アンテナ送受信システム
【課題】 セル伝搬環境に応じて基地局アンテナを複数アレー群に分割し、各アレー群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、アレー群間では異なるデータの並列送信(MIMO送信)を行うことによりシステム特性を向上する。
【解決手段】 基地局の送信機において、データ直並列変換器2は、送信データをM個の系列に直並列変換する。M個の変調器3-1〜3-Mは、各送信データを変調する。M個のビームフォーマ4-1〜4-Mは、各変調信号に重み付けを行って指向性ビームを形成する。送信アンテナ5-1-1〜5-M-N/Mは、ビームを絞り各変調信号を並列送信(MIMO送信)する。移動局の受信機では、受信アンテナ6-1〜6-Mは、送信データを受信する。MIMO復調器7は、並列送信データを復調する。
【解決手段】 基地局の送信機において、データ直並列変換器2は、送信データをM個の系列に直並列変換する。M個の変調器3-1〜3-Mは、各送信データを変調する。M個のビームフォーマ4-1〜4-Mは、各変調信号に重み付けを行って指向性ビームを形成する。送信アンテナ5-1-1〜5-M-N/Mは、ビームを絞り各変調信号を並列送信(MIMO送信)する。移動局の受信機では、受信アンテナ6-1〜6-Mは、送信データを受信する。MIMO復調器7は、並列送信データを復調する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は移動通信システムにおけるアンテナ送受信システムに関し、特に、各セル内におけるデータ伝送の高能率化、大容量化の実現が可能なアンテナ送受信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】将来の移動通信セルラーシステムでは、特に下り回線において高速パケットデータトラヒックの増加が予想される。このため高能率、大容量を実現する無線伝送方式の開発が急がれており、伝搬環境の良いユーザには優先的に多値変調方式を用いて高速データ伝送を実現する方法が検討されている。また、空間領域処理により受信信号の信号電力対干渉雑音電力比(SINR)を改善するアレーアンテナ技術の応用が期待されている。
【0003】移動通信システムでは、移動局(携帯端末)の小型軽量化に対する要求が厳しい。そこで、比較的複雑な信号処理を採用できる基地局に複数アンテナを設置し、移動局に向けてアンテナ指向性を絞る指向性ビーム送信制御が有効な手段と考えられる。指向性ビーム送信制御では希望信号の利得を稼ぐとともに他の移動局へ干渉を与えないことにより通信の高品質化、セル範囲の拡大効果が得られる。一方、移動機でも比較的少ない数(2〜4)のアンテナ装備は可能であり、空間ダイバーシチ受信による特性改善は効果的である。
【0004】図8は、従来のアンテナ送受信システムの構成例を示している。従来のアンテナ送受信システムは、基地局の送信機にN個(Nは2以上の整数)のアンテナと、移動局の受信機にM個(Mは2以上の整数)のアンテナを備え、基地局の送信側で指向性ビーム送信を行うとともに、移動局の受信側ではダイバーシチ受信を行う。基地局アンテナ数Nは移動局アンテナ数Mより十分に大きく設定でき、一般にNは6〜8、Mは2程度である。
【0005】図8の基地局送信機(a)は、符号器101、変調器102、ビームフォーマ103、送信アンテナ104-1〜104-Nを有し、符号器101は、データ信号を入力し、誤り訂正符号化を行う。変調器102は、符号化されたビットを一定の長さに区切り変調シンボルにマッピングする。
【0006】図9は、変調器102の出力であるディジタル変調信号の例を示しており、図9(a)は4相位相シフトキーイング信号(QPSK)の例で各変調シンボルは2ビットの符号化データから成り、図9(b)は16値振幅位相変調信号(16QAM)の例で各変調シンボルは4ビットの符号化データから成る。一般に各ビットは各変調シンボルが隣接シンボルに誤った場合にビット誤りが少なくなるようにマッピングされる(グレイコードマッピング)。
【0007】図10は、ビームフォーマ103の構成例を示しており、ディジタル変調信号に複素数の重み付けを行うことで指向性ビームを形成する。変調器102の出力は、送信アンテナ数N個に分岐され、それぞれに乗算器111-1〜111-Nでアンテナ重みを乗算する。送信アンテナ104-1〜104-Nはアンテナ重み付けされた信号をそれぞれ送信する。アンテナ重みの計算方法としては、マルチパスの到来角度推定に基づく方法、適応アルゴリズム制御による方法等がある。
【0008】図11は、送信アンテナの幾何学的配置例を示しており、N個の送信アレーアンテナの間隔は指向性形成が行えるように狭く設定されており、一般には0.5波長間隔が選ばれる。
【0009】図8の移動局受信機(b)は、受信アンテナ105-1〜105-M、ダイバーシチ復調器106、復号器107を有し、受信アンテナ105-1〜105-Mは、伝送路で独立なフェージングを受けた送信信号を受信する。移動局では一般に全方向からの散乱波を受信するため、基地局と比べ受信アンテナ105-1〜105-Mは比較的狭いアンテナ間隔の設置で独立なフェージング信号を受信できる。
【0010】図12は、ダイバーシチ復調器106の構成例を示している。ダイバーシチ復調器106は、各アンテナの受信信号を最大比合成するとともに各ビットを復調する。そのため、伝送路推定器121-1〜121-Mは、各アンテナの受信信号の振幅、位相を推定する。複素共役操作122-1〜122-Mは、伝送路推定値の複素共役を計算する。乗算器123-1〜123-Mは、伝送路推定値の複素共役を乗算し、受信信号の位相復調を行うとともに最大比合成を行うための振幅重み付けを行う。
【0011】合成器124は、重み付けされた各アンテナ信号を加算する。軟判定器125は、位相補正された各変調シンボルから各ビットの軟判定復調を行う。QPSK信号の場合には、合成器124の出力である複素信号のI軸(実軸)成分、Q軸(虚軸)成分をそのまま第1ビット、第2ビットの軟判定復調信号として利用できる。8PSK信号やQAM信号の場合には、軟判定復調信号を得るには工夫が必要となり、一般に最尤推定が用いられる。
【0012】復調ビット
【0013】
【数1】
の尤度関数
【0014】
【数2】
は次式で表わされる。
【0015】
【数3】
ここで、Apは伝送路推定に用いるパイロット信号のレベルである。rは合成器124の出力である。xは変調信号の各シンボル点である。hjは各アンテナ受信信号の伝送路推定値であり、Aprとxとのレベルを調整するために用いられる。
【0016】図13を用いて上記(1)式で示される軟判定復調動作を簡単に説明する。図13は16QAM信号の場合を示している。第1ビットの復調を行う場合、まずビット0が送られた場合の全ての変調シンボルとrとの距離の2乗を計算し、それらの最小値を求める。図1313では最小値は0001のシンボルである。次にビット1が送られた場合の全ての変調シンボルとrとの距離の2乗を計算し、それらの最小値を求める。図13では1001のシンボルである。それぞれの最小値の差が第1ビットの軟判定復調信号となる。図13の例では、その差が負の値になり0よりの復調結果となる(硬判定では0)。
【0017】第2ビットから第4ビットに対して同様の軟判定復調動作を行うことにより第2ビットから第4ビットの軟判定復調信号が求められる。復号器107は、この最尤推定法により求められた各ビットの軟判定復調信号を用いて誤り訂正復号を行う。誤り訂正方式として畳み込み符号化/ビタビ復号やターボ符号化/復号がよく用いられる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】図8に示す従来のアンテナ送受信システムは、高アンテナ高基地局を有する大セルシステムでは優れた性能を発揮する。そのようなシステムでは基地局と移動局の距離が離れているためマルチパスの到来角度差が小さく、指向性ビーム送信制御によりビームを狭く絞ることにより大きな利得が得られる。
【0019】図14にアンテナ数に対するビーム利得特性の一例を示す。パス到来角度がAの方向(0°)に集中している場合は、アンテナ数を増加し、ビームを狭くすることでピーク利得が増加し、6アンテナ送信では、3アンテナ送信と比べ3dB利得が向上する。しかし、低アンテナ高基地局を有する中小セルシステムでは、基地局と移動局の距離が近づくためパス到来角度差が広がる。
【0020】例えば、パスがAの方向(0°)だけでなく、B、Cの方向(±15°)から到来する場合を考えると、6アンテナ送信では、B、C方向の利得が約10dB低下し、これらのパスではほとんど移動局へ送信電力を伝達できない。このため総合の伝送効率は約40%に低下する。一方、3アンテナ送信では、A方向のパスで利得が3dB低下するもののB、C方向ではビーム利得の低下が小さく、総合では6アンテナ送信と同じく約40%の効率となる。
【0021】このようにパス到来角度差が広いセル伝搬環境では、アンテナ数を増やして送信指向性ビームを狭く絞っても伝送効率を向上させることができない。また、基地局と移動局の距離が近づくとアンテナ間の信号相関が低下しビーム形成自体が困難となりビーム利得が低下するという問題も重なる。
