アンギオテンシンIIアンタゴニスト活性を有する新規ピロール誘導体
本発明は、一般式(I):
[式中、R1はCHO、COOH、CH2OHから独立して選ばれる基;R2は水素または直鎖もしくは分枝鎖C1−C6アルキル基;R3は水素またはClおよびBrから選ばれるハロゲン基;R4は直鎖もしくは分枝鎖C3−C5アルキル基である]で示される化合物およびそのナトリウムもしくはカリウム塩などの医薬的に許容しうる塩を提供する。本発明化合物は、効力ある選択的AIIアンタゴニスト活性を示し、かつAIIの高合成またはAT1レセプタの過剰発現が一次病的役割を演じるような障害、たとえば動脈高血圧症、うっ血性心不全、血小板凝集、およびこれらに付随する障害、たとえば心筋および脳梗塞、腎虚血、静脈および動脈血栓症、末梢血管症、肺高血圧症、糖尿病、糖尿病ニューロパシー、緑内障および糖尿病網膜症の処置に有用である。
[式中、R1はCHO、COOH、CH2OHから独立して選ばれる基;R2は水素または直鎖もしくは分枝鎖C1−C6アルキル基;R3は水素またはClおよびBrから選ばれるハロゲン基;R4は直鎖もしくは分枝鎖C3−C5アルキル基である]で示される化合物およびそのナトリウムもしくはカリウム塩などの医薬的に許容しうる塩を提供する。本発明化合物は、効力ある選択的AIIアンタゴニスト活性を示し、かつAIIの高合成またはAT1レセプタの過剰発現が一次病的役割を演じるような障害、たとえば動脈高血圧症、うっ血性心不全、血小板凝集、およびこれらに付随する障害、たとえば心筋および脳梗塞、腎虚血、静脈および動脈血栓症、末梢血管症、肺高血圧症、糖尿病、糖尿病ニューロパシー、緑内障および糖尿病網膜症の処置に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効力ある選択的アンギオテンシンIIアンタゴニスト活性を示す新規ピロール誘導体に関する。
【発明の開示】
【0002】
本発明は、下記一般式(I)で示されるピロール誘導体およびそのナトリウムもしくはカリウム塩などの医薬的に許容しうる塩を提供する。
【化1】
[式中、R1は−CHO、−COOH、−CH2OHから独立して選ばれる基;
R2は水素または直鎖もしくは分枝鎖C1−C6アルキル基;
R3は水素またはClおよびBrから選ばれるハロゲン基;
R4は直鎖もしくは分枝鎖C3−C5アルキル基である]
【0003】
本発明の化合物は、標的細胞の表面のその特定(特異的)AT1型レセプタと相互作用することにより、効力あるアンギオテンシンII(AII)レセプタアンタゴニストであることが証明されている。AT1レセプタは、動脈血圧のコントロールの中心役割を果たすが、主に副腎皮質や腎臓で、より最近では、血小板の表面でも同定されている。AIIとAT1レセプタの結合は、血管収縮、アルドステロン分泌の増加、血小板凝集および動脈血圧の増加をひき起こす。すなわち、AIIは動脈高血圧症や心臓血管障害をひき起こす主な病因ファクターの1つと考えられている。
【0004】
動脈血圧や腎機能のコントロールにおけるAIIの重大さを仮定して、現在まで、極めて多くの種々の非ペプチドAIIレセプタ阻害薬が合成されている。これらAT1アンタゴニストの原型は、その化学構造にビフェニルテトラゾール(BPT)基の存在を特徴とするイミダゾール誘導体の、ロサルタン(losartan)である。この薬物は、動脈高血圧症の処置に使用されている。他の化合物、一般に複素環式誘導体、たとえばエプロサルタン(eprosartan)、カンデサルタン(candesartan)、テルミサルタン(telmisartan)およびバルサルタン(valsartan)が後に治療用途に加わった。最後の化合物は、アミノ酸誘導体であるが、なおその構造にBPT基を有している。
【0005】
上述のもの以外に、多くの他のAT1アンタゴニストが前臨床試験、続いてヒト薬理学的試験に付されている[たとえば研究論文として: P. K. Chakravarty の Exp. Opin. Ther. Patents (1996),5(5),431−458(Ashley Pub.),“抗高血圧剤”; R. R. Wexler らの J. Med. Chem. (1996),39(3),625−656,“非ペプチドアンギオテンシンIIレセプタアンタゴニスト,次世代の抗高血圧療法”; D. J. Dzielak の Exp. Opin. Invest. Drugs (1998),7(5),741−751(Ashley Pub.),“アンギオテンシンIIレセプタアンタゴニストの比較薬学”参照]。
【0006】
AT1アンタゴニスト化合物の合成に用いる他の複素環式構造の中で、本発明が提供する化合物の場合に記載のピロールは既に、他の人によって使用されている。しかしながら、Carini らが合成した誘導体[ヨーロッパ特許EP0323841(1993)]は、以下の説明から証明されるように、本明細書に記載のものとは実質的に相違し、またその示される活性レベルはほとんど価値がなかった。
【0007】
本発明の目的は、AIIの高合成またはAT1レセプタの過剰発現が一次病的役割を演じるような障害、たとえば動脈高血圧症、うっ血性心不全、血小板凝集、およびこれらに付随する障害、たとえば心筋および脳梗塞、腎虚血、静脈および動脈血栓症、末梢血管症、肺高血圧症、糖尿病、糖尿病ニューロパシー、緑内障および糖尿病網膜症の処置に対し、効力ある選択的AIIアンタゴニスト活性を示す治療用途用の新規薬物を提供することである。
【0008】
本発明が提供する化合物の投与剤形は、通常の方法に従って、たとえば錠剤、カプセル剤、懸濁液、溶液、パッチなどで作成でき、かつ経口投与、非経口投与、経皮投与、経粘膜投与、眼投与で、または治療効果を達成する他の適当な方法、たとえば時間経過の活性物質の制御放出を可能ならしめる長期作用を持つ経口用途用の固形製剤などで投与しうる。
【0009】
活性成分は通常、患者に対して、投与1回当り0.125〜5mg/kg体重にわたる基準用量で投与される。非経口および眼ルートによる投与の場合、本発明化合物の水溶性塩、たとえばナトリウムもしくはカリウム塩あるいは他の非毒性および医薬的に許容しうる塩の使用が好ましい。
【0010】
使用しうる不活性成分は、賦形剤、結合剤、フレーバー、崩壊剤、経皮および経粘膜吸収促進剤、着色剤、湿潤剤等として製薬技法で普通に用いられている物質であり、そして、眼投与の場合、医薬的に許容しうる保存剤も使用しうる。
【0011】
本発明が提供するピロール誘導体の製造法は、以下の操作を包含する一連の反応から成る:
a)ピロール誘導体1e(下記反応式1参照)の製造で、適当なR4トリメチルシリルアルキン(ここで、R4は前記と同意義である)をAlCl3の存在下、R2アシルクロリド(ここで、R2は前記と同意義である)と反応させて(工程1)、対応するケトアルキン1aを得、これを窒素雰囲気下、トリメチルシリルシアニドで処理して(工程2)、対応するCN付加誘導体1bを得、これをLiAlH4で還元して(工程3)、対応するアミン1cを得た後、これを不活性溶媒、たとえばアセトニトリル中で還流しながらPdCl2で処理して(工程4)、対応するピロール誘導体1dを得、これを最後に Vilsmeier ホルミル化[Ber. (1927),60,119]に付して(工程5)、対応する適当に置換した2−ピロールアルデヒド1eを得る。
【0012】
反応式1:
【化2】
R1=CHO、R2=C1−C6アルキル、R3=H、R4=C3−C5アルキル
【0013】
実験条件:(a)AlCl3;(b)Me3SiCN,Et2AlCl;(c)LiAlH4;(d)PdCl2,MeCN,還流;(e)DMF,POCl3,1,2−DCE、次いでAcONa/H2O
注)(a)〜(d)については、Tetr. Lett. 1981,4277を参照。R4=ペンチルまたはイソペンチル、トリメチルシリルアルキンは商業上入手できず、公知の文献:J.A.C.S.1958,5298に従って対応アルキンから製造する。
【0014】
b)一般式(I)の(BPT)−ピロール誘導体(下記反応式2参照)の製造で、2−ピロールアルデヒド1e(反応式1の工程5)を窒素雰囲気下、NaHの存在下、4'−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルテトラゾール−5−イル)ビフェニル(BPT−Br)と反応させて(工程6)、対応する誘導体2aを得、これを緩酸加水分解で式(I)(ここで、R2およびR4は前記と同意義であるが、R1はホルミルおよびR3は水素である)の対応するピロール誘導体に変換する(工程7)。
【0015】
反応式2:
【化3】
実験条件:(a)NaH,室温;(b)HCl,MeOH;(c)NaBH4;(d)LiAlH4;(e)H2O2/H2O
注)ビフェニル(BT−Br)は、文献: Carini のD. J. J. Med. Chem. 1991,34,2525に従って製造する。
【0016】
このように得られる一般式(I)の2−ホルミルピロール誘導体は、H2O2による処理またはメタノール中還流条件下のNaBH4による還元処理でそれぞれ、対応するカルボン酸またはアルコールに変換することができる(反応式2の工程8)。比較目的として、対応するメチル誘導体(R1=CH3)は、LiAlH4による還元でも合成される(反応式2の工程8)。
【0017】
R1がCHO;R2がH;R3がH、BrまたはCl;R4がC3−C5アルキルである一般式(I)の2−ホルミルピロール誘導体は、下記反応式3により製造される。すなわち、ピロールをPOCl3の存在下、適当なN,N−ジメチルアシルアミド(DMP)と反応させた後、酢酸ナトリウムで加水分解を行って、対応する2−アシルピロールを得、次いでヒドラジンおよびカリによる還元で[Huang Minlon の J. A. C. S. 1946,68,2487に従って]、対応する2−アルキルピロール3aに変換し(工程1,2)、上記反応式1に見られるホルミル化を行って、対応するホルミル誘導体3bを得(工程3)、次いでN−ブロモスクシンイミド(NBS)で処理して、対応するブロモ誘導体3c(工程4d)を得るか、またはピロリジンおよびHClO4による処理の後塩化スルフリルによる塩素化で[Sonnet P. E. の J. O. C. 1971,36,1005]、対応するクロロ誘導体3c(工程4e,f)を得る。
【0018】
反応式3:
【化4】
実験条件:(a)POCl3,DMP,AcONa;(b)N2H4,KOH;(c)POCl3,DMF,AcONa;(d)NBS;(e)ピロリジン;(f)SO2Cl2
【0019】
最後に、ホルミル誘導体3cを反応式2(工程6)の記載に準じNaHの存在下、4'−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニルで処理して、式(I)の最終化合物に変換する。比較目的として、2,5−ジメチル−1−[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]ピロール化合物(化合物14)はまた、下記反応式4に示されるように合成される。
【0020】
反応式4:化合物14の製造
【化5】
実験条件:(a)CF3CONH2,t−BuOK;(b)KOH(水性)、次いで4N−HCl;(c)アセトニルアセトン,AcOH,還流
【実施例】
【0021】
