説明

イオン注入装置

【課題】 複数枚の基板に一括してイオン注入を行うことができ、しかも各基板の面内における注入量分布の均一性を良くすることができるイオン注入装置を提供する。
【解決手段】 このイオン注入装置は、イオンビーム4が導入される注入室8と、基板10をX方向に第1列と第2列との2列に保持するホルダ12と、ホルダ12を水平状態にして基板交換位置48に位置させる機能およびホルダ12を起立状態にしてイオンビーム4の照射領域でX方向に沿って往復直線駆動する機能を有するホルダ駆動装置16とを備えている。更に、二つのロードロック機構20a、20bと、各ロードロック機構20a、20bと基板交換位置48との間で基板10を搬送するアーム32a〜32dを2本ずつ有する二つの基板搬送装置30a、30bを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板(例えば半導体基板)にイオンビームを照射してイオン注入を行うイオン注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転ディスクに複数枚の基板を保持して当該回転ディスクを回転させながら、走査によって幅の広げられたイオンビームを回転ディスク上の一箇所に照射することによって、回転ディスク上の複数枚の基板に一括してイオン注入を行う、いわゆるバッチ式のイオン注入装置が従来から提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−129571号公報(段落0020、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のイオン注入装置には、基板の面内における注入量分布の均一性が良くないという課題がある。
【0005】
これを図17を参照して説明する。92は上記回転ディスク、94は上記基板、90は上記イオンビームである。回転ディスク92は、回転中心93を中心にして、矢印U方向に一定の角速度ωで回転させられる。
【0006】
回転ディスク92上の各基板94に着目すると、各基板94の面内における内側と外側(回転ディスク92の回転中心93に近い方が内側、その反対側が外側)とでは、イオンビーム90との相対的な速度vが半径rに比例して異なる。具体的には、当該速度vは、v=rωで表される。
【0007】
イオンビーム90のビーム電流密度分布はほぼ均一であるので、各基板94に対するイオン注入量は、上記速度vに反比例する。従って、各基板94においては、内側に近い領域RINの方が外側に近い領域ROUT よりも注入量が多いという不均一な注入量分布になる。しかもこの不均一な注入量分布は、回転ディスク92の回転運動によってもたらされるものであるため、回転中心93を中心とする円弧状になる。この不均一な注入量分布の代表例を等高線96で示している。
【0008】
上記のような不均一な注入量分布を、例えばイオンビーム90のビーム電流密度分布を調整することによって補正して均一化するという考えもあるけれども、上記のような複雑な注入量分布を補正することは容易ではない。
【0009】
基板の面内における注入量分布の均一性が良くないと、イオン注入された基板を有効に使用できる部分が減るので、歩留まりが低下する。より具体例を挙げると、半導体基板94の面内に多数の半導体デバイスを形成する工程の一つとしてイオン注入を用いる場合、注入量分布の均一性が良くないと半導体デバイスの特性のばらつきが大きくなるので、半導体デバイス製造の歩留まりが低下する。
【0010】
そこでこの発明は、複数枚の基板に一括してイオン注入を行うことができ、しかも各基板の面内における注入量分布の均一性を良くすることができるイオン注入装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係るイオン注入装置の一つは、真空に排気されイオンビームが導入される注入室と、前記注入室内に設けられていて、前記イオンビームを照射してイオン注入を行う基板をX方向に第1列と第2列との2列に保持するホルダと、前記ホルダを水平状態にして基板交換位置に位置させる機能および前記ホルダを起立状態にして前記イオンビームの照射領域で前記X方向に沿って往復直線駆動する機能を有するホルダ駆動装置と、前記基板を大気側と前記注入室内との間で出し入れするためのものである第1および第2のロードロック機構と、互いに上下に位置していて同じ中心線を中心にして互いに独立して往復旋回可能な2本のアームであって、前記第1のロードロック機構から前記基板交換位置にある前記ホルダの第1列まで基板を搬送する第1のアーム、および、前記基板交換位置にある前記ホルダの第1列から前記第1のロードロック機構まで基板を搬送する第2のアームを有する第1の基板搬送装置と、互いに上下に位置していて同じ中心線を中心にして互いに独立して往復旋回可能な2本のアームであって、前記第2のロードロック機構から前記基板交換位置にある前記ホルダの第2列まで基板を搬送する第3のアーム、および、前記基板交換位置にある前記ホルダの第2列から前記第2のロードロック機構まで基板を搬送する第4のアームを有する第2の基板搬送装置とを備えていることを特徴としている。
【0012】
このイオン注入装置によれば、基板を2列に保持したホルダを、ホルダ駆動装置によってイオンビームの照射領域で往復直線駆動することによって、複数枚の基板に一括してイオン注入を行うことができる。
【0013】
しかも、ホルダおよび基板を往復直線駆動するので、回転ディスクを用いる場合と違って、各基板の面内における基板とイオンビームとの相対的な速度は均一(一様)になる。従って、各基板の面内における注入量分布の均一性を良くすることができる。
【0014】
この発明に係るイオン注入装置の他のものは、真空に排気されイオンビームが導入される注入室と、前記注入室内に設けられていて、前記イオンビームを照射してイオン注入を行う基板をX方向に第1列と第2列との2列に保持するホルダと、前記ホルダを水平状態にして基板交換位置に位置させる機能および前記ホルダを起立状態にして前記イオンビームの照射領域で前記X方向と交差する方向に往復直線駆動する機能を有するホルダ駆動装置と、前記基板を大気側と前記注入室内との間で出し入れするためのものである第1および第2のロードロック機構と、互いに上下に位置していて同じ中心線を中心にして互いに独立して往復旋回可能な2本のアームであって、前記第1のロードロック機構から前記基板交換位置にある前記ホルダの第1列まで基板を搬送する第1のアーム、および、前記基板交換位置にある前記ホルダの第1列から前記第1のロードロック機構まで基板を搬送する第2のアームを有する第1の基板搬送装置と、互いに上下に位置していて同じ中心線を中心にして互いに独立して往復旋回可能な2本のアームであって、前記第2のロードロック機構から前記基板交換位置にある前記ホルダの第2列まで基板を搬送する第3のアーム、および、前記基板交換位置にある前記ホルダの第2列から前記第2のロードロック機構まで基板を搬送する第4のアームを有する第2の基板搬送装置とを備えており、前記基板に照射される際の前記イオンビームは、走査を経てまたは走査を経ることなく、前記ホルダに保持された2列の基板をカバーする寸法を有していることを特徴としている。
