説明

イタコン酸のエステルの乳化重合

水性媒体中、種粒子の存在下でイタコン酸のエステルを重合させる。種粒子は、該モノマーを吸収し、所望の粒径への重合を実現することができる。生成されたポリマーは、接着剤、ペイント、および紙配合物(paper formulation)の形で使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に完全に組み込む2009年12月16日出願の米国仮出願第61/287,162号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、イタコン酸のエステル、例えば、アルキルイタコネートとして知られているイタコン酸のアルキルエステルの重合に関する。この重合は、好ましくは臨界ミセル濃度未満(すなわち、ミセルが存在しない)である乳化法(すなわち、水性媒体中、乳化剤および水溶性開始剤の存在下での重合)を介して、種粒子の存在下で進行し得る。さらに、次いで、条件を制御して、持続的な重合速度を促進し、比較的高い固形分を生じさせることができる。
【背景技術】
【0003】
ペンダントカルボン酸官能基を含有するビニル型モノマーの重合は、いくつかの独特な課題を常に提示してきた。例えば、米国特許第5,223,592号では、重合反応を実施する前にイタコン酸型モノマーの完全な中和を実現することが重要な側面であることが報告されており、完全な中和は、イタコン酸1モルにつき2モルの塩基性中和剤を有するものとして同定されている。米国特許第5,336,744号は、部分中和モノマー溶液、水、多価金属イオン、および開始剤の水性重合方法により、イタコン酸のポリマーが高い転化率で形成されることを報告している。
【0004】
ペンダントカルボン酸基およびエステル官能基(ester group functionality)を含有するビニル型モノマーに基づいた方法およびポリマーに関する「Polycarboxylic Acid Polymers」という表題の米国特許出願公開第2009/0286847号も注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,223,592号
【特許文献2】米国特許第5,336,744号
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0286847号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の構造:
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R1およびR2は、アルキル基(例えば、nが1〜18の値を有する-(CnH2n+1))、または芳香族基、または環式アルキル基または水素原子、およびそれらの組合せから選択され、R3は、アルキル基、芳香族官能基、複素環式芳香族官能基、環式アルキル基、複素環式基、またはそれらの組合せから選択することができる)
を1つまたは複数有するモノマーを供給する工程と、
乳化剤を含有する水性媒体中に種粒子を供給し、前記モノマーを前記水性媒体に添加する工程であって、前記種粒子が前記モノマーを吸収し、前記種粒子が、重合させようとする前記モノマーの粒径の制御が可能となる濃度で存在する工程と、
前記モノマーを重合させる工程と
を含む重合方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
説明全体を通して、同様の参照数字および文字は、複数の図の全体を通して、対応する構造を示す。また、特定の代表的な実施形態の任意の特定の特色は、必要に応じて本明細書の任意の他の代表的な実施形態に等しく適用することができる。換言すると、本明細書に記載の様々な代表的な実施形態の間の特色は、必要に応じて互換的であり、排他的ではない。
【0010】
本開示は、その適用において、以下の説明で説明する、または図面で例示する構成の詳細および部品の配置に限定されるものではないことが理解されよう。本明細書の実施形態は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実行または実施することが可能である。また、本明細書において使用する言い回しおよび用語法は、説明の目的のためのものであり、限定的なものと理解すべきものではないことが理解されよう。本明細書における「を含む(including)」、「を含む(comprising)」、または「を有する(having)」およびこれらの変化形の使用は、以下で列挙する項目およびそれらの等価物、ならびにさらなる項目を包含することを意図したものである。
【0011】
本発明の乳化手順において重合させることができるモノマーは、以下の通り:
【0012】
【化2】

【0013】
