説明

アルカリ蓄電池用電極およびこれを備えるアルカリ蓄電池

【課題】電池の信頼性向上に寄与しかつ安価に製造できるアルカリ蓄電池用の電極、および、この電極を備える、信頼性に優れかつ安価に製造できるアルカリ蓄電池をを提供する。
【解決手段】角形形状のケーシング内に、セパレータを介して対向する複数の電極を積層して形成した電極体を収納してなるアルカリ蓄電池に用いられる電極を、導電性材料で形成された、平滑な主面および端面を有する平板状の基板と、該基板上に塗布された、活物質、バインダーおよび導電助材を含む合材とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層タイプの電極体を有する角形のアルカリ蓄電池に用いられる電極およびこれを備えるアルカリ蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主として携帯機器用の電源として使用する充放電可能な種々の二次電池が提案されてきた。さらに、近年、地球温暖化防止や分散型エネルギーシステムとしてのメリットが期待できる風力発電や太陽光発電のような新エネルギーの導入に伴い、大容量二次電池が開発されている。新エネルギーは、自然の影響を受けやすく出力が不安定な電源であり、大量に導入される際には蓄電技術による出力の平滑化や、夜間のような軽負荷時における新エネルギー発電電力の蓄電などが必要になるからである。
【0003】
さらには、近年、環境への配慮から、自動車や電車などの車両に充放電可能な二次電池を搭載したものが開発されている。車両に二次電池を搭載した場合には、ブレーキ時に生じる回生電力をこの搭載電池に蓄えておき、車両の動力源として使用することができるので、車両の運行エネルギー効率を高めることができる。このように車両に搭載する二次電池としては、エネルギー密度、負荷変動追従性、耐久性、製造コストなどの諸条件から、例えばニッケル水素二次電池が適しているとされる(特許文献1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ニッケル水素二次電池においては、正極の基板として、多孔質の発泡ニッケルやニッケル焼結体を用い、基板に形成された空孔ないし間隙に、活物質、バインダー、導電助材などからなる合材を充填して正極を作製している。このようにして正極を作製することにより、活物質の基板への密着性が高まり、電池の信頼性向上が図られる。
【0005】
また、ニッケル水素電池の負極基板としては、例えば、ニッケルめっきを施した鋼板に多数の孔を形成したパンチングプレートを使用し、この基板に活物質を塗布することにより、活物質の基板への密着性を確保している(例えば、特許文献1)。
【0006】
ところで、上記のような車両用の電池には、従来の携帯機器等に用いられるものに比べて、高電圧および高エネルギー容量が要求されるため、大型の電池を使用する必要がある。大型の電池を使用する場合には、電池が設置されるスペースを効率的に利用する必要性が大きいことから、円筒形よりも角形の電池とすることが望ましい(特許文献1)。このような大型の角形電池には、電池性能や生産性の観点から、円筒形電池に用いられる巻取り式の電極体よりも、セパレータを介して正極板と負極板とを交互に積層した電極体の方が適しているとされる。
【0007】
しかしながら、このような積層型の電極体では、平板状の電極とセパレータとの接触箇所が多いので、発泡ニッケルやパンチングプレートを電極の基板として用いた場合、基板の端面に露出する空孔ないし間隙の縁にできたバリが、セパレータを突き破って内部短絡を起こし易い。また、電池内では充放電に伴って電極体の膨張・収縮が繰り返されるので、大型の角形電池に使用される電極基板には機械的強度が要求されるが、発泡ニッケルやパンチングプレートで形成した基板では、基板厚みを増すことが、加工性の点から困難である。さらには、発泡ニッケルやパンチングプレートのような部材は高価であり、電池のコスト増の要因となっている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−110381号公報
【0009】
