説明

アンテナ

【課題】 支柱の途中にアンテナを取り付けやすくする。
【解決手段】 環状体6を4つの分割部材6a乃至6dに分割形成し、各分割部材6a乃至6d内にダイポールアンテナ8a乃至8dを互いに90度間隔に配置し、各ダイポールアンテナ8a乃至8dの受信信号を合成器22によって同相合成する。各分割部材6a乃至6dの間に支持腕10a乃至10dの一端部が挿入され、他端部側に取付部12が設けられ、取付部12によって支柱5に環状体6が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナに関し、特に無指向性のアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地上アナログ放送の他に、地上デジタル放送も開始されている。既に地上アナログ放送の受信用にアンテナが設置されている状態において、地上デジタル放送受信用のアンテナを追加して設置する必要が生じることがある。この場合、地上デジタル放送受信用のアンテナとしては、異なる位置にある複数の地上デジタル送信局からの地上デジタル放送信号も受信できるように無指向性アンテナを使用することができる。
【0003】
無指向性アンテナとしては、例えば特許文献1に開示されているようなバイコニカルアンテナやディスコーンアンテナがある。
【0004】
【特許文献1】特開2001−185942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、地上アナログ放送受信用アンテナが取り付けられている支柱の中途に、地上デジタル放送受信用アンテナを設置することが望まれることがある。このような場合、特許文献1に開示されているようなバイコニカルアンテナやディスコーンアンテナは、その構造上、支柱の途中に取り付けにくい。また、支柱の上部に取り付けられている地上アナログ放送受信用アンテナの影響を受けやすい。
【0006】
本発明は、支柱の途中に取り付けやすいアンテナを提供することを目的とする。本発明は、更に同じ支柱に取り付けられた他のアンテナの影響を受けにくいアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のアンテナは、複数のアンテナ素子を有している。これらアンテナ素子は、中心、例えば支柱の設置位置から一定距離をおいて前記中心の回りに環状に配置されている。これらアンテナ素子は、それぞれが水平面内において少なくとも外方を向く指向性を有する同一周波数帯用のものである。これらアンテナ素子としては、例えばダイポールアンテナや折り返しダイポールアンテナ等を使用することができる。これらアンテナ素子の受信信号を合成手段で合成する。この合成手段は、各受信信号を同相合成することが望ましい。
【0008】
このアンテナによれば、アンテナ素子が環状に配置されているので、支柱の中途にも容易に取り付けることができる。
【0009】
前記各アンテナ素子を環状体内に配置することができる。このように構成すると、環状体内に各アンテナ素子が配置されていることにより、このアンテナの上方に別のアンテナが設置されていたとしても、その影響を受けにくい。
【0010】
更に、前記環状体の内周面の異なる位置から前記中心側に向かう複数の支持腕を形成することができる。この場合、支持腕の前記中心側の端部に支柱への取付部が形成されている。このように構成すると、支持腕の中側端部の取付部を利用して容易に支柱にこのアンテナを取り付けることができる。
【0011】
また、前記環状体は、前記各アンテナ素子と複数の分割部材によって構成することができる。このように構成すると、各分割部材を支柱の回りで組み合わせることによって、支柱の中途に、このアンテナを設置することができるので、支柱に別のアンテナが既に取り付けられているような場合にも、その別のアンテナを取り外したり、支柱を倒したりする必要が無く、更にこのアンテナの支柱の中途への取付が容易にできる。
【0012】
