説明

アロディニアの治療、改善、予防剤

【課題】アロディニアの治療、改善、予防剤の提供。
【解決手段】 肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子、またはHGF遺伝子を含有するセンダイウィルスエンベロープをアロディニア治療、改善、予防剤として用いる。これは安全性および効果がより高く、かつ効果が長期間持続するという利点がある。また、現在用いられている低分子医薬品とは作用メカニズムが異なるため、低分子医薬品が効かないケースにも効果を期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アロディニア治療、改善、予防剤に関する。さらに詳しくは、肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子からなる医薬、およびHGF遺伝子を含有するセンダイウィルスエンベロープをアロディニア治療、改善、予防剤として用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
痛みは臨床上最も頻度の高い訴えであり、患者が病院を訪れる動機の筆頭理由である。そのコントロールは極めて重要な医学的研究課題であるとともに、有効な痛みのコントロール法の確立が社会・経済的利益に及ぼす影響は計り知れない。特に難治性慢性疼痛は、いかなる治療にも抵抗性を示し、決定的な治療法がない。難治性慢性疼痛を訴える患者の中には、触刺激などの本来は痛みを伴わない刺激を疼痛と感じる「アロディニア」と呼ばれる症状を示す者もある。
【0003】
アロディニアとは複雑局所疼痛症候群や帯状疱疹後神経痛の神経因性疼痛に見られる症状のことであり、異痛、異性痛とも呼ばれる。通常では痛みを起こさない程度の刺激によって誘発される痛みであり、患者は下着が触れるといった程度の刺激でも痛みを感じる。アロディニアを引き起こす刺激は機械的(触)刺激、温刺激、冷刺激の3種にわけられる。何れも痛覚閾値刺激よりも弱い刺激である。発症は、神経障害によりC線維終末の萎縮や変性が生じて、本来C線維が入力すべき脊髄後角の第II層部に触覚に関わるA線維が侵入することが原因とも考えられている。
【0004】
アロディニアが起こる原因としては、末梢神経損傷に起因するもの(例えばカウザルギー(causalgia)、反射性交感神経性ジストロフィ)、中枢神経損傷に起因するもの(例えば、幻肢痛、帯状疱疹後神経痛(ヘルペス後疼痛)、視床痛、脊髄損傷後の痛み)がある。カウザルギーとは、末梢神経損傷後に知覚神経支配領域に起こる強い疼痛を主症状として血管運動障害や皮膚の栄養障害などの自律神経症状を伴う症候群のことを呼ぶ。反射性交感神経ジストロフィーとは神経損傷の有無にかかわらずカウザルギーと同様の症状をきたす疾患のことである。幻肢痛とは、手術でなくなっているはずの足が残っているような感覚を覚え、その幻の足にしびれや痛みを感じることをいう。視床痛とは脳内出血などによって視床が損傷されると発症する知覚伝導路の求心路遮断性疼痛のことをいう。
【0005】
他にも、外傷や、ウィルス感染、抗HIV核酸系逆転写酵素阻害薬ddI(didanosine、Videx)、ddC(zalcitabine, Hivid)、d4T(stavudine, Zerit)等薬剤の副作用、糖尿病、神経浸潤性のガンに起因するものがアロディニアの原因として挙げられる。特に糖尿病は神経障害を合併することが多く、糖尿病の罹病期間が長くなるほど神経障害を併発する率は高まる。
【0006】
アロディニア症状がみられる神経因性疼痛の治療には、低分子医薬品が用いられている。アロディニアに用いるオピオイド系薬剤としてはトラマドール(クリスピン)があるが、吐き気などの副作用を伴い、患者の生活の質(QOL=Quality of Life)に影響がある。また、オピオイド系薬物や消炎鎮痛薬などが効きにくい場合、鎮痛補助薬といわれるような薬が有効なことがある。鎮痛補助薬としては抗うつ薬、抗けいれん薬、抗不整脈薬などがある。例えば抗てんかん薬のガバペンチンが挙げられるが、これはふらつきや傾眠といった副作用を伴う。
【0007】
また、NMDA拮抗薬であるケタミン(ケタラール)やアマンタジン(シンメトリル)、デキストロメトロルファン(メジコン)も用いられる。NMDA拮抗薬は、モルヒネの耐性に対する拮抗作用も持っており、モルヒネとの併用療法にも期待がかけられている。
【0008】
しかし、以上のような薬による治療は、重篤な副作用を伴うことがある。
【0009】
他に、手術によって電極を脳や脊髄神経のそばに直接挿入する「脳脊髄電気刺激療法」がある。これは、さするという感覚刺激を電気刺激で代用し、脳で感じる痛みを軽減することを目的とした治療法である。(痛みを感じた時、瞬時に患部をさする行為を行っているが、これはゲートコントロール理論に基づいた行為である。 痛みを伝える脊髄神経には、XとYの二つのゲートがあり、痛みはXを通り、それ以外の刺激はYを通る。 この時、さする刺激はYを通ることになるが、Xの痛みよりYの刺激の量が多くなれば脳では痛みを感じにくくなる。)また、「脳脊髄電気刺激療法」でも効果がない痛みに対しての治療法としては「神経を灼く」(脊髄視床路切截)方法がある。
