説明

イナゴ加水分解物、その製造方法、及びイナゴ加水分解物配合剤

【課題】マウスの性機能を改善でき、マウスの抗酸素不足能力を高める。
【解決手段】イナゴ粉末HCをビーカーに入れ、40℃の条件で1時間保温する。保温後、ビーカーに活性化した配合酵素を加えて、50℃まで温度を上昇させる。この時、懸濁液内のHCに対する配合酵素の割合は3%である。懸濁液を、PH=7となるように調整し、加水分解温度50℃に維持した状態で4時間撹拌させ、HCに含まれる蛋白質等の構成成分を加水分解する。加水分解後、懸濁液を90℃で10分間加熱して配合酵素等を死滅させる。加熱後、懸濁液を遠心濾過して濾液を回収する。一方、残渣を熱水で二回洗浄する。この二回の洗浄液に先程の濾液を混合する。洗浄液と濾液からなる混合液を90℃で10分間殺菌し、回転蒸発措置で減圧濃縮させ、水浴温度70℃で、乾燥するまで水分を蒸発させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イナゴ(Huang Chong)を加水分解する技術に関し、加水分解によって生成されたイナゴ固有のペプチドを主成分としてなるイナゴ加水分解物、その製造方法、及びイナゴ加水分解物配合剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、動植物に含まれる蛋白質を加水分解する技術として、例えば、特許文献1、2に記載されたものが知られている。特許文献1には、乳清蛋白等から蛋白加水分解物を得るための加水分解技術が記載され、また特許文献2には、藻類から加水分解物を得るための加水分解技術が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特公平7−32718号公報
【特許文献2】特開2005−263707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加水分解の対象となる動植物に関して、これまでイナゴをその対象物とする加水分解技術は存在していなかった。
【0005】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、イナゴを加水分解の対象物とし、加水分解によって生成されたイナゴ固有のペプチドを主成分とするイナゴ加水分解物、その製造方法、及びイナゴ加水分解物配合剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明に係るイナゴ加水分解物は、所定の配合重量比からなる配合酵素を加えることによって、イナゴ粉末を加水分解して生成され、疲労回復、抗酸素不足及び性機能改善などの効果があるように構成される。ここで、イナゴとは、バッタ目イナゴ科に属するものであり、例えばコバネイナゴ、ハネナガイナゴ等である。
【0007】
請求項2の発明に係るイナゴ加水分解物は、配合酵素が、パパインと、中性プロディナーゼと、ポリペプチダーゼとを含んでなり、配合重量比が、パパイン:中性プロディナーゼ:ポリペプチダーゼ=5:3:2であるように構成される。
【0008】
請求項3の発明に係るイナゴ加水分解物は、加水分解が、水素イオン濃度指数6.5〜7.0、加水分解温度50〜55℃、加水分解時間3〜4時間の条件下で行われるように構成される。
【0009】
請求項4の発明に係るイナゴ加水分解物の製造方法は、イナゴ粉末に所定の配合重量比からなる配合酵素を加え、配合酵素によってイナゴ粉末を加水分解する加水分解工程を有してなる。
【0010】
請求項5の発明に係るイナゴ加水分解物配合剤は、少なくとも請求項1〜3のイナゴ加水分解物を配合してなり、顕著な疲労回復作用を備えるように構成される。
【0011】
請求項6の発明に係るイナゴ加水分解物配合剤は、請求項1〜3のイナゴ加水分解物と、ハチの蛹冷凍乾燥粉末と、ロイヤル・ゼリー冷凍乾燥粉末とを、所定の配合重量比で配合してなるイナゴ加水分解物配合剤であって、配合重量比が、イナゴ加水分解物:ハチの蛹冷凍乾燥粉末:ロイヤル・ゼリー冷凍乾燥粉末=3:5:2、であるように構成される。
【0012】
請求項7の発明に係るイナゴ加水分解物配合剤は、投与量を0.4g〜45g/人/日とした場合に、高効持久な効果を発揮するように構成される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜4の発明によれば、本イナゴ加水分解物を投与したマウスについて、その性機能を改善すると共に、抗酸素不足能力を高めることが可能となる。
【0014】
請求項5〜7の発明によれば、顕著な疲労回復作用を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るイナゴ加水分解物の実施の一形態を説明する。本イナゴ加水分解物は、イナゴに含まれる蛋白質を配合酵素の作用によって加水分解して生成されたペプチドを主成分としてなるものである。以下、本イナゴ加水分解物をイナゴペプチド(Huang Chong Peptide)と称し、HCPと記する。
【0016】
