説明

イソタクチシチーに富むビニルエステル系重合体およびポリビニルアルコールの製造方法

【課題】 一般的に用いられている酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体から、イソタクチシチ−の高く品質、物性などが良好なポリビニルアルコールを、より温和な条件下で製造する方法を提供する。
【解決手段】 塩化マグネシウム等のルイス酸の存在下、30℃以下で酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体をラジカル重合させることを特徴とするイソタクチシチーがメソ二連子で50%以上であるビニルエステル系重合体の製造方法、および該製造方法により得られるビニルエステル系重合体を鹸化する、イソタクチシチーがメソ二連子で50%以上であるポリビニルアルコールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソタクチシチーに富むビニルエステル系重合体および品質、物性などが良好なポリビニルアルコールの、より温和な条件下での製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリビニルアルコール(以下PVAと略記する場合がある。)は酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体の重合体を鹸化することで製造され、繊維、フィルム、接着剤など多岐に渡る分野で用いられている。その物性は、ポリマーの側鎖である水酸基の立体規則性により大きく変化することが知られている。例えば、イソタクチシチーまたはシンジオタクチシチーの高いPVAは結晶性が高くなり、繊維やフィルムといった成形物の強度や耐熱性などが向上する。しかしながら、通常のラジカル重合法で得たポリ酢酸ビニルから造られたPVAの立体規則性は、イソタクチシチー(二連子)で47%前後と低く、さらに、そのタクチシチーは、重合溶媒や重合温度を変えてもあまり変化しないとされている。
【0003】
これまでに知られているイソタクチシチーの高いPVAは、ベンジルビニルエーテルやt−ブチルビニルエーテル,トリメチルシリルビニルエーテルといったビニルエーテル単量体を−78℃〜−96℃の極低温下でBF・EtOやEtAlClを触媒とするカチオン重合を進行させることでイソタクチシチーの高いポリビニルエーテルを合成し、さらにそれを臭化水素などで処理することにより得ている(例えば、非特許文献1〜6参照)。しかしながら、これらの方法は、酢酸ビニルより高価なビニルエーテル単量体を使用するのみならず、重合温度が極めて低いため多大なエネルギーを必要とする。
また、ポリビニルエステルからのイソタクチックPVAの合成が、種々の安息香酸ビニルエステルを用いて試みられている(非特許文献7参照)。しかし、この場合においてもモノマーのコストおよびエネルギーの大量消費が問題となっている。従って、より好ましくは、安価な酢酸ビニルから温和な条件下で高イソタクチックなPVAを直接製造する方法の確立が強く求められている。
【0004】
一方、チグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒を代表とするオレフィン重合触媒は、温和な重合条件下でプロピレンなどオレフィン類を立体規則性を与えながら重合することが可能である。そのようなことから、ビニルエステル系単量体についても、遷移金属触媒を用いて重合しようとする試みが幾つかなされている。例えば、非特許文献8および9などが報告されている。これらの報告にはポリマーが得られると記されているが、いずれも生成ポリマーの立体規則性を明らかにしていない。これまでの均一系遷移金属触媒によるイソ特異性重合の発現機構から察すると、イソタクチシチ−の高いポリ酢酸ビニルは得られていないと考えうる。
また、特許文献1においてロジウム化合物を触媒に用いたエチレン−酢酸ビニル共重合体の製造方法が報告されている。得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含量は、0.001〜50%にコントロールすることが可能と記されているが、酢酸ビニルの単独重合ならびにエチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル連鎖長ならびにその立体規則性については、不明である。
【0005】
さらに、特許文献2では臭化リチウムと酢酸ビニルとから錯体を形成させた後、ラジカル重合することでイソタクチックに富むポリ酢酸ビニルを製造する方法を報告している。この報告によれば、立体規則性の定量をポリ酢酸ビニルのNMR測定により行っており、その値はイソタクチシチー(二連子)で56.7%である。通常ポリ酢酸ビニルの立体規則性を示すピーク、つまりイソタクチシチーおよびシンジオタクチシチーを示すピークは重なっており、それぞれのピーク分離は極めて困難であるため、ポリ酢酸ビニルのNMR測定から立体規則性定量を行うことは正確さに欠ける。上記定量方法でイソタクチシチーが高いとされたポリ酢酸ビニルを、鹸化してポリビニルアルコールへと変換した後、ピーク分離の明瞭なポリビニルアルコールのNMR測定により立体規則性を定量した場合、実際にはアタクチックのポリマーである場合がしばしばある。特に、ポリ酢酸ビニルのNMR測定でイソタクチシチー(二連子)が60%以下の場合は、ポリビニルアルコールに変換して定量するとイソタクチシチー(二連子)が50%未満となる。
【0006】
【特許文献1】特開平3−296505号公報
【特許文献2】WO 03/099878号明細書
【非特許文献1】J.Polym.Sci.,第62巻,S77頁,1962年
【非特許文献2】Makromol.Chem.,第53巻,180頁,1962年
【非特許文献3】J.Polym.Sci.,第A2巻,2327頁,1964年
【非特許文献4】J.Polym.Sci.,第A2巻,2327頁,1964年
