イオン輸送膜システムにおける原料ガス汚染物質の除去
【課題】セラミックイオン輸送膜を利用したガス精製方法及びイオン輸送膜システムを提供すること。
【解決手段】(a)揮発性金属オキシ水酸化物、揮発性金属酸化物、及び揮発性水酸化ケイ素よりなる群から選ばれる1種以上の汚染物質を含有する原料ガス流を得ること、(b)この原料ガス流をガード床の反応性固体物質と接触させ、そして汚染物質の少なくとも一部を反応性固体物質と反応させてガード床において固体反応生成物を生成させること、そして、(c)ガード床から精製されたガス流を抜き出す。
【解決手段】(a)揮発性金属オキシ水酸化物、揮発性金属酸化物、及び揮発性水酸化ケイ素よりなる群から選ばれる1種以上の汚染物質を含有する原料ガス流を得ること、(b)この原料ガス流をガード床の反応性固体物質と接触させ、そして汚染物質の少なくとも一部を反応性固体物質と反応させてガード床において固体反応生成物を生成させること、そして、(c)ガード床から精製されたガス流を抜き出す。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
セラミックイオン輸送膜を通る酸素イオンの透過は、高温で運転する種々のガス分離機器及び酸化反応器システムについての基礎であり、それらでは透過した酸素が高純度酸素製品として透過物側で回収され、又は透過物側で酸化可能な化合物と反応して酸化又は部分酸化製品を生成する。これらのガス分離機器及び酸化反応器システムの実用化には、表面積の大きな膜アセンブリ、原料ガスを膜の供給側に接触させる手段、及び膜の透過物側から製品ガスを抜き出す手段が必要である。これらの膜アセンブリは、原料ガスをモジュールに導入し、製品ガスをそのモジュールから抜き出すための適当なガス流動配管を有するモジュールに配置され組み立てられた多数の個別の膜を含むことができる。
【0002】
イオン輸送膜は平面状又は管状いずれかの構造で製作することができる。平面構造では、多数の平らなセラミックプレートが、原料ガスを平面膜を通過させ、平面膜の透過物側から製品ガスを抜き出す配管手段を有する積重体又はモジュールとなるよう加工されもしくは組み立てられる。管構造の場合は、多数のセラミック管を、これら多数の管の供給側と透過物側を隔離するための適当なチューブシートアセンブリを備えた差し込み式のもしくはシェル・アンド・チューブ構造に配置することができる。
【0003】
平面状又は管状モジュール構造で使用する個々の膜は、典型的には、ガスを活性膜層表面へ、そして該表面から流動させる大きな気孔又は通路を有する材料に支持された活性膜材料の極めて薄い層を含んでいる。膜モジュールのセラミック膜材料と構成成分は、通常の定常状態での運転時に、そして特に非定常状態である運転開始、停止、及び不調状態の際に、著しい機械的応力にさらされることがある。このような応力は、セラミック材料の熱膨張及び収縮によって引き起こされることがあり、また、膜材料の酸素化学量論量の変化に起因する化学組成もしくは結晶構造の変化によって惹起される寸法変化によって引き起こされることがある。これらのモジュールは、膜及び膜シールをまたぐ著しい圧力差を伴って運転し、そして膜モジュールの設計にはこのような圧力差が惹起する応力を考慮しなければならない。更に、これらの現象の相対的重要性は、モジュールをガス分離の際に運転させるのかそれとも酸化のために運転させるのかによって異なることがある。これらの現象によって惹起される可能性のある運転の際の問題は、回収された製品の純度及び膜の使用寿命に著しいマイナスの影響を及ぼしかねない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの膜モジュールに使用する固体イオン伝導性金属酸化物材料は、イオン伝導の奏功に必要な高い操作温度において揮発性気相汚染物質の存在下で劣化し、それにより酸素イオンを伝導又は透過する膜の能力を低下させることがある。この潜在的問題のため、イオン伝導性金属酸化物膜システムの運転の成功には、膜への1以上の原料ガス中の特定の汚染物質を制御することが必要であろう。以下に開示し、特許請求の範囲により規定される本発明の態様は、この必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様は、(a)揮発性金属オキシ水酸化物、揮発性金属酸化物、及び揮発性水酸化ケイ素よりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の汚染物質を含有する原料ガス流を得ること、(b)この原料ガス流を、ガード床の反応性固体物質に接触させ、そして汚染物質の少なくとも一部を反応性固体物質と反応させて、ガード床中に固体反応生成物を生成させること、そして、(c)精製されたガス流をガード床から抜き出すこと、を含むガス精製方法に関する。反応性固体物質は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1又はそれ以上の化合物を含むことができる。この態様の1つの特定の側面では、反応性固体物質は酸化マグネシウムを含むことができる。
【0006】
1種又はそれ以上の汚染物質は、CrO2(OH)2、Si(OH)4、WO2(OH)2、CrO3、及びモリブデンのオキシ水酸化物のうちのいずれかを含むことができる。原料ガス流は、窒素、酸素、水、及び二酸化炭素よりなる群から選ばれる1又はそれ以上の成分を含むことができる。あるいはまた、原料ガス流は、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、及び水よりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の成分を含むことができる。原料ガス流は、600℃〜1100℃の範囲の温度で反応性固体物質と接触させることができる。
【0007】
本発明のもう一つの態様は、酸素を含有するガスを加熱して高温の酸素含有ガスを作ること、(b)この高温の酸素含有ガスをガード床の反応性固体物質と接触させて、精製された高温の酸素含有ガスをそこから抜き出すこと、そして、(c)この精製された高温の酸素含有ガスを、混合金属酸化物セラミック材料を含む膜の第一の表面と接触させ、この膜を通して酸素を膜の第二の表面へ透過させて、そこから高純度酸素製品を抜き出すこと、を含む酸素の製造方法に関する。高温の酸素含有ガスは、ガス燃料を空気とともに直接燃焼させることにより得ることができ、そして酸素、窒素、二酸化炭素、及び水を含む。高温の酸素含有ガスは更に、CrO2(OH)2、Si(OH)4、WO2(OH)2、CrO3、及びモリブデンのオキシ水酸化物よりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の汚染化合物を含むことができる。反応性固体物質は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の化合物を含むことができる。この態様の1つの特定の側面では、反応性固体物質は酸化マグネシウムを含むことができる。
【0008】
本発明の別の態様は、
(a)高温の酸素含有原料ガスを、混合金属酸化物セラミック材料を含む膜の第一の表面と接触させ、この膜を通し酸素を膜の第二の表面へ透過させて、透過した酸素を得ること、
(b)高温の炭化水素含有原料ガスをこの透過した酸素と反応させて酸化生成物を生成させること、そして、
(d)次の(1)と(2)、すなわち、
(1)高温の酸素含有ガス流をガード床の反応性固体物質と接触させてそこから高温の酸素含有原料ガスを抜き出すことにより、高温の酸素含有原料ガスを得ること、及び、
(2)高温の炭化水素ガス流をガード床の反応性固体物質と接触させてそこから高温の炭化水素含有原料ガスを抜き出すことにより、高温の炭化水素含有原料ガスを得ること、
のいずれか又は両方を行うこと、
を含む酸化方法に関する。
【0009】
(1)及び(2)のいずれか又は両者におけるガード床の反応性固体物質は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の化合物を含むことができる。高温の酸素含有ガス流及び高温の炭化水素ガス流のいずれか又は両者は、CrO2(OH)2、Si(OH)4、WO2(OH)2、CrO3、及びモリブデンのオキシ水酸化物よりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の揮発性汚染化合物を含むことができる。高温の酸素含有ガス流は、ガス燃料を空気とともに直接燃焼させることにより得ることができ、そして酸素、窒素、二酸化炭素、及び水を含む。酸化生成物は、水素、一酸化炭素、及び水を含む合成ガスであることができる。
【0010】
本発明のもう一つの別態様は、
(a)内部、外部、入口、及び出口を有する圧力容器、
(b)圧力容器の内部に配置されそして直列に配列されている複数の平面状イオン輸送膜モジュールであって、各膜モジュールが、混合金属酸化物セラミック材料を含み、且つ内部領域と外部領域を持ち、該圧力容器の入口及び出口が膜モジュールの領域と連通している、複数の平面状イオン輸送膜モジュール、
(c)膜モジュールの内部領域及び圧力容器の外部と連通している、1又はそれ以上のガスマニホールド、並びに、
(d)次の(1)と(2)、すなわち、
(1)圧力容器の入口と連通しているガード床、及び、
(2)1又はそれ以上のガスマニホールドのうちの少なくとも1つと連通しているガード床、
のいずれか又は両者、
を含むイオン輸送膜システムに関する。
【0011】
(1)及び(2)のいずれか又は両者におけるガード床は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の化合物を含む反応性固体物質を含有することができる。
【0012】
(1)におけるガード床は、圧力容器の外部に配置することができる。あるいはまた、(1)におけるガード床は圧力容器の内部に配置してもよい。(2)におけるガード床は、圧力容器の外部に配置することができる。あるいはまた、(2)におけるガード床は圧力容器の内部に配置してもよい。
【0013】
本発明の更なる態様は、
(a)内部、外部、入口、及び出口を有する圧力容器、
(b)圧力容器の内部に配置されそして直列に配列されている複数の平面状イオン輸送膜モジュールであって、各膜モジュールが、混合金属酸化物セラミック材料を含み、且つ内部領域と外部領域を持ち、該圧力容器の入口及び出口が膜モジュールの外部領域と連通している、複数の平面状イオン輸送膜モジュール、
(c)膜モジュールの内部領域及び圧力容器の外部と連通している、1又はそれ以上のガスマニホールド、並びに、
(d)1又はそれ以上のガード床であって、各ガード床が圧力容器内部にある任意の二つの隣接する平面状イオン輸送膜モジュールの間に配置されている、1又はそれ以上のガード床、
を含むイオン輸送膜システムに関する。
【0014】
このシステムは更に、圧力容器の内部に配置されている流動封じ込めダクトを含むことができ、この流動封じ込めダクトは、(1)複数の平面状イオン輸送膜モジュール及び1又はそれ以上のガード床を取り囲んでおり、且つ、(2)圧力容器の入口及び出口と連通している。
【0015】
本発明のもう一つの更なる態様は、
(a)内部、外部、入口、及び出口を有する圧力容器、
(b)圧力容器の内部に配置された膜の積重体又はモジュールアセンブリであって、該アセンブリは、混合金属酸化物セラミック材料を含む複数の平面状ウェハーと複数の中空セラミックスペーサーを有し、各ウェハーには内部領域と外部領域があり、該積重体又はモジュールアセンブリは、ウェハー内部どうしが中空スペーサーを介して連通するようにウェハーとスペーサーを交互にすることにより形成され、ウェハーは互いに平行な向きにされており、そして、ウェハーが積重体(スタック)又はモジュールの軸線と垂直になるように積重体又はモジュールを形成させるため、交互になったスペーサーとウェハーが同軸方向に整列している、膜の積重体又はモジュールアセンブリ、
(c)圧力容器内部の膜の積重体又はモジュールアセンブリの周りに配置されたガスマニホールドシュラウドアセンブリであって、該シュラウドアセンブリは、積重体又はモジュールを少なくとも第一ウェハー区域と第二ウェハー区域に分離し、圧力容器の入口を第一ウェハー区域にあるウェハーの外部領域と連通させ、そして、第一ウェハー区域にあるウェハーの外部領域を第二ウェハー区域のウェハーの外部領域と直列に連通させている、ガスマニホールドシュラウドアセンブリ、並びに、
(d)圧力容器の入口及びガスマニホールドシュラウドアセンブリのいずれか又は両者に配置された1又はそれ以上のガード床、
を含むイオン輸送膜システムに関する。
【0016】
本発明の別の態様は、
(a)内部、外部、入口、及び出口を有する圧力容器、
(b)圧力容器の内部に配置されている複数のイオン輸送膜モジュールであって、このモジュールの少なくとも一部は直列に配列されている、複数のイオン輸送膜モジュール、
(c)任意の二つの隣接する膜モジュールの間に配置されている触媒、並びに、
(d)1又はそれ以上のガード床であって、各ガード床は圧力容器内の任意の二つの隣接するイオン輸送膜モジュールの間に配置されている、1又はそれ以上のガード床、
を含むイオン輸送膜反応器システムに関する。
【0017】
触媒は、ニッケル、コバルト、白金、金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及び鉄よりなる群から選ばれる1種もしくはそれ以上の金属又はそのような金属を含有する化合物を含むことができる。各ガード床は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の化合物を含む反応性固体物質を含むことができる。
【0018】
本発明の態様を図面で説明するが、それらは必ずしも一定の縮尺ではなく、またこれらの態様をここに示した特徴のいずれかに限定しようとするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の態様に従う酸素回収又は酸化プロセスで使用するための膜ウェハー積重体又はモジュールの模式正面図である。
【図2A】酸化プロセスで使用するための図1の膜ウェハー積重体又はモジュールの側面図である。
【図2B】酸素回収で使用するための図1の膜ウェハー積重体又はモジュールの側面図である。
【図3A】図1、2A及び2Bの膜ウェハーの断面図である。
【図3B】図1、2A及び2Bの膜ウェハーのもう一つの断面図である。
【図3C】図1、2A及び2Bの別な膜ウェハーの断面図である。
【図3D】図1、2A及び2Bの別な膜ウェハーのもう一つの断面図である。
【図4A】酸素回収に使用するための膜分離器の容器内部の模式側面図である。
【図4B】図4Aの断面図である。
【図5】酸化プロセスに使用するための膜反応器の容器内部の模式側面図である。
【図6】図5の断面図である。
【図7】断熱材料の配置を示す図4Bの態様の図である。
【図8】断熱材料の別な配置を示す図4Bの第二の態様の図である。
【図9】断熱材料の別な配置を示す図4Bの第三の態様の図である。
【図10】断熱材料の別な配置を示す図4Bの第四の態様の図である。
【図11】断熱材料の別な配置を示す図4Bの第五の態様の図である。
【図12】断熱材料の別な配置を示す図4Bの第六の態様の図である。
【図13】断熱材料の配置を示す図4Bの第七の態様の図である。
【図14】酸素回収又は酸化プロセスで使用するための別な膜容器の内部及びモジュールの配置の模式側面図である。
【図15】同軸線の平行膜モジュールを有する図4Aに示す流動封じ込めダクトの断面図である。
【図16】平行膜モジュールのオフセットバンクを有する流動封じ込めダクトの断面図である。
【図17】容器への原料ガスから揮発性汚染物質を除去するためのガード床を含む、酸素回収に使用するための膜分離器の容器内部の模式側面図である。
【図18】容器への原料ガスから揮発性汚染物質を除去するためのガード床を含む、酸化プロセスに使用するための膜反応器の容器内部の模式側面図である。
【図19】容器内のガス中の揮発性汚染物質を除去するためのガード床を含む、同軸平行膜モジュールを有する図4Aの流動封じ込めダクトの側面図である。
【図20】容器内のガス中の揮発性汚染物質を除去するためのガード床を含む、平行膜モジュールのオフセットバンクを有する流動封じ込めダクトの側面図である。
【図21】クロム含有合金表面のCrO3と平衡下での、及びMgOを含むガード床材料と平衡下での、CrO3分圧を温度の関数としてプロットした図である。
【図22】Si含有合金表面のSi(OH)4と平衡下での、及びMgOを含むガード床材料と平衡下での、Si(OH)4分圧を温度の関数としてプロットした図である。
【図23】W含有合金表面のWO2(OH)2と平衡下での、及びMgOを含むガード床材料と平衡下での、WO2(OH)2分圧を温度の関数としてプロットした図である。
【図24】CrO3を含有するガスに暴露されたMgOを含むガード床について、クロム濃度を床の奥行きの関数としてプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の態様は、酸素回収又は酸化プロセスのいずれかに使用するための、直列に運転する複数の膜モジュールを利用するイオン輸送膜システムの設計及び運転を対象とするものである。膜を横切る酸素の輸送が発熱反応をもたらすことになる場合、例えばメタンから合成ガスを生産する場合、膜を横切る過度の温度勾配を防ぐために、個々の膜を横切る反応物の転化の度合を制限せねばならないということが判明した。また、膜が酸素を低圧の透過物流へと輸送している場合、膜の前端と後端の間の膜材料における過度の酸素欠乏勾配を防ぐために、個々の膜を横切る酸素抽出量を制限せねばならないということも判明した。過度の温度勾配又は酸素欠乏勾配は膜に過大な応力を引き起こし、それは膜の寿命をかなり甚だしく制限しかねない。
【0021】
本発明は、複数の膜モジュール又はモジュールのバンクを直列に並べて、その結果各モジュールの膜を横切って抽出される酸素量を、膜材料における過度の酸素欠乏勾配を防止するのに充分低くすることにより、これらの問題に対処する。各個別モジュールを横切って抽出される酸素の量はモジュールを適切な大きさにすることにより制限され、そして望ましい酸素抽出の全体的な度合は、選ばれた複数のモジュールを直列に運転することにより達成できる。膜を横切る酸素輸送が発熱反応をもたらす場合、各モジュールにおいて個々の膜を横切る反応物の転化度は、流れ方向に膜を横切る過度の温度勾配を防止するのに充分低くなければならない。各個別モジュールを横切る転化度はモジュールを適切な大きさにすることにより制限することができ、そして望ましい全体的な転化は、選ばれた複数のモジュールを直列に運転することによって達成できる。
【0022】
各膜モジュールの膜の外側を流れるガスは、下記で説明するように、モジュール内部の膜の内側にあるガスよりも高圧であるのが好ましい。気相物質移動の抵抗を最小とするため、より高圧のガスは高速で、そしてできるだけ均一に、膜の外表面を一方から他方へと導くべきである。
【0023】
イオン輸送膜システムの独特な運転条件のゆえに、このシステムの設計には、圧力容器、容器内部に配置され一連の膜モジュールを取り囲む随意的なガス流動封じ込め装置又はダクト、及び容器壁を膜モジュールよりも低い温度で運転するのを可能にするための容器内部の断熱材を含めることができる。下記で説明するようなこれらの構成要素のおのおのの適切な物理的配置が、このシステムの製作、据え付け、及び長期の運転可能性を改善する。更に、全体としてのイオン輸送膜システムの長期の信頼性に貢献し得るその他の内部設計の工夫が開示される。
【0024】
ここに提示する本発明の態様の説明で使用する用語に対して、以下の定義が適用される。
【0025】
イオン輸送膜モジュールとは、ガスが膜構造体の外表面を一方から他方へと流動するように配置されたガスの流入領域とガスの流出領域を有する複数の膜構造体の集合体である。膜モジュールの流入領域から流出領域へと流れるガスは、それがモジュールの膜構造体の表面を一方から他方へと進むにつれ、その組成が変化する。各膜構造体には、酸素イオンを透過させる活性膜層又は領域によって隔てられている酸素含有ガス供給側と透過物側がある。各膜構造体にはまた、内部領域と外部領域もある。膜モジュールが酸素分離装置として働く一つの態様では、酸素含有ガス供給側が膜構造体の外部領域に隣接することができ、透過物側が膜構造体の内部領域に隣接することができる。
【0026】
膜モジュールが酸化反応装置として働く別の態様では、酸素含有ガス供給側が膜構造体の内部領域に隣接することができ、透過物側が膜構造体の外部領域に隣接することができる。この別態様では、反応物原料ガスは膜構造体の外部領域を流れ、そして透過した酸素と反応する。従ってこの態様では、透過物側が膜構造体の反応物ガス側でもある。
【0027】
膜構造体は、酸素含有ガスが管の片側に接触して流れ(すなわち、管の内部領域又は外部領域のいずれかであり)、酸素イオンが管壁中又は管壁上の活性膜材料を透過して管の他の側に至る管構造を有してもよい。酸素含有ガスは、管の内側又は外側を管の軸線に対して一般に平行な方向に流れてもよく、逆に管の軸線に対して平行でない方向に管の外側を流れてもよい。モジュールは、複数の管の供給側と透過物側を隔離するための適当なチューブシートアセンブリを備えた差し込み式のもしくはシェル・アンド・チューブ構造に配列された複数の管を含む。
【0028】
あるいはまた、膜構造体は、中央又は内部領域及び外部領域を有するウェハーが少なくとも周縁の一部をシールされた2つの平行な平面部材によって形成されている、平面構造を有することができる。酸素イオンは、平面部材の片面又は両面に配置することができる活性膜材料を透過する。ガスはウェハーの中央又は内部領域を流れることができ、そしてウェハーには、ガスがウェハーの内部領域に入り及び/又はそこから出ていけるよう、1以上のガス流動用開口部がある。こうして、酸素イオンは外部領域から内部領域へ透過してもよく、あるいは逆に内部領域から外部領域へ透過してもよい。
【0029】
膜モジュールの構成要素には、酸素イオンを輸送又は透過させ、また電子を輸送してもよい活性膜層、この活性膜層を支持する構造要素、そして膜表面へ及び膜表面からガスの流れを導くための構造要素が含まれる。活性膜層は、一般的には混合金属酸化物セラミック材料を含み、そしてまた1種以上の元素金属を含んでもよい。膜モジュールの構造要素は、例えば混合金属酸化物セラミック材料のような任意の適当な材料で製作することができ、そしてまた1種以上の元素金属を含んでもよい。活性膜層及び構造要素のいずれも同じ材料で製作してもよい。
【0030】
単一モジュールを直列に配列することができ、これはいくつかのモジュールを単一の軸線に沿って配置することを意味する。典型的には、第一のモジュールの膜構造体の表面を一方から他方へと通過したガスは、そのモジュールの流出領域から流出し、その後このガスの一部又は全てが第二のモジュールの流入領域に入り、そしてその後第二のモジュールの膜構造体の表面を一方から他方へと流れる。一連の単一モジュールの軸線は、全体的な流れの方向に対して、又は直列のモジュールを通過するガスの軸線に対して、平行であるか又はほぼ平行とすることができる。
【0031】
モジュールは2又はそれ以上の並列なモジュールのバンクに配置でき、この場合、並列モジュールのバンクは、全体的な流れの方向に対して、又はモジュール上を通過するガスの軸線に対して平行でなく、そして一般的にはそれに対して直角であることができる。モジュールの複数のバンクを直列に配列することができ、これは、定義により、モジュールのバンクが、第一のモジュールバンクの膜構造体の表面を通り越したガスの少なくとも一部が第二のモジュールバンクの膜構造体の表面を流れるように配置されることを意味する。
【0032】
任意の数の単一モジュール又はモジュールバンクを直列に配列することができる。一つの態様では、直列単一モジュール又は直列モジュールバンクのモジュールが、軸線の数が1に等しいかあるいは各バンクのモジュールの数に等しい、1つの共通の軸線上あるいは複数の共通の軸線上にあることができる。下記で説明する別の態様では、直列のモジュール又はモジュールバンク中の連続するモジュール又はモジュールバンクを、それぞれ、モジュールが少なくとも2つの軸線上にあり、あるいはバンク中のモジュール数よりも多い数の軸線上にあるように、交互にオフセットさせることができる。これらの態様のどちらも、ここで使用する直列モジュールの定義に包含される。
【0033】
好ましくは、膜モジュールの外部領域で外表面に接触するガスは、膜モジュールの内部領域内のガスよりも高圧である。
【0034】
流動封じ込めダクトとは、流動するガスを直列のモジュールの向こう側へ導く、複数の直列膜モジュールを取り囲む導管又は閉鎖流路として定義される。
【0035】
マニホールドとは、ガスを膜モジュールの内部領域に入り及び/又はそこから出るよう導く、パイプ又は導管の集成体である。第一の又は内側の導管を第二の又は外側の導管内に設置することにより、2つのマニホールドを組み合わせることができ、この場合、第一の導管が第一のマニホールドを提供し、導管の間の環状部が第二のマニホールドを提供する。これらの導管は同一中心又は同軸でよく、この場合これら二つの用語は同じ意味を有する。あるいはまた、導管は同一中心又は同軸でなくてもよく、別々の平行又は非平行の軸線を持つことができる。複合マニホールドの機能を提供する内管及び外管のこの構造を、ここでは入れ子式マニホールドと定義する。
【0036】
連通(flow communication)とは、膜モジュール及び容器システムの構成要素がお互いに関して、ガスが1つの構成要素から別の構成要素へと容易に流れることができるように適応していることを意味する。
【0037】
ウェハーとは、中心又は内部領域及び外部領域を有する膜構造体であり、ここでのウェハーは、少なくとも周縁の一部がシールされた2つの平行な平面部材によって形成される。平面部材のいずれか又は両方の表面に、活性膜材料を配置することができる。ガスはウェハーの中央又は内部領域を流れることができ、すなわち内部領域の全ての部分が連通しており、そしてウェハーは、ガスがウェハーの内部領域に入り及び/又はそこから出るのを可能にする1又はそれ以上のガス流動開口部を有する。ウェハーの内部領域は、ガスが内部領域を流れるのを可能にし、且つ平行な平面部材を機械的に支持する、多孔質及び/又は流路のある材料を含んでもよい。活性膜材料は、酸素イオンを輸送又は透過させるが、いかなるガスの流れも通さない。
【0038】
酸素とは、原子番号8を有する元素を含む酸素の諸形態に対する一般用語である。一般用語の酸素は、酸素イオンも、またガス状酸素(O2又は二酸素)も包含する。酸素含有ガスは、空気、又は酸素、窒素、水、一酸化炭素、及び二酸化炭素よりなる群から選ばれる1以上の成分を含むガス混合物を包含することができるが、これらに限定されるわけではない。
【0039】
反応物ガス又は反応物原料ガスとは、酸素と反応して酸化生成物を生成する少なくとも1つの成分を含むガスである。反応物ガスは1種又はそれ以上の炭化水素を含有してもよく、ここでの炭化水素は、主として又は専ら水素原子と炭素原子を含む化合物である。炭化水素は他の原子、例えば酸素などを含むこともできる。
【0040】
合成ガスとは、少なくとも水素と炭素酸化物を含有するガス混合物である。
【0041】
