説明

イヌの骨関節炎と関連する遺伝子並びに関連する方法及び組成物

本明細書では、骨関節炎で差次的に発現されるポリヌクレオチド分子を含む組合せが記載されている。また、骨関節炎の診断及び予後診断のために使用することができる方法、並びに骨関節炎の治療法での有効性について試験物質をスクリーニングするために使用することができる方法も記載されている。また、記載されている方法で使用することができる装置及びキットも記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、参照により本明細書に完全に組み込まれた2004年2月2日に出願の米国特許出願60/541346の権益を請求する。
【0002】
本発明は、変性関節疾患、例えば骨関節炎の分野に関する。より詳しくは、本発明は骨関節炎と関連する遺伝子発現に特有のプロファイルに基づく新規組成物、装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
通常変性関節疾患とも称される骨関節炎(OA)は、ヒト及びすべての家畜動物で認められる(Richardsonら、(1997年)Vet.Clin.North Am.27:883〜911頁)。OAは、イヌにおいて一般的な消耗性疾患であり、しばしば股関節形成不全に伴う(Martinez、S.(1997年)骨関節炎(Osteoarthritis)、Vet.Clinics of N.Am.:小動物の実際(Small Animal Practice)27(4):735〜758頁)。イヌとヒトの骨関節炎にはかなりの類似点があり、したがってヒト骨関節炎の研究の優れた動物モデルとなっている。原因因子は大部分未知であるが、この疾患は軟骨基質分解が軟骨基質合成を上回っている不均衡を特徴とする。軟骨細胞アポトーシス及び炎症もこの疾患と関係している可能性がある(Pelletier、J.ら(2001年)関節炎とリウマチ(Arthritis & Rheumatism)44(6):1237〜1247頁;Lotz、M.(1999年)骨関節炎及び軟骨(Osteoarthritis and Cartilage)7:389〜391頁)。
【0004】
この疾患は一般的には進行が遅く、またプロテオグリカン及びコラーゲンの損失による関節軟骨の退化、及び新しい骨の増殖を特徴とする。更に、炎症反応が滑膜層内で起こる可能性がある。イヌの骨関節炎は、特に股関節形成不全又は離断性骨軟骨炎から生じる、二次性の病態として引き起こされる可能性がある(Martinez、上記)。外傷事象が関係する後天的な病態も、イヌの骨関節炎をもたらす可能性がある(Martinezら、Vet.Clin.North Am.27:759〜775頁、1997年)。骨関節炎の治療法としては、抗炎症薬の投与並びに食事脂肪酸の操作を挙げることができる(Richardsonら、上記)。
【0005】
イヌの骨関節炎の診断は、一般的に症候学に基づいて行われる。骨関節炎のイヌは段階的に始まる跛行を示すが、運動後に急に発症することもある。跛行は安静によって悪化するが、2、3分の活動後に減少する。冷たく湿った条件、肥満及び長期にわたる運動は、しばしば跛行の徴候を悪化させる(Pedersonら、獣医内科教科書(Textbook of Veterinary Internal Medicine)、第5版、Ettingerら編、W.B.Saunders and Co.、フィラデルフィア、2000年、1862〜1886頁)。
【0006】
ゲノム科学の出現で、遺伝子発現の調節が正常なホメオスタシスに緊密に関係するだけでなく、遺伝子の差次的発現の変化が疾患の発達における一側面であることが明瞭になった。その結果、疾患における遺伝子発現パターンの評価は、分子レベルでの疾患過程の理解にとって重要であるとますます認識されるようになった。(Goingら、European J.Cancer 35:1895〜1904頁、1999年;Wangら、Cardiovasc.Res.35:414〜421頁)。相対遺伝子発現を研究するためにいくつかの方法が出現したが、現在重視されているのはハイスループット分析法である(総説については、Carulliら、J.Cell.Biochem.Suppl.30/32:286〜296頁、1998年;Kozianら、Trends Biotechnol 17:73〜78頁、1999年を参照)。差次的遺伝子発現のハイスループット分析のために開発された最近の方法としては、例えばESTシークエンシング(Adamsら、Science 252:1651〜1656頁、1991年;Adamsら、Nature 377:3〜16頁、1995年)、マイクロアレイハイブリダイゼーション(Schenaら、Science 270:467〜470頁、1995年)及びディファレンシャルディスプレイ(Liangら、Science 257:967〜970頁、1992年;Welshら、Nucleic Acids Res.20:4965〜4970頁、1992年)がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
骨関節炎、特にイヌ骨関節炎における遺伝子発現は、包括的に研究されてきた訳ではない。したがって、骨関節炎で差次的に発現される核酸配列及びそれにコードされたタンパク質を同定する必要が存在する。この情報は、骨関節炎の治療又は予防に有用な物質を同定するだけでなく、対象で変形性関節炎の疾病状態又はその疾患の素因を診断するためにも有用であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に従って、少なくとも遺伝子の断片を含むいくつかのポリヌクレオチドが、骨関節炎及び前骨関節炎ではない対象における発現と比較して、骨関節炎又は前骨関節炎の対象で差次的に発現されることが同定された。
【0009】
本発明の態様に従って、差次的に発現された遺伝子、遺伝子断片及びコードされた遺伝子産物、並びに遺伝子群と関連する発現パターンは、骨関節炎、特にイヌ骨関節炎と関連する遺伝子発現変化の検出のためのいくつかの方法で利用される。本発明の別の態様は、骨関節炎の治療及び/又は予防に有用な作用物質の同定のための方法に関する。
【0010】
本発明の他の態様に従って、本発明のある実施形態によって提供される方法の実施を容易にするために、組成物、装置及び試験キットが提供される。
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び実施例を参考にして理解されよう。
【0012】
【表1−1】


