説明

アルミ溶解システム

【課題】アルミ溶解処理の効率性と溶湯浄化の確実性とに優れ、自動化に有利なアルミ溶解システムを提供することを目的とする。
【解決手段】アルミ屑供給フィーダ12を介して原料ホッパ11から供給されるアルミ屑を脱水処理してアルミ溶解原料とする予備処理部13と、脱水されたアルミ溶解原料が上部から供給され溶解してアルミ溶湯とする溶解室14と、溶解室と第1連通部15aを介して連通してアルミ溶湯を加熱装置により加熱及び保持する保持室15と、保持室と第2連通部15bを介して連通してアルミ溶湯に不活性ガスを吹き込むとともに回転子16aにより撹拌して脱ガス処理を行なう脱ガス室16と、脱ガス室と第3連通部17aを介して連通して脱ガス処理されたアルミ溶湯をろ過して清浄化するろ過室17と、ろ過室に設けられた溶湯レベルセンサ16bにより取得される溶湯レベル情報に基づいて、アルミ屑供給フィーダによるアルミ屑の供給量を制御する供給制御装置と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミニウムやアルミニウム合金製の部材を機械加工する際に発生するアルミ屑をアルミ溶解原料として溶解するアルミ溶解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムやアルミニウム合金などの非鉄金属材料の切削屑、ダライ粉を溶解炉で溶解してインゴットに再生利用する技術として、例えば、特許文献1(特開平6−207230号公報)には、溶湯を循環しながら投入されたアルミ切粉を溶解炉で溶解するのに際して、アルミ切粉投入口に循環する溶湯の渦室を設け、該渦室の出口に溶解炉の底に向かって溶湯を流出する導入樋を設けることによって、アルミ切粉と循環溶湯とを短時間に混合して溶融するようにしたアルミ切粉溶解装置が記載されている。
さらに、金属スクラップを再生する際に混入した介在物を除去するようにした溶解装置として、特許文献2(特開平6−346162号公報)には、スクラップ溶解室の下流に複数個のろ過室を持つように区画壁を配し、その底部や側壁部に不活性ガス噴出手段を設けた金属スクラップの溶解装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−207230号公報
【特許文献1】特開平6−346162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の溶解装置を含んだアルミ溶解システムでは、外部から供給される切削加工などにより発生するアルミ屑が溶解室や保持室で溶解処理されてインゴットケースなどに出湯される際に、そのアルミ溶解システム内におけるアルミ溶湯のスムーズな流れや供給バランスが乱され、全体システムにおけるアルミ溶湯の均一な混合や浄化処理が妨げられる場合があり、アルミ溶解処理の効率性と溶湯浄化の確実性に欠けるという課題があった。
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、アルミ屑(アルミ溶解原料となる)を溶解処理するに際して、アルミ溶解処理の効率性と溶湯浄化の確実性とに優れ、自動化に有利なアルミ溶解システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明のアルミ溶解システムは、前記課題を解決するためになされたものであり、
スクリューコンベアなどのアルミ屑供給フィーダを介して原料ホッパから供給されるアルミ屑を脱水処理してアルミ溶解原料とする予備処理部と、
前記予備処理部で脱水されたアルミ溶解原料が上部から供給され溶解してアルミ溶湯とする溶解室と、
前記溶解室と第1連通部を介して連通してアルミ溶湯をガスバーナなどの加熱装置により加熱及び保持する保持室と、
前記保持室と第2連通部を介して連通してアルミ溶湯に不活性ガスを吹き込むとともに回転子により撹拌して脱ガス処理を行なう脱ガス室と、
前記脱ガス室と第3連通部を介して連通して前記脱ガス処理されたアルミ溶湯をろ過して清浄化するろ過室と、
前記ろ過室に設けられた溶湯レベルセンサにより取得される溶湯レベル情報に基づいて、
前記アルミ屑供給フィーダによるアルミ屑の供給量を制御する供給制御装置と、
を有することを特徴とする。
【0006】