であり、式中、R1およびR2は、アルキル基(例えば、nが1〜18の値を有する-(CnH2n+1))、または芳香族基、または環式アルキル基、または水素原子およびそれらの組合せから選択される。さらに、R3は、アルキル基、芳香族官能基、複素環式芳香族官能基、環式アルキル基、複素環式基、またはそれらの組合せから選択することができる。該モノマーは、最初に、本明細書において種粒子として記載しているものを提供するために第1段階の重合で重合させることができる。そのような種粒子は、次いで、さらなる量の上記モノマーに曝露することができ、次いで、種粒子は、そのようなモノマーを吸収し、続く重合を可能にすることができる。
【0014】
したがって、本明細書の種粒子は、以下の構造:
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、R1およびR2は、やはり、アルキル基(例えば、nが1〜18の値を有する-(CnH2n+1))、または芳香族基、または環式アルキル基、およびそれらの組合せから選択され、R3は、アルキル基、芳香族官能基、複素環式芳香族官能基、環式アルキル基、複素環式基、またはそれらの組合せから選択され、mは、種粒子が4000〜500000g/モルの数平均分子量またはMn値および6,500〜750000g/モルの重量平均分子量またはMw値を有するような値を有する)を有するポリマーからなるものでもよい。
【0017】
好ましくは、本明細書において提供するモノマーは、完全にバイオベースのモノマーであり、これは、バイオベースのモノマーが、植物バイオマスからつい最近誘導されたものであり、石油由来のものではないことを意味するものと理解することができる。例えば、イタコン酸は、グルコースの発酵から単離し、次いで、アルコールでエステル化することができ、そのアルコールも、同様に植物バイオマスから誘導され、石油源から誘導されるものではない。該モノマーは、また、AIBNおよび/または2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などのフリーラジカル開始剤ならびに/あるいは過硫酸ナトリウムなどのアニオン型のフリーラジカル開始剤により効果的に重合するものである。フリーラジカルおよび/またはアニオン型の開始剤のレベルは、好ましくは、モノマーに対する開始剤の重量比が10-4〜3×10-2となるようなものとすることができる。したがって、本明細書における重合が、アニオン型の重合と同時に発生するフリーラジカル型の重合を含み得る重合であることが理解されよう。
【0018】
さらに、本明細書のモノマー組成物は、好ましくは、やはりフリーラジカル開始剤および/またはアニオン型のフリーラジカル開始剤により重合させることができるビニル(不飽和)モノマーの任意の混合物を含むことができ、該モノマーの少なくとも50.0重量%以上は、上記のジエステル型モノマー(例えばイタコン酸ジアルキルおよび/またはイタコン酸二芳香族(diaromatic itaconate))から選択される。したがって、本発明は、上記ジエステル型モノマーと、異なるビニル型モノマーとのコポリマーに当てはまり、本明細書の異なるビニル型モノマーは、上記イタコン酸ジアルキルおよび/またはイタコン酸二芳香族などのジエステルの一般的カテゴリーに入らないモノマーとして理解することができる。
【0019】
例えば、本明細書のジエステル型のものではないそのようなモノマーとしては、エチレン、酢酸ビニル、ブタジエン、アクリル酸アルキル、スチレン等を挙げることができる。例えば、該モノマーの50.0重量%以上は、上記イタコン酸アルキル(式中、R1およびR2は、アルキル基から選択される)から選択することができ、該モノマーの50.0重量%以下は、異なるビニル型モノマー構造(やはり、イタコン酸ジアルキルおよび/またはイタコン酸二芳香族ではないモノマー)から選択される。これにより、50.0重量パーセント以上の濃度で存在する反復単位としてイタコン酸のエステルを含むコポリマーが生じる。好ましくは、ジエステル型モノマーのレベルは、90.0重量パーセント以上のレベルとすることができる。この重合は、また、好ましくは、比較的少量の酸性モノマー(すなわち、上記式(式中、R1およびR2の少なくとも一方またはR1およびR2の両方を水素とすることができる)の非エステル化モノマー)を多少含むように構成することができる。例えば、イタコン酸ジアルキルの重合は、0.1wt%〜5wt%のイタコン酸またはイタコン酸モノアルキル型モノマーの存在下で進行し得る。
【0020】
