説明

イクステンドゴニオメータ

【課題】必要に応じてゴニオメータの各軸の長さを任意の長さに伸ばすことが出来、角度と長さの測定を同時に可能とするとともに、目盛等の誤読を減らし、小児にも受け入れ易い素材と色調とすることを提供する。
【解決手段】長さの目盛をつけた基本軸および移動軸は、基本スライド軸2および移動スライド軸4のスライドにより伸縮可能となり任意の長さの測定も可能となった。さらに、ロック機構を設け、最大伸長時に抜けないように考慮した。移動本体軸3にはレンズ部8を設け分度器の角度目盛と数字が拡大して見えるようにした。各軸の素材は有機高分子材とするともに適切な着色を施すことにより素材も色調もとくに小児に受け入れ易いものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は身体の関節角度、形態、肢長および骨の長さをより正確に測定することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のゴニオメータの多くは金属製の基本軸と移動軸から成り、主に関節の角度を測る目的で使用され、一部に有用とは言えないが長さを測れるものもある。ゴニオメータは基本軸に分度器機構を備え移動軸の一端を分度器の中心で可動できる範囲で半固定したもので、関節の中心にその分度器の中心をあて、鋏のように動く基本軸と移動軸を身体部位の各測定点にあてがったときの両軸のなす角を測定するものである。
【0003】
実際の臨床の場では通常は小型のものを携帯するが、様々な大きさの関節等に対し適合しない場合は数種類の大きさのゴニオメータを使用する必要があった。
【0004】
従来のゴニオメータの機能は前述したように主に関節角度を測定することであり、長さの測定を必要とする場合には有用な目盛を設けていないことにより測定に限界があった。
【0005】
従来のゴニオメータの角度の目盛は細かいことと色彩的に識別しにくいため、誤読、読み直しおよび読み取り時間の遅延などの問題があった。
【0006】
従来のゴニオメータは金属製のものが多く、その形状や灰色系統の色彩からくる恐怖感、マイナスイメージおよび冷たい、暗い等の連想により診察や検査に支障が生じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のゴニオメータには次のような欠点があった。
(イ)臨床の場で関節角度等を測定するときに、常に様々な大きさの関節等に適合出来るとは限らなかった。
(ロ)長さを測る機能は十分に備わっていないため、長さの測定ではゴニオメータの外に他の測定器具(巻尺、定規等)も使用する必要があった。
(ハ)対照トーンによる色彩調和(カラーハーモニー)が考慮されていない識別しにくい色彩に加え、角度の目盛が細かいために目盛の誤読や読み直しおよび読み取り時間の遷延などがあった。
(ニ)ゴニオメータの多くは金属製で、その冷たい素材、形状および色彩にともなうマイナスイメージや連想により恐怖心を煽る場合があり、とくに小児においてはしばしば診察や検査の妨げになっていた。
本発明は、以上のような問題点を改善することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明では、基本本体軸1が基本スライド軸2を収納すると同様に、移動本体軸3は移動スライド軸4を収納し、両スライド軸が長軸方向にスライドすることで基本軸および移動軸全体の長さが伸縮する機構を備えたところを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、各スライド軸2、4の横断面形状を各本体軸1、3の横断面形状と同じ台形とすることで、各スライド軸が収納状態のときは台形の短い底辺が表面に来るため、その上面(表面)方向にも外れない構造となることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、各スライド軸2、4を各本体軸1、3に組み込む方法において、スライド軸右端部を本体軸右端ロック部の溝内に滑り込むように挿入したとき、スライド軸左端のロック部は幾何学的に組み込み不可能であるが、素材(有機高分子材)の弾性限度内で本体軸スライド部の溝(台形断面の短い底辺)が拡がるように、長軸に沿って本体軸に曲げモーメントを加えると、容易にはめ込むことが出来る構造としたことを特徴としている。
