説明

アンドルソフ法によりシアン化水素を製造するための反応器

本発明は、反応器容器(2)、ガス供給管範囲(4)内に開口する少なくとも1つのガス供給管(3)、反応生成物の導出管(5)および触媒(6)を含む、アンドルソフ法によりシアン化水素を製造するための反応器(1)に関し、この場合反応器容器(2)内には、ガス供給管範囲(4)と触媒(6)との間に少なくとも1つの混合部材(7)ならびに少なくとも1つのガス透過性の中間層(8)が設けられており、この混合部材(7)は、ガス供給管範囲(4)とガス透過性の中間層(8)との間に配置されている。更に、本発明には、本発明による反応器が使用される、HCNを製造するための方法が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンドルソフ法によりシアン化水素(HCN)を製造するための反応器ならびに本発明による反応器を使用しながら実施されるHCNの製造法に関する。
【0002】
アンドルソフ法によるシアン水素(青酸)の合成は、UIlmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第8巻, VCH Verlagsgesellschaft, Weinheim 1987, 第161〜162頁に記載されている。一般的にメタンまたはメタン含有天然ガス流、アンモニアおよび酸素を含有する出発材料ガス混合物は、反応器中で触媒メッシュ上に導通され、かつ、約1000℃の温度で反応させられる。必要とされる酸素は、通常は空気の形で使用される。触媒メッシュは、一般に白金または白金合金からなる。出発材料ガス混合物の組成は、発熱的に進行する総反応式
CH4+NH3 +3/2O2→HCN+3H2O dHr=−473.9kJ
の化学量論的量にほぼ相当する。
【0003】
流出する反応ガスは、生成物HCN、未反応NH3およびCH4ならびに実質的な副生成物CO、H2、H2O、CO2および大きい割合のN2を含有する。
【0004】
反応ガスは、廃熱ボイラ中で急速に約150〜200℃に冷却され、引続き洗浄塔を通過し、この中では希釈された硫酸で未反応NH3が洗い流され、そして、水素蒸気の一部が凝縮される。燐酸水素ナトリウム溶液を用いたNH3の吸収およびアンモニアの引続く再循環も公知である。引き続く吸収塔において、HCNを冷却水中に吸収させ、後接続した精留において99.5質量%よりも高い純度が提示される。前記塔の塔底部中に生じるHCN含有水は、冷却され、HCN吸収塔へ返送される。
【0005】
アンドルソフ法の可能な実施の幅広いスペクトルは、ドイツ連邦共和国特許第549055号明細書中に記載されている。それに応じて、アンドルソフ法によりHCNを製造するための反応器も公知であり、この場合この種の反応のための1例は、欧州特許第1001843号明細書B1中に開示されている。この反応器は、一般に出発材料のための供給管、生成物のための導出管ならびに例えば順次に配置された、白金からなる多数のメッシュの形に形成されていてよい触媒を含む。触媒メッシュの直ぐ上方には、ガス透過性の保護層が設けられていてよく、この保護層は、断熱板およびフラッシュバックガードとして使用されている。
【0006】
公知の反応器を用いて実施される方法は、受け入れ可能なエネルギー需要の際に既に良好な収量を供給する。勿論、生成物が重要であるために、反応器の性能および効率を改善する永続的な努力が為されている。
【0007】
ところで、公知技術水準に鑑み、本発明の課題は、HCNの特に簡単で安価な製造を可能にする反応器を提供することである。本明細書中では、殊に収量、生産効率(Kg HCN/h)および触媒の可使時間を高めることが望まれている。従って、さらに、本発明の課題は、反応ガス中の高いHCN濃度を有するHCNの生産、ひいてはHCNの単離の際の特に僅かなエネルギー需要を可能にする反応器を提供することであった。
【0008】
前記の課題ならびに更に明示的に挙げられていないが、これまでに冒頭で論じられた関係から容易に導き出せるかまたは推論できる課題は、請求項1の全ての特徴を有する装置によって解決される。本発明による装置の好ましい変法は、従属請求項において保護される。HCNを製造するための方法に関連して、請求項25は、基礎となる課題の解決を提供する。
【0009】
それに応じて、本発明の対象は、反応器容器、ガス供給管範囲内に開口する少なくとも1つのガス供給管、反応生成物の導出管および触媒を含む、アンドルソフ法によりシアン化水素を製造するための反応器であり、この場合反応器容器内には、ガス供給管範囲と触媒との間に少なくとも1つの混合部材ならびに少なくとも1つのガス透過性の中間層が設けられており、この混合部材は、ガス供給管範囲とガス透過性の中間層との間に配置されている。
【0010】
