説明

アース用端子金具

【課題】 材料コストを低減する。
【解決手段】 アース用端子金具Taは、所定形状に打ち抜いた金属板材Mの一部を円形の本体10とし、金属板材Mの一部、即ち本体10の円形領域内における一部を切り起して曲げ加工することによって回り止め部11が形成されている。回り止め部11を曲げ加工する前の展開状態では、回り止め部11となる部分Mdが円形の本体10(Ma)の外周から突出しないので、回り止め部11となる部分が円形の本体の外周から突出する形態のものと比較すると、金属板材Mを打ち抜く際の材料の無駄が少なくて済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アース用端子金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アース用端子金具として、図10及び図11に示すように、アース用の接地部材に接触する本体100に、ボルトを貫通させるための貫通孔101と、本体100が回転するのを規制するための回り止め部102とを形成したものがある。このアース用端子金具は、貫通孔101に貫通させたボルトを接地部材にねじ込んで締め付けることにより、本体100を接地部材に接触させるのであるが、ボルトを締め付ける際には、回り止め部102が接地部材に係止させることで、本体100が連れ回りするのが防止されるようになっている。
尚、回り止め部を備えたアース用端子金具としては、特許文献1に開示されているものがある。
【特許文献1】特開平11−185846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、アース用端子金具に回り止め部を設ける場合、平板状をなす金属板材の一部を曲げ加工することによって回り止め部を一体形成するのであるが、従来では、図12に示すように、曲げ加工前の展開状態において本体100の外周から外側へ部分的に突出する部分を設け、その突出部分103を曲げ加工することによって回り止め部102を形成していた。このように展開状態において部分的に突出する部分103を有する形状の場合、金属板材をプレスで打ち抜いて材料取りする際に、材料の無駄が多くなるという問題がある。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、材料コストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、ボルト孔を有し、接地部材に対して面接触状態で接触する略円板状の本体と、接地部材に係止されることで、前記ボルト孔を中心とする前記本体の回転を規制する回り止め部とを備えてなり、所定形状に打ち抜いた金属板材の一部を前記本体とし、前記金属板材の一部を曲げ加工することによって前記回り止め部が形成されているアース用端子金具において、前記回り止め部は、前記本体の略円形領域内における一部を切り起すことによって形成されているところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、ボルト孔を有し、接地部材に対して面接触状態で接触する本体と、接地部材に係止されることで、前記ボルト孔を中心とする前記本体の回転を規制する回り止め部とを備えてなり、所定形状に打ち抜いた金属板材の一部を前記本体とし、前記金属板材の一部を曲げ加工することによって前記回り止め部が形成されているアース用端子金具において、前記本体に、スリット状の切欠部を形成し、前記切欠部に沿った領域を前記本体に対して曲げ加工することで、前記回り止め部が形成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、ボルト孔を有し、接地部材に対して面接触状態で接触する円板状の本体と、接地部材に係止されることで、前記ボルト孔を中心とする前記本体の回転を規制する回り止め部と、前記本体に連なる底板と、前記底板の両側縁から立ち上がるカシメ片とからなるバレル状の電線圧着部とを備え、前記電線圧着部においては、前記底板に載置した電線が前記カシメ片により包み込まれるようにカシメつけられることで接続されるようになっており、所定形状に打ち抜いた金属板材の一部を前記本体とし、前記金属板材の一部を曲げ加工することによって前記回り止め部が形成されているアース用端子金具において、前記底板を部分的に切り起すことで、前記回り止め部が形成されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載のものにおいて、前記底板における前記回り止め部の切り起し領域が、前記電線の絶縁被覆と対応するように配置されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のものにおいて、前記回り止め部が折り返し状に曲げ加工されている
ところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
回り止め部を曲げ加工する前の展開状態では、回り止め部となる部分が略円形の本体の外周から突出しないので、回り止め部となる部分が略円形の本体の外周から突出する形態のものと比較すると、金属板材を打ち抜く際の材料の無駄が少なくて済む。
【0011】
<請求項2の発明>
回り止め部を曲げ加工する前の展開状態では、回り止め部となる部分が本体の外周から突出しないので、回り止め部となる部分が本体の外周から突出する形態のものと比較すると、金属板材を打ち抜く際の材料の無駄が少なくて済む。
【0012】
<請求項3の発明>
回り止め部を曲げ加工する前の展開状態では、回り止め部となる部分が電線圧着部の外縁から突出しないので、回り止め部となる部分が電線圧着部の外縁から突出する形態のものと比較すると、金属板材を打ち抜く際の材料の無駄が少なくて済む。
【0013】
<請求項4の発明>
回り止め部が形成された後、底板に開口部が形成されるが、この開口部の開口縁が絶縁被覆の外周に引っ掛かることで、電線を抜け止めすることができる。
【0014】
<請求項5の発明>
回り止め部の折返部は、湾曲した形状をなすので、ここに電線が接触しても電線が傷つくことはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図5を参照して説明する。本実施形態1のアース用端子金具Taは、所定形状に打ち抜いた平板状の金属板材M(図4を参照)を曲げ加工したものであり、接地部材E(例えば、自動車のボディ)に対して面接触状態で接触する略円板状の本体10と、接地部材Eに係止されることで本体10の回転を規制する回り止め部11と、電線圧着部12とを備えている。曲げ加工前の展開状態の金属板材Mは、本体10及び回り止め部11を構成する略円形部Maと、略円形部Maの外周から放射状に延出して電線圧着部12を構成する延出部Mbとからなる。
【0016】
略円形部Maの中心には、略円形部Maの外周と同心の円形をなすボルト孔13が形成されている。また、略円形部Maには、その外周から中心側へ切り込まれて更に径方向と略直角に直線状に切り込まれた形態のスリット状の切欠部Mcが、周方向に間隔を空けて2箇所に形成されている。この略L字形の切欠部Mcと略円形部Maの外周とによって囲まれた略方形領域Mdを曲げ加工することによって、回り止め部11が形成されている。尚、略方形領域Mdにおける外周側の縁部Meは、円弧形ではなく、直線状をなしている。かかる略方形領域Mdは、概ね径方向の折り目に沿って下方へ略直角に曲げられ、更に、その曲げた部分を略中央位置の折り目に沿って上方へ密着折り返し状に曲げることによって、回り止め部11が形成されている。
【0017】
電線圧着部12は、本体10に連なる底板12aの両側縁から立ち上がる一対のカシメ片12bとからなるオープンバレル状をなす。この電線圧着部12においては、底板12aに載置された電線(図示せず)がカシメ片12bにより包み込まれるようにカシメつけられることで、導通可能に接続される。
【0018】
かかるアース用端子金具Taの本体10を接地部材Eの上面に載置するとともに、回り止め部11を接地部材Eの係止孔Eaに嵌入し、ボルト孔13に上から挿し込んだボルトBを、接地部材Eの雌ネジ孔(図示せず)に螺合して締め付けると、アース用端子金具Taが、本体10を接地部材Eの上面に対して面接触状態で接触させた状態に取り付けられる。取付けに際しては、ボルトBの鍔Baが本体10の上面に接触するため、摩擦抵抗によって本体10がボルトBと一緒に連れ回りしようとするのであるが、回り止め部11が係止孔Eaに嵌入されているので、本体10がボルトB(ボルト孔13)を中心として回転することが規制される。これにより、電線圧着部12に接続されている電線の導出方向が一定の方向に定められ、電線が無理に曲げられる虞はない。
【0019】
上述のように本実施形態のアース用端子金具Taは、所定形状に打ち抜いた金属板材Mの一部を本体10とし、金属板材Mの一部を曲げ加工することによって回り止め部11が形成されているのであるが、回り止め部11は、本体10の略円形領域内における一部を切り起すことによって形成されている。換言すると、本体10に、スリット状の切欠部Mcを形成し、切欠部Mcに沿った領域を本体10に対して曲げ加工することで、回り止め部11が形成されている。したがって、回り止め部11を曲げ加工する前の展開状態では、回り止め部11となる略方形領域Mdが円形の本体10(略円形部Ma)の外周から突出しないので、回り止め部となる部分が円形の本体の外周から突出する形態のものと比較すると、金属板材Mを打ち抜く際の材料の無駄が少なくて済んでいる。
