説明

アンテナ装置

【課題】所定の通信距離を確保しつつ占有エリアの小さなアンテナ装置を構成する。
【解決手段】巻回軸回りに巻回された形状のコイル導体を有するコイルアンテナ100A,100B,100C,100Dと、コイル導体の巻回軸に沿った面を有し、縁端部がコイル導体のコイル開口部に隣接配置された平面導体11とを備える。コイル導体に流れる電流で平面導体11に電流が誘導され、この電流で平面導体11の法線方向に磁束が生じるので、平面導体11はブースターアンテナとして作用する。アンテナ装置201はコイルアンテナ100A,100B,100C,100と平面導体11による磁束との合成により、平面導体11の法線方向を指向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置、特にHF帯の通信システムに用いられるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リーダライタとRFIDタグとを非接触方式で通信させ、リーダライタとRFIDタグとの間で情報を伝達するRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。リーダライタおよびRFIDタグは、無線信号を送受するためのアンテナ装置をそれぞれ備えていて、たとえば13.56MHz帯を通信周波数として利用したHF帯RFIDシステムであれば、RFIDタグのアンテナ装置とリーダライタのアンテナ装置とは、主に誘導磁界を介して結合し、所定の情報が送受される。
【0003】
近年、携帯電話等の通信端末装置にRFIDシステムを導入し、この通信端末装置をリーダライタやRFIDタグとして利用することがある。通信端末装置にRFID機能を付与する技術としては、たとえば特許文献1に記載されているように、通信端末装置にアンテナモジュールを内蔵する技術が知られている。ここで、アンテナモジュールは、平面状の基板に平面状のコイルアンテナを形成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−364199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HF帯を通信周波数として利用したシステムにおいて、アンテナ装置間の通信距離は、コイルアンテナを通過する磁束に依存する。つまり、アンテナ装置間である程度の通信距離を確保するためには、コイルアンテナのサイズを大きくする必要があるが、コイルアンテナの大型化は通信端末装置の小型化を妨げることになってしまう。
【0006】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、所定の通信距離を確保しつつも、占有エリアの小さなアンテナ装置、さらには小型の通信端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアンテナ装置は、巻回軸回りに巻回された形状のコイル導体が複数の基材層が積層された積層体に一体的に成形されたコイルアンテナと、
前記巻回軸に沿った面を有する平面導体と、を有し、
前記コイルアンテナは、前記コイル導体の巻回領域の少なくとも内部に配置された磁性体を備え、
前記コイルアンテナには、前記積層体の内部または底面に、前記平面導体に導通し、且つ前記コイルアンテナに対して主に磁界を介して結合する結合用電極が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアンテナ装置は、コイルアンテナと平面導体とで構成されているため、所定の通信距離を確保しつつも、占有エリアの小さなアンテナ装置を実現することができ、ひいては、小型の通信端末装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(A)は第1の実施形態のアンテナ装置201の斜視図、図1(B)はその平面図である。
【図2】図2は第1の実施形態のアンテナ装置に用いられるコイルアンテナの斜視図である。
【図3】図3は第1の実施形態のアンテナ装置を用いた通信端末装置、およびその通信端末装置の使用状態を示す内部透視斜視図である。
【図4】図4は、コイルアンテナのコイル導体の巻回軸方向と平面導体11との関係を示す図である。
【図5】図5(A)はコイルL1〜L4に流れる電流と平面導体11に流れる電流との関係を示す図、図5(B)はコイルアンテナ100A,100B,100C,100Dに対する磁束の鎖交状態を示す図である。
【図6】図6は第2の実施形態のアンテナ装置202の各コイルアンテナと同士の接続関係および給電回路に対する接続関係を示す図である。
【図7】図7(A)は第3の実施形態のアンテナ装置203の斜視図、図7(B)はその平面図である。
【図8】図8(A)は第4の実施形態のアンテナ装置204の斜視図、図8(B)はその平面図である。図8(C)はアンテナ装置204を通信端末装置に組み込んだ状態を示す平面図である。
【図9】図9(A)は第5の実施形態のアンテナ装置205の斜視図である。図9(B)はそのアンテナ装置205を通信端末装置に組み込んだ状態を示す正面図である。
【図10】図10(A)は第6の実施形態のアンテナ装置206の斜視図、図10(B)はその分解斜視図である。
【図11】図11(A)は第7の実施形態のアンテナ装置207の平面図、図11(B)はコイルアンテナのコイル導体の巻回軸方向と平面導体11との関係を示す図である。
【図12】図12(A)、図12(B)は第8の実施形態のアンテナ装置208A,208Bの平面図である。
【図13】図13(A)、図13(B)は第8の実施形態のアンテナ装置209A,209Bの平面図である。
【図14】図14(A)は第10の実施形態のアンテナ装置210の斜視図、図10(B)はその平面図、図10(C)はその正面図である。
【図15】図15(A)はアンテナ装置210のコイルアンテナ100のコイル導体に流れる電流、平面導体11に流れる電流、コイルアンテナ100による磁界、平面導体11による磁界のそれぞれの向きを示す斜視図である。図15(B)は平面導体11に流れる電流と発生する磁束の関係を示す図である。
【図16】図16(A)はアンテナ装置210を備える通信端末装置310の断面図、図16(B)はその下面から見た透視図である。
【図17】図17(A)は第11の実施形態のアンテナ装置211の平面図、図17(B)はその正面図である。
【図18】図18は第12の実施形態のアンテナ装置212の分解斜視図である。
【図19】図19(A)は第13の実施形態のアンテナ装置213の斜視図、図19(B)はその断面図である。
【図20】図20(A)はアンテナ装置213の分解斜視図、図20(B)はその断面図であり、電流と磁束の様子を示している。
【図21】図21(A)は第14の実施形態のアンテナ装置に備えられるコイルアンテナ114の分解斜視図、図21(B)は第14の実施形態のアンテナ装置214の断面図である。
【図22】図22は第15の実施形態の通信端末装置315の内部透視した斜視図である。
【図23】図23(A)は第16の実施形態のアンテナ装置216の斜視図、図23(B)はそのアンテナ装置216を備えた通信端末装置316の内部透視した斜視図である。
