説明

アルカリ過酸化物洗浄装置において低温洗浄を向上させるための活性化複合体の使用

本発明は、アルカリ過酸化物洗浄において低温洗浄を向上させるための活性化複合体の利用を提供する。活性化複合体、活性酸素源、およびアルカリ源を含む組成物が、約5℃〜約50℃の温度で被洗浄面に塗布される。本発明の方法は、エネルギー、水および化学物質の消費量低減と共に、汚れ除去の強化を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は、従来の洗浄技法と比較して、より低温で汚れ上および汚れ中にガスを発生させることによって硬質面から汚れを除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品および飲料の製造など、多くの工業用途において、一般に硬質面が炭水化物、蛋白質、および硬化した汚れと、食用油汚れ、脂肪汚れ、およびその他の汚れによって汚染されるようになっている。このような汚れは、液状食材および固形食材の両方の製造から生じることがある。セルロース、単糖類、二糖類、オリゴ糖、澱粉、ゴムおよびその他の複合材料などの炭水化物汚れが乾燥すると、特に蛋白質、脂肪、油および鉱物等による他の汚れ成分と結合した場合、強固で除去しにくい汚れが形成されることがある。このような炭水化物汚れの除去は、重大な問題となることがある。同様に、蛋白質、脂肪および油脂などの他の成分も、除去しにくい汚れおよび残留物を形成することがある。
【0003】
食品汚れおよび飲料汚れは、加工中に加熱されると、特に強固となる。食品および飲料は、様々な理由により加工中に加熱される。例えば、乳業工場では、乳製品を殺菌するために、乳製品をパスツール殺菌装置(例えば、HTST−高温短時間殺菌装置、またはUHT−超高温殺菌装置)で加熱する。また、多くの食品および飲料製品は、蒸発の結果として濃縮または生成される。
【0004】
定置洗浄法(CIP)は、飲料、ミルク、ジュース等の典型的に液体の製品流を処理するために使用されるタンク、ライン、ポンプおよびその他処理装置の内部部品から汚れを除去するのに適した特殊な洗浄方法である。定置洗浄法では、洗浄液を装置に通すが、その装置の構成部品を分解する必要はない。最低限の定置洗浄法では、洗浄液を装置に通し、次いで通常処理を再開する。洗浄液の残余によって汚染されたいかなる製品も廃棄することができる。
【0005】
定置洗浄法は、第一の濯ぎ工程、洗浄液の塗布、飲料水を使った第二の濯ぎ工程、そして動作の再開という手順を踏むことが多い。このプロセスはまた、洗浄水、酸性もしくは塩基性の機能性液体、溶剤、または熱水や冷水などのその他の洗浄成分がプロセス中のいかなる工程でも装置と接触することのできる、その他の接触工程を伴うこともある。洗浄および/または消毒工程に続く最後の飲料水濯ぎ処理は、装置の細菌汚染を防ぐために省略されることが多い。従来の定置洗浄法は、高温、例えば約80℃を超える温度を必要とする。したがって、従来の定置洗浄法は、大量のエネルギーおよび水の消費を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、従来の洗浄技法では簡単には除去できない汚れを低温で除去するため、改良された方法が必要とされている。この背景に対して、本発明が行なわれた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの態様において、本発明は、定置洗浄法を用いて面から汚れを除去するための方法に関する。この方法には、面に(i)活性化複合体、(ii)アルカリ源、および(iii)活性酸素源を含む組成物を塗布する工程が含まれる。この組成物は、約5℃〜約50℃の温度で面に塗布される。
【0008】
幾つかの実施形態において、活性化複合体は、遷移金属錯体を含んでいる。他の実施形態において、この遷移金属錯体は、マンガン・イオン源を含んでいる。このマンガン・イオン源は、幾つかの実施形態において、0、2、3、4、7およびそれらの組み合わせから成る群から選択される酸化状態を有する。他の実施形態において、このマンガン・イオン源は、硫酸マンガン(II)、塩化マンガン(II)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(III)、酸化マンガン(IV)、酢酸マンガン(II)およびそれらの混合物から成る群から選択される。
【0009】
幾つかの実施形態において、マンガン・イオン源は、グルコン酸塩組成物と錯形成している。アルカリ源は、塩基性塩、アミン、アルカノール・アミン、炭酸塩、珪酸塩およびそれらの混合物から成る群から選択することができる。幾つかの実施形態において、このアルカリ源は、アルカリ金属水酸化物を含んでいる。他の実施形態において、このアルカリ源は、水酸化ナトリウムを含んでいる。幾つかの実施形態において、この組成物のpHは約11〜約14である。
【0010】
幾つかの実施形態において、被洗浄面は、タンク、ラインおよび処理装置から成る群から選択される。幾つかの実施形態において、処理装置は、パスツール殺菌装置、ホモジナイザー、分離器、蒸発器、フィルター、乾燥器、膜、発酵タンク、冷却タンク、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0011】
幾つかの実施形態において、この組成物は、約10分間〜約60分間、被洗浄面に塗布される。他の実施形態において、この組成物は、被洗浄面上に存在する汚れと接触して実質的に分解する。
【0012】
他の実施形態において、この組成物は、(i)約50ppm〜約200ppmの活性化複合体、(ii)約0.25質量%〜約1.5質量%のアルカリ源、および(iii)約0.25質量%〜約1.0wt%の活性酸素源を含んでいる。他の実施形態において、この組成物は、弱泡性界面活性剤、ビルダー、緩衝剤、抗菌性組成物、およびそれらの組み合わせから成る群から選択されるその他の機能性材料を含んでいる。
【0013】
幾つかの実施形態において、この界面活性剤は、アルコールアルコキシレート、直鎖アルキルベンゼン硫酸塩、アルコールスルホネートアミンオキシド、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコールエステル、EO/POブロック共重合体およびそれらの混合物から成る群から選択される。他の実施形態において、この組成物は、GRAS成分を含んでいる。
【0014】
他の実施形態において、本発明の方法は、被洗浄面にこの組成物を塗布した後に、この組成物を再度塗布する工程を含む。この際、追加の未使用の活性酸素源が再塗布された組成物に追加される。幾つかの実施形態において、追加の活性酸素源は、この組成物が面に再塗布される前に組成物に追加される。他の実施形態において、追加の活性酸素源は、この組成物が面に再塗布されるのと実質的に同時に組成物に追加される。さらに他の実施形態において、追加の活性酸素源は、この組成物が面に再塗布された後に組成物に追加される。
【0015】
幾つかの態様において、本発明は、面を洗浄するための方法に関する。この方法は、前処理溶液が面上の汚れに実質的に浸透するのに十分な時間だけこれを面に塗布し、次いでオーバーライド溶液を面に塗布する工程を含む。ただし、前処理溶液とオーバーライド溶液の間に濯ぎ工程はない。幾つかの実施形態において、前処理溶液は、活性酸素源およびアルカリ源を含んでおり、オーバーライド溶液は、活性化複合体を含んでいる。他の実施形態において、前処理溶液は、活性化複合体およびアルカリ源を含んでおり、オーバーライド溶液は、活性酸素源を含んでいる。さらに他の実施形態において、前処理溶液は、活性酸素源および活性化複合体を含んでおり、オーバーライド溶液は、アルカリ源を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1で説明したとおりの洗浄の前後のステンレス鋼パネルを示す写真である。
【図2】実施例1で説明したとおりの洗浄後のステンレス鋼パネルを示す写真である。
【図3】様々な洗浄方法を用いて20℃および40℃で達成された汚れ除去の平均割合を示すグラフである。
【図4】実施例3で説明したとおりの洗浄後のステンレス鋼トレイを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
幾つかの態様において、本発明は、硬質面から汚れを除去するための方法を提供する。この方法は、定置洗浄法で使用することができる。この方法は、活性化複合体、アルカリ源および活性酸素源を含んでいる組成物を被洗浄面に塗布する工程を含む。幾つかの実施形態において、この組成物は、アルカリ性pH、例えばpH約11〜約14であることができる。この洗浄方法は、従来の洗浄方法、例えば定置洗浄技術で使用される温度よりも低い温度で行うことができる。いかなる作用機序にも拘束されることなく、選択された活性化複合体の使用が洗浄温度の低下を可能にしたと考えられる。活性化複合体が活性酸素源に対する触媒として作用し、一般に活性酸素源が分解して酸素ガスを生成する温度よりも低い温度で酸素ガスを発生させるものと考えられる。幾つかの実施形態において、活性化複合体を活性酸素源と組み合わせて使用することにより、汚れ上および汚れ中、および/または溶液中で、その場で酸素ガスを生成することが可能になる。酸素ガス発生の機械的作用が、接触面上に存在する汚れの分解に寄与していると考えられる。
【0018】
幾つかの実施形態において、本発明の方法に基づく活性化複合体の使用により、洗浄時における化学物質、例えばアルカリ源および/または活性酸素源の使用水準を低減することができる。したがって、本発明の方法は、エネルギー消費量の低減(例えば洗浄温度の低下)、および化学物質消費量の低減を提供する。
