説明

アルコール相互作用が低減した乱用抵抗性溶融押出製剤

本発明は、経口投与用組成物に関するものである。本発明は好ましくは、アルコール中への大量放出の可能性を有する薬物を送達するための少なくとも1種類の乱用抵抗性薬物送達組成物、その製剤の関連する製造方法、および本発明の組成物を患者に投与する段階を有する処置を必要とする患者の治療方法を含む。最も好ましくは、前記製剤はベラパミルを含む。これらの製剤では、乱用の可能性が低くなっている。別の製剤では、好ましくは乱用関連薬物はオピオイドであり、非乱用関連薬物はアセトアミノフェンまたはイブプロフェンである。より好ましくは、前記オピオイドはヒドロコドンであり、非乱用関連鎮痛薬はアセトアミノフェンである。ある種の好ましい実施形態において、前記製剤は溶媒抽出、不正使用、破砕または粉砕に対する抵抗性を特徴とする。本発明のある種の実施形態は、薬物の初期多量放出と次に長期間の制御可能な薬物放出を与える製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年1月24日出願の米国暫定特許出願第61/023288号からの優先権を求めるものであり、2007年7月20日出願の米国特許出願第11/780625号の一部継続出願であり、2007年1月22日出願の第11/625,705号の一部継続出願であり、その最後の出願は2006年1月21日出願の米国暫定特許出願第60/760707号からの優先権を求めるものであり、これら出願はいずれも参照によって全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、経口投与用組成物に関するものである。好ましくは本発明は、乱用の可能性がある薬物またはアルコール中に大量放出(dose dumping)する可能性がある薬物を送達するための少なくとも1種類の乱用抵抗性組成物、関連する使用ならびにそれらの製剤の調製方法および本発明の組成物を患者に投与する段階を有する処置を必要とする患者の治療方法について述べるものである。より好ましくは、これらの組成物には、薬物−アルコール大量放出相互作用を有し得る少なくとも1種類の溶融押出オピオイド鎮痛薬、特にベラパミル、γ−ヒドロキシ酪酸化合物またはフルニトラゼパムなどがある。
【背景技術】
【0003】
処方薬の乱用は、多くの地域社会における公衆衛生上の問題となってきた。オピオイド類は、乱用される薬物の中で一つの共通する種類のものである。オピオイド類は、有効性、力価測定の容易さおよび良好なリスク便益比のため、米国で中等度ないし重度の疼痛の管理で用いられる主要な種類の鎮痛薬である。オピオイド投与の効果の一つは、一部の個人においてそのような薬物が気分や感情を変えて治療的改善効果から解離した望ましい「幸福」感を与える能力である。違法な乱用を繰り返すことで、ある種の使用者はさらに進んで、オピオイドに対して中毒状態となる。オピオイド類同様に、多くの他の種類の薬物も乱用されるが、乱用の形態や効果は多様である。
【0004】
従って、当業界においては、偶発的もしくは故意によるアルコール中への大量放出、粉砕および吸引などの態様な形態の乱用を低減または根絶すべく、各種の方法および製剤が報告されている。
【0005】
2007年7月20日出願の米国特許出願第11/780625号および2007年7月20日出願のPCT出願PCT/US07/73957ならびに2007年1月22に出願の米国特許出願第11/625705号およびPCT出願PCT/US07/60864(これらはいずれも参照によってあらゆる点で全体が本明細書に組み込まれる)には、乱用薬物を有する乱用抵抗性製剤の各種方法および組成物が記載されている。これらの特許出願では、広範囲の製剤スクリーニングプログラムを用いて、麻薬である重酒石酸ヒドロコドン・2.5水和物について二相イン・ビトロ薬物溶解(1時間後>30%、8時間後>80%)を示す好適な押出成形製剤を確認している。しかしながら、第2の薬物の薬物溶解がパラセタモールまたはAPAPとも称されるアセトアミノフェンに関して二相薬物溶解(1時間後に>30%、8時間後に>80%)の上記基準を満足しないことが認められた。重酒石酸ヒドロコドン・2.5水和物およびアセトアミノフェンという両方の薬物を、均一に混合された固体混合物から押し出し、カレンダー処理したが、得られる製剤についてのいずれの試験でも、それら2種類の有効成分が異なる速度で放出されることが明らかになった。これらのイン・ビトロデータは、これらの製剤を用いて行った実験動物試験(ミニ豚)および臨床試験でも確認されている。その臨床試験では、重酒石酸ヒドロコドン・2.5水和物については所望の動態が得られたが、それはアセトアミノフェンの場合には得られなかったことも明らかになっている。従って、アセトアミノフェンについても必要な二相薬物溶解プロファイルを得る上で、新たな製剤の概念が見出されなければならない。
【0006】
さらに、ほとんどの場合で、U.S.11/625705およびPCT/US07/60864特許出願に従って製造されるカレンダー処理された押出成形錠剤は表面が粗かったことから、その見た目からすると、全ての場合で、市場に出せる錠剤の基準を満足しているとは限らないことも認められた。そこで、この点二関して、改善の必要が認められた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第11/780625号
【特許文献2】PCT/US07/73957
【特許文献3】米国特許出願第11/625705号
【特許文献4】PCT/US07/60864
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
薬物乱用に対処すべく多くの組成物、製剤および方法があるが、全ての組成物、製剤および方法には多かれ少なかれ制限がある。従って、乱用の可能性を有する薬物の新たなおよび/または改善された製剤、組成物および乱用防止方法を提供することが必要とされている。より具体的には、二相薬物溶解プロファイルを満足し、市場性のある錠剤のための基準を満足する薬物の抑止性(deterrence)および望ましい外観を含む属性も有する経口製剤を開発することが必要とされている。
【0009】
さらに、徐放製剤または放出調節製剤は、服用回数が減るための患者の服用遵守の向上および薬物の血漿レベルの変動低下による副作用の低減などの明瞭な利点を有する。これには、徐放/放出調節製剤が、即時放出性の同等物と比較して含有する活性薬物量が多いという注意点がある。製剤の徐放部分が容易に崩される場合には、最終的に活性薬物に対して曝露される可能性が高くなり、安全上の懸念が生じ得る。放出調節経口製剤からの薬物のイン・ビボ放出時にエタノールを同時に摂取することでどのような影響が生じ得るかについて、最近関心が持たれるようになってきた。これは、アルコールの同時摂取により、徐放カプセル製剤であるパラドン(商標名)からのヒドロモルホンの重大な大量放出が生じたという最近の臨床所見から生じたものである(FDA 警告、2005年7月)。世界保健機構は、アルコールを消費する人が世界中で約20億人いると推定している(WHO報告書、2004年)。アルコールは最も社会的に許容され、広く使用されて容易に得られる薬物の一つであるため、薬物相互作用の可能性は緊急性の高いものである。安全性を向上させて故意の不正使用(例えば、徐放錠剤をエタノールに溶解させて薬物を抽出する等)を回避する上で、そのような製剤の放出調節部分のエタノールにおける溶解の低下が有効である可能性がある。
【0010】
従って、アルコール中における大量放出の可能性が低い新たな製剤を開発する必要性がある。
【0011】
この背景情報は、本願人が本発明に関連がある可能性があると考える一部情報を知らせることを目的として提供したものである。前述の情報が本発明に対する先行技術を構成することを認める意図はなく、そのように解釈すべきでもない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある種の好ましい実施形態は、溶媒抽出;不正使用、破砕または粉砕および薬物の初期の一気放出とそれに続く長期間の制御可能な薬物放出の提供に対する抵抗性を特徴とする、薬物、特には乱用される薬物の製剤および送達方法を提供する。好ましくは、当該製剤は、少なくとも1種類の非オピオイド系鎮痛薬および少なくとも1種類の制限されたオピオイド鎮痛薬を含む。ある好ましい実施形態において本発明は、(a)ヒドロコドン、それの製薬上許容される塩もしくは水和物および(b)アセトアミノフェンまたはイブプロフェンを含む、コアおよび非コア層を有する医薬組成物を提供する。この実施形態において、ヒドロコドン、それの製薬上許容される塩または水和物の全てのうちの少なくとも75%がコアにあり、アセトアミノフェンまたはイブプロフェンは非コア層である。さらに、この組成物は、ヒトに対して1日3回、2回または1回経口投与に有用となるように作られている。好ましくは、ヒドロコドン、その製薬上許容される塩または水和物のうちの90%を超える量がコアにある。より好ましくは、ヒドロコドン、それの製薬上許容される塩または水和物の実質的に全量がコアにある。別の実施形態において、コアはさらに、アセトアミノフェンまたはイブプロフェンを含む。より好ましくは、コアはさらに、アセトアミノフェンを含む。ある種の実施形態において、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物約15mgおよびアセトアミノフェン約500mgを含み、患者に対して空腹時に投与される場合に、好ましくは下記の薬物動態プロファイルが示される。好ましくは、ヒト患者に対して投与される場合、当該医薬組成物は、単回投与後に約0.6ng/mL/mgから約1.4ng/mL/mgのヒドロコドンのCmaxおよび約2.8ng/mL/mgから7.9ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。別の実施形態において、当該医薬組成物は、単回投与後に約0.4ng/mL/mgから約1.9ng/mL/mgヒドロコドンのCmaxおよび約2.0ng/mL/mgから約10.4ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。さらに別の実施形態において、当該医薬組成物は、単回投与後に約0.6ng/mL/mgから約1.0ng/mL/mgのヒドロコドンのCmaxおよび約3.0ng/mL/mgから約5.2ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。当該製剤の他の実施形態は、重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物約5から20mgおよびアセトアミノフェン約400から600mgを含む。当該製剤のさらに別の実施形態は、重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物10から15mgおよびアセトアミノフェン約500から600mgを含む。ある種の実施形態において、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物約15mgおよびアセトアミノフェン約500mgを含み、空腹時に患者に投与される場合、好ましくは下記の薬物動態プロファイルが示される。ヒト患者に投与される場合、当該製剤は、約9.1ng・hr/mL/mgから約19.9ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCおよび約28.6ng・hr/mL/mgから約59.1ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。別の実施形態において、当該製剤は、約7.0ng・hr/mL/mgから約26.2ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCおよび約18.4ng・hr/mL/mgから約79.9ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。さらに別の実施形態において、当該製剤は、約11.3ng・hr/mL/mgから約18.7ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCおよび約28.7ng・hr/mL/mgから約53.5ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。この実施形態において好ましくは、当該医薬組成物のイン・ビトロ放出速度は二相放出プロファイルを有し、イン・ビトロ放出速度の各相において、アセトアミノフェンではゼロ次または一次であり、および重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物ではゼロ次または一次である。
【0013】
ある種の実施形態において、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物約15mgおよびアセトアミノフェン約500mgを含み、患者に対して空腹時に投与される場合、好ましくは下記の薬物動態プロファイルが示される。当該製剤は、約0.18ng/mL/mgから約1.51ng/mL/mgのヒドロコドンの1時間後血漿濃度(C1)および約2.34ng/mL/mgから約7.24ng/mL/mgのアセトアミノフェンの1時間後血漿濃度C1を生じる。製剤15などの好ましい実施形態では、当該製剤は、約0.32ng/mL/mgから約1.51ng/mL/mgのヒドロコドンのC1および約2.34ng/mL/mgから約5.50ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。ある種の他の実施形態において、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物約15mgおよびアセトアミノフェン約500mgを含み、患者に対して空腹時に投与される場合、好ましくは下記の薬物動態プロファイルが示される。当該製剤は、約0.30ng/mL/mgから約1.06ng/mL/mgのヒドロコドンの1時間後血漿濃度(C1)および約2.75ng/mL/mgから約5.57ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。好ましい実施形態において、当該製剤は、約0.45ng/mL/mgから約1.06ng/mL/mgのヒドロコドンのC1および約2.75ng/mL/mgから約4.43ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。
【0014】
他の実施形態において、当該製剤は、空腹時に重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物15mgおよびアセトアミノフェン500mgを単回投与後に、ヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1約1.18μg/mLから約3.63μg/mLを生じる。好ましい実施形態において、当該製剤は、重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物15mgおよびアセトアミノフェン500mgの単回投与後に約1.18μg/mLから約2.76μg/mLのヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1生じる。ある種の実施形態では、当該製剤は、重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物15mgおよびアセトアミノフェン500mg単回投与後に約1.38μg/mLから約2.79μg/mLのヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1を生じる。好ましい実施形態において、当該製剤は、重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物15mgおよびアセトアミノフェン500mg単回投与後に約1.38μg/mLから約2.23μg/mLのヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1を生じる。
【0015】
好ましい実施形態において、当該製剤は、重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物15mgおよびアセトアミノフェン500mg単回投与後に、95%信頼区間で1.80±0.42μg/mLであって平均値が約1.61μg/mLから約2.00μg/mLとなるヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1を生じる。好ましい実施形態および対照についてのヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1の95%信頼区間は重なっていた。ヒト患者に対してヒドロコドン15mgおよびアセトアミノフェン500mgを単一用量として投与した後、対照におけるヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1の平均値に関する95%信頼区間は約1.46から1.96μg/mLの範囲であった。対照は、投与後約1時間以内に疼痛の強さを弱める上で十分なオピオイド系および非オピオイド系鎮痛薬の血漿レベルを与える。健常な北米人または西欧州人の群に投与した場合、特には必要に応じて12時間ごとにヒトに投与するのに好適となるように製剤が作られているかそのような投与を意図したものである場合、ヒドロコドンの約20から45%が約1時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出され、アセトアミノフェンの約20から45%が50rpmで37℃にて0.01N HCl中で約1時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。別の実施形態において、ヒドロコドンの約25から35%が約1時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出され、アセトアミノフェンの約25から35%が50rpmで37℃にて0.01N HCl中で約1時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。さらに、別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも90%が約8時間から約12時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも60%から約99%が、約6時間から約8.5時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも90%が約8時間から約11時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも90%が、約8時間から約11時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも95%が約9時間から約12時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が、約9時間から約12時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。さらに別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも95%が約10時間から約12時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が、約10時間から約12時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも99%が約11時間から約12時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が、約11時間から約12時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。さらに別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも99%が約13時間未満で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が、約13時間未満で医薬組成物からイン・ビトロで放出される。
【0016】
しかしながら、必要に応じて1日2回でヒトに対して投与する上で好適なように持続放出バージョンの製剤が作られているか、そのような投与を意図したものである場合、ヒドロコドンの少なくとも90%が約18時間から約23時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも90%が、約18時間から約23時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。当該持続放出製剤の別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも95%が約20時間から約25時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が、約20時間から約25時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。持続放出製剤の別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも95%が約21時間から約22時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が、約21時間から約22時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。この持続放出実施形態の別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも99%が約22時間から約26時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が、約22時間から約26時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。当該持続放出製剤のさらに別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも99%が約27時間未満で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が、約27時間未満で医薬組成物からイン・ビトロで放出される。
【0017】
好ましい実施形態において、本発明は、前記コア層が薬物放出を制御することができる賦形剤または賦形剤混合物を含み、前記非コア層が薬物を直ちに放出することができる賦形剤を含む組成物を提供する。さらに、好ましい実施形態において、前記コア層は溶融押出と次に薬物含有溶融物の直接成形によって製造され、前記非コア層はコア層上に噴霧コーティングされる。最も好ましくは、当該組成物は、アセトアミノフェン約500mgおよび重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物約15mgを含む。
【0018】
別の実施形態例では、本発明は、(a)コア層に乱用抵抗性薬物、それの製薬上許容される塩または水和物および非乱用抵抗性薬物またはそれの製薬上許容される塩および(b)非コア層に非乱用抵抗性薬物、それの製薬上許容される塩または水和物を含む、コアおよび非コア層を有する医薬組成物を提供する。好ましくは、この組成物は、下記の特徴のうちの少なくとも一つを特徴とする。
【0019】
i)37℃で1時間以内にイン・ビトロで40%エタノール水溶液によって組成物から抽出される乱用抵抗性薬物の量が、37℃で1時間以内にイン・ビトロで0.01N塩酸によって抽出される乱用抵抗性薬物の量の1.5倍以下である。
ii)「Pharma Test PTB501」硬度計による測定で150ニュートン、好ましくは300ニュートン、より好ましくは450ニュートン、さらに好ましくは500ニュートンの力下に当該組成物が破壊されない。
iii)当該組成物が、イン・ビトロ溶解試験の最初の1時間で、好ましくはイン・ビボ試験の最初の1時間でも、乱用抵抗性薬物の少なくとも20%および乱用抵抗性薬物の45%以下を放出する。
iv)当該組成物が、単回投与後1から2時間以内に治療上有効な用量の非乱用性関連薬物を放出する。
v)当該組成物は、単回投与後1時間および12時間に治療上有効な用量の非乱用性関連薬物および/または乱用抵抗性薬物を放出する。
vi)当該組成物では、37℃にて1時間にわたり40%エタノール水溶液中20000から50000rpmのコーヒー・グラインダーによって組成物を1分間粉砕した場合に、粉砕時の乱用抵抗性薬物の放出が無傷の錠剤と比較して2から3倍未満だけ増加する。
vii)当該組成物は粉砕した場合、ふるい分け試験による測定で、画分の約20%について約2cmから約355μm、画分の約66%について約63ミクロンより大きく約355ミクロン未満、画分の約14%について約63ミクロン未満の粒子径を有する。または、
viii)当該組成物は実質的に滑らかであり、中心線平均粗さ(CLA)が約0.1から約0.6、好ましくは約0.1から約0.4、最も好ましくは約0.1から約0.2である。
【0020】
この組成物では、37℃で1時間以内に40%エタノール水溶液によって製剤から抽出される乱用抵抗性薬物の量は、37℃で1時間以内に0.01N塩酸によって抽出される薬物の量の約70%から約130%である。別の実施形態において、37℃で1時間以内に40%エタノール水溶液によって製剤から抽出される乱用抵抗性薬物の量は、37℃で1時間以内に0.01N塩酸によって抽出される薬物の量の約70%から約90%である。さらに別の実施形態において、37℃で1時間以内に40%エタノール水溶液によって製剤から抽出される乱用抵抗性薬物の量は、37℃で1時間以内に0.01N塩酸によって抽出される薬物の量の約75%から約90%である。
【0021】
本発明の別の実施形態は、コア層および非コア層を有する医薬組成物を提供する。この組成物において、コア層は、(a)少なくとも1種類のオピオイド;および(b)少なくとも1種類の律速性の製薬上許容されるポリマー、コポリマーまたはそれらの組み合わせの混合物を含む。非コア層は、少なくとも1種類の非オピオイド系鎮痛薬を含む。さらに、これらの組成物は、ヒトに対して1日3回、2回または1回経口投与を行う上で有用となるように作られている。好ましくは、コア層はさらに、少なくとも1種類の非オピオイド系鎮痛薬を含む。ある好ましい実施形態において、当該組成物は、下記の特徴のうちの少なくとも一つを特徴とする。
【0022】
i)37℃で1時間以内にイン・ビトロで40%エタノール水溶液によって組成物から抽出される乱用抵抗性薬物の量が、37℃で1時間以内にイン・ビトロで0.01N塩酸によって抽出される乱用抵抗性薬物の量の1.5倍以下である。
ii)「Pharma Test PTB501」硬度計による測定で150ニュートン、好ましくは300ニュートン、より好ましくは450ニュートン、さらに好ましくは500ニュートンの力下に当該組成物が破壊されない。
iii)当該組成物が、イン・ビトロ溶解試験の最初の1時間で、好ましくはイン・ビボ試験の最初の1時間でも、乱用抵抗性薬物の少なくとも20%および乱用抵抗性薬物の45%以下を放出する。
iv)当該組成物が、単回投与後1から2時間以内に治療上有効な用量の非乱用性関連薬物を放出する。
v)当該組成物は、単回投与後1時間および12時間に治療上有効な用量の非乱用性関連薬物および/または乱用抵抗性薬物を放出する。
vi)当該組成物では、37℃にて1時間にわたり40%エタノール水溶液中20000から50000rpmのコーヒー・グラインダーによって組成物を1分間粉砕した場合に、粉砕時の乱用抵抗性薬物の放出が無傷の錠剤と比較して2から3倍未満だけ増加する。
vii)当該組成物は粉砕した場合、ふるい分け試験による測定で、画分の約20%について約2cmから約355μm、画分の約66%について約63ミクロンより大きく約355ミクロン未満、画分の約14%について約63ミクロン未満の粒子径を有する。または、
viii)当該組成物は実質的に滑らかであり、中心線平均粗さ(CLA)が約0.1から約0.6、好ましくは約0.1から約0.4、最も好ましくは約0.1から約0.2である。
【0023】
1実施形態において、前記オピオイドは、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、ベンジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、シクラゾシン、デソモルフィン、デキストロモラミド、デゾシン、ジアムプロミド、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアムブテン、酪酸ジオキサフェチル、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアムブテン、エチルモルフィン、エトニタゼン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レバロルファン、レボフェナシルモルファン、レボルファノール、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルフィン、ミロフィン、ナルブルフィン、ナルセイン、ニコモルフィン、ノルピパノン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、パプブレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェナゾシン、フェノモルファン、フェノペリジン、ピミノジン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジンおよびトラマドールならびにこれらの塩、水和物および混合物からなる群から選択される。さらに、非オピオイド系鎮痛薬は、アセトアミノフェン、アスピリン、フェンタニル、イブプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、ナプロキセン、フェナセチン、ピロキシカム、スフェンタニル、スリンダク(sunlindac)、インターフェロン−αならびにこれらに塩、水和物および混合物からなる群から選択される。好ましくは、オピオイドはヒドロコドンであり、非オピオイド系鎮痛薬はアセトアミノフェンまたはイブプロフェンである。より好ましくは、オピオイドはヒドロコドンであり、非オピオイド系鎮痛薬はアセトアミノフェンである。
【0024】
ある種の実施形態において、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物約15mgおよびアセトアミノフェン約500mgを含み、患者に対して空腹時に投与される場合に、好ましくは下記の薬物動態プロファイルが示される。好ましくは、ヒト患者に対して投与される場合、当該医薬組成物は、単回投与後に約0.6ng/mL/mgから約1.4ng/mL/mgのヒドロコドンのCmaxおよび約2.8ng/mL/mgから7.9ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。別の実施形態において、当該医薬組成物は、単回投与後に約0.4ng/mL/mgから約1.9ng/mL/mgヒドロコドンのCmaxおよび約2.0ng/mL/mgから約10.4ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。さらに別の実施形態において、当該医薬組成物は、単回投与後に約0.6ng/mL/mgから約1.0ng/mL/mgのヒドロコドンのCmaxおよび約3.0ng/mL/mgから約5.2ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。
【0025】
ある種の実施形態において、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物約15mgおよびアセトアミノフェン約500mgを含み、空腹時に患者に投与される場合、好ましくは下記の薬物動態プロファイルが示される。ヒト患者に投与される場合、当該製剤は、約9.1ng・hr/mL/mgから約19.9ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCおよび約28.6ng・hr/mL/mgから約59.1ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。別の実施形態において、当該製剤は、約7.0ng・hr/mL/mgから約26.2ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCおよび約18.4ng・hr/mL/mgから約79.9ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。さらに別の実施形態において、当該製剤は、約11.3ng・hr/mL/mgから約18.7ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCおよび約28.7ng・hr/mL/mgから約53.5ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。この実施形態において好ましくは、当該医薬組成物のイン・ビトロ放出速度は二相放出プロファイルを有し、イン・ビトロ放出速度の各相において、アセトアミノフェンではゼロ次または一次であり、および重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物ではゼロ次または一次である。
【0026】
ある種の実施形態において、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物約15mgおよびアセトアミノフェン約500mgを含み、患者に対して空腹時に投与される場合、好ましくは下記の薬物動態プロファイルが示される。好ましくはヒト患者に対して投与される場合、当該医薬組成物は、約0.18ng/mL/mgから約1.51ng/mL/mgのヒドロコドンの1時間後血漿濃度(C1)および約2.34ng/mL/mgから約7.24ng/mL/mgのアセトアミノフェンの1時間後血漿濃度C1を生じる。製剤15などの好ましい実施形態では、当該製剤は、約0.32ng/mL/mgから約1.51ng/mL/mgのヒドロコドンのC1および約2.34ng/mL/mgから約5.50ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。
【0027】
ある種の実施形態において、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物約15mgおよびアセトアミノフェン約500mgを含み、患者に対して空腹時に投与される場合、好ましくは下記の薬物動態プロファイルが示される。好ましくはヒト患者に対して投与される場合、当該医薬組成物は、約0.30ng/mL/mgから約1.06ng/mL/mgのヒドロコドンの1時間後血漿濃度(C1)および約2.75ng/mL/mgから約5.57ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。好ましい実施形態において、当該製剤は、約0.45ng/mL/mgから約1.06ng/mL/mgのヒドロコドンのC1および約2.75ng/mL/mgから約4.43ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。ある種の実施形態において、当該製剤は、重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物15mgおよびアセトアミノフェン500mgを単回投与後に、ヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1約1.18μg/mLから約3.63μg/mLを生じる。好ましい実施形態において、当該製剤は、重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物15mgおよびアセトアミノフェン500mgの単回投与後に約1.18μg/mLから約2.76μg/mLのヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1生じる。
【0028】
ある種の実施形態では、当該製剤は、重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物15mgおよびアセトアミノフェン500mg単回投与後に約1.38μg/mLから約2.79μg/mLのヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1を生じる。好ましい実施形態において、当該製剤は、重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物15mgおよびアセトアミノフェン500mg単回投与後に約1.38μg/mLから約2.23μg/mLのヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1を生じる。
【0029】
