説明

イオン性重合体を含むレジスト下層膜形成組成物及びそれを用いたレジストパターンの形成方法

【課題】イオン性重合体を含むレジスト下層膜形成組成物であって、帯電防止機能及び溶剤耐性を有するレジスト下層膜を形成することができる該組成物及び該組成物から形成されるレジスト下層膜を用いたレジストパターンの形成方法の提供。
【解決手段】下記式(1):


で表される構造単位[a]及び[b]を有するイオン性重合体、架橋剤、架橋反応を促進させる化合物及び有機溶媒を含む、レジスト下層膜形成組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト下層膜形成組成物及び該組成物から形成されるレジスト下層膜を用いたレジストパターンの形成方法に関し、より詳細には、イオン性重合体を含むレジスト下層膜形成組成物であって、帯電防止機能及び溶剤耐性を有するレジスト下層膜を形成することができる該組成物及び該組成物から形成されるレジスト下層膜を用いたレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体デバイスの製造において、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。前記微細加工はシリコンウエハーの上にフォトレジスト組成物の薄膜を形成し、その上に半導体デバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線などの活性光線を照射し、現像し、得られたレジストパターンを保護膜としてシリコンウエハーをエッチング処理する加工法である。
そこで、従来より、様々なレジスト下層膜形成組成物が報告されている。
【0003】
半導体プロセスでのフォトリソグラフィー用マスクの作製及び次世代の先端微細加工技術の候補の一つとして、電子線(EB:Electron Beam)リソグラフィーがある。電子線リソグラフィーは、微細パターン形成、レジスト下の基板からの定在波による影響がない等、光リソグラフィーに対して優位性がある。
しかしながら、電子線リソグラフィー技術においては電子線の露光時、レジスト表面に電子がチャージアップしやすいという問題がある。
【0004】
ところで、イオン液体は難燃性・不揮発性・高極性・高イオン伝導性・高耐熱性などの性質を有していることから、様々な電気化学デバイスへの応用が期待されている液体である。
そこで、帯電防止策としてこのイオン液体のイオン伝導性を利用すべく、イオン液体を含ませた、電子線レジストの上層に帯電防止膜を形成するための帯電防止膜形成組成物が提案されている(特許文献1)。しかしながら、該組成物は電子線レジストの上層に帯電防止膜を形成することにより、電子線レジスト表面のチャージアップを防止するものに過ぎない。そして該組成物は架橋剤を含むものではなく、成膜時に架橋させず、形成された帯電防止膜は、現像液により除去される。また、前記イオン伝導性の別の利用方法として、イオン性モノマーである構成単位が重合したものが20〜100mol%を占めるポリマーを用いた帯電防止膜形成用の電離放射線硬化性組成物も提案されている(特許文献2)。しかし、該組成物は電離放射線(例えば、紫外線)を用いて硬化させて帯電防止膜を形成するものであり、特許文献2はかかる組成物の電子線リソグラフィーの適用について示唆を与えるものでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−020046号公報
【特許文献2】特開2006−045425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子線リソグラフィー技術においては上記問題の他に、電子線露光時において基板からの電子線の後方散乱により、リソグラフィーの精度低下を引き起こし、また電子線露光に
よる微細化に伴いレジストパターンが倒れてしまうという問題もある。
【0007】
ここで、この問題を解決する一案として、レジスト下層膜に帯電防止機能を付与することが考えられる。しかしながら、現在までに様々なレジスト下層膜形成組成物が報告されているが、帯電防止機能が付与されたレジスト下層膜を形成することが可能なレジスト下層膜形成組成物は提案されていない。また、ただ単にレジスト下層膜に帯電防止機能を付与すれば十分というわけではなく、帯電防止機能を有すると共に溶剤耐性、レジスト下層膜から発生する昇華物の抑制、及び高精度の良好なレジストパターンの形成を可能にする等の電子線リソグラフィー等向けのレジスト下層膜に要求される一般特性を満たす必要もある。
【0008】
そこで、本発明は、上記の事情に基づきなされたものであり、その解決しようとする課題は、帯電防止機能を有し、かつレジスト下層膜に要求される特性を満たすレジスト下層膜を形成することができるレジスト下層膜形成組成物及び該組成物から形成されるレジスト下層膜を用いたレジストパターンの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、下記式(1)で表される構造単位[a]及び[b]を有するイオン性重合体をレジスト下層膜形成組成物に含ませることにより、該組成物から形成されるレジスト下層膜に帯電防止機能が付与されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される構造単位[a]及び[b]を有するイオン性重合体、架橋剤、架橋反応を促進させる化合物及び有機溶媒を含む、レジスト下層膜形成組成物である。
【化1】