上記モノマーは、したがって、種粒子ラテックス中で重合させることができ、これは、水媒体内で界面活性剤および/または乳化剤と共にポリマーの種粒子を使用することへの言及である。したがって、種粒子は、次いで、それらの元の体積の約5倍またはそれらの元の体積の2〜5倍の範囲のサイズの増大(膨潤)と共に上記モノマーを吸収するポリマーとすることができる。したがって、このように粒径を制御できることが理解されよう。種粒子は、また、好ましくは、やはり完全にバイオベースのポリマーから選択することができるが、ポリスチレンなどの石油ベースの供給源からのポリマーを排除するものではない。種粒子は、好ましくは、例えば、ポリジメチルイタコネート、またはポリジエチルイタコネートを含むことができる。種粒子の存在下での乳化重合は、また、単段または多段供給乳化型重合(single stage or multistage fed emulsion type polymerization)を通して実現することができる。例えば、第1段階で種粒子を調製し、第2段階では、さらなるモノマーの吸収およびその後の重合が可能となる速度で、種粒子を含有する水性相にさらなるモノマーを添加する。
【0021】
上で言及した通り、本明細書のエマルジョンは、界面活性剤または乳化剤を含むエマルジョンである。界面活性剤および/または乳化剤の濃度は、種粒子が最終的に粒径を制御することが可能となるように、ミセルが形成されないような濃度である。界面活性剤または乳化剤は、アニオン性もしくは非イオン性またはその両方の組合せとすることができ、界面活性剤または乳化剤の重量比が10-4〜5×10-2の範囲となるような好ましい濃度で存在し得る。
【0022】
重合装置は、好ましくは、機械的撹拌器、温度制御装置、還流冷却器、および酸素を排除するための雰囲気制御装置を有する密閉反応器である。最初に材料の一部を反応器に充填し、一方、その他の材料は、一定期間にわたって、均一または不均一に添加する。熱開始剤または開始剤系をバッチで、および/または徐々に添加して、主題のモノマーを重合させることができるフリーラジカルを生成する。選択した期間にわたる該モノマーの「半連続」添加を採用して、該モノマーを反応器に導入することが好ましい。
【0023】
種粒子は、好ましくは、10nm〜200nmのサイズ範囲(最大線寸法)、より好ましくは30nm〜150nmの範囲とすることができ、種粒子の具体的な固形分は、1.0wt%〜40.0wt%、好ましくは5.0wt%〜30.0wt%の範囲である。種粒子は、石油ベースの材料から、または、好ましくは、完全にバイオベースの材料から作製することができる。
【0024】
界面活性剤および他の乳化剤は、選択的に、ミセル形成を回避する濃度である。換言すると、界面活性剤および乳化剤は、種粒子が本明細書に記載の重合エステルベースのモノマーの粒径を制御すること、ならびに種粒子の第2クロップの再核生成および形成を限定することが可能となる濃度で存在する。したがって、本明細書において最終的に生成する好ましいエステルベースのポリマーのサイズは、好ましくは20nm〜500nmの範囲の体積平均粒径、好ましくは1nm〜100nmの範囲の数平均粒径を有することができる。
【0025】
エマルジョン全体の固形分(水性媒体中の種粒子への、本明細書に記載のエステルベースのモノマーの導入後)は、好ましくは、20.0wt%〜55.0wt%、より好ましくは35.0wt%〜55.0wt%とすることができる。そのような固形分への言及は、水性相の蒸発後の水性媒体中の固体の百分率への言及であり、したがって、種粒子、界面活性剤およびモノマーを含む。エマルジョンは、1000cP以下の粘度を有するように構成することができる。
【0026】
種粒子の存在下での重合の反応温度は、50℃〜110℃、好ましくは70℃〜95℃の範囲とすることができる。上で言及した通り、次に、モノマー添加時間を調節し、分子量を低減し反応速度を低減する可能性がある停止反応を相当量発生させることなく、より効率的な重合の進行が可能となるように制御する。したがって、水性媒体中の種粒子へのモノマー添加は、好ましくは、約0.25〜24時間、好ましくは3〜12時間にわたって行うことができる。モノマー添加速度も、合計(最終)ポリマー量の単位質量当たり5〜25wt%/hrの範囲となるように制御した。さらに、種粒子に添加したモノマーの重量比は、0.5〜500、好ましくは1.5〜100の範囲である。後重合は、選択した期間進行することができ、モノマー供給の終了後約1時間およびモノマー供給の終了後最大で24時間とすることができる。
【0027】
一次重合の後に、室温から70℃までの間の温度(25℃〜70℃)が2hr〜500hrの範囲で長時間続き、その間に、明確に温度を制御することなく比較的高い重合収率の実現が可能となる特定の低温酸化還元フリーラジカル開始剤系(low-temperature redox free radical initiator system)による重合が、例えば「ブローダウン反応器(blow-down reactor)」と呼ばれる密閉容器において完了する。本明細書におけるモノマー転化率は、75%〜99%の範囲、好ましくは85%〜99%の範囲に達することができる。低温酸化還元フリーラジカル開始剤系は、過酸化水素/アスコルビン酸またはt-ブチル過酸化物/アスコルビン酸を含み得る。