好ましい実施形態において、当該製剤は、重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物15mgおよびアセトアミノフェン500mg単回投与後に、95%信頼区間で1.80±0.42μg/mLであって平均値が約1.61μg/mLから約2.00μg/mLとなるヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1を生じる。好ましい実施形態および対照についてのヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1の95%信頼区間は重なっていた。ヒト患者に対して重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物15mgおよびアセトアミノフェン500mgを単一用量として投与した後、対照におけるヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1の平均値に関する95%信頼区間は約1.46から1.96μg/mLの範囲であった。対照は、投与後約1時間以内に疼痛の強さを弱める上で十分なオピオイド系および非オピオイド系鎮痛薬の血漿レベルを与える。健常な北米人または西欧州人の群に投与した場合、特には必要に応じて12時間ごとにヒトに投与するのに好適となるように製剤が作られているかそのような投与を意図したものである場合、ヒドロコドンの約20から45%が約1時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出され、アセトアミノフェンの約20から45%が50rpmで37℃にて0.01N HCl中で約1時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。別の実施形態において、ヒドロコドンの約25から35%が約1時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出され、アセトアミノフェンの約25から35%が50rpmで37℃にて0.01N HCl中で約1時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。さらに、別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも90%が約8時間から約12時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも60%から約99%が、約6時間から約8.5時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも90%が約8時間から約11時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも90%が、約8時間から約11時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも95%が約9時間から約12時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が、約9時間から約12時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。さらに別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも95%が約10時間から約12時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が、約10時間から約12時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも99%が約11時間から約12時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が、約11時間から約12時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。さらに別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも99%が約13時間未満で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が、約13時間未満で医薬組成物からイン・ビトロで放出される。
【0030】
しかしながら、必要に応じて1日2回でヒトに対して投与する上で好適なように持続放出バージョンの製剤が作られているか、そのような投与を意図したものである場合、ヒドロコドンの少なくとも90%が約18時間から約23時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも90%が、約18時間から約23時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。当該持続放出製剤の別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも95%が約20時間から約25時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が、約20時間から約25時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。持続放出製剤の別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも95%が約21時間から約22時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が、約21時間から約22時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。この持続放出実施形態の別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも99%が約22時間から約26時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が、約22時間から約26時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。当該持続放出製剤のさらに別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも99%が約27時間未満で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が、約27時間未満で医薬組成物からイン・ビトロで放出される。
【0031】
好ましい実施形態において、本発明は、前記コア層が薬物放出を制御することができる賦形剤を含み、前記非コア層が薬物を直ちに放出することができる賦形剤を含む組成物を提供する。さらに、好ましい実施形態において、前記コア層は溶融押出と次に薬物含有溶融物の直接成形によって製造され、前記非コア層はコア層上に噴霧コーティングされる。最も好ましくは、当該組成物は、アセトアミノフェン約500mgおよび重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物約15mgを含む。
【0032】
別の実施形態において、本発明は、コア層および非コア層を有する医薬組成物を提供する。この組成物において、コア層は、(a)少なくとも1種類のオピオイドおよび少なくとも1種類の第1の非オピオイド鎮痛薬;および(b)少なくとも1種類の律速性の製薬上許容されるポリマー、コポリマーまたはそれらの組み合わせの混合物を含む。非コア層は、少なくとも1種類の第2の非オピオイド系鎮痛薬を含む。さらに、その組成物は、ヒトに対して1日3回、2回または1回経口投与を行う上で有用となるように作られている。この実施形態では、好ましくは、オピオイドはヒドロコドンを含み、第1および第2の非オピオイド系鎮痛薬はアセトアミノフェンまたはイブプロフェンを含む。より好ましくは、オピオイドはヒドロコドンを含み、第1および第2の非オピオイド系鎮痛薬はアセトアミノフェンを含む。さらに、この実施形態では、前記非コア層は、(a)アセトアミノフェン;および(b)少なくとも1種類の律速性の製薬上許容されるポリマー、コポリマーまたはそれらの組み合わせを含む。好ましくは、前記ポリマーまたはコポリマーは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース;ポリメタアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、前記ポリマーまたはコポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルアルコールまたはこれらの組み合わせからなる群から選択される。さらにより好ましくは、前記ポリマーまたはコポリマーは、ポリビニルアルコールおよびポリエチレンオキサイドグラフトコポリマーからなる群から選択される。さらに、この実施形態では、アセトアミノフェン/速度制御性ポリマーまたはコポリマーまたはこれらの組み合わせの比は、約1:1から約10:1である。より好ましくは、アセトアミノフェン/速度制御性ポリマーまたはコポリマーまたはこれらの組み合わせの比は、約3:1から約5:1である。本発明で提供されるように、ある好ましい実施形態において、前記非コア層は、下記の特徴のうちの少なくとも一つを有する。
【0033】
(a)誘導密閉HDPE瓶中40℃および相対湿度75%で3ヶ月後に実質的に割れがない。
(b)実質的に乾燥している(粘着性ではない)。
37℃の0.01N HClに急速に溶解して、コア層を露出する。
ヒト患者への投与から20分以内に非コア層中のアセトアミノフェンの少なくとも80%を放出する。または
(e)追加の顔料がないと、製剤に白色の着色を提供する。
【0034】
ある種の実施形態において、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物約15mgおよびアセトアミノフェン約500mgを含み、患者に対して空腹時に投与される場合に、好ましくは下記の薬物動態プロファイルが示される。好ましくは、ヒト患者に対して投与される場合、当該医薬組成物は、単回投与後に約0.6ng/mL/mgから約1.4ng/mL/mgのヒドロコドンのCmaxおよび約2.8ng/mL/mgから7.9ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。別の実施形態において、当該医薬組成物は、単回投与後に約0.4ng/mL/mgから約1.9ng/mL/mgヒドロコドンのCmaxおよび約2.0ng/mL/mgから約10.4ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。さらに別の実施形態において、当該医薬組成物は、単回投与後に約0.6ng/mL/mgから約1.0ng/mL/mgのヒドロコドンのCmaxおよび約3.0ng/mL/mgから約5.2ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。
【0035】
ある種の実施形態において、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物約15mgおよびアセトアミノフェン約500mgを含み、空腹時に患者に投与される場合、好ましくは下記の薬物動態プロファイルが示される。ヒト患者に投与される場合、当該製剤は、約9.1ng・hr/mL/mgから約19.9ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCおよび約28.6ng・hr/mL/mgから約59.1ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。別の実施形態において、当該製剤は、約7.0ng・hr/mL/mgから約26.2ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCおよび約18.4ng・hr/mL/mgから約79.9ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。さらに別の実施形態において、当該製剤は、約11.3ng・hr/mL/mgから約18.7ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCおよび約28.7ng・hr/mL/mgから約53.5ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。この実施形態において好ましくは、当該医薬組成物のイン・ビトロ放出速度は二相放出プロファイルを有し、イン・ビトロ放出速度の各相において、アセトアミノフェンではゼロ次または一次であり、および重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物ではゼロ次または一次である。
【0036】
ある種の実施形態において、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物約15mgおよびアセトアミノフェン約500mgを含み、患者に対して空腹時に投与される場合、好ましくは下記の薬物動態プロファイルが示される。好ましくはヒト患者に対して投与される場合、当該医薬組成物は、約0.18ng/mL/mgから約1.51ng/mL/mgのヒドロコドンの1時間後血漿濃度(C1)および約2.34ng/mL/mgから約7.24ng/mL/mgのアセトアミノフェンの1時間後血漿濃度C1を生じる。製剤15などの好ましい実施形態では、当該製剤は、約0.32ng/mL/mgから約1.51ng/mL/mgのヒドロコドンのC1および約2.34ng/mL/mgから約5.50ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。
【0037】
ある種の実施形態において、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物約15mgおよびアセトアミノフェン約500mgを含み、患者に対して空腹時に投与される場合、好ましくは下記の薬物動態プロファイルが示される。好ましくはヒト患者に対して投与される場合、当該医薬組成物は、約0.30ng/mL/mgから約1.06ng/mL/mgのヒドロコドンの1時間後血漿濃度(C1)および約2.75ng/mL/mgから約5.57ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。好ましい実施形態において、当該製剤は、約0.45ng/mL/mgから約1.06ng/mL/mgのヒドロコドンのC1および約2.75ng/mL/mgから約4.43ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。ある種の実施形態において、当該製剤は、重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物15mgおよびアセトアミノフェン500mgを単回投与後に、ヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1約1.18μg/mLから約3.63μg/mLを生じる。好ましい実施形態において、当該製剤は、重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物15mgおよびアセトアミノフェン500mgの単回投与後に約1.18μg/mLから約2.76μg/mLのヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1生じる。
【0038】
ある種の実施形態では、当該製剤は、重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物15mgおよびアセトアミノフェン500mg単回投与後に約1.38μg/mLから約2.79μg/mLのヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1を生じる。好ましい実施形態において、当該製剤は、重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物15mgおよびアセトアミノフェン500mg単回投与後に約1.38μg/mLから約2.23μg/mLのヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1を生じる。
【0039】
好ましい実施形態において、当該製剤は、重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物15mgおよびアセトアミノフェン500mg単回投与後に、95%信頼区間で1.80±0.42μg/mLであって平均値が約1.61μg/mLから約2.00μg/mLとなるヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1を生じる。好ましい実施形態および対照についてのヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1の95%信頼区間は重なっていた。ヒト患者に対してヒドロコドン15mgおよびアセトアミノフェン500mgを単一用量として投与した後、対照におけるヒドロコドンおよびアセトアミノフェンの合わせたC1の平均値に関する95%信頼区間は約1.46から1.96μg/mLの範囲であった。対照は、投与後約1時間以内に疼痛の強さを弱める上で十分なオピオイド系および非オピオイド系鎮痛薬の血漿レベルを与える。
【0040】
健常な北米人または西欧州人の群に投与した場合、特には必要に応じて12時間ごとにヒトに投与するのに好適となるように製剤が作られているかそのような投与を意図したものである場合、ヒドロコドンの約20から45%が約1時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出され、アセトアミノフェンの約20から45%が50rpmで37℃にて0.01N HCl中で約1時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。別の実施形態において、ヒドロコドンの約25から35%が約1時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出され、アセトアミノフェンの約25から35%が50rpmで37℃にて0.01N HCl中で約1時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。さらに、別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも90%が約8時間から約12時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも60%から約99%が、約6時間から約8.5時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも90%が約8時間から約11時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも90%が、約8時間から約11時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも95%が約9時間から約12時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が、約9時間から約12時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。さらに別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも95%が約10時間から約12時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が、約10時間から約12時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも99%が約11時間から約12時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が、約11時間から約12時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。さらに別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも99%が約13時間未満で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が、約13時間未満で医薬組成物からイン・ビトロで放出される。
【0041】
しかしながら、必要に応じて1日2回でヒトに対して投与する上で好適なように持続放出バージョンの製剤が作られているか、そのような投与を意図したものである場合、ヒドロコドンの少なくとも90%が約18時間から約23時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも90%が、約18時間から約23時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。当該持続放出製剤の別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも95%が約20時間から約25時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が、約20時間から約25時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。持続放出製剤の別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも95%が約21時間から約22時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が、約21時間から約22時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。この持続放出実施形態の別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも99%が約22時間から約26時間以内に医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が、約22時間から約26時間以内に医薬組成物からイン・ビトロで放出される。当該持続放出製剤のさらに別の実施形態において、ヒドロコドンの少なくとも99%が約27時間未満で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が、約27時間未満で医薬組成物からイン・ビトロで放出される。
【0042】
好ましい実施形態において、本発明は、前記コア層が薬物放出を制御することができる賦形剤を含み、前記非コア層が薬物を直ちに放出することができる賦形剤を含む組成物を提供する。さらに、好ましい実施形態において、前記コア層は溶融押出と次に薬物含有溶融物の直接成形によって製造され、前記非コア層はコア層上に噴霧コーティングされる。最も好ましくは、当該組成物は、アセトアミノフェン約500mgおよび重酒石酸ヒドロコドン・5.5水和物約15mgを含む。
【0043】
ある好ましい実施形態において、ベラパミルおよび他の徐放製剤は、エタノールと同時に使用した場合に、大量放出効果が低減するか限定されるように製造することができる。好ましい実施形態には、溶融押出持続放出製剤などがある。本発明のある好ましい実施形態は、(a)乱用関連の薬物またはアルコール中で大量放出する可能性を有する薬物;および(b)セルロースエーテル、セルロースエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびアルギン酸ナトリウムからなるモノマー群から選択されるポリマー、コポリマーまたはこれらの組み合わせを有する基材を含む、薬物−アルコール相互作用の低減された溶融押出製剤を提供する。そのような溶融押出基材の使用は、薬物−アルコール相互作用が低下した製剤を提供することが期待される。好ましくは、その基材はヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースおよびアルギン酸ナトリウムのポリマーおよびコポリマーを含む。さらに、好ましくは、前記薬物は、ベラパミル、γ−ヒドロキシ酪酸またはフルニトラゼパムの塩またはエステルである。より好ましくは、前記ヒドロキシアルキルセルロースはヒドロキシプロピルセルロースであり、ないしは前記ヒドロキシアルキルアルキルセルロースはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。最も好ましい実施形態では、前記薬物はベラパミルの塩またはエステルである。この薬物は、ベラパミルの塩またはエステルを1mgから1000mg含むことができる。
【0044】
本発明の別の実施形態は、ベラパミル1から1000mgを有するベラパミル溶融押出製剤であって、製剤中のベラパミルの40%未満が、USP溶解法を用いて40%エタノール溶液に溶解するものを提供する。この製剤ではさらに、8時間後での5%または40%エタノール中における製剤からのベラパミルについての溶解プロファイルは、8時間後での0%エタノール中の製剤からのベラパミルについての溶解プロファイルと相違がない。最も好ましくは、これらの製剤のいずれにおいても、前記薬物はベラパミルの塩またはエステル240mgを含む。さらに、それ以上の不要な実験を行わなくとも、これらの製剤において、イン・ビトロでの薬物−アルコール相互作用の低下がイン・ビボでの薬物−アルコール相互作用と相関していることは確認可能である。
【0045】
さらに本発明の別の実施形態は、ヒト患者に対して上記のいずれかの製剤を経口投与する段階を有する、処置を必要とするヒト患者の治療方法を提供する。
【0046】
下記でより詳細に説明される本発明の方法および本発明で用いられる組成物についての詳細を読むことで、当業者には本発明のこれらおよび他の目的、利点および特徴が明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】押出錠剤のコーティングによって、錠剤表面がかなり平滑となったことを示す図である。
【図2】中心線平均粗さ(CLA)手法を用いる表面粗さの計算の模式図である。
【図3】コーティングされていない製剤について、中心線平均粗さ(CLA)を描いた図である(コーティングされていない製剤については、(N=69)の場合にCLA=36.1である。)。
【図4】コーティングされていない製剤について、中心線平均粗さ(CLA)を描いた図である(コーティングされた製剤については、(N=69)の場合にCLA=10.4である。)。
【図5a】(a)48時間および(b)12時間にわたる製剤15および16ならびに対照1について、予備平均ヒドロコドン濃度−時間プロファイルを描いた図である。
【図5b】(a)48時間および(b)12時間にわたる製剤15および16ならびに対照1について、予備平均ヒドロコドン濃度−時間プロファイルを描いた図である。
【図6a】(a)48時間および(b)12時間にわたる製剤15および16ならびに対照1について、予備平均アセトアミノフェン濃度−時間プロファイルを描いた図である。
【図6b】(a)48時間および(b)12時間にわたる製剤15および16ならびに対照1について、予備平均アセトアミノフェン濃度−時間プロファイルを描いた図である。
【図7a】480分間にわたる製剤17および18、対照2ならびにコーティングされていない製剤VM−1について、ヒドロコドンおよびアセトアミノフェンのイン・ビトロ薬物放出プロファイルを描いた図である。
【図7b】480分間にわたる製剤17および18、対照2ならびにコーティングされていない製剤VM−1について、ヒドロコドンおよびアセトアミノフェンのイン・ビトロ薬物放出プロファイルを描いた図である。
【図8】エタノール濃度を上昇させながら、経時的な(時間)形態A(溶融押出)からのベラパミル放出の溶解プロファイル(平均溶解%[±SD])を描いた図である。
【図9】エタノール濃度を上昇させながら、経時的な(時間)形態B(SR)からのベラパミル放出の溶解プロファイル(平均溶解%[±SD])を描いた図である。
【図10】エタノール濃度を上昇させながら、経時的な(時間)形態C(SR)からのベラパミル放出の溶解プロファイル(平均溶解%[±SD])を描いた図である。
【図11】エタノール濃度を上昇させながら、経時的な(時間)形態D(SR)からのベラパミル放出の溶解プロファイル(平均溶解%[±SD])を描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は記載する特定の方法、プロトコール、動物試験および試薬に限定されるものではなく、それらは変わり得るものである。やはり理解すべき点として、本明細書で使用する用語は特定の実施形態の記載のみを目的とし、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明は専ら添付の特許請求の範囲によって限定される。
【0049】
なお、本明細書と添付の特許請求の範囲で使用する単数形の「一つの」、「1個の」および「その」は、文脈によって別の内容が明瞭に示されない限り、複数形の記載を含む。従って、例えば「化合物」と言う場合には、複数のこのような化合物と当業者に公知のその均等物を含み、他の用語についても同様である。同様に、「一つの」(または「1個の」)、「1以上」および「少なくとも一つ」という用語は本明細書では、互換的に使用することができる。さらに、「含有する」、「含む」および「有する」という用語も互換的に使用することができる。
【0050】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての科学用語および技術用語は、本発明が属する分野の当業者に通常理解されている通りの意味を有する。本発明の実施または試験には本明細書に記載するものと類似または等価の任意の方法および材料を使用することができるが、好ましい方法および材料について以下に記載する。本明細書で言及される刊行物はいずれも、本発明との関連で使用され得ると考えられる当該刊行物中に報告されている化学物質、動物、機器、統計解析および方法の説明および開示に関して、参照によって本明細書に組み込まれるものである。本明細書中のいかなる記載も本発明が先発明によりこのような開示よりも以前の日付を主張する権利がないと認めるものとして解釈すべきではない。
【0051】
本明細書では、公知の材料の簡便な略称として商標名を使用する。当業者に自明の通り、以下の商品名は以下に指定する物質を意味する。
【0052】
EUDRAGIT(登録商標):アクリル酸およびメタクリル酸エステルから誘導されるポリマー;
METHOCEL(登録商標):メチルまたはメトキシセルロース
KOLLICOATIR(登録商標):ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールグラフトコポリマー
PLASDONE(登録商標):ポリビニルピロリドンポリマーまたはコポリマー
LAUROGLYCOL(登録商標):プロピレングリコールラウリン酸エステル
SPAN(登録商標):ソルビタン脂肪酸エステル
CREMOPHOR(登録商標):ポリエトキシル化ひまし油
POLOXAMER(登録商標):ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーまたはポリオキシエチレンポリプロピレングリコール
TWEEN(登録商標):ポリエトキシル化ソルビタンエステル
KLUCEL(登録商標):ヒドロキシプロピルセルロース
KOLLIDON(登録商標):ポリビニルピロリドンホモポリマーまたはコポリマー
XYLITOL(登録商標):(2,3,4,5)テトラヒドロキシペンタノール
ISOMALT(登録商標):6−0−α−D−グルコピラノシド−D−ソルビトール(1,6−GPS)と1−0−α−D−グルコピラノシド−D−マンニトール2水和物(1,1−GPM−2水和物)の等モル組成物
POLYOX(登録商標):ポリエチレンオキシドをベースとする水溶性樹脂
XYLIT(登録商標):(2,3,4,5)テトラヒドロキシペンタノール
PLUROLOLEIQUE(登録商標):ポリグリセロールのオレイン酸エステル
LUTROL(登録商標):ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーまたはポリオキシエチレンポリプロピレングリコール
ETHOCEL(登録商標):エチルセルロース
PRIMOJEL(登録商標):デンプングリコール酸ナトリウム。
【0053】
本発明は乱用されやすい性質を有するか頻繁に乱用されることが分かっている医薬活性化合物(「薬物」)のイン・ビボ持続放出を確保する改良型固体または固溶体経口製剤と、その塩、エステル、プロドラッグおよび他の製薬上許容される均等物を提供する。
【0054】
「AUC」という用語は台形法とClast/kを使用して計算した濃度時間曲線下面積を意味し、ここでClastは最終実測濃度であり、kは消失速度定数の計算値である。
【0055】
「AUCt」という用語は台形法を使用して計算した最終実測濃度までの濃度時間曲線下面積を意味する。
【0056】
「Cmax」という用語は本発明の組成物の経口摂取により生じたTmaxにおける対象乱用関連薬物の血漿濃度を意味する(それぞれng/mLとμg/mLで表す)。特に指定しない限り、Cmaxは最高実測総濃度を意味する。
【0057】
「Cmin」という用語は5回連続投与間隔で投与した本発明の製剤の所期投与間隔内、例えば12時間おきまたは必要に応じて投与するために適切であるとされた製剤では12時間投与間隔内の最低実測濃度を意味する。
【0058】
「ng・hr/mL/mg」という用語は血液1ミリリットル当たりの物質の測定量(ナノグラム)と時間数の積を乱用関連薬物の動物またはヒト投与量(ミリグラム)で割った値を意味する。
【0059】
本明細書で使用する「上昇放出速度」という用語は、製剤が薬物の約80%を消費するまで一定に維持されたり低下する速度ではなく、一般に経時的に増加する速度で薬物が使用環境で液体に溶解するように、一般に経時的に増加する溶解速度を意味する。
【0060】
上記または他の治療で使用する場合、治療上有効用量の本発明の化合物の1種を純粋な形態、またはそのような形態が存在する場合には製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグ形態で利用することができる。本発明の化合物の「治療上有効用量」という用語は任意の医療処置に適用可能な妥当な利益/リスク比で疾患を治療する上で十分な化合物の量を意味する。しかしながら、本発明の化合物および組成物の合計1日用量は適切な医療判断の範囲内で主治医により決定されることは明らかである。任意の特定患者の具体的な治療上有効用量レベルは治療する疾患と疾患の重度;利用する特定化合物の活性;利用する特定組成物;患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別および食生活;利用する特定化合物の投与時間、投与経路および排泄速度;治療期間;利用する特定化合物と併用または同時使用する薬物;ならびに医療分野で公知の他の因子を含む各種因子によって決まる。
【0061】
好ましい1実施形態において、本発明は通常の溶媒(例えば限定されないが、蒸留エタノール水溶液)による製剤からの薬物の抽出を抑制する製剤を提供する。製剤はオピオイドを非経口投与用に容易に濃縮できないように、人間が(故意または非意図的に)製剤からオピオイドを抽出しにくくすることにより乱用を断念させる。また、これらの乱用抵抗性製剤は鼻孔からの吸い込みにより容易に乱用される小粒子または粉末状に容易に破砕することができない。このような乱用抵抗性製剤はオピオイド拮抗薬を添加する必要がない(ただし、乱用をさらに断念させるために製剤にオピオイド拮抗薬を添加してもよい)。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、ヒドロキシメチルセルロース、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース等(これらに限定されるものではない)のアルキルセルロースを添加すると、アルコール、特に20%または40%エタノール水溶液に製剤を抽出しにくくなると考えられる。アルキルセルロースは好ましくはアルキル置換基による置換度が少なくとも12%であり、より好ましくはアルキル置換基による置換度が少なくとも16%であり、最も好ましくはアルキル置換基による置換度が少なくとも19%である。本発明の関連では、セルロースのアルキル置換度は約40%未満が好ましく、より好ましくは約30%未満である。さらに、アルキル置換基は好ましくはC−C、より好ましくはC1、CまたはC、最も好ましくはC3であり、アルキル置換基の炭素原子数が3以上の場合には、直鎖でも分岐でもよい。
【0062】
別の好ましい実施形態において、製剤は切断、粉砕、微粉砕等を受けにくいものであっても良い。本発明のこの態様についての簡便な一つの評価基準は、「Pharma Test PTB 501」硬度計により測定される「破断強度」である。本発明の製剤は好ましくは破断強度が少なくとも150ニュートン(150N)である。より好ましくは、本発明の製剤は破断強度が少なくとも300N、さらに好ましくは少なくとも450N、さらに好ましくは少なくとも500Nである。
【0063】
本発明による破断強度は欧州薬局方1997,143,144頁,方法番号2.9.8に公表されている錠剤の破断強度の測定方法に従って直径10mm、幅5mmの錠剤で測定することができる。破断強度を測定するために使用される好ましい装置の1例はFmax=2.5kN、最大伸び1150mmの「Zwick Z 2.5」材料試験機であり、カラムとスピンドルを含む構成であり、後方クリアランス100mmおよび試験速度0.1800mm/minのものである。測定はねじ込み式インサートとシリンダー(直径10mm)を含む圧力ピストン、力変換器(Fmax.1kN,直径=8mm、10NからISO 7500−1クラス0.5、2Nからクラス1、Zwick総荷重Fmax=1.45kN)を使用して実施することができる。前記装置は、Zwick GmbH & Co.KG,UIm,Germanyから入手することができる。
【0064】
本発明の組成物を製造するためには適切な任意手段を使用することができる。好ましい1実施形態において、製剤は好ましくは溶融処理、より好ましくは溶融押出後、どちらの場合も製剤を粉砕または摩砕せずに直接成形される。上記に拘わらず、製剤の直接成形錠剤に嚥下補助剤(限定されないが、例えばゼラチンコート)をコーティングしてもよいと考えられる。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、中間摩砕段階を介さずに製剤に望ましくない尖鋭な輪郭が形成されないように直接成形すると、製剤の破断強度の向上に役立つと考えられる。さらに、本発明の製剤の実施形態は少なくとも2種類の溶融処理ポリマーを利用することにより破断強度を強化するものであっても良い。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、第2の溶融処理ポリマーは錠剤の形成中に組成物全体のガラス遷移温度を有利に調節するように第1の溶融処理ポリマーと優先的に相互作用すると考えられる。
【0065】
1実施形態において、製剤は溶融処理、より好ましくは溶融押出後に直接成形された製剤を形成するためにポリマーもしくはコポリマーまたはその組合せを使用することができる。薬理的に不活性であり、腸溶コーティングまたは持続放出プロファイルを製剤に提供するポリマーを使用することもできる。1実施形態において、適切なポリマー/コポリマーとしては、例えばEudragit LまたはS型等の薬理的に不活性なポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0066】
EUDRAGIT(登録商標)は本発明で使用するのに適しており、アクリル酸とメタクリル酸のエステルから誘導される所定の好ましいポリマーの商品名である。EUDRAGITポリマーの性質は主にEUDRAGITポリマーのモノマーに組込まれる官能基により決定される。個々のEUDRAGIT(登録商標)の等級はその中性、アルカリ性または酸性基の比率が異なるため、物理化学的性質が異なる。下記式
【0067】
【化1】

