説明

アンテナ及び無線通信機

【課題】高周波から低周波までの広範囲で共振周波数を変化させることができるアンテナ及び無線通信機を提供する。
【解決手段】アンテナ1は、放射電極2と同調回路3とを備えている。放射電極2は、整合回路4を介して給電部110に接続されている。同調回路3は、放射電極2の途中部2bとグランド領域102との間に介設されており、リアクタンス値が異なるn数のリアクタンス回路5−1〜5−nとスイッチ6とで構成されている。これにより、スイッチ6を切り換えることで、広い範囲で共振周波数を変化させることができる。同調回路3のリアクタンス回路5−1〜5−nは、固定インダクタ及び固定キャパシタのいずれか一方で構成することもでき、固定インダクタ及び固定キャパシタの双方の組み合わせで構成された共振回路とすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、共振周波数を変化させることができるアンテナ及び無線通信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアンテナとしては、例えば、図11に示すような構造のものがある(例えば特許文献1参照)。
このアンテナ200は、高周波のUHF帯で用いる放射電極201と低周波のRF−ID帯,FM帯及びVHF帯等で用いる追加放射電極202とを備えている。具体的には、追加放射電極202を、インダクタ203を介して、放射電極201の途中から分岐し、グランド領域102に接地されたリアクタンス可変回路204をその先端部に接続している。インダクタ203は、UHF帯の周波数以上の周波数に対して高インピーダンスとなるチョークコイルであり、リアクタンス可変回路204は、追加放射電極202を含む追加アンテナ部205の共振周波数を制御することができる回路である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−194995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来のアンテナは、次のような問題がある。
インダクタ203を、放射電極201と追加放射電極202との間に介在させ、リアクタンス可変回路204を追加放射電極202の先端部に設けているので、リアクタンス可変回路204を用いて変化させることができる共振周波数が、UHF帯未満の周波数に限られてしまう。すなわち、上記したアンテナ200は、追加放射電極202を含む追加アンテナ部205側の共振のみを変化させることができる技術であり、本来の放射電極201によって発生する基本モードの共振周波数は変化させることができない。このため、共振周波数を高周波から低周波までの広範囲で変化させることができない。
【0005】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、高周波から低周波までの広範囲で共振周波数を変化させることができるアンテナ及び無線通信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、整合回路を介して給電部に接続された放射電極と、この放射電極の途中部と基板のグランド領域との間に接続された第1の同調回路とを備えるアンテナであって、第1の同調回路は、それぞれの一方端部がグランド領域に接続され且つリアクタンス値が異なる複数のリアクタンス回路と、これら複数のリアクタンス回路の中の1つのリアクタンス回路を選択して当該リアクタンス回路の他方端を放射電極の途中部に接続させることができるスイッチとで構成され、リアクタンス回路は、固定インダクタ及び固定キャパシタのいずれか一方又はこれら双方の組み合わせで構成されている構成とした。
かかる構成により、給電部から整合回路を介して放射電極に給電すると、電力が放射電極と第1の同調回路に供給され、アンテナが、第1の同調回路の複数のリアクタンス回路の中からスイッチで選択された1つのリアクタンス回路のリアクタンス値と放射電極のリアクタンス値とに対応した周波数で共振する。つまり、アンテナの共振周波数は、スイッチで選択されたリアクタンス回路のリアクタンス値に対応する。したがって、スイッチによって放射電極と接続するリアクタンス回路を切り換えることで、共振周波数を第1の同調回路のリアクタンス回路の数だけ変化させることができる。この結果、上記した従来のアンテナと異なり、UHF帯も含む高周波から低周波までの広範囲で、共振周波数を変化させることができる。