【0015】
このイオン注入装置においても、基板を2列に保持したホルダを、ホルダ駆動装置によってイオンビームの照射領域で往復直線駆動することによって、複数枚の基板に一括してイオン注入を行うことができる。
【0016】
しかも、ホルダおよび基板を往復直線駆動するので、回転ディスクを用いる場合と違って、各基板の面内における基板とイオンビームとの相対的な速度は均一(一様)になる。従って、各基板の面内における注入量分布の均一性を良くすることができる。
【0017】
前記ホルダを、前記第1列および第2列内に、それぞれ、複数枚の基板を複数行に保持可能なものとし、かつそれに対応するように、前記第1および第2の基板搬送装置ならびに前記第1および第2のロードロック機構を構成しても良い。
【0018】
前記基板交換位置にあるホルダと前記第1ないし第4のアームとの間の基板の受け渡しを仲介する機能を有する仲介装置を更に備えていても良い。
【0019】
前記基板は、四角形の基板でも良いし、円形の基板でも良い。
【0020】
前記ホルダは、各基板を静電気によってそれぞれ吸着して保持するものであって、平面形状が四角形をしていて各基板のツイスト角に対応した方向に向けて固定された複数の静電チャックを備えていても良い。
【発明の効果】
【0021】
請求項1〜9に記載の発明によれば、基板を2列に保持したホルダを、ホルダ駆動装置によってイオンビームの照射領域で往復直線駆動する構成であるので、複数枚の基板に一括してイオン注入を行うことができる。
【0022】
しかも、ホルダおよび基板を往復直線駆動するので、回転ディスクを用いる場合と違って、各基板の面内における基板とイオンビームとの相対的な速度は均一になる。従って、各基板の面内における注入量分布の均一性を良くすることができる。
【0023】
また、第1および第2のロードロック機構、ならびに、2本のアームをそれぞれ有する第1および第2の基板搬送装置を備えているので、大気側と注入室内との間の基板の出し入れ、および、各ロードロック機構とホルダとの間の基板の搬送を円滑に行うことができる。従ってスループットが向上する。
【0024】
請求項2、4に記載の発明によれば、次の更なる効果を奏する。即ち、前記ホルダを、前記第1列および第2列内に、それぞれ、複数枚の基板を複数行に保持可能なものとし、かつそれに対応するように、前記第1および第2の基板搬送装置ならびに前記第1および第2のロードロック機構を構成しているので、より多くの基板に一括してイオン注入を行うことができると共に、第1および第2の基板搬送装置ならびに第1および第2のロードロック機構において、前記複数行に対応する複数枚の基板を一括して取り扱うことができるので、スループットがより向上する。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、次の更なる効果を奏する。即ち、前記基板交換位置にあるホルダと前記第1ないし第4のアームとの間の基板の受け渡しを仲介する機能を有する仲介装置を更に備えているので、ホルダと第1ないし第4のアームとの間の基板の受け渡しをより円滑に行うことができる。従ってスループットがより向上する。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、次の更なる効果を奏する。即ち、前記基板交換位置にあるホルダと前記第1ないし第4のアームとの間の基板の受け渡しを仲介する機能、および、ホルダに保持させる各基板のツイスト角を一括して所定の角度にする機能を有している仲介装置を更に備えているので、ホルダと第1ないし第4のアームとの間の基板の受け渡しをより円滑に行うことができる。従ってスループットがより向上する。更に、ホルダに保持させる四角形の各基板のツイスト角を一括して所定の角度に合わせることができる。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、次の更なる効果を奏する。即ち、前記ホルダは、平面形状が四角形をしていて前記各基板のツイスト角に対応した方向に向けて固定された複数の静電チャックを備えているので、ツイスト角の付いた各基板を各静電チャックによって保持してイオン注入を行う場合に、イオンビームが静電チャックに当たって静電チャックを損傷することを防止することができる。しかも静電チャックと基板との接触面積を大きくすることができるので、基板に対する吸着力を大きくすると共に、基板と静電チャックとの間の伝熱面積を大きくして基板を効率良く冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明に係るイオン注入装置の一実施形態を示す概略平面図である。
【図2】図1のイオン注入装置の注入室周りを拡大して示す平面図である。
【図3】図1中のホルダ駆動装置を矢印P方向に見て拡大して示す側面図である。
【図4】基板を保持して起立状態にあるホルダの例を、イオンビームの進行方向Zに見て示す正面図である。
【図5】水平状態にあるホルダおよび仲介装置の例を、基板搬送装置側から見て示す平面図である。
【図6】図1中の線D−Dに沿う拡大断面図である。
【図7】図1中の線E−Eに沿う拡大断面図である。
【図8】昇降ピン昇降装置の一例を示す概略側面図である。
【図9】ツイストガイド回転装置およびツイストガイド昇降装置の一例を示す概略側面図である。
【図10】基板収納容器の一例を、基板搬送装置側から見て示す概略正面図である。
【図11】この発明に係るイオン注入装置の全体的な動作の例を説明するための概略図であり、説明にあまり必要のない部分は省略している。
【図12】この発明に係るイオン注入装置の全体的な動作の例を説明するための概略図であり、説明にあまり必要のない部分は省略している。
【図13】この発明に係るイオン注入装置の全体的な動作の例を説明するための概略図であり、説明にあまり必要のない部分は省略している。
【図14】この発明に係るイオン注入装置の全体的な動作の例を説明するための概略図であり、説明にあまり必要のない部分は省略している。
【図15】静電チャックと基板との関係の他の例を示す図である。
【図16】イオンビームとホルダ上の基板の配列等との関係の他の例を示す概略正面図である。
【図17】従来のイオン注入装置の回転ディスクを部分的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、この発明に係るイオン注入装置の一実施形態を示す概略平面図である。図2は、図1のイオン注入装置の注入室周りを拡大して示す平面図である。