本発明で使用される生イナゴの平均水分含有量は、100g×0.667=66.7gである。また、生イナゴの平均乾燥重量は、100g×(1−0.667)=33.3gである。そして、乾燥させたイナゴ粉末におけるタンパク質含有量は、ケルダール法で測定したところ、70.0%である。
【0017】
また、本発明で使用される配合酵素は以下のように配合調整される。
先ず、配合する酵素として、パパイン80万u/g、中性プロディナーゼ20万u/g、塩基性プロディナーゼ20万u/g、ポリペプチダーゼ1万u/g、を用意した。尚、これら全部の酵素は、広西南寧芳、博生物工程有限公司方から提供されたものである。
配合酵素の配合割合は、パパイン:中性プロディナーゼ:ポリペプチダーゼ=5:3:2とした。尚、この配合割合は、配合重量比を示すものである。
また、配合酵素の活性化は、前記の配合割合で調製した配合酵素を100mg取り、これに10ml1%NaCl水溶液を加え、37℃の活性化温度を維持して1時間の活性化時間で保温することにより行った。
【0018】
図1は、本発明に係るHCPの製造方法の一実施形態を示し、イナゴ粉末に対する実験用配合酵素による加水分解工程を含むHCPの製造工程説明図である。
【0019】
図1に示すように、HCPは以下の手順で製造される。
(1)4gイナゴ粉末HC(基質)を150mlビーカーに入れ、40℃の条件で1時間保温する(前処理工程S1−1)。
(2)保温後、ビーカーに前述の活性化した配合酵素121mgを加えて、50℃まで温度を上昇させる。この時、ビーカー内の懸濁液の総体積は150mlであり、懸濁液内の基質に対する配合酵素の割合は3%である。
(3)懸濁液を、水素イオン濃度指数(以下、PH)=7となるように調整し、加水分解温度50℃に維持した状態で4時間撹拌させ、HCに含まれる蛋白質等の構成成分を加水分解する(加水分解工程S1−2)。
(4)加水分解後、懸濁液を90℃で10分間加熱して配合酵素等を死滅させる。
(5)加熱後、懸濁液を遠心濾過して濾液を回収する。一方、残渣を40ml50℃の熱水で二回洗浄する。この二回の洗浄液に先程の濾液を混合する。
(6)洗浄液と濾液からなる混合液を90℃で10分間殺菌し、回転蒸発措置で減圧濃縮させ、水浴温度70℃で、乾燥するまで水分を蒸発させる(後処理工程S1−3)。
(7)その結果、1.68gの薄い赤黄色のHCPの結晶を得る。この時、HCPの収率は1.68g/(4×0.7g)=60%である。また、本HCPにおいて、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動でペプチドの含有量を測定した結果、含有量は72%であり、そのペプチドの相対分子量は2000〜6000である。
【0020】
図2は、本発明に係るHCPの製造方法の他の実施形態を示し、イナゴ粉末に対する量産用配合酵素による加水分解工程を含むHCPの製造工程説明図である。
【0021】
図2に示すように、HCPは以下の手順で製造される。
(1)43kgイナゴ粉末(基質)を1000リットル容量のカバー付きステンレス缶に入れ、600リットルの水を加えて撹拌し、この懸濁液を40℃の条件で1時間保温する(前処理工程S2−1)。
(2)保温後、ステンレス缶に前述の活性化した配合酵素0.903kgを加えて、50℃まで温度を上昇させる。この時、懸濁液には水が補充されて、懸濁液の総体積は980リットルとなっており、懸濁液内の基質に対する配合酵素の割合は3%である。
(3)懸濁液を、PH=7となるように調整し、加水分解温度50℃に維持した状態で4時間撹拌させ、HCに含まれる蛋白質等の構成成分を加水分解する(加水分解工程S2−2)。
(4)加水分解後、懸濁液を90℃で10分間加熱して配合酵素等を死滅させる。
(5)加熱後、懸濁液を遠心濾過して濾液を回収する。一方、残渣を400リットル50℃の水で二回を洗浄する。この二回の洗浄液に先程の濾液を混合する。
(6)洗浄液と濾液からなる混合液を90℃で10分間殺菌する。この時、混合液の比重は、1.00〜1.05である。この混合液を、入口の温度が140℃であり、出口の温度が70℃である遠心噴霧乾燥機を用いて乾燥させる(後処理工程S2−3)。
(7)その結果、15.12kgの淡い褐色でふわふわとしているHCPの固体を得る。この時、HCPの収率は15.12/30.1=50%である。ここで、「30.1」は、イナゴ粉末43kgの70%(蛋白質含有量)から導出した。また、本HCPにおいて、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動でペプチドの含有量を測定した結果、含有量は72%であり、そのペプチドの相対分子量は2000〜6000である。また、水分含有量は3%である。そして、細菌検査の結果は陰性である。
【0022】
次に、HCP、及び所定量のHCPを配合してなるHCP配合剤の各種の活性機能について検証する。
第1のHCP配合剤(以下、HCP1とする)は、700mg/錠となるように、HCP420mg(60%)と、配合物として、東北人参抽出エキス210mg(30%)、及び西洋人参抽出エキス70mg(10%)から構成される。