【非特許文献5】J.Polym.Sci.,第B3巻,245頁,1965年
【非特許文献6】第40回高分子討論会予稿集,3940頁,1991年
【非特許文献7】高分子論文集,第46巻,261頁,1989年
【非特許文献8】工業化学雑誌,第65巻,74頁,1962年
【非特許文献9】Z.Anorg.Allorg.Chem.,第629巻,781頁,2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、上記のような従来技術の問題点を解決することであり、一般的に用いられている酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体から、イソタクチシチ−の高く品質、物性などが良好なPVAを、より温和な条件下で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ポリビニルエステルおよびポリビニルアルコールの製造方法において新規な重合系による温和な条件下での立体規則性の高いポリビニルエステルおよびポリビニルアルコールの製造を可能とすべく鋭意検討を進めてきた。その結果、ルイス酸存在下でビニルエステル系単量体をラジカル重合させることでイソタクチシチ−の高いポリ酢酸ビニルが得られることを見出し、さらにこのポリマーを鹸化することでイソタクチシチ−の高いポリビニルアルコールも得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
ルイス酸の存在下、30℃以下でビニルエステル系単量体をラジカル重合させることを特徴とするイソタクチシチーがメソ二連子で50%以上であるビニルエステル系重合体の製造方法である。
【0010】
また本発明は、
上記の製造方法により得られるビニルエステル系重合体を鹸化する、イソタクチシチーがメソ二連子で50%以上であるポリビニルアルコールの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ビニルエステル単量体、特に酢酸ビニルから工業的に有利な条件でイソタクチシチーの高いPVAを製造することができる。そして、これらは、高強度高弾性率材料、耐熱性材料などに有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるルイス酸としては、周期律表第2、12、13または14族の金属を中心金属とするハロゲン化合物を好ましく用いることができる。周期律表第2、12、13または14族の金属を中心金属とするハロゲン化合物としては、例えば、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム;フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム;フッ化ストロンチウム、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム;フッ化バリウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム;塩化亜鉛、臭化亜鉛、フッ化亜鉛;フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム;フッ化ガリウム、塩化ガリウム、臭化ガリウム、ヨウ化ガリウム;フッ化インジウム、塩化インジウム、臭化インジウム、ヨウ化インジウム;フッ化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、臭化ゲルマニウム、ヨウ化ゲルマニウム;フッ化スズ、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ;フッ化鉛、塩化鉛、臭化鉛、ヨウ化鉛;等が用いられる。これらの中では特に塩化マグネシウムが好適である。
【0013】
ルイス酸としては、これらの周期律表第2、12、13または14族の金属を中心金属とするハロゲン化合物を、1種または2種以上混合して用いることができる。
【0014】
本発明の実施にあたり、ルイス酸の使用量は、ビニルエステル系単量体に対して、0.1〜2.0当量に相当する量で使用することが好ましく、0.5〜1.0当量であるのがより好ましい。
【0015】
本発明においてラジカル重合させる方法としては、ラジカル重合開始剤の使用;光増感剤の使用と光の照射;放射線、レーザー光、光などの照射;加熱などが挙げられるが、特に、工業的にはラジカル重合開始剤を用いる方法が好ましい。
【0016】
上記ラジカル重合開始剤としては、ラジカルを発生し、ビニルエステル系単量体に重合反応を起こすことができるものであれば特に制限はないが、熱、光、放射線、酸化還元化学反応などの作用によって、ラジカルを発生する化合物から選ばれる。
【0017】
上記ラジカル重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、有機金属化合物、光増感剤、レドックス重合開始剤等があげられる。
【0018】
上記アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソ酪酸エステル、次亜硝酸エステル等が挙げられる。上記有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル(以下、BPOという)、過酸化ラウロイル、ジクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。上記無機過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0019】
上記レドックス重合開始剤としては、例えば、過酸化水素−第1鉄系、BPO−ジメチルアニリン系、セリウム(IV)塩−アルコール系等があげられる。上記有機金属化合物としては、2族、3族の金属および鉛を含む化合物が挙げられる。