この手段によって、意外なことに、HCNの特に簡単で安価な製造を可能にする反応器を準備することに成功する。更に、収量および生産効率(Kg HCN/h)は、本発明による反応器を使用することによって高めることができる。更に、HCNは、本発明による反応器を用いて特に僅かなエネルギー需要で生産することができる。更に、触媒の耐用時間は、反応器の構造的特徴によって延長させることができる。
【0011】
本発明による反応器は、反応器容器を備え、この反応器容器中には、少なくとも1つのガス供給管が開口している。反応器容器は、少なくとも1つの混合部材、ガス透過性の中間層および少なくとも1つの触媒を包囲している。生成物は、反応器容器から少なくとも1つの導出管を通して導出される。反応器容器の形状は、それ自体重要ではなく、したがってこの反応器容器は、矩形または円形の断面を有することができる。特に、反応器容器は、円筒状の形を有する。反応器容器の容積は、設けられた生産効率に依存し、この場合この反応器容器は、全ての通常の容積を占めることができる。好ましくは、反応器容器の容積は、例えば0.01m3〜50m3の範囲内にあることができる。有利には、反応器容器の高さと直径の比(H/D)は、0.4〜1.8、特に有利に0.6〜1.4の範囲内にあることができる。好ましくは、反応器容器は、ガスの流れ方向に見てガス透過性の中間層から出発して耐熱性材料からなる内部被覆を有することができる。例えば、セラミック繊維材料、例えばNefalit(登録商標)の商品名で入手できるSi含有セラミック繊維材料からなる層が設けられていてよく、この層は、反応器容器を熱の作用から保護する。
【0012】
種々の出発材料ガスは、反応器容器の前方または反応器容器中に一緒に導入することができる。それに応じて、反応器容器中には、1つ、2つまたはそれ以上のガス供給管が開口することができる。ガスは、反応器容器の内部で最初にガス供給管範囲内に導入され、この場合このガス供給管範囲は、それ自体重要ではない。
【0013】
ガス供給管範囲と触媒との間には、本発明によれば、少なくとも1つの混合部材が設けられている。実施態様によれば、ガス供給管範囲は、混合部材の一部分を形成していてもよい。混合部材は、供給される出発材料ガスの混合に使用され、この場合には、ガス混合物の全ての公知の実施態様が使用されてよい。
【0014】
簡単で整備の少ない構造のために、混合部材は、特に板状の取付け部材の形で形成されていてよく、この場合この取付け部材は、特に有利に多数の板状層を備えている。本発明の好ましい視点によれば、混合部材は、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の板状層を有することができる。特に、この板状層は、本質的に平行に配置されており、この場合個々の板状層の角度は、互いに特に−10゜〜+10゜、特に有利に−5゜〜+5゜の範囲内にある。板の間隔は、例えば0.5cm〜200cm、特に1cm〜100cm、特に有利に5cm〜50cmであることができる。この場合には、例えば穿孔板を使用することができ、この場合開口は、ガスの混合が達成されるようにずれている。特に有利には、緊密な板が使用される。この実施態様の場合、ガス流は、開口に導通されることができ、この場合この開口は、板の平面に対して垂直方向に板中に設けられているかまたは板の間に設けられている。種々の層のそれぞれの開口は、それぞれの層に対して交互に反応器容器の中心に、例えば板の内部の開口の形で設けられていてよいし、反応器容器の縁部に、即ちそれぞれの板と反応器容器の壁との間に設けられていてよい。この構造は、特にリング−ディスク配置(ディスク−ドーナツ設計)として形成されていてよく、この場合ディスクは、直接に反応器容器とは結合されておらず、他方、リングは、反応器容器で閉じ込められていてよい。好ましくは、この配置は、2〜6個のディスクを有することができる。
【0015】
緊密な板を使用してガス流の混合を達成する実施態様の場合、それぞれの層中での開口の数は、穿孔板を有する実施態様と比較して比較して僅かである。好ましくは、緊密な板を有する実施態様で形成される層は、開口1m2当たり最大10個、有利に最大5個を有する。
【0016】
穿孔板を使用して作業する実施態様は、1m2当たり多数の開口を有する。即ち、穿孔板は、例えば1m2当たり少なくとも11個、有利に少なくとも15個、殊に有利に少なくとも20個の開口を有することができる。
【0017】
特に、混合部材は、反応器の断面積の少なくとも40%、特に有利に少なくとも60%、殊に有利に少なくとも80%に相当する面積を有する緊密な板を備え、この場合には、特に有利に混合部材中に含まれる板層の少なくとも25%、有利に少なくとも50%、特に有利に少なくとも75%がこの種の面積を有する。反応器の断面積は、それぞれ各板層に対して平行に測定される、反応器容器の面積から判明する。