【0022】本発明の目的は、上記問題点に鑑み、特に、低アンテナ高基地局を有する中小セルシステムの伝送効率を向上させることが可能なアンテナ送受信システムを提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】複数の送信アンテナで互いに異なる複数のデータを並列伝送し、複数の受信アンテナでこの複数のデータを受信することにより、高速レート化を図る技術(MIMO;Multiple-Input Multiple-Out)が、H.Huang、M.Sandell and H.Viswanathan、“Achieving high data rate on the UMTS downlink shared channel using multiple antennas”3G Mobile communication Technologies、26-28 March2001、あるいは石井、吉田、後川“W-CDMA高速下りパケット伝送におけるBeamformingとMIMOの特性比較”2002年電子情報通信学会総合大会、B-5-111において、提案、検討されている。
【0024】本発明は、複数のアンテナを備える基地局アンテナをセル伝搬環境に応じて複数アレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、アレーアンテナ群間では上記MIMO技術を適用することにより、異なるデータの並列送信(MIMO送信)を行うように構成し、それによりシステムとして総合的にその特性を向上させることを特徴としている。
【0025】即ち、本発明のアンテナ送受信システムは、基地局が複数アンテナを備え、それらをセル伝搬環境に応じて複数アレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、アレーアンテナ群間では異なるデータの並列送信(MIMO送信)を行い、移動局は複数アンテナを備え、並列送信データの受信(MIMO受信)を行うことを特徴とする。
【0026】そのため、本発明のアンテナ送受信システムでは、基地局のアンテナ間隔は、アレーアンテナ群のアンテナ間相関ができるだけ高くなるように、かつアレーアンテナ群間のアンテナ相関ができるだけ低くなるように決定し、移動局のアンテナ間隔は、アンテナ間相関ができるだけ低くなるように決定する。
【0027】本発明のアンテナ送受信システムでは、アレーアンテナ群の分割数、あるいは各アレーアンテナ群の指向性ビーム幅は、基地局におけるマルチパスの到来角度差、あるいはアンテナ間相関値に応じて決定される。
【0028】本発明のアンテナ送受信システムでは、アレーアンテナ群の分割数、あるいは各アレーアンテナ群の指向性ビーム幅は、セル半径、あるいは基地局アンテナ高に応じて決定される。
【0029】また、本発明のアンテナ送受信システムは、第1の基地局群は複数アンテナを備え、全てのアレーアンテナを用いて指向性ビーム制御を行い、第2の基地局群は複数アンテナを備え、それらをセル伝搬環境に応じて複数アレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、アレーアンテナ群間では異なるデータの並列送信(MIMO送信)を行い、移動局は複数アンテナを備え、第1の基地局群と通信するときはダイバーシチ受信を行い、第2の基地局群と通信するときは並列送信データの受信(MIMO受信)を行うことを特徴とする。
【0030】本発明のアンテナ送受信システムでは、第1の基地局群のアンテナ間隔は、アンテナ間相関ができるだけ高くなるように決定し、第2の基地局群のアンテナ間隔は、アレーアンテナ群のアンテナ間相関ができるだけ高くなるように、アレーアンテナ群間のアンテナ相関ができるだけ低くなるように決定し、移動局のアンテナ間隔は、アンテナ間相関ができるだけ低くなるように決定する。
【0031】本発明のアンテナ送受信システムでは、第1の基地局群と第2の基地局群の区別、あるいは第2の基地局群におけるアレーアンテナ群の分割数、あるいは各アレーアンテナ群の指向性ビーム幅は、基地局におけるマルチパスの到来角度差、あるいはアンテナ間相関値に応じて決定される。
【0032】本発明のアンテナ送受信システムでは、第1の基地局群と第2の基地局群の区別、あるいは第2の基地局群におけるアレーアンテナ群の分割数、あるいは各アレーアンテナ群の指向性ビーム幅は、セル半径、あるいは基地局アンテナ高に応じて決定される。
【0033】本発明のアンテナ送受信システムでは、移動局はダイバーシチ受信機能とMIMO受信機能を有するソフトウェアを備え、基地局のアンテナ送信システムに応じてソフトウェアを切り替えてダイバーシチ受信、あるいは並列送信データの受信(MIMO受信)を実現する。
【0034】本発明のアンテナ送受信システムでは、基地局の送信機は、送信データをM個の系列に直並列変換するデータ直並列変換器と、各送信データを変調するM個の変調器と、各変調信号に重み付けを行って指向性ビームを形成するM個のビームフォーマと、ビームを絞り各変調信号を並列送信(MIMO送信)する送信アンテナとを有し、移動局の受信機は、送信データを受信する受信アンテナと、並列送信データを復調するMIMO復調器とを有する。
【0035】本発明のアンテナ送受信システムでは、第1の基地局群の送信機は、送信データを変調する変調器と、変調信号に重み付けを行って指向性ビームを形成するビームフォーマと、ビームを絞り変調信号を送信する送信アンテナとを有し、第2の基地局の送信機は、送信データをM個の系列に直並列変換するデータ直並列変換器と、各送信データを変調するM個の変調器と、各変調信号に重み付けを行い、指向性ビームを形成するM個のビームフォーマと、ビームを絞り各変調信号を並列送信(MIMO送信)する送信アンテナとを有し、移動局の受信機は、送信データを受信する受信アンテナと、第1の基地局群と通信するため送信データをダイバーシチ復調するダイバーシチ復調器と、第2の基地局群と通信するため並列送信データを復調するMIMO復調器とを有する。
【0036】また、本発明のアンテナ送受信システムでは、移動局の受信機は、ダイバーシチ復調機能とMIMO復調機能を有するソフトウェアを備え、基地局のアンテナ送信システムに応じて各ソフトウェアを切り替えてダイバーシチ復調、あるいはMIMO復調を実現する復調モード切り替え制御部を有する。
【0037】本発明のアンテナ送受信システムによれば、セル伝搬環境に応じて基地局アンテナを複数アレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、アレーアンテナ群間では異なるデータの並列送信(MIMO送信)を行っているので、より高能率、大容量のデータ伝送を実現することが可能となり、システム特性の向上を図ることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】図1は、本発明のアンテナ送受信システムの実施形態を示すブロック図である。
【0039】本実施形態のアンテナ送受信システムは、基地局の送信機にN個(Nは2以上の整数)のアンテナと、移動局の受信機にM個(Mは2以上の整数)のアンテナを備える。基地局アンテナ数Nは移動局アンテナ数Mより十分に大きく設定でき、一般にNは6〜8、Mは2〜4程度である。
【0040】基地局はアンテナをセル伝搬環境に応じて複数アレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、アレーアンテナ群間ではデータの並列送信(MIMO送信)を行う。受信側ではMIMOに対応した受信を行う。MIMO送受信では、従来の1系列データ送信と比べ送信アンテナのアレーアンテナ群の数(M)倍のデータ量を送れるため、同一伝送レート条件では適用する変調方式の次数(多値シンボル数)を低減できる。また、所要ビットエネルギー対雑音電力密度比(Eb/No)は低次変調ほど少ないため、1系列送信と比べ特性改善が得られる。
【0041】基地局アンテナのアレーアンテナ群の分割数、あるいは各アレーアンテナ群の指向性ビーム幅は、基地局におけるマルチパスの到来角度差、あるいはアンテナ間相関値に応じて決定する。マルチパスの到来角度差が大きい場合、あるいはアンテナ間相関が小さい場合は、ビームを絞っても利得が得られないためアレーアンテナ群の分割数を大きくし、各アレーアンテナのビーム幅を広くするとともにデータの並列送信(MIMO送信)を行うことでMIMOによる利得を得る。また、マルチパスの到来角度差やアンテナ間相関は、セル半径や基地局アンテナ高に依存するためアレーアンテナ群の分割数、あるいは各アレーアンテナ群の指向性ビーム幅をそれらに応じて決定することもできる。
【0042】図1において、基地局送信機(a)は、符号器1、データ直並列変換器2、変調器3-1〜3-M、ビームフォーマ4-1〜4-M、送信アンテナ5-1-1〜5-M-N/Mを有し、符号器1は、データ信号を入力し、誤り訂正符号化を行う。データ直並列変換機2は、符号化された1系列のデータをM個の系列に順次分配する。変調器3-1〜3-Mは、各系列のビットを一定の長さに区切り変調シンボルにマッピングする。