次に実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
実施例1
5−n−ブチル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−3−[3−(2−メチル)プロピル]−2−ピロールアルデヒド(1)(下記表1の化合物1)の製造
反応式1:
工程1.2−メチル−5−デシン−4−オン(1a)
65mLのCCl4中の21.6gのAlCl3(0.162モル)を2℃に冷却し、30mLのCCl4中の19.7mLのイソバレロイルクロリド(0.162モル)を滴下する。次いで、30mLのCCl4中の25gのトリメチルシリルヘキシン(0.162モル)を滴下する。混合物を2℃で1hおよび周囲温度で24h攪拌する。これを37%HCl/氷(1:3)200mLに注ぎ、1h攪拌し、各相を分離し、水性相をCH2Cl2で抽出する。コンバインした有機相を洗って中性とし、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。27gの生成物が得られ、これをさらに精製せずに、次工程に用いる。化学式:C11H18O(m.w.166.27)。収率定量。IR(フィルム)2956、2209、1670cm−1。
【0022】
工程2.4−シアノ−2−メチル−4−トリメチルシリルオキシ−5−デシン(1b)
27gの(1a)(0.162モル)と23.8mLのトリメチルシリルシアニド(0.178モル)を、窒素雰囲気下で混合する。1.8mLのEt2AlCl(トルエン中25%溶液、3.24ミリモル)を滴下し、混合物を6h攪拌する。過剰のトリメチルシリルシアニドを蒸発する。43gの生成物が得られ、これをさらに精製せずに、次工程に用いる。化学式:C15H27NOSi(m.w.265.47)。収率定量。IR(フィルム)2959、2237、1610cm−1。
【0023】
工程3.2−イソブチル−2−ヒドロキシ−3−オクチン−1−イルアミン(1c)
窒素雰囲気下、250mLの無水ジエチルエーテルに、6.3gのLiAlH4(0.167モル)を懸濁し、温度を0℃に下げる。75mLの無水ジエチルエーテル中の43gの(1b)(0.162モル)を滴下し、混合物を20h攪拌する。LiAlH4を水および30%NaOHで加水分解し、各相を分離する。水性相をジエチルエーテルで繰返し抽出し、有機相を1N−HClで抽出し、水性相を30%NaOHでアルカリ化し、ジエチルエーテルで抽出し、コンバインした有機相を洗って中性とし、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。20.8gの生成物が得られ、これをさらに精製せずに、次工程に用いる。化学式:C12H23NO(m.w.197.32)。収率65%。
【0024】
工程4.4−n−ブチル−3−[3−(2−メチル)プロピル]ピロール(1d)
窒素雰囲気下、20.8gの(1c)(0.105モル)を300mLのアセトニトリルに溶解し、186mgのPdCl2(1.05ミリモル)を加え、混合物を15h加熱還流する。溶媒を蒸発し、粗生成物を、溶離剤混合物としてヘキサン/酢酸エチル(4:1)を用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製する。8.3gの生成物が得られ、これを次工程に用いる。化学式:C12H21N(m.w.179.30)。収率44%。IR(フィルム)3381、2926、1660cm−1。
【0025】
工程5.4−n−ブチル−3−[3−(2−メチル)プロピル]−2−ピロールアルデヒド(1e)
3.9mLのDMF(0.051モル)を0〜5℃に冷却し、4.7mLのPOCl3(0.051モル)をゆっくりと滴下する。混合物を周囲温度で15分間攪拌し、次いで27mLの1,2−ジクロロエタン(1,2−DCE)で希釈し、0℃に冷却する。40mLの1,2−DCE中の8.3gの(1d)(0.046モル)を滴下し、混合物を30分間加熱還流する。混合物を冷却せしめ、42mLの水中の酢酸ナトリウム(21.3g、0.259モル)の溶液で希釈し、次いでさらに30分間加熱還流する。各相を分離し、水性相をCH2Cl2で抽出し、コンバインした有機相を洗って中性とし、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。粗生成物を、溶離剤混合物としてヘキサン/酢酸エチル(4:1)を用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製する。7.2gの生成物が得られ、これを次工程に用いる。化学式:C13H21NO(m.w.207.29)。収率76%。IR(フィルム)3252、2955、1631cm−1。
【0026】
反応式2:
工程6.5−n−ブチル−1−[2’−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−3−[3−(2−メチル)プロピル]−2−ピロールアルデヒド(2a)
窒素雰囲気下、1.7gのNaH(0.043モル)を250mLの無水ジメチルホルムアミド(DMF)に懸濁し、7.2gのピロールアルデヒド(0.036モル)を少量づつ加える。3h後、21.9gの4’−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル(0.036モル)を少量づつ加え、混合物を周囲温度で48h静置する。混合物を水に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出し、コンバインした有機相を水洗し、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。粗生成物を、溶離剤混合物としてヘキサン/酢酸エチル(4:1)を用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製する。20.5gの生成物が得られ、これを次工程に用いる。化学式:C46H45N5O(m.w.687.09)。収率83%。
【0027】
工程7.5−n−ブチル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−3−[3−(2−メチル)プロピル]−2−ピロールアルデヒド(化合物1)
20.5gの化合物2a(0.030モル)をTHF/MeOH(1:50)510mLに溶解し、混合物を0℃に冷却し、37.5mLの4N−HCl/水(0.150モル)を滴下する。混合物を0℃で1hおよび周囲温度で2h静置する。混合物を飽和NaHCO3溶液で中和し、溶媒を蒸発する。混合物をクエン酸でpH4に酸性化し、生成物を濾別し、水洗して中性とする。乾燥を真空オーブン中50℃で行なう。生成物:6.6g、化学式:C27H31N5O(m.w.441.58)。収率50%。
【0028】
同様にして下記の化合物を製造する(下記表1参照):
5−n−プロピル−3−イソプロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(化合物5)
5−n−ブチル−3−イソプロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(化合物6)
5−n−ペンチル−3−イソプロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(化合物8)
5−[(3−メチル)ブチル]−3−イソプロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(化合物9)
同様な方法を用いて、5−n−ブチル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−3−[3−(2,2−ジメチル)プロピル]−2−ピロールアルデヒドおよび5−n−ブチル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−3−[4−(2−メチル)ブチル]−2−ピロールアルデヒドを製造しうる。
【0029】
実施例2
反応式3:
工程1.2−n−プロピオニルピロール
100mLのN,N−ジメチルプロピオンアミド(0.909モル)を0〜5℃に冷却し、83.4mLのPOCl3(0.909モル)をゆっくりと滴下する。混合物を周囲温度で15分間攪拌し、次いで200mLの1,2−ジクロロエタン(1,2−DCE)で希釈し、0℃に冷却する。100mLの1,2−DCE中の57.4mLのピロール(0.827モル)を滴下し、混合物を30分間加熱還流する。混合物を冷却せしめ、800mLの水中の酢酸ナトリウム(380g、4.63モル)の溶液で希釈し、次いでさらに30分間加熱還流する。各相を分離し、水性相をCH2Cl2で抽出し、コンバインした有機相を洗って中性とし、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。粗生成物を真空蒸留(3.5mバール、110〜117℃)で精製する。100gの生成物が得られ、これを次工程に用いる。化学式:C7H9NO(m.w.123.15)。収率98%。
【0030】
工程2.2−n−プロピルピロール(3a)
116gのKOH(2.07モル)を700mLのジエチレングリコールに懸濁し、75gの2−プロピオニルピロール(0.609モル)および86mLのヒドラジン水和物(1.77モル)を加える。混合物をDean−Stark装置で加熱還流する。各相を分離し、上部相を水洗し、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。40gの生成物が得られ、これをさらに精製せずに、次工程に用いる。化学式:C7H11N(m.w109.17)。収率60%。
【0031】
工程3.5−n−プロピル−2−ピロールアルデヒド(3b)
この化合物は、実施例1の反応式1/工程5と同じ手順を用いて製造する。4gの(2a)(0.036モル)、3.7mLのPOCl3(0.040モル)および3.1mLのDMF(0.040モル)から3.9gの生成物を得、これを次工程に用いる。化学式:C8H11NO(m.w.125.00)。収率78%。
【0032】
反応式2:
工程6.5−n−プロピル−1−[2’−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(2a)
この化合物は、実施例1と同じ手順を用いて製造する。3.9gの5−n−プロピル−2−ピロールアルデヒド(0.031モル)および15gの4’−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル(0.031モル)から15gの生成物を得、これを次工程に用いる。化学式:C41H35N5O(m.w.613.76)。収率78%。
【0033】
工程7.5−n−プロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(化合物2)
この化合物は、実施例1と同じ手順を用いて製造する。15gの5−n−プロピル−1−[2’−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(0.024モル)および30mLの4N−HCl(0.120モル)から6.3gの生成物を得る。化学式:C22H21N5O(m.w.371.44)。収率71%。