【図24】図24は第17の実施形態のアンテナ装置217の斜視図である。
【図25】図25(A)はアンテナ装置217が備えるブースターアンテナ130の分解斜視図、図25(B)はその等価回路図である。図25(C)はアンテナ装置217の等価回路図である。
【図26】図26(A)はアンテナ装置217の平面図、図26(B)はアンテナ装置217を備えた通信端末装置の断面図である。
【図27】図27(A)は第18の実施形態のアンテナ装置218の平面図、図27(B)はアンテナ装置218を備えた通信端末装置の断面図である。
【図28】図28は第19の実施形態のアンテナ装置219を備える通信端末装置の上部筐体を外した状態での平面図である。
【図29】図29(A)はアンテナ装置220の平面図、図29(B)はアンテナ装置220の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降に示す各実施形態のアンテナ装置および通信端末装置は、NFC(Near Field Communication)等のHF帯RFIDシステムで利用される。
【0011】
《第1の実施形態》
図1(A)は第1の実施形態のアンテナ装置201の斜視図、図1(B)はその平面図である。
【0012】
このアンテナ装置201は、図1(A)および図1(B)に示すように、四つのコイルアンテナ100A,100B,100C,100Dを有している。後に示すように、各コイルアンテナ100A,100B,100C,100Dは、磁性体コアの周囲に各コイル導体を巻回した構造を有している。
【0013】
さらに、このアンテナ装置201は、各コイル導体の巻回軸方向に対して平行な面を有する平面導体11を備えている。平面導体11は基材10に形成されていて、この基材上にコイルアンテナ100A,100B,100C,100Dが実装されている。コイルアンテナ100A,100B,100C,100Dはコイル導体のコイル開口部が平面導体11の縁端部に隣接(近接)するように配置されている。
【0014】
平面導体は、銅、銀、アルミニウム等の金属箔によって構成されていて、可撓性樹脂にて構成された基材の上に設けられている。
【0015】
また、図1(A)および図1(B)に示すように、コイルアンテナ100A,100B,100C,100Dは、平面導体11の法線方向から見て、各コイル導体の少なくとも一部と平面導体11の端部とが重なるように配置されている。
【0016】
図2は前記コイルアンテナ100Aの斜視図である。他のコイルアンテナ100B,100C,100Dについても同じ構成であるので、ここでは代表としてコイルアンテナ100Aについて示す。
【0017】
図2に示すように、コイルアンテナ100Aは、フェライト等の磁性体コア20の周囲に銀や銅等のコイル導体21を巻回した構造を有する。
【0018】
図2に示したように、コイル導体21は、直方体状の磁性体コア20の短辺方向と平行方向に巻回軸をもつように、磁性体コア20の周面に巻きつけられている。すなわち、コイル導体21は磁性体コア20の長手方向(X軸方向)に巻回されていて、コイル導体21は、短手方向(Y軸方向)に巻回軸およびコイル開口部を有する。すなわち、コイル導体21は長辺側にコイル開口部を有している。コイルアンテナ100Aは、いわゆる表面実装型のコイルアンテナ(チップ型コイルアンテナ)として構成されていて、コイルアンテナの裏面には、コイル導体21の一端および他端にそれぞれ接続された2つの実装用端子電極(図示省略)が設けられている。すなわち、このコイルアンテナ100Aは、プリント配線板等の各種基板上に表面実装可能に構成されている。
【0019】
図1に示すように、コイルアンテナ100A,100B,100C,100Dは、それぞれその一方端面側のコイル開口部が平面導体側に向くように、また、各コイル導体の巻回軸が平面導体11の形成領域上にて交差するように配置されている。
【0020】
各コイルアンテナは矩形状に形成された平面導体11の各辺にそれぞれ設けられていて、コイルアンテナ100A,100B,100C,100Dは平面導体11を取り囲むように配置されている。なお、この平面導体の表面には絶縁膜(図示省略)が設けられていて、平面導体11とコイルアンテナ100A,100B,100C,100Dの各コイル導体とは、直接的には接続されていない。
【0021】
このアンテナ装置201は、携帯電話等の通信端末装置301において、たとえば図3に示すように配置されている。すなわち、この通信端末装置301において、端末筐体320にはメイン基板111と、サブ基板としての基材10が内蔵されていて、アンテナ装置201は、基材10の表面に構成されている。このアンテナ装置201は、バッテリーパック112とともに端末筐体320の裏面BS側に配置されている。メイン基板111は、エポキシ樹脂等の硬質樹脂基板で構成された大型のプリント配線板であり、表示装置の駆動回路、バッテリーの制御回路等を構成する回路素子が搭載されている。サブ基板としての基材10は、ポリイミドや液晶ポリマ等の可撓性樹脂基板で構成されていて、アンテナ装置201の他、通信回路(RF回路)等を構成する回路素子が基材10上に搭載されている。この通信端末装置301は、図3のように通信相手側のコイルアンテナ400にかざすことにより、アンテナ装置201と通信相手側のコイルアンテナ400とが主に誘導磁界を介して結合し、所定の情報が送受される。
【0022】
図4は、前記コイルアンテナのコイル導体の巻回軸方向と平面導体11との関係を示す図である。前記コイルアンテナのコイル導体をここではコイルL1〜L4で表している。図4に示すように、本実施形態のアンテナ装置201において、コイルL1〜L4は直列に接続されて給電回路FCに接続されている。そして、給電回路FCとコイルL1との接続配線W1,コイルL1〜L4間の接続配線W2〜W4およびコイルL4と給電回路FCとの接続配線W5は、これらコイルアンテナの中心位置を結ぶ仮想直線にて形成されるエリアよりも外側に配されていると、平面導体11のうち利用可能なエリアを広く確保することができるため、好ましい。この点で、これらの接続配線W1〜W5は、平面導体11よりも外側に配置されていることがより好ましい。給電回路FCは例えば通信回路やタグ情報を備えたRFIC(高周波集積回路)である。
【0023】
図5(A)は前記コイルL1〜L4に流れる電流と平面導体11に流れる電流との関係を示す図、図5(B)はコイルアンテナ100A,100B,100C,100Dに対する磁束の鎖交状態を示す図である。
【0024】
本実施形態のアンテナ装置201では、図5(A)に示すように、平面導体11にて通信相手側のアンテナ装置からの磁界を受けると、平面導体11に渦電流(誘導電流)が生じる。この渦電流は、図中矢印(点線)で表わされるように、平面導体11の端縁部近傍にも流れる。そして、この電流によって生じた磁界により、各コイルL1〜L4のうち平面導体11の縁端部に近接した部分には、平面導体11の端縁部に流れた電流とは逆方向の電流が流れ、その結果、配線W1〜W5にも図中矢印(一点鎖線)で示すような電流が流れる。
【0025】
