説明

イソファゴミンの酒石酸塩および使用方法

【課題】ゴーシェ病の治療に使用できる新規の薬剤を提供する。
【解決手段】新規のイソファゴミンの酒石酸塩(酒石酸イソファゴミン)はゴーシェ病の治療に使用できる。さらに結晶形態の酒石酸イソファゴミン、該塩を調製するための方法、該塩を含む医薬組成物、およびゴーシェ病の治療方法をも提供する。ゴーシェ病の治療方法として酒石酸イソファゴミンに加え機能的グルコセレプロシダーゼ酵素を投与し、グルコセレプロシダーゼの活性を高め、安定化し、治療効果を増大する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]本願は、いずれも全面的に参照により本明細書に組み込まれている、2006年5月24日に出願された米国仮特許出願第60/808020号、および2007年2月20日に出願された第60/890719号の優先権を主張するものである。
【発明の背景】
【0002】
[0002]ゴーシェ病は、病気にかかった個体の細胞、特に単球およびマクロファージにおけるグリコスフィンゴリピド(GSL)の蓄積に伴うリソソーム蓄積疾病である。このGSLの異常蓄積は、GSLグルコシルセラミド(GluCer)を分解するリソソーム加水分解酵素であるリソソーム酵素酸β−グルコシダーゼ(グルコセレブロシダーゼ;GCase)をコードする遺伝子における遺伝子欠損(突然変異)に起因する。グルコセレブロシダーゼ遺伝子(Gba)突然変異の大多数は、GCaseタンパク質を小胞体(ER)中で誤って折り畳ませる。誤って折り畳まれたGCaseは、ER品質管理システムによって認識され、続いて、加工されてリソソームに送られる代わりに、分解される。
【0003】
[0003]ゴーシェ病は、全人種的であり、50000〜100000の出産に約1の全疾病頻度を有する。特定の人種は、より流行率が高い。アシュケナジユダヤ人種では、例えば、約1から15人が、Gba突然変異の保有者である。国家ゴーシェ財団によれば、約2500人のアメリカ人が、ゴーシェ病にかかっている。
【0004】
[0004]ゴーシェ病は、常染色体劣性疾患であり、最も一般的なリソソーム蓄積病である。該疾病は、神経の関与および疾病重度に応じて、3つの臨床型に分類された。1型は、最も一般的であり、神経の関与がないことによって特徴づけられる。患者は、広範な重度を示す。患者によっては、一生を通じて無症候でありうる。大抵の1型患者は、脾臓および肝臓の肥大、骨格異常および骨病変、および継続的炎症反応を示す。1型ゴーシェ病では、肝臓グルコセレブロシド値は、通常値の23から389倍に増加する。
【0005】
[0005]2型ゴーシェ病は、最も稀で、最も重症形態である。それは、急性神経病の早期発症に伴う。神経症が異性ゴーシェ病の特徴は、水平視の異常である。その疾病にかかっている患者は、進行性脳傷害、ならびに硬直およびパーキンソン様行動(パーキンソン症)等のピリミジン過剰症状を生じる。大抵の2型ゴーシェ病患者は、小児期の早い時期に、神経機能の低下による無呼吸または誤嚥で死亡する。
【0006】
[0006]3型ゴーシェ病も神経が関与するが、2型より度合いが低い。これらの患者も1型に特徴的な肝脾腫および骨格欠陥、ならびに行動の協調不良(失調)、発作、眼筋の麻痺、てんかんおよび認知症を含む中枢神経系症状を有する。3型ゴーシェ病の患者は、成人まで生存しうるが、寿命が短いといえる。3型の3つの区分、すなわち顕著な肝脾腫および骨髄疾患に対応づけられる3a型、限定的な全身性症状に対応づけられる3b型、および肝脾腫、角膜混濁、進行性失調および認知症、ならびに心臓弁および大動脈根石灰化に対応づけられる3c型が報告された。
【0007】
[0007]ゴーシェ病を治療するための手法としては、酵素置換療法(ERT)、骨髄移植(BMT)、基質還元療法(SRT)、遺伝子療法および薬理学的シャペロン治療が挙げられる。イソファゴミンは、組換えヒト酸ベータ−グルコシダーゼ(GCase)の強力な阻害剤である。イソファゴミン等の酵素阻害剤を使用して、リソソーム蓄積疾患における突然変異酵素活性を強化するための薬理学的シャペロン法は、それぞれが全面的に参照により本明細書に組み込まれている、共有された米国特許第6,916,829号、第6,599,919号、第6,589,964号、第6,583,158号および第7,141,582号に開示されている。例えば、GCaseの阻害剤を線維芽細胞培地に添加すると、GCaseの輸送およびリソソーム活性の向上がもたらされることが示されており、当該阻害剤は、ゴーシェ病の治療において療法的関心の対象になりうることが示唆されている。
【0008】
[0008]Gba遺伝子における突然変異とパーキンソン病との間に関連があることが最近発見された。1つの調査において、稀な早期発症治療抵抗性パーキンソン症の17人の患者のグループが、1型、すなわち非神経細胞疾患に典型的に対応づけられる突然変異である、N370Sに対する同型接合性および異型接合性個体を含む、Gbaミスセンス突然変異を含む少なくとも1つの対立遺伝子を有することが見いだされた(Tayebiら、Mol.Genct.Metab.2003;79;104−109)。他の調査において、特発性パーキンソン病の99人のアシュケナジユダヤ人の集団を6つのGba突然変異(N370S、L444P、84GG、V394LおよびR496H)について評価した。31人のパーキンソン病患者が、1つまたは2つの突然変異Gba対立遺伝子を有し、23人が、N370Sに対して異型接合性であり、3人が、N370Sに対して同型接合性であり、4人が、84GGに対して異型接合性であり、1人が、R496Hに対して異型接合性であった(Aharon−Peretzら、New Eng.J.Med.2004;351:1972−77)。突然変異N370S対立遺伝子の頻度は、1573人の正常な被験者の該頻度の5倍であり、84GGの頻度は、正常な被験者の該頻度の21倍であった。パーキンソン病の患者の中で、Gba突然変異を保有する患者は、保有者でない患者より若かった。この調査は、Gba突然変異に対する異型接合性は、アシュケナジユダヤ人をパーキンソン病にかかりやすくしうることを示唆している。イソファゴミンは、動物の血液脳関門を通過し、突然変異型および野生型のgCase両方の活性を高めることが示されているため、GCaseにおいて異型接合性突然変異を有するパーキンソン病患者、または他の要因によりパーキンソン病を生じる危険性があるが、野生型GCaseのレベル向上の恩恵を受けることができる患者を治療するのに、それを使用することが可能である。
【0009】
[0009]イソファゴミンの化合物は、強力で選択的な組換えヒト酸β−グルコシダーゼ(GCase)阻害剤であるが、医薬品に使用することには課題がある。例えば、イソファゴミン(イソファゴミン−HCl)の塩酸塩が、米国特許第5,844,102号に開示されている。しかし、イソファゴミン−HCl、ならびにイソファゴミン遊離塩基は、大規模で容易に精製されず、工業規模の製造プロセスおよび医薬製剤に使用するには固体状態特性が劣っている。
【発明の概要】
【0010】
[0010]一実施形態において、本発明は、以下の化学構造で表されるイソファゴミンの酒石酸塩または酒石酸イソファゴミンの化合物を提供する
【化1】