【0010】
しかし、このような外科的療法は患者にとって負担が大きく、また治療後に手足に麻痺や障害が残る可能性など危険性も伴う。
【0011】
このような状況の下、さらに新しい治療法の確立を目指し、最近の分子生物学の飛躍的向上により可能となった遺伝子・タンパク導入法による細胞機能の賦活化を利用した種々の試みがなされてきた。
【0012】
【特許文献1】WO0062798号公報この特許文献では、虚血を原因とする神経因性疼痛を、血管内皮細胞増殖因子(VEGF : vascular endothelial growth factor)を投与することによって血管新生をおこして治療する方法を提案している。しかし、HGFに関しては具体的な実施例を挙げていない。
【特許文献2】US5776464号公報HGFを免疫抑制剤の副作用によって生じる神経因性疼痛に用いることを提案しているが、その他の疼痛(例えば外傷等を原因とするもの)については試験していない。
【特許文献3】WO9936103号公報この特許文献では、神経因性疼痛に対してHGF遺伝子を投与する方法が提案されている。疼痛を引き起こす疾患例としては糖尿病を上げている。だが、実施例はin vitroでの試験のみにとどまっており、HGF遺伝子のヒト(臨床)での効果を裏付けられるものではなかった。
【0013】
他にも以下のような報告がある。
【非特許文献1】Clinical Neuroscience and Neuropathology 12 (7) 1403-1407, 2001
【非特許文献2】FASEB 17, 779-781, 2003 しかしながら、これらは具体的な治療法につながるものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、神経因性疼痛の症状であるアロディニアのより安全で効果の優れた治療、改善、予防剤を提供することである。特に、末梢神経損傷に起因するアロディニア(例えばカウザルギー(causalgia)、反射性交感神経性ジストロフィ)、中枢神経損傷に起因するアロディニア(例えば、幻肢痛、帯状疱疹後神経痛(ヘルペス後疼痛)、視床痛、脊髄損傷後の痛み)、また外傷や、ウィルス感染、薬剤の副作用、糖尿病、神経浸潤性のガンに起因するアロディニア等を対象とした治療、改善、予防剤である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、疼痛過敏症モデルラット(Bennettモデル)を用い、HGF遺伝子を投与することによりアロディニアを抑制できることを見いだし、本発明を完成した。動物モデルを用いることにより、in vivoにおけるHGFのアロディニア治療効果を具現化した。
即ち、本発明は課題の解決手段として、肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子を有効成分とするアロディニアの治療、改善、予防剤を提供するものである。
【0016】
その要旨は、
(1)HGF遺伝子を有効成分とするアロディニアの治療、改善、予防のための組成物、
(2)HGF遺伝子が、筋肉内に投与されるための(1)記載の組成物、
(3)HGF遺伝子が、1〜5mg/mlの濃度で調製されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の組成物、
(4)HGF遺伝子が、2〜4mg/mlの濃度で調製されていることを特徴とする(1)〜(3)に記載の組成物、
(5)HGF遺伝子が、成人一人当たり0.001mg〜100mgの範囲で、数日〜数月に一回投与されることを特徴とする(1)〜(4)に記載の組成物、
(6)HGF遺伝子が、成人一人当たり0.01mg〜10mgの範囲で、数日〜数月に一回投与されることを特徴とする(1)〜(5)に記載の組成物、
(7)HGF遺伝子が、複数箇所に分割投与されることを特徴とする(1)〜(6)に記載の組成物、
(8)HGF遺伝子が、2〜8箇所に分割投与されることを特徴とする(1)〜(7)に記載の組成物、
(9)HGF遺伝子が、注射剤として投与されることを特徴とする(1)〜(8)に記載の組成物、
(10)HGF遺伝子が、針なし注射器を用いて投与されることを特徴とする(1)〜(9)に記載の組成物、
(11)HGF遺伝子が配列番号1又は2で示される遺伝子である(1)〜(10)に記載の組成物、
(12)HGF遺伝子が、裸のプラスミド(Naked Plasmid)の状態で投与されるための(1)〜(11)に記載の組成物、
(13)HGF遺伝子がセンダイウィルスエンベロープに封入されていることを特徴とする、(1)〜(11)に記載の組成物、
(14)末梢神経損傷に起因するアロディニアを対象とする(1)〜(13)の何れかに記載の組成物からなるアロディニアの治療、改善、予防剤、
