説明

アルコキシフェニルカルボン酸誘導体

【課題】アルコキシフェニルカルボン酸誘導体を提供する。
【解決手段】表面の抗菌処理における、化粧料、家庭用品、織物及びプラスチックを保存する際の、並びに消毒剤における使用のための、次式(I):


[式中、
1 は置換された又は非置換の炭素原子数1ないし30のアルキル基、或いは置換された又は非置換の炭素原子数3ないし7のシクロアルキル基を表わし、そしてR2 はH、COOH、或いは置換された又は非置換のO−炭素原子数1ないし30のアルキル基を表わす。]で表わされる化合物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の抗菌処理における、化粧料、家庭用品、織物及びプラスチックの保存における、並びに消毒剤における使用のための、アルコキシフェニルカルボン酸誘導体の使用に関するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明は、表面の抗菌処理における、次式(I):
【化1】

[式中、
1 は置換された又は非置換の炭素原子数1ないし30のアルキル基、或いは置換された又は非置換の炭素原子数3ないし7のシクロアルキル基を表わし、そして
2 はH、COOH、或いは置換された又は非置換のO−炭素原子数1ないし30のアルキル基を表わす。]で表わされる化合物の使用に関するものである。
【0003】
好ましいことは、式(I):
[式中、
1 は置換された又は非置換の炭素原子数1ないし20のアルキル基、或いは置換された又は非置換の炭素原子数3ないし7のシクロアルキル基を表わし、そして
2 はH、COOH、或いは置換された又は非置換のO−炭素原子数1ないし20のアルキル基を表わす。]で表わされる化合物の使用である。
特に好ましいことは、式(I):
[式中、
1 は置換された又は非置換の炭素原子数8ないし20のアルキル基を表わし、そして
2 はH、COOH、或いは置換された又は非置換のO−炭素原子数8ないし20のアルキル基を表わす。]で表わされる化合物の使用であり、そして
非常に特別に好ましいことは、式(I):
[式中、
1 は置換された又は非置換の炭素原子数8ないし20のアルキル基を表わし、そして
2 はH又はCOOHを表わす。]で表わされる化合物の使用である。
【0004】
炭素原子数1ないし30のアルキル基、炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数8ないし20のアルキル基、O−炭素原子数1ないし30のアルキル基、O−炭素原子数1ないし20のアルキル基及びO−炭素原子数8ないし20のアルキル基は直鎖状又は分岐鎖状であり、そして中断されていないか、或いは、不飽和炭化水素基及びヘテロ原子;−CR3 =CR4 −及びO、S、CO、N、NR5 [ここで、R3 、R4 及びR5 はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わす。]の群から選択された少なくとも一つの基により1回又はそれより多くの回数中断されている。
例えば、Oにより中断されたアルキル基は、−CH2 CH2 −O−CH2 CH2 −O−
CH2 CH2 −O−CH2 CH2 −O−CH2 CH2 −O−CH2 CH3 、又は−CH2 CH2 −O−CH2 CH3 、又は−CH2 CH2 −O−CH2 CH2 −O−CH2 CH2 −O−CH2 CH3 、又は−CH2 CH2 −O−CH2 CH2 −CH2 CH2 −O−CH(CH3 2 である。
例えば、Nにより中断されたアルキル基は、−CH2 CH2 CH2 CH2 CH2 CH2 CH2 CH2 −N(CH3 2 、−CH2 CH2 CH2 CH2 CH2 CH2 −NH−CH3 、−(CH2 7 −N(CH3 )−CH3 、−(CH2 7 −NH−CH3 、−CH2 CH2 CH2 CH2 −NH−CH2 CH2 CH2 CH3 、又は−CH2 CH2 CH2 CH2 −N(CH3 )−CH2 CH2 CH2 CH3 である。
炭素原子数1ないし30のアルキル基、炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数8ないし20のアルキル基、O−炭素原子数1ないし30のアルキル基、O−炭素原子数1ないし20のアルキル基及びO−炭素原子数8ないし20のアルキル基の置換基は、例えば、炭素原子数1ないし4のアルキル基、ハリド又はCNである。
【0005】
炭素原子数1ないし30のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2,2’−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、1,1’,3,3’−テトラメチルブチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコサニル基又はトリコサニル基である。
炭素原子数1ないし20のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2,2’−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、1,1’,3,3’−テトラメチルブチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基又はエイコサニル基である。
炭素原子数8ないし20のアルキル基は、例えば、n−オクチル基、1,1’,3,3’−テトラメチルブチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基又はエイコサニル基である。
炭素原子数1ないし4のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第二ブチル基又は第三ブチル基である。
【0006】
O−炭素原子数1ないし30のアルキル基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、第二ブトキシ基、第三ブトキシ基、n−ペンチロキシ基、2−ペンチロキシ基、3−ペンチロキシ基、2,2’−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシロキシ基、n−ヘプチロキシ基、n−オクチロキシ基、1,1’,3,3’−テトラメチルブトキシ基、2−エチルヘキシロキシ基、ノニロキシ基、デシロキシ基、ウンデシロキシ基、ドデシロキシ基、トリデシロキシ基、テトラデシロキシ基、ペンタデシロキシ基、ヘキサデシロキシ基、ヘプタデシロキシ基、オクタデシロキシ基、ノナデシロキシ基、エイコサニロキシ基又はトリコサニロキシ基である。
O−炭素原子数1ないし20のアルキル基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、第二ブトキシ基、第三ブトキシ基、n−ペンチロキシ基、2−ペンチロキシ基、3−ペンチロキシ基、2,2’−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシロキシ基、n−ヘプチロキシ基、n−オクチロキシ基、1,1’,3,3’−テトラメチルブトキシ基、2−エチルヘキシロキシ基、ノニロキシ基、デシロキシ基、ウンデシロキシ基、ドデシロキシ基、トリデシロキシ基、テトラデシロキシ基、ペンタデシロキシ基、ヘキサデシロキシ基、ヘプタデシロキシ基、オクタデシロキシ基
、ノナデシロキシ基又はエイコサニロキシ基である。
O−炭素原子数8ないし20のアルキル基は、例えば、n−オクチロキシ基、1,1’,3,3’−テトラメチルブトキシ基、2−エチルヘキシロキシ基、ノニロキシ基、デシロキシ基、ウンデシロキシ基、ドデシロキシ基、トリデシロキシ基、テトラデシロキシ基、ペンタデシロキシ基、ヘキサデシロキシ基、ヘプタデシロキシ基、オクタデシロキシ基、ノナデシロキシ基又はエイコサニロキシ基である。
炭素原子数3ないし7のシクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基又はシクロヘプチル基である。
ハリドは、例えば、フルオリド、ブロミド、クロリド又はヨージド、及び好ましくはフロリドである。
【0007】
本発明の使用において、非常に特別に好ましい化合物の例は、次式:
【化2】

