説明

アルカンジカルボン酸および薬学的に活性な成分から成る組成物

本発明は、α,ω-n-アルカンジカルボン酸および一般式 (I) のイミダゾール誘導体を含有する組成物に関する: 式中、Rは水素原子またはアルキル基であり、Aは飽和直鎖状脂肪族炭化水素基であり、Xは水素原子またはモノカルボン酸またはジカルボン酸の脂肪族または芳香族の酸のアルキル基である。この組成物は薬学的活性成分として使用され、ここで前記組成物は乾癬、アトピー性皮膚炎、尋常性ざ瘡またはしゅさの治療において使用される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願No. 60/477,031号、2003年6月10日提出の出願日の利益を主張する。
本発明は、特にしゅさを治療する医薬組成物として、アルカンジカルボン酸および追加の薬学的活性成分から成る組成物に関する。さらに、本発明は、しゅさを治療する薬剤を製造するための前記組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術
アゼライン酸を含む組成物
ドイツ国特許出願DE 28 17 133 (Nazzaro-Porro、出願日1978年4月19日) には、皮膚酵素により切断されうる7〜13個の炭素原子を有するα,ω-n-アルカンジカルボン酸およびそれらのエステルが記載されている。ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸および1,11-ウンデカンジカルボン酸は好ましい。アゼライン酸は最も好ましい。ジカルボン酸は色素過剰性皮膚症または皮膚色素過剰症の治療に使用される。
【0003】
ヨーロッパ特許EP 0 305 407 (Nazzaro-Porro、出願日1978年7月7日) には、7〜13個の炭素原子を有するジカルボン酸、特にアゼライン酸をしゅさの治療に使用することが記載されている。
【0004】
EP 0 336 880 A2 (出願日1998年3月29日) には、20重量%の濃度のアゼライン酸から成り、かつ薬学的添加剤および賦形剤、例えば、トリアシルグリセリドおよびジアシルグリセリド、プロピレングリコール、ポリソルベート、例えば、ポリエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、および水および塩から成る医薬組成物が記載されている。この組成物は、局所的に投与され、顔面の皮膚における種々の年齢に関係する変化を治療するために使用される。この組成物はクリームとして存在する。さらに、炎症性皮膚症、例えば、ざ瘡およびしゅさに対してアゼライン酸をまた使用することは知られている。
【0005】
1996 Red List (ISBN 3-87193-167-5) において、20重量%の濃度のアゼライン酸および薬学的添加剤および賦形剤、例えば、トリアシルグリセリドおよびジアシルグリセリド、プロピレングリコール、ポリソルベート、例えば、マクロゲルステアレート1000および水および塩から成る医薬組成物 (名称Skinoren) が番号32 282で記載されている。この組成物は、局所的に投与され、ざ瘡の治療に使用される。この組成物はクリームとして存在する。
【0006】
ヨーロッパ特許EP 1 032 379 B1には、アゼライン酸を含むヒドロゲルが記載されており、ここで水および塩を含んでなる水性相中に下記の添加剤を使用する: トリアシルグリセリド、プロピレングリコール、ポリアクリル酸、大豆レシチンおよびポリソルベート。この組成物は、しゅさ、老人性皮膚、黒皮症、ざ瘡および/または皮膚過敏の治療に使用される。
【0007】
メトロニダゾールを含む組成物
米国特許第2,944,061号 (R. M. Jacob 他、公開日1969年7月5日) には、特に原生動物、例えば、病原性アメーバまたはトリコモナドによる感染を治療する、化学療法的作用を示す、新規なイミダゾール誘導体が記載されている。
米国特許第4,837,378号 (R. J. Borgman、公開日1989年6月6日) には、ゲル形態の局所的投与用皮膚科学的組成物が記載されており、ここで薬学的活性成分はメトロニダゾールである。ゲル形成剤として、遊離カルボキシル基をもつポリマー、例えば、分子量1×106〜4×106ダルトンのポリアクリル酸を使用する。
しゅさおよび普通のざ瘡はこの皮膚科学的組成物を使用して治療される。
【発明の開示】
【0008】
目的および達成
