説明

イソチオウレア誘導体

本発明は、イソチオウレア誘導体、その製造法、特に移植、自己免疫性または感染症におけるそれらの使用、およびそれらを含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、イソチオウレア誘導体、それらの製造法、それらの使用およびそれらを含む、医薬組成物に関する。
【0002】
より特に、本発明は、式I
【化1】

〔式中、
は式(a)、(b)または(c)
【化2】

の残基であり、
は−(CR2223)1−3−または−C(O)−であり;
およびRの各々は独立してS;O;またはNR24であり;
およびRの各々は、所望によりR25置換されていてよいC−C12シクロアルキル、C−C12アルキルまたは飽和C8−12多環式残基であるか;または所望によりR26および/またはR27置換されていてよいアリール、アリールC1−4アルキルまたはヘテロアリールであり;ここで、Rおよび/またはRの4個までの炭素原子は、所望によりS、OまたはNR24で置換されていてよく;
はH;C−Cアルキル;C−Cシクロアルキル;または所望によりR26および/またはR27置換されていてよいアリール、アリールC1−4アルキルまたはヘテロアリールであり;
はCR28またはNであり;
は直接結合;−(CR2223)1−2−;またはNR24であり;
【0003】
10−23およびR28の各々は独立してH;F;Cl;Br;C−Cアルキル;C−Cアルコキシアルキル;C−Cハロゲノアルキル;C−Cシクロアルキル;所望によりR26および/またはR27置換されていてよいアリールまたはヘテロアリール;CONR2930;COOR29;CN;NO;またはOR31であるか;または
同じ炭素原子に結合しているR10−19の2個が、それらが結合している炭素原子と一体となって、所望によりN、OおよびSから独立して選択される2個までのヘテロ原子を含んでいてよい3−7員非芳香環を形成するか;または
17およびR18は、それらが結合しているC原子と一体となって、所望によりN、OおよびSから独立して選択される2個までのヘテロ原子を含んでいてよい4−7員非芳香環を形成するか;または
20およびR21は、それらが結合している炭素原子と一体となって、所望によりR26および/またはR27置換されていてよいアリールまたはヘテロアリールを形成し;
24、R29およびR30の各々は独立してH;C−Cアルキル;C−Cアルコキシアルキル;C−Cハロゲノアルキル;C−Cシクロアルキル;または所望によりR26および/またはR27置換されていてよいアリール、アリールC1−4アルキルまたはヘテロアリールであり;
25は、各々独立して上記R10−23で定義の意味の1個を有する1個から4個の置換基であり;
26はC−Cアルキル;C−Cヒドロキシアルキル;C−Cアルコキシアルキル;C−Cハロゲノアルキル;C−Cシクロアルキル;C−Cアルケニル;C−Cシクロアルケニル;C−Cアルキニル;アリール;ヘテロアリール;ヘテロアリールN−オキシド;F;Cl;Br;I;OH;OR;CONH;CONHR;CONR;OC(O)R;OC(O)OR;OC(O)NHR;OC(O)NR;OSO;COOH;COOR;CF;CHF;CHF;CN;NO;NH;NHR;NR;NHC(O)R;NRC(O)R;NHC(O)NHR;NHC(O)NH;NRC(O)NHR;NRC(O)NR;NHC(O)OR;NRC(O)OR;NHSO;N(SO);NRSO;SR;S(O)R;SO;Si(CH)およびB(OC(CH))から選択される1個から4個の置換基であり;
27は、縮環した所望によりN、OおよびSから独立して選択される2個までのヘテロ原子を含んでいてよい4−7員非芳香環を形成する、隣接した2個の置換基であり;
31はC−Cアルキル;C−Cシクロアルキル;所望によりR26および/またはR27置換されていてよいアリール、アリールC1−4アルキルまたはヘテロアリール;またはCFである。〕
の化合物を提供する。
【0004】
全てのアルキル、アルケニルまたはアルキニルは直鎖または分枝鎖であり得る。ハロゲノはF、Cl、BrまたはIである。
アリールは、フェニルまたはナフチルを意味する。
【0005】
多環式残基は、例えば所望によりR25置換されていてよいアダマンチル、ビシクロ[3,2.1]オクチルまたは
【化3】

〔式中、nは1または2である。〕
である。
【0006】
ヘテロアリールは、N、OおよびSから独立して選択される4個までのヘテロ原子を含む、単−、二−または三環式系を含む芳香環系を意味する。ヘテロアリールの例は、例えばピリジル、インドリル、ベンゾチアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリルを含む。1個または2個のヘテロ原子を含む3−7員非芳香環の例は、例えばモルホリニル、ピペラジニル、ピペリジルを含む。
【0007】
式Iの化合物は、数種の相互変換可能な互変異性体およびE/Z異性体の形、例えば
【化4】

で存在し得る。
【0008】
それらは遊離形または塩形、例えば有機または無機酸、例えば、塩酸、酢酸との、例えば付加塩で存在し得る。式Iの化合物が分子内に1個以上の不斉中心を有するとき、本発明は、様々な光学異性体、ならびにラセミ体、ジアステレオ異性体およびそれらの混合物を含むと理解すべきである。
【0009】
式Iの化合物において、下記の意味が個々にまたは任意のサブコンビネーションで好ましい:
1. (a)R10−23およびR28の各々が、独立してH;またはC−Cアルキルである;
(b)同じ炭素原子に結合しているR10−19の2個が、それらが結合している炭素原子と一体となって、3所望によりN、OおよびSから独立して選択される2個までのヘテロ原子を含んでいてよい−6員非芳香環を形成する;または
(c)R17およびR18が、それらが結合しているC原子と一体となって、所望によりN、OおよびSから独立して選択される2個までのヘテロ原子を含んでいてよい4−7員非芳香環を形成する;または
2. Rが直接結合;または−CR2223−である;
3. R24、R29およびR30の各々が独立してH;C−Cアルキル;またはC−Cシクロアルキルである;
4. RがCR28である;
5. Rが−CR2223−である;
6. RおよびRの各々が独立して所望によりR25置換されていてよいC−CシクロアルキルもしくはC−C12アルキル;またはアダマンチルであり;ここで、所望によりRおよび/またはRの4までの炭素原子がS、OまたはNR24により置換されていてよい;
7. RがH;またはC−Cアルキルである;
8. RおよびRの各々が独立してSである;
9. アリールC1−4アルキルがベンジルである。
【0010】
本発明はまた式II
【化5】