【0020】
また、回り止め部11の先端11a(下端)は折り返し状に曲げ加工されることで略半円形をなしているので、回り止め部11の先端(下端)に電線が接触しても、電線が傷つくことはない。
【0021】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を図6ないし図9を参照して説明する。本実施形態2のアース用端子金具Tbは、所定形状に打ち抜いた平板状の金属板材Pを曲げ加工したものであり、接地部材E(例えば、自動車のボディ)に対して面接触状態で接触する略円板状の本体20と、接地部材Eに係止されることで本体20の回転を規制する回り止め部21と、電線Wを接続するための電線圧着部22とを備えている。曲げ加工前の展開状態の金属板材Pは、本体20を構成する円形部Paと、円形部Paの外周から放射状に延出して電線圧着部22を構成する延出部Pbとからなる。円形部Paの中心には、円形部Paの外周と同心の円形をなすボルト孔23が形成されている。
【0022】
電線圧着部22は、本体20(円形部Pa)に連なる底板24と、底板24の両側縁から立ち上がる一対のカシメ片25とからなるオープンバレル状をなす。この電線圧着部22においては、底板24に載置された電線がカシメ片25により包み込まれるようにカシメつけられることで、導通可能に接続される。この電線圧着部22は、電線Wの絶縁被覆Waをカシメつけるインシュレーションバレル22aと、電線の絶縁被覆Waを剥いて露出させた芯線Wbをカシメつけるワイヤバレル22bとからなる。
【0023】
金属板材Pの底板24のうちインシュレーションバレル22aを構成する領域には、略U字形をなすスリット26が形成され、このスリット26によって囲まれた略方形領域27を曲げ加工することによって、回り止め部21が形成されている。かかる略方形領域27は、左右方向(即ち、電線Wの導出方向と直角な方向であり、本体20からの電線圧着部22の突出方向と直角な方向)の折り目に沿って下方へ略直角に曲げられることによって、回り止め部21を構成している。この回り止め部21を曲げ加工することによって底板24に形成された開口28のうち、前側(本体20側)の開口縁28Fには回り止め部21が連なり、後側(電線Wが導出される側)の開口縁28Rはエッジ状をなしている。そして、このエッジ状をなう後側の開口縁28Rが、電線Wの絶縁被覆Waの外周と対応するように位置している。
【0024】
かかるアース用端子金具Tbの本体20を接地部材Eの上面に載置するとともに、回り止め部21を接地部材Eの係止孔Eaに嵌入し、ボルト孔23に上から挿し込んだボルト(図示せず)を、接地部材Eの雌ネジ孔(図示せず)に螺合して締め付けると、アース用端子金具Tbが、本体20を接地部材Eの上面に対して面接触状態で接触させた状態に取り付けられる。取付けに際しては、ボルトの鍔が本体20の上面に接触するため、摩擦抵抗によって本体20がボルトと一緒に連れ回りしようとするのであるが、回り止め部21が係止孔Eaに嵌入されているので、本体20がボルト(ボルト孔23)を中心として回転することが規制される。これにより、電線圧着部22に接続されている電線Wの導出方向が一定の方向に定められ、電線Wが無理に曲げられる虞はない。
【0025】
上述のように本実施形態のアース用端子金具Tbは、所定形状に打ち抜いた金属板材Pの一部を本体20とし、金属板材Pの一部を曲げ加工することによって回り止め部21が形成されているのであるが、回り止め部21は、電線圧着部22の底板24を部分的に切り起すことで形成されている。したがって、回り止め部21を曲げ加工する前の展開状態では、回り止め部21となる略方形領域27が電線圧着部22となる延出部Pbの外縁から突出しないので、回り止め部となる部分が電線圧着部の外縁から突出する形態のものと比較すると、金属板材Pを打ち抜く際の材料の無駄が少なくて済んでいる。
【0026】
また、回り止め部21が形成された後、底板24に開口部28が形成されるが、底板24における回り止め部21の切り起し領域である略方形領域27が電線Wの絶縁被覆Waと対応するように配置されている。したがって、電線Wが後方へ引っ張られたときに、その絶縁被覆Waの外周が開口部28のエッジ状をなす後側の開口縁28Rに引っ掛かるようになり、これにより、電線Wを抜け止めすることができる。
【0027】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0028】
