説明

アントラセン系有機ゼオライト類縁体、製造法及びその用途

【課題】 空気や湿気に安定で取り扱いが容易であるとともに優れた吸着性能を有する有機ゼオライトの提供。
【解決手段】 例えば、9,10−ビス〔3,5−ビス(4−ヒドロキシビフェニル)−1−フェニル〕アントラセンを酢酸エチルに溶解させ、クロロホルムを加えて得られる多孔質有機結晶構造を有するアントラセン系有機ゼオライト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質有機結晶構造を有するアントラセン系有機ゼオライト類縁体、その製造法、その用途及びその製造中間体類に関する。
【背景技術】
【0002】
9,10−ビス(3,5−ジヒドロキシ−1−フェニル)アントラセン(以下、BHPAと略記する。)は、水素結合ネットワークを形成し、多孔質的な挙動を示すことが報告されている(非特許文献1,2参照)。この多孔質有機結晶は、固体状態で水、メタノール、アセトン、その他の極性溶媒(ゲスト分子)を吸着する能力を有する。
しかし、BHPAは、ゲスト分子を結晶中から除去した状態(初期状態)においては、水素結合ネットワークによる空洞が潰れている。このため、初期状態における比表面積は、約7m2/g程度と非常に小さい。また、メタンガス、窒素ガスなどの相互作用力の弱いゲスト分子はほとんど吸着されない(空洞を拡げるために必要な安定化エネルギーが得られない)という欠点もある。
【0003】
また、BHPAを金属アルコキシドにてネットワーク化した非晶性ポリマーも知られている(非特許文献3参照)。このポリマーは多孔質である上、金属錯体であるため潰れない空洞を有するものであり、固体ルイス酸として働くことが明らかとなっている。
しかし、この金属アルコキシド型多孔質は、空気や湿気に不安定で取り扱いが容易ではない。
また、潰れない空洞を有する有機結晶のその他の例でも、そのほとんどが有機金属錯体であり、これらは、銅、コバルト、カドミウム及びマンガン等の環境上有害な重金属を用いているという欠点がある(有機金属錯体からなる有機ゼオライト類縁体について:非特許文献4,5参照)。
【0004】
一方、水素結合力が強く、ゲスト分子を除去した状態でも空洞が潰れない水素結合ネットワークを有する、金属原子等を含まない純粋な有機化合物の多孔質有機結晶からなる有機ゼオライト類縁体の構築例が、1件報告されている(特許文献1参照)。この類縁体は、9,10−ビス(3,5−ジカルボキシ−1−フェニル)アントラセン(以下、BCAPAと略記する。)化合物であり、メタンや低分子有機溶媒類を吸着することが確認されている。しかし、その吸着性能は必ずしも充分ではなく、より実用的なものとするためには、それらの吸着性能の向上が必須課題である。
【0005】
【特許文献1】特開2004−256487
【非特許文献1】「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエテイ(J. Am. Chem. Soc.)」,(米国),1995年,第117巻,第32号,p.8341−8352
【非特許文献2】「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエテイ(J. Am. Chem. Soc.)」,(米国),1998年,第120巻,第35号,p.8933−8940
【非特許文献3】「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエテイ(J. Am. Chem. Soc.)」,(米国),1998年,第120巻,第33号,p.8539−8540
【非特許文献4】「アンゲヴァンテ・ケミー・インターナショナル・エデション(Angew. Chem. Int. Ed.)」,(ドイツ),2000年,第39巻,第12号,p.2082−2084
【非特許文献5】「ケミストリー・オブ・マテリアルズ(Chem. Mater.)」,(米国),2000年,第12巻,第5号,p.1288−1299
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、気体の吸蔵体、低濃度有機分子吸着剤、蛍光性吸着剤、金属捕集剤及び反応触媒等としての利用が期待される、空気や湿気に安定で取り扱いが容易であるとともに優れた吸着性能を有するアントラセン系有機ゼオライト類縁体、その製造法及びその用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、9,10−ビス[3,5−ビス(4−ヒドロキシビフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物、9,10−ビス[3,5−ビス(4−カルボキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物等のアントラセン構造を有する化合物が、安定で取り扱いが容易である上、優れた吸着性能を有しており、有機ゼオライト類縁体として好適な化合物であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は下記(1)〜(14)を提供する。
(1)式[1]で表される多孔質有機結晶構造を有するアントラセン系有機ゼオライト類縁体。
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基又はアミノ基を表す。p、q及びnは、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。破線は、分子間水素結合を表す。)
(2)式[2]で表される多孔質有機結晶構造を有するアントラセン系有機ゼオライト類縁体。
【化2】

(式中、R1、R2、p、q及び「波線」は上記と同じ意味を表す。)
(3)式[3]で表される多孔質有機結晶構造を有するアントラセン系有機ゼオライト類縁体。
【化3】

(式中、R1、R2、p、q及び「波線」は上記と同じ意味を表す。)
(4)式[4]で表される多孔質有機結晶構造を有するアントラセン系有機ゼオライト類縁体。
【化4】

(式中、R1、R2、p、q、n及び「波線」は上記と同じ意味を表す。)
(5)式[5]で表される多孔質有機結晶構造を有するアントラセン系有機ゼオライト類縁体。
【化5】

(式中、R1、R2、p、q及び「波線」は上記と同じ意味を表す。)
(6)式[6]で表されるアントラセン系化合物。
【化6】

(式中、R1、R2、p、q及びnは上記と同じ意味を表す。R3は、それぞれ独立してトリフルオロメチルスルホニルオキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基又はカルボキシル基を表す。)
(7)式[7]
【化7】

(式中、R1、R2、p及びqは、上記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−メトキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物を脱アルキル分解することを特徴とする、式[8]
【化8】

(式中、R1、R2、p及びqは、上記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物の製造法。
(8)式[9]
【化9】

(式中、R1、R2、p及びqは上記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス(3,5−ジヒドロキシ−1−フェニル)アントラセン化合物と、トリフルオロメタンスルホン酸無水物とを塩基の存在下に反応させて、式[10]
【化10】

(式中、R1、R2、p及びqは、上記と同じ意味を表し、Tfはトリフルオロメチルスルホニル基を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−1−フェニル]アントラセン化合物とし、この化合物を、パラジウム触媒の存在下、式[11]
【化11】

で表される4−メトキシボロン酸と反応させて、式[7]
【化12】

(式中、R1、R2、p及びqは、上記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−メトキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物として、さらにこれを脱アルキル分解することを特徴とする、式[8]
【化13】

(式中、R1、R2、p及びqは、上記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物の製造法。
(9)式[12]
【化14】

(式中、R1、R2、p及びqは、上記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−メトキシビフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物を脱アルキル分解することを特徴とする、式[13]
【化15】

(式中、R1、R2、p及びqは、上記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−ヒドロキシビフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物の製造法。
(10)式[8]
【化16】