【0043】変調器3-1〜3-Mの出力であるディジタル変調信号は、例えば図9(a)の4相位相シフトキーイング信号(QPSK)を用いた場合、各変調シンボルは2ビットの符号化データとなり、図9(b)の16値振幅位相変調信号(16QAM)を用いた場合、各変調シンボルは4ビットの符号化データとなる。一般に各ビットは各変調シンボルが隣接シンボルに誤った場合にビット誤りが少なくなるようにマッピングされる(グレイコードマッピング)。
【0044】ビームフォーマ4-1〜4-Mは、変調器3-1〜3-Mの出力であるM個のディジタル変調信号を個別に入力し、該入力したディジタル変調信号をN/Mに分配してそれぞれ複素数の重み付けを行うことで指向性ビームを形成する。
【0045】図2は、ビームフォーマ4-1の構成例を示している。変調器3-1の出力は、ビームフォーマ4-1においてアレーアンテナ群内の送信アンテナ数N/M個に分岐され、それぞれに乗算器21-1-1〜21-1-N/Mでアンテナ重みを乗算する。アレーアンテナ群内のN/M個の送信アンテナ5-1-1〜5-M-N/Mはアンテナ重み付けされたそれぞれの信号を送信する。アンテナ重み付けの計算方法としては、マルチパスの到来角度推定に基づく方法、適応アルゴリズム制御による方法等が知られており、本実施形態ではそれらの適宜の方法を採用することができる。
【0046】図3は、本実施形態における送信アンテナの幾何学的配置例を示しており、N個のアンテナは、M個のアレーアンテナ群に分割され、各アレーアンテナ群間の間隔はフェージングが独立になるように広く設定される。一般には10波長間隔以上が選ばれる。また、各アレーアンテナ群内のN/M個の送信アンテナの間隔は指向性形成が行えるように狭く設定され、一般には0.5波長間隔が選ばれる。図3は、送信アンテナを2群のアレーアンテナ群に分割した例(M=2)を示している。相関の低い2群のアレーアンテナ群を形成するために両偏波アレーを用いてもよい。
【0047】一方、本実施形態(図1)における移動局側の受信機(b)は、M個の受信アンテナ6-1〜6-M、MIMO復調器7、復号器8を有しており、受信アンテナ6-1〜6-Mは、伝送路で独立なフェージングを受けた並列送信信号を受信する。移動局では一般に全方向からの散乱波を受信するため、基地局と比べ受信アンテナ6-1〜6-Mは比較的狭いアンテナ間隔の設置で独立なフェージングを受信できる。相関の低い2ブランチを形成するために両偏波アンテナを用いてもよい。
【0048】図4は、送信アンテナのアレーアンテナ群の分割数を2、受信アンテナ数を2とした場合のMIMO伝送路を模式的に示したものである。各送受ブランチ間の伝送路は2×2の独立なフェージングを受けると考えられる。ここで伝送路行列Hを、
【0049】
【数4】
送信側の各アレーアンテナ群の送信信号をx=(x1x2)T(Tは転置を示す)で表わすと、受信側の各アンテナの受信信号r=(r1r2)Tは次式で示される。
【0050】r=Hx+vここで、vは熱雑音である。
【0051】MIMO復調器で7は、各アンテナの受信信号を用いて、送信機側の各アレーアンテナ群から送信された並列送信データの各ビットを復調する。MIMO復調方法としては、大別して干渉キャンセル受信と最尤推定受信がある。ここでは特性に優れた最尤推定受信について説明する。
【0052】MIMOの最尤推定受信における復調ビット
【0053】
【数5】
の尤度関数
【0054】
【数6】
は次式で表わされる。
【0055】
【数7】
MIMOの最尤推定受信は多値変調信号の最尤推定受信と相似しており、異なるアンテナから送信され伝搬路上で多重された信号を受信側である種の多値変調信号とみなし、並列送信データのビット毎に尤度を計算する。尤度計算では受信アンテナ毎の尤度を合計して判定することで空間ダイバーシチ効果と他アンテナ干渉のキャンセル効果が得られる。
【0056】図5は、本実施形態のMIMO復調器7として、最尤推定手段を用いた場合の概略構成例を示しており、各受信アンテナ6-1〜6-Mにより受信された信号は、それぞれ個別に尤度計算部70-1〜70-Mで、送信データのビット毎の尤度計算が行われ、合成器71で送信データのビット毎に尤度を加算し、尤度比較部72で最小値を選択して軟判定復調信号とする。この式(2)による尤度計算等を行うMIMO復調動作は、MIMO復調機能を実行するソフトウェアによって実現することができる。
【0057】なお、実施例では、送信側のアレーアンテナ群の数(M)および受信側のアンテナの数(M)が同数に設定されている場合について説明したが、両者の数は必ずしも等しく設定する必要はない。一般に、受信側のアンテナの数を多くするほど、空間ダイバーシチ効果と他アンテナ干渉のキャンセル効果は大きくなる。
【0058】復号器8は、各ビットの軟判定復調信号を用いて誤り訂正復号を行う。誤り訂正方式として畳み込み符号化/ビタビ復号やターボ符号化/復号がよく用いられる。本実施例では、送信機に符号器1、受信機に復号器8を有し、軟判定復調信号を用いた誤り訂正制御を行う構成を示しているが、これらは本発明の必須構成要素ではない。誤り訂正制御を行わない場合も本発明に含まれる。
【0059】図6は、本発明の第2の実施形態における受信機の構成を示すブロック図であり、図7は、第2の実施形態が適用されるセルシステムの例を示している。
【0060】本実施形態の場合、図7に示される低アンテナ高基地局33を有する中小セルシステム31では基地局33の複数の送信アンテナを複数のアレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、アレーアンテナ群間では異なるデータの並列送信することにより、指向性ビーム送信とMIMO送信を併用し、移動局35が中小セルシステム31内に位置しているときには移動局35はMIMO復調を行う。
【0061】一方、高アンテナ高基地局34を有する大セルシステム32では従来のダイバーシチシステムの方が優れているので指向性ビーム送信のみを行う構成となっており、移動局35が大セルシステム32内に位置しているときには、移動局35はダイバーシチ受信を行う必要がある。
【0062】各基地局ではシステム敷設時にセル伝搬環境に応じて指向性ビーム送信かMIMO送信のいずれかを選択すればよいが、移動局は両者の基地局システムに接続し、通信を行う必要がある。その際、移動局が基地局アンテナ送信システムに応じて複数の端末を携行するのは不経済である。そこで本実施形態では、受信機はダイバーシチ復調機能とMIMO復調機能を実現するソフトウェアを備え、基地局アンテナ送信システムに応じてそれらのソフトウェアを切り替えてダイバーシチ復調、あるいはMIMO復調を実現するデュアルモード復調器を備える。
【0063】そのため本実施形態の受信機は、受信アンテナ6-1〜6-M、デュアルモード復調器9、復号器8及び復調モード切り替え制御部12を有している。
【0064】受信アンテナ6-1〜6-Mは、指向性ビーム送信信号、あるいはMIMO送信信号を受信する。デュアルモード復調器9は、基地局アンテナ送信システムに応じて指向性ビーム送信時はダイバーシチ復調器10の機能を実現し、MIMO送信時はMIMO復調器11の機能を実現するように復調モード切り替え制御部12がソフトウェアを切り替えて実行する。復号器8は、ダイバーシチ復調器10、あるいはMIMO復調器11の出力である各ビットの軟判定復調信号を用いて誤り訂正復号を行う。
【0065】
【発明の効果】本発明では、セル伝搬環境に応じて基地局アンテナを複数アレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、アレーアンテナ群間では異なるデータの並列送信(MIMO送信)を行っているので、より高能率、大容量のデータ伝送を実現することが可能となり、システム特性の向上を図ることができる。
【0066】また、本発明では、セル伝搬環境に応じて指向性ビーム送信とMIMO送信を行う基地局が混在するシステムにおいて、移動局は1つの端末でダイバーシチ復調機能とMIMO復調機能を有するソフトウェアを切り替えて異なるアンテナ送信システムの基地局と通信することができ、セル伝搬環境に柔軟に対応した送受信システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアンテナ送受信システムの第1実施形態を示すブロック図である。
【図2】本実施形態におけるビームフォーマの構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態における送信アンテナアレー群およびその指向性パターンの例を示す図である。
【図4】MIMOフェージング伝送路を模式的に示す図である。
【図5】本実施形態のMIMO復調器7として、最尤推定手段を用いた場合の構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明のアンテナ送受信システムの第2実施形態を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施形態が適用される、大セルシステムと中小セルシステムが混在するセルシステムの例を示す図である。
【図8】従来のアンテナ送受信システムの構成を示す図である。
