説明

イオン性液体触媒化学反応を改善する高剪断を与える方法及びシステム

一実施形態において、イオン性液体触媒を1種又は複数の液体成分に乳化させることを含む、イオン性液体触媒の活性を向上させる方法が開示される。一実施形態において、モノマー供給物と、削減された量のイオン性液体触媒とを反応ゾーンに導入すること、また、反応ゾーンに存在する剪断量を、モノマーの変換反応を望ましく保つために制御することを含む方法が開示される。一実施形態において、1種又は複数の液体成分とイオン性液体触媒とを受け入れるように構成された反応器;液体成分とイオン性液体触媒とに高剪断を加えるための、反応器に連結しているデバイス;及び、触媒反応ゾーンに加えられる剪断量を、変換反応を保つために制御するように構成され、前記の高剪断を加えるためのデバイスに連結しているコントローラ;を備える触媒反応システムが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「イオン性液体触媒化学反応を改善する高剪断を与える方法及びシステム(Method and System to Add High Shear to Improve an Ionic Liquid Catalyzed Chemical Reaction)」という名称で、2003年10月31日に出願された米国仮出願特許第60/516501号の利益と優先権を主張する。本出願は、「イオン性液体触媒を用いる高粘度ポリアルファオレフィンの製造方法(Method for Manufacturing High Viscosity Polyalphaolefins Using Ionic Liquid Catalysts)」という名称で、2003年4月22日に出願された同時係属の米国特許出願第10/420261号(この特許出願は、「イオン性液体触媒を用いる高粘度ポリアルファオレフィンの製造方法(Method for Manufacturing High Viscosity Polyalphaolefins Using Ionic Liquid Catalysts)」という名称で、2002年4月22日に出願された米国特許仮出願第374528号の利益と優先権を主張している)に関連する。本出願はまた、「イオン性液体触媒の製造方法(Method for Manufacturing Ionic Liquid Catalysts)」という名称で、2003年4月22日に出願された同時係属の米国特許出願第10/420182号にも関連する。本出願はまた、「化学反応改善のためにイオン性液体触媒を酸素に接触させる方法とシステム(Method and System to Contact an Ionic Liquid Catalyst with Oxygen to Improve a Chemical Reaction)」という名称で、本出願と同時に出願された米国特許出願第 号(代理人整理番号210604US01(4081−05601))(この特許出願は、2003年10月31日に出願された米国仮出願特許第60/516516号の利益と優先権を主張している)にも関連する。上で列挙された出願の各々は、ここで、あらゆる目的のために、参照を通じてその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明は、一般に、化学変換のためのイオン性液体触媒システムに関する。より詳細には、本発明は、ポリアルファオレフィン生成物の製造におけるモノマー変換率を増大させる、イオン性液体触媒の活性向上に関する。
【背景技術】
【0003】
イオン性液体触媒は、様々な化学反応、例えば、アルファオレフィンのオリゴマー化によるポリアルファオレフィン(PAO)の製造の触媒として使用され得る。ポリアルファオレフィンは、通常、CからC20のアルファオレフィンのオリゴマー化により製造される合成炭化水素液体である。ポリアルファオレフィンは、様々な業界において、ギアオイルの潤滑油、グリース、エンジンオイル、光ファイバー用ゲル、トランスミッションオイルとして、また、様々な他の潤滑用品として使用されている。PAOの製造に使用されるイオン性液体触媒はかなり高価であり得る。したがって、当技術分野において、イオン性液体触媒の活性を高める方法、例えば、必要触媒量が減っても尚、変換率を望ましく保つことによってプロセスの経済性を改善する方法が求められている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、イオン性液体触媒を1種又は複数の液体成分に乳化させることを含む、イオン性液体触媒の活性を向上させる方法が開示される。
【0005】
一実施形態において、モノマー供給物と削減された量のイオン性液体触媒とを反応ゾーンに導入すること、また、反応ゾーンに存在する剪断量を、モノマーの変換反応を望ましく保つために制御することを含む方法が開示される。一実施形態において、1種又は複数の液体成分とイオン性液体触媒とを受け入れるように設計された反応器;液体成分とイオン性液体触媒とに大きな剪断を加えるための、反応器に連結しているデバイス;及び、触媒反応ゾーンに加えられる剪断量を、変換反応を保つために制御するように設計され、前記の大きな剪断を加えるためのデバイスに連結しているコントローラ;を備える触媒反応システムが開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、製造プロセス内でイオン性液体触媒の活性を向上させるために、イオン性液体触媒を1種又は複数の液体成分に乳化するように、イオン性液体触媒反応に高剪断混合を加えるシステム及び/又は方法に関する。イオン性液体触媒が乳化され得る1種又は複数の液体成分は、1種又は複数の反応物、1種又は複数のプロセス溶剤(存在する場合)、或いはこれらの両方を含み得る。一実施形態において、1種又は複数の液体成分は、エマルジョンの連続相を形成し、イオン性液体触媒はエマルジョンの不連続相を形成する。一般に、本発明は、相溶性のないイオン性液体の液滴の大きさが、反応速度、変換率パーセント、触媒活性、反応生成物の物性、或いはこれらの要素の組合せに影響を与え得る如何なる反応にも適用され得る。ポリアルファオレフィンの製造において、酸素をイオン性液体の液滴に接触させことは、これらの要素の1つ又は複数に影響を与え得る1つの方法である。さらに、オレフィンのオリゴマー化反応において、イオン性液体の液滴の大きさは、これらの要素の1つ又は複数に影響を与え得る。イオン性液体の液滴の大きさがこれらの要素の1つ又は複数に影響を与え得る別のプロセスはアルキル化反応である。
【0007】
本発明はまた、1)モノマー供給物原料をイオン性液体触媒に接触させること;2)イオン性液体触媒を乳化すること;及び、3)ポリアルファオレフィン生成物を回収すること;を含む、ポリアルファオレフィンの製造方法にも関する。さらに、本発明は、1)モノマー供給物原料をイオン性液体触媒に接触させること;2)イオン性液体触媒の液滴の大きさを制御すること;及び、3)ポリアルファオレフィン生成物を回収すること;を含む、ポリアルファオレフィンの製造方法に関する。モノマー供給物、イオン性液体触媒、イオン性液体触媒の乳化方法、イオン性液体触媒液滴の大きさの制御方法、イオン性液体の液滴の大きさ、及び、他のプロセスパラメータが本明細書において記載される。このようなポリアルファオレフィンプロセスのいくつかの実施形態において、イオン性液体触媒は、酸素に接触させられる。別の実施形態において、イオン性液体触媒は水と接触させられる。さらに別の実施形態において、イオン性液体触媒は、酸素と水に接触させられる。モノマー供給物原料、イオン性液体触媒、酸素及び/又は水の量、並びに他のプロセスパラメータが本明細書において記載される。