(式中、R1、R2、p及びqは、上記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス(3,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル)アントラセン化合物と、トリフルオロメタンスルホン酸無水物とを塩基の存在下に反応させて、式[14]
【化17】

(式中、R1、R2、p、q及びTfは、上記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−トリフルオロメチルスルホニルオキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物とし、これを、パラジウム触媒の存在下、式[11]
【化18】

で表される4−メトキシボロン酸と反応させて、式[12]
【化19】

(式中、R1、R2、p及びqは、上記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−メトキシビフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物とし、さらにこれを脱アルキル分解することを特徴とする、式[13]
【化20】

(式中、R1、R2、p及びqは、上記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−ヒドロキシビフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物の製造法。
(11)式[15]
【化21】

(式中、R1、R2、p及びqは、上記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−シアノフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物を加水分解することを特徴とする式[16]
【化22】

(式中、R1、R2、p及びqは、上記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−カルボキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物の製造法。
(12)式[14]
【化23】

(式中、R1、R2、p、q及びTfは、上記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−トリフルオロメチルスルホニルオキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物と、式[17]
【化24】

(式中、Mは、水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土金属を表す。)
で表されるシアノ化合物を、パラジウム触媒の存在下反応させて、式[15]
【化25】

(式中、R1、R2、p及びqは、上記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−シアノフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物を得た後、これを加水分解することを特徴とする式[16]
【化26】

(式中、R1、R2、p及びqは、上記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−カルボキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物の製造法。
(13)[1]〜[5]のいずれかのアントラセン系有機ゼオライト類縁体からなる吸蔵体。
(14)有機分子の吸蔵用である(13)の吸蔵体。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアントラセン系有機ゼオライト類縁体は、水素結合力が強く、ゲスト分子を除去した状態でも空洞が潰れない水素結合ネットワークを有している。また、このゼオライト類縁体は、重金属を含まない純粋な有機化合物であるため、空気や湿気に安定で取り扱いが容易であるという特徴をも有している。したがって、この有機ゼオライト類縁体は、気体の吸蔵体、低濃度有機分子吸着剤、蛍光性吸着剤、金属捕集剤及び反応触媒等としての利用が期待される有望な化合物である。
本発明の代表例である式[8]、[13]及び[16]における、R1及びR2が共に水素原子である下記式で示される各化合物(BBHPA及びBCPA)からなる有機ゼオライト類縁体は、各種有機ガスの吸着性に優れた吸着剤であるため、ガスの精密分離剤などへの有効利用が考えられる。また、廃棄の観点からも有利である。
【0010】
【化27】

【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るアントラセン系有機ゼオライト類縁体は、上記式[1]〜[5]で表される。また、その原料及び中間体として使用されるアントラセン化合物は、上記式[6]で表される。これらアントラセン系有機ゼオライト類縁体を構築する代表的なアントラセン化合物は、上記式[8]、[13]及び[16]で表される。
まず、上記各式におけるR1及びR2の具体例について以下に説明する。
【0012】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、s−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、2−エチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル及び4−メチルペンチル等が挙げられる。
【0013】
炭素数1〜10のアルコキシ基としては、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、1,1−ジメチルプロポキシ、1,2−ジメチルプロポキシ、2,2−ジメチルプロポキシ、1−エチルプロポキシ、1,1,2−トリメチルプロポキシ、1,2,2−トリメチルプロポキシ、1−エチル−1−メチルプロポキシ、1−エチル−2−メチルプロポキシ、1−メチルブトキシ、2−メチルブトキシ、3−メチルブトキシ、1−エチルブトキシ、2−エチルブトキシ、1,1−ジメチルブトキシ、1,2−ジメチルブトキシ、1,3−ジメチルブトキシ、2,2−ジメチルブトキシ、2,3−ジメチルブトキシ、3,3−ジメチルブトキシ、1−メチルペンチルオキシ、2−メチルペンチルオキシ、3−メチルペンチルオキシ及び4−メチルペンチルオキシ等が挙げられる。
【0014】
炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基としては、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、i−ブトキシカルボニル、s−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、1,1−ジメチルプロポキシカルボニル、1,2−ジメチルプロポキシカルボニル、2,2−ジメチルプロポキシカルボニル、1−エチルプロポキシカルボニル、1,1,2−トリメチルプロポキシカルボニル、1,2,2−トリメチルプロポキシカルボニル、1−エチル−1−メチルプロポキシカルボニル、1−エチル−2−メチルプロポキシカルボニル、1−メチルブトキシカルボニル、2−メチルブトキシカルボニル、3−メチルブトキシカルボニル、1−エチルブトキシカルボニル、2−エチルブトキシカルボニル、1,1−ジメチルブトキシカルボニル、1,2−ジメチルブトキシカルボニル、1,3−ジメチルブトキシカルボニル、2,2−ジメチルブトキシカルボニル、2,3−ジメチルブトキシカルボニル、3,3−ジメチルブトキシカルボニル、1−メチルペンチルオキシカルボニル、2−メチルペンチルオキシカルボニル、3−メチルペンチルオキシカルボニル及び4−メチルペンチルオキシカルボニル等が挙げられる。
なお、上記において、「n」はノルマルを、「i」はイソを、「s」はセカンダリーを、「t」はターシャリーをそれぞれ意味する。
【0015】
次に、本発明の代表例である式[8]、[13]及び[16]における、R1及びR2が共に水素原子であるBBHPA及びBCPAの製造法について、以下に説明する。これらの化合物は、それぞれ下記スキーム1−1及びスキーム1−2に示す経路で合成できる。
【0016】
【化28】

【0017】
【化29】

【0018】
即ち、まず、塩基の存在下でBHPAとトリフルオロメタンスルホン酸無水物とを反応させてBTPAとした後、パラジウム触媒の存在下、4−メトキシフェニルボロン酸と反応させてBBMAとする。このBBMAを三臭化ホウ素により脱アルキル化してBBHAとし、これを再び塩基の存在下でトリフルオロメタンスルホン酸無水物と反応させてBBTAとする。さらに、パラジウム触媒の存在下、BBTAと4−メトキシフェニルボロン酸とを反応させてBBMPAとし、これを三臭化ホウ素により脱アルキル化して目的とするBBHPAとする。
【0019】
(1)BBHPAの製造法
まず、BTPAを製造する第1工程から説明する。
原料のBHPAは、下記のスキーム2−1及びスキーム2−2の経路で合成できる。
【0020】
【化30】