イオン輸送膜とは、高温で酸素イオンを輸送又は透過することができる混合金属酸化物を含むセラミック膜材料の活性層である。イオン輸送膜は、酸素イオンと同様に電子を輸送することもでき、このタイプのイオン輸送膜は一般に混合導体膜と記載される。イオン輸送膜はまた、それにより複合膜を形成する1種以上の元素金属を含むこともできる。
【0042】
イオン輸送膜システムとは、酸素回収又は酸化反応に使用する複数のイオン輸送膜モジュールのアレイに対する一般用語である。イオン輸送膜分離システムは、酸素含有ガスから酸素を分離及び回収するために使用するイオン輸送膜システムである。イオン輸送膜反応器システムとは、酸化反応に使用するイオン輸送膜システムである。
【0043】
本発明の態様における一連の膜モジュールは、上記のように管状又は平面構造のいずれかで製作することができる。平面構造は多くの用途にとって好ましく、様々な構造の平面膜モジュールが可能である。平面膜モジュール構造は、例えば2003年3月21日出願の同時係属米国特許出願第10/394620号明細書に記載されており、この出願は参照によりここに組み入れられる。
【0044】
原語書類中において不定冠詞「a」及び「an」を使用することは、本明細書及び特許請求の範囲に記載の本発明のいずれかの特徴に適用される場合、1又はそれ以上を意味する。「a」及び「an」の使用は、限定するように特に述べていない限り、単一を意味することに限定するものではない。
【0045】
典型的な平面膜モジュールの例を図1に示し、これは本発明の態様に従う酸素回収又は酸化プロセスに使用するための膜ウェハー積重体又はモジュールの模式正面図である。この例の積重体又はモジュールは、中空スペーサー3で隔てられ随意的なキャップ5を有する複数の平面ウェハー1を含んでいる。ウェハー及びスペーサーは、図示のように交互に配置及び接合されて、積重体又はモジュールの軸線7を形成している。ウェハーは平面図において任意の形状であってよいが、正方形又は長方形が一般に好ましい。正方形又は長方形ウェハーの辺の寸法は2cmと45cmの間とすることができる。積重体におけるウェハーの数は1000までの範囲とすることができる。
【0046】
積重体又はモジュールの外部領域とは、ウェハー及びスペーサーの外表面を取り囲む領域である。下記で詳細に述べるように、ウェハー1は、スペーサー3の内部と連通するように配置される内部領域を有し、ウェハーとスペーサーの間にはガスを漏らさないシールが形成される。底部の中空スペーサー11にある開口部9は、ガスが積重体又はモジュールの内部領域に入り及び/又はそこから出てゆくことを可能にし、モジュールの内部領域はウェハーの内部領域と中空スペーサーにある開口部によって形成されている。従って、開口部9はモジュールの内部領域と連通している。
【0047】
図1のモジュール側面図を図2Aに示し、これは酸化プロセスに使用するための典型的構造を例示する。この例では、ウェハー200の間のスペーサー201はそれぞれ、開口部203及び205の2つの別々な組を有している。スペーサー201にある開口部203、並びにスペーサー201の上方及び下方に配置されたスペーサーにある別の開口部は、内部マニホールドを形成し、この内部マニホールドは、ウェハーの左端でウェハーの層を通り抜ける適切に配置された開口部(図示せず)により、ウェハーの内部領域と連通している。ウェハー層を通り抜けるこれらの開口部も、スペーサー201の内部開口部203並びにスペーサー201の上方及び下方のスペーサーの内部開口部を相互に連通させる。同様に、スペーサー201の開口部205、並びにスペーサー201の上方及び下方に配置されたスペーサーにある別の開口部が、内部マニホールドを形成し、この内部マニホールドは、ウェハーの右端でウェハーの層を通り抜ける適切に配置された開口部(図示せず)により、ウェハーの内部領域と連通している。ウェハーの層を通り抜けるこれらの開口部もまた、スペーサー201の内部開口部205並びにスペーサー201の上方及び下方のスペーサーにある内部開口部を相互に連通させる。
【0048】
この例の構造では、ガス流207は開口部203及びそれらの上方の開口部により形成された内部マニホールドを上向きに流れ、次いでウェハーの内部領域を水平に流れる。次に、ウェハーの内部領域からのガスは、開口部205及びそれらの上方の開口部により形成された内部マニホールドを下向きに流れ、ガス流209としてモジュールを出る。モジュールのガス流入領域の第二のガス211は、スペーサー201の両側のモジュールの外部領域を通りウェハー200の外表面に接触して流れる。ウェハー200の外表面に接触後、ガス213はモジュールのガス流出領域を流れる。このモジュールは、600〜1100℃典型的な温度範囲で運転することができる。
【0049】
図2Aのモジュールは酸化反応器システムの一部として使用でき、この場合、代表的なガス211は反応ガスであり、代表的なガス207は酸化剤又は酸素含有ガスである。酸素含有ガス207は、開口部203を経由して内部マニホールドを流れ、またウェハーの内部領域を流れ、酸素は、ウェハーの平面部材にある活性膜材料を透過し、そして酸素の減少したガス209が開口部205を通ってモジュールから流れる。透過した酸素は、ガスがウェハーの外表面を流れるにつれて反応物ガス又は反応物原料ガス211中の反応物成分と反応し、そして酸化生成物を生成する。モジュールからの出口ガス213は、酸化生成物と未反応成分を含んでいる。一つの例となる態様では、反応物ガス211はメタン又はメタン含有原料ガスを含み、出口ガス213は未反応メタン、水素、炭素酸化物、及び水の混合物であり、酸素含有ガス207は空気であり、そして酸素の減少したガス209は、ガス207に比べて窒素に富み酸素が減少している。典型的には、ガス211及び213の圧力はモジュールの内部領域のガス圧力よりも高い。
【0050】
図1のモジュールの別の側面図を図2Bに示し、これは酸素含有ガスから高純度酸素を回収するプロセスに使用するための典型的な構造を例示している。この例では、ウェハー217の間のスペーサー215は開口部219を有しており、開口部219及びスペーサー215の下方に配置したスペーサーにある別の開口部が、ウェハーの内部領域と連通する内部マニホールドを形成している。こうして開口部221は、モジュールの内部領域を製品ガスの導管(図示せず)と連通させる。モジュールのガス流入領域の酸素含有ガス223、例えば空気は、スペーサー215の両側のモジュールの外部領域を通りウェハー217の外表面に接触して流れる。ウェハー217の外表面に接触後、酸素の減少したガス225がモジュールのガス流出領域を流れる。このモジュールは、600〜1100℃の典型的な温度範囲で運転することができる。
【0051】
酸素含有ガスがモジュールの外部領域を流れそしてこのガスがウェハーの外表面に接触すると、酸素はウェハーの平面部材の活性膜材料を透過し、モジュールの内部領域に高純度酸素ガスが集まる。高純度酸素製品ガス227は開口部221から流出する。一般的に、酸素含有ガス223及び225の圧力はモジュールの内部領域にある高純度酸素の圧力よりも高い。
【0052】
図1、2A及び2Bにおけるウェハーの内部領域の1つの典型的構造を、図3A及び3Bの断面図で例示する。図1の2−2断面を表す図3Aを参照すれば、このウェハーは、ガスが気孔を通って流動するのを可能にする多孔性セラミック材料製の外部支持層301及び303を有している。緻密な活性膜層305及び307が外部支持層301及び303と接触しており、そして流動流路層315及び317の一部である支持リブ321及び329によって支持されている。これらのリブもまた、ガスの流動のための開口部又はスロット313を有するスロット付き支持層309により支持されている。開放の流路319と325が、開口部又はスロット313を介して連通している。随意に、図2Bのモジュールを酸素含有ガスから酸素を回収するのに使用する場合には、支持層301及び303は必要ないことがある。
【0053】
「緻密な」という語は、焼結又は焼成した場合に、ガスがそれを通り抜けて流れることのできないセラミック材料を指す。膜が無傷でガスを漏出させるひび、穴、又は欠陥がない限り、ガスは混合伝導性多成分金属酸化物材料でできた緻密なセラミック膜を通り抜けて流れることはできない。酸素イオンは、高温、典型的には600℃より高い温度で、混合伝導性多成分金属酸化物材料でできた緻密なセラミック膜を透過することができる。
【0054】
図2A及び2Bの4−4断面を表す図3Bは、図3Aの断面を90度回転させたウェハー断面を示す。この断面は、同一に見える外部支持層301及び303と同一に見える緻密な活性膜材料層305及び307を示している。この断面はまた、先のものに代わるスロット付き支持層309と流動流路層315及び317も示している。交互に配された支持リブ333の間に開放の流路331が形成され、ウェハーの内部領域をガスが流れるのを可能にしている。従って、ウェハーの内部領域は、流動流路層315、流動流路層317、及びスロット付き支持層309の内部にある一体化した開放容積として定義される。
【0055】
緻密な活性膜層305及び307は、好ましくは、一般式(LaxCa1-x)yFeO3-δ(式中、1.0>x>0.5、1.1≧y>1.0、そしてδは該組成物の電荷を中性にする数である)を有する少なくとも1つの混合伝導性多成分金属酸化物化合物を含有する混合金属酸化物セラミック材料を含む。多孔性支持層301及び303のためには任意の適当な材料を使用でき、この材料は、例えば、活性膜層305及び307と同じ組成を持つセラミック材料でよい。好ましくは、多孔性支持層301及び303は混合伝導性多成分金属酸化物材料である。スロット付き支持層309並びに流動流路層315及び317の構造部材には任意の適当な材料を使用でき、この材料は、例えば、活性膜層305及び307と同じ組成を持つセラミック材料でよい。流路を備えた支持層の材料は、好ましくは、緻密なセラミック材料である。一つの態様では、活性膜層305及び307、多孔性支持層301及び303、スロット付き支持層309、並びに流動流路層315及び317は、全て同じ組成の材料で製造することができる。
【0056】
緻密な活性膜層305及び307は、随意に、1種以上の酸素還元触媒を酸化剤側に含むことができる。この1種以上の触媒又は触媒は、白金、パラジウム、ルテニウム、金、銀、ビスマス、バリウム、バナジウム、モルブデン、セリウム、プラセオジム、コバルト、ロジウム及びマンガンよりなる群から選ばれる金属又はこの群から選ばれる金属を含有する化合物を含むことができる。
【0057】
多孔性支持層301及び303は、随意に、炭化水素の酸化、改質、及び/又は該多孔性層で起こるその他の反応を促進するための1種以上の触媒を含んでもよい。この1種以上の触媒は、多孔性支持層301及び303の一方又は両方の表面に配置してもよく、あるいはこの層全体に分散させてもよい。この1種以上の触媒は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、金、ニッケル、コバルト、銅、カリウム及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる金属又はこの群から選ばれる金属を含有する化合物を含むことができる。構造及び/又はプロセス上の理由で望ましい場合には、それぞれ活性膜層305及び307と隣接する流動流路層315及び317の間に、更なる多孔性層を配置してもよい。
【0058】
図1、2A及び2Bの酸素回収用途向けウェハーの内部領域のもう一つの可能な構造を、図3C及び3Dの断面図に例示する。図1の2−2断面を表す図3Cを参照すれば、ウェハーは外側緻密層351及び353を有する。355及び357の多孔性セラミック層が、外側緻密層351及び353と接触している。多孔性セラミック層355は、流動流路層365の一部である支持リブ371によって支持されている。多孔性セラミック層355は、流動流路層365の一部である流動流路366と接触している。多孔性セラミック層357は、流動流路層367の一部である流動流路368と接触している。
【0059】
リブ371はまた、ガスの流動のための開口部又はスロット363を有する流動流路層358によって支持されている。流動流路層367は流動流路層359のリブ373によって支持されており、そしてブリッジ379が流動流路368の端部を形成している。ブリッジ372が流動流路363の端部を形成し、そして流動流路368は流動流路層359の流動流路374と連通している。開放の流路374及び363は連通している。
【0060】
図2A及び2Bの4−4断面を表す図3Dは、図3Cの断面を90度回転させたウェハーの断面を例示している。この断面は、同一に見える外部緻密層351及び353と同一に見える多孔性セラミック層355及び357を示している。多孔性セラミック層355が、流動流路層365によって支持されている。多孔性セラミック層355は、流動流路層365の一部である流動流路366と接触している。多孔性セラミック層357は、流動流路層367のリブ378によって支持されている。多孔性層357は、流動流路層367の一部である流動流路368と連通している。
【0061】
リブ378はまた、ガスの流動のための開口部又はスロット374を有する流動流路層359によって支持されている。流動流路層365は流動流路層358のリブ375によって支えられている。ブリッジ371が、流動流路366の端部を形成している。ブリッジ376が、流動流路374の端部を形成し、そして流動流路366は流動流路層358の流動流路363と連通している。開放の流路374及び363は連通している。
【0062】
従って、ウェハーの内部領域は、流動流路層365、流動流路層367、流動流路層358、及び流動流路層359の内部にある一体化した開放容積として定義される。層365及び358の流動流路は互いに直行していてよく、層367及び359の流動流路もまた同様である。あるいはまた、流動流路358及び359は、ウェハーの中央から放射状に延在し且つウェハー中央の中心口と連通している流動流路を含む単一の流動流路層に置き換えてもよい。
【0063】
緻密活性膜のための代表的な組成物が米国特許第6056807号明細書に記載されており、それは参照によりここに組み入れあられる。緻密活性膜層351及び353は、好ましくは、一般式(LaxSr1-x)CoyO3-δ(式中、1.0<x<0.4、1.02≧y>1.0、そしてδは該組成物の電荷を中性にする数である)を有する少なくとも1つの混合伝導性多成分金属酸化物化合物を含有する混合金属酸化物セラミック材料を含む。多孔性支持層355及び357のためには任意の適当なセラミック材料を使用することができ、この材料は、例えば、活性膜層351及び353と同じ組成の材料でよい。好ましくは、多孔性支持層355及び357は混合伝導性多成分金属酸化物材料である。流動流路層365、367、358及び359の構造部材には任意の適当な材料を使用でき、そしてこの材料は、例えば、活性膜層351及び353と同じ組成を持つセラミック材料でよい。流路を設けた流動層の材料は、好ましくは、緻密なセラミック材料である。一つの態様では、活性膜層351及び353、多孔性支持層355及び357、並びに流路を設けた流動層358、359、365及び367は、全て同じ組成を持つ材料で製作することができる。
【0064】
随意に、緻密層351及び353の外表面に多孔性層を適用してもよい。酸素発生用途向けのウェハーの内部領域のためのその他の典型的な構造が、米国特許第5681373号明細書に記載されており、それは参照によりここに組み込まれる。
【0065】
本発明の態様は、上に明示したように直列に配列される複数の膜モジュールを利用する。この直列モジュールはまた、ガス流をモジュールへ導きそしてガスをモジュールから導くための適当なガス流動封じ込めダクト、導管、及び/又はマニホールドを備えた1又はそれ以上の容器に取り付けることができる。これらの態様の一つを図4Aに例示し、これは酸素含有ガスから高純度酸素製品を回収するのに使用するための典型的な膜分離器容器の内部の模式側面図である。高純度酸素製品は、少なくとも99.9容量%の酸素を含有することができる。膜モジュール401、403、405、407、及び409は、圧力容器413内の随意的な流動封じ込めダクト411内に直列に取り付ける。これらの膜モジュールは、例えば、図1及び2Bを参照して先に説明したモジュールと同様でよい。随意的な流動封じ込めダクト411は、入口ガス流417をこのダクトを通してモジュール401〜409のウェハーの外表面と接触させるよう導くための入口415を有する。この入口ガス流は、任意の適当な方法(図示せず)で600℃〜1100℃の温度に加熱された加圧酸素含有酸化剤ガス、例えば空気である。ダクト411内のガスの圧力は0.2〜8MPaの範囲内でよい。流動封じ込めダクトは、好ましくは、鉄と、ニッケル及びクロムよりなる群から選ばれる1以上の元素とを含有する耐酸化性金属合金を含む。流動封じ込めダクト用に利用できる商業的に入手可能な合金には、ハイネス(Haynes、登録商標)230、インコロイ(Incolloy、登録商標)800H、ハイネス(登録商標)214、及びインコネル(Inconel、登録商標)693合金がある。
【0066】
流動封じ込めダクト411内のガス圧力は、好ましくは、圧力容器413内の、この容器の内壁と流動封じ込めダクト411の外壁のと間のガス圧力より高い。圧力容器413の入口と出口の間の任意の箇所におけるダクト411の内側と外側との圧力差は、好ましくは、0に等しいかあるいはそれより大きい値に維持され、ここで、ダクト内部の圧力はダクト外部の圧力容器内の圧力と等しいかそれより高い。これは、例えば、ダクト外の空間をダクト内部の処理ガスよりも低圧のガスでパージし、処理ガス出口421でダクト外の空間とダクト中の処理ガスとを連通をさせ、パージガスをダクト外の空間へと導入し、又は、ダクト内部よりもダクト外部の空間でより低圧を維持するためにパージガス出口で圧力制御装置を使用しながら、パージガスをパージガス出口を通して抜き出すことにより、達成することができる。
【0067】
酸素含有ガスが膜モジュール401〜409のウェハーの表面を直列に通過するにつれ、酸素が緻密な活性膜層を透過し、そしてモジュールの内部領域に集まる。酸素の減少したガス流419は、出口421を通ってダクト及び圧力容器から出る。モジュールの内部領域からの高純度酸素透過製品は、一次マニホールド423、425、427、429、及び431、二次マニホールド433、435、437、439、及び441、そして主マニホールド445を流れ、高純度ガス製品流447としてこのシステムを出る。膜モジュール401〜409のうちの少なくとも2つは、圧力容器413の軸線又は流動封じ込めダクト411の軸線と平行であってもよくあるいは一致してもよいモジュールの軸線を規定する。
【0068】
上述の典型的な膜分離器容器は、ガスを膜モジュールに供給するための単一の入口、単一の流動封じ込めダクト、及び膜モジュールからの単一の出口を有してはいるが、複数の入口、複数の流動封じ込めダクト、及び/又は複数の出口を使用することができるこのほかの態様が可能である。例えば、圧力容器は、各々が1又はそれ以上の入口及び1又はそれ以上の出口を持つ2個(又はそれ以上)の流動封じ込めダクトを有してもよい。一般的に、分離器容器が入口と出口を有すると記載される場合、これは、それが1又はそれ以上の入口と1又はそれ以上の出口を有することを意味する。一般的に、分離器容器が流動封じ込めダクトを有すると記載される場合、これはそれが1又はそれ以上の流動封じ込めダクトを有することを意味する。
【0069】
図4Aの典型的な膜分離器容器のもう一つの図を、図4Bに示したように6−6断面によって示す。この態様では、ダクト411中に、3つの膜モジュール401a、401b、及び401cのバンクが平行に取り付けられており、そしてこのバンクは、二次マニホールド433に接続した3つの一次マニホールド423a、423b、及び423cを有する。二次マニホールド433はまた、主マニホールド445に接続している。これとは別に、1つの膜モジュール、2つの並列の膜モジュール、又は3つ以上の並列の膜モジュールを、各バンクで使用してもよい。
【0070】
二次マニホールド433、435、437、439及び441と主マニホールド445は、図4A及び4Bの態様では圧力容器413の内部に位置してはいるが、別の態様ではこれらのマニホールドは圧力容器の外部に位置してもよい。この別態様では、一次マニホールド423、425、427、429、及び431は圧力容器413の壁を貫通する。
【0071】
別の態様では、平面膜モジュール401〜409を、随意的なダクト411を通る長手方向のガスの流れに関して直列の関係に配置した管状膜モジュールと取り替えることができる。これらのモジュールは複数の単一管を利用してもよく、あるいは差し込み式の管を利用してもよく、そしてこれらのモジュールは、ガスが交差流でもって管を横切って流れるか、あるいは平行流でもって管と接触するような向きにすることができる。この別態様では、マニホールドは全て、図4A及び4Bに示すように圧力容器内に位置する。
【0072】
本発明のもう一つの態様を図5に示し、これは酸化プロセスに使用するための典型的な膜反応器容器の内部の模式側面図である。膜モジュール501、503、505、507、及び509は、圧力容器513内部の流動封じ込めダクト511内に直列に取り付けられる。これらの膜モジュールは、例えば図1及び2Aを参照して先に説明したモジュールと同様でよい。随意的な流動封じ込めダクト511は、入口ガス流517をこのダクトを通してモジュール501〜509のウェハーの外表面に接触するよう導くための入口515を有する。この入口ガス流は、高温で酸素と反応する1又はそれ以上の成分を含有する反応物原料ガスであり、この入口反応物原料ガスは任意の適当な方法(図示せず)で600℃〜1100℃の温度に加熱される。ダクト511内のガスの圧力は0.2〜8MPaの範囲でよい。反応物原料ガスの例は水蒸気と天然ガスの混合物であり、天然ガスは主としてメタン、そしてより少量の軽質炭化水素を含む。この混合物は、水蒸気、メタン、及び炭素酸化物を含有する反応物原料ガスを生成させるため約800℃より低い温度で前もって改質することができる。その他の酸化可能な反応物原料ガスとしては、例えば、水素、一酸化炭素、水蒸気、メタノール、エタノール、及び軽質炭化水素の様々な混合物が挙げられる。
【0073】
流動封じ込めダクト511内のガス圧力は、好ましくは、圧力容器513の内壁と流動封じ込めダクト511の外壁との間の、容器内部のガス圧力より高い。圧力容器513の入口と出口の間の任意の点における、ダクト511の内部と外部との圧力差は、好ましくは、0に等しいかそれより大きい値に維持され、ダクト内部の圧力はダクト外部の圧力容器内の圧力と等しいかそれより高い。これは、例えば、ダクト外の空間をダクト内部の処理ガスよりも低圧のガスでパージし、処理ガス出口559でダクト外の空間とダクト内の処理ガスとを連通させ、パージガスをダクト外の空間へと導入し、そしてダクト内部よりもダクト外部の空間でより低圧を維持するためにパージガス出口で圧力制御装置を使用しながら、パージガスをパージガス出口を通して抜き出すことにより、達成することができる。
【0074】
膜モジュール501〜509の内部領域は、2つのマニホールドシステムと連通しており、マニホールドシステムの一方は酸素含有酸化剤ガスをモジュールに導入するため、他方は酸素の減少した酸化剤ガスをモジュールから抜き出すためのものである。これらのマニホールドシステムの第一のものは、主たる入口マニホールド519、一次入口マニホールド521、523、525、527、及び529、そして二次入口マニホールド531、533、535、537、及び539を含む。これらのマニホールドシステムの第二のものは、主たる出口マニホールド541と、一次出口マニホールド543、545、547、549、及び551を含む。
【0075】
図5の構造に代わる別の構造(図示せず)では、流動封じ込めダクト511内に位置している場合に、二次入口マニホールド531、533、535、537、及び539をそれぞれ一次出口マニホールド543、545、547、549、及び551と一体化することができる。第一の又は内部導管を第二の又は外部導管内に組み込むことにより、二つのマニホールドを一体化してもよく、この場合、第一の導管が第一のマニホールドを提供し、導管の間の環状部が第二マニホールドを提供する。これらの導管は同一中心又は同軸でよく、あるいはまた、導管は同一中心又は同軸でなくてもよく、別々の平行又は非平行軸線を持つことができる。複合マニホールド機能を提供する内部導管及び外部導管のこの構造を、ここでは入れ子式マニホールドと定義する。
【0076】
この別態様の構造では、ガス553は中央の導管を流れ、ガス555はこれら入れ子式マニホールドの各組の環状部を流れる。入れ子式マニホールドは、流動封じ込めダクト511の外にある別々のマニホールドへと推移し、すなわち、図5に示すように、二次入口マニホールド531、533、535、及び539と一次出口マニホールド543、545、547、549、及び551へと推移する。随意的に、一次出口マニホールド543、545、547、549、及び551は、流動封じ込めダクト511内のそれぞれ二次入口マニホールド531、533、535、537、及び539の中に入れ子状に入っていてもよい。このオプションでは、ガス555は中央導管を流れ、ガス553はこれら入れ子式マニホールドの各組の環状部を流れることになる。従って、包括的に言えば、二次入口マニホールドと一次出口マニホールドは、流動封じ込めダクト511内に位置する場合に、入れ子式とすることができ、そして環状部が二次入口マニホールドかあるいは一次出口マニホールドのいずれかを提供することができる。
【0077】
加熱した加圧酸素含有酸化剤ガス553、例えば、任意の適当な方法(図示せず)で600〜1100℃の温度に加熱した空気が、主入口マニホールド519に入り、一次入口マニホールド521、523、525、527、及び529と二次入口マニホールド531、533、535、537、及び539を通って膜モジュール501、503、505、507、及び509の入口へと流れる。膜モジュールの内部領域の酸化剤ガスから酸素が、モジュール501〜509のウェハーの緻密活性膜層を透過し、透過した酸素は膜モジュールの外部領域において反応性成分と反応する。酸素の減少した酸化剤ガスが、一次出口マニホールド543、545、547、549、及び551と主出口マニホールド541を通って膜モジュール内部領域の出口を出て、そして最後の酸素の減少した酸化剤ガスがガス流555として抜き出される。反応生成物と未反応の供給成分とを含有する出口ガス流557が、出口559を通してこの反応器システムから抜き出される。
【0078】
上述の典型的な反応器容器には膜モジュールへの反応物原料ガスの単一の入口、単一の流動封じ込めダクト、そして膜モジュールからの単一の出口があるが、複数の入口、複数の流動封じ込めダクト、及び/又は複数の出口を使用することができる他の態様も可能である。例えば、圧力容器は、各々に1又はそれ以上の入口及び1又はそれ以上の出口のある2又はそれ以上の流動封じ込めダクトを有することができる。一般的に、反応器容器が入口と出口を有すると記載する場合、これは1又はそれ以上の入口と1又はそれ以上の出口を有することを意味する。一般的に、反応器容器が流動封じ込めダクトを有すると記載する場合、これは1又はそれ以上の流動封じ込めダクトを有することを意味する。
【0079】