【0020】
またトリアルキルボラン−酸素、トリアルキルアルミニウム−酸素といった組合わせによりラジカルを発生する開始剤も用いられる。
【0021】
これらのラジカル重合開始剤の中で、特にアゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)やトリアルキルボラン−酸素等が好適に用いられる。
【0022】
光によるラジカル重合の場合には、アゾ化合物、過酸化物、カルボニル化合物、硫黄化合物、色素等の光増感剤を添加してもよい。
【0023】
上記ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよく、相互作用により重合進行へ悪影響を及ぼさない範囲で、2種以上が併用されてもよい。また、ラジカル重合は、熱の作用により予めある程度まで重合を進行させた後に、光により重合を完了させるなど複数の方法を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
ラジカル重合開始剤の使用量は、ビニルエステル系単量体1molに対して、0.00005〜0.5molが好ましく、より好ましくは0.0001〜0.2molである。
【0025】
本発明における重合温度は30℃以下であり、25℃以下であるのが好ましく、−100℃〜25℃の範囲であることがより好ましい。重合温度が高すぎるとイソタクチシチーが低下して好ましくない。また、重合温度が低すぎると、重合反応性が極めて低下して生産性に欠けるため好ましくない。重合温度は、ラジカル重合反応の種類により上記の温度範囲内で適宜選択される。
【0026】
重合は、塊状重合または溶液重合で行う。
溶液重合で重合を行う場合は、ビニルエステル系単量体と不活性溶媒との混合溶液を用いることが好ましい。この不活性溶媒は、重合を阻害しないものであればどれでも使用することができるが、特に、炭素数4〜20の脂肪族炭化水素、例えばイソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなど;芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレンなど;炭素数1〜20のハロゲン化脂肪族炭化水素、例えばクロロホルム、塩化メチレン、四塩化水素、ジブロモエタン、テトラクロロエタンなど;ハロゲン化芳香族炭化水素、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼンなど;炭素数3〜20の脂肪族エステル、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸2−エチルへキシル、酢酸フェニル、ヘキサン酸エチル;芳香族エステル、例えば安息香酸メチル、安息香酸エチルなど;が適当である。
【0027】
本重合の重合操作は通常の一つの重合条件で行う一段重合のみならず、複数の重合条件下で行う多段重合においても行うことができる。
【0028】
モノマーのビニルエステル系単量体としては、代表的には酢酸ビニルが示される。ただし、この発明では、酢酸ビニル以外にも、炭素数3〜20のビニルエステル系単量体が用いられてよい。例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、2−エチルへキサン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられる。また、これらの単体のみならず、2種以上のビニルエステル単量体の混合物であってもよい。本発明で用いる触媒系存在下でのビニルエステル系単量体の重合に際し、ビニルエステル系単量体と共重合可能な単量体、例えばエチレン、プロピレン、イソブテンなどのα−オレフィン;アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの不飽和酸類、その塩またはモノ若しくはジアルキルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド類;ビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン;スチレン、α−メチルスチレン;ブタジエン、イソプレン、1,5−ヘキサジエン、シクロペンタジエン、ビニルノルボルネン、ノルボルナジエン、ビニルスルホン酸またはその塩;などを少量共存させることも可能である。
【0029】
本発明においてPVAは、重合により得られたビニルエステル系重合体を鹸化して製造するが、鹸化方法やその条件には特に制限はなく、ビニルエステル系重合体のアルコール溶液を水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリを触媒として公知の方法で鹸化することができる。なお、本発明の製造方法は、ビニルエステル系モノマーを重合して、イソタクチシチーがメソ二連子(m)で50%以上となるビニルエステル系重合体を得るためのものである。本発明においてビニルエステル系重合体のイソタクチシチーとは、該ビニルエステル系重合体をアルカリ鹸化してPVAへと変換し、核磁気共鳴装置により後述の実施例に記載の方法に従って求めた値を指すものとする。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例および比較例に用いた測定方法は次の通りである。
(重合体の分子量)
カラム(東ソー社製、TSKgelGMHHR−MおよびTSKgelG2000HHR)および示差屈折率計(東ソー社製、RI−8020)を備えたゲル浸透クロマトグラフ(東ソー社製)により、40℃、テトラヒドロフラン溶媒中で、ビニルエステル系重合体の重量平均分子量および分散度をポリスチレン換算で求めた。
【0031】
(イソタクチシチー(メソ二連子))