【0030】
このイオン注入装置は、イオン源2から引き出したイオンビーム4を、分析電磁石6によって運動量分析(例えば質量分離)を行った後、注入室8内に導入するよう構成されている。イオン源2から注入室8までのイオンビーム4の経路は、真空雰囲気に保たれる。
【0031】
もっとも、分析電磁石6を設けずに、イオン源2から引き出したイオンビーム4を、質量分離を行うことなく、注入室8内に導入するように構成しても良い。この場合のイオン注入装置は、非質量分離型のイオン注入装置とも呼ばれる。
【0032】
イオンビーム4の進行方向をZ方向とし、このZ方向に実質的に直交する面内で互いに実質的に直交する2方向をX方向(例えば水平方向)およびY方向(例えば垂直方向)とすると、この実施形態では、イオン源2から、X方向の寸法WX よりもY方向の寸法WY (図3参照)が大きい形状(これはリボン状とも呼ばれる)のイオンビーム4を引き出して、イオンビーム4の走査を経ることなく上記形状をしたイオンビーム4を注入室8内に導入するように構成されている。
【0033】
もっとも、イオン源2からは、注入室8に導入時の寸法よりも小さい寸法のイオンビーム4を引き出し、途中に設けた走査器によって当該イオンビームを例えばY方向に走査した後に、注入室8内に導入するように構成しても良い。
【0034】
図2を参照して、注入室8は、図示しない真空排気装置によって所定の真空度に排気される。また上記イオンビーム4が導入される。
【0035】
注入室8内には、ホルダ12が設けられている。このホルダ12は、イオンビーム4を照射してイオン注入を行う基板10を、所定方向に、具体的にはこの実施形態ではX方向に、第1列C1 と第2列C2 との2列に保持するものである。
【0036】
図2、図11〜図14、図16等では、ホルダ12を簡略化して図示している。ホルダ12のより具体的な構造の例は図4、図5に示している。
【0037】
ホルダ12は、この実施形態では、図4、図5に示すように、四角い枠体状をしている。そのようにすると、当該ホルダ12と後述する昇降ピン42、ツイストガイド44との干渉を避けることが容易になる。またホルダ12を軽量化することができる。
【0038】
ホルダ12は、上記第1列C1 および第2列C2 内に、基板10を1行に保持可能なものでも良いし、この実施形態のように(例えば図4、図5参照)、上記第1列C1 および第2列C2 内に、それぞれ、複数枚の基板10を複数行R1 〜R3 に保持可能なものでも良い。複数行はこの実施形態では3行であるが、それに限られるものではない。
【0039】
各基板10は、例えば、半導体基板であるが、それに限られるものではない。また、各基板10の平面形状は、四角形でも良いし、円形等でも良い。以下においては、四角形の場合を例に説明する。図面においてもそうである。
【0040】
基板10に照射される際のイオンビーム4は、走査を経ない場合も走査を経る場合も、ホルダ12に保持された行数(1行または複数行)の基板10をカバーするY方向の寸法WY を有している(例えば図3、図4参照)。
【0041】
図2、図3を参照して、このイオン注入装置は、上記ホルダ12を駆動するホルダ駆動装置16を備えている。ホルダ駆動装置16は、ホルダ12を矢印Bで示すように回転させて、ホルダ12を水平状態(実質的に水平状態を含む。図3中の二点鎖線参照)にして、注入室8内の所定の基板交換位置48に位置させる機能、および、ホルダ12を起立状態(垂直状態とは限らない。例えば図3中の実線参照)にして矢印Aで示すようにX方向に沿って往復直線駆動して、ホルダ12およびそれに保持した基板10をイオンビーム4の照射領域でX方向に往復直線駆動する機能を有している。上記基板交換位置48には、この実施形態では、仲介装置40が設けられているが、これについては後述する。
【0042】
上記往復直線駆動と、イオンビーム4が上述したようなY方向の寸法WY を有していることとによって、ホルダ12に保持した複数枚の基板10に一括してイオン注入を行うことができる。
【0043】
ホルダ駆動装置16の構成要素の多くは、この実施形態では、注入室8内に設けられている。ホルダ駆動装置16の上記往復直線運動は、注入室8の底面9内に設けられたレール18によってガイドされる。
【0044】
このイオン注入装置は、基板10を注入室8内と注入室8外の大気側との間で出し入れするための第1のロードロック機構20aおよび第2のロードロック機構20bを備えている。両ロードロック機構20a、20bは、この実施形態では、X方向において互いに離れて配置されている。より具体的には、上記基板交換位置48のX方向における中心線のほぼ左右対称な位置に配置されている。
【0045】
各ロードロック機構20a、20bは(より具体的にはそれらを構成する後述するロードロック室21は)、互いに独立して、図示しない真空排気装置によって所定の真空度に排気される。また、清浄空気、窒素ガス等のベントガスが導入されて、大気圧状態に戻される(これをベントと呼ぶ)。
【0046】
両ロードロック機構20a、20bの構造のより具体的な例は、図6を参照して後で説明する。
【0047】
このイオン注入装置は、第1の基板搬送装置30aおよび第2の基板搬送装置30bを備えている。
【0048】
第1の基板搬送装置30aは、互いに上下に位置していて同じ中心線34aを中心にして、矢印F1 、F2 で示すように互いに独立して往復旋回可能な2本のアームであって、第1のロードロック機構20aから上記基板交換位置48にあるホルダ12の第1列C1 まで基板10を搬送する第1のアーム32a、および、上記基板交換位置48にあるホルダ12の第1列C1 から第1のロードロック機構20aまで基板10を搬送する第2のアーム32bを有している。
【0049】
第2の基板搬送装置30bは、互いに上下に位置していて同じ中心線34bを中心にして、矢印F3 、F4 で示すように互いに独立して往復旋回可能な2本のアームであって、第2のロードロック機構20bから上記基板交換位置48にあるホルダ12の第2列C2 まで基板10を搬送する第3のアーム32c、および、上記基板交換位置48にあるホルダ12の第2列C2 から第2のロードロック機構20bまで基板10を搬送する第4のアーム32dを有している。
【0050】
各アーム32a〜32dは、この実施形態では真っ直ぐな棒状をしている。
【0051】
上記中心線34aは、この実施形態では、両ロードロック機構20a、20bの中心をX方向に結ぶ線29と、上記基板交換位置48にあるホルダ12の第1列C1 の中心線とを結ぶ交点をY方向に通っている。上記中心線34bは、この実施形態では、上記線29と、上記基板交換位置48にあるホルダ12の第2列C2 の中心線とを結ぶ交点をY方向に通っている。