目的は治療的に活性な成分としてカルボン酸を含む組成物を提供することであり、ここで追加の薬学的活性成分がまた含まれる。この場合において、2種類の薬学的活性成分の組成物は任意の個々の物質よりも有意にいっそう抗炎症作用を有する。特に、抗炎症性組成物は乾癬、アトピー性皮膚炎、普通のざ瘡およびしゅさを治療するために使用される。
【0009】
この目的は、下記の2種類の物質を含んでなる組成物により達成される:
(i) 少なくとも1種の、7〜13個の炭素原子を有するα,ω-n-アルカンジカルボン酸またはそのエステル、および
(ii) 少なくとも1種の、下記の一般式を有するイミダゾール誘導体:
【0010】
【化1】

【0011】
式中、
Rは水素原子または5個までの炭素原子を含有するアルキル基であり、ここでメチル基およびエチル基は好ましく、
Aは2〜5個の炭素原子を含有する飽和直鎖状脂肪族炭化水素基であり、
Xは水素原子またはモノカルボン酸またはジカルボン酸の脂肪族または芳香族の酸のアルキル基である。
【0012】
下記から成る群から選択されるα,ω-n-アルカンジカルボン酸またはそのエステルは好ましい: ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸および1,11-ウンデカンジカルボン酸。アゼライン酸またはそのエステルはより好ましく、アゼライン酸は最も好ましい。
エステル基として、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基をα-およびω-位置において互いに独立して使用することができる。エステルが皮膚酵素から切断可能であることは必須である。アルキル基は直鎖状または分枝鎖状のメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチルであることができる。
【0013】
下記から成る群から選択されるイミダゾール誘導体は好ましい:
1-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチル-5-ニトロイミダゾール、
1-(2-ベンゾイルオキシエチル)-2-メチル-5-ニトロイミダゾール、
1-(2-スクシノイルオキシエチル)-2-メチル-5-ニトロイミダゾール、および
1-(2-シンナモイルオキシエチル)-2-エチル-5-ニトロイミダゾール。
メトロニダゾール = 1-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチル-5-ニトロイミダゾールは最も好ましい。
【0014】
利点
しゅさ (rosacea) の炎症性形態の治療において、なかでも、承認された医薬製剤メトロニダゾール (種々の賦形剤中の0.5〜1.0%) およびアゼライン酸 (種々の賦形剤中の20%) は有効であることが証明された (Rebora A. (2002) The Management of Rosacea. Am. J. Clin. Dermatol. Vol. 3(7) 、pp. 489-96) 。アゼライン酸とメトロニダゾールとの組み合わせは以前にin vivo で研究されなかった; しゅさの場合における個々の物質の活性の比較データのみが存在する (Maddin (1999) Journal of the American Academy of Dermatology Vol. 40(69) 、pp. 961-965) 。さらに、組み合わせ療法の加法的または相乗的活性を示す研究データは発表されてきていないようである。
【0015】
炎症モデルにおけるエタノール/ミリスチン酸イソプロピル中のメトロニダゾール (0.75%) とアゼライン酸 (20%) との組み合わせ療法は賦形剤に比較して有意に療法的に有効であるが、2つの個々の物質メトロニダゾール (0.75%) またはアゼライン酸 (20%) は、賦形剤に比較して、このような高い治療効果を示さないことが、十分に驚くべきことには、発見された。この活性は、なかでも、皮膚におけるペルオキシダーゼ活性として測定された、白血球の移入、ならびに皮膚におけるエラスターゼ活性として測定された、好中性顆粒球の移入を包含した。皮膚におけるこの細胞集団の移入および前炎症物質の放出は、多数の炎症性疾患の病因に関係づけられる。これらの疾患は、なかでも、しゅさ、ざ瘡 (acne) 、アレルギー性および過敏性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎および乾癬を包含する (Braun-Falco O.、G. Plewig 他 (1955) Dermatologie und Venerologie [Dermatology and Venereology] 、Heidelberg、Springer) 。