(2)本発明のアルミ溶解システムは、前記(1)のアルミ溶解システムにおいて、前記予備処理部においてアルミ屑を回転ドラム内に投入して脱水処理した後、熱交換ジャケットにより予備加熱し、溶解室に供給することを特徴とする。
【0007】
(3)本発明のアルミ溶解システムは、前記(1)又は(2)のアルミ溶解システムにおいて、前記溶湯レベルセンサが、前記ろ過室内のアルミ溶湯と接触して導電性を検知する浸漬型センサ又はアルミ溶湯面をレーザ照射して溶湯レベルの高さ位置情報を取得するレーザセンサであることを特徴とする。
【0008】
(4)本発明のアルミ溶解システムは、前記(1)〜(3)のアルミ溶解システムにおいて、前記溶解室内に未溶解状態で蓄積されたアルミ溶解原料の山の高さを光電管センサにより検知して、アルミ屑を供給する前記アルミ屑供給フィーダの稼働を停止させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アルミ溶湯を貯留する溶解室、保持室、脱ガス室、ろ過室が、連通部を介して一体的に構成されているので、アルミ屑の溶解設備を小型化でき小規模生産に適用が可能となる。
また、これらの各室の溶湯が連通部を通して一体的に貯留されるので、溶湯の脱ガスや清浄化処理などの処理を効率よく行うことができる。
さらに、セラミックフィルタを通して清浄化するろ過室に溶湯レベルセンサを設け、溶湯レベルセンサによって取得された溶湯レベル情報に基づいてアルミ屑供給フィーダからのアルミ屑供給を制御するので、アルミ溶解システムにおけるアルミ溶湯の溶解及び浄化処理を安定的かつ効率的に行なうことができるとともに、アルミ溶湯の流れを適正かつ確実に制御することができる。
また、溶解室内に未溶解状態で蓄積されたアルミ溶解原料の山の高さを光電管センサにより検知して、アルミ屑を供給するアルミ屑供給フィーダの稼働を停止させるようにしたので、溶解炉におけるアルミ溶湯の冷却を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1のアルミ溶解システムの全体を示す平面配置図である。
【図2】実施例1のアルミ溶解システムに適用される前処理工程のフロー図である。
【図3】実施例1のアルミ溶解システムにおける溶解室の模式的説明図である。
【図4】実施例2のアルミ溶解システム全体を示す平面配置図である。
【図5】図4におけるA方向から見た原料ホッパ及び予備処理部の外観を示す正面図である。
【図6】図4におけるB方向から見た溶解室及び予備処理部の外観を示す正面図である。
【図7】図4におけるC方向から見た溶解室及び熱交換ジャケットの外観を示す正面図である。
【図8】実施例2におけるアルミ溶解原料及びアルミ溶湯の流れを示す平面的説明図である。
【図9】図4におけるX−X断面を示す模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態のアルミ溶解システムは、切削加工機械から発生するアルミ切削屑などのアルミ屑を受け入れる原料ホッパと、前記原料ホッパからスクリューコンベアなどのアルミ屑供給フィーダを介して投入されるアルミ屑を、回転ドラム、冷風ファンなどを有して脱水処理する予備処理部と、前記予備処理部で脱水されたアルミ溶解原料が上部から供給され溶解してアルミ溶湯とする溶解室と、前記溶解室と第1連通部を介して連通して溶解したアルミ溶湯をガスバーナなどの加熱装置により加熱及び保持する保持室と、前記保持室と第2連通部を介して連通してアルミ溶湯に不活性ガスを吹き込んで回転子により撹拌して脱ガス処理を行なう脱ガス室と、前記脱ガス処理された前記脱ガス室内のアルミ溶湯をセラミックフィルタを通してろ過して清浄化する溶湯レベルセンサを備えたろ過室と、前記溶湯レベルセンサによって取得される前記ろ過室内の溶湯レベル情報に基づいて前記アルミ屑供給フィーダのアルミ屑の供給量を制御する供給制御装置と、を有するように構成される。
これによって、アルミ溶解システム内に変動が生じても溶湯の流れを適正かつ確実に制御することができ、アルミ屑からアルミ溶湯を製造するアルミ溶解システムにおいて溶湯の浄化処理を効率的に行なうことができる。
【0012】
本実施形態のアルミ溶解システムは、アルミ屑を貯留する原料ホッパ、アルミ溶解用の原料を準備する予備処理部、アルミ溶解原料を溶解する溶解室、保持室、脱ガス室、ろ過室により構成されるアルミ溶解装置である。特に、溶解室、保持室、脱ガス室、ろ過室におけるアルミ溶湯の流路や貯留部が耐火材でライニングされて全体が一体的に構成された鋼鉄製の枠体からなる構造体である。
