説明

アレルゲン抑制剤及びアレルゲン抑制製品

【課題】 本発明は、アレルゲンが特異抗体と反応するのを効果的に抑制し、アレルギー症状の軽減或いはその発現の予防をすることができると共に、不測の変色や日常の使用条件下での変色が生じにくく且つ高い吸水能力を有するアレルゲン抑制剤を提供する。
【解決手段】 本発明のアレルゲン抑制剤は、線状高分子の側鎖に所定の構造式の置換基を有する水溶性重合体を架橋してなり且つJIS K7209に準拠した吸水率が4900%以上である非水溶性化合物を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スギなどの草木の花粉、ダニ、室内の塵などのアレルゲンが特異抗体と反応するのを抑制することができ且つ不測の変色や日常の使用条件下での変色が生じ難いアレルゲン抑制剤、このアレルゲン抑制剤をアレルゲン対象物に処理して得られるアレルゲン抑制製品及び上記アレルゲン抑制剤を用いたアレルゲンの抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などの多くのアレルギー疾患が問題となってきている。このアレルギー疾患の主な原因としては、住居内に生息するダニ類、特に、室内塵中に多く存在するヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)や、主に春季に多量に空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Cry j1、Cry j2)などのアレルゲンが生活空間内に増加してきているためである。
【0003】
ヒョウヒダニのアレルゲンは、ヒョウヒダニそのものではなく、ヒョウヒダニの死骸や糞がアレルゲンとなるために、殺ダニ剤などを用いてヒョウヒダニを駆除しても、アレルギー疾患の根本的な解決にはならない。ダニを殺すことはかえってダニの死骸を増やすことになり、アレルギー症状をかえって悪化させる場合がある。
【0004】
又、スギ花粉アレルゲンであるCry j1やCry j2は、各々分子量が約40kDaの糖タンパク質、分子量が約37kDaの糖タンパク質である。スギ花粉アレルゲンは、鼻粘膜などに付着すると生体外異物として認識されて炎症反応を引き起こす。
【0005】
従って、アレルギー疾患の症状を軽減し或いは新たなアレルギー症状を防止するためには、生活空間からアレルゲンを完全に取り除くか、アレルゲンを変性させるなどして不活性化させることが必要となる。
【0006】
アレルゲンは蛋白質であるので、アレルゲンを熱、強酸又は強アルカリなどで変性させると、アレルゲンはアレルゲン性を失うと考えられる。しかしながら、アレルゲンは非常に安定性が高く、家庭で安全に使用できる酸化剤、還元剤、熱、アルカリ、酸などでは容易に変性されない(非特許文献1参照)。
【0007】
又、アレルゲンに汚染された対象物に存在するアレルゲンを変性させようとすると、アレルゲンの汚染場所である対象物が条件によっては破損してしまう可能性があった。対象物としては、例えば、畳、絨毯、床、家具(ソファー、布ばり椅子、テーブル)、寝具(ベッド、布団、シーツ)、車輛内用品(シート、チャイルドシート)、車輛内装材(天井材など)、キッチン用品、ベビー用品、カーテン、壁紙、タオル、衣類、ぬいぐるみ、その他の繊維製品、空気清浄機(本体及びフィルター)が挙げられる。
【0008】
このため、アレルゲンの分子表面を比較的温和な条件で化学的に変性する方法が考えられてきた。例えば、生皮のなめし(タンニング)などに用いられているタンニン酸を用いてアレルゲンを抑制する方法(特許文献1)、茶抽出物などを用いてアレルゲンを抑制する方法(特許文献2)、ヒドロキシ安息香酸系化合物又はその塩を用いてアレルゲンを抑制する方法(特許文献3)などが提案され、アレルゲン抑制効果も確認されている。
【0009】
しかしながら、これらの方法で用いられる化合物のほとんどはポリフェノールの一種であることから着色しており、上記対象物を着色してしまうといった問題点があった。
【0010】
又、特許文献4には、芳香族ヒドロキシ化合物を用いてアレルゲンを抑制する方法が提案されており、対象物に対する着色の問題については改善されているが、白色などの淡色の対象物に処理した場合には着色が生じることがあり充分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭61−44821号公報
【特許文献2】特開平6−279273号公報
【特許文献3】特開平11−292714号公報
【特許文献4】特開2003−81727号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】The Journal of Immunology Vol.144:1353-1360
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、アレルゲンが特異抗体と反応するのを効果的に抑制し、アレルギー症状の軽減或いはその発現の予防をすることができると共に、不測の変色や日常の使用条件下での変色が生じにくく且つ高い吸水能力を有して低湿度雰囲気下においても優れたアレルゲン抑制効果を奏するアレルゲン抑制剤及びこのアレルゲン抑制剤をアレルゲン対象物に処理して得られるアレルゲン抑制製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のアレルゲン抑制剤は、線状高分子の側鎖に一般式(1)で示される構造式の置換基を有する水溶性重合体を架橋してなり且つJIS K7209に準拠した吸水率が4900%以上である非水溶性化合物を含有することを特徴とする。
【0015】
【化1】


(mは0〜2の整数を示し、R1〜R5はそれぞれ、水素、カルボキシ基、スルホン酸基、アミノ基、カルボキシ基の塩、スルホン酸基の塩又はアミノ基の塩の何れかであって、R1〜R5のうちの少なくとも一つは、カルボキシ基、スルホン酸基、アミノ基、カルボキシ基の塩、スルホン酸基の塩又はアミノ基の塩である。)
【0016】
ここで、アレルゲン抑制剤とは、アレルゲン抑制効果を有するものをいい、又、「アレルゲン抑制効果」とは、ヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)、空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Cryj1、Cryj2)、犬や猫に起因するアレルゲン(Can f1、Fel d1)などのアレルゲンを変性し或いは吸着し、アレルゲンの特異抗体に対する反応性を抑制する効果をいう。このようなアレルゲン抑制効果を確認する方法としては、例えば、ニチニチ製薬社から市販されているELISAキットを用いてELISA法によりアレルゲン量を測定する方法、アレルゲン測定具(住化エンビロサイエンス社製 商品名「マイティーチェッカー」)を用いてアレルゲン性を評価する方法などが挙げられる。
【0017】
上記一般式(1)中、mは0〜2の整数を示している。mは、3以上となると、アレルゲン抑制剤がアレルゲン抑制効果を喪失してしまうからである。
【0018】
又、一般式(1)において、R1〜R5はそれぞれ、水素(−H)、カルボキシ基(−COOH)、スルホン酸基(−SO3H)、アミノ基(−NH2)、カルボキシ基(−COOH)の塩、スルホン酸基(−SO3H)の塩、又は、アミノ基(−NH2)の塩の何れかであるが、R1〜R5のうちの少なくとも一つは、カルボキシ基(−COOH)、スルホン酸基(−SO3H)、アミノ基(−NH2)、カルボキシ基(−COOH)の塩、スルホン酸基(−SO3H)の塩、又は、アミノ基(−NH2)の塩であることが必要である。
【0019】
これは、一般式(1)において、置換基としてカルボキシ基(−COOH)、スルホン酸基(−SO3H)、アミノ基(−NH2)、カルボキシ基(−COOH)の塩、スルホン酸基(−SO3H)の塩、又は、アミノ基(−NH2)の塩を有していないと、アレルゲン抑制剤がアレルゲン抑制効果を発現しないからである。
【0020】
カルボキシ基の塩としては、例えば、−COONa,(−COO)2Caが挙げられる。スルホン酸基の塩としては、例えば、−SO3Na、(−SO32Ca、−SO3NH4+が挙げられる。アミノ基の塩としては、例えば、−NH2・HClが挙げられる。
【0021】
そして、一般式(1)において、カルボキシ基(−COOH)、スルホン酸基(−SO3H)、アミノ基(−NH2)、カルボキシ基(−COOH)の塩、スルホン酸基(−SO3H)の塩、及び、アミノ基(−NH2)の塩の総数は、多いと、アレルゲン抑制効果がなくなるので、1〜3が好ましく、1がより好ましい。
【0022】
又、一般式(1)において、立体障害が少ないことから、R3が、カルボキシ基(−COOH)、スルホン酸基(−SO3H)、アミノ基(−NH2)、カルボキシ基(−COOH)の塩、スルホン酸基(−SO3H)の塩、又は、アミノ基(−NH2)の塩であると共に、R1、R2、R4及びR5が水素であることが好ましい。
【0023】
一般式(1)で示される構造式の置換基を側鎖に有する線状高分子としては、特に限定されず、例えば、ビニル重合体、ポリエステル、ポリアミドが好ましい。そして、線状高分子と、一般式(1)で示される構造式の置換基との間の化学結合は、炭素−炭素結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合などの何れであってもよい。
【0024】
そして、線状高分子の側鎖に一般式(1)で示される構造式の置換基を有する水溶性重合体としては、スチレンスルホン酸成分を含有する重合体、スチレンスルホン酸成分を含有する重合体のスルホン酸塩、スチレンスルホン酸塩成分とスチレンスルホン酸誘導体成分とを含む共重合体、スチレンスルホン酸単独重合体、スチレンスルホン酸塩単独重合体、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、ポリスチレンのベンゼン環をスルホン化した化合物、ポリスチレンのベンゼン環をスルホン化した化合物のスルホン酸塩、スチレン成分を含む重合体のベンゼン環をスルホン化した化合物、スチレン成分を含む重合体のベンゼン環をスルホン化した化合物のスルホン酸塩、ビニル安息香酸成分を含有する重合体、ビニル安息香酸成分を含有する重合体のカルボキシ基の塩、ビニル安息香酸のカルボキシ基の塩成分とビニル安息香酸のカルボキシ基誘導体成分とを含む共重合体、ビニル安息香酸単独重合体、ビニル安息香酸塩単独重合体、スチレン−ビニル安息香酸塩共重合体、スチレン−ビニル安息香酸共重合体、ポリスチレンのベンゼン環にカルボキシ基を導入した化合物、ポリスチレンのベンゼン環にカルボキシ基を導入した化合物のカルボキシ基の塩、スチレン成分を含む重合体のベンゼン環にカルボキシ基を導入した化合物、スチレン成分を含む重合体のベンゼン環にカルボキシ基を導入した化合物のカルボキシ基の塩が好ましい。