の化合物と式III
【化6】

(式中、R1−6は上記で定義の通りであり、そしてR32は脱離基である)
の化合物を反応させ、そして所望により遊離形で得た合成化合物を塩形に変換するか、またはその逆を行うことを含む、式Iの化合物の製造法もカバーする。
【0011】
好ましくはR32はハロゲノ、より好ましくはクロロである。
【0012】
式IIIの化合物は既知であるか、または、式IV(a)、(b)または(c)
【化7】

(式中、R8−21は上記で定義の通りである)
の化合物と、1,3−ジクロロ−アセトンを反応させ、式IIIの化合物を遊離形または塩形で回収することにより、製造できる。
【0013】
式IIおよびIVの化合物は既知であり、そして当分野で十分確立された方法に従い製造できる。
【0014】
下記実施例は、本発明を何ら限定することなく説明する。
【0015】
実施例1
1,3−ジシクロヘキシル−2−(5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾル−3−イルメチル)−イソチオウレア
N,N'−ジシクロヘキシルチオウレア(0.21g、1.0mmol)、3−クロロメチル−5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾール(0.72g、3.0mmol)およびアセトニトリル(10ml)の混合物を4時間還流する。沈殿を濾取し、メタノール/エーテルから結晶化させて、1,3−ジシクロヘキシル−2−(5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾル−3−イルメチル)−イソチオウレアの二塩酸塩を得る。MS/ESI 379 [M+H]
【0016】
実施例2
1,3−ジシクロヘキシル−2−(3−メチル−2−メチルイミノ−2,3−ジヒドロ−チアゾル−4−イルメチル)−イソチオウレア
1,3−ジシクロヘキシル−2−(3−メチル−2−メチルイミノ−2,3−ジヒドロ−チアゾル−4−イルメチル)−イソチオウレアを、4−クロロメチル−3−メチル−3H−チアゾル−2−イリデン−メチル−アミンから、3−クロロメチル−5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾールを後者の化合物に代える以外、実施例1に記載の方法に準じて製造する。MS/ESI 381 [M+H]。
【0017】
出発物質として使用する(4−クロロメチル−3−メチル−3H−チアゾル−2−イリデン)−メチル−アミンは、下記方法に従い製造する:
N,N'−ジメチルチオウレア(1.04g、10.0mmol)、1,3−ジクロロアセトン(1.27g、10.0mmol)およびn−ブタノール(25ml)の混合物を、140℃で1時間加熱する。溶媒を除去し、残渣をメタノール/エーテルから結晶化させて、(4−クロロメチル−3−メチル−3H−チアゾル−2−イリデン)−メチル−アミンの塩酸塩を得る。MS/ESI 177 [M+H]。
【0018】
実施例3
1,3−ジシクロヘキシル−2−(6,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾル−3−イルメチル)−イソチオウレア
1,3−ジシクロヘキシル−2−(6,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾル−3−イルメチル)−イソチオウレアを、3−クロロメチル−6,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾールから、3−クロロメチル−5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾールを後者の化合物に代える以外、実施例1に記載の方法に準じて製造する。MS/ESI 407 [M+H]。
【0019】
出発物質として使用する3−クロロメチル−6,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾールは、下記方法に従い製造する:
4,4−ジメチル−イミダゾリジン−2−チオン(1.0g、7.5mmol)、1,3−ジクロロアセトン(1.00g、7.5mmol)およびアセトニトリル(15ml)の混合物を2時間還流する。無色沈殿を濾取し、乾燥させ、1−メトキシ−2−(2−メトキシ−エトキシ)−エタンに懸濁させ、続いて140℃で2時間加熱する。沈殿を濾取し、エーテルで洗浄して、3−クロロメチル−6,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾールの塩酸塩を得る。MS/ESI 203 [M+H]。
【0020】
下記式V
【化8】