第2のHCP配合剤(以下、HCP2とする)は、700mg/錠となるように、HCP420mg(60%)と、配合物として、東北人参抽出エキス175mg(25%)、西洋人参抽出エキス70mg(10%)、及び白ハマビシ抽出エキス35mg(5%)から構成される。
尚、HCPは、純イナゴペプチドであり、72%のペプチドを含有している。
【0023】
HCP、HCP1、HCP2による各種の活性機能を検証は、以下の動物実験(1)〜(8)によって行った。
先ず、実験組として、何も投与しない対照組、イナゴ粉末(イナゴを乾燥粉末化した状態で含まれるたんぱく質、以下、イナゴ蛋白質)を投与する陽性対照組(HC組)、HCP1を投与するHCP1組 、HCP2を投与するHCP2組、HCPを投与するHCP組の計5組に組み分ける。各組につき12匹ずつのマウスを割り当てる。ここで、各マウスとして、ICRマウス300匹の中から、雌雄各半数ずつ、それぞれの体重が18〜22g、平均体重が約20gとなるものを選択する。
各組の投与量は、イナゴ蛋白質またはHCPを870mg/kg、HCを1242.9mg/kg、HCPが皆17.4mg/0.3ml/匹とする。尚、各組の投与量は、以下の臨床推薦量に相当する。(17.4mg×50)/(20g×50) ×55Kg(男女平均体重)÷1400mg=34倍である。よって、臨床推薦使用量は、700mg/錠×2錠=1400mgとなる。
【0024】
先ず、HCP1 、HCP2 、HCPによるマウスの体力性疲労に対する影響を検証するため、以下の実験(1)〜(6)を行った。
(1)水泳実験
先ず一辺が少なくとも30cm以上の水面面積と所定深さを備え、水温25±1℃の温水を所定量加えてなる水泳箱を用意する。最終回受験物をマウスに投与してから30分後に、そのマウスのお尻に体重の5%の重量物を背負わせて、この水泳箱で水泳をさせる。水泳開始から頭部の全てが水中に入って水面に浮かびだすことができないときまでの時間をマウスの水泳時間として記録する。
【0025】
(2)棒のぼり実験
マウスが棒のぼりできるように処理した有機ガラス棒を鉛直方向へ向けて配置する。最終回受験物をマウスに投与してから30分後に、そのマウスを有機ガラス棒に置き、マウスの筋肉が緊張状態となるようにする。マウスを置いた時間からマウスの筋肉疲労で有機ガラス棒から落ちる時間を記録する。マウスが三回落ちた時、実験は終了とする。計三回の累計時間をマウスの棒のぼり時間とする。
【0026】
(3)血中尿素窒素の測定実験
最終回受験物をマウスに投与してから30分後に、そのマウスを水温25±1℃の前述の水泳箱で90分間水泳させる。60分間休ませた後に、眼球から血液を採り、血清を取って試薬キットで血中尿素窒素を測定する。
【0027】
(4)肝グリコーゲンの測定実験
最終回受験物をマウスに投与してから30分後に、そのマウスを水温30±1℃の水泳箱で60分間水泳させる。マウスを死亡させて肝臓を取り、正確に200mg取って4mlのトリクロロ酢酸(以下、TCAとする)を加え、一試験管ずつ1分間均質化して3000rpmで15分間遠心し、上澄液を取って他の試験管に置く。沈殿物に4mlのTCAを加えて、また1分間均質化して15分間遠心し、上澄液を取って前記の上澄液と混合し、十分に均質化する。1ml上澄液を取って,一試験管ずつ4ml95%アルコールを加え、二つの液体の間に界面がないまで十分に均質化する。室温の条件に次日まで置き、十分に沈殿した後に3000r/minで15分間遠心する。上澄液を空け、試験管を10分間置き、1ml蒸留水で振蕩溶解した後に肝グリコーゲンを測定する。
【0028】
(5)筋糖原の測定実験
最終回受験物をマウスに投与してから30分後に、そのマウスを水温30±1℃の前述の水泳箱で60分間水泳させる。マウスを死亡させて筋肉を取り、0.9%NaCl溶液で洗浄し、濾紙で干させ、正確に1g筋肉を取って3ml30%KOHの試験管にいれ、試験管を沸騰水に置いて20分間水浴させる。取り出し冷却した後に、50ml定容瓶に転入し、水で試験管を数回洗浄し、全て定容瓶に転入し、目盛りまで水を加え、均質化する。沸騰水に置いて10分間水浴させ、取り出し冷却する。その後、紫外線分光測光法を使用し、620nm波長で光の吸収量を測定して、空白試験管を零点まで調整する。
【0029】
上記(1)〜(5)の実験結果から、HCP、HCP1、HCP2によるマウスの水泳時間、棒のぼり時間、血中尿素窒素、肝グリコーゲン、筋糖原の含有量に対する影響について考察する。
表1に示すように、参照実験組は対照組より、HCP1組の水泳時間を92%(p<0.01)、HCP1組の水泳時間を72%(p<0.05)それぞれ長くすることができる。実験組は対照組より、HC組の棒のぼり時間を132%,HCP1組の棒のぼり時間を203%(p<0.001)、HCP2組の棒のぼり時間を325%(p<0.001)、HCP組の棒のぼり時間を291%(p<0.01)長くすることができる。実験組は対照組より、HCP組の血中尿素窒素の含有量を16%(p<0.01),HCP1組のが13%(p<0.05)低減できる。HCP2組の肝グリコーゲン眼湯量は対照組の2.4倍(p<0.01)に相当し、HCP組の肝グリコーゲン眼湯量は対照組の3.6倍(p<0.001)に相当する。
【0030】