(式中、R1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素原子数3乃至12のアルキレン基又は−(CH2CH2O)m(CH2n−(mは1乃至7の整数、nは1乃
至3の整数)で表される2価の連結基を表し、R3はメチル基又はエチル基を表し、X-はイミド、ハロゲン、カルボキシラート、スルファート、スルホナート、チオシアナート、アルミナート、ボラート、ホスファート、ホスフィナート、アミド、アンチモナート及びメチドからなる群から選択されるアニオンを表し、Aは架橋部位を有する基を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明は、レジスト下層膜形成組成物に上記式(1)で表されるイオン性重合体を含ませることで、電子線の散乱を防ぐことが可能な帯電防止機能を有するレジスト下層膜を提供することができる。
また、本発明のレジスト下層膜形成組成物は、優れた溶剤耐性を有するレジスト下層膜を形成することができ、かつ該レジスト下層膜を形成する際に発生する昇華物量が上記式(1)で表されるイオン性重合体を含まない場合と同等又はそれ以下に抑制可能であるという効果が得られる。
さらに、本発明は、上述の効果・性能を有するレジスト下層膜の形成により、高精度の良好なレジストパターンを形成することができる。
また、本発明のレジスト下層膜形成組成物は、上記式(1)で表されるイオン性重合体及び、当該イオン性重合体とは異なるポリマーを含ませることで、レジスト下層膜の帯電防止機能、溶剤耐性及び昇華物の抑制を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1で調製したレジスト下層膜形成組成物を用いて形成されたレジスト下層膜の断面SEM像において、倍率を1000倍から400倍に縮小した直後に撮影した写真である。
【図2】図2は、実施例2で調製したレジスト下層膜形成組成物を用いて形成されたレジスト下層膜の断面SEM像において、倍率を1000倍から400倍に縮小した直後に撮影した写真である。
【図3】図3は、実施例3で調製したレジスト下層膜形成組成物を用いて形成されたレジスト下層膜の断面SEM像において、倍率を1000倍から400倍に縮小した直後に撮影した写真である。
【図4】図4は、実施例4で調製したレジスト下層膜形成組成物を用いて形成されたレジスト下層膜の断面SEM像において、倍率を1000倍から400倍に縮小した直後に撮影した写真である。
【図5】図5は、比較例1で調製したレジスト下層膜形成組成物を用いて形成されたレジスト下層膜の断面SEM像において、倍率を1000倍から400倍に縮小した直後に撮影した写真である。
【図6】図6は、実施例1で調製したレジスト下層膜形成組成物を用いて形成されたレジスト下層膜上のレジストパターンの断面SEM像である。
【図7】図7は、実施例2で調製したレジスト下層膜形成組成物を用いて形成されたレジスト下層膜上のレジストパターンの断面SEM像である。
【図8】図8は、実施例3で調製したレジスト下層膜形成組成物を用いて形成されたレジスト下層膜上のレジストパターンの断面SEM像である。
【図9】図9は、実施例4で調製したレジスト下層膜形成組成物を用いて形成されたレジスト下層膜上のレジストパターンの断面SEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、上記式(1)で表される構造単位[a]及び[b]を有するイオン性重合体、架橋剤、架橋反応を促進させる化合物及び有機溶媒を含む。また、本発明のレジスト下層膜形成組成物は、さらに界面活性剤等を含ませることもできる。
【0013】
本発明のレジスト下層膜形成組成物における有機溶媒を除く成分の割合は、例えば0.1〜15質量%、また1.0〜10.0質量%である。
【0014】
以下、本発明のレジスト下層膜形成組成物について詳細に説明する。
<イオン性重合体>
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるイオン性重合体は、下記式(1)で表される構造単位[a]及び[b]を有する。このイオン性重合体を含むことにより、本発明のレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜に帯電防止機能を付与することが可能となる。
【化2】