【0018】
先に説明された構造によって、特に各乱流を形成させることができ、したがってガスの卓越した混合が達成される。
【0019】
反応器容器および混合部材は、支配する条件に耐える全ての材料から製造されることができる。適当な材料は、殊に金属、例えば鋼である。更に、反応器の前記成分は、出発材料ガス、殊にNH3の分解を選択した条件で減少させる材料で被覆されることができる。この材料は、特に米国特許第5431984号明細書中に説明されている。
【0020】
本発明によれば、反応器は、ガス流の方向に見て混合部材の後方にガス透過性の中間層を有する。ガス透過性の中間層は、特にフラッシュバックガードを提供するように構成されている。更に、この層によって出発材料ガスの濾過を達成することができ、この場合には、殊に小さな粒子が除去される。更に、ガス透過性の中間層によって圧力差を形成することができ、この圧力差は、触媒に向かって出発材料ガスの特に均一な流れを生じる。この場合、圧力降下は、幅広い範囲内にあることができ、その際に本発明による利点は、よりいっそう高い圧力降下で、即ち高い流れ抵抗の形成の際にガス透過性の中間層によって特に高い程度に達成される。他面、高い流れ抵抗の場合には、比較的大量のエネルギーが出発材料ガスの設けられた流速の形成のために必要とされる。従って、当業者であれば、圧力差の値またはガス透過性の中間層によって惹起される流速の値は、所定の縁部条件で最適に調節される。この場合、中間層の僅かなガス透過性は、高い圧力差を生じる。ガス透過性の中間層は、特に1.5m/秒の出発材料ガス混合物の流速でU字管圧力計を用いて測定された、1〜100ミリバール、特に有利に5〜30ミリバールの範囲内にある圧力差を形成することができる。
【0021】
1つの好ましい視点によれば、ガス透過性の中間層と反応器中に平らに形成された触媒との間の距離は、少なくとも30mm、特に少なくとも60mmであることができる。特に有利には、この距離は、40mm〜1000mmの範囲内、殊に有利に60mm〜100mmの範囲内にあることができる。好ましくは、ガス透過性の中間層は、本質的に反応器中に平らに形成された触媒の平面に対して平行に設けられている。この場合、ガス透過性の中間層と反応器中に平らに形成された触媒とは、特に−10°〜+10°、特に有利にー5°〜+5°の範囲内の角度を形成する。
【0022】
ガス透過性の中間層は、例えばフリース、織物またはフォームの形で形成されていてよく、この場合前記層は、1つまたはそれ以上の層を含むことができる。中間層は、支配する条件に耐える全ての材料から形成されていてよい。このためには、殊に金属、例えば鋼、ならびに無機材料、例えばセラミックまたは鉱物質ガラスが属する。好ましい実施態様によれば、ガス透過性の中間層は、触媒の方向に配置された少なくとも1つのメタルメッシュおよびガス供給管範囲の方向に設けられた、ガラスウール、例えば石英ウールからなる少なくとも1つの層を備えている。中間層中に配置されたメタルメッシュは、特に1μm〜200μmの範囲内、特に有利に5μm〜100μmの範囲内の基準目開きを有することができる。基準目開きは、例えばISO規格4003に記載の公知の気泡試験(Bubble Point Test)で測定されることができる。メタルメッシュは、例えば金メッシュから形成される織物または編み物として形成されていてよい。このためには、例えばダッチウィーブ(Dutch weave)または綾織り物(twill weave)が属する。ガラスウールからなる層の厚さは、特に0.5cm〜10cmの範囲内、特に有利に1cm〜5cmの範囲内にあることができる。この場合、メタルメッシュおよびガラスウールからなる層は、2つの穿孔薄板によって取り囲まれていてよく、この穿孔薄板は、例えば1mm〜100mm、特に有利に5mm〜40mmの範囲内の孔径を有する。
【0023】
出発材料ガスがガス透過性の中間層を通過した後で、この出発材料ガスは、触媒上を流れる。アンドルソフ法によるHCNを製造するために使用可能な触媒は、一般に公知であり、例えばUllmann's Ecyclopedia if Industrial Chemistry, 第8巻, VCH Verlaggesellschaft, Weinheim 1987中に詳説されている。
【0024】
一般に、触媒は、少なくとも1つの貴金属、殊に白金族の金属を含む。殊に、白金、パラジウム、イリジウム、オスミウムおよびロジウムは、白金族に属し、この場合には、白金の使用が特に好ましい。前記金属は、個別的にかまたは混合物として使用されてよい。即ち、殊に白金およびロジウムを含有する合金を使用することができる。
【0025】
