説明

アレーンルテニウム(II)化合物及び癌の治療におけるそれらの使用

式(I)[式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、H、C1-7アルキル、C5-20アリール、C3-20ヘテロシクリル、ハロ、エステル、アミド、アシル、スルホ、スルホンアミド、エーテル、チオエーテル、アゾ及びアミノから選択されるか、又は、R1とR2はそれらが結合している環と一緒になって、3員〜8員の炭素環又はヘテロ環を最大3つ含んでいる飽和又は不飽和の炭素環式基又はヘテロ環式基(ここで、炭素環又はヘテロ環の各環は、1つ以上の他の炭素環又はヘテロ環に縮合していてもよい)を形成しており;Xは、中性であるか又は負に荷電しているN-ドナー配位子又はS-ドナー配位子であり;Yは、対イオンであり;mは、0又は1であり;qは、1、2又は3であり;C'は、2つのA基に結合しているC1-12アルキレンであり;pは、0又は1であり、pが0である場合はrは1であり、pが1である場合はrは2であり;A及びBは、それぞれ独立して、O-ドナー配位子、N-ドナー配位子又はS-ドナー配位子であり、そして、互いに連結していてもよい]で表されるルテニウム(II)化合物又はその溶媒和物若しくはプロドラッグ。該化合物は、癌の治療で使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテニウム(II)化合物、医薬におけるそれらの使用、特に、癌を治療及び/又は予防するための医薬におけるそれらの使用、並びに、それらを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WO 01/30790及びWO 02/02572には、癌の治療において使用するためのルテニウム(II)化合物が開示されている。それらの化合物は、ルテニウムに結合したアレーン環及び別の非アレーン配位子を有する半サンドイッチ化合物として記載することができる。上記出願において例示された化合物は、配位子のうちの1つとしてハロ原子を有している。理論に縛られることは望まないが、ハロ原子が加水分解されることにより当該錯体が活性化され、それによりDNAに結合できるようになると考えられる。
【発明の開示】
【0003】
本発明者らは、ハロを含んでいる多くの異なった配位子の加水分解速度について研究し、驚くべきことに、これまで以上に長い加水分解時間を要する配位子を含んでいる錯体であっても、抗腫瘍活性を示すということを見いだした。
【0004】
本発明により、式(I):
【化1】