【0008】
以下の開示は、主として、本発明をPOAの製造に適用することに重点を置いている。しかし、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定められ、本明細書に記載されている特定の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。したがって、本明細書に記載されている本発明を、例えば、アルキル化反応、オレフィン重合反応、又は、オレフィンのオリゴマー化反応に同じように適用することができる。
【0009】
図1は、水素化ポリアルファオレフィン(PAO)生成物を製造するためのイオン性液体触媒プロセス1に、高剪断混合を加えるためのシステム100を示している。システム100は反応器10を備え、液体反応物供給物の流れ12及びイオン性液体触媒の流れ14が反応器内の反応ゾーンに供給される。反応器10は、本明細書に記載されている条件の下で反応物をイオン性液体触媒に接触させるための手段であって、当技術分野において知られているどのような手段であってもよい。適切な反応器の例には攪拌槽型反応器が含まれ、これは、バッチ式反応器であっても連続攪拌槽型反応器(CSTR)であってもよい。別法として、管状又はループ反応器を用い、それらに本明細書に記載されている乳化の適切な手段を装備してもよい。1種又は複数の反応生成物を含む反応流出物は、反応器10から生成物ライン16を通して取り出され得る。
【0010】
反応ゾーン内で起こる反応は、オリゴマー化反応であり得る。一実施形態において、システム100の反応ゾーンは反応器10におけるオリゴマー化反応を含み、反応物供給物の流れ12はアルファオレフィンモノマーを含み、また生成物ライン16はポリアルファオレフィン(PAO)生成物を含む。適切なアルファオレフィンモノマーの非限定的な例には、4から20個の炭素原子、さらには6から20個の炭素原子、さらには8から16個の炭素原子、さらには10から14個の炭素原子もつアルファオレフィンが含まれる。
【0011】
反応物及びイオン性液体触媒は、図1に示されているように、別々の供給物の流れにより反応物ゾーンに別々に導入されても、或いは、それらは予め混合された混合物として一緒に導入されてもよい。反応ゾーン内の液体成分は、モノマーのような液体反応物、反応生成物(例えば、PAO、2量体など)と、場合によっては1種又は複数の溶剤を含む。反応物及びイオン性液体触媒は、一般に、互いに相溶しない流体であるから、単に一緒に流し込んだ場合には、それらは、2つの内のより密な方(通常は触媒)が底に溜まって、2つの物質層を形成するであろう。反応物と触媒の間の接触量は、この状況では、2層の間の界面のみに厳しく制限されるであろう。このために、反応器10には、液体成分とイオン性液体触媒とを乳化させる1つ又は複数の手段が装備され得る。通常、乳化することにより、イオン性液体触媒の液滴の大きさは小さくなるので、反応ゾーンにおける接触可能なイオン性液体触媒の表面積は増加する。
【0012】
本明細書では、エマルジョンは、イオン性液体触媒と1種又は複数の液体成分とを含む、相溶しない化合物の分散である。乳化はエマルジョンを生成させるプロセスである。通常、反応物(例えば、モノマー)、反応生成物(例えば、PAO、2量体など)、溶剤(存在する場合)、或いはこれらの組合せのような、反応ゾーンにおける液体成分によって形成される連続相に、イオン性液体触媒は液滴として分散する。一実施形態において、イオン性液体触媒は、モノマー及びPAOを含む連続相、実質的にモノマー及びPAOを含む連続相、実質的にモノマーを含む連続相に、液滴として分散する。一実施形態において、乳化は、1種又は複数の液体成分と共にイオン性液体触媒に機械的エネルギーを加えることにより起こり、例えば、高剪断混合により与えられることができる。本明細書において記載されている乳化は、反応ゾーンの前で(例えば、合わせた供給物の流れにおいて)、反応ゾーン内で(例えば、反応器において)、反応ゾーンの外で(例えば、反応ゾーンの外にある循環ループにおいて)、或いは、これらの組合せとして実施され得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、イオン性液体触媒の乳化は反応器において実施される。別の実施形態において、イオン性液体触媒の乳化は、1種又は複数の液体成分と共にイオン性液体触媒に機械的エネルギーを加えることにより実施される。さらに別の実施形態において、イオン性液体触媒の乳化は、反応ゾーンの外にある循環ループにおいて実施される。反応物とイオン性液体触媒とを乳化させる手段には、例えば、インライン高剪断ポンプ、超音波ポンプ、スタティックミキサー、或いはこれらの組合せのようなインラインミキサーが含まれ、これらのインラインミキサーは、反応物/イオン性液体触媒を合わせた供給物の反応器へのラインに、また/或いは、反応器に連結した循環ループに設置され得るであろう。反応物とイオン性液体触媒とを乳化させる手段には、さらに、図1に示されている攪拌機11のような、反応器内に配置された、1つ又は複数のミキサー、或いは、モーター駆動攪拌機が含まれる。攪拌機は、回転インペラー(rotating impeller)、ステーター/ローター、或いはこれらの組合せを備え得るであろう。一実施形態において、攪拌機11はCSTRの1つのコンポーネントであり、攪拌機は所望のエマルジョンを生成させるのに十分な剪断を加える。インラインミキサーを反応器内に配置されたミキサーと組み合わせて使用してもよい(例えば、循環ループ107に配置されたインラインミキサーと反応器10内に配置された攪拌機11との組合せ)。
【0014】
一実施形態において、高剪断ポンプ(例えば、反応器10の循環ループ107に配置されたインライン高剪断ポンプ105)が所望のエマルジョンを生成させる。さらにポンプ105を制御装置(示されていない)に連結して、反応ゾーンにおける反応物と触媒に加えられる剪断量を、反応物の変換反応を保つために制御するように設計することができる。別の実施形態において、高剪断ポンプは、反応物/イオン性液体触媒を合わせた供給物の流れに配置される。一実施形態において、高剪断ポンプ105は、Silverson Machinesが販売するインライン剪断ポンプの600LSH型であり、このポンプは、3600rpm、400gpmで5652フィート/分の先端速度(tip speed)をもち、平均剪断速度はSilversonによると135,000sec−1である。Silversonの剪断ポンプ600LSHでは、混合される成分は、固定カバーステーター入口を通ってポンプに入り、反時計回りに回転する内部ローターに進む。物質が、高速で回転している細かいメッシュスクリーン(ステーターの穿孔)に強制的に通されるときであって、物質が本体の排出部を通って出て行く前に、ポンプは強力な流体剪断(hydraulic shear)(複雑な混合)を加える。同等の高剪断混合を加える他のポンプをこのプロセスに用いてもよい。別法として、インライン高剪断混合を加えるために、超音波ポンプ(例えば、Vniitvch超音波ポンプ又は、Sonic Corporation製のインラインSonolator(商標))を使用できるであろう。