(式中、R1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素原子数3乃至12のアルキレン基又は−(CH2CH2O)m(CH2n−(mは1乃至7の整数、nは1乃
至3の整数)で表される2価の連結基を表し、R3はメチル基又はエチル基を表し、X-はイミド、ハロゲン、カルボキシラート、スルファート、スルホナート、チオシアナート、アルミナート、ボラート、ホスファート、ホスフィナート、アミド、アンチモナート及びメチドからなる群から選択されるアニオンを表し、Aは架橋部位を有する基を表す。)
【0015】
前記イオン性重合体における、前記構造単位[a]及び[b]の割合は、通常10:90〜80:20質量%、好ましくは20:80〜70:30質量%である。[a]で表されるイオン性部位を有する構造単位の割合が少ないと、レジスト下層膜に帯電防止機能を十分に付与することができないからである。
【0016】
前記構造単位[a]において、R2が炭素原子数3乃至12のアルキレン基又は−(CH2CH2O)m(CH2n−(mは1乃至7の整数、nは1乃至3の整数)で表される2価の連結基であることにより、本発明のレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜は、帯電防止機能を発揮することができる。帯電防止性の点で好ましくは、R2は炭
素原子数6乃至8のアルキレン基である。
【0017】
また、アニオンであるX-としては、例えば、(CF3SO22-、(CF3CF2SO22-、Cl-、Br-、CH3COO-、CF3COO-、CF3CF2CF2COO-、CF3
SO3-、CF3CF2CF2CF2SO3-、SbF6-が挙げられる。その中でも、融点が低く、耐熱性が高い点で、(CF3SO22-[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミ
ドアニオン]が好ましい。
【0018】
前記架橋部位を有する基とは、架橋反応をすることが可能な官能基を有する基をいい、そのような官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、エステル基、クロルスルホン基、エポキシ基、イソシアネート基、メチロール基、スルホン基、又はメルカプト基を挙げることができる。好ましくは、ヒドロキシ基、カルボキシル基又はアミノ基である。
【0019】
前記構造単位[b]は、例えば、下記式:
【化3】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、A’は直鎖状又は分岐状の炭素原子数1乃
至4のヒドロキシアルキル基を表す。)で表される構造単位[b−1]とすることができる。
【0020】
前記イオン性重合体において、上記構造単位[a]はイオン性部位を有し、上記構造単位[b]は架橋部位を有する。
上述のような本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるイオン性重合体を得るために必要なイオン性部位を有するモノマー及び架橋部位を有するモノマーとしては、例えば、下記一般式(I)及び(II)が挙げられる。
【化4】

