イオンビーム発生装置とそのクリーニング方法
【課題】3枚の多孔板電極からなる引き出し電極を備えたイオンビーム発生装置において、第3電極を損傷することなく、第3電極に付着した付着膜を除去する技術を提供する。
【解決手段】第1電極7aを正電位に、第2電極7bを負電位に、第3電極7cを接地電位にそれぞれ設定し、第3電極7cに流れる電流値を電流計9で測定しながら、該電流計9で測定された電流値が設定値を超えた場合には、フィードバック制御部10によって第2電極7bに印加する電圧の絶対値を上げる。
【解決手段】第1電極7aを正電位に、第2電極7bを負電位に、第3電極7cを接地電位にそれぞれ設定し、第3電極7cに流れる電流値を電流計9で測定しながら、該電流計9で測定された電流値が設定値を超えた場合には、フィードバック制御部10によって第2電極7bに印加する電圧の絶対値を上げる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビームエッチングやイオンミリング等を行うイオンビーム処理装置に用いられるイオンビーム発生装置とそのクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンビームエッチング装置やイオンミリング装置といった、イオンビームを用いて基板を処理するイオンビーム処理装置は、放電室内に生成されたプラズマから正イオンを引き出してイオンビームを生成するイオンビーム発生装置を備えている。係るイオンビーム発生装置は、正イオンをプラズマから引き出すために、放電室の一端に3枚の多孔板電極で構成された引き出し電極を配置している。引き出し電極は、それぞれ所望の間隔で配置され、それぞれプラズマ室側から第1電極(スクリーングリッド)、第2電極(アクセルグリッド)、第3電極(デクセルグリッド)と呼ばれる。特許文献1には、このような3枚の多孔板電極で構成された引き出し電極を備えたイオンビーム発生装置が開示されている。
【0003】
イオンビームは、各電極に電圧を印加して電極間の静電界によりプラズマ中の正イオンを加速させて生成される。よって、第1電極は正電位、第2電極は負電位、第3電位は接地電位に設定され、印加される電圧はイオンビームの特性が好適になるように各々調整される。また、電極の形状等(板厚、孔径、孔ピッチ、電極間隔)は所望の条件でイオンビームの特性が好適になるようにそれぞれ設計されている。尚、ここで言うイオンビームの特性とは、プラズマから引き出されるイオンビームの発散角(引き出されるビームの直進性)であり、電極の孔の中心線に対する引き出されたイオンビームの偏向角のことを言う。
【0004】
引き出されたイオンビームは被処理基板に照射され、基板表面をエッチングする。その際、イオンビームの発散角が重要であり、該発散角は一般的に4°以下と小さいことが求められる。発散角が大きい場合、エッチングの均一性の悪化や、基板表面にフォトレジスト等の構造体がある場合には、エッチング後の基板表面の形状が所望する形状と異なる等の問題が生じる。
【0005】
また、第1電極と第3電極の第2電極側には、第2電極がスパッタされることにより、電極材料が付着することが知られている。これは、引き出されたイオンとの電荷交換反応により電極間に浮遊する中性ガスがイオン化し、この加速されていない低速のイオンが第2電極の電界で加速され、第2電極をスパッタすることによって生じる現象である。イオンビームの引き出しを長時間続けると、第1電極と第3電極に付着した付着膜が厚くなり、膜剥がれを発生し、電極間でのショートを引き起こしてイオンの引き出しができなくなる恐れがある。
【0006】
このような付着膜による問題を解決するため、第2電極の電位を調整することにより、イオンビームの発散角を大きくして第3電極にイオンビームを照射し、第3電極に付着した付着膜を除去(クリーニング)する方法が講じられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2001−502468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、第3電極に過剰にイオンビームを入射させてしまうと、スパッタにより第3電極の消耗と熱変形を引き起こし、エッチング速度や分布の変動を引き起こす恐れがあった。
【0009】
本発明の課題は、3枚の多孔板電極からなる引き出し電極を備えたイオンビーム発生装置において、第3電極を損傷することなく、第3電極に付着した付着膜を除去する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1は、プラズマ発生源と、
前記プラズマ発生源の側から順に配置された、それぞれ多孔板電極である、第1電極、第2電極、及び第3電極からなり、前記プラズマ発生源で発生したイオンを引き出す引き出し電極と、
前記第1及び第2電極の電位をそれぞれ独立に制御する制御手段と、
前記第3電極に流れる電流を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段による測定値に基づいて、前記第2電極の電位をフィードバック制御するフィードバック制御部とを備え、
前記第3電極は接地電位になっており、
前記制御手段は、前記第1電極を正電位に、前記第2電極を負電位に制御して、イオンビームを前記第3電極に入射させて、前記第3電極のクリーニングを行うイオンビーム発生装置であって、
前記フィードバック制御部は、前記電流測定手段によって測定された前記第3電極の電流値が閾値を超えた場合に、前記第2電極の電圧の絶対値を上げるように制御することを特徴とする。
【0011】
本発明の第2は、プラズマ発生源と、
前記プラズマ発生源の側から順に配置された、それぞれ多孔板電極である、第1電極、第2電極、及び第3電極からなり、前記プラズマ発生源で発生したイオンを引き出す引き出し電極と、
前記第1及び第2電極の電位をそれぞれ独立に制御する制御手段と、
前記第3電極に流れる電流を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段による測定値に基づいて、前記第2電極の電位をフィードバック制御するフィードバック制御部とを備え、
前記第3電極は接地電位になっており、
前記制御手段は、前記第1電極を正電位に、前記第2電極を負電位に制御して、イオンビームを前記第3電極に入射させて、前記第3電極のクリーニングを行うイオンビーム発生装置のクリーニング方法であって、
前記フィードバック制御部は、前記電流測定手段によって測定された前記第3電極の電流値が閾値を超えた場合に、前記第2電極の電圧の絶対値を上げるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、第3電極に流れる電流を常時モニターしながらクリーニングを行うことで、第3電極に入射するビーム量を定量化でき、クリーニング時に過剰なビーム入射による第3電極の消耗や熱変形を防止することができる。また、第3電極に流れる電流を常時モニターすることで、イオンビームの発散角を類推することができ、従来は実験的に求めていた発散角の測定を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のイオンビーム発生装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明のイオンビーム発生装置の一実施形態における引き出し電極の詳細を説明する概略図である。
【図3】イオンビーム発生装置の動作原理を説明する概略図である。
【図4】第1電極及び第3電極に付着膜が堆積する原理を説明する概略図である。
【図5】第3電極のクリーニングの原理を説明する概略図である。
【図6】本発明のイオンビーム発生装置において、フィードバック制御の手順を説明するフロー図である。
【図7】本発明のクリーニング方法において、第2電極の電圧による第3電極の電流の変動を示す図である。