【表1−2】


【表1−3】


【表1−4】


【表1−5】


【表1−6】


【表1−7】


【表1−8】

【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
定義:
本発明の理解を容易にするために、以下の定義が提供される。
【0014】
本明細書で使用される用語「核酸」又は「核酸分子」とは、一本鎖又は二本鎖のいかなるDNA又はRNA分子も指し、一本鎖の場合は、その相補配列の分子は直鎖状又は環状である。核酸分子を議論する際に、特定の核酸分子の配列又は構造は、本明細書では5’から3’の方向の配列を提供する通常の慣行に従って記載することができる。本発明の態様に従う核酸に関して、用語「単離核酸」が使用されることもある。DNAに適用されるとき、この用語は、その起源生物の自然に存在するゲノム内で直接隣接している配列から分離されたDNA分子を指す。例えば、「単離核酸」は、ベクター、例えばプラスミド又はウイルスベクターに挿入されたDNA分子、或いは原核若しくは真核細胞又は宿主生物のゲノムDNA中に組み込まれたDNA分子を含むことができる。
【0015】
RNAに適用される場合、用語「単離核酸」とは、上で定義された単離DNA分子によってコードされたRNA分子を主に指す。或いは、この用語は、RNA分子がその自然の状態で(即ち、細胞又は組織において)結合しているであろう他の核酸から十分に分離されたRNA分子を指すこともある。単離された核酸(DNA又はRNA)は更に、生物学的又は合成の手段によって直接産生されて、その産生の間に存在する他の成分から分離された分子を表すこともある。
【0016】
用語「類似性割合」、「同一性割合」及び「相同性割合」は、特定の配列に言及する場合、ウィスコンシン大学GCGソフトウェアプログラムで示されているように使用される。
【0017】
「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド分子」又は「ポリヌクレオチド配列」とは、ヌクレオチドの鎖を指す。それは一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNA分子を指すことができ、一本鎖の場合は、その相補配列の分子は直鎖状又は環状である。好ましくは、この鎖は約50から10,000のヌクレオチド、より好ましくは約150から3,500のヌクレオチドを有す。ある場合には、整列させたときに配列は完全に相補性である(ミスマッチはない)。他の場合は、配列内に最大約30%のミスマッチが存在してもよい。
【0018】
本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチド」とは、本発明の配列、プライマー及びプローブを指し、2以上のリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド、好ましくは3より多くを含む核酸分子と定義される。オリゴヌクレオチドの正確な大きさは、様々な因子、並びにオリゴヌクレオチドの特定の用途及び使用によって決まる。
【0019】
「断片」とは、長さが好ましくは少なくとも約10の核酸、より好ましくは約40の核酸、最も好ましくは約100の核酸である核酸配列を指し、例としては配列番号1〜1558の核酸1〜100、300〜400、500〜600、800〜900からなる断片、又は配列番号1〜1558の3’末端の類似した長さの断片が含まれる。「断片」は、1つ又は複数の欠失、挿入又は置換を含む、一続きの少なくとも約100の連続するヌクレオチドを意味することもできる。「断片」は遺伝子のコード配列全体を意味することもでき、5’及び3’の非翻訳領域を含んでもよい。「断片」とは、長さが好ましくは少なくとも約5から約15のアミノ酸、最も好ましくは少なくとも約10のアミノ酸であり、配列の一部の生物活性又は免疫活性を保持するポリペプチド配列を指すこともできる。
【0020】
用語「遺伝子」又は「複数の遺伝子」とは、遺伝子の部分的又は完全なコード配列を指す。この用語は、転写産物の5’又は3’の非翻訳領域も指す。用語「骨関節炎で差次的に発現される遺伝子」とは、骨関節炎でも前骨関節炎でもない健常対象からの細胞におけるmRNA又は翻訳された遺伝子産物の量と比較して、骨関節炎を有する対象からの細胞において又は前骨関節炎の対象において、その遺伝子から発現されるmRNAの量又はそのmRNAから翻訳される遺伝子産物の量が検出可能に異なる、即ちより大きいか小さい遺伝子を指す。本明細書で使用される「前骨関節炎」又は「前骨関節炎の」は、対象が後日骨関節炎を発症する素因があるが、骨関節炎のいかなる明らかな徴候及び症状も示していないことを意味するものとする。好ましくは、骨関節炎又は前骨関節炎の試料に由来する差次的に発現される遺伝子の転写産物又は翻訳産物の存在量は、正常試料のそれと比較して少なくとも約1.15倍、より好ましくは少なくとも約1.2倍、より好ましくは少なくとも約1.3倍、より好ましくは少なくとも約1.4倍、より好ましくは少なくとも約1.5倍、より好ましくは少なくとも約1.6倍、より好ましくは少なくとも約1.75倍、より好ましくは少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約3倍、より好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは少なくとも約20倍異なる。用語「骨関節炎で差次的に発現された遺伝子」とは、正常な転写産物プロファイルでは検出不可能であるが、骨関節炎又は前骨関節炎組織の転写産物プロファイルでは好ましくは1細胞につき少なくとも約2コピー、より好ましくは1細胞につき少なくとも約3コピーのレベルである遺伝子も指す。
【0021】
用語「骨関節炎(OA)に関係した」及び「骨関節炎(OA)関連の遺伝子」とは、本明細書で定義される骨関節炎で差次的に発現される遺伝子を指す。
【0022】