(式中、nは1または2である)。
本発明は、純度が高く、結晶形態の酒石酸イソファゴミンをも提供する。
【0011】
[0011]他の実施形態において、本発明は、酒石酸イソファゴミンを好ましくは少なくとも50%、好ましくは90%、さらにより好ましくは99%含有する組成物を提供する。本発明は、少なくとも90%以上の酒石酸イソファゴミンを含有する組成物であって、該酒石酸イソファゴミンの90%が1200μmの粒径を有する組成物を提供する。
【0012】
[0012]他の実施形態において、本発明は、酒石酸イソファゴミン、および1つまたは複数の薬学的に許容可能な賦形剤を含有する医薬組成物を提供する。
【0013】
[0013]他の実施形態において、本発明は、酒石酸イソファゴミンを調製するための方法を提供する。高度に精製された酒石酸イソファゴミンを調製するための方法も提供される。
【0014】
[0014]さらに他の実施形態において、本発明は、薬学的に有効な量の酒石酸イソファゴミンまたはその医薬組成物を投与することにより哺乳類におけるGCase活性を高めることによって哺乳類におけるゴーシェ病を治療する方法を提供する。
【0015】
[0015]他の実施形態において、本発明は、イソファゴミンのL−(+)−酒石酸塩を提供する。本発明は、酒石酸とイソファゴミンの複合体をも提供する。
【0016】
[0016]他の実施形態において、本発明は、結晶形態の酒石酸イソファゴミンを提供する。好ましくは、結晶形態は、(2シータ)9.29±0.009、14.17±0.009、16.34±0.009、18.07±0.009、18.72±0.009、19.44±0.009、20.56±0.009、22.13±0.009、23.01±0.009、24.54±0.009および27.12±0.009のうちの5つ以上のピークを含むX線粉末回折パターンを有する。より好ましくは、X線パターンは、(2シータ)9.29、14.17、16.34、18.07、18.72、19.44、20.56、22.13、23.01、24.54および27.12のピークを含む。さらにより好ましくは、結晶形態は、図5に示されるパターンと実質的に同じであるX線粉末回折パターンを有する。
【詳細な説明】
【0017】
[0029]本明細書に用いられている用語は、本発明の文脈の範囲内、および各用語が用いられる文脈内で、一般に当該技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。本発明の組成物および方法、ならびにそれらをどのように製造および使用するかを説明する上で、施術者にさらなる指針を示すために、以下または本明細書の他の個所で一定の用語について論述する。
【0018】
[0030]「ゴーシェ病」という用語は、1型、2型および3型(3a、3bおよび3cを含む)、ならびに表現型発現に基づくそれらの中間体およびサブグループを含む。
【0019】
[0031]「有効量」および「有効な量」という用語は、治療応答をもたらすのに十分な量を意味する。治療応答は、使用者(臨床医)が、先述の症状および代理臨床マーカの改善を含む治療に対する有効な応答として認識する任意の応答でありうる。したがって、治療応答は、一般には、ゴーシェ病の1つまたは複数の症状の改善、例えば、2および3型ゴーシェ病における進行性神経変性の改善である。「治療有効量」は、使用される配合物、ゴーシェ病の種類およびその重度、ならびに治療される哺乳類の年齢、体重、身体状態および応答性に応じて異なる。治療応答は、パーキンソン病、または治療に酒石酸イソファゴミンが意図されるレーヴィ体認知症等の他のα−シヌクレイノパシーの1つまたは複数の症状の改善でもある。
【0020】
[0032]「薬学的に許容可能な」という語句は、生理的に許容でき、人に投与される場合に許容不可能なレベルで厄介な反応を典型的にはもたらさない分子体および組成物を意味する。好ましくは、本明細書に用いられるように、「薬学的に許容可能な」という用語は、連邦または州政府の管理機関によって承認されている、あるいは米国薬局法、または動物、特にヒトにおける使用について広く認識された他の薬局法に列記されていることを意味する。
【0021】
[0033]本発明の医薬組成物に適用される「担体」という用語は、酒石酸イソファゴミンがそれと共に投与される希釈剤、賦形剤または媒体を意味する。担体を、意図する投与経路および標準的な製薬慣行に関して選択することが可能である。医薬組成物は、担体として、または担体に加えて、任意の好適な結合剤、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤、可溶化剤を含むことができる。当該医薬担体は、水、食塩溶液、ブドウ糖水溶液、グリセロール水溶液、および石油、動物油、植物油、または落花生油、大豆油、鉱油およびゴマ油等の合成起源の油を含む油等の無菌液でありうる。好適な医薬担体は、E.W.Martin、第18版による「レミントンの薬学」に記載されている。本発明の1つの特に好ましい実施形態において、担体は、即時放出、例えば60分間以内のような短時間で活性成分の多くまたはすべてを放出することに好適であり、薬物の迅速な吸収を可能にする。
【0022】
[0034]「薬学的に許容可能な担体」とは、全般的に安全であり、無毒であり、生物学的にもそれ以外にも有害でなく、医薬用途に許容可能である賦形剤を含む医薬組成物を調製するのに有用である担体を意味する。本願に用いられている「薬学的に許容可能な担体」とは、1つおよび2つ以上の当該担体を含む。
【0023】
[0035]「ヒドロキシル保護基」という用語は、メトキシメチル、4−メトキシベンジル、ベンジル、ジメチルイソプロピルシリル、トリメチルシリルおよびアルキルカルボニル等の(ただし、それらに限定されない)、望ましくない反応を回避するためのヒドロキシルに対する任意の一般的な保護基を意味する。
【0024】
[0036]「個体」とは、哺乳類、好ましくはヒト、家畜、齧歯類または霊長類、最も好ましくはヒトを意味する。
【0025】
[0037]「治療を必要とする個体」は、ゴーシェ病、またはパーキンソン病等のα−シノクリエノパシーを生じた、または生じそうな個体である。一実施形態において、個体は、Gba遺伝子における遺伝的突然変異によるゴーシェ病を生じていると診断された、または生じる危険性が高いと特定されたアシュケナジユダヤ人集団の一員である。しかし、「個体」という用語は、ゴーシェ病を有する、または遺伝的に生じる危険性がある、あるいはパーキンソン病等のα−シヌクレイノパシーを生じる危険性がある世界の任意の個体を包括する。
【0026】
[0038]本明細書に用いられるように、GCase活性を「高める」という用語は、ERにおける突然変異GCaseタンパク質の配座を、それが、i)ERから出ることを可能にする構造に折り畳み、結果としてERにおけるGCaseのレベルを高める構造に折り畳められ、および/またはii)細胞内のその原位置に達し、および/またはiii)その脂質基質であるセレブロシドに対して異化活性を示すように安定化することを意味する。この用語は、また、外的投与されたGCaseタンパク質の活性を高める、または延ばす、すなわち安定性を高め、GCaseの体内半減期を延ばすことによって、活性を延ばすことを意味する。
【0027】
[0039]本明細書に用いられている「実質的に純粋の」という語句は、イソファゴミン塩が、他の化合物をせいぜい約5%しか含有していないことを意味する。好ましくは、「実質的に純粋の」イソファゴミン塩は、約2%以下の任意の他の化合物を含有する。さらにより好ましくは、「実質的に純粋の」イソファゴミン塩は、約1%以下の任意の他の化合物を含有する。
【0028】
[0040]「約」および「およそ」という用語は、一般には、測定の性質または精度を想定して、測定された量に対する誤差の許容可能な程度を意味する。誤差の典型的な例示的程度は、所定の値または値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。あるいは、特に生物系において、「約」および「およそ」という用語は、所定の値の10倍以内、好ましくは10または5倍以内、より好ましくは2倍以内の値を意味しうる。本明細書に示されている数量は、特に指定がなければおよそであり、「約」または「およそ」という用語を、それが明記されていないときでも想定することが可能である。
【0029】
[0041]本明細書に用いられているように、単数形「1つ(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈がそうでないことを明確に示していなければ、複数を含む。したがって、例えば、「1つの(a)」担体という言及は、1つまたは複数の担体を含む。
【0030】
[0042]本発明によれば、イソファゴミンの特定の形態、すなわち酒石酸イソファゴミンが提供される。酒石酸イソファゴミンは、先述したイソファゴミンと比較して、多くの改善された特徴を有する。例えば、酒石酸イソファゴミンは、特に水および/またはエタノール等の溶媒中でより容易に精製可能であり、イソファゴミンの他の知られている塩形態より安定性が高い。酒石酸イソファゴミンは、工業規模の製造、例えば1Kgを上回る製品の製造に特に好適である。
【0031】
[0043]イソファゴミンは、以下の化学構造を有する(3R,4R,5R)−5−(ヒドロキシメチル)−3,4−ピペリジネジオールである。
【化2】

【0032】
[0044]それは、C13NOの分子式および147.17g/molの分子量を有する。この化合物の合成は、Sierksらの米国特許第5,844,102号およびLundgrenらの米国特許第5,863,903号に記載されている。米国特許第5,844,102号には、そこに記載されている化合物を、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、イソチオン酸、ラクトビオン酸およびコハク酸等の有機カルボン酸塩の塩を含む薬学的に許容可能な塩と組み合わせることが可能であることが開示されている。しかし、この特許(および出願人が認識している後の文献)において例示されている唯一の塩は、塩酸塩である。本明細書に記載されているように、塩酸塩は、工業生産、または剤形の設計に適さない。
【0033】
[0045]本明細書に用いられている酒石酸イソファゴミンという用語は、イソファゴミンの酒石酸塩を意味し、以下の式で表すことが可能である
【化3】


(式中、nは、1または2である)。
酒石酸は、異なる立体異性体形態、すなわちD−またはL−酒石酸、またはDL−またはメソ酒石酸を有する。本発明、ならびに実施例は、好ましい実施形態としてのL−(+)−酒石酸およびそのイソファゴミン塩について記載されている。しかし、酒石酸という用語は、DおよびL異性体、ならびにDL混合物およびメソ−酒石酸を包括するように意図されているため、酒石酸イソファゴミンという用語は、L−酒石酸モノイソファゴミンまたはL−酒石酸ジイソファゴミン、D−酒石酸モノイソファゴミンまたはD−酒石酸ジイソファゴミン、DL−酒石酸モノイソファゴミンまたはDL−酒石酸ジイソファゴミンおよび/またはメソ−酒石酸モノイソファゴミンまたはメソ−酒石酸ジイソファゴミンを含むように意図されている。L−酒石酸は、鏡像異性体純度が97%以上の(2R,3R)−(+)−酒石酸であり、D−酒石酸は、鏡像異性体純度が97%以上の(2S,3S)−(−)−酒石酸であり、DL−酒石酸は、鏡像異性体純度が97%未満のD酒石酸とL−酒石酸の混合物である。
【0034】
[0046]酒石酸イソファゴミンを、アルコール、好ましくはエタノールに溶解させたイソファゴミン遊離塩基から調製し、アミノ酸を含む置換カルボン酸、ジカルボン酸、またはジアシル酒石酸を含む酒石酸によりアルコール、好ましくはエタノール中で、室温で攪拌しながら処理することができる。酸塩が、エタノール溶液から析出する。粗酒石酸イソファゴミン塩を濾過によって回収する。イソファゴミン溶液を予め濾過することで、酸を添加する前にあらゆる粒子不純物を除去することができる。酸を添加した後に、塩を完全に析出させるための、得られた懸濁物を冷却することができる。
【0035】
[0047]他の実施形態において、置換カルボン酸または酒石酸を溶液に添加することによって、本発明のイソファゴミン酸塩を調製することができ、溶液中でイソファゴミンは、イソファゴミンを単離することなく原位置で調製される。
【0036】
[0048]あるいは、本発明のイソファゴミン酸塩を塩酸イソファゴミン等のイソファゴミンの鉱酸塩から調製することができる。イソファゴミンを生成し、続いて遊離塩基を置換カルボン酸で処理することによって、変換を遂行することが可能である。例えば、鉱塩基、アンモニアガスまたは水酸化アンモニウム水溶液等の塩基性の供給源を塩酸塩で処理することによって、またはそれを塩基性樹脂支持固体または塩基性樹脂のカラムに接触させることによってイソファゴミン遊離塩基を形成することが可能である。塩基性樹脂を使用するときは、樹脂カラムを水、水酸化アンモニウム水溶液、または水酸化アンモニウムのメタノール、エタノールおよびIPA等のアルコール溶液で溶出させて、本発明のイソファゴミン酸塩に変換できるイソファゴミン遊離塩基を与えることが可能である。
【0037】
[0049]酒石酸は二酸であるため、イソファゴミン遊離塩基に対して酒石酸が0.5モル当量から1モル当量の酸対塩基比の範囲で、酒石酸塩への変換を行うことが可能である。酒石酸は、ラセミ体(DまたはL形態)、またはL−(+)体、D−(−)体およびメソ体の3つの立体異性体形態の1つでありうる。酒石酸塩を製造するための好ましい条件は、遊離塩基を生成するための水酸化アンモニウム溶液、シリカゲルカラム上で遊離塩基を溶出するための9:1エタノール/水酸化アンモニウム、溶媒および余剰水酸化アンモニウムの蒸発、水/エタノールにおける酒石酸塩の形成、および水/エタノールからの結晶化を用いる。
【0038】
[0050]イソファゴミンと酒石酸を化学量論比の範囲で組み合わせることが可能である。酒石酸は二酸であるため、IFG/酒石酸のモル比を2:1から1:1にすると、安定した塩が与えられる(実施例3参照)。好ましい比は、1:1である。該化学量論比の範囲は、酒石酸のすべての異性体に適用可能である。
【0039】
[0051]大抵の広く用いられている精製方法、好ましくは再結晶を用いてイソファゴミン酸塩を精製することができる。例えば、粗酒石酸イソファゴミンをプロトン性または非プロトン性共溶媒、好ましくは例えばメタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノール等のアルコールを利用して、または利用せずに水中で再結晶化することができる。再結晶を小規模のみならず工業規模、例えば準キログラム量で効果的に実施することができる。表1には、本発明に従って調製され、精製されたいくつかの実施例の純度および収率がまとめられている。
【表1】