同様にして下記の化合物を製造する(下記表1参照):
5−n−ブチル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(化合物7)
【0034】
実施例3
反応式3:
工程4.4−ブロモ−5−n−プロピル−2−ピロールアルデヒド
15gの5−n−プロピル−2−ピロールアルデヒド(0.11モル)を窒素雰囲気下、600mLのCCl4に溶解する。23gのNBS(0.13モル)を加え、混合物を50℃に6h加熱する。スクシンイミドを濾去し、有機相を飽和NaHCO3溶液で洗い、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。14gの生成物が得られ、これを次工程に用いる。化学式:C8H10BrNO(m.w.216.08)。収率60%。
【0035】
反応式2:
工程6.4−ブロモ−5−n−プロピル−1−[2’−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(2a)
この化合物は、実施例1と同じ手順を用いて製造する。4.3gの4−ブロモ−5−n−プロピル−2−ピロールアルデヒド(0.020モル)および11gの4’−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル(0.020モル)から10gの生成物を得、これを次工程に用いる。化学式:C41H34BrN5O(m.w.692.66)。収率75%。
【0036】
工程7.4−ブロモ−5−n−プロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(化合物3)
この化合物は、実施例1と同じ手順を用いて製造する。10gの4−ブロモ−5−n−プロピル−1−[2’−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(0.015モル)および19mLの4N−HCl(0.075モル)から3.5gの生成物を得る。化学式:C22H20BrN5O(m.w.450.34)。収率52%。
【0037】
実施例4
反応式3:
工程4.4−クロロ−5−n−プロピル−2−ピロールアルデヒド
Dean−Stark装置にて、3.25gのピロリジン(0.039モル)および5.51gの70%HClO4をベンゼン/酢酸エチル(1:1)28mL中で、水が完全に除去されるまで(約3h)加熱還流する。5.4gの5−n−プロピル−2−ピロールアルデヒド(0.039モル)を加え、混合物を再度Dean−Stark装置にて加熱還流する(1h)。
【0038】
溶媒を蒸発し、得られる11gの油状物(0.039モル)を80mLの1,2−DCEに溶解し、混合物を5℃に冷却する。10mLの1,2−DCEに溶解した5.2gの塩化スルフリル(0.039モル)をゆっくりと滴下し、混合物を5℃で1hおよび周囲温度で24h静置する。溶媒を蒸発し、残渣をジエチルエーテルに再溶解する。洗浄を飽和NaHCO3溶液、1N−HCl、水で繰返し行ない、混合物をNa2SO4で乾燥し、蒸発する。5.2gの生成物が得られ、これをさらに精製せずに、次工程に用いる。化学式:C8H10ClNO(m.w.171.62)。収率78%。
【0039】
反応式2:
工程6.4−クロロ−5−n−プロピル−1−[2’−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(2a)
この化合物は、実施例1と同じ手順を用いて製造する。5.2gの4−クロロ−5−n−プロピル−2−ピロールアルデヒド(0.030モル)および16.9gの4’−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル(0.030モル)から12gの生成物を得、これを次工程に用いる。化学式:C41H34ClN5O(m.w.648.21)。収率60%。
【0040】
工程7.4−クロロ−5−n−プロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(化合物4)
この化合物は、実施例1と同じ手順を用いて製造する。12gの4−クロロ−5−n−プロピル−1−[2’−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(0.019モル)および24mLの4N−HCl(0.095モル)から5.0gの生成物を得る。化学式:C22H20ClN5O(m.w.405.89)。収率65%。
【0041】
実施例5
反応式2:
工程8.5−n−プロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールカルボン酸(化合物10)
100mgの化合物2(0.269ミリモル)を50mLの0.1N−NaOHに溶解し、158mLの35%H2O2(1.6ミリモル)を加える。混合物を周囲温度で18h静置する。混合物を0℃に冷却し、2N−HClでpH2に調製する。固体を濾別し、水洗する。乾燥を真空オーブンにて40℃で行なう。生成物:54mg、化学式:C22H21N5O2(m.w.387.43)。収率52%。
同様にして下記の化合物を製造する(下記表1参照):
5−n−プロピル−3−イソプロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールカルボン酸(化合物11)
5−n−ブチル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールカルボン酸(化合物12)
【0042】
実施例6
5−n−プロピル−3−イソプロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールカルビノール(化合物13)
反応式2(工程8):
400mgの化合物2(1.07ミリモル)を、10mLのMeOHに溶解し、404mgのNaBH4(10.7ミリモル)を加える。混合物を2h加熱還流し、溶媒を蒸発し、混合物を2Nクエン酸でpH6に調整し、酢酸エチルで抽出し、コンバインした有機相を水洗し、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。生成物:250mg、C22H23N5O(m.w.373.46)、収率63%。
【0043】
実施例7
工程8.2−メチル−5−n−プロピル−3−イソプロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]ピロール(化合物15)
反応式(工程8):
窒素雰囲気下、0.27gのLiAlH4(7.2ミリモル)を100mLの無水THFに懸濁する。1gの(5)(2.4ミリモル)を加え、混合物を周囲温度で24h静置する。LiAlH4を水および30%NaOHで加水分解し、各相を分離する。水性相をジエチルエーテルで繰返し抽出し、コンバインした有機相を水洗し、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。生成物:800mg、C25H29N5(m.w.399.54)、収率83%。
【0044】
実施例8
反応式4:
工程1.4’−アミノメチル−2−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル(4a)
10gの4’−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル(0.018モル)、2.03gのトリフルオロアセトアミド(0.018モル)、2.4gのカリウムt−ブチレート(0.022モル)、0.5gの18−crown−6(1.8ミリモル)を、THF/ジエチルエーテル(1:1)80mL中で混合し、周囲温度で96h静置する。固体を濾去し、溶媒を蒸発し、残渣を酢酸エチルで再溶解し、1N−HCl、NaHCO3、水で洗い、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。9.6gの生成物が得られ、これをさらに精製せずに、次工程に用いる。化学式:C35H26F3N5O(m.w.589.62)。収率90%。
【0045】
得られるアミド9.6g(0.016モル)を、50mLのTHFに溶解し、9.4mLの20%水性KOHを加える。混合物を55℃に5h加熱し、4N−HClで酸性化し、周囲温度で一夜静置する。溶媒を蒸発し、混合物を30%NaOHでpH5〜6に調整し、濾過し、少量の水で洗い、真空オーブンにて50℃で乾燥する。2.8gの生成物が得られ、これをさらに精製せずに、次工程に用いる。化学式:C14H14ClN5(m.w.287.75)。収率60%。
【0046】
工程2.2,5−ジメチル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]ピロール(化合物14)
50mLの無水エタノール中の2.8gの(4a)(9.7ミリモル)、1.1gのアセトニルアセトン(9.7ミリモル)および0.5mLの氷AcOHを、窒素雰囲気下で混合する。混合物を6h加熱還流し、溶媒を蒸発し、残渣をクロロホルムおよび水で再溶解し、有機相を水洗し、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。生成物:1.7g、化学式:C20H19N5(m.w.329.41)、収率54%。
【0047】
このようにして得た化合物の幾つかを、それらを同定する物理化学性質と共に下記表1に示すが、これによって、本発明の精神および技術的範囲が制限されることは決してない。
【0048】
表1:式(I)の化合物
【化6】
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
注:
a)CHCl3/MeOH=9:1;b)酢酸エチル/MeOH=9:1;c)i−AmOH/アセトン/水=5:2:1;d)DMSO−d6;e)ベンジルメチレンとビフェニル芳香族のシグナルは、全ての化合物において同一であると考えてよい:ppm5.6(s,2H);6.8(d,2H);7.0(d,2H);7.6(m,4H)。f)非晶質固体
【0052】
薬理学的活性の説明:
本発明が提供する化合物に関するAT1レセプタでのアンタゴニスト活性は、ラット肝臓膜に対する特定AIIアゴニストの結合を阻害する能力として評価する。R.S.L.ChangらのJPET(1992),262,133−38およびM.J.Robertson らのBr.J.Pharmacol.(1992),107,1173−1180に記載の方法を、少し改変して使用する。放射性配位子[125I]−Sar1,Ile8−アンギオテンシンIIの使用濃度は、25pMで、膜含量は約25μgのたん白質/サンプルのたん白質濃度に相当し;インキューベーション時間は、25℃で180分である。
【0053】
結合物質と遊離物質の分離は、GFBミリポア(Millipore)ガラス繊維フィルターでの急速濾過で実施する。1μMのAIIの存在下、総結合の約5〜10%に達する非特異的結合を測定する。このようにして得られる結果は、下記表2に示され、該表2に本発明が提供しかつ既に表1で例示した幾つかの化合物について、IC50、すなわち、AT1レセプタから[125I]−Sar1,Ile8−アンギオテンシンII配位子の50%を置換しうるアンタゴニストの濃度(ナノモル)を記載する。
