説明

アルミニウム成型品用スペーサー

【課題】 アルミニウム成型品のスペーサーとして、適度のクッション性と滑りにくさとを兼ね備えた構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくともその上下両面が不織布4よりなり、当該上下両面の不織布4の表面積のそれぞれ5〜30%に、摩擦抵抗の大きい樹脂の被覆層7を形成する。
不織布4よりなる袋体5内に芯体6を挿入し、前記袋体5の表面に前記被覆層7を形成したものとすることが好ましい。
【効果】 不織布4が適度の弾性を持ったクッションとして成型品2を支えると共に、過度のゴム弾性を有しないので積み重ねた成型品2が大きく揺れたり、荷崩れしたりすることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミニウム成型品用スペーサーに関するものであって、アルミニウムの成型品を多数積み上げて取り扱う際に、その成型品の間に介在せしめ、成型品同士が直接接触して傷付くのを防止するためのスペーサーに関するものである。なおこの明細書においてアルミニウムと言うのは、アルミニウム合金をも含むものとする。
【背景技術】
【0002】
一般にアルミニウムは押出成型により各種の成型品が製造されるが、成型後に歪みを除去したり機械的強度を増すために熱処理が施され、その際には図1に示すようにパレット1上に多数の棒状の成型品2を併置し、その上に何段にも成型品2の層を積み重ね、この状態で炉内で熱処理が施される。
【0003】
而して前記成型品2を積み重ねる際には、上下の成型品2同士が直接接触して傷付くことがないように、成型品2の間にスペーサー3を介在せしめることが行われている。そしてこのスペーサー3は、成型品2同士を積み重ねる際のクッションとして作用するので、それ自体が適度の柔軟性を有し成型品2を傷付けないものであることが必要であるが、過度に柔軟であったりゴム弾性を有するものでは、炉に出し入れしたり工程間を移送するときに積み重ねた成型品2が揺れるので好ましくない。
【0004】
さらに下の方のスペーサー3は、それより上の成型品2の重量により過度に押し潰されることがないだけの強靭性も必要である。また成型品2とスペーサー3との間に滑りが生じると荷崩れの原因となるので好ましくなく、またスペーサー3は熱処理炉内において加熱されるので耐熱性も必要である。
【0005】
従来この種のスペーサー3として種々のものが提案されているが、それぞれ一長一短であって満足できるものはなかった。特開平5−148529号公報や特開平5−156344号公報に示されたものは、アルミニウムなどの基板の表面にシリコーンゴムを被覆したものであり、クッション性や滑りにくさは十分であるが、ゴム弾性を有するため積み重ねた状態で揺れやすく、移送するときに荷崩れが生じやすい。
【0006】
また実公昭52−31685号公報には金属製芯体の表面を芳香族ポリアミド薄層で覆ったものが記載されているが、このものでは成型品2とスペーサー3とが滑りやすく、搬送するときに荷崩れの原因となりやすい。また実開昭59−113338号公報には耐熱性芳香族ポリアミドの基布に耐熱性樹脂を含浸させたものが示されているが、基布に樹脂を含浸させることによりクッション性が損なわれる。
【特許文献1】特開平5−148529号公報
【特許文献2】特開平5−156344号公報
【特許文献3】実公昭52−31685号公報
【特許文献4】実開昭59−113338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、アルミニウム成型品のスペーサーとして、適度のクッション性と滑りにくさとを兼ね備えた構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
而して本発明は、少なくともその上下両面が不織布よりなり、当該上下両面の不織布の表面積のそれぞれ5〜30%に、摩擦抵抗の大きい樹脂の被覆層を形成したことを特徴とするものである。本発明においては、不織布よりなる袋体内に芯体を挿入し、前記袋体の表面に前記被覆層を形成したものとすることが適当である。
【0009】
本発明における前記不織布としては、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維又はバサルト繊維などの耐熱性繊維が適当であり、これらを単独で又は複合して使用することができる。またこの不織布は、厚さが0.5〜10mmであり、目付が50〜1000g/m2とするのが適当である。
【0010】
また本発明における前記被覆層としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有する樹脂が適当であり、これらを単独で又は混合して使用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不織布が適度の弾性を持ったクッションとして成型品2を支えると共に、過度のゴム弾性を有しないので積み重ねた成型品2が大きく揺れたり、荷崩れしたりすることがない。
【0012】
また不織布の表面に摩擦抵抗の大きい樹脂の被覆層が形成されているので、当該被覆層は不織布の弾性により成型品2に圧接し、その被覆層と成型品2との摩擦抵抗により成型品2の滑りを防止する。特に被覆層が不織布の表面積の一部にのみ形成されているので、その被覆層の部分に摩擦抵抗が集中し、被覆層と成型品2とがより強く密着し、成型品2の滑りを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の実施の形態を図面に従って説明する。図2及び図3は本発明のスペーサー3の一例を示すものであって、不織布4を筒状に縫製してなる袋体5内に、剛直な板状の芯体6を挿入してなるものである。
【0014】
本発明においては芯体6は必ずしも不可欠ではなく、スペーサー3の表面が不織布4よりなるものであれば足りるが、スペーサー3の形態を保持し且つ取り扱いを容易ならしめるために、内部に剛性を有する芯体6を有するものであることが好ましい。
【0015】
芯体6はスペーサー3の形状を保持し得る程度の剛性を有し、少なくとも上下両面が平坦であることが必要であり、アルミニウムや鋼鉄などの金属、耐熱性を有するプラスチックなどよりなる板状のものが適当である。
【0016】