【0028】
本明細書において重合したモノマーに関して得られる分子量は、5000〜100000の範囲の数平均分子量値(Mn)を示す。さらに、重量平均分子量(Mw)値は、10000〜500000の範囲である。分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜5.0の範囲に入ることが観察される。
【0029】
種粒子内で重合したモノマーのガラス転移温度(Tg)は、種粒子ポリマーと、吸収され、重合したモノマーとが異なる場合、2つ以上のガラス転移温度を観察することができるようなものである。すなわち、-40.0℃から+20.0℃までの間の第1のTg(例えば、イタコン酸ジブチルを利用した場合)および-35.0℃〜110.0℃の比較的高い範囲の第2のTg(イタコン酸ジメチルを利用した場合)を観察することができる。より好ましくは、第1のTgは、-35.0℃〜+5.0℃の範囲とすることができ、第2のTgは、+45.0℃〜95℃の範囲とすることができる。Tgは、DSC分析における温度パターン(temperature trace)に対する熱容量の変曲点である。
【0030】
今では理解されようが、本明細書の重合手順の別の重要な特徴は、第1の工程において、種粒子ラテックスを調製し得ることであることにも留意されたい。この後に、次いで、種粒子により吸収される添加モノマーの第2段階の重合を実施することができ、種粒子内のこの重合により、種粒子は、本明細書に記載の示したサイズまで膨張する。
【0031】
したがって、本開示は、乳化型重合における、比較的小さいサイズの種粒子の存在下、持続的な重合速度を実現するためにモノマーの添加速度が制御され、停止反応(例えば、ラジカル鎖の反応が個々の粒子内で終了する)のレベルが低減された状態での、示したモノマーの使用に関し、それにより、続くポリマーの粒径制御および全体的に改善された安定性を乳化重合系に付与することが理解されよう。
【0032】
乳化手順を利用する、上で開示した重合戦略は、再生可能/持続可能/バイオベースの水性ポリマー(その後、結合剤または接着剤型の製品として作用し得る)が要求される市場において有用性を有する。したがって、市場としては、建築用塗料、グラフィックアート、水性接着剤、感圧接着剤および紙用塗料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
(実施例)
以下で示す実施例において、固形分は、160℃に設定した水分計を使用して質量損失により測定したことに留意されたい。その温度では、数分の間にDBIおよびDMIの両方が完全に蒸発したことを実験的に確認することができる。
【0034】
転化率は、全ての揮発性モノマーおよび水が水分計により蒸発に付されたと仮定し、配合表の質量収支により算出した。
【0035】
分子量は、テトラヒドロフランを溶離液として使用し、ポリスチレン標準に対して較正し、ゲル浸透クロマトグラフィーにより求めた。
【0036】
粒径は、動的光散乱により測定した。
【0037】
ガラス転移(Tg)は、最初に105℃で少なくとも20分間乾燥し、次いで、+/-2℃の振幅の変調加熱法(modulated heating)を使用して3℃/minの加熱速度で60秒間乾燥した試料に対する示差走査熱量測定(DSC)により測定した。
【0038】
種粒子
種ポリマーは、以下の方法により調製することができる。300rpmで機械的に撹拌されている1Lの反応器に、酸素および二酸化炭素を含まない脱イオン水587.2グラム、硫酸ドデシルナトリウム1.5グラム、スチレン150グラムを添加した。この水溶液を含む反応器を窒素でパージし、70℃まで加熱した。過硫酸カリウム1.22グラムをこの反応器に添加し、加熱および機械的撹拌を5時間維持した。得られたラテックスは、20.6wt%の固形分、および38nmの平均粒径直径を有する。このポリスチレン種は、498000g/モルの分子量、重量平均を有していた。
【0039】
(実施例I)
200rpmで機械的に撹拌されている250mlの反応器に、酸素および二酸化炭素を含まない脱イオン水80グラム、硫酸ドデシルナトリウム0.3グラム、イタコン酸0.2グラム、ラテックス種ポリマー5mlを添加した。この反応器および水溶液を窒素でパージし、80℃まで加熱した。
【0040】
連続的な添加(linear addition)のために灌流シリンジポンプ(perfusion syringe pump)を使用し、イタコン酸ジメチルの溶液20mlを6時間にわたって添加した。後重合をさらに12時間実施した。得られたラテックスを冷却し、分析した。