(式中、Xは、ハロゲン原子を表す。)
【0021】
【化31】

【0022】
即ち、1−ハロゲノ−3,5−ジメトキシベンゼン化合物とマグネシウムとから、グリニヤール試薬を調製し、この試薬と、9,10−ジハロゲノアントラセン化合物とを、ニッケル錯体触媒存在下で反応させることにより、9,10−ビス(3,5−ジメトキシ−1−フェニル)アントラセン(以下、BDMPAと略記する。)が得られる。次に、このBDMPAと三臭化ホウ素と反応させることにより、目的のBHPAが得られる[参考文献:「シュプラモレキュラー・ケミストリー(Supramol. Chem.)」,1995年,第4巻,p.229−241]。
【0023】
もう一方の原料であるトリフルオロメタンスルホン酸無水物は、市販品をそのまま使用することができる。その使用量は、特に限定されるものではないが、BHPA1.0モルに対して4.0〜12.0モル当量が好ましい。反応は、塩基の存在によって円滑に進行する。塩基の種類としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン及びトリプロピルアミン等に代表される鎖状アルキルアミン化合物、ピリジン、アニリン、N−メチルアニリン及び2,6−ルチジン等に代表される芳香族アミン化合物、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノ−5−ネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DBO)及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)等に代表される環状アルキルアミン化合物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸水素カリウム等の金属炭酸塩等が挙げられる。これらの塩基の中で特に好ましいものは、ピリジンや2,6−ルチジンである。その使用量は、特に限定されるものではないが、BHPA1.0モルに対して4.0〜12.0モル当量が好ましい。
【0024】
また、この反応では溶媒を使用するのが好ましい。その種類としては、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素化合物、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)等の脂肪族アミド化合物が一例として挙げられる。これらの中でハロゲン化炭化水素化合物が特に好ましい。その使用量は、反応が円滑に進行する量であれば、特に制限はないが、BHPAに対して1〜200質量倍、特には5〜150質量倍が反応収率上好ましい。
【0025】
反応温度は、−50〜150℃の範囲が好ましく、特に−10〜100℃の範囲が好ましい。
反応時間は、通常1〜30時間程度である。反応の追跡は、薄層クロマトグラフィー法による原料の有無で確認できる。
反応はほぼ定量的に進行するので、反応終了後は、ハロゲン化炭化水素化合物が溶媒の場合は、水洗してから濃縮することで、目的のBTPAが得られる。
【0026】
次に、BTPAから、パラジウム触媒の存在下、4−メトキシフェニルボロン酸と反応させてBBMAを得る第2工程について説明する。
4−メトキシフェニルボロン酸は市販品をそのまま使用することができる。
触媒としては、0価のパラジウムであるパラジウム黒、活性炭やシリカ等に担持したパラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムに代表される種々のパラジウム錯体が挙げられ、さらに2価のパラジウムである塩化パラジウムや酢酸パラジウムの場合は配位子としてトリフェニルホスフィンを共存させることが好ましい。
その使用量は、特に限定されるものではないが、BTPAに対し1〜50モル%、特には5〜30モル%が反応収率上好ましい。
【0027】
また、上記反応の際、塩基を存在させることが好ましい。その種類としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸カルシウム等に代表されるアルカリ金属やアルカリ土金属の塩類、ピリジンやトリエチルアミンに代表される有機塩基類が挙げられる。
また、塩化リチウム、臭化リチウム及びヨウ化リチウム等の添加物を共存させることも好適である。その添加量は、特に限定されるものではないが、BTPAに対し1〜20モル当量、特には5〜15モル当量が反応収率上好ましい。
さらに、この反応でも、溶媒を使用することが好ましく、その種類としては、例えば、メタノールやエタノール等に代表される低級アルコール類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等に代表される芳香族炭化水素類、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン及び1,2−ジメトキエタン等に代表される環状及び鎖状エーテル類等が挙げられる。これらは単独でも、また混合しても使用することができる。その使用量は、反応が円滑に進行する量であれば、特に限定されるものではないが、BTPAに対して5〜1000質量倍、特には10〜100質量倍が反応試剤の溶解性上好ましい。
【0028】
反応温度は、20〜200℃の範囲が好ましく、特に50〜150℃の範囲が好ましい。
反応時間は、通常1〜30時間程度である。反応の追跡は、薄層クロマトグラフィー法による原料の有無で確認できる。
反応は、ほぼ定量的に進行するので、反応終了後、濾過により残余固形塩基を除いた後、ろ液を濃縮し、その残渣をエタノールに分散させ、生じた沈殿物を乾燥することによりBBMAが得られる。
【0029】
次に、BBMAから、三臭化ホウ素により脱アルキル化させてBBHAを得る第3工程について説明する。
三臭化ホウ素は、市販品をそのまま使用することができる。また、その使用量は、特に限定されるものではないが、BBMAに対して2〜20モル当量が好ましく、さらには4〜10モル当量が好ましい。
この反応においても溶媒を使用することが好ましく、その種類としては、例えば、塩化メチレンや1,2−ジクロロエタン等に代表されるハロゲン化炭化水素類が挙げられる。その使用量は、反応が円滑に進行する量であれば、特に限定されるものではないが、BBMAに対して5〜100質量倍、特には10〜50質量倍が反応試剤の溶解性上好ましい。
反応温度は、−20〜200℃の範囲が好ましく、特に−10〜100℃の範囲が好ましい。
反応時間は、通常1〜30時間程度である。反応の追跡は、薄層クロマトグラフィー法による原料の有無で確認できる。
【0030】
BBHAからBBTAを得る第4工程は、上記第1工程と同様にして行えばよい。
BBTAからBBMPAを得る第5工程は、上記第2工程と同様にして行えばよい。
BBMPAからBBHPAを得る第6工程は、上記第3工程と同様にして行えばよい。
【0031】
(2)BCPAの製造法
まず、BBTAをシアノ化してBBCAを得る第1工程について説明する。
シアノ化試剤であるシアノ化合物は、例えば、シアン化水素、シアン化アルカリ金属、シアン化アルカリ土金属、シアン化金属等が使用できる。具体的には、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、シアン化マグネシウム、シアン化カルシウム及びシアン化銅等が一例として挙げられる。特に、安全で、経済的なシアン化ナトリウムやシアン化カリウムが好ましく、その使用量は、特に限定されるものではないが、原料のBBTAに対して、4.0〜20.0モル当量が好ましい。
【0032】
この反応では、触媒を存在させることが有効であり、その種類として、トリス(ジベンジリデンアセトン)−クロロホルム−ジパラジウム錯体に代表されるパラジウム錯体及びビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)等が用いられる。パラジウム錯体の使用量は、特に限定されるものではないが、原料のBBTAに対して、1.0〜20.0モル%が好ましい。また、dppfの使用量は、特に限定されるものではないが、原料のBBTAに対して、0.5〜10.0モル%が好ましい。
【0033】
また、溶媒を使用することが好ましく、その種類としては、アセトニトリル及びプロピオニトリル等の脂肪族ニトリル化合物、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)等の脂肪族アミド化合物が一例として挙げられる。これらの中でアセトニトリルが特に好ましい。その使用量は、BBTAに対して1〜50質量倍、特に5〜20質量倍が反応の収率上好ましい。
反応温度は、0〜200℃の範囲が好ましく、特に20〜150℃の範囲が好ましい。
反応時間は、通常1〜30時間程度である。反応の追跡は、薄層クロマトグラフィー法による原料の有無で確認できる。
反応生成物を、後処理後アルミナカラムクロマトグラフィー法などによって精製することにより、目的のBBCAが単離される。
【0034】
次に、BBCAからBCPAを得る第2工程について説明する。
シアノ化合物からカルボン酸化合物への変換は、塩基による加水分解法と、酸による加水分解法の二法があり、この工程ではいずれも適用できる。中でも、目的物の収率を高めるという点から、塩基による加水分解法が好適である。したがって、以下では塩基による加水分解法について述べる。
塩基の種類としては、水酸化アルカリ金属や水酸化アルカリ土金属が経済的で好ましい。具体的には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が一例として挙げられる。その使用量は、特に限定されるものではないが、BBCAに対して10〜1500モル倍が反応収率上好ましい。
溶媒としては、水、及びメタノール,エタノール等の脂肪族低級アルコール類の混合溶媒が好ましい。それの使用量は、特に限定されるものではないが、反応の進行が円滑するという点から、BBCAに対してそれぞれ5〜50質量倍とすることが好ましい。
【0035】
反応温度は、20〜200℃の範囲が好ましく、特に50〜150℃の範囲が好ましい。
反応時間は、通常1〜200時間程度である。反応の追跡は、薄層クロマトグラフィー法による原料の有無で確認できる。
反応終了後、溶媒として用いたアルコール類を留去し、塩酸や硫酸等の酸を加えて酸性にすることにより、目的のBCPAが結晶で得られる。この結晶を水洗後乾燥することにより、精製された純粋な目的物が得られる。
なお、以上説明した各反応は、常圧下で行っても、加圧下で行ってもよく、また、回分法でも連続法でも行うことができる。
【0036】
次に、以上の方法で得られるBBHA、BBHPA及びBCPA等の有機ゼオライト化合物から有機ゼオライト類縁体を合成する方法について説明する。
上記の有機ゼオライト化合物を酢酸エチルに溶解し、クロロホルムを加えて得られる沈殿を濾過して、減圧乾燥することにより、有機ゼオライト類縁体を得ることができる。あるいは、上記有機ゼオライト化合物を減圧乾燥することで、有機ゼオライト類縁体を得ることができる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で用いた分析法は以下のとおりである。
[1]1H−NMR
使用機器:日本ブルカー株式会社製,固体NMR(Bruker DPX‐300).
[2]赤外分光法(IR)
使用機器:パーキンエルマージャパン株式会社製,FT-IR Spector SPECTRUM 2000
測定条件:KBr錠剤法,測定範囲4000〜400cm-1
[3]熱重量分析(TG)
使用機器:理学電機製,作動型示差熱天秤 TG-8120.
[4]有機ゼオライト類縁体の構造解析(PXRDパターンの測定)
使用機器:Rigaku RAD−PC X線回折装置、またはRAD−C X線回折装置.
[5]蒸気吸着特性測定
各種吸着質の吸着等温線は、定容型の蒸気吸着測定装置により測定した。
蒸気吸着条件:BELSORP18 SP−V(日本ベル製)で測定した。
装置仕様:サンプルチャンバー容量15mL、測定温度25℃±0.1℃、サンプル量300mg、前処理温度100℃、前処理真空度0.001torr以下、前処理時間18時間、ガスチャンバー容量176.36mL、死容積測定ガスHe.
【0038】
[参考例1]BDMPAの合成
【化32】

