説明

アレイ基板の製造方法及びアレイ基板並びにスクリーンの製造方法及びスクリーン

【課題】複数の微小な凸部または凹部が並べられて構成されるアレイ基板を、型部材を用いて転写成形する際に、基材への複雑な前工程をおこなうことなく、原材料となる基材と、型部材との間に生じる気体がアレイ基板などに転写されることなくアレイ基板などを形成できる方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性を有するフイルム状の基板に対し、当該基板厚の0.25倍から2倍の孔径、および当該孔径の5倍から40倍のピッチを有して複数の孔を形成する孔形成工程と、複数の凸部または凹部がアレイ状に形成された型部材を加熱し、複数の孔が形成された基板の押圧をすることによって、基板に複数の凸部または凹部の転写をする転写工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ基板の製造方法及びアレイ基板並びにスクリーンの製造方法及びスクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の微小な凸部または凹部が並べられて構成されるアレイ基板が、プロジェクターなどの投射型表示装置から射出された投射光を反射させて、画像を表示するスクリーンに適用されてきた。これらアレイ基板は、樹脂等を原材料とし形成する方法として、インプリント成形法(以下、「転写成形法」と称する。)を用いることができ、投射光を反射させて画像を表示するスクリーンを容易に形成することができることが知られている。
【0003】
転写成形法を用いるアレイ基板の製造方法においては、アレイ基板の原材料となる樹脂等を、アレイ基板の形状となる型部材を用いて転写成形する際に、原材料と、型部材との間に気体が溜まることがあり、転写成形によって形成されるアレイ基板に気泡の形状が転写し、形成される課題があった。
【0004】
特許文献1では、熱可塑性樹脂からなる素材板(基板)の表面に予め凹凸微細構造を形成し、凹凸微細構造が形成されたものを使用することで、プレス型と素材板との間に存在する気体を前記凹凸微細構造の凹部を経て除去することを特徴とする樹脂板のプレス方法(転写成形法)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−353777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基材となる素材板に凹凸微細構造を予め形成するために、その微細構造を押出し成形する工程と、成形に用いる型部材が必要となる課題があった。また、素材が薄いフイルム状基材の場合、予め凹凸微細構造を押出し成形で形成する事が困難であり、熱プレスなどによって凹凸形状を形成する前工程の追加を要する課題があった。特許文献1では、前述する課題については触れられていない。
【0007】
このため型部材を用いてアレイ基板などを転写成形する際に、基材への複雑な前工程をおこなうことなく、原材料となる基材と、型部材との間に生じる気体がアレイ基板などに転写されることなくアレイ基板などを形成できる方法が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
(適用例1)本適用例に係るアレイ基板の製造方法は、熱可塑性を有するフイルム状の基板に対し、当該基板厚の0.25倍から2倍の孔径、および当該孔径の5倍から40倍のピッチを有して複数の孔を形成する孔形成工程と、複数の凸部または凹部がアレイ状に形成された型部材を加熱し、複数の孔が形成された基板を押圧することによって、基板に複数の凸部または凹部を転写する転写工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このようなアレイ基板の製造方法によれば、熱可塑性を有するフイルム状の基板となる基材に対し、孔形成工程によって基材に孔を形成することで、転写工程を行う際に当該孔によって型部材と、基材との間に生じる気体等を排出し、気体等が溜まることを抑制できる。従って、形成されるアレイ基板に、転写工程で生じる気体等からなる気泡の形状が転写されることを抑制できる。
【0011】
また、孔形成工程で形成される孔の孔径は、凸部または凹部が形成される基材の厚みの0.25倍から2倍とすることで、転写工程で生じる気体等を排出することができ、形成された孔を転写工程によって、基材が変形することで閉塞することができる。さらに、形成される孔の間隔は、孔径の5倍から40倍の間隔とすることで、転写工程で生じる気体等を排出することができ、形成された孔を転写工程によって、基材が変形することで閉塞することができる。
【0012】
