説明

アンテナ

【課題】広い周波数帯域において電波を送受信することができ、高い利得を得ることができるとともに、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができるアンテナを提供する。
【解決手段】アンテナ10Aは、不平衡給電材11および誘電体基板12と共振用導体13およびグランド用導体14と給電素子15とを備えている。共振用導体12は、給電部21に並行して不平衡給電材11の軸方向前方へ延びる第1および第2共振用導体部24a,24bから形成され、グランド用導体13は、不平衡給電材11に電気的に接続された固定部30と、無給電部22に並行して不平衡給電材11の軸方向後方へ延びる第1および第2グランド用導体部31a,31bとから形成されている。アンテナ10Aでは、第1および第2共振用導体部24a,24bや給電素子15、固定部30、第1および第2グランド用導体部31a,31bが基板12の一方の面16に接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不平衡給電材と共振用導体およびグランド用導体とを備えたアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
所定長さの第1導波部と、第1導波部につながる所定長さの第2導波部とを備え、第1導波部が同軸ケーブルの芯線と芯線を包被する第1絶縁体とから形成され、第2導波部が同軸ケーブルの第2絶縁体に固定された第1導体管とその第1導体管に摺動可能に取り付けられた第2導体管とから形成されたアンテナがある(特許文献1参照)。このアンテナは、第1導体管に対して第2導体管をそれらの長さ方向へ移動させることで、通信周波数におけるアンテナの効率が高くなるように第2導波部の長さを調節することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−100921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示のアンテナは、第2導体管をその長さ方向へ移動させることで、共振周波数を変えることができるが、その使用周波数帯域(比周波数帯域)がアンテナとして使用可能な周波数帯域のうちの10%程度をカバーしているに過ぎず、使用周波数帯域を広げることが難しく、広帯域(ブロードバンド)における使用ができない。また、このアンテナは、その使用周波数帯域を高い方へ移動させることができない。
【0005】
本発明の目的は、広い周波数帯域において電波を送受信することができ、高い利得を得ることができるとともに、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができるアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明にかかるアンテナは、所定長さの給電部およびその給電部につながる所定長さの無給電部を有する不平衡給電材と、所定の誘電率を有する誘電体基板と、所定面積を有する板状に成型されて不平衡給電材の給電部と共振する共振用導体と、所定面積を有する板状に成型されて共振用導体と一体となり、不平衡給電材の無給電部と共振するグランド用導体とを備え、共振用導体が、不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、給電部に並行して不平衡給電材の軸方向前方へ延びる第1共振用導体部と、不平衡給電材を挟んで第1共振用導体部の反対側に位置し、不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、給電部に並行して軸方向前方へ延びる第2共振用導体部とから形成され、グランド用導体が、不平衡給電材に固定手段を介して電気的に接続された固定部と、固定部につながって不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、無給電部に並行して不平衡給電材の軸方向後方へ延びる第1グランド用導体部と、不平衡給電材を挟んで第1グランド用導体の反対側に位置し、固定部につながって不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、無給電部に並行して軸方向後方へ延びる第2グランド用導体部とから形成され、共振用導体の第1および第2共振用導体部が、誘電体基板の一方の面に接合され、グランド用導体の固定部と第1および第2グランド用導体部とが、第1および第2共振用導体部を接合した誘電体基板の一方の面と同一の面に接合されている。
【0007】
本発明にかかるアンテナの一例としては、第1共振用導体部の平面形状と第2共振用導体部の平面形状とが不平衡給電材の中心軸線に対して面対称の関係にあり、第1グランド用導体部の平面形状と第2グランド用導体部の平面形状とが不平衡給電材の中心軸線に対して面対称の関係にある。
【0008】
本発明にかかるアンテナの他の一例としては、第1および第2共振用導体部が、グランド用導体の側に位置して給電部から径方向外方へ延びる第1内側縁と、第1内側縁につながって給電部に対向して軸方向前方へ延びる第2内側縁と、第2内側縁から軸方向前方へ末広がりに傾斜して延びる第3内側縁と、それら内側縁の外側に位置して軸方向前方へ延びる外側縁とを有し、第1および第2共振用導体部では、それらの第2内側縁と給電部との間の離間寸法が同一であり、それらの第2内側縁が給電部に対して平行して延びている。
【0009】
本発明にかかるアンテナの他の一例としては、不平衡給電材の中心軸線に対する第1および第2共振用導体部の第3内側縁の傾斜角度が15〜60°の範囲にある。
【0010】
本発明にかかるアンテナの他の一例としては、第1および第2グランド用導体部が、共振用導体の側に位置して無給電部から軸方向後方へ末広がりに傾斜して延びる第1内側縁と、第1内側縁につながって無給電部に対して軸方向後方へ延びる第2内側縁と、それら内側縁の外側に位置して軸線方向後方へ延びる外側縁とを有し、第1および第2グランド用導体部では、それらの第2内側縁と無給電部との間の離間寸法が同一であり、それらの第2内側縁が無給電部に対して平行して延びている。
【0011】
本発明にかかるアンテナの他の一例としては、不平衡給電材の中心軸線に対する第1および第2グランド用導体部の第1内側縁の傾斜角度が45〜80°の範囲にある。
【0012】
本発明にかかるアンテナの他の一例としては、第1および第2グランド用導体部がそれらの第2内側縁から軸方向後方へ末広がりに傾斜して延びる第3内側縁を有し、不平衡給電材の中心軸線に対する第1および第2グランド用導体部の第3内側縁の傾斜角度が30〜60°の範囲にある。
【0013】
本発明にかかるアンテナの他の一例としては、給電部の中心と第1および第2共振用導体部の第2内側縁との間の第1離間寸法が2〜9mmの範囲にあり、無給電部の外周面と第1および第2グランド用導体部の第2内側縁との間の第2離間寸法が3〜10mmの範囲にあり、第2離間寸法が第1離間寸法と同一または第1離間寸法よりも大きい。
【0014】
本発明にかかるアンテナの他の一例としては、不平衡給電材が、第1導体と、第1導体の外周面を包被する絶縁体と、絶縁体の外周面を包被する第2導体とから作られ、不平衡給電材の給電部が第1導体から形成され、不平衡給電材の無給電部が第1および第2導体と絶縁体とから形成され、グランド用導体の固定部が第2導体に電気的に接続されている。
【0015】
本発明にかかるアンテナの他の一例としては、アンテナが、共振用導体の第1および第2共振用導体部の間に位置し、所定面積を有して軸方向前方へ延びる給電素子を有し、給電素子が、第1および第2共振用導体部を接合した誘電体基板の一方の面と同一の面に接合され、不平衡給電材の給電部を形成する第1導体に電気的に接合されている。
【0016】
本発明にかかるアンテナの他の一例としては、アンテナが、共振用導体の第1および第2共振用導体部の間に位置し、所定面積を有して軸方向前方へ延びる給電素子を有し、給電素子が、第1および第2共振用導体部を接合した誘電体基板の一方の面と反対側の面に接合され、不平衡給電材の給電部を形成して誘電体基板を貫通する第1導体に電気的に接合されている。
【0017】
本発明にかかるアンテナの他の一例としては、アンテナがその後方に配置されてアンテナの周り方向へ延びる電波反射部材を備え、アンテナでは、不平衡給電材の中心軸線と電波反射部材を周り方向に二分する電波反射部材の中心線とが一致するとともに、第1および第2共振用導体部が中心線に対して面対称に配置され、第1および第2グランド用導体部が中心線に対して面対称に配置されている。
【0018】