すなわち、各室を仕切る仕切壁の下端と底部との間にはアルミ溶湯の流路となる連通部が形成されており、各連通部を介して、溶解室、保持室、脱ガス室及びろ過室は一体的に構成され、これらの連通部を介して各室のアルミ溶湯が流動して均一化させることができるようになっている。
また、脱ガス室とろ過室との間に設けられたセラミックフィルタにより、アルミ溶湯中の酸化物等の不純物を除去してろ過室に貯留されるアルミ溶湯の清浄度を高めることができるようになっている。
【0013】
原料ホッパは、アルミ溶解原料となるアルミ屑を受け入れるための容器体であり、じょうご形の底部に貯留されたアルミ屑をスクリューコンベアなどのアルミ屑供給フィーダを介して取り出すようになっている。そのアルミ屑の種類や形態、挿入量などの条件によっては、原料ホッパ内のブリッジやラットホールなどによりシステム自体の性能が左右されることがある。
なお、スクリューコンベアは円筒体内で回転するスクリューによりアルミ屑を押し出しながら搬送する装置であり、定量性に優れているので、自動システムの構築に際してその制御性や安定性を高めることができる。
【0014】
予備処理部は、原料ホッパからスクリューコンベアなどのアルミ屑供給フィーダを介して投入されるアルミ屑を回転ドラム、冷風ファンにより不純物の分離や脱水処理を行なう部分であり、回転ドラムの遠心力によりアルミ屑に付着した異物や水分などを分離するとともに、冷風ファンを介してドラム内に冷風を吹き込んで残余の水分を乾燥させることができる。
また、必要に応じて、予備処理部においてアルミ屑を回転ドラム内に投入して脱水処理した後、熱交換ジャケットにより予備加熱しアルミ溶解原料を所定温度に予熱することでシステム全体の熱効率性を高めることもできる。熱交換ジャケットは、溶解室からの廃熱をアルミ溶解原料供給コンベアの外側のジャケットに導入する公知の設備である。
【0015】
溶解室は、耐火材で内張りされた溶解炉体部分であり、仕切壁及び第1連通部を介して保持室と一体的に構成されている。
この溶解室には、予備処理部で前処理されたアルミ溶解原料が、溶解原料供給フィーダによって上部から所定の供給速度で供給されるとともに、後段の保持室に連通する第1連通部を介してアルミ溶湯の一部が還流されることでアルミ溶解原料を溶解するようになっている。
【0016】
保持室は、略箱型状に形成された耐火物構造体であって、その天井部や側壁部にガスバーナなどの加熱装置を備え、溶解室に連通する第1連通部から供給されるアルミ溶湯を加熱して、このアルミ溶湯を後段の脱ガス室に連通する第2連通部を通して流動させるようになっている。
保持室に備えるガスバーナはガス燃料を空気中の酸素と混合して燃焼させる燃焼装置であり、温度センサからの信号を受けて溶湯温度と雰囲気温度を制御できるようになっている。
【0017】
脱ガス室は、耐火材で内張りされた炉体部を備え、溶解室から供給されるアルミ溶湯を炭化珪素質やアルミナ質などのセラミックス製の回転子により攪拌しながら脱ガス処理を行なう装置である。
なお、この回転子に備えられたパイプを通して、窒素やアルゴンなどの不活性ガスをアルミ溶湯に吹き込むことで、脱ガス処理をさらに促進させることができる。
アルミ屑にはSrやSb等の元素が添加されており、これらの酸化物は溶解後のアルミ溶湯中に多く分散し、溶湯の清浄度を低下させる要因となる。
また、機械加工の際に発生するアルミ切削屑は、その表面積が大きいため、酸化物の他にも酸化皮膜も多量に有している。これら複合酸化物の比重はアルミ溶湯の比重より大きいため、炉底部に堆積しやすく、堆積した酸化物はフラックス処理や脱ガス処理により再びアルミ溶湯中に分散することになる。よって、アルミ切削屑を原料として用いる場合は、アルミ溶湯の脱ガス処理が極めて重要となる。
【0018】
このような脱ガス処理を適正な条件のもとで行なうためには、炉体内に貯留されるアルミ溶湯の貯留量を確実に制御することが必要である。溶解室に連通する第2連通部から供給されて脱ガス室に貯留されるアルミ溶湯の貯留量は、ろ過室に設けられた溶湯レベルセンサにより常時検出することができるようになっている。
溶湯レベルセンサとしては、例えば、保持室上部からのレーザ照射などによりその反射位置を検出する反射型センサや、保持室側壁に設けた接点とアルミ溶湯との導通による電気信号を検出する浸漬型センサなどを適用することができる。