(適用例2)上記適用例に係るアレイ基板の製造方法において、孔形成工程は、鋭頭を備える棒状部材を用い、少なくても棒状部材を加熱して基板を押圧することによって、孔を形成すること、転写工程は、孔が形成された基板に予め熱を加え、基板を押圧することによって、基板に複数の凸部または凹部を転写することが好ましい。
【0013】
このようなアレイ基板の製造方法によれば、フイルム状の基板となる基材に孔を形成する孔形成工程において、鋭頭を備える棒状体を加熱し、基板を押圧することで、形成した孔に基材のバリが生じることを抑制できる。また、型部材に相対する基材面から押圧することで、当該基材面にバリが生じることを抑制できることから、転写工程において型部材と、基材との密着性を高めることができる。また、転写工程において、基材に予め熱を加えることによって、基材に含まれる余分な添加物を蒸散させることができ、基材を押圧し複数の凸部または凹部を転写する際に添加物から生じる気泡の抑制をすることができる。
【0014】
(適用例3)本適用例に係るアレイ基板は、上述したアレイ基板の製造方法を用いて製造されたことが好ましい。
【0015】
このようなアレイ基板によれば、アレイ基板を構成する凸部または凹部に転写工程で生じる気体等が気泡となって形成されることが抑制されるため、均一な形状の凸部または凹部が形成され整列したアレイ基板を得ることができる。
【0016】
(適用例4)本適用例に係るスクリーンの製造方法は、上述したアレイ基板に形成された複数の凸部または凹部に対し、投射光を反射させる反射膜を形成する反射膜形成工程を備えることを特徴とする。
【0017】
このようなスクリーンの製造方法によれば、投射光を反射するスクリーンにおいて、上述したアレイ基板をスクリーン基材とすることで、上述の転写工程によって形成された凸部または凹部に気泡等が転写し、形成されることが抑制されているため、反射膜が形成される凸部または凹部の形状を均一とすることができる。よって、気泡によって不必要な凹部が基材に形成されないため、投射光が入射し、反射膜の必要とする領域にあわせて反射膜を形成することができる。
【0018】
(適用例5)本適用例に係るスクリーンは、上述したアレイ基板の製造方法を用いて形成されたことが好ましい。
【0019】
このようなスクリーンによれば、気泡によって不必要な凹部が基材に形成されないため、反射膜を投射光の入射にあわせて形成することができる。従って、投射光が所望の方向以外に反射することを抑制した観察しやすいスクリーンが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係る基材の孔形成工程を示す模式図。
【図2】第1実施形態に係る基材の転写工程を示す模式図。
【図3】第1実施形態に係る基材の転写工程を示す模式図。
【図4】第1実施形態に係るアレイ基板の製造方法によって形成されたアレイ基材を示す模式図。
【図5】第2実施形態に係るスクリーンの設置例を示す模式図。
【図6】第2実施形態に係るスクリーン基材の表面を示す模式図。
【図7】第2実施形態に係るスクリーン基材の反射膜形成工程を示す模式図。
【図8】第2実施形態に係るスクリーン表面の一部を模式的に示す概断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際の構成要素とは適宜に異ならせて記載をしている。
【0022】
(第1実施形態)
図1から図4を参照して本実施形態のアレイ基板の製造方法と、当該製造方法を用いて製造されたアレイ基板について説明をする。図1は、アレイ基板となる基材の孔形成工程を示す模式図である。図2および図3は、基材の転写工程を示す模式図である。また、図4は、本実施形態のアレイ基板の製造方法によって形成されたアレイ基板を示す模式図である。
【0023】
本実施形態のアレイ基板の製造方法の工程は、工程順に孔形成工程100と、転写工程200とを備えている。
【0024】
図1に示すように、孔形成工程は、アレイ基板1のとなるフイルム状のアレイ基材10に孔111を形成する工程である。図1(a)は、孔形成工程によって孔111が形成されたアレイ基材10を平面視した模式図である。また、図1(b)は、当該アレイ基材10の図1(a)に示すA−A’間を断面視した模式図である。孔形成工程は、本実施形態ではニードル(針)110を加熱、またはアレイ基材10と、ニードル110との両方を加熱し、ニードル110によってアレイ基材10を押圧し、複数の孔111を形成する。
【0025】
なお、発明者のおこなった実験によって、形成される孔111の孔径Dは、アレイ基材10の厚みtの0.25倍から4倍とし、形成される孔111と、孔111との間隔Pは、孔径Dの5倍から10倍とすることで、後述する転写工程をおこなう際に、アレイ基材10と、アレイ基板1の型となる型部材220との間に生じる気体30を抜き出すことができることを至らししめた。また、本実施形態のアレイ基材10は厚さ0.2mmの塩化ビニルフイルムを用い、孔径Dは0.1mmとし、間隔Pは2mmとして形成した。