特に、触媒は、平らに形成されていてよく、この場合この平面は、この平面が本質的に垂直方向にガスによって貫流されるように特に有利に配置されている。この流れ角度は、特に70゜〜110゜の範囲内、特に有利に80゜〜100゜の範囲内にある。平らに形成された触媒は、特に本質的に板状の取付け部材に対して平行に配置されていてよく、この板状の取付け部材は、ガスの混合に使用される。前記平面によって形成される角度は、例えば−10゜〜+10゜の範囲内にあることができる。この値は、触媒層に対して最も僅かな距離を有する板層に関連するものである。
【0026】
反応器中に平らに形成された触媒は、例えばメッシュの形、例えばワイヤ編物(Drahtgeflechten)、ワイヤ織物(Drahtgeweben)またはワイヤグリッド、穿孔金属箔または金属フォーム(Metallschaeumen)の形で設けられていてよい。有利には、殊に白金を含有するメッシュが使用される。この場合には、1個、2個、3個、4個またはそれ以上のメッシュが使用されてよい。公知の触媒装置の好ましい実施態様は、なかんずく欧州特許出願公開第0680767号明細書、欧州特許出願公開第1358010号明細書、WO 02/062466およびWO 01/80988中に記載されている。
【0027】
触媒は、一般に支持体上に配置されている。この支持体は、例えば金属またはセラミック材料から完成されていてよく、この場合には、セラミック材料が好ましい。前記支持体は、なかんずく欧州特許出願公開第0680787号明細書、欧州特許出願公開第1358010号明細書、欧州特許出願公開第1307401号明細書、WO 02/062466およびWO 01/80988中に詳説されている。
【0028】
例えば、触媒は、セラミックから製造された支持体上に載置されていてよい。特に、セラミック支持体は、多層構造を有することができ、この場合この支持体は、触媒の方向に設けられた上部セラミック支持体および下部セラミック支持体を含む。上部セラミック支持体は、例えば反応生成物の導出方向に設けられた下部セラミック支持体よりも短い直径を有する流動通路を有することができる。上部セラミック支持体の流動通路の直径は、例えば2mm〜20mm、有利に4mm〜12mmの範囲内にあることができ、他方、下部セラミック支持体の流動通路の直径は、10mm〜30mm、有利に12mm〜24mmの範囲内にあることができる。流動通路の直径は、統計学的に十分に多数の通路を測定し(計算尺)、引続き平均値を計算することによって定めることができる1つの平均値である。セラミックからなる支持体は、殊に85%を上廻るAl23含量を有するAl23セラミックまたはAl珪酸塩セラミックから製造されることができる。反応器の特に好ましい実施態様によれば、触媒とセラミックからなる支持体との間には、メタルメッシュが設けられていてよく、この場合このメタルメッシュは、支配する温度条件に耐える材料から製造される。前記のメタルメッシュは、特に有利に、例えばMat.1.4767またはKanthalからのスチールまたはスチール合金から製造されることができる。
【0029】
更に、本発明による反応器の実施態様によれば、触媒は、金属からなる支持体グリッド上に施こされた少なくとも1つの金属支持体メッシュを備えた支持体上に載置されていてよい。特に、支持体は、1個、2個、3個、4個またはそれ以上の金属支持体メッシュを備えていてよい。この場合、支持体メッシュは、例えば1mm〜50mmの範囲内の目開きを有することができる。支持体メッシュならびに支持体グリッドは、有利にスチールまたはスチール合金、例えばMat.1.4767またはKanthal、またはInconel 600、Mat.2.4816から製造されることができ、この場合これらの材料は、それぞれ支配する温度条件で安定でなければならない。
【0030】
支持体グリッドは、反応器容器の底面上に完成されていてよく、この場合支持体グリッドは、平らな触媒が開口を備えた、反応器容器の底面に対して50mm〜300mmの範囲内の距離を有するように構成されていてよい。
【0031】
好ましくは、直接触媒上にセラミック材料からなる層が施こされていてよい。この層は、1つ以上のセラミック織物またはセラミックフォームの形で存在することができる。
【0032】
反応器容器は、1つ以上の開口を有する底面を有することができ、この底面を通して反応生成物は、反応器容器から導出される。この場合、反応器容器の底面は、反応生成物の導出管によって形成されていてもよい。本発明による反応器の好ましい実施態様によれば、反応生成物の導出管は、熱交換器の形で構成されている管束を備えていてよい。この場合、管束は、反応器容器に隣接してセラミック部材(フェルール)で熱の作用から保護されていてよい。
【0033】