で表されるルテニウム(II)化合物又はその溶媒和物若しくはプロドラッグが提供され、ここで、上記式中、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、H、C1-7アルキル、C5-20アリール、C3-20ヘテロシクリル、ハロ、エステル、アミド、アシル、スルホ、スルホンアミド、エーテル、チオエーテル、アゾ及びアミノから選択されるか、又は、R1とR2はそれらが結合している環と一緒になって、3員〜8員の炭素環又はヘテロ環を最大3つ含んでいる飽和又は不飽和の炭素環式基又はヘテロ環式基(ここで、炭素環又はヘテロ環の各環は、1つ以上の他の炭素環又はヘテロ環に縮合していてもよい)を形成しており;
Xは、中性であるか又は負に荷電しているN-ドナー配位子又はS-ドナー配位子であり;
Yは、対イオンであり;
mは、0又は1であり;
qは、1、2又は3であり;
C'は、2つのA基に結合しているC1-12アルキレンであり;
pは、0又は1であり、pが0である場合はrは1であり、pが1である場合はrは2であり;
及び、
A及びBは、それぞれ独立して、O-ドナー配位子、N-ドナー配位子又はS-ドナー配位子である。
【0005】
pが1である場合、配位子Aは、当該化合物が2個のルテニウム原子を含むように、もう1つの配位子Aと結合している。そのような錯体は、複核錯体と称される。
【0006】
配位子A及び配位子Bは、互いに連結していてもよいが、それらは、配位子Xに連結することはできない。
【0007】
本発明の第二の態様により、第一の態様の化合物と製薬上許容される担体又は希釈剤を含んでいる組成物が提供される。
【0008】
本発明の第三の態様により、治療方法における第一の態様の化合物の使用が提供される。
【0009】
本発明の第四の態様により、癌を治療するための医薬の調製における第一の態様の化合物の使用が提供される。
【0010】
本発明の第五の態様により、癌を患っている被験者を治療する方法が提供され、ここで、該方法は、該被験者に、治療上有効量の第一の態様の化合物、好ましくは、医薬組成物の形態にある治療上有効量の第一の態様の化合物を投与することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
定義
N-ドナー配位子:N-ドナー配位子は、窒素原子を介して金属原子に結合している配位子である。それらは、当技術分野ではよく知られており、ニトリル配位子(N≡C-R);アゾ配位子(N=N-R);芳香族N-ドナー配位子;アミン配位子(NRN1RN2RN3);アジド(N3-);シアニド(N≡C-);イソチオシアネート(NCS-)などが包含される。
【0012】
ニトリル配位子とアゾ配位子の両方において、Rは、C1-7アルキル及びC5-20アリールから選択し得る。
【0013】
芳香族N-ドナー配位子としては、場合により置換されていてもよいピリジン、ピリダジン、ピリミジン、プリン及びピラジンなどがある。その場合により存在させる置換基は、シアノ、ハロ及びC1-7アルキルから選択し得る。
【0014】
RN1、RN2及びRN3は、独立して、H及びC1-7アルキルから選択でき、又は、AとBが両方ともアミン配位子である場合、各配位子上のRN1は一緒になってC1-7アルキレン鎖を形成している。
【0015】
pが1である場合、各A配位子上のRN2は一緒になって基C'(ここで、基C'はC1-12アルキレンである)を形成している。
【0016】
S-ドナー配位子:S-ドナー配位子は、硫黄原子を介して金属原子に結合している配位子である。それらは、当技術分野ではよく知られており、チオスルフェート(S2O32-);イソチオシアネート(NCS-);チオシアネート(CNS-);スルホキシド配位子(RS1RS2SO);チオエーテル配位子(RS1RS2S);チオラート配位子(RS1S-);スルフィネート配位子(RS1SO2-);及び、スルフェネート配位子(RS1SO-)などが包含され、ここで、RS1及びRS2は、独立して、場合により置換されていてもよいC1-7アルキル基及びC5-20アリール基から選択される。
【0017】
O-ドナー配位子:O-ドナー配位子は、酸素原子を介して金属原子に結合している配位子である。それらは、当技術分野ではよく知られており、カルボネート(CO3-);カルボキシレート配位子(RCCO2-);ニトレート(NO3-);スルフェート(SO42-);及び、スルホネート(RS1O3-)などが包含され、ここで、RCは、C1-7アルキル及びC5-20アリールから選択され、RS1は、上記で定義されているとおりである。
【0018】
C1-7アルキル:用語「C1-7アルキル」は、本明細書で使用される場合、1〜7個の炭素原子を有する炭化水素化合物の炭素原子から水素原子を除去することによって得られた一価部分に関し、ここで、該炭化水素化合物は、脂肪族又は脂環式であることができ、また、飽和していても又は不飽和(例えば、部分的な不飽和、完全な不飽和)であってもよい。従って、用語「アルキル」には、そのサブクラスとして、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルなどが包含される。これらについては、以下で論じる。
【0019】
飽和C1-7アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、ブチル(C4)、ペンチル(C5)、ヘキシル(C6)及びヘプチル(C7)などを挙げることができる。
【0020】
飽和直鎖C1-7アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、n-ブチル(C4)、n-ペンチル(アミル)(C5)、n-ヘキシル(C6)及びn-ヘプチル(C7)などを挙げることができる。
【0021】
飽和分枝鎖C1-7アルキル基の例としては、イソプロピル(C3)、イソブチル(C4)、s-ブチル(C4)、t-ブチル(C4)、イソペンチル(C5)及びネオペンチル(C5)などを挙げることができる。
【0022】
C2-7アルケニル:用語「C2-7アルケニル」は、本明細書で使用される場合、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有するアルキル基に関する。C2-7アルケニル基の例としては、限定するものではないが、エテニル(ビニル、-CH=CH2)、1-プロペニル(-CH=CH-CH3)、2-プロペニル(アリル、-CH-CH=CH2)、イソプロペニル(1-メチルビニル、-C(CH3)=CH2)、ブテニル(C4)、ペンテニル(C5)及びヘキセニル(C6)などを挙げることができる。
【0023】
C2-7アルキニル:用語「C2-7アルキニル」は、本明細書で使用される場合、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有するアルキル基に関する。C2-7アルキニル基の例としては、限定するものではないが、エチニル(-C≡CH)及び2-プロピニル(プロパルギル、-CH2-C≡CH)などを挙げることができる。
【0024】
C3-7シクロアルキル:用語「C3-7シクロアルキル」は、本明細書で使用される場合、シクリル基でもあるアルキル基、即ち、炭素環式化合物の炭素環の脂環式環原子から水素原子を除去することによって得られた一価部分に関し、ここで、該炭素環は、飽和していても又は不飽和(例えば、部分的な不飽和、完全な不飽和)であってもよく、該一価部分は、3〜7個の炭素原子を有する。従って、用語「C3-7シクロアルキル」には、そのサブクラスとして、シクロアルケニル及びシクロアルキニルが包含される。シクロアルキル基の例としては、限定するものではないが、以下のものから誘導される基などを挙げることができる:
飽和炭化水素化合物:
シクロプロパン(C3)、シクロブタン(C4)、シクロペンタン(C5)、シクロヘキサン(C6)、シクロヘプタン(C7)、メチルシクロプロパン(C4)、ジメチルシクロプロパン(C5)、メチルシクロブタン(C5)、ジメチルシクロブタン(C6)、メチルシクロペンタン(C6)、ジメチルシクロペンタン(C7)、メチルシクロヘキサン(C7);
及び、
不飽和炭化水素化合物:
シクロプロペン(C3)、シクロブテン(C4)、シクロペンテン(C5)、シクロヘキセン(C6)、メチルシクロプロペン(C4)、ジメチルシクロプロペン(C5)、メチルシクロブテン(C5)、ジメチルシクロブテン(C6)、メチルシクロペンテン(C6)、ジメチルシクロペンテン(C7)。
【0025】
本発明化合物内のアルキル基は、場合により、置換されていてもよい。置換基としては、以下のものを挙げることができる:1つ以上のさらなるアルキル基、及び/又は、1つ以上のさらなる置換基、例えば、C5-20アリール(例えば、ベンジル)、C3-20ヘテロシクリル、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO2)、ヒドロキシル(-OH)、エステル、ハロ、チオール(-SH)、チオエーテル及びスルホネート(-S(=O)2)OR(ここで、Rは、スルホネート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である)。
【0026】
C2-12アルキレン:用語「C2-12アルキレン」は、C2からC12の基を包含すること及び鎖内で連結されている2個以上(例えば、2〜12個)の炭素原子で隔てられているラジカルを有する二価の化学種であることを除き、用語「アルキル」の定義と同様に定義される。好ましくは、該アルキレン基は、直鎖基である。C2-12アルキレン基は、該アルキレン鎖内において、好ましくは1つ以上のフェニレン(例えば、1〜4のフェニレン)及び/又は-CONR1a-基及び/又は-NR2a-基(ここで、R1a及びR2aは、独立して、H、C1-7アルキル、C3-20ヘテロシクリル又はC5-20アリールを表す)で、場合により置換されていてもよい。好ましくは、R1a及びR2aは、H又はC1〜C3のアルキルである。
【0027】
C5-20アリール:用語「C5-20アリール」は、本明細書で使用される場合、芳香族化合物の芳香族環原子から水素原子を除去することによって得られた一価部分に関し、ここで、該一価部分は、3〜20個の環原子を有する。好ましくは、各環は、5〜7個の環原子を有する。
【0028】
これに関連して、接頭辞(例えば、C3-20、C5-7、C5-6など)は、炭素原子であろうと又はヘテロ原子であろうと、環原子の数、又は、環原子の数の範囲を表している。例えば、用語「C5-6アリール」は、本明細書で使用される場合、5個又は6個の環原子を有するアリール基に関する。
【0029】
該環原子は、「カルボアリール基」における場合のように、全て炭素原子であってもよい。カルボアリール基の例としては、C3-20カルボアリール、C5-20カルボアリール、C5-15カルボアリール、C5-12カルボアリール、C5-10カルボアリール、C5-7カルボアリール、C5-6カルボアリール、C5カルボアリール及びC6カルボアリールなどを挙げることができる。
【0030】
カルボアリール基の例としては、限定するものではないが、以下のものから誘導される基を挙げることができる:ベンゼン(即ち、フェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アズレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、ナフタセン(C18)及びピレン(C16)。
【0031】
縮合環を含んでいて、その環のうちの少なくとも1つは芳香族環であるアリール基の例としては、限定するものではないが、以下のものから誘導される基を挙げることができる:インダン(例えば、2,3-ジヒドロ-1H-インデン)(C9)、インデン(C9)、イソインデン(C9)、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)(C10)、アセナフテン(C12)、フルオレン(C13)、フェナレン(C13)、アセフェナントレン(C15)及びアセアントレン(C16)。
【0032】
あるいは、該環原子は、「ヘテロアリール基」における場合のように、1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロアリール基の例としては、C3-20ヘテロアリール、C5-20ヘテロアリール、C5-15ヘテロアリール、C5-12ヘテロアリール、C5-10ヘテロアリール、C5-7ヘテロアリール、C5-6ヘテロアリール、C5ヘテロアリール及びC6ヘテロアリールなどを挙げることができる。
【0033】
単環式ヘテロアリール基の例としては、限定するものではないが、以下のものから誘導される基を挙げることができる:
N1: ピロール(アゾール)(C5)、ピリジン(アジン)(C6);
O1: フラン(オキソール(oxole))(C5);
S1: チオフェン(チオール(thiole))(C5);
N1O1: オキサゾール(C5)、イソオキサゾール(C5)、イソオキサジン(C6);
N2O1: オキサジアゾール(フラザン)(C5);
N3O1: オキサトリアゾール(C5);
N1S1: チアゾール(C5)、イソチアゾール(C5);
N2: イミダゾール(1,3-ジアゾール)(C5)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)(C5)、ピリダジン(1,2-ジアジン)(C6)、ピリミジン(1,3-ジアジン)(C6)(例えば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4-ジアジン)(C6);
N3: トリアゾール(C5)、トリアジン(C6);
及び
N4: テトラゾール(C5)。
【0034】
縮合環を含んでいるヘテロアリール基の例としては、限定するものではないが、以下のものを挙げることができる:
以下のものから誘導されるC9ヘテロアリール基(2つの縮合環含有):ベンゾフラン(O1)、イソベンゾフラン(O1)、インドール(N1)、イソインドール(N1)、インドリジン(N1)、インドリン(N1)、イソインドリン(N1)、プリン(N4)(例えば、アデニン、グアニン)、ベンゾイミダゾール(N2)、インダゾール(N2)、ベンゾオキサゾール(N1O1)、ベンゾイソオキサゾール(N1O1)、ベンゾジオキソール(O2)、ベンゾフラザン(N2O1)、ベンゾトリアゾール(N3)、ベンゾチオフラン(S1)、ベンゾチアゾール(N1S1)、ベンゾチアジアゾール(N2S);
以下のものから誘導されるC10ヘテロアリール基(2つの縮合環含有):クロメン(O1)、イソクロメン(O1)、クロマン(O1)、イソクロマン(O1)、ベンゾジオキサン(O2)、キノリン(N1)、イソキノリン(N1)、キノリジン(N1)、ベンゾオキサジン(N1O1)、ベンゾジアジン(N2)、ピリドピリジン(N2)、キノキサリン(N2)、キナゾリン(N2)、シンノリン(N2)、フタラジン(N2)、ナフチリジン(N2)、プテリジン(N4);
以下のものから誘導されるC11ヘテロアリール基(2つの縮合環含有):ベンゾジアゼピン(N2);
以下のものから誘導されるC13ヘテロアリール基(3つの縮合環含有):カルバゾール(N1)、ジベンゾフラン(O1)、ジベンゾチオフェン(S1)、カルボリン(N2)、ペリミジン(N2)、ピリドインドール(N2);
及び、
以下のものから誘導されるC14ヘテロアリール基(3つの縮合環含有):アクリジン(N1)、キサンテン(O1)、チオキサンテン(S1)、オキサントレン(O2)、フェノキサチイン(O1S1)、フェナジン(N2)、フェノキサジン(N1O1)、フェノチアジン(N1S1)、チアントレン(S2)、フェナントリジン(N1)、フェナントロリン(N2)、フェナジン(N2)。
【0035】
C5-20アリール基は、C1-7アルキル、C5-20アリール、C3-20ヘテロシクリル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、エステル、ハロ、チオール、チオエーテル及びスルホネートなどの1つ以上の置換基で、場合により置換されていてもよい。
【0036】
C3-20ヘテロシクリル:用語「C3-20ヘテロシクリル」は、本明細書で使用される場合、ヘテロ環式化合物の環原子から水素原子を除去することによって得られた一価部分に関し、ここで、該一価部分は、3〜20個の環原子を有し、そのうちの1〜10個は環ヘテロ原子である。好ましくは、各環は、3〜7個の環原子を有し、そのうちの1〜4個は環ヘテロ原子である。
【0037】
これに関連して、接頭辞(例えば、C3-20、C3-7、C5-6など)は、炭素原子であろうと又はヘテロ原子であろうと、環原子の数、又は、環原子の数の範囲を表している。例えば、用語「C5-6ヘテロシクリル」は、本明細書で使用される場合、5個又は6個の環原子を有するヘテロシクリル基に関する。ヘテロシクリル基の群の例には、C3-20ヘテロシクリル、C5-20ヘテロシクリル、C3-15ヘテロシクリル、C5-15ヘテロシクリル、C3-12ヘテロシクリル、C5-12ヘテロシクリル、C3-10ヘテロシクリル、C5-10ヘテロシクリル、C3-7ヘテロシクリル、C5-7ヘテロシクリル及びC5-6ヘテロシクリルなどがある。
【0038】
単環式ヘテロシクリル基の例としては、限定するものではないが、以下のものから誘導される基を挙げることができる:
N1: アジリジン(C3)、アゼチジン(C4)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C5)、ピロリン(例えば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロール又は3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7);
O1: オキシラン(C3)、オキセタン(C4)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C5)、オキソール(ジヒドロフラン)(C5)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C6)、ジヒドロピラン(C6)、ピラン(C6)、オキセピン(C7);
S1: チイラン(C3)、チエタン(C4)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C5)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C6)、チエパン(C7);
O2: ジオキソラン(C5)、ジオキサン(C6)、ジオキセパン(C7);
O3: トリオキサン(C6);
N2: イミダゾリジン(C5)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6);
N1O1: テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソオキサゾール(C5)、ジヒドロイソオキサゾール(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6);
N1S1: チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6);
N2O1: オキサジアジン(C6);
O1S1: オキサチオール(C5)、オキサチアン(チオキサン)(C6);
及び
N1O1S1: オキサチアジン(C6)。
【0039】
C3-20ヘテロシクリル基は、C1-7アルキル、C5-20アリール、C3-20ヘテロシクリル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、エステル、ハロ、チオール、チオエーテル及びスルホネートなどの1つ以上の置換基で、場合により置換されていてもよい。
【0040】
ハロ:-F、-Cl、-Br、及び、-I。
【0041】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):-C(=O)OR、ここで、Rは、エステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくは、C1-7アルキル基である。エステル基の例としては、限定するものではないが、-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3、-C(=O)OC(CH3)3及び-C(=O)OPhなどを挙げることができる。
【0042】
アミノ:-NR1R2、ここで、R1及びR2は、独立して、アミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアミノ又はジ-C1-7アルキルアミノとも称される)、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくは、H又はC1-7アルキル基である。あるいは、「環状」アミノ基である場合は、R1とR2は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4〜8個の環原子を有するヘテロ環を形成している。アミノ基は、第一級(-NH2)でも、第二級(-NHR1)でも、又は第三級(-NHR1R2)でもよい。また、カチオン形態では、第四級(-+NR1R2R3)であってもよい。アミノ基の例としては、限定するものではないが、-NH2、-NHCH3、-NHC(CH3)2、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、-NHCH2Ph及び-NHPhなどを挙げることができる。環状アミノ基の例としては、限定するものではないが、アジリジノ、アゼチジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノ及びチオモルホリノなどを挙げることができる。
【0043】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキサミド):-C(=O)NR1R2、ここで、R1及びR2は、独立して、アミノ基に関して定義したアミノ置換基である。アミド基の例としては、限定するものではないが、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)N(CH3)2、-C(=O)NHCH2CH3及び-C(=O)N(CH2CH3)2などを挙げることができ、また、R1とR2がそれらが結合している窒素原子と一緒になって、例えば、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル及びピペラジノカルボニルなどにおけるような、ヘテロ環式構造を形成しているアミド基も挙げることができる。
【0044】
アシル(ケト):-C(=O)R、ここで、Rは、アシル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアシル又はC1-7アルカノイルとも称される)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルアシルとも称される)又はC5-20アリール基(C5-20アリールアシルとも称される)であり、好ましくは、C1-7アルキル基である。アシル基の例としては、限定するものではないが、-C(=O)CH3(アセチル)、-C(=O)CH2CH3(プロピオニル)、-C(=O)C(CH3)3(t-ブチリル)及び-C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)などを挙げることができる。
【0045】
スルホ:-S(=O)2OH、-SO3H。
【0046】
スルホンアミド(スルフィンアモイル;スルホン酸アミド;スルホンアミド):-S(=O)2NR1R2、ここで、R1及びR2は、独立して、アミノ基に関して定義したアミノ置換基である。スルホンアミド基の例としては、限定するものではないが、-S(=O)2NH2、-S(=O)2NH(CH3)、-S(=O)2N(CH3)2、-S(=O)2NH(CH2CH3)、-S(=O)2N(CH2CH3)2及び-S(=O)2NHPhなどを挙げることができる。
【0047】
エーテル:-OR、ここで、Rは、エーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルコキシ基とも称される)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルオキシ基とも称される)又はC5-20アリール基(C5-20アリールオキシ基とも称される)であり、好ましくは、C1-7アルキル基である。
【0048】
チオエーテル(スルフィド):-SR、ここで、Rは、チオエーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルチオ基とも称される)、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくは、C1-7アルキル基である。C1-7アルキルチオ基の例としては、限定するものではないが、-SCH3及び-SCH2CH3などを挙げることができる。
【0049】
アゾ:-N=N-R、ここで、Rは、アゾ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくは、C1-7アルキル基である。アゾ基の例としては、限定するものではないが、-N=N-CH3及び-N=N-Phなどを挙げることができる。
【0050】
ヘテロ環:用語「ヘテロ環」は、本明細書で使用される場合、N、O及びSから独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を含んでいる、3員、4員、5員、6員、7員又は8員(好ましくは、5員、6員又は7員)の飽和又は不飽和の環(ここで、該環は、芳香族でも非芳香族でもよい)、例えば、インドールを意味する(上記も参照されたい)。
【0051】
炭素環:用語「炭素環」は、本明細書で使用される場合、3〜8個の炭素原子(好ましくは、5〜7個の炭素原子)を含んでいる、飽和又は不飽和の環(ここで、該環は、芳香族でも非芳香族でもよい)を意味し、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン及びシクロヘプタンなどを挙げることができる(上記も参照されたい)。
【0052】
包含される他の形態
特に別途示されていない限り、上記には、それら置換基のよく知られているイオン形態、溶媒和物形態及び保護されている形態が包含される。例えば、カルボン酸(-COOH)について言及されている場合、それは、該カルボン酸のアニオン(カルボキシレート)形態(-COO-)又は溶媒和物も包含し、また、慣用の保護形態も包含する。同様に、アミノ基について言及されている場合、それは、該アミノ基のプロトン化形態(-N+HR1R2)又は溶媒和物も包含し、また、アミノ基の慣用の保護形態も包含している。同様に、ヒドロキシル基について言及されている場合、それは、該ヒドロキシル基のアニオン形態(-O-)又は溶媒和物も包含し、また、ヒドロキシル基の慣用の保護形態も包含している。
【0053】
異性体
特定の化合物は、1種類以上の特定の幾何異性体、光学異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、エピマー、アトロピック(atropic)、立体異性体、互変異性体、配座異性体又はアノマーで存在し得る。そのような形態には、限定するものではないが、シス型及びトランス型;E型及びZ型;c型、t型及びr型;エンド型及びエキソ型;R型、S型及びメソ型;D型及びL型;d型及びl型;(+)型及び(−)型;ケト型、エノール型及びエノラート型;シン型及びアンチ型;シンクリナル型及びアンチクリナル型;α型及びβ型;アキシアル型及びエクアトリアル型;舟型、いす型、ねじれ型、エンベロープ型及び半いす型;並びに、それらの組合せなどがある。以下では、集合的に、「異性体」(又は、「異性体形態」)と称する。
【0054】
ここで留意すべきことは、互変異性体についての以下の記述を除いて、構造異性体(即ち、単に空間内の原子の位置によるのではなく、原子間の結合が異なっている異性体)は、本明細書で使用されている用語「異性体」から明確に「除外」されるということである。例えば、メトキシ基(-OCH3)について言及されている場合、それは、その構造異性体であるヒドロキシメチル基(-CH2OH)について言及していると解釈されるべきではない。同様に、オルト-クロロフェニルについて言及されている場合、それは、その構造異性体であるメタ-クロロフェニルについて言及していると解釈されるべきではない。しかしながら、ある類の構造についての言及は、その類の範囲に入る構造異性体の形態を適切に含み得る(例えば、C1-7アルキルは、n-プロピル及びイソプロピルを包含し;ブチルは、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル及びt-ブチルを包含し;メトキシフェニルは、オルト-メトキシフェニル、メタ-メトキシフェニル及びパラ-メトキシフェニルを包含する)。
【0055】
上記で記載した「除外」は、互変異性体、例えば、以下の互変異性体の対:ケト/エノール(以下で例示)、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール、N-ニトロソ/ヒドロキシアゾ、及び、ニトロ/アシ-ニトロなどにおけるような、例えば、ケト形、エノール形及びエノラート形には当てはまらない。
【化2】