(1)上記実施形態1では本体に電線圧着部を一体に形成したが、本発明によれば、電線圧着部を設けず、タブ形状の端子部を設け、この端子部に、電線に固着した端子金具を嵌合してもよい。
【0029】
(2)上記実施形態1では回り止め部の折返部を密着折り返し状としたが、本発明によれば、密着しない形態で折り返してもよい。
【0030】
(3)上記実施形態2では回り止め部の折返部を折り返さない形態としたが、本発明によれば、密着する形態で折り返してもよい。
【0031】
(4)上記実施形態2では底板における回り止め部の切り起し領域を電線の絶縁被覆と対応するように配置したが、本発明によれば、切り起し領域を電線の絶縁被覆から外れた位置に配置してもよい。
【0032】
(5)上記実施形態1,2では本体を円形としたが、本発明によれば、本体を非円形としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態1においてアース用端子金具をボルトで取り付けた状態をあらわす平面図
【図2】アース用端子金具の平面図
【図3】アース用端子金具の側面図
【図4】アース用端子金具の展開状態の平面図
【図5】図2のX−X断面図
【図6】実施形態2のアース用端子金具の平面図
【図7】アース用端子金具の側面図
【図8】アース用端子金具の展開状態の平面図
【図9】図6のY−Y断面図
【図10】従来例のアース用端子金具の平面図
【図11】従来例のアース用端子金具の側面図
【図12】従来例のアース用端子金具の展開状態平面図
【符号の説明】
【0034】
E…接地部材
M…金属板材
Ta…アース用端子金具
10…本体
13…ボルト孔
11…回り止め部
Tb…アース用端子金具
P…金属板材
W…電線
20…本体
21…回り止め部
22…電線圧着部
23…ボルト孔
24…底板
25…カシメ片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト孔を有し、接地部材に対して面接触状態で接触する略円板状の本体と、
接地部材に係止されることで、前記ボルト孔を中心とする前記本体の回転を規制する回り止め部とを備えてなり、
所定形状に打ち抜いた金属板材の一部を前記本体とし、前記金属板材の一部を曲げ加工することによって前記回り止め部が形成されているアース用端子金具において、
前記回り止め部は、前記本体の略円形領域内における一部を切り起すことによって形成されていることを特徴とするアース用端子金具。
【請求項2】
ボルト孔を有し、接地部材に対して面接触状態で接触する本体と、
接地部材に係止されることで、前記ボルト孔を中心とする前記本体の回転を規制する回り止め部とを備えてなり、
所定形状に打ち抜いた金属板材の一部を前記本体とし、前記金属板材の一部を曲げ加工することによって前記回り止め部が形成されているアース用端子金具において、
前記本体に、スリット状の切欠部を形成し、
前記切欠部に沿った領域を前記本体に対して曲げ加工することで、前記回り止め部が形成されていることを特徴とするアース用端子金具。
【請求項3】
ボルト孔を有し、接地部材に対して面接触状態で接触する円板状の本体と、
接地部材に係止されることで、前記ボルト孔を中心とする前記本体の回転を規制する回り止め部と、
前記本体に連なる底板と、前記底板の両側縁から立ち上がるカシメ片とからなるバレル状の電線圧着部とを備え、
前記電線圧着部においては、前記底板に載置した電線が前記カシメ片により包み込まれるようにカシメつけられることで接続されるようになっており、
所定形状に打ち抜いた金属板材の一部を前記本体とし、前記金属板材の一部を曲げ加工することによって前記回り止め部が形成されているアース用端子金具において、
前記底板を部分的に切り起すことで、前記回り止め部が形成されていることを特徴とするアース用端子金具。
【請求項4】
前記底板における前記回り止め部の切り起し領域が、前記電線の絶縁被覆と対応するように配置されていることを特徴とする請求項3記載のアース用端子金具。
【請求項5】
前記回り止め部が折り返し状に曲げ加工されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のアース用端子金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−4756(P2006−4756A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179883(P2004−179883)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】