【0016】
炎症反応 (過敏性接触皮膚炎) の誘導は、局所的または全身的に投与された被験物質の抗炎症ポテンシャルを薬理学的に評価するための普通のモデルである (TrancikおよびLowe (1985) Evaluation of Topical Nonsteroidal Anti-inflammatory Agents、Models in Dermatology、H. MaibachおよびN. J. Lowe、Basel Karger: 35-42) 。それは、なかでも、非ステロイド抗炎症剤ならびにグルココルチコイドステロイドの試験において有効であることが証明され、そして局所的抗炎症物質を評価する最も再現性あるin vivo 実験であると見なされる (Lorenzetti (1975) Animal to Clinical Correlation of Topical Anti-Inflammatory Efficacy、Animal Models in Dermatology、H. Maibach、Basel Karger: 212-224) 。
【0017】
追加の態様
下記の文献に記載されている薬学的賦形剤およびアジュバントと一緒に医薬組成物を含んでなる、本発明による組成物はいっそう好ましい: Remington’s Pharmaceutical Sciences 第15版、Mack Publishing Company、ペンシルベニア州イーストン (1980) 。
【0018】
追加の目的および達成
さらに、2種類の活性成分の生物学的利用能を増加させるべきである。
医薬組成物は、少なくとも下記の成分:
1種の7〜13個の炭素原子を有するα,ω-n-アルカンジカルボン酸またはそのエステル、および
少なくとも1種の、前述の一般式を有するイミダゾール誘導体、
から成り、下記の薬学的賦形剤:
水および塩を含んでなる水性相中のトリアシルグリセリド、プロピレングリコール、ポリソルベート、大豆レシチン、
を含み、ここでこの組成物はヒドロゲルである。
【0019】
利点
本発明による組成物は、より多い量の薬学的活性成分を生きている皮膚層および/または皮膚器官の中に浸透させることができるという利点を示す。
【0020】
組成物の他の態様
局所的に投与できる組成物は有利である。
ポリアクリル酸の存在は必須である。それはヒドロゲル生成のために決定的である。ゲルにおいて、大豆レシチンはレシチンとして好ましい。レシチンまたは大豆レシチンは、少なくとも3重量%の濃度において有利である。少なくとも1.5重量%の濃度はより好ましく、そして少なくとも1重量%の濃度は最も好ましい。
【0021】
利点
本発明による組成物は、好都合には、生きている皮膚層および/または皮膚器官の中への高い透過率を有する。
【0022】
好ましい態様
個々のパラメーターが、互いに独立して、下記の濃度を有することができる、本発明による組成物は好ましい:
0.5〜2重量%の濃度のポリアクリル酸、
0.5〜5重量%の濃度のトリアシルグリセリド、
5〜15重量%の濃度のプロピレングリコール、および
0.5〜3重量%の濃度のポリソルベート。
100%の合計が達成されるように、成分は共同すべきであることはもちろんである。
【0023】
個々のパラメーターが、互いに独立して、下記の濃度を有することができる、本発明による組成物は最も好ましい:
1±0.25重量%の濃度のポリアクリル酸、
2±1重量%の濃度のトリアシルグリセリド、
10±2重量%の濃度のプロピレングリコール、および
2±0.5重量%の濃度のポリソルベート。
100%の合計が達成されるように、成分は共同すべきであることはもちろんである。
【0024】
定義
アゼライン酸およびその製造は、ドイツ国特許DE 28 17 133.7に記載されている。また、下記の文献を参照のこと: Roempp、Chemie Lexikon [Lexicon of Chemistry]、Juegen FALBEおよびManfred REGNITZ、1989、第9版、p. 323、Thieme-Verlag 、Stuttgart、ISBN 3-13-734609-6。
【0025】