【0056】
ここで留意すべきことは、1つ以上の同位体の置換基を有する化合物は、用語「異性体」に明確に含まれるということである。例えば、Hは、1H、2H(D)及び3H(T)などのいずれの同位体の形態であってもよく;Cは、12C、13C及び14Cなどのいずれの同位体の形態であってもよく;Oは、16O及び18Oなどのいずれの同位体の形態であってもよい。
【0057】
特に別途示されていない限り、特定の化合物についての言及は、そのような全ての異性体を包含し、その際、該異性体は、(完全な又は部分的な)ラセミ混合物及び他の混合物、例えば、一方のエナンチオマーを多く含んでいる混合物などを包含している。そのような異性体の調製方法(例えば、不斉合成)及び分離方法(例えば、分別結晶及びクロマトグラフィー法)は、当技術分野で公知であるか、又は、当技術分野で教示されている方法若しくは公知方法を知られているやり方で適合させることにより容易に実施することができる。
【0058】
溶媒和物
当該活性化合物の対応する溶媒和物を、調製すること、精製すること及び/又は取り扱うことは、都合がよいか又は望ましい場合がある。用語「溶媒和物」は、本明細書では、慣用の意味で使用され、溶質(例えば、活性化合物、活性化合物の塩)と溶媒の錯体のことを示している。溶媒が水である場合、当該溶媒和物は、好都合には、水和物、例えば、一水和物、二水和物、三水和物などと称してもよい。
【0059】
特に別途示されていない限り、特定の化合物についての言及は、その溶媒和物形態も包含する。
【0060】
化学的に保護されている形態
化学的に保護されている形態にある活性化合物を、調製すること、精製すること及び/又は取り扱うことは、都合がよいか又は望ましい場合がある。用語「化学的に保護されている形態」は、本明細書では、慣用の化学的意味で使用され、含まれている1つ以上の反応性官能基が特定の条件下(例えば、pH、温度、放射、溶媒など)において望ましくない化学的反応から保護されている化合物に関連している。実際には、特定の条件下において反応性を有するであろう官能基を、よく知られている化学的方法を用いて可逆的に非反応性とする。化学的に保護されている形態においては、1つ以上の反応性官能基は、保護されている基又は保護基(マスクされている基若しくはマスク基、又は、ブロックされている基若しくはブロック基としても知られている)の形態にある。反応性官能基を保護することにより、その保護された基に影響を及ぼすことなく、保護されていない別の反応性官能基が関与する反応を行わせることができる。その保護基は、通常、その後の段階で、当該分子の残りの部分に実質的な影響を及ぼすことなく取り除くことができる。例えば、以下の文献を参照されたい:Protective Groups in Organic Synthesis (T.Green and P.Wuts;3rd Edition;John Wiley and Sons, 1999)。
【0061】
特に別途示されていない限り、特定の化合物についての言及は、その化学的に保護された形態も包含する。
【0062】
有機合成においては、広範な、当該「保護」方法、「ブロック」方法又は「マスク」方法が広く使用され、また、よく知られている。例えば、反応性が等価ではないが特定の条件下ではいずれも反応性を示すであろう2つの官能基を有する化合物は、当該官能基の一方を「保護」し、その結果、当該特定条件下において非反応性となるように誘導体化することができる。そのように保護することにより、該化合物は、効果的に1つの反応性官能基のみを有する反応体として用いることができる。所望の反応(保護しなかった方の官能基が関与する反応)が完結した後、当該保護されている基を「脱保護」して、元の官能性に戻すことができる。
【0063】
例えば、ヒドロキシ基は、エーテル(-OR)又はエステル(-OC(=O)R)として、例えば、t-ブチルエーテルとして、ベンジルエーテル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)エーテル若しくはトリチル(トリフェニルメチル)エーテルとして、トリメチルシリルエーテル若しくはt-ブチルジメチルシリルエーテルとして、又は、アセチルエステル(-OC(=O)CH3, -OAc)として、保護することができる。
【0064】
例えば、アルデヒド基又はケトン基は、例えば、第一級アルコールと反応させることにより、それぞれ、アセタール(R-CH(OR)2)又はケタール(R2C(OR)2)として保護することができる。その際、当該カルボニル基(>C=O)は、ジエーテル(>C(OR)2)に変換される。酸の存在下で大過剰量の水を用いて加水分解することにより、アルデヒド基又はケトン基を容易に再生させることができる。
【0065】
例えば、アミン基は、例えば、アミド(-NRCO-R)又はウレタン(-NRCO-OR)として、例えば、メチルアミド(-NHCO-CH3)として、ベンジルオキシアミド(-NHCO-OCH2C6H5, -NH-Cbz)として、t-ブトキシアミド(-NHCO-OC(CH3)3, -NH-Boc)として、2-ビフェニル-2-プロポキシアミド(-NHCO-OC(CH3)2C6H4C6H5, -NH-Bpoc)として、9-フルオレニルメトキシアミド(-NH-Fmoc)として、6-ニトロベラトリルオキシアミド(-NH-Nvoc)として、2-トリメチルシリルエチルオキシアミド(-NH-Teoc)として、2,2,2-トリクロロエチルオキシアミド(-NH-Troc)として、アリルオキシアミド(-NH-Alloc)として、若しくは、2(-フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(-NH-Psec)として保護することができるか、又は、適切な場合には(例えば、環状アミン)、ニトロキシドラジカル(>N-O・)として保護することができる。
【0066】
例えば、カルボン酸基は、エステルとして、例えば、C1-7アルキルエステル(例えば、メチルエステル、t-ブチルエステル)として、C1-7ハロアルキルエステル(例えば、C1-7トリハロアルキルエステル)として、トリC1-7アルキルシリル-C1-7アルキルエステルとして、若しくは、C5-20アリール-C1-7アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル, ニトロベンジルエステル)として保護することができるか、又は、アミドとして、例えば、メチルアミドとして保護することができる。
【0067】
例えば、チオール基は、チオエーテル(-SR)として、例えば、ベンジルチオエーテルとして、又は、アセトアミドメチルエーテル(-S-CH2NHC(=O)CH3)として保護することができる。
【0068】
プロドラッグ
プロドラッグの形態にある当該活性化合物を、調製すること、精製すること及び/又は取り扱うことは、都合がよいか又は望ましい場合がある。用語「プロドラッグ」は、本明細書で使用される場合、代謝されたときに(例えば、インビボで)、所望の活性化合物を生成する化合物に関する。典型的には、該プロドラッグは不活性であるか又は当該活性化合物よりも活性が低いが、しかしながら、有利な取扱い特性、投与特性又は代謝特性をもたらし得る。
【0069】
特に別途示されていない限り、特定の化合物についての言及は、そのプロドラッグも包含する。
【0070】
例えば、一部のプロドラッグは、該活性化合物のエステル(例えば、代謝による変化を受けやすい生理学的に許容されるエステル)である。代謝中に、該エステル基(-C(=O)OR)が切断されて、活性な薬物を生じる。そのようなエステルは、適切な場合には親化合物内に存在している他の任意の反応性基を前もって保護した後、親化合物内の例えばカルボン酸基(-C(=O)OH)のいずれかをエステル化することにより形成させることが可能であり、その後、必要に応じて脱保護する。
【0071】
そのような代謝による変化を受けやすいエステルの例としては、式-C(=O)ORで表されるエステルなどを挙げることができ、ここで、Rは、以下のとおりである:
C1-7アルキル
(例えば、-Me、-Et、-nPr、-iPr、-nBu、-sBu、-iBu、-tBu);
C1-7アミノアルキル
(例えば、アミノエチル;2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル;2-(4-モルホリノ)エチル);
及び
アシルオキシ-C1-7アルキル
(例えば、アシルオキシメチル;
アシルオキシエチル;
ピバロイルオキシメチル;
アセトキシメチル;
1-アセトキシエチル;
1-(1-メトキシ-1-メチル)エチル-カルボンキシルオキシエチル;
1-(ベンゾイルオキシ)エチル;イソプロポキシ-カルボニルオキシメチル;
1-イソプロポキシ-カルボニルオキシエチル;シクロヘキシル-カルボニルオキシメチル;
1-シクロヘキシル-カルボニルオキシエチル;
シクロヘキシルオキシ-カルボニルオキシメチル;
1-シクロヘキシルオキシ-カルボニルオキシエチル;
(4-テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシメチル;
1-(4-テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシエチル;
(4-テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシメチル;及び
1-(4-テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシエチル)。
【0072】
さらにまた、一部のプロドラッグは、酵素的に活性化されて活性化合物を生じるか、又は、さらなる化学的な反応により活性化合物を生じる化合物である(例えば、ADEPT、GDEPT、LIDEPTなどの場合)。例えば、そのようなプロドラッグは、糖誘導体若しくは他のグリコシドコンジュゲートであり得るか、又は、アミノ酸エステル誘導体であり得る。
【0073】
本発明化合物の使用
本発明は、ヒト又は動物の体を治療する方法で使用するための、式(I)で表される化合物又はその溶媒和物若しくはプロドラッグ(「活性化合物」)を提供する。そのような方法は、当該被験者に、治療上有効量の活性化合物、好ましくは、医薬組成物の形態にある治療上有効量の活性化合物を投与することを含み得る。
【0074】
用語「治療」は、ある種の状態の処置に関連して本明細書で使用される場合、一般に、ヒトであろうと動物(例えば、獣医学的な適用において)であろうと、望ましい治療効果、例えば、当該状態の進行の抑制などを達成する、治療及び療法に関連し、進行速度の低減、進行速度の休止、当該状態の改善及び当該状態の治癒などを包含する。予防的な手段としての治療(即ち、予防)も同様に包含される。
【0075】
用語「治療上有効量」は、本明細書で使用される場合、理にかなった受益性/危険性比に相応した望ましい何らかの治療効果を生じるのに有効な、活性化合物の量、又は、活性化合物を含んでいる物質、組成物若しくは投与形態の量に関する。
【0076】
投与
該活性化合物又は該活性化合物を含んでいる医薬組成物は、全身的/末梢的であろうと又は望まれる作用の部位であろうと、都合のよいいずれかの投与経路により被験者に投与することができる。そのような投与経路としては、限定するものではないが、以下のものを挙げることができる:経口投与(例えば、摂取による);局所投与(これは、例えば、経皮投与、鼻腔内投与、眼内投与、口腔内投与及び舌下投与などを包含する);肺内投与(例えば、口又は鼻を介した、例えば、エーロゾルを用いる、例えば、吸入療法又は吹入療法による);直腸内投与;膣内投与;非経口投与、例えば、注射(これは、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、静脈内注射、動脈内注射、心臓内注射、鞘内注射、髄腔内注射、嚢内注射、嚢下注射、眼窩内注射、腹腔内注射、気管内注射、表皮下注射、関節内注射、クモ膜下注射及び胸骨内注射などを包含する)による非経口投与;デポー剤のインプラント、例えば、皮下又は筋肉内へのデポー剤のインプラントによる投与。
【0077】
被験者は、真核生物、動物、脊椎動物、哺乳動物、齧歯動物(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ科の動物(例えば、マウス)、イヌ科の動物(例えば、イヌ)、ネコ科の動物(例えば、ネコ)、ウマ科の動物(例えば、ウマ)、霊長類の動物、類人猿(simian)(例えば、サル又はエイプ(ape))、サル(例えば、キヌザル、ヒヒ)、エイプ(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)又はヒトであり得る。
【0078】
製剤
該活性化合物は、単独で投与することも可能であるが、該活性化合物を、1以上の製薬上許容される担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、増量剤、バッファー、安定剤、保存薬、滑沢剤又は当業者にはよく知られている別の物質と一緒に上記で定義した少なくとも1種類の活性化合物を含み、また、場合により他の治療薬又は予防薬も含んでいる医薬組成物(例えば、製剤)として提供するのが好ましい。
【0079】
従って、本発明は、さらに、上記で定義されている医薬組成物を提供し、また、上記で定義されている少なくとも1種類の活性化合物を1以上の製薬上許容される担体、賦形剤、バッファー、アジュバント、安定剤又は本明細書に記載されている別の物質と一緒に混合することを含んでなる医薬組成物の製造方法を提供する。
【0080】
用語「製薬上許容される」は、本明細書で使用される場合、理にかなった受益性/危険性比と釣り合いがとれており、過度の毒性、刺激、アレルギー応答又は別の問題若しくは合併症を伴うことなく、適切な医学的判断の範囲内で被験者(例えば、ヒト)の組織に接触させて使用するのに適した化合物、材料、組成物及び/又は投与形態に関する。担体及び賦形剤なども、それぞれ、製剤中の残りの成分と適合性であるという意味において「許容される」ものでなくてはならない。
【0081】
適切な担体及び賦形剤などは、標準的な製薬用のテキスト、例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990」の中に見いだすことができる。
【0082】
上記製剤は、好都合には、単位投与形態で供することもでき、また、製薬学の技術分野でよく知られているいずれかの方法で調製することができる。そのような方法には、活性化合物を1種類以上の副成分を構成する担体と混合するステップが含まれている。一般に、該製剤は、活性化合物を液体担体又は微粉砕固体担体又は液体担体と微粉砕固体担体の両方と均質且つ緊密に混合し、次いで、必要に応じて、生成物を成形することにより調製する。
【0083】
製剤は、液剤、溶液剤、懸濁液剤、エマルション剤、エリキシル剤、シロップ剤、錠剤、トローチ剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、アンプル剤、坐剤、膣坐剤、軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤、クリーム剤、スプレー剤、ミスト剤、フォーム剤、ローション剤、油剤、ボーラス剤、舐剤又はエーロゾル剤の形態であり得る。
【0084】
経口投与(例えば、摂取による)に適した製剤は、それぞれが所定量の活性化合物を含んでいるカプセル剤、カシェ剤若しくは錠剤などの別個の単位として;散剤若しくは顆粒剤として;水性若しくは非水性液体中の溶液剤若しくは懸濁液剤として;水中油型液体エマルション剤若しくは油中水型液体エマルション剤として;ボーラス剤として;舐剤として;又は、ペースト剤として、供することができる。
【0085】
錠剤は、慣用の手段によって、例えば、場合により1種類以上の副成分と一緒に、圧縮するか又は成形することにより製造することができる。圧縮錠剤は、粉末又は顆粒などの自由流動性形態(free-flowing form)にある活性化合物を、場合により、1以上の結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、アラビアゴム、ソルビトール、トラガカントゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤又は希釈剤(例えば、ラクトース、微晶質セルロース、リン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ);崩壊剤(例えば、ナトリウムデンプングリコレート、架橋ポビドン、架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース);界面活性剤又は分散剤又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム);及び、保存薬(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、ソルビン酸)と混合した状態で、適切な機械中で圧縮することにより調製することができる。湿製錠剤は、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を適切な機械中で成形することにより製造することができる。錠剤は、場合により、コーティングしてもよいし又は刻み目を付けてもよい。また、錠剤は、所望の放出プロフィールを提供するために、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを様々な比率で使用して、中に含まれている活性化合物を緩慢放出(slow release)又は制御放出できるように製剤することもできる。錠剤は、場合により、腸溶コーティングを施して、胃以外の消化管の一部で放出するようにすることもできる。
【0086】
局所投与(例えば、経皮投与、鼻腔内投与、眼内投与、口腔内投与及び舌下投与)に適した製剤は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁液剤、ローション剤、散剤、溶液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エーロゾル剤又は油剤として製剤することができる。あるいは、製剤は、貼付剤又は包帯剤、例えば、活性化合物と場合により1種類以上の賦形剤又は希釈剤を含浸させた包帯又は絆創膏などを包含し得る。
【0087】
口内への局所投与に適した製剤には、風味を付けてある基剤(通常、蔗糖及びアラビアゴム又はトラガカントゴム)中に活性化合物を含有しているトローチ剤、ゼラチンとグリセリン又は蔗糖とアラビアゴムなどの不活性基剤中に活性化合物を含有しているパステル剤、及び、適切な液体担体中に活性化合物を含有している口内洗浄剤などがある。
【0088】
眼への局所投与に適した製剤には、活性化合物を、適切な担体、特に、当該活性化合物のための水性溶媒に溶解又は懸濁させてある点眼剤などがある。
【0089】
鼻内投与に適した、担体が固体である製剤には、例えば約20ミクロン〜約500ミクロンの範囲の粒度を有し、鼻から吸い込むようなやり方で、即ち、鼻に近接して保持されている粉末の入った容器から鼻孔を通して素早く吸入させることによって投与される粗粉末などがある。例えば鼻腔用スプレー剤若しくは点鼻剤として投与するのに適した担体が液体である製剤又は噴霧器によりエーロゾル投与される担体が液体である適切な製剤には、活性化合物の水性溶液又は油性溶液などがある。
【0090】
吸入による投与に適した製剤には、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は別の適切なガスなどの適切な噴射剤を用いて、加圧容器からエーロゾルスプレーとして供される製剤などがある。
【0091】
皮膚を介して局所投与するのに適した製剤には、軟膏剤、クリーム剤及びエマルション剤などがある。軟膏剤として製剤する場合、該活性化合物は、場合により、パラフィン系軟膏基剤又は水混和性軟膏基剤と一緒に使用し得る。あるいは、該活性化合物は、水中油型クリーム基剤を用いてクリーム剤として製剤することができる。望ましい場合には、当該クリーム基剤の水性相に、例えば、約30%(w/w)以上の多価アルコール、即ち、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール及びポリエチレングリコール並びにそれらの混合物のような2つ以上のヒドロキシル基を有するアルコールを含有させることができる。前記局所用製剤には、望ましくは、皮膚又は別の患部を通して該活性化合物が吸収されるか又は浸透するのを増強する化合物を含有させ得る。そのような皮膚浸透増強剤の例としては、ジメチルスルホキシド及び関連する類似体などを挙げることができる。
【0092】
局所用エマルション剤として製剤する場合、該油相は、場合により、単に乳化剤(あるいは、エマルゲン(emulgent)としても知られている)を含有することもできるし、又は、該油相は、少なくとも1種類の乳化剤と脂肪若しくは油との混合物又は脂肪と油の両方との混合物を含有することもできる。好ましくは、親水性の乳化剤を、安定剤として作用する親油性の乳化剤と一緒に含有させる。油と脂肪の両方を含有させるのも好ましい。総合して、1種類又は複数種の乳化剤は、1種類又は複数種の安定剤の存在下又は非存在下に、いわゆる乳化ワックスを形成し、当該ワックスは、油及び/又は脂肪と一緒に、いわゆる乳化軟膏基剤を形成し、これは、クリーム製剤の油性分散相を形成する。
【0093】
適切なエマルゲン及びエマルション安定剤としては、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン及びラウリル硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。該製剤に適する油又は脂肪は、所望の化粧用特性を達成することに基づいて選択するが、それは、医薬用のエマルション製剤におそらく使用される殆どの油に対する活性化合物の溶解度が極めて低いからである。従って、そのようなクリーム剤は、好ましくは、脂っこくなく、汚染性でなく、チューブ又は別の容器から漏出するのを避けるために適切な稠度を有する洗浄可能な生成物であるべきである。直鎖又は分枝鎖の、一塩基性又は二塩基性のアルキルエステル、例えば、ジ-イソアジペート、ステアリン酸イソセチル、ココナツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、又は、Crodamol CAPとして知られている分枝鎖エステルのブレンドなどを使用し得る。最後に記載した3種類が好ましいエステルである。これらは、必要とされる特性に応じて、単独で使用し得るか又は組み合わせて使用し得る。
【0094】
あるいは、高融点脂質、例えば、白色ソフトパラフィン及び/又は流動パラフィン又は別の鉱油を用いることができる。
【0095】
直腸内投与に適した製剤は、例えば、カカオバター又はサリチレートなどを含んでいる、適切な基剤を用いる坐剤として供し得る。
【0096】
膣内投与に適した製剤は、該活性化合物の他に当技術分野で適切であることが知られているような担体を含んでいる膣坐剤、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤又はスプレー製剤として供し得る。
【0097】
非経口投与(例えば、皮膚注射、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射及び皮内注射などを包含する注射による投与)に適した製剤には、等張で発熱物質を含んでいない水性及び非水性の無菌注射用溶液(これは、酸化防止剤、バッファー、保存薬、安定剤、静菌薬、及び、当該製剤を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る)、並びに、水性及び非水性の無菌懸濁液(これは、懸濁化剤及び増粘剤を含有し得る)、並びに、リポソーム又は別の微粒子系(これは、該化合物が血液成分又は1以上の器官を標的とするように設計される)などがある。そのような製剤で使用するのに適した等張なビヒクルの例としては、食塩注射液、リンゲル液又は乳酸加リンゲル液などを挙げることができる。典型的には、前記液体中の該活性化合物の濃度は、約1ng/mL〜約10μg/mL、例えば、約10ng/mL〜約1μg/mLである。前記製剤は、単回投与量又は複数回分の投与量用の密閉容器、例えば、アンプル及びバイアル瓶などに入れて供することができ、また、使用する直前に無菌の液体担体(例えば、注射用蒸留水)を加えることだけが必要とされる凍結乾燥状態で保存することができる。必要に応じて調合される注射用の溶液及び懸濁液は、無菌の散剤、顆粒剤及び錠剤から調製することができる。製剤は、リポソーム又は別の微粒子系(これは、該活性化合物が血液成分又は1以上の器官を標的とするように設計される)の形態であり得る。
【0098】
投与量
本発明の活性化合物及び該活性化合物を含有する組成物の適切な投与量が患者によって異なり得るということは、理解されるであろう。最適な投与量を決定することは、一般に、本発明の治療についての危険性又は有害な副作用に対する治療上の受益性のレベルのバランスを取ることを含んでいる。選択された投与量レベルは、例えば、限定するものではないが、特定の化合物の活性、投与経路、投与時刻、当該化合物の排出速度、治療の継続時間、組合せて使用する別の薬物、化合物及び/又は物質、並びに、患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康状態及び事前の病歴などの様々な要因に依存する。化合物の量及び投与経路は、最終的には、医師の裁量であるが、一般に、投与量は、実質的に有害な副作用を引き起こすことなく所望の効果を得ることができる作用部位での局所的な濃度を達成するようなものであるべきである。
【0099】
インビボ投与は、治療を施している全期間を通して、1回用量で、連続的に、又は、断続的に(例えば、分割された用量で、適切な間隔をあけて)行うことができる。最も効果的な投与方法及び投与量を決定する方法は、当業者にはよく知られており、治療に使用する製剤、治療目的、治療対象の標的細胞及び治療対象の被験者によって異なる。単回投与又は複数回の投与は、治療を行う医師によって選択される投与量レベルと投与様式で実行することができる。
【0100】
一般に、本発明の活性化合物の適切な用量は、1日当たり、被験者の体重1kg当たり、約100μg〜約250mgの範囲である。本発明の活性化合物が、塩、エステル又はプロドラッグなどである場合、投与する量は、親化合物に基づいて計算する。従って、使用する実際の重さは、それ相応に増加する。
【0101】