【0011】
請求項目4に記載の発明は、各本体軸1、3の右端にロック部5および各スライド軸2、4の左端にロック部6の斜めに加工した突起を設け、各スライド軸を(F)なる力で最大に伸ばしたとき、スライド軸および本体軸の各々のロック部が互いに噛み合い制動機能を果たすと同時に、スライド軸ロック部6の斜め部分に加わる本体軸側からの反力(F)によって生じる長軸方向と90度の方向の分力(f)は、スライド軸を本体軸側の直線のスライド部7に押し付けるように働く(ロック作用)ため、接合部でのスライド軸のグラツキを無くすだけでなく本体軸と最大に伸ばしたスライド軸は直線的に接合することを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、各本体軸1、3と各スライド軸2、4の全ての軸に十分な距離で目盛りを設けることにより定規として有用な機能を持つことを特徴としている。
【0013】
請求項6に記載の発明は、移動本体軸3が基本本体軸1の分度器上の目盛と数字をなぞりながら移動するとき、移動本体軸3のなぞる部分をレンズ状の形状にすることで、分度器上の目盛および数字を拡大して見せることを特徴としている。
【0014】
請求項7に記載の発明は、各本体軸と各スライド軸に蛍光色を含めた適切な着色を施すことで知覚的にも色彩調和の観点からも目盛と数字を識別し易くすること、および色彩連想(色から連想するもの)の見地から考えると近年、病院等では看護師の白衣においても淡いピンク色(暖かい、柔らか、温情、幸福感等)が診療科によっては普通に使用されていること、それとは反対に灰色を基調とする色には抽象的連想として陰鬱、寂莫、沈静等があり、とくに小児領域では冷たい印象の金属(実際に冷たい)のゴニオメータを目にしただけで泣
き出す子供もいることを考慮すると、子供にも受け入れやすい素材(有機高分子材)や色調を使うことにより診察および検査をより受け入れ易くすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によると、基本軸と移動軸を身体の測定部位に合わせて適切な長さに調整が出来るため、大関節でも小関節でもゴニオメータを換える必要が無く同じゴニオメータを用いて正確な測定が可能となり、例えば手のような小関節の測定に続いて膝や股関節のような大関節も問題なく測定出来ることから、効率的で正確な検査が実施できる。
【0016】
請求項2の発明によると、各本体軸1、3に収納された各スライド軸2、4はスライド方向以外には可動できず外れない単純な構造(台形断面)を持つことから、製作が容易となるため単価の抑制に寄与できる。
【0017】
請求項3の発明によると、スライド軸2、4を本体軸1、3に組み込む方法は余分かつ複雑な加工を施さずに、素材の弾性特性を利用した方法であるため、本体軸およびスライド軸の構造は単純となり、[0016]と同様に単価の抑制につながる。
【0018】
請求項4の発明によると、スライド軸2、4が抜けることを頓着せずに、最大まで伸ばすことが出来る制動機能は、とくに臨床の場では無駄な手間を省く上で必要なことであり、極めて有用なばかりではなく検査効率を向上させる。
【0019】
請求項5の発明によると、各本体軸1、3および各スライド軸2、4に定規と同様の目盛を設けることで、測定部位の大小にかかわらず肢長、骨の長さおよび臨床上必要な長さ等を測ることができ、とくにレントゲン写真上では、骨の長さやアライメントおよび変形の程度などをこの定規と角度計の機能を使うことで、迅速かつ正確な検査が可能となる。
【0020】
請求項6の発明によると、移動本体軸3に設けたレンズ機構8は、分度器の目盛と数字を拡大して見せるため、誤読の減少とともに検査効率の向上に寄与できる。
【0021】
請求項7の発明によると、各本体軸1、3および各スライド軸2、4に適切な着色を施すことで、とくに小児科領域においては従来のゴニオメータの持つマイナスイメージや恐怖感を和らげる効果があるため、検査あるいは検査器具自体の受け入れが改善され、必要な検査が可能となるとともに診察等の効率化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について図面に基づき説明する。なお、各図面において同じ符号を付した部品等は全て同じものを示し、説明に不要な部品等は適宜、図示を省略している。