【図8】イオンビーム発生装置の参考実施形態における引き出し電極の詳細を説明する概略図である。
【図9】図8のイオンビーム発生装置において、アラーム表示によって装置の動作を自動停止する手順を説明するフロー図である。
【図10】図8のイオンビーム発生装置において、アラーム表示によって装置の動作を手動停止する手順を説明するフロー図である。
【図11】イオンビームを利用した磁気読み取りヘッド用センサのTMRスタックのパターニング工程を示す断面模式図である。
【図12】イオンビーム処理装置を用いたハードバイアス膜成膜装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
図1を参照して、本発明のイオンビーム発生装置の全体構成を説明する。イオンビーム発生装置1は、プラズマを閉じ込めるためのメタル放電室5、壁面でのプラズマ損失を防ぐためのカスプマグネット(永久磁石)6、誘導結合プラズマ(ICP)を発生させるためのRFコイル3(プラズマ発生源)を有している。さらに、高周波電磁界を真空に導入するための誘電体窓4、生成されたプラズマの分布を制御するための電磁石2、プラズマ中のイオンを引き出すための引き出し電極7を備えている。また、図示していないが、プラズマ発生源から引き出されたイオンビーム(正電位のイオン)によって生じる空間電位を中和するための電子源(ニュートラライザ)が設けられている。
【0015】
不図示のガス導入手段から放電室5に不活性ガス(アルゴン、キセノン、クリプトンなど)が導入され、RFコイル3に高周波電力が印加されると、放電室5内にプラズマが発生する。このプラズマ中からイオンは、所定の電圧が印加された引き出し電極7により引き出され、イオンビームとなって被処理部材(基板)に照射される。引き出し電極7は、放電室5側から順に、第1電極7a、第2電極7b、及び第3電極7cを有している。第1電極7a、第2電極7b、及び第3電極7cは、複数の孔を有するグリッド構造を有した多孔板電極である。長寿命化や耐久性の観点から、構成部材(グリッド材)としてはスパッタリング率が低いモリブデンやカーボンが用いられる。
【0016】
尚、イオンビーム処理装置は、本発明のイオンビーム発生装置1と、該装置の第3電極7c側に真空室(不図示)を備え、該真空室内にイオンエッチング等のイオンビーム処理を施す被処理基板を載置する基板ホルダーを備えている。
【0017】
図2は、第3電極7cのクリーニング時の引き出し電極7の詳細構成を説明するための概略図である。図2に示すように、第1電極7aは、第1電源11と接続されて正電位に維持され、第2電極7bは第2電源12と接続されて負電位に維持され、第3電極7cはローパスフィルタ8、電流計9を介して、アースと接続されている。このように、第1乃至第3電極7a乃至7cの各電位はそれぞれ独立して制御されている。また、第3電極7cからアースに向かって流れる電流は、電流測定手段である電流計9によって測定され、フィードバック制御部10に送信され、フィードバック制御部10は、当該電流値に基づき、第2電源12を制御することができる。
【0018】
本例においては、第1電極7aは正電位(例えば、100乃至1000V)に第1電源11が設定され、第2電極7bは負電位(例えば、−1000乃至−3000V)に第2電源12が設定され、第3電極7cは接地電位になるように維持されている。
【0019】
図3を参照して、イオンビーム発生装置1の動作原理を説明する。図3に示すように、放電室5内にプラズマを発生させ、第1電極7aに正電圧、第2電極7bに負電圧をそれぞれ印加すると、第1電極7aと第2電極7bの電位差によってプラズマ中のイオン23のみが静電加速によって引き出される。プラズマから引き出されたイオン23は、第2電極7aと第3電極7cの電位差によって逆に減速されるため、第3電極7cを通過するイオン23は第1電極7aの電位分のエネルギーを持ったイオンビーム24として噴射される。第3電極7cから引き出されるイオンビーム24は、各電極の電圧による静電界(不図示)によって偏向されている。第3電極7cから引き出されたイオンビーム24の孔の中心軸に対する偏向角度をビームの発散角θという。
【0020】
図4を参照して、電極に付着膜が堆積する原理を説明する。第1電極7aと第3電極7cの第2電極7bに面する側には、第2電極7bの電極材料がスパッタされ、付着膜21a,21bとして付着する。具体的には、放電室5に導入された中性ガスの中には、電極間において引き出されるイオン23との電荷交換反応によりイオン化し、低速イオン(+L)になるものがある。電荷交換反応とは、それぞれの粒子の運動量を保存したまま電荷だけが交換される現象である。区別するために前記したイオンビーム24を高速イオン(+H)と呼ぶが、高速イオンは各電極の電圧による静電界(不図示)によって加速・偏向され、電極に衝突せずに第3電極7cから噴射される。一方、加速されていない低速イオンは第2電極7bの負電位によって加速され第2電極7bに衝突し、スパッタリングを起こす。スパッタされた第2電極7bの材料は、粒子となって第1電極7aと第3電極7cに付着し、付着膜21a,21bを形成する。図4中の「n」は中性ガスを示す。
【0021】
第3電極7cに付着した付着膜21bは、多量に堆積されると、第2電極7bとの間でショートしてしまうことがある。そのため、定期的に第3電極7cに付着した膜を除去(クリーニング)する必要がある。
【0022】
図5を参照して、第3電極7cのクリーニングの原理を説明する。引き出されるイオンビームは、各電極の電圧による静電界によって加速・偏向され、所定の発散角θを有している。第1電極7aと第2電極7bの間の静電界は、電界の形状によって引き出されるイオンを収束する。反対に第2電極7bと第3電極7cの間の静電界は、イオンを発散させる。第1電極7aの電圧は通常、引き出されるイオンビームのエネルギーを決めるために用いるため、所定の値に設定して使う。第2電極7bの電圧は、所定の第1電極7aの電圧でビームの発散角が最小となるように調整される。また、意図的に第2電極7bの電圧を、イオンビームの発散角が最小となる電圧値より低く設定することで発散角を大きくし、第3電極7cにイオンビームを入射させることも出来る。
【0023】
このように、第2電極7bの電圧を通常よりも低く設定することにより、第3電極7cにイオンビームが直接入射すると、前記の第3電極7c表面の付着膜21bがスパッタされ、該付着膜21bを除去(クリーニング)することができる。
【0024】
但し、第2電極7bの電圧を必要以上に小さくすると、過剰に第3電極7cにイオンビームが入射し、スパッタによる第3電極7cの消耗と熱変形を引き起こす。クリーニング時間も同様で、必要以上に長時間のクリーニングを実施すると第3電極7cの消耗を引き起こすため、クリーニングに用いるイオンビームの量とクリーニング時間の両方を管理することが重要である。
【0025】
本発明の第1の実施形態においては、クリーニング工程において、第3電極7cに流れる電流値を測定し、その測定値に基づいて、第2電極7bをフィードバック制御する。
【0026】
図6を参照して、具体的に処理手順を説明する。ステップS1においては、前述したように、第2電極7bの電圧をイオンビームの発散角が最小となる電圧値より低く設定することにより、発散角を大きくし、第3電極7cにイオンビームを照射してクリーニング処理を開始する。
【0027】
ステップS2においては、図2に示す電流計9により、第3電極7cに流れる電流を測定し、測定値を常時フィードバック制御部10へ送信する。
【0028】
尚、第3電極7cに流れる電流を測定する際には、ニュートラライザの動作を停止させる必要がある。なぜなら、本ニュートラライザ動作中は、ニュートラライザから供給された電子が第3電極7cに流入するためクリーニングのために第3電極7cに入射させた正イオンによる電流の計測が困難になるからである。
【0029】