本発明の活性化合物で治療し得る癌の例としては、限定するものではないが、以下の癌を挙げることができる:癌腫、例えば、膀胱の癌腫、乳房の癌腫、結腸の癌腫(例えば、結腸直腸癌、例えば、結腸腺癌及び結腸腺腫)、腎臓の癌腫、表皮の癌腫、肝臓の癌腫、肺の癌腫、例えば、腺癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌、食道の癌腫、胆嚢の癌腫、卵巣の癌腫、膵臓の癌腫、例えば、外分泌性膵臓癌、胃の癌腫、頚部の癌腫、甲状腺の癌腫、前立腺の癌腫、又は、皮膚の癌腫、例えば、扁平上皮癌;リンパ系統の造血器腫瘍、例えば、白血病、急性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫(hairy cell lymphoma)、又は、バーキットリンパ腫;骨髄細胞系統(myeloid lineage)の造血器腫瘍、例えば、急性及び慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、又は、前骨髄球性白血病;甲状腺濾包癌;間葉起源の腫瘍、例えば、線維肉腫又は横紋筋肉腫;中枢神経系又は末梢神経系の腫瘍、例えば、星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫又は神経鞘腫;黒色腫;精上皮腫;奇形癌;骨肉腫;キセノデロマピグメントウム(xenoderoma pigmentoum);角化棘細胞腫;甲状腺濾包癌;又は、カポジ肉腫。
【0102】
式(I)で表される化合物と(同時であろうと、又は、異なった時間間隔であろうと)一緒に投与し得る別の活性剤の例としては、限定するものではないが、トポイソメラーゼ阻害薬、アルキル化剤、代謝拮抗薬、DNA結合薬(DNA binder)及び微小管阻害薬(チューブリン標的剤)、例えば、シスプラチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、イリノテカン、フルダラビン、5FU、タキサン類、マイトマイシンC又は放射線治療などを挙げることができる。活性化合物を別の治療と組み合わせる場合、そのような2つ以上の治療は、個々に、種々の投与計画で、及び、異なった経路で、行い得る。
【0103】
上記で挙げた薬剤と本発明化合物の組合せは、当該医師の裁量であり、該医師は、自分の通常の一般的な知識と熟練した医師には知られている投与計画を用いて、投与量を選択するであろう。
【0104】
式(I)で表される化合物を、1種類、2種類、3種類、4種類又はそれ以上の別の治療薬、好ましくは、1種類又は2種類の別の治療薬、好ましくは、1種類の別の治療薬と一緒に併用療法で投与する場合、それらの化合物は、同時に投与してもよいし、又は、順次に投与してもよい。順次に投与する場合、それらは、近い間隔(例えば、5〜10分間)で投与してもよいし、又は、長い間隔(例えば、1時間、2時間、3時間、4時間以上、又は、必要に応じてそれ以上の時間離れて)投与してもよい。その際、正確な投与計画は、それらの治療薬の特性に相応したものである。
【0105】
本発明の化合物は、さらにまた、非化学療法的な治療(例えば、放射線治療、光力学療法、遺伝子療法);外科手術及び栄養制限食と併用して投与することもできる。
【0106】
好ましい態様
R1-R6
本発明の実施形態の1つの群において、R1とR2はそれらが結合している環と一緒になって、3員〜8員の炭素環又はヘテロ環を含んでいる飽和又は不飽和の炭素環式基又はヘテロ環式基(ここで、炭素環又はヘテロ環の各環は、1つ以上の他の炭素環又はヘテロ環に縮合していてもよい)を形成している。
【0107】
この群の実施形態では、R3、R4、R5及びR6はHであるのが好ましい。
【0108】
R1とR2は、それらが式(I)の化合物内で結合している環と一緒に、オルト縮合又はペリ縮合した炭素環系又はヘテロ環系を表し得る。
【0109】
R1とR2は、それらが結合している環と一緒に、完全に炭素環式の縮合環系、例えば、2又は3の縮合炭素環を含んでいる環系、例えば、場合により置換されていてもよく、場合により水素化されていてもよいナフタレン又はアントラセンなどを表し得る。
【0110】
あるいは、R1とR2は、それらが式(I)の化合物内で結合している環と一緒に、縮合三環、例えば、アントラセン、又は、1、2、3、4若しくはそれより高度に水素化されたアントラセンの誘導体などを表し得る。例えば、R1とR2は、それらが式(I)の化合物内で結合している環と一緒に、アントラセン、1,4-ジヒドロアントラセン、又は、1,4,9,10-テトラヒドロアントラセンを表し得る。
【0111】
R1とR2は、それらが式(I)内で結合している環と一緒に、さらに、
【化3】