を有するアンモニオアルキルメタクリレートコポリマーまたはメタクリレートコポリマーを使用することができる。
【0068】
EudragitポリマーはUSPに記載の仕様/要件を満足する。2007年米国薬局方によると、EudragitはUSP30/NF25として定義されている。
【0069】
メタクリル酸コポリマー、A型NF=Eudragit L−100;
メタクリル酸コポリマー、B型NF=Eudragit S−100;
メタクリル酸コポリマー、C型NF=Eudragit L−100−55(少量の界面活性剤を含有);
アンモニオメタクリレートコポリマー、A型NF=Eudragit RL−100(顆粒);
アンモニオメタクリレートコポリマー、A型NF=Eudragit RL−PO(粉末);
アンモニオメタクリレートコポリマー、B型NF=Eudragit RS−100(顆粒);
アンモニオメタクリレートコポリマー、B型NF=Eudragit RS−PO(粉末);
30%ポリアクリレート分散液Ph.Eur.=Eudragit NE30D(=30%水系分散液);
塩基性ブチル化メタクリレートコポリマーPh.Eur.=Eudragit E−100;
なお、官能基は第4級アンモニウム(トリメチルアンモニオエチルメタクリレート)部分ないしR=COOCHCH(CHClを有する[EUDRAGIT(登録商標)(RLまたはRS)として市販]かまたは官能基はカルボン酸ないしR=COOHである[EUDRAGIT(登録商標)(L)として市販]。官能基がカルボン酸部分であるとき、EUDRAGIT(登録商標)(L)ポリマーは胃酸耐性で腸溶性である。従って、EUDRAGIT(登録商標)(L)を使用する製剤は胃液に耐性となり、活性剤を結腸内に放出することになる。官能基がトリメチルアンモニオエチルメタクリレート部分である場合には、EUDRAGIT(登録商標)(RLまたはRS)ポリマーは不溶性、透過性、分散性およびpH非依存性である。従って、これらのEUDRAGIT(登録商標)(RLまたはRS)ポリマーは持続放出製剤の薬物遅放に使用することができる。EUDRAGIT(登録商標)は固形(EUDRAGIT(登録商標)L100/S100/L−100−55、EUDRAGIT(登録商標)E PO、EUDRAGIT(登録商標)RL PO、Eudragit RS PO)、顆粒(EUDRAGIT(登録商標)E100、EUDRAGIT(登録商標)RL 100/RS 100)、分散液(L 30D−55/FS 30D 30%,EUDRAGIT(登録商標)NE 30D/40D 30%/40%ポリマー含量、EUDRAGIT(登録商標)RL 30DRS 30D 30%)および有機溶液(EUDRAGIT(登録商標)L 12.5、EUDRAGIT(登録商標)E12.5,EUDRAGIT(登録商標)RL 12.5/RS 12.5−12.5%有機溶液)等の各種形態で販売されている。
【0070】
少なくとも2種類の溶融処理ポリマーを利用する場合には、一方は好ましくはセルロース誘導体、より好ましくはヒドロキシアルキルセルロース誘導体、場合によりヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、独立して他方のポリマーは好ましくは(メタ)アクリレートポリマー(例えば適切な任意のEudragitポリマー)である。本発明の関連で好ましい(メタ)アクリレートポリマーとしてはEudragit LとEudragit RSが挙げられる。本発明の関連でより好ましいポリマーの1例はEudragit RLである。複数のEudragitポリマーを併用することができ、Eudragit RSおよびRLの混合物が好ましい。(推奨されないが)医師に処方された医薬の服用時にかなりの量のアルコール飲料を飲用している者は胃に含まれる胃液の組成が大きく変化している可能性があり、極端な場合には、これらの胃液は40%までのアルコールを含有している可能性がある。有利には、本発明の乱用抑止製剤の実施形態が、少なくとも1種の乱用関連薬物と、少なくとも1種のセルロースエーテルまたはセルロースエステルと、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸ポリマーの溶融処理混合物を含有していても良く、37℃で1時間以内に20%エタノール水溶液または40%エタノール水溶液または両方により製剤から抽出される薬物の量は37℃または25℃または両方の温度で1時間以内に0.01N塩酸により抽出される薬物の量の1.5倍以下である。40%エタノールで抽出しにくい点は個人が乱用関連薬物を含有する医薬から乱用関連薬物を意図的に抽出しようとする状況で有利である。
【0071】
それぞれ20%もしくは40%エタノール水溶液または0.01N塩酸による抽出のプロトコルについては後記実験セクションに記載する。より好ましい実施形態において、20%または40%エタノール水溶液により製剤から抽出される薬物の量は1時間以内に0.01N塩酸により抽出される薬物の量の1.5倍以下である。さらにより好ましい実施形態において、20%または40%エタノール水溶液により製剤から抽出される薬物の量は1時間以内に0.01N塩酸により抽出される薬物の量以下である。さらにより好ましい実施形態において、20%または40%エタノール水溶液により製剤から抽出される薬物の量は1時間以内に0.01N塩酸により抽出される薬物の量の0.9倍以下である。
【0072】
本発明はさらに、抽出がイソプロピルアルコール、蒸留酒(例えばウォッカ)、ホワイトビネガー、水およびエタノール水溶液(例えば20%エタノール)等の市販の家庭用抽出溶媒による溶媒抽出であるときに製剤から薬物が抽出されないようにする少なくとも1種の乱用関連薬物の持続放出製剤を提供する。製剤は一般に溶媒抽出しにくいが、胃液等の水溶液への十分な薬物放出を提供する。この製剤は破砕または粉砕時にも胃液等の水溶液への十分な薬物放出を提供する。幸運にも、本発明の所定の好ましい実施形態では、3オンスの上記家庭用溶媒の1種または2種または3種以上への添加時(即ち0時間)から1時間までに放出される乱用関連薬物の量は通常のヒトの嚥下時と同時に放出される量の15%以下であり、あるいは1時間超から約4時間までに放出される量は通常のヒトの嚥下時と同時に放出される量の15%以下であり、あるいはその両方であると予想される。
【0073】
本発明の代表的な好ましい組成物はセルロースエーテルおよびセルロースエステルを含有しており、本発明ではこれらを単独で使用してもよいし、併用してもよく、好ましい分子量は50000から1250000ダルトンである。セルロースエーテルはアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースまたはその混合物から選択することが好ましく、例えばエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(NF)、ヒドロキシエチルセルロース(NF)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(USP)またはその組合せが挙げられる。有用なセルロースエステルは限定されないが、酢酸セルロース(NF)、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびその混合物である。最も好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の非イオン性ポリマーを使用することができる。
【0074】
無水グルコース単位のセルロース上の置換基の量はセルロース化学者に「置換度」(D.S.)として知られる概念である環に結合した置換基の平均数により表すことができる。各単位の全3個の利用可能な位置が置換される場合には、D.S.は3であり、各環で平均2個を反応させる場合には、D.S.は2であり、以下、同様である。
【0075】
好ましい実施形態において、セルロースエーテルはアルキル置換度1.3から2.0であり、ヒドロキシアルキルモル置換度0.85までである。
【0076】
好ましい実施形態において、アルキル置換基はメチルである。さらに、好ましいヒドロキシアルキル置換基はヒドロキシプロピルである。種々の置換度でメトキシおよびヒドロキシプロピル置換されたこれらの型のポリマーは薬局方、例えばUSPに「ヒプロメロース」の名称で挙げられている。
【0077】
メチルセルロースは商品名METHOCEL Aで市販されている。METHOCEL Aは1.64から1.92のメチル(またはメトキシ)D.S.である。これらの型のポリマーは薬局方、例えばUSPに「メチルセルロース」の名称で挙げられている。
【0078】
特に好ましいセルロースエーテルはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは商品名METHOCEL E(メチルD.S.約1.9、ヒドロキシプロピルモル置換度約0.23)、METHOCEL F(メチルD.S.約1.8、ヒドロキシプロピルモル置換度約0.13)およびMETHOCEL K(メチルD.S.約1.4、ヒドロキシプロピルモル置換度約0.21)で市販されている。METHOCEL FとMETHOCEL Kが本発明で使用するのに好ましいヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0079】
アクリルポリマーは適切には、アクリル酸および/またはアルカクリル酸および/またはアルキル(アルク)アクリレートのモノマーを含むホモポリマーとコポリマー(この用語は3個以上の別個の反復単位をもつポリマーを意味する)を包含する。本明細書で使用する「アルキル(アルク)アクリレート」という用語は対応するアクリレートまたはアルカクリレートエステルを意味し、通常ではそれぞれ対応するアクリル酸またはアルカクリル酸から形成される。すなわち、「アルキル(アルク)アクリレート」という用語はアルキルアルカクリレートまたはアルキルアクリレートを意味する。
【0080】
好ましくは、アルキル(アルク)アクリレートは(C−C22)アルキル((C−C10)アルク)アクリレートである。アルキル(アルク)アクリレートのC−C22アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソプロピル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ベヘニルおよびその異性体が挙げられる。アルキル基は直鎖でも分岐でもよい。好ましくは、(C−C22)アルキル基は上記で定義の(C−C)アルキル基、より好ましくは上記で定義の(C−C)アルキル基を表す。アルキル(アルク)アクリレートのC1−10アルク基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルおよびその異性体が挙げられる。アルク基は直鎖でも分岐鎖でもよい。好ましくは、(C−C10)アルク基は上記で定義の(C−C)アルク基、より好ましくは上記で定義の(C−C)アルク基を表す。
【0081】
好ましくは、アルキル(アルク)アクリレートは(C−C)アルキル((C−C)アルク)アクリレート、最も好ましくは(C−C)アルキル(メタ)アクリレートである。当然のことながら、(C−C)アルキル(メタ)アクリレートという用語は(C−C)アルキルアクリレートまたは(C−C)アルキルメタクリレートを意味する。(C−C)アルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、n−プロピルメタクリレート(PMA)、イソプロピルメタクリレート(IPMA)、n−ブチルメタクリレート(BMA)、イソブチルメタクリレート(IBMA)、tert−ブチルメタクリレート(TBMA);メチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート(EA)、n−プロピルアクリレート(PA)、n−ブチルアクリレート(BA)、イソプロピルアクリレート(IPA)、イソブチルアクリレート(IBA)およびその組合せが挙げられる。
【0082】
好ましくは、アルカクリル酸モノマーは好ましくは、(C−C10)アルカクリル酸である。(C−C10)アルカクリル酸の例としては、メタクリル酸、エタクリル酸、n−プロパクリル酸、イソプロパクリル酸、n−ブタクリル酸、イソブタクリル酸、tert−ブタクリル酸、ペンタアクリル酸、ヘキサアクリル酸、ヘプタアクリル酸およびその異性体が挙げられる。好ましくは、(C−C10)アルカクリル酸は(C−C)アルカクリル酸、最も好ましくはメタクリル酸である。
【0083】
ある種の実施形態において、アルキル基はアリール基で置換されていてもよい。本明細書で使用する「アルキル」基とは直鎖、分岐または環状の飽和または不飽和脂肪族炭化水素を意味する。アルキル基は炭素原子数1から16であり、置換されていなくてもよいし、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシカルボニル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシ、チオおよびチオアルキルから選択される1個以上の基で置換されていてもよい。「ヒドロキシ」基とはOH基を意味する。「アルコキシ」基とは−O−アルキル基を意味し、ここでアルキルは上記で定義の通りである。「チオ」基とは−SH基を意味する。「チオアルキル」基とは−SR基を意味し、ここでRは上記で定義のアルキルである。「アミノ」基とは−NH基を意味する。「アルキルアミノ」基とは−NHR基を意味し、ここでRは上記で定義のアルキルである。「ジアルキルアミノ」基とは−NRR′基を意味し、ここでRおよびR′はいずれも上記で定義の通りである。「アミド」基とは−CONHを意味する。「アルキルアミド」基とは−CONHR基を意味し、ここでRは上記で定義のアルキルである。「ジアルキルアミド」基とは−CONRR′基を意味し、ここでRおよびR′は上記で定義のアルキルである。「ニトロ」基とはNO基を意味する。「カルボキシル」基とはCOOH基を意味する。
【0084】
ある種の実施形態において、アルキル基はアリール基で置換されていてもよい。本明細書で使用する「アリール」とは炭素環式および複素環式の両方の芳香環を含み、いずれも単環でも縮合多環でもよく、芳香環は5または6員環とすることができる。代表的な単環式アリール基としては、フェニル、フラニル、ピロリル、チエニル、ピリジニル、ピリミジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。縮合多環式アリール基は縮合環系の1個以上の環として5または6員芳香環または複素芳香環を含む芳香族基である。代表的な縮合多環式アリール基としてはナフタレン、アントラセン、インドリジン、インドール、イソインドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、プテリジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジンおよびアズレンが挙げられる。同様に本明細書で使用するアリールと基はアリールアルキル基も包含する。さらに、本明細書で使用する「アリールアルキル」とは芳香基がアルキル基と結合した部分(例えばベンジル)を意味する。
【0085】
好ましくは、アクリルポリマーはアクリルコポリマーである。好ましくは、アクリルコポリマーは上記で定義のアルキル(アルク)アクリレートおよび/またはアクリル酸および/またはアルカクリル酸から誘導されるモノマーを含む。最も好ましくは、アクリルコポリマーはアルキル(アルク)アクリレート、即ち上記で定義の共重合性アルキルアクリレートおよびアルキルアルカクリレートモノマーから誘導されるモノマーを含む。特に好ましいアクリルコポリマーは(C−C)アルキルアクリレートモノマーと共重合性(C−C)アルキル(C−C)アルカクリレートコモノマーを含み、特にメチルメタクリレートとメチルアクリレートおよび/またはエチルアクリレートおよび/またはn−ブチルアクリレートの共重合性コモノマーから形成されるコポリマーが挙げられる。
【0086】
好ましくは、(メタ)アクリルポリマーはイオン性(メタ)アクリルポリマー、特にカチオン性(メタ)アクリルポリマーである。イオン性(メタ)アクリルポリマーはイオン基をもつ(メタ)アクリルモノマーを中性(メタ)アクリルモノマーと共重合させることにより製造される。イオン基は好ましくは第4級アンモニウム基である。
【0087】
(メタ)アクリルポリマーは一般に非水溶性であるが、水溶液および消化液に膨潤性で透過性である。カチオン基と中性(メタ)アクリル酸エステルのモル比により、製剤の透水性の制御が可能になる。好ましい実施形態において、(メタ)アクリルポリマーはカチオン基と中性(メタ)アクリル酸エステルのモル比が平均で約1:20から1:35であるコポリマーまたはコポリマー混合物である。この比は適切な市販のカチオン性(メタ)アクリルポリマーを選択するかまたはカチオン性(メタ)アクリルポリマーを適切な量の中性(メタ)アクリルポリマーとブレンドすることにより調節することができる。
【0088】
好適な(メタ)アクリルポリマーはRohm Pharmaから商品名Eudragit、好ましくはEudragit RLおよびEudragitRSで市販されている。Eudragit RLおよびEudragit RSは第4級アンモニウム基含量の低いアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのコポリマーであり、アンモニウム基と残りの中性(メタ)アクリル酸エステルのモル比はEudragit RLで1:20であり、Eudragit RSで1:40である。平均分子量は約150000である。製剤の性質を調節するため、および/またはその製造し易さを改善するために、(メタ)アクリルポリマー以外に他の製薬上許容されるポリマーを本発明の製剤に添加してもよい。これらのポリマーはN−ビニルラクタムのホモポリマー、特にポリビニルピロリドン(PVP)、N−ビニルラクタムとこれに共重合可能な1種以上のコモノマーのコポリマー(ここで、コモノマーは窒素含有モノマーと酸素含有モノマーから選択される)、特にN−ビニルピロリドンとカルボン酸ビニルのコポリマー(好ましい例はN−ビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマーおよびN−ビニルピロリドンとプロピオン酸ビニルのコポリマーである);ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールのグラフトコポリマー(例えばBASFAG,Ludwigshafen,GermanyからKollicoat(登録商標)IRとして市販されているもの);高分子量ポリアルキレンオキシド(例えばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー);ポリアクリルアミド;酢酸ビニルポリマー(例えば酢酸ビニルとクロトン酸のコポリマー、部分加水分解ポリ酢酸ビニル(別称部分鹸化「ポリビニルアルコール」);ポリビニルアルコール;ポリ(ヒドロキシ酸)(例えばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)および3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸のコポリマー);またはその1種以上の混合物が挙げられる。PVPは押出中にヒドロコドンN−オキシドを生じるので、PVPポリマーおよびコポリマーの使用は必ずしも好ましくない。しかし、少量(製剤全体の0.2から0.6重量%)の酸化防止剤を使用する場合には、PVPを使用すると好ましい場合がある。
【0089】
「乱用関連薬物」とは流通が法的に規制されている生物学的に有効な任意成分を意味する。本発明の関連で有用に製剤化することができる乱用薬物としては限定されないが、プソイドエフェドリン、抗鬱剤、強力刺激剤、ダイエット薬、ステロイドおよび非ステロイド性抗炎症薬が挙げられる。強力刺激剤の分類では、メタンフェタミンが最近乱用薬物として世間の注目を集めている1種の薬物である。アトロピン、ヒヨスチアミン、フェノバルビタール、スコポラミン等の乱用性についても現在多少懸念されている。別の主要な分類の乱用関連薬物は鎮痛薬、特にオピオイドである。
【0090】