【0039】
(1)グリニャール反応
窒素下、マグネシウム(2.11g,0.087mol)にテトラヒドロフラン(THF)10m1を加え、少量のジブロモエタンでマグネシウムを活性化した。滴下ロートより1−クロロ−3,5−ジメトキシベンゼン(10g,0.058mol)のTHF溶液(20mL)をゆっくりと加えた。約7mLほど滴下したところで滴下をやめ、反応容器を一度加熱還流させた。溶液がやや緑色になることを確認した後、残りを全て滴下し、その後、約24時間加熱還流を行い、グリニャール試薬を調製した。
(2)クロスカップリング反応
窒素下、9,10−ジブロモアントラセン(5.83g,0.015mol)及び[NiCl2(dppp)](0.19g,1mol%)をベンゼンとTHFの混合溶媒(ベンゼン220mL+THF150mL)に溶解した(40℃)。滴下ロートに先に調製したグリニャール試薬を移し、ゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温で12時間以上撹拌した。反応終了後、反応液を濃縮し、これをクロロホルム(又は塩化メチレン)で抽出した。希塩酸、水、飽和重曹水、飽和食塩水で処理後、硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を留去し、粗体を得た。これをメタノールで洗浄後、乾燥することにより、高純度の目的物BDMPA収量4.73g(収率61.5%)が得られた。
【0040】
[参考例2]BHPAの合成
【化33】

【0041】
乾燥空気下(窒素下では反応が進行しない)、9,10−ビス(3,5−ジメトキシ−1−フェニル)アントラセン[BDMPA](7.52g,0.0167mol)を塩化メチレン120mLに溶解し、氷浴で冷却した。滴下ロートから三臭化ホウ素(23.4g,0.0934mol)の塩化メチレン溶液(約120mL)を遮光下でゆっくりと滴下した後、約12時間撹拌を続けた。反応終了後、水冷下で反応溶液にゆっくり水を加えた(塩化メチレンと同容積)。エバポレータで塩化メチレンのみをほとんど留去し、これを酢酸エチルで抽出した。飽和重曹水、水、飽和食塩水で処理後、硫酸ナトリウム上で乾燥した後、溶媒を留去し、粗体を得た。これをシリカゲルフラッシュカラム(溶出液:酢酸エチル)にかけ、原点成分を除いた。目的物を含むフラクションを濃縮し、これを少量の活性炭で処理した(液の黄色味がかなり抜ける)。最後に、目的物を最少量の酢酸エチルに溶解し、ヘキサン(又はベンゼン)雰囲気下に放置して得られた結晶を加熱乾燥することにより、純粋なBHPA収量6.02g(収率91.3%)が得られた。
【0042】
[参考例3]BTPAの合成
【化34】

【0043】
窒素雰囲気下、BHPA(7.73g,0.00195mol)に2,6−ルチジン(46mL,0.0191mol)及び塩化メチレン800mLを加えた。氷浴上で冷却しながら、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(35mL,0.191mol)をゆっくりと加え、そのまま約6時間撹拌した。反応終了後、反応溶液をクロロホルムで抽出し、水、硫酸銅水溶液、水、飽和食塩水の順に処理し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を留去後、得られた粗体をエタノールで洗浄することにより、目的とする純粋なBTPA収量16.08g(収率88.9%)が得られた。BTPAの化学構造は、以下の分析結果から確認した。
1H-NMR (300MHz,CDCl3/DMSO-d6): δ[ppm]= 7.15(t,2H), 6.92(d,4H), 6.87-6.79(m,8H).
元素分析:測定値;C,39.19; H,1.60%. 理論値;C30H14F12O12S4として: C,39.05, H,1.53.
【0044】
[実施例1]BBMAの合成
【化35】

