説明

アンテナ装置

【課題】本発明は1組のダイポールアンテナを用いて所望の指向性を有する放射パターンを得ることを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、この課題を解決するためアンテナ3で受信した信号を第1と第2の分配信号へと分配する分配器12と、第1の分配信号が供給された移相器14と、前記高周波信号を分配し第3と第4の分配信号を出力する分配器13と、前記第4の分配信号が供給された移相器15と、移相器14の出力と第3の分配信号とが入力される合成器16と、移相器15の出力と前記第2の分配信号とが入力される合成器17と、合成器16の出力と合成器17の出力とが供給される合成器20を設け、合成器16と合成器20の間に移相器18が挿入されたものである。これにより、移相器18の移相量を変化することで、アンテナ3の指向性を容易に変化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体機器などに用いる小型のアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来のアンテナ装置について説明する。従来のアンテナ装置では、指向性の異なるように配置された複数本のダイポールアンテナが設置される。例えば、2組のダイポールアンテナを十字状(水平と垂直方向)に配置したターンスタイルアンテナ(あるいはクロスダイポールとも言う)などが用いられる。
【0003】
そして、これらそれぞれのダイポールアンテナの出力には、移相器が接続される。ここで移相器は制御信号によって、入力された信号の位相が変化する。この移相器の出力が合成器に接続され、合成器ではそれぞれの移相器から出力された信号を合成して出力する。
【0004】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−336130号公報
【特許文献2】特開昭57−56009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のアンテナ装置では、2組以上のダイポールアンテナを指向性が異なるように配置するため、小型化には適さないという課題を有していた。
【0007】
そこで本発明は、この問題を解決したもので、1組のダイポールアンテナを用いて所望の指向性を有する放射パターンを得ることができるアンテナ装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、モノポールアンテナ2個から成るダイポールアンテナの第1の給電点に接続される第1の接続端子と、この第1の接続端子に入力された高周波信号が入力され、前記高周波信号を分配し第1と第2の分配信号を出力する第1の分配器と、前記第1の分配信号が供給された第1の移相器と、前記ダイポールアンテナの第2の給電点に接続される第2の接続端子と、この第2の接続端子に入力された高周波信号が入力され、この高周波信号を分配し第3と第4の分配信号を出力する第2の分配器と、前記第4の分配信号が供給された第2の移相器と、前記第1の移相器の出力と前記第3の分配信号とが入力される第1の合成器と、前記第2の移相器の出力と前記第2の分配信号と出力とが入力される第2の合成器と、この第1の合成器の出力と前記第2の合成器の出力とが供給される第3の合成器と、この第3の合成器の出力が供給される出力端子を設け、前記第1の合成器と前記第3の合成器の間と、前記第2の合成器と前記第3の合成器の間のうちの少なくともいずれか一方には、第3の移相器が挿入されたものである。これにより所期の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、モノポールアンテナ2個から成るダイポールアンテナの第1の給電点に接続される第1の接続端子と、この第1の接続端子に入力された高周波信号が入力され、前記高周波信号を分配し第1と第2の分配信号を出力する第1の分配器と、前記第1の分配信号が供給された第1の移相器と、前記ダイポールアンテナの第2の給電点に接続される第2の接続端子と、この第2の接続端子に入力された高周波信号が入力され、この高周波信号を分配し第3と第4の分配信号を出力する第2の分配器と、前記第4の分配信号が供給された第2の移相器と、前記第1の移相器の出力と前記第3の分配信号とが入力される第1の合成器と、前記第2の移相器の出力と前記第2の分配信号と出力とが入力される第2の合成器と、この第1の合成器の出力と前記第2の合成器の出力とが供給される第3の合成器と、この第3の合成器の出力が供給される出力端子を設け、前記第1の合成器と前記第3の合成器の間と、前記第2の合成器と前記第3の合成器の間のうちの少なくともいずれか一方には、第3の移相器が挿入されたものであるので、1組のダイポールアンテナを用いて所望の指向性を有する放射パターンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態における受信装置の回路ブロック図