本発明による反応器は、他の構成成分、殊に触媒反応を開始させるための構成成分を備えていてよい。このためには、殊に水素フレア(hydrogen flares)、点火電極または欧州特許第1001843号明細書中に開示された装置が属する。
【0034】
図1には、本発明による反応器の好ましい実施態様が示されている。反応器(1)は、反応器容器(2)、ガス供給管範囲(4)内に開口するガス供給管(3)ならびに反応生成物の導出管(5)を備えている。ガス供給管範囲(4)と触媒(6)との間には、混合部材(7)およびガス透過性の中間層(8)が設けられている。この特殊な実施態様において、混合部材(7)は、ディスク−ドーナツ設計で形成されており、この場合には、交互にリングまたはディスクが設けられている。リングは、反応器の中心に開口を有し、反応器容器と接触していてよい。ディスクは、緊密な板として設けられており、この場合、開口は、ディスクと反応器容器との間の中間空間によって形成されている。
【0035】
ガス透過性の中間層(8)は、特に1μm〜200μm、特に有利に5μm〜100μmの範囲内の目開きを有するメタルメッシュ(9)および例えば0.5cm〜10cm、有利に1cm〜5cmの範囲内の厚さを有することができるガラスウールからなる層(10)を備えている。穿孔薄板(11)は、前記部材を固定するために使用されることができ、この場合この穿孔薄板は、1mm〜100mm、特に有利に5mm〜40mmの範囲内の孔径を有することができる。
【0036】
本発明の実施態様によれば、反応器容器(2)は、ガスの流れ方向に見て中間層(8)から出発して耐熱性材料からなる内部被覆(12)を有する。
【0037】
ガスが中間層(8)を通過した後に、ガスは、平面の形に構成されている触媒(6)と接触される。図1に示された変法は、セラミック材料からなる層(13)を有し、この層は、直接触媒(6)上にこの触媒を固定するために載置されている。図示された実施態様において、触媒(6)は、本発明によりセラミックから完成されている支持体(14)上に載置されている。好ましくは、セラミック支持体は、二層構造を有することができ、この場合セラミックからなる層(14)は、上部セラミック支持体(15)および下部セラミック支持体(16)を備えている。
【0038】
引続き、反応生成物は、反応器容器から導出管(5)に導通される。本発明による実施態様は、殊に熱交換器の形に構成されている管束(20)を備え、この場合管束(20)は、反応器容器に隣接してセラミック部材、例えば差込スリーブ(21)で熱の作用から保護されている。
【0039】
次に、図2に関連して反応器(1)の第2の実施態様が記載され、この実施態様は、第1の実施態様と本質的に類似しており、したがって以下、単に相違を検討することにし、この場合同じ部材には、同じ参照符号が使用され、上記の記載も相応して当てはまる。
【0040】
第1の実施態様と同様に、図2に示された反応器も、反応器容器(2)、ガス供給管範囲(4)内に開口するガス供給管(3)、反応生成物の導出管(5)、触媒(6)、混合部材(7)およびガス透過性の中間層(8)を備えている。
【0041】
上記の実施態様とは異なり、図2に示された変法は、メタルメッシュ(17)を備え、このメタルメッシュは、触媒(6)とセラミックからなる支持体(14)との間に設けられている。それによって、反応器の有効性は、意外なことに高めることができる。
【0042】
次に、図3に関連して反応器(1)の第3の実施態様が記載され、この実施態様は、第1の実施態様と本質的に類似しており、したがって以下、単に相違を検討することにし、この場合同じ部材には、同じ参照符号が使用され、上記の記載も相応して当てはまる。
【0043】
第1の実施態様と同様に、図2に示された反応器も、反応器容器(3)、ガス供給管範囲(4)内に開口するガス供給管(3)、反応生成物の導出管(5)、触媒(6)、混合部材(7)およびガス透過性の中間層(8)を備えている。
【0044】
図1に示された実施態様とは異なり、図3に図示された変法は、金属から製造された支持体(14)を含む。金属からなる支持体(14)は、殊に金属支持体メッシュ(18)を備え、この金属支持体メッシュは、金属からなる支持体グリッド(19)で補助されている。支持体メッシュ(18)は、1mm〜50mmの範囲内の目開きを有することができる。
【0045】
支持体グリッド(19)は、管束(20)を熱の作用から保護するセラミック部材(21)上に脚部で立っているか、または熱交換器として使用される管束(20)の底面上に立っている。触媒メッシュ(6)と管束(20)の底面との間の距離は、例えば50mm〜300mmであることができる。
【0046】
反応器は、殊にアンドルソフ法によるシアン化水素(HCN)の製造に使用されることができる。この方法は、自体公知であり、かつ、前述の技術水準中に詳細に説明されている。
【0047】