ところで、第1の同調回路を放射電極に直列に接続すると、アンテナが回路損(第1の同調回路による挿入損失)の影響を大きく受けてしまう。しかし、この発明のアンテナでは、第1の同調回路を放射電極の途中部とグランド領域との間に接続して、放射電極に対して並列に接続した構成をとっているので、アンテナが回路損の影響をほとんど受けることなく、共振周波数を変化させることができる。
また、リアクタンス回路に、可変容量ダイオードを用いる従来のアンテナでは、変化させることができる周波数帯域が可変容量ダイオードの可変容量範囲に制限されてしまう。さらに、可変容量ダイオードを含むリアクタンス回路を送信系アンテナの近傍へ実装したり、強電界が存在する場所で使用すると、可変容量ダイオードが歪んでしまい、安定した特性を得ることができない。
しかし、この発明のアンテナでは、第1の同調回路のリアクタンス回路を、可変容量ダイオードを用いずに、固定インダクタや固定キャパシタで構成し、複数のリアクタンス回路をスイッチによって切り換えることができる構成にしたので、共振周波数を広帯域で変化させることができるだけでなく、可変容量ダイオードの歪みの影響を受けることなく、安定した特性を得ることができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のアンテナにおいて、第1の同調回路の各リアクタンス回路は、固定インダクタ及び固定キャパシタのいずれか一方で構成されている。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載のアンテナにおいて、第1の同調回路の各リアクタンス回路は、固定インダクタ及び固定キャパシタの双方の組み合わせで構成された共振回路である構成とした。
かかる構成により、アンテナは、放射電極のリアクタンス値と、第1の同調回路のスイッチによって放射電極に接続されているリアクタンス回路のリアクタンス値とに対応した第1の共振周波数で共振すると共に、共振回路である当該リアクタンス回路自体の第2の共振周波数で共振する。したがって、スイッチによって放射電極と接続するリアクタンス回路を切り換えることで、第1の共振周波数と第2の共振周波数とを第1の同調回路のリアクタンス回路の数だけ変化させることができる。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のアンテナにおいて、整合回路は、放射電極の基部と給電部との間に接続されたインダクタと、このインダクタと給電部との途中から分岐されグランド領域に接地された第2の同調回路とを備え、第2の同調回路は、それぞれの一方端がグランド領域に接続され且つリアクタンス値が異なる複数のリアクタンス回路と、これら複数のリアクタンス回路の中の1つのリアクタンス回路を選択して当該リアクタンス回路の他方端をインダクタと給電部との途中に接続させることができるスイッチとで構成され、リアクタンス回路は、固定インダクタ及び固定キャパシタのいずれか一方又はこれら双方の組み合わせで構成されている。
かかる構成により、スイッチによって放射電極と接続するリアクタンス回路を切り換えることで、共振周波数を第1の同調回路のリアクタンス回路の数だけ変化させることができるが、切り換えた共振周波数と共に、各共振周波数における整合状態も変化し、複数の共振周波数のリターンロスが異なってしまう。しかし、この発明によれば、第2の同調回路を整合回路に設けているので、第2の同調回路のリアクタンス回路を切り換えることで、全ての共振周波数において良好な整合状態を得ることができる。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のアンテナにおいて、少なくとも放射電極と第1の同調回路とは、基板の非グランド領域に設けられた誘電体基体上に形成されている構成とした。
かかる構成により、少なくとも放射電極と第1の同調回路とを誘電体基体上に一体に形成することができるので、アンテナの小型化と省スペース化が可能となる。
【0011】
請求項6の発明に係る無線通信機は、 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のアンテナを具備する構成とした。
【発明の効果】
【0012】
以上詳しく説明したように、この発明のアンテナによれば、高周波から低周波までの広範囲で、共振周波数を変化させることができるという優れた効果がある。
しかも、アンテナが回路損の影響をほとんど受けることなく、共振周波数を変化させることができるという効果もある。
さらに、可変容量ダイオード等の歪みの影響を受けることなく、安定した特性を得ることができるという効果もある。
【0013】