【図2】同、アンテナ装置における合成信号の指向性を示すグラフ
【図3】同、アンテナ装置における合成信号の指向性を示すグラフ
【図4】同、第2の例における受信装置の回路ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、本実施の形態におけるアンテナ装置1を用いた受信装置2について、図面を用いて説明する。図1は、本実施の形態における受信装置の回路ブロック図であり、図2は同、受信装置における移相器の出力の指向性を示すグラフである。図1において、受信装置2は、アンテナ3と、アンテナ装置1と、受信部4と、復調部5と、制御部6により構成されている。アンテナ3で受信した高周波信号は受信部4へ供給され、受信部4によってIF周波数信号へと変換されて出力される。受信部4から出力されたIF周波数信号は復調部5へ供給され、復調部5で復調される。そして復調部5の出力は受信装置2の出力端子7へと接続され、復調された信号は出力端子7を介して外部回路である信号処理回路(図示せず)へ供給される。制御部6には受信部4や復調部5からの受信品質信号が供給される。そして、制御部6の出力はアンテナ装置1の制御端子へと接続され、制御部6は入力された受信品質信号に基づき、アンテナ装置1を制御する。これにより、アンテナ3の放射パターンが所望の特性となるように制御されるわけである。
【0012】
次にそれぞれの構成について、詳細に説明する。最初にアンテナ3は、モノポールアンテナ2個から成るダイポールアンテナである。このアンテナ3はアンテナエレメント3a、とアンテナエレメント3bとが規定の距離を離して配置されている。一方のアンテナエレメント3aの端部には給電点3cが設けられ、他方のアンテナエレメント3bの端部には給電点3dが設けられている。本実施の形態におけるアンテナ3は、470MHz〜770MHzの周波数で放送されるデジタル地上波放送を受信するものであり、各アンテナエレメント3a、アンテナエレメント3bは直径が1ミリメートルで、長さが100ミリメートルとしている。なお、アンテナ3はこれ以外にITS(車路間通信)や特定小電力による機器などに用いるアンテナとして使用される。ただしその場合、アンテナエレメント3aやアンテナエレメント3bの長さは、使用する周波数帯域に応じて適宜調整される。
【0013】
次にアンテナ装置1について詳細に説明する。アンテナ装置1には、アンテナエレメント3aの給電点3cに接続される接続端子11aと、アンテナエレメント3bの給電点3dに接続される接続端子11bとを有している。これにより本実施の形態では、アンテナ3で受信したデジタル地上波放送の放送信号(高周波信号の一例として用いた)が、接続端子11a、接続端子11bに供給される。
【0014】
分配器12の入力端子12aには接続端子11aに入力された放送信号が供給される。この分配器12は、入力された放送信号を2分配し、出力端子12bと出力端子12cとからそれぞれ分配信号を出力する。ここで分配器12から出力される分配信号同士は互いに同じ位相である。一方分配器13の入力端子13aには接続端子11bに入力された放送信号が供給される。この分配器13は、入力された放送信号を2分配し、出力端子13bと出力端子13cとからそれぞれ分配信号を出力する。また、分配器13から出力される分配信号同士は互いに同じ位相である。
【0015】
そして、分配器12の出力端子12bから出力された分配信号は、移相器14へ供給される。一方、分配器13の出力端子13bから出力された分配信号は、移相器15へ供給される。これら移相器14や移相器15は、入力された放送信号の位相を決められた位相(固定移相量)だけ変化させるものである。本実施の形態において、移相器14は分配器12から出力された分配信号の位相を90度進めている。一方、移相器15は、分配器13から出力された分配信号の位相を90度遅らせている。なお、移相器14の移相量Φ1と移相器15の移相量Φ2との差は、以下のような関係としておくとよい。
【0016】
【数1】

【0017】
ここでダイポールアンテナは、受信する波長の1/2の長さであれば、給電点3cと給電点3dの信号の位相差がちょうど180度となり、完全な平衡伝送となる。しかし、本実施の形態のように広帯域な信号(470MHz〜770MHz)を受信する場合、アンテナの長さは全ての周波数の波長に対して、1/2ではなく、給電点3cと給電点3dにおける信号の位相差が180度とならず、平衡が崩れてしまう。そこでこのように、移相器14の移相量Φ1と移相器15の移相量Φ2との差を[数1]の関係とすることにより、広い周波数帯域に対しても、アンテナの感度を高くできる。