【0025】
なお、スルホン酸基の誘導体としては、例えば、−SO3CH3、−SO325が挙げられる。カルボキシ基の誘導体としては、例えば、−COOCH3、−COOC25が挙げられる。
【0026】
スチレンスルホン酸成分を含有する重合体のスルホン酸塩としては、特に限定されないが、スチレンスルホン酸成分を含有する重合体のスルホン酸ナトリウム塩、スチレンスルホン酸成分を含有する重合体のスルホン酸カルシウム塩、スチレンスルホン酸成分を含有する重合体のスルホン酸アンモニウム塩、スチレンスルホン酸成分を含有する重合体のスルホン酸マグネシウム塩が好ましく、スチレンスルホン酸単独重合体のスルホン酸ナトリウム塩がより好ましく、p−スチレンスルホン酸単独重合体のスルホン酸ナトリウム塩が特に好ましく、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体が最も好ましい。又、スチレンスルホン酸誘導体成分を含有する重合体としては、特に限定されないが、スチレンスルホン酸ナトリウム−スチレンスルホン酸エチル重合体が好ましい。
【0027】
ポリスチレンのベンゼン環をスルホン化した化合物のスルホン酸塩としては、ポリスチレンをスルホン化した化合物のスルホン酸ナトリウム塩、ポリスチレンをスルホン化した化合物のスルホン酸カルシウム塩、ポリスチレンをスルホン化した化合物のスルホン酸アンモニウム塩、ポリスチレンをスルホン化した化合物のスルホン酸マグネシウム塩が好ましく、ポリスチレンをスルホン化した化合物のスルホン酸ナトリウム塩がより好ましい。
【0028】
スチレン成分を含む重合体のベンゼン環をスルホン化した化合物のスルホン酸塩としては、スチレン成分を含む重合体のベンゼン環をスルホン化した化合物のスルホン酸ナトリウム塩、スチレン成分を含む重合体のベンゼン環をスルホン化した化合物のスルホン酸カルシウム塩、スチレン成分を含む重合体のベンゼン環をスルホン化した化合物のスルホン酸アンモニウム塩、スチレン成分を含む重合体のベンゼン環をスルホン化した化合物のスルホン酸マグネシウム塩が好ましく、スチレン成分を含む重合体のベンゼン環をスルホン化した化合物のスルホン酸ナトリウム塩がより好ましい。
【0029】
スチレン成分を含む重合体又はポリスチレンのスルホン化率としては、30〜100モル%が好ましく、50〜100モル%がより好ましい。スルホン化率が30モル%より低いと、アレルゲン抑制剤の吸水能力が低下してアレルゲン抑制効果が低下することがあるからである。
【0030】
なお、スチレン成分を含む重合体又はポリスチレンのスルホン化率は、公知の方法によって求めることができ、例えば、元素分析により炭素原子と硫黄原子との比率を測定する方法や、結合硫酸量(JIS K3362:1998のアニオン界面活性剤の定量:対応ISO 2271)を測定する方法により求められる。スルホン化率は、重合体中の一般式(1)で示される構造式の置換基を有する単量体成分のうち、スルホン酸基が導入された構成単量体の割合を表す指標である。スルホン化率は、例えば、ポリスチレンをスルホン化した化合物の場合、スルホン化率が100モル%とは、ポリスチレン中の全てのベンゼン環にそれぞれ1つのスルホン酸基が導入されたことを意味する。
【0031】
スチレン成分を含む重合体において、スチレン成分以外の単量体成分としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アルキルメタクリレート、ビニルアルキルエーテル、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、ジイソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、2-ビニルナフタレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ビニルトルエン、キシレンスルホン酸、ビニルピリジン、ビニルスルホン酸、ビニルアルコール、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどが挙げられる。なお、本発明において、(メタ)アクリは、アクリ又はメタクリを意味する。
【0032】
スチレン成分を含む重合体又はポリスチレンのスルホン化は、公知の要領で行うことができ、例えば、三酸化イオウや濃硫酸などを用いる方法などが挙げられる。スチレン成分を含む重合体又はポリスチレンをスルホン化した化合物のスルホン酸塩の製造方法として、例えば、スチレン成分を含む重合体又はポリスチレンをスルホン化する。このスルホン化された化合物を含む分散液をアルカリ水溶液で中和する方法が挙げられる。なお、アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0033】
又、水溶性重合体としては、一般式(1)で示される構造式の置換基を有する単量体を単独重合又は共重合してなる化合物であることが好ましい。このような単量体としては、例えば、p−スチレンスルホン酸、m−スチレンスルホン酸、o−スチレンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、m−スチレンスルホン酸ナトリウム、o−スチレンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸カルシウム、m−スチレンスルホン酸カルシウム、o−スチレンスルホン酸カルシウム、p−スチレンスルホン酸アンモニウム、m−スチレンスルホン酸アンモニウム、o−スチレンスルホン酸アンモニウム、p−スチレンスルホン酸マグネシウム、m−スチレンスルホン酸マグネシウム、o−スチレンスルホン酸マグネシウム、4−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸ナトリウム、4−ビニルアニリン、アミノスチレン塩酸塩などが挙げられ、スチレンスルホン酸ナトリウムが好ましく、アレルゲンとの反応性において立体障害が少ないことから、p−スチレンスルホン酸ナトリウム(4−スチレンスルホン酸ナトリウム)がより好ましい。
【0034】
スチレンスルホン酸成分を含有する重合体のスルホン酸塩は、公知の要領で製造することができ、例えば、スチレンスルホン酸塩をラジカル重合する方法、スチレンスルホン酸単独重合体のスルホン酸を水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリを用いて中和する方法などが挙げられる。
【0035】
又、スチレンスルホン酸成分を含む重合体のスルホン酸塩の分子中において、スルホン酸基の全てが塩とされていなくてもよいが、塩とされたスルホン酸基の割合が低いと、アレルゲン抑制剤の酸性が強くなり、後述するアレルゲン対象物を破損する虞れがあるので、50モル%以上が好ましく、70〜100モル%がより好ましく、85〜100モル%が特に好ましい。
【0036】
なお、スチレンスルホン酸成分を含む重合体のスルホン酸塩の分子中における塩とされたスルホン酸基の割合は下記の要領で算出される。スチレンスルホン酸塩を含む単量体を重合させて、スチレンスルホン酸成分を含む重合体のスルホン酸塩を得た場合には、重合に用いられた単量体中において、スルホン酸基及びこの塩の合計モル数を算出すると共に、塩とされたスルホン酸基のモル数を算出し、上記合計モル数に対する、塩とされたスルホン酸基のモル数の百分率を算出すればよい。又、単量体としてスチレンスルホン酸を用いてスチレンスルホン酸単独重合体を重合し、このスチレンスルホン酸単独重合体をアルカリによって中和してスチレンスルホン酸単独重合体のスルホン酸塩を製造した場合には、消費されたアルカリのモル数を中和滴定によって測定すると共に、重合に用いられたスチレンスルホン酸のモル数を測定し、スチレンスルホン酸のモル数に対する消費されたアルカリのモル数の百分率を算出すればよい。
【0037】
スチレンスルホン酸単独重合体のスルホン酸塩及びスチレンスルホン酸塩単独重合体のZ平均分子量(Mz)は、低いと、アレルゲン抑制効果が低下することがあるので、15万以上が好ましく、20万以上がより好ましく、50万以上が特に好ましいが、高過ぎると、アレルゲン抑制剤の取扱性が低下することがあるので、上限は500万が好ましい。
【0038】
なお、本発明において重合体の重量平均分子量及びZ平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーでポリエチレンオキシドを標準物質として測定したものをいう。重合体の重量平均分子量及びZ平均分子量は、例えば、下記の条件にて測定することができる。
カラム:(東ソー社製 TSKgel GMPWXL 7.8mmI.D.×30cm 2本)
溶離液:(0.2M硫酸ナトリウム水溶液:アセトニトリル=9:1)
流速:1ミリリットル/分
温度:40℃
検出:UV(210nm)
標準ポリエチレンオキシド:(東ソー社製、SE-2,5,8,15,30,70,150の7種類を使用)
【0039】
水溶性重合体としては、一般式(1)で示される構造式の置換基を有する単量体と、これと共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。このような共重合体としては、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよいが、ブロック共重合体が好ましい。
【0040】
水溶性重合体が、一般式(1)で示される構造式の置換基を有する単量体と、これと共重合可能な単量体とのブロック共重合体である場合、一般式(1)で示される構造式の置換基を有する単量体に由来するブロック部の重合度は、低いと、アレルゲン抑制剤がアレルゲン抑制効果を奏しないことがある一方、高いと、アレルゲン抑制剤の取扱性が低下することがあるので、5〜6000が好ましい。
【0041】