ステップS3において、フィードバック制御部10は、電流計9から送信される電流値が、設定値(閾値)と等しいか否かを判定する。電流値が設定値と等しい時(Yes)は、ステップS5のタイマー処理に進む。他方、電流値が設定値と等しくない時(No)は、ステップS4の第2電極電圧制御処理に進む。
【0030】
ステップS4の第2電極電圧制御処理に関して、電流計9で測定された電流値が設定値より大きい場合と、小さい場合とに分けて、後述する実施例を例に、図7を参照して詳細に説明する。
【0031】
図7に、第1電極7aの電圧を+100V、電流を325mAに設定して、第2電極7bの電圧を変化させた時の第2電極7bの電流値、及び第3電極7cの電流値の変化を示した。通常用いるビーム条件(Normal)である第2電極電圧(−2400V)では、図7に示すように第2電極7b、第3電極7cの電流値(60mA)は極小値に近い。このことから第3電極7cへのイオンビームの入射が少ない、つまりイオンビームの発散角が小さいと判断できる。尚、図7において、第2電極電圧は絶対値で示す。
【0032】
通常のビーム条件から第2電極7bの電圧を下げると、図7に示すように第3電極7cの電流値が増加し、このことから、第3電極7cへのイオンビームの入射が増大する、つまりイオンビームの発散角が大きくなっていることがわかる。適正なクリーニングに使用する条件(Defocus)としては第3電極7cの電流(110mA)が、通常の条件の約2倍になる第2電極7bの電圧(−1900V)を用いる。この条件において通常30分間のイオンビームの使用に対して3%に相当する1分間のクリーニングで第3電極7cの付着膜が除去されることが確認されている。
【0033】
また、適正なクリーニング条件よりさらに第2電極7bの電圧を小さくした場合、第3電極7cの電流はさらに大きくなる。しかし、第3電極7cの電流値の上昇が急峻なためクリーニングに使用するには第3電極7cが消耗しないようにクリーニング時間に注意しなければならない。
【0034】
さらに第2電極7bの電圧を小さくした場合、図7に示したように第2電極7bに流れる電流値が増加する。第1電極7aの電圧を100Vに維持したまま、第2電極7bの電圧を−1900Vから−1200Vへ低減させると、第3電極7cの電流値は110mAから300mAに増加する。同時に、第2電極7bの電流値も60mAから70mAまで増加する。このように第2電極7bの電流が増加する条件(−1400V以上)では、減速されていない高速イオンが第2電極7bに入射しているため、スパッタによる第2電極7bの消耗が激しい。よって、第2電極7bの電流が増加する条件(−1400V以上)をクリーニングに使用することは望ましくない。
【0035】
上記の条件をまとめると以下の通りである。
【0036】
【表1】
【0037】
以上より、本例においては、フィードバック制御部10は、電流計9がクリーニング条件で使用する設定値(110mA)より低い場合は、第2電極7bの電圧を適宜低下させるように制御する。一方、電流計9がクリーニング条件で使用する設定値(110mA)より高い場合は、第2電極7bの電圧の絶対値を適宜増加させるように制御する。
【0038】
ステップS4の第2電極電圧制御処理が完了すると、再びステップS2及びステップS3の処理が、第3電極7aの電流が設定値(110mA)と一致するまで繰り返される。
【0039】
ステップS5においては、ステップS4で電流値が設定値(110mA)と等しいと判断された時から、タイマー処理が開始される。そして、タイマー処理において所定時間(例えば、1分)が経過すると、ステップS6に進み、クリーニング処理が停止される。
【0040】
(参考実施形態)
図8、図9、及び図10を参照して、参考実施形態について説明する。
【0041】
本例は、図2に示した実施形態とは異なり、図8に示すように、電流計9で測定された値を表示する表示手段15と、電流計9の測定値に基づいて、第1電源11及び第2電源12を自動停止する電源停止手段16が追加されている。それ以外の構成は基本的に図2で示した構成と同一である。
【0042】
図9を参照して、クリーニング工程においてアラーム表示を行う動作手順を説明する。ステップS1において、第1の実施形態と同様の第3電極7cのクリーニング処理が行われる。第1電極7aの電圧、第2電極7bの電圧の条件は、前述したように、それぞれ+100V、−1900Vとなるように設定する。
【0043】
ステップS2において、電流計9により、第3電極7cに流れる電流が測定される。測定された電流値は制御部14に送信される。
【0044】
ステップS3において、制御部14は、測定された電流値が設定値より大きいか否かを判断する。ステップS3で電流値が設定値より大きい(Yes)場合、イオンビームの発散角が増大し、第3電極7cにイオンビームが多く入射しているため、ステップS4に進み、表示手段15がアラームを表示する。そして、ステップS5に進み、電源停止手段16が、第1電源11、第2電源12を自動停止することで、クリーニング処理を停止する。ステップS3で電流値が設定値より小さい(No)場合には、そのままクリーニング処理を続行する。
【0045】
図10は、図9と異なり、ステップS4(アラーム表示)の後に、ステップS6(停止操作アラーム)が追加されており、表示装置使用者によって、手動で第1電源11、第2電源12を停止して、クリーニング処理を停止する(S7)例である。
【0046】
上記のように、第3電極に流れる電流が閾値に達した際にアラームを表示したり、動作を自動停止する手段を設けることによって、電極の熱変形や組立上の不具合によりビームの発散角が大きくなった場合でも、イオンビーム処理への影響を防止することができる。
【0047】
上記したように、第3電極7cに流れる電流を測定しながら、所定の設定値を超えた場合には第2電極7bに印加する電圧を制御する、或いは、処理を停止することによって、第3電極7cへの過剰なイオンビームの入射を防止することができる。係る作用は、イオンビームの発散角θを制御することによって得られるものであるから、同様の手法によって、エッチング等の通常のイオンビーム処理においても、イオンビームの発散角θの制御を行い、適正な処理を行うことができる。即ち、イオンビーム処理においては、第1電極7aの電圧を+100V、電流を325mAに設定し、第2電極7bの電圧を通常用いるビーム条件(Normal)である第2電極電圧(−2400V)とする。この条件下でイオンビーム処理を行い、同時に第3電極7cに流れる電流を測定し、測定値が設定値(60mA)を超えた場合には第2電極電圧を制御する、或いは、アラームを表示し、自動又は手動で処理を停止することとする。
【0048】
本発明のイオンビーム発生装置はイオンビームエッチングやイオンミリングを行うイオンビーム処理装置に用いられる。本発明に係る第3電極のクリーニング処理は、係るイオンビーム処理装置において、複数枚の被処理基板を連続してイオンビーム処理する工程中に、適宜、実施することができるが、クリーニング処理中は被処理基板への影響を避ける必要がある。そのため、クリーニング処理を実施する際には、被処理基板を真空室から退避させるか、或いは、予め基板ホルダーと引き出し電極との間に開閉自在なシャッターを備えておき、該シャッターを閉状態として、クリーニング処理を行う。
【0049】
本発明に係るイオンビーム処理装置は、例えば、磁気ヘッドや磁気読み取りヘッド用センサのTMR(Tunnel Magneto−Resistance:トンネル磁気抵抗)スタックのパターニングに好適に用いられる。以下に、係るパターニング工程について説明する。
【0050】
図11は、TMRスタックのパターニング工程を示す断面模式図である。図11(a)に示すように、ウエハ30上にTMRスタック31を成膜後、このスタック31上にフォトレジスト32を形成し、現像、パターン化する。例示したフォトレジスト32は下部に凹部32aを有しており、1層または2層の場合がある。2層のフォトレジストの場合は、通常下位層の方が薄く、凹部32aを形成するためにオーバーエッチされている。これにより、フォトレジストのリフトオフ・プロセスが促進される。