本発明にかかるアンテナの他の一例としては、電波反射部材がアンテナの後方を取り囲むようにアンテナの周り方向へ円弧を画いている。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかるアンテナによれば、所定の誘電率を有する誘電体基板が容量性として機能することで、その誘電体基板に接合された第1および第2共振用導体部と給電部とが容易に共振しつつ、誘電体基板に接合された第1および第2グランド用導体部と無給電部とが容易に共振し、複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。このアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、それが使用可能な周波数帯域(比帯域)のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ブロードバンド)における使用が可能であり、1本のみで広帯域の電波を送受信可能なアンテナを作ることができる。
【0020】
第1共振用導体部の平面形状と第2共振用導体部の平面形状とが不平衡給電材の中心軸線に対して面対称の関係にあり、第1グランド用導体部の平面形状と第2グランド用導体部の平面形状とが不平衡給電材の中心軸線に対して面対称の関係にあるアンテナは、第1および第2共振用導体部を面対称にすることで、容量性として機能する誘電体基板に接合された第1および第2共振用導体部と給電部とが同帯域の複数の共振周波数で容易に共振するとともに、第1および第2グランド用導体部を面対称にすることで、容量性として機能する誘電体基板に接合された第1および第2グランド用導体部と無給電部とが同帯域の複数の共振周波数で容易に共振し、複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。このアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、それが使用可能な周波数帯域(比帯域)のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ブロードバンド)における使用が可能であり、1本のみで広帯域の電波を送受信可能なアンテナを作ることができる。
【0021】
第1および第2共振用導体部が給電部から径方向外方へ延びる第1内側縁と給電部に対向して軸方向前方へ延びる第2内側縁と第2内側縁から軸方向前方へ末広がりに傾斜して延びる第3内側縁とそれら内側縁の外側に位置して軸方向前方へ延びる外側縁とを有し、第2内側縁と給電部との間の離間寸法が同一であり、第2内側縁が給電部に対して平行して延びているアンテナは、第3内側縁を第2内側縁から軸方向前方へ末広がりに傾斜させることで、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を安定化させることができるとともに、第3内側縁の傾斜角度を調整することで、使用周波数帯域を高い方と低い方とのいずれかへ移動させることができ、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができる。このアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、容量性として機能する誘電体基板に接合されてそれら内外縁を有する第1および第2共振用導体部と給電部とが容易に共振するとともに、容量性として誘電体機能する基板に接合された第1および第2グランド用導体部と無給電部とが容易に共振し、それによって複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができ、それ1本のみで広帯域の電波を送受信することができる。
【0022】
不平衡給電材の中心軸線に対する第1および第2共振用導体部の第3内側縁の傾斜角度が15〜60°の範囲にあるアンテナは、不平衡給電材の中心軸線に対する第3内側縁の傾斜角度を前記範囲にすることで、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を安定化させることができるとともに、第3内側縁の傾斜角度を前記範囲で調整することで、使用周波数帯域を高い方と低い方とのいずれかへ移動させることができ、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができる。このアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、容量性として機能する誘電体基板に接合された第1および第2共振用導体部と給電部とが容易に共振するとともに、容量性として機能する誘電体基板に接合された第1および第2グランド用導体部と無給電部とが容易に共振し、それによって複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができ、それ1本のみで広帯域の電波を送受信することができる。
【0023】
第1および第2グランド用導体部が無給電部から軸方向後方へ末広がりに傾斜して延びる第1内側縁と無給電部に対して軸方向後方へ延びる第2内側縁とそれら内側縁の外側に位置して軸線方向後方へ延びる外側縁とを有し、第2内側縁と無給電部との間の離間寸法が同一であり、第2内側縁が無給電部に対して平行して延びているアンテナは、第1内側縁を無給電部から軸方向後方へ末広がりに傾斜させることで、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を安定化させることができるとともに、第1内側縁の傾斜角度を調整することで、使用周波数帯域を高い方と低い方とのいずれかへ移動させることができ、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができる。このアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、容量性として機能する誘電体基板に接合された第1および第2共振用導体部と給電部とが容易に共振するとともに、容量性として機能する誘電体基板に接合されてそれら内外縁を有する第1および第2グランド用導体部と無給電部とが容易に共振し、それによって複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができ、それ1本のみで広帯域の電波を送受信することができる。
【0024】
不平衡給電材の中心軸線に対する第1および第2グランド用導体部の第1内側縁の傾斜角度が45〜80°の範囲にあるアンテナは、不平衡給電材の中心軸線に対する第1内側縁の傾斜角度を前記範囲にすることで、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を安定化させることができるとともに、第1内側縁の傾斜角度を前記範囲で調節することで、使用周波数帯域を高い方と低い方とのいずれかへ移動させることができ、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができる。このアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、容量性として機能する誘電体基板に接合された第1および第2共振用導体部と給電部とが容易に共振するとともに、容量性として機能する誘電体基板に接合された第1および第2グランド用導体部と無給電部とが容易に共振し、それによって複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができ、それ1本のみで広帯域の電波を送受信することができる。
【0025】
第1および第2グランド用導体部がそれらの第2内側縁から軸方向後方へ末広がりに傾斜して延びる第3内側縁を有し、不平衡給電材の中心軸線に対する第1および第2グランド用導体部の第3内側縁の傾斜角度が30〜60°の範囲にあるアンテナは、不平衡給電材の中心軸線に対する第3内側縁の傾斜角度を前記範囲にすることで、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を安定化させることができるとともに、第3内側縁の傾斜角度を前記範囲で調整することで、使用周波数帯域を高い方と低い方とのいずれかへ移動させることができ、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができる。このアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、容量性として機能する誘電体基板に接合された第1および第2共振用導体部と給電部とが容易に共振するとともに、容量性として機能する誘電体基板に接合された第1および第2グランド用導体部と無給電部とが容易に共振し、それによって複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができ、それ1本のみで広帯域の電波を送受信することができる。
【0026】