【0054】
表2:ラット肝臓膜における[125I]−Sar1,Ile8−アンギオテンシンII結合の阻害(AT1レセプタ亜類型)
【化7】
【0055】
【表4】
【0056】
表2に示すデータから、本発明が提供する幾つかの化合物は、効力あるAIIレセプタ・アンタゴニストであることが明らかである。一連の化合物の中で最も効力ある化合物,化合物1の効力は実際に、予め選定した対照化合物、すなわち、治療に既に使用されている幾つかのAIIアンタゴニストに比し、ほんのわずかに低い。
【0057】
また興味のある点は、化合物1が引用特許,EP−0323841で例として記載のBPT−ピロール誘導体と比べその効力が200倍以上である(化合物1の8.9nMに対し、EP0323841の81頁,表5に記載の化合物277の1.6μM)ことに注目され;事実、このピロールシリーズで本当に効力ある化合物(すなわち、少なくともマイクロモル未満活性を持つ化合物)を得るためには、R2に特異的立体内部特色(specific steric bulk features)を持つアルキル基、たとえば化合物1におけるイソブチル基あるいは化合物6におけるイソプロピル基を導入し、R4にはまさにメチルの代わりにC3−C5アルキルを導入することが必要である。
【0058】
本発明が提供する化合物の治療潜在性をいっそう良好に評価するため、インビトロでAII結合の阻害に最も効力のあることがわかっている化合物の幾つか、たとえば化合物1および6を、180mmHg以上の平均基礎動脈血圧を有する突発性高血圧ラット(SHR)または腎高血圧ラット(RHR)(腎動脈の部分閉塞が、術後3−4週約200mmHgで安定する動脈血圧の進行性増加をひき起こすラット)のいずれかで、インビボ評価に付す。
【0059】
使用する対照薬物は、このクラスで最も広く治療使用されているものの幾つか、たとえば losartan、valsartan および eprosartanである。化合物は、ナトリウム塩として生理的溶液に5mL/kgの容量で溶解せしめ、ED15、すなわち、投与の0−120分の期間内に平均基礎収縮期圧の15%減少をひき起こすmg/kg単位の用量を算定できるように、5〜20mg/kg範囲での種々の用量で腹腔内に投与する(I.P.)。
このようにして得られる値は、下記表3に示され、該表3に検査中の各生成物について、考慮中の時間間隔で15mg/kgの用量による血圧にもたらされる最大効果も示される。
【0060】
表3:治療使用中の幾つかのAIIアンタゴニストと比較して、本発明が提供する定めた化合物のI.P.投与によってひき起こされる、SHRおよびRHRラットにおける収縮期動脈血圧の減少
【表5】
*)算定不可:全用量での効果<10%
【0061】
表3に示すデータから、インビボ試験に付した本発明が提供する化合物は、SHRおよびRHRラットの両方で、効力ある抗高血圧作用を示すことが明らかである。
たとえば、化合物1は、考慮した全てのパラメーターにわたり、対照化合物のlosartanや valsartan より活性であることが判明するが、eprosartan は、インビトロではより活性であるのに、インビボ活性をほんのわずかしか示さない。
【0062】
本発明が提供する化合物の化学構造は、重要でかつ有利な特色、すなわち、高レベルの吸収性および代謝安定性を付与する。このことは、本発明が提供する化合物1および6の透過度を valsartan や eprosartan に対して、TC−7細胞の単層,Caco−2細胞系のサブクローンについて実験することにより[M.C.Gres らの Pharm.Res.15(1998),726−733頁]、得られるインビトロ生物学的利用能データによって確認される。
【0063】
たとえばA→B透過度を評価、すなわち、調査中の化合物の見掛透過度係数(Papp)を頂点から基底横方向にて、濃度50μM、インキューベーション時間60分で試験する。B→A透過度は反対に、すなわち、基底横から頂点方向にて、インキューベーション時間40分で評価する。得られる結果を、下記表4に示す。
【0064】
表4:TC7細胞単層における平均透過度(10−6cm/s)
【表6】
【0065】
表4に示すデータから、本発明が提供する調査化合物の場合、経細胞輸送は吸収の方向、すなわち、頂点から基底横流れ(A→B)が反対方向(B→A)流れに比し、はるかに大きいことが明らかである。これに対比して、valsartan および eprosartan は共に、ヒト腸上皮から得られる細胞系である、TC7細胞単層を流入する能力をほとんど示さない。この生物学的利用能の違いは重要である。何故なら、たとえば“インビボ”試験に付した全てのアンタゴニスト化合物の中で、化合物1が最も活性であることがわかり、しかも、valsartan および eprosartan“インビトロ”に比し、それぞれ効力が約3/5倍低いことの説明ができるからである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、効力ある選択的アンギオテンシンIIアンタゴニスト活性を示す新規ピロール誘導体に関する。
【発明の開示】
【0002】
本発明は、下記一般式(I)で示されるピロール誘導体およびそのナトリウムもしくはカリウム塩などの医薬的に許容しうる塩を提供する。
【化1】
[式中、R1は−CHO、−COOH、−CH2OHから独立して選ばれる基;
R2は水素または直鎖もしくは分枝鎖C1−C6アルキル基;
R3は水素またはClおよびBrから選ばれるハロゲン基;
R4は直鎖もしくは分枝鎖C3−C5アルキル基である]
【0003】
本発明の化合物は、標的細胞の表面のその特定(特異的)AT1型レセプタと相互作用することにより、効力あるアンギオテンシンII(AII)レセプタアンタゴニストであることが証明されている。AT1レセプタは、動脈血圧のコントロールの中心役割を果たすが、主に副腎皮質や腎臓で、より最近では、血小板の表面でも同定されている。AIIとAT1レセプタの結合は、血管収縮、アルドステロン分泌の増加、血小板凝集および動脈血圧の増加をひき起こす。すなわち、AIIは動脈高血圧症や心臓血管障害をひき起こす主な病因ファクターの1つと考えられている。
【0004】
動脈血圧や腎機能のコントロールにおけるAIIの重大さを仮定して、現在まで、極めて多くの種々の非ペプチドAIIレセプタ阻害薬が合成されている。これらAT1アンタゴニストの原型は、その化学構造にビフェニルテトラゾール(BPT)基の存在を特徴とするイミダゾール誘導体の、ロサルタン(losartan)である。この薬物は、動脈高血圧症の処置に使用されている。他の化合物、一般に複素環式誘導体、たとえばエプロサルタン(eprosartan)、カンデサルタン(candesartan)、テルミサルタン(telmisartan)およびバルサルタン(valsartan)が後に治療用途に加わった。最後の化合物は、アミノ酸誘導体であるが、なおその構造にBPT基を有している。
【0005】
上述のもの以外に、多くの他のAT1アンタゴニストが前臨床試験、続いてヒト薬理学的試験に付されている[たとえば研究論文として: P. K. Chakravarty の Exp. Opin. Ther. Patents (1996),5(5),431−458(Ashley Pub.),“抗高血圧剤”; R. R. Wexler らの J. Med. Chem. (1996),39(3),625−656,“非ペプチドアンギオテンシンIIレセプタアンタゴニスト,次世代の抗高血圧療法”; D. J. Dzielak の Exp. Opin. Invest. Drugs (1998),7(5),741−751(Ashley Pub.),“アンギオテンシンIIレセプタアンタゴニストの比較薬学”参照]。
【0006】
AT1アンタゴニスト化合物の合成に用いる他の複素環式構造の中で、本発明が提供する化合物の場合に記載のピロールは既に、他の人によって使用されている。しかしながら、Carini らが合成した誘導体[ヨーロッパ特許EP0323841(1993)]は、以下の説明から証明されるように、本明細書に記載のものとは実質的に相違し、またその示される活性レベルはほとんど価値がなかった。
【0007】
本発明の目的は、AIIの高合成またはAT1レセプタの過剰発現が一次病的役割を演じるような障害、たとえば動脈高血圧症、うっ血性心不全、血小板凝集、およびこれらに付随する障害、たとえば心筋および脳梗塞、腎虚血、静脈および動脈血栓症、末梢血管症、肺高血圧症、糖尿病、糖尿病ニューロパシー、緑内障および糖尿病網膜症の処置に対し、効力ある選択的AIIアンタゴニスト活性を示す治療用途用の新規薬物を提供することである。
【0008】
本発明が提供する化合物の投与剤形は、通常の方法に従って、たとえば錠剤、カプセル剤、懸濁液、溶液、パッチなどで作成でき、かつ経口投与、非経口投与、経皮投与、経粘膜投与、眼投与で、または治療効果を達成する他の適当な方法、たとえば時間経過の活性物質の制御放出を可能ならしめる長期作用を持つ経口用途用の固形製剤などで投与しうる。
【0009】
活性成分は通常、患者に対して、投与1回当り0.125〜5mg/kg体重にわたる基準用量で投与される。非経口および眼ルートによる投与の場合、本発明化合物の水溶性塩、たとえばナトリウムもしくはカリウム塩あるいは他の非毒性および医薬的に許容しうる塩の使用が好ましい。
【0010】
使用しうる不活性成分は、賦形剤、結合剤、フレーバー、崩壊剤、経皮および経粘膜吸収促進剤、着色剤、湿潤剤等として製薬技法で普通に用いられている物質であり、そして、眼投与の場合、医薬的に許容しうる保存剤も使用しうる。
【0011】
本発明が提供するピロール誘導体の製造法は、以下の操作を包含する一連の反応から成る:
a)ピロール誘導体1e(下記反応式1参照)の製造で、適当なR4トリメチルシリルアルキン(ここで、R4は前記と同意義である)をAlCl3の存在下、R2アシルクロリド(ここで、R2は前記と同意義である)と反応させて(工程1)、対応するケトアルキン1aを得、これを窒素雰囲気下、トリメチルシリルシアニドで処理して(工程2)、対応するCN付加誘導体1bを得、これをLiAlH4で還元して(工程3)、対応するアミン1cを得た後、これを不活性溶媒、たとえばアセトニトリル中で還流しながらPdCl2で処理して(工程4)、対応するピロール誘導体1dを得、これを最後に Vilsmeier ホルミル化[Ber. (1927),60,119]に付して(工程5)、対応する適当に置換した2−ピロールアルデヒド1eを得る。
【0012】
反応式1:
【化2】
R1=CHO、R2=C1−C6アルキル、R3=H、R4=C3−C5アルキル
【0013】
実験条件:(a)AlCl3;(b)Me3SiCN,Et2AlCl;(c)LiAlH4;(d)PdCl2,MeCN,還流;(e)DMF,POCl3,1,2−DCE、次いでAcONa/H2O
注)(a)〜(d)については、Tetr. Lett. 1981,4277を参照。R4=ペンチルまたはイソペンチル、トリメチルシリルアルキンは商業上入手できず、公知の文献:J.A.C.S.1958,5298に従って対応アルキンから製造する。
【0014】
