説明

アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を有する食品成分及び食品の調製方法、並びにその方法により得られる製品

本発明は、アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を与える食品成分を含有する食品に、アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を与える食品成分を調製する方法に関する。前記方法は、必要に応じて1又は2以上の他の構成物質を含む、アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を有する1又は2以上のタンパク質加水分解物の調製物を供給するステップと、前記ステップにより供給された調製物に、1又は2以上の種の微生物を添加するステップと、前記調製物を発酵させるステップとを含む。このようにして得られる食品成分は、ACE阻害特性を有し、もはや苦味がない。前記成分が目的とする食品において直接、苦味の除去を行うこともできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を有する食品成分及び食品の調製方法、並びにその方法により得られる製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの高血圧症は通常、140/90mm Hgを超える動脈圧が長期間続くことと定義される。高血圧症は、高い心拍出量が長時間続くことでも惹起されるが、最も一般的な原因は、末梢血管抵抗の上昇である。
【0003】
高血圧症(140/90以上の血圧又は降圧剤による薬物治療中であることと定義される)の有病率は、欧州の44.2%(ドイツの55%のから、下はイタリアの38%までの範囲)と比較して、北米では27.6%であることが、調査により明らかになった。高血圧症の治療(高血圧症患者による降圧剤の服用)は、北米人(North American)では44%、欧州人(European)では27%と報告されている。高血圧症の患者で、その症状を管理できているのは、北米の23%と比較して、欧州ではわずか8%であった。
【0004】
高血圧症は、「サイレントキラー」として知られている。これは、高血圧症では、重篤な障害が起きてしまうまで、何ら症状が現れないからである。高血圧症は、脳卒中(stroke)の一番の原因であり、心不全、動脈硬化、及び腎障害の原因ともなり得る。血圧は、生活習慣要因により管理することができ、重度の場合は、処方薬により管理することができる。しかし、このような処方薬はまた、副作用も重い場合がある。
【0005】
どのような場合も、予防は治療に勝る。予防薬の観点からみると、高血圧症の発症を予防又は遅らせるのに有効で、安全かつ比較的安価な、食事として摂取する物質が強く望まれている。
【0006】
米国特許第6,514,941号は、C6、C7及びC12と呼ばれる降圧ペプチドに富むカゼイン加水分解物を開示している。かかるカゼイン加水分解物は、カゼイン水溶液を調製し、カゼインを加水分解するが、C6、C7、及びC12ペプチドを分解(cleave)しないトリプシン等の薬剤を添加することにより得られる。このようにして得られるペプチドは、アンジオテンシン変換酵素阻害特性を有する。
【0007】
アンジオテンシン−I−変換酵素(ACE)は、いくつかの内因性生体活性ペプチドの制御において、重要な生理学的役割を果たし、血管収縮性ペプチドであるアンジオテンシンIIを産生させ、血管拡張性のブラジキニンを失活させることにより血圧を調節する、レニン−アンジオテンシン系に関連するものの一つである。したがって、ACEの阻害は主に降圧作用をもたらし、降圧剤の多くはこのことに基づいている。
【0008】
上記のペプチドは、降圧食品に用いる適切な候補とみなすことができるように見える。しかし、これらのペプチドには非常な苦味があり、したがって、この苦味のせいで、食品に使用することが大変困難となっている。
【0009】
本発明の目的は、ACE阻害ペプチドを、乳製品等の食品に使用できるようにすることである。
【0010】
米国特許第6,214,585号は、実質的に苦味のないタンパク質加水分解物を開示している。かかるタンパク質加水分解物は、酵素的に加水分解したタンパク質のスラリー(slurry)を、苦味のあるポリペプチドを加水分解して苦味が除去された物質にするペプチダーゼを産生することができるラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)の培養物とともにインキュベートすることにより得られる。
【0011】
この方法は、タンパク質加水分解物中のペプチドを、さらに加水分解することに基づいているため、ACE阻害特性を依然として維持する食品成分の調整には適していない。
【特許文献1】米国特許第6514941号