(R1、R2、R3、及びAは各々、上記式(1)に記載の定義と同義である。)
【0021】
上記一般式(I)で表されるイオン性部位を有するモノマーの合成方法は既知であり、例えば、Hong Chen and Yossef A.Elabd,Macromolecules 2009,42,3368−3373に開示されている。
【0022】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるイオン性重合体の合成方法としては、特に限定されないが、例えば、有機溶媒中で、上記式(I)で表されるイオン性部位を有するモノマー及び上記式(II)で表される架橋部位を有するモノマーに重合開始剤を加えて加熱重合を行い、合成することができる。
【0023】
前記重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシドを挙げることができ、通常50乃至80℃に加熱して重合できる。反応時間としては通常2乃至100時間、または5乃至30時間である。
【0024】
また、上記イオン性重合体を合成する際に、上記式(I)で表されるイオン性部位を有するモノマー及び上記式(II)で表される架橋部位を有するモノマーの仕込み比は、通常20:80〜80:20質量%、好ましくは30:70〜70:30質量%である。
【0025】
さらに、本発明のレジスト下層膜形成組成物には、前記イオン重合体の他に、当該イオン性重合体とは異なるアクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエステル、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、天然高分子、メラミン樹脂、又はケイ素樹脂等を含ませることができる。レジスト下層膜の溶剤耐性及び帯電防止機能の観点から、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、及びポリエステルが好ましい。
【0026】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に前記イオン性重合体とは異なるポリマーを含ませる場合、該イオン性重合体と該ポリマーの含有比は、通常20:80〜99:1質量%で
ある。イオン性重合体の割合が少なすぎると、レジスト下層膜に帯電防止機能を十分に付与することができないからである。一方、イオン性重合体の割合が100質量%、すなわち該イオン性重合体とは異なるポリマーを含まなくてもよい。
【0027】
前記イオン性重合体は、本発明のレジスト下層膜形成組成物の有機溶媒を除く成分中の含有量に基づいて、例えば1.0〜90質量%、または10〜85質量%である。この割合が過小である場合及び過大である場合には、帯電防止機能及び溶剤耐性が得られにくくなることがあるからである。
【0028】
<架橋剤>
架橋剤は、例えばメチロール基又はアルコキシメチル基で置換された窒素原子を分子内に2乃至4個有する含窒素化合物である。架橋剤を添加することにより、架橋剤が上記イオン性重合体又はイオン性重合体と当該イオン性重合体とは異なるポリマーと反応し、架橋することにより形成されるレジスト下層膜は強固になる。そして、有機溶剤に対する溶解性が低いレジスト下層膜となる。架橋剤は一種のみを使用してもよく、また二種以上を組み合わせて使用することができる。
前記架橋剤としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(ブトキシメチル)尿素、及び1,1,3,3−テトラキス(メトキシメチル)尿素が挙げられる。
【0029】
前記架橋剤の配合量は、本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるイオン性重合体に対し、例えば、1質量%以上35質量%以下の割合で添加することができる。この割合が過小である場合や過大である場合には、レジスト下層膜の溶剤耐性が得られにくくなるからである。
【0030】
<架橋反応を促進させる化合物>
架橋反応を促進させる化合物は、イオン性重合体と架橋剤又はイオン性重合体と当該イオン性重合体とは異なるポリマー及び架橋剤の架橋反応を促進させる化合物をいい、例えば、スルホン酸化合物が挙げられる。
前記スルホン酸化合物としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウム−p−トルエンスルホナート、カンファースルホン酸、5−スルホサリチル酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸が挙げられる。
【0031】
前記架橋反応を促進させる化合物の配合量は、本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるイオン性重合体に対し、例えば0.1質量%以上10質量%以下の割合で添加することができる。この割合が過少である場合は、架橋反応を十分に促進させることができないからである。
【0032】
<有機溶媒>
有機溶媒は上記の各成分を溶解させることができれば特に限定されず、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、メトキシブタノール類、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタ
ノン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドンを用いることができる。また、プロピレングリコールモノブチルエーテル及びプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の高沸点溶媒を上記有機溶媒に混合して使用することもできる。これらの有機溶媒は、単独又は2種以上の組合せで使用することができる。
【0033】
さらに、本発明のレジスト下層膜形成組成物は、必要に応じてレオロジー調整剤、接着補助剤、界面活性剤などを添加することができる。
【0034】
レオロジー調整剤は、主にレジスト下層膜形成組成物の流動性を向上させるための目的で添加することができる。レオロジー調整剤としては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソオクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、またはノルマルブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体を挙げることができる。これらのレオロジー調整剤は、レジスト下層膜形成組成物の全組成物100質量%に対して通常30質量%未満の割合で配合される。
【0035】
接着補助剤は、主に基板あるいはレジスト膜とレジスト下層膜の密着性を向上させ、特に現像においてレジスト膜が剥離しないようにするための目的で添加することができる。接着補助剤としては、例えば、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、ビニルトリクロロシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環式化合物、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア等の尿素又はチオ尿素化合物を挙げることができる。接着補助剤は、レジスト下層膜形成組成物の全組成物100質量%に対して通常5質量%未満、好ましくは2質量%未満の割合で配合される。
【0036】
本発明のレジスト下層膜形成組成物には、ピンホールやストレーション等の発生を無くし、表面むらに対する塗布性をさらに向上させるために、界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック
コポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ[登録商標]EF301、同EF303、同EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファック[登録商標]F171、同F173、同R30(DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード[登録商標]AG710、サーフロン[登録商標]S−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、サーフィノール[登録商標](エアープロダクツジャパン(株)製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。界面活性剤は、本発明のレジスト下層膜形成組成物の有機溶媒を除く成分中の含有量に基づいて、通常3質量%以下、好ましくは1質量%、より好ましくは0.5質量%以下の割合で配合される。
【0037】