【0051】
次に、図11(b)に示すように、イオンビームによって、TMRスタック31のレジスト32で覆われていない部分をエッチングする。ビームの入射角を変えることにより、接合部33の側壁形状を制御できる。ほぼ垂直の入射を行った場合、接合部33はスカートのように、上部が狭く下部層に近づくにつれて広くなる。イオンビームの照準をさらに鋭角に合わせることにより、接合部33をより垂直にして下部の広がりを減少でき、ほぼ垂直な接合部側壁が得られる。図11中、34はフリー層である。
【0052】
様々な角度でのイオンビームミリング(IBE)によりセンサがパターン化され、所望の側壁を有する接合部33のプロファイルを得る。ミリングによって、フォトレジスト32及び接合部側壁にも再付着するため、側壁をきれいにして接合部33で電気ショートが起きないように、通常、別途鋭角でミリングを行う。
【0053】
次に、図11(c)に示すように、例えば、Al2O3、SiO2、Si−N、HfO2またはこれらの組み合わせから選択される絶縁体層35を成膜して、側壁を電気的に絶縁する。
【0054】
絶縁体層35の成膜は物理的気相成膜(PVD)で行うことができる。しかし、側壁の厚み制御は極めて重要であるため、例えば、イオンビーム成膜(IBD)や原子層成膜(ALD)などのより適合する成膜技術が好ましい。原子層成膜は蒸着率が非常に低いが、共形なカバレッジが得られる。中間入射角(45°以下)のイオンビーム成膜では、センサ側壁のカバレッジが大きくなる。このカバレッジは薄いため、インボードとアウトボードの問題はさほど重要ではない。
【0055】
次に、図12に、本発明に係るイオンビーム処理装置とハードバイアス膜の成膜装置とを組み込んだ磁気ヘッドの製造装置の概略図を示す。
【0056】
図12に示すように、本例の製造装置40は、PVDチャンバ41、イオンビームエッチング(IBE)チャンバ45及び絶縁体成膜チャンバ46、ロードロック(LL)チャンバ44、アンロードロック(ULL)チャンバ42を備えている。即ち、本例の製造装置40は、中央に配置したロボットチャンバ43に、PVDチャンバ41、IBEチャンバ45、絶縁体成膜チャンバ46、LLチャンバ44、ULLチャンバ42を接続配置している。従って、ウエハ処理ユニット42、PVDチャンバ41、IBEチャンバ45、絶縁体成膜チャンバ46、LLチャンバ44、ULLチャンバ42のそれぞれの装置へのウエハの受け渡しは、ロボットチャンバ43内のハンドリングロボットの操作により行われる。尚、IBEチャンバ45は、本発明のイオンビーム発生装置を備えたイオンビーム処理装置である。
【0057】
次に、図12の製造装置40を用い、図11の工程及びハードバイアス膜の成膜工程を続けて行う場合について説明する。本例の成膜方法は、先ず、ロボットチャンバ43内のハンドリングロボットがLLチャンバ44のカセットからウエハを取り出し、IBEチャンバ45へ搬送する。このウエハには、図11(a)に示すTMRスタック31とパターン化フォトレジスト32が形成されている。
【0058】
IBEチャンバでは、TMRスタック31をエッチング処理してセンサの接合部33が形成される(図11(b))。センサの接合部33の形成後、ウエハはロボットによって絶縁体成膜チャンバ46へ搬送される。
【0059】
絶縁体成膜チャンバ46では、電気的絶縁性を有する薄い非反応性層を成膜して表面安定化処理が行われる(図11(c)参照)。
【0060】
次に、表面安定化処理が施されたセンサは、3層のハードバイアス膜(下地層/永久磁石層/キャップ層)の成膜を行うために、ロボットによってPVDチャンバ41へ搬送される。PVDチャンバ41では、3基のマグネトロン・カソードユニットの各ターゲット(Cr、Co−Pt、Taなど)を用いて、ハードバイアス膜(下地層/永久磁石層/キャップ層)が成膜される。当該ハードバイアス膜の成膜後、完成ウエハはULLチャンバ42に格納される。
【0061】
本例の製造装置40によれば、ロボットチャンバ43に、IBEチャンバ45及び絶縁体成膜チャンバ46を接続しているので、センサの接合部33の形成、絶縁体層35の成膜、ハードバイアス膜の成膜の一連の工程を連続的に行うことができる。
【0062】
本例の製造装置40においては、IBEチャンバ45で、所定枚数のウエハをエッチングした後、IBEチャンバ45からウエハを退避させ、図5を用いて前述したクリーニング処理を行うようにしてもよい。或いは、IBEチャンバ45において、基板ホルダーと引き出し電極の間に開閉自在なシャッター機構を設け、シャッターを閉状態として、前述したクリーニング処理を行うようにしてもよい。
【0063】
尚、クリーニング処理は基板を連続して複数枚処理する際に、基板毎にシャッター閉状態で実施したり、一定枚数処理する毎に実施したり、装置が稼動していない待機時に実施しても良く、クリーニングを実施するタイミングは限定しない。
【符号の説明】
【0064】
1:イオンビーム発生装置、7:引き出し電極、7a:第1電極、7b:第2電極、7c:第3電極、9:電流計、10:フィードバック制御部、24:イオンビーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビームエッチングやイオンミリング等を行うイオンビーム処理装置に用いられるイオンビーム発生装置とそのクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンビームエッチング装置やイオンミリング装置といった、イオンビームを用いて基板を処理するイオンビーム処理装置は、放電室内に生成されたプラズマから正イオンを引き出してイオンビームを生成するイオンビーム発生装置を備えている。係るイオンビーム発生装置は、正イオンをプラズマから引き出すために、放電室の一端に3枚の多孔板電極で構成された引き出し電極を配置している。引き出し電極は、それぞれ所望の間隔で配置され、それぞれプラズマ室側から第1電極(スクリーングリッド)、第2電極(アクセルグリッド)、第3電極(デクセルグリッド)と呼ばれる。特許文献1には、このような3枚の多孔板電極で構成された引き出し電極を備えたイオンビーム発生装置が開示されている。
【0003】
イオンビームは、各電極に電圧を印加して電極間の静電界によりプラズマ中の正イオンを加速させて生成される。よって、第1電極は正電位、第2電極は負電位、第3電位は接地電位に設定され、印加される電圧はイオンビームの特性が好適になるように各々調整される。また、電極の形状等(板厚、孔径、孔ピッチ、電極間隔)は所望の条件でイオンビームの特性が好適になるようにそれぞれ設計されている。尚、ここで言うイオンビームの特性とは、プラズマから引き出されるイオンビームの発散角(引き出されるビームの直進性)であり、電極の孔の中心線に対する引き出されたイオンビームの偏向角のことを言う。
【0004】
引き出されたイオンビームは被処理基板に照射され、基板表面をエッチングする。その際、イオンビームの発散角が重要であり、該発散角は一般的に4°以下と小さいことが求められる。発散角が大きい場合、エッチングの均一性の悪化や、基板表面にフォトレジスト等の構造体がある場合には、エッチング後の基板表面の形状が所望する形状と異なる等の問題が生じる。
【0005】
また、第1電極と第3電極の第2電極側には、第2電極がスパッタされることにより、電極材料が付着することが知られている。これは、引き出されたイオンとの電荷交換反応により電極間に浮遊する中性ガスがイオン化し、この加速されていない低速のイオンが第2電極の電界で加速され、第2電極をスパッタすることによって生じる現象である。イオンビームの引き出しを長時間続けると、第1電極と第3電極に付着した付着膜が厚くなり、膜剥がれを発生し、電極間でのショートを引き起こしてイオンの引き出しができなくなる恐れがある。