【0019】
本発明をより容易に理解できるようにするため、最初に特定の用語を定義する。
【0020】
本明細書で用いられている「質量パーセント」、「wt−%」、「質量百分率」、「質量%」という用語、およびその変形は、物質の質量を組成物の総質量で割って、100を乗じたときの物質の濃度を意味する。本明細書で用いられる「パーセント」、「%」などは、「質量パーセント」、「wt−%」などの類義語を意味するものと理解されたい。
【0021】
本明細書で用いられている「約」という用語は、例えば、現実世界において溶液を濃縮または使用するための典型的な計測および液体取扱手順;これらの手順中の不慮の誤り;製造、原料、または組成物の形成もしくは本方法の実行のために使用される材料の純度の差異などを通じて、起こり得る数量の変動を意味する。また、「約」という用語は、特定の初期混合に起因する組成物の異なった均衡条件によって相違する量も包含する。「約」という用語に修飾されているか否かを問わず、特許請求の範囲は、その量と均等な量を含んでいる。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられている単数形、「a」、「an」及び「the」は、その内容が他に明確に示されていない限り、複数の対象を含んでいることに注意されたい。したがって、例えば、「1つの化合物」を含む組成物への言及には、2つ以上の化合物を有する組成物が含まれる。「または」という用語は、その内容が他に明確に示されていない限り、一般にその意味に「および/または」を包含して用いられる。
【0023】
本明細書で用いられている「洗浄」という用語は、汚れ除去、漂白、微生物個体群の減少、およびそれらの組み合わせを促進または補助するために使用される方法を意味する。
【0024】
幾つかの様態において、本発明の方法は、一般に定置洗浄手法を用いて洗浄される装置に適用される。かかる装置の例としては、蒸発器、熱交換器(チューブ・イン・チューブ式交換器、直接蒸気注入式、およびプレート・イン・フレーム式交換器を含む)、加熱コイル(蒸気式、火炎式、または熱伝導流体加熱式を含む)、再晶析装置、釜式晶析装置、噴霧乾燥機、ドラム式乾燥機、およびタンクが挙げられる。
【0025】
本発明の方法は、熱分解した汚れ、すなわち蛋白質および炭水化物などの汚れ上の塊または汚れ上の焦げを除去する必要のある、あらゆる用途に使用することができる。本明細書で使用されるとき、用語「熱分解した汚れ」は、熱に暴露されており、その結果として被洗浄面が焼かれるようになった単数または複数の汚れを意味する。典型的な熱分解した汚れとしては、処理中に加熱された食品汚れ、例えばパスツール殺菌装置中で加熱される乳製品、果糖またはコーンシロップが挙げられる。
【0026】
また、本発明の方法は、従来の洗浄技法による除去が容易でない他の非熱分解汚れの除去にも用いることができる。本発明の方法での洗浄が適した汚れには、澱粉、セルロース系繊維、蛋白質、単炭水化物、及びこれらのいずれかと無機複合体との組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の方法を用いて効果的に除去される食品汚れの具体例としては、野菜ジュースおよびフルーツジュース、醸造および発酵残留物、甜菜およびトウモロコシ処理中に発生する汚れ、ならびに調味料およびソース、例えばケチャップ、トマトソース、バーベキューソースの製造中に発生する汚れが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの汚れは、製造中および梱包中において、熱交換装置の面上およびその他の面上に生じることがある。
【0027】
本発明の方法を使用できる産業の例には、乳製品、チーズ、砂糖、および醸造酒産業をはじめとする食品および飲料産業と、油脂処理産業と、工業農業およびエタノール処理と、医薬品製造産業とが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
従来のCIP処理は、一般によく知られている。このプロセスには、被洗浄面への希薄溶液(一般に約0.5〜3%)の塗布が含まれる。この溶液が面を流れ(3〜6フィート(約0.9〜1.8メートル)/秒)、汚れを徐々に除去する。新たな溶液がその面に再塗布されるか、または同じ溶液が再循環されてその面に再塗布される。
【0029】
汚れ(有機、無機または両成分の混合物を含む)を除去するための一般的なCIPプロセスとしては、アルカリ性溶液ウォッシュ、酸性溶液ウォッシュ、次いで真水濯ぎの少なくとも3つの工程が挙げられる。アルカリ性溶液は、汚れを柔軟にして有機性のアルカリ可溶性汚れを除去する。次の酸性溶液は、アルカリ洗浄工程で残った無機性の汚れを除去する。アルカリ性および酸性溶液の濃度および洗浄工程の継続時間は、一般に汚れの耐久性によって決定される。水濯ぎは、いかなる残留溶液および汚れをも除去し、装置が稼働状態に戻る前に面を洗浄する。
【0030】
従来のCIP技法と異なり、本発明の方法は、低温、例えば10℃〜50℃で向上した汚れ除去を提供する。本発明の方法はまた、洗浄時における化学物質消費量および水消費量も低減する。したがって、本発明の方法は、有効な汚れ除去を達成しながら、エネルギーと水の両方の節約を実現する。
【0031】
組成物
幾つかの態様において、本発明の方法は、活性化複合体、アルカリ源および活性酸素源の少なくとも1つを含む組成物を被洗浄面に塗布する工程を含む。幾つかの実施形態において、本発明の方法で使用する組成物は、アルカリ性pH、例えば約11〜約14である。幾つかの実施形態において、被洗浄面には、3つすべての成分を1つの組成物の一部として塗布できる。他の実施形態において、活性化複合体およびアルカリ源を1つの組成物の一部として面に塗布し、活性酸素源を別の組成物の一部として塗布することができる。さらに他の実施形態において、活性酸素源および活性化複合体を1つの組成物の一部として面に塗布し、アルカリ源を別の組成物の一部として表面に塗布することができる。活性化複合体、アルカリ源および活性酸素源は、いかなる組み合わせでも、またいかなる段階的順序でも被洗浄面に塗布することができる。
【0032】
活性化複合体
幾つかの態様において、本発明の方法は、活性化複合体を面に塗布する工程を含む、面の洗浄方法を提供する。本明細書で用いられている「活性化因子複合体」または「活性化複合体」という用語は、活性酸素源および/または汚れと反応して、汚れ上および汚れ中の原位置で酸素ガス生成を向上させる能力のある組成物を意味する。いかなる作用機序にも拘束されることを望むものではないが、洗浄中、活性化複合体が酸素ガス発生に対する触媒として作用すると考えられる。すなわち、活性化複合体は、それ自体が分解されることなく、洗浄中に、活性酸素源を分解して、汚れ上および汚れ中の原位置で酸素ガスを生成すると考えられる。
【0033】
本発明で使用する活性化複合体には遷移金属錯体が含まれるが、これに限定されるものではない。単数または複数の活性化複合体は、例えば選択された活性酸素源、被洗浄面、および被除去汚れの量と種類を含む多様な要因に基づいて選択される。
【0034】
幾つかの実施形態において、活性化複合体は、遷移金属錯体を含んでいる。本明細書で用いられている「遷移金属錯体」という用語は、遷移金属、すなわち周期表上のDブロック、すなわち周期表上の3〜12族のうちに含まれるあらゆる元素を意味する。本発明の方法での使用に適した典型的な遷移金属には、マンガン、モリブデン、クロム、銅、鉄、コバルトおよびそれらの混合物および誘導体が含まれるが、これらに限定されるものではない。幾つかの実施形態において、活性化複合体に含まれる金属は、鉄ではない。幾つかの実施形態において、活性化複合体には、マンガン・イオン源が含まれる。
【0035】
幾つかの実施形態において、この活性化複合体は、アルカリ性安定遷移金属錯体である。本明細書で用いられている「アルカリ性安定遷移金属錯体」という用語は、アルカリ状態では実質的に分解されない遷移金属を含む複合体を意味する。幾つかの実施形態において、アルカリ性安定遷移金属錯体には、マンガン・イオン源が含まれる。
【0036】
マンガン・イオン源は、+2、+3、+4、+6または+7の酸化状態を有することができる。他の実施形態において、マンガン・イオン源は、+2、+3、+4、または+7の酸化状態を有する。典型的なマンガン・イオン源には、硫酸マンガン(II)、塩化マンガン(II)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(III)、酸化マンガン(IV)、酢酸マンガン(II)およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の方法での使用に適した他の典型的なマンガン・イオン源には、欧州特許第0458397号、第0458398号および第0549271号に記載のマンガン・イオン源、ならびに米国特許第5,246,621号に記載のマンガン・イオン源が含まれる。これらの各特許の内容は、参照により本明細書に援用される。直接食品接触に関する安全性(GRAS)として一般に認められているマンガン・イオン源が、本発明の方法で使用することができる。
【0037】
活性化複合体は、本発明の方法での使用に適したあらゆる形態で存在することができる。例えば、幾つかの実施形態において、活性化複合体は、面に塗布される水溶液の一部に含まれる。活性化複合体はまた、固体の形態で使用することもできる。例えば、幾つかの実施形態において、活性化複合体は、遷移金属錯体の固体ブロックを含んでいる。溶液、例えば活性酸素源を含んでいる溶液を、このブロック上に流す(例えば、注入または噴射する)ことができる。溶液がこのブロック上を流れると、ブロック内の遷移金属錯体により、溶液中の活性酸素源が活性化する。次いで、得られた活性化溶液を、選択された面に塗布することができる。例えば、得られた活性化溶液をCIPプロセスで使用して、面を洗浄することが可能である。