図5の典型的な膜反応器容器の別の図を、図6に示すように8−8断面でもって提示する。この態様では、ダクト511内に3つの膜モジュール503a、503b、及び503cのバンクを平行に設置する。酸化剤ガスは、主入口マニホールド519、一次入口マニホールド523、及び二次入口マニホールド533a、533b、及び533cを通って膜モジュール503a、503b、及び503cの入口へと流れる。酸素が減少した酸化剤ガスは、一次出口マニホールド545a、545b、及び545c(二次入口マニホールド533a、533b、及び533cの背後に位置する)、二次出口マニホールド561、そして主出口マニホールド541a及び541bを通って、膜モジュール503a、503b、及び503cを出る。図6の態様には3個の並列な膜モジュールが示されてはいるが、所望に応じ1つの膜モジュール、2つの並列膜モジュール、又は4つ以上の並列膜モジュールを使用してもよい。
【0080】
1つの容器からの出口ガスを他の容器に供給するように、圧力容器413と直列に追加の圧力容器を設置してもよい。追加の圧力容器は並列に配置してもよく、この場合、複数の圧力容器が並列且つ直列に運転する。同様に、1つの容器からの出口ガスを他の容器に供給するように、追加の圧力容器を圧力容器513と直列に設置してもよい。追加の圧力容器は並列に配置してもよく、この場合、複数の圧力容器が並列且つ直列に運転する。所望に応じ、ガード床を任意の直列の圧力容器間に配置してもよい。
【0081】
上記の態様では、圧力容器413及び513の壁をそれぞれの膜モジュール401〜409及び501〜509の温度よりも低い温度に維持するために内部断熱材を使用するのが望ましい。これは、図7〜13に示す種々の断熱材の態様により達成することができ、これらの図は酸素含有ガスから酸素を回収するのに使用する図4A及び4Bの態様のための断熱材の構造配置を例示している。同様の断熱材の構造配置(図示せず)を、図5及び6の酸化反応器の態様のために使用してもよい。
【0082】
これらの断熱材の態様の第一番目を図7に示し、ここでは断熱材701を圧力容器703の内部に配置しており、そしてそれは圧力容器の内壁に接触させてもよい。この態様では、流動封じ込めダクトを使用せず、代わりに断熱材自体により空洞705を形成し、そしてこの空洞がガスの流れを膜モジュールの外部領域を通り過ぎて導く役割を果たす。この断熱材は、一次マニホールド423a、423b、及び423c、二次マニホールド433、そして主マニホールド445と接触させてもよい。
【0083】
第二の断熱材の構造配置を図8に示し、ここでは断熱材801を圧力容器413の内壁に隣接して配置しており、そしてそれは圧力容器の内壁に接触させてもよい。この態様では、流動封じ込めダクト411を使用し、そして好ましくはこれを断熱材801と接触させない。断熱材は好ましくは、一次マニホールド423a、423b、及び423c、二次マニホールド433、並びに主マニホールド445と接触させない。
【0084】
第三の断熱材の構造配置を図9に示し、ここでは断熱材901は、圧力容器の内壁と、流動封じ込めダクト411、一次マニホールド423a、423b、及び423c、二次マニホールド433、並びに主マニホールド445の外表面との間の、該容器の内部領域を完全に充填している。断熱材は、容器内壁、並びに流動封じ込めダクト411、一次マニホールド423a、423b、及び423c、二次マニホールド433、そして主マニホールド445の外表面と、接触してもよい。
【0085】
もう一つの態様の断熱材の構造配置を図10に示し、ここでは断熱材1001は、膜モジュールの周囲に空洞1003を形成しており、そしてこの空洞がモジュールの外部領域を通り越してガスの流れを導く役割を果たしている。断熱材1001は一次マニホールド423a、423b、及び423cと接触してもよく、典型的には圧力容器413の内壁と接触しない。
【0086】
図11はもう一つの態様の断熱材の構造配置を示しており、ここでは断熱材1101は流動封じ込めダクト411を取り囲み、そしてそれがまた上記のように膜モジュールを取り囲んでいる。断熱材1101は一次マニホールド423a、423b、及び423cと接触してもよく、そして一般に圧力容器413の内壁及び流動封じ込めダクト411の外表面と接触しない。
【0087】
もう一つの断熱材の構造配置を図12に示し、ここでは断熱材1201は流動封じ込めダクト411を取り囲み、そしてそれがまた上記のように膜モジュールを取り囲んでいる。断熱材1201は一次マニホールド423a、423b、及び423cと接触してもよく、一般に流動封じ込めダクト411の外表面と接触し、そして一般に圧力容器413の内壁とは接触しない。
【0088】
最後の断熱材の構造配置を図13に示し、ここでは断熱材1303は流動封じ込めダクト411内に、且つ一般に該ダクトの内壁と接触して配置され、この場合、断熱材は膜モジュールの周囲に空洞1305を形成し、そしてこの空洞がガスの流れをモジュールの外部領域を通り越して導く役割を果たす。断熱材1303は一次マニホールド423a、423b、及び423cと接触してもよい。
【0089】
図7〜13の上述の態様のいずれにおいても、一次マニホールド423a、423b、及び423cでは、金属マニホールドからセラミックモジュールへと推移させるため、一般に金属−セラミックシールを使用する。同様に、図6に記載の酸化反応器の態様及び図7〜13の態様と類似の対応する断熱材の態様では、金属マニホールドからセラミックモジュールへと推移させるため、一次マニホールド533a、533b、及び533cで一般的に金属−セラミックシールを使用する。図10〜13の態様(及び酸化反応器のための同様の態様)では、これらのシールは、所望のシール運転温度を実現するため、断熱材1001、1101、1201、及び1303の内部に(マニホールド423a、423b、及び423cと接触させるがマニホールド433には接触させずに)位置させるのが好ましい。
【0090】
図7〜13の態様のいずれにおいても、例えば高温となる可能性のある容器表面から運転要員を防御するために、圧力容器の外表面の周囲に更なる断熱材(図示せず)を配置してもよい。この更なる断熱材はまた、容器内部を容器内のいかなるガスの露点よりも確実に高くする役割を果たすことができる。図10〜13の態様のいずれにおいても、更なる断熱材(図示せず)を圧力容器の内面に隣接して配置することができる。図4A、4B及び5〜13の態様のいずれにおいても、マニホールドのいずれも内部及び/又は外部を断熱する(図示せず)ことができる。この断熱は、流動封じ込めダクト411及びマニホールドの熱膨張の均一性を改善する役割を果たす。
【0091】
図7〜13の態様に使用する断熱材は、アルミナ、アルミノケイ酸塩、シリカ、ケイ酸カルシウム、又は高温での使用に好適なその他の通常の断熱材料を包含することができる。断熱材は、例えば、繊維状アルミナ、繊維状アルミノケイ酸塩、多孔性アルミナ、及び多孔性アルミノケイ酸塩よりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の材料を含むことができる。図7、10、及び13の態様では、断熱材自体が膜モジュールの周囲に空洞を形成するが、この空洞の内壁を断熱材由来の揮発性成分が膜モジュールに接触するのを防止する材料で被覆し又は覆うことができる。例えば、この空洞をハイネス214のような金属でできた箔で裏打ちして、断熱材料から発生する可能性があるSi含有蒸気種及び/又は金属配管材料から発生する可能性があるCr含有蒸気種が膜モジュールに接触するのを防止することができる。
【0092】
断熱材としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸ナトリウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1又はそれ以上の更なる材料を挙げることができ、これらの材料を断熱材表面に適用してもよく、及び/又は断熱材全体に分散させてもよい。これらの更なる材料を、上述の1以上のガード床の代わりに、又はそれに加えて使用してもよい。これらの材料は、反応物ガスの入口流中に存在することがある汚染物質と反応してそれらを除去し、これらの汚染物質としては、例えば、硫黄、クロム、ケイ素又は酸素を含有するガス種を挙げることができる。
【0093】
ウェハーの群を直列の流れの構成に配置する別態様を図14に示す。この態様では、背の高い積重体を上記のようにウェハーとスペーサーで形成し、この積重体を圧力容器1401内に設置する。入口管路1403及び出口管路1405をガスマニホールドシュラウドアセンブリ1407と接続し、このアセンブリが入口ガス1408の流れを、ウェハー群と接触して交互の向きに流れ且つ出口管路1405を通って出口流1409として流れるよう導く。この態様では、積重体はシュラウドアセンブリによって第一ウェハー区域1411、第二ウェハー区域1413、及び第三ウェハー区域1415に分けられている。こうして、入口ガス1408は直列にウェハー区域1411、1413、及び1415を横切って直列に流れ、そして出口管路1405を通って出てゆく。ここには例示を目的として3つのウェハー区域を示しているが、必要に応じて任意の数のウェハー区域を使用することができる。
【0094】
図14の態様は、酸素回収装置として、又は酸化反応装置として使用することができる。酸素回収装置として使用する場合、積重体は、図1及び2Bを参照して先に説明したようにウェハーとスペーサーで形成される。酸素回収プロセスでは、入口ガス1408は加熱した加圧酸素含有ガス(例えば空気)であり、出口流1409は酸素の減少した酸素含有ガスであり、そして出口管路1419を通って流れる流れ1417は、一般に加圧酸素含有ガスよりも低圧の、高純度酸素製品の流れである。酸化反応器システムとして使用する場合、積重体は、図1及び2Aを参照して先に説明したようにウェハー及びスペーサーで形成される。酸化プロセスでは、入口ガス1408は加熱した加圧反応物ガスであり、出口ガス1409は酸化反応生成物と未反応の反応物ガス成分の混合物である。流れ1417は、一般に加圧反応物ガスよりも低圧の、酸素の減少した酸素含有ガスの流れである。新たな酸素含有酸化剤ガス(例えば空気)は、図2Aを参照して先に説明したように内部積重体マニホールドを通って積重体へ流入し、このマニホールドへの入口は、出口管路1419の背後にあるため、図14では見えない。
【0095】
図14の態様は、所望に応じて、直列の及び/又は並列の複数の圧力容器を用いて運転することができる。所望ならば、複数のモジュールを単一の圧力容器に設置してもよい。
【0096】
図4A、4B、5、及び6を参照して先に説明したように、一連の膜モジュールを並列モジュールのバンクに配置してもよい。これを、流動封じ込めダクト511とこのダクト内の膜モジュールの断面図(縮尺は一定でない)である図15でもって説明する。この典型的な態様では、3つの並列モジュールの5つのバンクが一連のモジュールの各個別の組が共通のモジュール軸線上に位置するように、すなわち、モジュール501a、503a、505a、507a、及び509aが同一の軸線上にあり、モジュール501b、503b、505b、507b、及び509bが同一軸線上にあり、そしてモジュール501c、503c、505c、507c、及び509cが同一軸線上にあるように、配置されている。従ってこの例では、各バンクにおけるモジュール数に等しい3つの軸線がある。各バンクは並列の複数のモジュールを含み、例えば、モジュール501a、501b、及び501cは並列モジュールの1つのバンクを構成する。複数のモジュールを直列に配列してもよく、例えば、モジュール501c、503c、505c、507c、及び509cは直列のモジュールを構成する。直列モジュールの定義は、モジュールのバンクをも包含することができ、例えば、モジュール501a、501b、及び501cのバンクはモジュール503a、503b、及び503cのバンクと直列である。このように、図15のモジュール構成は直列のモジュールと並列のモジュールを包含する。
【0097】
実際問題として、ガスが膜モジュールの周囲をバイパスする悪影響を最小にするため、一連のモジュールバンクの間のガスの実質的に半径方向の混合(すなわち、直列のモジュールの軸線からそれる方向のガスの流れ)を促進するのが望ましいことがある。従って、図15のモジュールの形状配置は、一番よい表現をしたとしても、並列のモジュールと、直列に運転する並列モジュールのバンクを含むものである。多くのガス流分配システムの設計におけるように、半径方向の混合の程度は、内部構成要素(すなわち膜モジュール)間の軸線方向及び半径方向の間隔を適切に選択すること、及び/又はガスの混合を促進するための流動バッフルを使用することによって最大にすることができる。
【0098】
入口1503における入口ガス流1501は、半径方向に整列した(すなわち並列の)モジュールの各バンクを越えて直列に流れる。モジュール間の軸線方向及び半径方向の間隔を適切に選択すれば、少量のガスがモジュール501a、501b、及び501cをバイパスする可能性があるが、それは半径方向に混合又は拡散するので、最終的には下流のモジュールと接触する。出口ガス流1505は出口1507を通って流れる。一連のモジュールバンクの各々を越えてゆくガスの流れが、1つの並列モジュールバンクからのガスの全て又はほぼ全てが一連のモジュールにおける次の並列モジュールバンクと接触するこの態様の直列の配列を規定する。所望の任意の数のモジュールを半径方向に並列にして使用してもよく、また、所望の任意の数の並列モジュールバンクを軸線方向に直列にして使用してもよい。
【0099】
図4Aと4B又は図5と6に関連する本発明の別態様では、並列膜モジュールのバンクを、3つのモジュールの第一のバンクの次に3つのモジュールのオフセットした第二のバンクが直列に続き、その次に3つのモジュールのオフセットした第三のバンクが直列に続く、等々といったように、千鳥状の又はオフセットした直列配置に整列させてもよい。これを図16で説明すると、3つのモジュール502a、502b、及び502cの第一のバンクの次に、流動封じ込めダクト511の軸線に垂直な方向にオフセットした3つのモジュール504a、504b、及び504cの第二のバンクが直列に続く。3つのモジュール506a、506b、及び506cの第三のバンクは第二のバンクに関してオフセットしているが、これらのモジュールは第一のバンクのモジュールと同軸である。このオフセット関係は、モジュール508a、508b、及び508cの第四のバンクとモジュール510a、510b、及び510cの第五のバンクを通じて同様に続くことができる。各々のバンクは並列の複数のモジュールを含むことができ、例えば、モジュール502a、502b、及び502cは並列モジュールの1つのバンクを構成する。複数のモジュールを直列に配列してもよく、例えば、モジュール502c、504c、506c、508c、及び510cが直列のモジュールを構成してもよい。直列モジュールの定義はモジュールのバンクをも包含することができ、例えば、モジュール502a、502b、及び502cのバンクは、モジュール504a、504b、及び504cのバンクと直列になっている。図16のモジュールの配置は、このように直列のモジュールと並列のモジュールを包含する。
【0100】
図16のモジュールは6つの軸線上にあり、すなわちモジュール502c、506c、及び510cが1つの軸線上にあり、モジュール504c及び508cがもう一つの軸線上にある、といったようになっている。これらの軸線は、モジュールを越えてゆくガスの全体的な流れの方向に対し平行であることができる。この態様では、軸線の数は各モジュールバンクのモジュール数よりも多くなっている。
【0101】
図16の態様では、入口ガス流1601が入口1603を通って入り、第一バンクのモジュール502a、502b、及び502cを越えて流れる。このガスの一部はモジュール502aをバイパスする可能性があるが、著しい半径方向の混合がなければ、少なくともオフセットしたモジュール504aに接触する。モジュール502a、502b、及び502cの間を流れるガスは、少なくとも次の一組のオフセットしたモジュール504b及び504cに接触する。第一バンクのモジュール502aから流れてきたガスの一部は、第二バンクの少なくとも2つのモジュール(504a及び504b)に接触する。このようにして、こういったオフセットの配置は、共通の軸線上にあるモジュールの列の間の間隙をガスがまっすぐにバイパスするのを防止する。その代わりに、モジュールバンク中のいずれかのモジュールをバイパスするガスは、次のモジュールバンクのモジュールに直接突き当たる。著しい半径方向の混合がなければ、バンク中の1又はそれ以上のモジュールからのガスの少なくとも一部は次のバンクのモジュールのうちの1又はそれ以上に接触し、そしてこれがこの態様におけるモジュールの直列の配列を規定する。
【0102】
従って、本発明に従って直列に配列されたモジュールの定義は、図15と16を参照して先に説明した両方の態様を包含する。これらの態様では、モジュールバンクの軸線と直列モジュールの軸線は一般に直行していてよく、また直列モジュールの軸線は一般に、容器を通るガスの流れの全体的な方向に対して平行でよい。モジュールバンクの軸線が直列モジュールの軸線に対しておおむね直行しておらず、及び/又は直列モジュールの軸線が容器を通り抜けるガスの流れの全体的方向に対しておおむね平行でない別の態様が可能である。これらの別態様では、モジュールバンクは容器を通り抜けるガスの流れの全体的方向に対して鋭角をなしている。これらの別態様は、本発明による直列に配列されたモジュールの定義に包含される。
【0103】
上記の直列反応器システムは、天然ガスのような炭化水素含有原料ガスから合成ガスを生産する酸化施設で使用することができる。この用途では、改質触媒を、容器内の任意の直列モジュール間、任意の並列モジュール間、任意の連続及び並列モジュール間に、及び/又は最終モジュールの後に配置することができる。改質触媒は、水及び/又は二酸化炭素と炭化水素、特にメタンが吸熱反応して水素及び一酸化炭素を生成するのを促進する。この触媒は、透過した酸素とモジュール内の活性膜材料表面に隣接する反応物との間に起こる発熱酸化反応を完全にし、又はそのバランスをとるために利用してもよい。多モジュールの直列反応器システム内のモジュール間の効果的な位置の改質触媒を適切に使用することにより、反応器を横切る温度プロファイルと生成ガス組成とを制御して反応器の最適な運転を達成することができる。
【0104】
本発明の1つの態様を、多モジュールの直列酸化反応器システムのモジュール間に適切な触媒を配置する例によって説明する。例えば、図15を参照すると、触媒501d、501e、及び501fを、モジュール501a、501b、及び501cの第一バンクとモジュール503a、503b、及び503cの第二バンクの全てのモジュール間の間隙に直列に配置することができる。あるいは、触媒501d、501e、及び501fを、流動封じ込めダクト511の内壁の間に連続的に延在させてもよい。同様に、触媒を、第二と第三のモジュールバンク、第三と第四のモジュールバンク、第四と第五のモジュールバンクのいずれかもしくは全ての間、又は第五バンクの後に、配置(図示せず)することもできる。同じように、触媒を、図16の態様における任意の又は全てのオフセットモジュールバンクの間に直列式に配置することもできる。例えば、図16を参照すれば、触媒502d、502e、及び502fを第一及び第二モジュールバンクの間の間隙に直列式に配置することができる。あるいは、触媒502d、502e、及び502fを流動封じ込めダクト511の内壁の間に連続的に延在させることもできる。一般に、触媒は、図15及び16の直列モジュールバンクのいずれか又は全ての間又は下流に直列式に配置することができる。
【0105】
更に、又はこれに代わり、モジュール間を通り抜けるガスの改質反応を促進するため、並列モジュールバンクのモジュール間に触媒を配置してもよい。例えば、図15では、触媒505dと505eをモジュール505aと505bの間、及び505bと505cの間に配置することができる。別法として、触媒505dと505eを第一ないし第五モジュールバンクの間で、軸線方向に連続的に延在させてもよい。例えば、図16では、触媒506dと506eをモジュール406aと506bの間、及び506bと506cの間に配置することができる。一般に、触媒は、図15及び16における並列モジュールのいずれか又は全ての間に並列式に配置することができる。
【0106】
従って、この概念の最も広い適用では、図15及び16の態様、又は直列及び並列のモジュール配置の両方を有する他のいずれかの態様において、触媒は任意の2つの隣接するモジュール間の間隙に配置することができる。更に、圧力容器513を別の同様の圧力容器と直列に運転する場合には、一方の圧力容器からの流出ガスが別の圧力容器へと進む前に触媒を通過するように、触媒を容器の間に配置することができる。
【0107】
圧力容器内のモジュールの間に軸線方向に置くか半径方向に置くかによって、触媒の種類及び/又は量が異なってくることがある。例えば、1つの選択枝では、反応器を通じてのモジュール温度の最適な制御のために、触媒活性を軸線方向で異ならせることができる。例えば、反応器の入り口付近の触媒区域は低温で活性な触媒(すなわちNi量が多い)を含むことができ、それに対し反応器の高温領域では、最適な触媒組成はより低い活性とより高い熱安定性を必要とすることがある(すなわちNi量が少ない)。このようにして、反応器内のあらゆる軸線方向の位置で、触媒の熱安定性を維持しつつ最適な触媒活性を達成することができる。このほかの触媒の配列が可能であり、それらは特許請求の範囲に記載される発明の態様の範囲内に入る。
【0108】
この態様で使用するための触媒としては、ニッケル、コバルト、白金、金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及び鉄よりなる群から選ばれる1種以上の金属又はそれらを含有する化合物を挙げることができる。触媒は、アルミナ又はその他の酸化物担体で担持することができ、そしてランタン又はカリウムなどを添加して含んでもよい。触媒は、例えば、モジュール間の間隙に適合する適当な触媒ホルダー内の一体品を使用し又は粒状触媒を使用することを含めた、任意の既知の手段によりモジュールの間に配置することができる。
【0109】
大抵の化学反応器におけるように、上記の反応器システムの構造要素は、クロム、ケイ素、タングステン、及びその他の元素のいずれを含有してもよい合金製であり、高い運転温度では合金表面にこれらの元素の酸化物が生成する可能性がある。構造要素はまた、シリカ(二酸化ケイ素)のような化合物又はその他の耐熱性酸化物材料を含有してもよい酸化物耐火材料を包含してもよい。これらの酸化物が、水蒸気を含有するガス流、例えば高温の合成ガス又は直火で予熱された空気などに暴露されると、揮発性汚染化合物が合金又は耐火材料表面で生成し、そして高温のガス流中に昇華する可能性がある。乾燥した酸素含有ガスの存在下でも、クロムを含有する揮発性汚染化合物が生成し得る。
【0110】
汚染物質とは、処理装置の構造体の構成要素と反応し、その結果処理装置の性能を低下させることになる任意の化合物又は元素であると定義する。例えば、汚染物質は、酸素を透過可能な膜に使用する混合金属酸化物セラミック材料と反応し、膜の酸素透過性を低下させることがある。揮発性汚染物質とは、600℃〜1100℃の範囲の高温でガスとして存在する化合物又は元素である。反応性固体物質とは、揮発性汚染物質と反応して非揮発性反応生成物を生成する任意の物質である。
【0111】
典型的な揮発性汚染物質としては、例えば、ガス状オキシ水酸化物CrO2(OH)2、ガス状オキシ水酸化物WO2(OH)2、及びガス状水酸化物Si(OH)4をいずれも挙げることができる。同様に、空気のような酸化性ガスに暴露されると、合金表面にある種の金属酸化物が生成して高温のガス流中に昇華することがある。存在する可能性のあるこれらの揮発性金属酸化物の一つがCrO3である。配管及び容器に使用する特定の合金又は耐火材料に応じて、イオン輸送膜反応器の処理ガスには、他の揮発性水酸化物、揮発性金属オキシ水酸化物、又は揮発性金属酸化物が汚染化合物として存在することがある。これらのガス流にはSO2及びH2Sのような揮発性硫黄含有化合物が存在することがあり、これらの化合物もまたイオン輸送膜の性能及び運転寿命を低下させることがある。ガス流中に存在し得るその他の種としては、Cl2、Br2、I2と、Cl、Br、及びIのいずれかを含有する化合物のいずれも挙げることができる。これらの化合物又は元素もまた、イオン輸送膜の性能及び運転寿命を低下させる可能性がある。
【0112】
一部の膜運転条件下では、これらの汚染物質の分圧は比較的低い可能性がある。しかしながら、ほかの運転条件下では、分圧は汚染物質がイオン輸送膜材料と反応するに充分なほど高く、それにより膜の性能と運転寿命を低下させることがある。
【0113】
合成ガスの生産のために使用するイオン輸送膜は、700〜950℃の範囲の温度で高い分圧のCrO2(OH)2、CrO3、Si(OH)4及びWO2(OH)2を含有するガス流に暴露されると、急速な酸素流束の低下と低い酸素流束性能を呈することが観察された。これらの膜の試験後分析から、膜の空気側表面はCr含有酸化物で被覆される一方、合成ガス側表面はSi又はW含有酸化物で被覆されることが明らかとなった。膜の合成ガス側の多孔性層表面の気孔は、汚染物質の反応生成物でほぼ完全に塞がれていた。酸素の製造に使用する膜がCr含有蒸気種を含有するガス流に暴露されると、膜の供給側表面にCr含有酸化物が生成されるということも観察された。
【0114】
膜表面にこれらの有害な被着物が生じるのを防ぐために、ガード床を設置して、ガスが膜表面に接触する前に処理ガスから揮発性汚染物質を取り除くことができる。そのために、ガード床は、イオン輸送膜反応器容器の前又はその内部のガス流中に位置させることができ、ここでガード床の温度は600℃と1100℃の間でよく、一般的にはガード床の温度は700℃と950℃の間でよい。精製したガス流がガード床と膜の間の配管内の金属で再汚染されるのを最小限とするため、ガード床は膜モジュールの近傍に配置すべきである。ガード床は、反応性固体物質を含み、そして流動するガスをこの反応性固体物質に接触させるよう設計される、任意の容器又は閉鎖容器(enclosure)として定義される。精製したガス流とは、汚染物質を含有するプロセス流をガード床の反応性固体物質と接触させることにより汚染物質濃度を低下させたプロセス流と定義される。
【0115】
1つの態様では、高純度酸素製品の生産に使用する図4Aの反応器システムを、膜モジュール401、403、405、407、及び409との接触前に入口ガス流417を処理するために入口415にガード床1701を取り付けることにより、図17に示すように改造することができる。あるいはまた、図示したように、流動封じ込めダクト411の入口の前で圧力容器413内にガード床1703を取り付けてもよい。高純度酸素製品は少なくとも99.9容量%の酸素を含有することができる。
【0116】
別の態様では、酸化反応器として使用する図5の反応器システムを、膜モジュール501、503、505、507、及び509との接触前に入口ガス流517を処理するために入口515にガード床1801を取り付けることにより、図18に示すように改造することができる。あるいはまた、図示したように、流動封じ込めダクト511の入口の前で圧力容器513内にガード床1803を取り付けてもよい。これとは別に、あるいは更に、加熱した加圧酸素含有酸化剤ガス553を処理するため、主入口マニホールド519の外側部分にガード床1805を取り付けてもよい。ガード床1805に代わるものとして、図示したように圧力容器513内の主入口マニホールド519にガード床1807を取り付けてもよい。ガード床は、下記のように膜モジュール501、503、505、507、及び509のいずれかの間に取り付けてもよい。
