棄)を提供する。
【0091】
[実施例14]−クリームチーズスプレッド
以下に示す組成を有する低脂肪クリームチーズスプレッドは、実施例12で調製されたアルカリ化ココア殻をクリームチーズスプレッドベースと他の列挙成分と混和することによって調製された。クリームチーズスプレッドベースはココア殻以外の成分と一緒にThermomix(商標)ミキサ(グレード2〜3、800rpm)中で混合し、7〜8分間、50℃の温度に加熱した。次いでココア殻を混合物に添加し、温度を60℃に上げた。混合は、初めに800rpmの混合速度で2分間、続いて82℃で3分間行われ、食品を低温殺菌した。混合された食品を65℃の温度でプラスチックカップ内に200g分割で充填し、そして4℃で貯蔵した。
クリームチーズスプレッドの組成:
Philadelphia Light FWPC(商標)クリームチーズスプレッド
(Kraft Foods社製)(12%脂肪) 50.7%
クリーム(30%脂肪) 17.9%
スクロース 15.3%
アルカリ化粉砕ココア殻
(7.65%脂肪;60%繊維) 12.6%
バター(82.5%脂肪) 3.5%
スプレッドは、オレオクッキーを思い出させる独特のチョコレートおよびアルカリ−ココア風味を有し、また、スプレッドは穀物の香りを生成しなかった。スプレッドは、黒色、滑らかなテクスチャ、光沢のある外観、および中身(filling)として特に適切にする良好な展延性も有した。4℃で44日間冷蔵した後のスプレッドのSt10値は60gであることが見出された。スプレッドは6.28のpHを有した。
【0092】
(比較例5)
ココア殻をアルカリ化しないことを除いて、以下に示す組成を有する低脂肪のクリームチーズスプレッドを実施例14の記載と同様の方法で調製した。非アルカリ化ココア殻は、24.50μmのD90値を有した。
Philadelphia Light FWPC(商標)クリームチーズスプレッド
(Kraft Foods社製)(12%脂肪) 50.7%
クリーム(30%脂肪) 17.9%
スクロース 15.3%
非アルカリ化粉砕ココア殻
(6%脂肪;60%繊維) 12.6%
バター(82.5%脂肪) 3.5%
スプレッドは良好なチョコレート風味を有したが、穀物様の後味を示した。4℃で44日間冷蔵した後のスプレッドのSt10値は95gであることが見出された;すなわち、スプレッドの粘度は、実施例14で調製されたスプレッドの粘度よりも高かった。スプレッドは5.04のpHを有した。
【0093】
実施例14および比較例5から、アルカリ化ココア殻の使用が繊維による穀物味を回避し、そしてクリームチーズスプレッドに独特のチョコレート風味および組織を与えることが結論づけられる。比較例5のスプレッドと比較した実施例14のスプレッドのpHの増加は、スプレッドの粘度の増加があまり著しくないことに関与していると考えられる。
【0094】
[実施例15]−飲用ヨーグルト
9質量%のココア殻を含みココア粉末を含まないチョコレート風味付けされた飲用ヨーグルトは、Thermomix(商標)ミキサにおいて、実施例10で調製されたアルカリ化ココア殻50gを天然液体ヨーグルトドリンク(1%脂肪)500mlに混ぜ込むことによって調製した。混合は、最初に、3rpmの混合速度で、74.4℃の温度に混合物を加熱しながら、6分間にわたって実施された。さらなる混合を2rpmおよび70℃で5分間実施した。続いて混合物をカップ内に200g分割で加熱充填し、4℃で貯蔵した。
【0095】
ヨーグルトは、良好なダークチョコレート様の風味を有することが見出され、また、ヨーグルトの酸味はヨーグルトベースと比較して減少した(ヨーグルトのpHは5.81であったが、ヨーグルトベースのpHは4.09であった)。ヨーグルトの色は暗褐色(ダークチョコレート様)であった。
【0096】
ヨーグルトベースの粘度は、アルカリ化ココア殻の添加によって実質的に変化しなかった。したがって、ヨーグルトは、滑らかな組織を有しつつ、容易に飲用できる状態であった。このことは、図3(100%ヨーグルト)を図4(91%ヨーグルト、9%アルカリ化ココア殻)と比較することによって示される。
【0097】
(比較例6)
ココア殻をアルカリ化しなかったことを除いて、実施例15での記載と同様の方法でチョコレート風味付けされた飲用ヨーグルトを調製した。
【0098】
ヨーグルトは良好なチョコレート風味を有することが見出された。しかし、ヨーグルトは穀物の後味を有した。ヨーグルトの色は淡褐色(ミルクチョコレート様)であった。
【0099】
ヨーグルトの粘度は非アルカリ化ココア殻の添加によって明白に増加し、ヨーグルトが滑らかな組織を有するようになったが、容易にスプーンですくうことができ、ドリンクとしては適切でなかった。このことは、図3(100%ヨーグルト)および図4(91%ヨーグルト、9%アルカリ化ココア殻)を図5(91%ヨーグルト、9%非アルカリ化ココア殻)と比較することによって示される。