【0018】
合成器16には入力端子16aと入力端子16bとを有し、この入力端子16aに入力された信号と、入力端子16bに入力された信号とを合成する。ここで一方の入力端子16aには移相器14の出力が接続され、入力端子16bには移相器15の出力が接続される。これにより、入力端子16aに対しては、分配器12の分配信号が移相器14を介して供給され、入力端子16bに対しては、分配器13の分配信号が移相器15を介して供給されることとなる。そしてこの合成器16では、これらの分配信号が合成された合成信号を出力端子16cから出力する。
【0019】
一方、合成器17には入力端子17aと入力端子17bとを有し、この入力端子17aに入力された信号と、入力端子17bに入力された信号とを合成する。ここで入力端子17aには分配器13の出力端子13cが接続され、入力端子17bには分配器12の出力端子12cが接続される。これにより、入力端子17aには、分配器13で分配された分配信号が供給され、入力端子17bには分配器12で分配された分配信号が供給されることとなる。そしてこの合成器17では、これらの分配信号が合成された合成信号を出力端子17cから出力する。
【0020】
合成器16の出力端子16cには移相器18が接続され、この移相器18には合成器16から出力された合成信号が入力され、合成信号の位相を変化させる。ここで移相器18は可変移相器であり、入力された信号の位相の変化量(位相量)を任意に設定可能である。なおこの移相量は、位相制御端子18aに供給される移相量制御信号の電圧に応じて変化する。
【0021】
移相器18の出力には、増幅器19が接続されており、この増幅器19は可変利得増幅器であり、増幅器19の利得を任意に設定が可能である。なお、この利得は、利得制御端子19aへ供給される利得制御信号の電圧に応じて変化する。
【0022】
合成器20は入力端子20aと入力端子20bとを有し、この入力端子20aに入力された信号と、入力端子20bに入力された信号とを合成する。ここで入力端子20aには増幅器19の出力が接続され、入力端子20bには合成器17の出力端子17cが接続される。これにより、入力端子20aには、合成器16で合成された合成信号が、移相器18と増幅器19とを介して供給され、一方入力端子20bには合成器17で合成された合成信号が供給されることになる。そしてこの合成器20では、これらの合成信号が合成されて、出力端子21を介して受信部4へと出力する。
【0023】
なお、本実施の形態では、合成器16と合成器20との間に移相器18と増幅器19とが設けられたが、これは合成器17と合成器20との間に設けても良い。また、それらの場合において、増幅器19の後に移相器18を設けても構わない。ただしいずれの場合においても、移相器18と増幅器19とが直列に接続される。さらに、増幅器19を移相器18と合成器20の間ではなく、合成器17と合成器20との間に設けても良い。あるいは、移相器18を合成器17と合成器20との間に設けても良い。また、増幅器19を移相器18と合成器20との間に加えて、合成器17と合成器20との間にも設けてもかまわない。
【0024】
次に、以上のように構成されたアンテナ装置1の動作について説明する。図2は、本実施の形態のアンテナ装置における合成信号の指向性を示すグラフである。図2において上方向を0度とし、左周りで角度が増加してゆく。そして半径方向の大きさは、その方向から信号を受信した時の合成器16あるいは合成器17から出力される合成信号の信号のレベル(アンテナの感度と同じ意味)である。
【0025】
ここで発明者らは、本実施の形態におけるアンテナ装置1に対し、471MHzと761MHzでの指向特性について評価を行った。図2において、指向特性31は、合成器16からの出力の指向特性であり、指向特性32は合成器17からの出力の指向特性である。一方、図3において、指向特性33が合成器16からの出力の指向特性であり、指向特性34が合成器17からの出力の指向特性である。なお、図2における指向特性31、指向特性32は、473MHzの放送信号に対する特性グラフを示し、指向特性33や指向特性34は、761MHzの放送信号における特性グラフである。そして合成器20で合成器16と合成器17から出力された合成信号が合成されることによって、アンテナ装置1は指向特性31と指向特性32とが合成された指向性をもつこととなる。
【0026】
その結果、473MHzの周波数の放送信号に対しては、指向特性31のヌル点31a、ヌル点31bと、指向特性32のピーク点32a、ピーク点32bとがほぼ同じ角度(位置)となっている(ヌル点31aやヌル点31bとヌル点32cあるいはヌル点32dが近い角度に存在せず、離れている)ので、ヌル点が存在しない。したがって、アンテナ3はどの方向からも放送信号を良好に受信(無指向性アンテナを実現)できることとなる。