の実施例は、同様の方法を適用する。
【0021】
【表1】

【表2】

【表3】

【0022】
遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物は、例えばCXCR4アンタゴニストとして、例えばインビトロ試験で示される通り、価値ある薬理学的特性を示し、故に、治療に適応される。CXCR4は、単球を含む様々な正常組織で発現されるケモカイン受容体Gタンパク質共役受容体(GPCR)である。SDF−1(CXCL12)は、この受容体の同族リガンドであり、CXCR4を発現する細胞の走化性を誘導する化学誘引物質として作用することが知られている。
【0023】
a)CXCR4膜結合アッセイ
膜を、CXCR4を内因性に発現するTリンパ芽球細胞系CEMから調製する。放射性リガンドとして125−I標識SDF−1αを使用する。膜、放射性リガンドと式Iの化合物をインキュベートし、結合した放射性リガンドの量を測定する。データをIC50として、すなわち[I−125]SDF−1α結合の50%阻害を達成するのに必要な化合物の濃度として報告する。このアッセイにおいて、式Iの化合物は<50μMのIC50を有する。
【0024】
b)CXCR4機能的アッセイ − Ca2+動員
細胞内貯蔵部からのSDF−1誘発Ca2+動員を、Ca2+−検出フルオロクロームFluo−4を負荷したCEM細胞で測定する。Fluo−4負荷細胞を式Iの化合物とインキュベートし、次いで蛍光のSDF−1誘発増加を、蛍光イメージプレートリーダーで記録する。化合物の阻害効果を、SDF−1応答を50%減少させる化合物の濃度を示すIC50値として表す。このアッセイにおいて、式Iの化合物は、<50μMのIC50値を有する。
【0025】
c)CXCR4機能的アッセイ − 走化性
SDF−1により刺激される細胞移動(走化性)を、多孔性ポリカーボネート膜を有するTranswell組織培養インサートで評価する。標的細胞(例えばJurkat T細胞、CEM細胞またはリンパ球)を上部区画に、ケモカインDF−1を下部区画に添加する。式Iの化合物を同じ濃度で両方の区画に添加する。式Iの化合物は、SDF−1誘発走化性を、<50μMのIC50値で阻害する。
【0026】
式Iの化合物は、故に、ケモカイン受容体、例えばCXCR4と、そのリガンドの間の相互作用が介在する疾患または障害、例えば移植における、例えば臓器、組織、細胞同種または異種移植片の急性または慢性拒絶反応または移植片機能の遅延、自己免疫性疾患、例えばリウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型またはII型糖尿病およびその合併症、脈管炎、悪性貧血、シェーグレン症候群、ブドウ膜炎、乾癬、円形脱毛症およびその他、アレルギー性疾患、例えばアレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎/結膜炎、アレルギー性接触性皮膚炎、異所性反応が根底にある場合もある炎症性疾患、例えば炎症性腸疾患、クローン病または潰瘍性大腸炎、内因性喘息、炎症性肺傷害、炎症性肝臓傷害、炎症性糸球体傷害、アテローム性動脈硬化症、骨関節症、刺激性接触性皮膚炎およびさらなる湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、免疫介在障害の皮膚発現、炎症性眼病、角結膜炎、心筋炎または肝炎、虚血/再潅流傷害、例えば心筋梗塞、卒中、腸虚血、腎不全または出血性ショック、外傷性ショックおよびその他、感染症、例えば毒素ショック(例えば超抗原誘発)、敗血症性ショック、成人呼吸窮迫症候群またはウイルス感染、例えばCXCR4を発現する細胞へのHIVウイルスの結合もしくは侵入、またはAIDSの進行の予防および/または処置に有用である。移植は、例えば細胞、組織または固形臓器、例えば膵臓島、幹細胞、骨髄、角膜組織、神経組織、心臓、肺、複合心臓−肺、腎臓、肝臓、腸、膵臓、気管または食道の同種または異種移植片を意味する。慢性拒絶はまた移植片対宿主病とも呼ばれる。
【0027】
CXCR4シグナル伝達は、腫瘍、例えば固形腫瘍の進行、侵襲または転移に関与する。原発腫瘍に関連する間質性または上皮性細胞が、SDF−1を発現することがしばしば観察されている。CXCR4/SDF−1相互作用が、原発部位での腫瘍の確立、増殖、血管形成、もしくは局所的侵襲、例えば血管発達、または、例えば転移の初期段階における、血管に関連する細胞のSDF−1発現を介した腫瘍細胞の血液またはリンパ循環への侵入の促進と関連する。
【0028】
加えて、骨髄細胞によるSDF−1発現は、骨へのCXCR4を発現する腫瘍細胞の動員、接着または増殖を促進する。他の部位または組織でのSDF−1発現は、腫瘍の転移または確立においてこれらの部位と同様の役割を有する。多発性骨髄腫は、骨髄への細胞の動員が、確立および進行における、ホーミング、環境および増殖の重大な役割を有する癌の例である。
【0029】
本発明の化合物は、増殖性疾患、とりわけ悪性増殖性または新生物疾患、例えば腫瘍、例えば脳および他の中枢神経系腫瘍(例えば髄膜、脳、脊髄、脳神経および中枢神経系の他の部位の腫瘍、例えば神経膠芽腫または髄芽細胞腫(medulla blastoma));頭頚部癌;乳房腫瘍;循環器系腫瘍(例えば心臓、縦隔および胸膜、および他の胸腔内臓器、血管腫瘍および腫瘍関連血管組織);排泄系腫瘍(例えば腎臓、腎盂、輸尿管、膀胱、他のおよび非特異的泌尿器);胃腸管腫瘍(例えば食道、胃、小腸、結腸、結腸直腸、直腸S状部接合部、直腸、肛門および肛門管)、肝臓および肝内胆管、胆嚢、胆管の他のおよび非特異的部分、他のおよび消化器が関与する腫瘍;頭頚部;口腔(唇、下、歯肉、口腔底、口蓋、および口の他の部分、耳下腺、および唾液腺の他の部分、扁桃、中咽頭、上咽頭、梨状陥凹、下咽頭、ならびに唇、口腔および咽頭の他の部分);生殖器系腫瘍(例えば外陰、膣、子宮頸部、子宮体、子宮、卵巣、および女性生殖器に関連する他の部位、胎盤、陰茎、前立腺、精巣、および男性生殖器に関連する他の部位);呼吸器腫瘍(例えば鼻腔および中耳、副洞、喉頭、気管、気管支および肺、例えば小細胞肺癌または非小細胞性肺癌);骨格系腫瘍(例えば肢の骨および関節軟骨、骨関節軟骨および他の部位);皮膚腫瘍(例えば皮膚の悪性黒色腫、非黒色腫皮膚癌、皮膚の基底細胞癌腫、皮膚の扁平細胞癌腫、中皮腫、カポジ肉腫);および末梢神経および自律神経系、結合および軟組織、後腹膜および腹膜、眼および付属器、甲状腺、副腎および他の内分泌腺および関連構造を含む他の組織の腫瘍、リンパ節の二次的および非特異的悪性新生物、呼吸器および消化系の二次的悪性新生物ならびに他の部位の悪性新生物、血液およびリンパ系の腫瘍(例えばホジキン病、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、AIDS関連リンパ腫、悪性免疫増殖性疾患、多発性骨髄腫および悪性血漿細胞新生物、リンパ性白血病、急性または慢性骨髄性白血病、急性または慢性リンパ球性白血病、単球性白血病、特異的細胞型の他の白血病、非特異的細胞型の白血病、リンパ、造血および関連組織の他のおよび非特異的悪性新生物、例えばびまん性大細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫または皮膚T細胞リンパ腫)の予防または処置に有用である。骨髄癌は、例えば急性または慢性骨髄性白血病を含む。
【0030】