給電部の中心と第1および第2共振用導体部の第2内側縁との間の第1離間寸法が2〜9mmの範囲にあり、無給電部の外周面と第1および第2グランド用導体部の第2内側縁との間の第2離間寸法が3〜10mmの範囲にあり、第2離間寸法が第1離間寸法と同一または第1離間寸法よりも大きいアンテナは、離間寸法を前記範囲にすることで、容量性として機能する誘電体基板に接合された第1および第2共振用導体部と給電部との電波の共振効率が最適となり、それら共振用導体と給電部とを効率よく共振させることができ、容量性として機能する誘電体基板に接合された第1および第2グランド用導体部と無給電部との電波の共振効率が最適となり、それらグランド用導体と無給電部とを効率よく共振させることができる。このアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、第1および第2共振用導体部と給電部とが高い効率で容易に共振するとともに、第1および第2グランド用導体部と無給電部とが高い効率で容易に共振し、それによって複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができ、1本のみで広帯域の電波を送受信可能なアンテナを作ることができる。
【0027】
不平衡給電材の給電部が第1導体から形成され、不平衡給電材の無給電部が第1および第2導体と絶縁体とから形成され、グランド用導体の固定部が第2導体に電気的に接続されているアンテナは、容量性として機能する誘電体基板に接合された第1および第2共振用導体部と給電部とが高い効率で容易に共振するとともに、容量性として機能する誘電体基板に接合された第1および第2グランド用導体部と無給電部とが高い効率で容易に共振し、それによって複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができ、1本のみで広帯域の電波を送受信可能なアンテナを作ることができる。
【0028】
所定面積を有して軸方向前方へ延びる給電素子が第1および第2共振用導体部を接合した誘電体基板の一方の面と同一の面に接合され、不平衡給電材の給電部を形成する第1導体に電気的に接合されているアンテナは、給電素子によって使用周波数帯域内におけるVSWR(電圧定在波比)を低い周波数において最適化することができるとともに、第1および第2共振用導体部と給電部との共振時の波長を長くすることができ、それによって使用周波数帯域を低い方へ移動させることができる。このアンテナは、第1導体に接続された給電素子の幅寸法を変更することで、使用周波数帯域の広狭を自由に調整することができる。具体的には、給電素子の幅寸法を大きくすることで、使用周波数帯域を広くすることができ、給電素子の幅寸法を小さくすることで、使用周波数帯域を狭くすることができる。
【0029】
所定面積を有して軸方向前方へ延びる給電素子が第1および第2共振用導体部を接合した誘電体基板の一方の面と反対側の面に接合され、不平衡給電材の給電部を形成して誘電体基板を貫通する第1導体に電気的に接合されているアンテナは、給電素子によって使用周波数帯域内におけるVSWR(電圧定在波比)を低い周波数において最適化することができるとともに、第1および第2共振用導体部と給電部との共振時の波長を長くすることができ、それによって使用周波数帯域を低い方へ移動させることができる。このアンテナは、第1導体に接続された給電素子の幅寸法を変更することで、使用周波数帯域の広狭を自由に調整することができる。具体的には、給電素子の幅寸法を大きくすることで、使用周波数帯域を広くすることができ、給電素子の幅寸法を小さくすることで、使用周波数帯域を狭くすることができる。
【0030】
アンテナの後方に配置されてその周り方向へ延びる電波反射部材を備え、不平衡給電材の中心軸線が電波反射部材の中心線に一致するとともに、第1および第2共振用導体部が中心線に対して面対称に配置され、第1および第2グランド用導体部が中心線に対して面対称に配置されているアンテナは、高い利得を得ることができるとともに、使用周波数帯域を広げることができることはもちろん、アンテナから発射された電波が電波反射部材によって反射されることで、アンテナから発射された電波のすべてを所定の方向へ発射することができるとともに、所定方向から進入する電波をアンテナ全体で受信することができ、広い使用周波数帯域を有するアンテナに特定方向への指向性を持たせることができる。
【0031】
電波反射部材がアンテナの後方を取り囲むようにアンテナの周り方向へ円弧を画いているアンテナは、アンテナの後方へ発射された電波が電波反射部材によって確実に反射され、その電波がアンテナの前方へ発射されるから、アンテナから発射された電波のすべてをアンテナの前方へ発射することができるとともに、前方から進入する電波が電波反射材によってアンテナに向かって確実に反射され、反射材によって反射された電波をアンテナ全体で受信することができ、広い使用周波数帯域を有するアンテナに特定方向への指向性を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】一例として示すアンテナの斜視図。
【図2】図1の2−2線矢視断面図。
【図3】図1の3−3線端面図。
【図4】離間寸法と使用周波数帯域との相関関係を示す図。
【図5】図1のアンテナの使用の一例を示す斜視図。
【図6】図5の正面図。
【図7】図5の上面図。
【図8】他の一例として示すアンテナの斜視図。
【図9】図8の9−9線矢視断面図。
【図10】図8のアンテナの使用の一例を示す斜視図。
【図11】図10の正面図。
【図12】図10の上面図。
【図13】VSWR(電圧定在波比)と使用帯域との相関関係を示す図。
【図14】アンテナのインピーダンスを示すスミスチャート。
【図15】アンテナの3平面の周り方向において計測した電波強度を示す図。
【図16】アンテナの3平面の周り方向において計測した電波強度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
一例として示すアンテナ10Aの斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかるアンテナの実施形態の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、図1の2−2線矢視断面図であり、図3は、図1の3−3線端面図である。図4は、離間寸法と使用周波数帯域との相関関係を示す図である。図1では、軸方向を矢印Aで示し、径方向を矢印Bで示すとともに、軸方向前方を矢印A1で示し、軸方向後方を矢印A2で示す。図1では、中心軸線S1を一点鎖線で示す。
【0034】
アンテナ10Aは、不平衡給電材11(同軸ケーブルまたはセミリジットケーブル)および誘電体基板12と、共振用導体13およびグランド用導体14と、給電素子15とから形成されている。誘電体基板12は、所定の誘電率を有するガラスエポキシから作られている。誘電体基板12は、所定の厚みを有する板状に成型され、その平面形状が軸方向へ長い方形を有する。誘電体基板12は、不平衡給電材11が位置する一方の面16(上面)と、その反対側に位置する他方の面17(下面)とを有する。誘電体基板12は、アンテナ10Aにおいて電荷を蓄積する容量性(コンデンサ)として機能する。誘電体基板12は、ガラスエポキシの他に、所定の誘電率を有する熱可塑性合成樹脂や熱硬化性合成樹脂から作ることもできる。
【0035】
不平衡給電材11は、所定長さを有して軸方向へ延びている。不平衡給電材11は、図1,2に示すように、棒状の細長い第1導体18(中心金属導体)と、第1導体18の外周面を包被する断面円形の絶縁体19と、絶縁体19の外周面を包被する断面円筒状の第2導体20(外側金属導体)とから作られている。不平衡給電材11では、第1導体18の外周面と絶縁体19の内周面とが固着され、絶縁体19の外周面と第2導体20の内周面とが固着されている。不平衡給電材11は、所定長さ(約λ/4)に設定されて軸方向前方へ延びる給電部21と、所定長さ(約λ/4)に設定されて給電部21から軸方向後方へ延びる無給電部22とを有する(長さはλ/4に30mm程度付加可能)。不平衡給電材11の後端には、コネクタ23が取り付けられている。
【0036】
給電部21は、給電素子15と第1導体18とから形成されて軸方向へ略直線状に延びている。なお、給電部21は、第1導体18のみから形成されていてもよいが、比帯域を広くするために給電素子15を接続している。給電部21が第1導体18のみの場合は、第1導体18が給電素子15に替わり、その第1導体18が所定長さ(約λ/4)に設定されて軸方向へ略直線状に延びる。無給電部22は、第1導体18と絶縁体19と第2導体20とから形成され、給電部21から軸方向後方へ略直線状に延びている。第1導体18や第2導体20には、アルミニウムや銅等の導電性金属を使用することができ、絶縁体19には、不平衡給電材11のインピーダンスを固定するための材料となる熱可塑性合成樹脂(特にプラスチック系の誘電率を有するポリテトラフルオロエチレン)を使用することができる。
【0037】