【0027】
一方、図3に示すように761MHzにおいては、指向特性33のヌル点33aと指向特性34のヌル点34aとは、非常に近い角度(位置)にある。したがってこのままで合成した場合、アンテナ3へ約270度の方向から入力された放送信号は、受信できなく(あるいは受信品質が非常に悪く)なる。そこで、このような場合、移相器18及び、増幅器19によって合成器16から出力された分配信号の位相や振幅レベルを変化させ、合成器17から出力される信号と合成させる事で、ヌル点のないアンテナ3を得ることができる。したがって、アンテナ3や受信装置2などの向きを変えなくても、良好に放送信号を受信できる受信装置2(アンテナ装置1)を得ることができる。
【0028】
そしてたとえば、それぞれのチャンネルにおいて、ヌル点が存在しないような位相制御電圧や利得制御電圧を初期値として制御部6内に設けられたメモリ(図示せず)へ格納しておくと良い。このようにすれば、ヌル点が存在せず、受信部4の受信品質を高くできるアンテナ装置1を得ることができる。
【0029】
また、時に無指向性よりも大きな感度が欲しいような場合には、移相器18の移相量を変化させて、最大点同士を重ねればよい。あるいは、妨害信号が存在するのであれば、移相器18の移相量を変化させて、その妨害信号が入力される方向に対して、ヌル点を形成すればよい。このようにアンテナ装置1を用いれば移相器18の移相量を変化させることにより、1本のダイポール型のアンテナ3によって、適宜欲する指向特性を有するアンテナを容易に実現することができる。
【0030】
次に、このようなアンテナ装置1をたとえば携帯電話などのような移動機器へ搭載した例について説明する。操作者が起動スイッチをオンにし、受信希望チャンネルの指示を行うと、制御部6はアンテナ装置1を動作させるとともに、位相制御端子18aと利得制御端子19aとに対し、メモリ内に格納された規定の初期の制御信号(電圧)を供給する。これにより、受信部4では受信したいチャンネルが受信され、表示部から映像が出力され、スピーカから音声が出力される。このとき、制御部6には受信部4あるいは復調部5から受信品質データが入力され、受信品質の判定が行われる。ここで受信品質の判定は、制御部6において、受信品質データとメモリに記憶された閾値とを比較することによって行われている。本実施の形態において受信品質データとしては、受信部4から入力されるAGC電圧や、復調回路から入力されるAGC電圧やBER値やC/N比の値が用いられる。
【0031】
これにより制御部6では、このような受信品質データとメモリに記憶された閾値とを比較し、受信品質データが閾値よりも良いと判定した場合には、そのままの制御信号(電圧)を維持する。しかし、このとき制御部6において受信品質データが閾値よりも悪いと判定する場合がある。あるいは、移動によって受信品質データが閾値より悪くなる場合がある。これは、受信部4における希望チャンネルの放送信号のレベルが小さい場合と、逆に妨害波のレベルが大きい場合がある。受信部4における希望チャンネルの放送信号のレベルが小さい場合には、たとえば放送局が遠方であり放送信号自体のレベルが小さいような場合や、放送局が受信装置2の受信感度の悪い方向にある場合や、希望波よりもレベルの大きな妨害波(例えば他人の携帯電話からの送信信号)のレベルによって受信部4のAGCが制御され、その結果希望チャンネルの放送信号のレベルが小さくなる場合などが考えられる。
【0032】
一方、妨害波のレベルが大きい場合には、逆に放送局が非常に近く、受信部4へ入力される放送信号などのレベルが大きすぎることにより、受信品質が悪化していることが考えられる。詳しくは、大きなレベルの妨害波によって、受信部4内の低雑音増幅器や混合器にひずみが生じることなどによって受信品質が悪化するわけである。
【0033】
そこで、本実施の形態における受信装置2では、制御部6が移相器18の移送量や増幅器19の利得を制御して、受信品質の改善を図ることとなる。つまり、希望チャンネルの放送信号のレベルが小さい場合、たとえば図2において指向特性31の最大点31cと指向特性32のピーク点32b(最大点でもある)との角度を近づけるようにすればよい。このようにすれば最大値同士が重なる方向34cでアンテナ3の感度を最大とできる。そして、アンテナ3から放送局の方向が、常に最大点31c(あるいはピーク点32b)の方向になるように制御すればよい。逆に、大きな妨害波により受信品質が悪化している場合には、妨害波の方向にヌル点32cが形成されるように移相器18の移相量を制御すればよい。以上の構成において、移相器18の移相量を制御することにより、ヌル点の角度やピーク点(あるいは最大点)の角度を変化させることができ、1本のダイポール型のアンテナだけで容易に所望の指向性を得ることができる。したがって、本実施の形態における受信装置2においては、このいずれの原因による受信品質の悪化に対しても、移相器18によってアンテナ装置1の指向性を変化させることにより改善することができるので、指向性の異なる複数のアンテナを配置することなく、また、複雑な制御など不要であり、非常に容易に実現できる。