メトロニダゾールおよびその製造は、米国特許第2,944,061号 (R. M. Jacob 他、公開日1969年7月5日) に記載されている。新しいイミダゾール誘導体および、特にメトロニダゾールはその中で特徴づけられている。米国特許第4,837,378号 (R. J. Borgman、公開日1989年6月6日) には、メトロニダゾールの局所的投与が記載されている。しゅさおよび普通のざ瘡は、皮膚科学的組成物で治療される。
【0026】
ポリアクリル酸は、水中に部分的にのみ可溶性であるアクリル酸から成るアニオン活性ポリマーを表す。この1% の水性懸濁液は、pH 3および水とほぼ同一の粘度を有する。無機塩基または有機塩基を使用する中和間にのみ、ゲルが形成し、そして高度に粘性の生成物が生ずる。Rudolf VOIGTおよびManfred BORNSCHEIN、1979、Lehrbuch der pharmazeutischen Technologie [Textbook of pharmaceutical Technology] 、p. 314、VEB Verlag Volk und Gesundheit Berlin。また、下記の文献を参照のこと: Roempp、Chemie Lexikon、Juergen FALBEおよびManfred REGNITZ刊行、1992、第9版、p. 3508、Thieme Verlag Stuttgart、ISBN 3-13-735009-3。
【0027】
トリグリセリド」 は、グリセロールエステルの1表示であり、その3つのヒドロキシ基はカルボン酸によりエステル化されている。天然に存在する脂肪および脂肪油はトリグリセリド ( 「中性脂肪」 ) であり、これらは一般に同一グリセロール分子中に種々の脂肪酸を含有する。J. Am. Oil. Chem. Soc. Vol. 62、p. 730 (1985) : およびParfuem、Kosmet. Vol. 58、p. 353 (1977) ; およびRoempp、Chemie Lexikon、Juergen FALBEおよびManfred REGNITZ刊行、1990、第9版、pp. 1339-1342、Thieme Verlag Stuttgart、ISBN 3-13-734709-2。
【0028】
ポリプロピレングリコールは下記の文献に記載されている: H. P. FIEDLER: Lexikon der Hilfsstoffe [Lexicon of Adjuvants] 、第4版、1996、ISBN 3-87193-173、pp. 1278-1282。
ポリソルベートは下記の文献に記載されている: H. P. FIEDLER: Lexikon der Hilfsstoffe [Lexicon of Adjuvants] 、第4版、1996、ISBN 3-87193-173、pp. 1251-1252。
【0029】
レシチンは、生物学的物質から抽出により得られる。こうして、大豆 (最も普通の原料) から成るレシチン画分は、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸を含んでなる。通常、飽和脂肪酸をグリセロールの第一級ヒドロキシ基でエステル化し、そして不飽和脂肪酸をグリセロールの第二級ヒドロキシ基でエステル化する。レシチンは、すべての生きている生物の細胞膜の成分である。水中で、レシチンはまず親油性コロイドのように膨潤する。その後、それらは透明なコロイド溶液を生成する。
【0030】
水分に依存して、それらは異なるテキスチャーを形成し、ここでラメラが脂質二重層から形成される。より高い水分において、リポソームが生成する。下記の文献を参照のこと: Pardun、Die Pflanzenlecithine [The Plant Lecithins] 、Ausburg: Verl. fuer Chem. Ind. (Ziolkowsky KG) 1988。追加のレシチンおよびそれらの作用は下記の文献に記載されている: J. GAREISS 他、1994、Parfuemerie und Kosmetik [Perfume and Cosmetics] 、Vol. 10/94、pp. 652-659、Huething GmbH Heidelberg。
【0031】