特に、請求項3の発明によれば、共振周波数を、第1の同調回路のリアクタンス回路の数の2倍の数だけ変化させることができるので、より広帯域での変化が可能である。
【0014】
また、請求項4の発明によれば、第2の同調回路のリアクタンス回路を切り換えることで、全ての共振周波数において良好な整合状態を得ることができる。
【0015】
さらに、請求項5の発明によれば、アンテナの小型化と省スペース化が可能となる。
【0016】
また、この発明の無線通信機によれば、請求項1ないし請求項5のいずれかのアンテナを具備しているので、高周波から低周波までの広範囲な送受信が可能となるという優れた効果がある。しかも、アンテナに回路損の影響を与えることなく、広帯域での安定した送受信が可能となるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の第1実施例に係るアンテナを示す概略平面図である。
【図2】第1実施例におけるアンテナの作用及び効果を説明するための概略図である。
【図3】第1実施例における共振周波数の変化状態を示す線図である。
【図4】この発明の第2実施例に係るアンテナを示す概略平面図である。
【図5】第2実施例における共振周波数の変化状態を示す線図である。
【図6】この発明の第3実施例に係るアンテナを示す概略平面図である。
【図7】図6における第2の同調回路を拡大して示す回路図である。
【図8】第1の同調回路のリアクタンス回路が第1実施例のリアクタンス回路の構造である場合の共振周波数の変化状態を示す線図である。
【図9】第1の同調回路のリアクタンス回路が第2実施例のリアクタンス回路の構造である場合の共振周波数の変化状態を示す線図である。
【図10】この発明の第4実施例に係るアンテナを示す斜視図である。
【図11】従来のアンテナを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
(実施例1)
図1は、この発明の第1実施例に係るアンテナを示す概略平面図である。
この実施例のアンテナは、携帯電話などの無線通信機に設けられている。
図1に示すように、アンテナ1は、放射電極2と第1の同調回路としての同調回路3とを備え、無線通信機の基板100の非グランド領域101に形成されている。
【0020】
放射電極2は、非グランド領域101上にパターン形成され、その基端部20が、整合回路4を介して給電部110に接続されている。
この放射電極2の先端部2aは、間隙Gを介して基端部20に対向し、全体としてループ状を成す。この間隙Gによって、容量が先端部2aと基端部20との間に生じるため、間隙Gを変化させることで、放射電極2のリアクタンス値を所望値に調整することができる。
【0021】
この実施例における整合回路4は、インダクタ41,42によって構成されている。
具体的には、インダクタ41は、放射電極2の基端部20と給電部110との間に接続され、インダクタ42は、このインダクタ41と給電部110との途中部41aから分岐された状態でグランド領域102に接地されている。
【0022】
同調回路3は、放射電極2の途中部2bとグランド領域102との間に介設されており、n数(nは2以上の整数)のリアクタンス回路5−1〜5−nとスイッチ6とで構成されている。
リアクタンス回路5−1〜5−nは、固定インダクタ及び固定キャパシタのいずれか一方で構成されている。この実施例では、左から1番目と2番目のリアクタンス回路5−1,5−2が固定インダクタであるインダクタ素子で構成され、最後のn番目のリアクタンス回路5−nが、固定キャパシタであるキャパシタ素子で構成されている。
そして、これらリアクタンス回路5−1〜5−nのリアクタンス値は、全て異なるように設定されている。この実施例では、リアクタンス回路5−1のリアクタンス値が最も高く、リアクタンス回路5−2が次に高い。リアクタンス回路5−nに近づくに従って、リアクタンス値が低くなっていき、リアクタンス回路5−nのリアクタンス値が最も低く設定されている。
このようなリアクタンス回路5−1〜5−nの一方端(図1の下方端)は、グランド領域102にそれぞれ接続されており、スイッチ6が、これらリアクタンス回路5−1〜5−nの他方端(図1の上方端)と放射電極2の途中部2bの間に介設されている。
【0023】
スイッチ6は、リアクタンス回路5−1〜5−nの中の1つのリアクタンス回路5−1(5−2〜5−n)を選択して、選択されたリアクタンス回路5−1(5−2〜5−n)の他方端を放射電極2の途中部2bに接続させるためのスイッチである。
スイッチ6は、例えば、PINダイオード,MOSFETやGaAsFET等であり、制御部60から出力される直流電圧Vcの大きさに応じて、放射電極2とリアクタンス回路5−1〜5−nとの接続の切換を行う。