共振用導体13は、給電部21を挟んで径方向へ離間して並ぶ第1共振用導体部24aおよび第2共振用導体部24bから形成されている。第1および第2共振用導体部24a,24bは、導電性金属(アルミニウムや銅等)から作られ、所定面積を有する板状に成型されている。第1共振用導体部24aは、不平衡給電材11(給電部21)の径方向外方へ離間するとともに、給電部21に並行してグランド用導体14から軸方向前方へ延びている。第2共振用導体部24bは、不平衡給電材11(給電部21)を挟んで第1共振用導体部24aの反対側に位置し、不平衡給電材11の径方向外方へ離間するとともに、給電部21に並行してグランド用導体14から軸方向前方へ延びている。
【0038】
第1および第2共振用導体部24a,24bは、誘電体基板12の一方の面16(上面)に接合されている。第1および第2共振用導体部24a,24bは、不平衡給電材11の給電部21と共振する。第1および第2共振用導体部24a,24bは、それらの平面形状が同形同大であり、それらの平面形状が不平衡給電材11の中心軸線S1に対して面対称の関係(鏡像関係)にある。
【0039】
第1および第2共振用導体部24a,24bは、第1内側縁〜第3内側縁25〜27と、外側縁28および外端縁29とを有する。第1内側縁25は、グランド用導体14の側(無給電部22の側)に位置し、給電部21から径方向外方へ延びている。第2内側縁26は、第1内側縁25につながり、第1内側縁25の径方向外端から給電部21に対向して軸方向前方へ延びている。第3内側縁27は、第2内側縁26につながり、第2内側縁26の軸方向先端から軸方向前方へ末広がりに傾斜(軸線方向前方へ向かって径方向外方へ傾斜)して延びている。外側縁28は、それら内側縁25〜27の外側(径方向外方)に位置し、内側縁26と平行して軸方向前方へ延びている。外端縁29は、軸方向前方に位置し、第3内側縁27の軸方向先端から外側縁の軸方向先端に向かって径方向外方へ延びている。
【0040】
第1および第2共振用導体部24a,24bでは、それらの第1内側縁25の径方向の長さ寸法が同一であり、それらの第2内側縁26の軸方向の長さ寸法が同一である。また、それらの第3内側縁27の軸方向の長さ寸法が同一であり、それらの外側縁28の軸方向の長さ寸法が同一であるとともに、それらの外端縁29の径方向の長さ寸法が同一である。第1および第2共振用導体部24a,24bでは、それらの第2内側縁26と給電部21の中心(中心軸線S1)との間の離間寸法L1(第1離間寸法)が同一であり、それらの第2内側縁26が給電部21に対して平行して延びている。
【0041】
アンテナで10Aは、第1および第2共振用導体部24a,24bの第2内側縁26と不平衡給電材11の給電部21の中心(中心軸線S1)との間の離間寸法L1(第1離間寸法)が2〜9mmの範囲にある。離間寸法L1が9mmを超過すると、アンテナ10Aにおける使用可能な周波数帯域が最も広い状態で飽和し、それ以上アンテナ10Aの周波数帯域を広げることができないのみならず、離間寸法L1を大きくし過ぎると、不平衡給電材11の給電部21と第1および第2共振用導体部24a,24bとを共振させることができない場合がある。
【0042】
アンテナ10Aは、離間寸法L1を前記範囲において変更することで、使用周波数帯域の広狭を自由に調整することができ、共振帯域を安定化させることができる。具体的には、離間寸法L1を大きくすることで、使用周波数帯域を広くすることができ、離間寸法L1を小さくすることで、使用周波数帯域を狭くし、共振帯域内のVSWRを安定化させることができる。アンテナ10Aは、図4に示すように、離間寸法L1が2mm(a点)から大きくなるにつれて使用周波数帯域が急勾配に広がり、離間寸法L1が9mm(b点)で使用周波数帯域が最も広い状態となり、離間寸法L1がそれ以上大きくなったとしても、アンテナ10Aの使用周波数帯域は略一定となる。
【0043】
アンテナ10Aは、離間寸法L1を2〜9mmの範囲にすることで、給電部21と第1および第2共振用導体部24a,24bとの電波の共振効率が最適となり、給電部21と第1および第2共振用導体部24a,24bとを効率よく共振させることができるとともに、アンテナ10Aにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。
【0044】
第1および第2共振用導体部24a,24bでは、不平衡給電材11の中心軸線S1に対する第3内側縁27の傾斜角度α1が15〜60°の範囲にある。なお、不平衡給電材11の中心軸線S1に対する第1共振用導体部24aの第3内側縁27の傾斜角度α1と不平衡給電材11の中心軸線S1に対する第2共振用導体部24bの第3内側縁27の傾斜角度α1とは同一である。傾斜角度α1が15°未満または60°を超過すると、不平衡給電材11の給電部21と第1および第2共振用導体部24a,24bとの共振が不十分になり、複数の共振周波数を得ることができず、アンテナ10Aにおいて使用可能な周波数帯域を広げることができない。アンテナ10Aは、傾斜角度α1を15〜60°の範囲にすることで、給電部21と第1および第2共振用導体部24a,24bとの電波の共振効率が最適となり、給電部21と第1および第2共振用導体部24a,24bとを効率よく共振させることができる。
【0045】
グランド用導体14は、固定部30と、無給電部22を挟んで径方向に並ぶ第1グランド用導体部31aおよび第2グランド用導体部31bとから形成されている。グランド用導体14は、共振用導体13と一体に作られており、共振用導体13につながっている。共振用導体13およびグランド用導14体の両者を含めた軸方向の長さ寸法は、約λ/4の設定されている。固定部30は、導電性金属(アルミニウムや銅等)から作られ、所定面積を有する板状に成型されて第1および第2グランド用導体部31a,31bの間に位置している。固定部30は、径方向へ延びる帯状の第1支持部分32と、第1支持部分32から軸方向後方へ延びる帯状の第2支持部分33とから形成されている。固定部30では、不平衡給電材11の第2導体20の周面が第1および第2支持部分32,33に当接し、第2導体20が第1および第2支持部分32,33に溶接(半田付け等)(固定手段)によって電気的に接続(固定)されている。
【0046】
第1および第2グランド用導体部31a,31bは、導電性金属(アルミニウムや銅等)から作られ、所定面積を有する板状に成型されている。第1グランド用導体部31aは、固定部30の第1支持部分32につながって不平衡給電材11(無給電部22)の径方向外方へ離間するとともに、無給電部22に並行して共振用導体13から軸方向後方へ延びている。第2グランド用導体部31bは、不平衡給電材11を挟んで第1グランド用導体部31aの反対側に位置し、固定部30の第1支持部分32につながって不平衡給電材11(無給電部22)の径方向外方へ離間するとともに、無給電部22に並行して共振用導体13から軸方向後方へ延びている。
【0047】
固定部30と第1および第2グランド用導体部31a,31bとは、誘電体基板12の一方の面16(第1および第2共振用導体部24a,24bが接合された誘電体基板12の面と同一の面)に接合されている。第1および第2グランド用導体部31a,31bは、不平衡給電材11の無給電部22と共振する。第1および第2グランド用導体部31a,31bは、それらの平面形状が同形同大であり、それらの平面形状が不平衡給電材11の中心軸線S1に対して面対称の関係(鏡像関係)にある。
【0048】
第1および第2グランド用導体部31a,31bは、第1内側縁〜第3内側縁34〜36と、外側縁37とを有する。第1内側縁34は、共振用導体13の側(給電部21の側)に位置し、無給電部22から軸方向後方へ末広がりに傾斜(軸線方向後方へ向かって径方向外方へ傾斜)して延びている。第2内側縁35は、第1内側縁34につながり、第1内側縁34の径方向外端から無給電部22に対向して軸方向後方へ延びている。第3内側縁36は、第2内側縁35につながり、第2内側縁35の軸方向先端から軸方向後方へ末広がりに傾斜(軸線方向後方へ向かって径方向外方へ傾斜)して延びている。外側縁37は、それら内側縁34〜36の外側(径方向外方)に位置し、内側縁35と平行して軸方向前方へ延びている。
【0049】
第1および第2グランド用導体部31a,31bでは、それらの第1内側縁34の軸方向の長さ寸法が同一であり、それらの第2内側縁35の軸方向の長さ寸法が同一である。また、それらの第3内側縁36の軸方向の長さ寸法が同一であり、それらの外側縁37の軸方向の長さ寸法が同一である。第1および第2グランド用導体部31a,31bでは、それらの第2内側縁35と無給電部22(第2導体20の表面)との間の離間寸法L2(第2離間寸法)が同一であり、それらの第2内側縁35が無給電部22に対して平行して延びている。
【0050】