[図1]は本発明のイクステンドゴニオメータ組立図であり、基本軸(基本本体軸1に基本スライド軸2が収まったもの)および透明な有機高分子材による移動軸(移動本体軸3に移動スラ
【0023】
イド軸4が収まったもの)からなり固定材13で半固定(基本軸と移動軸間の回転が可能な程度の固定状態)され、両軸ともそれぞれ半固定部を中心に適度な抵抗を持って回転し、基本軸上に記した角度目盛と数字を移動軸のレンズ部8越しに読み取ることが出来る。また、基本本体軸1と移動本体軸3に収納された各スライド軸2、4は両者ともスライドにより伸縮させることが出来、各本体軸1、3および移動軸2、4には定規の目盛と数字を記してあるため、長さを測ることも容易である。
【0024】
[図2]の(a)は基本軸組立図、(b)は平面図、(c)は右側面図、(d)はロック部詳細図である。(a)の基本軸組立図において基本スライド軸2は基本本体軸1に収納され、伸縮することが出来る。基本スライド軸2を最大に伸ばしたときに、基本本体軸1の本体軸ロック部5および基本スライド軸2のスライド軸ロック部6により伸びは制動される。(d)のロック部詳細図に示すように、基本スライド軸2を(F)なる力で最大に伸ばしたとき本体軸ロック部5に加わる反力(F)はスライド方向と90度の方向、すなわち組立図では下方へ分力(f)として働き、基本スライド軸2を基本本体軸1の直線のスライド部7に押し付けるため、基本本体軸1と基本スライド軸2との接続部(ロック部)では制動機能およびロック機能を持つとともに直線性を保つ機能も持つ。(b)の平面図および(c)の右側面図から基本スライド軸2の下面が基本本体軸1の下面と面が一致していることが分かる。また、(c)の右側面図からは基本スライド軸断面の台形が基本本体軸1の溝の台形と一致し、基本スライド軸2はスライド方向以外に動かず、外れない構造になっていることが分かる。
【0025】
[図3]の(a)は基本本体軸1の下面図で、スライド部7の末端を内側に突起させることで、本体軸ロック部5はスライド軸ロック部6([図2](a)、(d)参照)の突起と衝突し、基本軸組立図([0024])のところで説明したように、制動機能、ロック機能およびスライド軸の直線性を発揮させる構造が分かる。(b)は基本本体軸1のA−A断面図であり、基本スライド軸2を収納する台形の断面構造を示し、(c)のB−B断面図のスライド部の台形の断面構造よりも台形部分の上底と下底を短くしている。このように、基本本体軸1のロック部5では台形断面を絞り込むことで制動およびロック機能を持たしていることが分かる。(d)はC−C断面図を示し、半固定部の構造が分かる。
【0026】
[図4]の移動軸は、移動本体軸3と移動スライド軸4から構成される。(a)の上面図では、スライド部7の末端を内側に突起させることで、制動機能とロック機能を発揮させると同時に移動本体軸3と移動スライド軸4の間の直線性を保つ構造を表している([0025][図3]の機能説明と同じ)。(b)の平面図では移動スライド軸4の上面が移動本体軸3の上面と一致していることが分かる。(c)の下面図では移動軸中心に長軸方向に移動本体軸中心線11と移動スライド軸中心線12が引かれており、移動本体軸3が基本本体軸1の分度器上を回転したときに角度の目盛を指す機能を持つ。(d)のA−A断面図は移動ス
ライド軸4が移動本体軸3内に納まった状態を示す。(e)のB−B断面図のレンズ部8は角度測定時に基本本体軸1の分度器の目盛と数字を拡大して見せる機能を持つものである。
【0027】
[図5]は基本スライド軸2および移動スライド軸4を示し、各スライド軸2と4の形状は全く同じである。(a)は各スライド軸2、4の鳥瞰図を示し、(b)は上面図、(c)は右側面図、(d)は左側面図である。(a)と(b)の図面からは、スライド部7の一方は全域に亘り直線となり、他方は途中から斜めに幅を大きくしロック部6を構成するのが分かる。(c)の右側面図および(d)の左側面図からはスライド軸2、4の断面が台形となっていることが分かり、基本本体軸1あるいは移動本体軸3に組み込まれたときスライド方向以外の動きは制限され、外れない構造([0024]で説明)であることがより一層明確になる。