も、表し得る。
【0112】
実施形態の別の群において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、H、C1-7アルキル、C5-20アリール、C3-20ヘテロシクリル、ハロ、エステル、アミド、アシル、スルホ、スルホンアミド、エーテル、チオエーテル、アゾ及びアミノから選択される。この群の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、好ましくは、独立して、H、C1-7アルキル、C5-20アリール及びエステルから選択される。それらのうちで、H及びC1-7アルキル(特に、C1-3アルキル)が最も好ましい。
【0113】
この群の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうちの4つ、5つ又は6つは、好ましくは水素であり、残りの基は(もしあれば)、C1-7アルキル、C5-20アリール、C3-20ヘテロシクリル、ハロ、エステル、アミド、アシル、スルホ、スルホンアミド、エーテル、チオエーテル、アゾ及びアミノから選択され、さらに好ましくは、C1-7アルキル、C5-20アリール及びエステルから選択され、最も好ましくは、C1-7アルキル(特に、C1-3アルキル)から選択される。R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうちの2つがHでない場合、それらの基は、好ましくは、互いにメタ又はパラであり、さらに好ましくは、互いにパラである。
【0114】
特に好ましい置換基パターンの例としては、限定するものではないが、以下のものがある:フェニル;1-メチル;及び、4-イソプロピル。
【0115】
A及びB
AとBは、一緒に、NRN4RN5-(CRC1RC2)n-NRN6RN7(ここで、RC1及びRC2は、独立して、H及びC1-4アルキルから選択され、RN4、RN5、RN6及びRN7は、独立して、H及びC1-4アルキルから選択され、nは、1〜4の整数である)を表すのが好ましい。
【0116】
好ましくは、R14及びR15は、いずれも水素である。好ましくは、nは、2又は3であり、さらに好ましくは、2である。RN4、RN5、RN6及びRN7は、好ましくは、H又はメチルであり、さらに好ましくは、RN4、RN5、RN6及びRN7は、全てHである。
【0117】
RN4がA中に存在している場合、pは0である。RN4が存在していない場合、pは1であり、C'がRN4の代わりになる。実施形態の1つの群において、RN4はAに存在しておらず、pは1であり、好ましくは、C'は、置換されていないC4-10アルキレン(例えば、ヘキシレン)である。
【0118】
この群の実施形態における複核錯体の例は、AとBの対がリンカーC'と一緒に以下のものを表している複核錯体である:
【化4】