【0034】
なお、本実施の形態ではヌル点32c(あるいはヌル点32d)を最大点31cと合うように移相器18の移相量を回転させたが、これは位相制御端子18aに対して周期的に電圧が変動する制御信号(たとえば三角波や正弦波)を供給し、常に位相を変化させておく。これにより時間により常にヌル点32c(あるいはヌル点32d)が移動し、アンテナ3の感度は時間的に平均され、結果的に無指向性のアンテナ3を得ることができることとなる。
【0035】
では、以下にその具体的な制御について説明する。制御部6において受信品質データが閾値よりも悪いと判定した場合に、位相制御端子18aへ供給する位相制御信号(電圧)を規定電圧及び、任意周期で変化させて出力し、移相器18の移相量を変化する。本実施の形態では、BER値によって受信品質の判定を行っており、BER値の閾値は0.0002としている。これは、デジタル放送において、BER値が0.0002以上であると、リードソロモン復号後に擬似エラーフリーとなるためである。そして、制御部6は位相制御信号を変化させて規定の時間が経過した後に、再度受信品質データを入力して受信品質の判定が行われ、受信品質が閾値を超えるまで上記動作が繰り返される。そして、制御部6は受信品質データが閾値を超えた状態となったときの位相制御信号(電圧)を維持する。なお、本実施の形態では受信品質データとしてBER値を用いたが、これはAGC電圧やC/N比値などを用いても良い。
【0036】
以上の制御によって、制御部6は移相器18の移相量を変化させて、受信部4での受信品質が閾値よりも良くなる制御電圧をを探すように制御することとなるので、受信品質を悪化させた原因が上記のいずれの原因であっても、同じ制御によって容易に受信品質を改善できることとなる。
【0037】
ただし、移相器18の位相を360度回しても受信品質データが閾値を超えない場合、制御部6は受信品質データが最も良好な値となったときの位相制御信号(電圧)を出力する。そして今度は、利得制御端子19aへ供給する利得制御信号(電圧)を規定電圧だけ変化させて出力し、制御部6は増幅器19の利得を変化させ、受信品質が最良となったときの電圧を維持する。このように増幅器19を設けているので、合成器16から出力される信号のレベルを大きくできる。たとえば、合成器16から出力される信号がヌル点に近いような場合、増幅器19で信号のレベルを大きくする。これにより、合成器20で合成された信号のレベルを大きくでき、受信装置2は放送を良好に受信できることとなる。
【0038】
なお、本実施の形態において、接続端子11aと分配器12との間と、接続端子11bと分配器13との間には、それぞれ増幅器(図示せず)が挿入されている。なお、この増幅器の入力インピーダンスを大きくすることで、受信信号の波長に対して短いアンテナ3のインピーダンスとの整合を簡素化できる。これにより、アンテナ3で受信した放送信号の整合ロスを少なくできるので、受信品質の良いアンテナ装置1を得ることができる。さらに、分配器12や分配器13による分配で、放送信号にロスが生じるが、これらの増幅器を設けることにより、分配によるロスの影響を軽減したアンテナ装置1を得ることができる。
【0039】
図4は、本実施の形態における第2の例の受信装置の回路ブロック図である。図4において、図1と同じものには同じ番号を用い、その説明は簡略化している。本例における受信装置2は、分配器12の出力端子12cと合成器17の入力端子17bとの間に移相器51が挿入され、分配器13の出力端子13cと合成器17の入力端子17aとの間に移相器52が挿入されている。ここで、移相器51の移相量Φ3と、移相器52の移相量Φ4との移相量差は[数2]の関係にあるようにする。
【0040】
【数2】

【0041】
このようにすれば、広い周波数帯域に対しても、さらにノイズに対して強くでき、アンテナの感度を高くできる。
【0042】
次に、本実施の形態におけるアンテナ装置1を自動車に搭載されるテレビ受信機に用いた例について説明する。自動車などにアンテナ3を設置する場合、自動車の車体(ボンネットやルーフ)がアンテナ3の地板として動作してしまう。したがって、アンテナ3単体としては所望の指向性を有していても、設置時に所望の指向性が得られない場合がある。さらに、車種が異なれば車体の形状も異なり、車種によってアンテナ3の指向性を適宜変えることも必要となる。そこで、自動車に設置されるアンテナ3と受信部4との間にアンテナ装置1を挿入する。これにより、移相器18の移送量を変化させれば、容易にアンテナ装置1によってアンテナ3の指向性を変化させることができる。従って、車種(車体)が異なっても、それぞれ専用のアンテナ3を準備する必要がない。つまり、アンテナ3を設置した後に、アンテナ装置1で搭載される車体に適するように移相器18の移送量や増幅器19の利得を制御すればよい。また、このように所要の指向性を得るために、1本のダイポールアンテナ3によって実現できるので、運転者の視界を妨げにくくなり、非常に安全である。