【0040】
[0052]1つの好ましい実施形態において、粗酒石酸イソファゴミンを水に溶解させ、得られた溶液に等量のエタノールを添加して、化合物の析出物を得る。次いで、さらなるエタノール(1容量)を添加し、攪拌する。この手順をさらなる2倍の量のエタノールについて繰り返して、およそ4:1のエタノール/水比を与える。酒石酸イソファゴミンのほとんどは、第1の容量のエタノールを添加後に結晶化することになるが、収率を最大にするために、さらなる一定分量を使用することが可能である。再結晶後に、固体を濾過し、洗浄する。すべての精製を室温で行うことが可能である。酒石酸イソファゴミンを約99%以上の純度までこの方法で精製することが可能である。したがって、本発明の一実施形態による酒石酸イソファゴミンは、95%以上、好ましくは98%以上、さらにより好ましくは99%以上の純度を有する。
【0041】
[0053]他の溶媒、またはエタノール/水1:1、アセトン/水1:1、エタノール/水2:1、アセトン/水2:1またはエタノール/水3:1等の溶媒系を使用して、酒石酸イソファゴミンを生成することもできる。活性炭を使用して、あらゆる着色不純物を除去することもできる。これらの溶媒の各々は、約95%の純度を与えることが可能であり、ほとんどの溶媒が、98%を上回る純度を与えた。
【0042】
[0054]酒石酸イソファゴミンの精製が容易であることを、凍結乾燥を必要とする水溶液におけるイソファゴミンのHCl塩の精製と比較することによって実証することが可能である。イソファゴミン−HClを濾過する試みは、黄色を有する物質、および接着剤の均一性をもたらした。一方、本発明による酒石酸イソファゴミンは、製薬プロセスに好適である良好な粉末特性、例えば結晶サイズ、密度および流動性を有する。表2および3には、本発明に従って調製された酒石酸イソファゴミン試料の粉末特性がまとめられている。本発明に従って調製された酒石酸イソファゴミンは、微粉末ではなく、嵩密度が約0.44g/mlで、カー(Carr)指数15%である中程度の粒径の粒子が多く占めるため、高い流動性、および製薬プロセスに好適な容易な取扱特性を有する。上記再結晶プロセスによって得られた酒石酸イソファゴミンも、0.7と1.5の間のベースライン間隔を有して、バッチ毎の粒径分布の均一性を示すため、配合プロセスにおける塩の正確な測定に有害でありうる大きい粒子が回避される。大抵のバッチは、粒径が約1200μm以下の酒石酸イソファゴミンを、98%を上回る割合、または最小限90%の割合で与えた。
【表2】


【表3】

【0043】
[0055]また、酒石酸イソファゴミンは、吸湿性ではなく、75%RHに8日間曝した後のその水分吸収量は、約0.08%にすぎなかった。本発明に従って調製された6つの異なる酒石酸イソファゴミン試料の水分吸収試験結果が、表4および5にまとめられている。
【表4】


【表5】

【0044】
[0056]したがって、本発明の酒石酸イソファゴミンを調製するための方法は、医薬組成物のための大量の酒石酸イソファゴミンを調製するのに好適である。本発明に従って調製された大量の酒石酸イソファゴミンを、調製の目的に応じて約80%の純度を有するわずかに粗い形態として調製することが可能である。しかし、それを90%以上、好ましくは少なくとも99%の純度で、90%の酒石酸イソファゴミンに対する粒径を約1200μm以下で調製することが可能である。
【0045】
[0057]HPLCを用いて、本発明のイソファゴミン酸塩の効力および有機不純物の存在の両方を測定することができる。低波長UV検出は、基準に対する効力計算に好適である。当業者は、試料の濃度、カラム、溶媒の種類等に応じて、HPLC分析に対する適正な条件を判断することができる。しかしながら、酒石酸イソファゴミンに対する例として以下の条件を提示する。移動相は、0.5mL/分の流速の定組成型の10mM炭酸アンモニウム(NHHCO)/アセトニトリル(CAN)30/70であってもよい。HPLCカラムは、50℃で操作されるAlltech Pervail Carbohydrateカラム(4.6×150mm、粒径5μm)であってもよい。検出を15分間の動作時間で210nmに設定することができ、薬物物質の試料を10μL注射容量で移動相に溶解させることができる。
【0046】
[0058]帯電噴霧剤検出器(CAD)を不純物の検出に使用できる。蒸発光散乱検出(ELSD)およびUV検出を用いて試料を分析することもできる。CAD検出器は、Nキャリヤガスの存在下で分析物の脱溶媒を行う蒸発技術を用いる。コロナの火花はNガスに電荷を与え、電荷は分析物に送られる。分析物は、それらの電荷を電位計に伝達すると検出され、電流として測定される。CAD検出器を使用するときは、Primesep100(4.6×150μm、粒径5μm)HPLCカラムを25℃で操作しながら、移動相を1.0mL/分の流速で定組成型の5mM酢酸アンモニウム/CAN50/50に設定することができる。薬物物質の試料を移動相で調製し、10μL注射容量を用いることができる。この方法についての操作時間は、約70分間である。不純物は、試料が、1%の公称試料濃度で基準に対して定量される高/低連続注入を用いて測定される。
【0047】
[0059]本発明のイソファゴミン酸塩の識別を、FT−IRを用いて実施し、H NMRおよび13C NMRによってさらに確認することが可能である。図2〜5は、本発明の一実施形態に従って調製された酒石酸イソファゴミンのH、13C NMRおよびIRスペクトルを示す図である。残留溶媒をヘッドスペースガスクロマトグラフィー(GC)によって監視することができる。水、燃焼残渣および重金属は、標準的な包括的技術によって監視される。最終的な水素化工程で使用される触媒であるパラジウムは、ICP分光法によって監視される。
【0048】
[0060]図6は、本発明の一実施形態に従って調製された酒石酸イソファゴミンのX線粉末回折パターンを示す図である。該パターンは、Bruker D8高度回折計を使用して得られ、分析は、以下の条件を用いて、2−45℃2−シータから実施された。
【表6】

【0049】
[0061]X線粉末回折図は、特定の固体形態の化合物、すなわち多構造形態を識別する上で有用であるが、その2−シータ値ならびに強度およびd−間隔は、試料調製またはパターンの取得時に生じる偏差のために変動しうる。また、2−シータおよびd−間隔の割当において、ある程度の誤差の範囲が起こりうる。2−シータ値は、±0.009の偏差を有する。したがって、特定の結晶形態を識別するためにX線粉末回折パターンを比較する好ましい方法は、未知の形態のX線粉末回折パターンを既知の形態のX線回折パターンに重ねて、それらの特徴ピークを比較することである。しかしながら、図6の2−シータ、d−間隔、強度および%強度値が表6にまとめられている。組成物における本発明の結晶形態の存在を判断する際に、表6に識別されているピークのうちの5つ以上の最も特徴的なピークを比較することができる。最も特徴的なピークとしては、9.29、14.17、16.34、18.07、18.72、19.44、20.56、22.13、23.01、24.54および27.12が挙げられる。
【表7】