【0041】
得られたポリマーは、19.64wt%の固形分を有していた。配合表の質量収支に基づいて算出すると、転化率は88%であった。分子量数平均は20662g/モルであり、分子量重量平均は34688g/モルであった。粒径を測定すると、体積平均は303nmであり、数平均は265nmであった。ガラス転移は81.6℃であった。
【0042】
(実施例II)
200rpmで機械的に撹拌されている250mlの反応器に、酸素および二酸化炭素を含まない脱イオン水80グラム、硫酸ドデシルナトリウム0.3グラム、イタコン酸0.2グラム、ラテックス種ポリマー5mlを添加した。この反応器および水溶液を窒素でパージし、80℃まで加熱した。
【0043】
連続的な添加のために灌流シリンジポンプを使用し、60/40(それぞれ)のwt%比のイタコン酸ジメチルとイタコン酸ジブチルの溶液20mlを6時間にわたって添加した。後重合をさらに12時間実施した。得られたラテックスを冷却し、分析した。
【0044】
得られたポリマーは、18.20wt%の固形分を有していた。配合表の質量収支に基づいて算出すると、転化率は84%であった。分子量数平均は18129g/モルであり、分子量重量平均は34982g/モルであった。粒径を測定すると、体積平均は106nmであり、数平均は45nmであった。ガラス転移は51.9℃であった。
【0045】
(実施例III)
200rpmで機械的に撹拌されている250mlの反応器に、酸素および二酸化炭素を含まない脱イオン水80グラム、硫酸ドデシルナトリウム0.3グラム、イタコン酸0.2グラム、ラテックス種ポリマー5mlを添加した。この反応器および水溶液を窒素でパージし、80℃まで加熱した。
【0046】
連続的な添加のために灌流シリンジポンプを使用し、イタコン酸ジブチル20mlを8時間にわたって添加した。後重合をさらに10時間実施した。得られたラテックスを冷却し、分析した。
【0047】
得られたポリマーは、22.76wt%の固形分を有していた。配合表の質量収支に基づいて算出すると、転化率は完全であった。分子量数平均は10216g/モルであり、分子量重量平均は16948g/モルであった。粒径を測定すると、体積平均は39nmであり、数平均は22nmであった。ガラス転移は-11.3℃であった。
【0048】
(実施例IV)
200rpmで機械的に撹拌されている250mlの反応器に、酸素および二酸化炭素を含まない脱イオン水80グラム、硫酸ドデシルナトリウム0.3グラム、イタコン酸0.2グラム、ラテックス種ポリマー5mlを添加した。この反応器および水溶液を窒素でパージし、80℃まで加熱した。
【0049】
連続的な添加のために灌流シリンジポンプを使用し、イタコン酸ジブチル20mlを10時間にわたって添加した。後重合をさらに8時間実施した。得られたラテックスを冷却し、分析した。
【0050】
得られたポリマーは、16.11wt%の固形分を有していた。配合表の質量収支に基づいて算出すると、転化率は78%であった。分子量数平均は6169g/モルであり、分子量重量平均は11237g/モルであった。粒径を測定すると、体積平均は37nmであり、数平均は22nmであった。-9.5℃で大きいガラス転移を記録し、108℃で小さいガラス転移を記録した。
【0051】
(実施例V)
200rpmで機械的に撹拌されている250mlの反応器に、酸素および二酸化炭素を含まない脱イオン水80グラム、硫酸ドデシルナトリウム0.3グラム、イタコン酸0.2グラム、ラテックス種ポリマー5mlを添加した。この反応器および水溶液を窒素でパージし、80℃まで加熱した。
【0052】
連続的な添加のために灌流シリンジポンプを使用し、10/90(それぞれ)のwt%比のイタコン酸ジメチルとイタコン酸ジブチルの溶液20mlを10時間にわたって添加した。後重合をさらに8時間実施した。得られたラテックスを冷却し、分析した。
【0053】
得られたポリマーは、14.82wt%の固形分を有していた。配合表の質量収支に基づいて算出すると、転化率は71%であった。分子量数平均は15338g/モルであり、分子量重量平均は26059g/モルであった。粒径を測定すると、体積平均は53nmであり、数平均は31nmであった。-5.8℃で比較的大きいガラス転移を記録し、109℃で比較的小さいガラス転移を記録した。
【0054】
(実施例VI)
200rpmで機械的に撹拌されている250mlの反応器に、酸素および二酸化炭素を含まない脱イオン水80グラム、硫酸ドデシルナトリウム0.3グラム、イタコン酸0.2グラム、実施例IVから得たラテックス5mlを添加した。この反応器および水溶液を窒素でパージし、80℃まで加熱した。