また、通信相手側のアンテナ装置からの磁界のうち、平面導体11にて渦電流を生じた成分以外の磁束(図中実線で示す)は、図5(B)に示すように、平面導体11の縁端部に配置したコイルアンテナ100A,100B,100C,100Dのコイルを通過する。すなわち、図5(A)に示すコイルL1〜L4に入る磁束は、各コイル導体に誘導電流を誘起し、その結果、図5(A)の図中矢印(一点鎖線)で示したように電流が流れる。なお、給電回路FCから電流が供給された場合は、この逆の現象が生じる。このようにして平面導体11はブースターアンテナとして作用する。
【0026】
このように、本実施形態によれば、大型のコイルアンテナを用いることなく、複数のコイルアンテナ、特に複数の表面実装型コイルアンテナを用いることで、さらには、平面導体とコイルアンテナの磁界結合を利用することで、大型のコイルアンテナとほぼ同等またはそれ以上の電気特性を有するアンテナ装置を実現できるとともに、コイルアンテナが占めるエリアを小さくすることができる。その結果、通信端末装置の小型化を図ることができる。
【0027】
なお、各コイルアンテナは、そのコイル導体の巻回軸方向が平面導体の面に対して平行になるように配置された例を示したが、厳密に平行である必要はない。平面導体の面がコイル導体の巻回軸に沿っていればよい。言い換えると、コイル導体の巻回軸が平面導体に沿うようにコイルアンテナを配置すればよい。たとえば、コイル導体の巻回軸方向が平面導体11の法線方向に対して−45°〜+45°の範囲内にあれば、本発明においては「沿った」状態と言える。このことは以降に示す別の実施形態についても同様である。
【0028】
また、各コイルアンテナのコイル導体21は、平面導体11の端部と近接していればよいが、上記のように、平面導体11の法線方向から見たとき、コイル導体21の少なくとも一部と平面導体11の端部とが重なるように配置されている方が、平面導体11の端部に流れた電流をコイル導体21に誘導しやすくなるため、好ましい。また、同様の目的で、コイル導体21のうち平面導体11の端部に最も近接した部分は、平面導体11の端部に対して平行方向に延びていることが好ましい。また、磁性体コア20の少なくとも一部と平面導体11の端部とが重なるように配置されていると、コイル導体21のうち磁性体コア20の底面側の導体部分と平面導体11とが結合する一方、磁性体コア20の上面側の導体部分は平面導体11に結合しにくくなるため、打ち消し合う電流が生じるのを防ぐことができ、好ましい。
【0029】
また、各コイルアンテナは、コイル導体21の巻回軸同士が平行に(同軸となるように)配置されていると、磁束の巻回軸方向の成分が打ち消されて平面導体11の法線方向を指向するアンテナ装置の指向性が得られるため、好ましい。
【0030】
また、各コイルアンテナは、各コイルアンテナにおける各コイル導体21の各巻回軸が平面導体11の形成領域上で交差するように配置されていると、この交差点に向かってきた磁束を各コイルアンテナに十分に通過させることができるため、好ましい。
【0031】
また、コイルアンテナにおける磁性体コア20が直方体状であり、コイル導体21は磁性体コア20の短辺と平行方向に巻回軸を持つように巻回されていれば、すなわち、磁性体コア20の長辺側にコイル開口部を持つように巻回されていれば、コイルアンテナを設けるためのエリアを大きくすることなく、平面導体11に流れる電流がコイル導体21に導かれやすくなるとともに、平面導体11と平行方向に向かう磁束がコイルアンテナを通過しやすくなるため、好ましい。
【0032】
さらに、コイル導体21が、平面導体11の法線方向から見たとき、平面導体11の端部と重なっている第1部分と平面導体11とは重なっていない第2部分とを有するように配置されていると、コイルアンテナを配置する際の位置ズレが起きても周波数特性が変動しにくくなり、しかも、平面導体11に流れる渦電流は平面導体11の縁端部近傍にて大きいので、平面導体11とコイル導体21との結合度(磁気結合)を大きくすることができ、その結果、損失の小さなアンテナ装置を実現できるため、好ましい。
【0033】
《第2の実施形態》
図6は第2の実施形態のアンテナ装置202の各コイルアンテナと同士の接続関係および給電回路に対する接続関係を示す図である。コイルアンテナのコイル導体をここではコイルL1〜L4で表している。各コイルアンテナの構成は第1の実施形態で示したものと同じである。
【0034】
図6に示すように、本実施形態のアンテナ装置202において、コイルL1〜L4はそれぞれ給電回路FCに接続されている。つまり、各コイルアンテナのコイル導体は給電回路FCに対して互いに並列に接続されている。より具体的には、給電回路FCの第1入出力端は配線W1を介してコイルL1の一端に接続されていて、コイルL1の他端は配線W2を介して給電回路FCの第2入出力端に接続されている。同様に、給電回路FCの第1入出力端は配線W3を介してコイルL2の一端に接続されていて、コイルL2の他端は配線W4を介して給電回路FCの第2入出力端に接続されている。また、給電回路FCの第1入出力端は配線W5を介してコイルL3の一端に接続されていて、コイルL3の他端は配線W6を介して給電回路FCの第2入出力端に接続されている。さらに、給電回路FCの第1入出力端は配線W7を介してコイルL4の一端に接続されていて、コイルL4の他端は配線W8を介して給電回路FCの第2入出力端に接続されている。このように、各コイルアンテナを互いに並列に接続すれば、コイルのインダクタンス値がばらついたり、いずれかのコイルアンテナに不具合が生じたりした場合であっても、他のコイルアンテナでそれをカバーすることができる。
【0035】
さらに、本実施形態においても、各コイルアンテナと給電回路FCとを接続する配線W1〜W8は、各コイルアンテナ(コイルL1、コイルL2、コイルL3およびコイルL4)の中心を結ぶ仮想直線にて形成されるエリアよりも外側に引き回されている。さらには、平面導体11よりも外側にて引き回されている。このように接続配線W1〜W8を引き回すことで、平面導体11のうちアンテナ装置として利用できるエリアを広く確保できる。
【0036】
また、本実施形態のように、各コイルアンテナ(コイルL1〜L4)は、これを平面導体11の法線方向からみたとき、その全体が平面導体11のエリア内に納まっているように配置されていてもよい。各コイルアンテナの各コアは磁性体コアであるため、このような配置にしても、互いに打ち消し合うような電流が生じにくい。
その他の構成ならびに作用・効果は、第1の実施形態のアンテナ装置と同様である。
【0037】
《第3の実施形態》
図7(A)は第3の実施形態のアンテナ装置203の斜視図、図7(B)はその平面図である。
【0038】
図7(A)および図7(B)に示すように、本実施形態のアンテナ装置203は、長方形状の平面導体11の2つの長辺のうち、一つの長辺の近傍に第1コイルアンテナ100Aを配置し、2つの短辺近傍に第2コイルアンテナ100B、第3コイルアンテナ100Cをそれぞれ配置したものである。このように平面導体11の長辺方向にコイル開口部が互いに向かい合うように複数のコイルアンテナを配置することで、コイルアンテナに磁束を効率良く導くことができる。