【0038】
幾つかの実施形態において、被洗浄面には、アルカリ源の一部として活性化複合体を送達することができる。例えば、アルカリ性溶液にはアルカリ源を含めることができ、活性化複合体は、アルカリ性溶液の成分となるように配合することができる。幾つかの実施形態において、アルカリ源を含む組成物中に送達されるとき、活性化複合体は向上したアルカリ安定性を有する。活性化複合体のアルカリ安定性を向上させる方法としては、活性化複合体の封入、および/または活性化複合体を有するアルカリ性安定錯化剤の使用が含まれるが、これらに限定されるものではない。典型的なアルカリ性安定錯化剤には、グルコン酸ナトリウムが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0039】
いかなる作用機序にも拘束されることを望むものではないが、本発明の方法で使用する活性化複合体は、低温、例えば約10℃〜約50℃で面を洗浄する能力を促進し強化すると考えられる。すなわち、活性化複合体を使用すると、高熱を使用することなく、被除去汚れ上および汚れ中で酸素ガスを発生させることができる。さらに、活性化複合体は、アルカリ性pHでの酸素ガス生成を促進する。
【0040】
この酸素生成は、酸素生成源の通常の漂白および洗浄作用に加えて、汚れ上および汚れ中に機械的作用を発生させることにより汚れ除去の促進に役立つ。活性酸素源が、汚れに浸透すると考えられる。汚れ中の活性酸素源が活性化複合体と接触すると、汚れの中で酸素ガスが生成される。酸素ガスの生成時、それは汚れを内側から分解する。水溶液が面を通過するとき、分解した汚れが洗い流される。
【0041】
いかなる作用機序にも拘束されることを望むものではないが、活性化複合体および活性酸素源を含む組成物もまた、汚れとの接触時に活性化されると考えられる。つまり、一部の泡およびガス発生は、活性化複合体が活性酸素源と接触したときに起こることがあるが、活性化複合体および活性酸素源を含む組成物が汚れと接触すると、泡および酸素ガスの発生量が大幅に増大する。汚れとの接触時にガス発生量が増大する一因は、汚れが活性酸素源および/または活性化複合体に対して核生成部位を提供することであろう。また、汚れ中の電子の存在も原因となることがあり、この電子は、活性化複合体を触媒として作用させ、それ自体を再循環させることがある。
【0042】
本発明の方法で使用される活性化複合体の量は、使用される活性酸素源、被洗浄面の種類、および面上に存在する汚れの量および種類を含む多様な要素に基づいて決定される。また、使用される活性化複合体の量は、選ばれた活性化複合体のサイズにも依存する。
【0043】
幾つかの実施形態において、塗布される活性化複合体の量は、面に塗布される組成物のうちの約0.0001質量%〜約1.0質量%である。存在する活性化複合体の許容濃度は、約0.005質量%〜約0.02質量%であり、0.01質量%が特に適切な濃度である。すべての値およびこれらの値の範囲は、本発明の方法に包含されることを理解されたい。
【0044】
幾つかの実施形態において、活性化複合体の追加量は、活性化複合体と活性酸素源の反応から生成される酸素を時間の経過と共に制御できる程度とする。これは特に、大量の酸素ガス生成によって面または装置に損傷を与えないようにするため、定置洗浄法を用いて面を洗浄するときに望ましい。幾つかの実施形態において、追加される活性化複合体の濃度は、被洗浄面上での酸素ガス放出を制御できる程度に調整されるものとする。
【0045】
幾つかの実施形態においては、活性化複合体、および活性酸素源、および/または汚れの間の反応速度を制御することができる。特定の化合物および組成物は、活性化複合体の活量を増大させる、例えば酸素ガスの発生量を増やす目的で使用できる。活性化複合体の典型的な促進剤には、銀、銀を含む化合物、鉄、および鉄を含む化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
特定の化合物および組成物は、活性化複合体の活量を低減させる、例えば酸素ガスの発生量を低減させる目的で使用できる。典型的な活性減力剤には例えば、エチレンジニトリロ四酢酸(EDTA)が含まれる。
【0047】
活性酸素源
幾つかの実施形態において、本発明の方法で使用する組成物には、活性酸素源が含まれる。本明細書で用いられている「活性酸素源」という用語は、汚れ上および汚れ中、ならびに溶液中の原位置で酸素ガスを発生させることのできるあらゆる組成物を意味する。幾つかの実施形態において、活性酸素源は、活性化複合体との接触時に、汚れ上および汚れ中の原位置で酸素ガスを発生させることのできる化合物である。この化合物は、有機物または無機物であり得る。
【0048】
本発明の方法で使用する典型的な活性酸素源には、過酸素化合物、亜塩素酸塩、臭素、臭素酸塩、一塩化臭素、一塩化ヨウ素、ヨウ素酸塩、過マンガン酸塩、硝酸塩、硝酸、ホウ酸塩、過ホウ酸塩、ならびにオゾン、酸素、二酸化塩素、塩素、二酸化硫黄、およびその誘導体などの気体状酸化体が含まれるが、これらに限定されるものではない。幾つかの実施形態において、活性酸素源は、塩素含有基を含まない。いかなる作用機序にも拘束されることを望むものではないが、活性酸素源と汚れおよび/または活性化複合体の反応が、酸素ガスの放出に起因する汚れ上および汚れ中の機械的作用を活発化すると考えられる。この機械的作用は、汚れを内側から分解することができる。この機械的作用は、活性酸素源のみの化学作用および漂白作用による汚れ除去を超えて、汚れ除去を向上させると考えられる。
【0049】
幾つかの実施形態において、活性酸素源は、少なくとも1つの過酸素化合物を含む。本発明の方法では、過酸化物ならびに様々な過カルボン酸(過炭酸塩を含む)を含む過酸素化合物を使用することができるが、これらに限定されるものではない。過カルボン酸は、一般に化学式R(COH)(式中、例えば、Rはアルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、芳香族、または複素環基であり、nは1、2または3である)を有し、元の酸に過酸化を示す接頭語(peroxy)を付けて命名されている。R基は、飽和または不飽和ならびに置換または非置換であることができる。中鎖過カルボン酸は、化学式R(COH)(式中、RはC−C11アルキル基、C−C11シクロアルキル基、C−C11アリールアルキル基、C−C11アリール基、またはC−C11複素環基であり、nは1、2、または3である)を有することができる。短鎖過脂肪酸は、化学式R(COH)(式中、RはC−Cであり、nは1、2、または3である。)を有することができる。
【0050】
本発明で使用する典型的な過カルボン酸には、ペルオキシペンタン酸、ペルオキシヘキサン酸、ペルオキシヘプタン酸、ペルオキシオクタン酸、ペルオキシノナン酸、ペルオキシイソノナン酸、ペルオキシデカン酸、ペルオキシウンデカン酸、ペルオキシドデカン酸、ペルオキシアスコルビン酸、ペルオキシアジピン酸、ペルオキシクエン酸、ペルオキシピメリン酸、またはペルオキシスベリン酸、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
分岐鎖過カルボン酸としては、ペルオキシイソペンタン酸、ペルオキシイソノナン酸、ペルオキシイソヘキサン酸、ペルオキシイソヘプタン酸、ペルオキシイソオクタン酸、ペルオキシイソノナン酸、ペルオキシイソデカン酸、ペルオキシイソウンデカン酸、ペルオキシイソドデカン酸、ペルオキシネオペンタン酸、ペルオキシネオヘキサン酸、ペルオキシネオヘプタン酸、ペルオキシネオオクタン酸、ペルオキシネオノナン酸、ペルオキシネオデカン酸、ペルオキシネオウンデカン酸、ペルオキシネオドデカン酸、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0052】
本発明の方法で使用する追加の典型的な過酸素化合物としては、過酸化水素(H)、過酢酸、過オクタン酸、過硫酸塩、過ホウ酸塩、または過炭酸塩が挙げられる。幾つかの実施形態において、活性酸素源には、過酸化水素が含まれる。
【0053】
幾つかの実施形態において、本発明の方法で使用する組成物には、少なくとも1つの活性酸素源が含まれる。他の実施形態において、本発明で使用する組成物には、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つの活性酸素源が含まれる。例えば、本発明の方法で使用する活性酸素源の組み合わせは、過酸化物/過酸の組み合わせ、または過酸/過酸の組み合わせを含むことができるが、これらに限定されるものではない。他の実施形態において、活性酸素使用溶液は、過酸化物/酸または過酸/酸の組み合わせを含む。
【0054】
活性酸素源は、市販の活性酸素源および/または現場で発生させることのできる活性酸素源を含む。
【0055】
存在する活性酸素源の量は、例えば被洗浄面の種類、および面上に存在する汚れの量と種類を含む多様な要素によって決定される。幾つかの実施形態において、存在する活性酸素源の量は、約0.05質量%〜約5質量%である。存在する活性酸素源の許容濃度は、約0.05質量%〜約0.25質量%、または約0.25質量%〜約1.0質量%であり、約0.15質量%が特に適切な濃度である。
【0056】
アルカリ源