【0043】
次に、本実施の形態におけるアンテナ装置1の第3の使用例もアンテナ装置1を自動車用のテレビ受信機へ搭載した例である。アナログ放送の停波後、770MHz帯の周波数は、車路間通信用途での利用が検討されている。ところが、車路間通信の周波数はデジタル地上波放送の周波数帯域と非常に近く、放送信号の妨害となる可能性を有している。
【0044】
さらに、近年アンテナは車のフロントガラス内に埋め込まれて設置される。ところが車路間通信の基地局側アンテナは、街燈や信号機などに設置されることが有力視されており、車路間通信のアンテナは、自動車の前方斜め上方向の位置となる。したがって、配置的にも車路間通信の信号は、放送信号の受信に対して妨害を発生しやすくなると考えられる。
【0045】
そこで、この例ではアンテナ装置1を用いて、このような車路間通信の信号による受信妨害を少なくするものである。つまり、アンテナ装置1の移相器18で移相量を変化させて、車路間通信の信号(アンテナ)の方向に、アンテナ装置1でアンテナ3のヌル点が形成されるようにするわけである。これにより、容易に車路間通信の信号による妨害を生じにくくできる。
【0046】
さらに、本実施の形態におけるアンテナ装置1を用いた第4の例を説明する。この例では、いわゆる特別小電力の通信用途に用いるものであり、アンテナ3では送受信が行われ、アンテナ装置1の給電点3cや給電点3dとアンテナ装置1との間に、デュプレクサや送受信信号を分離するためのフィルタなどが挿入される。そしてデュプレクサ(あるいはフィルタ)の入力端子には送信部が接続される構成となる。なおこの送信部は、送信信号を変調した信号の、周波数を変化して出力する。
【0047】
ここでは、通信機能を有した火災報知機などに用いた例について説明する。このような火災報知機などにおいて、設置前状態では、通信相手の火災報知機が自分に対してどの方向に設置されるかが不明であるため、無指向性アンテナを用いることが望ましい。そこで、本実施の形態におけるアンテナ装置1を用いれば、簡単な構成で容易に無指向性のアンテナを得ることができる。そしてこれはアンテナ装置1において、合成器16から出力される合成信号のヌル点と、合成器17から出力される合成信号のヌル点とが離れた位置(角度)となるように、移相器18の移送量を制御することによって容易に実現できる。したがって設置場所にかかわらず、安定した通信が可能となる。また1本のダイポールアンテナ3によって無指向性を得ることができるので、安価な火災報知機などを得ることができる。
【0048】
また、このような火災報知機は一般的に一旦設置されると、以降設置場所を変更することはない。そこで、本実施の形態におけるアンテナ装置1を用い、通信する相手の設置方向に対して感度を大きくすることも可能となる。これにより、通信すべき他の火災報知機との通信を確実に行うことができる。そしてこれは、アンテナ装置1において、合成器16から出力される合成信号のピーク点と、合成器17から出力される合成信号のピーク点とを近い位置(角度)とし、かつそれらのピーク点が通信する相手の方向となるように、移相器18の移送量を制御することによって容易に実現できる。
【0049】
そしてこの場合の移相器18の移相量の設定は以下のようにして行うことができる。既に設置され、通信すべき他の火災報知機から送信信号を送信する。なお、このときの送信はテストモードで行われる。このモードで送信される送信信号には、アンテナ3の指向性を設定するモードである旨を示す情報と、送信した火災報知機のID(識別番号)とを含んでいる。
【0050】
一方アンテナ3の指向性を設定する対象の火災報知機は、アンテナの指向性を設定するモードで動作させる。このモードでは、制御部6は受信した送信信号の受信品質が最も良好となるように移相器18や増幅器19を制御する。具体的には、合成器16から出力される合成信号のピーク点と、合成器17から出力される合成信号のピーク点とを近い位置(角度)とするとともに、その合成された感度におけるピーク点が通信すべき相手の方向となるようにするわけである。そしてそのときに受信した送信信号に含まれたIDと、位相制御信号や利得制御信号の値をメモリに記憶させる。これにより、その通信相手から信号を受信するときには、メモリに記憶された位相制御信号や利得制御信号の値を用いて、アンテナ3の指向性が通信相手を向くように制御する。