【0031】
(6)血中乳酸の測定実験
最終回受験物をマウスに投与してから30分後に、そのマウスのお尻に4%体重の重量物を背負わせ、水温30±1℃の前述の水泳箱で10分間水泳させる。それぞれ水泳前、水泳後0、15、60分毎にマウス眼角静脈から血液を採る。5ml遠心管に0.48mlの1%NaF溶液を加え、微量ピペットで正確に20μl血液を取って試験管の底部に入れ、試験管上澄液で微量ピペットを数回洗い、たんぱく質沈殿剤を加え、振蕩均質化し、3000r/minで10分間遠心し、上澄液を取り血中乳酸を測定する。
【0032】
上記(6)の測定結果から、HCP、HCP1、HCP2によるマウスの血中乳酸含有量に対する影響について考察する。
表2に示すように、水泳後0分と15分のHCP組は対照組より、血中乳酸含有量がそれぞれ24%(p<0.01)と24%(p<0.05)低減できる。また水泳前の血中乳酸含有量に近づくことがわかる。
【0033】

【0034】
次に、HCP、HCP1 、HCP2による正常雄性マウスの交配に対する影響を検証するため、以下の実験(7)を行った。
(7)交配に対する影響検証実験
実験動物は、ICRマウス、雄性48匹、雌性144匹、平均体重が約30gのものを使用する。投与量は、生理食塩水を対照組に投与し、HCP、HCP1 、HCP2は全て17.4mg/0.3ml/匹である。雌雄割合は、3:1である。
実験結果は、表3、表4に示す。
【0035】