【0050】
[0062]本発明のイソファゴミン酸塩を、例えば錠剤、カプセルまたは液体の経口投与、または注射用無菌水溶液を含む任意の投与経路に好適な形態で投与することが可能である。即時放出、遅延放出、調節放出、持続放出、パルス放出または徐放用途に応じた、香料および着色剤を場合によって有する錠剤、カプセル、卵(ovules)、エリキシル、溶液または懸濁液、ゲル、シロップ、洗口液、または水または他の好適な媒体で使用前に編成される乾燥粉末の形態で経口投与することが可能である。錠剤、カプセル、糖衣錠、香錠、丸剤、巨丸剤、粉末、ペースト、顆粒、丸薬または予混製剤等の固形組成物を使用することもできる。経口用途のための固体および液体組成物を当該技術分野でよく知られている方法に従って調製することができる。当該組成物は、固体または液体形態で使用できる1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体および賦形剤を含有することもできる。具体的な実施形態において、酒石酸イソファゴミンは、粉末充填カプセルとして投与される。化合物が経口投与用に配合される場合は、結合剤(例えばアルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えばラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ)、崩壊剤(例えばジャガイモデンプンまたはグリコール酸ナトリウムデンプン)、または水和剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)等の薬学的に許容可能な賦形剤を用いて、従来の技術により錠剤またはカプセルを調製することが可能である。当該技術分野で知られている方法によって、錠剤にコーティングすることができる。
【0051】
[0063]薬学的に許容可能な賦形剤としては、また、微結晶セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性燐酸カルシウムおよびグリシン、デンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカデンプン)、グリコール酸ナトリウムデンプン、クロスカルメロースナトリウムおよび一定の複合珪酸塩等の崩壊剤、およびポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルエチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチンおよびアカシア等の顆粒化結合剤が挙げられる。また、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびタルク等の滑沢剤を含むことができる。
【0052】
[0064]類似した種類の固体組成物をゼラチンカプセルにおける充填剤として採用することもできる。この点において好ましい賦形剤としては、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量のポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁物および/またはエリキシルについては、薬剤を様々な乳化剤および/または懸濁剤、ならびに水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリン、およびそれらの組合せ等の希釈剤と組み合わせることができる。
【0053】
[0065]経口投与のための液体製剤は、例えば溶液、シロップまたは懸濁液の形態をとることができ、あるいは使用前に水または他の好適な媒体(例えば、エタノール、またはグリセロール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール等のポリオール、それらの好適な混合物および植物油)で戻される乾燥品として存在することができる。当該液体製剤を、懸濁剤(例えば水、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用油)、乳化剤(例えばレシチンまたはアカシア)、非水性媒体(例えば扁桃油、油性エステル、エチルアルコールまたは分留植物油)および防腐剤(例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはp−ヒドロキシ安息香酸プロピルまたはソルビン酸)等の薬学的に許容可能な添加剤を用いて、従来の手段によって調製することができる。経口投与のための製剤を好適に配合して、本発明のイソファゴミン酸塩の徐放または持続放出物を与えることができる。
【0054】
[0066]例えば、レシチン等のコーティング剤を使用すること、分散物の場合は必要な粒径を維持すること、および界面活性剤を使用することによって、適正な流動性を維持することが可能である。様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコールおよびソルビン酸等によって、微生物の作用の防止をもたらすことが可能である。多くの場合、等張性薬剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含めることが合理的である。吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に使用することによって注射可能組成物の長時間吸収をもたらすことが可能である。
【0055】
[0067](例えば静脈内大量瞬時注射または注入による、あるいは筋肉内、皮下またはクモ膜下腔内経路を介する)非経口/注射可能用途に好適な酒石酸イソファゴミンの医薬配合物としては、一般には、無菌水溶液、懸濁液、および無菌注射可能溶液または懸濁液の即時調製のための無菌粉末が挙げられる。酒石酸イソファゴミンは、必要に応じて添加防腐剤と共に、単位投与形態、アンプル、または他の単位投与容器または多回投与容器に存在することができる。注射用組成物は、油性または水性媒体における懸濁液、溶液または乳化剤の形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤、溶解剤および/または分散剤等の配合剤を含有することができる。あるいは、活性成分は、使用前に好適な媒体、例えば無菌パイロジェンフリー水で復元される無菌粉末の形態をとることができる。すべての場合において、該形態は、無菌でなければならず、容易なシリンジ使用性が得られる程度に流動性を有していなければならない。製造および保管条件下で安定していなければならず、細菌および真菌等の微生物の汚染作用から保護されなければならない。無菌条件下における好適な非経口配合物の調製は、当業者によく知られている標準的な製薬技術によって容易に遂行される。
【0056】
[0068]無菌注射可能溶液は、必要量の酒石酸イソファゴミンを、必要に応じて以上に列挙した様々な他の成分と共に適切な溶媒に混入した後に、フィルタまたは最終滅菌することによって調製される。一般に、分散物は様々な活性無菌成分を、塩基性分散媒体、および以上に列挙した成分からの他の必要な成分を含有する無菌媒体に混入することによって調製される。無菌注射可能溶液を調製するための無菌粉末の場合は、好ましい調製方法は、活性成分の粉末に加えて、既に無菌濾過されたその溶液からの任意のさらなる所望の成分を生成する真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0057】
[0069]防腐剤、安定化剤、色素、およびさらには香料を医薬組成物に含めることができる。防腐剤の例としては、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。酸化防止剤および懸濁剤を使用することもできる。
【0058】
[0070]配合物中に含めることができるさらなる薬学的に許容可能な担体は、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液および重炭酸緩衝液等の緩衝液、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、血清アルブミン、コラーゲンおよびゼラチン等のタンパク質;EDTAまたはEGTA、および塩化ナトリウム等の塩;リポソームポリビニルピロリドン;デキストラン、マンニトール、ソルビトールおよびグリセロール等の糖;プロピレングリコールおよびポロエチレングリコール(例えばPEG−4000、PEG−6000);グリセロール、グリシンまたは他のアミノ酸および脂質である。配合物と共に使用される緩衝液系としては、クエン酸、酢酸、重炭酸およびリン酸緩衝液が挙げられる。リン酸緩衝液は、好ましい実施形態である。
【0059】
[0071]配合物は、非イオン性洗剤を含有することも可能である。好ましい非イオン性洗剤としては、ポリソルベート20、ポリソルベート80、トリトンX−100、トリトンX−114、ノニデットP−40、オクチルα−グルコシド、オクチルβ−グルコシド、ブリジ35、プルロニックおよびツウィーン20が挙げられる。
【0060】
[0072]投与(送達)経路としては、経口(例えば錠剤、カプセルまたは他の消化性溶液として)、局所、粘膜(例えば経鼻噴霧剤、吸入用噴霧剤として)経鼻、非経口(例えば注射可能形態)、胃腸、髄腔内、腹膜内、筋肉内、静脈内、子宮内、眼内、皮膚内、頭蓋内、気管内、鞘膜内、脳室内、脳内、皮下、眼(硝子体内または眼房内を含む)、経皮、直腸、口腔内、硬膜外および舌下の一種または複数種が挙げられるが、それらに限定されない。
【0061】
[0073]酒石酸イソファゴミンの上記非経口配合物の投与は、製剤の塊の定期的注射によるものであってもよく、あるいは外部(例えば点滴バッグ)または内部(例えば生体内分解性性移植物)の液溜からの静脈内または腹膜内投与によって投与されてもよい。例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,407,957号および第5,798,113号を参照されたい。肺内送達法および装置が、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,654,007号、第5,780,014号および第5,814,607号に記載されている。他の有用な非経口送達系としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体粒子、浸透圧ポンプ、移植可能注入系、ポンプ送達、封入細胞送達、リポソーム送達、針送達注射、無針注射、ネブライザ、エアロゾライザ、エレクトロポレーションおよび経皮パッチが挙げられる。無針注射器は、その明細書が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,879,327号、第5,520,639号、第5,846,233号および第5,704,911号に記載されている。これらの方法を用いて、上記配合物のいずれかを投与することが可能である。
【0062】
[0074]また、再充填可能注射ペンおよび無針注射器等の患者利便性に合わせて設計された様々なデバイスを、本明細書に記載されている本発明の配合物に使用することができる。
【0063】
[0075]典型的には、医師は、個々の被検体に最も好適である実際の投与物を決定し、該被検体に治療有効量を与えることになる。特定の個体に対する具体的な用量および投与頻度は、異なってもよく、化合物活性、治療されているゴーシェ病の種類、年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食餌、投与方式および時間、排泄量、薬物組合せ、疾病の重度、および療法を受ける個体に依存することになる。経口および非経口投与については、薬剤の毎日投与量は、単一または分割用量であってもよい。好ましくは、本発明のイソファゴミン酸塩の有効量または用量は、突然変異グルコセレブロシダーゼ発現のレベルを、正常細胞、すなわちゴーシェ病を有さない個体の細胞において見いだされるレベルの約3〜5%、好ましくは約10%、より好ましくは約30%高めるのに十分なものであり、および/または被検体における臨床的に有意な欠乏GCase活性を改善または防止することが可能である。
【0064】
[0076]有効量は、日常的実験によってしばしば決定されうるが、0.01μMと100μMの間、好ましくは0.01μMと10μMの間、最も好ましくは0.05μMと2μMの間の血清値をもたらす量であると予測される。酒石酸イソファゴミンの有効用量は、1日当たり体重1kg当たり0.5mgと1000mgの間、好ましくは0.5mgと100mgの間、最も好ましくは1日当たり体重1kg当たり1mgと50mgの間であると予測される。具体的な実施形態において、用量は、約1〜600mg/日、より具体的には5〜300mg/日、より具体的には10〜150mg/日である。非毎日投与も想定される。酒石酸イソファゴミンを使用するゴーシェ病の治療に想定される他の投与療法は、全面的に参照により本明細書に組み込まれている、2007年4月24日に出願された米国仮特許出願第60/914,288号に記載されている。
【0065】
[0077]酒石酸イソファゴミンと、ERTまたは遺伝子療法等の他の療法との組合せによる患者の治療に続く本発明の治療モニタリングも適用可能である。当該組合せ療法は、いずれも全面的に参照により本明細書に組み込まれている共有の米国特許出願公報第2004/0180419号および第2004/0219132号に記載されている。
【0066】
[0078]本発明のイソファゴミン酸塩が第2の治療薬と併用される場合は、各化合物の用量は、化合物が単独で使用される場合の用量と異なっていてもよい。適切な用量は、当業者に容易に認識されるであろう。治療に使用するのに必要な本発明の化合物の量は、治療されている状態の性質、および患者の年齢および状態に応じて異なり、究極的には担当医師の裁量に委ねられることが認識されるであろう。
【0067】
[0079]投与が順次的である場合は、本発明の化合物または第2の治療薬を最初に投与することができる。投与が同時的である場合は、組合せを同一または異なる医薬組成物で投与することができる。
【0068】
[0080]同一配合物で組み合わせられる場合は、2つの化合物は、安定しており、互いに、および該組成物の他の成分と相溶性を有していなければならないことが理解される。個別に配合される場合は、個別に配合される場合は、それらを当該技術分野で当該化合物について知られているような任意の便利な配合で与えることができる。
【0069】
[0081]Danishefskiら、Tetrahedron Letters.1990;31(16)、2229による文献に既に報告されている中間体を介してD−アラビノースからイソファゴミンを合成することができる。しかし、既に報告されている中間体への合成工程は、大規模合成にとっては経済的ではない。本明細書に開示されている方法は、それらの中間体(および新しい中間体)、ならびに工業規模で高純度の最終製品の確実で予測可能な製造を可能にする。これは、すべての中間体が、結晶化により単離されて、該方法を大規模製造に適したものとするためである。
【0070】
[0082]イソファゴミンをスキーム1に示される合成経路によって合成することもできる。
【化4】