【0055】
連続的な添加のために灌流シリンジポンプを使用し、10/90(それぞれ)のwt%比のイタコン酸ジメチル(DMI)とイタコン酸ジブチル(DBI)の溶液20mlを10時間にわたって添加した。後重合をさらに8時間実施した。得られたラテックスを冷却し、分析した。
【0056】
得られたポリマーは、17.77wt%の固形分を有していた。配合表の質量収支に基づいて算出すると、転化率は87%であった。分子量数平均は13991g/モルであり、分子量重量平均は24831g/モルであった。粒径を測定すると、体積平均は51nmであり、数平均は37nmであった。ガラス転移(Tg)は-8.2℃であった。
【0057】
実施例IからVIにおいて形成し得られたポリマーは、全て、一般に良好なコロイド安定性を有することが観察され、視覚的には、顕著な凝塊を含まず、顕著な凝集を含まないように見えた。
【0058】
(実施例VII)
150rpmで機械的に撹拌されている5Lの反応器に、酸素および二酸化炭素を含まない脱イオン水2168グラム、硫酸ドデシルナトリウム62グラム、次亜リン酸ナトリウム83グラム、ポリスチレン種ポリマー(数平均は35nm、20%固形分)521グラムを添加した。この反応器および水溶液を窒素でパージし、80℃まで加熱した。
【0059】
次いで、水溶液中の33.3wt.%過硫酸ナトリウム31.3グラムをこの反応器に添加した。計量ポンプ(dosing pump)を使用し、イタコン酸ジメチル2150グラムを反応器に18時間にわたって供給した。第2の計量ポンプを使用し、水溶液中の33.3wt.%過硫酸ナトリウム29.6グラムを反応器に18時間にわたって供給した。供給の終了後、加熱および撹拌をさらに2時間維持した。次いで、反応温度を60℃まで低下させた。アスコルビン酸5.3グラムをこの反応器に添加した。灌流シリンジポンプを使用し、水溶液中の70wt.%tert-ブチルヒドロペルオキシド22.2グラムを反応器に7時間にわたって供給した。加熱および撹拌をさらに5時間維持した。得られたラテックスを冷却し、分析した。
【0060】
得られたポリマーは、47.0wt.%の固形分を有していた。GPCを介して算出すると、転化率は94.1%であった。数平均分子量は4261g/モルであり、重量平均分子量は9166g/モルであった。粒径を測定すると、体積平均は210.4nmであり、数平均は148.5nmであった。-26.48℃でガラス転移を記録した。
【0061】
(実施例VIII)
100rpmで機械的に撹拌されている5Lの反応器に、酸素および二酸化炭素を含まない17.0wt.%の固形分を有するイタコン酸ポリジメチル種634グラム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8グラム、イタコン酸11グラムを添加した。この反応器および水溶液を窒素でパージし、80℃まで加熱した。
【0062】
次いで、過硫酸ナトリウム1.4グラムと共にイタコン酸ジブチル76グラムをこの反応器に添加した。1時間後、計量ポンプを使用し、イタコン酸ジブチル203グラムを反応器に6時間にわたって供給した。第2の計量ポンプを使用し、水溶液中の33.3wt.%過硫酸ナトリウム4.2グラムをこの反応器に6時間にわたって添加した。得られたラテックスを冷却し、分析した。
【0063】
得られたポリマーは、36.0wt.%の固形分を有していた。GPCを介して算出すると、転化率は96%であった。数平均分子量は17700g/モルであり、重量平均分子量は276120g/モルであった。粒径を測定すると、体積平均は237.8nmであり、数平均は108.7nmであった。-26.06℃、17.9℃、および50.94℃でガラス転移を記録した。
【0064】
(実施例IX)
100rpmで機械的に撹拌されている5Lの反応器に、酸素および二酸化炭素を含まない水2700グラム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.4グラムを添加した。この反応器および水溶液を窒素でパージし、75℃まで加熱した。過硫酸ナトリウム5.22グラムおよび2,2-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)2.24グラムと共にイタコン酸ジエチル745グラムをこの反応器に添加した。加熱および機械的撹拌を10時間維持した。得られたラテックスは、18.9wt.%の固形分を有していた。GPCを介して算出すると、転化率は81%であった。数平均分子量は12578g/モルであり、重量平均分子量は66783g/モルであった。粒径を測定すると、体積平均は133.3nmであり、数平均は96.8nmであった。11.36℃および79.15℃でガラス転移を記録した。
【0065】
(実施例X)