【0036】

【0037】
次に、HC、HCP1 、HCP2 、HCPによるICRマウスの抗酸素不足に対する影響を検証するため、以下の実験(8)を行った。
(8)抗酸素不足に対する影響検証実験
実験動物は、壮年期に属する85daysのICRマウス60匹を、一組に12匹ずつ5組に分けて使用する。この時、雌雄各半、それぞれの体重が28〜32gであり、平均体重が約30gであるようにする。実験条件は、瓶の中の真空度を0.07mPaとする。この値は、高度26300m相当の真空度に相当する。この高度は、チョモランマの頂上高さの約3倍に相当する。
実験結果は、表5に示す。
【0038】

【0039】
実験結果の結論としては、本実験によって、HCP、HCP1、HCP2は、マウスの水泳時間、棒のぼり時間、血中乳酸、血中尿素窒素、肝グリコーゲン、筋糖原の含有量に対して、顕著な効果を奏することが確認できた。これは、マウスの性機能を改善でき、マウスの抗酸素不足能力を高めることを意味している。
【0040】
次に、HCP、及び所定量のHCPを配合してなる他のHCP配合剤の各種の活性機能について検証する。
このHCP配合剤(New Fufang Huang Polypeptide、以下NFHPと略称する)は、HCPと、ハチの蛹冷凍乾燥粉末と、ロイヤル・ゼリー冷凍乾燥粉末とを、配合重量比が、HCP30%、ハチの蛹冷凍乾燥粉末50%、ロイヤル・ゼリー冷凍乾燥粉末20%、となるように配合して構成されている。
【0041】
本NFHPを構成する各配合材料は、北京君陽愛瑪科技有限公司から提供されている。また、NFHPの人間推薦使用量は、0.125g/kg×60kg÷5=1.5g/日とする。
【0042】
実験動物として、北京大学実験動物学部から提供された昆明種マウスを、一組ごとに64匹からなる四組にランダムに分ける。そして、四組の内の実験一組の64匹にはウェイト水泳実験を行い、実験二組の64匹には血中尿素窒素の測定実験を行い、実験三組の64匹には肝グリコーゲンの測定実験を行い、実験四組の64匹には血中乳酸の測定実験を行なう。
【0043】
さらに四組の各組を16匹ずつ、何も投与しない陰性対照組組、及び人間推薦使用量の5倍、10倍、30倍のNFHPを投与する、即ちNFHP0.125/kg.bwを投与する低投与量組、NFHP0.250/kg.bwを投与する中投与量組、NFHP0.750/kg.bwを投与する高投与量組の計16組に組み分ける。
【0044】
マウスへの投与は、陰性対照組には蒸留水を、他の組には、経口で各投与量のNFHPを胃に入れ込むことで行う。投与量は、0.2ml/10g.bwである。30日間連続投与した後、各疲労回復作用指標を測定する。
【0045】
先ず、NFHPによるマウスの各疲労回復作用指標を測定するため、以下の実験(9)〜(12)を行った。
(9)水泳実験
最終回実験物を実験一組のマウスに投与してから30分後に、そのマウスの尾部に5%体重の鉛を背負わせ、水温25±1℃の前述の水泳箱で水泳させる。水泳開始から頭部の全てが水中に入って水面に浮かびだすことができないときまでの時間をマウスの水泳時間として記録する。
【0046】
(10)血中尿素窒素の測定実験
最終回実験物を実験二組のマウスに投与してから30分後に、水温30±1℃の前述の水泳箱で90分間水泳させる。水泳した後60分間安静にさせた後に、眼球を取り出し、0.5ml血液を採取し、血清を分離して血中尿素窒素を測定する。
【0047】
(11)肝グリコーゲンの測定実験
最終回実験物を実験三組のマウスに投与してから30分後に、水温30±1℃の前述の水泳箱で90分間水泳させる。頚椎脱臼法によって死亡させ、肝臓を取り出し、生理食塩液で洗浄し、ろ紙で乾燥する。肝臓を約200mg(正確に実際重量を記録)を計り取り、4ml5%のTCAで均質化し、均質化液を遠心管に入れ、3000rpmで15分間遠心し、上澄液を他の試験管に入れる。沈殿物に4ml5%のTCAを入れ、1分間均質化し、上澄液を取って前記の上澄液と混合し、十分に均質化する。アントローン法で肝臓のグリコーゲンを測定する。
【0048】
(12)血中乳酸の測定実験
最終回実験物を実験四組のマウスに投与してから30分後に、50μl血液を採取し、抗凝血管に入れる。その後、マウスの尾部に4%体重の鉛を背負わせ、水温30±1℃の前述の水泳箱で10分間水泳させる。水泳後0分と60分毎にそれぞれ50μl血液を採取し、抗凝血管に入れ、乳酸測定器で全部血液の乳酸を測定する。
【0049】
尚、実験データの処理は、累乗差分析ソフトで行なう。また、本実験中において、各項実験に各組の動物数が違うのは、水泳実験により死亡したからである。
【0050】
上記(9)〜(12)の実験結果を下記に示す。
先ず、実験一組、実験二組、実験三組、実験四組におけるマウスの体重への影響を表6,7,8に示す。
【0051】