【0015】
高剪断混合(高剪断ブレンドと呼ばれることがある)は、混合装置業界内の技術用語であり、本明細書でもそのようなものとして使われている。機械用語では、剪断混合は、局所運動の接線方向にある別の材料表面に対して平行に押し進む、流体の粘性により生じる接線応力と呼ばれることがある。一実施形態において、高剪断は、≧約200sec−1、或いは≧約500sec−1、或いは≧約1000sec−1、或いは≧約5000sec−1、或いは≧約9000sec−1、或いは≧約10,000sec−1、或いは≧約20,000sec−1、或いは≧約35,000sec−1、或いは≧約50,000sec−1、或いは≧約100,000sec−1の剪断速度をもつ剪断と定義され、剪断速度は実施形態に記載されているようにして計算される。
【0016】
一実施形態において、イオン性液体触媒の液滴はコロイド状態の大きさより大きくてもよい。通常、イオン性液体触媒の液滴は大きさの分布をもつであろう。イオン性液体触媒液滴の大きさの分布は、本明細書に記載されている反応に影響を及ぼし得ることが見出された。特に、透過光顕微鏡により求めて、直径100ミクロン以下のイオン性液体触媒液滴の相対パーセンテージは、本明細書に記載されているイオン性液体触媒反応に影響を及ぼすことが見出された。一実施形態において、イオン性液体触媒の液滴数の65パーセントを超える数の液滴が、直径100ミクロン以下である。別の実施形態において、イオン性液体触媒の液滴数の75パーセントを超える数の液滴が、直径100ミクロン以下である;さらには、イオン性液体触媒の液滴数の85パーセントを超える数の液滴が、直径100ミクロン以下である;イオン性液体触媒の液滴数の90パーセントを超える数の液滴が、直径100ミクロン以下である;イオン性液体触媒の液滴数の95パーセントを超える数の液滴が、直径100ミクロン以下である。一実施形態において、イオン性液体触媒の液滴数のほぼ100パーセントの数の液滴が、約直径100ミクロン以下である。
【0017】
剪断速度、供給物及び触媒の量と種類などのようなプロセス条件と作業パラメータは、生成物及び性質(例えば、特定の粘度をもつPAO)を望ましいものとするように選択され得る。さらに、1つ又は複数のプロセスパラメータを検出若しくはモニタして、反応に制御ループを確立することに基づいて、反応を(例えば、反応の変換率又は速度)を制御することができる。一実施形態において、反応ゾーンに加えられる剪断量は、反応の変換率を望ましく保つために、コントローラ(図1には示されていない)により制御され得る。別法として、反応ゾーンに加えられる剪断量は、所望の生成物分布(例えばオリゴマーの分布)を実現するために制御され得る。さらに別の実施形態において、反応ゾーンに加えられる剪断量は、触媒活性を最適にして所望の生成物分布を実現するために制御され得る。触媒反応は通常発熱反応であり、反応温度を望ましく保つために剪断量は制御され得る。別法として、反応生成物の物理的性質(例えば、水素化ポリアルファオレフィンの100℃の動粘性率)を望ましく保つために、剪断量は制御され得る。いくつかの実施形態において、特定の所望の生成物に必要とされる剪断量は、反応ゾーンの温度、或いは、冷媒と反応器温度との間の温度差により決定され得る。通常、剪断量が増すと、反応温度は高くなる。さらに、特定の所望の生成物に必要とされる剪断量は、反応ゾーンの生成物組成を分析することにより決定され得る。通常、剪断量が増すと、反応生成物の粘度は増加し、この逆も成り立つ。一実施形態において、反応流出物が本明細書において記載されている性質をもつPAOを含むように、剪断量は制御される。一実施形態において、本明細書において記載されている性質をもつ水素化PAO生成物に分離されて、高品質化され得るPAOを反応流出物が含むように、剪断量は制御される。特定の所望の生成物の粘度を制御するために、温度と剪断を、単独で、或いは組み合わせて用いることができる。さらに、或いは、別法として、分散したイオン性液体触媒の液滴の大きさを測定又は検出し、それに応じて剪断量を調節することができる(剪断の増加により液滴の大きさが小さくなる、或いはこの逆)。
【0018】
一実施形態において、反応変換率を望ましく保つために剪断量は制御される。この実施形態では、モノマー変換率は70%を超える、さらには75%を超える、さらには80%を超える。
【0019】
反応ゾーン内の反応条件は、モノマー供給物のアルファオレフィンのオリゴマー化が所望のポリアルファオレフィン生成物を生じるのに適する反応条件であるように保たれる。反応圧は、通常、大気圧より低い圧力から高くは約250psigまでの範囲に保たれ得る。反応はそれほど圧力依存性ではないので、低圧で、例えば、ほぼ大気圧から約50psigで、さらには大気圧から25psigで、反応器を運転すると最も経済的である。反応温度は、反応の間、反応物と触媒を液体状態に保つように維持されるべきである。このため、通常、反応温度の範囲は約20°Fから約200°Fである。一実施形態において、反応温度は、約40°Fから約150°F、さらには50°Fから110°Fの範囲にある。
【0020】
反応ゾーン内での供給物の滞留時間は得られる反応生成物にわずかに影響する。本明細書では、「滞留時間」という用語は、反応器容積と、反応器により画定される反応ゾーンに充填又は導入される供給物(モノマー供給物とイオン性液体触媒供給物の両方)の容積導入速度との比であるとして定義されている。滞留時間は、時間の単位で表される。反応器容積と供給物導入速度は、モノマー供給物とイオン性液体触媒供給物の全体の滞留時間が、通常、長くて約300分までの範囲にあるようなものであるが、反応が起こるのに十分な滞留時間である必要性と経済的な考慮のために、滞留時間は、より適切には、約1分から約200分の範囲にある。一実施形態において、滞留時間は、約2分から約120分、さらには5分から60分の範囲にある。
【0021】
反応ゾーンに存在する酸素の量、水の量、或いはこれらの双方は、すでに参照された、「化学反応改善のためにイオン性液体触媒を酸素に接触させる方法とシステム(Method and System to Contact an Ionic Liquid Catalyst with Oxygen to Improve a Chemical Reaction)」という名称で、本出願と同時に出願された米国特許出願第 号(代理人整理番号210604US01(4081−05601))に従って制御され得る(この特許出願は、「化学反応改善のためにイオン性液体触媒を酸素に接触させる方法とシステム(Method and System to Contact an Ionic Liquid Catalyst with Oxygen to Improve a Chemical Reaction)」という名称で、2003年10月31日に出願された米国仮出願特許第60/516516号と、「イオン性液体触媒を用いる高粘度ポリアルファオレフィンの製造方法(Method for Manufacturing High Viscosity Polyalphaolefins Using Ionic Liquid Catalysts)」という名称で、2003年4月22日に出願された米国特許出願第10/420261号の利益と優先権を主張している)。