【0006】
このような付着膜による問題を解決するため、第2電極の電位を調整することにより、イオンビームの発散角を大きくして第3電極にイオンビームを照射し、第3電極に付着した付着膜を除去(クリーニング)する方法が講じられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2001−502468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、第3電極に過剰にイオンビームを入射させてしまうと、スパッタにより第3電極の消耗と熱変形を引き起こし、エッチング速度や分布の変動を引き起こす恐れがあった。
【0009】
本発明の課題は、3枚の多孔板電極からなる引き出し電極を備えたイオンビーム発生装置において、第3電極を損傷することなく、第3電極に付着した付着膜を除去する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1は、プラズマ発生源と、
前記プラズマ発生源の側から順に配置された、それぞれ多孔板電極である、第1電極、第2電極、及び第3電極からなり、前記プラズマ発生源で発生したイオンを引き出す引き出し電極と、
前記第1及び第2電極の電位をそれぞれ独立に制御する制御手段と、
前記第3電極に流れる電流を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段による測定値に基づいて、前記第2電極の電位をフィードバック制御するフィードバック制御部とを備え、
前記第3電極は接地電位になっており、
前記制御手段は、前記第1電極を正電位に、前記第2電極を負電位に制御して、イオンビームを前記第3電極に入射させて、前記第3電極のクリーニングを行うイオンビーム発生装置であって、
前記フィードバック制御部は、前記電流測定手段によって測定された前記第3電極の電流値が閾値を超えた場合に、前記第2電極の電圧の絶対値を上げるように制御することを特徴とする。
【0011】
本発明の第2は、プラズマ発生源と、
前記プラズマ発生源の側から順に配置された、それぞれ多孔板電極である、第1電極、第2電極、及び第3電極からなり、前記プラズマ発生源で発生したイオンを引き出す引き出し電極と、
前記第1及び第2電極の電位をそれぞれ独立に制御する制御手段と、
前記第3電極に流れる電流を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段による測定値に基づいて、前記第2電極の電位をフィードバック制御するフィードバック制御部とを備え、
前記第3電極は接地電位になっており、
前記制御手段は、前記第1電極を正電位に、前記第2電極を負電位に制御して、イオンビームを前記第3電極に入射させて、前記第3電極のクリーニングを行うイオンビーム発生装置のクリーニング方法であって、
前記フィードバック制御部は、前記電流測定手段によって測定された前記第3電極の電流値が閾値を超えた場合に、前記第2電極の電圧の絶対値を上げるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、第3電極に流れる電流を常時モニターしながらクリーニングを行うことで、第3電極に入射するビーム量を定量化でき、クリーニング時に過剰なビーム入射による第3電極の消耗や熱変形を防止することができる。また、第3電極に流れる電流を常時モニターすることで、イオンビームの発散角を類推することができ、従来は実験的に求めていた発散角の測定を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のイオンビーム発生装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明のイオンビーム発生装置の一実施形態における引き出し電極の詳細を説明する概略図である。
【図3】イオンビーム発生装置の動作原理を説明する概略図である。
【図4】第1電極及び第3電極に付着膜が堆積する原理を説明する概略図である。
【図5】第3電極のクリーニングの原理を説明する概略図である。
【図6】本発明のイオンビーム発生装置において、フィードバック制御の手順を説明するフロー図である。
【図7】本発明のクリーニング方法において、第2電極の電圧による第3電極の電流の変動を示す図である。
【図8】イオンビーム発生装置の参考実施形態における引き出し電極の詳細を説明する概略図である。
【図9】図8のイオンビーム発生装置において、アラーム表示によって装置の動作を自動停止する手順を説明するフロー図である。
【図10】図8のイオンビーム発生装置において、アラーム表示によって装置の動作を手動停止する手順を説明するフロー図である。
【図11】イオンビームを利用した磁気読み取りヘッド用センサのTMRスタックのパターニング工程を示す断面模式図である。
【図12】イオンビーム処理装置を用いたハードバイアス膜成膜装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
図1を参照して、本発明のイオンビーム発生装置の全体構成を説明する。イオンビーム発生装置1は、プラズマを閉じ込めるためのメタル放電室5、壁面でのプラズマ損失を防ぐためのカスプマグネット(永久磁石)6、誘導結合プラズマ(ICP)を発生させるためのRFコイル3(プラズマ発生源)を有している。さらに、高周波電磁界を真空に導入するための誘電体窓4、生成されたプラズマの分布を制御するための電磁石2、プラズマ中のイオンを引き出すための引き出し電極7を備えている。また、図示していないが、プラズマ発生源から引き出されたイオンビーム(正電位のイオン)によって生じる空間電位を中和するための電子源(ニュートラライザ)が設けられている。
【0015】
不図示のガス導入手段から放電室5に不活性ガス(アルゴン、キセノン、クリプトンなど)が導入され、RFコイル3に高周波電力が印加されると、放電室5内にプラズマが発生する。このプラズマ中からイオンは、所定の電圧が印加された引き出し電極7により引き出され、イオンビームとなって被処理部材(基板)に照射される。引き出し電極7は、放電室5側から順に、第1電極7a、第2電極7b、及び第3電極7cを有している。第1電極7a、第2電極7b、及び第3電極7cは、複数の孔を有するグリッド構造を有した多孔板電極である。長寿命化や耐久性の観点から、構成部材(グリッド材)としてはスパッタリング率が低いモリブデンやカーボンが用いられる。
【0016】
尚、イオンビーム処理装置は、本発明のイオンビーム発生装置1と、該装置の第3電極7c側に真空室(不図示)を備え、該真空室内にイオンエッチング等のイオンビーム処理を施す被処理基板を載置する基板ホルダーを備えている。
【0017】
図2は、第3電極7cのクリーニング時の引き出し電極7の詳細構成を説明するための概略図である。図2に示すように、第1電極7aは、第1電源11と接続されて正電位に維持され、第2電極7bは第2電源12と接続されて負電位に維持され、第3電極7cはローパスフィルタ8、電流計9を介して、アースと接続されている。このように、第1乃至第3電極7a乃至7cの各電位はそれぞれ独立して制御されている。また、第3電極7cからアースに向かって流れる電流は、電流測定手段である電流計9によって測定され、フィードバック制御部10に送信され、フィードバック制御部10は、当該電流値に基づき、第2電源12を制御することができる。
【0018】
本例においては、第1電極7aは正電位(例えば、100乃至1000V)に第1電源11が設定され、第2電極7bは負電位(例えば、−1000乃至−3000V)に第2電源12が設定され、第3電極7cは接地電位になるように維持されている。
【0019】