「オピオイド」という用語は、作動薬、拮抗薬または作動薬と拮抗薬の混合物のいずれであるかに拘わらず、エンケファリン、エンドルフィンおよびジノルフィン等の内因性オピオイドペプチドと結合した1個以上の受容体部位と反応する物質を意味する。オピオイドとしては、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルヒネ、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、シクラゾシン、デソモルヒネ、デキストロモラミド、デゾシン、ジアムプロミド、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアムブテン、酪酸ジオキサフェチル、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアムブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ハイドロモルフォン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レバロルファン、レボフェナシルモルファン、レボルファノール、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルブフィン、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルピパノン、オピウム、オキシコドン、オキシモルフォン、パパベレツム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェナゾシン、フェノモルファン、フェノペリジン、ピミノジン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジンおよびトラマドールならびにその塩および混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
一部の好ましい実施形態において、本発明の製剤は少なくとも1種の他の治療薬を含有する。さらにより好ましい実施形態において、他の治療剤は、非ステロイド系非オピオイド鎮痛薬からなる群から選択することができ(これらに限定されるものではない)、さらにアセトアミノフェン、アスピリン、フェンタニル、イブプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、ナプロキセン、フェナセチン、ピロキシカム、スフェンタニル、スリンダクおよびインターフェロン−αから構成される群から選択しても良い。(例えば)米国食品医薬品局等の適切な国立または地方規制機関の権限下で定用量併用剤として現在大衆に販売されている薬物併用剤が特に好ましい。このような薬物としては限定されないが、ヒドロコドンとアセトアミノフェン(固定用量)併用剤、またはヒドロコドンとイブプロフェンの(固定用量)併用剤が挙げられる。
【0092】
乱用関連薬物はセルロースエーテルまたはセルロースエステルと、1種のアクリルまたはメタクリルポリマーと、製剤の他の補助成分により形成される基材全体に均一に分散していることが好ましい。この記載は基材相内に一般に直径1μm未満の小粒子の薬物を含むシステムも包含するものである。これらのシステムは熱分析(DSC)またはX線回折分析(WAXS)により分析した場合にその結晶または微結晶状態のかなりの量の活性オピオイド成分を含まないことが好ましい。薬物の合計量の少なくとも98(重量)%が非晶質状態で存在することが好ましい。例えばアセトアミノフェン等の非乱用関連薬物である他の活性剤も本発明の製剤中に存在する場合には、この他の薬物活性剤は製剤に組込まれた結晶状態とすることができる。系が化学的および物理的に均一もしくは実質的に均一となるかまたは1つの熱力学相から構成されるように成分の分散系が構成されているとき、このような分散系を「固溶体」と言う。乱用関連活性剤の固溶体が好ましい。製剤にはさらに糖アルコールまたはその誘導体、マルトデキストリン;製薬上許容される界面活性剤、流動調節剤、崩壊剤、賦形剤および滑沢剤から選択される1種以上に添加剤を添加することができる。有用な糖アルコールの例としてはマンニトール、ソルビトール、キシリトールか挙げられ;有用な糖アルコール誘導体としては、イソマルト、水素添加縮合パラチノースならびに類似および非類似の他の糖アルコール誘導体が挙げられるがこれらに限定されるものではない。製薬上許容される界面活性剤は好ましくは製薬上許容される非イオン性界面活性剤である。低水溶性活性成分を含有する基材に使用するため、および/または製剤の濡れ性を改善するためには界面活性剤の添加が特に好ましい。界面活性剤は製剤から放出された活性成分を即座に乳化させ、活性成分が消化管の水性液体中に沈殿するのを防ぐことができる。
【0093】
添加剤をいくつか挙げると、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル);ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル(例えばポリオキシエチレン(2)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ノニルフェニルエーテルまたはポリオキシエチレン(3)オクチルフェニルエーテル);ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えばPEG−200モノラウレート、PEG−200ジラウレート、PEG−300ジラウレート、PEG−400ジラウレート、PEG−300ジステアレートまたはPEG−300ジオレエート);アルキレングリコール脂肪酸モノエステル(例えばプロピレングリコールモノおよびジラウレート(Lauroglycol(登録商標)));スクロース脂肪酸エステル(例えばスクロースモノステアレート、スクロースジステアレート、スクロースモノラウレートまたはスクロースジラウレート);ソルビタン脂肪酸モノおよびジエステル(例えばソルビタンモノラウレート(Span(登録商標)20)、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート(Span(登録商標)40)またはソルビタンステアレート);ポリオキシエチレンひまし油誘導体(例えばポリオキシエチレングリセロールトリリシノレートまたはポリオキシル35ひまし油(Cremophor(登録商標)EL;BASF Corp.)またはポリオキシエチレングリセロールオキシステアレート、例えばポリエチレングリコール40水素化ひまし油(Cremophor(登録商標)RH 40)またはポリエチレングリコール60水素化ひまし油(Cremophor(登録商標)RH 60));またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー、別称ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーまたはポリオキシエチレンポリプロピレングリコール(例えばPluronic(登録商標)F68、Pluronic(登録商標)F127、Poloxamer(登録商標)124、Poloxamer(登録商標)188、Poloxamer(登録商標)237、Poloxamer(登録商標)388またはPoloxamer(登録商標)407(BASF Wyandotte Corp.));またはポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノ脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(Tween(登録商標)60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(Tween(登録商標)40)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20))等およびその2種、3種、4種、5種以上の混合物が挙げられる。
【0094】
他の各種添加剤も溶融物に添加することができ、例えば流動調節剤(例えばコロイド状シリカ);潤滑剤、充填剤、崩壊剤、可塑剤、安定剤(例えば酸化防止剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤または微生物攻撃に対する安定剤)が挙げられる。さらに、アセトアミノフェン含有保護膜層はアセトアミノフェン自体に起因する苦味があるので、この苦味を減らすために甘味剤および/または香味剤を添加剤として使用してもよい。苦味を減らす1つの好ましい方法は薄層の非アセトアミノフェン含有保護膜の追加である。本発明の製剤は加熱プレス機の使用等の適切な溶融法により得ることができ、溶融押出により製造することが好ましい。薬物の均一な分布と十分な分散度を得るためには、薬物含有溶融物を十分な滞留時間にわたって溶融押出機の加熱バレルに保持することができる。一方の成分を他方に均一に組込むことが可能な液体状態またはゴム状態への遷移点で溶融が生じる。溶融は通常、製剤の溶融性賦形剤(例えばセルロースエーテル/エステル、糖アルコールおよび/または(メタ)アクリルポリマー)の軟化点よりも高温に加熱することが必要である。溶融物の製造は各種方法で実施することができる。
【0095】
通常では、溶融温度は70から250℃、好ましくは80から180℃、最も好ましくは100から140℃である。
【0096】
溶融法が溶融押出を含む場合には、溶融および/または混合はこの目的に慣例的に使用されている装置で実施することができる。押出機または混練機が特に好適である。好適な押出機としては、一軸押出機、かみ合い型スクリュー押出機および多軸押出機、好ましくは同方向または逆方向に回転することができ、場合により混練ディスクを備える二軸押出機が挙げられる。当然のことながら、作業温度も押出機の種類または使用される押出機の内部の構造の種類により決定される。押出機内の成分を溶融、混合および溶解させるために必要なエネルギーの一部は発熱体により提供することができる。しかし、押出機内の材料の摩擦と剪断によりかなりの量のエネルギーを混合物に提供し、成分の均一溶融物の形成を助長することもできる。
【0097】
別の実施形態では、本発明は以下の特性:(a)37℃で撹拌下または非撹拌下に1時間以内にエタノール溶媒、例えば40%または20%エタノール水溶液または両方により製剤から抽出される乱用関連薬物が37℃で1時間以内に0.01N塩酸により抽出される乱用関連薬物の量の1.5倍以下である、(b)製剤が不正を加えにくく、「Pharma Test PTB 501」硬度計により測定した場合に150ニュートン、好ましくは300ニュートン、より好ましくは450ニュートン、さらにより好ましくは500ニュートンの加重下で破断しない、(c)製剤がイン・ビトロ溶解試験および場合によりさらにイン・ビボ(即ち動物またはヒトの消化管内)において30分間、最初の1時間または最初の2時間に薬物の少なくとも15%、より好ましくは18%、場合により24%で薬物の45%、より好ましくは38%、場合により34%以下を放出するという特性の少なくとも2つをもつことを特徴とする経口徐放製剤を提供する。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、製剤、特に非コア領域の薬物添加率を高めることにより、製剤からのアセトアミノフェンの高い初期放出速度が達成されると考えられる。本発明の製剤の一部実施形態におけるアセトアミノフェン等の単一活性成分の薬物添加率(重量)は約60%、70%、75%、80%、85%超とすることができる。アセトアミノフェンの薬物添加率は80%に限定することができる。
【0098】
この製剤の好ましい1実施形態はモノリシック形または固溶体である。「モノリシック」という用語は「単一」の「石」を意味する語源に由来する。モノリシックまたは固体は好ましくは少なくとも1つの寸法が5mmよりも大きい。本発明のモノリシック実施形態において、乱用関連薬物は単一固体または単一固溶体エレメントに含まれることが好ましい。モノリシック固体または固溶体に場合により他の材料を被覆または組み合わせることもできる。これらの他の材料はあまり多くない量の乱用関連薬物を含有することが好ましく、これらの材料は乱用関連薬物のイン・ビボまたはイン・ビトロ溶解または分散速度にほとんど影響を与えないことが好ましい。最初の約1時間後の1または複数の乱用関連薬物のイン・ビトロおよび/またはイン・ビボ放出速度は少なくとも約6、8、10、12または16時間にわたって実質的に一定であることが好ましい。従って、本発明の実施形態は患者または動物の血中に治療レベルの薬物が迅速に得られるように乱用関連薬物のバースト放出を与えると共に、治療量を少なくとも約8、12または24時間提供するように維持するように作ることが可能な単相薬物製剤を提供する。さらに、医薬製剤はヒトまたは動物に1日1回、2回または3回反復投与するのに適していることが好ましい。本発明の製剤の好ましい実施形態は製剤に配合された乱用関連薬物の実質的に全量を放出すると有利である。例えば、本発明の製剤はイン・ビトロ溶解試験で約16時間、場合により12または9時間以内に薬物の90%、好ましくは95%超を送達するように作ることができる。薬物の90%が製剤から放出される時点から累積血中濃度ないしAUCを直接知ることはできないが、医薬製剤が患者(または動物)の血液系への薬物吸収を行うこと可能な消化管の部分に乱用関連薬物の実質的に全量または全量を放出するときに一般に乱用関連薬物1mg当たりの高いAUCを達成することができる。
【0099】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は少なくとも1種の治療薬を含有する製剤を溶融押出する段階を含み、さらに(中間)粉砕段階を介さずに押出物を製剤に直接成形する段階を含む乱用抵抗性医薬製剤の製造方法を提供する。溶融押出物は好ましくはセルロース誘導体を含み、好ましくはさらにEudragitポリマーも含む。好ましいEudragitポリマーとしては、Eudragit LまたはEudragit RSまたは両方が挙げられ、Eudragit RLまたはEudragit RLとEudragit RSの組合せが特に好ましい。
【0100】
溶融物は糊状から粘性までとすることができる。溶融物を凝固させる前に、溶融物を、ほぼ所望形状に成形しても良い。押出物の成形はカレンダーにより簡便に実施しても良く、その表面に相互に一致する凹部を備える2本の逆方向に回転するローラーを使用すると好ましい。種々の形状の凹部を備えるローラーを使用することにより広範な錠剤形状を得ることができる。あるいは、押出物を凝固前(「ホットカット」)または後(「コールドカット」)に細断してもよいし、金型射出法で使用してもよい。加熱プレス機を利用する溶融法により得られた溶融物もカレンダー処理しても良い。形成された溶融物に実質的量の乱用性薬物を含有しない材料を、被覆しても良い。例えば、乱用薬物を含有するモノリシック製剤にカラーコート、嚥下補助剤または製薬上許容される材料の別の層を被覆することができる。モノリシック形に積層した材料は製剤からの活性成分の放出速度を実質的に変化させないことが好ましい。
【0101】
このような製剤を哺乳動物が摂取し易くするためには、製剤に適切な形状を付与すると有利である。従って、快適に嚥下することができる大型錠剤は円形よりも細長いほうが好ましい。
【0102】
製剤のフィルムコートはさらに嚥下し易さを高めるものである。フィルムコートはさらに味を改善し、きれいな外観を提供する。所望により、フィルムコートは腸溶コートとすることができる。フィルムコートは通常、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびアクリレートまたはメタクリレートコポリマー等のポリマー成膜材料を含む。成膜ポリマーに加え、フィルムコートにはさらに可塑剤(例えばポリエチレングリコール)、界面活性剤(例えばTween(登録商標)型)および適宜に顔料(例えば二酸化チタン、酸化鉄)および/または甘味剤または香味剤を添加することができる。フィルムコーティングにはさらに粘着防止剤としてタルクも添加することができる。フィルムコートは通常、製剤の約5重量%未満に相当する。
【0103】
本発明の実施形態例
本発明のある種の実施形態例は、易水溶性薬物の二相放出プロファイルを有し、押出とカレンダー処理により製造されたポリマー含有錠剤を含むモノリシック製剤を提供する。製剤は好ましくはヒドロコドンおよびアセトアミノフェン組成物の即時放出製剤と制御放出製剤を組合せたものである。特に麻薬を含むこれらのモノリシック製剤は製剤の薬物溶解が40%エタノール水溶液への混入を低下/最小とするような乱用抑止プロファイルをもつことができる。さらにより好ましくは、これらの製剤は生産規模への迅速な転換の選択肢を提供する再現可能な製造方法を提供することができる。
【0104】
放出速度の異なる2つの製剤に活性成分(アセトアミノフェン)を組込んだ後に製剤を結合して2層または多層錠剤とすることにより、モノリシック製剤を維持しながらアセトアミノフェンの所望の二相薬物溶解を達成することができる。この目的に適した方法としては、特に押出物製剤用としてEP0857062に記載されているような多層錠剤の同時押出製造方法が挙げられる。この方法の1つの欠点は2個の押出機を同時に運転しなければならず、その質量および体積流速を非常に正確に調整しなければならないという点である。特に錠剤をカレンダーで成形する場合には、薬局方(例えばUSP,Ph.Eur.)に指定されているような錠剤のアッセイおよび含量均一性要件の遵守を確保するように非常に正確に維持された比で2つの溶融物を相互に混合する必要がある。このためには高レベルの努力が要求される。
【0105】
速放アセトアミノフェン部分を別の錠剤として製造した後にカレンダー処理中に遅放薬物部分のまだ可塑性の溶融物に添加することも可能である。冷却後に、別々に組込まれた速放成分を含有するカレンダー加工押出錠剤が得られる。この型の製剤は特に押出製剤に関してUS6,001,391に記載されている。このアプローチの一つの欠点は溶融物により完全に包囲されないように速放アセトアミノフェン錠剤を個々のカレンダーキャビティに非常に厳密に導入しなければならないという点である。この速放アセトアミノフェン成分が薬物の表面に直接配置されない限り、水性媒体に接触してもこの別個の錠剤部分からの薬物溶解は十分迅速に開始することができない。
【0106】
アセトアミノフェンを含有するフィルムコーティングを塗布することにより錠剤に速放アセトアミノフェン成分を得ることも可能である。フィルムコーティング押出製剤の製造は各種特許出願に記載されている。しかし、これらの特許出願は具体的に二相薬物溶解を達成するように設計された薬物含有フィルムコーティングについては記載していない。特許出願11/625705およびPCT/US07/60864に従って製造された押出製剤を使用した臨床試験の結果、所望の二相薬物溶解(例えば1時間後>約30%、8時間後>約80%)を達成するためには錠剤に含まれるアセトアミノフェンの約20%を速放製剤にする必要があることが判明した。すなわち、1錠当たりの総アセトアミノフェン含量が約500mgの場合には、アセトアミノフェン約100mgを速放性にする必要があった。速放製剤中の活性成分約100mgを錠剤に塗布することは困難であり、以下の所定の要件を満足する場合のみに可能である。
【0107】
層が厚くなり過ぎないようにフィルムコーティング製剤の薬物含量を非常に高くしなければならない。
【0108】
フィルムコーティングに使用する薬物含有溶液または分散液は長時間の工程時間を避けるために高濃度でなければならず、そうでなければ工程が不経済になる。
【0109】
フィルムコーティング層はさらに層厚が大きい場合でも十分な機械的安定性を提供する必要があり、粘着性等であってはならず、厚い層でも亀裂が生じないように十分に弾性でなければならない。押出コアの表面との良好な密着を保証する必要がある。
【0110】
厚い層を使用する場合には、フィルムコーティング層からの薬物溶解が迅速であることも必要である(好ましい実施形態では最大で約1時間)。
【0111】
層厚が大きい場合には、高温で高い相対湿度または非常に低い相対湿度またはその組合せの条件下で長期間保存中にフィルムコーティング層の官能性がさほど変化しない(即ちコーティングの亀裂、粘着、脱落等が生じない)ことも必要である。
【0112】
驚くべきことに、比較的少量の適切な水溶性または水膨潤性ポリマーと共に微粉状アセトアミノフェンをフィルムコーティング層に使用すると、上記要件を満足できることが認められた。活性成分含量の高いこの種の製剤を実現でき、30重量%超の非常に高い総固形分含量でも噴霧溶液の粘性は著しく低く、厚いフィルムコーティング層(200μm以上)でも比較的短時間で塗布することができ、工程を経済的にできることが判明した。100mg超のアセトアミノフェンを含有する層で薬物溶解も十分に迅速であった。
【0113】
従って、フィルムコーティングの層厚によりアセトアミノフェン噴霧量を非常に厳密に制御することができ、従って、薬物溶解プロファイル(即ち最初の1時間の放出)も非常に厳密に制御することが可能であった。
【0114】