アンテナ10Aでは、第1および第2グランド用導体部31a,31bの第2内側縁35と不平衡給電材11の無給電部22(第2導体20の表面)との間の離間寸法L2が3〜10mmの範囲にある。アンテナ10Aでは、離間寸法L2が離間寸法L1よりも大きい。なお、離間寸法L1と離間寸法L2とが同一であってもよい。離間寸法L2が3mm未満では、不平衡給電材11の無給電部22と第1および第2グランド用導体部31a,31bとの共振が不十分になり、複数の共振周波数を得ることができず、アンテナ10Aにおいて使用可能な周波数帯域を広げることができない。離間寸法L2が10mmを超過すると、アンテナ10Aにおける使用可能な周波数帯域が最も広い状態で飽和し、それ以上アンテナ10Aの周波数帯域を広げることができないのみならず、離間寸法L2を大きくし過ぎると、不平衡給電材11の無給電部22と第1および第2グランド用導体部31a,31bとが共振帯域内において不安定になる場合がある。
【0051】
アンテナ10Aは、離間寸法L2を前記範囲において変更することで、使用周波数帯域の広狭を自由に調整することができる。具体的には、離間寸法L2を大きくすることで、使用周波数帯域を広くすることができ、離間寸法L2を小さくすることで、使用周波数帯域を狭くし、共振帯域内のVSWRを安定化させることができる。アンテナ10Aは、図4に示すように、離間寸法L2が3mm(a点)から大きくなるにつれて使用周波数帯域が急勾配に広がり、離間寸法L2が10mm(b点)で使用周波数帯域が最も広い状態となり、離間寸法L2がそれ以上大きくなったとしても、アンテナ10Aの使用周波数帯域は略一定となる。
【0052】
アンテナ10Aは、離間寸法L2を3〜10mmの範囲にすることで、無給電部22と第1および第2グランド用導体部31a,31bとの電波の共振効率が最適となり、無給電部22と第1および第2グランド用導体部31a,31bとを効率よく共振させることができるとともに、アンテナ10Aにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。
【0053】
第1および第2グランド用導体部31a,31bでは、不平衡給電材11の中心軸線S1に対する第1内側縁34の傾斜角度α2が45〜80°の範囲にある。なお、不平衡給電材11の中心軸線S1に対する第1グランド用導体部31aの第1内側縁34の傾斜角度α2と不平衡給電材11の中心軸線S1に対する第2グランド用導体部31bの第1内側縁34の傾斜角度α2とは同一である。傾斜角度α2が45°未満または80°を超過すると、不平衡給電材11の無給電部22と第1および第2グランド用導体部31a,31bとの共振が不十分になり、複数の共振周波数を得ることができず、アンテナ10Aにおいて使用可能な周波数帯域を広げることができない。アンテナ10Aは、傾斜角度α2を45〜80°の範囲にすることで、無給電部22と第1および第2グランド用導体部31a,31bとの電波の共振効率が最適となり、無給電部22と第1および第2グランド用導体部31a,31bとを効率よく共振させることができる。
【0054】
第1および第2グランド用導体部31a,31bでは、不平衡給電材11の中心軸線S1に対する第3内側縁36の傾斜角度α3が15〜60°の範囲にある。なお、不平衡給電材11の中心軸線S1に対する第1グランド用導体部31aの第3内側縁36の傾斜角度α3と不平衡給電材11の中心軸線S1に対する第2グランド用導体部31bの第3内側縁36の傾斜角度α3とは同一である。傾斜角度α3が15°未満または60°を超過すると、不平衡給電材11の無給電部22と第1および第2グランド用導体部31a,31bとの共振が不十分になり、複数の共振周波数を得ることができず、アンテナ10Aにおいて使用可能な周波数帯域を広げることができない。アンテナ10Aは、傾斜角度α3を15〜60°の範囲にすることで、無給電部22と第1および第2グランド用導体部31a,31bとの電波の共振効率が最適となり、無給電部22と第1および第2グランド用導体部31a,31bとを効率よく共振させることができる。
【0055】
給電素子15は、共振用導体13の第1および第2共振用導体部24a,24bの間に位置し、不平衡給電材11の給電部21を形成する第1導体18に電気的に接続されている。給電素子15は、所定面積を有して第1導体18から軸方向前方へ延びている。給電素子15は、導電性金属(アルミニウムや銅等)から作られており、軸方向へ長い帯状に成型され、軸方向の長さ寸法が約λ/4に設定されている。給電素子15は、誘電体基板12の一方の面16(第1および第2共振用導体部24a,24bが接合された誘電体基板12の面と同一の面)に接合されている。
【0056】
給電素子15は、その幅寸法L3がアンテナ10Aの使用周波数帯域によって異なり、その幅寸法L3を変更することで、使用周波数帯域の広狭を自由に調整することができる。具体的には、給電素子15の幅寸法L3を大きくすることで、使用周波数帯域を広くすることができ、給電素子15の幅寸法L3を小さくすることで、使用周波数帯域を狭くすることができる。アンテナ10Aは、第1導体18に給電素子15を接続することで、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を低い周波数において最適化することができるとともに、給電部21と第1および第2共振用導体部24a,24bとの共振波長を長くすることができ、それによって使用周波数帯域を低い方へ移動させることができる。
【0057】
アンテナ10Aは、所定の誘電率を有する誘電体基板12が誘電体として機能することで、所定面積の板状に成型されて誘電体基板12に接合された第1および第2共振用導体部24a,24bと給電部21とが高い効率で容易に共振しつつ、所定面積の板状に成型されて誘電体基板12に接合された第1および第2グランド用導体部31a,31bと無給電部22とが高い効率で容易に共振し、複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナ10Aにおける使用周波数帯域(比帯域)を大幅に広げることができる。アンテナ10Aは、高い利得を得ることができるのみならず、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ブロードバンド)における使用が可能であり、1本のみで広帯域の電波を送受信可能なアンテナ10Aを作ることができる。
【0058】
アンテナ10Aは、第1および第2共振用導体部24a,24bの第3内側縁27を第2内側縁26から軸方向前方へ末広がりに傾斜させ、第1および第2グランド用導体部31a,31bの第1内側縁34を無給電部22から軸方向後方へ末広がりに傾斜させるとともに、第1および第2グランド用導体部31a,31bの第3内側縁36を第2内側縁35から軸方向後方へ末広がりに傾斜させることで、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を安定化させることができる。アンテナ10Aは、第1および第2共振用導体部24a,24bの第3内側縁27の傾斜角度α1と第1および第2グランド用導体部31a,31bの第1内側縁34の傾斜角度α2および第3内側縁36の傾斜角度α3とのうちの少なくとも1つを調整することで、使用周波数帯域を高い方と低い方とのいずれかへ移動させることができ、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができる。
【0059】
図5は、図1のアンテナ10Aの使用の一例を示す斜視図であり、図6は、図5の正面図である。図7は、図5の上面図である。図6,7では、縦方向を矢印Cで示し(図6のみ)、周り方向を矢印Dで示すとともに(図7のみ)、前後方向Eを矢印で示す(図7のみ)。また、図5,7では、前後方向前方を矢印E1で示し、前後方向後方を矢印E2で示す(図7のみ)。図6では、中心線S2を二点鎖線で示す。アンテナ10Aは、その使用の一例として電波反射部材38を備えている。
【0060】
電波反射部材38は、アンテナ10Aから前後方向後方へ所定距離離間して配置されている。電波反射部材38は、図5,7に示すように、半円形に成形され、アンテナ10Aの前後方向後方を取り囲むようにアンテナ10Aの周り方向へ円弧(正円)を画いている。電波反射部材38は、その縦方向の長さ寸法がアンテナ10Aの不平衡給電材11(コネクタ23を含まず)と給電素子15との両者の軸方向の長さ寸法と略同一かそれよりも大きい。電波反射部材38は、アンテナ10Aから発射された電波を反射するとともに、送信された電波をアンテナ10Aに向かって反射する。
【0061】
電波反射部材38は、アンテナ10Aの周り方向へ円弧(正円)を画く支持部39と反射部40とから形成されている。支持部39は、所定の誘電率を有する熱可塑性合成樹脂(特にプラスチック系の誘電率を有するポリテトラフルオロエチレン)から作られている。反射部34は、導電性金属(アルミニウムや銅、メッキ等)から作られている。導電性金属は、支持部39を形成する熱可塑性合成樹脂の内周面に接合されている。なお、電波反射部材38は、半円形に限らず、その円周の長さを自由に設定することができる。また、アンテナ10Aを取り囲むようにその周り方向へ延びていればよく、必ずしも正円を画く必要はなく、半楕円形やV形であってもよい。