【0071】
[0083]溶媒(純反応物)を伴う、または伴わない適切なアルコール、および活性化剤を使用して、D−アラビノースを対応する保護グリコシド(A)に変換することが可能である。例えば、アルコールの範囲は、HCl、HBr、HSOもしくは何らかの他の鉱酸、塩化アセチル、塩化プロピオニル、またはカルボン酸の他の酸塩化物等の活性化剤と共に、塩化メチレン、クロロホルム、THF、ジオキサン、DMF、DMAまたはNMP等の溶媒中に、ベンジルアルコール、またはメトキシベンジルアルコール、クロロベンジルアルコール、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびシクロヘキシルメチルアルコール等の置換ベンジルアルコールを含むことができる。反応を周囲温度から約100℃の範囲の温度で、2から48時間の範囲の時間にわたって実施することが可能である。本発明では、好ましいアルコールは、ベンジルまたは置換ベンジルアルコールであり、より好ましいのは、ベンジルアルコールである。好ましい溶媒としては、ジオキサン、THFまたは純反応物が挙げられ、より好ましいのは、純反応物である。好ましい活性化剤としては、塩化アセチルおよびHSOが挙げられ、より好ましいのは、塩化アセチルである。純粋の生成物を非極性溶媒による析出によって単離することが可能である。この生成物に対する好ましい溶媒および温度は、メチル−t−ブチルエーテルおよび周囲温度である。
【0072】
[0084]得られた一般式Aのグリコシドを、(純)極性補助溶媒を伴う、または伴わない酸の存在下で、ケトンまたはジメチルケタール、またはそのエノールエーテルによる(A)からケタール(B)への変換により、3−および4−ヒドロキシル基においてアセトニドとしてさらに保護することが可能である。例えば、アセトン、2−ブタノン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノンまたはアセトフェノン、またはそれらの対応するジアルキルケタール等の脂肪族または芳香族ケトンは、HSO、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸またはTMSトリフレート等の酸の存在下で近隣ジオールと反応することが可能である。補助溶媒としては、塩化メチレン、DMSO、DMF、DMAおよびNMPが挙げられる。いくつかの場合において、アセトン等のケトンも溶媒でありうる。反応温度は、周囲温度から100℃までの範囲でありうる。この反応では、好ましい条件は、40℃においてp−トルエンスルホン酸を伴うアセトンおよび2,2−ジメトキシプロパンである。純粋の生成物を、極性および非極性成分を含む2つの成分系による結晶化によって容易に単離することが可能である。この生成に対する好ましい条件は、酢酸エチルおよびヘプタンである。
【0073】
[0085]アセトニド(B)を、対応するアルコキシドに変換した後に、続いてアルキル化剤と反応させて、一般式Cの化合物を与えることによって、2−ヒドロキシル基においてエーテルとしてさらに保護することが可能である。既に報告されている保護には、より高価な臭化ベンジルおよびコストの高い酸化銀が利用されていた。アルコキシドの形成は、ジアルキルエーテル等の極性非プロトン性溶媒、あるいはPG2に対応するTHF、DMF、DMA、NMPまたはDMSO中のアルキル水素化物等の強塩基により容易に遂行される。アルキル化剤としては、塩化ベンジルまたは置換ベンジルが挙げられる。反応温度は、−20℃から20℃の範囲でありうる。この反応では、好ましい条件は、0℃から10℃でアルコキシドを生成した後に、塩化ベンジルによるアルキル化を行うためのDMF中の水素化ナトリウムである。水および非極性洗浄液で析出させて、過剰の水を除去することによって純粋の生成物を容易に単離することが可能である。この生成のための好ましい非極性溶媒は、ヘプタンである。
【0074】
[0086]一般式Cの化合物におけるアセトニドを除去して、一般式(D)のジオールを与えることは、周囲温度にて、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール中のHCl、HBr、HSO等の希鉱酸を用いて遂行される。この反応では、好ましい条件は、周囲温度でのメタノールにおけるHClである。水および非極性洗浄液で析出させて、過剰の水を除去することによって、純粋の生成物(D)を容易に単離することが可能である。この精製のための好ましい非極性溶媒は、ヘプタンである。
【0075】
[0087]標的分子に対する修飾のために、ジオールのさらなる保護が必要とされる。還流温度での水−共沸溶媒におけるスズ指向手法に続いて、適温でのエーテル化を用いることによって、3−ヒドロキシル(E)の選択的エーテル化を遂行することが可能である。ベンゼン、トルエンまたはキシレン等の非プロトン性溶媒中のジフェニル、ジメチル、ジブチル、ジイソブチルまたはジオクチルスズ酸化物等のジアルキルまたはアリールスズ(IV)酸化物を使用して、スズエーテルを形成することが可能である。続くアルキル化を、臭化ベンジルまたは塩化ベンジル等のアルキルまたはアルキルアリールハロゲン化物を用いて遂行することが可能である。CsFまたは塩化テトラエチルアンモニウム等の薬剤の使用によって反応を加速させることが可能であり、反応温度は、周囲温度から100℃の範囲でありうる。本発明では、好ましい方法は、塩化テトラブチルアンモニウムの存在下で、トルエンおよび塩化ベンジル中のジブチルスズ酸化物を使用する。水によるスズ試薬の析出によって精製を容易に遂行することが可能である。二溶媒系からの結晶化によって最終生成物を得ることが可能である。この反応のための好ましい結晶化溶媒は、エタノールおよびヘプタンである。
【0076】
[0088]活性化系(F)を介して三重保護中間体アラビノース誘導体を対応するキシロース誘導体(G)にそのまま変換することが可能である。ミツノブ反転は、アルコール構造を反転させるのに広く用いられ、この具体的な変換について報告されてきたが、それらの条件は、製造スケールでは高コストである。代替的な経路は、アラビノースヒドロキシルを個別の単離可能な活性化系(G)に活性化させた後に、安価な酸素源を使用する反転によって置換させることである。−20℃から周囲温度の温度にて、塩化メチレン、クロロホルムまたはトルエン等の非極性溶媒中におけるピリジン、コリジン、ヒューニッヒ塩基、トリエチルアミン等の有機塩基の存在下で対応する無水物、塩化スルホニルから形成されたp−トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩およびトリフルオロメタンスルホン酸塩等のエステルによって活性化が可能である。構成の反転による置換を、0℃から40℃の温度にて、この種の反応に広く使用される溶媒、例えば塩化メチレン、アセトン、THF、DMF、DMAおよびNMP中の酸素求核試薬、好ましくはアルカリまたはアルカリ土類金属窒化物を用いて遂行することが可能である。好ましい条件は、−10℃の塩化メチレン中のトリフルオロメタンスルホン酸無水物およびピリジンを使用した後に、精製を必要とせずにトリフレートを単離することである。トリフレートの置換のための好ましい条件は、周囲温度におけるDMF中の亜硝酸ナトリウムまたはカリウムである。極性および非極性成分を使用して、2つの溶媒系からの結晶化によって、精製された生成物を容易に得ることが可能である。この反応のための好ましい結晶化溶媒は、イソプロパノールおよびヘプタンである。
【0077】
[0089]活性化系を介する構造の反転によって、一般式(H)の三重保護キシロース誘導体をニトリル(I)に変換することが可能である。上記方法と同様に、該経路は、キシロースヒドロキシルを個別の単離可能な系(H)に活性化した後に、シアノ源で置換することを含む。−20℃から周囲温度の温度にて、塩化メチレン、クロロホルムまたはトルエン等の非極性溶媒におけるピリジン、コリジン、ヒューニッヒ塩基およびトリエチルアミン等の弱有機塩基の存在下対応する無水物または塩化スルホニルから形成されたスルホン酸アルキルまたはアリールのエステル、好ましくはp−トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩およびトリフルオロメタンスルホン酸塩等を使用して、再び活性化を行うことが可能である。好ましくは、0℃から40℃の温度におけるTHF、DMF、DMA、NMPおよびDMSO等の極性非プロトン性溶媒中のアルカリまたはアルカリ土類金属シアン化物またはシアン化テトラエチルアンモニウム等の試薬を用いて、構成の反転による置換を遂行することが可能である。好ましい条件は、−10℃における塩化メチレン中のトリフルオロメタンスルホン酸無水物およびピリジンである。トリフレートの置換のための好ましい条件は、周囲温度におけるTHF中のシアン化テトラエチルアンモニウムである。抽出後に、アルコール溶媒から結晶化することによって、精製された生成物を得ることが可能である。好ましい溶媒はエタノールである。
【0078】
[0090]ニトリル中間体の塩酸イソファゴミンへの変換を、保護基の選択に応じて一工程で行うことが可能である。環状イミンのニトリル還元、三重保護、環閉鎖および水素化を水素化条件下で単一工程で遂行して、高収率のイソファゴミンを与えることが可能である。プロトン性または非プロトン性極性溶媒、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、エステルまたは酢酸において、14psiから100psiの範囲の水素ガス圧力下で、1%から20%の充填率のPd/C、Pd(OH)/C、PtO、デグサ触媒、または触媒の組合せを含む当該水素化に使用される一般的な様々な触媒によって触媒水素化を実施することが可能である。水素化をHCl、HBr、HClO、HPO、HSO、酢酸、トリフルオロ酢酸または酒石酸等の酸の存在下で実施することが可能である。生成物分解の危険性を伴わずに、短時間または長時間にわたって水素化を実施することが可能である。好ましい条件は、HClを含むアルコール溶媒において、40psiから100psiの圧力下で、充填率が5%から20%のPd/CとPd(OH)/Cの混合物との反応を実施することである。より好ましい条件は、HClを含むエタノールにおける80psiの水素ガス下の充填率10%のPd/Cおよび充填率10%のPd(OH)/Cである。この塩酸塩を本発明のイソファゴミン酸塩に変換することが可能である。
