説明

イオン交換樹脂層の形成方法

【課題】 簡単な機構と簡単な操作により、短時間で正確に一定量のイオン交換樹脂を容器に充填してイオン交換樹脂層を形成することができ、イオン交換樹脂の高密度充填や破砕、あるいは配管の詰まりなどを防止できるイオン交換樹脂層の形成方法を提案する。
【解決手段】 イオン交換樹脂と水の混合スラリーを容器1に導入して、水をストレーナ4a、5aで分離して容器1から排出することにより、容器1内にイオン交換樹脂を充填してイオン交換樹脂層2を形成する方法であって、イオン交換樹脂と水の混合スラリーを流体圧駆動式ポンプ30により容器1に供給し、ポンプ30駆動用の流体圧が所定圧に達した時点で、制御装置50によりポンプ30へ作用する流体圧を解除してポンプ30の駆動を停止し、容器1内に一定容量のイオン交換樹脂層2を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内にイオン交換樹脂を充填してイオン交換樹脂層を形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、イオン交換装置としては、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、これらの混合樹脂、あるいはこれらと他の樹脂との混合樹脂を容器内に充填してイオン交換樹脂層を形成し、被処理液を通液してイオン交換処理を行うように構成されている。そしてイオン交換樹脂層が飽和した後は被処理液の通液を停止した後、再生剤を通液してイオン交換樹脂層を再生し、さらに洗浄水を通水して洗浄した後、被処理液の通液を再開してイオン交換処理を再開するイオン交換装置、特に固定式のイオン交換装置が多く用いられていた。
【0003】
しかしこのようなイオン交換処理と再生を交互に繰返すイオン交換装置では、イオン交換樹脂層の再生を行っている時には、イオン交換処理を行えないという不利がある。このためこの種のイオン交換装置に代えて、可搬式の本体容器内にイオン交換樹脂を充填した着脱式のイオン交換樹脂充填ユニットを採用し、これを現場に搬送しイオン交換装置に取付けてイオン交換処理を行い、イオン交換樹脂層が飽和した後はイオン交換装置からイオン交換樹脂充填ユニットを取外し、新しいユニットに交換してイオン交換処理を続行し、一方取外したイオン交換樹脂充填ユニットは回収し、使用済みのイオン交換樹脂を必要により再生使用するユニット交換式のイオン交換装置がある。
【0004】
このようなユニット交換式のイオン交換装置では、イオン交換装置から取外したイオン交換樹脂充填ユニットをそのまま再生することなく廃棄する非再生型イオン交換装置のほか、イオン交換樹脂を再生して再使用する再生使用型イオン交換装置がある。後者の場合、回収したユニットごとにイオン交換樹脂を再生する方式と、ユニットからイオン交換樹脂を集めて再生し、再生済みのイオン交換樹脂をユニットに充填して現場に搬送して待機後、イオン交換装置に取付けてイオン交換処理を行うようにされたものなどがある。
【0005】
図2は特許文献1(特開平9−70546号)に記載された従来のイオン交換樹脂充填ユニットの一部を断面で示す正面図である。
図2において、Uはイオン交換樹脂充填ユニットであり、着脱式の容器1の内部に再生済のイオン交換樹脂層2が形成されている。容器1の上部に開口部1aが形成され、樹脂導入路3、原水導入路4および処理水取出路5が一体化した蓋6が取付けられている。原水導入路4および処理水取出路5の下部には、それぞれ容器1内に伸びる先端部に第1のストレーナ4aおよび第2のストレーナ5aが設けられている。また原水導入路4および処理水取出路5の上部にはそれぞれカップリング4b、5bが取付けられており、樹脂充填装置の伸縮継手7、8に接続可能となっている。伸縮継手7、8はジョイント9、10により外部流路11、12に接続されている。
【0006】
上記のイオン交換樹脂充填ユニットUは、カップリング4b、5bにより樹脂充填装置の伸縮継手7、8に接続し、ジョイント9、10を介して外部流路11、12に接続した状態で、容器1に樹脂導入路3から再生済のイオン交換樹脂を水でスラリー状にした状態で導入して充填し、同伴する水を第1のストレーナ4aおよび第2ストレーナの5aで分離し、原水導入路4および処理水取出路5から伸縮継手7、8および外部流路11、12を通して排水することにより、イオン交換樹脂層2を形成し、イオン交換樹脂充填ユニットUを製造する。
【0007】
このようにして製造したイオン交換樹脂充填ユニットUは、カップリング4b、5bの位置で切離した状態で密封し現場に搬送し、イオン交換装置に取付けて、カップリング4b、5bを外部流路11、12に相当するイオン交換装置の原水流路および処理水流路(いずれも図示省略)に接続してイオン交換に供される。樹脂導入路3は接続時において、水抜き、空気抜き等に使用されるが、イオン交換には通常閉じられる。
【0008】
イオン交換装置に取付けられたイオン交換樹脂充填ユニットUは、原水をイオン交換装置の原水流路(図示せず)から原水導入路4、第1のストレーナ4aを通して容器1に導入し、イオン交換樹脂層2を通過させることによりイオン交換を行い、処理水は第2のストレーナ5aで集水して処理水取出路5からイオン交換装置の処理水流路(図示せず)を通して取出される。イオン交換樹脂層2が飽和した後は、イオン交換樹脂充填ユニットUをカップリング4b、5bで取外して新しいユニットUに交換し、イオン交換処理を続行する。
【0009】