前記および後記で腫瘍、腫瘍疾患、癌腫または癌が記載されているとき、また、原発臓器もしくは組織および/または全ての他の部位における転移巣が、これらの代わりにまたはこれら加えて、腫瘍および/または転移巣の位置または複数の位置にかかわらず、含まれる。式Iの化合物は、特に、このような処置を必要とする対象における、腫瘍侵襲またはこのような腫瘍増殖に関連する症状の処置、腫瘍の転移性拡散の予防または微小転移巣増殖の予防または阻害、とりわけ腫瘍の骨、例えば骨髄への転移性拡散の処置または予防のために指示される。一つの態様において、式Iの化合物は、CXCR4受容体および/またはSDF−1発現が介在する転移、腫瘍侵襲または腫瘍増殖の予防または処置のために指示される。
【0031】
さらなる態様において、式Iの化合物は、処置を必要とする対象における、脱制御された血管形成、例えばCXCR4および/またはSDF−1が介在する血管形成の阻害または制御のために指示される。
【0032】
上記使用のために必要な投与量は、もちろん、投与の形態、処置すべき特定の状態および所望の効果に依存して変化するであろう。一般に、十分な結果が、約0.01から10mg/体重kgの1日投与量で漸進的に得られることが指示される。大型哺乳類、例えばヒトにおいて指示される1日投与量は、約0.5mgから約1000mgであり、簡便には1日4回までの分割投与量で、または、徐放形態で投与する。経口投与用の適当な単位投与形態は、0.1から500mg、例えば約0.5から4mg活性成分を含む。
【0033】
式Iの化合物は任意の慣用の経路で、特に経腸的に、例えば経口で、例えば錠剤またはカプセルの形で、または非経腸的に、例えば注射可能溶液または懸濁液の形で、局所的に、例えばローション、ゲル、軟膏またはクリームの形で、または経鼻でまたは坐薬形態で投与できる。遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物を、少なくとも1個の医薬的に許容される担体または希釈剤と共に含む医薬組成物は、薬学的に許容される担体または希釈剤と混合することによる慣用法で製造できる。
【0034】
式Iの化合物は、遊離形または、例えば、上記の通りの薬学的に許容される塩形で投与できる。このような塩は慣用法で製造でき、遊離化合物と同程度の活性を示す。
【0035】
前記に従い、本発明はさらに下記を提供する:
1.1 処置を必要とする対象における、例えば、上記の通りのケモカイン受容体、例えばCXCR4受容体、およびそのリガンド間の相互作用が介在する障害または疾患を予防または処置する方法であって、該対象に有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法;
【0036】
1.2 処置を必要とする対象における、例えば、上記の通りの急性または慢性移植片拒絶反応または炎症性または自己免疫性疾患を予防または処置する方法であって、該対象に有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法;
【0037】
1.3 処置を必要とする対象における、例えば、上記の通りの増殖性疾患を予防または処置する方法であって、該対象に有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法;
【0038】
1.4 処置を必要とする対象における、例えば、上記の通りの腫瘍進行、侵襲または腫瘍増殖に関連する症状の処置、腫瘍の転移性拡散の予防または微小転移巣の増殖の予防または阻害、または腫瘍関連血管形成を予防するための方法であって、該対象に有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法;
【0039】
1.5 感染症、例えばウイルス感染を予防するまたは抑制する、特にウイルスのケモカイン受容体発現細胞への結合または侵入、例えばHIV−1またはHIV−2のようなHIVウイルスのCXCR4発現細胞への結合または侵入、またはAIDSの進行を予防するまたは抑制するための方法。
【0040】
2. 例えば、上記1.1から1.4の下に示す方法のいずれかにおいて、医薬として使用するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0041】
3. 例えば、上記1.1から1.4の下に示す方法のいずれかにおいて使用するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む、医薬組成物。
【0042】
4. 上記1.1から1.4おける方法のいずれかにおいて使用するための、医薬組成物の製造に使用するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0043】
式Iの化合物は、唯一の活性成分として、または、例えばアジュバントとして、例えば同種−または異種移植片急性または慢性拒絶または炎症性または自己免疫性障害の処置のために、例えば免疫抑制性または免疫調節性レジメンにおける他の薬剤と、または他の抗炎症剤と、化学療法剤または抗感染剤、例えば抗レトロウイルス剤または抗生物質のような例えば抗ウイルス剤と組み合わせて、投与できる。例えば、式Iの化合物はカルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリンAまたはFK506;mTOR阻害剤、例えばラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、CCI779、ABT578、AP23573、AP23464、AP23675、AP23841またはTAFA−93;免疫抑制性特性を有するアスコマイシン、例えばABT−281、ASM981など;コルチコステロイド;シクロホスファミド;アザチオプリン;メトトレキサート;レフルノミド;ミゾルビン;ミコフェノール酸;ミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリンまたはその免疫抑制性同族体、類似体または誘導体;スフィンゴシン−1−ホスフェート受容体アゴニスト、例えばFTY720;白血球受容体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD11a/CD18、CD25、CD27、CD28、CD40。CD45、CD58、CD80、CD86、CD137、ICOS、CD150(SLAM)、OX40、4−1BBまたはそれらのリガンド、例えばCD154に対するモノクローナル抗体、またはそのアンタゴニスト;他の免疫調節性化合物、例えば少なくともCTLA4の細胞外ドメインの部分またはその変異体、例えば非CTLA4タンパク質に結合した少なくともCTLA4の細胞外ドメイン部分またはその変異体を有する組み換え結合分子、例えばCTLA4Ig(例えば命名ATCC68629)またはその変異体、例えばLEA29Y;接着分子阻害剤、例えばLFA−1アンタゴニスト、ICAM−1または−3アンタゴニスト、VCAM−4アンタゴニストまたはVLA−4アンタゴニスト;または抗ケモカイン抗体または抗ケモカイン受容体抗体または低分子量ケモカイン受容体アンタゴニスト、例えば抗MCP−1抗体と組み合わせて使用できる。
【0044】