【0079】
[0091]イソファゴミンおよび酒石酸イソファゴミンを調製するための他の改善された合成方法が最近開発され、したがって個別の特許出願が提出されている。新しい方法は、ジケタール中間体を介してD−(−)−アラビノースまたはL−(−)−キシロースを利用する。
【0080】
[0092]本発明をさらに例示するために、以下の実施例を示す。当該実施例の利用は、例示にすぎず、いかなる場合も本発明または任意の例示的な用語の範囲および意味を限定するものではない。同様に、本発明は、本明細書に記載されている特定の好ましい実施形態に限定されない。実際、本明細書を読めば、本発明の多くの修正および変更を当業者なら理解するであろう。
【0081】
比較例A:イソファゴミン遊離塩基の精製
[0093]Amberlite CG50樹脂カラム(NH;2.5cmID X 100.0cmL、容量450mL)を使用してイソファゴミン遊離塩基をクロマト分析した。カラムを0.5NのNHOH溶液(3倍、1200mL)で洗浄し、次いでDI水(5倍、2250mL)で洗浄した。粗イソファゴミン(1.0g)を4.0mLの水に溶解させ、カラムに充填した、カラムを0.1NのNHOH/水(1.36:1)で溶出した。10mLの画分を回収した。
【0082】
[0094]異なる画分に対するTLC(シリカゲル、イソプロパノール:水:NHOH(7:2:1))を実施し、イミノ糖およびニンヒドリンスプレーを介して検出した。イミノ糖スプレーで陽性を示した画分を分析して、純度を測定し、次いで一緒にし、72時間にわたって凍結乾燥させた。
【0083】
比較例B:イソファゴミン−HClの精製
[0095]イソファゴミン遊離塩基(30mg)をイソプロパノールおよびアセトン(4.0mL)中のMeOH(5mL)および4NのHCl(0.5mL)に溶解させた。試料を一晩冷凍保存し、濾過した。溶液中に結晶が認められた。しかし、濾過すると、生成物は、のり状の粘性を有する黄色の物質になった。
【0084】
[0096]水およびアンモニアで溶出するイオン交換クロマトグラフィーを用いてこの粗イソファゴミン−HClを精製した。
【0085】
[0097]イオン交換カラムからの画分を凍結乾燥によって濃縮して、ゴム状の半固体物質を与えた。
【0086】
実施例1:D−(−)−アラビノースからの酒石酸IFGの合成
[0098]反応をTLCによって監視し、5%HSO/メタノール、リンモリブデン酸溶液、または254nmのUV光で視覚化した。
【0087】
[0099]工程1:D−アラビノース(50kg、330.04モル)およびベンジルアルコール(132.2kg、4.33当量)を攪拌し、35℃に加熱した。塩化アセチル(10.9kg、0.42当量)、温度を45℃未満に保ち、次いで50℃で一晩攪拌した。混合物を20℃に冷却し、MTBE(600kg)で希釈した。混合物を0.5〜5時間攪拌した。固体を濾過によって回収し、MTBE(2×40kg)で洗浄した。材料をフィルタ乾燥器で乾燥させた。オフホワイトの固体(70.9kg(88.6%))として2−ベンジル−D−アラビノースを得た。H NMR(300MHz,DMSO−d):δ7.32(m,5H)、4.76(s,1H)、4.66(d,J=12Hz,1H)、4.59(m,3H)、4.45(d,J=12Hz,1H)、3.70(m,4H)、3.47(dd,J=12,3Hz,1H)。
【0088】
[00100]工程2:2−ベンジル−D−アラビノース(73.5kg、305.92モル)をアセトン(522kg)と混合した。2,2−ジメトキシプロパン(26.6kg、1.9当量)を一度に添加した後に、p−トルエンスルホン酸一水和物(39.3g、0.0007当量)を添加した。混合物を40℃で18時間攪拌した。反応が完了した後に、トリエチルアミン(193mL、0.0046当量)を添加した。高濃度の油が得られるまで、溶媒を30℃の減圧下で除去した。残渣を酢酸エチル(2×20kg)と共に同時蒸着させた。酢酸エチル(19.2kg)を添加して、溶液を形成した。ヘプタン(145.8kg)を一度に溶液に添加し、−10℃〜0℃に一晩かけて冷却した。固体を濾過によって回収し、ヘプタン(2×51.5kg)で洗浄した。材料を、窒素パージしながらフィルタ乾燥器で乾燥させた。オフホワイトの固体(70.4kg(82%))としてアセトニド誘導体(3aR,6R,7S,7aS)−6−(ベンジルオキシ)−2,2−ジメチルテトラヒドロ−3aH−[1,3]ジオキソロ[4,5−c]ピラン−7−オールを得た。融点:58〜59℃。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.34(m,5H)、4.92(d,J=4Hz,1H)、4.79(d,J=12Hz,1H)、4.54(d,J=12Hz,1H)、4.20(m,2H)、4.00(dd,J=13,3Hz,1H)、3.92(dd,J=13,2Hz,1H)、3.80(m,1H)、2.24(d,J=7Hz,1H)、1.52(s,3H)、1.35(s,3H)。
【0089】
[00101]工程3:アセトニド誘導体(78.2kg、278.97モル)をDMF(295kg、出発材料1kg当たり3.77kg)と混合し、5℃に冷却した。水素化ナトリウム(13.4kg、1.2当量)を反応器に3または4回に分けて加え、反応混合物を10℃未満に維持し、次いで1.5時間攪拌した。2℃の温度で、塩化ベンジル(45.9kg、1.3当量)を1時間にわたって添加した。反応物を10℃から15℃で12時間攪拌した。反応が完了した後に、混合物を2℃に冷却し、水(20kg)を1時間にわたって添加した。水のさらなる充填物(570kg)を4時間にわたって添加した。混合物をこの温度で10時間攪拌した。生成物を遠心濾過によって回収し、水(2×10kg)およびヘプタン(2×15kg)で洗浄し、一晩スピン乾燥させた。白色の固体(74.0kg(71.6%))としてジベンジル誘導体(3aR,6R,7S,7aR)−6,7−ビス(ベンジルオキシ)−2,2−ジメチルテトラヒドロ−3aH−[1,3]ジオキソロ[4,5−c]ピランを得た。
【0090】
[00102]工程4:ジベンジル誘導体(37.6kg、101.50モル)をメタノールに添加し、AR(259kg、出発材料1kg当たり8.7kg)および内容物を15℃に冷却した。2.5NのHCl溶液(76.2kg、1.8当量)を1時間にわたって添加した。さらなる水(20kg)を添加し、混合物を15℃で12時間攪拌した。水(1035kg、メタノールの4倍容量、AR)を反応器に加え、少なくとも0.5時間攪拌した。生成物を遠心器上に濾過し、水(2×10kg)およびヘプタン(2×15kg)で洗浄し、一晩スピン乾燥させた。白色の固体(31.5kg(94%))としてのジオール(3R,4R,5S,6R)−5,6−ビス(ベンジルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン−3,4−ジオールを得た。
【0091】
[00103]工程5:ジオール誘導体(37.5kg、113.51モル)をトルエン(207.6kg、ジオール1kg当たり5.5kg)およびジブチルスズオキシド(31.1kg、1.1当量)と混合した。反応器にDean−Stark装置を装備し、除去するための水が回収されなくなるまで(8〜12時間)反応器内容物を加熱して還流させた(約110℃)。反応器内容物を35℃に冷却し、塩化テトラブチルアンモニウム(18.3kg、0.5当量)を一度に添加した。塩化ベンジル(15.8kg、1.1当量)を、温度を40℃未満に維持する速度で添加し、35℃で12時間攪拌を続けた。反応が完了するまで、該添加および12時間攪拌を4日間にわたって毎日繰り返した。反応が完了した後に、混合物を25℃に冷却し、水(150kg)を一度に添加し、内容物を一晩攪拌した。反応混合物をセライト床(ジオール1kg当たり1kg)で濾過し、床をトルエン(10kg)で濯いだ。濾液を(1時間)沈降させ、層を分離させた。水添加、攪拌、濾過および分離を繰り返した。水層を一緒にし、酢酸エチル(25kg)で抽出し、層を分離させた。有機層を一緒にし、最小の攪拌可能容量になるまで45℃にて真空下で濃縮した。ヘプタン(102.6kg)を添加した。混合物を20分間攪拌し、0℃に冷却し、8〜12時間攪拌した。固体を濾過によって回収し、ヘプタン(10kg)で洗浄した。粗固体を6:1のヘプタン/200pfエタノール(粗固体1kg当たり7kg)に35℃で溶解し、−5〜0℃に冷却し、一晩攪拌した。固体を濾過によって回収し、ヘプタン(10kg)で洗浄した。生成物純度をTLCで監視した。不純物を除去するのに、典型的には、2回以上の再結晶が必要であった。精製されたトリベンジル誘導体を30℃の真空炉で乾燥させた。白色の固体(17.5kg(37%))としての(3R,4R,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−オールを得た。融点:59〜60℃。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.38(m,15H)、4.89(d,J=4Hz,1H)、4.82(d,J=12Hz,1H)、4.71(m,3H)、4.57(d,J=12Hz,1H)、4.55(d,J=12Hz,1H)、4.01(br s,1H)、3.95(dd,J=10,3Hz,1H)、3.83(m,2H)、3.71(dd,J=12,2Hz,1H)、2.56(br s,1H)。
【0092】