【特許文献2】米国特許第6214585号
【発明の開示】
【0012】
本発明に至る研究において、HPLC分析の結果、1又は2以上の微生物でタンパク質加水分解物を発酵させると、実際にC12ペプチドが消失することを見い出した。しかし意外にも、発酵の結果生じた産物は、依然としてACE阻害活性を示した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
すなわち本発明は、アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を与える食品成分を含有する食品に、アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を与える食品成分の調製方法であって、前記方法が、a)必要に応じて1又は2以上のその他の構成物質を含む、アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を有する1又は2以上のタンパク質加水分解物の調製物を供給するステップと、b)前記ステップにより供給された調製物に、1又は2以上の種(species)の微生物を添加するステップと、c)前記調製物を発酵させるステップとを含むことを特徴とする方法に関する。
【0014】
前記1又は2以上の種の微生物は、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)以外の種である。このようにして得られた成分は、発酵以前の元々のタンパク質加水分解物の苦味がなく、かつACE阻害活性を維持している。かかる発酵調製物は、成分として用いるか、またはさらに加工することができる。かかる加工としては、例えば風味を付加するか、又は乾燥させて発酵生成物の粉末を得、それを他の製品に成分として添加することである。
【0015】
本発明の方法では、ACE阻害特性を有するタンパク質加水分解物であれば、どのような所望のタンパク質加水分解物でも用いることができる。タンパク質加水分解物のACE阻害特性は、フリルアクリロイル−フェニルアラニル−グリシル−グリシン(furylacryloyl-phenylalanyl-glycyl-glycine)(FAPGG)を基質として用い、Vermeirssen et al.に記載されているように、340nmで吸光度が低下することにより確認することができる(Vermeirssen, V., Van Camp, J. & Verstraete, W. Optimisation and validation of an angiotensin-converting enzyme inhibition assay for the screening of bioactive peptides. J. Biochem. Biophys. Methods 51, 75-87 (2002))。
【0016】
タンパク質加水分解物は、植物性タンパク質並びに動物性タンパク質、特に乳タンパク質、血液タンパク質及び魚タンパク質の加水分解物からなる群から選択するのが適切である。適切な動物性タンパク質加水分解物としては、カゼイン加水分解物、乳清(whey)加水分解物、β−ラクトグロブリン加水分解物、ウシ血清アルブミン加水分解物、ローヤルゼリー加水分解物、血清アルブミン加水分解物、ゼラチン加水分解物、カツオタンパク質(bonito protein)加水分解物が挙げられる。適切な植物タンパク質加水分解物としては、ホウレンソウタンパク質加水分解物、ジャガイモタンパク質加水分解物、大豆タンパク質加水分解物、エンドウ豆タンパク質加水分解物、小麦タンパク質加水分解物、小麦由来のグリアジンタンパク質の加水分解物、小麦胚芽タンパク質加水分解物、ゴマタンパク質加水分解物、ペリーラタンパク質(perilla protein)加水分解物、ニンニクタンパク質加水分解物、インゲン豆タンパク質加水分解物、ヤムイモタンパク質(yam protein)加水分解物、海草タンパク質加水分解物、及びトウモロコシグルテン加水分解物が挙げられる。特に好ましいのは、C6、C7、及びC12を含有するカゼイン加水分解物である。かかるタンパク質加水分解物は、米国特許第6,514,941号の記載の通りに得ることができる。
【0017】
したがって本発明の方法は、前記タンパク質加水分解物に対して実施することができるが、発酵用微生物をいっそう増殖させるには、トリプトン、ペプトン等の追加的な栄養素が存在していてもよい場合がある。さらに本方法は、例えばヨーグルトを製造するための乳等の最終製品において、直接実施することもできる。この場合、追加的な栄養素は必要ない。
【0018】
本発明の方法は、添加するACE阻害ペプチド又はペプチド混合物の多少により、最終生成物中のACE阻害レベルをより柔軟に調整できるようにするという効果を提供する。一方、微生物がインサイチューでACE阻害ペプチドを産生する製品においては、ACE阻害レベルは容易に制御できない。