図3を参照して、イオンビーム発生装置1の動作原理を説明する。図3に示すように、放電室5内にプラズマを発生させ、第1電極7aに正電圧、第2電極7bに負電圧をそれぞれ印加すると、第1電極7aと第2電極7bの電位差によってプラズマ中のイオン23のみが静電加速によって引き出される。プラズマから引き出されたイオン23は、第2電極7aと第3電極7cの電位差によって逆に減速されるため、第3電極7cを通過するイオン23は第1電極7aの電位分のエネルギーを持ったイオンビーム24として噴射される。第3電極7cから引き出されるイオンビーム24は、各電極の電圧による静電界(不図示)によって偏向されている。第3電極7cから引き出されたイオンビーム24の孔の中心軸に対する偏向角度をビームの発散角θという。
【0020】
図4を参照して、電極に付着膜が堆積する原理を説明する。第1電極7aと第3電極7cの第2電極7bに面する側には、第2電極7bの電極材料がスパッタされ、付着膜21a,21bとして付着する。具体的には、放電室5に導入された中性ガスの中には、電極間において引き出されるイオン23との電荷交換反応によりイオン化し、低速イオン(+L)になるものがある。電荷交換反応とは、それぞれの粒子の運動量を保存したまま電荷だけが交換される現象である。区別するために前記したイオンビーム24を高速イオン(+H)と呼ぶが、高速イオンは各電極の電圧による静電界(不図示)によって加速・偏向され、電極に衝突せずに第3電極7cから噴射される。一方、加速されていない低速イオンは第2電極7bの負電位によって加速され第2電極7bに衝突し、スパッタリングを起こす。スパッタされた第2電極7bの材料は、粒子となって第1電極7aと第3電極7cに付着し、付着膜21a,21bを形成する。図4中の「n」は中性ガスを示す。
【0021】
第3電極7cに付着した付着膜21bは、多量に堆積されると、第2電極7bとの間でショートしてしまうことがある。そのため、定期的に第3電極7cに付着した膜を除去(クリーニング)する必要がある。
【0022】
図5を参照して、第3電極7cのクリーニングの原理を説明する。引き出されるイオンビームは、各電極の電圧による静電界によって加速・偏向され、所定の発散角θを有している。第1電極7aと第2電極7bの間の静電界は、電界の形状によって引き出されるイオンを収束する。反対に第2電極7bと第3電極7cの間の静電界は、イオンを発散させる。第1電極7aの電圧は通常、引き出されるイオンビームのエネルギーを決めるために用いるため、所定の値に設定して使う。第2電極7bの電圧は、所定の第1電極7aの電圧でビームの発散角が最小となるように調整される。また、意図的に第2電極7bの電圧を、イオンビームの発散角が最小となる電圧値より低く設定することで発散角を大きくし、第3電極7cにイオンビームを入射させることも出来る。
【0023】
このように、第2電極7bの電圧を通常よりも低く設定することにより、第3電極7cにイオンビームが直接入射すると、前記の第3電極7c表面の付着膜21bがスパッタされ、該付着膜21bを除去(クリーニング)することができる。
【0024】
但し、第2電極7bの電圧を必要以上に小さくすると、過剰に第3電極7cにイオンビームが入射し、スパッタによる第3電極7cの消耗と熱変形を引き起こす。クリーニング時間も同様で、必要以上に長時間のクリーニングを実施すると第3電極7cの消耗を引き起こすため、クリーニングに用いるイオンビームの量とクリーニング時間の両方を管理することが重要である。
【0025】
本発明の第1の実施形態においては、クリーニング工程において、第3電極7cに流れる電流値を測定し、その測定値に基づいて、第2電極7bをフィードバック制御する。
【0026】
図6を参照して、具体的に処理手順を説明する。ステップS1においては、前述したように、第2電極7bの電圧をイオンビームの発散角が最小となる電圧値より低く設定することにより、発散角を大きくし、第3電極7cにイオンビームを照射してクリーニング処理を開始する。
【0027】
ステップS2においては、図2に示す電流計9により、第3電極7cに流れる電流を測定し、測定値を常時フィードバック制御部10へ送信する。
【0028】
尚、第3電極7cに流れる電流を測定する際には、ニュートラライザの動作を停止させる必要がある。なぜなら、本ニュートラライザ動作中は、ニュートラライザから供給された電子が第3電極7cに流入するためクリーニングのために第3電極7cに入射させた正イオンによる電流の計測が困難になるからである。
【0029】
ステップS3において、フィードバック制御部10は、電流計9から送信される電流値が、設定値(閾値)と等しいか否かを判定する。電流値が設定値と等しい時(Yes)は、ステップS5のタイマー処理に進む。他方、電流値が設定値と等しくない時(No)は、ステップS4の第2電極電圧制御処理に進む。
【0030】
ステップS4の第2電極電圧制御処理に関して、電流計9で測定された電流値が設定値より大きい場合と、小さい場合とに分けて、後述する実施例を例に、図7を参照して詳細に説明する。
【0031】
図7に、第1電極7aの電圧を+100V、電流を325mAに設定して、第2電極7bの電圧を変化させた時の第2電極7bの電流値、及び第3電極7cの電流値の変化を示した。通常用いるビーム条件(Normal)である第2電極電圧(−2400V)では、図7に示すように第2電極7b、第3電極7cの電流値(60mA)は極小値に近い。このことから第3電極7cへのイオンビームの入射が少ない、つまりイオンビームの発散角が小さいと判断できる。尚、図7において、第2電極電圧は絶対値で示す。
【0032】
通常のビーム条件から第2電極7bの電圧を下げると、図7に示すように第3電極7cの電流値が増加し、このことから、第3電極7cへのイオンビームの入射が増大する、つまりイオンビームの発散角が大きくなっていることがわかる。適正なクリーニングに使用する条件(Defocus)としては第3電極7cの電流(110mA)が、通常の条件の約2倍になる第2電極7bの電圧(−1900V)を用いる。この条件において通常30分間のイオンビームの使用に対して3%に相当する1分間のクリーニングで第3電極7cの付着膜が除去されることが確認されている。
【0033】
また、適正なクリーニング条件よりさらに第2電極7bの電圧を小さくした場合、第3電極7cの電流はさらに大きくなる。しかし、第3電極7cの電流値の上昇が急峻なためクリーニングに使用するには第3電極7cが消耗しないようにクリーニング時間に注意しなければならない。
【0034】
さらに第2電極7bの電圧を小さくした場合、図7に示したように第2電極7bに流れる電流値が増加する。第1電極7aの電圧を100Vに維持したまま、第2電極7bの電圧を−1900Vから−1200Vへ低減させると、第3電極7cの電流値は110mAから300mAに増加する。同時に、第2電極7bの電流値も60mAから70mAまで増加する。このように第2電極7bの電流が増加する条件(−1400V以上)では、減速されていない高速イオンが第2電極7bに入射しているため、スパッタによる第2電極7bの消耗が激しい。よって、第2電極7bの電流が増加する条件(−1400V以上)をクリーニングに使用することは望ましくない。
【0035】
上記の条件をまとめると以下の通りである。
【0036】
【表1】
【0037】
以上より、本例においては、フィードバック制御部10は、電流計9がクリーニング条件で使用する設定値(110mA)より低い場合は、第2電極7bの電圧を適宜低下させるように制御する。一方、電流計9がクリーニング条件で使用する設定値(110mA)より高い場合は、第2電極7bの電圧の絶対値を適宜増加させるように制御する。
【0038】
ステップS4の第2電極電圧制御処理が完了すると、再びステップS2及びステップS3の処理が、第3電極7aの電流が設定値(110mA)と一致するまで繰り返される。
【0039】