【0039】
また、図7(A)、図7(B)に示したように、複数のコイルアンテナ100A,100B,100Cを平面導体11の中心に関して非対称に配置されていることで、アンテナ装置203に指向性をもたせることができる。したがって、例えばこのアンテナ装置203を通信端末装置の筐体に組み込んだ状態で、指向方向が筐体の長手方向に傾くように、平面導体11に対する複数のコイルアンテナの配置を定めることもできる。
なお、各コイルアンテナは直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。
【0040】
《第4の実施形態》
図8(A)は第4の実施形態のアンテナ装置204の斜視図、図8(B)はその平面図である。図8(C)はアンテナ装置204を通信端末装置に組み込んだ状態を示す平面図、図8(D)は、その正面図である。
【0041】
図8(A)および図8(B)に示すように、本実施形態のアンテナ装置204は、矩形状の平面導体11の4つの辺のうち、一辺に第1コイルアンテナ100Aを設け、対向辺に第2コイルアンテナ100B、第3コイルアンテナ100Cおよび第4のコイルアンテナ100Dを設けたものである。このように、複数のコイルアンテナ100A,100B,100C,100Dを平面導体11の中心に関して非対称に配置されていることで、アンテナ装置204に指向性をもたせることができる。この実施形態では、第2コイルアンテナ100B、第3コイルアンテナ100Cおよび第4のコイルアンテナ100Dを設けた辺の方向の通信距離を大きくすることができる。
【0042】
このアンテナ装置204は、図8(C)、図8(D)に示すように、通信端末装置の端末筐体320の先端部に配置される。すなわち、アンテナ装置204は、上記の方向に指向性を持つよう非対称に構成されていて、第2コイルアンテナ100B、第3コイルアンテナ100Cおよび第4のコイルアンテナ100Dが配置された側が端末筐体320の先端部側となるように、基材10(プリント基板)にアンテナ装置204を配置することで、図示のような指向性を持つ通信端末装置が得られる。
なお、各コイルアンテナは直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。
【0043】
《第5の実施形態》
図9(A)は第5の実施形態のアンテナ装置205の斜視図である。図9(B)はそのアンテナ装置205を通信端末装置に組み込んだ状態を示す正面図である。
【0044】
図9(A)に示すように、本実施形態のアンテナ装置205において、第1平面導体領域11Aに、第1コイルアンテナ100A、第2コイルアンテナ100Bおよび第3コイルアンテナ100Cが配置され、第2平面導体領域11Bに第4コイルアンテナ100Dが配置されている。第1平面導体領域11Aと第2平面導体領域11Bとは、所定の角度θをもって交わる平面上にそれぞれ形成されている。この場合、第1平面導体領域11Aの法線方向と第2平面導体領域11Bの法線方向との中間方向に指向性を有し、この方向の通信距離を大きくすることができる。
【0045】
このアンテナ装置205は、図9(B)に示すように、通信端末装置の端末筐体320の先端FE側に配置される。すなわち、アンテナ装置205は、この方向に指向性を有するよう非対称に構成されていて、端末筐体320の裏面BS側に、且つ第2平面導体領域11Bが先端FE側になるよう、アンテナ装置205を配置することで、図示のような指向性を持つ通信端末装置が得られる。
【0046】
なお、各コイルアンテナは直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。また、平面導体領域11A,11Bに流れる電流の損失が大きくなることを防ぐため、第1平面導体領域11Aと第2平面導体領域11Bとがなす角度θは、90°よりも大きく、135°よりも小さいことが好ましい。
【0047】
《第6の実施形態》
図10(A)は第6の実施形態のアンテナ装置206の斜視図、図10(B)はその分解斜視図である。この図に示すように、本実施形態のアンテナ装置206は、チップ型コイルアンテナ106と平面導体11とで構成されている。コイルアンテナ106と平面導体11とは、はんだ等の導電性接合材を介して直接的に接続されている。
【0048】
このコイルアンテナ106は、磁性体層20a,20c,20bを積層してなる積層型の磁性体コアを素体としていて、磁性体層20aの表面に形成された導体パターン21a、磁性体層20a,20c,20bの側面に形成された導体パターン21cおよび磁性体層20bの表面に形成された導体パターン21bによってコイル導体が構成されている。磁性体層20bの裏面、すなわちコイルアンテナ106の実装面には、入出力端子12a,12bへ接続するための入出力端子接続用電極22a,22b、および平面導体11へ接続するための結合用電極24がそれぞれ設けられている。
【0049】
コイル導体の一端は入出力端子接続用電極22aに接続されていて、コイル導体の他端は入出力端子接続用電極22bに接続されている。
【0050】
入出力端子接続用電極22a,22bは、はんだ等の導電性接合材を介して入出力端子12a,12bに接続・固定されている。結合用電極24は、平面導体11の一部である図中破線で示す接続エリアCAに、はんだ等の導電性接合材を介して、接続・固定されている。
なお、入出力端子12a,12bは、給電回路の入出力端や他のコイルアンテナに接続される。
【0051】
このアンテナ装置206において、平面導体11に流れる渦電流(誘導電流)は、平面導体11と結合用電極24とが同電位であることから、導電性接合材を介して結合用電極24にも導かれる。そして、結合用電極24に流れた電流と逆方向の電流が磁性体層20bの表面に設けられた導体パターン21bに流れ、その結果、コイル導体に電流が流れる。特に、本実施形態によれば、結合用電極24とコイル導体とは磁性体層を介して対向しているため、結合用電極24を流れる電流によって生じた磁界は、磁性体層に閉じ込められ、コイル導体に効率良く導かれる。すなわち、結合用電極24とコイル導体との磁界結合度を高め、損失の少ないアンテナ装置を実現できる。
【0052】
《第7の実施形態》
図11(A)は第7の実施形態のアンテナ装置207の平面図、図11(B)はコイルアンテナのコイル導体の巻回軸方向と平面導体11との関係を示す図である。前記コイルアンテナのコイル導体をここではコイルL1,L2で表している。
【0053】
本発明は、コイルアンテナの数が三つ以上に限定されるものではない。図11(A)に示すように、二つのコイルアンテナ100A,100Bを設けてもよい。この二つのコイルアンテナ100A,100Bを平面導体11の中心に関して非対称に配置されていることで、アンテナ装置207に指向性をもたせることができる。この場合も図11(B)に示すように、二つのコイルアンテナのコイル導体(コイルL1,L2)は直列接続してもよいし、並列接続してもよい。
【0054】