【0019】
発酵用微生物は、食品用細菌(food-grade bacteria)、真菌類(fungi)、酵母、又はカビから選択することができる。本発明の方法における微生物の適性は、米国特許第6,514,941号の記載の通り、C12ペプチドを含有するカゼイン加水分解物を、候補微生物とともにインキュベートし、(前述のごとく)ACE阻害活性を試験し、前記特定の微生物を最適な増殖温度で発酵させるステップの後に味見することで、試験できる。
【0020】
必要に応じ、製品の苦味を最適に除去するため、特定の微生物に一般的に用いられるインキュベーションの時間と比較して、インキュベーションの時間を延長することができる。かかる延長した発酵時間は、最適な増殖に通常必要な時間よりも、少なとも1時間長いことが好ましい。
【0021】
適切な微生物は、発酵後の最終生成物の風味を有意に向上させる一方で、発酵前の活性の少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%又は25%、さらにより好ましくは少なくとも50%又は70%、最も好ましくは少なくとも90%のレベルのACE阻害活性を維持させる。
【0022】
適切な発酵用細菌は、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、及びラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)からなる群から選択することができる。
【0023】
ヨーグルトのような発酵乳製品は、乳又は乳由来の産物を、乳酸菌等の特定の微生物と共にインキュベートすることにより得られる。通常、原料は牛乳であるが、ヤギ、ヒツジ、ウマ等のその他の動物の乳も用いることができる。乳由来の産物としては、例えば乳脂(cream)や乳清(whey)が挙げられる。乳は、全乳でもよいが、低脂肪乳若しくは脱脂乳、又は水に溶解させた粉乳から製造する還元乳でもよい。
【0024】
ヨーグルトは従来、出発培養物として、ラクトバチルス・デルブリュッキー亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)及びストレプトコッカス・サーモフィラスを乳に接種することにより、製造される。ヨーグルトには二つの基本的なタイプが存在する。即ち、静置ヨーグルト(set yoghurt)及び攪拌ヨーグルト(stirred yoghurt)である。静置ヨーグルトは、容器詰めしてから発酵させるが、攪拌ヨーグルトは、発酵タンクでほぼ完全に発酵させ、その後ゼリー状のヨーグルトを崩して均質化し、容器詰めする。
【0025】
本発明的概念はまた、食品成分ではなく、発酵した最終製品を直接製造する方法において有利に用いることができる。その場合、最終製品を調製するための発酵を利用して、一緒に(at the same time)タンパク質分解物の苦味を除去することができる。すなわち本発明は、アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を有する発酵食品を調製する方法であって、前記方法が、a)アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を有する加水分解物を得るために、既に加水分解されている、又は加水分解することのできる1又は2以上のタンパク質を含有する食品用出発材料を供給するステップと、b)前記出発材料に1又は2以上の発酵用微生物を添加するステップと、c)アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を有する発酵食品を得るために、必要に応じて、発酵用微生物の最適な増殖に通常必要とされる時間よりも長い時間、出発材料を発酵させるステップとを含むことを特徴とする方法に関する。
【0026】
上記時間を発酵用微生物の最適な増殖に通常必要とされる時間よりも長くする場合は、少なくとも1時間長くすることが適当である。このように発酵時間を長くすると、最終製品の苦味がさらによく除去されることを見い出した。
【0027】
さらに、ヨーグルト製品のACE阻害特性の有意な低下は、少なくとも8週間の貯蔵期間の間、観察されなかった。
【0028】
食品の出発材料は、既に加水分解された1又は2以上のタンパク質、即ち加水分解物を含むことができる。または出発材料は、アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を生じさせるために、これから加水分解される必要があるタンパク質を含むこともできる。上記加水分解されたタンパク質は、最終製品の風味を向上させるため、後に苦味を除去する。
【0029】