水溶性重合体が、一般式(1)で示される構造式の置換基を有する単量体と、これと共重合可能な単量体との共重合体である場合、この共重合体中、一般式(1)で示される構造式の置換基を有する単量体成分の含有量は、30重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましい。一般式(1)で示される構造式の置換基を有する単量体成分の含有量が少ないと、アレルゲン抑制剤の吸水能力が低下してアレルゲン抑制効果が低下することがあるからである。
【0042】
なお、一般式(1)で示される構造式の置換基を有する単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アルキルメタクリレート、ビニルアルキルエーテル、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、ジイソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、2−ビニルナフタレン、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ビニルトルエン、キシレンスルホン酸、ビニルピリジン、ビニルスルホン酸、ビニルアルコール、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどが挙げられる。
【0043】
一般式(1)で示される構造式の置換基を有する単量体と共重合可能な単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、2−ビニルナフタレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0044】
そして、一般式(1)で示される構造式の置換基を有する単量体を単独重合又は共重合してなる重合体、及び、一般式(1)で示される構造式の置換基を有する単量体と、これと共重合可能な単量体との共重合体の重量平均分子量は、低いと、アレルゲン抑制剤がアレルゲン抑制効果を奏しないことがある一方、高いと、アレルゲン抑制剤の取扱性が低下することがある。よって、一般式(1)で示される構造式の置換基を有する単量体を単独重合してなる重合体の場合は、重量平均分子量は20万〜500万が好ましい。一般式(1)で示される構造式の置換基を有する単量体を共重合してなる重合体、及び、一般式(1)で示される構造式の置換基を有する単量体と、これと共重合可能な単量体との共重合体の場合は、重量平均分子量は5000〜500万が好ましく、5000〜200万がより好ましい。
【0045】
ポリスチレンをスルホン化した化合物、又は、スチレン成分を含む重合体をスルホン化した化合物の重量平均分子量(Mw)は、5000〜500万が好ましく、5000〜200万が好ましい。重量平均分子量が低いと、アレルゲン抑制剤がアレルゲン抑制効果を奏しないことがあり、高いと、アレルゲン抑制剤の取扱性が低下することがある。
【0046】
本発明のアレルゲン抑制剤は、上記水溶性重合体を架橋することによって得られた非水溶性化合物を含有している。この非水溶性化合物は、高い吸水力を有しており、優れたアレルゲン抑制効果を奏する。なお、本発明において、非水溶性とは、20℃で且つpHが5〜9である水100gに対して溶解可能なグラム数(以下「溶解度」という)が1以下であることをいい、1を超えるものを水溶性という。
【0047】
アレルゲン抑制剤が非水溶性であると、アレルゲン対象物が水に接触した場合にあってもアレルゲン抑制剤が水に溶解して消失するのを抑制することができ、後述するアレルゲン抑制製品のアレルゲン抑制効果を長期間に亘って安定的に持続させることができる。
【0048】
水溶性重合体を架橋して非水溶性化合物とする方法としては、例えば、水溶性重合体を加熱し又は水溶性重合体に電離性放射線を照射することによって水溶性重合体を架橋して非水溶性化合物とする方法が挙げられる。
【0049】
水溶性重合体を上述の要領で架橋させると、水溶性重合体の反応体には、水溶性重合体と非水溶性化合物とが含有されている。従って、水溶性重合体の反応体を水中に供給して分散させて分散水を作製する。次に、分散水を好ましくは4〜25℃にて1〜4時間に亘って撹拌し、水溶性重合体の反応体中に含まれている水溶性重合体を水中に溶出させる。なお、水溶性重合体の反応体を供給する水の重量は、水溶性重合体の反応体の重量の50〜200倍が好ましい。次に、遠心分離方法などの汎用の方法を用いて、分散水から非水溶性化合物を分離すればよい。遠心分離の回転数は3000〜10000rpmが好ましい。遠心分離時の分散水の温度は4〜25℃が好ましい。
【0050】
電離性放射線は、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線など)、X線、電子線、イオン線などが挙げられ、紫外線、電子線が好ましい。
【0051】
紫外線の光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯などが挙げられる。紫外線の波長としては、190〜380nmが好ましい。
【0052】
電子線の光源としては、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種の電子線加速器を用いることができる。電子線の照射条件は、対象物の厚さに応じて、加速電圧や照射量を調節すればよい。電子線の加速電圧は100〜5000keVが好ましく、100〜3000keVがより好ましく、100〜1500keVが特に好ましい。
【0053】
水溶性重合体を架橋するために必要な電子線の照射量は、得られる非水溶性化合物のJIS K7209に準拠した吸水率が4900%以上となるように調整すればよく、10〜2000kGyが好ましく、20〜1000kGyがより好ましい。電子線の照射量が低いと、水溶性重合体が充分に架橋されず、非水溶性化合物の耐水性が低下することがある。電子線の照射量が高いと、アレルゲン抑制剤のアレルゲン抑制能が低下することがある。
【0054】
又、水溶性重合体に照射する電離性放射線の量を少なくするために、重合性オリゴマー又は単量体などの重合性化合物を水溶性重合体に添加した上で、水溶性重合体の架橋を行ってもよい。本発明において、「重合性オリゴマー」とは、単量体を除く、ダイマー(二量体)、プレポリマー、数平均分子量が30000以下の重合体を包含する多量体をいう。重合性化合物の添加量は、水溶性重合体100重量部に対して0.1〜15重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
【0055】
上記重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマーが挙げられる。オリゴマーとしては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
【0056】
エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応させてエステル化することにより得ることができる。
【0057】
又、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。
【0058】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0059】
ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、又は、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0060】
ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。更にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、又はノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテルなどの分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどが挙げられる。
【0061】
単量体として、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマーなどが挙げられ、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、多官能性(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0062】
多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。なお、多官能性(メタ)アクリレートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0063】
水溶性重合体を重合性化合物の存在下にて電子線の照射によって架橋する場合、水溶性重合体に重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、汎用の化合物を用いることができ、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する単量体や,分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性オリゴマーを用いる場合には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
【0064】
重合開始剤としては、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマーを用いる場合には、例えば、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステルなどが挙げられる。
【0065】
更に、重合開始剤に加えて光増感剤を併用してもよい。光増感剤としては、例えば、p−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などが挙げられる。
【0066】
上記非水溶性化合物のJIS K7209に準拠した吸水率は、低いと、アレルゲン抑制剤がアレルゲン抑制効果を発現しないので、4900%以上に限定され、7900%以上が好ましく、9900〜59900%がより好ましい。
【0067】
本発明のアレルゲン抑制剤は、吸水率が4900%以上である非水溶性化合物を含有していることから、相対湿度が低い環境下においても、空気中の水分を円滑に吸収し、非水溶性化合物は優れたアレルゲン抑制効果を発揮する。