【図9】多値変調信号のシンボル点を示す図である。
【図10】従来例におけるビームフォーマの構成を示すブロック図である。
【図11】従来例における直線アレーアンテナを示す図である。
【図12】従来例におけるダイバーシチ復調器の構成を示す図である。
【図13】軟判定器の動作を示す図である。
【図14】指向性ビーム送信制御におけるビーム利得を示す図である。
【符号の説明】
1、101 符号器
2 データ直並列変換器
3-1〜3-M、102 変調器
4-1〜4-M、103 ビームフォーマ
5-1-1〜5-M-N/M サブアレー送信アンテナ
6-1〜6-M、105-1〜105-M ダイバーシチ受信アンテナ
7、11 MIMO復調器
8、107 復号器
9 デュアルモード復調器
10、106 ダイバーシチ復調器
12 モード切り替え制御部
21-1-1〜21-N-N/M、111-1〜111-N、123-1〜123-M 乗算器
31 中小セルシステム
32 大セルシステム
33 低アンテナ高基地局
34 高アンテナ高基地局
35 移動局
70-1〜70-M 尤度計算部
71、124 合成器
72 尤度比較部
104-1〜104-N 直線アレー送信アンテナ
121-1〜121-M 伝送路推定器
122-1〜122-M 複素共役操作
125 軟判定器
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は移動通信システムにおけるアンテナ送受信システムに関し、特に、各セル内におけるデータ伝送の高能率化、大容量化の実現が可能なアンテナ送受信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】将来の移動通信セルラーシステムでは、特に下り回線において高速パケットデータトラヒックの増加が予想される。このため高能率、大容量を実現する無線伝送方式の開発が急がれており、伝搬環境の良いユーザには優先的に多値変調方式を用いて高速データ伝送を実現する方法が検討されている。また、空間領域処理により受信信号の信号電力対干渉雑音電力比(SINR)を改善するアレーアンテナ技術の応用が期待されている。
【0003】移動通信システムでは、移動局(携帯端末)の小型軽量化に対する要求が厳しい。そこで、比較的複雑な信号処理を採用できる基地局に複数アンテナを設置し、移動局に向けてアンテナ指向性を絞る指向性ビーム送信制御が有効な手段と考えられる。指向性ビーム送信制御では希望信号の利得を稼ぐとともに他の移動局へ干渉を与えないことにより通信の高品質化、セル範囲の拡大効果が得られる。一方、移動機でも比較的少ない数(2〜4)のアンテナ装備は可能であり、空間ダイバーシチ受信による特性改善は効果的である。
【0004】図8は、従来のアンテナ送受信システムの構成例を示している。従来のアンテナ送受信システムは、基地局の送信機にN個(Nは2以上の整数)のアンテナと、移動局の受信機にM個(Mは2以上の整数)のアンテナを備え、基地局の送信側で指向性ビーム送信を行うとともに、移動局の受信側ではダイバーシチ受信を行う。基地局アンテナ数Nは移動局アンテナ数Mより十分に大きく設定でき、一般にNは6〜8、Mは2程度である。
【0005】図8の基地局送信機(a)は、符号器101、変調器102、ビームフォーマ103、送信アンテナ104-1〜104-Nを有し、符号器101は、データ信号を入力し、誤り訂正符号化を行う。変調器102は、符号化されたビットを一定の長さに区切り変調シンボルにマッピングする。
【0006】図9は、変調器102の出力であるディジタル変調信号の例を示しており、図9(a)は4相位相シフトキーイング信号(QPSK)の例で各変調シンボルは2ビットの符号化データから成り、図9(b)は16値振幅位相変調信号(16QAM)の例で各変調シンボルは4ビットの符号化データから成る。一般に各ビットは各変調シンボルが隣接シンボルに誤った場合にビット誤りが少なくなるようにマッピングされる(グレイコードマッピング)。
【0007】図10は、ビームフォーマ103の構成例を示しており、ディジタル変調信号に複素数の重み付けを行うことで指向性ビームを形成する。変調器102の出力は、送信アンテナ数N個に分岐され、それぞれに乗算器111-1〜111-Nでアンテナ重みを乗算する。送信アンテナ104-1〜104-Nはアンテナ重み付けされた信号をそれぞれ送信する。アンテナ重みの計算方法としては、マルチパスの到来角度推定に基づく方法、適応アルゴリズム制御による方法等がある。
【0008】図11は、送信アンテナの幾何学的配置例を示しており、N個の送信アレーアンテナの間隔は指向性形成が行えるように狭く設定されており、一般には0.5波長間隔が選ばれる。
【0009】図8の移動局受信機(b)は、受信アンテナ105-1〜105-M、ダイバーシチ復調器106、復号器107を有し、受信アンテナ105-1〜105-Mは、伝送路で独立なフェージングを受けた送信信号を受信する。移動局では一般に全方向からの散乱波を受信するため、基地局と比べ受信アンテナ105-1〜105-Mは比較的狭いアンテナ間隔の設置で独立なフェージング信号を受信できる。
【0010】図12は、ダイバーシチ復調器106の構成例を示している。ダイバーシチ復調器106は、各アンテナの受信信号を最大比合成するとともに各ビットを復調する。そのため、伝送路推定器121-1〜121-Mは、各アンテナの受信信号の振幅、位相を推定する。複素共役操作122-1〜122-Mは、伝送路推定値の複素共役を計算する。乗算器123-1〜123-Mは、伝送路推定値の複素共役を乗算し、受信信号の位相復調を行うとともに最大比合成を行うための振幅重み付けを行う。
【0011】合成器124は、重み付けされた各アンテナ信号を加算する。軟判定器125は、位相補正された各変調シンボルから各ビットの軟判定復調を行う。QPSK信号の場合には、合成器124の出力である複素信号のI軸(実軸)成分、Q軸(虚軸)成分をそのまま第1ビット、第2ビットの軟判定復調信号として利用できる。8PSK信号やQAM信号の場合には、軟判定復調信号を得るには工夫が必要となり、一般に最尤推定が用いられる。
【0012】復調ビット
【0013】
【数1】
の尤度関数
【0014】
【数2】
は次式で表わされる。
【0015】
【数3】
ここで、Apは伝送路推定に用いるパイロット信号のレベルである。rは合成器124の出力である。xは変調信号の各シンボル点である。hjは各アンテナ受信信号の伝送路推定値であり、Aprとxとのレベルを調整するために用いられる。
【0016】図13を用いて上記(1)式で示される軟判定復調動作を簡単に説明する。図13は16QAM信号の場合を示している。第1ビットの復調を行う場合、まずビット0が送られた場合の全ての変調シンボルとrとの距離の2乗を計算し、それらの最小値を求める。図1313では最小値は0001のシンボルである。次にビット1が送られた場合の全ての変調シンボルとrとの距離の2乗を計算し、それらの最小値を求める。図13では1001のシンボルである。それぞれの最小値の差が第1ビットの軟判定復調信号となる。図13の例では、その差が負の値になり0よりの復調結果となる(硬判定では0)。
【0017】第2ビットから第4ビットに対して同様の軟判定復調動作を行うことにより第2ビットから第4ビットの軟判定復調信号が求められる。復号器107は、この最尤推定法により求められた各ビットの軟判定復調信号を用いて誤り訂正復号を行う。誤り訂正方式として畳み込み符号化/ビタビ復号やターボ符号化/復号がよく用いられる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】図8に示す従来のアンテナ送受信システムは、高アンテナ高基地局を有する大セルシステムでは優れた性能を発揮する。そのようなシステムでは基地局と移動局の距離が離れているためマルチパスの到来角度差が小さく、指向性ビーム送信制御によりビームを狭く絞ることにより大きな利得が得られる。
【0019】図14にアンテナ数に対するビーム利得特性の一例を示す。パス到来角度がAの方向(0°)に集中している場合は、アンテナ数を増加し、ビームを狭くすることでピーク利得が増加し、6アンテナ送信では、3アンテナ送信と比べ3dB利得が向上する。しかし、低アンテナ高基地局を有する中小セルシステムでは、基地局と移動局の距離が近づくためパス到来角度差が広がる。
【0020】例えば、パスがAの方向(0°)だけでなく、B、Cの方向(±15°)から到来する場合を考えると、6アンテナ送信では、B、C方向の利得が約10dB低下し、これらのパスではほとんど移動局へ送信電力を伝達できない。このため総合の伝送効率は約40%に低下する。一方、3アンテナ送信では、A方向のパスで利得が3dB低下するもののB、C方向ではビーム利得の低下が小さく、総合では6アンテナ送信と同じく約40%の効率となる。
【0021】このようにパス到来角度差が広いセル伝搬環境では、アンテナ数を増やして送信指向性ビームを狭く絞っても伝送効率を向上させることができない。また、基地局と移動局の距離が近づくとアンテナ間の信号相関が低下しビーム形成自体が困難となりビーム利得が低下するという問題も重なる。