【0051】
ここで、火災報知機は各部屋に設置されるので、通信すべき相手が複数個存在することとなる。そこでこのような場合、それぞれの火災報知機に対し上記アンテナの指向性を設定するモードを実行し、それぞれの火災報知機において、アンテナ3の指向性が最適となるような位相制御信号や利得制御信号の値を設定し、通信すべき火災報知機のIDとともにメモリに記憶させる。
【0052】
そして、火災を検知するモードでは、一定時間ごとに位相制御信号や利得制御信号の値を変化させて、順次他の火災報知機からの火災報知信号の有無を確認する。これにより、設置した複数個の火災報知機の中で1箇所でも火災を検知した場合、全ての火災報知機へ安定して情報を報知することができ、全ての火災報知機で確実に火災などの報知を行うことができる。したがって、非常に安全性が高い火災報知機を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明にかかるアンテナ装置は、小型化できるという効果を有し、移動用受信器等に用いると有用である。
【符号の説明】
【0054】
3 アンテナ
3c 給電点
3d 給電点
11a 接続端子
11b 接続端子
12 分配器
13 分配器
14 移相器
15 移相器
16 合成器
17 合成器
18 移相器
20 合成器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノポールアンテナ2個から成るダイポールアンテナの第1の給電点に接続される第1の接続端子と、この第1の接続端子に入力された高周波信号が入力され、前記高周波信号を分配し第1と第2の分配信号を出力する第1の分配器と、前記第1の分配信号が供給された第1の移相器と、前記ダイポールアンテナの第2の給電点に接続される第2の接続端子と、この第2の接続端子に入力された高周波信号が入力され、この高周波信号を分配し第3と第4の分配信号を出力する第2の分配器と、前記第4の分配信号が供給された第2の移相器と、前記第1の移相器の出力と前記第2の移相器の出力とが入力される第1の合成器と、前記第1の分配器の出力と前記第2の分配器の出力とが入力される第2の合成器と、この第1の合成器の出力と前記第2の合成器の出力とが供給される第3の合成器と、この第3の合成器の出力が供給される出力端子を設け、前記第1の合成器と前記第3の合成器の間と、前記第2の合成器と前記第3の合成器の間のうちの少なくともいずれか一方には、第3の移相器が挿入されたアンテナ装置。
【請求項2】
第1の移相器の移相量(Φ1)と第2の移相器の移相量(Φ2)との差(Φ1−Φ2)は180度±360度×n倍(ただしnは整数)となる請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
第1の分配器と第2の合成器との間に第4の移相器が挿入され、第2の分配器と第2の合成器との間には第5の移相器が挿入された請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
第4の移相器の移相量(Φ4)と第5の移相器の移相量(Φ5)との差(Φ4−Φ5)は0度±360度×n倍(ただしnは整数)となる請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
第1の接続端子と、第1の分配器の間に挿入された第2の増幅器と、第2の接続端子と第2の分配器の間に挿入された第3の増幅器とが配置された、請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
第3の移相器は、制御信号によって移相量が設定可能とした請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
制御信号は、周期的に電圧が変動する信号とした請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
第1の合成器と第3の移相器の間と前記第3の移相器と第3の合成器の間と、第2の合成器と第3の合成器の間のいずれかに第1の増幅器が設けられた請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
第1の増幅器は、制御信号によって増幅量が設定可能とした請求項8に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−244234(P2011−244234A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114907(P2010−114907)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】