PVAを重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させ、400MHzNMR装置(日本電子社製)によりPVAのプロトンNMRスペクトルを測定し、三連子(mm/mr/rr)の割合(%)を求め、次式からメソ(m)二連子のイソタクチシチー(%)を算出した。
イソタクチシチー(二連子)=mm+(mr/2)
【0032】
<実施例1>
窒素雰囲気下、無水塩化マグネシウム2.85g(30mmol)、酢酸ビニル2.58g(30mmol)を内容積0.1Lのガラス製丸底フラスコ内に投入し、ついでノルマルヘプタン1.5mLに溶解させたアゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)92.5mg(0.30mmol)を加え、20℃で重合した。24時間後、クロロホルムで抽出して得られたポリ酢酸ビニルの収量は0.26g(収率:10%)であった。分子量をGPCにより求めたところ、数平均分子量(Mn)は2,100、分子量分布(MWD)は1.72であった。また、得られたポリ酢酸ビニルをメタノールに溶解し、アルカリ鹸化してPVAを得、PVAのプロトンNMR測定からイソタクチシチー(二連子)を求めたところ、64.0%であった。
【0033】
<実施例2>
窒素雰囲気下、無水塩化マグネシウム2.85g(30mmol)、酢酸ビニル2.58g(30mmol)を内容積0.1Lのガラス製丸底フラスコ内に投入し、ついで1.0Mトリブチルホウ素のヘプタン溶液0.30mL(0.30mmol)を加え、さらに乾燥空気10mLを注射器で注入し、20℃で重合した。24時間後、クロロホルムで抽出して得られたポリ酢酸ビニルの収量は0.24g(収率:9.3%)であった。分子量をGPCにより求めたところ、数平均分子量(Mn)は2,600、分子量分布(MWD)は2.00であった。また、得られたポリ酢酸ビニルをメタノールに溶解し、アルカリ鹸化してPVAを得、PVAのプロトンNMR測定からイソタクチシチー(二連子)を求めたところ、58.0%であった。
【0034】
<実施例3>
窒素雰囲気下、無水塩化マグネシウム2.85g(30mmol)、酢酸ビニル2.58g(30mmol)を内容積0.1Lのガラス製丸底フラスコ内に投入し、ついでノルマルヘプタン1.5mLに溶解させたをアゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)92.5mg(0.30mmol)を加え、0℃で重合した。24時間後、クロロホルムで抽出して得られたポリ酢酸ビニルの収量は0.39g(収率:5.9%)であった。分子量をGPCにより求めたところ、数平均分子量(Mn)は1,200、分子量分布(MWD)は1.72であった。また、得られたポリ酢酸ビニルをメタノールに溶解し、アルカリ鹸化してPVAを得、PVAのプロトンNMR測定からイソタクチシチー(二連子)を求めたところ、66.0%であった。
【0035】
<比較例1>
窒素雰囲気下、酢酸ビニル2.58g(30mmol)を内容積0.1Lのガラス製丸底フラスコ内に投入し、ついでノルマルヘプタン1.5mLに溶解させたをアゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)92.5mg(0.30mmol)を加え、20℃で重合した。24時間後、クロロホルムで抽出して得られたポリ酢酸ビニルの収量は1.17g(収率:45%)であった。分子量をGPCにより求めたところ、数平均分子量(Mn)は10,100、分子量分布(MWD)は2.02であった。また、得られたポリ酢酸ビニルをメタノールに溶解し、アルカリ鹸化してPVAを得、PVAのプロトンNMR測定からイソタクチシチー(二連子)を求めたところ、47.0%であった。
【0036】
<比較例2>
窒素雰囲気下、酢酸ビニル2.58g(30mmol)を内容積0.1Lのガラス製丸底フラスコ内に投入し、ついで1.0Mトリブチルホウ素のヘプタン溶液0.30mL(0.30mmol)を加え、さらに乾燥空気10mLを注射器で注入し、20℃で重合した。24時間後、クロロホルムで抽出して得られたポリ酢酸ビニルの収量は0.90g(収率:35%)であった。分子量をGPCにより求めたところ、数平均分子量(Mn)は9,600、分子量分布(MWD)は2.00であった。また、得られたポリ酢酸ビニルをメタノールに溶解し、アルカリ鹸化してPVAを得、PVAのプロトンNMR測定からイソタクチシチー(二連子)を求めたところ、47.0%であった。
【0037】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルイス酸の存在下、30℃以下でビニルエステル系単量体をラジカル重合させることを特徴とするイソタクチシチーがメソ二連子で50%以上であるビニルエステル系重合体の製造方法。
【請求項2】
ルイス酸が2、12、13または14族金属のハロゲン化合物である、請求項1に記載のビニルエステル系重合体の製造方法。
【請求項3】
ルイス酸が塩化マグネシウムである、請求項1に記載のビニルエステル系重合体の製造方法。
【請求項4】
ビニルエステル系単量体が炭素数3〜20のビニルエステル系単量体である、請求項1に記載のビニルエステル系重合体の製造方法。
【請求項5】
ビニルエステル系単量体が酢酸ビニルである、請求項1に記載のビニルエステル系重合体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られるビニルエステル系重合体を鹸化する、イソタクチシチーがメソ二連子で50%以上であるポリビニルアルコールの製造方法。

【公開番号】特開2006−328250(P2006−328250A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154888(P2005−154888)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】