袋体5は不織布4よりなり、その不織布4の両縁を縫合して袋状に縫製している。不織布4の素材は本発明においては特に限定されるものではないが、加熱下において使用する場合には、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維又はバサルト繊維などの耐熱性繊維を使用するのが好ましい。またスペーサー3のクッション性を考慮すれば、不織布4の厚みは0.5〜10mmが適当であり、目付は50〜1000g/m2とするのが適当である。
【0017】
そしてその袋体5の上下両面には、図2に示すように水玉状に樹脂の被覆層7が形成されている。被覆層7を形成する樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの、耐熱性を有し且つ摩擦抵抗の大きい樹脂を、単独で又は混合して使用するのが好ましい。
【0018】
被覆層7は図面においては円形の被覆層7を水玉状に形成しているが、個々の被覆層7は円形に限らず、適宜の形状とすることができる。また図2のように互いに分離した被覆層7をちりばめて形成してもよく、また図4に示すように線状の被覆層7をストライプ状又は格子状に形成することもできる。
【0019】
スペーサー3の表面における被覆層7が占める面積の割合は、スペーサー3の上下両面においてそれぞれ5〜30%とするべきである。5%未満であるとスペーサー3と成型品2との摩擦抵抗が不足し、積み重ねた状態で成型品2が滑って搬送の際に荷崩れを起こす恐れがある。また30%を越えると不織布4が堅くなり、クッション性が損なわれると共に、単位面積当たりの成型品2と被覆層7との圧接力が不足し、両者の密着が損なわれてかえって成型品2が滑りやすいものとなる。
【0020】
この被覆層7の厚みは、0.1〜1.0mmとするのが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.5mmである。被覆層7の厚みが0.1mm未満では成型品2が滑りやすく、また過度に厚いとクッション性が大き過ぎ、成型品2を積み重ねた状態で揺れて荷崩れが生じやすくなるので好ましくない。
【0021】
本発明においては、成型品2の間にスペーサー3を挟んで図1のように積み上げることにより、成型品2に挟まれてスペーサー3の不織布4は圧縮され、その不織布4のクッション性をもって成型品2を支える。
【0022】
このとき図5に示すように被覆層7はそれ自体はほとんど圧縮されることなく、その厚みが不織布4内にめり込み、その分被覆層7の位置の不織布4はより強く圧縮されることとなり、その強く圧縮された不織布4の弾力により被覆層7がより強く成型品2に圧接され、成型品2との間で摩擦抵抗を生じる。
【0023】
被覆層7は不織布4の表面積の5〜30%と限られた面積に形成されているので、成型品2は不織布4全体のクッション性によって支えられると共に、その限られた面積において被覆層7に強く圧接され、大きな摩擦抵抗を生じ、積み重ねた状態の成型品2が滑って荷崩れを生じることがないのである。
【0024】
本発明のスペーサー3は、前記図2や図3に示された構造に限られるものではない。例えば図6に示すものは、芯体6の上下両面に不織布4を貼着し、当該不織布4の表面に被覆層7を形成したものである。
【0025】
また前述のように芯体6はそれ自体不可欠のものではない。芯体6が無い場合には、不織布4は袋体5を構成する必要もなく、図7に示すように、単純に板状の不織布4の両面に被覆層7を形成したものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のスペーサー3は、不織布4及び被覆層7を耐熱性を有する材料で構成することにより、アルミニウム成型品2の熱処理の際におけるスペーサーとして使用するものであるが、成型品2に熱処理を施す際に限らず、広く一般に傷付きやすいアルミニウム成型品2のスペーサーとして使用可能である。またそのときには、不織布4及び被覆層7の耐熱性は必ずしも必要ではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】パレット上にアルミニウムの成型品を積み重ねた状態の斜視図
【図2】スペーサーの一例を示す斜視図
【図3】図2のスペーサーの拡大横断面図
【図4】スペーサーの他の例を示す斜視図
【図5】スペーサーを成型品に挟んだ状態の拡大横断面図
【図6】スペーサーのさらに他の例を示す横断面図
【図7】スペーサーのさらに他の例を示す横断面図
【符号の説明】
【0028】
3 スペーサー
4 不織布
5 袋体
6 芯体
7 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともその上下両面が不織布(4)よりなり、当該上下両面の不織布(4)の表面積のそれぞれ5〜30%に、摩擦抵抗の大きい樹脂の被覆層(7)を形成したことを特徴とする、アルミニウム成型品用スペーサー
【請求項2】
不織布(4)よりなる袋体(5)内に芯体(6)を挿入し、前記袋体(5)の表面に前記被覆層(7)を形成したことを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウム成型品用スペーサー
【請求項3】
前記不織布(4)が、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維又はバサルト繊維などの耐熱性繊維を単独で又は複合して使用した不織布であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルミニウム成型品用スペーサー
【請求項4】
前記不織布(4)が、厚さが0.5〜10mmであり、目付が50〜1000g/m2であることを特徴とする、請求項3に記載のアルミニウム成型品用スペーサー
【請求項5】
前記被覆層(7)が、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂を単独で又は混合した樹脂よりなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルミニウム成型品用スペーサー

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−81774(P2008−81774A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261670(P2006−261670)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000229863)アンビック株式会社 (35)
【Fターム(参考)】