100rpmで機械的に撹拌されている5Lの反応器に、酸素および二酸化炭素を含まない18.9wt.%固形分を有するイタコン酸ポリジエチル種粒子(実施例IX)1953グラム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム17グラム、イタコン酸17グラムを添加した。この反応器および水溶液を窒素でパージし、80℃まで加熱した。
【0066】
次いで、過硫酸ナトリウム2.5グラムおよび2,2-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)11.8グラムと共に、15/85(それぞれ)のwt%比のイタコン酸ジメチルとイタコン酸ジブチルの溶液313グラムを反応器に添加した。1時間後、計量ポンプを使用し、15/85(それぞれ)のwt%比のイタコン酸ジメチルとイタコン酸ジブチルの溶液527グラムを反応器に6時間にわたって供給した。第2の計量ポンプを使用し、水溶液中の33.3wt.%過硫酸ナトリウム7.6グラムをこの反応器に6時間にわたって添加した。得られたラテックスを冷却し、分析した。
【0067】
得られたポリマーは、40.3wt.%の固形分を有していた。GPCを介して算出すると、転化率は82.4%であった。数平均分子量は10405g/モルであり、重量平均分子量は33887g/モルであった。粒径を測定すると、体積平均は873nmであり、数平均は163.1nmであった。-14.79℃および75.44℃でガラス転移を記録した。
【0068】
(実施例XI)
100rpmで機械的に撹拌されている5Lの反応器に、酸素および二酸化炭素を含まない水1240グラム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム7グラムを添加した。この反応器および水溶液を窒素でパージし、75℃まで加熱した。過硫酸ナトリウム2.45グラムおよび2,2-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)1.05グラムと共に、イタコン酸ジエチル350グラムをこの反応器に添加した。加熱および機械的撹拌を6時間維持した。6時間後、反応温度を80℃まで上昇させた。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム13.8グラムおよびイタコン酸13.8グラムを反応器に添加した。2,2-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)6.9グラムと共に、25/75(それぞれ)のwt.%比のイタコン酸ジエチルとイタコン酸ジブチルの溶液257グラムを反応器に添加した。1時間後、計量ポンプを使用し、25/75(それぞれ)のwt%比のイタコン酸ジエチルとイタコン酸ジブチルの溶液433グラムを反応器に3時間にわたって供給した。2,2-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)6.9グラムを水50グラムに溶解し、第2の計量ポンプを使用してこの溶液を反応器に6時間にわたって供給した。得られたラテックスを冷却し、分析した。
【0069】
得られたポリマーは、38.72wt.%の固形分を有していた。GPCを介して算出すると、転化率は84.4%であった。数平均分子量は10645g/モルであり、重量平均分子量は26487g/モルであった。粒径を測定すると、体積平均は184.6nmであり、数平均は144.1nmであった。80.27℃でガラス転移のうちの1つを記録した。
【0070】
本明細書に記載の様々な実施形態の全ては互換的であり、本明細書に記載の重合の開示している特徴のいずれかおよび全てを最適化するために、いずれかの図面内の特色はそれぞれの図面内で使用できることも理解されたい。
【0071】
複数の方法および実施形態の前述の説明は、例示の目的のために示したものである。これは、網羅的であることを意図したものではなく、上記教示に照らして、明らかに多くの修正および変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造:
【化1】

(式中、R1およびR2は、アルキル基(例えば、nが1〜18の値を有する-(CnH2n+1))、または芳香族基、または環式アルキル基、およびそれらの組合せから選択され、R3は、アルキル基、芳香族官能基、複素環式芳香族官能基、環式アルキル基、複素環式基、またはそれらの組合せから選択される)
を1つまたは複数有するモノマーを供給する工程と、
乳化剤を含有する水性媒体中に種粒子を供給し、前記モノマーを前記水性媒体に添加する工程であって、前記種粒子が前記モノマーを吸収し、前記種粒子が、重合させようとする前記モノマーの粒径の制御が可能となる濃度で存在する工程と、