本明細書で使用する用語“抗ウイルス剤”は、抗レトロウイルス剤;ウイルスに対する抗体;例えば抗HIV抗体;逆転写酵素阻害剤;例えばHIV逆転写酵素阻害剤、とりわけヌクレオシド類似体、例えばGlaxoSmithKlineのRetrovir(登録商標)(3'−アジド−3'−デオキシピリミジン、Zidovudine)および3'−アジド−3'−デオキシチミジン(AZT)、Hoffmann-LaRocheのHIVID(登録商標)(2',3'−ジデオキシシチジン、Zalcitabine)、Bristol-Myers-SquibbのVidex(登録商標)もしくはVidexEC(登録商標)(2',3'−ジデオキシイノシン、Didanosine)、GlaxoSmithKlineのEpivir(登録商標)(ラミブジン)、Bristol-Myers-SquibbのZerit(登録商標)(スタブジン)、GileadのViread(登録商標)(テノフォビルDF)、GlaxoSmithKlineのziagen(登録商標)(アバカビル)、Gilead SciencesのEmtriva(登録商標)(エムトリシタビン、FTC);または非ヌクレオシド類似体、例えばPfizerのrescriptor(登録商標)(デラビルジン)、Bristol-Myers-SquibbのSustiva(登録商標)(エファビレンツ)、Boehringer-Ingelheimのviramune(登録商標)(ネビラピン);11−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−4−メチル−(6H)−ジピリド[3,2−b;2',3'−e]−[1,4]ジアゼピン−6−オン、トリナトリウムホスホノホルメート、アンモニウム−21−タンスグテナト−9−アンチモネート、1−β−D−リボフランオキシル−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド;ウイルスまたはレトロウイルスプロテアーゼ阻害剤、例えばウイルスアスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤、例えばHIVプロテアーゼ阻害剤、例えばGlaxoSmithKlineのaganerase(登録商標)(アンプレナビル)、Bristol-Myers-Squibbのreyataz(登録商標)(アタザナビル)、GSKのlexiva(登録商標)(フォサンプレナビル)、Merck & Co.のCrixivan(登録商標)(インジナビル);Agouronのviracept(登録商標)(ネルフィナビル)、Abbottのnorvir(登録商標)(リトナビル);Hoffmann-LaRocheのfortovase(登録商標)およびInvirase(登録商標)(サキナビル);および他の化合物、例えばラシナビル(5(S)−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4(S)−ヒドロキシ−6−フェニル−2(R)(2,3,4−トリメトキシフェニルメチル)−ヘキサノイル−(L)−バリル−N−(2−メトキシ−エチル)−アミド)、アドリアマイシン、GlaxoWellcomeのKVX−478;VertexのVX−478;キッセイ薬品工業の141W94;AgouronのAG−1343;日鉱のKNI−272;UpjohnのU−96988;Boehringer-IngelheimのBILA−2011BS(パリナビル);ウイルス浸透を予防する化合物、例えば例えばポリマノアセテート;融合阻害剤、例えばHofffmann-LaRocheのfuzeon(登録商標)(エンフュービルタイド、T−20);またはこれらの任意の組み合わせ、例えばGlaxoKlineSmithのEpzicom(登録商標)(アバカビルおよびラミブジン)、GlaxoKlineSmithのTrizivir(登録商標)(アバカビル、ラミブジンおよびZidovudine)、Gilead SciencesのTruvada(登録商標)(エムトリシタビンおよびテノボフィルDF)、GlaxoKlineSmithのCombivir(登録商標)(ラミブジンおよびZidovudine)、Abbottのkaletra(登録商標)(ロピナビルおよびリトナビル)を含むが、これらに限定されない。用語“抗ウイルス剤”は、さらに、ウイルス感染、例えばHIV感染に起因する免疫抑制によりもたらされる日和見感染を処置する薬剤を含む。
【0045】
本明細書で使用する用語“HIV”は、HIV−1およびHIV−2を含むが、これらに限定されない。
【0046】
式Iの化合物はまた、他の抗増殖剤との組み合わせで有利に使用できる。このような抗増殖剤はアロマターゼ阻害剤、抗エストロゲン、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、微小管活性化剤、アルキル化剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、COX−2阻害剤、MMP阻害剤、mTOR阻害剤、抗新生物代謝拮抗剤、白金化合物、タンパク質キナーゼ活性を減少させる化合物およびさらなる抗血管形成化合物、ゴナドレリンアゴニスト、抗アンドロゲン、ベンガミド、ビスホスホネート、抗増殖性抗体およびテモゾロミド(TEMODAL(登録商標))を含むが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書で使用する“アロマターゼ阻害剤”なる用語は、エストロゲン生成、すなわち基質アンドロステンジオンおよびテストステロンから各々エストロンおよびエストラジオールへの変換を阻害する化合物に関する。本用語はステロイド、とりわけエキセメスタンおよびフォルメスタンおよび、特に、非ステロイド、とりわけアミノグルテチミド、ボロゾール、ファドロゾール、アナストロゾールおよび、非常にとりわけ、レトロゾールを含むが、これらに限定されない。エキセメスタンは、例えば、商品名AROMASINTMの下に、例えば市販の形で投与できる。フォルメスタンは、例えば、商品名LENTARONTMの下に、例えば市販の形で投与できる。ファドロゾールは、例えば、商品名AFEMATMの下に、例えば市販の形で投与できる。アナストロゾールは、例えば、商品名ARIMIDEXTMの下に、例えば市販の形で投与できる。レトロゾールは、例えば、商品名FEMARATMまたはFEMARTMの下に、例えば市販の形で投与できる。アミノグルテチミドは、例えば、商品名ORIMETENTMの下に、例えば市販の形で投与できる。
【0048】
アロマターゼ阻害剤である抗新生物剤を含む本発明の組み合わせは、ホルモン受容体陽性乳房腫瘍の処置に特に有用である。
【0049】
本明細書で使用する“抗エストロゲン”なる用語は、エストロゲン受容体レベルでエストロゲンの作用と拮抗する化合物に関する。本用語は、タモキシフェン、フルベストラント、ラロキシフェンおよびラロキシフェンヒドロクロライドを含むが、これらに限定されない。タモキシフェンは、例えば、商品名NOLVADEXTMの下に、例えば市販の形で投与できる。ラロキシフェンヒドロクロライドは、例えば、商品名EVISTATMの下に、例えば市販の形で投与できる。フルベストラントは、US4,659,516に記載の通りに製造できるか、または、例えば、商品名FASLODEXTMの下に、例えば市販の形で投与できる。
【0050】
本明細書で使用する“トポイソメラーゼI阻害剤”なる用語は、トポテカン、イリノテカン、9−ニトロカンプトテシンおよび巨大分子カンプトテシンコンジュゲートPNU−166148(WO99/17804の化合物A1)を含むが、これらに限定されない。イリノテカンは、例えば、商品名CAMPTOSARTMの下に、例えば市販の形で投与できる。トポテカンは、例えば、商品名HYCAMTINTMの下に、例えば市販の形で投与できる。
【0051】