本発明の目的は、上記の課題を解決するために、主面や端面が平滑な電極基板を用いることにより、電池の信頼性向上に寄与し、かつ安価に製造できるアルカリ蓄電池用の電極、および、この電極を備える、信頼性に優れ、かつ安価に製造できるアルカリ蓄電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した目的を達成するために、本発明に係るアルカリ蓄電池用電極は、角形形状のケーシング内に、セパレータを介して対向する複数の電極を積層して形成した電極体を収納してなるアルカリ蓄電池に用いられる電極であって、導電性材料で形成された、平滑な主面および端面を有する平板状の基板と、該基板上に塗布された、活物質、バインダーおよび導電助材を含む合材とを備える。ここで、「平滑な主面および端面」とは、主面および端面が、多孔質体構造による凹凸や孔加工を有していないことを意味する。また、このような電極構成は、正極および負極のいずれにも適用することができる。
【0011】
この構成によれば、積層型の電極体を有する角形電池において、平板状の電極基板の主面および端面を平滑にしているので、基板のバリに起因する電池の内部短絡の発生を効果的に防止することができる。また、金属の板材をそのまま電極基板として利用することができるので、基板厚みを増大して電極の機械的強度を確保することが容易となる。したがって、このような電極を備える角形アルカリ蓄電池の信頼性向上に大きく寄与することができる。さらには、このような信頼性に優れる電池を安価に製造することも可能になる。
【0012】
上記の構造を有する電極において、前記基板を、例えば、ニッケルめっきを施した鋼板で形成することができる。このように構成することにより、接触抵抗が低く、かつ耐腐食性や機械的強度にも優れる素材を、安価に電極の基板として利用して、電池の性能を向上させることが可能になる。
【0013】
また、上記の構造を有する電極において、前記バインダーとして、例えば、低不飽和ポリマーを、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、アルコキシシラン基含有モノマー、および塩素含有モノマーのうちの1種または2種以上の混合物で変性した変性ポリマーを含む非水溶液系バインダーを使用することができる。このように構成することにより、合材を平滑な基板上に塗布して形成した電極であっても、活物質と基板との密着性を維持することができる。また、非水溶性バインダーは、撥水性を有するので、正極上で発生した酸素を拡散し、負極上で迅速に水に戻すことが可能となり、電解液のドライアウトを防止する点においても効果的である。これにより、内部短絡を効果的に防止して信頼性を向上させながら、この電極が使用される電池の性能を維持することが可能となる。
【0014】
また、上記の構造を有する電極において、前記導電助材として、例えば、カーボン粉末を使用することができる。このように構成することにより、合材を平滑な基板上に塗布して形成した電極であっても、十分な導電性を確保することができる。これにより、内部短絡を効果的に防止して信頼性を向上させながら、この電極が使用される電池の性能を維持することが可能となる。
【0015】
上記の構造を有する電極において、好ましくは、前記基板の厚みが50μmから600μmの範囲にある。発泡ニッケルやパンチングプレートを使用せずに、平滑な主面および端面を有する板状部材によって電極基板を形成することにより、基板厚みの調整、特には厚みを増して基板強度を向上させることが容易に可能となるので、電池の信頼性に大きく寄与することができる。
【0016】
本発明に係るアルカリ蓄電池は、角形形状のケーシング内に、セパレータを介して対向する複数の電極を積層して形成した電極体を収納して構成されており、本発明に係る上記構成の電極を少なくとも正極または負極として備えている。このように構成することで、セパレータと電極の端面との接触箇所が多い積層型の電極体を有するアルカリ蓄電池であっても、効果的に内部短絡を防止して、電池の充放電性能および信頼性を向上させることができる。さらには、加工の容易な平板状の基板を使用することにより、電池の製造コストを大幅に削減することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係るアルカリ蓄電池用電極およびこれを備えるアルカリ蓄電池によれば、大型の角形電池に適した積層構造の電極体を採用しながらも、電極基板のバリに起因する内部短絡を効果的に防止し、かつ、電極の機械的強度を増大して、電池の性能および信頼性を向上させることができる。さらには、加工の容易な平板状の基板を電極に使用することにより、電池の製造コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るアルカリ蓄電池用電極を備える角形のアルカリ蓄電池(以下単に「電池」という)1の構造を示す斜視図である。本実施形態に係る電池1は、水酸化ニッケルを主要な正極活物質とし、水素吸蔵合金を主要な負極活物質とし、アルカリ系水溶液を電解液とするニッケル水素二次電池として構成されており、正極および負極の集電板を兼ねる矩形の第1蓋部材3および第2蓋部材5と、これら第1および第2蓋部材3,5間に介在する絶縁素材からなる枠形部材7によって、電池1の角形のケーシング9が構成されている。