幾つかの態様において、本発明の方法で使用する洗浄用組成物には、アルカリ源が含まれる。本発明の方法での使用に適した典型的なアルカリ源には、塩基性塩、アミン、アルカノール・アミン、炭酸塩およびケイ酸塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の方法で使用する他の典型的なアルカリ源には、NaOH(水酸化ナトリウム)、KOH(水酸化カリウム)、TEA(トリエタノール・アミン)、DEA(ジエタノール・アミン)、MEA(モノエタノール・アミン)、炭酸ナトリウム、モルホリン、メタケイ酸ナトリウムおよびケイ酸カリウムが含まれる。アルカリ源は、被洗浄面に適するものを選択できる。
【0057】
存在するアルカリ源の量は、例えば被洗浄面の種類、および面上に存在する汚れの量と種類を含む多様な要素によって決定される。幾つかの実施形態において、存在するアルカリ源の量は約0.05質量%〜約10質量%である。アルカリの許容濃度には、約0.05〜約1.5質量%および約0.75〜約1.0質量%が含まれる。
【0058】
追加成分
幾つかの実施形態において、本発明の方法で使用する組成物には、追加成分が含まれる。幾つかの実施形態において、これらの追加成分は、被洗浄面からの汚れ除去を円滑にすることができる。本発明の方法で使用する追加成分には、例えば浸透剤、界面活性剤、ビルダー、抗菌剤および緩衝剤が含まれる。
【0059】
浸透剤
幾つかの態様において、浸透剤を本発明の方法で使用してよい。浸透剤を洗浄用組成物中のアルカリ源と組み合わせるか、または浸透剤をアルカリ源なしで使用してもよい。幾つかの実施形態において、浸透剤は水混和性である。
【0060】
適切な浸透剤の例には、アルコール、短鎖エトキシル化アルコールおよび(1〜6個のエトキシラート基を有する)フェノールが含まれるが、これらに限定されるものではない。有機溶剤もまた、適切な浸透剤である。浸透剤としての使用に適した有機溶剤の例には、エステル、エーテル、ケトン、アミン、ならびに硝酸化および塩素化炭化水素が含まれる。
【0061】
エトキシル化アルコールもまた、本発明の方法での使用に適する。エトキシル化アルコールの例には、アルキル、アリール、およびアルキルアリール・アルコキシレートが含まれるが、これらに限定されるものではない。これらのアルコキシレートは、塩素基、臭素基、ベンジル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基およびアルキル基で保護することにより、さらに修飾することができる。エトキシル化アルコールは、洗浄用組成物中に0.1質量%〜20質量%まで存在することができる。
【0062】
脂肪酸もまた、本発明の方法において、浸透剤としての使用に適している。脂肪酸の一部の例(ただしそれらに限定されない)には、C〜C12の直鎖または分岐鎖脂肪酸がある。幾つかの実施形態において、本発明の方法で使用される脂肪酸は、常温で液体である。
幾つかの実施形態において、本発明の方法で使用する浸透剤には、水溶性グリコール・エーテルが含まれる。グリコール・エーテルの例には、ジプロピレン・グリコール・メチル・エーテル(ダウ・ケミカル(Dow Chemical)社から商品名DOWANOL DPMで入手可)、ジエチレン・グリコール・メチル・エーテル(ダウ・ケミカル社から商品名DOWANOL DMで入手可)、プロピレン・グリコール・メチル・エーテル(ダウ・ケミカル社から商品名DOWANOL DMで入手可)、およびエチレン・グリコール・モノブチル・エーテル(ダウ・ケミカル社から商品名DOWANOL EBで入手可)が含まれる。幾つかの実施形態において、グリコール・エーテルは、約1.0質量%〜約20質量%の量で存在する。
【0063】
界面活性剤
界面活性剤または界面活性剤の混合物は、本発明の方法で使用することができる。界面活性剤は、被洗浄面に適したものを選択できる。多数の製造元から市販されている、陰イオン、非イオン、陽イオンおよび両イオン性界面活性剤を含む、多様な界面活性剤を使用できる。適切な界面活性剤には、非イオン性界面活性剤、例えば弱泡性非イオン性界面活性剤が含まれる。界面活性剤の議論に関しては、Kirk−Othmer著、Encyclopedia of Chemical Technology、第3版、第8巻、900〜912ページを参照のこと。
【0064】
本発明の方法での使用に適した非イオン性界面活性剤には、界面活性分子の一部としてポリアルキレン・オキシド・ポリマーを有する界面活性剤が含まれるが、これに限定されるものではない。典型的な非イオン性界面活性剤には、塩素、ベンジル、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよび他の類似したアルキルで保護されたポリエチレンおよび/または脂肪アルコールのポリプロピレン・グリコール・エーテル;アルキル・ポリグリコシドなどのポリアルキレン・オキシド遊離非イオン;ソルビダンおよびスクロース・エステルならびにそれらのエトキシレート;アルコキシル化エチレン・ジアミン;グリセロール・エステル、ポリオキシエチレン・エステル、脂肪酸のエトキシル化およびグリコール・エステルなどのカルボン酸エステル;ジエタノールアミン縮合物、モノアルカノールアミン縮合物、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドなどのカルボン酸アミド;ならびに市販のTomah社製エトキシル化アミンおよびその他の類似する非イオン化合物とが含まれるが、これらに限定されるものではない。ABIL B8852(Goldschmidt)などのシリコーン界面活性剤もまた、使用することができる。
【0065】
本発明の方法での使用に適した追加の典型的な非イオン性界面活性剤には、1〜約20個のエチレン・オキシド基(例えば約9〜約20個のエチレン・オキシド基)を有するC6−C24アルコール・エトキシレート(例えば、C6−C14アルコール・エトキシレート)と、1〜100個のエチレン・オキシド基(例えば約12〜約20個のエチレン・オキシド基)を有するC6−C24アルキルフェノール・エトキシレートと、1〜20個のグリコシド基(例えば約9〜約20個のグリコシド基)を有するC6−C24アルキルポリグリコシド(例えばC6−C20アルキルポリグリコシド)と、C6−C24脂肪酸エステル・エトキシレート、プロポキシレートまたはグリセリドと、C4−C24モノまたはジアルカノールアミンの非イオン性界面活性剤を含むポリアルキレン・オキシド・ポリマー部分を有する界面活性剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
典型的なアルコールアルコキシレートには、アルコール・エトキシレート・プロポキシレート、アルコール・プロポキシレート、アルコール・プロポキシレート・エトキシレート・プロポキシレート、アルコール・エトキシレート・ブトキシレートと、ノニルフェノール・エトキシレート、ポリオキシエチレン・グリコール・エーテルと、PLURONIC(BASF−Wyandotte社)の商標で市販されているものなどのエチレンオキシド/プロピレンオキシド・ブロック共重合体を含むポリアルキレン・オキシド・ブロック共重合体とが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
また、適切な弱泡性非イオン性界面活性剤の例には、TERGITOL(登録商標)15−S−7(Union Carbide)、Tergitol 15−S−3、Tergitol 15−S−9といったTERGITOL(登録商標)の商品名で販売されている第2級エトキシレートなどが含まれるが、これに限定されるものではない。適切な他の弱泡性非イオン性界面活性剤のクラスには、アルキルまたはベンジルでキャップされたポリオキシアルキレン誘導体およびポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体が含まれる。
【0068】
その他の有用な非イオン性界面活性剤には、平均12モルのエチレン・オキシド縮合体を有し、平均30モルのプロピレン・オキシドを含む疎水性部分で末端保護されているノニルフェノールがある。また、シリコーン含有消泡剤も一般に知られており、本発明の方法に用いることができる。
【0069】
適切な両性界面活性剤には、次の化学式:
【化1】

{式中、R、R’、R’’、およびR’’’はそれぞれ、所望により単数または複数のP、O、SまたはNヘテロ原子を含むこのとのできる、C−C24アルキル、アリールまたはアリールアルキル基である。}
を有するアミン・オキシド化合物が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0070】
適切な他の両性界面活性剤のクラスには、次の化学式:
【化2】

(式中、R、R’、R’’、およびR’’’はそれぞれ、所望により単数または複数のP、O、SまたはNヘテロ原子を含むことのできる、C−C24アルキル、アリールまたはアラルキル基であり、nは約1〜約10である。}
を有するベタイン化合物が含まれる。
【0071】
適切な界面活性剤にはまた、食品用界面活性剤、直鎖アルキルベンゼン・スルホン酸およびそれらの塩、および商品名Pluronic(登録商標)で販売されているエチレン・オキシド/プロピレン・オキシド誘導体も含まれる。適切な界面活性剤には、直接的または間接的な食品添加物または食品物質としての適性を有する界面活性剤が含まれる。
【0072】