使用済みのイオン交換樹脂充填ユニットUは、取外した状態で搬送して回収し、必要によりイオン交換樹脂を取り出して再生し、再生後のイオン交換樹脂を再び容器1に充填してイオン交換樹脂充填ユニットUを形成し、これを現場に搬送して待機後、イオン交換装置に取付けて再度イオン交換処理に供される。
【0010】
上記のイオン交換樹脂充填ユニットUの形成方法において、本体容器1にイオン交換樹脂を充填するためには、イオン交換樹脂を水に分散させてスラリー状で導入し、同伴する水をストレーナ4a、5aで分離して排水することによりイオン交換樹脂層2を形成するが、本体容器1にイオン交換樹脂の一定量を充填するのは困難であった。
【0011】
特許文献2(特開2002−28501号)には、イオン交換樹脂移動容器にイオン交換樹脂を収容して現場に搬送し、現場でイオン交換装置に充填してイオン交換に供し、飽和後はイオン交換装置からイオン交換樹脂を取出してイオン交換樹脂移動容器に収容して再生装置の設置場所に搬送し、再生後イオン交換樹脂を再度イオン交換樹脂移動容器に収容して現場に搬送する例が示されている。このようなイオン交換樹脂移動容器として、容器内のフィルター部材(ストレーナに相当する)に接続する配管を備え、イオン交換樹脂は水に分散させてスラリー状で導入し、同伴水をフィルター部材で分離して排出することによりイオン交換樹脂を充填しているが、イオン交換樹脂充填量を一定量にすることは示されていない。
【0012】
イオン交換樹脂は乾燥状態で一定樹脂量を計量することは容易である。しかしイオン交換では、イオン交換樹脂は液相に充填して使用されるため、またイオン交換樹脂層の容積を基準にして特性が表示され、処理が行われるため、容器に充填する樹脂量は液相に存在する状態で一定容量であることが要求される。この場合、イオン交換樹脂は水に分散させてスラリー状で容器に導入し充填されるが、スラリー中のイオン交換樹脂の濃度を一定にすることができないため、このようなスラリーを計量しても一定量の樹脂を充填することはできない。
【0013】
一定量の樹脂を充填する方法として、予め充填する樹脂を計り取り、それを充填する方法は、再生後の樹脂を予め一定量計り取り、これを水に分散させスラリー状にして導入するためには、複雑な工程の組みあわせが必要になって手間がかかり、実際上困難である。また容器ごと樹脂の重量を測定する方法では、存在する水の量によって重量の計測が影響されるため、正確な計量は実際上困難である。さらに目視により樹脂の充填量を計測する方法では、通液の停止と目視による計測を繰り返す必要があり、また容器が大形になって樹脂の充填量が多くなると、正確な計量が困難になるなどの問題点がある。
【0014】
一般的には一定容積の容器に、満杯になるまで内容物を充填すると、充填物の容量は一定になる。特許文献1、2では、容器内に充填するイオン交換樹脂層は満杯ではなく、容器の上部にイオン交換樹脂層が形成されないスペースが残留している。このように余裕がある容器に、一定容量のイオン交換樹脂を充填するのは困難であるが、容器および中に配置するストレーナや配管等の構造、配置等を定形化すると、容量は一定容積になるから、このような一定容積の容器に、満杯になるまでイオン交換樹脂を充填すると、イオン交換樹脂層の容量は一定になると考えられる。
【0015】
一般的な容器にイオン交換樹脂をスラリー状で導入すると、無駄な水も導入されることになる。スラリー中のイオン交換樹脂の濃度は一定にすることが困難であるため、充填されたイオン交換樹脂の容量を一定にすることは困難である。これに対して特許文献1、2のように、容器内のストレーナに接続する配管を備え、イオン交換樹脂は水に分散させてスラリー状で導入し、同伴水をストレーナで分離して排出することによりイオン交換樹脂を充填する方法でも満杯になると、充填されたイオン交換樹脂の容量は一定になると考えられる。
【0016】
しかしイオン交換樹脂スラリーをポンプで送る場合、満杯後もポンプでスラリーを送ると、樹脂の充填密度が高くなりすぎて通水できなくなったり、樹脂が破砕されたり、ストレーナや配管が詰まりやすいなどの問題点がある。この場合、容器内のイオン交換樹脂の満杯を、供給スラリーの圧力の上昇で検出し、スラリーの供給を停止することも考えられるが、正確に圧力の上昇を検出してスラリーの供給を停止するためには、複雑な装置、制御機構などが必要であり、しかもスラリー中のイオン交換樹脂を同伴水から分離して、均一な充填密度の充填層を形成するのは困難であるなどの問題点がある。
【0017】
特許文献3(特開2002−221160号)には、流体圧駆動式ポンプとして空気圧駆動式ダイヤフラムポンプが記載されている。この空気圧駆動式ダイヤフラムポンプは、ダブルダイヤフラム式ポンプで、2個のポンプ室にそれぞれダイヤフラムが設けられ、中間壁を貫通してスライドするシャフトの先端に接合して一体化し、往復動可能とされている。しかしイオン交換樹脂充填量を一定量にすることは示されていない。
【0018】
特許文献4(特開2007−305019号)には、空気圧駆動式ポンプ等において、ポンプ駆動用の空気圧が所定圧に達した時点で、ポンプへ作用する空気圧を解除してポンプの駆動を停止する制御機構が示されている。しかしこの制御機構は、ダイヤフラム等の損傷により空打ちが生じ、駆動用の空気圧が上昇する場合に、その空気圧の上昇を検出してポンプの駆動を停止するためのものであり、イオン交換樹脂充填量を一定量にすることは示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平9−70546号