【0022】
反応ゾーンにおける触媒濃度は、ポリアルファオレフィン生成物の特定の所望の物理的性質を制御するために利用され得る。一実施形態において、反応ゾーンに導入されるイオン性液体触媒の重量パーセントは、反応器への供給物の重量に対して、約0.1から約50重量%、さらには約0.1から約25重量%、さらには約0.1から約10重量%、さらには約0.1から約5重量%、さらには約1から約3重量%、さらには約1.5から約2.5重量%、さらには約2.0から約2.5重量%であり得る。一実施形態において、反応ゾーンに導入されるイオン性液体触媒の重量パーセントは、反応器への供給物の重量に対して、約7.5重量%未満である。別の実施形態において、剪断ポンプ105は、約20,000から約60,000sec−1の高剪断速度で運転され得る。この実施形態では、反応ゾーンに導入されるイオン性液体触媒の重量パーセントを、約20パーセントだけ削減することができる(例えば、同じ粘度の生成物を得るのに、反応ゾーンに存在する触媒を約2.5重量%から、約2.0重量%に削減することができる)。
【0023】
ポリアルファオレフィンの製造において、プロセスの反応ゾーンに導入されるモノマー供給物原料は、少なくとも1種のアルファオレフィンを含む。一実施形態において、モノマー供給物は、モノマー供給物の重量に対して、少なくとも約50重量パーセントのアルファオレフィンを、さらには、少なくとも約60、70、80、90、95、又は99重量パーセントのアルファオレフィンを含む。一実施形態において、モノマー供給物は本質的にアルファオレフィンからなり、この供給物としては、市販のアルファオレフィン製品が含まれると理解されるべきである。本発明でのプロセスのモノマー供給物として使用するのに適するアルファオレフィン(1−オレフィン若しくは1−アルケンとしても知られている)とこれらの組合せは4から20個の炭素原子をもち、それらには、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン及びこれらの組合せが含まれ得る。いくつかの実施形態において、モノマー供給物は1−デセンを含む。別の実施形態では、モノマー供給物は1−ドデセンを含む。別の実施形態では、モノマー供給物は、本質的に、1−デセン、1−ドデセン、又はこれらの混合物からなる。一実施形態において、モノマー供給物のアルファオレフィンは4から20個の炭素原子をもつか、若しくはそれらの混合物であり、さらには6から18個の炭素原子、さらには約10から約12個の炭素原子をもつ。
【0024】
反応ゾーンから取り出される反応器流出物は、通常、ポリアルファオレフィンとイオン性液体触媒を含む。様々なポリアルファオレフィンが本開示に従って製造され得る。ポリアルファオレフィンはモノマーから製造される合成炭化水素液体である。ポリアルファオレフィンは、オレフィン結合(即ち炭素−炭素2重結合)と共に複雑な分岐構造をもち、オレフィン結合は、触媒による異性化により分子の如何なる位置にもあり得る。本明細書では、「ポリアルファオレフィン」という用語には、2量体、3量体、4量体、より高級なオリゴマー、アルファオレフィンのポリマー、或いはこれらの1つ又は複数の混合物の何れかであるアルファオレフィンのオリゴマー化生成物が含まれ、それらの各々は、特定の望ましい物理的性質、特に、望ましい大きな粘性をもち、これらの性質のすべては下により詳細に記載される。こうして、ポリアルファオレフィンは、モノマー供給物に含まれるアルファオレフィンの2量体、3量体、4量体、より高級なオリゴマー、ポリマー、或いはこれらの1つ又は複数の混合物を含み得る。このような2量体、3量体、4量体、より高級なオリゴマー、ポリマー、或いはこれらの1つ又は複数の混合物は、12から1300個を超える炭素原子をもつ分子を含み得る。
【0025】
反応器流出物は、モノマー供給物中のアルファオレフィンの2量体と未反応モノマー(存在する場合)をさらに含み得る。イオン性液体触媒、並びに、場合によっては、未反応モノマーと、モノマー供給物の反応中に生成する2量体とを含めての他の反応器流出物成分から、ポリアルファオレフィンを分離することができる。分離後のポリアルファオレフィンには、続いての処理、或いは、例えば基油原料として有用であるより安定なポリアルファオレフィン生成物(本明細書では、水素化ポリアルファオレフィン生成物と呼ばれる)とするための水素化のような高品質化を行うことができる。水素化ポリアルファオレフィン生成物は、分子に優れた熱安定性を付与する、水素で飽和したオレフィン炭素をもつ。
【0026】
一実施形態において、水素化ポリアルファオレフィン生成物は100℃で約2から約100cStの粘度をもち、例えば、低粘度水素化ポリアルファオレフィン生成物は100℃で約2から約12cStの粘度をもち、中粘度水素化ポリアルファオレフィン生成物は100℃で約12から約40cStの粘度をもち、或いは、高粘度水素化ポリアルファオレフィン生成物は100℃で約40から約100cStの粘度をもつ。水素化ポリアルファオレフィン生成物の重量平均分子量は、約170から約18,200、さらには約200から約10,000、さらには約210から約8,000、さらには約250から約3,000の範囲にあり得る。別の実施形態において、水素化ポリアルファオレフィン生成物の重量平均分子量は、約500から約8,000、さらには約1,000から約5,000、さらには約1,500から2,500の範囲にあり得る。
【0027】
一実施形態において、水素化ポリアルファオレフィン生成物は、1−デセン又は1−ドデセン供給物原料、或いはこれらの混合物から製造され得る。これらの供給物原料からの水素化ポリアルファオレフィン生成物は、それらが独特な物理的性質をもつという点で特に重要である。水素化ポリアルファオレフィン生成物の様々な物理的性質の典型的な範囲と、物理的性質を測定する関連試験法が、次の表1に記載されている。
【0028】
【表1】

【0029】
所望の化学反応を触媒するのに適する如何なるイオン性液体触媒でも使用され得る。本発明でのプロセスにおいて使用するのに適するイオン性液体組成物の例は、本発明でのプロセスの反応条件の下で液体である組成物となる2成分複合体である。具体的には、イオン性液体触媒は、金属ハロゲン化物と、アルキル含有アミンハロゲン化水素塩との組合せにより生じる複合体である。このような組成物は、米国特許第5731101号及び米国特許第6395948号に詳細に記載されている(これらの各々の開示は参照を通じてその全体が本明細書に組み込まれる)。このようなイオン性液体組成物の使用により、様々な潤滑剤又は潤滑剤添加剤用途においてそれらを特に有用なものとする特定の望ましく新規な物理的性質をもつポリアルファオレフィン最終生成物が得られることが見出されている。ポリアルファオレフィン最終生成物を製造するためのイオン性液体組成物の使用は、米国特許第6395948号及び、2004年6月27日に出願された米国特許出願第10/900221号(これらの各々の開示は参照を通じてその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0030】