前記モノマーを重合させる工程と
を含む重合方法。
【請求項2】
前記モノマーが、R1およびR2が前記アルキル基または芳香族基または環式アルキル基であるモノマーから選択され、50.0重量%以上のレベルで存在し、R1およびR2がアルキル基または芳香族基または環式アルキル基であるビニルモノマー以外のビニルモノマーを50.0重量%以下さらに含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記種粒子が、最大線寸法で10nm〜200nmのサイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記種粒子が、1.0重量パーセント〜40.0重量パーセントのレベルで前記水性媒体中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記モノマーが、重合して20nm〜500nmの体積平均粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記モノマーが、前記種粒子を含有する前記水性媒体に0.25〜24.0時間にわたって添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
種粒子に対するモノマーの重量比が0.5〜500の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
重合が50.0℃〜110℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
示した構造を有する前記モノマーの前記重合が、アニオン性および/または中性型のフリーラジカル開始剤により開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
示した構造を有する前記モノマーに対する前記開始剤の重量比が10-4〜3×10-2である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
R1またはR2の少なくとも一方が水素であり、0.1〜5.0重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記モノマーおよび種粒子が、20.0重量パーセントから55.0重量パーセントまでの間の固形分で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記モノマーのポリマーへの転化率が75%〜99%のレベルである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記モノマーが5000〜100000の数平均分子量(Mn)値まで重合する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記モノマーが10000〜500000の重量平均分子量(Mw)値まで重合する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜5.0の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
重合したモノマーが、-40.0℃から+20.0℃までの間の第1のTgおよび-35.0℃〜110.0℃の範囲の第2のTgを含む2つのガラス転移温度を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記種粒子が、以下のポリマー構造:
【化2】

(式中、R1およびR2は、アルキル基(例えば、nが1〜18の値を有する-(CnH2n+1))、または芳香族基、または環式アルキル基、およびそれらの組合せから選択され、R3は、アルキル基、芳香族官能基、複素環式芳香族官能基、環式アルキル基、複素環式基、またはそれらの組合せから選択され、mは、前記種粒子が4000〜500000g/モルのMn値を有するような値を有する)
からなる、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2013−514453(P2013−514453A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544821(P2012−544821)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060726
【国際公開番号】WO2011/075567
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512158365)ユニバーシティ・オブ・ニュー・ハンプシャー (1)
【Fターム(参考)】