(苦味が除去された)最終製品を製造するための発酵及びACE阻害ペプチドの調製の両方が一緒に行われる状況においては、上記二つの作業のための発酵用微生物が異なる場合がある。本明細書において用いられる「一緒に」なる用語は、必ずしも同時(simultaneously)という意味ではなく、ACE阻害特性を得るための加水分解と、風味を向上させるための苦味の除去とが、最終製品の同じ出発材料の中で行われるという事実を表す。実際的には、まず加水分解物を製造し、その後苦味を除去する。
【0030】
出発材料は、乳製品、具体的には全乳、低脂肪乳、脱脂乳、乳脂、或いは水に溶解させた粉乳から製造する還元乳、又は例えば豆乳若しくは魚のすり身といった植物性産物であってもよい。
【0031】
出発材料が乳製品の場合、発酵食品はヨーグルトであることが好ましい。または発酵食品は、例えば乳製品及び植物性の出発材料から製造できるケフィア、乳酸菌乳、発酵乳脂(cultured cream)並びに乳酒(koumiss)であってもよい。
【0032】
本発明の方法を用いた攪拌ヨーグルトの調製には、YC280、YC380、及びYC X−11(デンマークChr. Hansen社製)といった、市販の培養物を用いることができる(これらの表示は、上記企業のカタログに用いられている市販用の表示である)。静置ヨーグルトには、YC X−11及びYF3331を用いることができる。これらの培養物は、ストレプトコッカス・サーモフィラス及びラクトバチルス・ブルガリカスからなる。プロバイオティクス培養物としては、ラクトバチルス・アシドフィルス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム及びストレプトコッカス・サーモフィラスを含有するABT−1及びABT−2、ラクトバチルス・アシドフィルス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ラクトバチルス・ブルガリカス、及びストレプトコッカス・サーモフィラスを含有するABY−2、ラクトバチルス・カゼイ、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、及びストレプトコッカス・サーモフィラスを含有するBCT−1、並びにラクトバチルス・カゼイからなるL.casei 01が挙げられる。本発明は、ラクトバチルス・ヘルベティカスの使用には関連していない。
【0033】
ケフィアの出発培養物には、細菌及び酵母の混合物が含まれる。ケフィアには、従来のヨーグルト菌に加え、ラクトバチルス・コーカサス(Lactobacillus caucasus)、ロイコノストック属菌(Leuconostoc)、アセトバクター菌種(Acetobacter-species)、及びストレプトコッカス菌種(Streptococcus-species)が含まれ、サッカロミセス菌種(Saccharomyces-species)及びトルラ菌種(Torula-species)等の酵母も共に含まれる。ケフィアを生成するこれらの微生物もまた、本発明の方法の発酵ステップを行う。
【0034】
以下の実施例において本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は説明のみを目的として述べられるものであって、本発明は何ら以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
以下の実施例では、後述の図面が参照されている。
【0036】
実施例
【実施例1】
【0037】
ACE阻害性タンパク質加水分解物の発酵
本実施例は、ACE阻害活性を有するタンパク質加水分解物をヨーグルト菌で発酵させた後も、上記加水分解物が依然としてACE阻害活性を維持することを示している。
【0038】
0.5%の酵母エキス、2%のトリプトン、0.4%のNaCl、0.15%の酢酸ナトリウム、0.05%のアスコルビン酸を含み、かつ0.5%のCE90ACEを含まない培地(試料A3)と含む培地(オランダ、DMV International社製)(試料A1)とで発酵を行った。用いられた微生物は、ラクトバチルス・ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィラスの混合物であった(オランダ、レーワルデン、CSK社より入手。名称は1SSt)。発酵は37℃で、0分(基準)から116分間実施した。
【0039】
結果を図1に示す。この結果から、試料のACE阻害活性は、発酵後も依然として許容できるレベルであるといえる。試料の風味としては、その他の培地成分(medium ingredient)により既にマスクされていたとはいえ、発酵前よりも苦味が弱かった。
【0040】
Inacom社製(オランダ、ビーネンダール(Veenendaal))の、150/6mm、5μmの、RP−HPLC用YMC pack ODS−Aカラムを用いてHPLC分析を実施した。勾配は、1%のTFAの存在下で、10%のアセトニトリル水溶液から、90%のアセトニトリル水溶液の幅とした。検出は、220nmで行った。結果(図2)は、発酵前(t=0)のA1試料に存在したC12ペプチドが、発酵後は完全に消失していたことを示す。