【0045】
トリフラート体BTPA9.00g(9.75mmol)、4−メトキシフェニルボロン酸6.54g(43.1mmol)、塩化リチウム4.93g(116.2mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム2.16g(1.86mmol)を、エタノール約100mL、トルエン約180mL、1,4−ジオキサン約540mLで溶解させた。溶解しにくい場合は60〜90℃の油槽にて熱を加えた。炭酸ナトリウム水溶液を加え、90℃で約12時間攪拌した。反応終了後、炭酸ナトリウムを除去するためにろ過し、ろ液を濃縮した。この操作を数回繰り返した。エタノールでろ過し、ろ紙上の粗体をクロロホルムで溶解させ、濃縮した。エタノールで分散させ、濃縮した。この操作を数回繰り返した。最終的にエタノールでろ過することにより、目的物BBMA収量7.06g(収率95.89%)が得られた。
【0046】
[実施例2]BBHAの合成
【化36】

【0047】
氷浴中、実施例1で得たBBMA13.68g(0.0181mol)を塩化メチレン約400mLで溶解させた。三臭化ホウ素25g(0.0998mol)を塩化メチレン約300mLに溶解させたものを、遮光下ゆっくりと滴下し、約12時間攪拌した。反応終了後、氷冷下で塩化メチレンと同容積の水約700mLをゆっくり加えた後、反応液が中性になるまで重曹を加えた。塩化メチレンのみを留去し、これを酢酸エチルで抽出した。水で2回処理し、さらに飽和食塩水で処理後、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を留去した。これをシリカゲルフラッシュカラムにかけ、原点成分を除いた。これを濃縮し、最少量の酢酸エチルに溶解させ、クロロホルムを加え濃縮した。その後、クロロホルムで沈殿させ、ろ過することにより、目的物BBHA収量12.16g(収率96.05%)が得られた。
【0048】
[実施例3]BBTAの合成
【化37】

【0049】
氷浴中、実施例2で得たBBHA8.74g(0.0125mol)を塩化メチレン約500mLに溶解させた。2,6−ルチジン28.5mL(0.118mol)と、トリフルオロメタンスルホン酸無水物21mL(0.115mol)とを加えて約6時間攪拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出した。その後、水、飽和硫酸銅水溶液、水、飽和食塩水の順に処理後、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を留去した。得られた粗体をエタノールでろ過洗浄することにより、目的物BBTA収量12.04g(収率78.38%)が得られた。
【0050】
[実施例4]BBMPAの合成
【化38】

【0051】
実施例3で得たBBTA7.76g(6.32mmol)、4−メトキシフェニルボロン酸4.28g(28.2mmol)、塩化リチウム3.21g(75.7mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.45g(1.25mmol)を、エタノール約60mL、トルエン約140mL、1,4−ジオキサン約380mLで溶解させた。溶解しにくい場合は60〜90℃の油槽にて熱を加えた。炭酸ナトリウム水溶液を加え、90℃で約12時間攪拌した。反応終了後、炭酸ナトリウムを除去するためにろ過し、ろ液を濃縮した。この操作を数回繰り返した。エタノールでろ過し、ろ紙上の粗体をクロロホルムで溶解させ、濃縮した。エタノールで分散させ、濃縮した。この操作を数回繰り返した。最終的にエタノールでろ過することにより、目的物BBMPA収量4.41g(収率65.87%)が得られた。
【0052】
[実施例5]BBHPAの合成
【化39】

【0053】
氷浴中、実施例4で得たBBMPA4.79g(4.52mmol)を塩化メチレン約250mLで溶解させた。三臭化ホウ素25g(99.8mmol)を塩化メチレン約150mLに溶解させたものを、遮光下ゆっくりと滴下し、約12時間攪拌した。反応終了後、氷冷下、塩化メチレンと同容積の水約400mLをゆっくり加えた後、反応液が中性になるまで重曹を加えた。塩化メチレンのみを留去し、これを酢酸エチルで抽出した。水で2回処理し、さらに飽和食塩水で処理後、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を留去した。これをシリカゲルフラッシュカラムにかけ、原点成分を除いた。これを濃縮し、最少量の酢酸エチルに溶解させ、クロロホルムを加え濃縮した。その後、クロロホルムで沈殿させ、ろ過することにより、目的物BBHPA収量2.876g(収率63.43%)が得られた。IRから、構造に相当するピークが得られた。このIRチャートを図1に示す。
IR(KBr) [cm-1]=3530 1655 1591 1499 1260 1171 820 769 667.
1H−NMRのプロトン数から矛盾のない結果が得られた。このNMRチャートを図2に示す。
1H-NMR(300MHz DMSO)δ[ppm]=9.60(s,4H) 8.25(s,2H) 7.94-7.96(d,8H) 7.81-7.85(m,4H) 7.78(d,4H) 7.70(d,8H) 7.55(d,8H) 7.43-7.50(m,4H) 6.88(d,8H).
【0054】
[実施例6]BBTAの合成
【化40】

【0055】
反応は窒素下で行った。実施例3で得たBBTA5.00g(4.1mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)−クロロホルム−ジパラジウム錯体0.508g(0.46mmol)、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン1.10g(2.0mmol)、及びシアン化カリウム3.40g(52mmol)に、アセトニトリルを約50ml加えた。この懸濁液を60℃で約120時間攪拌した。反応液を濃縮し、クロロホルムを加えた。不溶の無機物を濾別し、母液の溶媒を全て留去し、固体を得た。この固体をパラキシレンに分散させ、ロート上に濾取した。濾過装置の受器を新しいものに換え、ロート上の固体を再びクロロホルムで溶解させた。この操作により、クロロホルムに溶解しない不純物を取り除いた。受器に溜まったクロロホルム溶液を濃縮し、これをアルミナフラッシュカラム(中性、溶出液クロロホルム)にかけ原点成分を除いた。溶出液を濃縮後、少量の活性炭で処理した。活性炭を濾別し、エバポレータで濾液のクロロホルムを完全に留去した。得られた固体をアセトニトリルに分散し、これを濾取することで目的物であるBBCA収量2.25g(収率75.2%)が得られた。化合物の同定は1H−NMRで行った。
1H-NMR(DMSO-d6/CDCl3)δ[ppm]=7.31-7.347(q,4H,anthracene-H) 7.68-7.74(m,16H,anthracene-H,aromatic-H) 7.83-7.86(d,8H,aromatic-H) 8.01(s,2H,aromatic-H).
【0056】
[実施例7]BCPAの合成
【化41】