本明細書で使用される用語「レポーター」、「レポーター系」、「レポーター遺伝子」又は「レポーター遺伝子産物」とは、発現されると生物検定、イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、又は比色法、蛍光発生法、化学発光法又は他の方法などによって容易に測定可能なレポーターシグナルを生じる生成物をコードする遺伝子を核酸が含む、作動可能な遺伝系を指す。核酸は、RNAでもDNAでもよく、直鎖状でも環状でもよく、一本鎖でも二本鎖でもよく、アンチセンス極性でもセンス極性でもよく、また、レポーター遺伝子産物の発現のために必要な調節エレメントに作動可能に結合されている。必要な調節エレメントはレポーター系の性質によって、またレポーター遺伝子がDNA又はRNAの形であるかによって異なるが、その例としては、それには限定されないが、プロモーター、エンハンサー、翻訳調節配列、ポリA付加シグナル、転写終止シグナルなどがある。
【0023】
用語「形質転換する」、「トランスフェクトする」、「形質導入する」とは、核酸を細胞又は宿主生物に導入するいかなる方法又は手段も指し、同じ意味を伝えるために同義的に使用することができる。そのような方法には、それには限定されないが、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、PEG融合などが含まれる。
【0024】
本明細書で使用される用語「機能的」とは、核酸又はアミノ酸の配列が記載のアッセイ又は目的について機能的であることを意味する。
【0025】
用語「から本質的に成る」は、特定のヌクレオチド又はアミノ酸に言及する場合、与えられた配列番号の特性を有する配列を意味する。例えば、アミノ酸配列に関して使用する場合、この用語は、配列自体、及びその配列の基本的で新規な特性に影響を及ぼさないであろう分子修飾を含む。
【0026】
「ベクター」とは、別の遺伝配列又はエレメント(DNA又はRNA)をそれに挿入してその結合した配列又は要素が複製されるようにした、プラスミド、コスミド、バクミド(bacmid)、ファージ、人工染色体(BAC、YAC)又はウイルスなどのレプリコンである。「レプリコン」とは、主にそれ自身の制御下で複製が可能なプラスミド、コスミド、バクミド、ファージ、人工染色体(BAC、YAC)又はウイルスなどの任意の遺伝要素である。レプリコンはRNAかDNAのいずれかであり、一本鎖でも二本鎖でもよい。
【0027】
本明細書で使用される用語「プローブ」とは、核酸のためのプローブ又はタンパク質のためのプローブを指す。「プローブ」とは、核酸と共に使用する場合、精製された制限酵素消化物のように自然に存在するものであれ合成されたものであれ、そのプローブに相補的な配列を有する核酸とアニーリングするか又は特異的にハイブリッド形成することができるオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、又はRNA若しくはDNAの核酸を指す。プローブは、一本鎖でも二本鎖でもよい。プローブの正確な長さは、温度、プローブの供給源及び使用方法を含めた多くの因子によって決まる。例えば、診断用途のためには、標的配列の複雑度に従い、オリゴヌクレオチドプローブは一般的に約10〜100、好ましくは約15〜50、より好ましくは約15〜25のヌクレオチドを含む。ある診断用途においては、ポリヌクレオチドプローブは、好ましくは約90〜1150のヌクレオチド、より好ましくは約300〜600のヌクレオチド、より好ましくは約300のヌクレオチドを含む。プローブは本明細書では、特定の標的核酸配列の異なる鎖に「実質的に」相補性であるように選択される。このことは、プローブは、1組の所定条件下でそのそれぞれの標的鎖と「特異的にハイブリッド形成する」か又はアニーリングすることができるように、十分に相補性でなければならないことを意味する。したがって、プローブ配列は、標的の正確な相補配列を反映する必要はない。例えば、非相補性のヌクレオチド断片がプローブの5’又は3’末端に結合し、プローブ配列の残りは標的鎖に相補性でよい。或いは、プローブ配列が標的核酸の配列と特異的にアニーリングするために十分な相補性を有するならば、非相補性の塩基又はより長い配列がプローブの中間にあってもよい。「プローブ」とは、タンパク質と共に使用する場合、他のタンパク質又はタンパク質断片を実質的に排除して特定のタンパク質又はタンパク質断片を特異的に結合することができるタンパク質結合物質である。このような結合物質は、タンパク質又はペプチドが特異的に結合するいかなる分子であってもよく、その例としてはDNA(DNA結合タンパクの場合)、抗体(本明細書でより詳細に記載されている)、細胞膜受容体、ペプチド、コファクター、レクチン、糖類、多糖類、細胞、細胞膜、オルガネラ及びオルガネラ膜がある。
【0028】
「アレイ」とは、基質上に整列した少なくとも2つのプローブの配列を指す。プローブの少なくとも1つは対照又は標準を表し、他は診断上の関心のあるプローブを表す。基質上の約2から約40,000のプローブの配列は、プローブ及び試料核酸又はタンパク質結合物質の間で形成される各標識複合体のサイズ及びシグナル強度は個々に区別できることを保障する。
【0029】
「ハイブリダイゼーション複合体」は、例えば5’−A−G−T−C−3’が3’−T−C−A−G−5’と塩基対合した場合のように、1つの分子のプリンが相補性分子のピリミジンと水素結合を形成する場合に試料の核酸分子の間で形成される。相補性の程度及びヌクレオチド類似体の使用は、ハイブリダイゼーション反応の効率及びストリンジェンシーに影響を及ぼす。
【0030】
用語「特異的にハイブリッド形成する」とは、当技術分野で一般的に使用される所定の条件下でそのようなハイブリダイゼーションを可能にするのに十分に相補性の(「実質的に相補性の」と言われることもある)配列の2本の一本鎖核酸分子の間の結合を指す。例えば、この用語は核酸プローブと本発明の一態様に従う一本鎖DNA又はRNA分子内に含まれる実質的に相補性の配列とのハイブリダイゼーションを指すことができ、核酸プローブと非相補配列の一本鎖核酸とのハイブリダイゼーションは実質的に除外される。
【0031】
「試料」とは、核酸、タンパク質、抗体などを含むその最も広い意味で使用される。試料は、例えば体液;細胞標品の可溶性画分又は細胞を増殖させた培地のアリコート;細胞から単離又は抽出した染色体、オルガネラ又は膜;溶液中の又は基質に結合したゲノムDNA、RNA又はcDNA;細胞;組織又は組織生検材料;組織プリント;指紋、口内細胞、皮膚又は毛などを含む。
【0032】