また、開示された方法での使用に適した陰イオン性界面活性剤には、例えばアルキルカルボキシレート(カルボキシル酸塩)およびポリアルコキシカルボキシレート、アルコール・エトキシレート・カルボキシレート、ノニルフェノール・エトキシレート・カルボキシレートなどのカルボン酸塩と、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホン化脂肪酸エステルなどのスルホン酸塩と、硫酸化アルコール、硫酸化アルコール・エトキシレート、硫酸化アルキルフェノール、アルキル硫酸塩、スルホ琥珀酸塩、アルキルエーテル硫酸塩などの硫酸塩と、アルキルフォスフェイト・エステルなどのフォスフェイト・エステルとが含まれることもある。典型的な陰イオンには、アルキルアリールスルホン酸ナトリウム、アルファ−オレフィン・スルホン酸塩、および脂肪アルコール硫酸塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。適切な陰イオン界面活性剤の例には、ドデシルベンゼン・スルホン酸ナトリウム、ラウレス−7硫酸カリウム、およびテトラデセニル・スルホン酸ナトリウムが含まれる。
【0073】
幾つかの実施形態において、この界面活性剤には、直鎖アルキルベンゼン・スルホン酸塩、アルコール・スルホン酸塩、アミン・オキシド、直鎖および分岐鎖アルコール・エトキシレート、アルキル・ポリグリコシド、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコールエステル、EO/POブロック共重合体およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0074】
幾つかの実施形態において、洗浄用組成物中の界面活性剤の量は、約0.0001質量%〜約1.0質量%である。界面活性剤の許容濃度には、約0.001質量%〜約0.1質量%または約0.002質量%〜約0.05質量%が含まれる。すべての値およびこれらの値の範囲は、本発明の方法に包含されることを理解されたい。
【0075】
界面活性剤の組成
本明細書に記載の界面活性剤は、本発明の方法において単独で、または組み合わせて使用することができる。特に、非イオンと陰イオンは組み合わせて使用することが可能である。半極性非イオン、陽イオン、両性および双性イオン界面活性剤は、非イオンまたは陰イオンと組み合わせて使用できる。前述の説明は、本発明の範囲内に用途を見出すことのできる数々の界面活性剤の具体例に過ぎない。特定の界面活性剤または界面活性剤の組み合わせは、意図される使用濃度と、温度およびpHを含む意図される環境条件での被洗浄面との適合性を含め、多数の要因に基づいて選択できる点を理解されたい。
【0076】
さらに、使用条件下での泡立ちの度合いと、それに続く組成の復元も、特定の界面活性剤または界面活性剤の混合物の選択を左右する要因となり得る。例えば、ある特定の用途においては、泡立ちを最小限に留めることが希求される可能性があり、泡立ちを低減する界面活性剤または界面活性剤の混合物を使用できる。さらに、許容可能な停止時間内で組成を復元し再利用するために、泡が比較的速やかに分解する界面活性剤または界面活性剤の混合物を選択することが望ましい場合もある。さらに、この界面活性剤または界面活性剤の混合物は、除去すべき個別の汚れに応じて選択することができる。
【0077】
本発明の方法で使用する組成物は、界面活性剤または界面活性剤の混合物を含有している必要はなく、他の成分も含有できる点を理解されたい。さらに、この組成物は、他の成分と併用して、1つの界面活性剤または界面活性剤の混合物を含むことができる。本発明の方法で使用される組成物中に供給できるその他の典型的な成分には、ビルダー、水質調節剤、非芳香族成分、補助剤、担体、プロセス補助剤、酵素、およびpH調整剤が含まれる。
【0078】
ビルダー
幾つかの実施形態において、本発明の方法で使用する組成物には、単数または複数のビルダーが含まれる。ビルダーには、キレート化剤(キレート剤)、封鎖剤(封鎖物質)、洗剤ビルダーなどが含まれる。ビルダーは、組成物または溶液を安定させることが多い。好ましくは、本発明の方法での使用に適したビルダーは、活性化複合体と錯形成しない。つまり、本発明で使用する単数または複数のビルダーは、汚れ上および汚れ中の原位置で酸素が発生した後に分解した無機汚れと複合体を形成するものを選択することが好ましい。
【0079】
ビルダーおよびビルダーの塩は、無機物または有機物であることができる。本発明の方法での使用に適したビルダーの例には、ホスホン酸およびホスホン酸塩、リン酸塩、アミノカルボン酸塩およびそれらの誘導体、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、エチレンジアミンおよびエチレントリアミン誘導体、ヒドロキシ酸、およびモノ−、ジ−又はトリ−カルボン酸塩およびそれらに対応する酸が含まれるが、これらに限定されるものではない。他のビルダーには、アルミノケイ酸塩、ニトロアセテートおよびそれらの誘導体、ならびにそれらの混合物が含まれる。さらに他のビルダーには、ヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸(HEDTA)およびジエチレントリアミン五酢酸の塩を含むアミノカルボン酸塩が含まれる。
【0080】
本発明の方法で使用できる典型的な市販キレート剤には、Innophos製のトリポリリン酸ナトリウムと、BASF製のTrilon A(登録商標)と、Dow製のVersene100(登録商標)、Low NTA Versene(登録商標)、Versene Powder(登録商標)およびVersenol 120(登録商標)と、BASF製のDissolvine D−40と、クエン酸ナトリウムとが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
幾つかの実施形態において、生物分解性アミノカルボン酸塩またはその誘導体が、本発明の方法においてビルダーとして存在する。典型的な生分解性アミノカルボン酸塩には、Akzo製のDissolvine GL−38(登録商標)およびDissolvine GL−74(登録商標)と、BASF製のTrilon M(登録商標)と、Bayer製のBaypure CX100(登録商標)と、Dow製のVersene EDG(登録商標)と、日本触媒製のHIDS(登録商標)と、Finetex/Innospec Octel製のOctaquest E30(登録商標)およびOctaquest A65(登録商標)とが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
幾つかの実施形態においては、有機キレート剤を使用することができる。有機キレート剤には、高分子キレート剤および低分子キレート剤の両方が含まれる。有機低分子キレート剤は、一般に有機カルボン酸塩化合物または有機リン酸塩キレート剤である。高分子キレート剤には一般に、ポリアクリル酸化合物などのポリアニオン系組成物が含まれる。低分子有機キレート剤には、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸(HEDTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、およびそれらのアルカリ金属、アンモニウムおよび置換アンモニウム塩が含まれる。アミノホスホン酸塩もまた、本発明の方法においてキレート剤としての使用に適しており、例えば、エチレンジアミンテトラメチレン・ホスホン酸塩、ニトリロトリスメチレン・ホスホン酸塩、およびジエチレントリアミン−(ペンタメチレン・ホスホン酸塩)が挙げられる。これらのアミノホスホン酸塩は一般に、炭素原子が8個未満のアルキル基またはアルケニル基を含んでいる。
【0083】
適切な他の封鎖剤には、水溶性ポリカルボキシレート重合体が含まれる。かかる単重合体および共重合体キレート剤には、ペンダント(−COH)カルボン酸基を有する高分子化合物が含まれ、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、アクリル−マレイン共重合体、加水分解されたポリアクリルアミド、加水分解されたメタクリルアミド、加水分解されたアクリルアミド−メタクリルアミド共重合体、加水分解されたポリアクリロニトリル、加水分解されたポリメタクリロニトリル、加水分解されたアクリロニトリル−メタクリロニトリル共重合体、またはそれらの混合物が含まれる。それらの各々のアルカリ金属(例えばナトリウムまたはカリウム)またはアンモニウム塩などの重合体または共重合体の水溶性塩または部分塩もまた、使用することができる。これらの重合体の重量平均分子量は、約4,000〜約12,000である。好ましい重合体としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸の部分ナトリウム塩、または平均分子量が4,000から8,000の範囲内であるポリアクリル酸ナトリウムが挙げられる。
【0084】
本発明の方法で使用するビルダーは、水溶性であることが望ましい。単体で、もしくは他のビルダーとの混合物として使用できる水溶性無機アルカリ・ビルダー塩には、または炭酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩およびポリリン酸塩、ならびにホウ酸塩のアルカリ金属、アンモニアもしくは置換アンモニウム塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明で有用な水溶性有機アルカリ・ビルダーには、アルカノールアミンおよび環状アミンが含まれる。
【0085】
特に好ましいビルダーには、PAA(ポリアクリル酸)およびその塩と、ホスホノブタン・カルボン酸と、HEDP(1−ヒドロキエチリデン−1、1−ジホスホン酸)と、EDTAおよびグルコン酸ナトリウムとが含まれる。