このように調製されたレジスト下層膜形成組成物(溶液)は、孔径が通常0.2μm、または0.1μm程度のフィルター等を用いて濾過した後、使用することが好ましい。このように調製されたレジスト下層膜形成組成物は、室温で長期間の貯蔵安定性にも優れる。
【0038】
以下、本発明のレジスト下層膜形成組成物の使用について説明する。
【0039】
基板{例えば、酸化珪素膜で被覆されたシリコン等の半導体基板、窒化珪素膜又は酸化窒化珪素膜で被覆されたシリコン等の半導体基板、窒化珪素基板、石英基板、ガラス基板(無アルカリガラス、低アルカリガラス、結晶化ガラスを含む)、ITO膜が形成されたガラス基板等}上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明のレジスト下層膜形成組成物が塗布され、その後、ホットプレート等の加熱手段を用いてベークすることによりレジスト下層膜が形成される。
【0040】
ベーク条件としては、ベーク温度80乃至250℃、ベーク時間0.3乃至60分間から適宜選択され、好ましくは、ベーク温度130乃至250℃、ベーク時間0.5乃至5分間である。ベーク温度が上記範囲より低い場合には、レジスト下層膜における架橋構造が不十分となり、レジスト下層膜がレジストとインターミキシングを起こすことがある。一方、ベーク温度が高すぎる場合は、レジスト下層膜における架橋構造が切断され、レジスト下層膜がレジストとインターミキシングを起こすことがある。
【0041】
本発明のレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜の膜厚は、通常0.01〜3.0μmであり、より好ましくは0.01〜1.0μmである。
【0042】
本発明のレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜は、形成時のベーク条件により架橋部位を有するポリマー中のヒドロキシ基等と架橋剤が反応し、架橋することにより、架橋構造をとった強固な膜となる。このため、本発明のレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜は、レジストとのインターミキシングを起こさないものとなる。そして、該レジスト下層膜は、その上に塗布されるレジスト溶液として、一般的に使用される有機溶剤、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレンセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル
アセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ピルビン酸メチル、乳酸エチル、及び乳酸ブチルに対して溶解性が低いものとなる。
【0043】
次にレジスト下層膜上にレジスト膜が形成される。レジスト膜の形成は一般的な方法、すなわち、レジスト溶液のレジスト下層膜上への塗布及びベークによって行うことができる。
【0044】
本発明のレジスト下層膜形成組成物により得られたレジスト下層膜上に形成されるレジストとしては、光又は電子線に感光するものであればよい。電子線に感光するレジストとしてはネガ型、ポジ型いずれも使用できる。酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーと酸発生剤とを含有する化学増幅型レジスト、酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと酸発生剤とを含有する化学増幅型レジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーと酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物と酸発生剤とを含有する化学増幅型レジスト、電子線によって分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーを含有する非化学増幅型レジスト、電子線によって切断されアルカリ溶解速度を変化させる部位を有するバインダーを含有する非化学増幅型レジストなどがある。
【0045】
また、半導体製造装置の製造に用いるレジストパターンの形成方法において、露光は所定のパターンを形成するためのマスク(レチクル)を通して露光が行われる。但し、電子線露光の場合、マスク(レチクル)を必要としない。露光には、電子線を使用することができ、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、極端紫外線(EUV)を使用することもできる。露光後、必要に応じて露光後加熱(Post Exposure Bake)が行われる。露光後加熱の条件としては、加熱温度80乃至150℃、加熱時間0.3乃至60分間の中から適宜選択される。レジスト下層膜とレジスト膜で被覆された半導体基板を露光し、その後に現像する工程により半導体装置を製造する。本発明のレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜は、露光時にレジスト膜に含まれている架橋反応を促進させる化合物である酸の作用によって、アルカリ性現像液に可溶となる。露光を行った後、アルカリ性現像液でレジスト膜及びレジスト下層膜両層の一括現像を行うと、そのレジスト膜及びレジスト下層膜の露光された部分はアルカリ溶解性を示すため、除去される。
【0046】
レジスト膜の現像に用いる現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一級アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二級アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。さらに、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びコリンである。
【0047】
現像の条件としては、現像温度5乃至50℃、現像時間10乃至300秒から適宜選択される。本発明のレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜は、フォトレジストの現像に汎用されている2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液
を用いて、室温で容易に現像を行うことができる。
【0048】
本発明のレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜は、基板とレジスト膜との相互作用を防止するための層、レジスト膜に用いられる材料又はレジストへの露光時に生成する物質の半導体基板への悪影響を防ぐ層、ベーク時に半導体基板から生成する物質の上層レジスト膜への拡散を防ぐ機能を有する層、及び誘電体層によるレジストのポイズニング効果を減少させるためのバリア層等として使用することも可能である。
【実施例】
【0049】
以下に実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。
【0050】
[ポリマーの重量平均分子量の測定]
本願明細書の下記合成例に示す重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する)による測定結果である。測定には東ソー(株)製GPC装置を用い、測定条件等は次の通りである。また、本願明細書の下記合成例に示す分散度は、測定された重量平均分子量、及び数平均分子量から算出した。
GPCカラム:Shodex[登録商標] Asahipak[登録商標](昭和電工(株)製)
カラム温度:40℃
溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)
流量:0.6ml/分
標準試料:標準ポリスチレン試料(東ソー(株)製)
ディテクター:RIディテクター(東ソー(株)製、RI−8020)
[レジスト下層膜の膜厚の測定]
本願明細書の表1に記載の膜厚は、膜厚測定器NanoSpec/AFT5100(Nanometrics社製)を用いて測定した。
【0051】
<合成例1>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)10.0g、5−ヒドロキシイソフタル酸(東京化成工業(株)製)6.6g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(関東化学工業(株)製)0.67gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル68.9gに加え溶解させた。反応容器を窒素置換後、135℃で4時間反応させ、ポリマー溶液を得た。GPC分析を行ったところ、得られた下記式(2)で表される構造単位を有するポリマーは、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量23,200、分散度は6.5であった。得られたポリマーは、末端にOH基を有すると推定される。
【化5】

