説明

アンテナ給電装置

【課題】エレメントとコネクタとの組付けが容易で、少ない部品点数にて簡単に組立てることができるアンテナ給電装置を提供する。
【解決手段】ハーネス3が端子4に接続されているコネクタ7と、導体2がボデー6の一部に直接シルク印刷等で印刷されて構成され、導体2の両側に凹部6aが形成されているエレメント1からなり、上記コネクタ7は、上記エレメント1の導体部2と一方向からスライド組付けにて嵌合可能な抱え込み形状を備えており、コネクタ7とエレメント1の嵌合により上記導体2と上記端子4が密着し、導通される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用樹脂部品等の導体部を有し、表裏を合成樹脂にて絶縁被覆されたシート状導電体に、ハーネスを電気的に接続するためのアンテナ給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のアンテナ給電装置は、ハーネスによってエレメントから電気信号を供給される。
従来エレメントからハーネスに給電する場合、コネクタ端子を両面テープで固定する方法が多く用いられてきた。これは、端子をエレメントに加工する手段が複雑であるため、エレメント面に直接、端子を接触させるのが簡単だからである。
これ以外の方法として、ハーネスを直接はんだ付けすることもあるが、エレメントがボデーに直接シルク印刷等で加工された場合、はんだ付けによる接続はボデーが熱変形してしまうため不可能である。
【0003】
ただ、両面テープを用いてコネクタ端子をエレメントに接続させる場合、お互いの接触面を脱脂してから両面テープで固定するため非常に手間がかかり、正確な位置に固定することも困難であった。また、両面テープによる接続ではハーネスとコネクタ端子との押圧力に限界があり、押圧力が少ないため接触抵抗が大きく、性能を著しく低下させることもあった。
【0004】
上記の問題点を解決し、プリント基板等のエレメントの面上に層状に設けられたシート状導電体に被覆電線等のハーネスを電気的に接続する手段として例えば特許文献1、特許文献2のようなものが知られている。
【0005】
【特許文献1】実開平05−087820号公報
【特許文献2】特開平07−037646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術ではかしめ加工に大きな力が必要であり、簡単に組立てられるとはいえない。特許文献2の技術であればこのような問題はないが、面側とハーネス側それぞれに別部品のコネクタが必要であり部品点数が増す問題がある。
【0007】
本発明は上記問題を解決して、エレメントとコネクタとの組付けが容易で、しかも少ない部品点数にて簡単に組立てることができるアンテナ給電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、接点部材を有するコネクタ部材と、導体部を有するエレメントからなり、上記コネクタ部材は、上記エレメントの導体部と一方向からスライド組付けにて嵌合可能な抱え込み形状を備えており、上記コネクタ部材と上記エレメントの嵌合により上記導体部と上記接点部材が密着し、導通されることを特徴とする。これにより、エレメントとコネクタとの組付けが容易なアンテナ給電装置とすることができる。
請求項2の発明は、さらに、上記コネクタ部材の接点部材は板状の部材であって、スプリング機能により上記エレメントの導体部に押し付けられる部分を有することを特徴とする。これにより、コネクタ部材とエレメントの導体部との間の十分な押圧力を確保することができる。
請求項3の発明は、さらに、上記コネクタ部材の接点部材の長手中間に、上記コネクタ部材の内面に当接する支点部と、該支点部に隣接し上記嵌合時に上記エレメントの導体部に押し付けられる弓状の凸部と、上記支点部を挟んで上記凸部と反対側の屈曲部と、を備え、上記屈曲部は上記コネクタ部材に設けられた孔を貫通し、上記屈曲部に連なる屈曲した端部の先端が、上記嵌合時に上記コネクタ部材の外面に当接し、上記弓状の凸部に加わる押し付け反力を支持することを特徴とする。これにより、少ない部品点数で簡単に組立てることができるアンテナ給電装置とすることができる。
請求項4の発明は、さらに、上記エレメントは自動車用樹脂部品であり、上記導体部は上記樹脂部品上に層状に設けられることを特徴とする。これにより、自動車用樹脂部品用アンテナ給電装置を少ない部品点数で簡単に組立てることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明により、エレメントとコネクタとの組付けが容易で、部品点数を減らすことができるアンテナ給電装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1はエレメントの構成図である。符号1はエレメント、符号2は導体、符号3はハーネス、符号4は接点部材である端子をそれぞれ示す。