HCNの製造のために、特に、メタン含有ガスが使用される。通常は、十分に高いメタンの割合を有する全てのガスが使用されることができる。有利には、メタンの割合は、少なくとも80体積%であり、特に有利には少なくとも88体積%である。メタンと共に、出発材料ガス中には天然ガスも使用できる。本明細書中で天然ガスは、少なくとも82体積%のメタンを含有するガスである。
【0048】
更に、アンドルソフ法によるHCNの製造のために、酸素含有ガスが使用され、この場合には、酸素または窒素酸素混合物を使用することができる。この場合、窒素および酸素の全体の体積に対する酸素の体積割合(O2/(O2+N2))は、0.2〜1.0(Vol./Vol.)の範囲内にある。例示的に、空気は、酸素含有ガスとして使用することができる。
【0049】
本発明の好ましい視点によれば、窒素および酸素の全体積に対する酸素の体積割合(O2/(O2+N2))は、0.25〜1.0(Vol./Vol.)の範囲内にある。特殊な視点によれば、この割合は、特に、0.4より大きく1,0までの範囲内にあることができる。更に、本発明の視点によれば、窒素および酸素の全体積に対する酸素の体積割合(O2/(O2+N2))は、0.25〜0.4の範囲内にある。
【0050】
特に、出発材料ガス混合物中のメタン対アンモニア(CH4/NH3)のモル比は、0.95〜1.05Mol/Mol、特に有利には0.98〜1.02モル/モルの範囲内にある。
【0051】
特に、反応温度は、950℃〜1200℃の間、有利に1000℃〜1150℃の間にある。この反応温度は、出発材料ガス流に対する種々のガスの割合、例えばO2/NH3の比により調節されることができる。ここで、出発材料ガス混合物の組成は、出発材料ガスが、発火能を有する混合物の濃度範囲外であるように調節される。触媒メッシュの温度は、熱電対を用いてまたは放射高温計を用いて測定される。灼熱する触媒の自由位置は、放射高温計の測定点として使用される。熱電対での測定には、この測定位置は、ガスの流れ方向に見て、約0〜10cmの間隔をおいて触媒メッシュの後方に見出すことができる。
【0052】
特に、酸素対アンモニア(O2/NH3)のモル比は、0.7〜1.25(モル/モル)の範囲内にある。
【0053】
好ましくは、出発材料ガス混合物は、最大150℃、特に有利に最大120℃に予熱されることができる。
【0054】
出発材料ガスが触媒に導通される流速は、幅広い範囲内にあることができる。本発明による方法の1つの好ましい変法によれば、出発材料ガスは、0.5〜5m/秒、特に有利に0.8〜2.5m/秒の範囲内の速度で触媒に導通される。所定の流速は、反応器容器の断面積に関連し、触媒に導通される出発材料ガス混合物の運転条件(圧力、温度)が考慮される。反応器の断面積は、変化しうるので、この説明は、混合部材とガス透過性の中間層との間の反応器の平均断面積に関連する。
【0055】
次に、本発明は、実施例につき詳説されるが、これによって制限を生じるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明による反応器の好ましい第1の実施態様を示す略示断面図。
【図2】本発明による反応器の好ましい第2の実施態様を示す略示断面図。
【図3】本発明による反応器の好ましい第3の実施態様を示す略示断面図。
【実施例】
【0057】
次に記載された実施例の結果は、使用される出発材料ガス(メタン、アンモニア、空気)のための熱質量流量制御器を備えた計量供給ユニットと、出発材料ガスを100℃へ予熱するための電気的ヒーターと、100mmの内径を有する反応器容器とからなる試験装置中で見出された。反応器容器中で種々の取付け部材を試験した。
【0058】
実施例1:
ガス供給は、上方から反応器容器中に行なわれる。供給開口は、25mmの直径を有する。供給範囲の下方には、10mmの距離で互いに平行に取り付けられているディスクとリングとの交互の配置からなる混合部材が存在する。同心的に固定されたディスクは、93mmの直径を有する。従って、縁部範囲での自由間隙は、3.5mmである。リングは、全内径を埋め(100mm)、40mmの直径を有する中心部で円形の開口を有する。流れ方向に部材が
ディスク−リング−ディスク−リング−ディスクと配置されている。
【0059】
混合部材は、幅10mmのリングの形の縁部偏向板(案内薄板)で終わっている。
【0060】
リングの下方約10mmには、ガス透過性の層が取り付けられている。この取付け部材は、2枚の穿孔薄板(外径100mm、孔径:5mm)からなり、これらの穿孔薄板の間には、80μmの基準目開きを有する金属ダッチウィーブ(Dutch weave)およびその上方に約6mmの厚さの鉱質綿のシートが位置している。
【0061】