「標準」とは、正常な(OA関係に対して)生物学的状態の供給源からの材料を含む対照試料を指す。OA関係の生物学的状態としては、例えば供給源がOAを有するもの、OAを起こす素因を有するもの、又はOAのある生物学的特性を示すものがある。例えば、標準試料は骨関節炎でも前骨関節炎でもない健常対象からの核酸又はタンパク質を含むことができる。標準試料は、OAのある側面をモデル化することができる免疫反応を導き出すために、治療されていない正常細胞又は組織からの試料を含むことができる。
【0033】
「特異的結合」とは、2つの分子の間の、その構造、特にその分子側鎖基に依存する特別で厳密な相互作用、例えば、DNA分子の主溝への調節タンパク質の挿入、2本の一本鎖核酸の間の骨格に沿った水素結合、又はタンパク質のエピトープと、アゴニスト、アンタゴニスト又は抗体との間の結合を指す。
【0034】
本明細書で使用される用語「プライマー」とは、RNA又はDNAの、一本鎖又は二本鎖の、生物系に由来するか、制限酵素消化によって生成するか、或いは合成的に生成する核酸分子を指し、適当な環境に置かれると鋳型依存性の核酸合成のイニシエーターとして機能的に作用することができる。適当な核酸鋳型、適当なヌクレオシド三リン酸前駆体又は核酸、ポリメラーゼ酵素、適当なコファクター及び適当な温度及びpHなどの条件を与えると、プライマーは、ポリメラーゼ作用又は類似した活性によるヌクレオチドの添加によりその3’末端で伸長して、プライマー伸長産物を生成することができる。プライマーは、その用途の特定の条件及び要求事項に従い、長さが異なってもよい。例えば、本発明の特定の実施形態に従う診断用途において、プライマーは、長さが好ましくは約15〜25以上のヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドプライマーでよい。プライマーは、所望の伸長産物の合成を誘導するために、即ちポリメラーゼのような酵素による合成の開始で用いるための適当な近位にプライマーの3’ヒドロキシ部分を提供するのに十分な方法で所望の鋳型鎖とアニーリングすることが可能であるように、所望の鋳型と十分な相補性のあるものでなければならない。プライマー配列は所望の鋳型の正確な相補体である必要はない。例えば、非相補性のヌクレオチド配列を、そうではない相補性のプライマーの5’末端に結合させることができる。或いは、プライマー配列が所望の鋳型鎖の配列と、伸長生成物の合成のための鋳型プライマー複合体を機能的に提供するのに十分な相補性を有するならば、非相補性の塩基がオリゴヌクレオチドプライマー配列の中間にあってもよい。
【0035】
本明細書で記載されるアミノ酸残基は、好ましくは「L」型の異性体である。しかし、ポリペプチドの所望の特性が保持されるならば、「D」型異性体の残基でLアミノ酸残基を置換してもよい。本明細書で表されるすべてのアミノ酸残基配列は、従来の左から右へアミノ末端からカルボキシ末端の方向に従う。
【0036】
ポリペプチドの「断片」又は「部分」は、少なくとも約5から7つの連続したアミノ酸、しばしば少なくとも約7から9の連続したアミノ酸、典型的には少なくとも約9から13の連続したアミノ酸、最も好ましくは少なくとも約20から30以上の連続したアミノ酸の一続きのアミノ酸残基を意味する。ポリペプチド配列の断片、抗原決定基群又はエピトープは、タンパク質アミノ酸配列の一部に対して免疫反応を導き出すために有用である。
【0037】
差次的に発現されたポリペプチドの異なる「変異体」が、自然に存在する。これらの変異体は、タンパク質をコード化する遺伝子のヌクレオチド配列の差によって特徴付けられる対立遺伝子であり、又は異なるRNAプロセシング又は翻訳後修飾を含むことができる。当業者は、単一又は複数のアミノ酸置換、欠失、付加又は置換を有する変異体を生産することができる。これらの変異体には、とりわけ以下が含まれる:(a)1つ又は複数のアミノ酸残基が保存的又は非保存的なアミノ酸で置換されている変異体、(b)1つ又は複数のアミノ酸がポリペプチドに付加された変異体、(c)1つ又は複数のアミノ酸が置換基を含む変異体、及び(d)ポリペプチドが、そのポリペプチドに有用な特性を付与できる、融合パートナー、タンパク質タグ又は他の化学部分など別のペプチド又はポリペプチド、例えば抗体に対するエピトープ、ポリヒスチジン配列、ビオチン部分などと融合している変異体。本発明の他のポリペプチドには、保存的又は非保存的位置で1つの種からのアミノ酸残基が別種の対応する残基に代わって置換されている変異体が含まれてもよい。他の実施形態では、非保存的位置のアミノ酸残基は、保存的又は非保存的な残基で置換されている。これらの変異体を得るための技術は、遺伝子技術(抑制、欠失、変異など)、化学技術、及び酵素技術を含めて、当業者に公知である。そのような対立遺伝子の、変異、類似体、断片、誘導体、及び突然変異体、並びに核酸プロセシングの別の形及び翻訳後修飾の別の形を含めた修飾が、差次的に発現されたポリペプチドの任意の生物的性質を保持する差次的に発現されたポリペプチドの誘導体をもたらす限り、それらは本発明の範囲に含まれる。
【0038】
用語「単離されたタンパク質」又は「単離され精製されたタンパク質」とは、主に本発明の態様に従う単離核酸分子の発現によって産生されたタンパク質を指す。或いは、この用語は、それが自然に結合しているであろう他のタンパク質から十分に分離されて、「実質的に純粋な」形で存在するタンパク質を指すこともある。「単離された」とは、他の化合物又は物質との人工又は合成の混合物を除外するものでも、或いは基本的な活性を妨げない不純物、及び、例えば不完全な精製、安定剤の添加、又は免疫原性製剤若しくは薬剤として許容される製剤などへの配合に起因して存在する可能性のある不純物の存在を除外するものでもない。
【0039】
用語「実質的に純粋の」とは、所与の物質(例えば核酸、タンパク質、その他)を少なくとも約50〜60重量%含む製剤を指す。より好ましくは、この製剤は与えられた化合物を少なくとも約75重量%、最も好ましくは約90〜95重量%含む。純度は、与えられた物質に適した方法で測定される(例えばクロマトグラフィー法、アガロース又はポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLC分析など)。
【0040】