【0011】
まず本実施形態のアンテナ給電装置の構成を図1で説明する。
上記装置はエレメント1とコネクタ7及びハーネス3からなる。
エレメント1はボデー等の一部に直接シルク印刷等で印刷されて構成される導電部である。図1(a)、(c)に示すように、エレメント1のコネクタ7との接触部である導体2の左右両側及び前部には、ボデー6にコネクタ7との結合用の凹部6aが形成されおり、導体2部分のボデー6は左右の両壁がテーパー面8aとなっている。
コネクタ7は、横断面が導体2部分のボデー6とスライドさせて嵌合可能な抱え込み形状を有しており、左右の腕の内側には導体2部分のボデー6の両壁のテーパー面8aと対応するテーパー面8bとなっている。
ハーネス3と結合されたコネクタ7と導体2は、図1(a)の状態からスライドさせて、図1(b)の状態に組みつけられ、その際、導体2とコネクタ7の端子4とが密着し、電気的に接合される。
【0012】
次にコネクタ7の構成を図2で説明する。
コネクタ7は樹脂製の本体7aと金属板の端子4からなる。
本体7aは上記抱え込み形状の横断面を有しており、長手方向の両端部に端子4取付け用の貫通孔7b、7cを備えている。
端子4はハーネス3との接合部4eを有しており、またコネクタ本体7aとの取付け用の屈曲部4cと端部4fを有し、屈曲部4c、端部4fをそれぞれ貫通孔7b、7cに貫通させて本体7aの下面に取付けられる。
端子4は、凸部4bにおいてコネクタ7本体から離れる方向に弓状に反りかえっており、コネクタ7とエレメント1を組付けたときに凸部4bが導体2に矢印5方向に押圧されるスプリング機能を有している。
【0013】
上記エレメント1とコネクタ7との取付け状態を図3で説明する。
図3(a)に示すコネクタ7を導体2とスライドさせて嵌合させた状態では、図3(b)に示すようにコネクタ7はボデー6にテーパー面8a、8bにより固定され、脱落防止が図られている。そして、図3(c)に示すように端子4の押圧、具体的には凸部4bが導体2に押し付けられ平坦に変形したことによる弾性力により、端子4とエレメント1の導体2とが密着されてエレメント1からハーネス3に電気信号が伝えられる。
【0014】
次に、端子4の構成を図4及び図5で詳しく説明する。
コネクタ7の端子4は板状の部材であって、端子4はその長手中間に、コネクタ7の内面に当接する支点部4aを有している。さらに、支点部4aに隣接した部分には弓状の凸部4bが配設され、支点部4aを挟んで凸部4bと反対側には屈曲部4cが配設されている。屈曲部4cは第一の略直角の屈曲部と、その先端側の第二の屈曲部からなり、第二の屈曲部のさらに先の先端部4dに繋がっている。
【0015】
また、支点部4aの凸部4b側の先にはハーネス3の先端露出部との接続部4eが端子4の一部の折り返しにより形成されており、接続部4eのさらに先には略直角の2つの屈曲部を有する端部4fが配設され、端子4のもう一方の先端部4gに繋がっている。
【0016】
端子4はコネクタ7の下面に取付けられる。その際、端子4の屈曲部4c及び端部4fは、コネクタ7の下面からそれぞれ貫通孔7a及び7bを貫通してコネクタ7の上面に先端部4d及び4gを当接させている。
【0017】
端子4がコネクタ7に取付けられた後、ハーネス3の先端露出部が接続部4eにはんだ付けにて取付けられる。これらの組立作業は部品点数も少なく、容易に行うことができる。
【0018】
このようにして組立てられたコネクタ7をエレメント1に取付ける際は、図1(a)の状態からコネクタ7の端面を導体2の端部にあてがい、テーパー面8bをテーパー面8aに沿わせて差し込むだけでよく、きわめて容易な作業にて取付けを行うことができる。
【0019】
コネクタ7がエレメント1に取付けられると、お互いのテーパー面8a、8bが当接し、端子4の厚み分も含めたコネクタ7の下面とエレメント1の導体2の上面との隙間が極めて小さくなるように設計されているため、端子4の凸部4bは導体2の上面に押し付けられてつぶれた平坦な形状となる。その際、支点部4aはコネクタ7の下面に押し付けられ、支点部4aに隣接する部分から屈曲部4cを経て先端部4dまでの部分には、先端部4dが下がる方向に支点部4aを中心とした回転力を受ける。
【0020】