【0068】
なお、非水溶性化合物のJIS K7209に準拠した吸水率は下記の要領で測定される。先ず、非水溶性化合物を120℃にて1時間に亘って乾燥し、非水溶性化合物の乾燥重量W1を測定する。次に、非水溶性化合物の乾燥重量W1の1000倍の重量を有するイオン交換水に非水溶性化合物を10分間に亘って浸漬した後の非水溶性化合物の重量W2を測定する。しかる後、非水溶性化合物を100℃で5時間に亘って乾燥した後、非水溶性化合物を120℃で1時間に亘って乾燥し、非水溶性化合物の乾燥重量W3を測定し、下記式に基づいて、非水溶性化合物のJIS K7209に準拠した吸水率を算出することができる。
吸水率(%)=100×(W2−W3)/W3
【0069】
上述したように、水溶性重合体を含む水溶液を所定厚みに拡げた上で水溶液に電子線を照射することによって水溶性重合体を架橋して非水溶性化合物とし、アレルゲン抑制剤を製造する場合には、例えば、下記のように製造条件を調整することによって、得られる非水溶性重合体のJIS K7209に準拠した吸水率を4900%以上に調整することができる。
【0070】
具体的には、水溶性重合体のJIS K7209に準拠した吸水率に影響を与える因子としては、水溶性重合体の重量平均分子量、水溶液中の重合性化合物の濃度、重合性化合物の官能基数、電子線の照射量などが挙げられる。上記因子を調整することで、本発明のアレルゲン抑制剤を製造することができる。
【0071】
水溶液が水溶性重合体のみを含み、水溶性重合体に電子線を照射して水溶性重合体を架橋しアレルゲン抑制剤を製造する場合には、Mw×D2×(M12×Qが1.5〜400となるように調整することが好ましく、2〜300となるように調整することがより好ましく、2.5〜200となるように調整することが特に好ましい。
【0072】
水溶液が水溶性重合体と非水溶性の重合性化合物とを含み、水溶液に電子線を照射して水溶性重合体を架橋しアレルゲン抑制剤を製造する場合には、Mw×D×(M12×Q×N2×(M2/100)1/2×2が1.5〜400となるように調整することが好ましく、2〜300となるように調整することがより好ましく、2.5〜200となるように調整することが特に好ましい。
【0073】
水溶液が水溶性重合体と水溶性の重合性化合物とを含み、水溶液に電子線を照射して水溶性重合体を架橋しアレルゲン抑制剤を製造する場合には、Mw×D×(M12×Q×N2×M2×2が1.5〜400となるように調整することが好ましく、2〜300となるように調整することがより好ましく、2.5〜200となるように調整することが特に好ましい。
【0074】
但し、
Mw:水溶性重合体の重量平均分子量(万)
1:水溶性重合体の濃度(重量%)/100
2:水溶液中の重合性化合物の濃度(重量%)/100
N:重合性化合物の官能基数
D:電子線の照射量(kGy)/100
Q:水溶性重合体の厚みに対する相対電子線量(%)/100
とする。
【0075】
本発明のアレルゲン抑制剤には、アレルゲン抑制効果を阻害しない範囲において、分散剤、乳化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、移染防止剤などの製剤用補助剤が配合されていてもよく、又、殺ダニ剤、殺菌剤、防黴剤、消臭剤などが含有されていてもよい。
【0076】
移染防止剤としては、特に限定されず、例えば、塩化カルシウムなどの塩類、水溶性カチオン化合物、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジンベタイン、ポリアミンN−オキシド重合体などが挙げられる。
【0077】
次に、上記アレルゲン抑制剤の使用要領について説明する。上記アレルゲン抑制剤は、スプレー型、エアゾール型、燻煙型、加熱蒸散型、マトリックスへの混合などの汎用の使用方法を用いることができる。
【0078】
上記アレルゲン抑制剤を溶媒に溶解或いは分散させてアレルゲン抑制剤溶液とし、このアレルゲン抑制剤溶液に水溶剤、油剤、乳剤、懸濁剤などを配合することによって、アレルゲン抑制剤をスプレー型とすることができる。なお、スプレー型とは、常圧下にあるアレルゲン抑制剤溶液に圧力を加えてアレルゲン抑制剤を霧状に噴霧する使用方法をいう。
【0079】
なお、上記溶媒としては、例えば、水(好ましくは、イオン交換水)、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなど)、炭化水素類(トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ケロセン、シクロヘキサンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミドなど)が挙げられる。
【0080】
そして、上記スプレー型のアレルゲン抑制剤に、固体担体(タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、珪藻土、シリカ、バーミュライト、パーライトなど)を添加することにより、アレルゲン抑制剤をエアゾール型とすることができる。
【0081】
ここで、エアゾール型とは、容器内にアレルゲン抑制剤溶液を噴射剤と共に該噴射剤が圧縮された状態に封入しておき、噴射剤の圧力によってアレルゲン抑制剤を霧状に噴霧させる使用方法をいう。なお、噴射剤としては、例えば、窒素、炭酸ガス、ジメチルエーテル、LPGなどが挙げられる。
【0082】
そして、上記スプレー型のアレルゲン抑制剤に、酸素供給剤(過塩素酸カリウム、硝酸カリウム、塩素酸カリウムなど)、燃焼剤(糖類、澱粉など)、発熱調整剤(硝酸グアニジン、ニトログアニジン、リン酸グアニル尿素など)、酸素供給剤分解用助剤(塩化カリウム、酸化銅、酸化クロム、酸化鉄、活性炭など)などを添加することにより、アレルゲン抑制剤を燻煙型することができる。なお、燻煙型とは、アレルゲン抑制剤を微粒子化して煙状とし、分散させる使用方法をいう。
【0083】
又、アレルゲン抑制剤を混合させるマトリックスとしては、アレルゲン抑制剤を変性させないものであれば、特に限定されず、例えば、多糖類やその塩、デキストリン、ゼラチン、高級アルコール、油脂類、ステアリン酸などの高級脂肪酸、パラフィン類、流動パラフィン類、白色ワセリン、ハイドロカーボンゲル軟膏、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、各種塗料が挙げられる。
【0084】
そして、生活用品などのように、アレルゲンが存在し或いはアレルゲンが将来に存在する可能性のある対象物、即ち、アレルゲンを抑制したい対象物(以下、「アレルゲン対象物」という)にアレルゲン抑制剤を噴霧、分散、塗布又は固着させることによって供給し、アレルゲン対象物をアレルゲン抑制製品としてもよい。このようにすることによって、アレルゲン対象物のアレルゲンを抑制することができる。上記アレルゲン抑制剤は、単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。アレルゲン抑制剤は、上述のアレルゲン抑制剤溶液に懸濁剤を配合して懸濁液とした場合の安定性に優れていることから、アレルゲン抑制剤を懸濁液としスプレー型としてアレルゲン対象物に噴霧することが好ましい。なお、アレルゲン抑制剤をアレルゲン対象物に化学的又は物理的に固着させる方法としては、後述するアレルゲン抑制剤を繊維に化学的に結合させ或いは物理的に固着させる方法を用いることができる。
【0085】
又、上記アレルゲン対象物としては、生活空間においてアレルゲンの温床となる生活用品などが挙げられる。この生活用品としては、例えば、畳、絨毯、家具(ソファー、ソファー内部の発泡体、布ばり椅子、テーブルなど)、寝具(ベッド、布団、布団の中綿、羽毛布団の羽毛、シーツ、マットレス、クッション及びこれらを構成している発泡体など)、車、飛行機、船などの車輛内用品及び車輛内装材(シート、チャイルドシート及びこれらを構成している発泡体など)、キッチン用品、ベビー用品、建築内装材(壁紙、床材など)、繊維製品(カーテン、タオル、衣類、ぬいぐるみなど)、網戸などのフィルター、医薬品、医薬部外品、化粧品などが挙げられる。
【0086】
特に、本発明のアレルゲン抑制剤は、不測の着色や、日常の生活環境における変色が殆どないことから、光による退色、変色が課題となる用途に適している。このような用途としては、例えば、建築内装材、車輛内用品、車輛内装材、フィルター、繊維製品が挙げられる。
【0087】
上記フィルターとは、分離、濾過、異物を排除する能力を有するものをいい、例えば、空気清浄機、エアコン、掃除機、換気扇などのフィルターや、埃や花粉などの進入を防ぐマスク、障子、虫などの進入を防ぐ網戸やカヤなどを挙げることができる。
【0088】
上記医薬品、医薬部外品及び化粧品とは、特に限定されるものではなく、例えば、皮膚外用剤、鼻スプレー、点眼剤、シャンプー、入浴剤、整髪料、ファンデーション、洗顔剤などを挙げることができる。
【0089】
上記建築内装材とは、特に限定されるものではなく、例えば、床材、壁紙、天井材、塗料、ワックスなどを挙げることができる。
【0090】
上記繊維製品とは、特に限定されるものではなく、例えば、寝具、カーペット、カーテン、タオル、衣類、ぬいぐるみなどを挙げることができる。
【0091】
上記車輛内用品及び車輛内装材とは、特に限定されるものではなく、例えば、シート、チャイルドシート、シートベルト、カーマット、シートカバー、絨毯などを挙げることができる。
【0092】
本発明のアレルゲン抑制剤におけるアレルゲン対象物に対する使用量としては、少ないと、アレルゲン抑制剤のアレルゲン抑制効果が発現しないことがある一方、多いと、アレルゲン対象物を痛めることがあるので、アレルゲン対象物100重量部に対して0.001〜100重量部が好ましく、0.01〜50重量部がより好ましく、0.02〜30重量部が特に好ましく、0.02〜20重量部が最も好ましい。
【0093】