【0086】
幾つかの実施形態において、本発明の方法で使用する組成物中に存在するビルダーの量は、約0.001質量%〜約5質量%である。幾つかの実施形態において、存在するビルダーは約0.005質量%〜約0.1質量%である。ビルダーの許容濃度には、約0.05質量%〜約2.5質量%が含まれる。
【0087】
任意の補助剤
さらに、望ましい特性を付加的に提供するため、本発明の組成物中には他の様々な添加剤または補助剤が存在してもよい。その例は以下のとおりである。
a)ヒドロトロープと呼ばれる可溶化媒介物は、キシレン−、トルエン−、もしくはクメン−スルホン酸塩または、n−オクタン・スルホン酸塩または、それらのナトリウム−、カリウム−、アンモニウム塩、もしくは有機アンモニウム塩基の塩として、本発明の組成物中に存在することができる。また、炭素、水素および酸素原子のみを含有するポリオールは、一般的に使用されている。それらは、約2〜約6個の炭素原子と約2〜約6個のヒドロキシ基を含んでいることが好ましい。その具体例には、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、ヘキシレン・グリコール、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、およびグルコースが含まれる。
b)非水溶性液状担体または溶媒は、本発明の方法で使用される様々な組成物において使用することができる。
c)本発明の方法で使用する組成物に、粘度調整剤を追加してもよい。これらは、キサンタン・ガム、カラギナンなどの天然多糖類または、カルボキシメチル・セルロース、ならびにヒドロキシメチル−、ヒドロキシエチル−、およびヒドロキシプロピル−セルロースなどのセルロース系増粘剤または、高分子量ポリアクリレートもしくはカルボキシビニル重合体および共重合体などのポリカルボキシレート増粘剤または、天然および合成粘土と、微粉化して燻蒸または沈殿させたシリカとを含むことができる。ただし、これはそのごく一部を記載したに過ぎない。幾つかの実施形態において、本発明の方法で使用する組成物には、ゲル化剤が含まれない。
d)本発明の方法で使用する組成物の固体形態を調製するため、凝固剤を使用してもよい。また、これらは、中性不活性特性を有するか、または意図される実施形態の機能性、安定性または洗浄性に寄与するいかなる有機または無機固形化合物を含んでいてもよい。約1,400〜約30,000の分子量を有するポリエチレン・グリコールまたはポリプロピレン・グリコールと、尿素がその例である。
【0088】
洗浄の方法
幾つかの態様において、本発明は、定置洗浄プロセスを用いて面から汚れを除去するための方法を提供する。この方法には、面に活性化複合体、アルカリ源、および活性酸素源を含む組成物を塗布する工程が含まれる。この組成物中には、追加の成分が存在してもよい。活性化複合体、アルカリ源、および活性酸素源は、様々な方法で面に塗布することができる。例えば、活性化複合体、アルカリ源、および活性酸素源を、単一の組成物の一部として面に塗布することができる。
【0089】
他の実施形態において、活性化複合体、アルカリ源および活性酸素源は、各成分の塗布間に濯ぎ工程を入れることなく、逐次方式で、例えば、次々に塗布することができる。他の実施形態においては、各成分の組み合わせを面に塗布することが可能である。例えば、幾つかの実施形態において、第1の工程と第2の工程の間に濯ぎ工程を入れることなく、活性化複合体および活性酸素源を第1の工程で塗布し、アルカリ源を第2の工程で塗布する。他の実施形態において、第1の工程と第2の工程の間に濯ぎ工程を入れることなく、活性酸素源およびアルカリ源を第1の工程で面に塗布し、活性化複合体を第2の工程で面に塗布する。
【0090】
幾つかの実施形態において、本発明の方法の後には、濯ぎ工程のみが続く。本発明の方法においては、本発明の組成物の成分を塗布する際、その前後に濯ぎ工程は必要ない。つまり、活性化複合体、アルカリ源および活性酸素源を逐次方式で面に塗布する場合、各塗布工程の間に面を濯ぐ必要はない。したがって、本発明の方法は、従来の定位置洗浄技法よりも少量の水を消費しながら、洗浄能力の向上を実現する。
【0091】
他の実施形態において、本発明の方法の後には、被洗浄面に適した従来のCIP法が続く。さらに他の実施形態において、本発明の方法の後には、米国特許出願第10/928,774号および第11/257,874号、名称「Methods for Cleaning Industrial Equipment with Pre−treatment(工業設備を前処理で洗浄するための方法)」に記載されているようなCIP法が続く。いずれの米国特許出願も、参照により本明細書に援用される。
【0092】
幾つかの実施形態において、本発明の方法はさらに、組成物を面に塗布した後に、被洗浄面またはシステムに組成物を再塗布する工程を含む。例えば、組成物が、被洗浄面に塗布される。塗布後、使用された組成物が回収され、被洗浄面に再塗布される。さらに、未使用の活性酸素源を使用済み組成物に追加して、その組成物を再活性化させ、酸素ガスを生成することができる。未使用の追加活性酸素源は、いつでも、すなわち組成物を面に塗布する前後や最中に、組成物に追加することができる。
【0093】
幾つかの実施形態において、本発明の方法で使用する組成物には、米国食品医薬品局によって直接または間接食品添加物と見なされる成分が含まれる。幾つかの実施形態において、この組成物は、直接食品接触のための安全性(GRAS)が一般に認められている成分を含んでいる。
【0094】
幾つかの実施形態において、本発明で使用する組成物は、実質的に、塩素または塩素含有化合物を含まない。本明細書で用いられている「実質的に、塩素または塩素含有化合物を含まない」とは、塩素を含有していないか、または限られた量の塩素しか含有していない組成物、混合物、または成分を意味する。塩素が存在する場合、塩素の量は、約1質量%未満、約0.5質量%未満、または約0.1質量%未満でなければならない。
【0095】

幾つかの実施形態において、本発明の方法は、一般に定置洗浄技法を用いて洗浄される面上で使用される。かかる面の例には、蒸発器、熱交換器(チューブ・イン・チューブ式交換器、直接蒸気注入式、およびプレート・イン・フレーム式交換器を含む)、加熱コイル(蒸気式、火炎式、または熱伝導液加熱式を含む)、再結晶装置、結晶皿、噴霧乾燥機、ドラム式乾燥機、およびタンクが含まれる。
【0096】
本発明の方法を用いて洗浄できるその他の面には、膜、医療機器、洗濯物および/またはテキスタイルと、硬質面、例えば壁、床、食器、皿類、深鍋および平鍋、熱交換コイル、オーブン、フライヤー、スモーク・ハウス、下水ライン、および車両が含まれるが、これらに限定されるものではない。幾つかの実施形態において、これらの面は、定置洗浄法を用いて洗浄することができる。他の実施形態において、これらの面は、非CIP法を用いて洗浄することができる。本発明の方法はまた、空気処理装置、例えば空調装置および冷却熱交換器から塵埃を除去するために使用することができる。他の実施形態において、本発明の方法は、下水ラインの微生物管理、例えばバイオフィルム形成の低減または除去のために使用することができる。
【0097】
本発明の方法を使用できる産業の例には、乳製品、チーズ、砂糖、および醸造酒産業をはじめとする食品および飲料産業と、油脂処理産業と、工業農業およびエタノール処理と、医薬品製造産業とが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
温度
本発明の方法は、従来の洗浄技法(例えば定置洗浄法)と比較して、低い温度(例えば約5℃〜約50℃)で面から汚れを除去する。幾つかの実施形態において、本発明の方法は、常温または室温、例えば、18℃〜23℃で面から汚れを除去する。いかなる作用機序にも拘束されることを望むものではないが、活性化複合体を活性酸素源およびアルカリ源と併用することにより、熱活性化を使用することなく、汚れ上および汚れ中に酸素ガスが発生するものと考えられる。
【0099】
この低温での洗浄能は、高温を必要とする従来の洗浄技法と比較して、エネルギーおよびコストの節約をもたらす。さらに、本発明は、高温に耐え得ない面上においても汚れを効果的に除去する。
【0100】
本発明の方法は、従来の洗浄方法(例えばCIP洗浄法)と比較して、低い温度で、低量の化学物質で、汚れ除去を提供することが分かっている。幾つかの実施形態において、本発明の方法で使用する化学物質(例えばアルカリ源および/または活性酸素源)は、従来の洗浄方法と比べて、約25%〜約50%低減する。したがって、本発明の方法は、低温度かつ低濃度の化学物質で有効に汚れを除去できる。それによって、省エネルギーと、洗浄1回あたりに消費される化学物質量の低減の両方を達成できる。
【0101】
時間
本発明の幾つかの態様において、本発明の方法で使用する組成物は、その組成物が除去すべき汚れの中に浸透するまで、十分な時間をかけて面に塗布される。こうして汚れの中へ浸透させることにより、汚れ中で酸素ガスが発生する。本発明の方法は、従来の洗浄方法より低い温度で行われるが、従来の洗浄方法に匹敵する洗浄結果またはこれを優越する洗浄結果を達成するため、本発明の方法において洗浄時間を増大させる必要はない。
【0102】
幾つかの態様において、活性化複合体、活性酸素源およびアルカリ源の少なくとも1つを含む組成物が、実質的に、面から汚れを除去するのに十分な時間だけ面に塗布される。幾つかの実施形態において、この組成物は約10分〜約60分間面に塗布される。他の実施形態において、この組成物は約20分〜約40分間面に塗布される。すべての値およびこれらの値の範囲は、本発明の方法に包含されることを理解されたい。