図1においては、理解を容易にするため、スイッチ6を機械的スイッチに模して説明する。すなわち、スイッチ6の可動端子61は、制御部60から出力された直流電圧Vcの大きさによって、リアクタンス回路5−1〜5−nの他方端が接続された複数の固定端子62のいずれかに接続するものとする。
なお、符号63は、高周波カット用抵抗であり、符号64は、直流カット用バイパスコンデンサである。
【0024】
次に、この実施例のアンテナが示す作用及び効果について説明する。
図2は、アンテナの作用及び効果を説明するための概略図であり、図3は、共振周波数の変化状態を示す線図である。
図2の実線で示すように、同調回路3のスイッチ6の可動端子61をリアクタンス回路5−1の固定端子62に接続させた状態で、給電部110から放射電極2に給電すると、電力が放射電極2と同調回路3とに供給され、電流Iが、放射電極2と同調回路3のリアクタンス回路5−1とに流れる。これにより、図3のリターンロス曲線S1で示すように、アンテナ1が、放射電極2のリアクタンス値とリアクタンス回路5−1のリアクタンス値とに対応した周波数f1で共振する。
【0025】
しかる後、制御部60からの直流電圧Vcをスイッチ6に入力し、図2の破線で示すように、可動端子61を切り換えてリアクタンス回路5−2の固定端子62に接続すると、リアクタンス回路5−2のリアクタンス値がリアクタンス回路5−1のリアクタンス値よりも小さいので、アンテナ1は、図3のリターンロス曲線S2で示すように、共振周波数f1よりも高い周波数f2で共振する。
同様にして、スイッチ6の可動端子61を、順次切り換えて、リアクタンス値が最も低いリアクタンス回路5−nの固定端子62に接続させると、図3のリターンロス曲線Snで示すように、アンテナ1が、最も高い周波数fnで共振する。
以上のように、この実施例のアンテナ1によれば、スイッチ6を切り換えることで、共振周波数をリアクタンス回路5−1〜5−nの数だけ変化させることができる。
【0026】
このとき、各リアクタンス回路5−1(5−2〜5−n)は、放射電極2に並列に接続されているので、各リアクタンス回路5−1(5−2〜5−n)を放射電極2内に直列に接続する場合に比べて、回路損(挿入損失)が少ない。したがって、回路損の影響を受けることなく、共振周波数をf1〜fnまで切り換えることができる。
しかも、この実施例のアンテナ1では、リアクタンス回路5−1〜5−nに可変容量ダイオードを用いずに、固定インダクタであるインダクタ素子や固定キャパシタであるキャパシタ素子のみを用いている。したがって、可変容量ダイオードの可変容量値に制限されることなく、広い範囲で共振周波数f1〜fnを変化させるだけでなく、安定した特性を得ることができる。
【0027】
(実施例2)
次に、この発明の第2実施例について説明する。
図4は、この発明の第2実施例に係るアンテナを示す概略平面図である。
この実施例は、同調回路3のn数のリアクタンス回路5−1〜5−nが、固定インダクタ及び固定キャパシタを組み合わせて構成した並列共振回路である点が、上記第1実施例と異なる。
具体的には、各リアクタンス回路5−1(5−2〜5−n)は、インダクタ素子51−1(51−2〜51−n)とキャパシタ素子52−1(52−2〜52−n)とを並列に接続して構成した並列共振回路である。
この実施例においても、上記第1実施例と同様に、最左のリアクタンス回路5−1のリアクタンス値が最も高く、リアクタンス回路5−2が次に高い。リアクタンス回路5−nに近づくに従って、リアクタンス値が低くなっていき、リアクタンス回路5−nのリアクタンス値が最も低く設定されている。これにより、放射電極2とリアクタンス回路5−1,5−2〜5−nとの各接続状態で、第1の共振周波数としての周波数f1,f2〜fnで共振する。
そして、リアクタンス回路5−1,5−2〜5−nの共振周波数は、第2の共振周波数としての周波数f1′,f2′〜fn′である。
【0028】
次に、この実施例のアンテナが示す作用及び効果について説明する。
図5は、共振周波数の変化状態を示す線図である。
図4に示すように、同調回路3のリアクタンス回路5−1と放射電極2とを接続させた状態で、給電部110から放射電極2に給電すると、図5のリターンロス曲線S1で示すように、アンテナ1が、放射電極2のリアクタンス値とリアクタンス回路5−1のリアクタンス値とに対応した周波数f1で共振する。
また、かかる状態では、図5のリターンロス曲線S1′で示すように、リアクタンス回路5−1の共振周波数f1′においても共振することとなる。
【0029】