及び、次式:
【化3】

で表わされる化合物に対応する。
【0008】
本発明のアルコキシフェニルカルボン酸誘導体は、通常、ヒドロキシカルボン酸のカルボン酸エステル、好ましくはメチルエステルを、適する溶剤、例えばエタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド又はアセトン中で、適切なハロゲン化アルキルを用いて、有機又は無機の塩基、好ましくは炭酸カリウムの存在下でアルキル化し、その後、このアルコキシカルボン酸エステルを加水分解して遊離酸を形成することによる公知方法に基づいて製造される。
【化4】

【0009】
本発明の式(I)で表わされるアルコキシフェニルカルボン酸誘導体は、とりわけグラ
ム陽性菌及びグラム陰性菌に対して、そしてまた皮膚常在菌に対して、更にイースト及び糸状菌に対して、著しい抗菌活性を示す。従って、それらは皮膚及び粘膜の及びまた外皮付属物(髪)の消毒、脱臭並びに一般的及び抗菌処理のために、非常に特別には手及び傷の消毒のために、とりわけ適している。
本発明の式(I)で表わされるアルコキシフェニルカルボン酸誘導体は、従って、パーソナルケア配合物、例えばシャンプー、入浴剤、ヘア−ケア配合物、液体及び固体石鹸(合成界面活性剤並びに飽和及び/又は不飽和脂肪酸の塩をべースとする)、ローション及びクリーム、脱臭剤、他の水性及びアルコール性溶液、例えば皮膚の清浄溶液、モイストクレンジングクロス、油又は粉末における抗菌活性成分及び保存剤として適している。
【0010】
本発明は、少なくとも一種の式(I)で表わされる化合物並びに化粧品において許容され得るキャリヤー及び助剤を含むパーソナルケア配合物に関するものである。
本発明はまた、皮膚、口腔及び他の粘膜、歯の表面、並びに髪の抗菌処理、脱臭及び消毒における式(I)で表わされる化合物の使用に関するものである。
本発明はまた、表面の抗菌及び脱臭における式(I)で表わされる化合物の使用に関するものである。
【0011】
本発明のパーソナルケア配合物は、
a)前記配合物の総質量に基づいて、式(I)で表わされる化合物0.01質量%ないし15質量%、好ましくは0.1質量%ないし10質量%、及び
b)化粧品において許容され得る助剤
を含む。
前記パーソナルケア配合物の形態に応じて、該配合物はまた、式(I)で表わされるアルコキシフェニルカルボン酸誘導体に加えて、他の成分、例えば金属イオン封鎖剤、着色剤、香油、増粘剤及び硬化剤(コンシステンシー調節剤)、皮膚軟化剤、紫外線吸収剤、皮膚保護剤、酸化防止剤、機械的性質を改良する添加剤、例えば、ジカルボン酸及び/又は、炭素原子数14ないし22の脂肪酸のアルミニウム塩、亜鉛塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩、並びに、所望により保存剤を含む。
本発明のパーソナルケア配合物は、油中水又は水中油乳化剤として、アルコール性又はアルコール含有製剤として、イオン性又は非イオン性の両親媒性脂質の小胞状分散液として、ゲルとして、固体スティックとして、又はエアロゾル製剤として、製剤化さえ得る。
【0012】
油中水又は水中油の乳化剤の場合、化粧品において許容され得る助剤は、好ましくは、油相5%ないし50%、乳化剤5%ないし20%及び水30%ないし90%を含む。前記油相は、化粧製剤に適する如何なる油をも、例えば一種又はそれより多くの炭化水素油、ワックス、天然油、シリコーン油、脂肪酸エステル又は脂肪アルコールを含み得る。好ましい一価又は多価アルコールは、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール及びソルビトールである。
本発明の化粧製剤は広汎な分野で使用される。とりわけ、例えば、下記製剤が考慮される:
−皮膚ケア製剤、例えば、錠剤形又は液体石鹸、合成洗剤又は洗浄ペーストの形態の皮膚洗浄及び清浄製剤、
−入浴製剤、例えば、液体入浴製剤(フォームバス、ミルク、シャワー製剤)又は固体入浴製剤、例えば、バスキューブ及びバスソルト、
−皮膚ケア製剤、例えば、皮膚乳化剤、マルチ乳化剤及びスキンオイル、
−化粧パーソナルケア配合物、例えば、デイクリーム又はパウダークリーム、フェイスパウダー(ルーズ及びプレスト)、ルージュ及びクリームメイクアップ、アイケア製剤、例えば、アイシャドー製剤、マスカラ、アイライナー、アイクリーム又はアイフィックスクリームの形態の顔用メイクアップ;リップケア製剤、例えば、リップスティック、リップグロス、リップコンターペンシル、爪ケア製剤、例えば、マニキュア、マニキュア除去剤