【0052】

【0053】

【0054】
表6から、各組の初期体重には顕著な差異がなく(P>0.05)、実験組の間の体重が一致していることが分かる。各投与量組は陰性対照組と比べて、実験一組の高投与量組の中期体重(表7)には顕著な差異があり(P<0.05)、それ以外、各組の中期体重と末期体重(表8)には皆顕著な差異がない(P>0.05)。即ち、NFHPの投与により、マウスの体重へ顕著な影響がないことを意味している。
【0055】
次に、NFHPの投与によるウェイト水泳時間への影響を表9に示す。
【0056】

【0057】
表9から、高、中、低投与量組のウェイト水泳時間は、陰性対照組と比べて皆顕著な差異がある(P<0.05)ことが分かる。すなわち、これは、投与したNFHPがマウスのウェイト水泳時間に対して延長作用を発揮していることを意味している。
【0058】
次に、NFHPの投与による血中尿素窒素への影響を表10に示す。
【0059】

【0060】
表10から、低投与量組の血中尿素窒素が陰性対照組と比べて非常に顕著な差異がある(P<0.01)ことが分かる。すなわち、これは、投与したNFHPがマウスの血中尿素窒素に対して低下作用を発揮していることを意味している。
【0061】
次に、NFHPの投与による肝グリコーゲンへの影響を表11に示す。
【0062】

【0063】
表11から、中投与量組の肝グリコーゲンが陰性対照組と比べて非常に顕著な差異がある(P<0.01)ことが分かる。すなわち、これは、投与したNFHPがマウスの肝グリコーゲンを増加させ、あるいは肝グリコーゲンの消耗に対して抑止作用を発揮していることを意味している。
【0064】
次に、NFHPの投与による血中乳酸への影響を表12、13に示す。
表12では、10分間運動直後にすぐ血液を採取し、その乳酸値と運動前の乳酸値の差値を示す。また表13では、10分間運動直後にすぐ血液を採取し、運動後60分後にもう一回血液を採取し、その乳酸値の変化の差値を示す。
【0065】

【0066】
表12から、低、中、高投与量組の血中乳酸上昇が陰性対照組と比べて顕著な差異がある(P<0.01)ことが分かる。すなわち、これは、投与したNFHPがマウスの血中乳酸の上昇速度に対して低下作用を発揮していることを意味している。
【0067】