【実施例2】
【0041】
ACE阻害性ペプチドのヨーグルトにおける使用
本実施例では、ACE阻害活性を有するタンパク質加水分解物(CE90ACE)を乳に添加し、かかる乳を発酵させてヨーグルトを製造する。ヨーグルトの調製は、Chr. Hansen. Fermentation社製のABT−2培養物を用いて、CE90ACE(0.5%w/w)を含む乳及び含まない乳を発酵させることにより行った。発酵時間は37℃で16時間、pH4.45に達するまで行った。
【0042】
以下の試料について、そのACE阻害活性及び風味を試験し、HPLC分析を行った。どのアッセイにおいても、まずヨーグルトを遠心分離し、その後、上清を分析に用いた。

【0043】
図3に結果を示す。C12ヨーグルトは、発酵後も依然として許容できるレベルのACE阻害活性を有するが、CE90ACEを含まない乳から製造した基準ヨーグルトは、有意なレベルのACE阻害活性を有さないことを見い出した。さらに、試料2Bは苦味がなかったが、試料2Aは苦味があったという点で、試料2Bは試料2Aよりも風味が有意に優れていた。HPLC分析(図4)は、(CE90ACEを含む)C12ヨーグルトが、もはやC12ペプチドを有さないことを示した。
【実施例3】
【0044】
市販のヨーグルトとの比較
ABT−2を用い、CE90ACEの濃度を二通りにして(0.5%及び1.5%w/w)実施例2に記載のようにヨーグルトを調製した。
【0045】
出発産物(starting product)(乳)にC12を二通りの濃度で加えた本発明のヨーグルトのACE阻害活性と、発酵前の乳にACE阻害性ペプチドを加えずに発酵させ、具体的にはラクトバチルス・ヘルベティカスの培養物を用いて調製した、他の市販のヨーグルト(図5の市販ヨーグルトI及びII)とを比較した。図5は、1.5%のC12(CE90ACE)を含む本発明のヨーグルトのACE阻害特性が、有意に高いことを示している。発酵の苦味除去効果により、より高濃度のACE阻害性ペプチド及び優れた風味の製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】合成培地におけるACE阻害性ペプチドの、発酵前後のACE阻害率(%)を示す図である。
【図2】図1に示す試料のHPLCのデータを示す図である。
【図3】乳製品におけるACE阻害性ペプチドの、発酵前後のACE阻害率(%)を示す図である。
【図4】図3に示す試料のHPLCのデータを示す図である。
【図5】添加物を加えない乳を、具体的にはラクトバチルス・ヘルベティカスの培養物を用いて発酵させて製造した、スーパーマーケットで市販されている製品を基準ヨーグルトとし、本発明のヨーグルトと比較した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を与える食品成分を含有する食品に、アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を与える食品成分を調製する方法であって、前記方法が、
a)必要に応じて1又は2以上のその他の構成物質を含む、アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を有する1又は2以上のタンパク質加水分解物の調製物を供給するステップと、
b)前記ステップにより供給された調製物に、1又は2以上の種の微生物を添加するステップと、
c)前記調製物を発酵させるステップ
とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
タンパク質加水分解物が、植物性タンパク質及び/又は動物性タンパク質、具体的には乳タンパク質、血液タンパク質及び魚タンパク質由来であって、かつ、カゼイン加水分解物、乳清(whey)加水分解物、β−ラクトグロブリン加水分解物、ウシ血清アルブミン加水分解物、ローヤルゼリー加水分解物、血清アルブミン加水分解物、ゼラチン加水分解物、カツオタンパク質(bonito protein)加水分解物、ホウレンソウタンパク質加水分解物、ジャガイモタンパク質加水分解物、大豆タンパク質加水分解物、エンドウ豆タンパク質加水分解物、小麦タンパク質加水分解物、小麦由来のグリアジンタンパク質の加水分解物、小麦胚芽タンパク質加水分解物、ゴマタンパク質加水分解物、ペリーラタンパク質(perilla protein)加水分解物、ニンニクタンパク質加水分解物、インゲン豆タンパク質加水分解物、ヤムイモタンパク質(yam protein)加水分解物、海草タンパク質加水分解物、及びトウモロコシグルテン加水分解物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
カゼイン加水分解物が、C6、C7及びC12ペプチドを含む加水分解物であることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