、爪硬化剤又はキューティクル除去剤、
−個人的衛生製剤、例えば、個人的洗浄ローション又は個人的スプレー、
−フットケア製剤、例えば、フットバス、フットパウダー、フットクリーム又はフットバルサム、特種脱臭剤及び発汗抑制剤又はカルス除去製剤、
−光防御製剤、例えば、サンミルク、ローション、クリーム及びオイル、サンブロック又はトロピカル、プレタンニング製剤又はアフターサン製剤、
−スキンタンニング製剤、例えば、セルフタンニングクリーム、
−脱色製剤、例えば、皮膚の脱色用製剤又は皮膚美白剤、
−防虫剤、例えば、防虫オイル、ローション、スプレー又はスティック、
−脱臭剤、例えば、脱臭スプレー、ポンプ式スプレー、脱臭ゲル、スティック又はロール−オン、
−発汗抑制剤、例えば、発汗抑制スティック、クリーム又はロール−オン、
−傷ついた皮膚を清浄にし且つケアするための製剤、例えば、合成洗剤(固体又は液体)、ピーリング又はスクラブ製剤、或いはピーリングマスク、
−化学形態の脱毛製剤(脱毛剤)、例えば、脱毛パウダー、液体脱毛製剤、クリーム−又はペースト−形態の脱毛製剤、ゲル形態又はエアロゾル形態の脱毛製剤、
−シェービング製剤、例えば、シェービング石鹸、発泡シェービングクリーム、非発泡シェービングクリーム、フォーム及びゲル、ドライシェービング用のプレシェーブ製剤、アフターシェーブ又はアフターシェーブローション、
−芳香製剤、例えば、芳香料(オウデコロン、オウドトアレ、オウドパルファン、パルファンドトアレ、パルファン)、香油又はクリームパヒューム、
−歯のケア、入れ歯のケア及び口腔ケア製剤、例えば、練り歯磨き、ゲル練り歯磨き、歯磨き粉、口腔洗浄濃厚液、歯石防止用口腔洗浄液、入れ歯清浄剤又は入れ歯固定剤、
−化粧ヘアトリートメント製剤、例えば、シャンプー及びコンディショナーの形態の洗髪製剤、ヘアケア製剤、例えば、プレトリートメント製剤、ヘアトニック、スタイリングクリーム、スタイリングゲル、ポマード、ヘアリンス、トリートメントパック、強力ヘアトリートメント、整髪製剤、例えば、パーマネントウェーブ(ホットウェーブ、マイルドウェーブ、コールドウェーブ)用のヘアウェービング製剤、ヘアストレイティング製剤、液体ヘアセッティング製剤、フォーム、ヘアスプレー、漂白製剤、例えば、過酸化水素溶液、美白シャンプー、脱色クリーム、脱色パウダー、脱色ペースト及びオイル;一時的、半−恒久的又は恒久的毛染め剤、自己酸化染料を含む製剤、又は天然毛染め剤、例えば、ヘナ又はカモミール。
【0013】
抗菌石鹸は、例えば、下記組成を有する:
式(I)で表わされる化合物0.01質量%ないし5質量%、
二酸化チタン0.3質量%ないし1質量%、
ステアリン酸1質量%ないし10質量%、及び
100質量%までの残部の石鹸ベース、例えば、獣脂脂肪酸のナトリウム塩及びココナッツ脂肪酸のナトリウム塩又はグリセロール。
シャンプーは、例えば、下記組成を有する:
式(I)で表わされる化合物0.01質量%ないし5質量%、
ラウレス−2−硫酸ナトリウム12.0質量%、
コカミドプロピルベタイン4.0質量%、
NaCl3.0質量%、及び
水100質量%までの残部。
脱臭剤は、例えば、下記組成を有する:
式(I)で表わされる化合物0.01質量%ないし5質量%、
エタノール60質量%、
香油0.3質量%、及び
水100質量%までの残部。
【0014】
本発明はまた、口腔組成物であって、
a)前記組成物の総質量に基づいて、式(I)で表わされる化合物0.01質量%ないし15質量%、及び
b)口腔において許容され得る助剤
を含む組成物に関する。
口腔組成物の例:
ソルビトール10質量%、
グリセロール10質量%、
エタノール15質量%、
プロピレングリコール15質量%、
ラウリル硫酸ナトリウム0.5質量%、
メチルコシルタウリンナトリウム0.25質量%、
ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロックコポリマー0.25質量%、
ペパーミント着香料0.10質量%、
式(I)で表わされる化合物0.1質量%ないし0.5質量%、及び
水100質量%までの残部。
本発明の口腔組成物は、例えば、ゲル、ペースト、クリーム又は水性製剤(口腔洗浄液)の形態であってよい。
本発明の口腔組成物はまた、虫歯の生成の阻止に効果的な弗素イオンを放出する化合物、例えば無機弗化物塩、例えば、弗化ナトリウム、弗化カリウム、弗化アンモニウム又は弗化カルシウム、或いは有機弗化物塩、例えば、商標名オラフルーア(Olafluor)の下で知られている弗化アミンを含み得る。