本発明のフィルムコーティング製剤は押出錠剤のざらざらした表面を非常に有効に平滑化することができ、即ちフィルムコーティングは錠剤の表面の凹凸を非常に有効にシールするという別の驚くべき発見もあった。市販の殆ど全てのフィルムコーティングとその製造に使用されているポリマーが実際にこの性質をもたず、この性質をもつように意図されてもいない点を考えると、これは驚くべきことであった。公知ポリマーおよびフィルムコーティング製剤はエンボス加工した要素(ロゴ等)を詳細に再現し、細かく行を区切るように設計されている。すなわち、特に従来製造されている錠剤に存在する凹部の「充填」は望ましくなく、絶対に避けるべきである(WO2006/002808参照;特に全サンプルでこの点を参照、実施例4、18頁:「The embossing was well reproduced, without smearing and bridging effects」参照)。フィルムコーティング製剤の製造に適切なポリマーは既に今日までにフィルムコーティングの製造に使用されている水溶性および水膨潤性の医薬的に許容されているポリマーである。基本要件は総固形分含量(=活性成分を含む全溶解または懸濁成分の合計)が少なくとも20重量%(好ましくは25%、特に好ましくは30%以上)の噴霧可能な好ましくは純水性の溶液または懸濁液を生成することである。溶液または分散液の総固形分含量はさらに活性成分含量が少なくとも50%(好ましくは60%、特に好ましくは70%以上)でなければならない。エタノール等の製薬上許容される非毒性溶媒を使用するならば、非水性の溶液または懸濁液も可能である。これらの有機溶媒と水の混液も可能である。しかし、一般には純水性の溶液または懸濁液が好ましい。
【0115】
上記の高い総固形分含量を使用する場合でも溶液または懸濁液の許容可能な噴霧挙動が確保される範囲内に噴霧溶液の粘性を維持するためには、高濃度でも水溶液中で比較的低粘性の溶液を形成するポリマーが特に好ましい。適切なポリマーとしては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の非イオン性セルロースポリマー;Eudragit(登録商標)E、Eudragit(登録商標)NE30D、Eudragit(登録商標)RL、Eudragit(登録商標)RS等のカチオン性ポリメタクリレート;ポリビニルアルコール;ポリエチレンオキシド(分子量(MW)>100,000の高分子量ポリエチレングリコール);ポリビニルアルコール/ポリエチレンオキシドグラフトポリマー(Kollicoat(登録商標)IR)が挙げられる。好ましくは、適切なポリマーはヒドロキシプロピルメチルセルロース、Eudragit(登録商標)NE30Dおよびポリビニルアルコールまたはその組合せから選択される。より好ましくは、適切なポリマーはポリビニルアルコール/ポリエチレンオキシドグラフトコポリマー(例えばKollicoat(登録商標)IR,BASF)である。
【0116】
活性成分(好ましくはアセトアミノフェン)は水性または水性/有機または純有機溶媒に上記高濃度で可溶性でなければならない。(アセトアミノフェンの場合のように)水溶性が十分でない場合には、好ましくは薬物懸濁液または分散液も使用することができる。しかし、この場合には、活性成分の粒度分布が十分に微細であることが不可欠であり、そうでなければ望ましくなく、即ち噴霧溶液中の懸濁活性成分の非常に迅速な沈降が生じ、および/またはフィルムコーターのスプレーノズルが目詰まりする。好ましい粒度は粒子の10%以下(特に好ましくは5%以下)が0.25mm超であり、粒子の20%以下(特に好ましくは10%以下)が0.1mm超であり、粒子の35%以下(特に好ましくは20%以下)が0.063mmである。この微細な粒度を達成するためには、薬物を粉砕工程で微粉砕すればよい(乾式および湿式粉砕が適切である)。
【0117】
驚くべきことに、本発明のフィルムコーティング層は錠剤に非常に良好に密着するのみならず、脆性または粘着性にならず、60℃までの高温保存中でも亀裂を示さないことが判明した。コーティング層が錠剤コアから剥がれることもなかった。
【0118】
薬物とのアルコール相互作用に関してさらに、放出調節経口製剤からの薬物のイン・ビボ放出に対するエタノールの同時摂取が与える可能性がある影響について、最近関心が持たれるようになってきた。従って、本発明の1態様は、3種類の他の市販されているベラパミル(240mg)徐放製剤とは対照的に、薬物の安定な固体分散を達成する革新的な溶融押出製剤であるメルトレックス(Meltrex)(登録商標)技術からのベラパミル(240mg)の放出のイン・ビトロ速度に対するエタノールの影響を決定するものであった。他の薬物も、アルコールと同時摂取したら大量放出を受けやすい薬物等で、メルトレックス(登録商標)技術で製造することができる。この溶融押出製剤は、生体適合性ポリマー基材に固体分散液/固溶体として溶解性の低い薬物を埋め込む効率的かつ特殊な技術であると考えられる。含有するエタノール濃度を0、5、20および40%と上昇させた媒体を使用する緩衝液添加法(リン酸カリウム緩衝液)を用いて、標準化した条件下に溶解試験を実施した。各媒体について、6種類の錠剤の試験を行い(0%エタノール中でC型について4種類の錠剤)、薬物放出を250から300nmで分光光度法でモニタリングした。溶融押出製剤についての溶解プロファイルでは、5%および40%エタノール媒体(P>0.05)と0%エタノール媒体の間に有意差は示されず、0%エタノール媒体と比較して20%エタノール媒体についての放出に統計的に有意な減少が示された(P=0.02)。0%および40%エタノールという両極端の条件に関して、平均溶解パーセントは、1時間で同じであり(19%)、8時間では、0%エタノール媒体(77%)と比較して40%エタノール中においてごくわずかに高かった(81%)。対照的に、前記3種類の市販されている比較剤は、0%エタノール条件と比較して、相対的に高いエタノール濃度(20および40%エタノール)で統計的に有意な増加を示した(p<0.001)。前記相対的に高いエタノール濃度で初期急速放出が認められ、試験の最初の2時間以内で平均溶解パーセント99%(範囲73から107%)が示された。低濃度/ゼロ濃度エタノールでの溶解は、ほぼゼロ次の定常的放出を示しており、最初の2時間以内で平均溶媒パーセント25%を有していた。このイン・ビトロ溶解試験では、ベラパミル(A型)の革新的溶融押出製剤が、40%以下のエタノール濃度で無傷で試験を行った場合にそれの放出プロファイルを変えないことが示された。対照的に、3種類の他の市販されている徐放ベラパミル濃度は、相対的に高いエタノール濃度(20および40%)で大量放出効果を示した。この試験は、この革新的溶融押出製剤が、容易に使いやすいエタノール濃度で無傷で組み合わせた場合に、イン・ビトロ環境での大量放出に対して抵抗性となり得ることを示唆している。イン・ビボ環境でのこの製剤の堅牢性を確認するための試験を将来的に行えば、臨床的に重要な薬物−アルコール相互作用の可能性が確認する上でさらに有用となると考えられる。
【0119】
薬物を含む粉末または顆粒を圧縮する標準的な打錠法(BからD型)の場合とは異なり、ベラパミル・メルトレックス(登録商標)(A型)の場合に、溶融押出は、薬物を含むポリマー溶融物を直接成形する革新的なプロセスである。さらに、溶融押出技術は、均一系またはバルク中間体の製造に非常に多く使用される溶媒および粉塵を含まないプロセスであることで、環境汚染、爆発プルーフィング(proofing)および残留有機溶媒の低減によってクリーン加工を可能とするという利点を有する(Breitenbach and Lewis, 2003)。医薬製剤に適用される溶融押出技術の治療上の利点には、改善された溶解動態、高い生物学的利用能と従って効力、改善された安全性および放出プロファイルを特別仕様で作る能力などがある(Breitenbach, 2002;Breitenbach and Lewis, 2003)。至適なポリマー組成物を選択することで、非常に硬い「プラスチック」様の錠剤を、非常に低い脆性で製造することができる。溶融押出錠剤は、標準的な錠剤の場合のように破砕して微粉末とすることができないことで、物理的な不正使用の可能性を下げることができる。そのような技術は、1日投与回数の減少が有益であり、不正使用(例えば、オピエート類、刺激薬)を阻止し、安全性を高め、時間放出プロファイルを維持する上で助けとなり得る多くの活性薬剤成分に適用可能である。この溶融押出技術は、アルコールと相互作用する可能性があるベラパミル塩酸塩、市販されている血圧降下薬および抗狭心症薬に適用されている(Covera−HS Product Monograph, 2006)。
【0120】
ある好ましい実施形態では、エタノールと同時使用した場合に大量放出効果が低減されるか制限されるように、ベラパミルおよび他の徐放製剤を製造することができる。好ましい実施形態には、溶融押出徐放製剤が含まれる。本発明のある好ましい実施形態は、(a)乱用関連薬物またはアルコール中への大量放出の可能性がある薬物;および(b)セルロースエーテル、セルロースエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびアルギン酸ナトリウムからなるモノマー群から選択されるポリマー、コポリマーまたはこれらの組み合わせを有する基材を含む、薬物−アルコール相互作用が低減された溶融押出製剤を提供する。そのような溶融押出基材の使用は、薬物−アルコール相互作用が低減された製剤を提供するものと期待される。好ましくは、その基材は、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースおよびアルギン酸ナトリウムのポリマーおよびコポリマーを含む。やはり、好ましくは、前記薬物はベラパミル、γ−ヒドロキシ酪酸またはフルニトラゼパムの塩またはエステルである。より好ましくは、前記ヒドロキシアルキルセルロースはヒドロキシプロピルセルロースであり、および/または前記ヒドロキシアルキルアルキルセルロースはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。最も好ましい実施形態では、前記薬物はベラパミルの塩またはエステルである。この薬物は、ベラパミルの塩またはエステルを1mgから1000mg含むことができる。
【0121】
本発明の別の実施形態は、製剤中のベラパミルの40%未満がUSP溶解法を用いて40%エタノール溶液に溶解する、ベラパミル1から1000mgを有するベラパミル溶融押出製剤を提供する。この製剤ではさらに、8時間後における5%または40%エタノール中での製剤からのベラパミルについての溶解プロファイルは、8時間後における0%エタノール中での製剤からのベラパミルについての溶媒プロファイルと異なっていない。最も好ましくは、これら全ての製剤で、薬物は、ベラパミルの塩またはエステル240mgを含む。さらに、それ以上の不要な実験を行わなくとも、これらの製剤において、イン・ビトロでの薬剤−アルコール相互作用の低下がイン・ビボでの薬剤−アルコール相互作用と相関していることは確認可能である。
【0122】
さらに本発明の別の実施形態は、ヒト患者に対して上記のいずれかの製剤を経口投与する段階を有する、処置を必要とするヒト患者の治療方法を提供する。
【0123】
下記にて、各種実施形態例について説明する。これらの実施例は、例示を目的として提供されるものであって、それらが本発明の範囲を狭めるものと考えるべきではない。
【実施例】
【0124】
(実施例1)
フィルムコーティング用錠剤の製造
61.8重量%アセトアミノフェン、12.6重量%Eudragit(登録商標)RL、12.6重量%キシリトール、6重量%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel(登録商標)K100)、6重量%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel(登録商標)K100M)および1.0重量%Aerosil(登録商標)200から構成される均一粉末混合物を同方向に回転する二軸押出機(ZSK−40)に20kg/hの速度で配量し、約140℃の温度で押出し、均一な白色溶融リボンを作製した。溶融リボンから錠剤を直接形成できるようにその表面に凹部を備えるローラーを使用し、逆方向に回転するフォーミングローラーカレンダーのロールスリットにこの溶融リボンを可塑状態のうちに導入した。得られた錠剤は冷却およびバリ取り後に平均重量720mgであった。錠剤の表面は所々がざらざらしており、不均一であった。
【0125】
(実施例2)
0.25mm超13%および0.063mm超68%の粒度のアセトアミノフェンを撹拌により水に懸濁した。撹拌機のスイッチの切断後、活性成分は非常に迅速に沈降した。この懸濁液をコロイドミルに通すことにより微粉砕および均質化した。粉砕後、固体粉末ポリマー(Kollicoat(登録商標)IR,BASF)をこの懸濁液に加え(アセトアミノフェン/Kollicoat(登録商標)IR質量比=75:25)、総固形分濃度30重量%とした。ポリマーの添加後も、アセトアミノフェンは顕著な沈降傾向を示した。次にこの懸濁液を連続的に撹拌しながら、実施例1に記載した錠剤(6kg)にフィルムコーター(Driam)で噴霧した。アセトアミノフェン30、50、70および90mgをフィルムコートに塗布した後に錠剤サンプルを採取した。いずれの場合も、純白フィルムコーティング錠の表面はまだ比較的大きなアセトアミノフェン粒子により若干ざらざらしていたが、コーティングは錠剤に非常によく密着していることが認められた。全製剤のフィルムコーティング前後の錠剤の乾燥減量は1重量%であった。
【0126】
フィルムコーティング工程パラメータ
錠剤コア6kg
ドラム速度:12rpm
吸気:1200m3/h
吸気温度:65℃
噴霧速度:40から45g/分
噴霧圧:4,5バール。
【0127】
(実施例3)
0.25mm超1%、0.1mm超5%および0.063mm超16%の粒度のアセトアミノフェンを撹拌により水に懸濁した。活性成分は実施例2で使用した材料に比較して撹拌機の切断後の沈降傾向の低下を示した。次に固体粉末ポリマー(Kollicoat(登録商標)IR,BASF)をこの懸濁液に加え(アセトアミノフェン/Kollicoat(登録商標)IR質量比=75:25)、総固形分濃度30重量%とした。ポリマーの添加後、アセトアミノフェンは沈降傾向を殆ど示さなかった。次に、錠剤形状を若干変えた以外は実施例1に記載の方法に従って製造した錠剤(6kg)にこの懸濁液をフィルムコーター(Driam)で噴霧した(工程パラメータは実施例2に同じ)。アセトアミノフェン30、50、70、90および120mgをフィルムコートに塗布した後に錠剤をサンプリングした。いずれの場合も錠剤へのコーティングの非常に良好な密着が認められた。純白フィルムコーティング錠の表面は滑らかで均一であった。
【0128】
(実施例4)
錠剤の薬物溶解
米国薬局方に記載の装置(USP溶解装置II(パドル型)、USP XXV;37℃、0.01M HCl、50rpm)で実施例1の錠剤の薬物溶解を測定した。錠剤から水性HCl媒体中に放出される活性成分の量を種々の間隔でHPLCにより測定した。
【0129】
フィルムコートを塗布しない錠剤
30分後に測定した薬物溶解:7%
60分後に測定した薬物溶解:11%
120分後に測定した薬物溶解:17%
240分後に測定した薬物溶解:27%。
【0130】
(実施例5)
フィルムコーティング錠の薬物溶解
米国薬局方に記載の装置(USP溶解装置II(パドル型)、USP XXV;37℃、0.01M HCl、50rpm)で実施例2の錠剤の薬物溶解を測定した。錠剤から水性HCl媒体中に放出される活性成分の量を種々の間隔でHPLCにより測定した。
【0131】
フィルムコートにアセトアミノフェン90mgを加えたフィルムコーティング錠
30分後に測定した薬物溶解:16%
60分後に測定した薬物溶解:20%
120分後に測定した薬物溶解:27%
240分後に測定した薬物溶解:36%。
【0132】
薬物溶解速度はフィルムコートに存在する活性成分の初期速放により各試験間隔で約10%増加した。
【0133】
(実施例6)
フィルムコーティング錠の薬物溶解
米国薬局方に記載の装置(パドル法、USP XXV;37℃、0.01M HCl、50rpm)で実施例3の錠剤の薬物溶解を測定した。錠剤から水性HCl媒体中に放出される活性成分の量を種々の間隔でHPLCにより測定した。
【0134】
フィルムコートを塗布しない錠剤
30分後に測定した薬物溶解:7%
60分後に測定した薬物溶解:12%
120分後に測定した薬物溶解:19%
240分後に測定した薬物溶解:29%
360分後に測定した薬物溶解:37%
480分後に測定した薬物溶解:43%。
【0135】
フィルムコートにアセトアミノフェン120mgを加えたフィルムコーティング錠
30分後に測定した薬物溶解:28%
60分後に測定した薬物溶解:35%
120分後に測定した薬物溶解:43%
240分後に測定した薬物溶解:53%
360分後に測定した薬物溶解:62%
480分後に測定した薬物溶解:69%。
【0136】
薬物溶解速度はフィルムコートに存在する活性成分の初期速放により各試験間隔で約25%増加した。
【0137】
(実施例7)
Kollicoat(登録商標)IRの代わりに少量の酸化鉄カラー顔料を添加したヒドロキシプロピルメチルセルロースを主成分とする固体粉剤を使用した以外は実施例3と同様に試験を実施した。水性懸濁液の粘性が著しく高いため、総固形分濃度を20重量%までしか調整することができず、その結果、他の工程パラメータは変わらないが、噴霧時間が増加した。錠剤へのコーティングの非常に良好な密着が認められた。赤/茶がかったフィルムコーティング錠の表面は滑らかで均一であった。
【0138】
(実施例8)
Kollicoat(登録商標)IRの代わりに少量の二酸化チタンを添加したポリビニルアルコールを主成分とする固体粉剤を使用した以外は実施例3と同様に試験を実施した。水性懸濁液の粘性が若干高いため、総固形分濃度を25重量%までしか調整することができず、その結果、他の工程パラメータは変わらないが、噴霧時間が増加した。錠剤へのコーティングの非常に良好な密着が認められた。純白のフィルムコーティング錠の表面は滑らかで均一であった。
【0139】
(実施例9)
実施例3、7および8に従って製造したフィルムコーティング錠を密閉ガラスびんに入れ、40℃および60℃の温度で保存した。1カ月後に錠剤に亀裂は認められず、粘着も認められなかった。実施例4に記載した方法により薬物溶解を測定した処、保存開始時に記録した値に比較して変化しないことが判明した。
【0140】
(実施例10)
実施例3に従って製造したフィルムコーティング錠(フィルムコーティング層にアセトアミノフェン90mgを加えたもの)をサンプリングし、ミクロトームを使用して錠剤の横断方向に薄い切片を切取り、顕微鏡で試験した。画像でフィルムコーティング層は錠剤コアから容易に区別可能であった。画像でフィルムコーティング層を測定した処、約300μmであった。図1、3および4からも明らかなように、粗錠剤表面に及ぼすコーティング懸濁液の平滑化効果は特に明白であった。
【0141】
(実施例11)
HClおよびエタノール水溶液への溶解
HClおよび20%エタノール水溶液への所定の組成物の溶解速度の代表的な試験方法を以下に記載する。40%エタノール水溶液への溶解速度の試験にも同様の方法を使用することができる。
【0142】
0.01N塩酸および20/40%エタノール水溶液への溶解には以下の装置および手順を使用した。
【0143】
(I)0.01N HClへの溶解
装置:USP溶解装置II(パドル型)
回転速度:50rpm
媒体:0.01N HCl
媒体体積:900mL
温度:37℃
30時間放出試験のサンプリング時間:30/60/120/180/240/360/420/480/600/720/840/1080/1320/1560/1800分
サンプル体積:10mL(体積置換なし)
サンプル調製:そのまま使用
最終分析:UV検出、波長280nm。
【0144】
(II)20または40%エタノール水溶液への溶解
装置:USP溶解装置II(パドル型)
回転速度:50rpm
媒体:20または40%エタノール水溶液
媒体体積:500mL
温度:37℃
30時間放出試験のサンプリング時間:30/60/120/180/240/360/420/480/600/720/840/1080/1320/1560/1800分
サンプル体積:10mL(体積置換なし)
サンプル調製:そのまま使用
最終分析:UV検出、波長280nm。
【0145】
III.37℃の0.01N HClへの無傷の錠剤の溶解試験
a.)37℃の0.01N HClへの(アセトアミノフェンに関する)速放製剤を表Xに示す。表IXは製剤5のコアおよび保護膜の組成を示す。
【0146】
【表1】