【0052】
上記基板搬送装置30a、30bは、アーム32a〜32dを上記のようにそれぞれ旋回させる駆動装置36a、36bをそれぞれ有している。両駆動装置36a、36bの構成要素の大部分は、この実施形態では、注入室8の底面外に設けられている。
【0053】
この実施形態では、第1の基板搬送装置30aの両アーム32a、32bは、それぞれ、ホルダ12の第1列C1 の複数行に対応した位置で、複数枚(この実施形態では3枚)の基板を保持して搬送可能なものである。同様に、第2の基板搬送装置30bの両アーム32c、32dは、それぞれ、ホルダ12の第2列C2 の複数行に対応した位置で、複数枚(この実施形態では3枚)の基板を保持して搬送可能なものである。もっとも、ホルダ12が基板10を1行しか保持しない場合は、各アーム32a〜32dも基板10を1枚保持するもので良い。
【0054】
各アーム32a〜32dは、それぞれ、図2、図7に示す例のように、各基板10を各アーム32a〜32dの下部に支持する支持部材38を有している。支持部材38は、基板10の端部を下から支持する。
【0055】
第1のロードロック機構20aと第2のロードロック機構20bとは互いに同じ構造であるので、ここではロードロック機構20aを例にその構造等を説明する。以下の説明はロードロック機構20bにも適用することができる。
【0056】
図6に示す例のように、ロードロック機構20aは、ロードロック室(これは真空予備室とも呼ばれる)21を有している。このロードロック室21は、注入室8の上部に隣接して設けられていると言うことができる。ロードロック室21と大気側との間には、基板10を載置した後述する大気側の基板搬送装置50aのアーム52a、52bが出入りできる出入り口26が設けられており、当該出入り口26は矢印Jで示すように開閉する真空弁(例えばフラップ弁)28によって開閉される。
【0057】
ロードロック室21と注入室8とは、昇降装置24によって真空シール部25を介して矢印Hで示すように昇降させられる弁体22によって仕切られる。即ち、この弁体22が真空弁の働きをすると共に、基板10を支持する働きをする。弁体22の上部に、基板10を少し持ち上げて支持する支持部材23が設けられている。支持部材23は、基板10の端部を下から支持する。これによって、弁体22が上昇した位置(図6中の実線参照)で大気側の基板搬送装置50aのアーム52a、52bによって、かつ弁体22が下降した位置(図6中の二点鎖線参照)で真空側の基板搬送装置30aのアーム32a、32bによって、基板10をそれぞれ受け渡しすることができる。
【0058】
即ち、弁体22を実線で示す位置に上昇させることによって、弁体22によってロードロック室21と注入室8との間を仕切ることができる。その状態で、ロードロック室21内を図示しない真空排気装置によって真空排気したり、大気圧状態に戻したりする(即ちベントする)ことができる。大気圧状態で、真空弁28を開いて、大気側の基板搬送装置50aのアーム52a、52bによって、基板10を弁体22上と大気側との間で搬送(出し入れ)することができる。弁体22を二点鎖線で示す位置に下降させることによって、真空側の基板搬送装置30aのアーム32a、32bによって基板10を弁体22上と注入室8内との間で搬送することができる。
【0059】
図2を参照して、この実施形態では、第1のロードロック機構20aは、第1の基板搬送装置30aの第1または第2のアーム32a、32bに保持する複数枚の基板10に対応した位置に複数枚(この実施形態では3枚)の基板10を保持可能なものである。同様に第2のロードロック機構20bは、第2の基板搬送装置30bの第3または第4のアーム32c、32dに保持する複数枚の基板10に対応した位置に複数枚(この実施形態では3枚)の基板10を保持可能なものである。もっとも、ホルダ12が基板10を1行にしか保持せず、各アーム32a〜32dも基板10を1枚保持するものである場合は、両ロードロック機構20a、20bは、それぞれ、基板10を1枚保持可能なもので良い。
【0060】
上記基板交換位置48にあるホルダ12と上記各アーム32a〜32dとの基板10の上記受け渡しは、次に述べる仲介装置40を仲介せずに直接行っても良いし、この実施形態のように仲介装置40を介して行っても良い。仲介装置40を介することによって、ホルダ12と第1ないし第4のアーム32a〜32dとの間の基板10の受け渡しをより円滑に行うことができる。従ってスループットがより向上する。
【0061】
この実施形態では、上記基板交換位置48に設けられていて、各基板10を支持する支持部材を1枚の基板10につき複数個ずつと、当該支持部材を一括して昇降させる昇降装置とを有していて、上記基板交換位置48にあるホルダ12と上記第1ないし第4のアーム32a〜32dとの間の基板10の受け渡しを仲介する機能を有する仲介装置40を備えている。この支持部材には、以下に述べるより具体例では、昇降ピン42および/またはツイストガイド44が相当しており、昇降装置には昇降ピン昇降装置70および/またはツイストガイド昇降装置88が相当している。
【0062】
上記仲介装置40のより具体例を説明すると、図2、図5等に示す仲介装置40は、この実施形態では四角形の基板10用のものであり、次のような構造をしている。
【0063】
即ち昇降装置40は、(a)各基板10を支持する昇降ピン42を1枚の基板10につき複数個ずつと、(b)当該昇降ピン42を一括して昇降させる昇降ピン昇降装置70(図8参照)と、(c)各基板10の角部を支持するツイストガイド44を1枚の基板10につき複数個ずつと、(d)各基板10用のツイストガイド44を矢印Gで示すように各基板10の中心11の周りに所定の角度だけ一括して回転させるツイストガイド回転装置78(図9参照)と、(e)上記ツイストガイド44を一括して昇降させるツイストガイド昇降装置88(図9参照)とを有している。そしてこの仲介装置40は、上記基板交換位置48にあるホルダ12と上記第1ないし第4のアーム32a〜32dとの間の基板10の受け渡しを仲介する機能、および、ホルダ12に保持させる各基板10のツイスト角φ(図4も参照)を一括して所定の角度にする機能を有している。
【0064】
1枚の基板10当たりの昇降ピン42の数は、例えば3個であるがこれに限られるものではない。1枚の基板10当たりのツイストガイド44は、図2、図5等では図示を簡略化して2個を図示しているが、それに限られるものではなく例えば3〜4個でも良い。
【0065】
ホルダ12には、各基板10を静電気によってそれぞれ吸着して保持する複数の静電チャック14が取り付けられている。しかもこの実施形態では、各静電チャック14は、平面形状が基板10に対応した四角形をしていて、四角形の基板10のツイスト角φに対応した方向に向けて固定されている。