【0119】
ここで、各n'、n”、x'、x”及びy'は、独立して、1〜12の整数、好ましくは、1〜6の整数を表す。
【0120】
X
XがN-ドナー配位子である場合、それは、好ましくは、アジド配位子、イソチオシアネート配位子及び場合により置換されていてもよいピリジン配位子から選択される。これらのうちで、アジド及びイソチオシアネートが好ましい。
【0121】
Xが、場合により置換されていてもよいピリジン配位子である場合、該配位子は、好ましくは、少なくとも1置換されており、2置換されていてもよい。それらの置換基は、好ましくは、ハロ(例えば、クロロ、フルオロ)、シアノ及び低級アルキル(例えば、メチル)から選択される。これらのうちで、クロロ、シアノ及びメチルが好ましい。好ましい置換基のパターンとしては、限定するものではないが、以下のものがある:3,5-ジクロロ、4-シアノ及び3-メチル。
【0122】
一部の実施形態では、Xは、ニトリル配位子(N≡C-R)、アゾ配位子(N=N-R)、アミン配位子(NRN1RN2RN3)、アジド(N3-)、シアニド(N≡C-)及びイソチオシアネート(NCS-)から選択される。
【0123】
XがS-ドナー配位子である場合、それは、好ましくは、チオラート配位子、例えば、PhS-である。
【0124】
Yq-
式(I)で表される化合物におけるYq-は、対イオンであり、金属イオンを含んでいる当該錯体が荷電している場合にのみ該化合物中に存在している。Yq-は、好ましくは、非求核性のアニオン、例えば、PF6-、BF4-、BPh4-又はCF3O2SO-などである。
【0125】
一般的な合成法
本発明は、さらにまた、本発明化合物を調製する方法も提供し、ここで、該方法は、式[(η6-C6(R1)(R2)(R3)(R4)(R5)(R6))RuABCl][Yq-]で表される化合物(ここで、該化合物は、単量体形態又は二量体形態であり得る)を、当該反応に適した溶媒中でAgNO3と反応させ、次いで、AgClを除去し、場合によりYq-の存在下で又は場合によりYq-を後から添加して、当該反応に適した溶媒中でMXと反応させることを含む(ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、X、A、B及びYは、本発明の化合物に関して上記で定義されているとおりであり、Mは、適切なカチオン、例えば、Na+などである)。
【0126】
好ましい反応条件としては、
(a) 上記で記載した出発物質ルテニウム錯体を、溶媒としてのMeOHとH2Oの(1:1)混合物中で、AgNO3と一緒に撹拌する;
(b) 形成されたAgCl沈澱物を濾過により除去する;
(c) MX(これは、必要に応じ、加熱して溶解させてもよい)を添加し、反応させる;
(d) Yq-源、例えば、式(NH4+)Yq-で表される化合物(例えば、NH4PF6で表される化合物)を添加し、濾液を蒸発させて、生成物を得る;
などを挙げることができる。
【0127】
上記濾液は、例えばアセトンからの再結晶などにより、精製することができる。
【0128】
以下の非限定的な実施例により、本発明を例証する。
【実施例】
【0129】
一般的な方法
エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS):陽イオンエレクトロスプレーイオン化質量分析は、Platform II 質量分析計(Micromass, Manchester, U.K.)を用いて得た。オフラインでのESI-MSアッセイに対しては、50%CH3CN/50%H2O(v/v)中でサンプルを調製し、6μL/分で、質量分析計に直接注入した。大気圧イオン化(API)/ESIイオン源でイオンを生成させた。オンラインでのLC-ESI-MSアッセイに対しては、Waters 2690 HPLC システムを質量分析計と連結し、HPLCアッセイに関して上記で記載したのと同じカラム及び勾配を使用して、流速1.0mL/分、分割比 1/5とした。スプレー電圧は、3.50kV〜3.68kVであった。コーン電圧は、必要に応じ、15V〜30Vの範囲で変えた。キャピラリー温度は、直接注入では338Kであり、HPLCサンプリングでは413Kであり、450L/時間の窒素乾燥ガス流を用いた。2×10-5Torrのバックグラウンド圧力で作動させる四重極分析計を、直接注入に対しては300Da/秒でスキャンし、HPLCサンプリングに対しては750Da/秒でスキャンした。データ(直接注入よるアッセイに際しては10回のスキャンに対するデータ)を収集し、Max Ent Electrosprayソフトウェアアルゴリズムを使用するMass Lynx(ver. 2.3) Windows NT PCデータシステムで解析し、NaI校正ファイルに対して校正した。全ての測定の質量精度は、0.1m/z単位の範囲内であった。
【0130】
X線結晶学:全てのデータは、150Kで、Oxford Cryosystems低温装置を備えたBruker Smart Apex CCD回折計によって収集した。マルチスキャン吸収補正(SADABS)(Sheldrick, G.M., SADABS, Program for carrying-out multiscan absorption corrections, University of Gottingen, Germany, 1998)を適用した後、構造は全て直接法で解明し(Shelxs, SIR92, Dirdif)(Sheldrick, G.M., SHELXS and SHELXL. Programs for the solution and refinement of crystal structures, University of Gottingen, Germany, 1998; Altomare, A., et al., A. J. Appl. Crystallogr., 26, 343-350(1993); Beurskens, P.T., et al., The DIRDIF96 Program System, Technical Report of the Crystallography Laboratory, University of Nijmegen, The Netherlands(1996))、全てのデータを用いてF2に対してリファインした(SHELXL)(Betteridge, P.W., et al., J. Appl. Cryst., 36, 1487(2003))。
【0131】
比較実施例1:[(η6-C6H5C6H5)Ru(en)Cl][PF6](C1)の合成
【化5】