【特許文献2】特開2002−28501号
【特許文献3】特開2002−221160号
【特許文献4】特開2007−305019号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の課題は、前記のような従来の問題点を解決するため、簡単な機構と簡単な操作により、短時間で正確に一定量のイオン交換樹脂を容器に充填してイオン交換樹脂層を形成することができ、イオン交換樹脂の高密度充填や破砕、あるいは配管の詰まりなどを防止できるイオン交換樹脂層の形成方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は次のイオン交換樹脂層の形成方法である。
(1) イオン交換樹脂と水の混合スラリーを容器に導入して、水をストレーナで分離して容器から排出することにより、容器内にイオン交換樹脂を充填してイオン交換樹脂層を形成する方法であって、
イオン交換樹脂と水の混合スラリーを流体圧駆動式ポンプにより容器に供給し、
前記ポンプ駆動用の流体圧が所定圧に達した時点で、ポンプへ作用する流体圧を解除してポンプの駆動を停止することを特徴とするイオン交換樹脂層の形成方法。
(2) ポンプ駆動用の流体圧が所定圧に達した時点でポンプへ作用する流体圧を解除してポンプの駆動を停止した後、ポンプの駆動を再開し、再度ポンプ駆動用の流体圧が所定圧に達した時点でポンプへ作用する流体圧を解除してポンプの駆動を停止することを特徴とする上記(1)記載の方法。
(3) 容器が第1のストレーナに接続する原水導入路、第2のストレーナに接続する処理水取出路、および樹脂導入路を備え、樹脂導入路を通してイオン交換樹脂と水の混合スラリーを容器に導入し、水を第1および/または第2のストレーナで分離して、原水導入路および/または処理水取出路から排出することにより、容器内にイオン交換樹脂層を形成することを特徴とする上記(1)または(2)記載の方法。
(4) 流体圧駆動式ポンプが空気圧駆動式ポンプであり、ポンプ駆動用の空気圧が所定圧に達した時点で、ポンプへ作用する空気圧を解除してポンプの駆動を停止する制御機構を備えることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 流体圧駆動式ポンプが空気圧駆動式ダイヤフラムポンプである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の方法。
(6) イオン交換樹脂がカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の混合樹脂である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の方法。
【0022】
本発明において形成の対象となるイオン交換樹脂層は、純水製造装置、超純水製造装置、廃水処理装置、イオン吸着装置などのイオン交換装置に形成されるイオン交換樹脂層であって、固定式のイオン交換装置、ユニット交換式のイオン交換装置、イオン交換樹脂移動容器を用いる樹脂交換式のイオン交換装置などに設けられるイオン交換樹脂層などがある。また上記ユニット交換式のイオン交換装置に用いられるイオン交換樹脂充填ユニットや、樹脂交換式のイオン交換装置に用いられるイオン交換樹脂移動容器、あるいは樹脂貯槽などの容器に形成されるイオン交換樹脂層なども対象となる。これらの中では、ユニット交換式のイオン交換装置に用いられるイオン交換樹脂充填ユニットに形成されるイオン交換樹脂層が対象として好適である。
【0023】
イオン交換樹脂層を構成するイオン交換樹脂としては、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、キレート樹脂、その他の選択吸着性樹脂、これらの混合樹脂、あるいはこれらと不活性樹脂、その他の樹脂との混合樹脂など、粒状の樹脂が挙げられる。これらの樹脂は新品樹脂でも、再使用樹脂でもよいが、いずれの場合も、再生済みの樹脂を容器内に導入、充填してイオン交換樹脂層を形成するのが望ましい。
【0024】
イオン交換樹脂を充填する容器は特に限定されず、イオン交換樹脂層の形成が要求される容器にそのまま充填することができる。このような容器としては、固定式、樹脂交換式、その他のイオン交換装置のイオン交換塔、ユニット交換式のイオン交換装置に用いられるイオン交換樹脂充填ユニット、樹脂交換式のイオン交換装置に用いられるイオン交換樹脂移動容器、樹脂貯槽、その他の容器などを挙げることができる。特に一定容量の樹脂が一定の充填密度で充填され、満杯となったときに一定容量のイオン交換樹脂層が形成されるように、一定容積の容器が適している。このような容器としてユニット交換式のイオン交換装置に用いられるイオン交換樹脂充填ユニットが挙げられる。
【0025】
イオン交換樹脂を充填する容器としては、イオン交換樹脂と水の混合スラリーを容器に導入するための樹脂導入路、容器内で同伴水を分離するストレーナ、および分離水を容器から排出する分離水排出路などの充填手段を備える容器が好ましく、これらの充填手段を備えた状態で内容積が一定の容器が好ましい。またこれらの充填手段を備えない容器でもよいが、この場合はこれらの充填手段を取付けることにより樹脂の充填が可能である。イオン交換塔やイオン交換樹脂充填ユニットのように、イオン交換処理用として容器が第1のストレーナに接続する原水導入路、第2のストレーナに接続する処理水取出路、および樹脂導入路を備えている場合は、これらの一方または両方を前記充填手段として用いることができる。ストレーナとしては、粒径0.4〜0.5mmのイオン交換樹脂が流出しないように、0.1〜0.3mmの開口を有するものが好ましい。