ゲルは下記の性質により区別される: それは寸法安定性であり、変形容易な液体であり、必要に応じて、少なくとも2種類の成分から成る、気体に富んだ分散系である。Roempp、Chemie Lexikon、Juergen FALBEおよびManfred REGNITZ刊行、1990、第9版、p. 1511、Thieme Verlag Stuttgart、ISBN 3-13-734709-2; およびPharm. Unserer Zeit [Pharmaceutics of Our Time] 、Vol. 8、pp. 179-188 (1979) ; およびParfuem. Kosmet. Vol. 58、pp. 251-253 (1977) 。
【0032】
保存剤を水性相に添加することができる。保存剤は、例えば、安息香酸を包含する。安息香酸は、その抗微生物性に基づいて、保存剤として特に適当である。
【0033】
薬剤として使用するときの性質
薬学的活性成分:
本発明の組成物は、局所的抗炎症性物質を評価するために確立された検定系において、薬理学的作用を示す (O. J. Lorenzetti (1975) Animal to Clinical Correlation of Topical Anti-Inflammatory Efficacy. Animal Models in Dermatology、H. Maibach、Basel、Karger、pp. 212-225) 。したがって、この組成物は治療的に活性な成分または薬剤として使用することができる。
【0034】
本発明の組成物は、種々の適応症の治療に適当である。本発明の組成物は、乾癬、アトピー性皮膚炎、普通のざ瘡および/またはしゅさを治療する治療的に活性な成分として好ましい。さらに、本発明は、乾癬、アトピー性皮膚炎、普通のざ瘡および/またはしゅさを治療する薬剤の製造に本発明による組成物を使用することを含んでなる。
本発明の組成物は、少なくとも1種の生理学的に適合性の薬学的アジュバントまたは賦形剤と一緒に、しゅさまたは乾癬を治療する治療的に活性な成分としていっそう好ましい。
【0035】
(i) さらに、本発明は、下記を提供する:
(α) 乾癬、アトピー性皮膚炎、普通のざ瘡および/またはしゅさを治療する薬剤を製造するための本発明の医薬組成物の使用;
(β) 乾癬、アトピー性皮膚炎、普通のざ瘡および/またはしゅさを治療する方法、
前記方法は、本発明による医薬組成物を投与し、ここでその量は疾患を抑制し、そして医薬組成物はこのような投薬を必要とする患者に投与される;
(γ) 乾癬、アトピー性皮膚炎、普通のざ瘡および/またはしゅさを治療する医薬組成物、
前記治療は本発明の医薬組成物と少なくとも1種の生理学的に適合性のアジュバントまたは賦形剤とを含んでなる。
【0036】
これらの治療的作用のために、適当な投与量は異なり、例えば、医薬組成物中の個々の要素の濃度、宿主、投与方法、および治療すべき症状のタイプおよび重症度に依存する。
7〜13個の炭素原子を有するα,ω-n-アルカンジカルボン酸、特にアゼライン酸の好ましい濃度は、2〜40重量%、より好ましくは5〜20重量%、なおより好ましくは8〜17重量%、最も好ましくは10〜15重量%である。イミダゾール誘導体およびそのエステル、特にメトロニダゾールの好ましい濃度は、少なくとも0.1〜3重量%、より好ましくは0.25〜1重量%、最も好ましくは0.7〜0.8重量%である。
【0037】
治療は予防的および治療的手段を包含する。組成物の成分は、同時におよび/または間隔を置いて投与することができる; さらに、それらは物理的におよび/または時間的に互いに分離して投与することができる。
【0038】
医薬製剤
本発明の医薬組成物は、この分野において知られている方法に従いガレン製剤に普通に使用されている添加剤および/または賦形剤を含む局所的投与形態に加工することができる。少なくとも1種の生理学的に適合性の、薬理学的アジュバントまたは賦形剤を含む本発明による組成物は好ましい。薬理学的アジュバントおよび賦形剤は下記の文献に記載されている: Remington’s Pharmaceutical Sciences、第15版、Mack Publishing Company、ペンシルベニア州イーストン (1980) 。
【0039】