【0015】
本発明はまた、表面の保存の際の式(I)で表わされる化合物の使用に関する。
本発明はまた、織物繊維材の抗菌処理、とりわけ保存における式(I)で表わされる化合物の使用に関する。このような材料は天然で且つ染色又は印刷された繊維材、例えば絹、ウール、ポリアミド又はポリウレタン、及びとりわけ、全ての種類のセルロール繊維材である。このような繊維材は、例えば、天然セルロール繊維、例えば綿、リンネル、ジュート及び麻、及び更にセルロール及び再生セルロールを含む。好ましい適する繊維材は綿のものである。
本発明はまた、プラスチックの抗菌処理における、とりわけプラスチックへの抗菌性の付与における又はそれらの保存における式(I)で表わされる化合物の使用に関するものであり、前記プラスチックは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート及びラテックスである。それらの適用分野は、例えば、床被覆材、プラスチックコーティング、プラスチック容器及び包装材;台所及び浴室用品(例えば、ブラシ、シャワーカーテン、スポンジ、バスマット)、ラテックス、フィルター材(空気及び水フィルター)、医療分野において使用されるプラスチック物品、例えば、包帯、注射器、カテーテル等の、いわゆる医療機器、グローブ及びマットレスである。 本発明はまた、紙例えばトイレットペーパー、不織布例えばおむつ、衛生タオル、パンティライナー並びに、衛生及び家庭分野のためのクロスの抗菌処理における式(I)で表わされる化合物の使用に関するものである。
本発明はまた、洗浄及び清浄製剤、例えば、液体及び粉末洗剤又は柔軟剤における抗菌処理のための式(I)で表わされる化合物の使用に関する。
本発明はまた、硬質表面の清浄化及び抗菌のための、家庭用及び汎用クリーナーにおける抗菌処理のための式(I)で表わされる化合物の使用に関する。
【0016】
清浄剤は、例えば、下記組成を有する:
式(I)で表わされる化合物0.01%ないし5%、
オクチルアルコール4EO3.0%、
脂肪アルコール炭素原子数8ないし10のポリグルコシド1.3%、
イソプロパノール3.0%、
水100質量%までの残部。
化粧品及び家庭用品の保存に加えて、商品例えば澱粉又はセスロース誘導体の印刷増粘剤、表面コーティング及びペイントの保存において又はそれらへの抗菌性の付与において式(I)で表わされる化合物を使用することが可能であり、並びに、例えば紙の処理に、とりわけ紙処理リカーにおいて、工業プロセスにおける殺生剤としてそれらを使用することも可能である。
本発明はまた、木材の抗菌処理における及び革の抗菌処理における、革の保存における及び革への抗菌性の付与における、式(I)で表わされる化合物の使用に関する。
本発明はまた、化粧品及び家庭用品の微生物による損傷からの保護における式(I)で表わされる化合物の使用に関する。
【0017】
本発明はまた、バイオフィルムを形成する微生物の抑制における又は駆除における、式(I)で表わされる化合物の非治療的使用に関するものである。
式(I)で表わされる化合物は、生体表面又は無生物表面上のバイオフィルムに浸透するために、表面へのバクテリアの付着の阻止のために、そして所望により、更なるバイオフィルムの構築を阻止するために、バイオフィルムを除去し及び/又は、バイオフィルムを形成するバイオマトリックスにおいて微生物の更なる成長を抑制するか又は微生物を駆除するために、適している。
用語”バイオフィルム”は、生きている又は死んだ微生物、とりわけ、細胞外ポリマー状物質(EPSマトリックス)、例えば多糖類の形態の代謝生成物と一緒に、生体表面又は無生物表面に付着しているバクテリアの凝集体を非常に一般的に示す。
浮遊細胞に対する著しい成長阻害又は破壊を通常示す抗菌活性成分の活性は、バイオフィルムへと組織化される微生物に対しては、例えば、バイオマトリックス内への活性成分の浸透が不充分であるため、非常に低減され得る。
本発明の場合において、これはとりわけ、歯の表面上及びヒトの口腔粘膜上のバイオフィルムに関連し、それらを形成する微生物又は微生物の代謝生成物の結果としてのバイオフィルムは、口腔内の変性疾患、例えば虫歯又は歯周炎の進行における決定的な役割を演じる。
【実施例】
【0018】
下記実施例により本発明を説明するが、下記実施例は本発明を限定するものではない。実施例1:2−ドデシロキシ安息香酸(II)の製造
【化5】