【0066】
各静電チャック14には、この実施形態では、各基板10用の昇降ピン42が貫通する穴がそれぞれ設けられており、各昇降ピン42は、水平状態にされたホルダ12上の静電チャック14の上記穴を貫通して昇降させられる。
【0067】
基板10のツイスト角φは、イオン注入装置における基板10の配置(方向)を表すパラメータの一つであり、イオンビーム4に対する基板10の方向を表している。図4、図5に示す例では、矩形の基板10の長辺と上記X方向との成す角度をツイスト角φとしているが、これは基板10の長軸とX方向との成す角度と同じである。但しこれ以外をツイスト角と定めても良い。上記ツイスト角φは、例えば23度であるが、これに限られるものではない。
【0068】
上記昇降ピン昇降装置70、ツイストガイド回転装置78およびツイストガイド昇降装置88の具体例を説明すると次のとおりである。
【0069】
昇降ピン昇降装置70は、例えば図8に示す例のように、注入室8の底面9外に設けられた駆動源72によって、真空シール部74を介して、注入室8内の上記複数の昇降ピン42を一括して矢印Kで示すように昇降させる構成をしている。
【0070】
ツイストガイド回転装置78は、例えば図9に示す例のように、注入室8の底面9外に設けた回転駆動源82によって、真空シール部84を介して、注入室8内に設けたリンク機構86を矢印Mで示すように往復回転させて、それに連結された各基板10用のツイストガイド44を矢印Gで示すようにそれぞれ往復回転させる構成をしている。
【0071】
ツイストガイド昇降装置88は、例えば図9に示す例のように、注入室8の底面9外に設けた駆動源80によって、真空シール部84を介して、注入室8内の上記複数のツイストガイド44を一括して矢印Nで示すように昇降させる構成をしている。上記リンク機構86等は、この昇降に対応することができる。
【0072】
上記昇降ピン42、ツイストガイド44、昇降ピン昇降装置70、ツイストガイド回転装置78およびツイストガイド昇降装置88は、それぞれの上記動作を妨げないように配置されている。
【0073】
図2を参照して、注入室8内には、イオンビーム4を受けてそのY方向におけるビーム電流計密度分布を測定するビームモニタ68が設けられている。このビームモニタ68は、この実施形態では、Y方向に、イオンビーム4のY方向の寸法WY よりも広い領域に亘って並設された複数のビーム測定器(例えばファラデーカップ。以下同様)を有している。但し、ビームモニタ68は、1個のビーム測定器をY方向に移動させる構造のものでも良い。
【0074】
注入室8の外側の大気側には、この実施形態では、次のものが設けられている。
【0075】
即ち、第1のロードロック機構20aに対向する位置に二つの基板収納容器60が設けられており、それら20a、60の間に第3の基板搬送装置50aが設けられている。第2のロードロック機構20bに対向する位置にも二つの基板収納容器60が設けられており、それら20b、60の間に第4の基板搬送装置50bが設けられている。両基板搬送装置50a、50bの間に待機装置66が設けられている。
【0076】
各基板収納容器60は、フープとも呼ばれるものであり、例えば図10に示す例のように上下方向(Y方向)の複数段に基板10を収納することができ、その基板10を対応する基板搬送装置50aまたは50bによって(具体的にはそれらのアーム52a〜52dによって)出し入れすることができる。各基板10を収納する部分をスロット62と呼ぶことにする。
【0077】
待機装置66は、基板10を一旦保存する装置であり、これも、上記基板収納容器60に似た構造をしていて、上下方向(Y方向)の複数段に基板10を収納することができる。但し、この待機装置66は、両方の基板搬送装置50a、50bに向かう面が開いていて、両方の基板搬送装置50a、50bによって基板10を出し入れすることができる。
【0078】
両基板搬送装置50a、50bは互いに同じ構造であるので、主として第3の基板搬送装置50aを例により具体例を以下に説明する。
【0079】
図2を参照して、基板搬送装置50aは、先の部分(ハンド部)が互いに上下に位置している2本のアーム52a、52bを有しており、各ハンド部に基板10をそれぞれ保持して搬送することができる。各ハンド部には、この実施形態では、基板10を真空によって吸着保持する真空チャック54が設けられている。
【0080】
基板搬送装置50aは、各アーム52a、52bを互いに独立して伸縮させることができ、かつ両アーム52a、52bを一括して旋回および昇降させることができる。更にこの基板搬送装置50aは、矢印Sで示すように、X方向に沿って往復走行することができる。
【0081】
基板搬送装置50aは、上記構造によって、その手前にある二つの基板収納容器60に対する基板10の出し入れ、第1のロードロック機構20aに対する基板10の出し入れ、および、待機装置66に対する基板10の出し入れを行うことができる。
【0082】
第4の基板搬送装置50bも、2本のアーム52c、52dを有していて、上述したように基板搬送装置50aと同じ構造をしており、その手前にある二つの基板収納容器60に対する基板10の出し入れ、第2のロードロック機構20bに対する基板10の出し入れ、および、待機装置66に対する基板10の出し入れを行うことができる。
【0083】
この実施形態のイオン注入装置の全体的な動作の例を、図2、図11〜図14等を参照して説明する。図11〜図14は、図2に対応している。なお、図11〜図14は概略図であり、説明にあまり必要のない部分の図示は省略している。省略した部分は、図1〜図10を参照するものとする。また、ホルダ12、仲介装置40、ロードロック機構20a、20b、基板搬送装置30a、30b、50a、50b等における動作の詳細は、先に説明しているので、それを参照するものとし、以下においてはこのイオン注入装置の全体的な動作の例を主体に説明する。また、この発明の本質にあまり影響しない細かな動作は省略または簡略化して説明する。
【0084】
ここでは一例として、図2に示す状態から説明を始める。その主な状態を説明すると、注入室8内に上記イオンビーム4が導入されている。ホルダ12は起立状態にあり、このホルダ12には6枚の未注入の基板10が保持されている。両ロードロック機構20a、20bは大気圧状態にあり、真空弁28が開いており、かつ注入済の基板10が3枚ずつ保持されている。各基板収納容器60には未注入の基板10が複数枚ずつ収納されている。待機装置66にも左側の基板収納容器60から取り出した複数枚の基板10が収納されている。
【0085】