本発明において使用されるイオン性液体触媒を生成するために使用され得る金属ハロゲン化物は、アルキル含有アミンハロゲン化水素塩と一緒にされた場合に、上に記された反応温度で液体状であるイオン性液体複合体(complexes)となり得る化合物である。適切な金属ハロゲン化物の例は、共有結合した金属ハロゲン化物である。本発明での使用のために選択され得る適切で可能な金属には、元素の周期表(CAS版)のIVB、VIII、IB、IIB、及びIIIA族からの金属が含まれる。より具体的には、金属ハロゲン化物の金属は、アルミニウム、ガリウム、鉄、銅、亜鉛、チタン、及びインジウムからなる群から、さらにはアルミニウム及びガリウムからなる群から、さらにはアルミニウムから選択され得る。金属ハロゲン化物の例には、ハロゲン化アルミニウム、アルキルアルミニウムハライド、ハロゲン化ガリウム、アルキルガリウムハライド、ハロゲン化チタン、及びアルキルチタンハライド、これらの混合物からなる群から選択されるものが含まれ、それらの中で特に望ましいのは、ハロゲン化アルミニウム又はアルキルアルミニウムハライドである。一実施形態において、金属ハロゲン化物は三塩化アルミニウムである。
【0031】
本発明で使用されるイオン性液体触媒を生成するために使用され得るアルキル含有アミンハロゲン化水素塩は、モノアミン、ジアミン、トリアミン及び環状アミン(これらのすべては1つ又は複数のアルキル基を含む)と、ハロゲン化水素アニオンを含む。アルキルという用語は、1から9個の炭素原子をもつ直鎖状及び分岐状のアルキル基を含むと想定されている。本発明において有用なアルキル含有アミンハロゲン化水素塩の例は、少なくとも1つのアルキル置換基をもち、多くは3個のアルキル置換基を含み得る。それらは、第4級アンモニウム塩(その4つの置換位置のすべてが炭化水素基により占められている)と区別される。例には、一般式RN・HXをもつ化合物が含まれ、ここで、「R」基の少なくとも1つはアルキル、例えば、1から8個の炭素原子のアルキル(例えば、1から4個の炭素原子の低級アルキル)であり、Xはハロゲン、例えば塩素である。3つのR基の各々がそれぞれR、R及びRと表される場合、特定の実施形態において、次の可能性がある:R〜Rの各々が低級アルキル(場合によっては、窒素若しくは酸素が介在する、又はアリールにより置換されている)であり得る;R及びRが環を形成し、RはRに対してすでに記載されたものであり得る;R及び/又はRが水素であり、Rはすでに記載されたものであり得る;或いは、R、R及びRが2環式の環を形成し得る。一実施形態において、これらの基は、メチル若しくはエチル基である。特定の実施形態において、ジ−及びトリ−アルキルの化学種が使用され得る。別の実施形態において、1つ又は2つのR基がアリールであり得る。アルキル基と、存在する場合にはアリールとは、ハロゲンのような他の基により置換されていてもよい。フェニル及びベンジルは、選択される可能なアリール基の代表的な例である。しかし、このようなさらなる置換は、メルト(melt)の粘度を望ましくなく増加させることがある。したがって、一実施形態において、アルキル基と、存在する場合にはアリールとは、炭素及び水素の基だけからなる。このような短鎖は、粘性が最も低い、或いは伝導性が最も大きいメルトを生成するので、望ましい。これらのアルキル含有アミンハロゲン化水素塩の混合物を使用してもよい。
【0032】
一実施形態において、アルキル含有アミンハロゲン化水素塩は、R基が水素又は、1から4個の炭素原子をもつアルキル基であり、ハロゲン化水素が塩化水素である化合物であり、その一例はトリメチルアミン塩酸塩である。
【0033】
調製されたイオン性液体は保管され、その後、本明細書に記載されている反応の触媒として使用され得る。一旦触媒として使用されたら、イオン性液体は、当業者に知られている方法によって、反応流出物から分離及び/又は回収され得る。分離及び/又は回収されたイオン性液体は、それだけで、或いは新たに調製されたイオン性液体触媒と一緒にされて、触媒用途にリサイクルされ得る。いくつかの場合には、リサイクルされたイオン性液体組成物に、ある量の金属ハロゲン化物、又はある量のアミンハロゲン化水素塩を補充してもよい。
【0034】
以下の記述では、開示されている本発明によるプロセスが、図1(水素化ポリアルファオレフィン生成物を製造するための製造プロセス1が示されている)に示されている実施形態の一部として含まれている。モノマー供給物とリサイクルされたモノマー及び2量体(下でより詳細に詳細に記載される)とが、ライン12により反応器10(以後、連続攪拌槽型反応器若しくはCSTR10と呼ばれる)に導入又は充填される。補充イオン性液体触媒とリサイクルされたイオン性液体触媒(下でより詳細に記載される)供給物とが、触媒供給物ライン14によりCSTR10に導入又は充填される。モノマー及びイオン性液体触媒の供給物はCSTR10に導入され、攪拌機11によりブレンドされ、CSTR10の周りの循環ループ107において循環される。ポンプ105(ライン107内に設置されている)が、ポンプを通して流体が送られる際に2種の相溶しない流体を乳化させ、ライン107によりエマルジョンをCSTR10に送り返す。CSTR10からの反応器流出物は、供給物の導入と同時に、ライン16を通してCSTR10から取り出される。
【0035】
反応器流出物は、CSTR10からライン16を通して、第1の相分離器(phase separator)18(反応器流出物を、イオン性液体触媒相20と炭化水素又はポリアルファオレフィン含有相22とに分離する手段を与える)に送られる。分離されたイオン性液体触媒相20はライン24によりリサイクルされ、ライン14を通っている補充イオン性液体触媒と一緒にされて、CSTR10に導入される。第1の相分離器は、密度が異なる2種の非相溶性液体を分離できる、当業者に知られている如何なる相分離器であってもよい。例えば、第1の相分離器は沈降分離器であっても遠心分離器であってもよい。
【0036】
ポリアルファオレフィン含有相22は、相分離器18からライン26を通って失活容器28(イオン性液体触媒を失活させるために、ポリアルファオレフィン含有相と混ざった残留イオン性液体触媒を水に接触させる手段を与える)に入る。ポリアルファオレフィン含有相、水、及び失活したイオン性液体触媒の混合物は、失活容器28からライン30を通って第2の相分離器32(廃水及び触媒の相34とポリアルファオレフィン含有相36とを分離する手段を与える)に入る。廃水相は、第2の相分離器32からライン37を通して出て行く。
【0037】