2−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル40.2mL(312ミリモル)を、窒素雰囲気下で、炭酸カリウム47.4g(343ミリモル)と共にアセトニトリル中に置き、そして還流下で1時間加熱した(白色懸濁液)。その後、ドデシルブロミド89.8mL(374ミリモル)及び沃化カリウム5.2g(31ミリモル)を添加した後、還流下で48時間撹拌を行った。
仕上げのため、溶剤を抜き出し、そして無色の油状−固体残渣を水に懸濁し、そしてジエチルエーテルと共に振震することにより抽出した。エーテル相を1NNaOH及び水を用いて洗浄し、そしてNa2 SO4 上で乾燥した。溶剤を抜き出した後、油状−固体残渣が残り、これをメタノールから再結晶した。
無色結晶、収量:48.1g(理論量の48%)。
エステルの加水分解のため、前記メチルエステル48.1g(150ミリモル)を、水265mL中のKOH25.2g(450ミリモル)の溶液に懸濁し、そしてこの懸濁液を還流下で10時間加熱した(無色溶液)。水300mLで稀釈後、この混合物を、6NHClを用いてpH1に酸性化し、そして無色沈澱を単離し、洗浄し、乾燥した。 無色結晶、収量:42.0g(理論量の91%)。
【0019】
実施例2:5−ヘキサデシロキシイソフタル酸(III)の製造
【化6】