【0117】
本発明のもう一つの態様を、揮発性汚染物質を除去するために複数モジュールの直列酸化反応器システムのモジュールの間に適当なガード床を配置する例によって説明する。例えば、図15の反応器を、モジュール501a、501b、及び501cの第一モジュールバンクの全てのモジュールとモジュール503a、503b、及び503cの第二モジュールバンクの全てのモジュールとの間の間隙に直列式にガード床1901、1903、及び1905を配置することにより、図19に示すように改造してもよい。あるいはまた、ガード床1901、1903、及び1905を、流動封じ込めダクト511の内壁の間に連続的に延在させてもよい。同様に、第二及び第三のモジュールバンク、第三及び第四のモジュールバンク、第四及び第五のモジュールバンクのいずれかもしくは全ての間に、あるいは第五のバンクの後に、ガード床(図示せず)を配置してもよい。同じように、図16の態様の改変により、図20に示すように、オフセットしたモジュールバンクのいずれか又は全ての間にガード床を直列式に配置してもよい。例えば、図示するように、第一バンクのモジュール502a、502b、及び502cの全てと第二バンクのモジュール504a、504b、及び504cの全ての間の間隙に、ガード床2001、2003、及び2005を直列式に配置してもよい。あるいはまた、流動封じ込めダクト511の内壁の間に、ガード床2001、2003、及び2005を連続的に延在させてもよい。一般に、ガード床は、図19及び20の直列モジュールバンクのいずれか又は全ての間又は下流に、直列式に配置することができる。
【0118】
更に、あるいはこれに代わり、モジュール間を通り抜けるガスから汚染物質を除去するため、ガード床を並列モジュールバンクのモジュールの間に配置してもよい。例えば図19では、ガード床1907と1909を、それぞれモジュール505aと505bの間、及び505bと505cの間に配置することができる。あるいはまた、ガード床1907と1909を、第一ないし第五モジュールバンクの間で、軸線方向に連続的に延在させてもよい。図20では、ガード床2007と2009を、モジュール506aと506bの間、及び506bと506cの間に配置してもよい。一般に、ガード床は、図19及び20の平行モジュールのいずれか又は全ての間に、並列式に配置することができる。
【0119】
従って、この概念の最も広い適用においては、図19及び20の態様又は直列及び並列の両方のモジュール配置を有する他のいずれかの態様において、ガード床を任意の2つの隣接するモジュール間の間隙に配置することができる。更に、圧力容器513を別の同様の圧力容器と直列に運転する場合には、一方の圧力容器からの流出ガスが別の圧力容器へ進む前にガード床を通過するように、ガード床を容器の間に配置することができる。
【0120】
図14の態様でガード床を使用してもよく、その場合には、容器1401の外部又は内部のいずれかで入口管路1403にガード床(図示せず)を取り付ける。あるいは、又は更に、ガード床(図示せず)を、第一ウェハー区域1411のウェハー吐出側、第二ウェハー区域1413のウェハー入口又は吐出側、及び第三ウェハー区域1415のウェハー入口側のいずれに取り付けてもよい。
【0121】
上述のガード床の態様では、反応性物質を平行六面体型又は円板型の多孔性容器に入れることができ、この場合この多孔性容器は、図示したように、モジュールの間にはまるよう設計される。ガード床は、膜モジュールの軸線方向断面と同じような大きさと形の軸線方向断面を有するのが有利であり、あるいはまた、ガード床は、流動封じ込めダクト511の内壁の間に連続式に延在してもよい。
【0122】
触媒とガード床の両者を任意の所望の構成で膜モジュールの間に配置するようにガード床を付け加えることにより、図19及び20の反応器システムを改変する別の態様が可能である。例えば、触媒とガード床を、連続する直列の膜モジュールバンクの間に軸線方向に交互に配置することができる。あるいは、触媒とガード床の両者を、必要に応じて直列膜モジュールの間に配置してもよい。
【0123】
上述の態様における各ガード床は、揮発性汚染物質と反応する反応性物質を含む。1種以上のこの反応性物質は、多孔性ペレット、ビーズ、棒状体、押出し成型品、多孔性発泡体、管、及び中実のハニカム又は一体品から選ばれる任意の形態でガード床に配置することができる。ガード床は、入口と出口を有し、反応性物質を当該技術分野で知られるスクリーン又はその他の多孔性支持体により反応器内に支持する、典型的な圧力容器でよい。あるいはまた、円板型又は平行六面体型の多孔性容器を用いて反応性物質を保持してもよく、この場合多孔性容器は下記のように反応器容器の内部又は配管の内部に適合するよう設計することができる。
【0124】
ガード床は、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1又はそれ以上の反応性物質を含むことができる。アルカリ土類含有ペロブスカイトは一般式AxA’x’ByB’y’O3-dを有し、この式中のAはランタン、イットリウム、及びランタノイド元素の1つのうちの1つ以上を含み、A’はCa、Sr、及びBaのうちの1つ以上を含み、BとB’は最初の列の遷移金属Mg、Ga、及びAlのうちの1つ以上を含み、0.9<x+x’<1.1、0.9<y+y’<1.1、x’>0であり、そしてdはこの化合物の電荷を中性にする数である。
【0125】
1つの態様では、膜モジュールの膜に接触する前にこれらの揮発性汚染化合物をガスから除去するために、ガード床でMgOを使用することができる。MgOはこの役割のために有効な反応性物質であり、且つそれは安全で、取り扱いが容易で、安価である。揮発性気相汚染物質の分圧を最大で数桁まで低下させることができ、これは膜の汚染と損傷を著しく低下させ又はなくすことができる。
【0126】
MgOは、多孔性ペレット、ビーズ、棒状体、押出し成型品、多孔性発泡体、管、多孔性ハニカム、並びに多孔性及び中実のハニカム又は一体品から選ばれる任意の形態でガード床に配置することができる。MgOは、クロム、ケイ素及び/又はタングステンを含有する気相汚染物質と反応して、それぞれMgCr2O4(亜クロム酸マグネシウム)、Mg2SiO4(ケイ酸マグネシウム)及びMgWO4(タングステン酸マグネシウム)を生成する。これらの反応生成物は極めて安定で、取り扱いが安全であり、且つ環境に優しく、従って使用済みのガード床物質の処分は簡単で且つ費用がかからない。
【0127】
気相と固体酸化物の界面で起こり、上記の揮発性汚染物質を生成する典型的な反応は以下の通りである。
【0128】
【化1】
【0129】
MgOを充填したガード床で起こる反応は以下の通りである。
【0130】
【化2】
【0131】
これらの反応の熱力学的平衡計算から、ガス流中の汚染物質相の分圧をMgOとの反応によって一桁又はそれ以上低下させることができ、そしてこれが膜材料の汚染を減少させ又はなくすことが予測される。これは、上の式2、3、4、5、7、及び8に従い、配管の金属合金と平衡にある、及びガード床材料と平衡にある汚染化合物の計算された分圧を比較することによって説明される。図21は、850℃と900℃の間で酸素分圧0.25baraにおけるCr含有合金上及びMgOガード床物質上のCrO3の平衡濃度を示すものであり、ガード床によってCrO3の気相分圧が一桁低下することを示している。合金上の蒸気圧の計算は、この合金の表面が純粋なCr2O3であると仮定している。図22は、850℃と900℃の間で水分圧8.0baraにおけるSi含有合金上及びMgOガード床物質上のSi(OH)4の平衡濃度を示すものであり、ガード床によってSi(OH)4の気相分圧が三桁近く低下することを示している。合金上の蒸気圧の計算は、この合金の表面が純粋なSiO2であると仮定している。図23は、850℃と900℃の間で水分圧8.0baraにおけるW含有合金上及びMgOガード床物質上のWO2(OH)2の平衡濃度を示すものであり、ガード床によってWO2(OH)2の気相分圧が二桁以上低下することを示している。合金上の蒸気圧の計算は、この合金の表面が純粋なWO3であると仮定している。
【0132】
ガード床のMgOは、反応のための大きな表面積を提供するために、またガード床を通過する乱流を増強して気相のいかなる物質移動抵抗をも最小にするために、多孔性ペレット、ビーズ、又は棒の形態とすることができる。例えば、ガード床には、純度99.8wt%、平均直径0.2cm、平均長0.4cm、及び開放気孔率30%のMgO棒状体を充填することができる。所望によりその他の粒子形状、大きさ、及び気孔率を採用してもよい。あるいはまた、圧力低下を少なくするために多孔性MgOのハニカムを使用してもよい。ガード床のためのその他の構成としては、多孔性発泡体、構造化充填物(structured packing)、及び不規則充填物が挙げられる。マグネシウムは比較的小さなカチオンであり、高速の拡散体であって、MgO表面が反応生成物で覆われた場合に、可能である一番小さい固相物質移動抵抗をもたらすはずである。ガード床の大きさは、揮発性種の輸送及びそれとMgOとの反応についての律速プロセスによって決められる。これらのプロセスとしては、MgO表面への揮発性種の気相拡散、MgOと揮発性種との反応、及びMgO上に生成する可能性のある任意の反応生成物を通り抜けるMg又は揮発性種の拡散、が挙げられる。
【0133】
本発明の態様は、水とクロム、ケイ素、及び/又はタングステンの酸化物との反応により生成される典型的な揮発性汚染物質の除去について上に記載されている。これらの態様は、高温表面が水蒸気含有ガス流、例えば高温の合成ガス又は直火で予熱された空気に暴露されたときに他の任意の合金形成元素の酸化物から、又は任意の酸化物耐熱材料から生成される同様の揮発性汚染物質にも適用できる。例えば、これらの他の合金形成元素としては、モリブデン及び/又はバナジウムを挙げることができ、酸化物耐熱材料としては、モリブデンの酸化物及び/又はバナジウムの酸化物を挙げることができる。
【0134】
上述の揮発性汚染物質の除去に加えて、本発明の態様はまた、処理ガス中に存在し得るその他の揮発性汚染物質の除去にも利用できる。これらには、例えば、Cl2、Br2、I2のいずれか、及びCl、Br、Iのいずれかを含有する化合物が含まれる。本発明の態様はまた、二酸化硫黄及び/又は硫化水素のような揮発性硫黄含有汚染物質の除去にも適用できる。本発明の態様はまた、モリブデンのオキシ水酸化物の除去にも適用できる。
【0135】
従って、本発明の態様は、ガス流を1又はそれ以上の反応性固体物質と接触させることにより、高温、例えば600〜1100℃の範囲でガス流から1又はそれ以上の揮発性汚染化合物を除去するのに適用できる。このガス流は、水、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、及びメタンよりなる群から選ばれる1又はそれ以上の成分を含有することができる。1又はそれ以上の反応性物質は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選択することができる。
【0136】
上記のガード床はイオン輸送膜システムでの使用について記載されてはいるが、これらのガード床は、高温のガス流から同様の揮発性汚染物質を取り除かねばならない任意の用途に利用できる。例えば、ガード床は、固体酸化物燃料電池で使用して、燃料電池材料をガスの汚染物質による損傷から防御することができる。
【実施例】
【0137】
以下の例は本発明の態様を説明するものであるが、本発明をここに記載する特定の内容のいずれにも限定するものではない。
【0138】
(例1)
MgOが900℃の流動空気からクロム含有蒸気種をうまく除去できることを確認するため、実験室スケールの試験を実施した。直径1.0インチの垂直管状反応器に、MgOの棒体を、高温の酸化条件下で表面にクロム含有蒸気種を生成する合金である、インコロイ(Incoloy、登録商標)800Hの削りくずの床の上方に配置して詰めた。インコロイ(登録商標)800Hの削りくずの床とMgOの棒体はそれぞれ、長さが2.5インチ及び4.0インチであった。MgOの棒体は99.8wt%MgOを含有しており、Ozark Technical Ceramicsから入手した。この棒体は平均直径0.2cm、平均長0.4cm、そして開放気孔率30%であった。直径0.75インチの平らな円板の形をしたイオン輸送膜の底面を7個の先端を持つクラウンで支え、管状反応器の最上部の出口に配置し、空気が膜の底部と当該支持構造材の間を放射状に外側へ流れるようにさせた。平らな円板膜の組成は、La1-xCaxFeO3-z(式中、0.95>x>0.5であり、zはこの化合物の電荷を中性にする数である)であった。
【0139】
実験室スケールの試験中は、加熱した空気を、合金削りくずを通し、ガード床を通し、そしてイオン輸送膜円板の底面と接して直列に上方に流した。3.0スタンダードリットル/分(slpm)の空気流量を使用し、空気圧力は絶対圧で1atmであった。酸素を流しながら反応器を2℃/分で900℃に加熱し、次いで750時間900℃に維持した。750時間の運転後、反応器を2℃/分で室温まで冷却した。次に、分析のために膜を取り外し、MgO床の0.2インチ厚の層を分析のために取り出した。
【0140】
新たな合金削りくず、新たなMgO床、及び新たな膜を、上記と同じ構成で組み立て、同じ実験手順と条件を使って1500時間の実験を行った。
【0141】
2回の実験から得た、暴露されたMgOガード床を、ICP(誘導結合プラズマ)を用いて分析してそれらのクロム含有量を測定した。この試験後の分析から、ガード床が750時間及び1500時間の暴露中に流動空気からクロム含有蒸気種を除去することが示された。このデータを図24に示すが、これは、入口と出口の間のガード床のいろいろな箇所におけるCr濃度(重量百万分率(ppmw))をプロットしたものである。熱力学的予想と比較した床中のクロム濃度から、MgO床が流動ガス流からクロム含有蒸気種の本質的に全てを捕捉することが示された。図24のクロム濃度プロファイルの形状は、ガード床における動的及び物質移動の抵抗が小さいことを示唆している。更に、暴露された膜の走査型電子顕微鏡分析からは、750時間の暴露後も1500時間の暴露後も、膜は汚れがなく、クロムで汚染されていないことが示された。
【0142】
(例2)
例1の試験との比較のため、合金削りくずとイオン輸送膜との間にMgOガード床がないこと以外は例1と同じ実験室スケール反応器の構成でベースラインの実験を行った。新しい合金削りくずと新しい膜を反応器に装着した。3.0slpmの空気流量及び絶対圧1atmの圧力で、反応器を2℃/分で900℃まで加熱した。削りくずの入った反応器と膜をこの空気流量及び900℃で100時間運転し、次いで2℃/分で室温まで冷却した。膜を取り外して分析し、そしてこの分析から、膜表面のかなりのクロム汚染が示された。これと比較して、クロム源と膜の間のガード床を使用して900℃で750時間及び1500時間暴露後の例1の被験膜ではクロム汚染は観察されなかった。これらの結果から、MgOが高温のガス流から揮発性クロム含有種を効果的に除去できることが確認される。
【0143】
(例3)
各々が直径1.6インチ、長さ8インチの2つのMgOガード床を、膜の上流の空気供給部に直列に取り付けた。この膜は、米国特許出願公開第20040186018号明細書に記載の両面型平板膜であり、幅3.5インチ、長さ5インチであった。膜の組成はLa1-xCaxFeO3-d(式中、0.95>x>0.5であり、dは化合物の電荷を中性にする数である)であった。空気を分岐させ、内部流路を通して膜内部に流した。例1及び2で使用したものと同一の新しいMgOの棒体をガード床に装入した。0.25インチの直径を有する8フィートの加熱されるインコロイ(登録商標)800Hのチューブをガード床の上流に取り付け、空気を予熱した。チューブ、ガード床、及び膜を直列に運転し、空気流量32スタンダード立法フィート/時(scfh)、15psigで、900℃まで0.5℃/分で加熱した。チューブ、ガード床、及び膜を、ほぼ1400時間800℃と900℃の間の温度に保持した。次に反応器を室温に冷却し、膜の空気側表面を走査型電子顕微鏡を用いて調べた。膜表面にクロムの被着は見られなかった。
【0144】
(例4)
ガード床を使用しなかったこと以外は、例3の実験装置を例4用に利用した。チューブと膜を例3におけるように、800℃と900℃の間の温度でほぼ1400時間運転した。次に反応器を室温に冷却し、空気側の膜表面を走査型電子顕微鏡を用いて調べた。膜表面にかなりの量のクロムの被着が見いだされた。
【背景技術】
【0001】
セラミックイオン輸送膜を通る酸素イオンの透過は、高温で運転する種々のガス分離機器及び酸化反応器システムについての基礎であり、それらでは透過した酸素が高純度酸素製品として透過物側で回収され、又は透過物側で酸化可能な化合物と反応して酸化又は部分酸化製品を生成する。これらのガス分離機器及び酸化反応器システムの実用化には、表面積の大きな膜アセンブリ、原料ガスを膜の供給側に接触させる手段、及び膜の透過物側から製品ガスを抜き出す手段が必要である。これらの膜アセンブリは、原料ガスをモジュールに導入し、製品ガスをそのモジュールから抜き出すための適当なガス流動配管を有するモジュールに配置され組み立てられた多数の個別の膜を含むことができる。
【0002】
イオン輸送膜は平面状又は管状いずれかの構造で製作することができる。平面構造では、多数の平らなセラミックプレートが、原料ガスを平面膜を通過させ、平面膜の透過物側から製品ガスを抜き出す配管手段を有する積重体又はモジュールとなるよう加工されもしくは組み立てられる。管構造の場合は、多数のセラミック管を、これら多数の管の供給側と透過物側を隔離するための適当なチューブシートアセンブリを備えた差し込み式のもしくはシェル・アンド・チューブ構造に配置することができる。
【0003】
平面状又は管状モジュール構造で使用する個々の膜は、典型的には、ガスを活性膜層表面へ、そして該表面から流動させる大きな気孔又は通路を有する材料に支持された活性膜材料の極めて薄い層を含んでいる。膜モジュールのセラミック膜材料と構成成分は、通常の定常状態での運転時に、そして特に非定常状態である運転開始、停止、及び不調状態の際に、著しい機械的応力にさらされることがある。このような応力は、セラミック材料の熱膨張及び収縮によって引き起こされることがあり、また、膜材料の酸素化学量論量の変化に起因する化学組成もしくは結晶構造の変化によって惹起される寸法変化によって引き起こされることがある。これらのモジュールは、膜及び膜シールをまたぐ著しい圧力差を伴って運転し、そして膜モジュールの設計にはこのような圧力差が惹起する応力を考慮しなければならない。更に、これらの現象の相対的重要性は、モジュールをガス分離の際に運転させるのかそれとも酸化のために運転させるのかによって異なることがある。これらの現象によって惹起される可能性のある運転の際の問題は、回収された製品の純度及び膜の使用寿命に著しいマイナスの影響を及ぼしかねない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの膜モジュールに使用する固体イオン伝導性金属酸化物材料は、イオン伝導の奏功に必要な高い操作温度において揮発性気相汚染物質の存在下で劣化し、それにより酸素イオンを伝導又は透過する膜の能力を低下させることがある。この潜在的問題のため、イオン伝導性金属酸化物膜システムの運転の成功には、膜への1以上の原料ガス中の特定の汚染物質を制御することが必要であろう。以下に開示し、特許請求の範囲により規定される本発明の態様は、この必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様は、(a)揮発性金属オキシ水酸化物、揮発性金属酸化物、及び揮発性水酸化ケイ素よりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の汚染物質を含有する原料ガス流を得ること、(b)この原料ガス流を、ガード床の反応性固体物質に接触させ、そして汚染物質の少なくとも一部を反応性固体物質と反応させて、ガード床中に固体反応生成物を生成させること、そして、(c)精製されたガス流をガード床から抜き出すこと、を含むガス精製方法に関する。反応性固体物質は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1又はそれ以上の化合物を含むことができる。この態様の1つの特定の側面では、反応性固体物質は酸化マグネシウムを含むことができる。
【0006】
1種又はそれ以上の汚染物質は、CrO2(OH)2、Si(OH)4、WO2(OH)2、CrO3、及びモリブデンのオキシ水酸化物のうちのいずれかを含むことができる。原料ガス流は、窒素、酸素、水、及び二酸化炭素よりなる群から選ばれる1又はそれ以上の成分を含むことができる。あるいはまた、原料ガス流は、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、及び水よりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の成分を含むことができる。原料ガス流は、600℃〜1100℃の範囲の温度で反応性固体物質と接触させることができる。
【0007】
本発明のもう一つの態様は、酸素を含有するガスを加熱して高温の酸素含有ガスを作ること、(b)この高温の酸素含有ガスをガード床の反応性固体物質と接触させて、精製された高温の酸素含有ガスをそこから抜き出すこと、そして、(c)この精製された高温の酸素含有ガスを、混合金属酸化物セラミック材料を含む膜の第一の表面と接触させ、この膜を通して酸素を膜の第二の表面へ透過させて、そこから高純度酸素製品を抜き出すこと、を含む酸素の製造方法に関する。高温の酸素含有ガスは、ガス燃料を空気とともに直接燃焼させることにより得ることができ、そして酸素、窒素、二酸化炭素、及び水を含む。高温の酸素含有ガスは更に、CrO2(OH)2、Si(OH)4、WO2(OH)2、CrO3、及びモリブデンのオキシ水酸化物よりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の汚染化合物を含むことができる。反応性固体物質は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の化合物を含むことができる。この態様の1つの特定の側面では、反応性固体物質は酸化マグネシウムを含むことができる。
【0008】
本発明の別の態様は、
(a)高温の酸素含有原料ガスを、混合金属酸化物セラミック材料を含む膜の第一の表面と接触させ、この膜を通し酸素を膜の第二の表面へ透過させて、透過した酸素を得ること、
(b)高温の炭化水素含有原料ガスをこの透過した酸素と反応させて酸化生成物を生成させること、そして、
(d)次の(1)と(2)、すなわち、
(1)高温の酸素含有ガス流をガード床の反応性固体物質と接触させてそこから高温の酸素含有原料ガスを抜き出すことにより、高温の酸素含有原料ガスを得ること、及び、
(2)高温の炭化水素ガス流をガード床の反応性固体物質と接触させてそこから高温の炭化水素含有原料ガスを抜き出すことにより、高温の炭化水素含有原料ガスを得ること、
のいずれか又は両方を行うこと、
を含む酸化方法に関する。
【0009】
(1)及び(2)のいずれか又は両者におけるガード床の反応性固体物質は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の化合物を含むことができる。高温の酸素含有ガス流及び高温の炭化水素ガス流のいずれか又は両者は、CrO2(OH)2、Si(OH)4、WO2(OH)2、CrO3、及びモリブデンのオキシ水酸化物よりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の揮発性汚染化合物を含むことができる。高温の酸素含有ガス流は、ガス燃料を空気とともに直接燃焼させることにより得ることができ、そして酸素、窒素、二酸化炭素、及び水を含む。酸化生成物は、水素、一酸化炭素、及び水を含む合成ガスであることができる。
【0010】
本発明のもう一つの別態様は、
(a)内部、外部、入口、及び出口を有する圧力容器、
(b)圧力容器の内部に配置されそして直列に配列されている複数の平面状イオン輸送膜モジュールであって、各膜モジュールが、混合金属酸化物セラミック材料を含み、且つ内部領域と外部領域を持ち、該圧力容器の入口及び出口が膜モジュールの領域と連通している、複数の平面状イオン輸送膜モジュール、
(c)膜モジュールの内部領域及び圧力容器の外部と連通している、1又はそれ以上のガスマニホールド、並びに、
(d)次の(1)と(2)、すなわち、
(1)圧力容器の入口と連通しているガード床、及び、
(2)1又はそれ以上のガスマニホールドのうちの少なくとも1つと連通しているガード床、
のいずれか又は両者、
を含むイオン輸送膜システムに関する。
【0011】
(1)及び(2)のいずれか又は両者におけるガード床は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の化合物を含む反応性固体物質を含有することができる。
【0012】
(1)におけるガード床は、圧力容器の外部に配置することができる。あるいはまた、(1)におけるガード床は圧力容器の内部に配置してもよい。(2)におけるガード床は、圧力容器の外部に配置することができる。あるいはまた、(2)におけるガード床は圧力容器の内部に配置してもよい。
【0013】
本発明の更なる態様は、
(a)内部、外部、入口、及び出口を有する圧力容器、
(b)圧力容器の内部に配置されそして直列に配列されている複数の平面状イオン輸送膜モジュールであって、各膜モジュールが、混合金属酸化物セラミック材料を含み、且つ内部領域と外部領域を持ち、該圧力容器の入口及び出口が膜モジュールの外部領域と連通している、複数の平面状イオン輸送膜モジュール、
(c)膜モジュールの内部領域及び圧力容器の外部と連通している、1又はそれ以上のガスマニホールド、並びに、
(d)1又はそれ以上のガード床であって、各ガード床が圧力容器内部にある任意の二つの隣接する平面状イオン輸送膜モジュールの間に配置されている、1又はそれ以上のガード床、
を含むイオン輸送膜システムに関する。
【0014】
このシステムは更に、圧力容器の内部に配置されている流動封じ込めダクトを含むことができ、この流動封じ込めダクトは、(1)複数の平面状イオン輸送膜モジュール及び1又はそれ以上のガード床を取り囲んでおり、且つ、(2)圧力容器の入口及び出口と連通している。
【0015】
本発明のもう一つの更なる態様は、
(a)内部、外部、入口、及び出口を有する圧力容器、
(b)圧力容器の内部に配置された膜の積重体又はモジュールアセンブリであって、該アセンブリは、混合金属酸化物セラミック材料を含む複数の平面状ウェハーと複数の中空セラミックスペーサーを有し、各ウェハーには内部領域と外部領域があり、該積重体又はモジュールアセンブリは、ウェハー内部どうしが中空スペーサーを介して連通するようにウェハーとスペーサーを交互にすることにより形成され、ウェハーは互いに平行な向きにされており、そして、ウェハーが積重体(スタック)又はモジュールの軸線と垂直になるように積重体又はモジュールを形成させるため、交互になったスペーサーとウェハーが同軸方向に整列している、膜の積重体又はモジュールアセンブリ、