ポリアルファオレフィン含有相36は、第2の相分離器32からライン38を通って水洗浄容器40(ポリアルファオレフィン含有相を新鮮な水に接触させる手段を与える)に入る。新鮮な水は、水洗浄容器40にライン42を通して充填又は導入される。水及びポリアルファオレフィン含有相は、水洗浄容器40からライン44を通って第3の相分離器46(水洗浄容器40から導入された水及びポリアルファオレフィン含有相を水相48とポリアルファオレフィン含有相50とに分離する手段を与える)に入る。水相48はリサイクリされ、ライン52を通して失活容器28に導入されて、失活容器28において使用される失活洗浄水となり得る。
【0038】
ポリアルファオレフィン含有相50は、第3の分離器46からライン54を通って水分離容器56(水をポリアルファオレフィン含有相50から、例えばフラッシュ分離により、分離する手段を与える)に入って、蒸発水(flash water)の流れと、水濃度が低いポリアルファオレフィン含有相とを与える。蒸発水の流れは、水分離容器56から出て、ライン58を通して失活容器28にリサイクルされるか、或いは代わりに、蒸発水の流れはライン37を通して廃水として処理されてもよい。水濃度が低いポリアルファオレフィン含有相は、水分離容器56からライン60を通って出て、分離容器(separation vessel)62(これは例えば蒸発装置である)に充填される。分離容器62は、水濃度が低いポリアルファオレフィン含有相を、モノマー及び場合によっては2量体を含む第1の流れと、ポリアルファオレフィン生成物を含む第2の流れとに分離する手段を与える。第1の流れは、分離容器62からライン63を通して送られ、ライン12にリサイクルされ、そこでそれはモノマー供給物と混合され、CSTR10に充填される。
【0039】
第2の流れは、分離容器62からライン64を通って保護容器(guard vessel)66に入り、この容器は保護層材料を入れたゾーンを画定し、塩素及び他のあり得る汚染物質を第2の流れから、それを水素化反応器68に充填する前に、除去する手段を与える。保護容器66からの流出物はライン70を通って水素化反応器68に入る。水素化反応器68は、第2の流れの中のポリアルファオレフィン生成物を反応させて、炭素−炭素2重結合の相当な部分が水素で飽和された水素化ポリアルファオレフィン生成物を得る手段を与える。水素は、ライン72によりライン70に導入され、第2の流れと混合され、その後、こうして混合された水素と第2の流れが水素化反応器68に充填される。水素化ポリアルファオレフィン生成物は水素化反応器68からライン74により出て行く。
【0040】
本開示は、主として、POAの製造の実施形態に重点を置いているが、本発明の範囲は、請求範囲によって定められ、本明細書に記載されている特定の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。例えば、別の実施形態では、システム100の反応ゾーンは反応器10におけるアルキル化反応を含み、この場合、反応物供給物の流れ12は、芳香族化合物、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、又はナフタレンを含み、生成物の流れ16はアルキル化生成物を含む。
【0041】
一実施形態において、アルキル化反応はフリーデル−クラフツアルキル化反応であり得る。一実施形態において、アルキル化反応は、例えば、「低温イオン性液体を用いる直鎖アルキルベンゼンの生成(Linear Alkylbenzene Formation Using Low Temperature Ionic Liquid)」という名称で、1998年10月20日に出願された米国特許第5824832号(参照により全体が本明細書に組み込まれる)における方法及び装置による、ベンゼンのアルキル化である。一実施形態において、ベンゼンがアルキル化されて、エチルベンゼン、クメン、又は直鎖アルキルベンゼン(LAB)を生成する。例えば、ベンゼンは、通常過剰のモル数で、2から54個の炭素原子をもつ適切なアルキル化剤(例えば、オレフィン、ハロゲン化アルカン、又はこれらの混合物)と一緒にされ得る。適切なハロゲン化アルカンの非限定的な例には、C〜C20クロロパラフィン、さらには、C10〜C14クロロパラフィンが含まれる。適切なオレフィンの非限定的な例には、4から20個の炭素原子、さらには20から24個の炭素原子、さらには8から16個の炭素原子、さらには10から14個の炭素原子をもつ直鎖で分岐のないモノオレフィンとこれらの混合物が含まれ、この場合、2重結合は直鎖状炭素鎖に沿うどこにあってもよい。適切な他の適切なアルキル化剤の非限定的な例には、オレフィンオリゴマー、例えば、プロピレン3量体及び水素化されていないポリアルファオレフィンが含まれる。本明細書においてより詳細に記載されているもののようなイオン性液体触媒は、このようなアルキル化反応の触媒として使用され得る。
【0042】
以下の本発明の実施例は例示のためにのみ記載されており、本発明の範囲を如何なる仕方においても限定しようとするものではない。
【実施例】
【0043】
実施例1〜3
1−デセンのオリゴマー化に加えられる高剪断
以下の実施例(実施例1〜3)は、1−デセンのオリゴマー化のための連続プロセスにより得られた、オリゴマー反応生成物のいくつかの物理的性質と、反応で変換されたモノマーのパーセンテージへの、剪断及び高剪断の効果を例示する。
【0044】
3つの実施例において使用した各混合装置単独での剪断速度データは、速度又は先端速度を2つの表面間の距離又は間隙で割るという基本的計算に基づくものであった。1ガロンのパイロットプラント反応器の内径は5インチであった。反応器は2.5インチの放射状6枚羽インペラーを装備していた。Tuthillのギアポンプは直径0.5インチで歯数10の2つのギアを収納していた。Silversonのミキサー(150L型)は直径1.5インチのローターを装備していた。下の表2は基本的な剪断速度を計算するのに必要な詳細な情報を含んでいる。例えば、反応器インペラーの剪断速度の計算は、以下によった:
a)インペラーの外周=π(2.5インチ)=7.854インチ
b)インペラー先端速度=(660回転/分)(7.854インチ/回転)/12インチ/フィート=432フィート/分
c)剪断速度=先端速度/間隙=(432フィート/分)(12インチ/フィート)/60sec/分)/1.25インチ=69sec−1
【0045】
【表2】

【0046】
(実施例1)
連続プロセスにおいて、2.5重量%の触媒供給物(1.65:1のモル比のAlCl:TMA・HCl)と共に、3000グラム/時の流量で1−デセンを1ガロンの攪拌槽型反応器に供給した。反応器は外部及び内部冷却コイルを装備していた。1−デセンの供給物は31から61ppmの水を含んでいた。その容積のほぼ半分になるように反応器のレベルを制御し、そのために滞留時間は27から30分間であった。内部攪拌機を432フィート/分の先端速度で運転して反応器を攪拌した。反応器攪拌機を660rpmに設定した。圧力30psigで酸素(残りは窒素)が21%のヘッドスペースの下で、反応セクションを19から22℃に制御した。反応器流出物を水に入れて冷却して触媒を失活させた。モノマー及び2量体の含量を約2重量パーセント未満に設定して、得られた生成物を蒸留した。水で冷却した生成物のモノマー変換率を、ガスクロマトグラフィーを用いて求めた。この実施例及び後の実施例による、水で冷却した生成物のモノマー変換率パーセントと、蒸留した生成物の性質を下の表3に記載する。