【0100】
実施例15および比較例6から、ココア粉末が存在しない場合であっても、アルカリ化ココア殻が、非アルカリ化殻と比較して、ヨーグルトのpHを増加させ且つヨーグルトに独特の改善されたチョコレート風味を与えるのに有用であることが結論づけられる。アルカリ化殻は、ヨーグルトの粘度がアルカリ化殻の添加によって著しく増加しないため、非アルカリ化ココア殻と比較して、ヨーグルトがドリンクとして機能する能力を維持するためにも有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品中のアルカリ化ココア殻とココア粉末との合計質量基準で少なくとも30質量%のアルカリ化ココア殻を含むことを特徴とする食品。
【請求項2】
食品中のアルカリ化ココア殻とココア粉末との合計質量基準で少なくとも30〜50質量%のアルカリ化ココア殻を含むことを特徴とする、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
アルカリ化ココア殻が、食品中のチョコレート風味の唯一の供給源であることを特徴とする、請求項1に記載の食品。
【請求項4】
食品が、ココア飲料製剤、酸性化酪農食品またはヨーグルトであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の食品。
【請求項5】
アルカリ化ココア殻は、40μm未満のD90値を有する粉砕されたアルカリ化ココア殻であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の食品。
【請求項6】
アルカリ化ココア殻は、食品の全重量基準で1〜20質量%の量で食品中に含まれることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の食品。
【請求項7】
アルカリ化ココア殻は、焙炒され、発酵されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の食品。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の食品を製造する方法であって:
(i)ココアニブから分離されたココア殻を、アルカリ化剤を用いてアルカリ化する工程;および
(ii)食品が食品中のアルカリ化ココア殻とココア粉末との合計質量基準で少なくとも30質量%のアルカリ化ココア殻を含むように、アルカリ化ココア殻を食品に添加する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
アルカリ化剤は、水酸化ナトリウムおよび/または炭酸アンモニウムを含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アルカリ化剤の量は、乾燥脱脂ココア殻としてのココア殻の質量基準で4〜25質量%であることを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ココア殻とアルカリ化剤とを、ココア殻の全質量基準で30〜70質量%の水中で混合することを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
殻をアルカリ化する前にココア殻を粉砕する工程および殻を食品に添加する前にアルカリ化殻を粉砕する工程の一方または両方をさらに含むことを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
殻を食品に添加する前にアルカリ化ココア殻を乾燥することをさらに含むことを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
チョコレート風味を含む食品を提供するためのアルカリ化ココア殻の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−88430(P2010−88430A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−233483(P2009−233483)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(501175214)クラフト・フーヅ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・インコーポレイテッド (56)
【氏名又は名称原語表記】KRAFT FOODS R & D, INC.
【Fターム(参考)】