コイルアンテナの数が多くなるほど、平面導体11にて生じた渦電流をコイル導体で拾いやすくなるが、その分、アンテナ装置の大型化を招く。コイルアンテナの数は、アンテナ装置に要求される電気特性とサイズとのバランスを考慮して決定すればよい。
【0055】
《第8の実施形態》
図12(A)、図12(B)は第8の実施形態のアンテナ装置208A,208Bの平面図である。本発明は、平面導体11の形状が矩形に限定されるものではない。たとえば図12(A)のように平面導体11は円形状であってもよい。また、図12(B)のように平面導体11は六角形状であってもよい。図12(A)、図12(B)において、コイルアンテナ100A,100B,100C,100Dには、これまでに示したものと同様の構成のコイルアンテナが適用できる。
【0056】
《第9の実施形態》
図13(A)、図13(B)は第8の実施形態のアンテナ装置209A,209Bの平面図である。本発明は、平面導体11が連続した平板状に限定されるものではない。例えば、図13(A)のように、平面導体11の中央部に開口部Aが設けられていてもよいし、図13(B)のように、コイルアンテナ100A〜100Dのコイル開口部の近傍にスリット部SLが設けられていてもよい。このような構造により、磁束が開口部Aまたはスリット部SLを抜けるので、一方主面側だけでなく他方主面側への通信も可能となる。また、トータルの磁束も大きくなるので通信可能距離も大きくなる。
【0057】
《第10の実施形態》
図14(A)は第10の実施形態のアンテナ装置210の斜視図、図10(B)はその平面図、図10(C)はその正面図である。
【0058】
このアンテナ装置210の基材10はプリント配線板である。この基材10に平面導体11が形成されている。コイルアンテナ100は磁性体コア20とこの磁性体コア20に巻回されたコイル導体21とで構成されている。コイルアンテナ100はコイル導体のコイル開口部が平面導体11の縁端部に隣接(近接)するように配置されている。
【0059】
ここで、磁性体コア20の内側の端面から平面導体11の縁端までの距離をd2、コイル導体の巻回領域の内側の端部から平面導体11の縁端までの距離をd1、で表すと、
0<d2 であることが好ましい。d1が小さいと、またはd2が大きいと、コイル導体21と平面導体11との結合度が高くなり、つまり誘導電流が増大し、その結果、平面導体11からの磁束が大きくなる、という効果を奏する。
【0060】
図15(A)は前記アンテナ装置210のコイルアンテナ100のコイル導体に流れる電流、平面導体11に流れる電流、コイルアンテナ100による磁界、平面導体11による磁界のそれぞれの向きを示す斜視図である。また、図15(B)は平面導体11に流れる電流と、それにより発生する磁束の関係を示す図である。
【0061】
コイル導体21に流れる電流aは平面導体11に電流bを誘起する。その結果、コイルアンテナ100に矢印A方向の磁界が生じ、平面導体11に矢印B方向の磁界が生じる。通信相手側のコイルアンテナから磁束が入る場合は、この逆の現象が生じる。つまり、平面導体11はブースターアンテナとして機能し、コイルアンテナ100単体で生じる磁界よりも大きな磁界を発生させることができる。この例では図15(B)に示すように、0度方向と45度方向の指向性が強くなる。
【0062】
上記の現象は、平面導体11の法線方向から見たとき、コイル導体21に流れる電流と平面導体11の縁端を周回する電流の向きとが同方向になるため、このように大きな磁界を発生させることができるものと考えられる。
【0063】
図16(A)は前記アンテナ装置210を備える通信端末装置310の断面図、図16(B)はその平面透視図である。図15(A)に示したとおり、コイルアンテナ100による磁束と平面導体11による磁束が合成されて、アンテナ装置210の指向性は図16(A)に示す矢印方向を向くことになる。すなわち、アンテナ装置210のうち、コイルアンテナ100を端末筐体320の端部側に配置することで、アンテナ装置210は通信端末装置310の端末筐体320の裏面BS方向から先端FE方向にかけての斜め方向に高い利得が得られる。したがって、この通信端末装置310の手元部HPを把持し、先端部の下面側角を通信相手にかざすことにより、高利得のもとでの通信が可能となる。
【0064】
《第11の実施形態》
図17(A)は第11の実施形態のアンテナ装置211の平面図、図17(B)はその正面図である。このアンテナ装置211はプリント配線板である基材10の内部に二つの平面導体11A,11Bが形成されている。コイルアンテナ100は磁性体コア20とその磁性体コア20に巻回されたコイル導体21とで構成されている。コイル導体21の両端は平面導体11A,11Bに接続されず、直流的には絶縁状態にある。コイル導体21は図17(C)のような回路構成を有する。
【0065】
コイルアンテナ100のコイル導体21の二つのコイル開口部が平面導体11A,11Bの縁端部にそれぞれ隣接(近接)するように、コイルアンテナ100および平面導体11A,11Bが配置されている。
【0066】
この図17に示す構造だと、二つの平面導体11A,11Bの縁端に沿って流れる電流の方向は互いに同じ方向に周回することになる。そのため、各平面導体における磁界が強め合い、通信可能距離がさらに大きくなる。
【0067】
《第12の実施形態》
図18は第12の実施形態のアンテナ装置212の分解斜視図である。基材層10a,10b,10cが積層された積層基板による基材が構成されている。基材層10aには導体パターン21a、基材層10cには導体パターン21cがそれぞれ形成されている。基材層10a,10b,10cにはビア導体21vが形成されていて、導体パターン21a,21cおよびビア導体21vによって複数ターンの一つのコイル導体が構成されている。基材層10cの下面には、このコイル導体の両端が接続される入出力端子接続用電極22a,22bが形成されている。
【0068】
基材層10aには平面導体11が形成されている。この平面導体11は、その縁端部がコイル導体のコイル開口部に隣接(近接)配置されるように形成されている。このことによって、コイルアンテナと平面導体とが積層基板に一体化されたアンテナ装置が構成される。
【0069】
《第13の実施形態》
図19(A)は第13の実施形態のアンテナ装置213の斜視図、図19(B)はその断面図である。また、図20(A)はアンテナ装置213の分解斜視図、図20(B)はその断面図であり、電流と磁束の様子を示している。このアンテナ装置213は、チップ型コイルアンテナ113と平面導体11とで構成されている。コイルアンテナ113と平面導体11とは、はんだ等の導電性接合材を介して直接的に接続されている。
【0070】
このコイルアンテナ113は、磁性体層20a,20c,20bを積層してなる積層型の磁性体コアを素体としていて、磁性体層20aの表面に形成された導体パターン21a、磁性体層20a,20c,20bの側面に形成された導体パターン21cおよび磁性体層20bの表面に形成された導体パターン21bによってコイル導体が構成されている。
【0071】