ホルダ駆動装置16によってホルダ12をイオンビーム4の照射領域でX方向に沿って往復直線駆動する。往復回数は、必要とするドーズ量(イオン注入量)等に依る。これによって、6枚の基板10に一括してイオン注入を行うことができる。
【0086】
しかも、ホルダ12および基板10を往復直線駆動するので、前述した従来技術のように回転ディスクを用いる場合と違って、各基板10の面内における基板10とイオンビーム4との相対的な速度は均一(一様)になる。従って、各基板10の面内における注入量分布の均一性を良くすることができる。
【0087】
上記イオン注入の間に、基板搬送装置50aによって、ロードロック機構20a内にある注入済の基板10を元の基板収納容器60内に、より具体的にはこの実施形態では、元の基板収納容器60内の元のスロット62に順次搬送する(回収する)動作を行う。この回収動作と並行して、同じ基板搬送装置50aによって、対応する基板収納容器60から未注入の基板10を1枚ずつ取り出してそれをロードロック機構20aに渡す動作を行う。これは、基板搬送装置50aが2本のアーム52a、52bを有しているので可能である。
【0088】
上記と並行して、基板搬送装置50bによって、ロードロック機構20b内にある注入済の基板10を一旦、待機装置66内に順次搬送する動作を行う。それと並行して、同じ基板搬送装置50bによって、先に基板搬送装置50aによって待機装置66内に収納していた未注入の基板10を1枚ずつ取り出してそれをロードロック機構20bに渡す動作を行う。これは、基板搬送装置50bが2本のアーム52c、52dを有しているので可能である。
【0089】
ロードロック機構20a、20bに対して注入済の基板10と未注入の基板10の入れ替えが完了したら、各真空弁28をそれぞれ閉じて、両ロードロック機構20a、20bの真空排気を行う。
【0090】
また、基板搬送装置50aは、ロードロック機構20aに対する注入済の基板10と未注入の基板10の入れ替えに続いて、待機装置66内の注入済の基板10を元の基板収納容器60の元のスロット62に回収する動作を行う。
【0091】
ホルダ12上の基板10に対する所定ドーズ量のイオン注入が終了したら、ホルダ12を上記基板交換位置48に戻して、具体的には上記仲介装置40上に戻して、ホルダ12を水平状態にする。図11は水平状態にする途中の状態を示している。但し、図11では説明を分かりやすくするためにホルダ12を仲介装置40から少し右にずらして図示しているが、実際は仲介装置40上で水平状態にする(図12参照)。その間も、基板搬送装置50a、50bによる基板10の上記搬送動作が並行して続いている。
【0092】
次に、図12に示すように、ツイストガイド44を一括して上昇させて、ツイストガイド44によって基板10をホルダ12から(より具体的にはその静電チャック14から。以下同様)受け取る。なお、図12では図示を簡略化するために各基板10の上記ツイスト角φを0度で図示しているが、0度以外でも良い。ツイストガイド44を上昇させる前に、各ツイストガイド44は各基板10の上記ツイスト角φに対応する位置に回転させておく。ツイスト角φの付いた基板10を受け取るためである。
【0093】
次いで、各ツイストガイド44を回転させてそれに保持した各基板10のツイスト角φを0度に戻した状態で、昇降ピン42を一括して上昇させて、昇降ピン42によって各基板10を受ける。各基板10のツイスト角φを0度に戻すのは、その状態で各基板10をアーム32b、32dに渡すためである。そして上記状態で、図13に示すように、第2、第4のアーム32b、32dをホルダ12上に位置させ、ツイストガイド44を一括して下降させ、更に昇降ピン42を一括して下降させて、注入済の基板10をアーム32b、32dに渡す。上記と並行して、第1、第3のアーム32a、32cをロードロック機構20a、20bにそれぞれ位置させて、未注入の基板10を受け取る。
【0094】
次に、図14に示すように、第1のアーム32aと第2のアーム32bとの位置を入れ替え、かつ第3のアーム32cと第4のアーム32dの位置を入れ替えて、昇降ピン42を一括して上昇させて、昇降ピン42でアーム32a、32cから各基板10を受ける。このとき、0度のツイスト角φに対応する位置でツイストガイド44も上昇させる。但しアーム32a、32cの位置には干渉しない高さまでとする。上記と並行して、アーム32b、32dからロードロック機構20a、20bに注入済の基板10を渡す。
【0095】
次に、空になったアーム32a〜32dを仲介装置40とロードロック機構20a、20bとの中間位置に戻す(図2と同じ状態)。そして、仲介装置40においては、昇降ピン42を一括して下降させて各基板10をツイストガイド44に載せ、ツイストガイド44を上記のように回転させて各基板10のツイスト角φを一括して所定の角度にし、更に昇降ピン42を一括して下降させて、未注入の各基板10をホルダ12に保持する。具体的には、各基板10を各静電チャック14に載せて吸着保持させる。この頃までには、前回のバッチ処理で注入済の基板10の基板搬送装置50a、50bによる上記回収動作が完了している。
【0096】
次に、未注入の基板10を保持したホルダ12を起立状態にする。それと並行して、ロードロック機構20a、20bをベントして大気圧状態に戻した後に真空弁28を開く。その後は図2に示した状態に戻り、以降は、上記と同様の動作が繰り返される。
【0097】
上記は、第3の基板搬送装置50a側にある基板収納容器60から取り出した未注入の基板10に6枚ずつ一括してイオン注入を施した後に元の基板収納容器60に回収する例であるが、第4の基板搬送装置50b側にある基板収納容器60から取り出した基板10についても上記と同様の動作によって、6枚ずつ一括してイオン注入を施した後に元の基板収納容器60に回収することができる。
【0098】
以上のようにこの実施形態のイオン注入装置によれば、第1および第2のロードロック機構20a、20b、ならびに、2本のアームをそれぞれ有する第1および第2の基板搬送装置30a、30bを備えているので、大気側と注入室8内との間の基板10の出し入れ、および、各ロードロック機構20a、20bとホルダ12との間の基板10の搬送を円滑に行うことができる。従ってスループットが向上する。
【0099】
更に、ホルダ12を、前記第1列C1 および第2列C2 内に、それぞれ、複数枚の基板10を複数行に保持可能なものとし、かつそれに対応するように、第1および第2の基板搬送装置30a、30bならびに第1および第2のロードロック機構20a、20bを構成しているので、より多くの基板10に一括してイオン注入を行うことができると共に、第1および第2の基板搬送装置30a、30bならびに第1および第2のロードロック機構20a、20bにおいて、上記複数行に対応する複数枚の基板10を一括して取り扱うことができるので、スループットがより向上する。