【0147】
表Xはヒドロコドン(X(a))とアセトアミノフェン(X(b))の溶解データを示す。
【0148】
【表2】

【0149】
【表3】

【0150】
b.)37℃の0.01N HClへの(アセトアミノフェンに関する)遅放製剤を表XIIに示す。表XIは製剤6のコアおよび保護膜の組成を示す。
【0151】
【表4】

【0152】
ヒドロコドン(XII(a))とアセトアミノフェン(XII(b))の溶解データを以下に示す。
【0153】
【表5】

【0154】
【表6】

【0155】
IV.37℃の40%エタノール水溶液への無傷の錠剤の溶解試験
a.)37℃の40%エタノール水溶液への(アセトアミノフェンに関する)速放製剤を表XIVに示す。表XIIIは製剤5のコアおよび保護膜の組成を示す。
【0156】
【表7】

【0157】
表XIVはヒドロコドン(XIV(a))とアセトアミノフェン(XIV(b))の溶解データを示す。
【0158】
【表8】

【0159】
【表9】

【0160】
b.)37℃の40%エタノール水溶液への(アセトアミノフェンに関する)遅放製剤を表XVIに示す。表XVは製剤8のコアおよび保護膜の組成を示す。
【0161】
【表10】

【0162】
表XVIはヒドロコドン(XVI(a))とアセトアミノフェン(XVI(b))の溶解データを示す。
【0163】
【表11】

【0164】
【表12】

【0165】
V.37℃の40%エタノール水溶液への粉砕錠剤(コーヒーグラインダー60秒)の溶解試験
家庭用コーヒーグラインダーで押出錠剤3錠をから20000から50000rpmで60秒間粉砕した。粉末を集め、1錠等量の粉末を放出試験用溶解容器に移した。
【0166】
サンプルの粒度分析を行うために、粉末を集め、メッシュサイズ355μmの篩でふるい分けした。篩を通過した材料をメッシュサイズ63μmの篩で再びふるい分けした。以下の画分が得られた。
【0167】
画分1:粒度>355μm(粉末総量のから20%);
画分2:粒度>63μmで<355μm(粉末総量のから66%);
画分3:粒度<63μm(粉末総量のから14%)。
【0168】
a.)37℃の40%エタノール水溶液への(アセトアミノフェンに関する)速放製剤を表XVIIに示す。ヒドロコドン(XVII(a))とアセトアミノフェン(XVII(b))の溶解データを以下に示す。
【0169】
【表13】

【0170】
【表14】

【0171】
b.)37℃の40%エタノール水溶液への(アセトアミノフェンに関する)遅放製剤を表XVIIIに示す。ヒドロコドン(XVIII(a))とアセトアミノフェン(XVIII(b))の溶解データを以下に示す。
【0172】
【表15】

【0173】
【表16】

【0174】
VI.4℃の0.01N HClへの無傷の錠剤の溶解試験
a.)4℃の0.01N HClへの(アセトアミノフェンに関する)速放製剤を表XIXに示す。ヒドロコドン(XIX(a))とアセトアミノフェン(XIX(b))の溶解データを以下に示す。
【0175】
【表17】

【0176】
【表18】

【0177】
b.)4℃の0.01NHClへの(アセトアミノフェンに関する)遅放製剤を表XXに示す。ヒドロコドン(XX(a))とアセトアミノフェン(XX(b))の溶解データを以下に示す。
【0178】
【表19】

【0179】
【表20】

【0180】
VIII.表面粗さ
押出錠剤のコーティングの結果、図1から明らかなように錠剤表面は著しく滑らかになった。
【0181】
表面粗さの変化を調べるために、コーティング錠と非コーティング錠を短軸に沿って半分に切断した。この横断面の表面をミルにかけ、平坦で滑らかな表面を得た。横断面の光学顕微鏡写真を使用し、平均表面粗さを測定した。分析には、図2に示すように中心線からはみ出した単位長さ当たりの平均高さを求める中心線平均アプローチ(CLA)を使用した。中心線の上下の面積がほぼ等しくなるように顕微鏡写真に中心線を引いた。
【0182】
CLAは下記式:
【0183】
【数1】

に従って等間隔の位置でサンプルを使用することにより計算される。
【0184】
全長lは4.69mmであり、インクリメント間の距離は68μmであった。非コーティング製剤では、図3に示すように、(N=69)のとき、CLA=0.56であった。他方、コーティング製剤では、図4に示すように、(N=69)のとき、CLA=0.15であった。
【0185】
IX.コーティング厚みを変えた場合の37℃の0.01N HClへの無傷の錠剤の溶解試験
a.)37℃の0.01N HClへの(アセトアミノフェンに関する)遅放製剤を表XXIIおよびXXIIIの各種製剤9から12に示す。製剤の組成を表XXIに示す。
【0186】
【表21】


【0187】
X.37℃の0.01N HClへの保護膜なしの無傷の錠剤の溶解試験
a.)37℃の0.01NHClへの(アセトアミノフェンに関する)速放製剤を表XXVに示す。表XXIVは製剤13のコアの組成を示す。
【0188】
【表22】

【0189】
ヒドロコドン(XXV(a))とアセトアミノフェン(XXV(b))の溶解データを以下に示す。
【0190】
【表23】

【0191】
【表24】

【0192】
b.)37℃の0.01N HClへの(アセトアミノフェンに関する)遅放製剤を表XXVIIに示す。表XXVIは製剤13のコアの組成を示す。
【0193】
【表25】

【0194】
ヒドロコドン(XXVII(a))とアセトアミノフェン(XXVII(b))の溶解データを以下に示す。
【0195】
【表26】

【0196】
【表27】

【0197】
(実施例12)
試験製剤と対照の生物学的利用能の比較
試験の目的は2種類の試験製剤15および16の生物学的利用能を参照対照錠剤の生物学的利用能と比較することであった。試験デザインは21人の対象で空腹時単回投与非盲検3期間クロスオーバー試験とした。投与法Aは製剤15を1錠;投与法Bは製剤16を1錠;投与法Cは対照1を1錠使用した。試験日1日目に投与後0、0.25、0.5、0.75、1、2、3、4、6、8、10、12、16、24、36および48時間に血液サンプルを採取した。下表XXVIIIは試験製剤15、16および対照1の組成を示す。製剤15、16および対照1の平均ヒドロコドンおよびアセトアミノフェン濃度については図5および6も参照。製剤5、7および15は実質的に相互に同一であるが、試験および実験の各番号付けに基づいて異なる番号を付けた。同様に、製剤6、8および16は実質的に相互に同一であるが、試験および実験の各番号付けに基づいて異なる番号を付けた。同じく同様に、対照1および2は実質的に相互に同一であるが、試験および実験の各番号付けに基づいて異なる番号を付けた。本発明の1態様において、製剤15は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物およびHPMCの混合物と、全成分の混合物の両方について製剤16よりも良好な混合性を提供するため、好ましい製剤は製剤15である。さらに、製剤15混合物は製剤16よりも押出機への流動性が良好である。さらに、製剤15は製剤16よりも粘着性が低いため、製剤15は製剤16よりも成形性が良好である。さらに、製剤15は製剤16よりも乱用抑止性が良好であると予想される。
【0198】
【表28】

【0199】
製剤15、16および対照1の事前薬物動態パラメータを下表XXIXに示す。
【0200】
【表29】

【0201】
対照1に比較した製剤15および16の予備相対生物学的利用能を下表XXXに示す。
【0202】
【表30】

【0203】
予備データによると、2種類の試験製剤15および16はCmaxとAUCの両方に関して対照1と生物学的に等価であった。ヒドロコドンの初期吸収速度は試験製剤15および16のほうが対照1よりも若干遅い。
【0204】
(実施例13)
イン・ビトロ薬物放出プロファイル
下表XXXIに示す下記製剤17および18のイン・ビトロ薬物放出プロファイルを試験し、このプロファイルを図7(a)および(b)に示すように非コーティングコアVM−1および対照2と比較した。
【0205】
【表31】

【0206】
(実施例14)
溶融押出、バリ取りおよびフィルムコーティングによる錠剤の製造
表XXXIIの各実施例について、全成分を含有する均一な粉末混合物を調製した。実施例14Aから16Aの場合には、最終混合物中に低用量API成分(重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物)の均一な分布を確保するために2段階混合を実施した。混合工程を表XXXIIIに記載する。実施例14Aから16Aの場合には、押出前の各最終粉末混合物から合計数5個の粉末サンプルを重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物の含有量均一性について分析した。
【0207】
表XXXIIは押出前の粉末混合物と最終押出物錠剤(溶融押出および直接成形後)の組成を示す。全成分は米国薬局方(USP,NF)および/または欧州薬局方(Ph.Eur.)に指定されているように試験し、放出させた。
【0208】
【表32】

【0209】
【表33】

【0210】
実施例14Bから7Bからの最終混合物を同方向に回転する二軸押出機に一定の供給速度で添加した。表XXXIVに記載する寸法に従ってその表面に凹部をもつ2個の逆方向に回転するローラーを使用し、押出機ノズルから排出される均一な白色の薬物含有溶融物を前記ローラー間でカレンダー処理することにより細長い錠剤に直接成形した。溶融押出とカレンダー処理の工程パラメータ設定を表XXXIVに示す。
【0211】
表XXXIVは溶融押出直接成形(カレンダー処理)工程を示す。
【0212】
【表34】

【0213】
実施例14C、15Cおよび17Cの錠剤をDriam600フィルムコーターに移した。第1段階では、錠剤を研磨し、カレンダー成形工程に由来する錠剤周囲のシームを除去するために、錠剤をコーターに入れて最大回転速度で転動させた。錠剤から除去したこの部分を排気と共にコーティングドラムから除去した。この「バリ取り」段階後に、錠剤のフィルムコーティングを同一コーターですぐに開始した。実施例16Cの場合には、錠剤を密閉ステンレス容器に入れ、縁部とシームの除去の完了後10分間転動した。次に、錠剤をシーブで脱塵し、他の実施例の場合と同一のDriamフィルムコーターに移した。フィルムコーティング層の組成とバリ取り段階およびその後のフィルムコーティングの工程パラメータ設定を表XXXVに示す。表XXXVはカレンダー処理後の錠剤のバリ取りを示す。
【0214】
【表35】

【0215】
実施例14Eから16Eのフィルムコーティング懸濁液の製造は一般に以下の段階により実施した。まず、アセトアミノフェンを室温で撹拌下に水に分散した。この懸濁液にポリマー(Kollicoat(登録商標)IR)を加え、均一な懸濁液が形成されるまで撹拌を続けた。この懸濁液をフィルムコーティングに直接使用した。全フィルムコーティング工程中に撹拌を続けた。実施例14Eから17Eでは、既製アセトアミノフェン粉末を使用した(Rhodia,アセトアミノフェン「微粉」)。他のふるい分けまたは微粉化は実施しなかった。フィルムコーティング懸濁液の組成を表XXXVIにまとめてある。
【0216】
表XXXVIはフィルムコーティング懸濁液の組成を示す。
【0217】
【表36】

【0218】
バリ取りした錠剤のフィルムコーティングをDriam600フィルムコーターで実施した。工程条件、パラメータ設定および最終フィルムコーティング錠からのデータを表XXXVIIにまとめる。全実施例14Fから17Fの場合、主フィルムコーティング相の異なる時点でサンプルを採取した。これはフィルムコーティング錠からのアセトアミノフェンと重酒石酸ヒドロコドンの両方の薬物放出に及ぼす異なる量のコーティング層厚みの影響を試験するためであった。主フィルムコーティング相中の噴霧速度はアセトアミノフェン/Kollicoat(登録商標)IR懸濁液を供給する蠕動ポンプの最大速度とした。より高い噴霧速度が可能であると思われる。
【0219】
表XXXVIIはフィルムコーティング工程条件を示す。
【0220】
【表37】


【0221】
一般に、本発明の所定の好ましい実施形態は溶媒抽出、不正、圧壊または粉砕しにくいことを特徴とし、薬物放出の初期バースト後に長期間の制御可能な薬物放出を確保する薬物、特に乱用薬物の送達用製剤および方法を提供する。
【0222】
さらに、下表XXXVIIIに示すように、好ましい1実施形態において、本発明はコアと非コア層を有し、(a)ヒドロコドン、その製薬上許容される塩または水和物と、(b)アセトアミノフェンまたはイブプロフェンを含有する医薬組成物を提供する。この実施形態では、ヒドロコドン、その製薬上許容される塩または水和物全体の少なくとも75%がコアに含まれ、アセトアミノフェンまたはイブプロフェンは非コア層である。さらに、この組成物は1日3、2または1回ヒトに経口投与するのに有用となるように構成されている。好ましくは、ヒドロコドン、その製薬上許容される塩または水和物の90%超がコアに含まれる。より好ましくは、ヒドロコドン、その製薬上許容される塩または水和物の実質的に全部がコアに含まれる。別の実施形態では、コアはさらにアセトアミノフェンまたはイブプロフェンを含む。より好ましくは、コアはさらにアセトアミノフェンを含む。
【0223】
【表38】