【0026】
図2に示す転写工程は、アレイ基材10を変形させる工程である。転写工程は、基材給材予熱工程と、押圧工程と、基材除材工程とを有し構成されている。本実施形態では、押圧工程によって、アレイ基材10を変形させ、複数の凹部1cをアレイ基材10の第1基材面10aに形成する。また、押圧工程は、熱を加えたアレイ基材10に、型部材220を加熱しながら押し付ける転写装置として、プレス転写装置210を用いて実施される。
【0027】
図2(a)は、プレス転写装置210の構成およびアレイ基材10を示す概断面である。図2(b)は、基材給材予熱工程によって、アレイ基材10がプレス転写装置210に給材され、アレイ基材10を予熱している状態を示す模式図である。図3(c)および図3(d)は、プレス転写装置210が動作し、アレイ基材10を成形している状態を示す概断面図である。図2を参照して押圧工程を説明する。
【0028】
プレス転写装置210は、形成させる形状とは逆形状に形成された型部材220を加熱しながら、アレイ基材10を上下方向から高圧力で押し付け、アレイ基材10を型部材220の形状に沿わせて熱変形させて、必要な形状を転写し形成させる装置である。
【0029】
図2(a)に示すように、プレス転写装置210は、アレイ基材10の下側に、下側型ベース211と、下側型ベース211の上部には、凸状に形成された凸部221を有する型部材220とを備えて構成される。また、プレス転写装置210は、アレイ基材10の上側に、上側型ベース212を備えて構成される。
【0030】
上側型ベース212のアレイ基材10側は、平面を有して形成されている。また、プレス転写装置210は、上側型ベース212と、アレイ基材10との間に、高圧力で押し付ける際にアレイ基材10に圧力を均等に加えるための緩衝部材213を備えている。
【0031】
緩衝部材213として本実施形態では、シリコーンゴム213a、またはアラミド繊維からなるフェルト部材213b、およびアレイ基材10に接する面にテフロン(登録商標)樹脂製シート213cを組み合わせて用いている。本実施形態では、特別な記載がない限り緩衝部材213はシリコーンゴム213aを用いていることとして説明をする。
【0032】
押圧工程は、先ず、プレス転写装置210に対して、前述の孔形成工程で孔111を形成したアレイ基材10を給材する。アレイ基材10の給材は、図2(b)に示すように、アレイ基材10の第1基材面10aが型部材220に相対し、第2基材面10bが緩衝部材213に相対するように給材する。次に、加熱されている下側型ベース211と、上側型ベース212とによって、給材したアレイ基材10を予熱し、アレイ基材10の軟化と、アレイ基材10に含有される余分な添加物を蒸散させる。その後に、固定されている下側型ベース211に向かい上側型ベース212が移動することで、アレイ基材10を押し付け加圧する。
【0033】
アレイ基材10を押し付け加圧する際に、図3(c)に示すように、アレイ基材10と、型部材220との間に生じる気体30は、アレイ基材10に形成した孔111から第2基材面10b側に抜け出る。ここで、アレイ基材10と、型部材220との間に生じる気体30は、アレイ基材10に熱を加えることで、当該アレイ基材10に含まれる添加物などが蒸散することによって生じるガスやアレイ基材10と、型部材220との空間に存在する空気などである。
【0034】
また、アレイ基材10は給材されてから180秒以上予熱を与える。アレイ基材10を加熱する温度は、180℃以上とすることで、アレイ基材10に形成した孔111をプレス転写装置210による押し付け加圧によって閉塞することができる。さらに、200℃以下とすることで、アレイ基材10に含まれる添加物が蒸散を抑制し、アレイ基材10の品質を保った状態で押圧工程をおこなうことができる。
【0035】
ここで、押し付け加圧する際、緩衝部材213として用いられるシリコーンゴム213aは通気性に優れているため型部材220と、アレイ基材10との間から抜け出た気体30を透過させて排出すことができる。また、シリコーンゴム213aは加熱によって柔らかくなったアレイ基材10と密着しない特性を備えている。
【0036】
一方、緩衝部材213として用いられるフェルト部材213b、およびテフロン樹脂製シート213cは、通気性を備えているため型部材220と、アレイ基材10から抜け出た気体30は、テフロン樹脂製シート213cを透過し、フェルト部材213bから気体30を排出することができる。また、テフロン樹脂製シート213cは加熱によって柔らかくなったアレイ基材10と密着しない特性、およびアレイ基材10から蒸散した添加物に対する耐久性を備える。