【0020】
図2の断面図に示すように、ケーシング9の内方には、プリーツ状に折り曲げられたセパレータ11と、電極すなわち正極13と負極15とからなる電極体17が収容されている。正極13は、平板状の正極基板21の主面である両表面21a,21aに、正極合材23を塗布して形成されている。同様に、負極15は、平板状の負極基板25の主面である両表面25a,25aに、負極合材27を塗布して形成されている。
【0021】
図2の要部を拡大して示す図3に示すように、正極13と負極15とは、両電極の基板21,25の各表面21aと25aとが対向する方向Xに、セパレータ11を介して交互に積層されている。このとき、正極基板21および負極基板25の端面21b、25bの一部は、プリーツ状のセパレータ11の折り曲げ部11aに対向している。
【0022】
このように構成されている電極体17は、その積層方向Xと、第1および第2蓋部材3,5の対向方向Yとが直交するように、ケーシング9内に配置されている。したがって、正極基板21の端面21bは、プリーツ状のセパレータ11の折り曲げ部11aを介して、負極集電板である第2蓋部材5に対向しており、負極基板25の端面25bは、セパレータ11の折り曲げ部11aを介して、正極集電板である第1蓋部材3に対向している。
【0023】
なお、電極体17は、プリーツ構造以外の積層構造を有していても良い。例えば、別体に形成された複数の袋状のセパレータにそれぞれ収容された正極13と負極15とを交互に積層して対向させてもよく、あるいは、別体の袋状のセパレータにそれぞれ収容された正極13と負極とを、さらにプリーツ状のセパレータ11を介して互いに対向するように積層してもよい。
【0024】
正極基板21は、導電性材料、具体的には、例えばニッケルめっきを施した鋼板からなる平板状の部材として形成されている。また、図4の部分破断斜視図に示すように、正極基板21の両表面21a,21aおよび各端面21bは、孔や凹凸を有しない平滑な面として形成されている。同様に、図5の部分破断斜視図に示すように、負極基板25は、ニッケルめっきを施した鋼板からなる平板状の部材として形成されており、負極基板25の両表面25a,25aおよび各端面25bは、孔や凹凸を有しない平滑な面として形成されている。正極基板21ないし負極基板25の両表面と各端面の境界は、例えば、面取加工により丸みを持たせてもよい。これにより、加工時のバリを除去することができる。また、正極基板、負極基板の両表面に、ブラスト加工やセレーション加工を施してもよい。これにより、活物質の密着性が向上する。
【0025】
正極および負極基板21,25を形成する素材としては、ニッケルめっき鋼板のほかにも、電気化学的な特性や機械的強度、耐食性などを考慮して、適宜選択することができ、例えば、ニッケル板、ステンレス鋼版、銅めっき鋼板、銀めっき鋼板、コバルトめっき鋼板、クロムめっき鋼板などが好ましく用いられる。
【0026】
正極および負極用の基板21,25は、孔を有しない板状の素材を切り出すことによって作成することができるので、厚さの設定が容易である。本実施形態の電池1では、正極13、負極15と、正極側および負極側の各集電板である第1蓋部材3、第2蓋部材5との導通は、金属屑のような異物の混入の防止および工程の簡略化のために溶接は行わず、両蓋部材3,5の対向方向Yの接触圧のみによって確保されている。したがって、正極および負極基板21,25には面方向(対向方向Y)に付加される圧力に耐え得る機械的強度が要求される。この観点から、正極および負極基板21,25の厚みは50μm以上であることが好ましい。一方で、電池1のエネルギー密度を確保する観点からは、正極および負極基板21,25の厚みは0.6mm以下であることが好ましい。より好ましい基板21,25の厚みの範囲は、50〜200μmであり、さらに好ましくは80〜150μmである。また、基板21,25のビッカース硬さは、70〜300Hvの範囲にあることが好ましい。
【0027】
正極基板21の両表面21a,21aに塗布される正極合材23は、正極活物質である水酸化ニッケル、バインダー、および導電助材を主成分とし、これらを混合して作製される。また、負極基板25の両表面25a,25aに塗布される負極合材27は、負極活物質である水素吸蔵合金、バインダー、および導電助材を主成分とし、これらを混合して作製される。