【0047】
(実施例2)
反応器の攪拌以外は、実施例1での条件で繰り返した。この実施例では、反応器は、Tuthillのギアポンプ(9174S型)を備える、ポンプの中を通るループを含んでおり、先端速度は236フィート/分であった。下で表3に示すように、剪断速度の増大により、1−デセンの変換率と粘度が増加した。
【0048】
(実施例3)
高剪断ミキサー(ポンプの中を通るループで使用した)を追加したこと以外は、実施例2での条件で繰り返した。高剪断ミキサー(Silversonの150L型)は1馬力のモーターを装備し、ローターの直径は1.5インチであった。2880rpmでの先端速度は1130フィート/分である。2880rpmでの公称の流量は1.6ガロン/分である。方形の穴をもつ高剪断スクリーンをミキサーに装着し、ミキサーのローター/ステーターの間隙における概算剪断速度は44,960sec−1であった。ステーター間隙は0.003インチである。下で表3に示すように、剪断速度の増大により、やはり1−デセンの変換率と粘度が増加した。表3に列挙した装置は、その前の各実施例に追加されている。
【0049】
【表3】

【0050】
(実施例4)
高剪断オリゴマー化での触媒の液滴の大きさ
以下の実施例では、剪断の関数として触媒液滴の大きさを求めるために、試料が如何にして得られ分析されたかを記載する。678グラムの1−デセンと13.5グラムの触媒を、1ガロンの攪拌槽型反応器に入れた。反応器を、15psigの窒素のヘッドスペースの下で、16.9℃に保った。反応器攪拌機を660rpmに設定した。触媒を加えた後20分で、第1の試料を抜き取った。次に、反応器の内容物がポンプの中を通るループ(すでに記載したギアポンプを含んでいた)を通して流れるようにした。この剪断方式を30分間保った。反応器の温度は17.6℃までわずかに上昇した。最初に触媒を投入した後50分で、ポンプを回るループに、Ththillギアポンプに加えて、すでに記載した高剪断ミキサーを導入した。温度は19.6℃まで上昇した。高剪断ミキサーの導入後20分で、第2の試料を抜き取った。
【0051】
透過光顕微鏡を用いて、低剪断及び高剪断による混合後の触媒液滴の大きさを見た。低剪断試料からの触媒液滴については、試料バイアルの底に沈むまで放置し、その後ピペットで捕集し、ガラススライドに移した。数滴の高剪断試料液を、ガラススライド上に載せた。どちらの試料でも、カバースライドを使用しなかった。目的は、液滴の凝集体の大きさでなく、1個の液滴の大きさを求めることであった。下の表4に、低剪断及び高剪断の試料について、各大きさ範囲内にある液滴の頻度パーセンテージが要約されている。
【0052】
【表4】

【0053】
結果は、高剪断試料では100%が100ミクロン以下の液滴からなることを示している。比較すると、低剪断試料の液滴の約43%が100ミクロンを超える大きさであった。
【0054】
実施例により示されているように、乳化することによりイオン性液体触媒の液滴の大きさが小さくなるので、反応ゾーンにおいて接触可能なイオン性液体触媒の表面積を増大させることができる。エマルジョンにおけるイオン性液体触媒の増加した表面積は、変換率を増加させること、及び/又は、PAO生成物の粘度指数(VI)を増大させることによって、触媒活性を向上させることができる。別の言い方をすると、相溶しないイオン性液体触媒と(複数の)反応物との乳化は、生成物を特定の粘度にするのに必要とされ得る触媒の量を減少させる(即ち、より少ない触媒を用いて、同量の接触可能な表面積が得られる)ことによって、触媒の有効性を向上させる。
【0055】
上の説明において、類似の部分は、本明細書及び図の全体を通してそれぞれ同じ参照番号で示されている。図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。本発明の特定の特徴は、特に誇張して拡大して、或いは、いくらか概略的な形で示されていることがあり、通常の要素のいくらかの詳細は分りやすさと簡潔さのために示されていないことがある。本開示は様々な形の実施形態が可能である。本開示は本発明の原理の例示であると見なされるべきであり、本明細書に例示され記載されているものに本発明を限定しようとするものではないという理解の下に、本開示の具体的な実施形態が図に示され、また本明細書に詳細に記載されている。所望の結果が得られるように、上に記載された実施形態の様々な教示を、別々に、或いは適切に組み合わせて、用い得ることが十分に理解されるべきである。特に、本明細書に開示されている、イオン性液体触媒反応に高剪断混合を加える本発明の方法とシステムは、変換された化学反応物を反応生成物が含む適切なイオン性液体触媒反応によって使用され得る。望ましい一実施形態において、イオン性液体触媒反応に高剪断混合を加える本開示の方法とシステムは、イオン性液体系触媒システムの存在の下で、モノマー又はモノマー混合物からPAOを製造するオリゴマー化反応に向けられており、上の詳細な説明はこの実施形態に重点を置いているが、本発明にはフリーデル−クラフツアルキル化反応のような反応を含めてより広い応用があり得ると理解されている。本発明の少数の実施形態だけが本明細書において記載されたが、本開示の精神と範囲から逸脱することなく、本開示は別の多くの特定の形で実施され得るということが理解されるべきである。含まれている実施例は例示であって限定と見なされるべきでなく、本開示は、本明細書に記載された詳細に限定されるべきでなく、添付の請求範囲の範囲内で、それらの対応物(equivalent)の最大限の範囲に沿って、改変され得る。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】水素化ポリアルファオレフィン生成物の製造のためのプロセス内に組み入れられた、イオン性液体触媒反応に高剪断混合を加えるシステムの一実施形態のプロセスフロー概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性液体触媒を反応ゾーンに存在する1種又は複数の液体成分に乳化させることを含む、イオン性液体触媒の活性を向上させる方法。
【請求項2】
乳化が、反応ゾーンの前で、反応ゾーン内で、反応ゾーンの外で、或いはこれらの組合せにより実施される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
乳化が、イオン性液体触媒と1種又は複数の反応物とを含む供給物の流れで実施される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
乳化が反応器で実施される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
乳化が、反応ゾーンの外にある循環ループで実施される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
乳化が、1種又は複数の液体成分と共にイオン性液体触媒に機械的エネルギーを加えることにより実施される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