ステップS5においては、ステップS4で電流値が設定値(110mA)と等しいと判断された時から、タイマー処理が開始される。そして、タイマー処理において所定時間(例えば、1分)が経過すると、ステップS6に進み、クリーニング処理が停止される。
【0040】
(参考実施形態)
図8、図9、及び図10を参照して、参考実施形態について説明する。
【0041】
本例は、図2に示した実施形態とは異なり、図8に示すように、電流計9で測定された値を表示する表示手段15と、電流計9の測定値に基づいて、第1電源11及び第2電源12を自動停止する電源停止手段16が追加されている。それ以外の構成は基本的に図2で示した構成と同一である。
【0042】
図9を参照して、クリーニング工程においてアラーム表示を行う動作手順を説明する。ステップS1において、第1の実施形態と同様の第3電極7cのクリーニング処理が行われる。第1電極7aの電圧、第2電極7bの電圧の条件は、前述したように、それぞれ+100V、−1900Vとなるように設定する。
【0043】
ステップS2において、電流計9により、第3電極7cに流れる電流が測定される。測定された電流値は制御部14に送信される。
【0044】
ステップS3において、制御部14は、測定された電流値が設定値より大きいか否かを判断する。ステップS3で電流値が設定値より大きい(Yes)場合、イオンビームの発散角が増大し、第3電極7cにイオンビームが多く入射しているため、ステップS4に進み、表示手段15がアラームを表示する。そして、ステップS5に進み、電源停止手段16が、第1電源11、第2電源12を自動停止することで、クリーニング処理を停止する。ステップS3で電流値が設定値より小さい(No)場合には、そのままクリーニング処理を続行する。
【0045】
図10は、図9と異なり、ステップS4(アラーム表示)の後に、ステップS6(停止操作アラーム)が追加されており、表示装置使用者によって、手動で第1電源11、第2電源12を停止して、クリーニング処理を停止する(S7)例である。
【0046】
上記のように、第3電極に流れる電流が閾値に達した際にアラームを表示したり、動作を自動停止する手段を設けることによって、電極の熱変形や組立上の不具合によりビームの発散角が大きくなった場合でも、イオンビーム処理への影響を防止することができる。
【0047】
上記したように、第3電極7cに流れる電流を測定しながら、所定の設定値を超えた場合には第2電極7bに印加する電圧を制御する、或いは、処理を停止することによって、第3電極7cへの過剰なイオンビームの入射を防止することができる。係る作用は、イオンビームの発散角θを制御することによって得られるものであるから、同様の手法によって、エッチング等の通常のイオンビーム処理においても、イオンビームの発散角θの制御を行い、適正な処理を行うことができる。即ち、イオンビーム処理においては、第1電極7aの電圧を+100V、電流を325mAに設定し、第2電極7bの電圧を通常用いるビーム条件(Normal)である第2電極電圧(−2400V)とする。この条件下でイオンビーム処理を行い、同時に第3電極7cに流れる電流を測定し、測定値が設定値(60mA)を超えた場合には第2電極電圧を制御する、或いは、アラームを表示し、自動又は手動で処理を停止することとする。
【0048】
本発明のイオンビーム発生装置はイオンビームエッチングやイオンミリングを行うイオンビーム処理装置に用いられる。本発明に係る第3電極のクリーニング処理は、係るイオンビーム処理装置において、複数枚の被処理基板を連続してイオンビーム処理する工程中に、適宜、実施することができるが、クリーニング処理中は被処理基板への影響を避ける必要がある。そのため、クリーニング処理を実施する際には、被処理基板を真空室から退避させるか、或いは、予め基板ホルダーと引き出し電極との間に開閉自在なシャッターを備えておき、該シャッターを閉状態として、クリーニング処理を行う。
【0049】
本発明に係るイオンビーム処理装置は、例えば、磁気ヘッドや磁気読み取りヘッド用センサのTMR(Tunnel Magneto−Resistance:トンネル磁気抵抗)スタックのパターニングに好適に用いられる。以下に、係るパターニング工程について説明する。
【0050】
図11は、TMRスタックのパターニング工程を示す断面模式図である。図11(a)に示すように、ウエハ30上にTMRスタック31を成膜後、このスタック31上にフォトレジスト32を形成し、現像、パターン化する。例示したフォトレジスト32は下部に凹部32aを有しており、1層または2層の場合がある。2層のフォトレジストの場合は、通常下位層の方が薄く、凹部32aを形成するためにオーバーエッチされている。これにより、フォトレジストのリフトオフ・プロセスが促進される。
【0051】
次に、図11(b)に示すように、イオンビームによって、TMRスタック31のレジスト32で覆われていない部分をエッチングする。ビームの入射角を変えることにより、接合部33の側壁形状を制御できる。ほぼ垂直の入射を行った場合、接合部33はスカートのように、上部が狭く下部層に近づくにつれて広くなる。イオンビームの照準をさらに鋭角に合わせることにより、接合部33をより垂直にして下部の広がりを減少でき、ほぼ垂直な接合部側壁が得られる。図11中、34はフリー層である。
【0052】
様々な角度でのイオンビームミリング(IBE)によりセンサがパターン化され、所望の側壁を有する接合部33のプロファイルを得る。ミリングによって、フォトレジスト32及び接合部側壁にも再付着するため、側壁をきれいにして接合部33で電気ショートが起きないように、通常、別途鋭角でミリングを行う。
【0053】
次に、図11(c)に示すように、例えば、Al2O3、SiO2、Si−N、HfO2またはこれらの組み合わせから選択される絶縁体層35を成膜して、側壁を電気的に絶縁する。
【0054】
絶縁体層35の成膜は物理的気相成膜(PVD)で行うことができる。しかし、側壁の厚み制御は極めて重要であるため、例えば、イオンビーム成膜(IBD)や原子層成膜(ALD)などのより適合する成膜技術が好ましい。原子層成膜は蒸着率が非常に低いが、共形なカバレッジが得られる。中間入射角(45°以下)のイオンビーム成膜では、センサ側壁のカバレッジが大きくなる。このカバレッジは薄いため、インボードとアウトボードの問題はさほど重要ではない。
【0055】
次に、図12に、本発明に係るイオンビーム処理装置とハードバイアス膜の成膜装置とを組み込んだ磁気ヘッドの製造装置の概略図を示す。
【0056】
図12に示すように、本例の製造装置40は、PVDチャンバ41、イオンビームエッチング(IBE)チャンバ45及び絶縁体成膜チャンバ46、ロードロック(LL)チャンバ44、アンロードロック(ULL)チャンバ42を備えている。即ち、本例の製造装置40は、中央に配置したロボットチャンバ43に、PVDチャンバ41、IBEチャンバ45、絶縁体成膜チャンバ46、LLチャンバ44、ULLチャンバ42を接続配置している。従って、ウエハ処理ユニット42、PVDチャンバ41、IBEチャンバ45、絶縁体成膜チャンバ46、LLチャンバ44、ULLチャンバ42のそれぞれの装置へのウエハの受け渡しは、ロボットチャンバ43内のハンドリングロボットの操作により行われる。尚、IBEチャンバ45は、本発明のイオンビーム発生装置を備えたイオンビーム処理装置である。
【0057】
次に、図12の製造装置40を用い、図11の工程及びハードバイアス膜の成膜工程を続けて行う場合について説明する。本例の成膜方法は、先ず、ロボットチャンバ43内のハンドリングロボットがLLチャンバ44のカセットからウエハを取り出し、IBEチャンバ45へ搬送する。このウエハには、図11(a)に示すTMRスタック31とパターン化フォトレジスト32が形成されている。
【0058】
IBEチャンバでは、TMRスタック31をエッチング処理してセンサの接合部33が形成される(図11(b))。センサの接合部33の形成後、ウエハはロボットによって絶縁体成膜チャンバ46へ搬送される。