【0028】
次に、正極および負極の各合材23,27に好ましく用いられるバインダーおよび導電助材について説明する。
【0029】
(バインダー)
本実施形態におけるバインダーとしては、非水溶性のものを使用することが好ましい。非水溶性のバインダーの溶媒として有機溶剤が使われることがあるが、有機溶剤は有毒物質であり引火性を有しているので、製造過程における取り扱いが難しい。取り扱いの容易さの観点からは、水溶性バインダーが優れるが、活物質と基板との密着性が高く、活物質の脱落を防いで接触抵抗の増大を抑制できる点で、非水溶性バインダーが優れている。さらに、非水溶性バインダーは、撥水性を有するので、正極上で発生した酸素を拡散し、負極上で迅速に水に戻すことが可能となり、電解液のドライアウトを防止する点においても効果的である。
【0030】
具体的には、バインダーとして、エチレン、プロピレン、ブチレン、スチレン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、およびフッ化ビニリデンの中から選ばれたモノマーの重合体からなる低不飽和ポリマーを、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、アルコキシシラン基含有モノマー、および塩素含有モノマーのうちの1種または2種以上の混合物で変性した変性ポリマーを好ましく使用することができる。水酸基含有モノマーとしては、ヒドロキシアルキルアクリレート(またはメタクリレート)を、カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等を、グリシジル基含有モノマーとしては、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルアクリレート等を、アルコキシシラン含有モノマーとしては、メタクリロイロキシアルコキシシランを、塩素含有モノマーとしては、塩化ビニル、2−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸クロライド等を好適に使用することができる。
【0031】
また、活物質に対するバインダーの添加量としては、正極においては、正極活物質100重量部に対して、バインダー1〜10重量部添加するのが好ましい。バインダーの添加割合がこれより小さい場合には、十分な密着性が得られず、活物質の脱落が発生する。一方、バインダーの添加割合がこれより大きい場合には、活物質の表面がバインダーで覆われることにより利用率が低下するとともに、十分な電池のエネルギー密度が得られない。負極の場合は、活物質密度が高く、体積が比較的小さくなるので、必要とされる添加量は正極における場合よりも少なく、負極活物質100重量部に対してバインダーを0.5〜5重量部添加するのが望ましい。
【0032】
正極合材に用いるバインダーの一例として、本実施形態においては、エチレン酢酸ビニル共重合ポリマー(EVA;エチレン90%、酢酸ビニル10%)と塩化ビニル系ポリマー(EVAに塩化ビニルをグラフト重合したもの;平均重合度900、EVA含有量55%)とを重量比85:15で混合したものを使用した。
【0033】
負極合材に用いるバインダーの一例として、本実施形態においては、正極合材に用いた上記EVAを変性処理した変性EVAを用いた。変性処理は、EVAに無水マレイン酸をグラフト重合することにより行った。この場合のマレイン化度は、小さ過ぎると密着性が低下し、大きすぎると溶剤への溶解性が低下するので、ポリマー100に対して0.1〜20重量部の範囲であることが好ましい。
【0034】
(導電助材)
本実施形態における導電助材としては、カーボン、またはニッケルのような耐アルカリ性、耐酸化性を有する金属が好ましく用いられる。このような材料から作製した、微粒状導電助材(粒径20nm〜1μm)、粗粒状導電助材(粒径1μm〜200μm)、繊維状導電助材(繊維径1〜15μm、繊維長50〜300μm)のうちのいずれか2つ以上を組み合わせて使用することが望ましい。特に、微粒状導電助材は、活物質間の隙間に入り込んで細かい導電ネットワークを形成するのに効果的であるが、微粒状導電助材のみを使用すると、電極にひび割れが発生し易くなる。しかし、微粒状導電助材に粗粒状導電助材または繊維状導電助材を添加すると、電極におけるひび割れの発生が抑制される。微粒状導電助材と粗粒状または繊維状導電助材との混合比は、5:1〜1:5の範囲が好ましく、1:1程度がさらに好ましい。微粒状導電助材の混合比率がこの範囲よりも大きい場合には十分なひび割れ抑制効果が得られず、微粒状導電助材の混合比率がこの範囲よりも小さい場合には、細かい導電ネットワークの形成がなされず、十分な導電補助が得られない。