【0103】
幾つかの態様において、活性化複合体、活性酸素源およびアルカリ源の少なくとも1つを含む前処理溶液が、実質的に、面上の汚れに浸透するのに十分な時間だけ面に塗布される。幾つかの実施形態において、前処理溶液は、被洗浄面に約1分〜約30分間塗布される。幾つかの実施形態において、前処理溶液は、被洗浄面に約5分〜約15分間塗布される。幾つかの実施形態において、前処理溶液は、面に約10分間塗布される。いかなる値およびこれらの値の範囲も、本発明の方法に包含されることを理解されたい。
【0104】
本発明の幾つかの態様において、活性化複合体、活性酸素源およびアルカリ源の少なくとも1つを含むオーバーライド溶液が、被洗浄面に前処理溶液を塗布した後に、面に塗布される。すなわち、前処理溶液およびオーバーライド溶液の塗布の間に濯ぎ工程はない。幾つかの実施形態において、オーバーライド溶液は、選択された面を有効に洗浄する、また前処理化学物質を活性化させる(例えば酸素ガスを発生させる)のに十分な時間だけ面に塗布される。幾つかの実施形態において、オーバーライド溶液は約1分〜約30分間塗布される。幾つかの実施形態において、オーバーライド利用溶液は約5分〜約10分間塗布される。すべての値およびこれらの値の範囲は、本発明の方法に包含されることを理解されたい。
【実施例】
【0105】
実施例
説明のみを目的とした以下の実施例によって、本発明をより詳細に説明する。特に明記しない限り、以下の実施例中に示される全ての部、パーセント(%)および比率は質量基準であり、実施例中で使用される全ての試薬は以下の供給者から入手したもの、もしくは入手可能なものであるか、または従来の技法で合成できるものである。
【0106】
実施例1−乳製品汚れ除去試験
この実験は、ステンレス鋼面から乳製品汚れを除去する本発明の方法の能力を決定するために行われた。この試験の準備として、316枚のステンレス鋼の試片(5cm×10cm)を洗浄し、乾燥させた。5ミリリットルのコンデンスミルクを試片の下3分の2の長方形部分に塗布し、24時間乾燥させた。次いで、汚れた試片を異なる2つの試験、すなわちビーカー試験と低温度乳製品汚れ試験に使用した。次の溶液を準備した:(1)1%水酸化ナトリウム溶液と、(2)1%水酸化ナトリウムおよび1%過酸化水素の混合物と、(3)1%過酸化水素および100ppm活性化複合体(Mn触媒)に続いて2分後に1%水酸化ナトリウム・オーバーライド溶液。
【0107】
ビーカー試験のために、750ミリリットルの試験溶液1および3を110°F(およそ43℃)で調製し、加熱板の上に置き、撹拌子を使って350rpmで撹拌した。試片のひとつが洗浄された外観を示すまで、汚れた試片をビーカー中に放置した。次いで、試片をビーカーから取り出し、撮影した。
【0108】
低温度乳製品汚れ試験のために、それぞれ100ミリリットルの3個の試験溶液を95°Fで調製し、浸漬試験器中に置いた。試験中、汚れた試片が溶液中に完全に沈むように、汚れた試片を溶液の上から吊り下げた。次いで、1分間あたり18サイクルの速度でこれらの試片を溶液に出し入れし、試料の1つが洗浄された外観を示すまで繰り返した。全ての試片を合計8分間洗浄した。次いで、試片を撮影した。
【0109】
ビーカー試験の結果を図1に示す。11および14と表示された試片は、試験溶液3(1%過酸化水素、および100ppmの活性化複合体(Mn触媒)、続いて2分後に1%水酸化ナトリウム・オーバーライド溶液)を用いて洗浄された。12および13と表示された試片は、溶液1(1%水酸化ナトリウム溶液)を用いて洗浄された。図1に見られるように、アルカリ過酸化水素と触媒溶液を用いて洗浄した試片(試片11および14)は、苛性溶液を用いて洗浄した試片(試片12および13)と比較して高い洗浄力を示した。
【0110】
低温度乳製品汚れ試験の結果を図2に示す。9と表示された試片は、試験溶液1を用いて洗浄された。10と表示された試片は、試験溶液2を用いて洗浄された。15と表示された試片は、試験溶液3(上述)と同じ成分を異なる順序で塗布して洗浄された。その順序は、1%過酸化水素および1%水酸化ナトリウム、続いて3分後に100ppm活性化複合体(Mn触媒)オーバーライド溶液であった。試片上のより明るい区域は、試験後の試片上に残っていた汚れである。図2に見られるように、アルカリ過酸素触媒系(試験溶液3)で洗浄した試片15は、他の溶液で試験した試片と比較して高い洗浄力を示した。試片15は、実質的に、すべての汚れを除去した。それに対して、試片9および10は、洗浄後に25%未満の汚れ除去を示した。
【0111】
実施例2−醸造麦芽汁汚れ除去試験
この実験は、ステンレス鋼面から醸造麦芽汁汚れを除去する本発明の方法の能力を決定するために行われた。以下の技法を用いてトレイに汚れを付着させた。全体が乾燥した大麦を沸騰水に加えた。大麦/水混合物を熱源から取り出し、撹拌し、少なくとも1時間放置した。次いで、この混合物を終夜で冷蔵した。その後、750gの混合物を水100ミリリットルと共に大容量のミキサーに入れ、ほぼ均質なスラリーが生成されるまで低速で混合した。次いで、25gのスラリーを清潔なステンレス鋼トレイに入れ、トレイの面を均等に覆うように広げた。次いで、トレイを80〜85℃のオーブンに入れ、3〜5時間加熱した。
【0112】
次の試験溶液を準備した:(1)0.75質量%の水酸化ナトリウム、0.4質量%の過酸化水素、および活性化複合体として100ppmの硫酸マンガン(「LT−CIP」溶液)、(2)1.0質量%の水酸化ナトリウム溶液、(3)1質量%の硝酸溶液。汚れたトレイを、1000ミリリットルの試験溶液の1つを含む1000ミリリットル・ビーカーの中に置いた。試験溶液は、20℃と40℃で試験した。汚れたトレイを、洗浄溶液中に30分間置いた。30分後、処理されたトレイを注意深く取り出し、質量を量って、撮影した。その結果を下記表に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
また、これらの結果を図3のグラフにも示す。上記表および図3に見られるように、LT−CIP洗浄溶液で処理されたトレイは、苛性処理または酸処理のみを施したトレイよりも、大幅に高い汚れ除去率を示していた。
【0116】
実施例3−低温および低量の洗浄用化学物質での汚れ除去試験
熱活性化CIP洗浄法と、本発明の典型的な低温および低量の洗浄用化学物質CIP洗浄法との差異を決定するために、試験を行なった。前述の実施例2で説明した通り、トレイに醸造麦芽汁汚れを付着させた。2つの異なる洗浄方法を比較した。
【0117】
第1の洗浄方法(方法A)では、0.5質量%の過酸化水素および100ppmの活性化複合体(硫酸マンガン)の前処理溶液を有する1000リリットル・ビーカー中に汚れたトレイを入れた。10分後、0.75質量%の水酸化ナトリウムのアルカリ性オーバーライド溶液をビーカーに追加した。
【0118】
第2の洗浄方法(方法B)では、活性酸素源として74%過酸化水素(35%)を含み、かつ活性化複合体を有していない酸性の1.0%前処理溶液を有する1000ミリリットル・ビーカー中に汚れたトレイを入れた。10分後、1.5%水酸化ナトリウムのアルカリ性オーバーライド溶液をビーカーに追加した。
【0119】
30分の合計洗浄時間で、両方の洗浄方法を汚れたトレイに適用した。次いで、トレイをビーカーから取り出し、撮影し、質量を量った。
この試験の結果を下記表に示す。
【0120】
【表3】

【0121】
また、これらの結果を図4にも示す。図4では、方法Aを用いて洗浄したトレイ(左のトレイ)が、方法Bを用いて洗浄したトレイ(右のトレイ)と比較して高い洗浄力を示している。トレイのより暗い区域は、残った汚れを表している。より明るい区域はトレイ自体であり、そこの汚れが除去されたことを示している。
【0122】
表3および図4の結果に見られるように、本発明の典型的な方法、すなわち方法Aを用いて洗浄されたトレイは、対照の試験方法、すなわち方法Bと比較して、汚れ除去に関して劇的な向上を示した。また、この汚れ除去能の向上は、対照の方法で用いた洗浄用化学物質の50%未満で達成された。全体として、本発明の典型的な洗浄方法は、対照となる化学物質の半分量を用いて70%以上の汚れ除去を達成した。
【0123】
低温での汚れ除去の促進に活性化複合体が不可欠であることを示すために、トレイを取り出した後、方法Bで用いたビーカーに100ppmの活性化複合体(硫酸マンガン)を追加した。直ちに溶液が泡立ち始めるのが観察された。また、泡は溶液の上部に蓄積した。触媒の存在しない方法Bの試験中には、泡立ち及び発泡は観察されなかった。
【0124】
他の実施形態
これまで本発明をその詳細な説明と関連付けて説明してきたが、前述の説明は例示を目的としたものであって、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を制限するものではないことを理解されたい。その他の態様、効果、および変更は、以下の特許請求の範囲内にある。
【0125】
さらに、前述の全ての特許公報の内容は、参照によってそれらの全体が本明細書に援用される。
【0126】
また、いかなる値および範囲が本明細書に供せられようとも、それらの値および範囲によって包含される全ての値および範囲は、本発明の範囲内に包含されることを意味するものと理解されたい。さらに、それらの範囲内に収まる全ての値、ならびに値の範囲の上限または下限もまた、本願によって意図されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)活性化複合体、
(ii)アルカリ源、及び
(iii)活性酸素源