【0037】
図3(d)に示すように、アレイ基材10は、プレス転写装置210によって下側型ベース211と、上側型ベース212とに押し付けることによって、アレイ基材10を変形し、アレイ基材10に形成した孔111から、型部材220と、アレイ基材10との間に生じた気体30が抜け、形成されるアレイ基板1に気泡が転写されることを抑制する。これら押圧工程によって、アレイ基材10の第1基材面10aは、型部材220に形成された凸部221に沿って変形して型部材220の形状が転写される。図示は省略するが、押圧工程が完了したアレイ基材10は、除材工程によってプレス転写装置210から除材されて次工程へ送られる。
【0038】
図4は、上述したアレイ基板製造方法を用いて形成されたアレイ基板1を示す模式図である。アレイ基板1は、第1面基板面1aに形成させる凹部1cはその仕様によって、凸形状の凸部2cを形成させる場合もある。この場合、型部材220は凸部221に代えて凹部222を備え、上述の転写工程における押圧工程によって、アレイ基材10の第1基材面10aに凸形状の凸部2cを形成する。
【0039】
図4(a)に示すアレイ基板1は、凸部221が備えられた型部材220を用いて形成されたアレイ基板1である。当該アレイ基板1は、型部材220に備えられた凸部221の形状に沿って凹状の凹部1cが形成される。また、図4(b)に示すアレイ基板1は、凹部が備えられた型部材220(不図示)を用いて形成されたアレイ基板1である。当該アレイ基板1は、型部材220に備えられた凹部の形状に沿って凸状の凸部2cが形成される。
【0040】
上述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
このようなアレイ基板1の製造方法によれば、凸部2cまたは凹部1cを形成させるアレイ基材10に対し、孔111を形成することで、凸部2cおよび凹部1cを形成する転写工程によって、型部材220と、アレイ基材10との間に生じる気体30、およびアレイ基材10が加熱されることによって生じるガス等を排出することができる。また、形成される孔111の孔径Dを基材の厚みtの0.25倍から2倍とし、形成される孔111の間隔Pを孔径Dの5倍から40倍とすることで、孔111は、アレイ基材10に型部材220を押し付けて変形させる際に閉塞されることができる。
【0041】
このことによって、加熱されたアレイ基材10と、型部材220とが空間無く密着し、型部材220に沿ってアレイ基材10を変形させることができる。従って、気泡等がアレイ基板1に転写されることを抑制することができるアレイ基板1の製造方法が実現することができる。
【0042】
このようなアレイ基板1の製造方法によれば、アレイ基材10に孔111を形成する孔形成工程において、鋭頭を備えるニードル110等を加熱し、アレイ基材10を押圧することで、押圧し形成された孔111の周囲にアレイ基材10のバリが生じることを抑制することができる。また、転写工程において、基材に予め熱を加えることによって、基材に含まれる余分な添加物を蒸散させることができ、基材を押圧し複数の凸部または凹部を転写する際に、添加物から生じる気泡の抑制をすることができる。従って、アレイ基材10と、型部材220との密着性を高め、型部材220に沿ってアレイ基材10を変形し、気泡がアレイ基板1に転写されることを抑制することができるアレイ基板1の製造方法が実現できる。
【0043】
このようなアレイ基板1によれば、アレイ状に形成された凹部1cまたは凸部2cの形成時に気泡等が転写し形成されることが抑制されているため、凹部1cまたは凸部2cを透過する光束を所望の集光または散光させるレンズとして用いることができる。従って、当該アレイ基板1をレンズアレイとして実施し、液晶表示パネル等に搭載されることで、液晶表示パネルにおける表示画面を明るくすることができる。
【0044】
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態で説明をしたアレイ基板の製造方法を用いて製造する投射光を反射する反射膜を備えるスクリーンの製造方法である。
【0045】
図5は、本実施形態に係るスクリーンの設置例を示す模式図である。図6は、第1実施形態で説明をしたアレイ基板の製造方法を用いて製造するスクリーン基材の表面を示す模式図である。図7は、本実施形態に係るスクリーンの反射膜形成工程を示す模式図である。また、図8は、本実施形態に係るスクリーン表面の一部を模式的に示す概断面図である。
【0046】