5−ヒドロキシイソフタル酸ジメチルエステル24.0g(114ミリモル)を、炭酸カリウム17.3g(125ミリモル)と共にアセトニトリル375mL中に懸濁し、そして窒素雰囲気下、80℃で1時間加熱した。その後、ヘキサデシルブロミド34.8mL(114ミリモル)を添加し、そして窒素雰囲気下、80℃で24時間撹拌を行った。仕上げのため、この反応混合物を濃縮し、そして濾過した;白色残渣に水250mLを添加し、そしてジエチルエーテル175mLと共に振震することにより3回抽出を行った。有機相を通常処理した後、更なる反応のために充分な純度の反応物が残った。
無色固体、収率:44.4g(理論量の90%)。
エステルの加水分解のため、5−ヘキサデシロキシイソフタル酸ジメチルエステル90.5gを、水500mL中のKOH45.9gの溶液に懸濁し、そしてこの懸濁液を還流下で14時間加熱した。その後、6NHClをこの混合物に、それがまだ熱いうちに、反応物が強酸性になるまで添加し、そしてこの混合物を冷却し、その後、濾過した。残渣を、複数回水で徹底的に洗浄し、そして乾燥した。
無色固体、収量:62.6g(理論量の73%)。
【0020】
実施例3:寒天配合試験(MIC試験)における最小阻害濃度(MIC)の決定
媒体:カゼイン−大豆粉末ペプトン寒天[メルク(Merck)社製]
*サブロー(Sabouraud)4%グルコース寒天(メルク社製)