本発明のアレルゲン抑制剤が対象とするアレルゲンとしては、ヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)、犬や猫に起因するアレルゲン(Can f1、Fel d1)などの動物性アレルゲン、空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Cryj1、Cryj2)、花粉などの植物性アレルゲンが挙げられる。特に効果のある動物アレルゲンとしては、ダニ類のアレルゲン(ダニ類、節足動物一蛛形綱−ダニ目の生物で、主に7つの亜目に分かれている。アシナガダニに代表される背気門、カタダニに代表される四気門、ヤマトマダニ、ツバメヒメダニに代表される後気門、イエダニ、スズメサシダニ代表される中気門、クワガタツメダニ、ナミホコリダニに代表される前気門、コナヒョウヒダニなどのヒョウヒダニ類、ケナガコナダニに代表される無気門、イエササラダニ、カザリヒワダニに代表される隠気門など)のいずれの種類でも対象となり得るが、室内塵中、特に寝具類に多く、アレルギー疾患の原因となるヒョウヒダニ類に特に効果がある。
【0094】
上述のアレルゲン抑制剤の使用要領によれば、アレルゲン対象物に必要に応じてアレルゲン抑制剤を供給することによって、アレルゲン対象物に存在し或いは将来、存在するであろうアレルゲンの特異抗体に対する反応性を抑制するものである。
【0095】
上記アレルゲン抑制剤を繊維に含有させてアレルゲン抑制繊維とし、繊維自体にアレルゲン抑制効果を付与してもよい。このアレルゲン抑制繊維を用いて上記生活用品を作製することによって、生活用品にアレルゲン抑制効果を予め付与しておくことができる。
【0096】
アレルゲン抑制剤を繊維に含有させる方法としては、繊維にアレルゲン抑制剤を物理的に固着させる方法が挙げられる。そして、繊維としては、アレルゲン抑制剤を含有させることができるものであれば、特に限定されず、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、(メタ)アクリル系繊維、ポリオレフィン系繊維などの合成繊維、アセテート繊維などの半合成繊維、キュプラ、レーヨンなどの再生繊維、綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維、又は、これら各種繊維の複合化繊維、混綿などが挙げられる。
【0097】
アレルゲン抑制剤を繊維に物理的に固着させる方法としては、例えば、(1)アレルゲン抑制剤を溶剤中に溶解或いは分散させてアレルゲン抑制剤溶液を作製し、このアレルゲン抑制剤溶液中に繊維を含浸させて、繊維にアレルゲン抑制剤溶液を含浸させる方法、(2)上記アレルゲン抑制剤溶液を繊維表面に塗布或いは噴霧する方法、(3)上記アレルゲン抑制剤を溶解或いは分散させてなるバインダー中に繊維を浸漬させて、アレルゲン抑制剤をバインダーによって繊維に固着させる方法、(4)上記アレルゲン抑制剤を溶解或いは分散させてなるバインダーを繊維表面に塗布或いは噴霧し、アレルゲン抑制剤をバインダーによって繊維に固着させる方法などが挙げられる。なお、上記(1)(2)の方法において、アレルゲン抑制剤溶液中に下記バインダーを含有させてもよい。
【0098】
上記溶剤としては、特に限定されず、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのアルコール類;トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ケロセン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類などが挙げられる。
【0099】
上記バインダーとしては、アレルゲン抑制剤を繊維表面に固着できるものであれば、特に限定されず、例えば、合成樹脂からなるバインダーとしては、一液型ウレタン樹脂、二液型ウレタン樹脂などのウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂などが挙げられ、ウレタン系樹脂が好ましい。
【0100】
又、上記では、アレルゲン抑制剤を別途製造された繊維に物理的に固着させることによって、繊維にアレルゲン抑制剤を含有させる要領を説明したが、アレルゲン抑制剤を含む繊維原料を紡糸して繊維を作製してもよい。
【発明の効果】
【0101】
本発明のアレルゲン抑制剤は、上述の如き構成を有するので、アレルゲンが特異抗体と反応するのを効果的に抑制し、アレルギー症状の軽減或いはその発現の予防をすることができると共に、不測の変色や日常の使用条件下での変色が生じにくく、更に、優れた吸水能力を有しているので低湿度雰囲気下においても優れたアレルゲン抑制効果を発揮し、各種生活用品に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0102】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0103】
(実施例1)
水溶性重合体としてp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体(p−スチレンスルホン酸ナトリウムホモポリマー)を含む水溶液(東ソー有機化学社製 商品名「PS−100」、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体含有量:20重量%、重量平均分子量(Mw):52.9万、Z平均分子量(Mz):75.8万)4.2gを合成樹脂製袋(生産日本社製 商品名「ユニパックC−8」)に入れて、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を含む水溶液の厚さが0.6mmとなるように拡げた。なお、合成樹脂製袋内の空気を全て窒素で置換した。
【0104】
しかる後、電子線照射装置(NHVコーポレーション製 商品名「EBC300−60」)を用いて、合成樹脂製袋内のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体に電子線を加速電圧300keVにて500kGy照射してp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を架橋し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体を得た。
【0105】
得られたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体をこの反応体の重量の100倍の重量を有する水に供給して分散水を作製し、この分散水を25℃にて撹拌しながら1時間に亘って放置し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体中に含まれている水溶性のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を水中に溶出させた。
【0106】
次に、分散水を遠心分離器を用いて15℃にて8000rpmの回転速度にて3分間に亘って遠心分離した。上述の工程を3回に亘って繰り返して行い、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体から、架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を分離し、この架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を非水溶性化合物として含むアレルゲン抑制剤を得た。
【0107】
(実施例2)
水溶性重合体としてp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体(p−スチレンスルホン酸ナトリウムホモポリマー)を含む水溶液(東ソー有機化学社製 商品名「PS−5」、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体含有量:20重量%、重量平均分子量(Mw):10.9万、Z平均分子量(Mz):20万)4.2gを用いたこと以外は実施例1と同様にして非水溶性化合物を含むアレルゲン抑制剤を得た。
【0108】
(実施例3)
水溶性重合体としてp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体(p−スチレンスルホン酸ナトリウムホモポリマー)を含む水溶液(東ソー有機化学社製 商品名「PS−100」、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体含有量:20重量%、重量平均分子量(Mw):52.9万、Z平均分子量(Mz):75.8万)99重量%とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学株式会社製 商品名「ライトアクリレートDPE−6A」)1重量%とを含む混合溶液4.2gを合成樹脂製袋(生産日本社製 商品名「ユニパックC−8」)に入れて、混合溶液の厚さが0.6mmとなるように拡げた。なお、合成樹脂製袋内の空気を全て窒素で置換した。
【0109】
しかる後、電子線照射装置(NHVコーポレーション製 商品名「EBC300−60」)を用いて、合成樹脂製袋内のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体に電子線を加速電圧300keVにて50kGy照射してp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を架橋し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体を得た。
【0110】
得られたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体をこの反応体の重量の100倍の重量を有する水に供給して分散水を作製し、この分散水を25℃にて撹拌しながら1時間に亘って放置し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体中に含まれている水溶性のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を水中に溶出させた。
【0111】
次に、分散水を遠心分離器を用いて15℃にて8000rpmの回転速度にて3分間に亘って遠心分離した。上述の工程を3回に亘って繰り返して行い、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体から、架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を分離し、この架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を非水溶性化合物として含むアレルゲン抑制剤を得た。