【0132】
この化合物は、以下の文献の記載に準じて合成した: Morris, R.E., et al., J. Med. Chem., 44, 3616-3621(2001)-compound 9。
【0133】
実施例1:[(η6-C6H5C6H5)Ru(en)N3][PF6](1)の合成
【化6】

【0134】
この錯体は、錯体C1(25.0mg, 0.0496mmol)とAgNO3(8.4mg, 0.0494mmol)をMeOHとH2Oの(1:1)混合物(2.5mL)中で1時間還流することにより調製した。濾過によりAgClを除去した。NaN3(163mg, 2.51mmol)を添加し、加熱して溶解させ、一晩放置した。NH4PF6(250mg)を添加することにより、微晶質の黄色の沈澱物が生じた。その沈澱物をアセトンから再結晶させて、黄色の結晶質生成物を得た。1の収量:8.6mg(34%)。
【0135】
分析: C14F6H18N5PRuに対する計算値:C 33.47、H 3.61、N 13.94;実測値:C 33.37、H 3.46、N 13.68。 MS:[M-PF6]+に対するm/z 357.7 (計算値 357.1)。
【0136】
比較実施例2:[(η6-C6(CH3)6)Ru(en)Cl][PF6](C2)の合成
【化7】

【0137】
この錯体は、比較実施例1における化合物C1に対する方法と同様の方法で、[(η6-C6(CH3)6)RuCl2]2から調製した。C2の収率:68%。
【0138】
分析: C14F6H12N2ClPRuに対する計算値:C 33.59、H 4.43、N 5.60;実測値:C 33.55、H 4.57、N 5.54。
【0139】
実施例2:[(η6-C6(CH3)6)Ru(en)(ピリジン)][PF6]2(2)の合成
【化8】

【0140】
この錯体は、錯体C2(25.0mg, 0.0496mmol)とAgNO3(8.4mg, 0.0494mmol)をMeOHとH2Oの(1:1)混合物(2.5mL)中で1時間還流することにより調製した。濾過によりAgClを除去した。ピリジン(101μL, 1.25mmol)を添加し、その混合物を一晩放置した。その容積を回転蒸発により約1.5mLまで低減させ、100mgのNH4PF6を添加した。黄色の沈澱物をアセトン中に溶解させた。その溶液を、次いで、濾過し、アセトンをゆっくりと蒸発させることにより、微晶質の黄色の生成物が得られた。2の収量:19.3mg(56%)。
【0141】
分析: C19F12H31N3P2Ruに対する計算値:C 32.96、H 4.51、N 6.07;実測値: C 33.47、H 4.50、N 6.24。
【0142】
実施例3:[(η6-C6(CH3)6)Ru(en)(SCN)][PF6]2(3)の合成
【化9】

【0143】
この錯体は、錯体C2(25.0mg, 0.0496mmol)とAgNO3(7.0mg, 0.0412mmol)をMeOHとH2Oの(1:1)混合物(2.5mL)中で1時間還流することにより調製した。濾過によりAgClを除去した。KSCN(243mg, 2.50mmol)を添加し、その溶液を1日撹拌した。150mgのKPF6を添加し、、生じた沈澱物は、充分な量のアセトンを添加して溶解させた。アセトンをゆっくりと蒸発させることにより、黄色の結晶が得られた。この結晶は、X線結晶学的な研究に適していた。収量:6.9mg(26%)。
【0144】
X線結晶構造決定により、下記に示してある結果が得られた。この結果から、イソチオシアネートが窒素原子を介して結合していることがわかる。
【0145】
化合物3についての結晶データ及び構造リファインメント
X線データ
結晶データ
実験式 C15 H26 F6 N3 O P Ru S
式量 542.49
結晶系 斜方晶系
空間群 Pca21
単位格子寸法 a=14.7411(12)Å α=90°
b=9.0154(7)Å β=90°
c=15.6070(12)Å γ=90°
容積 2074.1(3)Å3
Z 4
データ収集
機器 Bruker Smart Apex CCD
溶液及びリファインメント
溶液 Patterson(Dirdif)
R1=0.0619 [5064データ]
【化10】

【0146】
実施例4:[(η6-C6(CH3)6)Ru(en)(SPh)][PF6](4)の合成
【化11】

【0147】
この錯体は、錯体C2(25.0mg, 0.0496mmol)とAgNO3(8.4mg, 0.0494mmol)をMeOHとH2Oの(1:1)混合物(2.5mL)中で1時間還流することにより調製した。濾過によりAgClを除去した。NaSPh(7.9mg, 0.0595mmol)を添加し、その溶液を一晩放置した。250mgのNH4PF6を添加することにより、橙色の沈澱物が生じた。その沈澱物のアセトン溶液をゆっくりと蒸発させることにより、結晶質の橙色の生成物及び黄色の粉末が得られた。これらは、両方とも、質量分析により、所望の化合物であると思われた。収量:10.2mg(36%)。
【0148】
MS:[M-PF6]+に対するm/z 433.0 (計算値 433.1)。
【0149】
実施例5:[(η6-C6(CH3)6)Ru(en)N3][PF6](5)の合成
【化12】

【0150】
この錯体は、錯体C2(25.0mg, 0.0496mmol)とAgNO3(8.4mg, 0.0494mmol)をMeOHとH2Oの(1:1)混合物(2.5mL)中で1時間還流することにより調製した。濾過によりAgClを除去した。NaN3(163mg, 2.51mmol)を添加し、加熱により溶解させ、一晩放置した。NH4PF6(250mg)を添加することにより、微晶質の黄色の沈澱物が生じた。この沈澱物をアセトンから再結晶させて、黄色の結晶質生成物を得た。5の収量:16.4mg(65%)。
【0151】
分析: C14F6H26N5PRuに対する計算値:C 32.94、H 5.13、N 13.72;実測値:C 32.32、H 4.45、N 12.63。
【0152】
実施例6:[(η6-C6(CH3)6)Ru(en)(3,5-ジクロロピリジン)][PF6]2(6)の合成
【化13】

【0153】
この錯体は、実施例2における化合物2に対する方法と同様の方法で調製した。
【0154】
MS:[6-PF6]+に対するm/z 616.0 (計算値 616.0)。
【0155】
実施例7:[(η6-C6(CH3)6)Ru(en)(3,5-ジフルオロピリジン)][PF6]2(7)の合成
【化14】

【0156】
この錯体は、実施例2における化合物に対する方法と同様の方法で調製した。
【0157】
MS:[7-PF6]+に対するm/z 583.9 (計算値 584.1)。
【0158】
実施例8:[(η6-C6(CH3)6)Ru(en)(p-シアノピリジン)][PF6]2(8)の合成
【化15】