【0068】
表13から、三つの投与量組の血液乳酸の除去速度が陰性対照組と比べて顕著な差異がある(P>0.005)ことが分かる。すなわち、これは、投与したNFHPがマウスの血中乳酸の除去速度に対して影響がないことを意味している。
【0069】
次に、上記実験結果について検討する。
(1)上記実験によって、NFHPは、すべてのマウスの体重に対して顕著な影響を示さないことを確認した。
(2)上記実験によって、NFHPの高、中、低投与量組は、陰性対照組と比べて皆非常に顕著な差異を示すことを確認した(P<0.05かつP<0.01)。
(3)上記実験によって、NFHPは、マウス運動後及び運動中の血中尿素窒素、肝グリコーゲン、血中乳酸の上昇速度に対して、陰性対照組と比べて皆顕著また非常に顕著な差異を示すことを確認した(P<0.05かつP<0.01)。ただし、NFHPがマウスの運動後の血中乳酸の除去速度に対しては、影響を示さないことを確認した。これらの検討から、本NFHPは開発価値を持っているものであることがわかった。
【0070】
また、人体にNFHPを投与した場合の人体に対する影響を明らかにするため、下記実験(13)〜(15)を行った。
【0071】
実験(13)
ある大学重量挙げチームの6人は、毎日0.7g×2のNFHP錠剤を服用し、運動前1hに一錠を服用したところ、1時間〜2時間後に皆全身に火照り感を感じた。1ヶ月後、この6人の重量挙げ成績はある程度上昇した。
実験(14)
ある企業の男性マラソン選手10人は、毎日0.7g×2のNFHP錠剤を服用した。二ヶ月後、平均成績は服用前の2時間22分台から2時間18分50秒まで上昇した。
実験(15)
ある高校男子陸上競技百メートルチームの5人は、毎日0.7g×2のNFHP錠剤を服用し、毎日午後2時間訓練した。服用前の100mの平均成績は12秒60である。二ヶ月後、100mの平均成績は12秒07まで向上した。また、ある男子の成績はNFHPの服用前の12秒80から11秒91まで向上した。
【0072】
本実験によって、本NFHPは、顕著な疲労回復作用を発揮できることが分かった。
【0073】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下列挙するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状並びに構成を適宜に変更して実施することも可能である。
(1)水素イオン濃度指数の値は、特に7が望ましいが、6.5〜7の範囲で適用可能である。
(2)加水分解温度は、特に50℃が望ましいが、50〜55℃の範囲で適用可能である。
(3)加水分解時間は、特に4時間が望ましいが、3〜4時間の範囲で適用可能である。
(4)イナゴ加水分解物配合剤は、イナゴ加水分解物を60重量パーセントで配合して構成することに限らず、5〜95重量パーセントで適用可能である。
(5)イナゴ加水分解物配合剤は、少なくともイナゴ加水分解物を配合してなるものであればよく、単独で構成することはもちろん、ハチの蛹冷凍乾燥粉末やロイヤル・ゼリー冷凍乾燥粉末以外の他の動植物を用いた抽出物、薬品、食品等を配合して構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係るイナゴ加水分解物の一実施形態を示す製造工程説明図である。
【図2】本発明に係るイナゴ加水分解物の他の実施形態を示す製造工程説明図である。
【符号の説明】
【0075】
S1−1,S2−1・・前処理工程、S1−2,S2−2・・加水分解工程、S1−3,S2−3・・後処理工程、HC・・イナゴ粉末、HCP・・イナゴ加水分解物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配合重量比からなる配合酵素を加えることによって、イナゴ粉末を加水分解して生成され、
疲労回復、抗酸素不足及び性機能改善などの効果がある、
ことを特徴とするイナゴ加水分解物。
【請求項2】
配合酵素が、
パパインと、中性プロディナーゼと、ポリペプチダーゼとを含んでなり、
配合重量比が、
パパイン:中性プロディナーゼ:ポリペプチダーゼ=5:3:2
である、
ことを特徴とする請求項1に記載のイナゴ加水分解物。
【請求項3】
加水分解が、
水素イオン濃度指数6.5〜7.0、加水分解温度50〜55℃、加水分解時間3〜4時間の条件下で行われる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のイナゴ加水分解物。
【請求項4】
イナゴ粉末に所定の配合重量比からなる配合酵素を加え、配合酵素によってイナゴ粉末を加水分解する加水分解工程を有してなる、
ことを特徴とするイナゴ加水分解物の製造方法。
【請求項5】
少なくとも請求項1〜3のイナゴ加水分解物を配合してなり、顕著な疲労回復作用を備える、
ことを特徴とするイナゴ加水分解物配合剤。
【請求項6】
請求項1〜3のイナゴ加水分解物と、ハチの蛹冷凍乾燥粉末と、ロイヤル・ゼリー冷凍乾燥粉末とを、所定の配合重量比で配合してなるイナゴ加水分解物配合剤であって、
配合重量比が、
イナゴ加水分解物:ハチの蛹冷凍乾燥粉末:ロイヤル・ゼリー冷凍乾燥粉末=3:5:2
である、
ことを特徴とするイナゴ加水分解物配合剤。
【請求項7】
投与量を0.4g〜45g/人/日とした場合に、高効持久な効果を発揮する、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のイナゴ加水分解物配合剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−342153(P2006−342153A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121053(P2006−121053)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(504435287)君陽生物科学株式会社 (2)
【Fターム(参考)】