【0062】
このアンテナ10Aの使用例では、不平衡給電材11の長さ方向へ延びる中心軸線S1(第1導体16の中心)と電波反射部材38を周り方向に二分して長さ方向へ延びる反射部材38の中心線S2とが一致するとともに、中心軸線S1から反射部材38の一方の側縁41までの距離と中心軸線S1から反射部材38の他方の側縁42までの距離とが同一となるように、反射部材38に対してアンテナ10Aが配置されている。また、第1および第2共振用導体部24a,24bが中心線S2に対して面対称に配置され、第1および第2グランド用導体部31a,31bが中心線S2に対して面対称に配置されている。
【0063】
アンテナ10Aでは、不平衡給電材11の給電部21の中心軸線S1(第1導体18の中心)と電波反射部材38の内周面(反射部40)との離間距離が約λ/4に設定されている。アンテナ10Aは、不平衡給電材11の中心軸線S1と電波反射部材38の内周面との離間距離がλ/4に設定されているが、図7に示すように、不平衡給電材11の中心軸線S1と電波反射部材38の中心線S2とを結ぶ移動線S3上を移動させることができる。それによって、アンテナ10Aの放射利得と共振周波数とを自由に微調整することができる。アンテナ10Aでは、不平衡給電材11の中心軸線S1と電波反射部材38の両側縁41,42とのなす角度が180°である。なお、角度は180°のみならず、他のあらゆる角度に設定することができる。
【0064】
アンテナ10Aは、図5,7に矢印E1,E2で示すように、それから前後方向後方へ発射された電波が電波反射部材38(反射部40)によって反射され、反射された電波とアンテナ10Aの前面側(反射部材38の非対向側)から発射された電波とが前後方向前方へ向かって発射される。また、アンテナ10Aに送信された電波のうち、アンテナ10Aに受信されずにアンテナ10Aを通過した電波が電波反射部材38(反射部40)によってアンテナ10Aに向かって反射される。
【0065】
電波反射部材38を備えたアンテナ10Aは、高い利得を得ることができるとともに、その使用周波数帯域を広げることができることはもちろん、アンテナ10Aの後方へ発射された電波が電波反射部材38によって反射され、その電波が前後方向前方へ発射されるから、アンテナ10Aから発射された電波のすべてを前後方向前方(所定の方向)へ発射することができるとともに、前後方向前方(所定の方向)から進入する電波をアンテナ10A全体で受信することができ、広い使用周波数帯域を有するアンテナ10Aに前後方向前方(特定方向)への指向性を持たせることができる。
【0066】
不平衡給電材11の給電部21の中心軸線S1(第1導体18の中心)と電波反射部材38の内周面との離間距離が約λ/4に設定されたアンテナ10Aは、アンテナ10Aから発射された電波が効率よく電波反射部材38に達し、その電波が反射部材38によって反射されることで、アンテナ10Aから発射された電波のすべてを前後方向前方(所定の方向)へ発射することができる。また、前後方向前方(所定の方向)から進入して電波反射部材38によって反射した電波が効率よくアンテナ10Aに達し、アンテナ10Aが電波を効率よく受信することができる。
【0067】
図8は、他の一例として示すアンテナ10Bの斜視図であり、図9は、図8の9−9線矢視断面図である。図8では、軸方向を矢印Aで示し、径方向を矢印Bで示すとともに、軸方向前方を矢印A1で示し、軸方向後方を矢印A2で示す。図8では、中心軸線S1を一点鎖線で示す。アンテナ10Bは、図1のそれと同様に、不平衡給電材11(同軸ケーブルまたはセミリジットケーブル)および誘電体基板12と、共振用導体13およびグランド用導体14と、給電素子15とから形成されている。
【0068】
このアンテナ10Bにおける不平衡給電材11や誘電体基板12は図1のアンテナ10Aのそれらと同一であるから、図1と同一の符号を付すとともに、図1の説明を援用することで、その説明は省略する。なお、不平衡給電材11の給電部21を形成する第1導体18は、誘電体基板12の一方の面16(上面)において軸方向前方へ延びた後、誘電体基板12を貫通し、誘電体基板12の他方の面17(下面)に達し、他方の面17において軸方向前方へ延びている。
【0069】
共振用導体13は、給電部21を挟んで径方向へ離間して並び、誘電体基板12の一方の面16(上面)に接合された第1共振用導体部24aおよび第2共振用導体部24bから形成されている。アンテナ10Bにおける第1および第2共振用導体部24a,24bは図1のアンテナ10Aのそれらと同一であるから、図1と同一の符号を付すとともに、図1の説明を援用することで、その説明は省略する。なお、アンテナで10Bは、アンテナ10Aと同様に、不平衡給電材11の給電部21の中心(中心軸線S1)と第1および第2共振用導体部24a,24bの第2内側縁26との間の離間寸法L1(第1離間寸法)が2〜9mmの範囲にある。アンテナ10Bは、離間寸法L1を大きくすることで、使用周波数帯域を広くすることができ、離間寸法L1を小さくすることで、使用周波数帯域を狭くし、共振帯域内のVSWRを安定化させることができる。
【0070】
アンテナ10Bは、離間寸法L1が2mm(a点)から大きくなるにつれて使用周波数帯域が急勾配に広がり、離間寸法L1が9mm(b点)で使用周波数帯域が最も広い状態となり、離間寸法L1がそれ以上大きくなったとしても、アンテナ10Bの使用周波数帯域は略一定となる(図4援用)。アンテナ10Bは、離間寸法L1を2〜9mmの範囲にすることで、給電部21と第1および第2共振用導体部24a,24bとの電波の共振効率が最適となり、給電部21と第1および第2共振用導体部24a,24bとを効率よく共振させることができるとともに、アンテナ10Bにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。
【0071】
アンテナ10Bでは、不平衡給電材11の中心軸線S1に対する第1および第2共振用導体部24a,24bの第3内側縁27の傾斜角度α1が15〜60°の範囲にある。アンテナ10Bは、傾斜角度α1を15〜60°の範囲にすることで、給電部21と第1および第2共振用導体部24a,24bとの電波の共振効率が最適となり、給電部21と第1および第2共振用導体部24a,24bとを効率よく共振させることができる。
【0072】
グランド用導体14は、誘電体基板12の一方の面16(上面)に接合された固定部30と、無給電部22を挟んで径方向に並び、誘電体基板12の一方の面16(上面)に接合された第1グランド用導体部31aおよび第2グランド用導体部31bとから形成されている。グランド用導体14は、共振用導体13と一体に作られており、共振用導体13につながっている。グランド用導体14における固定部30や第1および第2グランド用導体部31a,31bは図1のアンテナ10Aのそれらと同一であるから、図1と同一の符号を付すとともに、図1の説明を援用することで、その説明は省略する。固定部30の第1および第2支持部分32,33には、不平衡給電材11の第2導体20の周面が溶接(半田付け等)(固定手段)によって電気的に接続(固定)されている。固定部30と第1および第2グランド用導体部31a,31bとは、誘電体基板12の一方の面16(第1および第2共振用導体部24a,24bが接合された誘電体基板12の面と同一の面)に接合されている。
【0073】
なお、アンテナ10Bは、アンテナ10Aと同様に、不平衡給電材11の無給電部22(第2導体20の表面)と第1および第2グランド用導体部31a,31bの第2内側縁35との間の離間寸法L2が3〜10mmの範囲にあり、離間寸法L2が離間寸法L1よりも大きい。アンテナ10Bは、離間寸法L2を大きくすることで、使用周波数帯域を広くすることができ、離間寸法L2を小さくすることで、使用周波数帯域を狭くし、共振帯域内のVSWRを安定化させることができる。
【0074】
アンテナ10Bは、離間寸法L2が3mm(a点)から大きくなるにつれて使用周波数帯域が急勾配に広がり、離間寸法L2が10mm(b点)で使用周波数帯域が最も広い状態となり、離間寸法L2がそれ以上大きくなったとしても、アンテナ10Bの使用周波数帯域は略一定となる(図4援用)。アンテナ10Bは、離間寸法L7を3〜10mmの範囲にすることで、無給電部22と第1および第2グランド用導体部31a,31bとの電波の共振効率が最適となり、無給電部22と第1および第2グランド用導体部31a,31bとを効率よく共振させることができるとともに、アンテナ10Bにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。
【0075】