ガス透過性の層の下方30mmの距離には、Pt/Rh10触媒メッシュ(1cm当たり1024個の目、ワイヤ厚さ0.076mm)の6枚のシートからなる触媒が取り付けられている。触媒メッシュは、10mmの目開きおよび2mmのワイヤ厚さを有する金属支持体グリッドによって支持されており、縁部範囲内でNefalitシーラント(Siセラミック繊維混合物)中に埋設されている。支持体グリッドは、6mmの直径を有する流動通路を有するセラミック支持体上に載置されている。セラミック支持体の下方で、反応ガスは、管束型熱交換器中に侵入し、この管束型熱交換器中で反応ガスは、約200℃へ冷却される。
【0062】
実施例2:
実施例1と同様であるが、しかし、Ptメッシュ触媒は、金属支持体グリッドなしに直接にセラミック支持体上に載置されている。
【0063】
実施例3:
実施例1と同様であるが、しかし、流れ方向に部材がディスク−リング−ディスクと配置されている混合部材を用いる。
【0064】
実施例4:
実施例3と同様であるが、しかし、100mmの直径および直径5mmの穿孔を有する2枚の穿孔薄板からなる混合部材を用いる。2枚の穿孔ディスクは、互いに平行に20mmの距離で配置されている。
【0065】
比較例1:
例4と同様であるが、しかし、混合物を用いない。流入するガス混合物は、直接にガス透過性の層上に衝突する。
【0066】
比較例2:
比較例1と同様であるが、しかし、ガス透過性の層を用いない。流入するガス混合物は、直接に前記触媒メッシュ上に衝突する。
【0067】
反応器容器の後方で、反応ガスは、管束反応器中で約200℃へ冷却され、後接続されたHCN洗浄器に供給され、形成されたHCNは、NaOH溶液で中和される。
【0068】
この反応ガスを、オンラインでGC中で分析した。形成されたHCN量を評価するために、付加的に排出されたNaCN溶液を計量し、HCN洗浄器の流出液中のCN含量を銀滴定により測定した。
【0069】
全ての試験を約25Nm3/hの一定の出発材料ガス体積流および同じ出発材料ガス組成物を用いて実施し、この場合空気体積流は、約18.2Nm3/hであり、NH3体積流は、約3.35Nm3/hであり、メタン体積流は、約3.27Nm3/hであった。出発材料ガスの温度は、全ての試験において100℃であった。第1表は、得られた結果を示す。
【0070】
【表1】

【0071】
反応器の本発明による実施態様(実施例1〜4)は、反応器の性能および収量に関する著しく良好な結果を示す。その上、反応ガス中の高いHCN濃度は、後処理工程でのエネルギー的に好ましい、HCNの単離を可能にする。
【符号の説明】
【0072】
1 反応器、 2 反応器容器、3 ガス供給管、 4 ガス供給管範囲、 5 導出管、 6 触媒、 7 混合部材、 8 ガス透過性の中間層、 9 メタルメッシュ、 10 ガラスウールからなる層、 11 穿孔薄板、 12 耐熱性材料からなる内部被覆、 13 セラミック材料からなる層、 14 セラミックから完成されている支持体、 15 上部セラミック支持体、 16 下部セラミック支持体、 17 メタルメッシュ、 18 金属支持体メッシュ、 19 支持体グリッド、 20 熱交換器の形に構成されている管束、 21 差込スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器容器(2)、ガス供給管範囲(4)内に開口する少なくとも1つのガス供給管(3)、反応生成物の導出管(5)および触媒(6)を含む、アンドルソフ法によりシアン化水素を製造するための反応器(1)において、反応器容器(2)内には、ガス供給管範囲(4)と触媒(6)との間に少なくとも1つの混合部材(7)ならびに少なくとも1つのガス透過性の中間層(8)が設けられており、この混合部材(7)は、ガス供給管範囲(4)とガス透過性の中間層(8)との間に配置されていることを特徴とする、アンドルソフ法によりシアン化水素を製造するための反応器(1)。
【請求項2】
混合部材(7)が板を含む、請求項1記載の反応器。
【請求項3】
混合部材(7)が、反応器の断面積の少なくとも40%に相当する面積を有する緊密な板を備えている、請求項2記載の反応器。
【請求項4】
板が層状に配置されており、この場合混合部材(7)は、少なくとも3つの板層を備えている、請求項2または3記載の反応器。
【請求項5】
板の間隔は、1cm〜100cmである、請求項4記載の反応器。
【請求項6】
触媒(6)が反応器中に平らに構成されており、この場合この平らな面は、ガス面が70〜110°の範囲内の角度で貫流するように配置されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項7】
触媒(6)が白金を含有する少なくとも1つのメッシュを備えている、請求項6記載の反応器。
【請求項8】