他の構成物質が乳製品、具体的には全乳、低脂肪乳、脱脂乳、乳脂(cream)、又は水に溶解した粉乳から製造される還元乳であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の方法。
【請求項5】
微生物が、食品用細菌(food-grade bacteria)、真菌類(fungi)、酵母、又はカビから選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の方法。
【請求項6】
細菌が、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、及びラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)からなる群から選択されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を与える食品成分を含有する食品に、アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を与える食品成分であって、請求項1〜6のいずれか記載の方法により得られることを特徴とする成分。
【請求項8】
アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を有する発酵食品を調製する方法であって、前記方法が、
a)アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を有する加水分解物を得るために、既に加水分解されている、又は加水分解することのできる1又は2以上のタンパク質を含有する出発材料を供給するステップと、
b)前記出発材料に1又は2以上の発酵用微生物を添加するステップと、
c)アンジオテンシン−I−変換酵素阻害特性を有する発酵食品を得るために、必要に応じて、発酵用微生物の最適な増殖に通常必要とされる時間よりも長い時間、出発材料を発酵させるステップ
とを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
1又は2以上のタンパク質が、植物性タンパク質及び/又は動物性タンパク質、具体的には乳タンパク質、血液タンパク質、及び魚タンパク質由来であって、かつ、カゼイン、乳清、β−ラクトグロブリン、ウシ血清アルブミン、ローヤルゼリー、血清アルブミン、ゼラチン、カツオタンパク質、ホウレンソウタンパク質、ジャガイモタンパク質、大豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質、小麦タンパク質、小麦由来のグリアジンタンパク質、小麦胚芽タンパク質、ゴマタンパク質、ペリーラタンパク質、ニンニクタンパク質、インゲン豆タンパク質、ヤムイモタンパク質、海草タンパク質、及びトウモロコシグルテンからなる群から選択されることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
出発材料が、乳製品、具体的には全乳、低脂肪乳、脱脂乳、乳脂、又は水に溶解した粉乳から製造される還元乳であることを特徴とする請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
出発材料が、豆乳から選択される植物性産物及び魚のすり身(fish paste)であることを特徴とする請求項8又は9記載の方法。
【請求項12】
発酵食品が、ヨーグルトであることを特徴とする請求項8〜10のいずれか記載の方法。
【請求項13】
発酵食品が、ケフィア、アシドフィルス乳、発酵乳脂(cultured cream)、又は乳酒(koumiss)から選択されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の方法。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれか記載の方法により得られることを特徴とする発酵食品。
【請求項15】
ヨーグルトであることを特徴とする請求項14記載の発酵食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−529206(P2007−529206A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503198(P2007−503198)
【出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002987
【国際公開番号】WO2005/096847
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506315402)カンピーナ ネーダーランド ホールディング ビー.ブイ. (4)
【Fターム(参考)】