【0052】
<合成例2>
エポキシ樹脂(HP−4032D、DIC(株)製)7.0g、5−ヒドロキシイソフタル酸(東京化成工業(株)製)4.65g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド
(関東化学工業(株)製)0.47gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル48.5gに加え溶解させた。反応容器を窒素置換後、135℃で4時間反応させ、ポリマー溶液を得た。GPC分析を行ったところ、得られた下記式(3)で表される構造単位を有するポリマーは、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量23,600、分散度は3.8であった。得られたポリマーは、末端にOH基を有すると推定される。
【化6】

【0053】
<合成例3>
[イオン性モノマーの合成]
【化7】

ジクロロメタン(脱水)(関東化学(株)製)66.33gに6−ブロモ−1−ヘキサノール(東京化成工業(株)製)19.01g及びトリエチルアミン(関東化学(株)製)10.09gを加えた溶液に、メタクリロイルクロリド(東京化成工業(株)製)10.45gをジクロロメタン(脱水)13.27gに溶解させた溶液を冷却しながら滴下し、一晩反応させた。反応溶液を純水により数回洗浄し溶媒を蒸発させ、硫酸マグネシウム(無水)
5gを加えて上記式Aで表される反応物を脱水した。
次に、上記式Aで表される反応物18.69gに対し重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(東京化成工業(株)製)0.1gを加え、1−エチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)7.21gを滴下しながら40℃のオイルバスを用いて24時間反応させた。得られた反応溶液をジエチルエーテルで数回洗浄し、溶媒を蒸発させ目的の上記式Bで表されるモノマーを得た。収率は約62%であった。
次に上記式Bで表されるモノマー21.33gを純水50gに溶解させ、冷却しながらビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)リチウム(東京化成工業(株)製)17.73gを加え、24時間反応させた。得られた反応物を純水で数回洗浄し、ジクロロメタン(脱水)に溶解させ、溶媒を蒸発させ、最終目的物である上記式Cで表される化合物28.92gを得た。収率は約85%であった。
【0054】
[イオン性重合体の合成]
【化8】

上記式Cで表される化合物6.00g、上記式Dで表される化合物である2−ヒドロキシプロピルメタクリレート14.00g(東京化成工業(株)製)及び乳酸エチル(EL)10gを加えた後、フラスコ内を窒素にて置換し70℃まで昇温させた。重合開始剤として乳酸エチル19.8gに溶解させたアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.20gを窒素加圧下添加し、24時間反応させ、上記式Eで表されるイオン性重合体を含む生成物が得られた(X=30質量%)。得られた生成物から未反応物を取り除くためジエチルエーテルを用いて再沈殿させ、溶媒を乾燥させ、上記式Eで表されるイオン性重合体20.07gを得た。得られた上記式Eで表されるイオン性重合体を乳酸エチルに再び溶解させ、イオン性重合体の溶液を得た。得られた溶液の粘度は5.54mPa・s(東機産業(株)製、VISCOMETER TV20)であった。
【0055】
<実施例1>
上記合成例1で得られたポリマー0.17gを含む溶液0.91g及び上記合成例3で得られたイオン性重合体0.51gを含む溶液3.00gに、ピリジニウム−p−トルエンスルホナート(東京化成工業(株)製)0.0053g及びテトラメトキシメチルグリコールウリル(商品名:POWDERLINK[登録商標]1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.1696gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル8.11g及び乳酸エチル16.99gを加え溶解させた。その後孔径0.02μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物(溶液)とした。
【0056】
<実施例2>
上記合成例2で得られたポリマー0.17gを含む溶液0.92g及び上記合成例3で得られたイオン性重合体0.51gを含む溶液3.00gに、ピリジニウム−p−トルエンスルホナート(東京化成工業(株)製)0.0053g及びテトラメトキシメチルグリコールウリル(商品名:POWDERLINK[登録商標]1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.17gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル8.11g及び乳酸エチル16.99gを加え溶解させた。その後孔径0.02μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物(溶液)とした。
【0057】
<実施例3>
下記式(4)で表される構造を有するポリマー(ポリスチレン換算にて重量平均分子量10,000)を含む溶液0.54g(ポリマー濃度21質量%)及び上記合成例3で得られたイオン性重合体0.34gを含む溶液2.00gに、ピリジニウム−p−トルエンスルホナート(東京化成工業(株)製)0.0035g及びテトラメトキシメチルグリコールウリル(商品名:POWDERLINK[登録商標]1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.11gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル5.40g及び乳酸エチル11.33gを加え溶液とした。その後孔径0.02μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物(溶液)とした。
【化9】

【0058】
<実施例4>
上記合成例3で得られたイオン性重合体0.34gを含む溶液2.00gに、5−スルホサリチル酸0.017g及びテトラメトキシメチルグリコールウリル(商品名:POWDERLINK[登録商標]1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.08gを混合し、乳酸エチル15.55gを加え溶解させた。その後孔径0.02μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物(溶液)とした。
【0059】
<比較例1>
上記合成例1で得られたポリマー0.37gを含む溶液2.00gに、5−スルホサリチル酸0.0091g及びテトラメトキシメチルグリコールウリル(商品名:POWDERLINK[登録商標]1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.09gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル11.00g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.50gを加え溶解させた。その後孔径0.02μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物(溶液)とした。
【0060】
<比較例2>
上記合成例2で得られたポリマー0.37gを含む溶液2.00gに、5−スルホサリチル酸0.0092g及びテトラメトキシメチルグリコールウリル(商品名:POWDERLINK[登録商標]1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.09gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル11.1g及びプロピレングリコール
モノメチルエーテルアセテート1.52gを加え溶解させた。その後孔径0.02μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物(溶液)とした。
【0061】
<比較例3>
下記式(4’)で表される構造を有するポリマー(ポリスチレン換算にて重量平均分子
量60,000)を含む溶液5.03g(ポリマー濃度15質量%)に、ピリジニウム−
p−トルエンスルホナート(東京化成工業(株)製)0.012g、ビスフェノールS(東京化成工業(株)製)0.024g及びテトラメトキシメチルグリコールウリル(商品名:POWDERLINK[登録商標]1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.19g、プロピレングリコールモノメチルエーテル12.67g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート7.17gを加え溶液とした。その後孔径0.02μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物(溶液)とした。
【化10】