【0022】本発明の目的は、上記問題点に鑑み、特に、低アンテナ高基地局を有する中小セルシステムの伝送効率を向上させることが可能なアンテナ送受信システムを提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】複数の送信アンテナで互いに異なる複数のデータを並列伝送し、複数の受信アンテナでこの複数のデータを受信することにより、高速レート化を図る技術(MIMO;Multiple-Input Multiple-Out)が、H.Huang、M.Sandell and H.Viswanathan、“Achieving high data rate on the UMTS downlink shared channel using multiple antennas”3G Mobile communication Technologies、26-28 March2001、あるいは石井、吉田、後川“W-CDMA高速下りパケット伝送におけるBeamformingとMIMOの特性比較”2002年電子情報通信学会総合大会、B-5-111において、提案、検討されている。
【0024】本発明は、複数のアンテナを備える基地局アンテナをセル伝搬環境に応じて複数アレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、アレーアンテナ群間では上記MIMO技術を適用することにより、異なるデータの並列送信(MIMO送信)を行うように構成し、それによりシステムとして総合的にその特性を向上させることを特徴としている。
【0025】即ち、本発明のアンテナ送受信システムは、基地局が複数アンテナを備え、それらをセル伝搬環境に応じて複数アレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、アレーアンテナ群間では異なるデータの並列送信(MIMO送信)を行い、移動局は複数アンテナを備え、並列送信データの受信(MIMO受信)を行うことを特徴とする。
【0026】そのため、本発明のアンテナ送受信システムでは、基地局のアンテナ間隔は、アレーアンテナ群のアンテナ間相関ができるだけ高くなるように、かつアレーアンテナ群間のアンテナ相関ができるだけ低くなるように決定し、移動局のアンテナ間隔は、アンテナ間相関ができるだけ低くなるように決定する。
【0027】本発明のアンテナ送受信システムでは、アレーアンテナ群の分割数、あるいは各アレーアンテナ群の指向性ビーム幅は、基地局におけるマルチパスの到来角度差、あるいはアンテナ間相関値に応じて決定される。
【0028】本発明のアンテナ送受信システムでは、アレーアンテナ群の分割数、あるいは各アレーアンテナ群の指向性ビーム幅は、セル半径、あるいは基地局アンテナ高に応じて決定される。
【0029】また、本発明のアンテナ送受信システムは、第1の基地局群は複数アンテナを備え、全てのアレーアンテナを用いて指向性ビーム制御を行い、第2の基地局群は複数アンテナを備え、それらをセル伝搬環境に応じて複数アレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、アレーアンテナ群間では異なるデータの並列送信(MIMO送信)を行い、移動局は複数アンテナを備え、第1の基地局群と通信するときはダイバーシチ受信を行い、第2の基地局群と通信するときは並列送信データの受信(MIMO受信)を行うことを特徴とする。
【0030】本発明のアンテナ送受信システムでは、第1の基地局群のアンテナ間隔は、アンテナ間相関ができるだけ高くなるように決定し、第2の基地局群のアンテナ間隔は、アレーアンテナ群のアンテナ間相関ができるだけ高くなるように、アレーアンテナ群間のアンテナ相関ができるだけ低くなるように決定し、移動局のアンテナ間隔は、アンテナ間相関ができるだけ低くなるように決定する。
【0031】本発明のアンテナ送受信システムでは、第1の基地局群と第2の基地局群の区別、あるいは第2の基地局群におけるアレーアンテナ群の分割数、あるいは各アレーアンテナ群の指向性ビーム幅は、基地局におけるマルチパスの到来角度差、あるいはアンテナ間相関値に応じて決定される。
【0032】本発明のアンテナ送受信システムでは、第1の基地局群と第2の基地局群の区別、あるいは第2の基地局群におけるアレーアンテナ群の分割数、あるいは各アレーアンテナ群の指向性ビーム幅は、セル半径、あるいは基地局アンテナ高に応じて決定される。
【0033】本発明のアンテナ送受信システムでは、移動局はダイバーシチ受信機能とMIMO受信機能を有するソフトウェアを備え、基地局のアンテナ送信システムに応じてソフトウェアを切り替えてダイバーシチ受信、あるいは並列送信データの受信(MIMO受信)を実現する。
【0034】本発明のアンテナ送受信システムでは、基地局の送信機は、送信データをM個の系列に直並列変換するデータ直並列変換器と、各送信データを変調するM個の変調器と、各変調信号に重み付けを行って指向性ビームを形成するM個のビームフォーマと、ビームを絞り各変調信号を並列送信(MIMO送信)する送信アンテナとを有し、移動局の受信機は、送信データを受信する受信アンテナと、並列送信データを復調するMIMO復調器とを有する。
【0035】本発明のアンテナ送受信システムでは、第1の基地局群の送信機は、送信データを変調する変調器と、変調信号に重み付けを行って指向性ビームを形成するビームフォーマと、ビームを絞り変調信号を送信する送信アンテナとを有し、第2の基地局の送信機は、送信データをM個の系列に直並列変換するデータ直並列変換器と、各送信データを変調するM個の変調器と、各変調信号に重み付けを行い、指向性ビームを形成するM個のビームフォーマと、ビームを絞り各変調信号を並列送信(MIMO送信)する送信アンテナとを有し、移動局の受信機は、送信データを受信する受信アンテナと、第1の基地局群と通信するため送信データをダイバーシチ復調するダイバーシチ復調器と、第2の基地局群と通信するため並列送信データを復調するMIMO復調器とを有する。
【0036】また、本発明のアンテナ送受信システムでは、移動局の受信機は、ダイバーシチ復調機能とMIMO復調機能を有するソフトウェアを備え、基地局のアンテナ送信システムに応じて各ソフトウェアを切り替えてダイバーシチ復調、あるいはMIMO復調を実現する復調モード切り替え制御部を有する。
【0037】本発明のアンテナ送受信システムによれば、セル伝搬環境に応じて基地局アンテナを複数アレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、アレーアンテナ群間では異なるデータの並列送信(MIMO送信)を行っているので、より高能率、大容量のデータ伝送を実現することが可能となり、システム特性の向上を図ることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】図1は、本発明のアンテナ送受信システムの実施形態を示すブロック図である。
【0039】本実施形態のアンテナ送受信システムは、基地局の送信機にN個(Nは2以上の整数)のアンテナと、移動局の受信機にM個(Mは2以上の整数)のアンテナを備える。基地局アンテナ数Nは移動局アンテナ数Mより十分に大きく設定でき、一般にNは6〜8、Mは2〜4程度である。
【0040】基地局はアンテナをセル伝搬環境に応じて複数アレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、アレーアンテナ群間ではデータの並列送信(MIMO送信)を行う。受信側ではMIMOに対応した受信を行う。MIMO送受信では、従来の1系列データ送信と比べ送信アンテナのアレーアンテナ群の数(M)倍のデータ量を送れるため、同一伝送レート条件では適用する変調方式の次数(多値シンボル数)を低減できる。また、所要ビットエネルギー対雑音電力密度比(Eb/No)は低次変調ほど少ないため、1系列送信と比べ特性改善が得られる。
【0041】基地局アンテナのアレーアンテナ群の分割数、あるいは各アレーアンテナ群の指向性ビーム幅は、基地局におけるマルチパスの到来角度差、あるいはアンテナ間相関値に応じて決定する。マルチパスの到来角度差が大きい場合、あるいはアンテナ間相関が小さい場合は、ビームを絞っても利得が得られないためアレーアンテナ群の分割数を大きくし、各アレーアンテナのビーム幅を広くするとともにデータの並列送信(MIMO送信)を行うことでMIMOによる利得を得る。また、マルチパスの到来角度差やアンテナ間相関は、セル半径や基地局アンテナ高に依存するためアレーアンテナ群の分割数、あるいは各アレーアンテナ群の指向性ビーム幅をそれらに応じて決定することもできる。
【0042】図1において、基地局送信機(a)は、符号器1、データ直並列変換器2、変調器3-1〜3-M、ビームフォーマ4-1〜4-M、送信アンテナ5-1-1〜5-M-N/Mを有し、符号器1は、データ信号を入力し、誤り訂正符号化を行う。データ直並列変換機2は、符号化された1系列のデータをM個の系列に順次分配する。変調器3-1〜3-Mは、各系列のビットを一定の長さに区切り変調シンボルにマッピングする。