(c)圧力容器内部の膜の積重体又はモジュールアセンブリの周りに配置されたガスマニホールドシュラウドアセンブリであって、該シュラウドアセンブリは、積重体又はモジュールを少なくとも第一ウェハー区域と第二ウェハー区域に分離し、圧力容器の入口を第一ウェハー区域にあるウェハーの外部領域と連通させ、そして、第一ウェハー区域にあるウェハーの外部領域を第二ウェハー区域のウェハーの外部領域と直列に連通させている、ガスマニホールドシュラウドアセンブリ、並びに、
(d)圧力容器の入口及びガスマニホールドシュラウドアセンブリのいずれか又は両者に配置された1又はそれ以上のガード床、
を含むイオン輸送膜システムに関する。
【0016】
本発明の別の態様は、
(a)内部、外部、入口、及び出口を有する圧力容器、
(b)圧力容器の内部に配置されている複数のイオン輸送膜モジュールであって、このモジュールの少なくとも一部は直列に配列されている、複数のイオン輸送膜モジュール、
(c)任意の二つの隣接する膜モジュールの間に配置されている触媒、並びに、
(d)1又はそれ以上のガード床であって、各ガード床は圧力容器内の任意の二つの隣接するイオン輸送膜モジュールの間に配置されている、1又はそれ以上のガード床、
を含むイオン輸送膜反応器システムに関する。
【0017】
触媒は、ニッケル、コバルト、白金、金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及び鉄よりなる群から選ばれる1種もしくはそれ以上の金属又はそのような金属を含有する化合物を含むことができる。各ガード床は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の化合物を含む反応性固体物質を含むことができる。
【0018】
本発明の態様を図面で説明するが、それらは必ずしも一定の縮尺ではなく、またこれらの態様をここに示した特徴のいずれかに限定しようとするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の態様に従う酸素回収又は酸化プロセスで使用するための膜ウェハー積重体又はモジュールの模式正面図である。
【図2A】酸化プロセスで使用するための図1の膜ウェハー積重体又はモジュールの側面図である。
【図2B】酸素回収で使用するための図1の膜ウェハー積重体又はモジュールの側面図である。
【図3A】図1、2A及び2Bの膜ウェハーの断面図である。
【図3B】図1、2A及び2Bの膜ウェハーのもう一つの断面図である。
【図3C】図1、2A及び2Bの別な膜ウェハーの断面図である。
【図3D】図1、2A及び2Bの別な膜ウェハーのもう一つの断面図である。
【図4A】酸素回収に使用するための膜分離器の容器内部の模式側面図である。
【図4B】図4Aの断面図である。
【図5】酸化プロセスに使用するための膜反応器の容器内部の模式側面図である。
【図6】図5の断面図である。
【図7】断熱材料の配置を示す図4Bの態様の図である。
【図8】断熱材料の別な配置を示す図4Bの第二の態様の図である。
【図9】断熱材料の別な配置を示す図4Bの第三の態様の図である。
【図10】断熱材料の別な配置を示す図4Bの第四の態様の図である。
【図11】断熱材料の別な配置を示す図4Bの第五の態様の図である。
【図12】断熱材料の別な配置を示す図4Bの第六の態様の図である。
【図13】断熱材料の配置を示す図4Bの第七の態様の図である。
【図14】酸素回収又は酸化プロセスで使用するための別な膜容器の内部及びモジュールの配置の模式側面図である。
【図15】同軸線の平行膜モジュールを有する図4Aに示す流動封じ込めダクトの断面図である。
【図16】平行膜モジュールのオフセットバンクを有する流動封じ込めダクトの断面図である。
【図17】容器への原料ガスから揮発性汚染物質を除去するためのガード床を含む、酸素回収に使用するための膜分離器の容器内部の模式側面図である。
【図18】容器への原料ガスから揮発性汚染物質を除去するためのガード床を含む、酸化プロセスに使用するための膜反応器の容器内部の模式側面図である。
【図19】容器内のガス中の揮発性汚染物質を除去するためのガード床を含む、同軸平行膜モジュールを有する図4Aの流動封じ込めダクトの側面図である。
【図20】容器内のガス中の揮発性汚染物質を除去するためのガード床を含む、平行膜モジュールのオフセットバンクを有する流動封じ込めダクトの側面図である。
【図21】クロム含有合金表面のCrO3と平衡下での、及びMgOを含むガード床材料と平衡下での、CrO3分圧を温度の関数としてプロットした図である。
【図22】Si含有合金表面のSi(OH)4と平衡下での、及びMgOを含むガード床材料と平衡下での、Si(OH)4分圧を温度の関数としてプロットした図である。
【図23】W含有合金表面のWO2(OH)2と平衡下での、及びMgOを含むガード床材料と平衡下での、WO2(OH)2分圧を温度の関数としてプロットした図である。
【図24】CrO3を含有するガスに暴露されたMgOを含むガード床について、クロム濃度を床の奥行きの関数としてプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の態様は、酸素回収又は酸化プロセスのいずれかに使用するための、直列に運転する複数の膜モジュールを利用するイオン輸送膜システムの設計及び運転を対象とするものである。膜を横切る酸素の輸送が発熱反応をもたらすことになる場合、例えばメタンから合成ガスを生産する場合、膜を横切る過度の温度勾配を防ぐために、個々の膜を横切る反応物の転化の度合を制限せねばならないということが判明した。また、膜が酸素を低圧の透過物流へと輸送している場合、膜の前端と後端の間の膜材料における過度の酸素欠乏勾配を防ぐために、個々の膜を横切る酸素抽出量を制限せねばならないということも判明した。過度の温度勾配又は酸素欠乏勾配は膜に過大な応力を引き起こし、それは膜の寿命をかなり甚だしく制限しかねない。
【0021】
本発明は、複数の膜モジュール又はモジュールのバンクを直列に並べて、その結果各モジュールの膜を横切って抽出される酸素量を、膜材料における過度の酸素欠乏勾配を防止するのに充分低くすることにより、これらの問題に対処する。各個別モジュールを横切って抽出される酸素の量はモジュールを適切な大きさにすることにより制限され、そして望ましい酸素抽出の全体的な度合は、選ばれた複数のモジュールを直列に運転することにより達成できる。膜を横切る酸素輸送が発熱反応をもたらす場合、各モジュールにおいて個々の膜を横切る反応物の転化度は、流れ方向に膜を横切る過度の温度勾配を防止するのに充分低くなければならない。各個別モジュールを横切る転化度はモジュールを適切な大きさにすることにより制限することができ、そして望ましい全体的な転化は、選ばれた複数のモジュールを直列に運転することによって達成できる。
【0022】
各膜モジュールの膜の外側を流れるガスは、下記で説明するように、モジュール内部の膜の内側にあるガスよりも高圧であるのが好ましい。気相物質移動の抵抗を最小とするため、より高圧のガスは高速で、そしてできるだけ均一に、膜の外表面を一方から他方へと導くべきである。
【0023】
イオン輸送膜システムの独特な運転条件のゆえに、このシステムの設計には、圧力容器、容器内部に配置され一連の膜モジュールを取り囲む随意的なガス流動封じ込め装置又はダクト、及び容器壁を膜モジュールよりも低い温度で運転するのを可能にするための容器内部の断熱材を含めることができる。下記で説明するようなこれらの構成要素のおのおのの適切な物理的配置が、このシステムの製作、据え付け、及び長期の運転可能性を改善する。更に、全体としてのイオン輸送膜システムの長期の信頼性に貢献し得るその他の内部設計の工夫が開示される。
【0024】
ここに提示する本発明の態様の説明で使用する用語に対して、以下の定義が適用される。
【0025】
イオン輸送膜モジュールとは、ガスが膜構造体の外表面を一方から他方へと流動するように配置されたガスの流入領域とガスの流出領域を有する複数の膜構造体の集合体である。膜モジュールの流入領域から流出領域へと流れるガスは、それがモジュールの膜構造体の表面を一方から他方へと進むにつれ、その組成が変化する。各膜構造体には、酸素イオンを透過させる活性膜層又は領域によって隔てられている酸素含有ガス供給側と透過物側がある。各膜構造体にはまた、内部領域と外部領域もある。膜モジュールが酸素分離装置として働く一つの態様では、酸素含有ガス供給側が膜構造体の外部領域に隣接することができ、透過物側が膜構造体の内部領域に隣接することができる。
【0026】
膜モジュールが酸化反応装置として働く別の態様では、酸素含有ガス供給側が膜構造体の内部領域に隣接することができ、透過物側が膜構造体の外部領域に隣接することができる。この別態様では、反応物原料ガスは膜構造体の外部領域を流れ、そして透過した酸素と反応する。従ってこの態様では、透過物側が膜構造体の反応物ガス側でもある。
【0027】
膜構造体は、酸素含有ガスが管の片側に接触して流れ(すなわち、管の内部領域又は外部領域のいずれかであり)、酸素イオンが管壁中又は管壁上の活性膜材料を透過して管の他の側に至る管構造を有してもよい。酸素含有ガスは、管の内側又は外側を管の軸線に対して一般に平行な方向に流れてもよく、逆に管の軸線に対して平行でない方向に管の外側を流れてもよい。モジュールは、複数の管の供給側と透過物側を隔離するための適当なチューブシートアセンブリを備えた差し込み式のもしくはシェル・アンド・チューブ構造に配列された複数の管を含む。
【0028】
あるいはまた、膜構造体は、中央又は内部領域及び外部領域を有するウェハーが少なくとも周縁の一部をシールされた2つの平行な平面部材によって形成されている、平面構造を有することができる。酸素イオンは、平面部材の片面又は両面に配置することができる活性膜材料を透過する。ガスはウェハーの中央又は内部領域を流れることができ、そしてウェハーには、ガスがウェハーの内部領域に入り及び/又はそこから出ていけるよう、1以上のガス流動用開口部がある。こうして、酸素イオンは外部領域から内部領域へ透過してもよく、あるいは逆に内部領域から外部領域へ透過してもよい。
【0029】
膜モジュールの構成要素には、酸素イオンを輸送又は透過させ、また電子を輸送してもよい活性膜層、この活性膜層を支持する構造要素、そして膜表面へ及び膜表面からガスの流れを導くための構造要素が含まれる。活性膜層は、一般的には混合金属酸化物セラミック材料を含み、そしてまた1種以上の元素金属を含んでもよい。膜モジュールの構造要素は、例えば混合金属酸化物セラミック材料のような任意の適当な材料で製作することができ、そしてまた1種以上の元素金属を含んでもよい。活性膜層及び構造要素のいずれも同じ材料で製作してもよい。
【0030】
単一モジュールを直列に配列することができ、これはいくつかのモジュールを単一の軸線に沿って配置することを意味する。典型的には、第一のモジュールの膜構造体の表面を一方から他方へと通過したガスは、そのモジュールの流出領域から流出し、その後このガスの一部又は全てが第二のモジュールの流入領域に入り、そしてその後第二のモジュールの膜構造体の表面を一方から他方へと流れる。一連の単一モジュールの軸線は、全体的な流れの方向に対して、又は直列のモジュールを通過するガスの軸線に対して、平行であるか又はほぼ平行とすることができる。
【0031】
モジュールは2又はそれ以上の並列なモジュールのバンクに配置でき、この場合、並列モジュールのバンクは、全体的な流れの方向に対して、又はモジュール上を通過するガスの軸線に対して平行でなく、そして一般的にはそれに対して直角であることができる。モジュールの複数のバンクを直列に配列することができ、これは、定義により、モジュールのバンクが、第一のモジュールバンクの膜構造体の表面を通り越したガスの少なくとも一部が第二のモジュールバンクの膜構造体の表面を流れるように配置されることを意味する。
【0032】
任意の数の単一モジュール又はモジュールバンクを直列に配列することができる。一つの態様では、直列単一モジュール又は直列モジュールバンクのモジュールが、軸線の数が1に等しいかあるいは各バンクのモジュールの数に等しい、1つの共通の軸線上あるいは複数の共通の軸線上にあることができる。下記で説明する別の態様では、直列のモジュール又はモジュールバンク中の連続するモジュール又はモジュールバンクを、それぞれ、モジュールが少なくとも2つの軸線上にあり、あるいはバンク中のモジュール数よりも多い数の軸線上にあるように、交互にオフセットさせることができる。これらの態様のどちらも、ここで使用する直列モジュールの定義に包含される。
【0033】
好ましくは、膜モジュールの外部領域で外表面に接触するガスは、膜モジュールの内部領域内のガスよりも高圧である。
【0034】
流動封じ込めダクトとは、流動するガスを直列のモジュールの向こう側へ導く、複数の直列膜モジュールを取り囲む導管又は閉鎖流路として定義される。
【0035】
マニホールドとは、ガスを膜モジュールの内部領域に入り及び/又はそこから出るよう導く、パイプ又は導管の集成体である。第一の又は内側の導管を第二の又は外側の導管内に設置することにより、2つのマニホールドを組み合わせることができ、この場合、第一の導管が第一のマニホールドを提供し、導管の間の環状部が第二のマニホールドを提供する。これらの導管は同一中心又は同軸でよく、この場合これら二つの用語は同じ意味を有する。あるいはまた、導管は同一中心又は同軸でなくてもよく、別々の平行又は非平行の軸線を持つことができる。複合マニホールドの機能を提供する内管及び外管のこの構造を、ここでは入れ子式マニホールドと定義する。
【0036】
連通(flow communication)とは、膜モジュール及び容器システムの構成要素がお互いに関して、ガスが1つの構成要素から別の構成要素へと容易に流れることができるように適応していることを意味する。
【0037】
ウェハーとは、中心又は内部領域及び外部領域を有する膜構造体であり、ここでのウェハーは、少なくとも周縁の一部がシールされた2つの平行な平面部材によって形成される。平面部材のいずれか又は両方の表面に、活性膜材料を配置することができる。ガスはウェハーの中央又は内部領域を流れることができ、すなわち内部領域の全ての部分が連通しており、そしてウェハーは、ガスがウェハーの内部領域に入り及び/又はそこから出るのを可能にする1又はそれ以上のガス流動開口部を有する。ウェハーの内部領域は、ガスが内部領域を流れるのを可能にし、且つ平行な平面部材を機械的に支持する、多孔質及び/又は流路のある材料を含んでもよい。活性膜材料は、酸素イオンを輸送又は透過させるが、いかなるガスの流れも通さない。
【0038】
酸素とは、原子番号8を有する元素を含む酸素の諸形態に対する一般用語である。一般用語の酸素は、酸素イオンも、またガス状酸素(O2又は二酸素)も包含する。酸素含有ガスは、空気、又は酸素、窒素、水、一酸化炭素、及び二酸化炭素よりなる群から選ばれる1以上の成分を含むガス混合物を包含することができるが、これらに限定されるわけではない。
【0039】
反応物ガス又は反応物原料ガスとは、酸素と反応して酸化生成物を生成する少なくとも1つの成分を含むガスである。反応物ガスは1種又はそれ以上の炭化水素を含有してもよく、ここでの炭化水素は、主として又は専ら水素原子と炭素原子を含む化合物である。炭化水素は他の原子、例えば酸素などを含むこともできる。
【0040】
合成ガスとは、少なくとも水素と炭素酸化物を含有するガス混合物である。
【0041】
イオン輸送膜とは、高温で酸素イオンを輸送又は透過することができる混合金属酸化物を含むセラミック膜材料の活性層である。イオン輸送膜は、酸素イオンと同様に電子を輸送することもでき、このタイプのイオン輸送膜は一般に混合導体膜と記載される。イオン輸送膜はまた、それにより複合膜を形成する1種以上の元素金属を含むこともできる。
【0042】
イオン輸送膜システムとは、酸素回収又は酸化反応に使用する複数のイオン輸送膜モジュールのアレイに対する一般用語である。イオン輸送膜分離システムは、酸素含有ガスから酸素を分離及び回収するために使用するイオン輸送膜システムである。イオン輸送膜反応器システムとは、酸化反応に使用するイオン輸送膜システムである。
【0043】
本発明の態様における一連の膜モジュールは、上記のように管状又は平面構造のいずれかで製作することができる。平面構造は多くの用途にとって好ましく、様々な構造の平面膜モジュールが可能である。平面膜モジュール構造は、例えば2003年3月21日出願の同時係属米国特許出願第10/394620号明細書に記載されており、この出願は参照によりここに組み入れられる。
【0044】
原語書類中において不定冠詞「a」及び「an」を使用することは、本明細書及び特許請求の範囲に記載の本発明のいずれかの特徴に適用される場合、1又はそれ以上を意味する。「a」及び「an」の使用は、限定するように特に述べていない限り、単一を意味することに限定するものではない。
【0045】
典型的な平面膜モジュールの例を図1に示し、これは本発明の態様に従う酸素回収又は酸化プロセスに使用するための膜ウェハー積重体又はモジュールの模式正面図である。この例の積重体又はモジュールは、中空スペーサー3で隔てられ随意的なキャップ5を有する複数の平面ウェハー1を含んでいる。ウェハー及びスペーサーは、図示のように交互に配置及び接合されて、積重体又はモジュールの軸線7を形成している。ウェハーは平面図において任意の形状であってよいが、正方形又は長方形が一般に好ましい。正方形又は長方形ウェハーの辺の寸法は2cmと45cmの間とすることができる。積重体におけるウェハーの数は1000までの範囲とすることができる。
【0046】
積重体又はモジュールの外部領域とは、ウェハー及びスペーサーの外表面を取り囲む領域である。下記で詳細に述べるように、ウェハー1は、スペーサー3の内部と連通するように配置される内部領域を有し、ウェハーとスペーサーの間にはガスを漏らさないシールが形成される。底部の中空スペーサー11にある開口部9は、ガスが積重体又はモジュールの内部領域に入り及び/又はそこから出てゆくことを可能にし、モジュールの内部領域はウェハーの内部領域と中空スペーサーにある開口部によって形成されている。従って、開口部9はモジュールの内部領域と連通している。
【0047】
図1のモジュール側面図を図2Aに示し、これは酸化プロセスに使用するための典型的構造を例示する。この例では、ウェハー200の間のスペーサー201はそれぞれ、開口部203及び205の2つの別々な組を有している。スペーサー201にある開口部203、並びにスペーサー201の上方及び下方に配置されたスペーサーにある別の開口部は、内部マニホールドを形成し、この内部マニホールドは、ウェハーの左端でウェハーの層を通り抜ける適切に配置された開口部(図示せず)により、ウェハーの内部領域と連通している。ウェハー層を通り抜けるこれらの開口部も、スペーサー201の内部開口部203並びにスペーサー201の上方及び下方のスペーサーの内部開口部を相互に連通させる。同様に、スペーサー201の開口部205、並びにスペーサー201の上方及び下方に配置されたスペーサーにある別の開口部が、内部マニホールドを形成し、この内部マニホールドは、ウェハーの右端でウェハーの層を通り抜ける適切に配置された開口部(図示せず)により、ウェハーの内部領域と連通している。ウェハーの層を通り抜けるこれらの開口部もまた、スペーサー201の内部開口部205並びにスペーサー201の上方及び下方のスペーサーにある内部開口部を相互に連通させる。
【0048】
この例の構造では、ガス流207は開口部203及びそれらの上方の開口部により形成された内部マニホールドを上向きに流れ、次いでウェハーの内部領域を水平に流れる。次に、ウェハーの内部領域からのガスは、開口部205及びそれらの上方の開口部により形成された内部マニホールドを下向きに流れ、ガス流209としてモジュールを出る。モジュールのガス流入領域の第二のガス211は、スペーサー201の両側のモジュールの外部領域を通りウェハー200の外表面に接触して流れる。ウェハー200の外表面に接触後、ガス213はモジュールのガス流出領域を流れる。このモジュールは、600〜1100℃典型的な温度範囲で運転することができる。
【0049】
図2Aのモジュールは酸化反応器システムの一部として使用でき、この場合、代表的なガス211は反応ガスであり、代表的なガス207は酸化剤又は酸素含有ガスである。酸素含有ガス207は、開口部203を経由して内部マニホールドを流れ、またウェハーの内部領域を流れ、酸素は、ウェハーの平面部材にある活性膜材料を透過し、そして酸素の減少したガス209が開口部205を通ってモジュールから流れる。透過した酸素は、ガスがウェハーの外表面を流れるにつれて反応物ガス又は反応物原料ガス211中の反応物成分と反応し、そして酸化生成物を生成する。モジュールからの出口ガス213は、酸化生成物と未反応成分を含んでいる。一つの例となる態様では、反応物ガス211はメタン又はメタン含有原料ガスを含み、出口ガス213は未反応メタン、水素、炭素酸化物、及び水の混合物であり、酸素含有ガス207は空気であり、そして酸素の減少したガス209は、ガス207に比べて窒素に富み酸素が減少している。典型的には、ガス211及び213の圧力はモジュールの内部領域のガス圧力よりも高い。
【0050】
図1のモジュールの別の側面図を図2Bに示し、これは酸素含有ガスから高純度酸素を回収するプロセスに使用するための典型的な構造を例示している。この例では、ウェハー217の間のスペーサー215は開口部219を有しており、開口部219及びスペーサー215の下方に配置したスペーサーにある別の開口部が、ウェハーの内部領域と連通する内部マニホールドを形成している。こうして開口部221は、モジュールの内部領域を製品ガスの導管(図示せず)と連通させる。モジュールのガス流入領域の酸素含有ガス223、例えば空気は、スペーサー215の両側のモジュールの外部領域を通りウェハー217の外表面に接触して流れる。ウェハー217の外表面に接触後、酸素の減少したガス225がモジュールのガス流出領域を流れる。このモジュールは、600〜1100℃の典型的な温度範囲で運転することができる。
【0051】
酸素含有ガスがモジュールの外部領域を流れそしてこのガスがウェハーの外表面に接触すると、酸素はウェハーの平面部材の活性膜材料を透過し、モジュールの内部領域に高純度酸素ガスが集まる。高純度酸素製品ガス227は開口部221から流出する。一般的に、酸素含有ガス223及び225の圧力はモジュールの内部領域にある高純度酸素の圧力よりも高い。
【0052】
図1、2A及び2Bにおけるウェハーの内部領域の1つの典型的構造を、図3A及び3Bの断面図で例示する。図1の2−2断面を表す図3Aを参照すれば、このウェハーは、ガスが気孔を通って流動するのを可能にする多孔性セラミック材料製の外部支持層301及び303を有している。緻密な活性膜層305及び307が外部支持層301及び303と接触しており、そして流動流路層315及び317の一部である支持リブ321及び329によって支持されている。これらのリブもまた、ガスの流動のための開口部又はスロット313を有するスロット付き支持層309により支持されている。開放の流路319と325が、開口部又はスロット313を介して連通している。随意に、図2Bのモジュールを酸素含有ガスから酸素を回収するのに使用する場合には、支持層301及び303は必要ないことがある。
【0053】
「緻密な」という語は、焼結又は焼成した場合に、ガスがそれを通り抜けて流れることのできないセラミック材料を指す。膜が無傷でガスを漏出させるひび、穴、又は欠陥がない限り、ガスは混合伝導性多成分金属酸化物材料でできた緻密なセラミック膜を通り抜けて流れることはできない。酸素イオンは、高温、典型的には600℃より高い温度で、混合伝導性多成分金属酸化物材料でできた緻密なセラミック膜を透過することができる。
【0054】
図2A及び2Bの4−4断面を表す図3Bは、図3Aの断面を90度回転させたウェハー断面を示す。この断面は、同一に見える外部支持層301及び303と同一に見える緻密な活性膜材料層305及び307を示している。この断面はまた、先のものに代わるスロット付き支持層309と流動流路層315及び317も示している。交互に配された支持リブ333の間に開放の流路331が形成され、ウェハーの内部領域をガスが流れるのを可能にしている。従って、ウェハーの内部領域は、流動流路層315、流動流路層317、及びスロット付き支持層309の内部にある一体化した開放容積として定義される。
【0055】
緻密な活性膜層305及び307は、好ましくは、一般式(LaxCa1-x)yFeO3-δ(式中、1.0>x>0.5、1.1≧y>1.0、そしてδは該組成物の電荷を中性にする数である)を有する少なくとも1つの混合伝導性多成分金属酸化物化合物を含有する混合金属酸化物セラミック材料を含む。多孔性支持層301及び303のためには任意の適当な材料を使用でき、この材料は、例えば、活性膜層305及び307と同じ組成を持つセラミック材料でよい。好ましくは、多孔性支持層301及び303は混合伝導性多成分金属酸化物材料である。スロット付き支持層309並びに流動流路層315及び317の構造部材には任意の適当な材料を使用でき、この材料は、例えば、活性膜層305及び307と同じ組成を持つセラミック材料でよい。流路を備えた支持層の材料は、好ましくは、緻密なセラミック材料である。一つの態様では、活性膜層305及び307、多孔性支持層301及び303、スロット付き支持層309、並びに流動流路層315及び317は、全て同じ組成の材料で製造することができる。
【0056】
緻密な活性膜層305及び307は、随意に、1種以上の酸素還元触媒を酸化剤側に含むことができる。この1種以上の触媒又は触媒は、白金、パラジウム、ルテニウム、金、銀、ビスマス、バリウム、バナジウム、モルブデン、セリウム、プラセオジム、コバルト、ロジウム及びマンガンよりなる群から選ばれる金属又はこの群から選ばれる金属を含有する化合物を含むことができる。
【0057】
多孔性支持層301及び303は、随意に、炭化水素の酸化、改質、及び/又は該多孔性層で起こるその他の反応を促進するための1種以上の触媒を含んでもよい。この1種以上の触媒は、多孔性支持層301及び303の一方又は両方の表面に配置してもよく、あるいはこの層全体に分散させてもよい。この1種以上の触媒は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、金、ニッケル、コバルト、銅、カリウム及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる金属又はこの群から選ばれる金属を含有する化合物を含むことができる。構造及び/又はプロセス上の理由で望ましい場合には、それぞれ活性膜層305及び307と隣接する流動流路層315及び317の間に、更なる多孔性層を配置してもよい。
【0058】