【0062】
[レジスト溶剤への溶出試験]
実施例1乃至4並びに比較例1及び2で調製されたリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を、それぞれ、スピナーにより、半導体基板であるシリコンウエハー上に塗布した。そのシリコンウエハーをホットプレート上に配置し、205℃で1分間ベークし、レジスト下層膜を形成した。これらのレジスト下層膜をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)=7/3(質量比)に浸漬し、その溶剤に不溶であるか否かの確認実験を行った。
【0063】
【表1】

【0064】
表1の結果より、本発明の実施例1乃至4のレジスト下層膜形成組成物を用いて形成されたレジスト下層膜は、いずれも膜厚変化が1nm以下(初期膜厚の1%以下)であるこ
とから、溶剤耐性を有することが明らかである。
【0065】
[昇華物量の測定]
直径4インチのシリコンウエハーに、前記実施例1乃至4で調製したレジスト下層膜形成組成物及び比較対象として比較例3で調製したレジスト下層膜形成組成物を、スピンコーターにて、1,500rpm、60秒間でそれぞれ塗布した。レジスト下層膜形成組成
物が塗布されたシリコンウエハーを、ホットプレートが一体化した昇華物量測定装置(国際公開第2007/111147号パンフレット参照)にセットして、120秒間ベークし、昇華物をQCM(Quartz Crystal Microbalance)センサー、すなわち電極が形成された水晶振動子に捕集した。QCMセンサーは、水晶振動子の表面(電極)に昇華物が付着するとその質量に応じて水晶振動子の周波数が変化する(下がる)性質を利用して、微量の質量変化を測定することができる。
【0066】
詳細な測定手順は、以下の通りである。
昇華物量測定装置のホットプレートを205℃に昇温し、ポンプ流量を1m3/sに設
定し、最初の60秒間は装置安定化のために放置した。その後直ちに、レジスト下層膜形成組成物が塗布されたシリコンウエハーをスライド口から速やかにホットプレートに乗せ、60秒の時点から180秒の時点(120秒間)の昇華物の捕集を行った。なお、シリコンウエハー上に形成されたレジスト下層膜の当初の膜厚は80nmであった。
【0067】
なお、前記昇華物量測定装置のQCMセンサーと捕集ロート部分の接続となるフローアタッチメント(検出部分)にはノズルを付けずに使用し、そのため、センサー(水晶振動子)との距離が30mmのチャンバーユニットの流路(口径:32mm)から、気流が絞られることなく流入する。また、QCMセンサーには、電極として珪素とアルミニウムを主成分とする材料(AlSi)を用い、水晶振動子の直径(センサー直径)が14mm、水晶振動子表面の電極直径が5mm、共振周波数が9MHzのものを用いた。
【0068】
得られた周波数変化を、測定に使用した水晶振動子の固有値からグラムに換算し、レジスト下層膜形成組成物が塗布されたシリコンウエハー1枚の昇華物量と時間経過との関係を明らかにした。表2に、実施例1乃至4及び比較対象の比較例3における0秒から180秒までの測定装置が示す昇華物量(単位はng:ナノグラム)を記載した。なお、最初の60秒間は装置安定化のために放置した(シリコンウエハーをセットしていない)時間帯であり、測定機器の安定状態を示すために測定装置の示す昇華物量がマイナスの値であってもそのまま読み取った。したがって、シリコンウエハーをホットプレートに載せた60秒の時点から180秒の時点までの測定値がシリコンウエハーの昇華物量に関する測定値である。
【0069】
【表2】

【0070】
表2の結果より、本発明の実施例1乃至4のレジスト下層膜形成組成物から形成されたレジスト下層膜の方が、比較例3のレジスト下層膜形成組成物から形成されたレジスト下層膜より昇華物の発生が抑制されていることが明らかである。
【0071】
[表面抵抗値測定]
帯電防止性能は、フィルムの表面抵抗値と密接に関係し、一般に表面抵抗値が低い程、
帯電防止性能に優れることが知られている。従って、表面抵抗値を測定することで、間接的ではあるが帯電防止能を評価することが可能である。シリコンウエハー上に実施例1乃至4、比較例1及び2で得たレジスト下層膜形成組成物を1500rpmで60秒間スピンコートし、205℃で60秒間ベークしてレジスト下層膜を形成した。
DSM−8103デジタル絶縁計(東亜ディーケーケー(株)製)を用いて表面抵抗値の測定を行った。表3に示すとおり、実施例で得たイオン性重合体を含むレジスト下層膜形成組成物から形成されたレジスト下層膜は、イオン性重合体を含まない比較例のものと比較して抵抗値が1オーダー以上低いことが確認された。
【表3】