[00104]工程6:トリベンジルアラビノース誘導体(12.0kg、28.54モル)を塩化メチレン(79.2kg、出発材料1kg当たり6.6kg)およびピリジン(11.3kg、5当量)と混合し、−10℃に冷却した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物(10.1kg、1.25当量)を、0℃未満の温度を維持する速度で添加した。出発材料が消費されるまで、反応混合物を−10℃から0℃で攪拌した。完了すると、反応混合物を7.5%HCl溶液(3×68kg、17当量)および水(48kg)で洗浄した。洗浄中は、反応混合物の温度を5℃未満に維持した。混合物を、7,5%NaHCO溶液(55.0kg)で洗浄することによってpH6以上に調整した。トリエチルアミン(0.4kg、出発材料1kg当たり0.3kg)を添加し、有機層を無水KCO(1.2kg、0.1当量)で乾燥させた。混合物を濾過し、20℃から35℃の真空下で濃縮して乾燥させて、(3S,4R,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−オールを得た。トリフレートを精製せずに使用した。H NMR(300MHz,CDCl):δ7.31〜7.16(m,15H)、5.12(br s,1H)、4.83(d,J=4Hz,1H)、4.76(d,J=11Hz,1H)、4.64(m,2H)、4.50(d,J=9Hz,1H)、4.46(d,J=8Hz,1H)、3.97(dd,J=10,3Hz,1H)、3.86(d,J=14Hz,1H)、3.77〜3.72(m,2H)。
【0093】
[00105]工程7:トリフレートをDMF(36.2kg、出発材料1kg当たり3.02kg)に溶解し、10℃に冷却した。亜硝酸ナトリウム(5.9kg、3.0当量)を添加し、溶液を発熱させて約30℃とし、次いで反応混合物を15〜25℃に冷却し、12から16時間攪拌した。混合物を5℃に冷却し、水(152kg、DMF1kg当たり4.2kg)を、温度を15℃未満に維持する速度で添加した。得られた混合物を10℃で2時間攪拌した。固体を濾過し、水(2×12kg)で洗浄した。濾過した固体を酢酸エチル(21.6kg、出発材料1kg当たり1.8kg)に溶解した。溶液を塩水(15.5kg)で洗浄し、MgSO(2.5kg)で乾燥させ、濾過し、濾液を35℃の真空下で濃縮して乾燥させた。イソプロパノール(9.5kg)を添加し、75℃に加熱して、粗生成物を溶解した。ヘプタン(24.6kg)を溶液に添加し、混合物を15〜25℃に冷却した。混合物をさらに0℃に冷却し、一晩攪拌した。固体を濾過し、ヘプタン(2×8.2kg)で洗浄した。材料を真空炉で乾燥させた。黄色の固体(5.3kg(44%))としての(3S,4R,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−オールを得た。H NMR(300MHz,CDCl):δ7.37(m,15H)、4.96(d,J=11Hz,1H)、4.80(m,2H)、4.68(d,J=12Hz,1H)、4.61(m,2H)、4.53(d,J=12Hz,1H)、3.78(m,1H)、3.67(m,3H)、3.50(dd,J=9,3Hz,1H)、2.42(br s,1H)。
【0094】
[00106]工程8:トリベンジルキシロース誘導体(10.4kg、24.73モル)を塩化メチレン(68.6kg、出発材料1kg当たり6.6kg)およびピリジン(9.8kg、5当量)と混合し、−10℃に冷却した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物(8.7kg、1.25当量)を、温度を0℃未満に維持する速度で添加した。出発材料が消費されるまで、反応混合物を−10℃から0℃で攪拌した。完了すると、反応混合物を7.5%HCl溶液(3×58.9kg、17当量)および水(41.6kg)で洗浄した。洗浄中は、反応混合物の温度を5℃未満に維持した。混合物を、7,5%NaHCO溶液(44.6kg)で洗浄することによってpH6以上に調整した。トリエチルアミン(0.4kg、出発材料1kg当たり0.3kg)を添加し、有機層を無水KCO(1.2kg、0.1当量)で乾燥させた。混合物を濾過し、20℃から35℃の真空下で濃縮して乾燥させた。NMR?
【0095】
[00107]工程9:トリフレートをTHF(29kg、出発材料1kg当たり2.8kg)に溶解させ、10℃に冷却した。シアン化テトラエチルアンモニウム(4.6kg、1.2当量)を添加し、溶液を発熱させ、次いで反応混合物を20℃に冷却し、12時間攪拌した。酢酸エチル(21.8kg)を添加し、有機相を10%NaCl溶液(3×14.3kg)で洗浄した。一緒にした水層を酢酸エチル(21.8kg)で抽出した。有機層を一緒にし、MgSO(2kg)で乾燥させ、濾過し、濃縮して乾燥させた。エタノール(200pf、出発材料1kg当たり3.23kg)を添加し、70℃に加熱して、粗生成物を溶解した。溶液を20℃に冷却し、次いでさらに5℃に冷却し、一晩攪拌した。固体を濾過し、ヘプタン(2×10.4kg)で洗浄した。200pfエタノール(固体1g当たり7mL)からの結晶化を繰り返した。固体を濾過し、ヘプタン(2×10.4kg)で洗浄した。材料を真空炉で乾燥させた。淡褐色の固体(6.3kg(59%))としての(3R,4R,5S,6S)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−カルボニトリルを得た。H NMR(300MHz,CDCl):δ7.31(m,15H)、4.90(d,J=3Hz,1H)、4.81〜4.73(複雑,3H)、4.70(d,J=12Hz,1H)、4.62(d,J=12Hz,1H)、4.55(d,J=12Hz,1H)、3.99(dd,J=9,5Hz,1H)、3.91(dd,J=12,3Hz,1H)、3.82〜3.74(重なりあうシグナル,2H)、3.13 m,1H)。
【0096】
[00108]工程10:ニトリル誘導体(2.5kg、5.8モル)を無水エタノール(138.1kg)に溶解し、透明な溶液が得られるまで35℃で加熱した。加湿した炭素上パラジウム(250g;10%w/w)を添加した後に、水酸化パラジウム(250g;20%w/w)および塩酸(0.6L)を添加した。溶液を窒素で2回、水素で1回パージした。溶液を水素で80psiに加圧し、攪拌し、72時間にわたって35℃に加熱し、必要に応じて再加圧した。混合物を濾過し、30℃から35℃にて真空下で濃縮した。粗塩酸イソファゴミンをNHOH水(3L)と混合した。9:1のEtOH/水NHOH溶媒系を使用して、シリカゲルカラム(約20kg)で精製した。生成物を35℃から40℃にて真空下で濃縮した。イソファゴミン遊離塩基を無水エタノール(残渣1g当たり7.7mL)に溶解した。L−(+)−酒石酸(1185g、残渣1g当たり1g)を無水エタノール(残渣1g当たり7.7mL)に溶解し、濾過し、イソファゴミンをエタノールに溶解させた溶液に徐々に添加した。この溶液を45分間攪拌し、濾過し、エタノール(2.5L、出発材料1g当たり1mL)で洗浄した。生成物を44℃の真空炉で一定の重量まで乾燥させた。白色の固体(1.2kg(純度97.5%))としての酒石酸イソファゴミンを得た。1H NMR(300MHz,D2O):δ4.40(s,2H)、3.70(dd,J=12,4Hz,1H)、3.66〜3.58(m,2H)、3.38(m,3H)、2.83(t,J=13Hz,1H)、2,79(t,J=13Hz,1H)、1.88〜1.77(m,1H)。
【0097】
実施例2:酒石酸イソファゴミンの再結晶
[00109]酒石酸イソファゴミン(1767g)を周囲温度で水(1767L)に溶解した。無水EtOH(1.767L)を添加し、30分間にわたって攪拌した。さらなる一定分量の無水EtOH(1.767L)を低速流で一滴ずつ添加し、30分間攪拌した。このプロセスを(30分間の攪拌を含めて)2回繰り返して、4:1のEtOH/水を得た。固体を濾過し、EtOH/水(4:1)で洗浄し、43℃の真空炉で一定重量(すなわち、さらなる2時間にわたる再乾燥後の総重量減が1%を下回る)まで乾燥させた。再結晶による収率は91%であった。試料は、HPLCに基づいて、1.3%の不純物を有することがわかった。再結晶生成物のNMRスペクトルを図3および図4に示す。融点:168〜169℃。
【0098】
実施例3:酒石酸イソファゴミン塩の合成
イソファゴミンL(+)−酒石酸塩(2:1)
[00110]L−(+)−酒石酸(102mg、0.679mmol)を脱イオン水(1.0mL)に溶解させた溶液を、イソファゴミン(200mg、2.0当量)を脱イオン水(2.0mL)に溶解させた溶液に室温で添加した。溶液を10分間攪拌し、一晩凍結乾燥した。残渣を45℃の真空下で3日間さらに乾燥させて、所望の塩(275.6mg、91%)を得た。融点92〜93℃。H NMR(300MHz,DO):δ4.22(s,2H)、3.71(dd,J=12,3.6Hz,1H)、3.67〜3.59(m,2H)、3.44〜3.37(m,3H)、2.85(t,J=12Hz,1H)、2.75(t,J=12Hz,1H)、1.85(m,1H)(図8A)
【0099】
イソファゴミンD−(−)−酒石酸塩(2:1)
[00111]D−(−)−酒石酸(102mg、0.679mmol)を脱イオン水(1.0mL)に溶解させた溶液を、イソファゴミン(200mg、2.0当量)を脱イオン水(2.0mL)に溶解させた溶液に室温で添加した。溶液を10分間攪拌し、一晩凍結乾燥した。残渣を45℃の真空下で3日間さらに乾燥させて、所望の塩(287.2mg、95%)を得た。融点:94〜95℃。H NMR(300MHz,DO):δ4.22(s,2H)、3.71(dd,J=12,3.6Hz,1H)、3.67〜3.59(m,2H)、3.44〜3.36(m,3H)、2.85(t,J=12Hz,1H)、2.75(t,J=12Hz,1H)、1.84(m,1H)(図8B)。
【0100】
イソファゴミンD−(−)−酒石酸塩(1:1)
[00112]D−(−)−酒石酸(204mg、1.359mmol)を脱イオン水(2.0mL)に溶解させた溶液を、イソファゴミン(200mg、2.0当量)を脱イオン水(2.0mL)に溶解させた溶液に室温で添加した。溶液を10分間攪拌し、一晩凍結乾燥した。残渣を45℃の真空下で3日間さらに乾燥させて、所望の塩(396.9mg、98%)を得た。融点:73〜74℃。H NMR(300MHz,DO):δ4.41(s,2H)、3.71(dd,J=12,3.3Hz,1H)、3.66〜3.59(m,2H)、3.44〜3.36(m,3H)、2.84(t,J=12Hz,1H)、2.75(t,J=12Hz,1H)、1.84(m,1H)(図8C)
実施例4:酒石酸イソファゴミンカプセルの配合物
【表8】