【0043】変調器3-1〜3-Mの出力であるディジタル変調信号は、例えば図9(a)の4相位相シフトキーイング信号(QPSK)を用いた場合、各変調シンボルは2ビットの符号化データとなり、図9(b)の16値振幅位相変調信号(16QAM)を用いた場合、各変調シンボルは4ビットの符号化データとなる。一般に各ビットは各変調シンボルが隣接シンボルに誤った場合にビット誤りが少なくなるようにマッピングされる(グレイコードマッピング)。
【0044】ビームフォーマ4-1〜4-Mは、変調器3-1〜3-Mの出力であるM個のディジタル変調信号を個別に入力し、該入力したディジタル変調信号をN/Mに分配してそれぞれ複素数の重み付けを行うことで指向性ビームを形成する。
【0045】図2は、ビームフォーマ4-1の構成例を示している。変調器3-1の出力は、ビームフォーマ4-1においてアレーアンテナ群内の送信アンテナ数N/M個に分岐され、それぞれに乗算器21-1-1〜21-1-N/Mでアンテナ重みを乗算する。アレーアンテナ群内のN/M個の送信アンテナ5-1-1〜5-M-N/Mはアンテナ重み付けされたそれぞれの信号を送信する。アンテナ重み付けの計算方法としては、マルチパスの到来角度推定に基づく方法、適応アルゴリズム制御による方法等が知られており、本実施形態ではそれらの適宜の方法を採用することができる。
【0046】図3は、本実施形態における送信アンテナの幾何学的配置例を示しており、N個のアンテナは、M個のアレーアンテナ群に分割され、各アレーアンテナ群間の間隔はフェージングが独立になるように広く設定される。一般には10波長間隔以上が選ばれる。また、各アレーアンテナ群内のN/M個の送信アンテナの間隔は指向性形成が行えるように狭く設定され、一般には0.5波長間隔が選ばれる。図3は、送信アンテナを2群のアレーアンテナ群に分割した例(M=2)を示している。相関の低い2群のアレーアンテナ群を形成するために両偏波アレーを用いてもよい。
【0047】一方、本実施形態(図1)における移動局側の受信機(b)は、M個の受信アンテナ6-1〜6-M、MIMO復調器7、復号器8を有しており、受信アンテナ6-1〜6-Mは、伝送路で独立なフェージングを受けた並列送信信号を受信する。移動局では一般に全方向からの散乱波を受信するため、基地局と比べ受信アンテナ6-1〜6-Mは比較的狭いアンテナ間隔の設置で独立なフェージングを受信できる。相関の低い2ブランチを形成するために両偏波アンテナを用いてもよい。
【0048】図4は、送信アンテナのアレーアンテナ群の分割数を2、受信アンテナ数を2とした場合のMIMO伝送路を模式的に示したものである。各送受ブランチ間の伝送路は2×2の独立なフェージングを受けると考えられる。ここで伝送路行列Hを、
【0049】
【数4】
送信側の各アレーアンテナ群の送信信号をx=(x1x2)T(Tは転置を示す)で表わすと、受信側の各アンテナの受信信号r=(r1r2)Tは次式で示される。
【0050】r=Hx+vここで、vは熱雑音である。
【0051】MIMO復調器で7は、各アンテナの受信信号を用いて、送信機側の各アレーアンテナ群から送信された並列送信データの各ビットを復調する。MIMO復調方法としては、大別して干渉キャンセル受信と最尤推定受信がある。ここでは特性に優れた最尤推定受信について説明する。
【0052】MIMOの最尤推定受信における復調ビット
【0053】
【数5】
の尤度関数
【0054】
【数6】
は次式で表わされる。
【0055】
【数7】
MIMOの最尤推定受信は多値変調信号の最尤推定受信と相似しており、異なるアンテナから送信され伝搬路上で多重された信号を受信側である種の多値変調信号とみなし、並列送信データのビット毎に尤度を計算する。尤度計算では受信アンテナ毎の尤度を合計して判定することで空間ダイバーシチ効果と他アンテナ干渉のキャンセル効果が得られる。
【0056】図5は、本実施形態のMIMO復調器7として、最尤推定手段を用いた場合の概略構成例を示しており、各受信アンテナ6-1〜6-Mにより受信された信号は、それぞれ個別に尤度計算部70-1〜70-Mで、送信データのビット毎の尤度計算が行われ、合成器71で送信データのビット毎に尤度を加算し、尤度比較部72で最小値を選択して軟判定復調信号とする。この式(2)による尤度計算等を行うMIMO復調動作は、MIMO復調機能を実行するソフトウェアによって実現することができる。
【0057】なお、実施例では、送信側のアレーアンテナ群の数(M)および受信側のアンテナの数(M)が同数に設定されている場合について説明したが、両者の数は必ずしも等しく設定する必要はない。一般に、受信側のアンテナの数を多くするほど、空間ダイバーシチ効果と他アンテナ干渉のキャンセル効果は大きくなる。
【0058】復号器8は、各ビットの軟判定復調信号を用いて誤り訂正復号を行う。誤り訂正方式として畳み込み符号化/ビタビ復号やターボ符号化/復号がよく用いられる。本実施例では、送信機に符号器1、受信機に復号器8を有し、軟判定復調信号を用いた誤り訂正制御を行う構成を示しているが、これらは本発明の必須構成要素ではない。誤り訂正制御を行わない場合も本発明に含まれる。
【0059】図6は、本発明の第2の実施形態における受信機の構成を示すブロック図であり、図7は、第2の実施形態が適用されるセルシステムの例を示している。
【0060】本実施形態の場合、図7に示される低アンテナ高基地局33を有する中小セルシステム31では基地局33の複数の送信アンテナを複数のアレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、アレーアンテナ群間では異なるデータの並列送信することにより、指向性ビーム送信とMIMO送信を併用し、移動局35が中小セルシステム31内に位置しているときには移動局35はMIMO復調を行う。
【0061】一方、高アンテナ高基地局34を有する大セルシステム32では従来のダイバーシチシステムの方が優れているので指向性ビーム送信のみを行う構成となっており、移動局35が大セルシステム32内に位置しているときには、移動局35はダイバーシチ受信を行う必要がある。
【0062】各基地局ではシステム敷設時にセル伝搬環境に応じて指向性ビーム送信かMIMO送信のいずれかを選択すればよいが、移動局は両者の基地局システムに接続し、通信を行う必要がある。その際、移動局が基地局アンテナ送信システムに応じて複数の端末を携行するのは不経済である。そこで本実施形態では、受信機はダイバーシチ復調機能とMIMO復調機能を実現するソフトウェアを備え、基地局アンテナ送信システムに応じてそれらのソフトウェアを切り替えてダイバーシチ復調、あるいはMIMO復調を実現するデュアルモード復調器を備える。
【0063】そのため本実施形態の受信機は、受信アンテナ6-1〜6-M、デュアルモード復調器9、復号器8及び復調モード切り替え制御部12を有している。
【0064】受信アンテナ6-1〜6-Mは、指向性ビーム送信信号、あるいはMIMO送信信号を受信する。デュアルモード復調器9は、基地局アンテナ送信システムに応じて指向性ビーム送信時はダイバーシチ復調器10の機能を実現し、MIMO送信時はMIMO復調器11の機能を実現するように復調モード切り替え制御部12がソフトウェアを切り替えて実行する。復号器8は、ダイバーシチ復調器10、あるいはMIMO復調器11の出力である各ビットの軟判定復調信号を用いて誤り訂正復号を行う。
【0065】
【発明の効果】本発明では、セル伝搬環境に応じて基地局アンテナを複数アレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、アレーアンテナ群間では異なるデータの並列送信(MIMO送信)を行っているので、より高能率、大容量のデータ伝送を実現することが可能となり、システム特性の向上を図ることができる。
【0066】また、本発明では、セル伝搬環境に応じて指向性ビーム送信とMIMO送信を行う基地局が混在するシステムにおいて、移動局は1つの端末でダイバーシチ復調機能とMIMO復調機能を有するソフトウェアを切り替えて異なるアンテナ送信システムの基地局と通信することができ、セル伝搬環境に柔軟に対応した送受信システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアンテナ送受信システムの第1実施形態を示すブロック図である。
【図2】本実施形態におけるビームフォーマの構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態における送信アンテナアレー群およびその指向性パターンの例を示す図である。
【図4】MIMOフェージング伝送路を模式的に示す図である。
【図5】本実施形態のMIMO復調器7として、最尤推定手段を用いた場合の構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明のアンテナ送受信システムの第2実施形態を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施形態が適用される、大セルシステムと中小セルシステムが混在するセルシステムの例を示す図である。
【図8】従来のアンテナ送受信システムの構成を示す図である。
【図9】多値変調信号のシンボル点を示す図である。