用語「タグ」、「タグ配列」又は「タンパク質タグ」とは、他の配列に加えると更なる有用性を提供するかその配列の特に検出又は単離において有用な特性を付与する、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド又はアミノ酸、ペプチド若しくはタンパク質、又は他の化学物質などの化学部分を指す。したがって、例えば、捕獲オリゴヌクレオチドと相補性のホモポリマー核酸配列又は核酸配列をプライマー又はプローブ配列に加えて、伸長産物又はハイブリダイゼーション生成物の続く単離を容易にすることができる。タンパク質タグの場合、ヒスチジン残基(例えば4から8の連続するヒスチジン残基)をタンパク質のアミノ末端又はカルボキシ末端に付加して、キレート金属クロマトグラフィーによるタンパク質の単離を容易にすることが可能である。或いは、特異的な抗体分子又は他の分子と反応するエピトープ又は結合決定因子(例えばフラグ(flag)エピトープ、c mycエピトープ、インフルエンザAウイルス赤血球凝集素タンパク質の膜貫通エピトープ、プロテインA、セルロース結合ドメイン、カルモジュリン結合タンパク質、マルトース結合タンパク質、キチン質結合ドメイン、グルタチオンS転移酵素など)となるアミノ酸配列、ペプチド、タンパク質又は融合パートナーをタンパク質に付加して、例えばアフィニティー又は免疫アフィニティークロマトグラフィーなどの方法によるタンパク質単離を容易にすることが可能である。化学タグ部分としては、ビオチンなどの分子があり、それらは核酸又はタンパク質に付加することができ、アビジン試薬などとの相互作用による単離又は検出を容易にする。他の多数の標識部分は当分野の熟練者に公知で思いつくものであり、この定義の範囲内であることを企図するものである。
【0041】
「抗体」又は「抗体分子」とは、特異抗原と結合する抗体及びその断片を含む任意の免疫グロブリンである。この用語は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、及び二重特異性の抗体を含む。本明細書で使用される抗体又は抗体分子は、手つかずの免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫活性のある部分、例えばFab、Fab’、F(ab’)2及びF(v)のような当技術分野で公知の部分を企図する。
【0042】
本明細書で使用される用語「対象」又は「患者」とは、「対象」又は「患者」が動物又はヒトであると同定されていない限り、ヒト及び動物の両方を指す。動物対象は好ましくは脊椎動物であり、より好ましくは哺乳類である。
【0043】
「治療法」とは、疾患、病態又は障害を治療及び/又は予防するいかなる手段も指す。
【0044】
本発明の一態様では、骨関節炎ではない対象と比較して骨関節炎の対象において差次的に発現するいくつかの遺伝子が同定された。これらの遺伝子及び遺伝子断片、並びにそれらのコードされたタンパク質及び断片は、例えば様々な診断及び予防のアッセイ、並びに骨関節炎の治療法における効果について試験物質をスクリーニングする際に有用なアッセイで使用することができる。
【0045】
本発明のある実施形態においては、少なくとも1つの差次的に発現される遺伝子の発現を測定してもよい。好ましい実施形態において、2つ以上の差次的に発現される遺伝子の発現を測定して、遺伝子発現パターン又は遺伝子発現プロファイルを提供することができる。より好ましくは、差次的に発現される複数の遺伝子の測定を実施して、遺伝子発現パターン又はプロファイルに関する追加情報を提供してもよい。
【0046】
本発明の様々な実施形態において、遺伝子発現の変化は下記2つの方法の一方又は両方で測定することが可能である:(1)特定の遺伝子によって生じるmRNAの検出を通して転写を測定すること;(2)特定の転写産物によって生じるタンパク質の検出を通して翻訳を測定すること。
【0047】
減少又は増加した発現は、当技術分野で公知のポリヌクレオチド定量のための任意の方法、例えばPCR(それには限定されないがRT−PCR及びqPCRを含む)、RNase保護、ノーザンブロッティング及び他のハイブリダイゼーション法を使用して、RNAレベルで測定することができる。本発明によって分析されるか調べられる遺伝子の形態は、mRNA又は逆転写mRNAである。これらの遺伝子は、クローニング及び/又は増幅することができる。クローニング自体は、集団内での遺伝子の表示を偏らせることはないようである。しかし、少ないプロセシング段階で使用することができるので、供与源としてpolyA+RNAを使用することが好ましい可能性がある。
【0048】
本発明の態様に従い、機能が骨関節炎(OA)と緊密に関連している1558の遺伝子が同定された。この関連性は、正常組織及びOAと診断された対象からの組織における遺伝子の発現を比較することによって測定される。このように同定される遺伝子は、2つの広いカテゴリーに分類される。第1のカテゴリーは公知の遺伝子を含み、OAとの関連性の多くはこれまで評価されてこなかった。これらの遺伝子は、その対応する遺伝子ID番号及び配列番号と一緒に表6にリストされている。
【0049】
本発明の別の態様に従い、第2のカテゴリーは、以前に同定された配列と相同性を示さない核酸セグメントを含む。したがって、このカテゴリーは、1つ又は複数の新規遺伝子を含むと考えられる。本発明の好ましい一実施形態は、新規OA関連遺伝子、このOA関連遺伝子から作り出されるmRNA又はcDNAを含む、単離された核酸分子に関する。
【0050】
本発明の一態様は、骨関節炎及び前骨関節炎ではない対象における発現と比較して、骨関節炎又は前骨関節炎の対象で差次的に発現される1558のポリヌクレオチド分子の組合せに関する。本明細書で記載される本発明の一実施形態では、イヌ軟骨からのOA関係の1558遺伝子のセグメントが、ディファレンシャルディスプレイを使用することによって得られた。これらのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、本明細書では配列番号1〜1558で表されている(表1は、配列番号と遺伝子ID番号との間の関係を示す)。これらの配列のBLAST分析からは、以前に同定されたいくつかの核酸配列との相同性が同定された(表2)。これらには、公知の遺伝子との相同性が同定されていない以前に同定されたいくつかの核酸配列が含まれる。BLAST分析からは、以前に同定された遺伝子との相同性を示している配列も同定された。これらのホモログそれぞれの遺伝子名並びにデータベースアクセッション番号を含む情報は、表2A及び2Bで提供する。
【0051】
【表2−1】