【0026】
本発明では、イオン交換樹脂と水の混合スラリーを容器に導入してイオン交換樹脂を充填し、水をストレーナで分離して容器から排出することにより、容器内にイオン交換樹脂層を形成する。この場合、イオン交換樹脂と水の混合スラリーを流体圧駆動式ポンプにより容器に供給し、分離水を排出することにより容器内がイオン交換樹脂で満杯に達すると、ポンプの吐出圧が高くなり、それに伴ってポンプ駆動用の流体圧も高くなる。このためポンプ駆動用の流体圧が所定圧に達した時点で、ポンプへ作用する流体圧を解除することにより、ポンプの駆動を停止し、容器内に一定容量のイオン交換樹脂層を形成することができる。
【0027】
本発明において、イオン交換樹脂の容量は、純水(超純水)中にイオン交換樹脂を投入し、樹脂層に変化がなくなるまで、一般的には10〜20分間静置して沈降させた状態で測定される容量である。イオン交換樹脂としてカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂等の混合樹脂を用いる場合のイオン交換樹脂の容量は、純水(超純水)中に混合樹脂を投入し静置して沈降させた状態で測定される容量である。イオン交換樹脂は混合スラリーを加圧した状態で充填されるため、容器内に形成されるイオン交換樹脂層の充填密度は高くなり、このためイオン交換樹脂層を構成する樹脂の容量は、容器の容積に相当する樹脂の容量よりも多くなることがある。本発明では加圧状態で充填したイオン交換樹脂の容量が一定となるように充填する。
【0028】
イオン交換樹脂と水の混合スラリーは上記イオン交換樹脂と水を混合したスラリーであり、樹脂の混合割合が高くなるとスラリーの流動性が低くなって樹脂が詰まりやすくなり、また樹脂の混合割合が低くなると分離する水量が多くなって操作性を害する。イオン交換樹脂と水の好ましい混合割合は、周囲に水相が形成された状態(静置沈降して水を分離しない状態)のイオン交換樹脂と水の容量比で、(70:30)〜(90:10)とするのが好ましい。
【0029】
本発明ではイオン交換樹脂と水の混合スラリーを流体圧駆動式ポンプで加圧して容器に導入して充填するが、このときの混合スラリーを容器に供給する供給圧、すなわちポンプの吐出圧は、樹脂の充填操作が容易であり、かつ樹脂を破砕しないで均一に充填される圧力とするのが好ましく、一般的には0.2〜0.7MPaの範囲内の圧力とすることができる。このような充填圧力として、イオン交換装置においてイオン交換樹脂層にかかる通液圧と同等の圧力とすると、ユニット交換式のイオン交換装置に用いられるイオン交換樹脂充填ユニットの場合、イオン交換装置にユニットを取付けた後、通液に先立ってイオン交換樹脂層の調整を行うことなく、そのまま通液を開始できるので好ましい。
【0030】
このようなポンプの吐出圧で混合スラリーを容器に供給し、ポンプ駆動用の流体圧が所定圧に達した時点でポンプへ作用する流体圧を解除してポンプの駆動を停止することにより、容器内に一定容量のイオン交換樹脂層を形成することができるが、充填密度が不均一になっている場合があり、最初の充填操作で完全に均一な充填密度のイオン交換樹脂層を形成することが困難な場合がある。従って1回の充填操作でポンプの駆動を停止した後、ポンプの駆動を再開してスラリーを供給し、再度ポンプ駆動用の流体圧が所定圧に達した時点でポンプへ作用する流体圧を解除してポンプの駆動を停止することにより、均一な充填密度のイオン交換樹脂層を形成することができる。この場合、最初の充填操作でポンプの駆動を停止した後、一定時間、例えば1〜20分間、好ましくは5〜10分間放置後ポンプの駆動を再開するのが好ましい。このようなポンプの停止と駆動の繰り返しは1回でよいが、多くするほど均一性は高くなり、所定量の樹脂を均一に充填することができる。
【0031】
流体圧駆動式ポンプは、ポンプ駆動用の流体圧が所定圧に達した時点で、ポンプへ作用する流体圧を解除する制御機構を備えたものが使用できる。これにより容器内に所定量のイオン交換樹脂が充填されて満杯となった時点で、スラリーの押込圧の上昇に伴いポンプ駆動用の流体圧が上昇するので、ポンプ駆動用の流体圧が所定圧に達した時点で、自動的にポンプへ作用する流体圧が解除され、これにより過不足のないイオン交換樹脂の充填量でポンプの駆動を停止することができる。
【0032】
ポンプの吐出圧を検出してポンプを停止するように制御する制御機構、あるいはポンプの吐出圧が高くなった時点で自動的にポンプを停止する機構などは、樹脂と水の混合系では困難で、複雑な機構と操作が必要となるが、このような系では樹脂の満杯によるポンプの吐出圧の上昇に対応して、ポンプ駆動用の流体圧が敏感に上昇するので、ポンプ駆動用の流体圧を制御すれば、樹脂の満杯に対応してポンプを停止させることができる。この場合、ポンプ駆動用の流体は樹脂のような固形物を含まないので、機器の構成、運転操作などは単純化できる。特にポンプ駆動用の流体に空気を用いると、機器の構成、運転操作などはさらに単純化でき、系内への取入、排出なども容易であり、準則に正確な制御が可能である。
【0033】