稀釈媒体:NaCl0.85%滅菌溶液

試験微生物:黄色ブドウ球菌ATCC6853及び9144
大腸菌ATCC10536及びNCTC8196
緑膿菌ATCC15442
*カンジダ・アルビカンスATCC10231
*黒色アスペルギルスATCC6275

培養:37℃で24時間
*28℃で3日間

試験溶液:全試験物質の1%原液を適する溶剤中で調製し、そして最終濃度500ppmないし10ppmが寒天中で得られるように、できる限り連続稀釈にて稀釈した。

試験原理:特定の稀釈段階のもの0.3mLを、まだ液体の培養媒体15mLと混合した。この培養ベースが固化した後、0.85%NaCl溶液中の適する微生物稀釈における試験株10μLを、前記寒天媒体に点状に塗布した。

黄色ブドウ球菌ATCC6538 1:100稀釈
大腸菌ATCC10536 1:1000稀釈
緑膿菌ATCC15442 1:1000稀釈
カンジダ・アルビカンスATCC10231 1:10稀釈
黒色アスペルギルスATCC6275 1:10稀釈
【表1】

【0021】
実施例4:連続稀釈試験における種々の口腔微生物に対するMICの決定
媒体:ヘミン及びメナジオンを含むチオグリコレート培養液
阻害歯周病原菌及びプレボテラ・ニグレッセンスのためのヘミン及びメナジオンを含むコロンビア培養液

稀釈媒体:適切量の物質を媒体に直接ピペットで取った。

試験微生物:アクチノバシラス・アクチノミセタムコミタンスATCC43718
ストレプトコッカス・ゴルドニイATCC10558
ミュータンス連鎖球菌ATCC33402
嫌気性陽性桿菌ATCC43146
フゾバクテリウム・ヌクレアタム亜種ポリモルフムATCC10953
阻害歯周病原菌ATCC3277
プレボテラ・ニグレッセンスATCC33563

培養:37℃嫌気性で7〜10日、又は連鎖球菌及びアクチノバシラス・アクチノミセタムコミタンスに対して10%CO2 と共に好気性で24時間

試験溶液:1500ppm(質量/質量)を含むエタノール中の全試験物質の原液を使用した。

試験原理:綿棒を使用して血液寒天プレートからバクテリアを除去し、そして適するO.D.を適切な媒体[マクファーランド(McFarland)0.5]中に定着させた;この溶液を、フゾバクテリウム・ヌクレアタム及びプレボテラ・ニグレッセンスに対しては稀釈せずに、そして他の株に対しては1:20に稀釈して使用した。バクテリア培養液0.1mLを、各活性物質溶液2mLに添加し、そして上記のように培養を行った。
【表2】

【0022】
実施例5:ヒドロキシアパタイト上の2−ドデシロキシ安息香酸(II)及び5−ヘキサデシロキシイソフタル酸(III)の実効性の試験及び成長阻害活性の決定
原理:
ヒドロキシアパタイトプレート(直径10mm)を合成唾液[ドイッチェ ツァーネルツティッチェ ツァイトシュリフト(Deutsche Zahnaerztiche Zeitschrift)DZZ 5/2002]中に置き、NaClでリンスし、その後、試験物質(II)及び試験物質(III)を50ppm及び500ppm含むエタノール性溶液中で培養した。その後、このプレートを、ナンクロン サーフェス(Nunclon Surface)滴定プレート(12ウェル)内に導入し、そして嫌気性陽性桿菌ATCC43146を接種されたカソ(Caso)培養液(約105 /mL)中で37
℃で24時間培養した。

結果:
図1及び図2は、未処理の対照と比較した場合の、合成唾液を用いて予め処理したヒドロキシアパタイトプレートに前記物質を吸着させた後の、2−ドデシロキシ安息香酸(II)及び5−ヘキサデシロキシイソフタル酸(III)による嫌気性陽性桿菌の成長の阻害を示している。
【0023】
実施例6:バイオフィルムモデルにおける2−ドデシロキシ安息香酸(II)の活性試験原理:グッゲンハイム(Guggenheim)等、(2001年)、”歯肉縁上のプラークからなる生体内バイオフィルムモデルの検証(Validation of an in vitro biofilm model of supragingival plaque)”、J.Dent Res.80(1)を参照。
ヒドロキシアパタイトディスクをヒト唾液を用いて予め処理し、そして種々のグラム陽性及びグラム陰性口腔微生物(連鎖球菌、アクチノミセス種、ベイヨネラ及びフゾバクテリウム種等)並びにイースト(カンジダ・アルビカンス)を前記ヒドロキシアパタイト上で成長せしめた。4日間の試験期間中、前記ディスクを物質(II)の下記使用製剤:
【表3】