【0224】
ある種の実施形態では、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物約15mgとアセトアミノフェン約500mgを含有するとき、空腹時の患者に投与すると、以下の薬物動態プロファイルを示すことが好ましい。好ましくは、ヒト患者に投与した場合に、医薬組成物は単回投与後に約0.6ng/mL/mgから約1.4ng/mL/mgのヒドロコドンのCmaxと約2.8ng/mL/mgから7.9ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。別の実施形態において、医薬組成物は単回投与後に約0.4ng/mL/mgから約1.9ng/mL/mgのヒドロコドンのCmaxと約2.0ng/mL/mgから約10.4ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。さらに別の実施形態において、医薬組成物は単回投与後に約0.6ng/mL/mgから約1.0ng/mL/mgのヒドロコドンのCmaxと約3.0ng/mL/mgから約5.2ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。製剤の他の実施形態は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物約5から20mgとアセトアミノフェン約400から600mgを含有する。製剤のさらに別の実施形態は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物10から15mgとアセトアミノフェン約500から600mgを含有する。
【0225】
ある種の実施形態では、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物約15mgとアセトアミノフェン約500mgを含有するとき、空腹時の患者に投与すると、以下の薬物動態プロファイルを示すことが好ましい。ヒト患者に投与した場合に、製剤は約9.1ng・hr/mL/mgから約19.9ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCと約28.6ng・hr/mL/mgから約59.1ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。別の実施形態において、製剤は約7.0ng・hr/mL/mgから約26.2ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCと約18.4ng・hr/mL/mgから約79.9ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。さらに別の実施形態において、製剤は約11.3ng・hr/mL/mgから約18.7ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCと約28.7ng・hr/mL/mgから約53.5ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。好ましくは、この実施形態において、医薬組成物のイン・ビトロ放出速度は二相放出プロファイルを有し、イン・ビトロ放出速度の各相でアセトアミノフェンがゼロ次または一次であり、重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物がゼロ次または一次である。
【0226】
ある種の実施形態では、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物約15mgとアセトアミノフェン約500mgを含有するとき、空腹時の患者に投与すると、以下の薬物動態プロファイルを示すことが好ましい。好ましくは、ヒト患者に投与した場合に、医薬組成物は約0.18ng/mL/mgから約1.51ng/mL/mgのヒドロコドンの1時間血漿濃度(C1)と、約2.34ng/mL/mgから約7.24ng/mL/mgのアセトアミノフェンの1時間血漿濃度C1を生じる。製剤15等の好ましい実施形態において、製剤は約0.32ng/mL/mgから約1.51ng/mL/mgのヒドロコドンのC1と、約2.34ng/mL/mgから約5.50ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。
【0227】
ある種の他の実施形態では、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物約15mgとアセトアミノフェン約500mgを含有するとき、空腹時の患者に投与すると、以下の薬物動態プロファイルを示すことが好ましい。好ましくは、ヒト患者に投与した場合に、医薬組成物は約0.30ng/mL/mgから約1.06ng/mL/mgのヒドロコドンの1時間血漿濃度(C1)と、約2.75ng/mL/mgから約5.57ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。好ましい実施形態において、製剤は約0.45ng/mL/mgから約1.06ng/mL/mgのヒドロコドンのC1と、約2.75ng/mL/mgから約4.43ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。
【0228】
ある種の実施形態において、製剤は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgの単回投与後に、約1.18μg/mLから約3.63μg/mLのヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1を生じる。好ましい実施形態において、製剤は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgの単回投与後に、約1.18μg/mLから約2.76μg/mLのヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1を生じる。
【0229】
ある種の実施形態において、製剤は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgの単回投与後に、約1.38μg/mLから約2.79μg/mLのヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1を生じる。好ましい実施形態において、製剤は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgの単回投与後に、約1.38μg/mLから約2.23μg/mLのヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1を生じる。
【0230】
好ましい実施形態において、製剤は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgの単回投与後に、平均値約1.61μg/mLから約2.00μg/mLの95%信頼区間で1.80±0.42μg/mLのヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1を生じる。好ましい実施形態と対照のヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1の95%信頼区間は重なった。重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgをヒト患者に単回投与後に、対照のヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1の平均値の95%信頼区間は約1.46から1.96μg/mLであった。対照は投与後約1時間以内に疼痛強度を低下させるために十分な血漿値のオピオイドおよび非オピオイド鎮痛薬を提供する。
【0231】
特に製剤が必要に応じて12時間おきにヒトに投与するのに適切となるようにまたはその目的で構成されているときに健常な北米人または西欧人集団に投与した場合、37℃で50rpm下に0.01N HCl中にヒドロコドンの約20から45%が約1時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出され、アセトアミノフェンの約20から45%が約1時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。別の実施形態では、37℃で50rpm下に0.01N HCl中にヒドロコドンの約25から35%が約1時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出され、アセトアミノフェンの約25から35%が約1時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。さらに、別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも90%が約8時間から約12時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも60%から約99%が約6時間から約8.5時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも90%が約8時間から約11時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも90%が約8時間から約11時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも95%が約9時間から約12時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が約9時間から約12時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。さらに別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも95%が約10時間から約12時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が約10時間から約12時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも99%が約11時間から約12時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が約11時間から約12時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。さらに別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも99%が約13時間未満で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が約13時間未満で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。
【0232】
しかしながら、遅放型製剤が必要に応じて1日2回ヒトに投与するのに適切となるようにまたはその目的で構成されているときには、ヒドロコドンの少なくとも90%が約18時間から約23時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも90%が約18時間から約23時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。遅放製剤の別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも95%が約20時間から約25時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が約20時間から約25時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。遅放製剤の別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも95%が約21時間から約22時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が約21時間から約22時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。この遅放実施形態の別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも99%が約22時間から約26時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が約22時間から約26時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。遅放製剤のさらに別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも99%が約27時間未満で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が約27時間未満で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。
【0233】
好ましい1実施形態において、本発明はコア層が薬物放出を制御することが可能な賦形剤または賦形剤混合物を含み、非コア層が薬物を即座に放出することが可能な賦形剤を含む組成物を提供する。さらに、好ましい1実施形態において、コア層は溶融押出後に薬物含有溶融物の直接成形により製造され、非コア層はコア層に噴霧コーティングされている。最も好ましくは、組成物はアセトアミノフェン約500mgと重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物約15mgを含有する。別の実施形態では、非コア層または錠剤層を別の手法により製造することができる。この手法では、フィルムコーティング層を押出により別に製造し、押出物を箔状に成形する。コアの製造中にこの箔をカレンダーに導入する。この方法は厚い層に特に適しており(長時間の噴霧コーティングが不要になる)、無溶媒法である。この手法はXellex技術としても知られる。
【0234】
別の実施形態例において、本発明はコア層と非コア層をもち、(a)乱用関連薬物、その製薬上許容される塩または水和物と、非乱用関連薬物またはその製薬上許容される塩をコア層に含み、(b)非乱用関連薬物、その製薬上許容される塩または水和物を非コア層に含む医薬組成物を提供する。好ましくは、この組成物は以下の特徴のうちの少なくとも一つを特徴とする。
i)37℃で1時間以内に40%エタノール水溶液により組成物からイン・ビトロ抽出される乱用関連薬物の量が37℃で1時間以内に0.01N塩酸によりイン・ビトロ抽出される乱用関連薬物の量の1.5倍以下である。
ii)「Pharma Test PTB 501」硬度計により測定した場合に組成物が150ニュートン、好ましくは300ニュートン、より好ましくは450ニュートン、さらにより好ましくは500ニュートンの加重下で破断しない。
iii)組成物がイン・ビトロ溶解試験の最初の1時間、好ましくはさらにイン・ビボ試験の最初の1時間に乱用関連薬物の少なくとも20%で乱用関連薬物の45%以下を放出する。
iv)組成物が単回投与後1から2時間以内に治療有効用量の非乱用関連薬物を放出する。
v)組成物が単回投与後1時間および12時間に治療有効用量の非乱用関連薬物および/または乱用関連薬物を放出する。
vi)組成物をコーヒーグラインダーにより20000から50000rpmで1分間粉砕した場合、粉砕後の組成物では、37℃にて1時間40%エタノール水溶液への乱用関連薬物の放出が無傷の錠剤に比較して2から3倍未満増加する。
vii)粉砕時の組成物の粒度をふるい分け試験により測定した場合に、画分の約20%が約2cmから約355μmであり、画分の約66%が約63μm超で約355μm未満であり、画分の約14%が約63μm未満である。または。
viii)組成物が実質的に平滑であり、中心線平均粗さ(CLA)が約0.1から約0.6、好ましくは約0.1から約0.4、最も好ましくは約0.1から約0.2である。
【0235】
この組成物において、37℃で1時間以内に40%エタノール水溶液により製剤から抽出される乱用関連薬物の量は37℃で1時間以内に0.01N塩酸により抽出される薬物の量の約70%から約130%である。別の実施形態において、37℃で1時間以内に40%エタノール水溶液により製剤から抽出される乱用関連薬物の量は37℃で1時間以内に0.01N塩酸により抽出される薬物の量の約70%から約90%である。さらに別の実施形態において、37℃で1時間以内に40%エタノール水溶液により製剤から抽出される乱用関連薬物の量は37℃で1時間以内に0.01N塩酸により抽出される薬物の量の約75%から約90%である。
【0236】
本発明の別の実施形態はコア層と非コア層をもつ医薬組成物を提供する。この組成物において、コア層は(a)少なくとも1種のオピオイドと;(b)少なくとも1種の製薬上許容される律速ポリマー、コポリマーまたはその組合せの混合物を含む。非コア層は少なくとも1種の非オピオイド鎮痛薬を含む。さらに、これらの組成物は1日3、2または1回ヒトに経口投与するのに有用となるように構成されている。好ましくは、コア層はさらに少なくとも1種の非オピオイド鎮痛薬を含む。好ましい1実施形態において、組成物は以下の特徴のうちの少なくとも一つを特徴とする。
i)37℃で1時間以内に40%エタノール水溶液により組成物からイン・ビトロ抽出される乱用関連薬物の量が37℃で1時間以内に0.01N塩酸によりイン・ビトロ抽出される乱用関連薬物の量の1.5倍以下である。
ii)「Pharma Test PTB 501」硬度計により測定した場合に組成物が150ニュートン、好ましくは300ニュートン、より好ましくは450ニュートン、さらにより好ましくは500ニュートンの加重下で破断しない。
iii)組成物がイン・ビトロ溶解試験の最初の1時間、好ましくはさらにイン・ビボ試験の最初の1時間に乱用関連薬物の少なくとも20%で乱用関連薬物の45%以下を放出する。
iv)組成物が単回投与後1から2時間以内に治療有効用量の非乱用関連薬物を放出する。
v)組成物が単回投与後1時間および12時間に治療有効用量の非乱用関連薬物および/または乱用関連薬物を放出する。
vi)組成物をコーヒーグラインダーにより20000から50000rpmで1分間粉砕した場合、粉砕後の組成物では、37℃にて1時間40%エタノール水溶液への乱用関連薬物の放出が無傷の錠剤に比較して2から3倍未満増加する。
vii)粉砕時の組成物の粒度をふるい分け試験により測定した場合に、画分の約20%が約2cmから約355μmであり、画分の約66%が約63μm超で約355μm未満であり、画分の約14%が約63μm未満である。または、
viii)組成物が実質的に平滑であり、中心線平均粗さ(CLA)が約0.1から約0.6、好ましくは約0.1から約0.4、最も好ましくは約0.1から約0.2である。
【0237】
1実施形態において、オピオイドはアルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルヒネ、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、シクラゾシン、デソモルヒネ、デキストロモラミド、デゾシン、ジアムプロミド、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアムブテン、酪酸ジオキサフェチル、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアムブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ハイドロモルフォン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レバロルファン、レボフェナシルモルファン、レボルファノール、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルブフィン、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルピパノン、オピウム、オキシコドン、オキシモルフォン、パパベレツム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェナゾシン、フェノモルファン、フェノペリジン、ピミノジン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジンおよびトラマドールならびにその塩、水和物および混合物からなる群から選択される。さらに、非オピオイド鎮痛薬はアセトアミノフェン、アスピリン、フェンタニル、イブプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、ナプロキセン、フェナセチン、ピロキシカム、スフェンタニル、スリンダク、インターフェロン−αならびにその塩、水和物および混合物からなる群から選択される。好ましくは、オピオイドはヒドロコドンであり、非オピオイド鎮痛薬はアセトアミノフェンまたはイブプロフェンである。より好ましくは、オピオイドはヒドロコドンであり、非オピオイド鎮痛薬はアセトアミノフェンである。
【0238】
ある種の実施形態では、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物約15mgとアセトアミノフェン約500mgを含有するとき、空腹時の患者に投与すると、以下の薬物動態プロファイルを示すことが好ましい。好ましくは、ヒト患者に投与した場合に、医薬組成物は約0.18ng/mL/mgから約1.51ng/mL/mgのヒドロコドンの1時間血漿濃度(C1)と、約2.34ng/mL/mgから約7.24ng/mL/mgのアセトアミノフェンの1時間血漿濃度C1を生じる。製剤15等の好ましい実施形態において、製剤は約0.32ng/mL/mgから約1.51ng/mL/mgのヒドロコドンのC1と、約2.34ng/mL/mgから約5.50ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。
【0239】
ある種の他の実施形態では、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物約15mgとアセトアミノフェン約500mgを含有するとき、空腹時の患者に投与すると、以下の薬物動態プロファイルを示すことが好ましい。好ましくは、ヒト患者に投与した場合に、医薬組成物は約0.30ng/mL/mgから約1.06ng/mL/mgのヒドロコドンの1時間血漿濃度(C1)と、約2.75ng/mL/mgから約5.57ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。好ましい実施形態において、製剤は約0.45ng/mL/mgから約1.06ng/mL/mgのヒドロコドンのC1と、約2.75ng/mL/mgから約4.43ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。
【0240】
ある種の実施形態において、製剤は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgの単回投与後に、約1.18μg/mLから約3.63μg/mLのヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1を生じる。好ましい実施形態において、製剤は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgの単回投与後に、約1.18μg/mLから約2.76μg/mLのヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1を生じる。
【0241】
ある種の実施形態において、製剤は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgの単回投与後に、約1.38μg/mLから約2.79μg/mLのヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1を生じる。好ましい実施形態において、製剤は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgの単回投与後に、約1.38μg/mLから約2.23μg/mLのヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1を生じる。
【0242】
好ましい実施形態において、製剤は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgの単回投与後に、平均値約1.61μg/mLから約2.00μg/mLの95%信頼区間で1.80±0.42μg/mLのヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1を生じる。好ましい実施形態と対照のヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1の95%信頼区間は重なった。重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgをヒト患者に単回投与後に、対照のヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1の平均値の95%信頼区間は約1.46から1.96μg/mLであった。対照は投与後約1時間以内に疼痛強度を低下させるために十分な血漿値のオピオイドおよび非オピオイド鎮痛薬を提供する。
【0243】
ある種の実施形態では、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物約15mgとアセトアミノフェン約500mgを含有するとき、空腹時の患者に投与すると、以下の薬物動態プロファイルを示すことが好ましい。好ましくは、ヒト患者に投与した場合に、医薬組成物は単回投与後に約0.6ng/mL/mgから約1.4ng/mL/mgのヒドロコドンのCmaxと約2.8ng/mL/mgから7.9ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。別の実施形態において、医薬組成物は単回投与後に約0.4ng/mL/mgから約1.9ng/mL/mgのヒドロコドンのCmaxと約2.0ng/mL/mgから約10.4ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。さらに別の実施形態において、医薬組成物は単回投与後に約0.6ng/mL/mgから約1.0ng/mL/mgのヒドロコドンのCmaxと約3.0ng/mL/mgから約5.2ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。
【0244】
ある種の実施形態では、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物約15mgとアセトアミノフェン約500mgを含有するとき、空腹時の患者に投与すると、以下の薬物動態プロファイルを示すことが好ましい。ヒト患者に投与した場合に、製剤は約9.1ng・hr/mL/mgから約19.9ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCと約28.6ng・hr/mL/mgから約59.1ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。別の実施形態において、製剤は約7.0ng・hr/mL/mgから約26.2ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCと約18.4ng・hr/mL/mgから約79.9ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。さらに別の実施形態において、製剤は約11.3ng・hr/mL/mgから約18.7ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCと約28.7ng・hr/mL/mgから約53.5ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。好ましくは、この実施形態において、医薬組成物のイン・ビトロ放出速度は二相放出プロファイルをもち、イン・ビトロ放出速度の各相でアセトアミノフェンがゼロ次または一次であり、ヒドロコドンがゼロ次または一次である。
【0245】
特に製剤が必要に応じて12時間おきにヒトに投与するのに適切となるようにまたはその目的で構成されているときに健常な北米人または西欧人集団に投与した場合、37℃で50rpm下に0.01N HCl中にヒドロコドンの約20から45%が約1時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出され、アセトアミノフェンの約20から45%が約1時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。別の実施形態では、37℃で50rpm下に0.01N HCl中にヒドロコドンの約25から35%が約1時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出され、アセトアミノフェンの約25から35%が約1時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。さらに、別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも90%が約8時間から約12時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも60%から約99%が約6時間から約8.5時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも90%が約8時間から約11時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも90%が約8時間から約11時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも95%が約9時間から約12時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が約9時間から約12時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。さらに別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも95%が約10時間から約12時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が約10時間から約12時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも99%が約11時間から約12時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が約11時間から約12時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。さらに別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも99%が約13時間未満で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が約13時間未満で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。
【0246】
しかしながら、遅放型製剤が必要に応じて1日2回ヒトに投与するのに適切となるようにまたはその目的で構成されているときには、ヒドロコドンの少なくとも90%が約18時間から約23時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも90%が約18時間から約23時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。遅放製剤の別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも95%が約20時間から約25時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が約20時間から約25時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。遅放製剤の別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも95%が約21時間から約22時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が約21時間から約22時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。この遅放実施形態の別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも99%が約22時間から約26時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が約22時間から約26時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。遅放製剤のさらに別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも99%が約27時間未満で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が約27時間未満で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。
【0247】
好ましい1実施形態において、本発明はコア層が薬物放出を制御することが可能な賦形剤を含み、非コア層が薬物を即座に放出することが可能な賦形剤を含む組成物を提供する。さらに、好ましい1実施形態において、コア層は溶融押出後に薬物含有溶融物の直接成形により製造され、非コア層はコア層にスプレーコートされている。最も好ましくは、組成物はアセトアミノフェン約500mgと重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物約15mgを含有する。
【0248】
別の実施形態において、本発明はコア層と非コア層をもつ医薬組成物を提供する。この組成物において、コア層は、(a)少なくとも1種のオピオイドおよび少なくとも1種の第1の非オピオイド鎮痛薬と;(b)少なくとも1種の製薬上許容される律速ポリマー、コポリマーまたはその組合せの混合物を含む。非コア層は少なくとも1種の第2の非オピオイド鎮痛薬を含む。さらに、組成物は1日3、2または1回ヒトに経口投与するのに有用となるように構成されている。この実施形態において、好ましくは、オピオイドはヒドロコドンを含み、第1および第2の非オピオイド鎮痛薬はアセトアミノフェンまたはイブプロフェンを含む。より好ましくは、オピオイドはヒドロコドンを含み、第1および第2の非オピオイド鎮痛薬はアセトアミノフェンを含む。さらに、この実施形態において、非コア層は、(a)アセトアミノフェンと;(b)少なくとも1種の製薬上許容される律速ポリマー、コポリマーまたはその組合せを含む。好ましくは、ポリマーまたはコポリマーはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース;ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドおよびその組合せからなる群から選択される。より好ましくは、ポリマーまたはコポリマーはヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルアルコールまたはその組合せからなる群から選択される。さらにより好ましくは、ポリマーまたはコポリマーはポリビニルアルコールおよびポリエチレンオキシドグラフトコポリマーからなる群から選択される。さらに、この実施形態において、アセトアミノフェンと律速ポリマーもしくはコポリマーまたはその組合せの比は約1:1から約10:1である。より好ましくは、アセトアミノフェンと律速ポリマーもしくはコポリマーまたはその組合せの比は約3:1から約5:1である。本発明で提供される場合に、好ましい1実施形態において、非コア層は以下の特徴のうちの少なくとも一つを有する。