【0019】
ろ過室は、略箱型状の耐火物製炉体を備えて脱ガス室と第3連通部を介して一体的に構成されており、脱ガス処理された脱ガス室内のアルミ溶湯を、ろ過室に備えられたセラミックフィルタを通してろ過して溶湯中の介在物を除去するアルミ溶解システムの構成部分である。このろ過室では、溶湯成分が均一化されるとともに、清浄化されたアルミ溶湯がその炉体側壁の上部に設けられた出湯部からインゴットケースなどに出湯されるようになっている。
【0020】
供給制御装置は、ろ過室に設けられた溶湯レベルセンサを介して脱ガス室内の溶湯レベル情報を取得して、原料ホッパから予備処理部にアルミ屑を供給するアルミ屑供給フィーダの回転速度などを制御するためのICデバイスやコンピュータなどからなる制御機器である。これによって、溶解室、保持室、脱ガス室、ろ過室の四者を一体化したアルミ溶解システムにおいて、ろ過室の溶湯レベルが基準値に対して増減した場合に、溶解原料となるアルミ屑の供給量を的確に制御して、ろ過室からの出湯量を基準範囲内に自動制御させることができ、アルミ溶解処理の効率性と溶湯浄化の確実性とに優れるとともに、自動化に有利なアルミ溶解システムを構築することができる。
【0021】
なお、本実施形態のアルミ溶解システムでは、予備処理部において、アルミ屑供給フィーダを介して投入されるアルミ屑に付着した水分を回転ドラムにより遠心分離するとともに、冷風ファンにより脱水処理を行なうことができる。これによって、回転ドラムの遠心力により水分を飛ばされたアルミ屑に、冷風ファンによってドラム内に冷風を吹き込んで、残余の水分を乾燥させ、併せて予備処理部の後段に設けた熱交換ジャケットによりアルミ溶解原料を予熱することによって、システムの熱効率をさらに高めることができる。
【0022】
本実施形態においては、溶湯レベルセンサが、ろ過室内のアルミ溶湯と接触して導通検知する浸漬型センサもしくはアルミ溶湯面をレーザ照射して溶湯レベルを取得するレーザセンサとすることもできる。これによって、炉の湯漏れを監視するとともに、アルミ溶湯の貯留量が所定レベル以下になってアルミ溶湯全体が冷えて溶解システムの中で凝固することを防止することができる。
【0023】
なお、アルミ溶湯の貯留状態を監視するセンサとして、溶湯レベルセンサの他に溶湯の温度を測定する溶湯温度センサを設けることもできる。これらの溶湯レベルセンサや溶湯温度センサを単独もしくは併用することによって、アルミ溶解システム内のアルミ溶湯をより精密に監視することができる。例えば、このようなセンサ類を用いてガスバーナなどの加熱装置やアルミ屑供給フィーダなどの制御を以下のように行なうことができる。
(v)溶湯レベルの上昇→保持室のバーナを絞る→溶解室での溶解量を減らす。
(w)溶湯レベルの下降→保持室のバーナを開く→溶解室での溶解量を増す。
(x)溶湯温度の上昇→溶解原料供給を増して溶解室の温度を下げる→溶解室の溶湯量が増える。
(y)溶湯温度の下降→溶解原料供給を減らして溶解室の温度を上げる→溶解室の溶湯量は減る。
【0024】
さらに、溶解室内に投入され、未溶解のまま過剰に蓄積されるアルミ溶解原料の山の高さを光電管センサにより検知して、アルミ溶解原料を供給する溶解原料供給フィーダの稼働を停止させるようにしてもよい。これによって、溶解室内に投入されるアルミ溶解原料を適正に制御することができる。すなわち、原料供給が過剰になると溶解室の温度が下がるので、所定量以下の原料が供給されるようにするのである。
【実施例1】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施例1に係るアルミ溶解システムについてさらに具体的に説明する。図1は実施例1のアルミ溶解システムの全体を示す平面配置図であり、図2はアルミ溶解システムに適用される前処理工程のフロー図であり、図3は溶解室の模式的説明図である。
実施例1のアルミ溶解システム10は、図示するように、アルミ屑を備蓄する原料ホッパ11を備えており、原料ホッパ11からスクリューコンベア12によってアルミ屑を予備処理部13に供給して脱水処理などを行ないアルミ溶解原料とされる。アルミ溶解原料は、熱交換ジャケット13bを介して溶解室14に供給されてアルミ溶湯となり、溶解室14に連通した保持室15に送出され、ガスバーナによってアルミ溶湯をさらに加熱及び高温に保持される。