(15)末梢神経損傷に起因するアロディニアが、カウザルギーまたは反射性交感神経性ジストロフィである(14)に記載の治療、改善、予防剤、
(16)中枢神経損傷に起因するアロディニアを対象とする(1)〜(13)の何れかに記載の組成物からなるアロディニアの治療、改善、予防剤、
(17)中枢神経損傷に起因するアロディニアが、幻肢痛、視床痛、脊髄損傷後の痛み、または、次の疾患(HIV感染、サイトメガロウィルス感染、水痘、帯状疱疹ウィルス感染)に起因するアロディニアである(16)に記載の治療、改善、予防剤、
(18)神経浸潤性のガン、糖尿病、外傷又はエイズ治療薬の副作用に起因するアロディニアを対象とする(1)〜(13)の何れかに記載の組成物からなるアロディニアの治療、改善、予防剤、
に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のアロディニアの治療、改善、予防剤は、HGF遺伝子を直接患部に局所的に送達できるため、非浸襲性であり、安全性および効果がより高く、かつ効果が長期間持続するという利点がある。また、現在用いられている低分子医薬品とは作用メカニズムが異なるため、低分子医薬品が効かないケースにも効果を期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明で使用される「HGF遺伝子」とは、HGFを発現しうる遺伝子を言い、当該遺伝子には、発現されるポリペプチドがHGFと実質的に同効である限り、その遺伝子配列の一部が欠失又は他の塩基により置換されていたり、他の塩基配列が一部挿入されていたり、5’末端及び/又は3’末端に塩基が結合したような遺伝子も包含される。かかる遺伝子としては、例えば、Nature, 342, 440 (1989)、特許第2777678号公報、Biochem. Biophys. Res. Commun., 163, 967 (1989)、Biochem. Biophys. Res. Commun., 172, 321 (1990)等に記載のHGF遺伝子が例示され、これらの遺伝子を本発明で使用することができる。
【0019】
ここでHGF遺伝子(HGFをコードするcDNA)の塩基配列は、前記文献に記載されている他、Genbank等のデータベースにも登録されている。従ってこれらの配列情報に基づきDNA部分をPCRのプライマーとして用い、例えば肝臓や白血球由来のmRNAに対してRT-PCR反応を行うことなどにより、HGFのcDNAをクローニングすることができる。これらのクローニングは、例えばMolecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等の基本書に従い、当業者ならば容易に行うことができる。またHGF遺伝子の改変等も、前記基本書に従い当業者ならば容易に行うことができる。より好ましくは、配列番号1に示されたHGF遺伝子を用いる。
【0020】
HGF遺伝子は、適当なベクターに組み込んだものを使用することができる。動物細胞において一般的に用いられる発現ベクターを使用できるが、好ましくは配列番号2に示されたベクター(Invitrogen社製pVAX1に前記配列1を組み込んだもの)を用いる。
【0021】
また、HGF遺伝子は、ウイルスエンベロープに封入して投与することもできる。ウイルスの中でも、好ましくはマウス肺炎ウイルスの一つであるセンダイウイルス(Hemagglutinating Virus of Japan、以下 HVJ)を挙げることができる。
なおHVJとして具体的には、例えばVR-105, VR-907等をAmerican Type Culture Collection (ATCC。住所:P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108 USA, TEL[1]-703-365-2700) から購入することができる。
http://www.atcc.org/SearchCatalogs/longview.cfm?view=av,152376,VR-105&text=Sendai&max=20
http://www.atcc.org/SearchCatalogs/longview.cfm?view=av,1375478,VR-907&text=Sendai&max=20
ウイルスエンベロープベクターについてより詳しくは、例えば特開2001-286282号公報(WO01/57204号公報)、特開2002-065278号公報、WO03/014338号公報等に記載されており、具体的には例えば特開2001-286282号公報の実施例8などに従って調製することができる。
【0022】
投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等によって異なるが、通常、成人一人当たりHGF遺伝子として0.001mg〜100mg、好ましくは0.01mg〜10mgの範囲で、数日〜数月に一回投与する。これは前記したように、種々の条件によって変動することもある。また投与液濃度は、1〜5mg/mlが好ましく、さらに好ましくは2〜4mg/mlを用いる。