図5から図8を用いて本実施形態のスクリーン製造方法と、その製造方法を用いて製造されたスクリーンについて説明をする。図5から図8までの図面では、床FLに対して垂直方向をY方向、スクリーン50の第1基材面51aに平行で、Y方向に直行する方向をX方向、Y方向及びX方向に直交する方向をZ方向としてXYZ直交座標系で記載する。また、重力の作用する方向を基準として、落下作用となる方向を下方向、逆方向を上方向とする。
【0047】
本実施形態のスクリーン50は、図5に示すように、スクリーン50近傍の床FL等に設置したプロジェクターPJなどの投射型表示装置から射出された投射光Lpをスクリーン基材面51aで反射させて、反射した投射光Lpを観察するすスクリーン50である。
【0048】
スクリーン基材51は、図6に示すように、スクリーン基材51の表面となる第1基材面51aには凹部51cが略全領域に形成されている。凹部51cは、X方向において、スクリーン基材51のX方向の中心線Yc上の所定の位置を中心とする円弧状に配列し、Y方向において、この中心を同心とする同心円状に配列するスクリーン基材51として、第1実施形態の転写工程によって形成される。なお、図6はスクリーン1枚分のスクリーン基材51を見た図である。
【0049】
本実施形態のスクリーン製造方法の工程は、反射膜形成工程を備えている。なお、第1実施形態で説明をしたアレイ基板1の製造方法を用いて、本実施形態のスクリーン基材51が形成される。また、本実施形態のスクリーンの製造方法は、反射膜形成工程からスクリーン製造方法に係る工程をおこなう。
【0050】
反射膜形成工程は、凹部51cの内面51dに選択的に投射光LPを反射する反射膜51eを形成する工程である。なお、本実施形態の反射膜形成工程は、アルミニウムからなる反射膜51eを蒸着によって形成する蒸着工程を含んで構成されている。
【0051】
図7に示す蒸着工程は、スクリーン基材51を当該スクリーン基材51の第1基材面51aが蒸着源Sの上方に相対して、傾斜するように蒸着装置(不図示)に取り付けられる。なお、スクリーン基材51の第1基材面51aは、図5で示したスクリーン50のY軸方向で示す上側が下側に比べて、蒸着源Sから離れた状態に取り付けられる。また、蒸着源Sは、図6に示した中心線Yc上で、スクリーン基材51の下側に設置される。
【0052】
図7に戻り、蒸着工程の詳細を説明する。蒸着工程は、反射膜51eを形成する際、スクリーン基材51の第1基材面51aに対して、斜めに投射光Lpを射出するプロジェクターPJの位置を仮想光源位置Pとして予定しておく。ここで、蒸着源Sの配置は、第1基材面51aに形成された凹部51cに対する蒸着材料の角度θsが、第1基材面51aの各凹部51cに対する仮想光源Pからの投射光Lp入射角度θpと等しいか、それよりも角度が小さくなるように蒸着源Sを配置して、投射光Lpの入射方向から各凹部51cに蒸着材料を蒸着させる。
【0053】
前述の蒸着工程をおこなうことで、凹部51cの内面51dに投射光Lpが投射される領域に沿って、反射膜51eが形成される。なお、このように斜め方向から蒸着をおこない、反射膜51eを選択的に形成することで、蒸着源Sを中心にして、スクリーン基材51の第1基材面51aの各凹部51cに放射状で部分的に反射膜51eが形成される。本実施形態では、反射膜51eの形成に蒸着法を用いたが、スプレーコート法や印刷法によって反射膜51eを形成することができる。
【0054】
図8(a)は、上述したスクリーンの製造方法によって形成したスクリーン50の一部を模式的に示す概断面図である。形成されたスクリーン50は、プロジェクターPJから投射された投射光Lpをスクリーン50に形成された凹部51cの反射膜51eによって、観察者側(Z軸方向)に反射される。また、スクリーン50に、室内灯等からの不要な外光60が入射した場合は、反射膜51e以外の凹部51cに吸収されるため、観察者側には反射されることを抑制する。
【0055】
また図8(b)は、本実施形態に係るスクリーン50の形成される凹部51cを凸部52cに替えたスクリーン50の一部を模式的に示す概断面図である。図8(b)に示すスクリーン50は、スクリーン基材51の第1基材面51aに形成された凹部51cに替えて、凸状の凸部52cが形成されたアレイ基板1をスクリーン基材51として用いたスクリーン50である。スクリーン基材51の第1基材面51aに複数の凸部52cが形成され、その凸部52cへ選択的に反射膜52eが形成されている点が前述スクリーン50と異なっている。
【0056】
なお、反射膜52eを形成する反射膜形成工程は、前述の凹部51cを備えるスクリーン50の形成と同様の工程および方法でおこなわれる。
【0057】
反射膜52eを形成する反射膜形成工程は、第1実施形態の転写工程の後に行われる。反射膜形成工程は、前述の凹部51cを備えたスクリーン基材51と同様に、蒸着工程301によって、スクリーン基材51の斜め方向から蒸着されて、凸部52cの外面52dに選択的に反射膜52eを形成させる。