【0100】
更に、基板交換位置48にあるホルダ12と第1ないし第4のアーム32a〜32dとの間の基板10の受け渡しを仲介する機能、および、ホルダ12に保持させる各基板10のツイスト角φを一括して所定の角度にする機能を有している仲介装置40を備えているので、ホルダ12と第1ないし第4のアーム32a〜32dとの間の基板10の受け渡しをより円滑に行うことができる。従ってスループットがより向上する。しかも、ホルダ12に保持させる四角形の各基板10のツイスト角φを一括して所定の角度に合わせることができる。
【0101】
また、先に図4、図5を参照して説明したように、ホルダ12は、平面形状が四角形をしていて各基板10のツイスト角φに対応した方向に向けて固定された複数の静電チャック14を備えているので、ツイスト角φの付いた各基板10を各静電チャック14によって保持してイオン注入を行う場合に、イオンビーム14が静電チャック14に当たって静電チャック14を損傷することを防止することができる。しかも静電チャック14と基板10との接触面積を大きくすることができるので、基板10に対する吸着力を大きくすると共に、基板10と静電チャック14との間の伝熱面積を大きくして基板10を効率良く冷却することができる。
【0102】
仮に、図15に示す例のように、静電チャック14を基板10のツイスト角φと対応させずにホルダ12に固定しておくと、基板10に覆われない静電チャック14の表面が生じて、イオン注入の際に当該表面にイオンビーム4(例えば図4参照)が当たり、スパッタリング等によって静電チャック14が損傷を受ける可能性がある。それを避けるために、静電チャック14を四角形や円形で小さくして基板10に完全に覆われるようにすると、静電チャック14と基板10との接触面積が小さくなって静電チャック14による吸着力が低下すると共に、基板10と静電チャック14との間の伝熱面積が小さくなって基板10の冷却効率が低下する。
【0103】
イオンビーム4とホルダ12上の基板10の配列等との関係の他の例を図16に示す。この図は、図4に対応している。但し図示を簡略している。図2〜図5等に示した例と対応する部分は同一符号を付して、以下においては当該例との相違点を主体に説明する。
【0104】
この図16に示す例は、簡単に言えば、図2〜図5等に示した例とは、ホルダ12の駆動方向およびイオンビーム4の長手方向が90度異なる。即ち、この図16に示す例の場合は、ホルダ12を水平状態にして上記基板交換位置48に位置させる機能およびホルダ12を起立状態にしてイオンビーム4の照射領域で、矢印Vで示すように、前記X方向と交差する方向(例えばY方向)に往復直線駆動する機能を有するホルダ駆動装置を設けておく。
【0105】
そして、基板10に照射される際のイオンビーム4は、走査を経てまたは走査を経ることなく、ホルダ12に保持された2列C1 、C2 の基板10をカバーする寸法WX を有しているものにする。
【0106】
上述したホルダ12の駆動方向およびイオンビーム4の寸法以外は、図2〜図5等に示した例の場合と同様であるので、仲介装置40、基板搬送装置30a、30b、ロードロック機構20a、20b等は、図2〜図5等に示した例の場合と同様のもので良い。
【0107】
この図16に示す例の場合も、基板10を2列C1 、C2 に保持したホルダ12を、ホルダ駆動装置によってイオンビーム4の照射領域で往復直線駆動する構成であるので、複数枚の基板10に一括してイオン注入を行うことができる。
【0108】
しかも、ホルダ12および基板10を往復直線駆動するので、回転ディスクを用いる場合と違って、各基板10の面内における基板10とイオンビーム4との相対的な速度は均一になる。従って、各基板10の面内における注入量分布の均一性を良くすることができる。
【0109】
その他、図2〜図5等に示した例の上述した効果と同様の効果を奏する。
【0110】
上記イオン源2として、それから引き出すイオンビーム4の長手方向(図1〜図5に示すの例は場合はY方向。以下同様)に複数のフィラメントを有する大きなイオン源を設けても良い。そして、注入室8内に設けた上記ビームモニタ68を用いてイオンビーム4の長手方向におけるビーム電流密度分布を測定し、このビームモニタ68からの測定情報に基づいて、制御装置によって、ホルダ12上の基板10に照射されるイオンビーム4の長手方向におけるビーム電流密度分布が均一になるように、上記イオン源2の各フィラメント電流を制御するようにしても良い。
【0111】
それによって、長手方向の寸法がより大きく、かつ長手方向におけるビーム電流密度分布の均一性がより良いイオンビーム4を得ることができるので、より多数枚の基板10に対して一括して均一性良くイオン注入を行うことが可能になる。その結果、バッチ処理する基板10の枚数をより増加させることができるので、スループットがより向上する。
【0112】
以上においては、各基板10が四角形の場合を例に説明したけれども、各基板10は円形でも良い。
【0113】
各基板10が円形の場合は、上記各静電チャック14も平面形状が円形のものにすれば良い。
【0114】
また、各基板10が円形の場合は、上記ツイストガイド回転装置78およびツイストガイド昇降装置88の代わりに、各基板10が有しているオリエンテーションフラットまたはノッチに基づいて、ホルダ12に保持される各基板10のツイスト角を所望の角度に合わせるアライナー(角度合わせ装置)を設けても良い。例えば、アライナーの機能を図2に示した待機装置66に持たせても良い。あるいは、待機装置66の代わりにアライナーを設けても良い。いずれの場合も、アライナー(またはその機能)は、1枚の基板10の角度を合わせることができるものでも良いけれども、Y方向において多段に配置された複数枚の基板10の角度を合わせることができるものの方が好ましい。その方がスループットが高まるからである。
【符号の説明】
【0115】
4 イオンビーム
8 注入室
10 基板
12 ホルダ
14 静電チャック
16 ホルダ駆動装置
20a、20b ロードロック機構
30a、30b 基板搬送装置
32a〜32d アーム
40 仲介装置
42 昇降ピン
44 ツイストガイド
48 基板交換位置
50a、50b 基板搬送装置
52a〜52d アーム
60 基板収納容器
66 待機装置
70 昇降ピン昇降装置
78 ツイストガイド回転装置
88 ツイストガイド昇降装置
1 第1列
2 第2列
φ ツイスト角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空に排気されイオンビームが導入される注入室と、
前記注入室内に設けられていて、前記イオンビームを照射してイオン注入を行う基板をX方向に第1列と第2列との2列に保持するホルダと、