【0023】
投与方法は限定されないが、通常は疼痛部位の周辺複数箇所に投与することが好ましい。より好ましくは2箇所以上8箇所以下に分割して投与する。
【0024】
製剤形態としては、投与形態に合った種々の製剤形態(例えば液剤など)をとり得る。例えば有効成分である遺伝子を含有する注射剤とされた場合、当該注射剤は定法により調製することができ、たとえば 適切な溶剤(PBS等の緩衝液、生理食塩水、滅菌水等)に溶解した後、必要に応じてフィルター等でろ過滅菌し、ついで無菌的な容器に充填することにより調製することができる。当該注射剤には必要に応じて慣用の担体等を加えてもよい。この場合、注射器には通常用いられる注射器の他に、シマジェット(島津製作所)のような針なし注射器を使用することもできる。針なし注射器を用いることで、投与時の患者の苦痛を緩和することができる。
【0025】
続いて本発明を具体的に説明するため、以下に実施例を掲げるが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0026】
BennettモデルラットにおけるHGF遺伝子のアロディニア抑制効果
(1)疼痛過敏症モデル(Bennettモデル)の作製
体重が180g以上の雄性ラットを用いた。イソフルラン(フォーレン、ダイナボット社製)の2%吸入麻酔下で、動物の左大腿部の皮膚を切開して坐骨神経を露出させ、その神経の4ヶ所を約1mm間隔でクロミックガットグット(4-0)を用いて軽く結紮した。切開した皮膚は絹糸で縫合し、抗生物質であるカナマイシンスプレーを塗布した。なお、使用する器具は消毒液に浸し、清潔なものを用いた。
【0027】
(2)試験物質の投与
疼痛過敏症モデル作製3日後に、ヒトHGFのcDNAを含むプラスミド(配列番号2、HGF DNA)を筋肉内に投与した。具体的には1mg/動物(0.5mg x 2ポイント)をモデル足の大腿筋の2箇所(結紮した坐骨神経を覆っている筋肉部位の中枢側及び末梢側)に投与した。対照には媒体(生理食塩水)のみを用いた。
【0028】
(3)Von Frey test
疼痛過敏症モデルラットを1群8匹使用した。被験物質投与開始後4、7、9、11及び14日に、最大圧力:30.0g、最大圧力まで到達する時間:40秒に設定したDynamic Planter Aesthesiometer (37400, ウゴバジル社)を用いて、左右足蹠の疼痛閾値を測定した。この疼痛閾値測定は、9〜12時の時間帯に実施した。
疼痛閾値(g)を評価尺度として、実験日程ごとの被験物質投与群と対照群の平均値の差を求めた。その平均値の有意差検定(Student’s t-test)を行い、統計学的有意差があった場合、鎮痛効果があると判断した。有意差の判定は***p0.001未満及び**p0.01未満で表示した。
結果:HGF遺伝子投与群は、薬物投与後7日、9日、11日に対照群に比べて有意に(7日、***p 0.001未満;9日、11日、**p 0.01未満)アロディニアを抑制した。(表1および図1)
また、正常足については、対照群とHGF遺伝子投与群に差が無かった。これより、HGF遺伝子は投与部位にのみ効果発現しており、全身に影響を及ぼす医薬品に比べて高い安全性を保持しているといえる。(表2)
【0029】
表1
モデル足(左足) 疼痛閾値(g)
──────────────────────────────────
試験群 術後日数(日) 3 7 10 12 14 17
投与後日数(日) 0 4 7 9 11 14
──────────────────────────────────
対照群
平均値 4.2 3.8 3.6 3.8 4.4 5.4
S.E. 0.4 0.4 0.3 0.3 0.4 0.8
──────────────────────────────────
HGF DNA群
平均値 4.1 5.6 6.8 7.1 7.3 6.9
S.E. 0.4 0.8 0.6 0.8 0.7 0.5
──────────────────────────────────
p値 0.0004 0.0012 0.0030
【0030】
表2
正常足(右足) 疼痛閾値(g)
──────────────────────────────────
試験群 術後日数(日) 3 7 10 12 14 17
投与後日数(日) 0 4 7 9 11 14
──────────────────────────────────
対照群
平均値 13.6 16.4 17.0 20.8 21.9 22.9
S.E. 0.5 0.9 0.9 1.0 1.0 1.0
──────────────────────────────────
HGF DNA群
平均値 13.6 15.3 17.9 18.9 22.9 21.3