【0057】
テトラフェニルシアノ体0.1102g(0.136mmol)に、10mol/L水酸化ナトリウム水溶液19.3mL、及びエタノール19.3mLを加えた。約123時間加熱還流した。反応液のエタノールをエバポレータにより留去した。これに、氷冷下、濃塩酸20mLを加えたところ、目的物が析出した。遠心分離機を用いて目的物を含んだ洗液が中性になるまで何度も水洗した。100℃減圧加熱乾燥により、目的物BCPA収量0.13g(収率100%)が得られた。化合物の同定は、1H−NMR、IRで行った。1H−NMRのプロトン数から矛盾のない結果が得られた。IRから、1700−1680cm-1に芳香族カルボン酸体のC=O伸縮振動帯であるピークが得られた。NMRチャートを図3に、IRチャートを図4に示す。
1H-NMR(DMSO-d6)δ [ppm]=7.51(q,4H,anthracene-H),7.76(q,4H,anthracene-H),7.89(s,4H,aromatic-H),8.06(m,16H,aromatic-H),8.34(s,2H,aromatic-H).
IR(KBr)1691.3cm-1.
【0058】
[実施例8]BBHPAの溶解性
BBHPAの溶解性について、1.8mLのサンプル管にスパチュラで試料を約2mg量り取り、それに溶媒をパスツールを用いて一滴ずつ滴下し、溶解した時点での重さから、溶解するのに要した溶媒量を逆算し、溶解度を算出した。各溶媒におけるBBHPAの溶解性及び溶解度を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
[実施例9]BBHPA有機ゼオライト類縁体の合成
BBHPAを酢酸エチルに溶解させ、クロロホルムを加えて得られる沈殿を濾過して、60℃で減圧乾燥を行い、粉末状のBBHPA有機ゼオライト類縁体得た。この粉末を1H−NMRにより測定し、溶媒ピークがないことを確認した。
BBHPA有機ゼオライト類縁体の結晶性について粉末X線回折パターン(PXRDパターン)を解析した。得られた粉末を乳鉢で細かく砕き、ガラス試料板に載せて測定を行った。BBHPA有機ゼオライト類縁体のPXRDデータを図5に示す。この測定データよりBBHPA有機ゼオライト類縁体が結晶性であることが明らかとなった。
測定機器:Rigaku RAD−PC X線回折装置(30KV,20mA,Cu−Kα radiation,X線波長1.5418nm,2θ=50degまで測定)
【0061】
[実施例10]BBHPA有機ゼオライト類縁体の分子吸着能
分子の吸着等温線の測定には、日本ベル社製蒸気吸着装置Belsorp18SP−Vを使用した。以下のような特徴が明らかとなった。
(1)77KにおけるN2分子の吸着
図6にN2分子の吸着等温線を示す。この吸着等温線より、Langmuirの式に従って相直線を作成したところ、相対圧0〜0.4間において規則性のよい直線が得られた。
この直線の傾きから求めた飽和吸着量は10.56mL/gとなり、窒素を用いた比表面積が約50m2/gあることが明らかとなった。
この結果は、BBHA有機ゼオライト類縁体の比表面積(約5m2/g)と比較すると、約10倍になっていることがわかった。
【0062】
(2)298Kにおけるアセトンの蒸気吸着
図7に極性溶媒であるアセトンの吸着等温線を示す。吸着等温線は、BBHA有機ゼオライト類縁体の結果と比較して示す。
BBHA有機ゼオライト類縁体に比べ、BBHPA有機ゼオライト類縁体は低圧域での吸着が鋭くなっている。また、両ホスト共に二段階の吸着等温線となっているが、BBHA有機ゼオライト類縁体の第一段階が相対圧0.5付近であるのに対して、BBHPA有機ゼオライト類縁体は相対圧0.1付近とかなり低い値を示した。このことから、先の比表面積の拡大という考察が裏付けられた。
【0063】
(3)298Kにおける酢酸エチルの蒸気吸着
図8にアセトンよりもやや分子量の大きめなカルボニル基を有する極性溶媒である酢酸エチルの吸着等温線を示す。BBHPA有機ゼオライト類縁体は、アセトンの場合と同様、低圧域での吸着が確認できた。また、脱離時において、BBHA有機ゼオライト類縁体では、ほぼ脱離しないのに対してBBHPA有機ゼオライト類縁体では、格段に脱離しやすくなっていた。
(4)298Kにおけるベンゼンの蒸気吸着
図9に非極性溶媒であるベンゼンの吸着等温線を示す。上記と同様に低圧域での吸着が確認でき、また飽和吸着量で見るとBBHA有機ゼオライト類縁体がベンゼンを約2分子吸着していたのに対して、BBHPA有機ゼオライト類縁体は約4分子と、約2倍の吸着量を示した。このように、ベンゼンのような非極性溶媒の吸着量が増加したことは、従来までは見られない特徴であり、吸着剤としての性能が向上していると言える。
【0064】
(5)298Kにおけるn−ヘキサンの蒸気吸着
図10に非極性溶媒であるn−ヘキサンの吸着等温線を示す。ベンゼンがπ/π相互作用により吸着されるのに対して、n−ヘキサンは相互作用が働かない直鎖の炭化水素であるため、吸着分子数は低い値を示しているが、BBHPA有機ゼオライト類縁体では、BBHA有機ゼオライト類縁体よりも吸着量が増加している。
(6)298KにおけるH2Oの蒸気吸着
図11にH2Oの吸着等温線を示す。BBHPA有機ゼオライト類縁体は、約4分子のH2Oの吸着が見られた。このことは、ホストが有する官能基が水酸基であるため、その相互作用により吸着されていることを示していると考えられる。
【0065】
[実施例11]BCPAの溶解性
実施例8と同様の方法でBCPAの溶解度を算出した。各溶媒におけるBCPAの溶解性及び溶解度を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
[実施例12]BCPAの耐熱性
BCPAの分解温度を調べるために、TG測定を行った。熱重量分析(TG)は、上記実施例で合成したBCPAを1H−NMRで確認した後、200℃で減圧加熱乾燥により溶媒を完全に留去したものを用い、以下の実験条件で測定した。
【0068】
<実験条件1>
1 測定項目 熱重量減少
2 測定温度 25℃〜500℃〜25℃
3 雰囲気 大気中
4 測定試料 3.891mg
5 基準試料 Al2CO3
6 昇温速度 5.0K/min
7 Sample Pan Pt
【0069】
<実験条件2>
1 測定項目 熱重量減少
2 測定温度 25℃〜200℃〜25℃〜200℃〜25℃〜450℃ 〜25℃
3 雰囲気 大気中
4 測定試料 2.627mg
5 基準試料 Al2CO3
6 昇温速度 10.0K/min
7 Sample Pan Pt
【0070】
実験条件1の測定結果を図12に、実験条件2の測定結果を図13に示す。
グラフから、BCPAの重量減少がみられる分解点は384℃と測定された。従来のBCAPAでは395℃であったことから、ほとんど遜色のない耐熱性を有することが確認された。また、分解温度を超えなければ、繰り返し熱を加えても耐熱性が下がらない。このことから、有機溶媒をゲストとした場合、加熱によって何度もゲストをとばすのに耐え得る十分な耐熱性を持っていると言える。
【0071】
[実施例13]BCPA有機ゼオライト類縁体の合成
BCPAを酢酸エチルに溶解させ、クロロホルムを加えて得られる沈殿を濾過して、200℃で減圧乾燥を行い、粉末状のBCPA有機ゼオライト類縁体得た。この粉末を1H−NMRにより測定し、溶媒ピークがないことを確認した。
BCPA有機ゼオライト類縁体の結晶性を調べるためにPXRD測定を行った。粉末X線回折装置(PXRD)は、理学電機製 X線回折装置 RAD−Cを用い、管電圧30kV、管電流20mAとし、フィルターはNi、厚さ0.021mmとし、以下の実験条件でBCPA有機ゼオライト類縁体の結晶性を測定した。
【0072】
実験条件
走査軸: 2θ/θ
測定方法: 連続
発散スリット: 1deg
散乱スリット: 1deg
積算回数: 1回
計算単位: cps
受光スリット: 0.3mm
開始角度: 2.000
終了角度: 60.000
サンプリング: 0.020
スキャン速度: 2.000
【0073】
この実験条件下で得られたBCPA有機ゼオライト類縁体(ホスト)のみのPXRDデータを図14に示す。また、同条件下で得られたホストにシクロヘキサノンを滴下したPXRDデータを図15に示す。さらに、このシクロヘキサノンを滴下した試料を200℃減圧加熱乾燥したPXRDを図16に示す。
【0074】
図14のホストのみのデータより、5.96(°)、12.00(°)、24.06(°)にピークが確認できることから、BCPA有機ゼオライト類縁体の粉末は結晶性であることが明らかとなった。
図15のホストにゲストとしてシクロヘキサノンを滴下したデータより、14.34(°)、16.44(°)、17.02(°)、17.86(°)、19.52(°)、22.92(°)、24.66(°)にピークがシフトし、構造変化により吸着していることが明らかとなった。また、滴下直後でゲスト分子が13.4分子ほど確認できた粉末パターンと、86時間後に2.88分子となった粉末パターンとが変わらないことから、ゲスト分子を吸着して安定な形になっていることがわかる。
【0075】
さらに、ゲストを含んだ状態のホストを200℃減圧加熱乾燥で溶媒を完全に留去したアポホストの状態が図16の粉末パターンを示す。ゲスト吸着により、一旦構造変化を引き起こすと、ゲストが抜けても完全に元に戻らないことから、構造の規則性が減ったために5.96(°)の特徴的なピークは小さくなっていた。しかし、基本的な粉末パターンはホストのみのフレッシュな状態とほとんど変わらないため、本質的には同じものということができる。このアポホストの状態に再びゲストを滴下すると、構造変化によって図14のようなピークにシフトすることから、ホストとして繰り返し利用できる特徴を有することが明らかになった。