【0035】
また、活物質に対する導電助材の添加量としては、正極においては、正極活物質100重量部に対して、導電助材1〜20重量部添加するのが好ましい。導電助材の添加割合がこれより小さい場合には、十分な導電補助効果が得られず、活物質の利用率が低くなる。一方、導電助材の添加割合がこれより大きい場合には、十分な電池のエネルギー密度が得られない。負極の場合は、活物質が合金であって導電性を有しているので、必要とされる添加量は正極における場合よりも少なく、負極活物質100重量部に対して導電助材を0.5〜10重量部添加するのが望ましい。
【0036】
正極合材および負極合材に用いる導電助材の一例として、本実施形態においては、カーボンブラック(一次粒径50nm、ジブチルフタレート吸収量175cm/100g、ラマン分光G値0.43、熱処理温度2300℃)と、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(X線回折004面半値幅2.5°/Cu−Kα、熱処理温度2400℃)とを重量比1:1で混合したものを用いた。
【0037】
なお、上述した本発明に係る各実施形態は、図1に示した電池1のみならず、例えば、図6に示すように構成した電池モジュールBに使用される角形電池にも適用することができる。この電池モジュールBは、角形のニッケル水素二次電池として構成された電池1を、直列接続となるように複数積層したものである。電池1は、対向配置した折り曲げ部を有しない平板状の正極集電体53と負極集電体55との間に、両集電体よりも若干寸法の小さい絶縁素材からなる枠形部材57を介在させて角形のケーシング59を形成し、このケーシング59の内部に、上記で説明したのと同様の構造を有する電極体(図示せず)を電解液とともに収容して構成されている。電池1の積層体の両端面には、この端面全面を覆う圧縮板61,61が配置されている。各電池1の集電体53,55および圧縮板61,61の両側部に形成された複数のボルト孔に、絶縁素材からなる長尺のボルト63を挿通し、その先端にナット65を螺合することにより、電池モジュールBが組み立てられている。積層体の両端に位置する電池1,1の一方の正極集電体53と他方の負極集電体55には、それぞれ、電池モジュールBの正極端子67と負極端子69が突設されている。
【0038】
本実施形態に係る電極(正極13,負極15)およびこれを備える電池1によれば、以下の効果が得られる。
【0039】
図3の電池1に使用されている正極13および負極15は、活物質等を含む合材23,27を塗布するための基板として、孔や凹凸が形成されていない平滑な表面21a,25aおよび平滑な端面21b,25bを有する平板状の基板21,25を使用している。これにより、基板のバリに起因する電池1の内部短絡の発生を効果的に防止することができるので、電池1の耐久性、信頼性の向上に大きく寄与する。特に、本実施形態に係る電池1では、正極および負極の各基板の端面21b,25bと、負極集電体および正極集電体である第2および第1蓋部材5,3とがセパレータ11を介して対向する箇所が多いので、端面21b,25bを平滑にすることによる電池1の信頼性向上の効果は極めて大きい。
【0040】
また、金属の板材をそのまま切り出して電極基板21,25として利用することができるので、基板厚みを増大して電極の機械的強度を確保することが容易となる。特に、本実施形態に係る電池1では、両蓋部材3,5の対向方向Y、すなわち平板状の基板21,25の面方向の接触圧によって両蓋部材3,5と正極および負極基板21,25との導通を確保しているので、正極および負極基板21,25の厚みを適切な値に設定することにより基板の機械的強度を確保して、基盤21,25の変形を防止することにより、電池1の性能および信頼性を大幅に向上させることができる。
【0041】
さらには、本実施形態において、電極基板21,25を、ニッケルめっきを施した鋼板で形成しているので、接触抵抗が低く、かつ耐腐食性や機械的強度にも優れる素材を、安価に電極基板21,25として利用して、電池1の性能を向上させることができる。
【0042】
また、上記の構造を有する電極13,15において、バインダーとして、変性ポリマーを含む非水溶液系バインダーを使用しているので、合材23,25を平滑な基板21,25上に塗布して形成した電極であっても、活物質と基板との密着性を維持することができる。また、上記の構造を有する電極において、導電助材として、カーボン粉末を使用することにより、合材を平滑な基板上に塗布して形成した電極であっても、十分な導電性を確保することができる。これにより、この電極が使用される電池1の性能および耐久性を維持しながら、内部短絡を効果的に防止して信頼性を向上させることが可能となる。