S.E. 0.7 0.8 1.0 1.0 0.7 1.2
──────────────────────────────────
【0031】

(4)体重測定
被験物質投与開始日、投与開始後4、7、11及び14日に全ての試験群の動物について体重測定を行った。
結果:両群間で体重に有意差はなかった。(表3および図2)
【0032】
表3
体重(g)
──────────────────────────────────
試験群 術後日数(日) 3 7 10 14 17
投与後日数(日) 0 4 7 11 14
──────────────────────────────────
対照群
平均値 207.1 237.2 262.8 286.9 312.9
S.E. 2.8 3.4 3.6 4.9 6.3
──────────────────────────────────
HGF DNA群
平均値 213.6 246.4 274.5 298.9 325.3
S.E. 4.5 5.6 5.3 5.5 5.2
──────────────────────────────────
【産業上の利用可能性】
【0033】
局所選択的かつ長期的な効果が望める安全なアロディニアの治療、改善、予防剤として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】von Frey testの結果の経時的変化を表したグラフである。(実施例(3))
【図2】動物の経時的な体重変化を表したグラフである。(実施例(4))

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HGF遺伝子を有効成分とするアロディニアの治療、改善、予防のための組成物。
【請求項2】
HGF遺伝子が、筋肉内に投与されるための請求項1記載の組成物。
【請求項3】
HGF遺伝子が、1〜5mg/mlの濃度で調製されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
HGF遺伝子が、2〜4mg/mlの濃度で調製されていることを特徴とする請求項1ないし3に記載の組成物。
【請求項5】
HGF遺伝子が、成人一人当たり0.001mg〜100mgの範囲で、数日〜数月に一回投与されることを特徴とする請求項1ないし4に記載の組成物。
【請求項6】
HGF遺伝子が、成人一人当たり0.01mg〜10mgの範囲で、数日〜数月に一回投与されることを特徴とする請求項1ないし5に記載の組成物。
【請求項7】
HGF遺伝子が、複数箇所に分割投与されることを特徴とする請求項1ないし6に記載の組成物。
【請求項8】
HGF遺伝子が、2〜8箇所に分割投与されることを特徴とする請求項1ないし7に記載の組成物。
【請求項9】
HGF遺伝子が、注射剤として投与されることを特徴とする請求項1ないし8に記載の組成物。
【請求項10】
HGF遺伝子が、針なし注射器を用いて投与されることを特徴とする請求項1ないし9に記載の組成物。
【請求項11】
HGF遺伝子が配列番号1又は2で示される遺伝子である請求項1ないし10に記載の組成物。
【請求項12】
HGF遺伝子が、裸のプラスミド(Naked Plasmid)の状態で投与されるための請求項1ないし11に記載の組成物。
【請求項13】
HGF遺伝子がセンダイウィルスエンベロープに封入されていることを特徴とする、請求項1ないし11に記載の組成物。
【請求項14】
末梢神経損傷に起因するアロディニアを対象とする請求項1ないし13何れか一項に記載の組成物からなるアロディニアの治療、改善、予防剤。
【請求項15】
末梢神経損傷に起因するアロディニアが、カウザルギー(causalgia)または反射性交感神経性ジストロフィである請求項14に記載の治療、改善、予防剤。
【請求項16】
中枢神経損傷に起因するアロディニアを対象とする請求項1ないし13何れか一項に記載の組成物からなるアロディニアの治療、改善、予防剤。
【請求項17】
中枢神経損傷に起因するアロディニアが、幻肢痛、視床痛、脊髄損傷後の痛み、または、次の疾患(HIV感染、サイトメガロウィルス感染、水痘、帯状疱疹ウィルス感染)に起因するアロディニアである請求項16に記載の治療、改善、予防剤。
【請求項18】
神経浸潤性のガン、糖尿病、外傷又はエイズ治療薬の副作用に起因するアロディニアを対象とする請求項1ないし13何れか一項に記載の組成物からなるアロディニアの治療、改善、予防剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−45204(P2006−45204A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189697(P2005−189697)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(500409323)アンジェスMG株式会社 (34)
【Fターム(参考)】