そして、スイッチ6によって、リアクタンス回路5−2と放射電極2との接続状態に切り換えると、図5のリターンロス曲線S2で示すように、放射電極2のリアクタンス値とリアクタンス回路5−2のリアクタンス値とに対応した周波数f2で共振すると共に、図5のリターンロス曲線S2′で示すように、リアクタンス回路5−2の共振周波数f2′においても共振する。
以降、同様に、リアクタンス回路5−nと放射電極2との接続状態になるまで、スイッチ6を切り換えることで、図5のリターンロス曲線S1〜Sn,S1′〜Sn′で示すように、第1の共振周波数,第2の共振周波数を、周波数f1,f2〜fn,周波数f1′,f2′〜fnのように変化させることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0030】
(実施例3)
次に、この発明の第3実施例について説明する。
図6は、この発明の第3実施例に係るアンテナを示す概略平面図であり、図7は、第2の同調回路を拡大して示す回路図である。
この実施例は、第2の同調回路を整合回路4に設けた点が、上記第1実施例と異なる。
上記第1実施例のように、放射電極2とリアクタンス回路5−1〜5−nとの接続切換を、同調回路3のスイッチ6(図1参照)によって行うことで、アンテナ1の共振周波数をf1,f2〜fnのように変化させることができる。
しかし、スイッチ6を切り換える都度に、各共振周波数における整合状態が劣化し、図3に示したように、共振周波数f1,f2〜fnが高くなるに従って、リターンロスが大きくなってしまう。
また、上記第2実施例の場合にも、図5に示したように、共振周波数f1,f2〜fn及び共振周波数f1′,f2′〜fn′が高くなるに従って、リターンロスが大きくなってしまう。
そこで、この実施例では、図6に示すように、各共振周波数において良好な整合状態を保持することができるように、第2の同調回路としての同調回路7を整合回路4に設けた。
具体的には、同調回路7は、インダクタ41と給電部110との途中部41aから分岐し、グランド領域102に接地している。
図7に示すように、この同調回路7も、リアクタンス値が異なるm数(mは2以上の整数)のリアクタンス回路8−1〜8−mとスイッチ9とを備えている。
これらリアクタンス回路8−1〜8−mの構造の具体的説明は省略するが、上記第1実施例のリアクタンス回路5−1〜5−nと同様に、固定インダクタ又は固定キャパシタのいずれか一方で構成されている。
また、スイッチ9は、スイッチ6と同様に、リアクタンス回路8−1〜8−mの中の1つのリアクタンス回路8−1(8−2〜8−m)を選択して、選択されたリアクタンス回路8−1(8−2〜8−m)の他方端をインダクタ41と給電部110との途中部41aに接続させることができる。
なお、符号70は、制御部であり、符号73は、高周波カット用抵抗であり、符号74は、直流カット用バイパスコンデンサであり、制御部70から出力した直流電圧Vc′を用いて、スイッチ9を切り換えることができる。
【0031】
次に、この実施例のアンテナが示す作用及び効果について説明する。
図8は、同調回路3のリアクタンス回路5−1〜5−nが第1実施例のリアクタンス回路の構造である場合の共振周波数の変化状態を示す線図であり、図9は、リアクタンス回路5−1〜5−nが第2実施例のリアクタンス回路の構造である場合の共振周波数の変化状態を示す線図である。
同調回路3のリアクタンス回路5−1〜5−nが、上記第1の実施例の場合と同様に、固定インダクタ及び固定キャパシタのいずれか一方で構成されている場合には、各共振周波数f1(f2〜fn)において、同調回路7のスイッチ9を切り換えることにより、リアクタンス回路8−1〜8−mのいずれかと途中部41aとを接続させて、給電部110と放射電極2とを最適な整合状態にすることができる。
これにより、図8に示すように、全ての共振周波数f1〜fnのリターンロスをほぼ同一レベルまで低下させることができる。
また、同調回路3のリアクタンス回路5−1〜5−nが、上記第2の実施例の場合と同様に、固定インダクタ及び固定キャパシタを組み合わせて構成した並列共振回路である場合には、共振周波数f1,f1′(f2〜fn,f2′〜fn′)において、同調回路7のスイッチ9を切り換えることにより、給電部110と放射電極2とを最適な整合状態にすることができる。
これにより、図9に示すように、全ての共振周波数f1,f1′〜fn,fn′のリターンロスをほぼ同一レベルまで低下させることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1及び第2実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0032】