を含む組成物を面に塗布する工程を含み、前記組成物を約5℃〜約50℃の温度で前記面に塗布する、定置洗浄法を用いて面から汚れを除去する方法。
【請求項2】
前記活性化複合体が遷移金属錯体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属錯体がマンガン・イオン源を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記マンガン・イオン源が、0、2、3、4、7およびそれらの組み合わせから成る群から選択される酸化状態を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記マンガン・イオン源が、硫酸マンガン(II)、塩化マンガン(II)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(III)、酸化マンガン(IV)、酢酸マンガン(II)およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記マンガン・イオン源がグルコン酸塩と錯形成している、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリ源が、塩基性塩、アミン、アルカノール・アミン、炭酸塩、珪酸塩およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アルカリ源がアルカリ金属水酸化物を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリ源が水酸化ナトリウムを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記活性酸素源が過酸素化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記過酸素化合物が過酸化水素を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物のpHが約11〜約14である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記被洗浄面が、タンク、ラインおよび処理装置から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記処理装置が、パスツール殺菌装置、ホモジナイザー、分離器、蒸発器、フィルター、乾燥器、膜、発酵タンク、冷却タンク、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が約10〜60分間被洗浄面に塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、被洗浄面上に存在する汚れと接触して実質的に分解する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、
(i)約50ppm〜約200ppmの活性化複合体、
(ii)約0.25質量%〜約1.5質量%のアルカリ源、及び
(iii)約0.25質量%〜約1.0質量%の活性酸素源
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、弱泡性界面活性剤、ビルダー、緩衝剤、抗菌性組成物、およびそれらの組み合わせから成る群から選択されるその他の機能性成分をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記界面活性剤が、アルコールアルコキシレート、直鎖アルキルベンゼン硫酸塩、アルコールスルホネートアミンオキシド、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコールエステル、EO/POブロック共重合体およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物がGRAS成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
(b)前記組成物を前記被洗浄面に塗布した後に、前記組成物を再塗布し、未使用の追加活性酸素源を前記再塗布された組成物に追加する工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物を前記面に再塗布する前に、前記組成物に前記追加活性酸素源を追加する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物を前記面に再塗布するのと実質的に同時に、前記組成物に前記追加活性酸素源を追加する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物を前記面に再塗布した後に、前記組成物に前記追加活性酸素源を追加する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
(a)面上の汚れに実質的に浸透するのに十分な時間に亘って、前記面に前処理溶液を塗布する工程、及び
(b)前処理溶液およびオーバーライド溶液の塗布の間に濯ぎ工程を入れることなく、前記オーバーライド溶液を前記面に塗布する工程
を含む、面を洗浄する方法。
【請求項26】
前記前処理溶液が約5〜約15分間前記面に塗布される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記前処理溶液が約5℃〜約60℃の間で前記面に塗布される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記前処理溶液が
(a)活性酸素源、及び
(b)活性化複合体
を含み、前記オーバーライド溶液がアルカリ源を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
活性化複合体が遷移金属錯体を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記金属錯体がマンガン・イオン源を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記マンガン・イオン源が、0、2、3、4、7およびそれらの組み合わせから成る群から選択される酸化状態を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記マンガン・イオン源が、硫酸マンガン(II)、塩化マンガン(II)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(III)、酸化マンガン(IV)、酢酸マンガン(II)およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記活性酸素源が過酸素化合物を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記過酸素化合物が過酸化水素を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記アルカリ源が、塩基性塩、アミン、アルカノール・アミン、炭酸塩、珪酸塩およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記アルカリ源がアルカリ金属水酸化物を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記アルカリ源が水酸化ナトリウムを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記前処理溶液が界面活性剤をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
前記界面活性剤が弱泡性界面活性剤である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記界面活性剤が、アルコールアルコキシレート、直鎖アルキルベンゼン硫酸塩、アルコールスルホネートアミンオキシド、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコールエステル、EO/POブロック共重合体およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記前処理溶液および前記オーバーライド溶液がGRAS成分を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項42】
前記前処理溶液が、
(i)活性酸素源、及び
(ii)アルカリ源
を含み、前記オーバーライド溶液が活性化複合体を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項43】
前記前処理溶液が、
(i)活性化複合体、及び
(ii)アルカリ源
を含み、前記オーバーライド溶液が活性酸素源を含む、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−511864(P2011−511864A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545601(P2010−545601)
【出願日】平成21年2月11日(2009.2.11)
【国際出願番号】PCT/IB2009/050566
【国際公開番号】WO2009/101588
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(500320453)イーコラブ インコーポレイティド (120)
【Fターム(参考)】