局所的治療の場合において、本発明の医薬組成物は、任意の普通に使用される方法において、活性成分を適当な添加剤で必要な投与形態、例えば、溶液、ローション、クリーム、軟膏、パスタまたはゲルにすることによって投与することができる。ゲルは好ましい。ローション、クリーム、軟膏およびゲルは、慣用法において普通の乳化剤を使用して製造することができる。(Kirk-Othmer: Encyclopedia of Chemical Technology、第3版、1979、John Wiley & Sons、New York、Vol. 8、pp. 900-930、およびDr. Otto-Albrecht Neumueller: Roempps Chemie Lexikon、第7版、1973、Franckh’sche Verlagshandlung [Franckh Publishing House] 、Stuttgart、pp. 1009-1013) 。
【0040】
角質溶解剤、例えば、サリチル酸、ビタミンA酸、レゾルシノール、フェノール、クレゾールおよびその他を薬剤に添加することができる。
生理学的に適合性の塩は、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩、また、塩基性アミノ化合物および有機アミン、例えば、アルギニン、リシンまたはN-メチルグルタミンとの塩を包含する。
【0041】
親水性および/または親油性添加剤として、モイシュチャライジング因子 (ヒドロ錯体) 、例えば、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコールまたはアミノ酸混合物、プロバ (Puroba) 油 (= ホホバ油) 、ビタミン (好ましくはビタミンAおよびE) 、生命の複合体 (例えば、胎盤抽出物) 、酵素、ハーブ抽出物 (例えば、ハマメリス抽出物またはカモミレ抽出物) またはタンパク質 (例えば、コラーゲン) を使用することができる。
【0042】
炭化水素、例えば、スクアレン、ワセリン、パラフィンまたはステアリン、または蝋、例えば、蜜蝋は油相または脂肪相として適当である。適当な油/水乳化剤は、例えば、ステアリルアルコール、ポリオキシエチレンステアレート (例えば、MYRJ (商標) ) 、複合乳化剤 (例えば、Amphoterin (商標) ) およびソルビタン脂肪酸エステル (例えば、Tween 80 (商標) ) またはカルボキシビニルポリマー (例えば、Carbopol (商標) ) である。さらに、水性相は、また、緩衝化物質、例えば、エチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸の二ナトリウム塩、および保存剤、例えば、安息香酸、クロラムフェニコール、パラベンまたは塩化ベンザルコニウムを含有することができる。
【0043】
適用
しゅさ:
しゅさは、顔の初期に慢性充血性疾患 (しゅさI) 、後に慢性の炎症性疾患 (しゅさIIおよびIII) である。それは脈管反応の増加ならびに白血球の移入および炎症性メディエイターの放出を伴う炎症プロセスに起因する。それは、水腫、丘疹および膿疱の形成を伴う、急性炎症期を有する持続性紅斑の特色を示す。それは通常20年の年齢にわたって起こる。アゼライン酸、抗生物質およびコルチコステロイドが治療に使用される。
しゅさの有望な治療は困難である。本発明による組成物は、炎症性成分 (丘疹および膿疱) ならびにしゅさの脈管成分 (紅斑および毛細管拡張症) の両方に対して、好都合な効果を発揮するために適当である。
【0044】
ざ瘡:
本発明による組成物は、ざ瘡の治療においてすぐれた作用を示す。ざ瘡は、炎症性丘疹、膿疱および嚢胞を伴いかつ非炎症性黒色面皰を伴う、脂腺の異常である。ほとんどの場合において、それは青年期および若い成人に影響を与える。
本発明による組成物は、ざ瘡に対して好都合な効果を発揮するために適する。本発明による組成物の好都合な治療効果は、丘疹、膿疱および嚢胞の明瞭な減少において示される。
【0045】
乾癬:
乾癬は、ケラチノサイト表皮通過時間がかなり増加している、普通の慢性増殖性皮膚疾患である。病変は鋭く境界決定された、厚い紅斑性斑点であり、増殖する白色スケーリングを伴う。肘、膝、頭皮、性器および殿溝が通常影響を受ける。
本発明による組成物は、これらの病変に対して好都合な効果を発揮するために適当である。
【実施例】
【0046】