【0159】
この錯体は、実施例2における化合物に対する方法と同様の方法で調製した。
【0160】
MS:[8-PF6]+に対するm/z 572.9 (計算値 573.1)。
【0161】
X線データ
結晶データ
実験式 C20 H30 F12 N4 P2 Ru
式量 717.49
結晶系 単斜晶系
空間群 P2(1)/n
単位格子寸法 a=8.6230(2)Å α=90°
b=34.7990(10)Å β=114.4360(10)°
c=9.8620(3)Å γ=90°
容積 2694.22(13)Å3
Z 4
データ収集
吸収補正 SADABS
溶液及びリファインメント
溶液 直接(SHELXS-97)
リファインメントに使用したプログラム SHELXL-97
R1=0.0575 [4950データ]
【化16】

【0162】
実施例9:[(η6-C6(CH3)6)Ru(en)(3-メチルピリジン)][PF6]2(9)の合成
【化17】

【0163】
この錯体は、実施例2における化合物に対する方法と同様の方法で調製した。
【0164】
MS:[9-PF6]+に対するm/z 562.1 (計算値 562.1)。
【0165】
X線データ
結晶データ
実験式 C20 H27 F12 N3 P2 Ru1
式量 700.45
結晶系 斜方晶系
空間群 P n a 21
単位格子寸法 a=21.3199(6)Å α=90°
b=7.7155(2)Å β=90°
c=16.1809(5)Å γ=90°
容積 2661.66Å3
Z 4
データ収集
吸収補正 SADABS
溶液及びリファインメント
溶液 直接(SHELXS-97)
リファインメントに使用したプログラム SHELXL-97
R1=0.0444
【化18】

【0166】
実施例10:化合物の分析
方法
紫外及び可視(UV-Vis)分光法: 経路長1cmの石英キュベット(0.5mL)及びPTP1 Peltier温度調節器と一緒に、Perkin-Elmer Lambda-16 UV-Vis分光光度計を用いた。スペクトルは、Windows'95用のUVWinlabソフトウェアを用いて処理した。
【0167】
速度論的試験:メタノール中の被験錯体の貯蔵溶液(4〜10mM)のアリコートを水で500μLに希釈し、次いで、選択された波長における吸光度(水とメタノールの(19:1)混合物中における加水分解により測定;表1のλを参照されたい)を、298Kにおける各錯体の加水分解速度に応じて6〜20秒の間隔で記録した。各錯体に対する吸光度/時間データの、下記一次速度式(eq.1):
A=C+C−kt (1)
[ここで、C0及びC1は、コンピューターフィット定数(computer-fitted constant)であり、Aは、時間(t)に対応する吸光度である]
へのコンピューターフィットを行うことにより、各錯体についての加水分解速度定数kH2Oを求めた。結果は、表1において半減期(t1/2)として示してある。
【0168】
細胞毒性試験
A2780(第一の方法):A2780細胞を第0日に平板培養し、第3日に被験錯体を添加した。その錯体は、第4日に除去し(即ち、24時間細胞と接触)、薬物を含んでいない新しい培地中で増殖させた後、第7日に細胞を計数した。該錯体は、光化学的分解に対する予防措置として、277Kの暗所に保存した。IC50(細胞の増殖を50%阻害するのに必要な化合物の量)の値を表1に上げてある。
【0169】
A2780(第二の方法)及びA549:5%ウシ胎仔血清(Invitrogen)、2mM L-グルタミン(Sigma)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を加えてあるRPMI-1640(Sigma)含有培地をT-75フラスコ(Costar)内に入れ、その中で、細胞系統A2780(ヒト卵巣癌、ECACC 93112519)を維持した。0.25%トリプシン/EDTA(Invitrogen)を用いて、細胞を約75-90%のコンフルエンス(1:8 希釈)で継代した。
【0170】
10%ウシ胎仔血清(Invitrogen)、2mM L-グルタミン(Invitrogen)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を加えてあるDMEM(Sigma)含有培地をT-75フラスコ(Costar)の中に入れ、その中で、細胞系統A549(ヒト肺癌、ECACC 86012804)を維持した。0.25%トリプシン/EDTA(Invitrogen)を用いて、細胞を約70-90%のコンフルエンス(1:8 希釈)で継代した。
【0171】
両方の細胞系統を、高湿度内で、37℃、5%CO2でインキュベートした。
【0172】
A2780癌細胞を、1つのウェル当たり5000(±10%)個の細胞で96ウェルプレート(Nunc Maxisorp)に播種(150μL)し、高湿度内で、37℃、5%CO2で、48時間インキュベートした。
【0173】
A549癌細胞を、1つのウェル当たり2000(±10%)個の細胞で96ウェルプレート(Nunc Maxisorp)に播種(150μL)し、高湿度内で、37℃、5%CO2で、24時間インキュベートした。 被験化合物は、DMSO(Fisher Scientific)中で超音波処理に付すことにより可溶化して、20mM溶液とした。化合物をDMSOを用いて連続希釈した後、細胞培養物で希釈して、アッセイで必要とされる最終濃度より4倍高い濃度とした。培養培地中の化合物の希釈物を細胞プレート(50μL)に3反復で添加して、100μM、50μM、10μM、5μM、1μM及び0.1μMの最終濃度とした。各ウェル内の最終DMSO濃度は、0.5%(v/v)であった。そのプレートを、高湿度内で、37℃、5%CO2で、24時間インキュベートした。
【0174】
24時間インキュベートした後、その細胞を無菌リン酸緩衝食塩水(Sigma)(200μL)で2回洗浄し、細胞培養培地(200μL)を補充した。プレートを、高湿度内で、37℃、5%CO2で、96時間インキュベートした。そのインキュベーションが終了した後、50%(w/v)トリクロロ酢酸(50μL)を添加して生存細胞を固定し、4℃で1時間インキュベートした。プレートを過剰量の水道水で3回洗浄し、風乾した。
【0175】
0.4%スルホローダミンB(Sigma)溶液(100μL)をプレートに添加して細胞を染色した後、1%酢酸溶液(200μL)で5回洗浄して余分な染料を除去し、次いで、風乾した。染料を、10mM Trisバッファー(Fisher Scientific)(200μL)中で再度可溶化し、BMG Fluorostarマイクロプレートリーダーを用いて、565nmと690nmの両方で、各ウェルの吸光度を読み取った。690nmでの示度を565nmでの示度から減じ、補正された吸光度値をウェル内の化合物の濃度に対してプロットすることによりIC50値を求めた(XLfit version 4.0, ID Business Solutions Ltd)。それらは、下記表1に示してある。
【0176】
結果
上記分析の結果は、下記表1に示してある。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、H、C1-7アルキル、C5-20アリール、C3-20ヘテロシクリル、ハロ、エステル、アミド、アシル、スルホ、スルホンアミド、エーテル、チオエーテル、アゾ及びアミノから選択されるか、又は、R1とR2はそれらが結合している環と一緒になって、3員〜8員の炭素環又はヘテロ環を最大3つ含んでいる飽和又は不飽和の炭素環式基又はヘテロ環式基(ここで、炭素環又はヘテロ環の各環は、1つ以上の他の炭素環又はヘテロ環に縮合していてもよい)を形成しており;
Xは、中性であるか又は負に荷電しているN-ドナー配位子又はS-ドナー配位子であり;
Yは、対イオンであり;
mは、0又は1であり;
qは、1、2又は3であり;
C'は、2つのA基に結合しているC1-12アルキレンであり;
pは、0又は1であり、pが0である場合はrは1であり、pが1である場合はrは2であり;
及び、
A及びBは、それぞれ独立して、O-ドナー配位子、N-ドナー配位子又はS-ドナー配位子であり、そして、互いに連結していてもよい]
で表される、ルテニウム(II)化合物又はその溶媒和物若しくはプロドラッグ。
【請求項2】
Xが、アジド、イソチオシアネート及び場合により置換されていてもよいピリジン配位子から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xがチオラート配位子である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
AとBが一緒になって、NRN4RN5-(CRC1RC2)n-NRN6RN7(ここで、RC1及びRC2は、独立して、H及びC1-4アルキルから選択され、RN4、RN5、RN6及びRN7は、独立して、H及びC1-4アルキルから選択され、nは、1〜4の整数である)を表す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R14及びR15がいずれも水素である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
nが2である、請求項4又は5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
RN4、RN5、RN6及びRN7がHである、請求項4〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
R1とR2がそれらが結合している環と一緒になって、3員〜8員の炭素環又はヘテロ環を含んでいる飽和又は不飽和の炭素環式基又はヘテロ環式基(ここで、炭素環又はヘテロ環の各環は、1つ以上の他の炭素環又はヘテロ環に縮合していてもよい)を形成している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
R3、R4、R5及びR6がHである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
R1、R2、R3、R4、R5及びR6が、独立して、C1-7アルキル、C5-20アリール、C3-20ヘテロシクリル、ハロ、エステル、アミド、アシル、スルホ、スルホンアミド、エーテル、チオエーテル、アゾ及びアミノから選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
R1、R2、R3、R4、R5及びR6が、独立して、H及びC1-7アルキルから選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうちの少なくとも4つが水素である、請求項10又は11に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物及び製薬上許容される担体又は希釈剤を含んでいる、組成物。
【請求項14】
治療法における、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
癌を治療するための医薬の調製における、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項16】
癌を患っている被験者を治療する方法であって、該被験者に治療上有効量の請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、前記方法。

【公表番号】特表2008−510693(P2008−510693A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526570(P2007−526570)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003242
【国際公開番号】WO2006/018649
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(501337513)ザ ユニバーシティ コート オブ ザ ユニバーシティ オブ エジンバラ (8)
【Fターム(参考)】