【表2−2】


【表2−3】


【表2−4】


【表2−5】


【表2−6】


【表2−7】


【表2−8】


【表2−9】


【表2−10】


【表2−11】


【表2−12】


【表2−13】


【表2−14】


【表2−15】


【表2−16】


【表2−17】


【表2−18】


【表2−19】


【表2−20】


【表2−21】


【表2−22】


【表2−23】


【表2−24】


【表2−25】


【表2−26】


【表2−27】


【表2−28】


【表2−29】


【表2−30】


【表2−31】


【表2−32】


【表2−33】


【表2−34】


【表2−35】


【表2−36】


【表2−37】


【表2−38】

【0052】
【表3−1】


【表3−2】


【表3−3】


【表3−4】


【表3−5】


【表3−6】


【表3−7】


【表3−8】


【表3−9】


【表3−10】


【表3−11】


【表3−12】


【表3−13】


【表3−14】


【表3−15】


【表3−16】


【表3−17】


【表3−18】


【表3−19】


【表3−20】


【表3−21】


【表3−22】


【表3−23】


【表3−24】


【表3−25】


【表3−26】


【表3−27】


【表3−28】


【表3−29】


【表3−30】


【表3−31】

【0053】
本発明の一実施形態は、配列番号1〜1558から選択される2以上のポリヌクレオチド分子又はその断片を含む組合せに関する。好ましくは、この組合せは約10以上のポリヌクレオチド分子、より好ましくは約50以上のポリヌクレオチド分子、より好ましくは約200以上のポリヌクレオチド分子、より好ましくは約400以上のポリヌクレオチド分子、より好ましくは約1000以上のポリヌクレオチド分子を含む。
【0054】
好ましい一実施形態において、本発明は、その配列が配列番号1〜396によって表される396の差次的に発現されるポリヌクレオチド分子の組合せに関する。表3で、健常対象に対してOA対象で統計学的に有意(p<0.05)な程度で差次的に発現されると判定された、臨床試料からの遺伝子配列のリストを同定する。表3は、遺伝子ID番号、発現値、標準偏差及び発現差の倍率(OA対正常)を含む。好ましくは、この組合せは配列番号1〜396から選択される2つ以上のポリヌクレオチド分子又はその断片を含む。
【0055】
特に好ましい一実施形態において、本発明は、その配列が配列番号1〜217によって表される217の差次的に発現されるポリヌクレオチド分子の組合せに関する。表4には、健常対象に対してOA対象で非常に有意(p<0.01)な程度で差次的に発現されると判定された、臨床試料からの遺伝子配列のリストを同定する。表4は、遺伝子ID番号、発現値、標準偏差及び発現差の倍率(OA対正常)を含む。好ましくは、この組合せは配列番号1〜217から選択される2つ以上のポリヌクレオチド分子又はその断片を含む。
【0056】
本発明の一態様に従い、試料を調べるための1つ又は複数のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドのプローブは、1558の単離された遺伝子断片(配列番号1〜1558)のいずれについても本明細書で記載されている配列情報を使用して調製することができる。本発明の他の態様に従い、プローブは、同定された遺伝子又は遺伝子断片のいずれについても利用できる配列情報を使用して調製することができる。プローブは、適当な相補的遺伝子又は転写産物と特異的に、実質的に排他的にハイブリッド形成するために十分な長さでなければならない。好ましくは、オリゴヌクレオチドプローブは長さが少なくとも約10、12、14、16、18、20又は25ヌクレオチドである。一部の実施形態では、少なくとも約30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチドのより長いプローブが望ましく、また約100ヌクレオチドよりも長いプローブが一部の実施形態では適当である。好ましくは、OAで差次的に発現される遺伝子産物の発現を検出するための2つ以上の核酸プローブの集合、より好ましくは約10以上のプローブの集合、より好ましくは約50以上のプローブの集合、より好ましくは約200以上のプローブの集合、より好ましくは約400以上のプローブの集合、より好ましくは約1000以上のプローブの集合が提供される。
【0057】
本発明の好ましい実施形態において、1つ又は複数のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドのプローブは、配列番号1〜396のいずれについても記載されている配列情報を使用して調製することができる。好ましくは、1つ又は複数のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドのプローブは、配列番号1〜217のいずれについても記載されている配列情報を使用して調製することができる。
【0058】
本発明のある好ましい実施形態において、固定化核酸プローブは、核酸分子及びそれらの発現パターンの迅速で特異的な検出のために使用することができる。一般的に、核酸プローブは固体支持体に結合され、標的核酸(例えば、ゲノム核酸、アンプリコン、又は最も一般的には、増幅された混合物)はプローブにハイブリッド形成される。プローブ又は標的、或いはその両方は、一般的に蛍光団又はストレプトアビジンなど他のタグで標識することができる。標的を標識する場合、結合した蛍光を検出することによってハイブリダイゼーションを検出することができる。プローブを標識する場合、一般的に標識の失活によってハイブリダイゼーションを検出する。プローブ及び標的の両方を標識する場合、ハイブリダイゼーションの検出は一般的には、2つの結合した標識の近くから生じる色の変化をモニターすることによって実施する。特に蛍光ベースの応用のための様々な標識戦略、標識などは、当技術分野で公知である。
【0059】
本発明の他の態様は、配列番号1〜1558から選択される配列又はその断片を含む1つ又は複数の核酸分子の発現から生じるポリペプチドと特異的に結合するポリペプチド結合剤を含む1つ又は複数のプローブに関する。本発明の他の態様に従い、タンパク質結合プローブは、表2で同定された遺伝子又は遺伝子断片のいずれについても利用できる配列情報を使用して調製することができる。好ましくは、OAで差次的に発現される遺伝子産物の発現を検出するための2つ以上のポリペプチドプローブの集合、より好ましくは約10以上のプローブの集合、より好ましくは約50以上のプローブの集合、より好ましくは約200以上のプローブの集合、より好ましくは約400以上のプローブの集合、より好ましくは約1000以上のプローブの集合が提供される。
【0060】
本発明の好ましい実施形態において、ポリペプチド結合剤を含むプローブは、配列番号1〜396から選択される配列を含む核酸分子から生じるポリペプチドと特異的に結合する。特に好ましい実施形態では、ポリペプチド結合剤を含むプローブは、配列番号1〜217から選択される配列を含む核酸分子から生じるポリペプチドと特異的に結合する。
【0061】
試料中のタンパク質レベルの測定で使用することができるアッセイ技術も、当業者に公知である。そのようなアッセイ方法としては、ラジオイムノアッセイ、競合結合検定法、ウェスタンブロット分析及びELISAアッセイがある。抗体を利用するアッセイ方法では、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方が本発明での使用に適当である。当業者ならば理解するように、そのような抗体は特定のタンパク質又はタンパク質のエピトープ又はタンパク質断片に対して免疫学的に特異的であるものとすることができる。タンパク質又はペプチドに対して免疫学的に特異的なポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を作製する方法も、当技術分野で公知である。