更に前記各分割部材の境界部から前記中心側に向かって支持腕が突出し、それら支持腕の前記中心側の端部に、支柱への取付部が形成され、前記各分割部材は前記支持腕に固定されている。このように構成すると、支柱に支持腕の取付部を取り付け、支持腕に各分割部材を取り付けることによって、このアンテナを組み立てることができるので、支柱の中途に益々容易にアンテナを取り付けることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明のアンテナは、支柱の中途に容易に取り付けることができる。更に、支柱に既に取り付けられているアンテナの影響を受けにくくすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の1実施形態のアンテナ2は、地上デジタル放送受信用のアンテナで、図3に示すように地上アナログ放送受信用のアンテナ4が先端に取り付けられている支柱5の中途に取り付けられている。
【0015】
このアンテナ2は、図1及び図2に示すように、環状体6を有している。この環状体6は、例えばドーナツ状に合成樹脂によって構成されている。この環状体6は、複数、例えば4つの分割部材6a乃至6dに分割形成されている。各分割部材6a乃至6dは、円周をほぼ4等分にした円弧に相当する形状である。
【0016】
この環状体6の内部には、複数、例えば4つのアンテナ素子、例えばダイポールアンテナ8a乃至8dが配置されている。これらダイポールアンテナ8a乃至8dは、各分割部材6a乃至6d内にそれぞれ1つずつ水平に収容されて、環状体6の中心を包囲するように位置している。これらダイポールアンテナ8a乃至8dは、環状体6の中心から等しい距離にあり、また互いに等角度、例えば90度をなしている。従って、この実施形態では、ダイポールアンテナ8a、8cは互いに対向するように位置し、ダイポールアンテナ8b、8dが互いに対向するように位置している。
【0017】
これらダイポールアンテナ8a乃至8dは、UHF帯における地上デジタル放送に使用されている周波数帯の中心周波数の波長λの例えば1/2の長さを有している。対向しているダイポールアンテナ8a、8cの間隔はほぼλであり、同じく対向しているダイポールアンテナ8b、8dの間隔もほぼλである。これらダイポールアンテナ8a乃至8dは、水平面内において少なくとも外方に向かう指向性を有し、例えば水平面内においてそれらの長さ方向に対して垂直に8の字指向性を示す。
【0018】
これら分割部材6a、6bの境界部には支持腕10aの一端部が挿入され、分割部材6b、6cの境界部には支持腕10bの一端部が挿入され、分割部材6c、6dの境界部には支持腕10cの一端部が挿入され、分割部材6d、6aの境界部には支持腕10dの一端部が挿入されている。これら支持腕10a乃至10dは、一端部から環状体6の中心側に直線状に伸延している。これら支持腕10a乃至10dのうち、分割部材6aの両端から伸延している支持腕10a、10dの環状体の中心側の他端部間には、取付半部12aが形成されている。同様に分割部材6aと対向する位置にある分割部材6cの両端から伸延している支持腕10b、10cの環状体の中心側の他端部間にも、取付半部12bが形成されている。
【0019】
これら取付半部12a、12bは、支柱5への取付部12の一部をなし、それぞれ1/4円弧状である。取付半部12a、12bそれぞれの内面側に支柱5を両側から包囲する半円状のクランプ部材12c、12dが一体に取り付けられている。クランプ部材12c、12dは、ボルト12e、12fによって支柱5に押圧固定されている。これら支持腕10a乃至10d、取付半部12a、12bも、例えば合成樹脂製である。
【0020】
図4に示すように、各分割部材6a乃至6dの両端部側には、これら端部に接触する支持腕10a乃至10dの一端部側に向かって突出する連結部、例えば突部14がそれぞれ形成され、これら突部14と係合する係合部、例えば凹部16が、支持腕10a乃至10dの一端部の両側にそれぞれ形成されている。これら突部14と凹部16とによって各分割部材6a乃至6dが支持腕10a乃至10dに結合されている。なお、支持腕10a乃至10dへの各分割部材6a乃至6dの結合は、突部14を支持腕10a乃至10dにネジ止めすることによっても可能である。
【0021】