b)一般式(I)の(BPT)−ピロール誘導体(下記反応式2参照)の製造で、2−ピロールアルデヒド1e(反応式1の工程5)を窒素雰囲気下、NaHの存在下、4'−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルテトラゾール−5−イル)ビフェニル(BPT−Br)と反応させて(工程6)、対応する誘導体2aを得、これを緩酸加水分解で式(I)(ここで、R2およびR4は前記と同意義であるが、R1はホルミルおよびR3は水素である)の対応するピロール誘導体に変換する(工程7)。
【0015】
反応式2:
【化3】
実験条件:(a)NaH,室温;(b)HCl,MeOH;(c)NaBH4;(d)LiAlH4;(e)H2O2/H2O
注)ビフェニル(BT−Br)は、文献: Carini のD. J. J. Med. Chem. 1991,34,2525に従って製造する。
【0016】
このように得られる一般式(I)の2−ホルミルピロール誘導体は、H2O2による処理またはメタノール中還流条件下のNaBH4による還元処理でそれぞれ、対応するカルボン酸またはアルコールに変換することができる(反応式2の工程8)。比較目的として、対応するメチル誘導体(R1=CH3)は、LiAlH4による還元でも合成される(反応式2の工程8)。
【0017】
R1がCHO;R2がH;R3がH、BrまたはCl;R4がC3−C5アルキルである一般式(I)の2−ホルミルピロール誘導体は、下記反応式3により製造される。すなわち、ピロールをPOCl3の存在下、適当なN,N−ジメチルアシルアミド(DMP)と反応させた後、酢酸ナトリウムで加水分解を行って、対応する2−アシルピロールを得、次いでヒドラジンおよびカリによる還元で[Huang Minlon の J. A. C. S. 1946,68,2487に従って]、対応する2−アルキルピロール3aに変換し(工程1,2)、上記反応式1に見られるホルミル化を行って、対応するホルミル誘導体3bを得(工程3)、次いでN−ブロモスクシンイミド(NBS)で処理して、対応するブロモ誘導体3c(工程4d)を得るか、またはピロリジンおよびHClO4による処理の後塩化スルフリルによる塩素化で[Sonnet P. E. の J. O. C. 1971,36,1005]、対応するクロロ誘導体3c(工程4e,f)を得る。
【0018】
反応式3:
【化4】
実験条件:(a)POCl3,DMP,AcONa;(b)N2H4,KOH;(c)POCl3,DMF,AcONa;(d)NBS;(e)ピロリジン;(f)SO2Cl2
【0019】
最後に、ホルミル誘導体3cを反応式2(工程6)の記載に準じNaHの存在下、4'−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニルで処理して、式(I)の最終化合物に変換する。比較目的として、2,5−ジメチル−1−[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]ピロール化合物(化合物14)はまた、下記反応式4に示されるように合成される。
【0020】
反応式4:化合物14の製造
【化5】
実験条件:(a)CF3CONH2,t−BuOK;(b)KOH(水性)、次いで4N−HCl;(c)アセトニルアセトン,AcOH,還流
【実施例】
【0021】
次に実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
実施例1
5−n−ブチル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−3−[3−(2−メチル)プロピル]−2−ピロールアルデヒド(1)(下記表1の化合物1)の製造
反応式1:
工程1.2−メチル−5−デシン−4−オン(1a)
65mLのCCl4中の21.6gのAlCl3(0.162モル)を2℃に冷却し、30mLのCCl4中の19.7mLのイソバレロイルクロリド(0.162モル)を滴下する。次いで、30mLのCCl4中の25gのトリメチルシリルヘキシン(0.162モル)を滴下する。混合物を2℃で1hおよび周囲温度で24h攪拌する。これを37%HCl/氷(1:3)200mLに注ぎ、1h攪拌し、各相を分離し、水性相をCH2Cl2で抽出する。コンバインした有機相を洗って中性とし、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。27gの生成物が得られ、これをさらに精製せずに、次工程に用いる。化学式:C11H18O(m.w.166.27)。収率定量。IR(フィルム)2956、2209、1670cm−1。
【0022】
工程2.4−シアノ−2−メチル−4−トリメチルシリルオキシ−5−デシン(1b)
27gの(1a)(0.162モル)と23.8mLのトリメチルシリルシアニド(0.178モル)を、窒素雰囲気下で混合する。1.8mLのEt2AlCl(トルエン中25%溶液、3.24ミリモル)を滴下し、混合物を6h攪拌する。過剰のトリメチルシリルシアニドを蒸発する。43gの生成物が得られ、これをさらに精製せずに、次工程に用いる。化学式:C15H27NOSi(m.w.265.47)。収率定量。IR(フィルム)2959、2237、1610cm−1。
【0023】
工程3.2−イソブチル−2−ヒドロキシ−3−オクチン−1−イルアミン(1c)
窒素雰囲気下、250mLの無水ジエチルエーテルに、6.3gのLiAlH4(0.167モル)を懸濁し、温度を0℃に下げる。75mLの無水ジエチルエーテル中の43gの(1b)(0.162モル)を滴下し、混合物を20h攪拌する。LiAlH4を水および30%NaOHで加水分解し、各相を分離する。水性相をジエチルエーテルで繰返し抽出し、有機相を1N−HClで抽出し、水性相を30%NaOHでアルカリ化し、ジエチルエーテルで抽出し、コンバインした有機相を洗って中性とし、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。20.8gの生成物が得られ、これをさらに精製せずに、次工程に用いる。化学式:C12H23NO(m.w.197.32)。収率65%。
【0024】
工程4.4−n−ブチル−3−[3−(2−メチル)プロピル]ピロール(1d)
窒素雰囲気下、20.8gの(1c)(0.105モル)を300mLのアセトニトリルに溶解し、186mgのPdCl2(1.05ミリモル)を加え、混合物を15h加熱還流する。溶媒を蒸発し、粗生成物を、溶離剤混合物としてヘキサン/酢酸エチル(4:1)を用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製する。8.3gの生成物が得られ、これを次工程に用いる。化学式:C12H21N(m.w.179.30)。収率44%。IR(フィルム)3381、2926、1660cm−1。
【0025】
工程5.4−n−ブチル−3−[3−(2−メチル)プロピル]−2−ピロールアルデヒド(1e)
3.9mLのDMF(0.051モル)を0〜5℃に冷却し、4.7mLのPOCl3(0.051モル)をゆっくりと滴下する。混合物を周囲温度で15分間攪拌し、次いで27mLの1,2−ジクロロエタン(1,2−DCE)で希釈し、0℃に冷却する。40mLの1,2−DCE中の8.3gの(1d)(0.046モル)を滴下し、混合物を30分間加熱還流する。混合物を冷却せしめ、42mLの水中の酢酸ナトリウム(21.3g、0.259モル)の溶液で希釈し、次いでさらに30分間加熱還流する。各相を分離し、水性相をCH2Cl2で抽出し、コンバインした有機相を洗って中性とし、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。粗生成物を、溶離剤混合物としてヘキサン/酢酸エチル(4:1)を用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製する。7.2gの生成物が得られ、これを次工程に用いる。化学式:C13H21NO(m.w.207.29)。収率76%。IR(フィルム)3252、2955、1631cm−1。
【0026】
反応式2:
工程6.5−n−ブチル−1−[2’−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−3−[3−(2−メチル)プロピル]−2−ピロールアルデヒド(2a)
窒素雰囲気下、1.7gのNaH(0.043モル)を250mLの無水ジメチルホルムアミド(DMF)に懸濁し、7.2gのピロールアルデヒド(0.036モル)を少量づつ加える。3h後、21.9gの4’−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル(0.036モル)を少量づつ加え、混合物を周囲温度で48h静置する。混合物を水に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出し、コンバインした有機相を水洗し、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。粗生成物を、溶離剤混合物としてヘキサン/酢酸エチル(4:1)を用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製する。20.5gの生成物が得られ、これを次工程に用いる。化学式:C46H45N5O(m.w.687.09)。収率83%。
【0027】
工程7.5−n−ブチル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−3−[3−(2−メチル)プロピル]−2−ピロールアルデヒド(化合物1)
20.5gの化合物2a(0.030モル)をTHF/MeOH(1:50)510mLに溶解し、混合物を0℃に冷却し、37.5mLの4N−HCl/水(0.150モル)を滴下する。混合物を0℃で1hおよび周囲温度で2h静置する。混合物を飽和NaHCO3溶液で中和し、溶媒を蒸発する。混合物をクエン酸でpH4に酸性化し、生成物を濾別し、水洗して中性とする。乾燥を真空オーブン中50℃で行なう。生成物:6.6g、化学式:C27H31N5O(m.w.441.58)。収率50%。
【0028】
同様にして下記の化合物を製造する(下記表1参照):
5−n−プロピル−3−イソプロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(化合物5)
5−n−ブチル−3−イソプロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(化合物6)
5−n−ペンチル−3−イソプロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(化合物8)
5−[(3−メチル)ブチル]−3−イソプロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(化合物9)
同様な方法を用いて、5−n−ブチル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−3−[3−(2,2−ジメチル)プロピル]−2−ピロールアルデヒドおよび5−n−ブチル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−3−[4−(2−メチル)ブチル]−2−ピロールアルデヒドを製造しうる。
【0029】
実施例2
反応式3:
工程1.2−n−プロピオニルピロール
100mLのN,N−ジメチルプロピオンアミド(0.909モル)を0〜5℃に冷却し、83.4mLのPOCl3(0.909モル)をゆっくりと滴下する。混合物を周囲温度で15分間攪拌し、次いで200mLの1,2−ジクロロエタン(1,2−DCE)で希釈し、0℃に冷却する。100mLの1,2−DCE中の57.4mLのピロール(0.827モル)を滴下し、混合物を30分間加熱還流する。混合物を冷却せしめ、800mLの水中の酢酸ナトリウム(380g、4.63モル)の溶液で希釈し、次いでさらに30分間加熱還流する。各相を分離し、水性相をCH2Cl2で抽出し、コンバインした有機相を洗って中性とし、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。粗生成物を真空蒸留(3.5mバール、110〜117℃)で精製する。100gの生成物が得られ、これを次工程に用いる。化学式:C7H9NO(m.w.123.15)。収率98%。
【0030】
工程2.2−n−プロピルピロール(3a)
116gのKOH(2.07モル)を700mLのジエチレングリコールに懸濁し、75gの2−プロピオニルピロール(0.609モル)および86mLのヒドラジン水和物(1.77モル)を加える。混合物をDean−Stark装置で加熱還流する。各相を分離し、上部相を水洗し、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。40gの生成物が得られ、これをさらに精製せずに、次工程に用いる。化学式:C7H11N(m.w109.17)。収率60%。
【0031】
工程3.5−n−プロピル−2−ピロールアルデヒド(3b)
この化合物は、実施例1の反応式1/工程5と同じ手順を用いて製造する。4gの(2a)(0.036モル)、3.7mLのPOCl3(0.040モル)および3.1mLのDMF(0.040モル)から3.9gの生成物を得、これを次工程に用いる。化学式:C8H11NO(m.w.125.00)。収率78%。
【0032】
反応式2:
工程6.5−n−プロピル−1−[2’−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(2a)
この化合物は、実施例1と同じ手順を用いて製造する。3.9gの5−n−プロピル−2−ピロールアルデヒド(0.031モル)および15gの4’−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル(0.031モル)から15gの生成物を得、これを次工程に用いる。化学式:C41H35N5O(m.w.613.76)。収率78%。
【0033】
工程7.5−n−プロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(化合物2)
この化合物は、実施例1と同じ手順を用いて製造する。15gの5−n−プロピル−1−[2’−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(0.024モル)および30mLの4N−HCl(0.120モル)から6.3gの生成物を得る。化学式:C22H21N5O(m.w.371.44)。収率71%。
同様にして下記の化合物を製造する(下記表1参照):
5−n−ブチル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(化合物7)
【0034】
実施例3
反応式3:
工程4.4−ブロモ−5−n−プロピル−2−ピロールアルデヒド
15gの5−n−プロピル−2−ピロールアルデヒド(0.11モル)を窒素雰囲気下、600mLのCCl4に溶解する。23gのNBS(0.13モル)を加え、混合物を50℃に6h加熱する。スクシンイミドを濾去し、有機相を飽和NaHCO3溶液で洗い、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。14gの生成物が得られ、これを次工程に用いる。化学式:C8H10BrNO(m.w.216.08)。収率60%。
【0035】
反応式2:
工程6.4−ブロモ−5−n−プロピル−1−[2’−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(2a)
この化合物は、実施例1と同じ手順を用いて製造する。4.3gの4−ブロモ−5−n−プロピル−2−ピロールアルデヒド(0.020モル)および11gの4’−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル(0.020モル)から10gの生成物を得、これを次工程に用いる。化学式:C41H34BrN5O(m.w.692.66)。収率75%。
【0036】
工程7.4−ブロモ−5−n−プロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(化合物3)
この化合物は、実施例1と同じ手順を用いて製造する。10gの4−ブロモ−5−n−プロピル−1−[2’−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(0.015モル)および19mLの4N−HCl(0.075モル)から3.5gの生成物を得る。化学式:C22H20BrN5O(m.w.450.34)。収率52%。
【0037】
実施例4
反応式3:
工程4.4−クロロ−5−n−プロピル−2−ピロールアルデヒド
Dean−Stark装置にて、3.25gのピロリジン(0.039モル)および5.51gの70%HClO4をベンゼン/酢酸エチル(1:1)28mL中で、水が完全に除去されるまで(約3h)加熱還流する。5.4gの5−n−プロピル−2−ピロールアルデヒド(0.039モル)を加え、混合物を再度Dean−Stark装置にて加熱還流する(1h)。
【0038】
溶媒を蒸発し、得られる11gの油状物(0.039モル)を80mLの1,2−DCEに溶解し、混合物を5℃に冷却する。10mLの1,2−DCEに溶解した5.2gの塩化スルフリル(0.039モル)をゆっくりと滴下し、混合物を5℃で1hおよび周囲温度で24h静置する。溶媒を蒸発し、残渣をジエチルエーテルに再溶解する。洗浄を飽和NaHCO3溶液、1N−HCl、水で繰返し行ない、混合物をNa2SO4で乾燥し、蒸発する。5.2gの生成物が得られ、これをさらに精製せずに、次工程に用いる。化学式:C8H10ClNO(m.w.171.62)。収率78%。
【0039】
反応式2:
工程6.4−クロロ−5−n−プロピル−1−[2’−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(2a)
この化合物は、実施例1と同じ手順を用いて製造する。5.2gの4−クロロ−5−n−プロピル−2−ピロールアルデヒド(0.030モル)および16.9gの4’−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル(0.030モル)から12gの生成物を得、これを次工程に用いる。化学式:C41H34ClN5O(m.w.648.21)。収率60%。
【0040】
工程7.4−クロロ−5−n−プロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(化合物4)
この化合物は、実施例1と同じ手順を用いて製造する。12gの4−クロロ−5−n−プロピル−1−[2’−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールアルデヒド(0.019モル)および24mLの4N−HCl(0.095モル)から5.0gの生成物を得る。化学式:C22H20ClN5O(m.w.405.89)。収率65%。
【0041】
実施例5
反応式2:
工程8.5−n−プロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールカルボン酸(化合物10)
100mgの化合物2(0.269ミリモル)を50mLの0.1N−NaOHに溶解し、158mLの35%H2O2(1.6ミリモル)を加える。混合物を周囲温度で18h静置する。混合物を0℃に冷却し、2N−HClでpH2に調製する。固体を濾別し、水洗する。乾燥を真空オーブンにて40℃で行なう。生成物:54mg、化学式:C22H21N5O2(m.w.387.43)。収率52%。
同様にして下記の化合物を製造する(下記表1参照):
5−n−プロピル−3−イソプロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールカルボン酸(化合物11)
5−n−ブチル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールカルボン酸(化合物12)
【0042】
実施例6
5−n−プロピル−3−イソプロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]−2−ピロールカルビノール(化合物13)
反応式2(工程8):
400mgの化合物2(1.07ミリモル)を、10mLのMeOHに溶解し、404mgのNaBH4(10.7ミリモル)を加える。混合物を2h加熱還流し、溶媒を蒸発し、混合物を2Nクエン酸でpH6に調整し、酢酸エチルで抽出し、コンバインした有機相を水洗し、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。生成物:250mg、C22H23N5O(m.w.373.46)、収率63%。
【0043】
実施例7
工程8.2−メチル−5−n−プロピル−3−イソプロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]ピロール(化合物15)
反応式(工程8):
窒素雰囲気下、0.27gのLiAlH4(7.2ミリモル)を100mLの無水THFに懸濁する。1gの(5)(2.4ミリモル)を加え、混合物を周囲温度で24h静置する。LiAlH4を水および30%NaOHで加水分解し、各相を分離する。水性相をジエチルエーテルで繰返し抽出し、コンバインした有機相を水洗し、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。生成物:800mg、C25H29N5(m.w.399.54)、収率83%。
【0044】
実施例8
反応式4:
工程1.4’−アミノメチル−2−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル(4a)
10gの4’−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニル(0.018モル)、2.03gのトリフルオロアセトアミド(0.018モル)、2.4gのカリウムt−ブチレート(0.022モル)、0.5gの18−crown−6(1.8ミリモル)を、THF/ジエチルエーテル(1:1)80mL中で混合し、周囲温度で96h静置する。固体を濾去し、溶媒を蒸発し、残渣を酢酸エチルで再溶解し、1N−HCl、NaHCO3、水で洗い、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。9.6gの生成物が得られ、これをさらに精製せずに、次工程に用いる。化学式:C35H26F3N5O(m.w.589.62)。収率90%。