磁性体層20bの裏面、すなわちコイルアンテナ113の実装面には、入出力端子12a,12bへ接続するための入出力端子接続用電極22a,22b、および帯状の結合用電極23がそれぞれ設けられている。コイル導体の一端は入出力端子接続用電極22aにビア導体を介して接続されていて、コイル導体の他端は入出力端子接続用電極22bにビア導体を介して接続されている。
【0072】
入出力端子接続用電極22a,22bは、はんだ等の導電性接合材を介して入出力端子12a,12bに接続・固定されている。結合用電極23は、平面導体11の一部である図中破線で示す接続エリアCAに、はんだ等の導電性接合材を介して、接続・固定されている。
入出力端子12a,12bは、給電回路の入出力端や他のコイルアンテナに接続される。
【0073】
このアンテナ装置213において、平面導体11に流れる渦電流(誘導電流)は、平面導体11と結合用電極23とが同電位であることから、導電性接合材を介して結合用電極23にも導かれる。そして、結合用電極23に流れた電流と逆方向の電流が磁性体層20bの表面に設けられた導体パターン21bに流れ、その結果、コイル導体に電流が流れる。特に、本実施形態によれば、結合用電極23とコイル導体とは磁性体層を介して対向しているため、結合用電極23を流れる電流によって生じた磁界は、磁性体層に閉じ込められ、コイル導体に効率良く導かれる。すなわち、結合用電極23とコイル導体との磁界結合度を高め、損失の少ないアンテナ装置を実現できる。
【0074】
《第14の実施形態》
図21(A)は第14の実施形態のアンテナ装置に備えられるコイルアンテナ114の分解斜視図、図21(B)は第14の実施形態のアンテナ装置214の断面図である。このアンテナ装置214は、チップ型コイルアンテナ114と平面導体11とで構成されている。コイルアンテナ114と平面導体11とは、はんだ等の導電性接合材を介して直接的に接続されている。
【0075】
このコイルアンテナ114は、磁性体層20a,20c,20b,20dを積層してなる積層型の磁性体コアを素体としていて、磁性体層20aの表面に形成された導体パターン21a、磁性体層20a,20c,20bの側面に形成された導体パターン21cおよび磁性体層20bの表面に形成された導体パターン21bによってコイル導体が構成されている。
【0076】
磁性体層20dの上面には結合用電極23が形成されている。磁性体層20dの裏面、すなわちコイルアンテナ114の実装面には、コイル導体の両端にビア導体を介して導通する入出力端子接続用電極22a,22b、および結合用電極23の両端にビア導体を介して導通する結合用電極接続用電極23a,23bがそれぞれ設けられている。
【0077】
入出力端子接続用電極22a,22bは、はんだ等の導電性接合材を介して基材10上の入出力端子に接続・固定される。結合用電極接続用電極23a,23bは、平面導体11の一部である接続エリアにはんだ等の導電性接合材を介して、接続・固定されている。コイルアンテナ114の下面にはアンダーフィル25が形成されている。
【0078】
このアンテナ装置214において、平面導体11に流れる渦電流(誘導電流)は導電性接合材を介して結合用電極23にも導かれる。そして、結合用電極23に流れた電流と逆方向の電流が磁性体層20bの表面に設けられた導体パターン21bに流れ、その結果、コイル導体に電流が流れる。特に、本実施形態によれば、結合用電極23とコイル導体とは磁性体層を介して対向しているため、結合用電極23を流れる電流によって生じた磁界は、磁性体層に閉じ込められ、コイル導体に効率良く導かれる。すなわち、結合用電極23とコイル導体との磁界結合度を高め、損失の少ないアンテナ装置を実現できる。
【0079】
《第15の実施形態》
図22は第15の実施形態の通信端末装置315の内部透視斜視図である。この通信端末装置315の端末筐体320にはメイン基板111と、サブ基板としての基材10が内蔵されている。基材10にアンテナ装置215が構成されている。アンテナ装置215は平面導体11と二つのコイルアンテナ113A,113Bを備えている。これらのコイルアンテナ113A,113Bは第13の実施形態で図19・図20に示したものである。図22の例では、平面導体11の二つの縁端部に配置されている。このアンテナ装置215は、バッテリーパック112とともに端末筐体320の裏面BS側に配置されている。
【0080】
アンテナ装置215の二つのコイルアンテナ113A,113Bは互いに対向配置されているので、コイルアンテナ113A,113Bによる磁束についての平面導体11の面方向(水平方向)の成分は打ち消される。そのため、アンテナ装置215の指向性は平面導体11の法線方向を向く特性となる。
【0081】
この通信端末装置315を図22のように通信相手側のコイルアンテナ400にかざすことにより、アンテナ装置215と通信相手側のコイルアンテナ400とが主に誘導磁界を介して結合し、所定の情報が送受される。
【0082】
《第16の実施形態》
図23(A)は第16の実施形態のアンテナ装置216の斜視図、図23(B)はそのアンテナ装置216を備えた通信端末装置316の内部透視斜視図である。
この通信端末装置316の端末筐体320にはメイン基板111と、サブ基板としての基材10が内蔵されている。基材10にはアンテナ装置216が構成されている。
【0083】
アンテナ装置216は平面導体11と一つのコイルアンテナ114を備えている。このコイルアンテナ114は第14の実施形態で図21に示したものである。このアンテナ装置216は、バッテリーパック112とともに端末筐体320の裏面BS側に配置されている。
【0084】
アンテナ装置216は、端末筐体320の先端FEより内部側の平面導体11の縁端部に配置されているので、コイルアンテナ114による磁束と平面導体11による磁束との合成により、アンテナ装置216の指向性は図に示す矢印方向を向くことになる。すなわち、アンテナ装置216は通信端末装置316の端末筐体320の裏面BS方向から先端FE方向に掛けての斜め方向に高い利得が得られる。したがって、この通信端末装置316の手元部を把持し、先端部の下面側角を通信相手側のコイルアンテナ400にかざすことにより、高利得のもとでの通信が可能となる。
【0085】
《第17の実施形態》
図24は第17の実施形態のアンテナ装置217の斜視図である。
【0086】
第17の実施形態のアンテナ装置217は、コイルアンテナ100と結合するブースターアンテナ(ブースターコイル)130を備えている。メイン基板(プリント配線板)111の内部には平面導体11が形成されている。コイルアンテナ100は、一方端面側のコイル開口部が平面導体11側に向く関係で、メイン基板111の上面に配置されている。コイルアンテナ100の構成は第1の実施形態で図2等に示したものと同じである。
【0087】
ブースターアンテナ130は、後に示すとおりコイルアンテナ100および通信相手側のコイルアンテナと結合してブースターアンテナとして作用する。コイルアンテナ100には給電回路が接続されていて、その給電回路はコイルアンテナ100、ブースターアンテナ130および通信相手側のコイルアンテナを介して通信される。
【0088】