なお、85℃の熱をかけて水酸化ナトリウムとエタノール中に再度溶かし、濃塩酸を加えて析出させるとフレッシュにより近いものに戻ることが確認された。
【0076】
[実施例14]BCPA有機ゼオライト類縁体の分子吸着能
分子の吸着等温線の測定には、日本ベル社製蒸気吸着装置Belsorp18SP−Vを使用した。比較対照として特許文献1に記載されたBCAPAの分子吸着能も併せて測定した。その結果、以下のような特徴が明らかとなった。
【0077】
(1)77KにおけるN2分子の吸着
図17にN2分子の吸着等温線を示す。BCPA有機ゼオライト類縁体は、側鎖を拡張しているにもかかわらず、BCAPA有機ゼオライト類縁体の約1/3程の吸着しかみられなかった。
このBCPA有機ゼオライト類縁体の吸着等温線より、Langmuirの式に従って相直線を作成したところ、吸着曲線の前半部において規則性のよい直線が得られた。この直線の傾きから求めた飽和吸着量は29.96mL/gとなり、窒素を用いた比表面積が約130m2/gであることが明らかとなった。
BCAPA有機ゼオライト類縁体の比表面積は480m2/gであったことから、約1/4程に低下し、窒素の蒸気吸着の結果を裏付ける計算結果となった。しかし、この比表面積は他の有機物と比べても遥かに高い値であることから、多孔質であるということができ、ゲストフリーの状態でも空孔を維持していると言える。
【0078】
(2)298Kにおけるアセトンの蒸気吸着
図18に極性溶媒であるアセトンの吸着等温線を示す。
(3)298Kにおける酢酸エチルの蒸気吸着
図19に極性溶媒である酢酸エチルの吸着等温線を示す。
(4)298Kにおけるベンゼンの蒸気吸着
図20に非極性溶媒であるベンゼンの吸着等温線を示す。
(5)298Kにおけるn−ヘキサンの蒸気吸着
図21に非極性溶媒であるn−ヘキサンの吸着等温線を示す。
(6)298KにおけるH2Oの蒸気吸着
図22にH2Oの吸着等温線を示す。
【0079】
以上の結果から、非極性溶媒であるベンゼン及びヘキサンについては、BCPA有機ゼオライト類縁体は、BCAPA有機ゼオライト類縁体と同量の吸着がみられた。また極性溶媒であるアセトンと酢酸エチルでは、BCAPA有機ゼオライト類縁体に比べて約2倍の吸着となる測定結果となった。初期状態においての比表面積が低いにも関わらず、このように吸着量が向上した理由として、この有機結晶が構造を変化させて吸着している点が挙げられる。すなわち、BCPA有機ゼオライトの有機分子の吸着においては、ゲスト分子がdriving−faceとして働いて構造変化を引き起こし、第一段階でゲストによって飽和すると、構造変化して安定になろうとすることで、結果的により多くの吸着に繋がっている。
【0080】
また、BCPA有機ゼオライト類縁体では、低圧域からの吸着が見られ、これはBCAPA有機ゼオライト類縁体にはみられなかった特徴である。このことからゲストフリーの状態でテトラカルボン酸体よりも大きな空孔を維持しているために、しきい値が低くなっていることが分かる。
空孔を維持できているということは、ゲストを吸着するのに余分なエネルギーが不要で、時間もかからない利点がある一方で、一度吸着すれば脱離し易いとされていたが、今回のホストは構造変化しながら吸着しているためにゲストが脱離しにくくなっている。このように、BCPA有機ゼオライト類縁体は、今までにない吸着特性を有していることが明らかになった。
BCPA有機ゼオライト類縁体は、水の吸着においては約5分子の大量な吸着がみられた。このホストを合成する際に収率が118.9%となったが、水を吸着しているためであることを裏付けるデータとなった。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】BBHPAのIRデータを示す図である。
【図2】BBHPAの1H−NMRデータを示す図である。
【図3】BCPAのIRデータを示す図である。
【図4】BCPAの1H−NMRデータを示す図である。
【図5】BBHPA有機ゼオライト類縁体のPXRDデータを示す図である。
【図6】BBHPA有機ゼオライト類縁体の77KにおけるN2分子の吸着等温線を示す図である。
【図7】BBHPA有機ゼオライト類縁体の298Kにおけるアセトンの吸着等温線を示す図である。
【図8】BBHPA有機ゼオライト類縁体の298Kにおける酢酸エチルの吸着等温線を示す図である。
【図9】BBHPA有機ゼオライト類縁体の298Kにおけるベンゼンの吸着等温線を示す図である。
【図10】BBHPA有機ゼオライト類縁体の298Kにおけるn−ヘキサンの吸着等温線を示す図である。
【図11】BBHPA有機ゼオライト類縁体の298KにおけるH2Oの吸着等温線を示す図である。
【図12】BCPAの実験条件1による熱重量分析データを示す図である。
【図13】BCPAの実験条件2による熱重量分析データを示す図である。
【図14】BCPA有機ゼオライト類縁体のPXRDデータを示す図である。
【図15】BCPA有機ゼオライト類縁体にシクロヘキサノンを滴下した試料のPXRDデータを示す図である。
【図16】BCPA有機ゼオライト類縁体にシクロヘキサノンを滴下した後、200℃で減圧加熱乾燥した試料のPXRDデータを示す図である。
【図17】BCPA有機ゼオライト類縁体の77KにおけるN2分子の吸着等温線を示す図である。
【図18】BCPA有機ゼオライト類縁体の298Kにおけるアセトンの吸着等温線を示す図である。
【図19】BCPA有機ゼオライト類縁体の298Kにおける酢酸エチルの吸着等温線を示す図である。
【図20】BCPA有機ゼオライト類縁体の298Kにおけるベンゼンの吸着等温線を示す図である。
【図21】BCPA有機ゼオライト類縁体の298Kにおけるn−ヘキサンの吸着等温線を示す図である。
【図22】BCPA有機ゼオライト類縁体の298KにおけるのH2Oの吸着等温線を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[1]で表される多孔質有機結晶構造を有するアントラセン系有機ゼオライト類縁体。
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基又はアミノ基を表す。p、q及びnは、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。破線は、分子間水素結合を表す。)
【請求項2】
式[2]で表される多孔質有機結晶構造を有するアントラセン系有機ゼオライト類縁体。
【化2】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基又はアミノ基を表す。p及びqは、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。破線は、分子間水素結合を表す。)
【請求項3】
式[3]で表される多孔質有機結晶構造を有するアントラセン系有機ゼオライト類縁体。
【化3】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基又はアミノ基を表す。p及びqは、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。破線は、分子間水素結合を表す。)
【請求項4】
式[4]で表される多孔質有機結晶構造を有するアントラセン系有機ゼオライト類縁体。
【化4】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基又はアミノ基を表す。p、q及びnは、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。破線は、分子間水素結合を表す。)
【請求項5】
式[5]で表される多孔質有機結晶構造を有するアントラセン系有機ゼオライト類縁体。
【化5】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基又はアミノ基を表す。p及びqは、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。破線は、分子間水素結合を表す。)
【請求項6】
式[6]で表されるアントラセン系化合物。
【化6】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基又はアミノ基を表し、R3は、それぞれ独立してトリフルオロメチルスルホニルオキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基又はカルボキシル基を表す。p、q及びnは、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。)
【請求項7】
式[7]
【化7】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基又はアミノ基を表す。p及びqは、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−メトキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物を脱アルキル分解することを特徴とする、式[8]
【化8】