乳化が、剪断混合により実施される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
剪断混合が、約200sec−1以上の大きな剪断速度で実施される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
反応の変換率を望ましく保つために剪断量を制御することをさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項10】
剪断量が反応温度を望ましく保つために制御される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
剪断量が所望の反応生成物の物理的性質を望ましく保つために制御される請求項9に記載の方法。
【請求項12】
乳化が、イオン性液体触媒の液滴の大きさを小さくすることにより、反応ゾーンにおいて接触可能なイオン性液体触媒の表面積を増大させる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
反応ゾーン内の反応がアルキル化反応である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
アルキル化反応がフリーデル−クラフツ反応である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1種又は複数の液体成分がベンゼン、トルエン、キシレン、又はナフタレンを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
反応ゾーン内の反応が重合反応である請求項1に記載の方法。
【請求項17】
反応がオリゴマー化反応である請求項1に記載の方法。
【請求項18】
1種又は複数の液体成分が1種又は複数のモノマー或いはこれらの混合物を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
導入され、反応ゾーンに存在するイオン性液体触媒の重量パーセントが約7.5重量%未満である請求項17に記載の方法。
【請求項20】
反応ゾーンに存在するイオン性液体触媒の重量パーセントが約20パーセント以上削減される請求項17に記載の方法。
【請求項21】
モノマーが、約4から約20個の炭素原子をもつアルファオレフィン、或いはこれらの混合物を含む請求項18に記載の方法。
【請求項22】
モノマーが、約10から約12個の炭素原子をもつアルファオレフィンを含む請求項18に記載の方法。
【請求項23】
反応の変換率を望ましく保つために剪断量を制御することをさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項24】
剪断量が、反応ゾーンの温度により、ポリアルファオレフィン生成物を分析することにより、或いは、これらを組み合わせて決められる請求項23に記載の方法。
【請求項25】
100℃で約2から約12cStの粘度をもつポリアルファオレフィン生成物を回収することをさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項26】
100℃で約12から約40cStの粘度をもつポリアルファオレフィン生成物を回収することをさらに含む請求項24に記載の方法。
【請求項27】
100℃で約40から約100cStの粘度をもつポリアルファオレフィン生成物を回収することをさらに含む請求項24に記載の方法。
【請求項28】
得られるエマルジョンが、約100ミクロン以下の直径のイオン性液体触媒液滴を含む請求項1に記載の方法。
【請求項29】
反応ゾーンにモノマー供給物と削減された量のイオン性液体触媒とを導入すること、また、反応ゾーンに存在する剪断量を、モノマーの変換反応を望ましく保つために制御することを含む方法。
【請求項30】
イオン性液体触媒をモノマーに乳化させることを含む、モノマーをポリアルファオレフィンにオリゴマー化する方法。
【請求項31】
イオン性液体触媒及びモノマーが反応器への再循環ループにおいて乳化される請求項30に記載の方法。
【請求項32】
イオン性液体触媒及びモノマーが、反応器に配置されたミキサーにより乳化される請求項30に記載の方法。
【請求項33】
得られるエマルジョンが、モノマーに分散した約100ミクロン以下の直径のイオン性液体触媒液滴を含む請求項30に記載の方法。
【請求項34】
高剪断の下でイオン性液体触媒をモノマーに混合することを含む、モノマーをポリアルファオレフィンにオリゴマー化する方法。
【請求項35】
1種又は複数の液体成分とイオン性液体触媒とを受け入れるように設計された反応器;
液体成分とイオン性液体触媒とに高剪断を加えるために反応器に連結しているデバイス;及び
液体成分とイオン性液体触媒とに加える剪断量を、変換反応を保つために制御するように設計され、前記の高剪断を加えるためのデバイスに連結しているコントローラ;
を備える触媒反応システム。
【請求項36】
高剪断を加えるためのデバイスがポンプである請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
ポンプが超音波ポンプである請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
ポンプがインラインスタティックミキサーに連結している請求項36に記載のシステム。
【請求項39】
ポンプが、反応器への、触媒と化学反応物を合わせた供給物ラインにある請求項36に記載のシステム。
【請求項40】
ポンプが反応器の周りの循環ループにある請求項36に記載のシステム。
【請求項41】
材料を高速度で回転しているスクリーンに強制的に通す時に、ポンプが流体剪断を加える請求項36に記載のシステム。
【請求項42】
反応器がその中に配置されたミキサーを備える請求項35に記載のシステム。
【請求項43】
ミキサーが高剪断を加えるためのデバイスである請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
ミキサーが回転インペラー、ステーター/ローター、或いは、これらの組合せである請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
変換反応がモノマーをポリアルファオレフィンにオリゴマー化することを含む請求項35に記載のシステム。

【図1】
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【公表番号】特表2007−509750(P2007−509750A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538372(P2006−538372)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/036188
【国際公開番号】WO2005/042151
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(502303175)シェブロン フィリップス ケミカル カンパニー エルピー (42)
【Fターム(参考)】