【0062】
本発明の好ましい実施形態では、本明細書で記載されているポリヌクレオチドの発現から生じるタンパク質の検出及び定量のために抗体を利用することができる。タンパク質は免疫沈降反応、アフィニティー分離、ウェスタンブロット分析などによって検出することができるが、好ましい方法では、抗体を体支持体上に固定化し、標的タンパク質又はペプチドを固定化抗体に曝露するELISA式の方法が利用される。プローブ又は標的、或いはその両方を標識することができる。様々な標識方法、標識などが当技術分野で公知である。
【0063】
本発明の特に好ましい実施形態において、骨関節炎で差次的に発現される複数の遺伝子の発現パターン又はプロファイルは、標的核酸又はタンパク質を検出するためのプローブアレイを利用して観察される。一実施形態では、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドプローブのアレイを利用することができるが、他の実施形態では、差次的に発現される遺伝子産物と特異的に結合する抗体又は他のタンパク質のアレイを利用することができる。そのようなアレイは、市販されている(例えば、Affymetrix,Inc.、Applied Biosystems,Inc.、Agilent,Inc.を通して)か、又は公知の方法、例えば固体支持体上のin−situ合成若しくはマイクロプリンティング技術による固体支持体への前合成されたプローブの付着に従って、特別生産することができる。好ましい実施形態において、核酸又はタンパク質結合プローブのアレイは、本明細書で記載されている1558の差次的に発現される遺伝子又は遺伝子断片の2つ以上から生じる転写産物又はタンパク質を特異的に検出するように、特別に作製される。本発明の一実施形態において、核酸又はタンパク質結合プローブのアレイは、表2で同定されている遺伝子又は遺伝子断片の2つ以上から生じる転写産物又はタンパク質を特異的に検出するように、特別に作製される。好ましい実施形態において、核酸又はタンパク質結合プローブのアレイは、表3で同定されている396の差次的に発現される遺伝子又は遺伝子断片の2つ以上から生じる転写産物又はタンパク質を特異的に検出するように、特別に作製される。好ましい実施形態において、核酸又はタンパク質結合プローブのアレイは、表4で同定されている217の差次的に発現される遺伝子又は遺伝子断片の2つ以上から生じる転写産物又はタンパク質を特異的に検出するように、特別に作製される。
【0064】
好ましくは、OAで差次的に発現される遺伝子産物の発現を検出するための2つ以上の核酸又はポリペプチドのプローブの集合、より好ましくは約10以上のプローブの集合、より好ましくは約50以上のプローブの集合、より好ましくは約200以上のプローブの集合、より好ましくは約400以上のプローブの集合、より好ましくは約1000以上のプローブの集合が支持体上の異なる位置に固定化される。
【0065】
軟骨細胞は、OAの影響を受ける組織である軟骨の細胞成分であるので、軟骨細胞アレイの構築は、骨関節炎の軟骨細胞の遺伝子発現プロファイルを研究するための強力な手段となることができる。OAと関連する転写産物のためのアレイ上で表されるクローンを濃縮するために、転写産物選択のためのディファレンシャルディスプレイの使用が本発明者らによって使用された。
【0066】
本発明の一態様では、試料中のOA関連の核酸を分析する方法が提供される。好ましくは、配列番号1〜1558から選択された、より好ましくは配列番号1〜396から選択された、より好ましくは配列番号1〜217から選択された1つ又は複数のポリヌクレオチド分子を含む組合せを使用してプローブを調製し、プローブを検査試料の核酸とハイブリッド形成させてハイブリダイゼーション複合体を形成させ、これら複合体を検出して標準のそれらと比較し、試料ハイブリダイゼーション複合体と標準ハイブリダイゼーション複合体との間の差は試料中の核酸の差次的な発現を示す。好ましい一実施形態において、核酸プローブは表2で同定されている遺伝子又は遺伝子断片の1つ又は複数から生じる転写産物又はその断片を特異的に検出するように作製される。ある好ましい実施形態において、試料の核酸はハイブリダイゼーションの前に増幅してもよい。
【0067】
本発明の他の態様では、試料中のOA関連のポリペプチドを分析する方法が提供される。好ましくは、配列番号1〜1558から選択された、より好ましくは配列番号1〜396から選択された、より好ましくは配列番号1〜217から選択されたポリヌクレオチド配列を使用して、それらのポリペプチド又はその断片の翻訳産物と特異的に結合するタンパク質結合プローブを調製する。これらのプローブを検査試料と反応させて結合複合体を形成させ、これら複合体を検出して標準のそれらと比較し、試料結合複合体と標準結合複合体との間の差は試料中のポリペプチドの差次的な発現を示す。好ましい一実施形態において、タンパク質結合プローブは表2で同定されている遺伝子又は遺伝子断片の1つ又は複数から生じるポリペプチド又はその断片を特異的に検出するように作製される。
【0068】
本発明のある好ましい実施形態に従い、本明細書で記載されているOA関連の転写産物及び翻訳産物の検出のためのアッセイは、患者で骨関節炎の診断及び/又は予後診断を決定するために有用な方法で使用することができる。本発明の実施形態に従い、典型的診断検査は、OA関連の遺伝子発現が起こることが予想される患者から細胞又は組織の試料を得ることを含む。そのような細胞又は組織には、それには限定されないが、軟骨組織及び軟骨細胞が含まれる。次に、試料を1)mRNA又はタンパク質の検出による1つ又は複数の選択された遺伝子の発現の増減、又は2)例えば本明細書で記載されている遺伝子又はタンパク質アレイ技術による特定の遺伝子発現プロファイルについて分析する。そのような診断法は、骨関節炎の徴候が患者に存在するかどうかの判定に至るに違いない。
【0069】
本発明の他の実施形態において、本明細書で記載されている診断法は、患者のOAからの回復に関して予後診断情報を提供するために、又は治療法に対する患者の進行度をモニターするために拡張することもできる。これらの状況では、診断検査は患者の回復又は治療経過の間に間隔をおいて実施され、標的遺伝子の発現の変化又は遺伝子発現パターンの特定の変化は、患者の回復又は改善の程度を示す。
【0070】
本発明の一態様では、骨関節炎の治療様式で有効な物質を同定するためのアッセイが提供される。本発明の一実施形態では、骨関節炎で差次的に発現される遺伝子の発現プロファイルに及ぼす試験物質の影響を測定するための方法が提供され、この方法は、a)試験物質の非存在下で、表1及び/又は2で同定した2つ以上の遺伝子又は遺伝子断片に対応している2つ以上の遺伝子の転写産物又は翻訳産物を測定することによって第1の試料から標準発現プロファイルを得るステップと、b)試験物質の存在下で発現される、表1及び/又は2で同定した2つ以上の遺伝子又は遺伝子断片の転写産物又は翻訳産物を測定することによって第2の試料から試験発現プロファイルを得るステップと、c)標準発現プロファイルと試験発現プロファイルとを比較するステップとを含み、標準発現プロファイルと比較しての試験発現プロファイルにおける変化は骨関節炎ではない状態と比較して骨関節炎で差次的に発現される遺伝子の発現プロファイルに及ぼす試験物質の影響を示す。好ましくは、前記2つ以上の遺伝子又は遺伝子断片は表3(配列番号1〜396)で同定されている遺伝子又は遺伝子断片の2つ以上に対応する。より好ましくは、前記2つ以上の遺伝子又は遺伝子断片は表4(配列番号1〜217)で同定されている遺伝子又は遺伝子断片の2つ以上に対応する。ある好ましい実施形態において、試料は培養細胞から得られる。この場合、標準発現プロファイルは試験物質と接触しなかった細胞から得られるが、試験発現プロファイルは試験物質と接触した細胞から得られる。