【0045】
得られるアミド9.6g(0.016モル)を、50mLのTHFに溶解し、9.4mLの20%水性KOHを加える。混合物を55℃に5h加熱し、4N−HClで酸性化し、周囲温度で一夜静置する。溶媒を蒸発し、混合物を30%NaOHでpH5〜6に調整し、濾過し、少量の水で洗い、真空オーブンにて50℃で乾燥する。2.8gの生成物が得られ、これをさらに精製せずに、次工程に用いる。化学式:C14H14ClN5(m.w.287.75)。収率60%。
【0046】
工程2.2,5−ジメチル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル−メチル]ピロール(化合物14)
50mLの無水エタノール中の2.8gの(4a)(9.7ミリモル)、1.1gのアセトニルアセトン(9.7ミリモル)および0.5mLの氷AcOHを、窒素雰囲気下で混合する。混合物を6h加熱還流し、溶媒を蒸発し、残渣をクロロホルムおよび水で再溶解し、有機相を水洗し、Na2SO4で乾燥し、蒸発する。生成物:1.7g、化学式:C20H19N5(m.w.329.41)、収率54%。
【0047】
このようにして得た化合物の幾つかを、それらを同定する物理化学性質と共に下記表1に示すが、これによって、本発明の精神および技術的範囲が制限されることは決してない。
【0048】
表1:式(I)の化合物
【化6】
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
注:
a)CHCl3/MeOH=9:1;b)酢酸エチル/MeOH=9:1;c)i−AmOH/アセトン/水=5:2:1;d)DMSO−d6;e)ベンジルメチレンとビフェニル芳香族のシグナルは、全ての化合物において同一であると考えてよい:ppm5.6(s,2H);6.8(d,2H);7.0(d,2H);7.6(m,4H)。f)非晶質固体
【0052】
薬理学的活性の説明:
本発明が提供する化合物に関するAT1レセプタでのアンタゴニスト活性は、ラット肝臓膜に対する特定AIIアゴニストの結合を阻害する能力として評価する。R.S.L.ChangらのJPET(1992),262,133−38およびM.J.Robertson らのBr.J.Pharmacol.(1992),107,1173−1180に記載の方法を、少し改変して使用する。放射性配位子[125I]−Sar1,Ile8−アンギオテンシンIIの使用濃度は、25pMで、膜含量は約25μgのたん白質/サンプルのたん白質濃度に相当し;インキューベーション時間は、25℃で180分である。
【0053】
結合物質と遊離物質の分離は、GFBミリポア(Millipore)ガラス繊維フィルターでの急速濾過で実施する。1μMのAIIの存在下、総結合の約5〜10%に達する非特異的結合を測定する。このようにして得られる結果は、下記表2に示され、該表2に本発明が提供しかつ既に表1で例示した幾つかの化合物について、IC50、すなわち、AT1レセプタから[125I]−Sar1,Ile8−アンギオテンシンII配位子の50%を置換しうるアンタゴニストの濃度(ナノモル)を記載する。
【0054】
表2:ラット肝臓膜における[125I]−Sar1,Ile8−アンギオテンシンII結合の阻害(AT1レセプタ亜類型)
【化7】
【0055】
【表4】
【0056】
表2に示すデータから、本発明が提供する幾つかの化合物は、効力あるAIIレセプタ・アンタゴニストであることが明らかである。一連の化合物の中で最も効力ある化合物,化合物1の効力は実際に、予め選定した対照化合物、すなわち、治療に既に使用されている幾つかのAIIアンタゴニストに比し、ほんのわずかに低い。
【0057】
また興味のある点は、化合物1が引用特許,EP−0323841で例として記載のBPT−ピロール誘導体と比べその効力が200倍以上である(化合物1の8.9nMに対し、EP0323841の81頁,表5に記載の化合物277の1.6μM)ことに注目され;事実、このピロールシリーズで本当に効力ある化合物(すなわち、少なくともマイクロモル未満活性を持つ化合物)を得るためには、R2に特異的立体内部特色(specific steric bulk features)を持つアルキル基、たとえば化合物1におけるイソブチル基あるいは化合物6におけるイソプロピル基を導入し、R4にはまさにメチルの代わりにC3−C5アルキルを導入することが必要である。
【0058】
本発明が提供する化合物の治療潜在性をいっそう良好に評価するため、インビトロでAII結合の阻害に最も効力のあることがわかっている化合物の幾つか、たとえば化合物1および6を、180mmHg以上の平均基礎動脈血圧を有する突発性高血圧ラット(SHR)または腎高血圧ラット(RHR)(腎動脈の部分閉塞が、術後3−4週約200mmHgで安定する動脈血圧の進行性増加をひき起こすラット)のいずれかで、インビボ評価に付す。
【0059】
使用する対照薬物は、このクラスで最も広く治療使用されているものの幾つか、たとえば losartan、valsartan および eprosartanである。化合物は、ナトリウム塩として生理的溶液に5mL/kgの容量で溶解せしめ、ED15、すなわち、投与の0−120分の期間内に平均基礎収縮期圧の15%減少をひき起こすmg/kg単位の用量を算定できるように、5〜20mg/kg範囲での種々の用量で腹腔内に投与する(I.P.)。
このようにして得られる値は、下記表3に示され、該表3に検査中の各生成物について、考慮中の時間間隔で15mg/kgの用量による血圧にもたらされる最大効果も示される。
【0060】
表3:治療使用中の幾つかのAIIアンタゴニストと比較して、本発明が提供する定めた化合物のI.P.投与によってひき起こされる、SHRおよびRHRラットにおける収縮期動脈血圧の減少
【表5】
*)算定不可:全用量での効果<10%
【0061】
表3に示すデータから、インビボ試験に付した本発明が提供する化合物は、SHRおよびRHRラットの両方で、効力ある抗高血圧作用を示すことが明らかである。
たとえば、化合物1は、考慮した全てのパラメーターにわたり、対照化合物のlosartanや valsartan より活性であることが判明するが、eprosartan は、インビトロではより活性であるのに、インビボ活性をほんのわずかしか示さない。
【0062】
本発明が提供する化合物の化学構造は、重要でかつ有利な特色、すなわち、高レベルの吸収性および代謝安定性を付与する。このことは、本発明が提供する化合物1および6の透過度を valsartan や eprosartan に対して、TC−7細胞の単層,Caco−2細胞系のサブクローンについて実験することにより[M.C.Gres らの Pharm.Res.15(1998),726−733頁]、得られるインビトロ生物学的利用能データによって確認される。
【0063】
たとえばA→B透過度を評価、すなわち、調査中の化合物の見掛透過度係数(Papp)を頂点から基底横方向にて、濃度50μM、インキューベーション時間60分で試験する。B→A透過度は反対に、すなわち、基底横から頂点方向にて、インキューベーション時間40分で評価する。得られる結果を、下記表4に示す。
【0064】
表4:TC7細胞単層における平均透過度(10−6cm/s)
【表6】
【0065】
表4に示すデータから、本発明が提供する調査化合物の場合、経細胞輸送は吸収の方向、すなわち、頂点から基底横流れ(A→B)が反対方向(B→A)流れに比し、はるかに大きいことが明らかである。これに対比して、valsartan および eprosartan は共に、ヒト腸上皮から得られる細胞系である、TC7細胞単層を流入する能力をほとんど示さない。この生物学的利用能の違いは重要である。何故なら、たとえば“インビボ”試験に付した全てのアンタゴニスト化合物の中で、化合物1が最も活性であることがわかり、しかも、valsartan および eprosartan“インビトロ”に比し、それぞれ効力が約3/5倍低いことの説明ができるからである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】
[式中、R1は−CHO、−COOH、−CH2OHから独立して選ばれる基;
R2は水素または直鎖もしくは分枝鎖C1−C6アルキル基;
R3は水素またはClおよびBrから選ばれるハロゲン基;
R4は直鎖もしくは分枝鎖C3−C5アルキル基である]
で示される化合物、またはそのナトリウムもしくはカリウム塩などの医薬的に許容しうる塩。
【請求項2】
R1が−CHO基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R2が直鎖もしくは分枝鎖C3−C4アルキル基;R3が水素;R4が直鎖もしくは分枝鎖C3−C5アルキル基である請求項2に記載の化合物またはその医薬的に許容しうる塩。
【請求項4】
R2が直鎖もしくは分枝鎖C3−C4アルキル基;R3が水素;およびR4がn−ブチル基である請求項2に記載の化合物またはその医薬的に許容しうる塩。
【請求項5】
そのAT1レセプタをブロックすることにより、アンギオテンシンII(AII)の生物学的活性を阻害することが有利な病態の処置用薬剤の製造のための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項6】
AIIの過剰産生またはAT1レセプタの過剰発現に関連する障害、たとえば動脈高血圧症、うっ血性心不全、血小板凝集、およびこれらに付随する障害、たとえば心筋および脳梗塞、静脈および動脈血栓症、末梢血管症、肺高血圧症、糖尿病、糖尿病ニューロパシー、腎虚血、緑内障および糖尿病網膜症の処置用薬剤の製造のための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項7】
活性物質として請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容しうる塩の少なくとも1種を含有する医薬製剤。
【請求項8】
その活性機能として、動脈高血圧症およびうっ血性心不全の処置における治療用途用の請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
非経口使用、たとえば静脈内、筋肉内、皮下、皮内または眼投与に適する成分と共に、担体、結合剤、フレーバー、甘味剤、崩壊剤、保存剤、湿潤剤およびこれらの混合物からなる群から選ばれる医薬的に許容しうる不活性成分、または経皮もしくは経粘膜吸収を促進するかあるいは時間経過の活性物質の制御放出を可能ならしめる成分をさらに含有し、いずれの場合も、請求項1に記載のものに係る塩化合物の使用が好ましい請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項10】
請求項1の一般式(I)で示され、該式において、R1が−CHO;R2が直鎖もしくは分枝鎖C1−C6アルキル基;R3がH;R4が請求項1の記載と同意義であるピロール誘導体の製造法であって、
a)下記式1aのケトアルキン誘導体を窒素雰囲気下、トリメチルシリルシアニドと反応させて、下記式1bの対応するシアノ誘導体を得、これをLiAlH4で還元して、下記式1cの対応するアミンを得た後、これを不活性溶媒、たとえばアセトニトリル中、還流条件下PdCl2で処理して、下記式1dの対応するピロール誘導体を得、これをホルミル