アンテナ10Bでは、不平衡給電材11の中心軸線S1に対する第1および第2グランド用導体部31a,31bの第1内側縁34の傾斜角度α2が45〜80°の範囲にある。アンテナ10Bは、傾斜角度α2を45〜80°の範囲にすることで、無給電部22と第1および第2グランド用導体部31a,31bとの電波の共振効率が最適となり、無給電部22と第1および第2グランド用導体部31a,31bとを効率よく共振させることができる。アンテナ10Bでは、不平衡給電材11の中心軸線S1に対する第1および第2グランド用導体部31a,31bの第3内側縁36の傾斜角度α3が15〜60°の範囲にある。アンテナ10Bは、傾斜角度α3を15〜60°の範囲にすることで、無給電部22と第1および第2グランド用導体部31a,31bとの電波の共振効率が最適となり、無給電部22と第1および第2グランド用導体部31a,31bとを効率よく共振させることができる。
【0076】
給電素子15は、共振用導体13の第1および第2共振用導体部24a,24bの間に位置し、誘電体基板12の他方の面17(下面)に接合されている。給電素子15は、誘電体基板12を貫通して基板12の他方の面17に延びる第1導体18に電気的に接続され、第1導体18から軸方向前方へ延びている。給電素子15は、軸方向へ長い帯状に成型され、軸方向の長さ寸法が約λ/4に設定されている。給電素子15は、その幅寸法L3を大きくすることで、使用周波数帯域を広くすることができ、その幅寸法L3を小さくすることで、使用周波数帯域を狭くすることができる。アンテナ10Bは、第1導体18に給電素子15を接続することで、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を低い周波数において最適化することができるとともに、給電部21と第1および第2共振用導体部24a,24bとの共振波長を長くすることができ、それによって使用周波数帯域を低い方へ移動させることができる。
【0077】
アンテナ10Bは、所定の誘電率を有する誘電体基板12が容量性として機能することで、所定面積の板状に成型されて基板12に接合された第1および第2共振用導体部24a,24bと給電部21とが高い効率で容易に共振しつつ、所定面積の板状に成型されて誘電体基板12に接合された第1および第2グランド用導体部31a,31bと無給電部22とが高い効率で容易に共振し、複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナ10Bにおける使用周波数帯域(比帯域)を大幅に広げることができる。アンテナ10Bは、高い利得を得ることができるのみならず、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ブロードバンド)における使用が可能であり、1本のみで広帯域の電波を送受信可能なアンテナ10Bを作ることができる。
【0078】
アンテナ10Bは、第1および第2共振用導体部24a,24bの第3内側縁27を第2内側縁26から軸方向前方へ末広がりに傾斜させ、第1および第2グランド用導体部31a,31bの第1内側縁34を無給電部21から軸方向後方へ末広がりに傾斜させるとともに、第1および第2グランド用導体部31a,31bの第3内側縁36を第2内側縁35から軸方向後方へ末広がりに傾斜させることで、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を安定化させることができる。アンテナ10Bは、第1および第2共振用導体部24a,24bの第3内側縁27の傾斜角度α1と第1および第2グランド用導体部31a,31bの第1内側縁34の傾斜角度α2および第3内側縁36の傾斜角度α3とのうちの少なくとも1つを調整することで、使用周波数帯域を高い方と低い方とのいずれかへ移動させることができ、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができる。
【0079】
図10は、図8のアンテナ10Bの使用の一例を示す斜視図であり、図11は、図10の正面図である。図12は、図10の上面図である。図11,12では、縦方向を矢印Cで示し(図11のみ)、周り方向を矢印Dで示すとともに(図12のみ)、前後方向Eを矢印で示す(図12のみ)。また、図10,12では、前後方向前方を矢印E1で示し、前後方向後方を矢印E2で示す(図12のみ)。図10では、中心線S2を二点鎖線で示す。アンテナ10Bは、その使用の一例として電波反射部材38を備えている。
【0080】
電波反射部材38は、アンテナ10Bから前後方向後方へ所定距離離間して配置されている。電波反射部材38は、図10,12に示すように、半円形に成形され、アンテナ10Bの前後方向後方を取り囲むようにアンテナ10Bの周り方向へ円弧(正円)を画いている。電波反射部材38は、その縦方向の長さ寸法がアンテナ10Bの不平衡給電材11(コネクタ23を含まず)と給電素子15との両者の軸方向の長さ寸法と略同一かそれよりも大きい。電波反射部材38は、アンテナ10Bから発射された電波を反射するとともに、送信された電波をアンテナ10Bに向かって反射する。
【0081】
電波反射部材38はアンテナ10Aに使用されたそれと同一であるから、図5〜7と同一の符号を付すとともに、図5〜7の説明を援用することで、その説明は省略する。このアンテナ10Bの使用例では、不平衡給電材11の長さ方向へ延びる中心軸線S1(第1導体16の中心)と電波反射部材38を周り方向に二分して長さ方向へ延びる反射部材38の中心線S2とが一致するとともに、中心軸線S1から反射部材38の一方の側縁41までの距離と中心軸線S1から反射部材38の他方の側縁42までの距離とが同一となるように、反射部材38に対してアンテナ10Bが配置されている。また、第1および第2共振用導体部24a,24bが中心線S2に対して面対称に配置され、第1および第2グランド用導体部31a,31bが中心線S2に対して面対称に配置されている。アンテナ10Bでは、不平衡給電材11の給電部21の中心軸線S1(第1導体18の中心)と電波反射部材38の内周面(反射部40)との離間距離が約λ/4に設定されている。
【0082】
アンテナ10Bは、図10,12に矢印E1,E2で示すように、それから前後方向後方へ発射された電波が電波反射部材38(反射部40)によって反射され、反射された電波とアンテナ10Bの前面側(反射部材38の非対向側)から発射された電波とが前後方向前方へ向かって発射される。また、アンテナ10Bに送信された電波のうち、アンテナ10Bに受信されずにアンテナ10Bを通過した電波が電波反射部材38(反射部40)によってアンテナ10Bに向かって反射される。
【0083】
電波反射部材38を備えたアンテナ10Bは、高い利得を得ることができるとともに、その使用周波数帯域を広げることができることはもちろん、アンテナ10Bの後方へ発射された電波が電波反射部材38によって反射され、その電波が前後方向前方へ発射されるから、アンテナ10Bから発射された電波のすべてを前後方向前方(所定の方向)へ発射することができるとともに、前後方向前方(所定の方向)から進入する電波をアンテナ10B全体で受信することができ、広い使用周波数帯域を有するアンテナ10Bに前後方向前方(特定方向)への指向性を持たせることができる。
【0084】
不平衡給電材11の給電部21の中心軸線S1(第1導体18の中心)と電波反射部材38の内周面との離間距離が約λ/4に設定されたアンテナ10Bは、アンテナ10Bから発射された電波が効率よく電波反射部材38に達し、その電波が反射部材38によって反射されることで、アンテナ10Bから発射された電波のすべてを前後方向前方(所定の方向)へ発射することができる。また、前後方向前方(所定の方向)から進入して電波反射部材38によって反射した電波が効率よくアンテナ10Bに達し、アンテナ10Bが電波を効率よく受信することができる。
【0085】
図13は、それらアンテナ10A,10BにおけるVSWR(電圧定在波比)と使用帯域との相関関係を示す図であり、図14は、アンテナ10A,10Bのインピーダンスを示すスミスチャートである。図15,16は、アンテナ10A,10Bの3平面(XY面、YZ面、ZX面)の周り方向において計測した電波強度を示す図である。図15は、XY面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度の計測結果を示し、図16は、YZ面またはZX面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度の計測結果を示す。
【0086】