中に、全て複数回浸漬し、そして最後にバイオフィルムを集菌し、そして生存細胞の数を決定した。

結果:二つの独立した試験の結果を下記表3に示す。アルコキシベンゼンカルボン酸は、活性物質を含まない偽薬と比較して、ヒドロキシアパタイトディスク上のバイオフィルムの微生物計数における著しい減少を生じさせた。
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、未処理の対照と比較した場合の、合成唾液を用いて予め処理したヒドロキシアパタイトプレートに前記物質を吸着させた後の、2−ドデシロキシ安息香酸(II)による嫌気性陽性桿菌の成長の阻害を示す図である。
【図2】図2は、未処理の対照と比較した場合の、合成唾液を用いて予め処理したヒドロキシアパタイトプレートに前記物質を吸着させた後の、5−ヘキサデシロキシイソフタル酸(III)による嫌気性陽性桿菌の成長の阻害を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の抗菌処理における、次式(I):
【化1】

[式中、
1 は置換された又は非置換の炭素原子数6ないし30のアルキル基、或いは置換された又は非置換の炭素原子数3ないし7のシクロアルキル基を表わし、そして
2 はH、COOH、或いは置換された又は非置換のO−炭素原子数1ないし30のアルキル基を表わす。]で表わされる化合物の使用。
【請求項2】
前記式中、R1 が置換された又は非置換の炭素原子数8ないし20のアルキル基を表わす、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記式(I)で表わされる化合物が、皮膚、口腔又は他の粘膜、歯の表面、或いは髪の抗菌処理、脱臭又は消毒において使用される、請求項1又は請求項2記載の使用。
【請求項4】
前記式(I)で表わされる化合物が、消毒又は脱臭において使用される、請求項1ないし3の何れか一項記載の使用。
【請求項5】
前記式(I)で表わされる化合物が、織物繊維材の処理において使用される、請求項1ないし4の何れか一項記載の使用。
【請求項6】
前記式(I)で表わされる化合物が、保存において使用される、請求項1ないし5の何れか一項記載の使用。
【請求項7】
前記式(I)で表わされる化合物が、洗浄及び清浄製剤において使用される、請求項1ないし6の何れか一項記載の使用。
【請求項8】
前記式(I)で表わされる化合物が、プラスチック、紙、不織布、木材又は革に抗菌性の付与に又はそれらの保存において使用される、請求項1ないし7の何れか一項記載の使用。
【請求項9】
前記式(I)で表わされる化合物が、商品に抗菌性の付与に又はそれらの保存において使用される、請求項1ないし8の何れか一項記載の使用。
【請求項10】
前記式(I)で表わされる化合物が、工業プロセスにおける殺生剤として使用される、請求項1ないし9の何れか一項記載の使用。
【請求項11】
パーソナルケア配合物であって、
a)前記配合物の総質量に基づいて、請求項1において定義された式(I)で表わされる化合物0.01質量%ないし15質量%、及び
b)化粧品において許容され得る助剤
を含む配合物。
【請求項12】
口腔組成物であって、
a)前記組成物の総質量に基づいて、請求項1において定義された式(I)で表わされる化合物0.01質量%ないし15質量%、及び
b)口腔において許容され得る助剤
を含む組成物。
【請求項13】
微生物のバイオフィルムの構築の阻止における、及び/又はバイオフィルムの除去における、及び/又はバイオフィルムを形成する微生物の抑制又は駆除における、式(I)で表わされる化合物の非治療的使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−526252(P2007−526252A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553583(P2006−553583)
【出願日】平成17年2月11日(2005.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050605
【国際公開番号】WO2005/079744
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】