図1、2A及び2Bの酸素回収用途向けウェハーの内部領域のもう一つの可能な構造を、図3C及び3Dの断面図に例示する。図1の2−2断面を表す図3Cを参照すれば、ウェハーは外側緻密層351及び353を有する。355及び357の多孔性セラミック層が、外側緻密層351及び353と接触している。多孔性セラミック層355は、流動流路層365の一部である支持リブ371によって支持されている。多孔性セラミック層355は、流動流路層365の一部である流動流路366と接触している。多孔性セラミック層357は、流動流路層367の一部である流動流路368と接触している。
【0059】
リブ371はまた、ガスの流動のための開口部又はスロット363を有する流動流路層358によって支持されている。流動流路層367は流動流路層359のリブ373によって支持されており、そしてブリッジ379が流動流路368の端部を形成している。ブリッジ372が流動流路363の端部を形成し、そして流動流路368は流動流路層359の流動流路374と連通している。開放の流路374及び363は連通している。
【0060】
図2A及び2Bの4−4断面を表す図3Dは、図3Cの断面を90度回転させたウェハーの断面を例示している。この断面は、同一に見える外部緻密層351及び353と同一に見える多孔性セラミック層355及び357を示している。多孔性セラミック層355が、流動流路層365によって支持されている。多孔性セラミック層355は、流動流路層365の一部である流動流路366と接触している。多孔性セラミック層357は、流動流路層367のリブ378によって支持されている。多孔性層357は、流動流路層367の一部である流動流路368と連通している。
【0061】
リブ378はまた、ガスの流動のための開口部又はスロット374を有する流動流路層359によって支持されている。流動流路層365は流動流路層358のリブ375によって支えられている。ブリッジ371が、流動流路366の端部を形成している。ブリッジ376が、流動流路374の端部を形成し、そして流動流路366は流動流路層358の流動流路363と連通している。開放の流路374及び363は連通している。
【0062】
従って、ウェハーの内部領域は、流動流路層365、流動流路層367、流動流路層358、及び流動流路層359の内部にある一体化した開放容積として定義される。層365及び358の流動流路は互いに直行していてよく、層367及び359の流動流路もまた同様である。あるいはまた、流動流路358及び359は、ウェハーの中央から放射状に延在し且つウェハー中央の中心口と連通している流動流路を含む単一の流動流路層に置き換えてもよい。
【0063】
緻密活性膜のための代表的な組成物が米国特許第6056807号明細書に記載されており、それは参照によりここに組み入れあられる。緻密活性膜層351及び353は、好ましくは、一般式(LaxSr1-x)CoyO3-δ(式中、1.0<x<0.4、1.02≧y>1.0、そしてδは該組成物の電荷を中性にする数である)を有する少なくとも1つの混合伝導性多成分金属酸化物化合物を含有する混合金属酸化物セラミック材料を含む。多孔性支持層355及び357のためには任意の適当なセラミック材料を使用することができ、この材料は、例えば、活性膜層351及び353と同じ組成の材料でよい。好ましくは、多孔性支持層355及び357は混合伝導性多成分金属酸化物材料である。流動流路層365、367、358及び359の構造部材には任意の適当な材料を使用でき、そしてこの材料は、例えば、活性膜層351及び353と同じ組成を持つセラミック材料でよい。流路を設けた流動層の材料は、好ましくは、緻密なセラミック材料である。一つの態様では、活性膜層351及び353、多孔性支持層355及び357、並びに流路を設けた流動層358、359、365及び367は、全て同じ組成を持つ材料で製作することができる。
【0064】
随意に、緻密層351及び353の外表面に多孔性層を適用してもよい。酸素発生用途向けのウェハーの内部領域のためのその他の典型的な構造が、米国特許第5681373号明細書に記載されており、それは参照によりここに組み込まれる。
【0065】
本発明の態様は、上に明示したように直列に配列される複数の膜モジュールを利用する。この直列モジュールはまた、ガス流をモジュールへ導きそしてガスをモジュールから導くための適当なガス流動封じ込めダクト、導管、及び/又はマニホールドを備えた1又はそれ以上の容器に取り付けることができる。これらの態様の一つを図4Aに例示し、これは酸素含有ガスから高純度酸素製品を回収するのに使用するための典型的な膜分離器容器の内部の模式側面図である。高純度酸素製品は、少なくとも99.9容量%の酸素を含有することができる。膜モジュール401、403、405、407、及び409は、圧力容器413内の随意的な流動封じ込めダクト411内に直列に取り付ける。これらの膜モジュールは、例えば、図1及び2Bを参照して先に説明したモジュールと同様でよい。随意的な流動封じ込めダクト411は、入口ガス流417をこのダクトを通してモジュール401〜409のウェハーの外表面と接触させるよう導くための入口415を有する。この入口ガス流は、任意の適当な方法(図示せず)で600℃〜1100℃の温度に加熱された加圧酸素含有酸化剤ガス、例えば空気である。ダクト411内のガスの圧力は0.2〜8MPaの範囲内でよい。流動封じ込めダクトは、好ましくは、鉄と、ニッケル及びクロムよりなる群から選ばれる1以上の元素とを含有する耐酸化性金属合金を含む。流動封じ込めダクト用に利用できる商業的に入手可能な合金には、ハイネス(Haynes、登録商標)230、インコロイ(Incolloy、登録商標)800H、ハイネス(登録商標)214、及びインコネル(Inconel、登録商標)693合金がある。
【0066】
流動封じ込めダクト411内のガス圧力は、好ましくは、圧力容器413内の、この容器の内壁と流動封じ込めダクト411の外壁のと間のガス圧力より高い。圧力容器413の入口と出口の間の任意の箇所におけるダクト411の内側と外側との圧力差は、好ましくは、0に等しいかあるいはそれより大きい値に維持され、ここで、ダクト内部の圧力はダクト外部の圧力容器内の圧力と等しいかそれより高い。これは、例えば、ダクト外の空間をダクト内部の処理ガスよりも低圧のガスでパージし、処理ガス出口421でダクト外の空間とダクト中の処理ガスとを連通をさせ、パージガスをダクト外の空間へと導入し、又は、ダクト内部よりもダクト外部の空間でより低圧を維持するためにパージガス出口で圧力制御装置を使用しながら、パージガスをパージガス出口を通して抜き出すことにより、達成することができる。
【0067】
酸素含有ガスが膜モジュール401〜409のウェハーの表面を直列に通過するにつれ、酸素が緻密な活性膜層を透過し、そしてモジュールの内部領域に集まる。酸素の減少したガス流419は、出口421を通ってダクト及び圧力容器から出る。モジュールの内部領域からの高純度酸素透過製品は、一次マニホールド423、425、427、429、及び431、二次マニホールド433、435、437、439、及び441、そして主マニホールド445を流れ、高純度ガス製品流447としてこのシステムを出る。膜モジュール401〜409のうちの少なくとも2つは、圧力容器413の軸線又は流動封じ込めダクト411の軸線と平行であってもよくあるいは一致してもよいモジュールの軸線を規定する。
【0068】
上述の典型的な膜分離器容器は、ガスを膜モジュールに供給するための単一の入口、単一の流動封じ込めダクト、及び膜モジュールからの単一の出口を有してはいるが、複数の入口、複数の流動封じ込めダクト、及び/又は複数の出口を使用することができるこのほかの態様が可能である。例えば、圧力容器は、各々が1又はそれ以上の入口及び1又はそれ以上の出口を持つ2個(又はそれ以上)の流動封じ込めダクトを有してもよい。一般的に、分離器容器が入口と出口を有すると記載される場合、これは、それが1又はそれ以上の入口と1又はそれ以上の出口を有することを意味する。一般的に、分離器容器が流動封じ込めダクトを有すると記載される場合、これはそれが1又はそれ以上の流動封じ込めダクトを有することを意味する。
【0069】
図4Aの典型的な膜分離器容器のもう一つの図を、図4Bに示したように6−6断面によって示す。この態様では、ダクト411中に、3つの膜モジュール401a、401b、及び401cのバンクが平行に取り付けられており、そしてこのバンクは、二次マニホールド433に接続した3つの一次マニホールド423a、423b、及び423cを有する。二次マニホールド433はまた、主マニホールド445に接続している。これとは別に、1つの膜モジュール、2つの並列の膜モジュール、又は3つ以上の並列の膜モジュールを、各バンクで使用してもよい。
【0070】
二次マニホールド433、435、437、439及び441と主マニホールド445は、図4A及び4Bの態様では圧力容器413の内部に位置してはいるが、別の態様ではこれらのマニホールドは圧力容器の外部に位置してもよい。この別態様では、一次マニホールド423、425、427、429、及び431は圧力容器413の壁を貫通する。
【0071】
別の態様では、平面膜モジュール401〜409を、随意的なダクト411を通る長手方向のガスの流れに関して直列の関係に配置した管状膜モジュールと取り替えることができる。これらのモジュールは複数の単一管を利用してもよく、あるいは差し込み式の管を利用してもよく、そしてこれらのモジュールは、ガスが交差流でもって管を横切って流れるか、あるいは平行流でもって管と接触するような向きにすることができる。この別態様では、マニホールドは全て、図4A及び4Bに示すように圧力容器内に位置する。
【0072】
本発明のもう一つの態様を図5に示し、これは酸化プロセスに使用するための典型的な膜反応器容器の内部の模式側面図である。膜モジュール501、503、505、507、及び509は、圧力容器513内部の流動封じ込めダクト511内に直列に取り付けられる。これらの膜モジュールは、例えば図1及び2Aを参照して先に説明したモジュールと同様でよい。随意的な流動封じ込めダクト511は、入口ガス流517をこのダクトを通してモジュール501〜509のウェハーの外表面に接触するよう導くための入口515を有する。この入口ガス流は、高温で酸素と反応する1又はそれ以上の成分を含有する反応物原料ガスであり、この入口反応物原料ガスは任意の適当な方法(図示せず)で600℃〜1100℃の温度に加熱される。ダクト511内のガスの圧力は0.2〜8MPaの範囲でよい。反応物原料ガスの例は水蒸気と天然ガスの混合物であり、天然ガスは主としてメタン、そしてより少量の軽質炭化水素を含む。この混合物は、水蒸気、メタン、及び炭素酸化物を含有する反応物原料ガスを生成させるため約800℃より低い温度で前もって改質することができる。その他の酸化可能な反応物原料ガスとしては、例えば、水素、一酸化炭素、水蒸気、メタノール、エタノール、及び軽質炭化水素の様々な混合物が挙げられる。
【0073】
流動封じ込めダクト511内のガス圧力は、好ましくは、圧力容器513の内壁と流動封じ込めダクト511の外壁との間の、容器内部のガス圧力より高い。圧力容器513の入口と出口の間の任意の点における、ダクト511の内部と外部との圧力差は、好ましくは、0に等しいかそれより大きい値に維持され、ダクト内部の圧力はダクト外部の圧力容器内の圧力と等しいかそれより高い。これは、例えば、ダクト外の空間をダクト内部の処理ガスよりも低圧のガスでパージし、処理ガス出口559でダクト外の空間とダクト内の処理ガスとを連通させ、パージガスをダクト外の空間へと導入し、そしてダクト内部よりもダクト外部の空間でより低圧を維持するためにパージガス出口で圧力制御装置を使用しながら、パージガスをパージガス出口を通して抜き出すことにより、達成することができる。
【0074】
膜モジュール501〜509の内部領域は、2つのマニホールドシステムと連通しており、マニホールドシステムの一方は酸素含有酸化剤ガスをモジュールに導入するため、他方は酸素の減少した酸化剤ガスをモジュールから抜き出すためのものである。これらのマニホールドシステムの第一のものは、主たる入口マニホールド519、一次入口マニホールド521、523、525、527、及び529、そして二次入口マニホールド531、533、535、537、及び539を含む。これらのマニホールドシステムの第二のものは、主たる出口マニホールド541と、一次出口マニホールド543、545、547、549、及び551を含む。
【0075】
図5の構造に代わる別の構造(図示せず)では、流動封じ込めダクト511内に位置している場合に、二次入口マニホールド531、533、535、537、及び539をそれぞれ一次出口マニホールド543、545、547、549、及び551と一体化することができる。第一の又は内部導管を第二の又は外部導管内に組み込むことにより、二つのマニホールドを一体化してもよく、この場合、第一の導管が第一のマニホールドを提供し、導管の間の環状部が第二マニホールドを提供する。これらの導管は同一中心又は同軸でよく、あるいはまた、導管は同一中心又は同軸でなくてもよく、別々の平行又は非平行軸線を持つことができる。複合マニホールド機能を提供する内部導管及び外部導管のこの構造を、ここでは入れ子式マニホールドと定義する。
【0076】
この別態様の構造では、ガス553は中央の導管を流れ、ガス555はこれら入れ子式マニホールドの各組の環状部を流れる。入れ子式マニホールドは、流動封じ込めダクト511の外にある別々のマニホールドへと推移し、すなわち、図5に示すように、二次入口マニホールド531、533、535、及び539と一次出口マニホールド543、545、547、549、及び551へと推移する。随意的に、一次出口マニホールド543、545、547、549、及び551は、流動封じ込めダクト511内のそれぞれ二次入口マニホールド531、533、535、537、及び539の中に入れ子状に入っていてもよい。このオプションでは、ガス555は中央導管を流れ、ガス553はこれら入れ子式マニホールドの各組の環状部を流れることになる。従って、包括的に言えば、二次入口マニホールドと一次出口マニホールドは、流動封じ込めダクト511内に位置する場合に、入れ子式とすることができ、そして環状部が二次入口マニホールドかあるいは一次出口マニホールドのいずれかを提供することができる。
【0077】
加熱した加圧酸素含有酸化剤ガス553、例えば、任意の適当な方法(図示せず)で600〜1100℃の温度に加熱した空気が、主入口マニホールド519に入り、一次入口マニホールド521、523、525、527、及び529と二次入口マニホールド531、533、535、537、及び539を通って膜モジュール501、503、505、507、及び509の入口へと流れる。膜モジュールの内部領域の酸化剤ガスから酸素が、モジュール501〜509のウェハーの緻密活性膜層を透過し、透過した酸素は膜モジュールの外部領域において反応性成分と反応する。酸素の減少した酸化剤ガスが、一次出口マニホールド543、545、547、549、及び551と主出口マニホールド541を通って膜モジュール内部領域の出口を出て、そして最後の酸素の減少した酸化剤ガスがガス流555として抜き出される。反応生成物と未反応の供給成分とを含有する出口ガス流557が、出口559を通してこの反応器システムから抜き出される。
【0078】
上述の典型的な反応器容器には膜モジュールへの反応物原料ガスの単一の入口、単一の流動封じ込めダクト、そして膜モジュールからの単一の出口があるが、複数の入口、複数の流動封じ込めダクト、及び/又は複数の出口を使用することができる他の態様も可能である。例えば、圧力容器は、各々に1又はそれ以上の入口及び1又はそれ以上の出口のある2又はそれ以上の流動封じ込めダクトを有することができる。一般的に、反応器容器が入口と出口を有すると記載する場合、これは1又はそれ以上の入口と1又はそれ以上の出口を有することを意味する。一般的に、反応器容器が流動封じ込めダクトを有すると記載する場合、これは1又はそれ以上の流動封じ込めダクトを有することを意味する。
【0079】
図5の典型的な膜反応器容器の別の図を、図6に示すように8−8断面でもって提示する。この態様では、ダクト511内に3つの膜モジュール503a、503b、及び503cのバンクを平行に設置する。酸化剤ガスは、主入口マニホールド519、一次入口マニホールド523、及び二次入口マニホールド533a、533b、及び533cを通って膜モジュール503a、503b、及び503cの入口へと流れる。酸素が減少した酸化剤ガスは、一次出口マニホールド545a、545b、及び545c(二次入口マニホールド533a、533b、及び533cの背後に位置する)、二次出口マニホールド561、そして主出口マニホールド541a及び541bを通って、膜モジュール503a、503b、及び503cを出る。図6の態様には3個の並列な膜モジュールが示されてはいるが、所望に応じ1つの膜モジュール、2つの並列膜モジュール、又は4つ以上の並列膜モジュールを使用してもよい。
【0080】
1つの容器からの出口ガスを他の容器に供給するように、圧力容器413と直列に追加の圧力容器を設置してもよい。追加の圧力容器は並列に配置してもよく、この場合、複数の圧力容器が並列且つ直列に運転する。同様に、1つの容器からの出口ガスを他の容器に供給するように、追加の圧力容器を圧力容器513と直列に設置してもよい。追加の圧力容器は並列に配置してもよく、この場合、複数の圧力容器が並列且つ直列に運転する。所望に応じ、ガード床を任意の直列の圧力容器間に配置してもよい。
【0081】
上記の態様では、圧力容器413及び513の壁をそれぞれの膜モジュール401〜409及び501〜509の温度よりも低い温度に維持するために内部断熱材を使用するのが望ましい。これは、図7〜13に示す種々の断熱材の態様により達成することができ、これらの図は酸素含有ガスから酸素を回収するのに使用する図4A及び4Bの態様のための断熱材の構造配置を例示している。同様の断熱材の構造配置(図示せず)を、図5及び6の酸化反応器の態様のために使用してもよい。
【0082】
これらの断熱材の態様の第一番目を図7に示し、ここでは断熱材701を圧力容器703の内部に配置しており、そしてそれは圧力容器の内壁に接触させてもよい。この態様では、流動封じ込めダクトを使用せず、代わりに断熱材自体により空洞705を形成し、そしてこの空洞がガスの流れを膜モジュールの外部領域を通り過ぎて導く役割を果たす。この断熱材は、一次マニホールド423a、423b、及び423c、二次マニホールド433、そして主マニホールド445と接触させてもよい。
【0083】
第二の断熱材の構造配置を図8に示し、ここでは断熱材801を圧力容器413の内壁に隣接して配置しており、そしてそれは圧力容器の内壁に接触させてもよい。この態様では、流動封じ込めダクト411を使用し、そして好ましくはこれを断熱材801と接触させない。断熱材は好ましくは、一次マニホールド423a、423b、及び423c、二次マニホールド433、並びに主マニホールド445と接触させない。
【0084】
第三の断熱材の構造配置を図9に示し、ここでは断熱材901は、圧力容器の内壁と、流動封じ込めダクト411、一次マニホールド423a、423b、及び423c、二次マニホールド433、並びに主マニホールド445の外表面との間の、該容器の内部領域を完全に充填している。断熱材は、容器内壁、並びに流動封じ込めダクト411、一次マニホールド423a、423b、及び423c、二次マニホールド433、そして主マニホールド445の外表面と、接触してもよい。
【0085】
もう一つの態様の断熱材の構造配置を図10に示し、ここでは断熱材1001は、膜モジュールの周囲に空洞1003を形成しており、そしてこの空洞がモジュールの外部領域を通り越してガスの流れを導く役割を果たしている。断熱材1001は一次マニホールド423a、423b、及び423cと接触してもよく、典型的には圧力容器413の内壁と接触しない。
【0086】
図11はもう一つの態様の断熱材の構造配置を示しており、ここでは断熱材1101は流動封じ込めダクト411を取り囲み、そしてそれがまた上記のように膜モジュールを取り囲んでいる。断熱材1101は一次マニホールド423a、423b、及び423cと接触してもよく、そして一般に圧力容器413の内壁及び流動封じ込めダクト411の外表面と接触しない。
【0087】
もう一つの断熱材の構造配置を図12に示し、ここでは断熱材1201は流動封じ込めダクト411を取り囲み、そしてそれがまた上記のように膜モジュールを取り囲んでいる。断熱材1201は一次マニホールド423a、423b、及び423cと接触してもよく、一般に流動封じ込めダクト411の外表面と接触し、そして一般に圧力容器413の内壁とは接触しない。
【0088】
最後の断熱材の構造配置を図13に示し、ここでは断熱材1303は流動封じ込めダクト411内に、且つ一般に該ダクトの内壁と接触して配置され、この場合、断熱材は膜モジュールの周囲に空洞1305を形成し、そしてこの空洞がガスの流れをモジュールの外部領域を通り越して導く役割を果たす。断熱材1303は一次マニホールド423a、423b、及び423cと接触してもよい。
【0089】
図7〜13の上述の態様のいずれにおいても、一次マニホールド423a、423b、及び423cでは、金属マニホールドからセラミックモジュールへと推移させるため、一般に金属−セラミックシールを使用する。同様に、図6に記載の酸化反応器の態様及び図7〜13の態様と類似の対応する断熱材の態様では、金属マニホールドからセラミックモジュールへと推移させるため、一次マニホールド533a、533b、及び533cで一般的に金属−セラミックシールを使用する。図10〜13の態様(及び酸化反応器のための同様の態様)では、これらのシールは、所望のシール運転温度を実現するため、断熱材1001、1101、1201、及び1303の内部に(マニホールド423a、423b、及び423cと接触させるがマニホールド433には接触させずに)位置させるのが好ましい。
【0090】
図7〜13の態様のいずれにおいても、例えば高温となる可能性のある容器表面から運転要員を防御するために、圧力容器の外表面の周囲に更なる断熱材(図示せず)を配置してもよい。この更なる断熱材はまた、容器内部を容器内のいかなるガスの露点よりも確実に高くする役割を果たすことができる。図10〜13の態様のいずれにおいても、更なる断熱材(図示せず)を圧力容器の内面に隣接して配置することができる。図4A、4B及び5〜13の態様のいずれにおいても、マニホールドのいずれも内部及び/又は外部を断熱する(図示せず)ことができる。この断熱は、流動封じ込めダクト411及びマニホールドの熱膨張の均一性を改善する役割を果たす。
【0091】
図7〜13の態様に使用する断熱材は、アルミナ、アルミノケイ酸塩、シリカ、ケイ酸カルシウム、又は高温での使用に好適なその他の通常の断熱材料を包含することができる。断熱材は、例えば、繊維状アルミナ、繊維状アルミノケイ酸塩、多孔性アルミナ、及び多孔性アルミノケイ酸塩よりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の材料を含むことができる。図7、10、及び13の態様では、断熱材自体が膜モジュールの周囲に空洞を形成するが、この空洞の内壁を断熱材由来の揮発性成分が膜モジュールに接触するのを防止する材料で被覆し又は覆うことができる。例えば、この空洞をハイネス214のような金属でできた箔で裏打ちして、断熱材料から発生する可能性があるSi含有蒸気種及び/又は金属配管材料から発生する可能性があるCr含有蒸気種が膜モジュールに接触するのを防止することができる。
【0092】
断熱材としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸ナトリウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1又はそれ以上の更なる材料を挙げることができ、これらの材料を断熱材表面に適用してもよく、及び/又は断熱材全体に分散させてもよい。これらの更なる材料を、上述の1以上のガード床の代わりに、又はそれに加えて使用してもよい。これらの材料は、反応物ガスの入口流中に存在することがある汚染物質と反応してそれらを除去し、これらの汚染物質としては、例えば、硫黄、クロム、ケイ素又は酸素を含有するガス種を挙げることができる。
【0093】
ウェハーの群を直列の流れの構成に配置する別態様を図14に示す。この態様では、背の高い積重体を上記のようにウェハーとスペーサーで形成し、この積重体を圧力容器1401内に設置する。入口管路1403及び出口管路1405をガスマニホールドシュラウドアセンブリ1407と接続し、このアセンブリが入口ガス1408の流れを、ウェハー群と接触して交互の向きに流れ且つ出口管路1405を通って出口流1409として流れるよう導く。この態様では、積重体はシュラウドアセンブリによって第一ウェハー区域1411、第二ウェハー区域1413、及び第三ウェハー区域1415に分けられている。こうして、入口ガス1408は直列にウェハー区域1411、1413、及び1415を横切って直列に流れ、そして出口管路1405を通って出てゆく。ここには例示を目的として3つのウェハー区域を示しているが、必要に応じて任意の数のウェハー区域を使用することができる。
【0094】
図14の態様は、酸素回収装置として、又は酸化反応装置として使用することができる。酸素回収装置として使用する場合、積重体は、図1及び2Bを参照して先に説明したようにウェハーとスペーサーで形成される。酸素回収プロセスでは、入口ガス1408は加熱した加圧酸素含有ガス(例えば空気)であり、出口流1409は酸素の減少した酸素含有ガスであり、そして出口管路1419を通って流れる流れ1417は、一般に加圧酸素含有ガスよりも低圧の、高純度酸素製品の流れである。酸化反応器システムとして使用する場合、積重体は、図1及び2Aを参照して先に説明したようにウェハー及びスペーサーで形成される。酸化プロセスでは、入口ガス1408は加熱した加圧反応物ガスであり、出口ガス1409は酸化反応生成物と未反応の反応物ガス成分の混合物である。流れ1417は、一般に加圧反応物ガスよりも低圧の、酸素の減少した酸素含有ガスの流れである。新たな酸素含有酸化剤ガス(例えば空気)は、図2Aを参照して先に説明したように内部積重体マニホールドを通って積重体へ流入し、このマニホールドへの入口は、出口管路1419の背後にあるため、図14では見えない。
【0095】
図14の態様は、所望に応じて、直列の及び/又は並列の複数の圧力容器を用いて運転することができる。所望ならば、複数のモジュールを単一の圧力容器に設置してもよい。
【0096】
図4A、4B、5、及び6を参照して先に説明したように、一連の膜モジュールを並列モジュールのバンクに配置してもよい。これを、流動封じ込めダクト511とこのダクト内の膜モジュールの断面図(縮尺は一定でない)である図15でもって説明する。この典型的な態様では、3つの並列モジュールの5つのバンクが一連のモジュールの各個別の組が共通のモジュール軸線上に位置するように、すなわち、モジュール501a、503a、505a、507a、及び509aが同一の軸線上にあり、モジュール501b、503b、505b、507b、及び509bが同一軸線上にあり、そしてモジュール501c、503c、505c、507c、及び509cが同一軸線上にあるように、配置されている。従ってこの例では、各バンクにおけるモジュール数に等しい3つの軸線がある。各バンクは並列の複数のモジュールを含み、例えば、モジュール501a、501b、及び501cは並列モジュールの1つのバンクを構成する。複数のモジュールを直列に配列してもよく、例えば、モジュール501c、503c、505c、507c、及び509cは直列のモジュールを構成する。直列モジュールの定義は、モジュールのバンクをも包含することができ、例えば、モジュール501a、501b、及び501cのバンクはモジュール503a、503b、及び503cのバンクと直列である。このように、図15のモジュール構成は直列のモジュールと並列のモジュールを包含する。