(式中、R1、R2、p及びqは、前記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物の製造法。
【請求項8】
式[9]
【化9】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基又はアミノ基を表す。p及びqは、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。)
で表される9,10−ビス(3,5−ジヒドロキシ−1−フェニル)アントラセン化合物と、トリフルオロメタンスルホン酸無水物とを塩基の存在下に反応させて、式[10]
【化10】

(式中、R1、R2、p及びqは、前記と同じ意味を表し、Tfはトリフルオロメチルスルホニル基を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−1−フェニル]アントラセン化合物とし、この化合物を、パラジウム触媒の存在下、式[11]
【化11】

で表される4−メトキシボロン酸と反応させて、式[7]
【化12】

(式中、R1、R2、p及びqは、前記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−メトキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物として、さらにこれを脱アルキル分解することを特徴とする、式[8]
【化13】

(式中、R1、R2、p及びqは、前記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物の製造法。
【請求項9】
式[12]
【化14】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基又はアミノ基を表す。p及びqは、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−メトキシビフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物を脱アルキル分解することを特徴とする、式[13]
【化15】

(式中、R1、R2、p及びqは、前記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−ヒドロキシビフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物の製造法。
【請求項10】
式[8]
【化16】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基又はアミノ基を表す。p及びqは、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。)
で表される9,10−ビス(3,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル)アントラセン化合物と、トリフルオロメタンスルホン酸無水物とを塩基の存在下に反応させて、式[14]
【化17】

(式中、R1、R2、p及びqは、前記と同じ意味を表し、Tfはトリフルオロメチルスルホニル基を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−トリフルオロメチルスルホニルオキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物とし、これを、パラジウム触媒の存在下、式[11]
【化18】

で表される4−メトキシボロン酸と反応させて、式[12]
【化19】

(式中、R1、R2、p及びqは、前記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−メトキシビフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物とし、さらにこれを脱アルキル分解することを特徴とする、式[13]
【化20】

(式中、R1、R2、p及びqは、前記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−ヒドロキシビフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物の製造法。
【請求項11】
式[15]
【化21】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基又はアミノ基を表す。p及びqは、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−シアノフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物を加水分解することを特徴とする式[16]
【化22】

(式中、R1、R2、p及びqは、前記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−カルボキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物の製造法。
【請求項12】
式[14]
【化23】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基又はアミノ基を表す。p及びqは、それぞれ独立して1〜4の整数を表し、Tfはトリフルオロメチルスルホニル基を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−トリフルオロメチルスルホニルオキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物と、式[17]
【化24】

(式中、Mは、水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土金属を表す。)
で表されるシアノ化合物を、パラジウム触媒の存在下反応させて、式[15]
【化25】

(式中、R1、R2、p及びqは、前記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−シアノフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物を得た後、これを加水分解することを特徴とする式[16]
【化26】

(式中、R1、R2、p及びqは、前記と同じ意味を表す。)
で表される9,10−ビス[3,5−ビス(4−カルボキシフェニル)−1−フェニル]アントラセン化合物の製造法。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか1項記載のアントラセン系有機ゼオライト類縁体からなる吸蔵体。
【請求項14】
有機分子の吸蔵用である請求項13記載の吸蔵体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−290771(P2006−290771A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111556(P2005−111556)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】