前記ホルダを水平状態にして基板交換位置に位置させる機能および前記ホルダを起立状態にして前記イオンビームの照射領域で前記X方向に沿って往復直線駆動する機能を有するホルダ駆動装置と、
前記基板を大気側と前記注入室内との間で出し入れするためのものである第1および第2のロードロック機構と、
互いに上下に位置していて同じ中心線を中心にして互いに独立して往復旋回可能な2本のアームであって、前記第1のロードロック機構から前記基板交換位置にある前記ホルダの第1列まで基板を搬送する第1のアーム、および、前記基板交換位置にある前記ホルダの第1列から前記第1のロードロック機構まで基板を搬送する第2のアームを有する第1の基板搬送装置と、
互いに上下に位置していて同じ中心線を中心にして互いに独立して往復旋回可能な2本のアームであって、前記第2のロードロック機構から前記基板交換位置にある前記ホルダの第2列まで基板を搬送する第3のアーム、および、前記基板交換位置にある前記ホルダの第2列から前記第2のロードロック機構まで基板を搬送する第4のアームを有する第2の基板搬送装置とを備えていることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項2】
前記ホルダは、前記第1列および第2列内に、それぞれ、複数枚の基板を複数行に保持可能なものであり、
前記基板に照射される際の前記イオンビームは、走査を経てまたは走査を経ることなく、前記ホルダに保持された複数行の基板をカバーする寸法を有しており、
前記第1の基板搬送装置の第1および第2のアームは、それぞれ、前記ホルダの第1列の複数行に対応した位置で複数枚の基板を保持して搬送可能なものであり、
前記第2の基板搬送装置の第3および第4のアームは、それぞれ、前記ホルダの第2列の複数行に対応した位置で複数枚の基板を保持して搬送可能なものであり、
前記第1のロードロック機構は、前記第1の基板搬送装置の第1または第2のアームに保持する複数枚の基板に対応した位置に複数枚の基板を保持可能なものであり、
前記第2のロードロック機構は、前記第2の基板搬送装置の第3または第4のアームに保持する複数枚の基板に対応した位置に複数枚の基板を保持可能なものである請求項1記載のイオン注入装置。
【請求項3】
真空に排気されイオンビームが導入される注入室と、
前記注入室内に設けられていて、前記イオンビームを照射してイオン注入を行う基板をX方向に第1列と第2列との2列に保持するホルダと、
前記ホルダを水平状態にして基板交換位置に位置させる機能および前記ホルダを起立状態にして前記イオンビームの照射領域で前記X方向と交差する方向に往復直線駆動する機能を有するホルダ駆動装置と、
前記基板を大気側と前記注入室内との間で出し入れするためのものである第1および第2のロードロック機構と、
互いに上下に位置していて同じ中心線を中心にして互いに独立して往復旋回可能な2本のアームであって、前記第1のロードロック機構から前記基板交換位置にある前記ホルダの第1列まで基板を搬送する第1のアーム、および、前記基板交換位置にある前記ホルダの第1列から前記第1のロードロック機構まで基板を搬送する第2のアームを有する第1の基板搬送装置と、
互いに上下に位置していて同じ中心線を中心にして互いに独立して往復旋回可能な2本のアームであって、前記第2のロードロック機構から前記基板交換位置にある前記ホルダの第2列まで基板を搬送する第3のアーム、および、前記基板交換位置にある前記ホルダの第2列から前記第2のロードロック機構まで基板を搬送する第4のアームを有する第2の基板搬送装置とを備えており、
前記基板に照射される際の前記イオンビームは、走査を経てまたは走査を経ることなく、前記ホルダに保持された2列の基板をカバーする寸法を有していることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項4】
前記ホルダは、前記第1列および第2列内に、それぞれ、複数枚の基板を複数行に保持可能なものであり、
前記第1の基板搬送装置の第1および第2のアームは、それぞれ、前記ホルダの第1列の複数行に対応した位置で複数枚の基板を保持して搬送可能なものであり、
前記第2の基板搬送装置の第3および第4のアームは、それぞれ、前記ホルダの第2列の複数行に対応した位置で複数枚の基板を保持して搬送可能なものであり、
前記第1のロードロック機構は、前記第1の基板搬送装置の第1または第2のアームに保持する複数枚の基板に対応した位置に複数枚の基板を保持可能なものであり、
前記第2のロードロック機構は、前記第2の基板搬送装置の第3または第4のアームに保持する複数枚の基板に対応した位置に複数枚の基板を保持可能なものである請求項3記載のイオン注入装置。
【請求項5】
前記基板交換位置に設けられていて、前記各基板を支持する支持部材を1枚の基板につき複数個ずつと、当該支持部材を一括して昇降させる昇降装置とを有していて、前記基板交換位置にある前記ホルダと前記第1ないし第4のアームとの間の前記基板の受け渡しを仲介する機能を有する仲介装置を更に備えている請求項1ないし4のいずれかに記載のイオン注入装置。
【請求項6】
前記基板は四角形の基板である請求項1ないし5のいずれかに記載のイオン注入装置。
【請求項7】
前記基板は円形の基板である請求項1ないし5のいずれかに記載のイオン注入装置。
【請求項8】
前記基板は四角形の基板であり、
前記基板交換位置に設けられていて、(a)前記各基板を支持する昇降ピンを1枚の基板につき複数個ずつと、(b)当該昇降ピンを一括して昇降させる昇降ピン昇降装置と、(c)前記各基板の角部を支持するツイストガイドを1枚の基板につき複数個ずつと、(d)各基板用の前記ツイストガイドを各基板の中心の周りに所定の角度だけ一括して回転させるツイストガイド回転装置と、(e)前記ツイストガイドを一括して昇降させるツイストガイド昇降装置とを有していて、前記基板交換位置にある前記ホルダと前記第1ないし第4のアームとの間の前記基板の受け渡しを仲介する機能、および、前記ホルダに保持させる各基板のツイスト角を一括して所定の角度にする機能を有している仲介装置を更に備えている請求項1ないし4のいずれかに記載のイオン注入装置。
【請求項9】
前記ホルダは、前記各基板を静電気によってそれぞれ吸着して保持するものであって、平面形状が四角形をしていて前記各基板のツイスト角に対応した方向に向けて固定された複数の静電チャックを備えている請求項8記載のイオン注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−287416(P2010−287416A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139924(P2009−139924)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】