この回転力(凸部4bに加わる押し付け反力)を先端部4dがコネクタ7の外面と当接して受け止めることで、凸部4bは安定した強い押し付け力を導体2上面に加えることができる。すなわち凸部4bは十分な押圧力を維持して接触抵抗を極めて小さく保つことができ、本実施形態のアンテナ給電装置は良好な給電性能を発揮することができる。
【0021】
以上説明したように、上記構成により本実施形態のアンテナ給電装置は部品点数が少なく簡単に組立てることができ、取付け作業も容易に行うことができる。
【0022】
エレメント1は車両ボデー、バンパー、スポイラー、ピラー、ボンネット、トランク等に形成されるが、これらに限られず樹脂製品であれば本発明のエレメントの形成が可能である。
また、エレメント1は直接車両ボデー6に加工されているが、フィルムアンテナを固定してボデー6との間で挟み込み、給電をしてもよい。
【0023】
端子4は金属板ではなく、導電ゴム端子等でもよい。また、テーパー面8a、8bは斜めでなく、図6に示すような凹凸で固定させる形状でもよい。さらに、図1〜図3においてボデー6の凹部6aは凹形状でなく、凸形状でもよい。この場合は、本実施形態とは異なり、導体2部分のボデー6とその周囲のボデー6の凹凸が逆となり、相手側のコネクタ7の本体7aの形状も端子4取付け部が凸形状となる。また、端子4に本実施形態のようにスプリング機能を持たせずに、端子4と導体2との隙間を調整して、ボデー6の樹脂弾性による挟み込みの押圧力のみで固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示す組立斜視図であり、(a)はエレメントとコネクタの取付け前の状態、(b)はこれらを取付けた状態、(c)はエレメント単独の別方向から見た状態をそれぞれ示す。
【図2】(a)は本実施形態のコネクタの平面図であり、(b)はそのA−A断面図である。
【図3】(a)は本実施形態のエレメントとコネクタの取付け状態の平面図であり、(b)はそのB−B断面図、(c)は同C−C断面である。
【図4】本実施形態の端子及びハーネスの斜視図である。
【図5】本実施形態の端子及びハーネスの(a)平面図、(b)立面図及び(c)側面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示すエレメントとコネクタの断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 エレメント
2、2’ 導体
3 ハーネス
4、4’ 端子
4a 支点部
4b 凸部
4c 屈曲部
4d、4g 先端部
4e 接合部
4f 端部
5 矢印
6、6’ ボデー
6a、6a’ 凹部
7 コネクタ
7a 本体
7b、7c 貫通孔
8a、8b テーパー面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点部材を有するコネクタ部材と、導体部を有するエレメントからなり、
上記コネクタ部材は、上記エレメントの導体部と一方向からスライド組付けにて嵌合可能な抱え込み形状を備えており、
上記コネクタ部材と上記エレメントの嵌合により上記導体部と上記接点部材が密着し、導通される
ことを特徴とするアンテナ給電装置。
【請求項2】
上記コネクタ部材の接点部材は板状の部材であって、スプリング機能により上記エレメントの導体部に押し付けられる部分を有することを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ給電装置。
【請求項3】
上記コネクタ部材の接点部材の長手中間に、上記コネクタ部材の内面に当接する支点部と、
該支点部に隣接し上記嵌合時に上記エレメントの導体部に押し付けられる弓状の凸部と、
上記支点部を挟んで上記凸部と反対側の屈曲部と、を備え、
上記屈曲部は上記コネクタ部材に設けられた孔を貫通し、上記屈曲部に連なる屈曲した端部の先端が、上記嵌合時に上記コネクタ部材の外面に当接し、上記弓状の凸部に加わる押し付け反力を支持することを特徴とする、請求項2に記載のアンテナ給電装置。
【請求項4】
上記エレメントは自動車用樹脂部品であり、上記導体部は上記樹脂部品上に層状に設けられることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載のアンテナ給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−171224(P2009−171224A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6975(P2008−6975)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】