【0059】
絶縁体成膜チャンバ46では、電気的絶縁性を有する薄い非反応性層を成膜して表面安定化処理が行われる(図11(c)参照)。
【0060】
次に、表面安定化処理が施されたセンサは、3層のハードバイアス膜(下地層/永久磁石層/キャップ層)の成膜を行うために、ロボットによってPVDチャンバ41へ搬送される。PVDチャンバ41では、3基のマグネトロン・カソードユニットの各ターゲット(Cr、Co−Pt、Taなど)を用いて、ハードバイアス膜(下地層/永久磁石層/キャップ層)が成膜される。当該ハードバイアス膜の成膜後、完成ウエハはULLチャンバ42に格納される。
【0061】
本例の製造装置40によれば、ロボットチャンバ43に、IBEチャンバ45及び絶縁体成膜チャンバ46を接続しているので、センサの接合部33の形成、絶縁体層35の成膜、ハードバイアス膜の成膜の一連の工程を連続的に行うことができる。
【0062】
本例の製造装置40においては、IBEチャンバ45で、所定枚数のウエハをエッチングした後、IBEチャンバ45からウエハを退避させ、図5を用いて前述したクリーニング処理を行うようにしてもよい。或いは、IBEチャンバ45において、基板ホルダーと引き出し電極の間に開閉自在なシャッター機構を設け、シャッターを閉状態として、前述したクリーニング処理を行うようにしてもよい。
【0063】
尚、クリーニング処理は基板を連続して複数枚処理する際に、基板毎にシャッター閉状態で実施したり、一定枚数処理する毎に実施したり、装置が稼動していない待機時に実施しても良く、クリーニングを実施するタイミングは限定しない。
【符号の説明】
【0064】
1:イオンビーム発生装置、7:引き出し電極、7a:第1電極、7b:第2電極、7c:第3電極、9:電流計、10:フィードバック制御部、24:イオンビーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ発生源と、
前記プラズマ発生源の側から順に配置された、それぞれ多孔板電極である、第1電極、第2電極、及び第3電極からなり、前記プラズマ発生源で発生したイオンを引き出す引き出し電極と、
前記第1及び第2電極の電位をそれぞれ独立に制御する制御手段と、
前記第3電極に流れる電流を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段による測定値に基づいて、前記第2電極の電位をフィードバック制御するフィードバック制御部とを備え、
前記第3電極は接地電位になっており、
前記制御手段は、前記第1電極を正電位に、前記第2電極を負電位に制御して、イオンビームを前記第3電極に入射させて、前記第3電極のクリーニングを行うイオンビーム発生装置であって、
前記フィードバック制御部は、前記電流測定手段によって測定された前記第3電極の電流値が閾値を超えた場合に、前記第2電極の電圧の絶対値を上げるように制御することを特徴とするイオンビーム発生装置。
【請求項2】
さらに、該イオンビームを中和するために電子を供給するニュートラライザを備え、
前記ニュートラライザは、前記クリーニング中には、電子を供給しないように電源をオフにすることを特徴とする請求項1に記載のイオンビーム発生装置。
【請求項3】
プラズマ発生源と、
前記プラズマ発生源の側から順に配置された、それぞれ多孔板電極である、第1電極、第2電極、及び第3電極からなり、前記プラズマ発生源で発生したイオンを引き出す引き出し電極と、
前記第1及び第2電極の電位をそれぞれ独立に制御する制御手段と、
前記第3電極に流れる電流を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段による測定値に基づいて、前記第2電極の電位をフィードバック制御するフィードバック制御部とを備え、
前記第3電極は接地電位になっており、
前記制御手段は、前記第1電極を正電位に、前記第2電極を負電位に制御して、イオンビームを前記第3電極に入射させて、前記第3電極のクリーニングを行うイオンビーム発生装置のクリーニング方法であって、
前記フィードバック制御部は、前記電流測定手段によって測定された前記第3電極の電流値が閾値を超えた場合に、前記第2電極の電圧の絶対値を上げるように制御することを特徴とするイオンビーム発生装置のクリーニング方法。
【請求項4】
前記イオンビーム発生装置は、さらに、該イオンビームを中和するために電子を供給するニュートラライザを備え、
前記クリーニング中には、電子を供給しないように前記ニュートラライザの電源をオフにすることを特徴とする請求項3に記載のイオンビーム発生装置のクリーニング方法。
【請求項1】
プラズマ発生源と、
前記プラズマ発生源の側から順に配置された、それぞれ多孔板電極である、第1電極、第2電極、及び第3電極からなり、前記プラズマ発生源で発生したイオンを引き出す引き出し電極と、
前記第1及び第2電極の電位をそれぞれ独立に制御する制御手段と、
前記第3電極に流れる電流を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段による測定値に基づいて、前記第2電極の電位をフィードバック制御するフィードバック制御部とを備え、
前記第3電極は接地電位になっており、
前記制御手段は、前記第1電極を正電位に、前記第2電極を負電位に制御して、イオンビームを前記第3電極に入射させて、前記第3電極のクリーニングを行うイオンビーム発生装置であって、
前記フィードバック制御部は、前記電流測定手段によって測定された前記第3電極の電流値が閾値を超えた場合に、前記第2電極の電圧の絶対値を上げるように制御することを特徴とするイオンビーム発生装置。
【請求項2】
さらに、該イオンビームを中和するために電子を供給するニュートラライザを備え、
前記ニュートラライザは、前記クリーニング中には、電子を供給しないように電源をオフにすることを特徴とする請求項1に記載のイオンビーム発生装置。
【請求項3】
プラズマ発生源と、
前記プラズマ発生源の側から順に配置された、それぞれ多孔板電極である、第1電極、第2電極、及び第3電極からなり、前記プラズマ発生源で発生したイオンを引き出す引き出し電極と、
前記第1及び第2電極の電位をそれぞれ独立に制御する制御手段と、
前記第3電極に流れる電流を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段による測定値に基づいて、前記第2電極の電位をフィードバック制御するフィードバック制御部とを備え、
前記第3電極は接地電位になっており、
前記制御手段は、前記第1電極を正電位に、前記第2電極を負電位に制御して、イオンビームを前記第3電極に入射させて、前記第3電極のクリーニングを行うイオンビーム発生装置のクリーニング方法であって、
前記フィードバック制御部は、前記電流測定手段によって測定された前記第3電極の電流値が閾値を超えた場合に、前記第2電極の電圧の絶対値を上げるように制御することを特徴とするイオンビーム発生装置のクリーニング方法。
【請求項4】
前記イオンビーム発生装置は、さらに、該イオンビームを中和するために電子を供給するニュートラライザを備え、
前記クリーニング中には、電子を供給しないように前記ニュートラライザの電源をオフにすることを特徴とする請求項3に記載のイオンビーム発生装置のクリーニング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−124215(P2011−124215A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196299(P2010−196299)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
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