本明細書で使用する“トポイソメラーゼII阻害剤”なる用語は、アントラサイクリン類ドキソルビシン(リポソーム製剤、例えばCAELYXTMを含む)、エピルビシン、イダルビシンおよびネモルビシン(nemorubicin)、アントラキノン類ミトキサントロンおよびロソキサントロン、およびポドフィロトキシン類エトポシドおよびテニポシドを含むが、これらに限定されない。エトポシドは、例えば、商品名ETOPOPHOSTMの下に、例えば市販の形で投与できる。テニポシドは、例えば、商品名VM 26-BRISTOLTMの下に、例えば市販の形で投与できる。ドキソルビシンは、例えば、商品名ADRIBLASTINTMの下に、例えば市販の形で投与できる。エピルビシンは、例えば、商品名FARMORUBICINTMの下に、例えば市販の形で投与できる。イダルビシンは、例えば、商品名ZAVEDOSTMの下に、例えば市販の形で投与できる。ミトキサントロンは、例えば、商品名NOVANTRONTMの下に、例えば市販の形で投与できる。
【0052】
用語“微小管活性化剤”は、タキサン類パクリタキセルおよびドセタキセル、ビンカアルカロイド、例えば、ビンブラスチン、とりわけビンブラスチンスルフェート、ビンクリスチン、とりわけビンクリスチンスルフェート、およびビノレルビン、ディスコデルモライドおよびエポチロンBおよびDのようなエポチロンを含むがこれらに限定されない、微小管安定化および微小管脱安定化に関する。ドセタキセルは、例えば、商品名TAXOTERETMの下に、例えば市販の形で投与できる。ビンブラスチンスルフェートは、例えば、商品名VINBLASTIN R.P.TMの下に、例えば市販の形で投与できる。ビンクリスチンスルフェートは、例えば、商品名FARMISTINTMの下に、例えば市販の形で投与できる。ディスコデルモライドは、例えば、US5,010,099に記載の通り得ることができる。
【0053】
本明細書で使用する“アルキル化剤”なる用語は、シクロホスファミド、イフォスファミドおよびメルファランを含むが、これらに限定されない。シクロホスファミドは、例えば、商品名CYCLOSTINTの下に、例えば市販の形で投与できる。イフォスファミドは、例えば、商品名HOLOXANTMの下に、例えば市販の形で投与できる。
【0054】
“ヒストンデアセチラーゼ阻害剤”なる用語は、ヒストンデアセチラーゼを阻害し、かつ抗増殖性活性を有する化合物に関する。
【0055】
“ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤”なる用語は、ファルネシルトランスフェラーゼを阻害し、かつ抗増殖性活性を有する化合物に関する。
【0056】
“COX−2阻害剤”なる用語は、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))およびルミラコキシブ(COX189)のような、シクロオキシゲナーゼタイプ2酵素(COX−2)を阻害し、かつ抗増殖性活性を有する化合物に関する。
【0057】
“MMP阻害剤”マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を阻害し、かつ抗増殖性活性を有する化合物に関する。
【0058】
“mTOR阻害剤”なる用語は、シロリムス(Rapamune(登録商標))、エベロリムス(CerticanTM)、CCI−779およびABT578のようなラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)を阻害し、かつ抗増殖性活性を有する化合物に関する。
【0059】
“抗新生物代謝拮抗剤”なる用語は、5−フルオロウラシル、テガフール、カペシタビン、クラドリビン、シタラビン、フルダラビンホスフェート、フルオロウリジン、ゲムシタビン、6−メルカプトプリン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、エダトレキサートおよびこのような化合物の塩、およびさらにZD 1694(RALTITREXEDTM)、LY231514(ALIMTATM)、LY264618(LOMOTREXOLTM)およびOGT719を含むが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書で使用する“白金化合物”なる化合物は、カルボプラチン、シスプラチンおよびオキサリプラチンを含むが、これらに限定されない。カルボプラチンは、例えば、商品名CARBOPLATTMの下に、例えば市販の形で投与できる。オキサリプラチンは、例えば、商品名ELOXATINTMの下に、例えば市販の形で投与できる。
【0061】
本明細書で使用する“タンパク質キナーゼ活性を減少させる化合物およびさらなる抗血管形成化合物”は、例えば血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、c−Src、タンパク質キナーゼC、血小板由来増殖因子(PDGF)、Bcr−Ablチロシンキナーゼ、c−kit、Flt−3およびインシュリン様増殖因子I受容体(IGF−IR)およびサイクリン依存性キナーゼ(CDK)の活性を阻害する化合物、およびタンパク質キナーゼ活性の減少以外の他の作用機構を有する抗血管形成化合物を含むが、これらに限定されない。
【0062】
VEGFの活性を減少させる化合物は、とりわけVEGF受容体、とりわけVEGF受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害する化合物、およびVEGFに結合する化合物であり、特にWO98/35958(記載の式Iの化合物)、WO00/09495、WO00/27820、WO00/59509、WO98/11223、WO00/27819、WO01/55114、WO01/58899およびEP0769947に一般的におよぎ具体的に記載の化合物、タンパク質およびモノクローナル抗体;M. Prewett et al in Cancer Research 59(1999)5209-5218により、F. Yuan et al in Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 93, pp. 14765-14770, December 1996により、Z. Zhu et al in Cancer Res. 58, 1998, 3209-3214によりおよびJ. Mordenti et al in Toxicologic Pathology, vol. 27, no. 1, pp 14-21, 1999により記載の;WO00/37502およびWO94/10202に記載のもの;M. S. O'Reilly et al, Cell 79, 1994, 315-328により記載のAngiostatinTM;およびM. S. O'Reilly et al, Cell 88, 1997, 277-285により記載のEndostatinTMであり;
【0063】
EGFの活性を減少させる化合物は、とりわけEGF受容体、とりわけEGF受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害する化合物、およびEGFに結合する化合物であり、特にWO97/02266(記載の式IVの化合物)、EP0564409、WO99/03854、EP0520722、EP0566226、EP0787722、EP0837063、WO98/10767、WO97/30034、WO97/49688、WO97/38983および、とりわけ、WO96/33980に一般的におよび具体的に記載の化合物であり;
【0064】
c−Srcの活性を減少させる化合物は、下記に定義の通りc−Srcタンパク質チロシンキナーゼ活性を阻害する化合物、および、WO97/07131およびWO97/08193に記載のようなSH2相互作用阻害剤を含むが、これらに限定されず;
【0065】