各ダイポールアンテナ8a乃至8dの給電点は、図1に示す出力端子18a乃至18dに接続されている。出力端子18aは、分割部材6aの底面に設けられ、ダイポールアンテナ8aの給電点が接続されている。出力端子18bは、分割部材6bの底面に設けられ、ダイポールアンテナ8bの給電点が接続されている。出力端子18cは、分割部材6cの底面に設けられ、ダイポールアンテナ8cの給電点が接続されている。出力端子18dは、分割部材6dの底面に設けられ、ダイポールアンテナ8dの給電点が接続されている。これら出力端子18a乃至18dとしては、例えばF型接栓が使用されている。
【0022】
これら出力端子18a乃至18dは、図5に示すように、伝送線路、例えば同軸ケーブル20a乃至20dを介して合成手段、例えば合成器22の入力端子24a乃至24dに接続されている。なお、各同軸ケーブル20a乃至20dは、同一の長さのものである。
【0023】
各入力端子24a乃至24dには、それぞれフィルタ26a乃至26dが接続されている。これらフィルタ26a乃至26dとしては、地上デジタル放送信号のみを通過させるバンドパスフィルタが使用されている。これらフィルタ26a乃至26dの出力が合成手段、例えば混合器28によって混合され、フィルタ30を介して出力端子32に供給される。フィルタ30も、フィルタ26a乃至26dと同一のものである。これらフィルタ26a乃至26d、30は、地上アナログ放送受信用のアンテナ4で受信された地上アナログ放送信号にゴーストの影響を与えないように、また出力端子32に地上アナログ放送信号が生じないように設けられている。
【0024】
このように構成されたアンテナ2では、各ダイポールアンテナ8a乃至8dが支柱5の回りに90度間隔で配置されている。各ダイポールアンテナ8a乃至8dは、水平面において各ダイポールアンテナ8a乃至8dの長さ方向に垂直な方向に8の字指向性を示し、これら各ダイポールアンテナ8a乃至8dが同一の長さの同軸ケーブル20a乃至20dによって混合器28によって混合されている。対向するダイポールアンテナ8a、8c及び8b、8dそれぞれの間隔はλとされ、例えばダイポールアンテナ8a、8cまたは8b、8dでこれらの長さ方向に垂直な方向から到来する同じ地上デジタル放送信号を受信しているとき、両ダイポールアンテナ8a、8cまたは8b、8dの受信信号は同相である。これらが総合されて、ダイポールアンテナ8a乃至8dの合成指向性は、水平面において無指向性となる。従って、このアンテナ2を支柱5に取り付けた場合、異なる送信局から送信される複数の地上デジタル放送信号を1台のアンテナ2によって受信することができる。
【0025】
しかも、各ダイポールアンテナ8a乃至8dは、環状体6内に配置されており、環状体6の支持腕10a乃至10dを取付部12によって取り付けることによって支柱5に、この環状体6を取り付けることができ、支柱5への取付が容易である。特に、環状体6は4つの分割部材6a乃至6dに分割形成され、各分割部材6a乃至6dは、支持腕10a乃至10dに固定されているので、支持腕10a乃至10dを支柱5に取付部12によって取り付け、支持腕10a乃至10dの一端部に各分割部材6a乃至6dを取り付けることによって、このアンテナ2の環状体6を支柱5に取り付けることができる。従って、既に支柱5に地上アナログ放送受信用のアンテナ4が設置されている状態においても、これらアンテナ4を支柱5から外したり、アンテナ4及び支柱5を一旦倒したりするような余分な作業を行う必要が全くない。
【0026】
しかも、各ダイポールアンテナ8a乃至8dは環状体6内に配置されているので、支柱5に設置したときに、支柱5に既に設置されている地上アナログ放送受信用アンテナ4の受信状況に殆ど影響を与えないし、またアンテナ4からも影響を受けにくい。
【0027】
上記の実施の形態では、環状体6はドーナツ状に形成したが、これに限ったものではなく、例えば矩形の枠状に形成することもできる。また、上記の実施の形態では、環状体を分割形成したが、一体で形成することもできる。また、上記の実施の形態では、環状体6を4つに分割し、各分割部材6a乃至6d内に1つずつダイポールアンテナを収容したが、これに限ったものではなく、例えば環状体の分割数をダイポールアンテナの数よりも少なくし、1つの分割部材内に複数のダイポールアンテナを収容することもできる。