流体圧駆動式ポンプとしては、空気圧駆動式ポンプが好ましく、流体圧として空気圧の適用は、その発生、取扱、廃棄等は容易であり、また作用時に圧縮されるため樹脂の衝撃による破損が少ないなどの利点がある。またポンプ駆動用の空気圧が所定圧に達した時点で、ポンプへ作用する空気圧を解除してポンプの駆動を停止する制御機構を備えたものが好ましく、これにより制御が容易で、樹脂を損傷させることなく、正確な充填密度で充填して、一定容量のイオン交換樹脂層を形成することができる。空気圧駆動式ポンプとしては往復動ピストン式等であってもよいが、空気圧駆動式ダイヤフラムポンプが好ましい。空気圧駆動式ダイヤフラムの採用により、樹脂に対する衝撃を少なくすることができるため樹脂の損傷をさらに少なくでき、制御も容易で、正確な充填密度で充填して、一定容量のイオン交換樹脂層を形成することができる。
【0034】
容器として、第1のストレーナに接続する原水導入路、第2のストレーナに接続する処理水取出路、および樹脂導入路を備える容器、例えばユニット交換式のイオン交換装置に用いられるイオン交換樹脂充填ユニットを用いる場合、樹脂導入路を通してイオン交換樹脂と水の混合スラリーを容器に導入し、水を第1および/または第2のストレーナで分離して、原水導入路および/または処理水取出路から排出することにより、容器内にイオン交換樹脂層を形成することができる。このようにしてイオン交換樹脂層を形成した容器は、そのままイオン交換装置に取付けて、被処理液を通液することにより、イオン交換処理を行うことができ、飽和後は容器を回収して樹脂を再生して再充填し、繰り返し使用することができる。
【0035】
本発明において形成の対象となるイオン交換樹脂層が、純水製造装置、超純水製造装置、廃水処理装置、イオン吸着装置など、目的とするイオン交換装置によって、導入される不純物の量に制限がある場合は、搬送に使用する水として、要求純度に対応した純水や超純水などを用いてイオン交換樹脂層を形成し、またクリーンルームなどダスト等の少ない環境で充填操作を行うのが好ましい。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、イオン交換樹脂と水の混合スラリーを容器に導入して、水をストレーナで分離して容器から排出することにより、容器内にイオン交換樹脂を充填してイオン交換樹脂層を形成する方法において、イオン交換樹脂と水の混合スラリーを流体圧駆動式ポンプにより容器に供給し、前記ポンプ駆動用の流体圧が所定圧に達した時点で、ポンプへ作用する流体圧を解除してポンプの駆動を停止してイオン交換樹脂層を形成するようにしたので、簡単な機構と簡単な操作により、短時間で正確に一定量のイオン交換樹脂を容器に充填してイオン交換樹脂層を形成することができ、イオン交換樹脂の高密度充填や破砕、あるいは配管の詰まりなどを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施形態のイオン交換樹脂層の形成方法のフロー図である。
【図2】従来のイオン交換樹脂充填ユニットのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を図1により説明する。図1において、容器1はユニット交換式のイオン交換装置に用いられるイオン交換樹脂充填ユニットUを構成するものであり、図2のものと同じ構成になっている。すなわちイオン交換樹脂充填ユニットUは、着脱式の容器1の内部に再生済のイオン交換樹脂層2が形成されている。容器1の上部に開口部1aが形成され、樹脂導入路3、原水導入路4および処理水取出路5が一体化した蓋6が取付けられている。原水導入路4および処理水取出路5の下部には、それぞれ容器1内に伸びる先端部に第1のストレーナ4aおよび第2のストレーナ5aが設けられている。また原水導入路4および処理水取出路5の上部にはそれぞれカップリング4b、5bが取付けられており、樹脂充填装置の伸縮継手7、8に接続可能となっている。伸縮継手7、8はジョイント9、10により外部流路11、12に接続されている。
【0039】
図2ではイオン交換樹脂層2は容器1の全体に充填されておらず、容器1の上部には水層が形成されているが、図1ではイオン交換樹脂層2は容器1の全体に満杯の状態に充填するようにされている。またイオン交換樹脂層2はカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の混合樹脂を充填するようにされている。その他のイオン交換樹脂充填ユニットUの構成および容器1への樹脂充填の基本的な操作などは図2で説明したものと実質的に同じである。
【0040】
イオン交換樹脂層2を形成して製造したイオン交換樹脂充填ユニットUは、図2で説明したのと同様に、カップリング4b、5bの位置で切離した状態で密封し現場に搬送し、イオン交換装置に取付けて、カップリング4b、5bを外部流路11、12に相当するイオン交換装置の原水流路および処理水流路(いずれも図示省略)に接続してイオン交換に供される。このとき樹脂導入路3は空気抜きなどのために利用される。
【0041】
図1では、容器1に混合樹脂を充填するために、カチオン交換樹脂再生槽21、アニオン交換樹脂再生槽22、混合槽23が設けられ、これらでイオン交換樹脂の分離、再生、混合等を行った後、再生済の樹脂をポンプ30により、イオン交換樹脂充填ユニットUの容器1に導入して充填するようにされている。
【0042】