次に、アルミ溶湯は保持室15に連通した脱ガス室16に送出され、回転子16aで撹拌されながら不活性ガスが吹き込まれ溶湯中の水素ガスなどが排除され、さらに、第3連通部17aを介して脱ガス室16に連通したろ過室17に送出されて清浄化されて、後段工程で出湯されるようになっている。
なお、ろ過室17では溶湯レベルセンサ16bが設けられており、溶湯の上面位置を検知することができる。
これらの一連の流れは、図示しないコンピュータからなる供給制御装置などにより制御されている。
【0026】
アルミ溶解システム10における炉体構成部は、溶解室14、保持室15、脱ガス室16,ろ過室17が一体化されてなり、溶解したアルミ溶湯が双方向に流動可能なように、仕切壁Kおよびこれらの仕切壁Kを連通する連通口を有する連通部を介して接続されている。この炉体構成部は、アルミ溶湯の流路や貯留部が、アルミナ系やアルミナシリカ系などの耐火炉材でライニングされ全体が一体的に結合された鋼鉄製枠の構造体である。
溶解室14と保持室15とは第1連通部15aで連通され、アルミ溶解原料を溶解する溶解室14と溶解されたアルミ溶湯を保持する保持室15との間で、アルミ溶湯が双方向で送出できるようになっており、保持室15においてガスバーナなどの加熱源で加熱されたアルミ溶湯が第1連通部15aを介して溶解室14に還流されるようになっている。
また、保持室15で加熱され高温に保持されているアルミ溶湯は、第2連通部15bを介して脱ガス室16へ送出されるようになっており、脱ガス室16とろ過室17とは、第3連通部17aを介して連通している。
なお、第1連通部15aや第2連通部15bは、その上面を塞ぐ天井壁から垂下して炉本体の底壁に達しない仕切壁Kの一部に、1つ又は複数の連通口を穿設したものである。
【0027】
旋盤加工などで発生したアルミ屑は、その溶解処理の前段階として、アルミ屑に付着した水分やゴミなどの付着物の除去を行う前処理工程に送られ、さらにアルミ溶解用の原料として整えるために予備処理される。
図2は、原料ホッパ11及び予備処理部13において、アルミ溶解原料として整えるために施される前処理工程を示す説明図である。図2に示すように、アルミ溶解原料の前処理工程は、以下の(a)〜(c)のフローによりなされる。
【0028】
(a)アルミ屑を原料ホッパ11に受け入れ、スクリューコンベア12の回転により搬送して次工程の予備処理部13に投入する。なお、スクリューコンベア12は、ろ過室17に設けられた溶湯レベルセンサ16bによって取得される溶湯レベルの位置情報に応じてその回転速度を調整し、予備処理部13へのアルミ屑の供給量を制御するようになっている。
(b)脱水室、冷風ファンを備えた予備処理部13に投入されたアルミ屑は、脱水室内の回転ドラムの回転運動により、アルミ屑に付着した油水やゴミなどが分離される。なお、予備処理部13では、従来のバーナ加熱に代えて冷風ファンで通気乾燥するようにしており、省エネ化を図っている。
(c)アルミ屑は、予備処理部13で処理された後アルミ溶解原料となり、熱交換ジャケット13b内を通過して予熱され、溶解室14での溶解処理の熱負荷を軽減してシステム全体としてのエネルギー効率化が図られている。
【0029】
次に、熱交換ジャケット13bで予熱されたアルミ溶解原料は、溶解室14の上部から溶解室14に投入されて、溶解されてアルミ溶湯となる。溶解室14の底床面は、保持室15と溶解室14との間に設けられた第1連通部15aを通して保持室15と連通しており、溶解室14で溶解されたアルミ溶湯は保持室15に送出されるようになっている。
【0030】
第1連通部15aを介して保持室15に送出されたアルミ溶湯は、保持室15の天井や炉壁などに設けた保持バーナと溶解バーナとにより加熱されるとともに、所定の温度で保持されるように制御される。保持室15において加熱、保持されたアルミ溶湯は、次に、第2連通部15bを介して脱ガス室16に送出される。
【0031】
脱ガス室16においては、回転子16aに設けられたパイプを通してアルゴンガスや窒素ガスなどをアルミ溶湯に吹き込むとともに、セラミック製の攪拌羽根などを備えた回転子16aを用いて攪拌して、アルミ溶湯中の水素ガスなどを排出する脱ガス処理を行う。このとき、ろ過室17炉体内のアルミ溶湯の湯面である溶湯レベルは、天井側に設けられた溶湯レベルセンサ16bにより検出されるようになっている。