図25(A)はアンテナ装置217が備えるブースターアンテナ130の分解斜視図、図25(B)はその等価回路図である。図25(C)はアンテナ装置217の等価回路図である。図25(A)に示すとおり、ブースターアンテナ130は、基材シート30、第1コイル導体31および第2コイル導体32で構成されている。コイル導体31とコイル導体32は矩形のスパイラル状にパターン化されている。コイル導体31の巻回方向とコイル導体32の巻回方向は逆(一方向からの透視では同方向)であり、両者は電磁界結合する。図25(B)において、インダクタL31はコイル導体31によるインダクタンスを記号で表したもの、インダクタL32はコイル導体32によるインダクタンスを記号で表したものである。キャパシタC1,C2はコイル導体31,32間に生じる容量を集中定数の記号で表したものである。
【0089】
このように、ブースターアンテナ130の2つのコイル導体31,32は、各コイル導体31,32に流れる誘導電流が同方向に伝搬するように巻回・配置されていて、容量を介して結合している。このブースターアンテナは、各コイル導体自身のインダクタンスと各コイル導体の容量結合によるキャパシタンスとを有し、これらインダクタンスおよびキャパシタンスにより共振回路が構成されている。この共振回路の共振周波数は通信に用いるキャリア周波数に実質的に相当していることが好ましい。そのことにより通信距離をのばすことができる。
【0090】
図25(C)において、インダクタL21はコイルアンテナ100のコイル導体によるインダクタンスを記号で表したもの、キャパシタCICはRFIC(高周波集積回路)の寄生容量など、コイルアンテナ100のコイル導体に繋がるキャパシタンスを記号で表したものである。インダクタL21はインダクタL31,L32と電磁界結合する。インダクタL21とキャパシタCICはLC共振する。このことでRFICはブースターアンテナ130による前記LC回路とインピーダンス整合状態で結合する。
【0091】
図26(A)はアンテナ装置217の平面図、図26(B)はアンテナ装置217を備えた通信端末装置の断面図である。
【0092】
コイルアンテナ100は、表面実装部品として端末筺体320内のメイン基板(プリント配線板)111に搭載されており、ブースターアンテナ130は、筺体320の内壁に接着剤層40を介して貼り付けられている。
【0093】
コイルアンテナ100は給電コイルとして機能し、コイルアンテナ100とブースターアンテナ130は磁界を介して結合する。より厳密に言うと、平面導体11にて生じた磁束(図15(A)中に示した矢印B方向に生じる磁束)がブースターアンテナ130のコイル導体31,32と鎖交するため、ブースターアンテナ130は平面導体11とも磁界結合する。すなわち、コイルアンテナ100、平面導体11、ブースターアンテナ130の三者が磁界を介して結合し、その結果、ロスとなる磁界成分が少なく、損失の小さなアンテナ装置を実現できる。
【0094】
なお、ブースターアンテナ130のコイル導体31,32の導体パターンの延びる方向とコイルアンテナ100のコイル導体21の延びる方向とが平行であり、且つコイルアンテナ100のコイル導体21が平面視でブースターアンテナ130のコイル導体31,32に重なるように配置されていることが好ましい。すなわち、ブースターアンテナ130のコイル導体31,32の巻回軸がコイルアンテナ100の巻回軸とほぼ直交するように配置されていることが好ましい。このことにより、図26(B)に破線で示すように、コイルアンテナ100のコイル導体21とブースターアンテナ130のコイル導体31,32とに磁束が鎖交する。また、ブースターアンテナ130のコイル導体31,32の一部とコイルアンテナ100のコイル導体21とが並走していることにより、電界でも結合する。すなわちコイルアンテナ100はブースターアンテナ130と直接でも電磁界結合する。
【0095】
このようにアンテナ装置(通信端末装置)は、さらにブースターアンテナ130を備えることが好ましい。ブースターアンテナ130を通信相手側アンテナに近い側に配置することにより、アンテナ装置の通信可能最大距離をさらにのばすことができる。通信信号がHF帯であれば、コイルアンテナ100とブースターアンテナ130とは主に磁界を介して結合するため、コンタクトピンやフレキシブルケーブルなどといった機構的な接続手段を用いる必要は無い。
【0096】
なお、ブースターアンテナのコイル導体はスパイラル状に限らずループ状であってもよい。
【0097】
《第18の実施形態》
図27(A)は第18の実施形態のアンテナ装置218の平面図、図27(B)はアンテナ装置218を備えた通信端末装置の断面図である。このアンテナ装置218では、ブースターアンテナ130は、そのコイル開口が平面導体11の端部よりも外側にあるように配置されている。その他の構成は第17の実施形態で示したものと同じである。
【0098】
このような位置関係であっても、平面導体11にて生じた磁束(図15(A)中に示した矢印B方向に生じる磁束)はブースターアンテナ130のコイル導体31,32と鎖交する。また、コイルアンテナ100とブースターアンテナ130との直接的な結合は第17の実施形態のアンテナ装置217と同様である。
【0099】
《第19の実施形態》
図28は第19の実施形態のアンテナ装置219を備える通信端末装置の上部筐体を外した状態での平面図である。この例では、平面導体11はメイン基板111に形成されているグランド導体である。コイルアンテナ100の構成は第1の実施形態で示したものと同じであり、ブースターアンテナ130の構成は第17の実施形態で示したものと同じである。
【0100】
平面導体11は平面的に筐体320内の大きな割合を占めている。コイルアンテナ100は、コイルアンテナ100のコイル開口が平面導体の長辺に沿うように配置されている。このように、平面導体11の形状が長辺と短辺とを有する矩形状である場合、コイル開口が長辺の一部に対面するようにコイルアンテナ100が配置されていることが好ましい。すなわち、平面導体11の中央部で磁束が入出力するような状態で通信を行う場合、平面導体11の中央からの距離が短い長辺側に磁界(磁束)が流れやすい。したがって、コイルアンテナ100のコイル開口が平面導体11の長辺側に対面するようにコイルアンテナ100が配置されることで、さらに安定した通信を行うことができる。
【0101】
《第20の実施形態》
図29(A)はアンテナ装置220の平面図、図29(B)はアンテナ装置220の断面図である。アンテナ装置220は4つのコイルアンテナ100A,100B,100C,100Dを備えている。これらのコイルアンテナ100A,100B,100C,100Dは、表面実装部品として端末筺体内のメイン基板(プリント配線板)111に搭載されている。ブースターアンテナ130は例えば筺体の内壁に貼付されている。ブースターアンテナ130の構成は第17の実施形態で示したとおりである。
【0102】