回収したイオン交換樹脂充填ユニットUの使用済のイオン交換樹脂を分離、再生、混合して充填する場合について説明すると、回収したイオン交換樹脂充填ユニットUの容器1からイオン交換樹脂層2を構成する混合樹脂をラインL1からカチオン交換樹脂再生槽21に導入し、ラインL2から純水を送って樹脂を逆洗分離し、分離したアニオン交換樹脂をラインL5からアニオン交換樹脂再生槽22に導入する。そしてラインL3からカチオン交換樹脂再生槽21に再生剤(酸)を通液し、ラインL4から再生排液を排出してカチオン交換樹脂を再生し、再生済のカチオン交換樹脂をラインL6から混合槽23に移送する。またラインL7からアニオン交換樹脂再生槽22に純水を送って樹脂を逆洗した後、ラインL8から再生剤(アルカリ)を通液し、ラインL9から再生排液を排出してアニオン交換樹脂を再生し、再生済のアニオン交換樹脂をラインL11から混合槽23に移送する。
【0043】
混合槽23ではラインL12から空気および純水を供給するとともに、ラインL13から純水を供給して樹脂を混合して水との混合スラリーを形成する。この混合スラリーはラインL14からポンプ30により吸入し、加圧してラインL15からイオン交換樹脂充填ユニットUの樹脂導入路3を通して容器1に導入し、同伴水は第1のストレーナ4aおよび第2のストレーナ5aで分離し、伸縮継手7、8、ジョイント9、10を通して外部流路11、12から排出して充填し、イオン交換樹脂充填層2を形成する。
【0044】
ポンプ30は空気圧駆動式ダイヤフラムポンプが用いられている。この空気圧駆動式ダイヤフラムポンプとしては、例えば特許文献3(特開2002−221160号)等に示されたダブルダイヤフラム式ポンプが採用されている。このポンプ30はハウジング31に隣接して形成された2個のポンプ室32a、32bにそれぞれダイヤフラム33a、33bが設けられ、中間壁34を貫通してスライドするシャフト35の先端に接合して一体化し、往復動可能とされている。
【0045】
ポンプ室32a、32bのダイヤフラム33a、33bの反対側には、駆動空気室36a、36bが形成され、それぞれ駆動空気路37a、37bが連絡している。ポンプ室32a、32bの下部には、逆止弁38a、38bが設けられ、それぞれスラリー吸入路41を介してラインL14に連絡している。またポンプ室32a、32bの上部には、逆止弁39a、39bが設けられ、それぞれスラリー供給路42を介してラインL15に連絡している。駆動空気路37a、37bはスラリー供給路42と交差しないで切替弁43に連結している。切替弁43には空気供給路44と空気排出路45が連絡している。
【0046】
ポンプ30には、ポンプ駆動用の空気圧が所定圧に達した時点で、ポンプへ作用する空気圧を解除してポンプの駆動を停止する制御装置50が設けられている。この制御装置50としては、例えば特許文献4(特開2007−305019号)に示されたものが採用されている。この制御装置50は制御弁51と、三方弁52と、調節弁53とから構成される。制御弁51は調節器55により調節される弁体54により第1流体室56と第2流体室57が区画されている。第1流体室56には駆動空気入口58および駆動空気出口59が設けられ、空気圧縮機60から弁61を有するラインL16を通して圧縮空気を駆動空気入口58に受入れ、駆動空気出口59からラインL17を通して切替弁43の空気供給路44に供給するように連絡している。
【0047】
また第1流体室56には制御空気出口62が設けられ、ラインL18を通して三方弁52に連絡し、さらにラインL19を通して調節弁53に連絡している。第2流体室57には制御空気入口63が設けられ、ラインL21を通して調節弁53に連絡している。調節器55は弁体54の位置を調整することにより、第1流体室56を通して流れる駆動空気の流量を調節するように構成されている。調節弁53には調節器64が設けられていて、調節弁53の動作圧を調節できるように構成されている。三方弁52には切替器65が設けられていて、三方弁52の流路を切替えて制御空気を排出し、制御弁51をリセットできるように構成されている。
【0048】
上記の構成において、空気圧縮機60から圧縮空気を、弁61で流量調節し、ラインL16を通して制御弁51の駆動空気入口58に導入し、駆動空気出口59からラインL17を通して、ポンプ30の切替弁43の空気供給路44に供給する。切替弁43では、駆動空気路37a、37bを交互に切替えて、駆動空気を駆動空気室36a、36bに交互に導入し、このとき他方の駆動空気路37b、37aから駆動空気を空気排出路45に排出するように操作される。これによりダイヤフラム33a、33bがシャフト35を介して同方向に移動し、ラインL14から混合スラリーを吸入し、加圧してラインL15からイオン交換樹脂充填ユニットUの樹脂導入路3を通して容器1に導入する。
【0049】
図1ではポンプ30は、駆動空気を切替弁43から駆動空気路37bを通して駆動空気室36bに導入するとともに、駆動空気室36aの駆動空気を駆動空気路37aから空気排出路45を通して系外に排出する状態が図示されている。このとき駆動空気室36aの駆動空気が排出されてダイヤフラム33aが中間壁34側に移動することにより、混合槽23の混合スラリーがラインL14からポンプ30のスラリー吸入路41に入り、逆止弁38aを通してポンプ室32aに吸入される。これと同時にダイヤフラム33bがポンプ室32b側に移動することにより、ポンプ室32b内の混合スラリーが加圧され、逆止弁39bからスラリー供給路42に入り、ラインL15からイオン交換樹脂充填ユニットUの樹脂導入路3を通して容器1に導入される。このとき逆止弁39aは閉じるため、スラリー供給路42の混合スラリーはポンプ室32aに入らない。
【0050】