それらアンテナ10A,10Bは、図13に示すように、使用周波数が約2.0GHz〜約4.0GHzにおいて反射係数VSWR(電圧定在波比)が2以下であり、低いVSWR(電圧定在波比)を維持した状態で、広い使用周波数帯域を持っていることが分かる。また、図14に示すように、アンテナ10A,10Bのインピーダンスが50Ωであり、図15に示すように、XY面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度が略真円を画き、図16に示すように、YZ面またはZX面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度がバタフライ型を画いており、アンテナ10A,10Bが良好な無指向性を有していることが分かる。
【符号の説明】
【0087】
10A アンテナ
10B アンテナ
11 不平衡給電材
12 基盤
13 共振用導体
14 グランド用導体
15 給電素子
16 一方の面
17 他方の面
18 第1導体
19 第1絶縁体
20 第2導体
21 給電部
22 無給電部
24a 第1共振用導体部
24b 第2共振用導体部
25 第1内側縁
26 第2内側縁
27 第3内側縁
28 外側縁
29 外端縁
30 固定部
31a 第1グランド用導体部
31b 第2グランド用導体部
32 第1支持部分
33 第2支持部分
34 第1内側縁
35 第2内側縁
36 第3内側縁
37 外側縁
38 電波反射部材
L1 離間寸法(第1離間寸法)
L2 離間寸法(第2離間寸法)
S1 中心軸線
S2 中心線
α1 傾斜角度
α2 傾斜角度
α3 傾斜角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さの給電部およびその給電部につながる所定長さの無給電部を有する不平衡給電材と、所定の誘電率を有する誘電体基板と、所定面積を有する板状に成型されて前記不平衡給電材の給電部と共振する共振用導体と、所定面積を有する板状に成型されて前記共振用導体と一体となり、前記不平衡給電材の無給電部と共振するグランド用導体とを備え、
前記共振用導体が、前記不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、前記給電部に並行して前記不平衡給電材の軸方向前方へ延びる第1共振用導体部と、前記不平衡給電材を挟んで前記第1共振用導体部の反対側に位置し、前記不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、前記給電部に並行して前記軸方向前方へ延びる第2共振用導体部とから形成され、
前記グランド用導体が、前記不平衡給電材に固定手段を介して電気的に接続された固定部と、前記固定部につながって前記不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、前記無給電部に並行して前記不平衡給電材の軸方向後方へ延びる第1グランド用導体部と、前記不平衡給電材を挟んで前記第1グランド用導体の反対側に位置し、前記固定部につながって前記不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、前記無給電部に並行して前記軸方向後方へ延びる第2グランド用導体部とから形成され、
前記共振用導体の第1および第2共振用導体部が、前記誘電体基板の一方の面に接合され、前記グランド用導体の固定部と第1および第2グランド用導体部とが、前記第1および第2共振用導体部を接合した前記誘電体基板の一方の面と同一の面に接合されていることを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
前記第1共振用導体部の平面形状と前記第2共振用導体部の平面形状とが、前記不平衡給電材の中心軸線に対して面対称の関係にあり、前記第1グランド用導体部の平面形状と前記第2グランド用導体部の平面形状とが、前記不平衡給電材の中心軸線に対して面対称の関係にある請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記第1および第2共振用導体部が、前記グランド用導体の側に位置して前記給電部から前記径方向外方へ延びる第1内側縁と、前記第1内側縁につながって前記給電部に対向して前記軸方向前方へ延びる第2内側縁と、前記第2内側縁から軸方向前方へ末広がりに傾斜して延びる第3内側縁と、それら内側縁の外側に位置して前記軸方向前方へ延びる外側縁とを有し、前記第1および第2共振用導体部では、それらの第2内側縁と前記給電部との間の離間寸法が同一であり、それらの第2内側縁が前記給電部に対して平行して延びている請求項1または請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記不平衡給電材の中心軸線に対する前記第1および第2共振用導体部の第3内側縁の傾斜角度が、15〜60°の範囲にある請求項3に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記第1および第2グランド用導体部が、前記共振用導体の側に位置して前記無給電部から前記軸方向後方へ末広がりに傾斜して延びる第1内側縁と、前記第1内側縁につながって前記無給電部に対して前記軸方向後方へ延びる第2内側縁と、それら内側縁の外側に位置して前記軸線方向後方へ延びる外側縁とを有し、前記第1および第2グランド用導体部では、それらの第2内側縁と前記無給電部との間の離間寸法が同一であり、それらの第2内側縁が前記無給電部に対して平行して延びている請求項3または請求項4に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記不平衡給電材の中心軸線に対する前記第1および第2グランド用導体部の第1内側縁の傾斜角度が、45〜80°の範囲にある請求項5に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記第1および第2グランド用導体部が、それらの第2内側縁から軸方向後方へ末広がりに傾斜して延びる第3内側縁を有し、前記不平衡給電材の中心軸線に対する前記第1および第2グランド用導体部の第3内側縁の傾斜角度が、30〜60°の範囲にある請求項5または請求項6に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記給電部の中心と前記第1および第2共振用導体部の第2内側縁との間の第1離間寸法が、2〜9mmの範囲にあり、前記無給電部の外周面と前記第1および第2グランド用導体部の第2内側縁との間の第2離間寸法が、3〜10mmの範囲にあり、前記第2離間寸法が、前記第1離間寸法と同一または該第1離間寸法よりも大きい請求項5ないし請求項7いずれかに記載のアンテナ。
【請求項9】
前記不平衡給電材が、第1導体と、前記第1導体の外周面を包被する絶縁体と、前記絶縁体の外周面を包被する第2導体とから作られ、前記不平衡給電材の給電部が、前記第1導体から形成され、前記不平衡給電材の無給電部が、前記第1および第2導体と前記絶縁体とから形成され、前記グランド用導体の固定部が、前記第2導体に電気的に接続されている請求項1ないし請求項8いずれかに記載のアンテナ。
【請求項10】
前記アンテナが、前記共振用導体の第1および第2共振用導体部の間に位置し、所定面積を有して前記軸方向前方へ延びる給電素子を有し、前記給電素子が、前記第1および第2共振用導体部を接合した前記誘電体基板の一方の面と同一の面に接合され、前記不平衡給電材の給電部を形成する第1導体に電気的に接合されている請求項9に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記アンテナが、前記共振用導体の第1および第2共振用導体部の間に位置し、所定面積を有して前記軸方向前方へ延びる給電素子を有し、前記給電素子が、前記第1および第2共振用導体部を接合した前記誘電体基板の一方の面と反対側の面に接合され、前記不平衡給電材の給電部を形成して前記誘電体基板を貫通する第1導体に電気的に接合されている請求項9に記載のアンテナ。
【請求項12】
前記アンテナが、その後方に配置されて該アンテナの周り方向へ延びる電波反射部材を備え、前記アンテナでは、前記不平衡給電材の中心軸線と前記電波反射部材を前記周り方向に二分する該電波反射部材の中心線とが一致するとともに、前記第1および第2共振用導体部が前記中心線に対して面対称に配置され、前記第1および第2グランド用導体部が前記中心線に対して面対称に配置されている請求項1ないし請求項11いずれかに記載のアンテナ。
【請求項13】
前記電波反射部材が、前記アンテナの後方を取り囲むように該アンテナの周り方向へ円弧を画いている請求項12に記載のアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−238944(P2012−238944A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105051(P2011−105051)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(511068692)株式会社サクマアンテナ (3)
【Fターム(参考)】