また、この溶湯レベルセンサ16bの検出値(溶湯レベルの高さ位置情報)を供給制御装置が取得し、溶湯レベルが所定値になるようにスクリューコンベア12などを制御することによって、アルミ溶解システム10を効率的かつ安定的に稼働させることができる。
【0032】
なお、図3に示すように、予備処理部13からアルミ溶解原料が投入される溶解室14上部の所定位置には、発光部14aとその受光部14bとからなる光電管センサが配置されており、溶解室14内で蓄積され未溶解のままのアルミ溶解原料の山の高さが発光部14aと受光部14bのラインに達したときにこれを検知することができる。また、溶解室14の底下部には磁気撹拌装置14cが設けられており、溶解されたアルミ溶湯の均一化を図るための撹拌をするようになっている。
【0033】
このようにして、ろ過室17に設けられたセラミックフィルタでろ過処理されたアルミ溶湯は、その炉体上部に設けられた出湯部17bからインゴットケースなどに出湯される。アルミ溶湯はインゴットケース内で冷却固化され、所定形状のアルミインゴットが作成され再利用される。
【実施例2】
【0034】
図4は、実施例2のアルミ溶解システム全体を示す平面配置図であり、図5は、図4におけるA方向から見た原料ホッパ及び予備処理部の外観を示す正面図であり、図6は、図4におけるB方向から見た溶解室及び予備処理部の外観を示す正面図であり、図7は、図4におけるC方向から見た溶解室及び熱交換ジャケットの外観を示す正面図であり、図8はアルミ溶解原料及びアルミ溶湯の流れを示す平面的説明図であり、図9は、図4におけるX−X断面を示す模式的説明図である。
実施例2のアルミ溶解システム20は、図4〜図9に示すように、アルミ屑が投入される移動式の原料ホッパ21と、原料ホッパ21からスクリュー押出装置22によって供給されるアルミ屑の脱水処理などを行なうための回転ドラム式の脱水機23aを備えた予備処理部23と、熱交換ジャケット23bで予備加熱されて供給されるアルミ溶解原料を溶解するための溶解室24と、メインバーナとしての溶解バーナ25a及びサブバーナとしての保持バーナ25bをその天井部に備えた保持室25と、アルミ溶湯を撹拌するための回転子26a及び溶湯温度センサ26cを備えた脱ガス室26と、第3連通部20cを介して脱ガス室26と連通する溶湯レベルセンサ26bを備えたろ過室27と、図示しないコンピュータからなる供給制御装置などにより構成されている。
【0035】
アルミ溶解システム20の主たる炉体構成部は、溶解室24、保持室25、脱ガス室26,ろ過室27からなり、溶解したアルミ溶湯の流路が形成されるように各連通部(溶解室と保持室とを連通する第1連通部20a、保持室25と脱ガス室26とを連通する第2連通部20b、脱ガス室26とろ過室27とを連通する第3連通部20c)を介して、アルミ溶湯が双方向に流動できるように一体的に構成されている。
【0036】
この炉体構成部は、実施例1と同様であるが、ろ過室27に備えられたセラミックフィルタを通過して清浄化されたアルミ溶湯は、アルミ溶湯の出湯を制御する出湯制御弁28を備えた出湯部27aに導入されるようになっている。したがって昇降ストッパー型の出湯制御弁28を引き上げて開放することによって、ろ過室27内のアルミ溶湯が出湯制御弁28直下のインゴットケース29に供給されるようになっている。
【0037】
なお、ろ過室27に備えられた溶湯レベルセンサ26bや脱ガス室26に備えられた溶湯温度センサ26cは図示しない供給制御装置に接続されており、アルミ溶湯の制御プログラムがロードされた供給制御装置は、これらセンサ類から溶湯レベルや溶湯温度の情報を取得して、アルミ屑供給フィーダ22などの操作量を自動制御して、需給バランスを維持しながら溶解炉内のアルミ溶湯が適正状態となるように保持するようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本発明のアルミ溶解システムは、アルミ溶湯を貯留する溶解室、保持室、脱ガス室、ろ過室が、連通部を介して一体的に構成されているので、アルミ屑の溶解設備を小型化でき小規模生産に適用が可能となる。
また、これらの各室の溶湯が連通部を通して一体的に貯留されるので、溶湯の脱ガスや清浄化処理などの処理を効率よく行うことができる。