【0043】
なお、本実施形態では、電池1をニッケル水素二次電池として構成した例について説明したが、本発明は、他の種類のアルカリ蓄電池に使用される電極にも適用することが可能である。例えば、正極としては空気電極や酸化銀電極、負極としてはカドミウム、亜鉛、鉄などを主要な活物質とする電極に適用することができる。
【0044】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係るアルカリ蓄電池を示す斜視図である。
【図2】図1の電池内部の電極体の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】図2の要部を拡大して示す断面図である。
【図4】図1の電池に使用される正極の構造を示す部分破断斜視図である。
【図5】図1の電池に使用される負極の構造を示す部分破断斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るアルカリ蓄電池の他の構成例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 電池
9 ケーシング
11 セパレータ
13 正極(電極)
15 負極(電極)
17 電極体
21 正極基板
21a 正極基板の表面(主面)
21b 正極基板の端面
23 正極合材
25 負極基板
25a 負極基板の表面(主面)
25b 負極基板の端面
27 負極合材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形形状のケーシング内に、セパレータを介して対向する複数の電極を積層して形成した電極体を収納してなるアルカリ蓄電池に用いられる電極であって、
導電性材料で形成された、平滑な主面および端面を有する平板状の基板と、
該基板上に塗布された、活物質、バインダーおよび導電助材を含む合材と、
を備えるアルカリ蓄電池用電極。
【請求項2】
請求項1において、前記基板がニッケルめっきを施した鋼板からなるアルカリ蓄電池用電極。
【請求項3】
請求項1または2において、前記バインダーが、低不飽和ポリマーを、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、アルコキシシラン基含有モノマー、および塩素含有モノマーのうちの1種または2種以上の混合物で変性した変性ポリマーを含む非水溶性バインダーであるアルカリ蓄電池用電極。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、前記導電助材がカーボンを含むアルカリ蓄電池用電極。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、前記基板の厚みが50μmから600μmの範囲にあるアルカリ蓄電池用電極。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、正極として構成されているアルカリ蓄電池用電極。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項において、負極として構成されているアルカリ蓄電池用電極。
【請求項8】
角形形状のケーシング内に、セパレータを介して対向する複数の電極を積層して形成した電極体を収納してなるアルカリ蓄電池であって、請求項1から7のいずれか一項に記載の電極を少なくとも正極として備えるアルカリ蓄電池。
【請求項9】
角形形状のケーシング内に、セパレータを介して対向する複数の電極を積層して形成した電極体を収納してなるアルカリ蓄電池であって、請求項1から7のいずれか一項に記載の電極を少なくとも負極として備えるアルカリ蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−108821(P2010−108821A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281115(P2008−281115)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度新エネルギー・産業技術総合開発機構系統連系円滑化蓄電システム技術開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】