【0058】
上述した第2実施形態によれば、以下の効果が得られる。
このようなスクリーン50の製造方法によれば、第1実施形態で述べたアレイ基板1の製造方法を用いることで、投射光LPを反射する反射膜51eを形成させる凸部52cまたは凹部51cを転写成形法によって容易に形成できる。このことによって、スクリーン基材51に形成される凸部52cまたは凹部51cは気泡等が転写し形成されることが抑制されるため、1枚のスクリーン基材51が不良品となることを低減することができる。従って、スクリーン50を製造する歩留まりが高まり低コストで高品質のスクリーンを形成することができる。
【0059】
このようなスクリーン50によれば、転写工程によってスクリーン基材51に形成される凸部52cまたは凹部51cに気泡等が転写し形成されることが抑制される。これによって、反射膜52e(51e)が形成される凸部52cまたは凹部51cの形状が均一になり、投写光LPの入射方向からの光を反射する反射膜51eを投写光LPが入射する領域にあわせて形成されている。従って、投写光LPが所望の方向以外に反射することを抑制した観察しやすいスクリーンを実現できる。
【0060】
なお、上述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や改良等を加えて実施することが可能である。変形例を以下に述べる。
【0061】
(変形例1)第1実施形態のアレイ基板1は、半円状の凸部2cまたは凹部1cが整列して形成されている。しかし、これに限定されずに多角形状の凸部2cまたは凹部1cを整列して形成しても良い。
【0062】
(変形例2)第2実施形態のスクリーン50は、半円状の凸部52cまたは凹部51cが整列し形成されたアレイ基板1を用いている。しかし、これに限定されずに多角形状の凸部52cまたは凹部51cを整列して形成されたアレイ基板を用いて、反射膜を形成しスクリーンを構成しても良い。
【符号の説明】
【0063】
1…アレイ基板、1a…第1面基板面、1c…アレイ基板の凹部、2c…アレイ基板の凸部、10…アレイ基材、10a…第1基材面、10b…第2基材面、30…気体、50…スクリーン、51…スクリーン基材、51a…スクリーンの第1基材面、51c…スクリーンの凹部、51d…内面、51e…凹部の反射膜、52c…スクリーンの凸部、52d…外面、52e…凸部の反射膜、60…外光、110…ニードル、111…孔、210…プレス転写装置、211…下側型ベース、212…上側型ベース、213…緩衝部材、213a…シリコーンゴム、213b…フェルト部材、213c…テフロン樹脂製シート、220…型部材、221…型部材の凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性を有するフイルム状の基板に対し、
当該基板厚の0.25倍から2倍の孔径、および当該孔径の5倍から40倍のピッチを有して複数の孔を形成する孔形成工程と、
複数の凸部または凹部がアレイ状に形成された型部材を加熱し、前記複数の孔が形成された前記基板を押圧することによって、前記基板に前記複数の凸部または凹部を転写する転写工程と、を備えることを特徴とするアレイ基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のアレイ基板の製造方法であって、
前記孔形成工程は、鋭頭を備える棒状部材を用い、少なくても前記棒状部材を加熱して前記基板を押圧することによって、前記孔を形成すること、
前記転写工程は、前記孔が形成された前記基板に予め熱を加え、前記基板を押圧することによって、前記基板に前記複数の凸部または凹部を転写すること、
を特徴とするアレイ基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアレイ基板の製造方法を用いて製造されたことを特徴とするアレイ基板。
【請求項4】
投射光を反射するスクリーンの製造方法であって、
請求項3に記載のアレイ基板に形成された複数の凸部または凹部に対し、前記投射光を反射させる反射膜を形成する反射膜形成工程を備えること、を特徴とするスクリーンの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のスクリーンの製造方法を用いて製造されたこと、を特徴とするスクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−218415(P2012−218415A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89832(P2011−89832)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】