炎症性反応 (過敏性接触皮膚炎) の誘導は、局所的または全身的に投与された被験物質の抗炎症ポテンシャルを薬理学的に評価する普通のモデルである (TrancikおよびLowe (1985) Evaluation of Topical Nonsteroidal Anti-Inflammatory Agents、Models in Dermatology、H. MaibachおよびN. J. Lowe、Basel、Karger: 35-42) 。それは、なかでも、非ステロイド抗炎症剤ならびにグルココルチコイドステロイドの試験において有効であることが証明され、そして局所的抗炎症物質を評価する最も再現性あるin vivo 実験であると見なされる (Lorenzetti (1975) Animal to Clinical Correlation of Topical Anti-Inflammatory Efficacy、Animal Models in Dermatology、H. Maibach、Basel Karger: 212-225) 。
【0047】
ホルボールエステルクロトン油をマウスの耳に適用すると、24時間以内にその最大に到達する水腫および一次多形核顆粒球の移入を伴う、急性炎症反応が生ずる。これに関して、被験物質を予防的に (すなわち、炎症刺激の投与前に) またはクロトン油と同時に投与することができる。マウスの耳上のクロトン油誘導炎症は、過敏性および/またはアレルギー性接触皮膚炎のモデルであるばかりでなく、かつまた顆粒球の高い炎症および移入に関連する、他の皮膚疾患のモデルである。これらは、乾癬、アトピー性皮膚炎、普通のざ瘡およびしゅさの炎症段階を包含する。
【0048】
しゅさは、多数の著者らによりざ瘡グループであると考慮され、ざ瘡グループ上に発生し、経時的にざ瘡グループを除去することができる、病因が未知の疾患である。この疾患は3つの段階に分割され、それらのうちで特にしゅさIIおよびIIIは炎症性小結節、節、および斑により特徴づけられる。白血球の浸潤は組織学により見出される (Braun-Falco 他 (1995) Dermatologie und Venerologie、Heidelberg、Springer) 。皮膚の白血球浸潤を伴うこれらの段階の炎症性成分のために、クロトン油のモデルはこの疾患の面を反映する。
【0049】
しゅさの炎症形態の治療において、なかでも、承認された医薬製剤メトロニダゾール (種々の賦形剤中の0.5〜1.0%) およびアゼライン酸 (種々の賦形剤中の20%) は有効であることが証明された (Rebora (2002) The Management of Rosacea. Am. J. Clin. Dermatol. Vol. 3(7) 、pp. 489-498) 。以前に、アゼライン酸とメトロニダゾールとの組み合わせ治療の作用はin vivo で研究されなかった; しゅさの場合において個々の物質の活性を比較するデータのみが存在する (Maddin (1999) A Comparison of Topical Azelaic Acid 20% Cream and Topical Metronidazole 0.75% Cream in the Treatment of Patients with Papulopustular Rosacea. Journal of the American Academy of Dermatology、Vol. 40(6): pp. 961-965) 。さらに、組み合わせ治療の加法的または相乗的作用を期待できる研究結果は発表されてきていない。
【0050】
十分に驚くべきことには、エタノール/ミリスチン酸イソプロピル中のメトロニダゾール (0.75%) およびアゼライン酸 (20%) の組み合わせ治療は、賦形剤に比較して、有意に治療的に有効であるが、2種類の個々の物質メトロニダゾール (0.75%) またはアゼライン酸 (20%) は、賦形剤に比較して、このような高い治療効果を示さないことが発見された。活性は、なかでも、皮膚においてペルオキシダーゼ活性として測定された、白血球の移入、ならびに皮膚においてエラスターゼ活性として測定された、好中性顆粒球の移入を包含した (表1) 。
【0051】
皮膚中のこの細胞集団の移入および前炎症物質の放出は、多数の炎症性疾患の病因に関係づけられる。これらの疾患は、なかでも、しゅさ、ざ瘡、アレルギー性および過敏性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎および乾癬を包含する。Braun-Falco 他 (1995) Dermatologie und Venerologie、Heidelberg、Springer。
クロトン油炎症化マウス皮膚中への白血球浸潤は、賦形剤治療に比較して、アゼライン酸およびメトロニダゾールの組み合わせ治療により抑制されるが、個々の活性成分はそれほど有効ではなかった。