【図10】従来例におけるビームフォーマの構成を示すブロック図である。
【図11】従来例における直線アレーアンテナを示す図である。
【図12】従来例におけるダイバーシチ復調器の構成を示す図である。
【図13】軟判定器の動作を示す図である。
【図14】指向性ビーム送信制御におけるビーム利得を示す図である。
【符号の説明】
1、101 符号器
2 データ直並列変換器
3-1〜3-M、102 変調器
4-1〜4-M、103 ビームフォーマ
5-1-1〜5-M-N/M サブアレー送信アンテナ
6-1〜6-M、105-1〜105-M ダイバーシチ受信アンテナ
7、11 MIMO復調器
8、107 復号器
9 デュアルモード復調器
10、106 ダイバーシチ復調器
12 モード切り替え制御部
21-1-1〜21-N-N/M、111-1〜111-N、123-1〜123-M 乗算器
31 中小セルシステム
32 大セルシステム
33 低アンテナ高基地局
34 高アンテナ高基地局
35 移動局
70-1〜70-M 尤度計算部
71、124 合成器
72 尤度比較部
104-1〜104-N 直線アレー送信アンテナ
121-1〜121-M 伝送路推定器
122-1〜122-M 複素共役操作
125 軟判定器
【特許請求の範囲】
【請求項1】 移動通信システムのアンテナ送受信システムにおいて、基地局は複数アンテナを備え、それらをセル伝搬環境に応じて複数のアレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、各アレーアンテナ群からは互いに異なるデータの並列送信(MIMO送信)を行い、移動局は複数アンテナを備え、前記並列送信されたデータの受信(MIMO受信)を行うことを特徴とするアンテナ送受信システム。
【請求項2】 前記基地局のアンテナ間隔は、前記アレーアンテナ群内の各アンテナ間隔はアンテナ相関値が高くなるようにλ/2(λはキャリア波長)に、各アレーアンテナ群の間隔はアンテナ相関値が低くなるように10λ以上に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ送受信システム。
【請求項3】 前記アレーアンテナ群の分割数、および各アレーアンテナ群の前記指向性ビームの幅は、前記基地局におけるマルチパスの到来角度差、および前記アレーアンテナ群内のアンテナ間相関値に応じて決定されることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ送受信システム。
【請求項4】 前記アレーアンテナ群の分割数、および各アレーアンテナ群の前記指向性ビームの幅は、前記基地局アンテナ高、および該基地局が配置されたセル半径に応じて決定されることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ送受信システム。
【請求項5】 移動通信システムのアンテナ送受信システムにおいて、第1の基地局群は複数アンテナを備え、該複数アンテナによりアレーアンテナを構成して所望の指向性ビーム制御を行い、第2の基地局群は複数アンテナを備え、それらをセル伝搬環境に応じて複数のアレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、各アレーアンテナ群からは互いに異なるデータの並列送信(MIMO送信)を行い、移動局は複数アンテナを備え、前記第1の基地局群と通信するときはダイバーシチ受信を行い、前記第2の基地局群と通信するときは前記並列送信されたデータの受信(MIMO受信)を行うことを特徴とするアンテナ送受信システム。
【請求項6】 前記第1の基地局における前記複数アンテナの間隔は、アンテナ相関値が高くなるようにそれぞれλ/2(λはキャリア波長)に設定され、前記第2の基地局のアンテナ間隔は、前記アレーアンテナ群内の各アンテナ間隔はアンテナ相関値が高くなるようにλ/2に、各アレーアンテナ群の間隔はアンテナ相関値が低くなるように10λ以上に設定されていることを特徴とする請求項5に記載のアンテナ送受信システム。
【請求項7】 前記第1の基地局群と前記第2の基地局群の選別と、前記第2の基地局群における前記アレーアンテナ群の分割数および各アレーアンテナ群の前記指向性ビームの幅は、各基地局におけるマルチパスの到来角度差、および各アレーアンテナのアンテナ間相関値に応じて決定されることを特徴とする請求項5または6に記載のアンテナ送受信システム。
【請求項8】 前記第1の基地局群と前記第2の基地局群の選別と、前記第2の基地局群における前記アレーアンテナ群の分割数および各アレーアンテナ群の前記指向性ビームの幅は、前記各基地局のアンテナ高、および該基地局が配置されたセル半径に応じて決定されることを特徴とする請求項5または6に記載のアンテナ送受信システム。
【請求項9】 前記移動局は、ダイバーシチ受信機能とMIMO受信機能を有するソフトウェアを備え、前記基地局のアンテナ送信システムに応じて前記ソフトウェアを切り替えてダイバーシチ受信、または前記並列送信されたデータの受信(MIMO受信)を実現することを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載のアンテナ送受信システム。
【請求項10】 移動通信システムのアンテナ送受信システムにおいて、基地局の送信機は、送信データをM個(Mは2以上の整数)の系列に直並列変換するデータ直並列変換器と、該直並列変換されたM個の各送信データを変調するM個の変調器と、該変調された各変調信号に重み付けを行って指向性ビームを形成するM個のビームフォーマと、該ビームフォーマによりその指向性ビームが制御され、前記変調されたM個の変調信号を並列送信(MIMO送信)するM個の送信アンテナ群とを有し、移動局の受信機は、送信データを受信する受信アンテナと、前記並列送信されたデータを復調するMIMO復調器とを有することを特徴とするアンテナ送受信システム。
【請求項11】 移動通信システムのアンテナ送受信システムにおいて、第1の基地局群の送信機は、送信データを変調する変調器と、該変調器で変調された変調信号に重み付けを行って指向性ビームを形成するビームフォーマと、該ビームフォーマによりその指向性ビームが制御され、前記変調された変調信号を送信する送信アンテナとを有し、第2の基地局群の送信機は、送信データをM個(Mは2以上の整数)の系列に直並列変換するデータ直並列変換器と、該直並列変換されたM個の各送信データを変調するM個の変調器と、該変調された各変調信号に重み付けを行って指向性ビームを形成するM個のビームフォーマと、該ビームフォーマによりその指向性ビームが制御され、前記変調されたM個の変調信号を並列送信(MIMO送信)するM個の送信アンテナ群とを有し、移動局の受信機は、送信データを受信する受信アンテナと、前記第1の基地局群から送信されたデータをダイバーシチ復調するダイバーシチ復調器と、前記第2の基地局群から送信された前記並列送信データを復調するMIMO復調器とを有することを特徴とするアンテナ送受信システム。
【請求項12】 前記移動局の受信機は、前記第1の基地局群から送信されたデータをダイバーシチ復調するダイバーシチ復調機能と前記第2の基地局群から送信された前記並列送信データを復調するMIMO復調機能を有するソフトウェアを備え、前記基地局のアンテナ送信システムに応じて前記ソフトウェアを切り替えて前記ダイバーシチ復調または前記MIMO復調を実現する復調モード切り替え制御部を有することを特徴とする請求項11に記載のアンテナ送受信システム。
【請求項13】 基地局に複数のアンテナが備えられ、該複数のアンテナがセル伝搬環境に応じて複数のアレーアンテナ群に分割され、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御が行われ、各アレーアンテナ群からは互いに異なるデータの並列送信(MIMO送信)が行われるセルシステムが構築されたセル内を移動可能な移動局であって、前記移動局は、前記基地局からの並列送信信号を受信する複数の受信アンテナと、前記並列送信されたデータを復調するMIMO復調手段とを有することを特徴とする移動通信システム用移動局。
【請求項14】 基地局に複数のアンテナが備えられ、該複数のアンテナによりアレーアンテナが構成されて所望の指向性ビーム制御が行われる第1のセル群と、基地局に複数のアンテナが備えられ、該複数のアンテナがセル伝搬環境に応じて複数のアレーアンテナ群に分割され、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御が行われ、各アレーアンテナ群からは互いに異なるデータの並列送信(MIMO送信)が行われる第2のセル群とによりセルシステムが構築されたセル内を移動可能な移動局であって、前記移動局は、前記基地局からの送信データを受信する複数の受信アンテナと、前記第1のセル群の基地局から送信されたデータをダイバーシチ復調するダイバーシチ復調手段と、前記第2のセル群の基地局から送信された前記並列送信データを復調するMIMO復調手段と、前記ダイバーシチ復調モードまたは前記MIMO復調モードを切り替える復調モード切り替え制御手段とを有することを特徴とする移動通信システム用移動局。