【0028】
上記の実施の形態では、支持腕10a乃至10dの一端部を各分割部材6a乃至6dの端部に配置したが、例えば分割部材の分割数を4よりも多くした場合、1対の支持腕の他端部を取り付け半部12aまたは12bによって結合できるようにすれば、何個かおきの分割部材の端部に支持腕の一端部を配置することもできる。
【0029】
上記の実施の形態では、合成器22を環状体6の外部に設けたが、分割部材6a乃至6dのいずれか内に収容することもできる。また、各ダイポールアンテナ8a乃至8dの受信信号を同相とするために同軸ケーブル20a乃至20dの長さを同一としたが、移相器を合成器22の各入力端子24a乃至24dとフィルタ26a乃至26dとの間にそれぞれ設けて、移相器による移相調整によって各受信信号を同相とすることもでき、この場合、各同軸ケーブル20a乃至20dが異なっていてもよい。
【0030】
このように移相器を設けた場合には、対向するダイポールアンテナ8a、8cの間隔、8b、8dの間隔をλとする必要はなく、移相器の調整によって対向するダイポールアンテナの受信信号を同相とすることもできる。
【0031】
上記の実施の形態では、4つのダイポールアンテナ8a乃至8dを使用したが、2以上であれば種々の数とすることができる。但し、ダイポールアンテナの数が少なくなると、合成指向性は無指向性ではなく、指向性を持つが、特定の位置から複数の地上デジタル放送信号が送信されている場合には、その送信方向に指向性の向きを向ければよい。また、上記の実施の形態では、ダイポールアンテナ8a乃至8dを使用したが、これに限ったものではなく、例えば折り返しダイポールアンテナ等の8の字指向性を示すアンテナや、外方に指向性を持つ例えば八木形アンテナを使用することもできる。
【0032】
また、上記の実施の形態では、フィルタ26a乃至26d、30を設けたが、場合によってはこれらを除去することもでき、合成手段としては、最低限度、混合器28のみを備えていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の1実施形態のアンテナの底面図である。
【図2】図1のアンテナの斜視図である。
【図3】図1のアンテナの使用状態を示す斜視図である。
【図4】図1のアンテナにおける分割部材と支持腕との結合の説明図である。
【図5】図1のアンテナのブロック図である。
【符号の説明】
【0034】
2 アンテナ
5 支柱
6 環状体
6a乃至6d 分割部材
8a乃至8d ダイポールアンテナ(アンテナ素子)
10a乃至10d 支持腕
12 取付部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心から一定距離をおいて前記中心の回りに環状に配置され、それぞれが水平面内において少なくとも外方を向く指向性を有する同一周波数帯用の複数のアンテナ素子と、
これらアンテナ素子の受信信号を合成する合成手段とを、
有するアンテナ。
【請求項2】
請求項1記載のアンテナにおいて、前記各アンテナ素子は、環状体内に配置されているアンテナ。
【請求項3】
請求項2記載のアンテナにおいて、前記環状体の内周面の異なる位置から前記中心側に向かう複数の支持腕が形成され、これら支持腕の前記中心側の端部に支柱への取付部が形成されているアンテナ。
【請求項4】
請求項2記載のアンテナにおいて、前記環状体は、複数の分割部材によって構成されているアンテナ。
【請求項5】
請求項4記載のアンテナにおいて、前記各分割部材の境界部から前記中心側に向かって支持腕が突出し、それら支持腕の前記中心側の端部に支柱への取付部が形成され、前記各分割部材は前記支持腕に固定されているアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−324827(P2007−324827A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151531(P2006−151531)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】