【0072】
[帯電防止性能試験]
シリコンウエハー上に実施例1乃至4及び比較例1で得たレジスト下層膜形成組成物をそれぞれスピンコートした。205℃で60秒ベークしてレジスト下層膜を形成した。シリコンウエハーを1cm角にカットし、断面SEM(S−4800、(株)日立製作所製)にて帯電防止性試験を行った。帯電防止性能は一定の加速電圧、引き出し電流下、試料に電子線を照射し、SEM(走査型電子顕微鏡)で得られる像の焼きつきの大小にて帯電防止性の大きさを判断した。加速電圧1.5kV、引き出し電流10μAにて試験を行った。試験には、倍率1000倍で5秒間保った後に倍率を400倍に戻してすぐさま写真撮影を行い、1000倍に拡大時に帯電した像のコントラストを比較した。実施例で得られたイオン性重合体を含むレジスト下層膜では、倍率を拡大、縮小後の像コントラストはイオン性重合体を含まない比較例のものと比較して十分に小さく、帯電防止性能が確認された。もし、試料がチャージアップ(帯電状態)していれば、1000倍の拡大時の映像を400倍に縮小しても1000倍時の映像が黒い像として残存するが、チャージアップしていなければ1000倍時の映像から400倍時の映像にしたとき1000倍時の映像の残像が薄れた映像(残像がつきにくい)が映し出される。実施例1乃至4及び比較例1で得たレジスト下層膜形成組成物を用いた場合の断面SEM像を図1〜5に示す。
【0073】
[レジストパターンの形成]
上記実施例1乃至4及び比較例1で調製したレジスト下層膜形成組成物を、スピナーによりシリコンウエハー上に塗布した。ホットプレート上にて205℃で1分間加熱し、膜厚20〜80nmのレジスト下層膜を形成した。このレジスト下層膜の上に、市販のフォトレジスト溶液(住友化学(株)製、商品名:PAR855)をスピナーにより塗布し、ホットプレート上にて105℃で60秒間加熱してフォトレジスト膜(膜厚0.10μm)を形成した。
【0074】
次いで、(株)ニコン製、NSR−S307E(波長193nm、NA:0.85,σ:0.65/0.93(ANNULAR))のスキャナーを用い、フォトマスクを通して露光を行った。フォトマスクは形成すべきレジストパターンに応じて選択した。露光後、
ホットプレート上、105℃で60秒間露光後加熱(PEB)を行い、冷却後、工業規格の60秒シングルパドル式工程にて、現像液として0.26規定のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像した。レジストパターンの、基板(シリコンウエハー)と垂直方向の断面形状を断面SEMにて観察したところ、目的のレジストパターンが形成されていることが確認できた。実施例1乃至4で調製したレジスト下層膜形成組成物を用いて形成されたレジストパターンの断面SEM像を図6〜9に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

(式中、R1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素原子数3乃至12のアルキレン基又は−(CH2CH2O)m(CH2n−(mは1乃至7の整数、nは1乃
至3の整数)で表される2価の連結基を表し、R3はメチル基又はエチル基を表し、X-はイミド、ハロゲン、カルボキシラート、スルファート、スルホナート、チオシアナート、アルミナート、ボラート、ホスファート、ホスフィナート、アミド、アンチモナート及びメチドからなる群から選択されるアニオンを表し、Aは架橋部位を有する基を表す。)
で表される構造単位[a]及び[b]を有するイオン性重合体、架橋剤、架橋反応を促進させる化合物及び有機溶媒を含む、レジスト下層膜形成組成物。
【請求項2】
前記イオン性重合体における前記構造単位[a]及び[b]の割合が10:90〜80:20質量%である、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
前記架橋部位はヒドロキシ基、カルボキシル基又はアミノ基である、請求項1又は請求項2に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
前記構造単位[b]は下記式:
【化2】

(式中、R1は請求項1と同義であり、A’は直鎖状又は分岐状の炭素原子数1乃至4の
ヒドロキシアルキル基を表す。)で表される構造単位[b−1]である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
前記X-はビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンである、請求項1乃
至請求項4のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
さらに、前記イオン性重合体とは異なるアクリル樹脂、メタクリル樹脂又はポリエステルを含む、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項7】
さらに、界面活性剤を含む、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し、ベークしてレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記レジスト膜で被覆された半導体基板を露光する工程、及び前記露光後に現像する工程、を含む半導体装置の製造に用いるレジストパターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−22191(P2012−22191A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160796(P2010−160796)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】