c−Srcタンパク質チロシンキナーゼ活性を阻害する化合物は、ピロロピリミジンの構造クラスに属する化合物、とりわけピロロ[2,3−d]ピリミジン、プリン、ピラゾピリミジン、とりわけピラゾ[3,4−d]ピリミジン、ピラゾピリミジン、とりわけピラゾ[3,4−d]ピリミジンおよびピリドピリミジン、とりわけピリド[2,3−d]ピリミジンを含むが、これらに限定されない。好ましくは、本用語は、WO96/10028、WO97/28161、WO97/32879およびWO97/49706に記載の化合物に関し;
【0066】
タンパク質キナーゼCの活性を減少させる化合物は、とりわけタンパク質キナーゼC阻害剤阻害剤である化合物である、EP0296110に記載のスタウロスポリン誘導体(医薬製剤はWO00/48571に記載)であり;
【0067】
タンパク質キナーゼ活性を減少させ、かつ本発明の化合物との組み合わせでも使用できるさらなる化合物は、イマチニブ(Gleevec(登録商標)/Glivec(登録商標))、ミドスタウリン、IressaTM(ZD1839)、PKI166、バタラニブ、ZD6474、GW2016、CHIR−200131、CEP−7055/CEP−5214、CP−547632およびKRN−633であり;
【0068】
タンパク質キナーゼ活性の減少以外の他の機構を有する抗血管形成化合物は、例えばサリドマイド(THALOMID)、セレコキシブ(Celebrex)、SU5416およびZD6126を含むが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書で使用する“ゴナドレリンアゴニスト”なる用語は、アバレリクス、ゴセレリンおよびゴセレリンアセテートを含むが、これらに限定されない。ゴセレリンはUS4,100,274に記載され、そして、例えば、商品名ZOLADEXTMの下に、例えば市販の形で投与できる。
【0070】
アバレリクスは、例えばUS5,843,901に記載の通り製剤できる。
【0071】
本明細書で使用する“抗アンドロゲン”なる用語は、ビカルタミド(CASODEXTM)を含むが、これに限定されず、これは、例えばUS4,636,505に記載の通り製剤できる。
【0072】
用語“ベンガミド”は、抗増殖特性を有するベンガミドおよびその誘導体に関する。
【0073】
本明細書で使用する“ビスホスホネート”なる用語は、エチドロン酸、クロドロン酸、チルドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、イバンドロン酸、リセドロン酸およびゾレドロン酸を含むが、これらに限定されない。“エチドロン酸”は、例えば、商品名DIDRONELTMの下に、例えば市販の形で投与できる。“クロドロン酸”は、例えば、商品名BONEFOSTMの下に、例えば市販の形で投与できる。“チルドロン酸”は、例えば、商品名SKELIDTMの下に、例えば市販の形で投与できる。“パミドロン酸”は、例えば、商品名AREDIATMの下に、例えば市販の形で投与できる。“アレンドロン酸”は、例えば、商品名FOSAMAXTMの下に、例えば市販の形で投与できる。“イバンドロン酸”は、例えば、商品名BONDRANATTMの下に、例えば市販の形で投与できる。“リセドロン酸”は、例えば、商品名ACTONELTMの下に、例えば市販の形で投与できる。“ゾレドロン酸”は、例えば、商品名ZOMETATMの下に、例えば市販の形で投与できる。
【0074】
本明細書で使用する“抗増殖性抗体“なる用語は、トラスツマブ(HerceptinTM)、トラスツマブ−DM1、エルロチニブ(TarcevaTM)、ベバシズマブ(AvastinTM)、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、PRO64553(抗CD40)および2C4抗体を含むが、これらに限定されない。
【0075】
急性骨髄性白血病(AML)の処置のために、式Iの化合物は標準白血病治療、とりわけAMLの処置のに使用される治療と組み合わせて使用できる。特に、式Iの化合物は、例えばファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはAMLの処置に有用な他の薬剤、例えばダウノルビシン、アドリアマイシン、Ara−C、VP−16、テニポシド、ミトキサントロン、イダルビシン、カルボプラチンおよびミドスタウリンと組み合わせて投与できる。
【0076】
コード番号、一般名または商品名により同定した活性剤の構造は、標準概論“The Merck Index”の現行版またはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)から取り得る。
【0077】
式Iの化合物と組み合わせて使用できる上記の化合物は、上記で引用の文献のような文献に記載の通りに製造および投与できる。
【0078】
式Iの化合物を他の免疫抑制剤/免疫調節剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗感染剤、抗ウイルス剤または化学療法剤化合物と組み合わせて投与するとき、併用投与する免疫抑制剤、免疫調節剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗感染剤、抗ウイルス剤または化学療法剤化合物の量は、もちろん、用いる併用剤のタイプ、例えば、それがステロイドかカルシニューリン阻害剤か、用いる具体的薬剤、処置すべき状態などに依存して変化するであろう。上記に従い、本発明は、さらにまた下記態様を提供する:
5. 治療的有効非毒性量の式Iの化合物および少なくとの1個の第二医薬物質、例えば、上記の通りの、例えば免疫抑制剤、免疫調節剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗悪性腫瘍剤、抗感染剤、抗ウイルス剤、抗生物質または化学療法剤の、例えば、同時または連続的併用投与を含む、上記の方法。
【0079】
6. a)CXCR4アンタゴニスト、例えば遊離形または薬学的に許容される塩形の本明細書に記載の式Iの化合物である、第一剤、およびb)少なくとも1個の併用剤、例えば免疫抑制剤、免疫調節剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗感染剤または化学療法剤を含む、医薬組み合わせ剤、例えばキット。該キットはその投与のための指示書を含み得る。
【0080】
本明細書で使用される“併用投与”または“組み合わせ投与”などの用語は、選択した治療剤を単独の患者に投与することを含むことを意味し、薬剤を必ずしも同じ投与経路でまたは同時に投与するものではない処置レジメンを含むことを意図する。
【0081】
本明細書で使用する“医薬組み合わせ剤”なる用語は、1個を超える活性成分の混合または組み合わせに由来する製品を意味し、活性成分の固定されたおよび固定されていない組み合わせの両方を含む。“固定された組み合わせ”なる用語は、活性成分、例えば式Iの化合物および併用剤、例えばウイルス剤を、両方とも患者に、一つの物または投与形態の形で同時に投与することを意味する。“固定されていない組み合わせ”なる用語は、活性成分、例えば式Iの化合物および併用剤、例えばウイルス剤を、患者に別々の物として、同時に、一緒にまたは具体的時間制限なしに連続的に投与することを意味し、ここで、このような投与は、患者体内で2種の化合物の治療的有効レベルを提供する。後者はまたカクテル療法、例えば、3種以上の活性成分の投与にも適用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