コイルアンテナ100A,100B,100C,100Dは矩形状に形成された平面導体11の各辺にそれぞれ設けられていて、コイルアンテナ100A,100B,100C,100Dは平面導体11を取り囲むように配置されている。コイルアンテナ100A,100B,100C,100Dのコイル導体は、起電力が加算される方向に直列に接続されて、1つの給電回路に接続されている。コイルアンテナ100A,100B,100C,100Dおよび平面導体11を通る磁束の経路は図5(B)に示したものと同じである。また、コイルアンテナ100A,100B,100C,100Dのコイル導体の接続関係は図5(A)に示したものと同じである。
【0103】
このように、複数のコイルアンテナを備えることにより、必要なインダクタンスを容易に確保できる。また、複数のコイルアンテナ100A,100B,100C,100Dを平面導体11の周囲に配置することによって、複数のコイルアンテナとブースターアンテナ130との結合が強くなってブースターアンテナ130の効率が高まり、低損失化が図れる。また、第1の実施形態で示したとおり、単一の平面導体と複数のコイルアンテナを備えることによる効果も奏する。
【0104】
《他の実施形態》
以上、本発明を具体的な実施例について説明したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではない。たとえば、平面導体の表面には、半導体素子やチップコンデンサ等、コイルアンテナ以外の素子が搭載されていてもよい。平面導体は配線基板におけるグランド電極であってもよいし、バッテリーパックの外装金属であってもよい。すなわち、平面導体は、専用の平面導体に限られるものではなく、他の金属体の一部(または全部)をアンテナ装置における平面導体として利用することもできる。
【0105】
また、コイルアンテナの磁性体コアは、フェライトセラミックのようなセラミック体であってもよいが、フェライト粉末を樹脂中に分散されたフェライト粉末入り樹脂層であってもよい。また、コイルアンテナは、磁性体コアの表面にコイル導体を巻回したものであるが、さらにその上に、コイル導体の保護や磁性体コアの保護等を目的として、絶縁層が設けられていてもよい。コイル導体は、磁性体コアに金属線を巻きつけたものであってもよいが、磁性体コアがフェライトセラミックであれば、このフェライトセラミックと同時焼成した銀等の金属焼結体であってもよい。また、磁性体コアの周囲にコイル導体を巻回してなるコイルアンテナにおいて、コイル導体は磁性体コアの最表面に形成されている必要はなく、コイル導体の一部または全部が磁性体コアの内側にあってもよい。
【0106】
また、アンテナ装置の端末筐体における配置位置は、端末筐体の表面側(表示部や入力操作部の設けられた面側)に配置されていてもよいし、バッテリーパックの上側に設けられていてもよい。また、コイルアンテナの配置位置は、平面導体に関して、通信相手側であることが好ましいが、コイルアンテナの配置面が平面導体に関して通信相手とは反対側であってもよい。特に、コイル導体の一部が平面導体に重なっていて、他部が重なっていないような場合であって、平面導体の厚みが十分に薄い場合、コイルアンテナが平面導体に関して通信相手とは反対側に配置されていても、このアンテナ装置と通信相手のアンテナ装置との間で通信を行うことが十分に可能である。
【0107】
また、このアンテナ装置は、通信端末装置の筐体内にサブ基板として配置されているだけでなく、メイン基板に配置されていてもよい。あるいは、通信端末装置に挿入されるカード型モジュールに組み込まれていてもよい。また、このアンテナ装置は、HF帯の通信システムに限定されるものではなく、UHF帯やSHF帯等、他の周波数帯に用いられるアンテナ装置にも利用可能であるし、RFIDシステムだけでなく、他の通信システムに用いることも可能である。また、RFIDシステムに用いる場合、リーダライタのアンテナ装置として用いてもよいし、RFIDタグのアンテナ装置として用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明のアンテナ装置は、たとえばHF帯のRFIDシステムに利用することができ、本発明の通信端末装置は、たとえばHF帯のRFIDシステムを備えた通信端末装置として有用である。
【符号の説明】
【0109】
BS…裏面
CA…接続エリア
FC…給電回路
FE…先端
HP…手元部
L1〜L4…コイル
SL…スリット部
W1〜W8…接続配線
10…基材
10a,10b,10c…基材層
11…平面導体
11A…第1平面導体領域
11B…第2平面導体領域
12a,12b…入出力端子
20…磁性体コア
20a,20c,20b,20d…磁性体層
21…コイル導体
21a,21b,21c…導体パターン
21V…ビア導体
22a,22b…入出力端子接続用電極
23…結合用電極
23a,23b…結合用電極接続用電極
24…結合用電極
30…基材シート
31…第1コイル導体
32…第2コイル導体
40…接着剤層
100…コイルアンテナ
100A…第1コイルアンテナ
100B…第2コイルアンテナ
100C…第3コイルアンテナ
100D…第4コイルアンテナ
106…チップ型コイルアンテナ
111…メイン基板
112…バッテリーパック
113…チップ型コイルアンテナ
113A,113B…コイルアンテナ
114…チップ型コイルアンテナ
130…ブースターアンテナ
201〜207…アンテナ装置
208A,208B…アンテナ装置
209A,209B…アンテナ装置
210〜220…アンテナ装置
301,310,315,316…通信端末装置
320…端末筐体
400…通信相手側のコイルアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回軸回りに巻回された形状のコイル導体が複数の基材層が積層された積層体に一体的に成形されたコイルアンテナと、
前記巻回軸に沿った面を有する平面導体と、を有し、
前記コイルアンテナは、前記コイル導体の巻回領域の少なくとも内部に配置された磁性体を備え、
前記コイルアンテナには、前記積層体の内部または底面に、前記平面導体に導通し、且つ前記コイルアンテナに対して主に磁界を介して結合する結合用電極が設けられている、アンテナ装置。
【請求項2】
前記結合用電極は、前記コイル導体の巻回軸に対して垂直方向に延びる帯状の電極である、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記コイルアンテナは、前記積層体の平面視で、前記結合用電極が前記平面導体の縁端部に重なるように配置されている、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記平面導体は前記積層体に一体形成されている、請求項1に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2013−13110(P2013−13110A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176620(P2012−176620)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【分割の表示】特願2012−509410(P2012−509410)の分割
【原出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】