さらに、セラミックフィルタを通過して清浄化されたろ過室に溶湯レベルセンサを設け、溶湯レベルセンサによって取得された溶湯レベル情報に基づいてアルミ屑供給フィーダからのアルミ屑供給を制御するので、アルミ溶解システムにおけるアルミ溶湯の溶解及び浄化処理を安定的かつ効率的に行なうことができるとともに、アルミ溶湯の流れを適正かつ確実に制御することができる。
また、溶解室内に未溶解状態で蓄積されたアルミ溶解原料の山の高さを光電管センサにより検知して、アルミ屑を供給するアルミ屑供給フィーダの稼働を停止させるようにしたので、溶解炉におけるアルミ溶湯の冷却を防止することができ、産業上の利用可能性が極めて高い。
【符号の説明】
【0039】
10 実施例1のアルミ溶解システム
11 原料ホッパ
12 スクリューコンベア(アルミ屑供給フィーダ)
13 予備処理部
13b 熱交換ジャケット
14 溶解室
14a 発光部(光電管センサ)
14b 受光部(光電管センサ)
14c 磁気撹拌装置
15 保持室
15a 第1連通部
15b 第2連通部
16 脱ガス室
16a 回転子
16b 溶湯レベルセンサ
17 ろ過室
17a 第3連通部
17b 出湯部
20 実施例2のアルミ溶解システム
20a 第1連通部
20b 第2連通部
20c 第3連通部
21 原料ホッパ
22 スクリュー押出装置(アルミ屑供給フィーダ)
23 予備処理部
23a 脱水機
23b 熱交換ジャケット
24 溶解室
25 保持室
25a 溶解バーナ
25b 保持バーナ
26 脱ガス室
26a 回転子
26b 溶湯レベルセンサ
26c 溶湯温度センサ
27 ろ過室
27a 出湯部
28 出湯制御弁
29 インゴットケース
K 仕切壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューコンベアなどのアルミ屑供給フィーダを介して原料ホッパから供給されるアルミ屑を脱水処理してアルミ溶解原料とする予備処理部と、
前記予備処理部で脱水されたアルミ溶解原料が上部から供給され溶解してアルミ溶湯とする溶解室と、
前記溶解室と第1連通部を介して連通してアルミ溶湯をガスバーナなどの加熱装置により加熱及び保持する保持室と、
前記保持室と第2連通部を介して連通してアルミ溶湯に不活性ガスを吹き込むとともに回転子により撹拌して脱ガス処理を行なう脱ガス室と、
前記脱ガス室と第3連通部を介して連通して前記脱ガス処理されたアルミ溶湯をろ過して清浄化するろ過室と、
前記ろ過室に設けられた溶湯レベルセンサにより取得される溶湯レベル情報に基づいて、
前記アルミ屑供給フィーダによるアルミ屑の供給量を制御する供給制御装置と、
を有することを特徴とするアルミ溶解システム。
【請求項2】
前記予備処理部においてアルミ屑を回転ドラム内に投入して脱水処理した後、熱交換ジャケットにより予備加熱し、溶解室に供給することを特徴とする請求項1に記載のアルミ溶解システム。
【請求項3】
前記溶湯レベルセンサが、前記ろ過室内のアルミ溶湯と接触して導電性を検知する浸漬型センサ又はアルミ溶湯面をレーザ照射して溶湯レベルの高さ位置情報を取得するレーザセンサであることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミ溶解システム。
【請求項4】
前記溶解室内に未溶解状態で蓄積されたアルミ溶解原料の山の高さを光電管センサにより検知して、アルミ屑を供給する前記アルミ屑供給フィーダの稼働を停止させるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルミ溶解システム。

【図2】
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【図9】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−60629(P2013−60629A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199784(P2011−199784)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(502209512)有限会社渡瀬軽合金 (2)
【出願人】(592040882)浜松ヒートテック株式会社 (7)
【出願人】(511223420)株式会社エスユー技研 (1)
【Fターム(参考)】