【0112】
(実施例4)
水溶性重合体としてp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体(p−スチレンスルホン酸ナトリウムホモポリマー)を含む水溶液(東ソー有機化学社製 商品名「PS−100」、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体含有量:20重量%、重量平均分子量(Mw):52.9万、Z平均分子量(Mz):75.8万)99重量%とトリメチロールプロパントリメタクリレート(共栄社化学株式会社製商品名「ライトエステルTMP」)1重量%とを含む混合溶液4.2gを合成樹脂製袋(生産日本社製 商品名「ユニパックC−8」)に入れて、混合溶液の厚さが0.6mmとなるように拡げた。なお、合成樹脂製袋内の空気を全て窒素で置換した。
【0113】
しかる後、電子線照射装置(NHVコーポレーション製 商品名「EBC300−60」)を用いて、合成樹脂製袋内のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体に電子線を加速電圧300keVにて500kGy照射してp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を架橋し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体を得た。
【0114】
得られたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体をこの反応体の重量の100倍の重量を有する水に供給して分散水を作製し、この分散水を25℃にて撹拌しながら1時間に亘って放置し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体中に含まれている水溶性のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を水中に溶出させた。
【0115】
次に、分散水を遠心分離器を用いて15℃にて8000rpmの回転速度にて3分間に亘って遠心分離した。上述の工程を3回に亘って繰り返して行い、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体から、架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を分離し、この架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を非水溶性化合物として含むアレルゲン抑制剤を得た。
【0116】
(実施例5)
水溶性重合体としてp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体(p−スチレンスルホン酸ナトリウムホモポリマー)を含む水溶液(東ソー有機化学社製 商品名「PS−100」、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体含有量:20重量%、重量平均分子量(Mw):52.9万、Z平均分子量(Mz):75.8万)99重量%とPEG#600ジアクリレート(共栄社化学株式会社製 商品名「ライトアクリレート14EGA」)1重量%とを含む混合溶液4.2gを合成樹脂製袋(生産日本社製 商品名「ユニパックC−8」)に入れて、混合溶液の厚さが0.6mmとなるように拡げた。なお、合成樹脂製袋内の空気を全て窒素で置換した。
【0117】
しかる後、電子線照射装置(NHVコーポレーション製 商品名「EBC300−60」)を用いて、合成樹脂製袋内のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体に電子線を加速電圧300keVにて100kGy照射してp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を架橋し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体を得た。
【0118】
得られたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体をこの反応体の重量の100倍の重量を有する水に供給して分散水を作製し、この分散水を25℃にて撹拌しながら1時間に亘って放置し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体中に含まれている水溶性のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を水中に溶出させた。
【0119】
次に、分散水を遠心分離器を用いて15℃にて8000rpmの回転速度にて3分間に亘って遠心分離した。上述の工程を3回に亘って繰り返して行い、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体から、架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を分離し、この架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を非水溶性化合物として含むアレルゲン抑制剤を得た。
【0120】
(実施例6)
電子線の照射量を100kGyの代わりに50kGyとしたこと以外は実施例5と同様にして、架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を非水溶性化合物として含むアレルゲン抑制剤を得た。
【0121】
(実施例7)
水溶性重合体としてp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体(p−スチレンスルホン酸ナトリウムホモポリマー)を含む水溶液(東ソー有機化学社製 商品名「PS−100」、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体含有量:20重量%、重量平均分子量(Mw):52.9万、Z平均分子量(Mz):75.8万)99重量%とトリエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製商品名「ライトエステル3EG」)1重量%とを含む混合溶液4.2gを合成樹脂製袋(生産日本社製 商品名「ユニパックC−8」)に入れて、混合溶液の厚さが0.6mmとなるように拡げた。なお、合成樹脂製袋内の空気を全て窒素で置換した。
【0122】
しかる後、電子線照射装置(NHVコーポレーション製 商品名「EBC300−60」)を用いて、合成樹脂製袋内のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体に電子線を加速電圧300keVにて100kGy照射してp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を架橋し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体を得た。
【0123】
得られたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体をこの反応体の重量の100倍の重量を有する水に供給して分散水を作製し、この分散水を25℃にて撹拌しながら1時間に亘って放置し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体中に含まれている水溶性のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を水中に溶出させた。
【0124】
次に、分散水を遠心分離器を用いて15℃にて8000rpmの回転速度にて3分間に亘って遠心分離した。上述の工程を3回に亘って繰り返して行い、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体から、架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を分離し、この架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を非水溶性化合物として含むアレルゲン抑制剤を得た。
【0125】
(実施例8)
水溶性重合体としてp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体(p−スチレンスルホン酸ナトリウムホモポリマー)を含む水溶液(東ソー有機化学社製 商品名「PS−100」、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体含有量:20重量%、重量平均分子量(Mw):52.9万、Z平均分子量(Mz):75.8万)90重量%とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学株式会社製 商品名「ライトアクリレートDPE−6A」)10重量%とを含む混合溶液4.2gを合成樹脂製袋(生産日本社製 商品名「ユニパックC−8」)に入れて、混合溶液の厚さが0.6mmとなるように拡げた。なお、合成樹脂製袋内の空気を全て窒素で置換した。
【0126】
しかる後、電子線照射装置(NHVコーポレーション製 商品名「EBC300−60」)を用いて、合成樹脂製袋内のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体に電子線を加速電圧300keVにて100kGy照射してp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を架橋し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体を得た。
【0127】
得られたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体をこの反応体の重量の100倍の重量を有する水に供給して分散水を作製し、この分散水を25℃にて撹拌しながら1時間に亘って放置し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体中に含まれている水溶性のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を水中に溶出させた。