(実施例4)
次に、この発明の第4実施例について説明する。
図10は、この発明の第4実施例に係るアンテナを示す斜視図である。
この実施例は、放射電極2と同調回路3とを誘電体基体上に形成した点が、上記第1ないし第3実施例と異なる。
具体的には、図10に示すように、直方体状の誘電体基体10を基板100の非グランド領域101上に配置し、放射電極2と同調回路3とをこの誘電体基体10上に形成した。
これにより、放射電極2やリアクタンス回路5−1〜5−n内のインダクタ素子の物理長を短くしながら、長い電気長を得ることができ、この結果、アンテナの小型化と省スペース化とを図ることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第3実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【符号の説明】
【0033】
1…アンテナ、 2…放射電極、 2a…先端部、 2b,41a…途中部、 3,7…同調回路、 4…整合回路、 5−1〜5−n,8−1〜8−m…リアクタンス回路、 6,9…スイッチ、 10…誘電体基体、 20…基端部、 41…インダクタ、 41,…インダクタ、 42…インダクタ、 51−1〜51−n…インダクタ素子、 52−1〜52−n…キャパシタ素子、 60,70…制御部、 100…基板、 101…非グランド領域、 102…グランド領域、 110…給電部、 f1,f1′〜fn,fn′…共振周波数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整合回路を介して給電部に接続された放射電極と、この放射電極の途中部と基板のグランド領域との間に接続された第1の同調回路とを備えるアンテナであって、
上記第1の同調回路は、それぞれの一方端部が上記グランド領域に接続され且つリアクタンス値が異なる複数のリアクタンス回路と、これら複数のリアクタンス回路の中の1つのリアクタンス回路を選択して当該リアクタンス回路の他方端を上記放射電極の途中部に接続させることができるスイッチとで構成され、
上記リアクタンス回路は、固定インダクタ及び固定キャパシタのいずれか一方又はこれら双方の組み合わせで構成されている、
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナにおいて、
上記第1の同調回路の各リアクタンス回路は、固定インダクタ及び固定キャパシタのいずれか一方で構成されている、
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項3】
請求項1に記載のアンテナにおいて、
上記第1の同調回路の各リアクタンス回路は、固定インダクタ及び固定キャパシタの双方の組み合わせで構成された共振回路である、
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のアンテナにおいて、
上記整合回路は、上記放射電極の基部と給電部との間に接続されたインダクタと、このインダクタと給電部との途中から分岐されグランド領域に接地された第2の同調回路とを備え、
上記第2の同調回路は、それぞれの一方端が上記グランド領域に接続され且つリアクタンス値が異なる複数のリアクタンス回路と、これら複数のリアクタンス回路の中の1つのリアクタンス回路を選択して当該リアクタンス回路の他方端を上記インダクタと給電部との途中に接続させることができるスイッチとで構成され、
上記リアクタンス回路は、固定インダクタ及び固定キャパシタのいずれか一方又はこれら双方の組み合わせで構成されている、
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のアンテナにおいて、
少なくとも上記放射電極と第1の同調回路とは、基板の非グランド領域に設けられた誘電体基体上に形成されている、
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のアンテナを具備する、
ことを特徴とする無線通信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−160817(P2012−160817A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17674(P2011−17674)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】