(a)高周波シールHDPEボトル内で40℃,相対湿度75%にて3カ月後に実質的に亀裂を生じない。
(b)実質的に乾燥している(非粘着性)。
37℃で0.01NHClに迅速に溶解し、コア層を露出する。
ヒト患者に投与後20分以内に非コア層内のアセトアミノフェンの少なくとも80%を放出する。または、
(e)顔料を添加せずに製剤に白色着色を提供する。
【0249】
ある種の実施形態では、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物約15mgとアセトアミノフェン約500mgを含有するとき、空腹時の患者に投与すると、以下の薬物動態プロファイルを示すことが好ましい。好ましくは、ヒト患者に投与した場合に、医薬組成物は約0.18ng/mL/mgから約1.51ng/mL/mgのヒドロコドンの1時間血漿濃度(C1)と、約2.34ng/mL/mgから約7.24ng/mL/mgのアセトアミノフェンの1時間血漿濃度C1を生じる。製剤15等の好ましい実施形態において、製剤は約0.32ng/mL/mgから約1.51ng/mL/mgのヒドロコドンのC1と、約2.34ng/mL/mgから約5.50ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。
【0250】
ある種の他の実施形態では、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物約15mgとアセトアミノフェン約500mgを含有するとき、空腹時の患者に投与すると、以下の薬物動態プロファイルを示すことが好ましい。好ましくは、ヒト患者に投与した場合に、医薬組成物は約0.30ng/mL/mgから約1.06ng/mL/mgのヒドロコドンの1時間血漿濃度(C1)と、約2.75ng/mL/mgから約5.57ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。好ましい実施形態において、製剤は約0.45ng/mL/mgから約1.06ng/mL/mgのヒドロコドンのC1と、約2.75ng/mL/mgから約4.43ng/mL/mgのアセトアミノフェンのC1を生じる。
【0251】
ある種の実施形態において、製剤は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgの単回投与後に、約1.18μg/mLから約3.63μg/mLのヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1を生じる。好ましい実施形態において、製剤は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgの単回投与後に、約1.18μg/mLから約2.76μg/mLのヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1を生じる。
【0252】
ある種の実施形態において、製剤は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgの単回投与後に、約1.38μg/mLから約2.79μg/mLのヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1を生じる。好ましい実施形態において、製剤は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgの単回投与後に、約1.38μg/mLから約2.23μg/mLのヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1を生じる。
【0253】
好ましい実施形態において、製剤は重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgの単回投与後に、平均値約1.61μg/mLから約2.00μg/mLの95%信頼区間で1.80±0.42μg/mLのヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1を生じる。好ましい実施形態と対照のヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1の95%信頼区間はオーバーラップした。重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物15mgとアセトアミノフェン500mgをヒト患者に単回投与後に、対照のヒドロコドンとアセトアミノフェンの合計C1の平均値の95%信頼区間は約1.46から1.96μg/mLであった。対照は投与後約1時間以内に疼痛強度を低下させるために十分な血漿値のオピオイドおよび非オピオイド鎮痛薬を提供する。
【0254】
ある種の実施形態では、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物約15mgとアセトアミノフェン約500mgを含有するとき、空腹時の患者に投与すると、以下の薬物動態プロファイルを示すことが好ましい。好ましくは、ヒト患者に投与した場合に、医薬組成物は単回投与後に約0.6ng/mL/mgから約1.4ng/mL/mのヒドロコドンのCmaxと約2.8ng/mL/mgから7.9ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。別の実施形態において、医薬組成物は単回投与後に約0.4ng/mL/mgから約1.9ng/mL/mgのヒドロコドンのCmaxと約2.0ng/mL/mgから約10.4ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。さらに別の実施形態において、医薬組成物は単回投与後に約0.6ng/mL/mgから約1.0ng/mL/mgのヒドロコドンのCmaxと約3.0ng/mL/mgから約5.2ng/mL/mgのアセトアミノフェンのCmaxを特徴とする血漿プロファイルを生じる。
【0255】
ある種の実施形態では、単一用量が重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物約15mgとアセトアミノフェン約500mgを含有するとき、空腹時の患者に投与すると、以下の薬物動態プロファイルを示すことが好ましい。ヒト患者に投与した場合に、製剤は約9.1ng・hr/mL/mgから約19.9ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCと約28.6ng・hr/mL/mgから約59.1ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。別の実施形態において、製剤は約7.0ng・hr/mL/mgから約26.2ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCと約18.4ng・hr/mL/mgから約79.9ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。さらに別の実施形態において、製剤は約11.3ng・hr/mL/mgから約18.7ng・hr/mL/mgのヒドロコドンのAUCと約28.7ng・hr/mL/mgから約53.5ng・hr/mL/mgのアセトアミノフェンのAUCを生じる。好ましくは、この実施形態において、医薬組成物のイン・ビトロ放出速度は二相放出プロファイルを有し、イン・ビトロ放出速度の各相でアセトアミノフェンがゼロ次または一次であり、ヒドロコドンがゼロ次または一次である。
【0256】
特に製剤が必要に応じて12時間おきにヒトに投与するのに適切となるようにまたはその目的で構成されているときに健常な北米人または西欧人集団に投与した場合、37℃で50rpm下に0.01N HCl中にヒドロコドンの約20から45%が約1時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出され、アセトアミノフェンの約20から45%が約1時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。別の実施形態では、37℃で50rpm下に0.01NHCl中にヒドロコドンの約25から35%が約1時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出され、アセトアミノフェンの約25から35%が約1時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。さらに、別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも90%が約8時間から約12時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも60%から約99%が約6時間から約8.5時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも90%が約8時間から約11時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも90%が約8時間から約11時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも95%が約9時間から約12時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が約9時間から約12時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。さらに別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも95%が約10時間から約12時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が約10時間から約12時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも99%が約11時間から約12時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が約11時間から約12時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。さらに別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも99%が約13時間未満で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が約13時間未満で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。
【0257】
しかしながら、遅放型製剤が必要に応じて1日2回ヒトに投与するのに適切となるようにまたはその目的で構成されているときには、ヒドロコドンの少なくとも90%が約18時間から約23時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも90%が約18時間から約23時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。遅放製剤の別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも95%が約20時間から約25時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が約20時間から約25時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。遅放製剤の別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも95%が約21時間から約22時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも95%が約21時間から約22時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。この遅放実施形態の別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも99%が約22時間から約26時間で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が約22時間から約26時間で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。遅放製剤のさらに別の実施形態では、ヒドロコドンの少なくとも99%が約27時間未満で医薬組成物から放出され、アセトアミノフェンの少なくとも99%が約27時間未満で医薬組成物からイン・ビトロ放出される。
【0258】
好ましい1実施形態において、本発明はコア層が薬物放出を制御することが可能な賦形剤を含み、非コア層が薬物を即座に放出することが可能な賦形剤を含む組成物を提供する。さらに、好ましい1実施形態において、コア層は溶融押出後に薬物含有溶融物の直接成形により製造され、非コア層はコア層に噴霧コーティングされている。最も好ましくは、組成物はアセトアミノフェン約500mgと重酒石酸ヒドロコドン2.5水和物約15mgを含有する。
【0259】
好ましい1実施形態において、組成物は以下の特徴のうちの少なくとも一つを特徴とする。
i)37℃で1時間以内に40%エタノール水溶液により組成物からイン・ビトロ抽出される乱用関連薬物の量が37℃で1時間以内に0.01N塩酸によりイン・ビトロ抽出されるヒドロコドンの量の1.5倍以下である。
ii)「Pharma Test PTB 501」硬度計により測定した場合に組成物が150ニュートン、好ましくは300ニュートン、より好ましくは450ニュートン、さらにより好ましくは500ニュートンの加重下で破断しない。
iii)組成物がイン・ビトロ溶解試験の最初の1時間、好ましくはさらにイン・ビボ試験の最初の1時間にヒドロコドンの少なくとも20%でヒドロコドンの45%以下を放出する。
iv)組成物が単回投与後1から2時間以内に治療有効用量のアセトアミノフェンを放出する。
v)組成物が単回投与後1時間および12時間に治療有効用量のアセトアミノフェンおよび/または乱用関連薬物を放出する。
vi)組成物をコーヒーグラインダーにより20000から50000rpmで1分間粉砕した場合、粉砕後の組成物では、37℃にて1時間40%エタノール水溶液へのヒドロコドンの放出が無傷の錠剤に比較して2から3倍未満増加する。
vii)粉砕時の組成物の粒度をふるい分け試験により測定した場合に、画分の約20%が約2cmから約355μmであり、画分の約66%が約63μm超で約355μm未満であり、画分の約14%が約63μm未満である。または
viii)組成物が実質的に平滑であり、中心線平均粗さ(CLA)が約0.1から約0.6、好ましくは約0.1から約0.4、最も好ましくは約0.1から約0.2である。
【0260】
(実施例XV)
ベラパミルについての大量放出試験
本実施例では、ベラパミル240mgが好ましいが、当業者は溶融押出製剤でベラパミル1から1000mgを用いることができる。
【0261】
材料
分析用エタノール(99.9体積%)は標準試薬用(Baker、Germany)であった。塩化ナトリウム(Merck、Germany)、塩酸(Baker、Germany)およびリン酸カリウム(Fluka、Switzerland)はいずれも入荷したものをそのまま使用した。脱イオン水は、社内の水系イオン交換器から入手した。
【0262】
薬物製剤
ベラパミル製剤イソプチンSR−E240mg(Meltrex(登録商標)、製剤A)(AbbottLaboratories、EU)、持続放出(SR)イソプチンSR240mg(製剤B)(AbbottLaboratories、EU)、Verahexal SR240mg(製剤C)(Hexal Pharma Ltd、Germany)およびVerapamil retard−Ratiopharm(登録商標)240mg(製剤D)(Ratiopharm、Germany)をそのまま使用した。製剤A(溶融押出)は、塩酸ベラパミルをヒドロキシプロピルセルロースおよびヒプロメロース基材中に含有していた。製剤B(持続放出)、C(持続放出)およびD(持続放出)は、塩酸ベラパミルをアルギン酸ナトリウム基材中に含有していた(遅延剤として)。
【0263】
溶解性試験
製剤A(溶融押出)および製剤Bの溶解性試験を、米国薬局方(USP)規格に従った緩衝液添加法を使用して実施した。整合性を保つため、この研究において同じ方法および条件を製剤CおよびDに使用した。
【0264】
HCl緩衝液添加法
(Ph.EUR、USPによる溶解装置)(Paddle)を使用して、37.0±0.5℃の媒体900mL中において100rpmの回転速度で薬物放出をモニタリングした。媒体は、0、5、20または40%(体積比)エタノール(pH6.4から7.2)とともに塩酸(0.08N)によって調節したリン酸カリウム緩衝液からなるものとした。各媒体について、6個の錠剤を試験し、薬物放出を分光光度計によって250から300nmでモニタリングした。これに対する例外は、4個の錠剤を使用して0%エタノール媒体中のみによって試験した製剤Cであった。全般的に、サンプリングは、妥当な製品規格に従って、60、120、240および480分で実施し、製剤Bについては600分で実施し、製剤CおよびDについて実施した。さらなる試料を300分で製剤A(40%エタノール)、製剤A(240分の代わりに0%および20%エタノール)、製剤B(40%エタノール)、ならびに製剤CおよびD(0%エタノール)について採取した。製剤CおよびD(0%エタノールのみ)については、さらなる試料を30、90、180および360分で採取した。
【0265】
薬物溶解度
各種の水−エタノール溶解媒体中における試験製剤の薬物放出を分光光度計によって(Fa Agilent、8453型、Agilent Technologies Inc., Santa Clara, CA, USA)、室温で250から300nmの波長でUV検出法を使用して測定した。ベラパミルを含有する標準試料(Ph.EURの化学標準物質)を使用した。
【0266】
データ解析
溶解率を、試験の間の経時的な体積の変化の原因となる、測定した体積当たりの薬物の量(mg)に基づいてパーセント(%)として計算した。溶解プロファイル(図1から4)は、6回の試験(製剤Cについては0%エタノールによる4回の試験)の生評点から導き出した経時的(時間)平均溶解率および標準偏差を使用して例示した。各試験について計算した溶解媒体当たりの加重平均(0を含めない全ての時点での溶解率)から、各製剤についてt検定を使用して比較統計値を計算した(両側分布および2標本等分散を仮定する)。
【0267】
5%および40%エタノール媒体中において8時間にわたって試験した製剤A(溶融押出製剤)からのベラパミル放出の溶解プロファイルは、0%アルコール条件と有意差がなかった(P>0.05)(図8)。20%エタノール下での溶解プロファイルは、0%エタノール条件と比較して有意に低かった(P=0.02)。この差は8時間で最も顕著であり、平均溶解率(%)が0%エタノール条件(77%)に対して20%エタノール条件(64%)で低かった。0%および40%エタノールの両方の極限条件について、平均溶解率は1時間で同一(19%)であり、8時間で0%エタノール媒体(77%)と比較して40%エタノール媒体中においてわずかに高い(81%)だけであった。全ての条件下での放出プロファイルは、ほぼゼロ次放出による徐放機構を示唆する、経時的に漸減した初期の急速な放出速度が特徴的であった。
【0268】
10時間にわたって実施した製剤B、徐放化合物は、無エタノール条件(0%)と比較して高エタノール濃度(20および40%)において溶解プロファイルの有意な変化を示した(p<0.001)(図9)。低/無エタノール濃度(0および5%)においては、ほぼゼロ次放出が観察され、2つの条件の間で統計的に有意な差は観察されなかった(p=0.5)。より高いエタノール濃度(20および40%)において、最初の1時間以内に初期の急速な放出が見られた。この作用はエタノール濃度に依存しており、20%エタノール媒体(57%)と比較して40%エタノール媒体(94%)中において高い平均溶解率(%)に達し、両方とも0%エタノール条件(17%)と比較して有意に高かった(P<0.001)。20%エタノール媒体については、経時的な連続放出が観察され、約8時間でプラトーに達した(平均溶解率101%)。40%エタノール濃度については、このプラトーに早く、約2時間で達した(溶解率107%)。2時間で、20および40%のエタノール濃度についてそれぞれ73%および107%の平均溶解率が観察され、0%エタノールにおいて観察された26%の平均溶解と比較して高いアルコール濃度において3から4倍の溶解率の増加を証明した。
【0269】
製剤Bと同様に、2種の徐放性製剤、製剤CおよびDについて、より高いエタノール濃度(20および40%)において同じ溶解プロファイルの変化が観察された。10時間にわたって実施した製剤Cは、無エタノール条件(0%)と比較して高いエタノール濃度(20および40%)において溶解プロファイルの有意な増加を示した(p<0.0001)(図10)。より高いエタノール濃度(20および40%)において、最初の1時間以内に初期の急速な放出が見られ、1時間での平均溶解率は、40%エタノール媒体(64%)と比較して20%エタノール媒体(102%)中において高かった。しかし、より高いエタノール条件は、両方とも1時間で0%エタノール条件(15%)と比較して有意に高かった(P<0.00001)。20%エタノール媒体については、約1時間で薬物放出におけるプラトーに達した(平均溶解102%)。このプラトーは、40%エタノール濃度についてはわずかに遅く、2時間であった(平均溶解106%)。より低いエタノール濃度(5%)において、4時間までの溶解プロファイルは、0%エタノールについて観察されたものとほとんど同一であった(1時間でP=0.4)。4から10時間で、溶解プロファイルは5%エタノール条件についてより低く、結果として溶解が0%エタノールに対して全体的に有意に低かった(P<0.001)。両方の条件の間の差は、8時間で最も顕著であり、0%エタノール条件(76%)と比較して5%エタノール条件(76%)の間での10%の平均溶解率差(%)を示している(P<0.001)。10時間で100%の溶解率近くに達した0%および5%エタノール条件の平均溶解率は、それぞれ97%および92%の平均溶解率を示している。
【0270】
製剤BおよびCの両方について観察された傾向と同様に、10時間にわたって実施した製剤Dは、無エタノール条件(0%)と比較して高いエタノール濃度(20および40%)において溶解プロファイルの有意な増加を示した(p<0.00001)(図11)。低/無エタノール濃度(0および5%)において、ほぼゼロ次放出が観察され、2つの条件の間で統計的に有意差が認められなかった(p=0.5)。より高いエタノール濃度(20および40%)において、最初の1時間以内に初期の急速な放出が見られた。この作用はエタノール濃度によって決まり、20%エタノール媒体(93%)と比較して40%エタノール媒体(101%)において高い平均溶解率(%)に達し、両方とも0%エタノール条件(12%)と比較して有意に高かった(P<0.0001)。20%エタノール媒体について、最初の2時間以内に急速な放出が観察され、2時間でプラトーに達し(平均溶解98%)、それは0%エタノール条件(12%)より有意に高かった(P<0.00001)。40%エタノール濃度については、このプラトーにより早く、約1時間で(101%平均溶解)達し、その後、1時間での0%エタノール条件(23%)と比較して有意に高い急速な放出が観察された(P<0.00001)。10時間の最後の時点で、それぞれ65%および69%の平均溶解率を示した0%または5%エタノール条件のいずれについても完全溶解(100%)が観察されなかった。
【0271】
このイン・ビトロの溶解研究からの結果は、ベラパミルを含有する革新的な溶融押出製剤が、無傷のまま、5%エタノール(ほとんどのビール、ワインクーラーに見られる濃度と同等)、20%エタノール(強い混合酒に見られる濃度と同等であり、ほとんどのワインに見られる濃度よりわずかに高い(10から15%)および40%エタノール(ほとんどの薄めていないスピリッツ、すなわち、ウォッカ、ジンに見られる濃度と同等)の媒体中に含有される場合、エタノールの可溶化作用に耐えることができることを示している。対照的に、他の3種の市販の徐放性製剤は、特により高いエタノール濃度(20および40%エタノール)において、有意に急速なベラパミル放出の増加を示した。最も高いエタノール濃度(40%)において、市販の徐放比較物は、最初の1から2時間の間に急な薬物放出を示し、その後、溶解率(溶解率100%に達する)のプラトーが続き、全用量が溶解媒体中に一気に放出されたことを示唆している。このような「大量放出」も2時間以内に20%エタノール濃度において観察されたが、これは製剤Bについては遅く、約8時間で発生した。製剤A(溶融押出)については大量放出が観察されなかった。5および40%エタノールにおける製剤Aの溶解プロファイルは、0%エタノール条件と有意差がなかった。20%の溶解プロファイルは、0%条件よりさらに有意に低く、この理由は知られていない。製剤Aの溶解プロファイルはほぼゼロ次のものであり、より高いエタノール濃度下の他の市販の製剤と比較して、条件に関わらず放出において初期急勾配を示さなかった。2時間で、製剤A(全ての媒体)について約30%の溶解が発生した。完全溶解は8時間で発生せず、平均溶解率は64%(20%エタノール媒体)から81%(40%エタノール媒体)の間の範囲であった。
【0272】
エタノールの広範な使用および入手しやすさを考えると、アルコールと処方薬物の間の相互作用は大きな問題である。相互作用は、薬物中毒者に見られることが多い、薬剤を服用しアルコール系飲料を摂取する患者から、放出制御製剤から薬物を抽出するためまたは薬物およびアルコールの両方の薬力学的作用を強化するための製剤を伴う意図的な不正使用にまでわたる場合がある多様な場面で発生し得る。他のこのようなシナリオとしては、その薬物作用がアルコールによりさらに増強されるガンマヒドロキシブチレート(GBH)またはフルニトラゼパム(Rohypnol)の場合と同様に、「デートレイプ」などの非難されるべき目的で薬物をアルコール中に溶解および隠蔽することが挙げられ得る(Schwartzら、2001年)。特により高い薬物濃度を含有し、安全上の問題を引き起こし得るため、放出制御製剤の堅牢さは、不可欠な特徴である。従って、製剤A(溶融押出)などの、エタノール等の溶媒に容易に溶解しない乱用抑止製剤は、「大量放出」の影響を受けやすい他の徐放性製剤に対する明確な利点を有し得る(McCollおよびSellers、2006年)。
【0273】
この研究における溶解法は、溶解性試験期間全体にわたって低pH条件下で実施しなかった。代わりに、溶解性試験を1.1から1.2のpHで2時間で開始し、その後、pHを約6.8に高めた。留意すべき点として、いったん摂取されると、胃環境(pH2.0)の低pHにおける長期間のエタノールの組み合わせは、異なる溶解プロファイルを示す可能性がある。今後の研究で、無傷のままおよび粉砕された溶融押出錠剤を、エタノールを含有する酸性媒体または模擬胃液媒体中で試験することによって、これを扱っても良い。さらに、留意すべき重要な点として、薬物相互作用の原因が溶質と溶媒の間の物理的および化学的相互作用に限定されていない。薬物相互作用には、薬物動態的、薬力学的、遺伝的および免疫的因子が介在し得る(Lynch and Price、21007;Masubichi and Horie, 2007; Vourvahis and Kashuba, 2007)。例えば、ベラパミルの製品モノグラフは、エタノールとの同時投与が結果的に血中アルコール濃度の増加、したがって機能障害の増加、薬物動態的性質の相互作用をもたらし得ると警告している(Covera−HS製品モノグラフ、2006年)。イン・ビボの臨床試験で製剤の完全性を確認することも、臨床的に重要な薬物−アルコール相互作用の可能性を解明する上で有益であると考えられる。
【0274】
このイン・ビトロの溶解試験によって、溶融押出技術を使用するベラパミルの革新的な製剤が、無傷のまま最大で40%のエタノール濃度において試験した場合、その放出プロファイルを変えなかったことが明らかになった。対照的に、他の3種の市販の徐放ベラパミル製剤は、より高いエタノール濃度(20および40%)において大量放出作用を示し、試験の最初の2時間以内に溶解率約100%に達した。本発明は、この革新的な溶融押出製剤が、容易に入手できる濃度のエタノールと無傷のまま併用した場合、イン・ビトロ環境において大量放出に対して抵抗性であり得ることを示唆している。同様に、この製剤については、イン・ビボ環境で薬物−アルコール相互作用が限定的であると予想される。
【0275】
以上の詳細な記載と実施例は単に例証に過ぎず、本発明の範囲を制限するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲とその均等物のみにより定義される。開示された実施形態の各種変更および改変が当業者に自明であり、本発明の一部を構成する。このような変更および改変としては、本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、製剤および/または使用方法に関するものが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、本発明の精神と範囲を逸脱しない限りにおいて実施することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物−アルコール相互作用が低下した溶融押出製剤、
(a)乱用関連薬物またはアルコール中での大量放出の可能性を有する薬物;および
(b)ポリマー、コポリマーまたはこれらの組み合わせを有する基材であって、前記モノマーがセルロースエーテル、セルロースエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチレンオキサイドおよびアルギン酸ナトリウムからなる群から選択される基材
を含み、
前記基材が溶融押出されており;
前記製剤が低下した薬物−アルコール相互作用を有し;
前記製剤がヒト1日3回、2回または1回ヒトに対して経口投与する上で有用となるように作られている溶融押出製剤。
【請求項2】
前記薬物がベラパミル、γ−ヒドロキシ酪酸、フルニトラゼパムまたはオピオイドの塩またはエステルであり、前記オピオイドがアルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、ベンジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、シクラゾシン、デソモルフィン、デキストロモラミド、デゾシン、ジアムプロミド、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアムブテン、酪酸ジオキサフェチル、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアムブテン、エチルモルフィン、エトニタゼン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レバロルファン、レボフェナシルモルファン、レボルファノール、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルフィン、ミロフィン、ナルブルフィン、ナルセイン、ニコモルフィン、ノルピパノン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、パプブレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェナゾシン、フェノモルファン、フェノペリジン、ピミノジン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジンおよびトラマドールならびにこれらの塩、水和物および混合物からなる群から選択され、前記非オピオイド系鎮痛薬がアセトアミノフェン、アスピリン、フェンタニル、イブプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、ナプロキセン、フェナセチン、ピロキシカム、スフェンタニル、スリンダク(sunlindac)、インターフェロン−αならびにこれらに塩、水和物および混合物からなる群から選択される請求項1に記載の溶融押出製剤。
【請求項3】
前記ポリマーまたはコポリマーが、少なくとも一つの律速性の製薬上許容されるヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、アルギン酸ナトリウム、メタクリル酸メチル、メタクリル酸アンモニウム、ブチル化メタクリレート、ビニルアルコール、エチレンオキサイドおよびアクリレートからなる群から選択されるモノマーを有するポリマー、コポリマーまたはそれらの組み合わせを含む請求項1に記載の溶融押出製剤。
【請求項4】
前記ヒドロキシアルキルセルロースがヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースである請求項3に記載の溶融押出製剤。
【請求項5】
前記ヒドロキシアルキルアルキルセルロースがヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項3に記載の溶融押出製剤。
【請求項6】
前記薬物がベラパミルの塩またはエステルである請求項1に記載の溶融押出製剤。
【請求項7】
前記薬物がベラパミルの塩またはエステル1mgから1000mgを含む請求項1に記載の溶融押出製剤。
【請求項8】
前記製剤中の前記ベラパミルの40%未満がUSP溶解法を用いて40%エタノール溶液に溶解する請求項7に記載の溶融押出製剤。
【請求項9】
8時間後における前記製剤から5%または40%エタノール中へのベラパミルの前記溶解プロファイルが、8時間後における前記製剤から0%エタノール中へのベラパミルの前記溶解プロファイルと同等である請求項8に記載の溶融押出製剤。
【請求項10】
前記薬物がベラパミルの塩またはエステル240mgを含む請求項1から9のうちのいずれか1項に記載の溶融押出製剤。
【請求項11】
前記薬物がオピオイドおよび非オピオイド系鎮痛薬であり、さらに前記オピオイドがヒドロコドンであり、前記非オピオイド系鎮痛薬がアセトアミノフェンまたはイブプロフェンである請求項1から9のうちのいずれか1項に記載の溶融押出製剤。
【請求項12】
前記低下したイン・ビトロ薬物アルコール相互作用が、低下したイン・ビボ薬物アルコール相互作用と相関する請求項1から11のうちのいずれか1項に記載の溶融押出製剤。
【請求項13】
前記製剤が溶融押出と次に得られた薬物含有溶融物の直接成形によって製造される請求項1から12のうちのいずれか1項に記載の溶融押出製剤。
【請求項14】
ヒト患者に対して請求項1から13のうちのいずれか1項を経口投与する段階を有する、処置を必要とするヒト患者の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−515735(P2012−515735A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546630(P2011−546630)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056362
【国際公開番号】WO2010/083894
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(502104228)アボット ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー (89)
【Fターム(参考)】