化して、下記式1eの対応する2−ピロールアルデヒドを得;
【化2】
【化3】
(式中、R2およびR4は前記と同意義である)
b)該2−ピロールアルデヒド(1e)を窒素雰囲気下、NaHの存在下、4'−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニルと反応させて、下記式2aの対応する誘導体を得、これを緩酸加水分解で下記式Iの対応するピロール誘導体に変換する
操作から成る上記ピロール誘導体の製造法。
【化4】
(式中、R2およびR4は前記と同意義である)
【請求項11】
請求項1の一般式(I)で示され、該式において、R1が−COOH;R2が直鎖もしくは分枝鎖C1−C6アルキル基;R3がH;およびR4が請求項1の記載と同意義であるピロール誘導体の製造法であって、
請求項10に記載の式Iのピロール誘導体をH2O2で酸化して上記ピロール誘導体に変換する製造法。
【請求項12】
請求項1の一般式(I)で示され、該式において、R1が−CH2OH;R2が直鎖もしくは分枝鎖C1−C6アルキル基;R3がH;R4が請求項1の記載と同意義であるピロール誘導体の製造法であって、
請求項10に記載の式Iのピロール誘導体をメタノール中、還流条件下NaBH4で処理して還元する製造法。
【請求項13】
請求項1の一般式(I)で示され、該式において、R1が−CHO;R2およびR3がH;R4が請求項1の記載と同意義であるピロール誘導体の製造法であって、
下記式3aの2−アルキルピロールをPOCl3およびジメチルホルムアミドで処理して、下記3bの対応するホルミル誘導体に変換し;
【化5】
(式中、R4は前記と同意義である)
該ホルミル誘導体をNaHの存在下、4'−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)−ビフェニルで処理し、次いで緩酸加水分解を行って、下記式Iの対応するピロール誘導体を得る製造法。
【化6】
(式中、R4は前記と同意義である)
【請求項14】
請求項1の一般式(I)で示され、該式において、R1がCHO;R2がH;R3がBr;R4が請求項1の記載と同意義であるピロール誘導体の製造法であって、
請求項13に記載の式3bの2−ホルミル−4−アルキル−ピロールをN−ブロモスクシンイミドによる処理で、対応する4−Br誘導体に変換し、これをNaHの存在下、4'−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)−ビフェニルで処理し、次いで緩酸加水分解を行って、下記式Iの対応するピロール誘導体を得る製造法。
【化7】
(式中、R4は前記と同意義である)
【請求項15】
請求項1の一般式(I)で示され、該式において、R1がCHO;R2がH;R3がCl;R4が請求項1の記載と同意義であるピロール誘導体の製造法であって、
請求項13に記載の式3bの2−ホルミル−4−アルキル−ピロールを、ピロリジンおよびHClO4による処理、次いで塩化スルフリルによる塩素化で、対応する4−Cl誘導体に変換し、これをNaHの存在下、4'−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)−ビフェニルで処理し、次いで緩酸加水分解を行って、下記式Iの対応するピロール誘導体を得る製造法。
【化8】
(式中、R4は前記と同意義である)
【請求項1】
一般式:
【化1】
[式中、R1は−CHO、−COOH、−CH2OHから独立して選ばれる基;
R2は水素または直鎖もしくは分枝鎖C1−C6アルキル基;
R3は水素またはClおよびBrから選ばれるハロゲン基;
R4は直鎖もしくは分枝鎖C3−C5アルキル基である]
で示される化合物、またはそのナトリウムもしくはカリウム塩などの医薬的に許容しうる塩。
【請求項2】
R1が−CHO基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R2が直鎖もしくは分枝鎖C3−C4アルキル基;R3が水素;R4が直鎖もしくは分枝鎖C3−C5アルキル基である請求項2に記載の化合物またはその医薬的に許容しうる塩。
【請求項4】
R2が直鎖もしくは分枝鎖C3−C4アルキル基;R3が水素;およびR4がn−ブチル基である請求項2に記載の化合物またはその医薬的に許容しうる塩。
【請求項5】
そのAT1レセプタをブロックすることにより、アンギオテンシンII(AII)の生物学的活性を阻害することが有利な病態の処置用薬剤の製造のための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項6】
AIIの過剰産生またはAT1レセプタの過剰発現に関連する障害、たとえば動脈高血圧症、うっ血性心不全、血小板凝集、およびこれらに付随する障害、たとえば心筋および脳梗塞、静脈および動脈血栓症、末梢血管症、肺高血圧症、糖尿病、糖尿病ニューロパシー、腎虚血、緑内障および糖尿病網膜症の処置用薬剤の製造のための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項7】
活性物質として請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容しうる塩の少なくとも1種を含有する医薬製剤。
【請求項8】
その活性機能として、動脈高血圧症およびうっ血性心不全の処置における治療用途用の請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
非経口使用、たとえば静脈内、筋肉内、皮下、皮内または眼投与に適する成分と共に、担体、結合剤、フレーバー、甘味剤、崩壊剤、保存剤、湿潤剤およびこれらの混合物からなる群から選ばれる医薬的に許容しうる不活性成分、または経皮もしくは経粘膜吸収を促進するかあるいは時間経過の活性物質の制御放出を可能ならしめる成分をさらに含有し、いずれの場合も、請求項1に記載のものに係る塩化合物の使用が好ましい請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項10】
請求項1の一般式(I)で示され、該式において、R1が−CHO;R2が直鎖もしくは分枝鎖C1−C6アルキル基;R3がH;R4が請求項1の記載と同意義であるピロール誘導体の製造法であって、
a)下記式1aのケトアルキン誘導体を窒素雰囲気下、トリメチルシリルシアニドと反応させて、下記式1bの対応するシアノ誘導体を得、これをLiAlH4で還元して、下記式1cの対応するアミンを得た後、これを不活性溶媒、たとえばアセトニトリル中、還流条件下PdCl2で処理して、下記式1dの対応するピロール誘導体を得、これをホルミル
化して、下記式1eの対応する2−ピロールアルデヒドを得;
【化2】
【化3】
(式中、R2およびR4は前記と同意義である)
b)該2−ピロールアルデヒド(1e)を窒素雰囲気下、NaHの存在下、4'−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)ビフェニルと反応させて、下記式2aの対応する誘導体を得、これを緩酸加水分解で下記式Iの対応するピロール誘導体に変換する
操作から成る上記ピロール誘導体の製造法。
【化4】
(式中、R2およびR4は前記と同意義である)
【請求項11】
請求項1の一般式(I)で示され、該式において、R1が−COOH;R2が直鎖もしくは分枝鎖C1−C6アルキル基;R3がH;およびR4が請求項1の記載と同意義であるピロール誘導体の製造法であって、
請求項10に記載の式Iのピロール誘導体をH2O2で酸化して上記ピロール誘導体に変換する製造法。
【請求項12】
請求項1の一般式(I)で示され、該式において、R1が−CH2OH;R2が直鎖もしくは分枝鎖C1−C6アルキル基;R3がH;R4が請求項1の記載と同意義であるピロール誘導体の製造法であって、
請求項10に記載の式Iのピロール誘導体をメタノール中、還流条件下NaBH4で処理して還元する製造法。
【請求項13】
請求項1の一般式(I)で示され、該式において、R1が−CHO;R2およびR3がH;R4が請求項1の記載と同意義であるピロール誘導体の製造法であって、
下記式3aの2−アルキルピロールをPOCl3およびジメチルホルムアミドで処理して、下記3bの対応するホルミル誘導体に変換し;
【化5】
(式中、R4は前記と同意義である)
該ホルミル誘導体をNaHの存在下、4'−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)−ビフェニルで処理し、次いで緩酸加水分解を行って、下記式Iの対応するピロール誘導体を得る製造法。
【化6】
(式中、R4は前記と同意義である)
【請求項14】
請求項1の一般式(I)で示され、該式において、R1がCHO;R2がH;R3がBr;R4が請求項1の記載と同意義であるピロール誘導体の製造法であって、
請求項13に記載の式3bの2−ホルミル−4−アルキル−ピロールをN−ブロモスクシンイミドによる処理で、対応する4−Br誘導体に変換し、これをNaHの存在下、4'−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)−ビフェニルで処理し、次いで緩酸加水分解を行って、下記式Iの対応するピロール誘導体を得る製造法。
【化7】
(式中、R4は前記と同意義である)
【請求項15】
請求項1の一般式(I)で示され、該式において、R1がCHO;R2がH;R3がCl;R4が請求項1の記載と同意義であるピロール誘導体の製造法であって、
請求項13に記載の式3bの2−ホルミル−4−アルキル−ピロールを、ピロリジンおよびHClO4による処理、次いで塩化スルフリルによる塩素化で、対応する4−Cl誘導体に変換し、これをNaHの存在下、4'−ブロモメチル−2−(1−トリフェニルメチルテトラゾール−5−イル)−ビフェニルで処理し、次いで緩酸加水分解を行って、下記式Iの対応するピロール誘導体を得る製造法。
【化8】
(式中、R4は前記と同意義である)
【公表番号】特表2007−534724(P2007−534724A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510037(P2007−510037)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051911
【国際公開番号】WO2005/105789
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(598105824)ロッタファルム・ソシエタ・ペル・アチオニ (18)
【氏名又は名称原語表記】ROTTAPHARM S.p.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051911
【国際公開番号】WO2005/105789
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(598105824)ロッタファルム・ソシエタ・ペル・アチオニ (18)
【氏名又は名称原語表記】ROTTAPHARM S.p.A.
【Fターム(参考)】
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