【0128】
次に、分散水を遠心分離器を用いて15℃にて8000rpmの回転速度にて3分間に亘って遠心分離した。上述の工程を3回に亘って繰り返して行い、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体から、架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を分離し、この架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を非水溶性化合物として含むアレルゲン抑制剤を得た。
【0129】
(実施例9)
水溶性重合体としてp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体(p−スチレンスルホン酸ナトリウムホモポリマー)を含む水溶液(東ソー有機化学社製 商品名「PS−100」、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体含有量:20重量%、重量平均分子量(Mw):52.9万、Z平均分子量(Mz):75.8万)99重量%と1,9−ノナンジオールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製商品名「ライトエステル1.9ND」)1重量%とを含む混合溶液4.2gを合成樹脂製袋(生産日本社製 商品名「ユニパックC−8」)に入れて、混合溶液の厚さが0.6mmとなるように拡げた。なお、合成樹脂製袋内の空気を全て窒素で置換した。
【0130】
しかる後、電子線照射装置(NHVコーポレーション製 商品名「EBC300−60」)を用いて、合成樹脂製袋内のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体に電子線を加速電圧300keVにて50kGy照射してp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を架橋し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体を得た。
【0131】
得られたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体をこの反応体の重量の100倍の重量を有する水に供給して分散水を作製し、この分散水を25℃にて撹拌しながら1時間に亘って放置し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体中に含まれている水溶性のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を水中に溶出させた。
【0132】
次に、分散水を遠心分離器を用いて15℃にて8000rpmの回転速度にて3分間に亘って遠心分離した。上述の工程を3回に亘って繰り返して行い、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体から、架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を分離し、この架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を非水溶性化合物として含むアレルゲン抑制剤を得た。
【0133】
(実施例10)
水溶性重合体としてp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体(p−スチレンスルホン酸ナトリウムホモポリマー)を含む水溶液(東ソー有機化学社製 商品名「PS−100」、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体含有量:20重量%、重量平均分子量(Mw):52.9万、Z平均分子量(Mz):75.8万)90重量%とトリエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製商品名「ライトエステル3EG」)10重量%とを含む混合溶液4.2gを合成樹脂製袋(生産日本社製 商品名「ユニパックC−8」)に入れて、混合溶液の厚さが0.6mmとなるように拡げた。なお、合成樹脂製袋内の空気を全て窒素で置換した。
【0134】
しかる後、電子線照射装置(NHVコーポレーション製 商品名「EBC300−60」)を用いて、合成樹脂製袋内のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体に電子線を加速電圧300keVにて100kGy照射してp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を架橋し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体を得た。
【0135】
得られたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体をこの反応体の重量の100倍の重量を有する水に供給して分散水を作製し、この分散水を25℃にて撹拌しながら1時間に亘って放置し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体中に含まれている水溶性のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を水中に溶出させた。
【0136】
次に、分散水を遠心分離器を用いて15℃にて8000rpmの回転速度にて3分間に亘って遠心分離した。上述の工程を3回に亘って繰り返して行い、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体から、架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を分離し、この架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を非水溶性化合物として含むアレルゲン抑制剤を得た。
【0137】
(実施例11)
水溶性重合体としてp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体(p−スチレンスルホン酸ナトリウムホモポリマー)を含む水溶液(東ソー有機化学社製 商品名「PS−100」、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体含有量:20重量%、重量平均分子量(Mw):52.9万、Z平均分子量(Mz):75.8万)99重量%とトリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学株式会社製商品名「ライトアクリレート3EGA」)1重量%とを含む混合溶液4.2gを合成樹脂製袋(生産日本社製 商品名「ユニパックC−8」)に入れて、混合溶液の厚さが0.6mmとなるように拡げた。なお、合成樹脂製袋内の空気を全て窒素で置換した。
【0138】
しかる後、電子線照射装置(NHVコーポレーション製 商品名「EBC300−60」)を用いて、合成樹脂製袋内のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体に電子線を加速電圧300keVにて50kGy照射してp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を架橋し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体を得た。
【0139】
得られたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体をこの反応体の重量の100倍の重量を有する水に供給して分散水を作製し、この分散水を25℃にて撹拌しながら1時間に亘って放置し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体中に含まれている水溶性のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を水中に溶出させた。
【0140】
次に、分散水を遠心分離器を用いて15℃にて8000rpmの回転速度にて3分間に亘って遠心分離した。上述の工程を3回に亘って繰り返して行い、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体から、架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を分離し、この架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を非水溶性化合物として含むアレルゲン抑制剤を得た。
【0141】
(実施例12)
水溶性重合体としてp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体(p−スチレンスルホン酸ナトリウムホモポリマー)を含む水溶液(東ソー有機化学社製 商品名「PS−1」、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体含有量:20重量%、重量平均分子量(Mw):2.5万、Z平均分子量(Mz):4.9万)4.2gを合成樹脂製袋(生産日本社製 商品名「ユニパックC−8」)に入れて、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を含む水溶液の厚さが0.6mmとなるように拡げた。なお、合成樹脂製袋内の空気を全て窒素で置換した。
【0142】
しかる後、電子線照射装置(NHVコーポレーション製 商品名「EBC300−60」)を用いて、合成樹脂製袋内のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体に電子線を加速電圧300keVにて2000kGy照射してp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を架橋し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体を得た。
【0143】
得られたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体をこの反応体の重量の100倍の重量を有する水に供給して分散水を作製し、この分散水を25℃にて撹拌しながら1時間に亘って放置し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体中に含まれている水溶性のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を水中に溶出させた。
【0144】
次に、分散水を遠心分離器を用いて15℃にて8000rpmの回転速度にて3分間に亘って遠心分離した。上述の工程を3回に亘って繰り返して行い、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体から、架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を分離し、この架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を非水溶性化合物として含むアレルゲン抑制剤を得た。
【0145】
(比較例1)
p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体(p−スチレンスルホン酸ナトリウムホモポリマー)を含む水溶液(東ソー有機化学社製 商品名「PS−100」、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体含有量:20重量%、重量平均分子量(Mw):52.9万、Z平均分子量(Mz):75.8万)を用意した。
【0146】
p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体(p−スチレンスルホン酸ナトリウムホモポリマー)を実施例1と同様の要領で遠心分離を行ったところ、全てのp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体が水中に溶出してしまい、非水溶性化合物を含むアレルゲン抑制剤を得ることができなかった。
【0147】
(比較例2)
水溶性重合体としてp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体(p−スチレンスルホン酸ナトリウムホモポリマー)を含む水溶液(東ソー有機化学社製 商品名「PS−100」、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体含有量:20重量%、重量平均分子量(Mw):52.9万、Z平均分子量(Mz):75.8万)90重量%とPEG#600ジアクリレート(共栄社化学株式会社製 商品名「ライトアクリレート14EGA」)10重量%とを含む混合溶液4.2gを合成樹脂製袋(生産日本社製 商品名「ユニパックC−8」)に入れて、混合溶液の厚さが0.08mmとなるように拡げた。なお、合成樹脂製袋内の空気を全て窒素で置換した。
【0148】
しかる後、合成樹脂製袋内のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体に電子線を加速電圧300keVにて500kGy照射してp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を架橋し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体を得た。
【0149】
得られたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体をこの反応体の重量の100倍の重量を有する水に供給して分散水を作製し、この分散水を25℃にて撹拌しながら1時間に亘って放置し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体中に含まれている水溶性のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を水中に溶出させた。
【0150】
次に、分散水を遠心分離器を用いて15℃にて8000rpmの回転速度にて3分間に亘って遠心分離した。上述の工程を3回に亘って繰り返して行い、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体から、架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を分離し、この架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を非水溶性化合物として含むアレルゲン抑制剤を得た。
【0151】
(比較例3)
水溶性重合体としてp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体(p−スチレンスルホン酸ナトリウムホモポリマー)を含む水溶液(東ソー有機化学社製 商品名「PS−100」、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体含有量:20重量%、重量平均分子量(Mw):52.9万、Z平均分子量(Mz):75.8万)90重量%とトリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学株式会社製商品名「ライトアクリレート3EGA」)10重量%とを含む混合溶液4.2gを合成樹脂製袋(生産日本社製 商品名「ユニパックC−8」)に入れて、混合溶液の厚さが0.08mmとなるように拡げた。なお、合成樹脂製袋内の空気を全て窒素で置換した。
【0152】
しかる後、合成樹脂製袋内のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体に電子線を加速電圧300keVにて500kGy照射してp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を架橋し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体を得た。
【0153】
得られたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体をこの反応体の重量の100倍の重量を有する水に供給して分散水を作製し、この分散水を25℃にて撹拌しながら1時間に亘って放置し、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体中に含まれている水溶性のp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を水中に溶出させた。
【0154】
次に、分散水を遠心分離器を用いて15℃にて8000rpmの回転速度にて3分間に亘って遠心分離した。上述の工程を3回に亘って繰り返して行い、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体の反応体から、架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を分離し、この架橋されたp−スチレンスルホン酸ナトリウム単独重合体を非水溶性化合物として含むアレルゲン抑制剤を得た。
【0155】
実施例及び比較例で得られた非水溶性化合物のJIS K7209に準拠した吸水率を上述の要領で測定すると共に、実施例及び比較例で得られたアレルゲン抑制剤のアレルゲン抑制能を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0156】
(アレルゲン抑制能)
アレルゲンの冷結乾燥粉末(コスモ・バイオ社製 商品名「MiteExtract−Df」)をリン酸バッファー(pH7.6)に溶解させて、タンパク量が20μg/ミリリットルのアレルゲン水溶液を調製した。
【0157】
上記アレルゲン水溶液を1ミリリットルづつ供給した試験管を用意した。上記アレルゲン抑制剤1mg又は5mgをそれぞれ別々の試験管に添加し、37℃で24時間に亘って振盪した。
【0158】
次に、試験管内のアレルゲン水溶液100マイクロリットルを、アレルゲン測定具(住化エンビロサイエンス社製商品名「マイティーチェッカー」)に添加し、アレルゲン測定具の発色度合いを目視観察して下記の基準によりアレルゲン抑制能を評価した。なお、アレルゲン測定具の発色が濃いほどアレルゲンが液中に濃い濃度で存在している。
【0159】
5…濃く、太くはっきりとしたラインが観測された。
4…ラインであることがはっきりと分かる。
3…ライン状にうっすらと発色している。
2…うっすらと発色している。
1…全く発色していない。
【0160】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状高分子の側鎖に一般式(1)で示される構造式の置換基を有する水溶性重合体を架橋してなり且つJIS K7209に準拠した吸水率が4900%以上である非水溶性化合物を含有することを特徴とするアレルゲン抑制剤。
【化1】


(mは0〜2の整数を示し、R1〜R5はそれぞれ、水素、カルボキシ基、スルホン酸基、アミノ基、カルボキシ基の塩、スルホン酸基の塩又はアミノ基の塩の何れかであって、R1〜R5のうちの少なくとも一つは、カルボキシ基、スルホン酸基、アミノ基、カルボキシ基の塩、スルホン酸基の塩又はアミノ基の塩である。)
【請求項2】
非水溶性化合物が、スチレンスルホン酸塩成分を含む重合体であることを特徴とする請求項1に記載のアレルゲン抑制剤。
【請求項3】
非水溶性化合物がスチレンスルホン酸塩単独重合体であることを特徴とする請求項2に記載のアレルゲン抑制剤。
【請求項4】
非水溶性化合物が、ポリスチレンをスルホン化してなる化合物であることを特徴とする請求項1に記載のアレルゲン抑制剤。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のアレルゲン抑制剤をアレルゲン対象物に処理してなることを特徴とするアレルゲン抑制製品。
【請求項6】
アレルゲン対象物が、フィルター、建築内装材、繊維製品、車輛内用品又は車輛内装材であることを特徴とする請求項5に記載のアレルゲン抑制製品。

【公開番号】特開2012−1631(P2012−1631A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137721(P2010−137721)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】