【0052】
【表1】

【0053】
それ以上詳しく説明しないで、当業者は、前述の説明を使用して、本発明を完全に利用できると考えられる。したがって、前述の好ましい特定の態様は単に例示であり、そして開示の残部をいかなる方法においても限定しないと解釈すべきである。
前述の説明および実施例において、特記しない限り、すべての温度は未補正℃であり、そして百分率は重量による。
【0054】
本明細書中に引用された、すべての出願、特許および刊行物、および対応するドイツ国出願No. 10326722.0 (出願日2003年6月10日) および米国仮出願No. 60/477,031 (出願日2003年6月10日) の全開示は、引用することによって本明細書の一部とされる。
前述の実施例において使用されたもの代わりに、一般的または特定的に記載された反応物および/または操作条件を使用することによって、前述の実施例を首尾よく反復することができる。
以上の説明から、当業者は、本発明の必須の特徴を容易に確認し、そして本発明の範囲および精神から逸脱しないで、本発明の種々の変更および変化を種々の用途および条件に適合させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の2種類の物質;
(i) 少なくとも1種の、7〜13個の炭素原子を有するα,ω-n-アルカンジカルボン酸またはそのエステル、および
(ii) 少なくとも1種の、
【化1】

(式中、
Rは水素原子または5個までの炭素原子を含有するアルキル基であり、
Aは2〜5個の炭素原子を含有する飽和直鎖状脂肪族炭化水素基であり、
Xは水素原子またはモノカルボン酸またはジカルボン酸の脂肪族または芳香族の酸のアルキル基である) 。
下記の一般式を有するイミダゾール誘導体、
を含んでなる組成物。
【請求項2】
前記α,ω-n-アルカンジカルボン酸がアゼライン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記イミダゾール誘導体が1-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチル-5-ニトロイミダゾールである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記α,ω-n-アルカンジカルボン酸またはそのエステルおよびイミダゾール誘導体が下記の製剤学的賦形剤を含んでなる、請求項1〜3のいずれか1つに記載の組成物: 水および塩を含んでなる水性相中のトリアシルグリセリド、プロピレングリコール、ポリソルベート、ポリアクリル酸、大豆レシチン。
【請求項5】
個々の賦形剤が、互いに独立して、下記の濃度を示す、請求項4に記載の組成物:
0.5〜2重量%の濃度のポリアクリル酸、
0.5〜5重量%の濃度のトリアシルグリセリド、
5〜15重量%の濃度のプロピレングリコール、および
0.5〜3重量%の濃度のポリソルベート。
【請求項6】
製剤学的活性成分としての請求項1〜5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項7】
乾癬、アトピー性皮膚炎、普通のざ瘡 (acne) および/またはしゅさ (rosacea) を治療する請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
α,ω-n-アルカンジカルボン酸の濃度が2〜40重量%の範囲であり、そしてイミダゾール誘導体の濃度が0.1〜3重量%の範囲である、請求項6または7に記載の組成物。
【請求項9】
薬学的添加剤および/または賦形剤を含む請求項1〜8のいずれか1つに記載の組成物。

【公表番号】特表2006−527219(P2006−527219A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515796(P2006−515796)
【出願日】平成16年5月26日(2004.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005668
【国際公開番号】WO2004/108143
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(300049958)シエーリング アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】