〔式中、
は式(a)、(b)または(c)
【化2】

の残基であり、
は−(CR2223)1−3−または−C(O)−であり;
およびRの各々は独立してS;O;またはNR24であり;
およびRの各々は独立して、所望によりR25置換されていてよいC−C12シクロアルキル、C−C12アルキルまたは飽和C8−12多環式残基;または所望によりR26および/またはR27置換されていてよいアリール、アリールC1−4アルキルまたはヘテロアリールであり;ここで、Rおよび/またはRの4個までの炭素原子は、所望によりS、OまたはNR24で置換されていてよく;
はH;C−Cアルキル;C−Cシクロアルキル;または所望によりR26および/またはR27置換されていてよいアリール、アリールC1−4アルキルまたはヘテロアリールであり;
はCR28またはNであり;
は直接結合;−(CR2223)1−2−;またはNR24であり;
10−23およびR28の各々は独立してH;F;Cl;Br;C−Cアルキル;C−Cアルコキシアルキル;C−Cハロゲノアルキル;C−Cシクロアルキル;所望によりR26および/またはR27置換されていてよいアリールまたはヘテロアリール;CONR2930;COOR29;CN;NO;またはOR31であるか;または
同じ炭素原子に結合しているR10−19の2個が、それらが結合している炭素原子と一体となって、所望によりN、OおよびSから独立して選択される2個までのヘテロ原子を含んでいてよい3−7員非芳香環を形成するか;または
17およびR18は、それらが結合しているC原子と一体となって、所望によりN、OおよびSから独立して選択される2個までのヘテロ原子を含んでいてよい4−7員非芳香環を形成するか;または
20およびR21は、それらが結合している炭素原子と一体となって、所望によりR26および/またはR27置換されていてよいアリールまたはヘテロアリールを形成し;
24、R29およびR30の各々は独立してH;C−Cアルキル;C−Cアルコキシアルキル;C−Cハロゲノアルキル;C−Cシクロアルキル;または所望によりR26および/またはR27置換されていてよいアリール、アリールC1−4アルキルまたはヘテロアリールであり;
25は、各々独立して上記R10−23で定義の意味の1個を有する1個から4個の置換基であり;
26は独立してC−Cアルキル;C−Cヒドロキシアルキル;C−Cアルコキシアルキル;C−Cハロゲノアルキル;C−Cシクロアルキル;C−Cアルケニル;C−Cシクロアルケニル;C−Cアルキニル;アリール;ヘテロアリール;ヘテロアリールN−オキシド;F;Cl;Br;I;OH;OR;CONH;CONHR;CONR;OC(O)R;OC(O)OR;OC(O)NHR;OC(O)NR;OSO;COOH;COOR;CF;CHF;CHF;CN;NO;NH;NHR;NR;NHC(O)R;NRC(O)R;NHC(O)NHR;NHC(O)NH;NRC(O)NHR;NRC(O)NR;NHC(O)OR;NRC(O)OR;NHSO;N(SO);NRSO;SR;S(O)R;SO;Si(CH)およびB(OC(CH))から選択される1個から4個の置換基であり;
27は、縮環した所望によりN、OおよびSから独立して選択される2個までのヘテロ原子を含んでいてよい4−7員非芳香環を形成する、隣接した2個の置換基であり;
31はC−Cアルキル;C−Cシクロアルキル;所望によりR26および/またはR27置換されていてよいアリール、アリールC1−4アルキルまたはヘテロアリール;またはCFである。〕
の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
1,3−ジシクロヘキシル−2−(5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾル−3−イルメチル)−イソチオウレア、1−シクロヘキシル−3−シクロペンチル−2−(5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾル−3−イルメチル)−イソチオウレア、1−シクロヘプチル−3−シクロヘキシル−2−(5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾル−3−イルメチル)−イソチオウレア、1,3−ジシクロヘプチル−2−(5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾル−3−イルメチル)−イソチオウレア、1−シクロヘキシル−3−シクロオクチル−2−(5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾル−3−イルメチル)−イソチオウレア、1,3−ジシクロヘキシル−2−(6,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾル−3−イルメチル)−イソチオウレア、1,3−ジシクロオクチル−2−(5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾル−3−イルメチル)−イソチオウレアおよび1,3−ジシクロヘプチル−2−(6,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−イミダゾ[2,1−b]チアゾル−3−イルメチル)−イソチオウレアから選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
遊離形または薬学的に許容される塩形の請求項1記載の化合物を、薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む、医薬組成物。
【請求項4】
ケモカイン受容体間の相互作用が介在する障害または疾患、急性または慢性移植片拒絶反応、炎症性疾患、自己免疫性疾患または増殖性疾患を予防または処置するための医薬の製造のための、遊離形または薬学的に許容される塩形の請求項1記載の化合物の使用。
【請求項5】
腫瘍侵襲、腫瘍増殖に関連する症状、腫瘍の転移性拡散、腫瘍関連血管形成または微小転移巣の増殖を予防または阻止するための医薬の製造のための、遊離形または薬学的に許容される塩形の請求項1記載の化合物の使用。
【請求項6】
感染症、特にウイルス感染またはAIDSの進行を予防するまたは抑制するための医薬の製造のための、遊離形または薬学的に許容される塩形の請求項1または2記載の化合物の使用。
【請求項7】
式Iの化合物の製造法であって、式II
【化3】

の化合物と式III
【化4】

(式中、RからRは請求項1で定義の通りであり、そしてR32は脱離基である)
の化合物を反応させ、そして所望により遊離形で得た合成化合物を塩形に変換するか、またはその逆を行うことを含む、方法。
【請求項8】
遊離形または薬学的に許容される塩形の請求項1または2記載の化合物ならびに免疫抑制剤、免疫調節剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗悪性腫瘍剤、化学療法剤、抗感染剤、抗ウイルス剤、および抗生物質、および急性骨髄性白血病の処置剤から選択されるさらなる薬剤を含む、医薬的み合わせ剤。
【請求項9】
抗レトロウイルス剤、特に抗HIV剤を含む、請求項8記載の組み合わせ剤。
【請求項10】
感染症、特にウイルス感染またはAIDSの進行を予防または抑制するための医薬の製造のための医薬の製造のための、請求項9記載の組み合わせ剤の使用。
【請求項11】
下記状態:
i)ケモカイン受容体間の相互作用が介在する障害または疾患、
ii)急性または慢性移植片拒絶反応、
iii)炎症性または自己免疫性疾患、
iv)増殖性疾患、
v)腫瘍侵襲または腫瘍増殖と関連する症状、
vi)腫瘍の転移性拡散、腫瘍関連血管形成および微小転移巣の増殖、
vii)感染症、特にウイルス感染、特にHIVウイルスの結合または侵入、またはAIDSの進行、
のいずれかの処置または予防法であって、対象に治療的有効量の請求項1または2記載の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、または請求項3記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。

【公表番号】特表2007−523941(P2007−523941A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500168(P2007−500168)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002014
【国際公開番号】WO2005/085219
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】