【0097】
実際問題として、ガスが膜モジュールの周囲をバイパスする悪影響を最小にするため、一連のモジュールバンクの間のガスの実質的に半径方向の混合(すなわち、直列のモジュールの軸線からそれる方向のガスの流れ)を促進するのが望ましいことがある。従って、図15のモジュールの形状配置は、一番よい表現をしたとしても、並列のモジュールと、直列に運転する並列モジュールのバンクを含むものである。多くのガス流分配システムの設計におけるように、半径方向の混合の程度は、内部構成要素(すなわち膜モジュール)間の軸線方向及び半径方向の間隔を適切に選択すること、及び/又はガスの混合を促進するための流動バッフルを使用することによって最大にすることができる。
【0098】
入口1503における入口ガス流1501は、半径方向に整列した(すなわち並列の)モジュールの各バンクを越えて直列に流れる。モジュール間の軸線方向及び半径方向の間隔を適切に選択すれば、少量のガスがモジュール501a、501b、及び501cをバイパスする可能性があるが、それは半径方向に混合又は拡散するので、最終的には下流のモジュールと接触する。出口ガス流1505は出口1507を通って流れる。一連のモジュールバンクの各々を越えてゆくガスの流れが、1つの並列モジュールバンクからのガスの全て又はほぼ全てが一連のモジュールにおける次の並列モジュールバンクと接触するこの態様の直列の配列を規定する。所望の任意の数のモジュールを半径方向に並列にして使用してもよく、また、所望の任意の数の並列モジュールバンクを軸線方向に直列にして使用してもよい。
【0099】
図4Aと4B又は図5と6に関連する本発明の別態様では、並列膜モジュールのバンクを、3つのモジュールの第一のバンクの次に3つのモジュールのオフセットした第二のバンクが直列に続き、その次に3つのモジュールのオフセットした第三のバンクが直列に続く、等々といったように、千鳥状の又はオフセットした直列配置に整列させてもよい。これを図16で説明すると、3つのモジュール502a、502b、及び502cの第一のバンクの次に、流動封じ込めダクト511の軸線に垂直な方向にオフセットした3つのモジュール504a、504b、及び504cの第二のバンクが直列に続く。3つのモジュール506a、506b、及び506cの第三のバンクは第二のバンクに関してオフセットしているが、これらのモジュールは第一のバンクのモジュールと同軸である。このオフセット関係は、モジュール508a、508b、及び508cの第四のバンクとモジュール510a、510b、及び510cの第五のバンクを通じて同様に続くことができる。各々のバンクは並列の複数のモジュールを含むことができ、例えば、モジュール502a、502b、及び502cは並列モジュールの1つのバンクを構成する。複数のモジュールを直列に配列してもよく、例えば、モジュール502c、504c、506c、508c、及び510cが直列のモジュールを構成してもよい。直列モジュールの定義はモジュールのバンクをも包含することができ、例えば、モジュール502a、502b、及び502cのバンクは、モジュール504a、504b、及び504cのバンクと直列になっている。図16のモジュールの配置は、このように直列のモジュールと並列のモジュールを包含する。
【0100】
図16のモジュールは6つの軸線上にあり、すなわちモジュール502c、506c、及び510cが1つの軸線上にあり、モジュール504c及び508cがもう一つの軸線上にある、といったようになっている。これらの軸線は、モジュールを越えてゆくガスの全体的な流れの方向に対し平行であることができる。この態様では、軸線の数は各モジュールバンクのモジュール数よりも多くなっている。
【0101】
図16の態様では、入口ガス流1601が入口1603を通って入り、第一バンクのモジュール502a、502b、及び502cを越えて流れる。このガスの一部はモジュール502aをバイパスする可能性があるが、著しい半径方向の混合がなければ、少なくともオフセットしたモジュール504aに接触する。モジュール502a、502b、及び502cの間を流れるガスは、少なくとも次の一組のオフセットしたモジュール504b及び504cに接触する。第一バンクのモジュール502aから流れてきたガスの一部は、第二バンクの少なくとも2つのモジュール(504a及び504b)に接触する。このようにして、こういったオフセットの配置は、共通の軸線上にあるモジュールの列の間の間隙をガスがまっすぐにバイパスするのを防止する。その代わりに、モジュールバンク中のいずれかのモジュールをバイパスするガスは、次のモジュールバンクのモジュールに直接突き当たる。著しい半径方向の混合がなければ、バンク中の1又はそれ以上のモジュールからのガスの少なくとも一部は次のバンクのモジュールのうちの1又はそれ以上に接触し、そしてこれがこの態様におけるモジュールの直列の配列を規定する。
【0102】
従って、本発明に従って直列に配列されたモジュールの定義は、図15と16を参照して先に説明した両方の態様を包含する。これらの態様では、モジュールバンクの軸線と直列モジュールの軸線は一般に直行していてよく、また直列モジュールの軸線は一般に、容器を通るガスの流れの全体的な方向に対して平行でよい。モジュールバンクの軸線が直列モジュールの軸線に対しておおむね直行しておらず、及び/又は直列モジュールの軸線が容器を通り抜けるガスの流れの全体的方向に対しておおむね平行でない別の態様が可能である。これらの別態様では、モジュールバンクは容器を通り抜けるガスの流れの全体的方向に対して鋭角をなしている。これらの別態様は、本発明による直列に配列されたモジュールの定義に包含される。
【0103】
上記の直列反応器システムは、天然ガスのような炭化水素含有原料ガスから合成ガスを生産する酸化施設で使用することができる。この用途では、改質触媒を、容器内の任意の直列モジュール間、任意の並列モジュール間、任意の連続及び並列モジュール間に、及び/又は最終モジュールの後に配置することができる。改質触媒は、水及び/又は二酸化炭素と炭化水素、特にメタンが吸熱反応して水素及び一酸化炭素を生成するのを促進する。この触媒は、透過した酸素とモジュール内の活性膜材料表面に隣接する反応物との間に起こる発熱酸化反応を完全にし、又はそのバランスをとるために利用してもよい。多モジュールの直列反応器システム内のモジュール間の効果的な位置の改質触媒を適切に使用することにより、反応器を横切る温度プロファイルと生成ガス組成とを制御して反応器の最適な運転を達成することができる。
【0104】
本発明の1つの態様を、多モジュールの直列酸化反応器システムのモジュール間に適切な触媒を配置する例によって説明する。例えば、図15を参照すると、触媒501d、501e、及び501fを、モジュール501a、501b、及び501cの第一バンクとモジュール503a、503b、及び503cの第二バンクの全てのモジュール間の間隙に直列に配置することができる。あるいは、触媒501d、501e、及び501fを、流動封じ込めダクト511の内壁の間に連続的に延在させてもよい。同様に、触媒を、第二と第三のモジュールバンク、第三と第四のモジュールバンク、第四と第五のモジュールバンクのいずれかもしくは全ての間、又は第五バンクの後に、配置(図示せず)することもできる。同じように、触媒を、図16の態様における任意の又は全てのオフセットモジュールバンクの間に直列式に配置することもできる。例えば、図16を参照すれば、触媒502d、502e、及び502fを第一及び第二モジュールバンクの間の間隙に直列式に配置することができる。あるいは、触媒502d、502e、及び502fを流動封じ込めダクト511の内壁の間に連続的に延在させることもできる。一般に、触媒は、図15及び16の直列モジュールバンクのいずれか又は全ての間又は下流に直列式に配置することができる。
【0105】
更に、又はこれに代わり、モジュール間を通り抜けるガスの改質反応を促進するため、並列モジュールバンクのモジュール間に触媒を配置してもよい。例えば、図15では、触媒505dと505eをモジュール505aと505bの間、及び505bと505cの間に配置することができる。別法として、触媒505dと505eを第一ないし第五モジュールバンクの間で、軸線方向に連続的に延在させてもよい。例えば、図16では、触媒506dと506eをモジュール406aと506bの間、及び506bと506cの間に配置することができる。一般に、触媒は、図15及び16における並列モジュールのいずれか又は全ての間に並列式に配置することができる。
【0106】
従って、この概念の最も広い適用では、図15及び16の態様、又は直列及び並列のモジュール配置の両方を有する他のいずれかの態様において、触媒は任意の2つの隣接するモジュール間の間隙に配置することができる。更に、圧力容器513を別の同様の圧力容器と直列に運転する場合には、一方の圧力容器からの流出ガスが別の圧力容器へと進む前に触媒を通過するように、触媒を容器の間に配置することができる。
【0107】
圧力容器内のモジュールの間に軸線方向に置くか半径方向に置くかによって、触媒の種類及び/又は量が異なってくることがある。例えば、1つの選択枝では、反応器を通じてのモジュール温度の最適な制御のために、触媒活性を軸線方向で異ならせることができる。例えば、反応器の入り口付近の触媒区域は低温で活性な触媒(すなわちNi量が多い)を含むことができ、それに対し反応器の高温領域では、最適な触媒組成はより低い活性とより高い熱安定性を必要とすることがある(すなわちNi量が少ない)。このようにして、反応器内のあらゆる軸線方向の位置で、触媒の熱安定性を維持しつつ最適な触媒活性を達成することができる。このほかの触媒の配列が可能であり、それらは特許請求の範囲に記載される発明の態様の範囲内に入る。
【0108】
この態様で使用するための触媒としては、ニッケル、コバルト、白金、金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及び鉄よりなる群から選ばれる1種以上の金属又はそれらを含有する化合物を挙げることができる。触媒は、アルミナ又はその他の酸化物担体で担持することができ、そしてランタン又はカリウムなどを添加して含んでもよい。触媒は、例えば、モジュール間の間隙に適合する適当な触媒ホルダー内の一体品を使用し又は粒状触媒を使用することを含めた、任意の既知の手段によりモジュールの間に配置することができる。
【0109】
大抵の化学反応器におけるように、上記の反応器システムの構造要素は、クロム、ケイ素、タングステン、及びその他の元素のいずれを含有してもよい合金製であり、高い運転温度では合金表面にこれらの元素の酸化物が生成する可能性がある。構造要素はまた、シリカ(二酸化ケイ素)のような化合物又はその他の耐熱性酸化物材料を含有してもよい酸化物耐火材料を包含してもよい。これらの酸化物が、水蒸気を含有するガス流、例えば高温の合成ガス又は直火で予熱された空気などに暴露されると、揮発性汚染化合物が合金又は耐火材料表面で生成し、そして高温のガス流中に昇華する可能性がある。乾燥した酸素含有ガスの存在下でも、クロムを含有する揮発性汚染化合物が生成し得る。
【0110】
汚染物質とは、処理装置の構造体の構成要素と反応し、その結果処理装置の性能を低下させることになる任意の化合物又は元素であると定義する。例えば、汚染物質は、酸素を透過可能な膜に使用する混合金属酸化物セラミック材料と反応し、膜の酸素透過性を低下させることがある。揮発性汚染物質とは、600℃〜1100℃の範囲の高温でガスとして存在する化合物又は元素である。反応性固体物質とは、揮発性汚染物質と反応して非揮発性反応生成物を生成する任意の物質である。
【0111】
典型的な揮発性汚染物質としては、例えば、ガス状オキシ水酸化物CrO2(OH)2、ガス状オキシ水酸化物WO2(OH)2、及びガス状水酸化物Si(OH)4をいずれも挙げることができる。同様に、空気のような酸化性ガスに暴露されると、合金表面にある種の金属酸化物が生成して高温のガス流中に昇華することがある。存在する可能性のあるこれらの揮発性金属酸化物の一つがCrO3である。配管及び容器に使用する特定の合金又は耐火材料に応じて、イオン輸送膜反応器の処理ガスには、他の揮発性水酸化物、揮発性金属オキシ水酸化物、又は揮発性金属酸化物が汚染化合物として存在することがある。これらのガス流にはSO2及びH2Sのような揮発性硫黄含有化合物が存在することがあり、これらの化合物もまたイオン輸送膜の性能及び運転寿命を低下させることがある。ガス流中に存在し得るその他の種としては、Cl2、Br2、I2と、Cl、Br、及びIのいずれかを含有する化合物のいずれも挙げることができる。これらの化合物又は元素もまた、イオン輸送膜の性能及び運転寿命を低下させる可能性がある。
【0112】
一部の膜運転条件下では、これらの汚染物質の分圧は比較的低い可能性がある。しかしながら、ほかの運転条件下では、分圧は汚染物質がイオン輸送膜材料と反応するに充分なほど高く、それにより膜の性能と運転寿命を低下させることがある。
【0113】
合成ガスの生産のために使用するイオン輸送膜は、700〜950℃の範囲の温度で高い分圧のCrO2(OH)2、CrO3、Si(OH)4及びWO2(OH)2を含有するガス流に暴露されると、急速な酸素流束の低下と低い酸素流束性能を呈することが観察された。これらの膜の試験後分析から、膜の空気側表面はCr含有酸化物で被覆される一方、合成ガス側表面はSi又はW含有酸化物で被覆されることが明らかとなった。膜の合成ガス側の多孔性層表面の気孔は、汚染物質の反応生成物でほぼ完全に塞がれていた。酸素の製造に使用する膜がCr含有蒸気種を含有するガス流に暴露されると、膜の供給側表面にCr含有酸化物が生成されるということも観察された。
【0114】
膜表面にこれらの有害な被着物が生じるのを防ぐために、ガード床を設置して、ガスが膜表面に接触する前に処理ガスから揮発性汚染物質を取り除くことができる。そのために、ガード床は、イオン輸送膜反応器容器の前又はその内部のガス流中に位置させることができ、ここでガード床の温度は600℃と1100℃の間でよく、一般的にはガード床の温度は700℃と950℃の間でよい。精製したガス流がガード床と膜の間の配管内の金属で再汚染されるのを最小限とするため、ガード床は膜モジュールの近傍に配置すべきである。ガード床は、反応性固体物質を含み、そして流動するガスをこの反応性固体物質に接触させるよう設計される、任意の容器又は閉鎖容器(enclosure)として定義される。精製したガス流とは、汚染物質を含有するプロセス流をガード床の反応性固体物質と接触させることにより汚染物質濃度を低下させたプロセス流と定義される。
【0115】
1つの態様では、高純度酸素製品の生産に使用する図4Aの反応器システムを、膜モジュール401、403、405、407、及び409との接触前に入口ガス流417を処理するために入口415にガード床1701を取り付けることにより、図17に示すように改造することができる。あるいはまた、図示したように、流動封じ込めダクト411の入口の前で圧力容器413内にガード床1703を取り付けてもよい。高純度酸素製品は少なくとも99.9容量%の酸素を含有することができる。
【0116】
別の態様では、酸化反応器として使用する図5の反応器システムを、膜モジュール501、503、505、507、及び509との接触前に入口ガス流517を処理するために入口515にガード床1801を取り付けることにより、図18に示すように改造することができる。あるいはまた、図示したように、流動封じ込めダクト511の入口の前で圧力容器513内にガード床1803を取り付けてもよい。これとは別に、あるいは更に、加熱した加圧酸素含有酸化剤ガス553を処理するため、主入口マニホールド519の外側部分にガード床1805を取り付けてもよい。ガード床1805に代わるものとして、図示したように圧力容器513内の主入口マニホールド519にガード床1807を取り付けてもよい。ガード床は、下記のように膜モジュール501、503、505、507、及び509のいずれかの間に取り付けてもよい。
【0117】
本発明のもう一つの態様を、揮発性汚染物質を除去するために複数モジュールの直列酸化反応器システムのモジュールの間に適当なガード床を配置する例によって説明する。例えば、図15の反応器を、モジュール501a、501b、及び501cの第一モジュールバンクの全てのモジュールとモジュール503a、503b、及び503cの第二モジュールバンクの全てのモジュールとの間の間隙に直列式にガード床1901、1903、及び1905を配置することにより、図19に示すように改造してもよい。あるいはまた、ガード床1901、1903、及び1905を、流動封じ込めダクト511の内壁の間に連続的に延在させてもよい。同様に、第二及び第三のモジュールバンク、第三及び第四のモジュールバンク、第四及び第五のモジュールバンクのいずれかもしくは全ての間に、あるいは第五のバンクの後に、ガード床(図示せず)を配置してもよい。同じように、図16の態様の改変により、図20に示すように、オフセットしたモジュールバンクのいずれか又は全ての間にガード床を直列式に配置してもよい。例えば、図示するように、第一バンクのモジュール502a、502b、及び502cの全てと第二バンクのモジュール504a、504b、及び504cの全ての間の間隙に、ガード床2001、2003、及び2005を直列式に配置してもよい。あるいはまた、流動封じ込めダクト511の内壁の間に、ガード床2001、2003、及び2005を連続的に延在させてもよい。一般に、ガード床は、図19及び20の直列モジュールバンクのいずれか又は全ての間又は下流に、直列式に配置することができる。
【0118】
更に、あるいはこれに代わり、モジュール間を通り抜けるガスから汚染物質を除去するため、ガード床を並列モジュールバンクのモジュールの間に配置してもよい。例えば図19では、ガード床1907と1909を、それぞれモジュール505aと505bの間、及び505bと505cの間に配置することができる。あるいはまた、ガード床1907と1909を、第一ないし第五モジュールバンクの間で、軸線方向に連続的に延在させてもよい。図20では、ガード床2007と2009を、モジュール506aと506bの間、及び506bと506cの間に配置してもよい。一般に、ガード床は、図19及び20の平行モジュールのいずれか又は全ての間に、並列式に配置することができる。
【0119】
従って、この概念の最も広い適用においては、図19及び20の態様又は直列及び並列の両方のモジュール配置を有する他のいずれかの態様において、ガード床を任意の2つの隣接するモジュール間の間隙に配置することができる。更に、圧力容器513を別の同様の圧力容器と直列に運転する場合には、一方の圧力容器からの流出ガスが別の圧力容器へ進む前にガード床を通過するように、ガード床を容器の間に配置することができる。
【0120】
図14の態様でガード床を使用してもよく、その場合には、容器1401の外部又は内部のいずれかで入口管路1403にガード床(図示せず)を取り付ける。あるいは、又は更に、ガード床(図示せず)を、第一ウェハー区域1411のウェハー吐出側、第二ウェハー区域1413のウェハー入口又は吐出側、及び第三ウェハー区域1415のウェハー入口側のいずれに取り付けてもよい。
【0121】
上述のガード床の態様では、反応性物質を平行六面体型又は円板型の多孔性容器に入れることができ、この場合この多孔性容器は、図示したように、モジュールの間にはまるよう設計される。ガード床は、膜モジュールの軸線方向断面と同じような大きさと形の軸線方向断面を有するのが有利であり、あるいはまた、ガード床は、流動封じ込めダクト511の内壁の間に連続式に延在してもよい。
【0122】
触媒とガード床の両者を任意の所望の構成で膜モジュールの間に配置するようにガード床を付け加えることにより、図19及び20の反応器システムを改変する別の態様が可能である。例えば、触媒とガード床を、連続する直列の膜モジュールバンクの間に軸線方向に交互に配置することができる。あるいは、触媒とガード床の両者を、必要に応じて直列膜モジュールの間に配置してもよい。
【0123】
上述の態様における各ガード床は、揮発性汚染物質と反応する反応性物質を含む。1種以上のこの反応性物質は、多孔性ペレット、ビーズ、棒状体、押出し成型品、多孔性発泡体、管、及び中実のハニカム又は一体品から選ばれる任意の形態でガード床に配置することができる。ガード床は、入口と出口を有し、反応性物質を当該技術分野で知られるスクリーン又はその他の多孔性支持体により反応器内に支持する、典型的な圧力容器でよい。あるいはまた、円板型又は平行六面体型の多孔性容器を用いて反応性物質を保持してもよく、この場合多孔性容器は下記のように反応器容器の内部又は配管の内部に適合するよう設計することができる。
【0124】
ガード床は、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1又はそれ以上の反応性物質を含むことができる。アルカリ土類含有ペロブスカイトは一般式AxA’x’ByB’y’O3-dを有し、この式中のAはランタン、イットリウム、及びランタノイド元素の1つのうちの1つ以上を含み、A’はCa、Sr、及びBaのうちの1つ以上を含み、BとB’は最初の列の遷移金属Mg、Ga、及びAlのうちの1つ以上を含み、0.9<x+x’<1.1、0.9<y+y’<1.1、x’>0であり、そしてdはこの化合物の電荷を中性にする数である。
【0125】
1つの態様では、膜モジュールの膜に接触する前にこれらの揮発性汚染化合物をガスから除去するために、ガード床でMgOを使用することができる。MgOはこの役割のために有効な反応性物質であり、且つそれは安全で、取り扱いが容易で、安価である。揮発性気相汚染物質の分圧を最大で数桁まで低下させることができ、これは膜の汚染と損傷を著しく低下させ又はなくすことができる。
【0126】
MgOは、多孔性ペレット、ビーズ、棒状体、押出し成型品、多孔性発泡体、管、多孔性ハニカム、並びに多孔性及び中実のハニカム又は一体品から選ばれる任意の形態でガード床に配置することができる。MgOは、クロム、ケイ素及び/又はタングステンを含有する気相汚染物質と反応して、それぞれMgCr2O4(亜クロム酸マグネシウム)、Mg2SiO4(ケイ酸マグネシウム)及びMgWO4(タングステン酸マグネシウム)を生成する。これらの反応生成物は極めて安定で、取り扱いが安全であり、且つ環境に優しく、従って使用済みのガード床物質の処分は簡単で且つ費用がかからない。
【0127】
気相と固体酸化物の界面で起こり、上記の揮発性汚染物質を生成する典型的な反応は以下の通りである。
【0128】
【化1】
【0129】
MgOを充填したガード床で起こる反応は以下の通りである。
【0130】
【化2】
【0131】
これらの反応の熱力学的平衡計算から、ガス流中の汚染物質相の分圧をMgOとの反応によって一桁又はそれ以上低下させることができ、そしてこれが膜材料の汚染を減少させ又はなくすことが予測される。これは、上の式2、3、4、5、7、及び8に従い、配管の金属合金と平衡にある、及びガード床材料と平衡にある汚染化合物の計算された分圧を比較することによって説明される。図21は、850℃と900℃の間で酸素分圧0.25baraにおけるCr含有合金上及びMgOガード床物質上のCrO3の平衡濃度を示すものであり、ガード床によってCrO3の気相分圧が一桁低下することを示している。合金上の蒸気圧の計算は、この合金の表面が純粋なCr2O3であると仮定している。図22は、850℃と900℃の間で水分圧8.0baraにおけるSi含有合金上及びMgOガード床物質上のSi(OH)4の平衡濃度を示すものであり、ガード床によってSi(OH)4の気相分圧が三桁近く低下することを示している。合金上の蒸気圧の計算は、この合金の表面が純粋なSiO2であると仮定している。図23は、850℃と900℃の間で水分圧8.0baraにおけるW含有合金上及びMgOガード床物質上のWO2(OH)2の平衡濃度を示すものであり、ガード床によってWO2(OH)2の気相分圧が二桁以上低下することを示している。合金上の蒸気圧の計算は、この合金の表面が純粋なWO3であると仮定している。
【0132】
ガード床のMgOは、反応のための大きな表面積を提供するために、またガード床を通過する乱流を増強して気相のいかなる物質移動抵抗をも最小にするために、多孔性ペレット、ビーズ、又は棒の形態とすることができる。例えば、ガード床には、純度99.8wt%、平均直径0.2cm、平均長0.4cm、及び開放気孔率30%のMgO棒状体を充填することができる。所望によりその他の粒子形状、大きさ、及び気孔率を採用してもよい。あるいはまた、圧力低下を少なくするために多孔性MgOのハニカムを使用してもよい。ガード床のためのその他の構成としては、多孔性発泡体、構造化充填物(structured packing)、及び不規則充填物が挙げられる。マグネシウムは比較的小さなカチオンであり、高速の拡散体であって、MgO表面が反応生成物で覆われた場合に、可能である一番小さい固相物質移動抵抗をもたらすはずである。ガード床の大きさは、揮発性種の輸送及びそれとMgOとの反応についての律速プロセスによって決められる。これらのプロセスとしては、MgO表面への揮発性種の気相拡散、MgOと揮発性種との反応、及びMgO上に生成する可能性のある任意の反応生成物を通り抜けるMg又は揮発性種の拡散、が挙げられる。
【0133】
本発明の態様は、水とクロム、ケイ素、及び/又はタングステンの酸化物との反応により生成される典型的な揮発性汚染物質の除去について上に記載されている。これらの態様は、高温表面が水蒸気含有ガス流、例えば高温の合成ガス又は直火で予熱された空気に暴露されたときに他の任意の合金形成元素の酸化物から、又は任意の酸化物耐熱材料から生成される同様の揮発性汚染物質にも適用できる。例えば、これらの他の合金形成元素としては、モリブデン及び/又はバナジウムを挙げることができ、酸化物耐熱材料としては、モリブデンの酸化物及び/又はバナジウムの酸化物を挙げることができる。
【0134】
上述の揮発性汚染物質の除去に加えて、本発明の態様はまた、処理ガス中に存在し得るその他の揮発性汚染物質の除去にも利用できる。これらには、例えば、Cl2、Br2、I2のいずれか、及びCl、Br、Iのいずれかを含有する化合物が含まれる。本発明の態様はまた、二酸化硫黄及び/又は硫化水素のような揮発性硫黄含有汚染物質の除去にも適用できる。本発明の態様はまた、モリブデンのオキシ水酸化物の除去にも適用できる。
【0135】
従って、本発明の態様は、ガス流を1又はそれ以上の反応性固体物質と接触させることにより、高温、例えば600〜1100℃の範囲でガス流から1又はそれ以上の揮発性汚染化合物を除去するのに適用できる。このガス流は、水、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、及びメタンよりなる群から選ばれる1又はそれ以上の成分を含有することができる。1又はそれ以上の反応性物質は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選択することができる。
【0136】