【請求項1】 移動通信システムのアンテナ送受信システムにおいて、基地局は複数アンテナを備え、それらをセル伝搬環境に応じて複数のアレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、各アレーアンテナ群からは互いに異なるデータの並列送信(MIMO送信)を行い、移動局は複数アンテナを備え、前記並列送信されたデータの受信(MIMO受信)を行うことを特徴とするアンテナ送受信システム。
【請求項2】 前記基地局のアンテナ間隔は、前記アレーアンテナ群内の各アンテナ間隔はアンテナ相関値が高くなるようにλ/2(λはキャリア波長)に、各アレーアンテナ群の間隔はアンテナ相関値が低くなるように10λ以上に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ送受信システム。
【請求項3】 前記アレーアンテナ群の分割数、および各アレーアンテナ群の前記指向性ビームの幅は、前記基地局におけるマルチパスの到来角度差、および前記アレーアンテナ群内のアンテナ間相関値に応じて決定されることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ送受信システム。
【請求項4】 前記アレーアンテナ群の分割数、および各アレーアンテナ群の前記指向性ビームの幅は、前記基地局アンテナ高、および該基地局が配置されたセル半径に応じて決定されることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ送受信システム。
【請求項5】 移動通信システムのアンテナ送受信システムにおいて、第1の基地局群は複数アンテナを備え、該複数アンテナによりアレーアンテナを構成して所望の指向性ビーム制御を行い、第2の基地局群は複数アンテナを備え、それらをセル伝搬環境に応じて複数のアレーアンテナ群に分割し、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御を行うとともに、各アレーアンテナ群からは互いに異なるデータの並列送信(MIMO送信)を行い、移動局は複数アンテナを備え、前記第1の基地局群と通信するときはダイバーシチ受信を行い、前記第2の基地局群と通信するときは前記並列送信されたデータの受信(MIMO受信)を行うことを特徴とするアンテナ送受信システム。
【請求項6】 前記第1の基地局における前記複数アンテナの間隔は、アンテナ相関値が高くなるようにそれぞれλ/2(λはキャリア波長)に設定され、前記第2の基地局のアンテナ間隔は、前記アレーアンテナ群内の各アンテナ間隔はアンテナ相関値が高くなるようにλ/2に、各アレーアンテナ群の間隔はアンテナ相関値が低くなるように10λ以上に設定されていることを特徴とする請求項5に記載のアンテナ送受信システム。
【請求項7】 前記第1の基地局群と前記第2の基地局群の選別と、前記第2の基地局群における前記アレーアンテナ群の分割数および各アレーアンテナ群の前記指向性ビームの幅は、各基地局におけるマルチパスの到来角度差、および各アレーアンテナのアンテナ間相関値に応じて決定されることを特徴とする請求項5または6に記載のアンテナ送受信システム。
【請求項8】 前記第1の基地局群と前記第2の基地局群の選別と、前記第2の基地局群における前記アレーアンテナ群の分割数および各アレーアンテナ群の前記指向性ビームの幅は、前記各基地局のアンテナ高、および該基地局が配置されたセル半径に応じて決定されることを特徴とする請求項5または6に記載のアンテナ送受信システム。
【請求項9】 前記移動局は、ダイバーシチ受信機能とMIMO受信機能を有するソフトウェアを備え、前記基地局のアンテナ送信システムに応じて前記ソフトウェアを切り替えてダイバーシチ受信、または前記並列送信されたデータの受信(MIMO受信)を実現することを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載のアンテナ送受信システム。
【請求項10】 移動通信システムのアンテナ送受信システムにおいて、基地局の送信機は、送信データをM個(Mは2以上の整数)の系列に直並列変換するデータ直並列変換器と、該直並列変換されたM個の各送信データを変調するM個の変調器と、該変調された各変調信号に重み付けを行って指向性ビームを形成するM個のビームフォーマと、該ビームフォーマによりその指向性ビームが制御され、前記変調されたM個の変調信号を並列送信(MIMO送信)するM個の送信アンテナ群とを有し、移動局の受信機は、送信データを受信する受信アンテナと、前記並列送信されたデータを復調するMIMO復調器とを有することを特徴とするアンテナ送受信システム。
【請求項11】 移動通信システムのアンテナ送受信システムにおいて、第1の基地局群の送信機は、送信データを変調する変調器と、該変調器で変調された変調信号に重み付けを行って指向性ビームを形成するビームフォーマと、該ビームフォーマによりその指向性ビームが制御され、前記変調された変調信号を送信する送信アンテナとを有し、第2の基地局群の送信機は、送信データをM個(Mは2以上の整数)の系列に直並列変換するデータ直並列変換器と、該直並列変換されたM個の各送信データを変調するM個の変調器と、該変調された各変調信号に重み付けを行って指向性ビームを形成するM個のビームフォーマと、該ビームフォーマによりその指向性ビームが制御され、前記変調されたM個の変調信号を並列送信(MIMO送信)するM個の送信アンテナ群とを有し、移動局の受信機は、送信データを受信する受信アンテナと、前記第1の基地局群から送信されたデータをダイバーシチ復調するダイバーシチ復調器と、前記第2の基地局群から送信された前記並列送信データを復調するMIMO復調器とを有することを特徴とするアンテナ送受信システム。
【請求項12】 前記移動局の受信機は、前記第1の基地局群から送信されたデータをダイバーシチ復調するダイバーシチ復調機能と前記第2の基地局群から送信された前記並列送信データを復調するMIMO復調機能を有するソフトウェアを備え、前記基地局のアンテナ送信システムに応じて前記ソフトウェアを切り替えて前記ダイバーシチ復調または前記MIMO復調を実現する復調モード切り替え制御部を有することを特徴とする請求項11に記載のアンテナ送受信システム。
【請求項13】 基地局に複数のアンテナが備えられ、該複数のアンテナがセル伝搬環境に応じて複数のアレーアンテナ群に分割され、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御が行われ、各アレーアンテナ群からは互いに異なるデータの並列送信(MIMO送信)が行われるセルシステムが構築されたセル内を移動可能な移動局であって、前記移動局は、前記基地局からの並列送信信号を受信する複数の受信アンテナと、前記並列送信されたデータを復調するMIMO復調手段とを有することを特徴とする移動通信システム用移動局。
【請求項14】 基地局に複数のアンテナが備えられ、該複数のアンテナによりアレーアンテナが構成されて所望の指向性ビーム制御が行われる第1のセル群と、基地局に複数のアンテナが備えられ、該複数のアンテナがセル伝搬環境に応じて複数のアレーアンテナ群に分割され、各アレーアンテナ群では緩い指向性ビーム制御が行われ、各アレーアンテナ群からは互いに異なるデータの並列送信(MIMO送信)が行われる第2のセル群とによりセルシステムが構築されたセル内を移動可能な移動局であって、前記移動局は、前記基地局からの送信データを受信する複数の受信アンテナと、前記第1のセル群の基地局から送信されたデータをダイバーシチ復調するダイバーシチ復調手段と、前記第2のセル群の基地局から送信された前記並列送信データを復調するMIMO復調手段と、前記ダイバーシチ復調モードまたは前記MIMO復調モードを切り替える復調モード切り替え制御手段とを有することを特徴とする移動通信システム用移動局。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図11】
【図13】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図11】
【図13】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図14】
【公開番号】特開2003−338781(P2003−338781A)
【公開日】平成15年11月28日(2003.11.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−146814(P2002−146814)
【出願日】平成14年5月21日(2002.5.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成15年11月28日(2003.11.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成14年5月21日(2002.5.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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