【表9】


実施例5:ゴーシェ病患者の線維芽細胞におけるGCase活性の細胞内強化
【0101】
[00113]L−(+)−酒石酸イソファゴミンの細胞内強化活性を、ゴーシェ病患者から構築された線維芽細胞を用いて調査した。突然変異GCaseレベルに対するIFGの効果を評価するために、40人の患者の末梢白血球から誘導されたマクロファージおよびEBV形質転換リンパ芽球による生体外応答調査を実施した。
【0102】
[00114]調査は、I型ゴーシェ病の男性21人と、III型ゴーシェ病の男性1人と、I型ゴーシェ病の女性18人とを含んでいた。患者の年齢は7歳から83歳で、40人の患者のうち38人が酵素補充療法(ERT)を受けていた。40人の患者のうちの34人からマクロファージの誘導に成功し、そのうちの32人は、酒石酸IFGで(5日間)治療されると、用量に応じたGCaseレベルの増加(平均2.8倍)を示した。5人のさらなる患者から誘導されたリンパ芽球細胞系についても同様の結果が認められた。IFGは、N370S/N370S(11)、N370S/L444P(8)、N370S/84insG(11)、N370S/R163X、N370S/Y212H、L444P/del 136T、L444P/F216Y、L444P/L174F、G202R/R463CおよびK79N/複合Bエキソン9/10(III型CD)を含む異なる遺伝子型の患者の細胞のGcaseレベルを有意に高めた。約30μmのIFGでマクロファージにおけるGCaseの最大限の強化が達成された。
実施例6:ゴーシェ病の治療のための新しい薬理シャペロンである酒石酸イソファゴミンの安全性、薬物動態および薬動力の段階I調査
【0103】
[00115]酒石酸イソファゴミンは、リソソーム蓄積疾患ゴーシェ病の治療のために開発されている薬理シャペロンである。細胞ベースのモデルおよび動物モデルを使用して、イソファゴミンは、ゴーシェ病において欠乏する酵素グルコセレブロシダーゼ(GCase)の細胞レベルを高めることを示した。無作為二重盲式段階I臨床試験を72人の健康な志願者(男性39人、女性33人)において実施した。酒石酸イソファゴミンを水溶液として経口投与した。ファーストインヒューマン(first−in−human)単回漸増投与試験において、8、25、75、150(二集団)および300mgの用量を投与した(各集団において活性6、偽薬2)。漸増多回投与試験において、25、75および225mgの用量を7日間にわたって毎日投与した(各集団において活性6、偽薬2)。いずれの試験においても、酒石酸イソファゴミンはすべての用量で全体的に良好に許容され、両試験における治療下で発現した有害事象は、ほぼ軽いものであった。深刻な有害事象は発生しなかった。
【0104】
[00116]酒石酸イソファゴミンは、経口経路を介する良好な全身曝露性を示した。単回投与試験において、血漿AUCおよびC最大値は、投与量と直線的に相関していた。平均血漿レベルは3.4時間でピークに達し(SEM:0.6時間)、血漿消失半減期は14時間であった(SEM:2時間)。多回投与試験において、経口投与の7日後に、薬物動態挙動は、用量と直線関係にあり、イソファゴミンの予想外の蓄積はなかった。T最大値および半減期は、単回投与試験で認められたのと同様であった。
【0105】
[00117]多回投与試験において、単離された白血球におけるGCase活性を酒石酸イソファゴミンの投与中の1、3、5および7日目に測定し、治療後洗い出し期間中の9、14および21日目に測定した。酒石酸イソファゴミンを受けたすべての被検体において、治療期間中にGCaseレベルが顕著に増加した後に、薬物を除去すると低下し、21日目までにベースライン値付近に戻った(図9)。酵素レベルの増加は、用量に比例し、ベースライン値のおよそ3.5倍に達した。健康な志願者における安全性、薬物動態および予備的な薬力学的効果のためのこれらの結果は、ゴーシェ病の治療のための酒石酸イソファゴミンのさらなる評価を裏づけるものである。
【0106】
[00118]本発明は、本明細書に記載されている具体的な実施形態によって範囲が限定されない。実際、本明細書に記載されていること以外の本発明の様々な変更が、先述の説明および添付の図面から当業者に理解されるであろう。当該変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれるように意図されている。
【0107】
[00119]すべての値は、概算値であり、説明のために提示されている。
【0108】
[00120]特許、特許出願、公報、製品説明およびプロトコルが本願を通じて引用されており、それらの開示内容は、すべての目的に対して全面的に参照により本明細書に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の一実施形態に従って調製された酒石酸イソファゴミンに対する陽性ESIを用いた質量スペクトルを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に従って調製された酒石酸イソファゴミンのDOにおけるH NMRを示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に従って調製された酒石酸イソファゴミンのDOにおける13C NMRを示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に従って調製された酒石酸イソファゴミンのDOにおけるスピンエコー13C NMRを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に従って調製された酒石酸イソファゴミンのX線粉末回折パターンを示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に従って調製された酒石酸イソファゴミンの熱重量分析(TGA)を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に従って調製された酒石酸イソファゴミンの赤外線スペクトルを示す図である。
【図8】Aは、本発明の一実施形態に従って調製されたイソファゴミンL−(+)−酒石酸塩(2:1)のH NMR(DO)を示す図である。Bは、本発明の一実施形態に従って調製されたイソファゴミンD−(−)−酒石酸塩(2:1)のH NMR(DO)を示す図である。Cは、本発明の一実施形態に従って調製されたイソファゴミンD−(−)−酒石酸塩(1:1)のH NMR(DO)を示す図である。
【図9】健康な個体のGCase活性に対する酒石酸IFGの結果を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に従って調製された酒石酸イソファゴミンの粒径分布分析結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の代表的な化学構造を有するイソファゴミンの酒石酸塩(酒石酸イソファゴミン)の化合物
【化1】


(nは、1または2である)。
【請求項2】
酒石酸イソファゴミンは、実質的に精製された形態である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
酒石酸イソファゴミンの純度は、少なくとも95%である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
酒石酸イソファゴミンの純度は、少なくとも98%である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
酒石酸イソファゴミンの純度は、少なくとも99%である請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
n=1である請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
n=2である請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
酒石酸イソファゴミンは、イソファゴミンのL−(+)−酒石酸塩であり、n=1である請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
酒石酸とイソファゴミンの複合体。
【請求項10】
酒石酸イソファゴミンを含む組成物。
【請求項11】
酒石酸イソファゴミンを少なくとも50重量%含有する請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
酒石酸イソファゴミンを少なくとも90重量%含有する請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
酒石酸イソファゴミンの90%以上は、粒径が1200μm以下である請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
酒石酸イソファゴミンを少なくとも99重量%含有する請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
酒石酸イソファゴミンを調製するための方法であって、
(a)イソファゴミン遊離塩基またはそのイオン化形態と酒石酸を溶媒中で反応させる工程と、
(b)酒石酸イソファゴミンを単離する工程とを含む方法。
【請求項16】
酒石酸は、L−(+)−酒石酸である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1kgの酒石酸イソファゴミンが形成される請求項15に記載の方法。
【請求項18】
溶媒は、水性アルコールである請求項15に記載の方法。
【請求項19】
アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはそれらの混合物から選択される請求項15に記載の方法。
【請求項20】
アルコールは、エタノールである請求項15に記載の方法。
【請求項21】
単離工程は、再結晶を含む請求項15に記載の方法。
【請求項22】
酒石酸イソファゴミンの90%以上は、粒径が1200μm以下である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
再結晶は、二次溶媒を利用して水中で実施される請求項21に記載の方法。
【請求項24】
二次溶媒は、プロトン性溶媒である請求項22に記載の方法。
【請求項25】
プロトン性溶媒は、アルコールである請求項22に記載の方法。
【請求項26】
高純度酒石酸イソファゴミンを工業規模で調製するための方法であって、
(a)約1kg以上のイソファゴミン遊離塩基またはそのイオン化形態と酒石酸を溶媒中で反応させる工程と、
(b)粗酒石酸イソファゴミンを得る工程と、
(c)水溶液を使用して、粗酒石酸イソファゴミンを再結晶させる工程と、
(d)高純度酒石酸イソファゴミンを単離する工程とを含む方法。
【請求項27】
水溶液は、水である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
水溶液は、水とアルコールの混合物であり、水とアルコールは、同時に、または間隔をおいて使用される請求項24に記載の方法。
【請求項29】
高純度は、少なくとも84重量%の純度である請求項24に記載の方法。
【請求項30】
高純度は、少なくとも98重量%の純度である請求項24に記載の方法。
【請求項31】
高純度は、少なくとも99重量%の純度である請求項24に記載の方法。
【請求項32】
高純度酒石酸イソファゴミンの90%以上は、粒径が1200μm以下である請求項24に記載の方法。
【請求項33】
薬学的に有効な量の酒石酸イソファゴミンと、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項34】
薬学的に有効な量は、1用量当たり約5から300mgの範囲である請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
薬学的に有効な量は、1用量当たり約10から100mgの範囲である請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項36】
薬学的に許容可能な賦形剤は、微結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムまたは二塩基性リン酸カルシウムである請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項37】
酒石酸イソファゴミンは、結晶形態である請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項38】
結晶性酒石酸イソファゴミンの化合物。
【請求項39】
結晶性酒石酸イソファゴミンは、(2シータ)9.29±0.009、14.17±0.009、16.34±0.009、18.07±0.009、18.72±0.009、19.44±0.009、20.56±0.009、22.13±0.009、23.01±0.009、24.54±0.009および27.12±0.009のうちの5つ以上のピークを含むX線粉末回折パターンを有する請求項38に記載の化合物。
【請求項40】
結晶性酒石酸イソファゴミンは、(2シータ)9.29、14.17、16.34、18.07、18.72、19.44、20.56、22.13、23.01、24.54および27.12のピークを含むX線粉末回折パターンを有する請求項38に記載の化合物。
【請求項41】
結晶性酒石酸イソファゴミンは、図5に示されているパターンと実質的に同じであるX線粉末回折パターンを有する請求項38に記載の化合物。
【請求項42】
治療を必要とする個体に対して有効量の酒石酸イソファゴミンを投与することを含むゴーシェ病治療方法。
【請求項43】
酒石酸イソファゴミンは、実質的に純粋である請求項42に記載の方法。
【請求項44】
治療は、個体に対して機能的グルコセレブロシダーゼ酵素を投与することをさらに含む請求項42に記載の方法。
【請求項45】
酒石酸イソファゴミンの有効量は、1用量当たり10〜100mgである請求項42に記載の方法。
【請求項46】
哺乳類細胞においてグルコセレブロシダーゼの活性を高める方法であって、グルコセレブロシダーゼの活性を高めるのに有効な量の酒石酸イソファゴミンに細胞を接触させることを含む方法。
【請求項47】
酒石酸イソファゴミンは、結晶形態である請求項46に記載の方法。
【請求項48】
結晶形態は、(2シータ)9.29±0.009、14.17±0.009、16.34±0.009、18.07±0.009、18.72±0.009、19.44±0.009、20.56±0.009、22.13±0.009、23.01±0.009、24.54±0.009および27.12±0.009のうちの5つ以上のピークを含むX線粉末回折パターンを有する請求項46に記載の方法。
【請求項49】
哺乳類細胞は、ヒト細胞である請求項46に記載の方法。
【請求項50】
酒石酸イソファゴミンは、グルコセレブロシダーゼを安定化させるのに有効な量でグルコセレブロシダーゼに逆結合する請求項46に記載の方法。
【請求項51】
水溶液を使用して1kg以上の規模で容易に再結晶され、酒石酸イソファゴミンであるイソファゴミンの薬学的に許容可能な塩。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−314540(P2007−314540A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−138358(P2007−138358)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(507170099)アミカス セラピューティックス インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】