反応器中に平らに形成された触媒(6)と混合部材(7)中に含まれる板とは、−10°〜+10°の範囲内にある角度を形成している、請求項2から7までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項9】
ガス透過性の中間層(8)と反応器中に平らに形成された触媒(6)とは、−10°〜+10°の範囲内にある角度を形成している、請求項1から5までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項10】
ガス透過性の中間層(8)によって、1.5m/秒の出発材料ガス混合物の流速でU字管圧力計を用いて測定された、5〜100ミリバールの範囲内にある圧力差が形成されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項11】
ガス透過性の中間層(8)が、触媒(6)の方向に配置された少なくとも1つのメタルメッシュ(9)およびガス供給管範囲(4)の方向に配置された、ガラスウール(10)からなる少なくとも1つの層を備えている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項12】
中間層中に配置されたメタルメッシュ(9)が1μm〜200μmの範囲内の基準目開きを有する、請求項11記載の反応器。
【請求項13】
メタルメッシュ(9)が5μm〜100μmの範囲内の基準目開きを有する、請求項12記載の反応器。
【請求項14】
メタルメッシュ(9)およびガラスウールからなる層(10)が、2つの穿孔薄板(11)によって取り囲まれている、請求項11から13までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項15】
ガス透過性の中間層(8)と反応器中に平らに形成された触媒(6)との間の間隔は、少なくとも30mmである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項16】
反応器容器(2)が、ガスの流動方向に見て中間層(8)から出発して耐熱性材料からなる内部被覆(12)を有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項17】
直接に触媒(6)上にセラミック材料からなる層(13)が施こされている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項18】
触媒(6)がセラミックから製造された支持体(14)上に載置されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項19】
セラミックからなる支持体(14)が上部セラミック支持体(15)および下部セラミック支持体(16)を有する、請求項18記載の反応器。
【請求項20】
触媒(6)とセラミックからなる支持体(14)との間にメタルメッシュ(17)が設けられている、請求項18または19に記載の反応器。
【請求項21】
触媒(6)が金属からなる支持体グリッド(19)上に施こされた少なくとも1つの金属支持体メッシュ(18)を備えた支持体(14)上に載置されている、請求項1から17までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項22】
支持体メッシュ(15)は、1mm〜50mmの範囲内の目開きを有する、請求項21記載の反応器。
【請求項23】
反応生成物の導出管(5)が熱交換器の形に構成されている管束(20)を備えている、請求項1から22までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項24】
管束(20)が、セラミック部材(21)を備えた反応器容器に隣接して熱の作用から保護されている、請求項23記載の反応器。
【請求項25】
アンドルソフ法によりHCNを製造する方法において、請求項1から24までのいずれか1項に記載の反応器を使用することを特徴とする、アンドルソフ法によりHCNを製造する方法。
【請求項26】
ガスの温度は、混合部材の範囲内で最大150℃である、請求項25記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−534182(P2010−534182A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517331(P2010−517331)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055730
【国際公開番号】WO2009/013035
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】