上記のガード床はイオン輸送膜システムでの使用について記載されてはいるが、これらのガード床は、高温のガス流から同様の揮発性汚染物質を取り除かねばならない任意の用途に利用できる。例えば、ガード床は、固体酸化物燃料電池で使用して、燃料電池材料をガスの汚染物質による損傷から防御することができる。
【実施例】
【0137】
以下の例は本発明の態様を説明するものであるが、本発明をここに記載する特定の内容のいずれにも限定するものではない。
【0138】
(例1)
MgOが900℃の流動空気からクロム含有蒸気種をうまく除去できることを確認するため、実験室スケールの試験を実施した。直径1.0インチの垂直管状反応器に、MgOの棒体を、高温の酸化条件下で表面にクロム含有蒸気種を生成する合金である、インコロイ(Incoloy、登録商標)800Hの削りくずの床の上方に配置して詰めた。インコロイ(登録商標)800Hの削りくずの床とMgOの棒体はそれぞれ、長さが2.5インチ及び4.0インチであった。MgOの棒体は99.8wt%MgOを含有しており、Ozark Technical Ceramicsから入手した。この棒体は平均直径0.2cm、平均長0.4cm、そして開放気孔率30%であった。直径0.75インチの平らな円板の形をしたイオン輸送膜の底面を7個の先端を持つクラウンで支え、管状反応器の最上部の出口に配置し、空気が膜の底部と当該支持構造材の間を放射状に外側へ流れるようにさせた。平らな円板膜の組成は、La1-xCaxFeO3-z(式中、0.95>x>0.5であり、zはこの化合物の電荷を中性にする数である)であった。
【0139】
実験室スケールの試験中は、加熱した空気を、合金削りくずを通し、ガード床を通し、そしてイオン輸送膜円板の底面と接して直列に上方に流した。3.0スタンダードリットル/分(slpm)の空気流量を使用し、空気圧力は絶対圧で1atmであった。酸素を流しながら反応器を2℃/分で900℃に加熱し、次いで750時間900℃に維持した。750時間の運転後、反応器を2℃/分で室温まで冷却した。次に、分析のために膜を取り外し、MgO床の0.2インチ厚の層を分析のために取り出した。
【0140】
新たな合金削りくず、新たなMgO床、及び新たな膜を、上記と同じ構成で組み立て、同じ実験手順と条件を使って1500時間の実験を行った。
【0141】
2回の実験から得た、暴露されたMgOガード床を、ICP(誘導結合プラズマ)を用いて分析してそれらのクロム含有量を測定した。この試験後の分析から、ガード床が750時間及び1500時間の暴露中に流動空気からクロム含有蒸気種を除去することが示された。このデータを図24に示すが、これは、入口と出口の間のガード床のいろいろな箇所におけるCr濃度(重量百万分率(ppmw))をプロットしたものである。熱力学的予想と比較した床中のクロム濃度から、MgO床が流動ガス流からクロム含有蒸気種の本質的に全てを捕捉することが示された。図24のクロム濃度プロファイルの形状は、ガード床における動的及び物質移動の抵抗が小さいことを示唆している。更に、暴露された膜の走査型電子顕微鏡分析からは、750時間の暴露後も1500時間の暴露後も、膜は汚れがなく、クロムで汚染されていないことが示された。
【0142】
(例2)
例1の試験との比較のため、合金削りくずとイオン輸送膜との間にMgOガード床がないこと以外は例1と同じ実験室スケール反応器の構成でベースラインの実験を行った。新しい合金削りくずと新しい膜を反応器に装着した。3.0slpmの空気流量及び絶対圧1atmの圧力で、反応器を2℃/分で900℃まで加熱した。削りくずの入った反応器と膜をこの空気流量及び900℃で100時間運転し、次いで2℃/分で室温まで冷却した。膜を取り外して分析し、そしてこの分析から、膜表面のかなりのクロム汚染が示された。これと比較して、クロム源と膜の間のガード床を使用して900℃で750時間及び1500時間暴露後の例1の被験膜ではクロム汚染は観察されなかった。これらの結果から、MgOが高温のガス流から揮発性クロム含有種を効果的に除去できることが確認される。
【0143】
(例3)
各々が直径1.6インチ、長さ8インチの2つのMgOガード床を、膜の上流の空気供給部に直列に取り付けた。この膜は、米国特許出願公開第20040186018号明細書に記載の両面型平板膜であり、幅3.5インチ、長さ5インチであった。膜の組成はLa1-xCaxFeO3-d(式中、0.95>x>0.5であり、dは化合物の電荷を中性にする数である)であった。空気を分岐させ、内部流路を通して膜内部に流した。例1及び2で使用したものと同一の新しいMgOの棒体をガード床に装入した。0.25インチの直径を有する8フィートの加熱されるインコロイ(登録商標)800Hのチューブをガード床の上流に取り付け、空気を予熱した。チューブ、ガード床、及び膜を直列に運転し、空気流量32スタンダード立法フィート/時(scfh)、15psigで、900℃まで0.5℃/分で加熱した。チューブ、ガード床、及び膜を、ほぼ1400時間800℃と900℃の間の温度に保持した。次に反応器を室温に冷却し、膜の空気側表面を走査型電子顕微鏡を用いて調べた。膜表面にクロムの被着は見られなかった。
【0144】
(例4)
ガード床を使用しなかったこと以外は、例3の実験装置を例4用に利用した。チューブと膜を例3におけるように、800℃と900℃の間の温度でほぼ1400時間運転した。次に反応器を室温に冷却し、空気側の膜表面を走査型電子顕微鏡を用いて調べた。膜表面にかなりの量のクロムの被着が見いだされた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)揮発性金属オキシ水酸化物、揮発性金属酸化物、及び揮発性水酸化ケイ素よりなる群から選ばれる1種以上の汚染物質を含有する原料ガス流を得ること、
(b)この原料ガス流をガード床の反応性固体物質に接触させ、そして汚染物質の少なくとも一部を反応性固体物質と反応させてガード床において固体反応生成物を生成させること、そして、
(c)精製されたガス流をガード床から抜き出すこと、
を含むガス精製方法。
【請求項2】
反応性固体物質が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応性固体物質が酸化マグネシウムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1種以上の汚染物質が、CrO2(OH)2、Si(OH)4、WO2(OH)2、CrO3、及びモリブデンのオキシ水酸化物のいずれかを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
原料ガス流が、窒素、酸素、水、及び二酸化炭素よりなる群から選ばれる1種以上の成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
原料ガス流が、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、及び水よりなる群から選ばれる1種以上の成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
原料ガス流を600℃〜1100℃の範囲の温度で反応性固体物質と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(a)酸素を含有するガスを加熱して高温の酸素含有ガスにすること、
(b)この高温の酸素含有ガスをガード床の反応性固体物質と接触させ、そこから精製された高温の酸素含有ガスを抜き出すこと、そして、
(c)この精製された高温の酸素含有ガスを、混合金属酸化物セラミック材料を含む膜の第一の表面と接触させ、この膜を通して酸素を膜の第二の表面へ透過させ、そしてそこから高純度酸素製品を抜き出すこと、
を含む酸素の製造方法。
【請求項9】
高温の酸素含有ガスをガス燃料を空気とともに直接燃焼させることにより入手し、そしてこの高温の酸素含有ガスが酸素、窒素、二酸化炭素、及び水を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
高温の酸素含有ガスが、CrO2(OH)2、Si(OH)4、WO2(OH)2、CrO3、及びモリブデンのオキシ水酸化物よりなる群から選ばれる1種以上の汚染化合物を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
反応性固体物質が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
反応性固体物質が酸化マグネシウムを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(a)高温の酸素含有原料ガスを混合金属酸化物セラミック材料を含む膜の第一の表面と接触させ、そしてこの膜を通して酸素を膜の第二の表面へ透過させて、透過した酸素を得ること、
(b)高温の炭化水素含有原料ガスをこの透過した酸素と反応させて酸化生成物を生成させること、そして、
(d)次の(1)と(2)、すなわち、
(1)高温の酸素含有ガス流をガード床の反応性固体物質と接触させてそこから高温の酸素含有原料ガスを抜き出すことにより、高温の酸素含有原料ガスを得ること、及び、
(2)高温の炭化水素ガス流をガード床の反応性固体物質と接触させてそこから高温の炭化水素含有原料ガスを抜き出すことにより、高温の炭化水素含有原料ガスを得ること、
のいずれか又は両方を行うこと、
を含む酸化方法。
【請求項14】
(1)及び(2)のいずれか又は両者におけるガード床の反応性固体物質が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
高温の酸素含有ガス流及び高温の炭化水素ガス流のいずれか又は両者が、CrO2(OH)2、Si(OH)4、WO2(OH)2、CrO3、及びモリブデンのオキシ水酸化物よりなる群から選ばれる1種以上の揮発性汚染化合物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
高温の酸素含有ガス流を、ガス燃料を空気とともに直接燃焼させることにより入手し、そしてこの高温の酸素含有ガス流が、酸素、窒素、二酸化炭素、及び水を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
酸化生成物が、水素、一酸化炭素、及び水を含む合成ガスである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
(a)内部、外部、入口、及び出口を有する圧力容器、
(b)圧力容器の内部に配置されそして直列に配列されている複数の平面状イオン輸送膜モジュールであって、各膜モジュールが、混合金属酸化物セラミック材料を含み、且つ内部領域と外部領域を持ち、該圧力容器の入口及び出口が膜モジュールの外部領域と連通している、複数の平面状イオン輸送膜モジュール、
(c)膜モジュールの内部領域及び圧力容器の外部と連通している、1以上のガスマニホールド、並びに、
(d)次の(1)と(2)、すなわち、
(1)圧力容器の入口と連通しているガード床、及び、
(2)1以上のガスマニホールドのうち少なくとも1つと連通しているガード床、のいずれか又は両者、
を含むイオン輸送膜システム。
【請求項19】
(1)及び(2)のいずれか又は両者におけるガード床が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む反応性固体物質を含有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
(1)におけるガード床が圧力容器の外部に配置されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
(1)におけるガード床が圧力容器の内部に配置されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
(2)におけるガード床が圧力容器の外部に配置されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項23】
(2)におけるガード床が圧力容器の内部に配置されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項24】
(a)内部、外部、入口、及び出口を有する圧力容器、
(b)圧力容器の内部に配置されそして直列に配列されている複数の平面状イオン輸送膜モジュールであって、各膜モジュールが、混合金属酸化物セラミック材料を含み、且つ内部領域と外部領域を持ち、該圧力容器の入口及び出口が膜モジュールの外部領域と連通している、複数の平面状イオン輸送膜モジュール、
(c)膜モジュールの内部領域及び圧力容器の外部と連通している、1以上のガスマニホールド、及び、
(d)1以上のガード床であって、各ガード床が圧力容器内部にある任意の2つの隣接する平面状イオン輸送膜モジュールの間に配置されている、1以上のガード床、
を含むイオン輸送膜システム。
【請求項25】
圧力容器の内部に配置されている流動封じ込めダクトを更に含み、この流動封じ込めダクトが、(1)複数の平面状イオン輸送膜モジュール及び1以上のガード床を取り囲んでおり、且つ、(2)圧力容器の入口及び出口と連通している、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
(a)内部、外部、入口、及び出口を有する圧力容器、
(b)圧力容器の内部に配置された膜の積重体又はモジュールアセンブリであって、該アセンブリは、混合金属酸化物セラミック材料を含む複数の平面状ウェハーと複数の中空セラミックスペーサーを有し、各ウェハーには内部領域と外部領域があり、該積重体又はモジュールアセンブリは、ウェハー内部が中空スペーサーを介して連通するように、ウェハーとスペーサーを交互にすることにより形成され、ウェハーは互いに平行な向きにされており、そして、ウェハーが積重体又はモジュールの軸線と垂直になるように積重体又はモジュールを形成させるため、交互になったスペーサーとウェハーが同軸方向に整列している、膜の積重体又はモジュールアセンブリ、
(c)圧力容器内部の膜の積重体又はモジュールアセンブリの周りに配置されたガスマニホールドシュラウドアセンブリであって、このシュラウドアセンブリは、積重体又はモジュールを少なくとも第一ウェハー区域と第二ウェハー区域に分離し、圧力容器の入口を第一ウェハー区域にあるウェハーの外部領域と連通するように位置させ、そして、第一ウェハー区域にあるウェハーの外部領域を第二ウェハー区域のウェハーの外部領域と直列に連通させている、ガスマニホールドシュラウドアセンブリ、並びに、
(d)圧力容器の入口及びガスマニホールドシュラウドアセンブリのいずれか又は両者に配置された1以上のガード床、
を含むイオン輸送膜システム。
【請求項27】
(a)内部、外部、入口、及び出口を有する圧力容器、
(b)圧力容器の内部に配置されている複数のイオン輸送膜モジュールであって、このモジュールの少なくとも一部は直列に配列されている、複数のイオン輸送膜モジュール、
(c)任意の二つの隣接する膜モジュールの間に配置されている触媒、並びに、
(d)1以上のガード床であって、各ガード床は圧力容器内部の任意の二つの隣接するイオン輸送膜モジュールの間に配置されている、1以上のガード床、
を含むイオン輸送膜反応器システム。
【請求項28】
触媒が、ニッケル、コバルト、白金、金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及び鉄よりなる群から選ばれる1種以上の金属又はこれを含有する化合物を含む、請求項27に記載の反応器システム。
【請求項29】
各ガード床が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む反応性固体物質を含む、請求項27に記載の反応器システム。
【請求項1】
(a)揮発性金属オキシ水酸化物、揮発性金属酸化物、及び揮発性水酸化ケイ素よりなる群から選ばれる1種以上の汚染物質を含有する原料ガス流を得ること、
(b)この原料ガス流をガード床の反応性固体物質に接触させ、そして汚染物質の少なくとも一部を反応性固体物質と反応させてガード床において固体反応生成物を生成させること、そして、
(c)精製されたガス流をガード床から抜き出すこと、
を含むガス精製方法。
【請求項2】
反応性固体物質が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応性固体物質が酸化マグネシウムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1種以上の汚染物質が、CrO2(OH)2、Si(OH)4、WO2(OH)2、CrO3、及びモリブデンのオキシ水酸化物のいずれかを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
原料ガス流が、窒素、酸素、水、及び二酸化炭素よりなる群から選ばれる1種以上の成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
原料ガス流が、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、及び水よりなる群から選ばれる1種以上の成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
原料ガス流を600℃〜1100℃の範囲の温度で反応性固体物質と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(a)酸素を含有するガスを加熱して高温の酸素含有ガスにすること、
(b)この高温の酸素含有ガスをガード床の反応性固体物質と接触させ、そこから精製された高温の酸素含有ガスを抜き出すこと、そして、
(c)この精製された高温の酸素含有ガスを、混合金属酸化物セラミック材料を含む膜の第一の表面と接触させ、この膜を通して酸素を膜の第二の表面へ透過させ、そしてそこから高純度酸素製品を抜き出すこと、
を含む酸素の製造方法。
【請求項9】
高温の酸素含有ガスをガス燃料を空気とともに直接燃焼させることにより入手し、そしてこの高温の酸素含有ガスが酸素、窒素、二酸化炭素、及び水を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
高温の酸素含有ガスが、CrO2(OH)2、Si(OH)4、WO2(OH)2、CrO3、及びモリブデンのオキシ水酸化物よりなる群から選ばれる1種以上の汚染化合物を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
反応性固体物質が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
反応性固体物質が酸化マグネシウムを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(a)高温の酸素含有原料ガスを混合金属酸化物セラミック材料を含む膜の第一の表面と接触させ、そしてこの膜を通して酸素を膜の第二の表面へ透過させて、透過した酸素を得ること、
(b)高温の炭化水素含有原料ガスをこの透過した酸素と反応させて酸化生成物を生成させること、そして、
(d)次の(1)と(2)、すなわち、
(1)高温の酸素含有ガス流をガード床の反応性固体物質と接触させてそこから高温の酸素含有原料ガスを抜き出すことにより、高温の酸素含有原料ガスを得ること、及び、
(2)高温の炭化水素ガス流をガード床の反応性固体物質と接触させてそこから高温の炭化水素含有原料ガスを抜き出すことにより、高温の炭化水素含有原料ガスを得ること、
のいずれか又は両方を行うこと、
を含む酸化方法。
【請求項14】
(1)及び(2)のいずれか又は両者におけるガード床の反応性固体物質が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
高温の酸素含有ガス流及び高温の炭化水素ガス流のいずれか又は両者が、CrO2(OH)2、Si(OH)4、WO2(OH)2、CrO3、及びモリブデンのオキシ水酸化物よりなる群から選ばれる1種以上の揮発性汚染化合物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
高温の酸素含有ガス流を、ガス燃料を空気とともに直接燃焼させることにより入手し、そしてこの高温の酸素含有ガス流が、酸素、窒素、二酸化炭素、及び水を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
酸化生成物が、水素、一酸化炭素、及び水を含む合成ガスである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
(a)内部、外部、入口、及び出口を有する圧力容器、
(b)圧力容器の内部に配置されそして直列に配列されている複数の平面状イオン輸送膜モジュールであって、各膜モジュールが、混合金属酸化物セラミック材料を含み、且つ内部領域と外部領域を持ち、該圧力容器の入口及び出口が膜モジュールの外部領域と連通している、複数の平面状イオン輸送膜モジュール、
(c)膜モジュールの内部領域及び圧力容器の外部と連通している、1以上のガスマニホールド、並びに、
(d)次の(1)と(2)、すなわち、
(1)圧力容器の入口と連通しているガード床、及び、
(2)1以上のガスマニホールドのうち少なくとも1つと連通しているガード床、のいずれか又は両者、
を含むイオン輸送膜システム。
【請求項19】
(1)及び(2)のいずれか又は両者におけるガード床が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む反応性固体物質を含有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
(1)におけるガード床が圧力容器の外部に配置されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
(1)におけるガード床が圧力容器の内部に配置されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
(2)におけるガード床が圧力容器の外部に配置されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項23】
(2)におけるガード床が圧力容器の内部に配置されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項24】
(a)内部、外部、入口、及び出口を有する圧力容器、
(b)圧力容器の内部に配置されそして直列に配列されている複数の平面状イオン輸送膜モジュールであって、各膜モジュールが、混合金属酸化物セラミック材料を含み、且つ内部領域と外部領域を持ち、該圧力容器の入口及び出口が膜モジュールの外部領域と連通している、複数の平面状イオン輸送膜モジュール、
(c)膜モジュールの内部領域及び圧力容器の外部と連通している、1以上のガスマニホールド、及び、
(d)1以上のガード床であって、各ガード床が圧力容器内部にある任意の2つの隣接する平面状イオン輸送膜モジュールの間に配置されている、1以上のガード床、
を含むイオン輸送膜システム。
【請求項25】
圧力容器の内部に配置されている流動封じ込めダクトを更に含み、この流動封じ込めダクトが、(1)複数の平面状イオン輸送膜モジュール及び1以上のガード床を取り囲んでおり、且つ、(2)圧力容器の入口及び出口と連通している、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
(a)内部、外部、入口、及び出口を有する圧力容器、
(b)圧力容器の内部に配置された膜の積重体又はモジュールアセンブリであって、該アセンブリは、混合金属酸化物セラミック材料を含む複数の平面状ウェハーと複数の中空セラミックスペーサーを有し、各ウェハーには内部領域と外部領域があり、該積重体又はモジュールアセンブリは、ウェハー内部が中空スペーサーを介して連通するように、ウェハーとスペーサーを交互にすることにより形成され、ウェハーは互いに平行な向きにされており、そして、ウェハーが積重体又はモジュールの軸線と垂直になるように積重体又はモジュールを形成させるため、交互になったスペーサーとウェハーが同軸方向に整列している、膜の積重体又はモジュールアセンブリ、
(c)圧力容器内部の膜の積重体又はモジュールアセンブリの周りに配置されたガスマニホールドシュラウドアセンブリであって、このシュラウドアセンブリは、積重体又はモジュールを少なくとも第一ウェハー区域と第二ウェハー区域に分離し、圧力容器の入口を第一ウェハー区域にあるウェハーの外部領域と連通するように位置させ、そして、第一ウェハー区域にあるウェハーの外部領域を第二ウェハー区域のウェハーの外部領域と直列に連通させている、ガスマニホールドシュラウドアセンブリ、並びに、
(d)圧力容器の入口及びガスマニホールドシュラウドアセンブリのいずれか又は両者に配置された1以上のガード床、
を含むイオン輸送膜システム。
【請求項27】
(a)内部、外部、入口、及び出口を有する圧力容器、
(b)圧力容器の内部に配置されている複数のイオン輸送膜モジュールであって、このモジュールの少なくとも一部は直列に配列されている、複数のイオン輸送膜モジュール、
(c)任意の二つの隣接する膜モジュールの間に配置されている触媒、並びに、
(d)1以上のガード床であって、各ガード床は圧力容器内部の任意の二つの隣接するイオン輸送膜モジュールの間に配置されている、1以上のガード床、
を含むイオン輸送膜反応器システム。
【請求項28】
触媒が、ニッケル、コバルト、白金、金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及び鉄よりなる群から選ばれる1種以上の金属又はこれを含有する化合物を含む、請求項27に記載の反応器システム。
【請求項29】
各ガード床が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化銅、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、及びアルカリ土類含有ペロブスカイトよりなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む反応性固体物質を含む、請求項27に記載の反応器システム。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−270002(P2010−270002A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−171460(P2010−171460)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【分割の表示】特願2006−59(P2006−59)の分割
【原出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171460(P2010−171460)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【分割の表示】特願2006−59(P2006−59)の分割
【原出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】
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