【0028】
[図6]の断面図では各スライド軸2、4を各本体軸1、3に組み込む機構を図示した。本体軸およびスライド軸ともその素材の物性に弾性があることからその性質を利用し、図に示すように本体軸側に曲げモーメント(M)を加え弾性限度内で歪を起こしわずかな隙間(δ)を作ることで、スライド軸をはめ込むことが出来るのが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】基本軸と移動軸の構成を表す組立図である。
【図2】(a)は基本本体軸1と基本スライド軸2から構成される基本軸の組立図である。(b)は基本本体軸と基本スライド軸の下面が一致している平面図である。(c)は基本スライド軸が基本本体軸に収納されている右側面図である。(d)はロック機構を説明するロック部詳細図である。
【図3】(a)は基本本体軸1の下面図で中心線9が引かれている。(b)はスライド軸2を組み込む台形の溝が分かる断面図である。(c)はB−B断面図の台形の溝はA−A断面の台形の溝より大きいのが分かる。(d)は半固定部の構造が分かる断面図である。
【図4】(a)は移動本体軸3と移動スライド軸4から構成される移動軸の上面図を示す。(b)は移動スライド軸4の上面が移動本体軸3の上面と一致するのが分かる平面図である。(c)は移動本体軸に沿って中心線11が引かれているのが分かる下面図で。(d)は移動本体軸3内にスライド軸4が組み込まれた状態を示す断面図である。(e)はレンズ部8の断面図である。
【図5】(a)は各スライド軸2、4の鳥瞰図で、ロック部6の形状が分かる。(b)は直線のスライド部とロック部を表す上面図ある。(c)は2つの台形構造を表す右側面図である。(d)はロック部6を含めた台形構造を表す左側面図である。
【図6】はスライド軸2、4を本体軸1、3に組み込む仕組みを説明した図である。
【符号の説明】
【0030】
1 基本本体軸
2 基本スライド軸
3 移動本体軸
4 移動スライド軸
5 本体軸ロック部
6 スライド軸ロック部
7 スライド部
8 レンズ部
9 基本本体軸中心線
10 基本スライド軸中心線
11 移動本体軸中心線
12 移動スライド軸中心線
13 固定材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本本体軸1と基本スライド軸2からなる基本軸および移動本体軸3と移動スライド軸4からなる移動軸の全ての軸にスライド機構を設けることを特徴とするイクステンドゴニオメータ。
【請求項2】
基本本体軸1および移動本体軸3に収納された基本スライド軸2および移動スライド軸4は、いずれにも外れない構造を有することを特徴とする請求項1に記載のイクステンドゴニオメータ。
【請求項3】
素材の物性を利用して、基木スライド軸2および移動スライド軸4をそれぞれ基本本体軸1および移動本体軸3に組み込む機構としたことを特徴とする請求項2に記載のイクステンドゴニオメータ。
【請求項4】
各本体軸1、3および各スライド軸2、4に制動機能を有するロック機構を設けたことを特徴とする請求項3に記載のイクステンドゴニオメータ。
【請求項5】
各軸の長軸方向に長さを表す目盛と数字を設けたことを特徴とする請求項4に記載のイクステンドゴニオメータ。
【請求項6】
移動本体軸3にレンズ機構を設けたことを特徴とする請求項5に記載のイクステンドゴニオメータ。
【請求項7】
各軸の素材を有機高分子材にし、各軸に着色を施したことを特徴とする請求項6に記載のイクステンドゴニオメータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−76686(P2013−76686A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229249(P2011−229249)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(511252578)
【Fターム(参考)】