続いて切替弁43が切替わり、駆動空気を駆動空気路37aから駆動空気室36aに導入するとともに、駆動空気室36bの駆動空気を駆動空気路37bを通して切替弁43から空気排出路45を通して系外に排出する。これによりダイヤフラム33a、33bが図1の右向きに移動し、混合槽23からポンプ30のスラリー吸入路41に入った混合スラリーが、逆止弁38bを通してポンプ室32bに吸入される。これと同時にポンプ室32a内の混合スラリーが加圧され、逆止弁39aからスラリー供給路42に入り、ラインL15からイオン交換樹脂充填ユニットUの容器1に導入される。このように切替弁43により交互に駆動空気および混合スラリーの流路を切替えることにより、混合スラリーの容器1への導入を継続して行うことができる。
【0051】
ラインL15から容器1に導入された混合スラリー中のイオン交換樹脂は容器1内に充填され、同伴水は第1のストレーナ4aおよび第2のストレーナ5aで分離され、伸縮継手7、8、ジョイント9、10を通して外部流路11、12から排出され、イオン交換樹脂充填層2が形成される。イオン交換樹脂の充填初期において、容器1内のイオン交換樹脂充填層2は少なく、水層が多く存在する状態では、同伴水が分離されて排出されるため、混合スラリーは次々と導入されるので、切替弁43の切替により混合スラリーの供給が繰返される。
【0052】
イオン交換樹脂の充填が進行し、容器1内の全体にイオン交換樹脂充填層2が形成されて満杯になると、容器1内へ混合スラリーが入らなくなる。これによりポンプ30の吐出圧が高くなり、これに伴ってダイヤフラム33a、33bにかかる負荷が大きくなるため、駆動空気圧が高くなる。制御弁51では第1流体室56内の駆動空気の一部が制御空気として、制御空気出口62からラインL18を通して三方弁52に供給され、さらにラインL19を通して調節弁53に供給されているが、駆動空気圧が所定圧に達した時点で、調節弁53が開放する。
【0053】
調節弁53の開放により、制御空気が調節弁53からラインL21、制御空気入口63を通して第2流体室57に入って、弁体54を図1の右方向に移動させ、第1流体室56を閉じる。これによりポンプ30への駆動空気の供給が停止し、ポンプ30へ作用する駆動空気圧を解除してポンプ30は駆動を停止する。これによりポンプ30による容器1への混合スラリーの供給は停止する。この段階で容器1は満杯となっているので、容器1内には一定容量のイオン交換樹脂充填層2が形成される。
【0054】
このようにポンプ30の駆動空気圧が所定圧に達した時点でポンプ30へ作用する駆動空気圧を解除してポンプ30の駆動を停止することにより、容器1内に一定容量のイオン交換樹脂層2を形成することができるが、充填密度が不均一になっている場合があるので、1回の充填操作でポンプ30の駆動を停止した後、一定時間、例えば1〜10分間放置後ポンプ30の駆動を再開して混合スラリーを供給し、再度駆動空気圧が所定圧に達した時点でポンプ30へ作用する空気圧を解除してポンプ30の駆動を停止することにより、均一な充填密度のイオン交換樹脂充填層2を形成することができる。
【0055】
ポンプ30の駆動を再開するには、三方弁52に設けられている切替器65により三方弁52の流路を切替え、第2流体室57内の制御空気を排出することにより、制御弁51の弁体54が復帰して制御弁51がリセットされる。ポンプ30の停止と放置により容器1内のイオン交換樹脂充填層2の充填ひずみが解除され、均一なイオン交換樹脂充填層2が形成されるとともに、水層が分離して容器1内に樹脂流入スペースが形成されていると、制御弁51のリセットとともにポンプ30の駆動が再開され、容器1内への混合スラリーの供給が再開される。再度駆動空気圧が所定圧に達した時点で調節弁53の開放し、
ポンプ30へ作用する空気圧が解除されてポンプ30の駆動が停止する。これによりさらに均一な充填密度のイオン交換樹脂充填層2を形成することができる。
【0056】
このようにしてイオン交換樹脂充填層2を形成後、またはイオン交換樹脂充填層2の充填量に厳密性が要求されない場合には、繰り返し充填操作を省略して、容器1を交換し、次の容器1についてイオン交換樹脂充填層2を形成する。容器1の交換は、カップリング4b、5bにおいて伸縮継手7、8から分離し、新しい容器1と交換する。新しい容器1と交換した後、切替器65により三方弁52の流路を切替えて制御弁51をリセットすることにより、制御弁51の第1流体室56へ駆動空気が供給されて、ポンプ30による新しい容器1への混合スラリーの供給が再開され、前記と同様にしてイオン交換樹脂が充填され、イオン交換樹脂充填層2の形成が行われる。
【0057】
調節弁53の動作圧、すなわち調節弁53を開放させるときの駆動空気圧は0.2〜0.7MPaの範囲内の圧力とすることができるが、この圧力は調節器64によって、樹脂の充填操作が容易であり、かつ樹脂を破砕しないで均一に充填される圧力となるように調節することができる。この場合、ポンプ30の吐出圧を測定したり、調整する必要はなく、単に調節弁53の動作圧を調節するだけで、制御弁51を閉じてポンプ30へ作用する空気圧を解除し、ポンプ30の駆動を停止することができる。
【実施例】
【0058】
〔実施例1〜5〕:
図1に示す装置において、容器1(容積70L)に、カチオン交換樹脂CRM(栗田工業株式会社製、商標)と、アニオン交換樹脂KR(栗田工業株式会社製、商標)とを、容量比で1:1.6に混合した混合樹脂を、周囲に水相が形成された状態(静置沈降して水を分離しない状態)の混合樹脂と水の容量比で、80:20で混合した混合スラリーを、ポンプ30の設定圧を0.294MPaで充填し、イオン交換樹脂充填層2を形成した。ポンプ30が0.294MPaで停止後、10分間放置し、再度ポンプ30を設定圧0.294MPaで再駆動し、充填を行った。5個の容器1を順次交換して充填した結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1の結果より、容器1内のイオン交換樹脂層2の過不足量の平均値は+1.1Lで、基準量(70L)に対する容量比は1.57%であり、いずれも過剰側で、不足が生じた例がないので、合格と判定された。
【0061】
〔比較例1〜3〕
実施例1〜5と同じ容器および混合スラリーを用いて、図1に記載の容器1の樹脂導入路3にロートを設置し、ビーカを用いて混合スラリーを、容器1が満杯になるまで流し込み、容器1にイオン交換樹脂層2を形成させた。3個の容器1を順次交換して充填した結果を表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
表2の結果より、各例とも容器1内のイオン交換樹脂層2の容量は、5〜10Lの範囲で不足しており、またばらつきも大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、純水製造装置、超純水製造装置、廃水処理装置、イオン吸着装置などのイオン交換装置で用いる容器に、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、これらの混合樹脂、あるいはこれらと他の樹脂との混合樹脂を容器内に充填してイオン交換樹脂層を形成するための方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
U:イオン交換樹脂充填ユニット、 1: 容器、2: イオン交換樹脂層、3: 樹脂導入路、4: 原水導入路、5: 処理水取出路、6: 蓋、7、8: 伸縮継手、9、10: ジョイント、1a: 開口部、4a、5a: ストレーナ、4b、5b: カップリング、11、12: 外部流路、21: カチオン交換樹脂再生槽、22: アニオン交換樹脂再生槽、23: 混合槽、30: ポンプ、31: ハウジング、32a、32b: ポンプ室、33a、33b: ダイヤフラム、34: 中間壁、35: シャフト、36a、36b: 駆動空気室、37a、37b: 駆動空気路、38a、38b、39a、39b: 逆止弁、41: スラリー吸入路、42: スラリー供給路、43: 切替弁、44: 空気供給路、45: 空気排出路、50: 制御装置、51: 制御弁、52: 三方弁、53: 調節弁、54: 弁体、55: 調節器、56: 第1流体室、57: 第2流体室、58: 駆動空気入口、59: 駆動空気出口、60: 空気圧縮機、61: 弁、62: 制御空気出口、63: 制御空気入口、64: 調節器、65: 切替器、L1・・・: ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂と水の混合スラリーを容器に導入して、水をストレーナで分離して容器から排出することにより、容器内にイオン交換樹脂を充填してイオン交換樹脂層を形成する方法であって、
イオン交換樹脂と水の混合スラリーを流体圧駆動式ポンプにより容器に供給し、
前記ポンプ駆動用の流体圧が所定圧に達した時点で、ポンプへ作用する流体圧を解除してポンプの駆動を停止することを特徴とするイオン交換樹脂層の形成方法。
【請求項2】
ポンプ駆動用の流体圧が所定圧に達した時点でポンプへ作用する流体圧を解除してポンプの駆動を停止した後、ポンプの駆動を再開し、再度ポンプ駆動用の流体圧が所定圧に達した時点でポンプへ作用する流体圧を解除してポンプの駆動を停止することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
容器が第1のストレーナに接続する原水導入路、第2のストレーナに接続する処理水取出路、および樹脂導入路を備え、樹脂導入路を通してイオン交換樹脂と水の混合スラリーを容器に導入し、水を第1および/または第2のストレーナで分離して、原水導入路および/または処理水取出路から排出することにより、容器内にイオン交換樹脂層を形成することを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
流体圧駆動式ポンプが空気圧駆動式ポンプであり、ポンプ駆動用の空気圧が所定圧に達した時点で、ポンプへ作用する空気圧を解除してポンプの駆動を停止する制御機構を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
流体圧駆動式ポンプが空気圧駆動式ダイヤフラムポンプである請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
イオン交換樹脂がカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の混合樹脂である請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−110449(P2011−110449A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266401(P2009−266401)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】