【0071】
試験化合物には、タンパク質、ポリペプチド、核酸、低分子薬剤、ビタミン類、ミネラル、脂肪酸、多糖類、抽出物、栄養補助食品などが含まれる。好ましい一実施形態において、試験化合物は、食品又は他の食事性物質に加えることができるか、又は栄養補助食品として摂取できる栄養素である。本明細書で例示されているように、そのような栄養素としては、それには限定されないが、ω3脂肪酸(例えばエイコサペンタエン酸)及びω6脂肪酸(例えばアラキドン酸)などの脂肪酸、グルコサミン、コンドロイチン硫酸並びにビタミンD誘導体、例えば1α,25−ジヒドロキシビタミンD3及び24R,25−ジヒドロキシビタミンD3がある。
【0072】
本発明の実施形態に従うアッセイの1種は、候補物質の存在下又は非存在下で前記OA関連の遺伝子の1つによってコードされるタンパク質の活性を測定することを含む。このような活性アッセイは当技術分野において公知である。無細胞系活性アッセイが選択されたタンパク質に利用できる場合は、そのようなアッセイは、試験物質の存在下又は非存在下で単に精製されたタンパク質で実施される。候補物質は、精製されたタンパク質の活性を正に又は負に調節することができるかどうかに基づいて選択される。この種のアッセイは、下記のように例えば組換え細胞系で実施することができる点に注目されたい。そのようなアッセイは、場合によっては例えば無細胞系でも実施することができる。
【0073】
そのようなin vitro活性アッセイについては、関心の精製タンパク質の供与源があることが望ましい。上述の遺伝子のタンパク質生成物の1つ又は複数は市販されているか、又は、適当な生物源、例えば培養細胞からかなりの量で精製することが可能である。或いは、このようなタンパク質は、適当な原核生物又は真核生物の発現系での発現により単離された遺伝子又はcDNAから組換えによって作製し、その後、当技術分野で公知なように精製することができる。
【0074】
本発明の他の実施形態は、OA関連の遺伝子の発現又はそれにコードされたタンパク質の活性のためのin vitro細胞アッセイを含む。これらの実施形態については、本発明の態様に従うOA関連の遺伝子を含む核酸構築物を宿主細胞中に導入する。好ましい一実施形態において、哺乳動物細胞系が利用される。使用を企図する宿主細胞としては、それには限定されないが、NIH3T3、CHO、HELA及びCOS、並びに非哺乳類細胞、例えば酵母、細菌及び昆虫細胞がある。コード配列は、利用される特定の宿主細胞に適する適当な調節発現要素と作動可能に連結される。核酸を宿主細胞中に導入する方法は、当技術分野で公知である。そのような方法としては、それには限定されないが、トランスフェクション、形質転換、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション及びリポフェクションがある。組換え細胞を使用して、OA関連の遺伝子の発現又はそれにコードされたタンパク質の活性を調整する化合物を同定することができる。
【0075】
遺伝子発現アッセイについては、作動可能にレポーター遺伝子に結合されている選択されたOA関連遺伝子のプロモーターを含む人工構築物を調製することが好ましい。レポーター構築物は、それには限定されないが上述の標準宿主細胞系又は他の適当な細胞、例えば軟骨細胞などの軟骨関係の細胞を含む培養細胞に導入することができる。アッセイは、試験化合物の存在下又は非存在下でレポーター遺伝子の発現をモニターすることによって実施される。候補物質は、遺伝子の発現に正に又は負に影響するそれらの能力に基づいて選択される。
【0076】
本発明の他の実施形態において、本明細書で記載されているOA関連の遺伝子及び遺伝子断片は、ヒト以外の動物対象のゲノムを操作するために使用することができる。様々な動物のゲノムを操作する方法は、当業者に公知である。そのような方法としては、トランスジェニック動物及び遺伝子ノックアウト動物の作製があるが、これに限定されるものではない。本発明の好ましい実施形態では、表2で同定されている遺伝子又は遺伝子断片を使用して、動物内の対応している内因性遺伝子を破壊又は「ノックアウト」することによりその遺伝子座に関して無発現変異を示す動物を生産するために使用される構築物を調製する。一部の実施形態において、動物は配列番号1〜1558から選択される核酸配列を有する1つ又は複数の遺伝子の発現の減少又は完全な消滅を示す。一部の実施形態において、動物は配列番号1〜396から選択される核酸配列を有する1つ又は複数の遺伝子の発現の減少又は完全な消滅を示す。一部の実施形態において、動物は配列番号1〜217から選択される核酸配列を有する1つ又は複数の遺伝子の発現の減少又は完全な消滅を示す。他の実施形態において、動物は表6で示す1つ又は複数の遺伝子の発現の減少又は完全な消滅を示す。トランスジェニック動物は、好ましくは哺乳類である。一部の実施形態において、トランスジェニック動物は齧歯動物(例えばマウス及びラット)である。他の実施形態では、動物は、例えば、ヤギ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、非ヒト霊長目動物、ウサギ及びモルモットである。一部の実施形態において、遺伝子を機能的に崩壊させるために低分子干渉RNAが使用される。つまり、遺伝子発現は低分子干渉RNA(siRNA)によって、RNA干渉(RNAi)又は転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)を通して抑制される(例えば、Kettingら(2001)Genes Develop.15:2654〜2659頁を参照)。siRNA分子は、相同性mRNA分子を、siRNA分子によってモニターされる領域内でmRNA分子を切断することによる破壊の標的にすることができる。したがって、表6で示される遺伝子産物のmRNAのターゲッティング及び切断が可能なsiRNAは、これらの遺伝子の1つ又は複数の発現を減少又は消滅させるために使用することができる。他の実施形態では、表1(配列番号1〜1558)で示される1つ又は複数の遺伝子のmRNAのターゲッティング及び切断が可能なsiRNAは、これらの遺伝子の1つ又は複数の発現を減少又は消滅させるために使用することができる。
【0077】
本発明の他の実施形態において、本明細書で記載されているOA関連の遺伝子及び遺伝子断片は、1つ又は複数のOA関連の遺伝子の発現を妨害するために使用することができる分子の設計のために使用される。そのような分子としては、RNA干渉プローブ及びアンチセンス分子を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0078】
本発明の他の態様では、上記アッセイの実行を容易にする組成物が特徴である。これらの組成物は、本発明のある態様に従う差次的に発現されるOA関係の遺伝子、遺伝子断片及びコードされたタンパク質を検出する際に使用するための、2つ以上のプローブ又はプライマーの集合を含むことができる。一実施形態では、このような組成物は、配列番号1〜1558から選択される核酸分子と特異的にハイブリッド形成する2つ以上のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの集合を含むことができる。好ましくは、このような組成物は、配列番号1〜396から選択される核酸分子と特異的にハイブリッド形成する2つ以上のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの集合を含むことができる。より好ましくは、このような組成物は、配列番号1〜217から選択される核酸分子と特異的にハイブリッド形成する2つ以上のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの集合を含むことができる。好ましくは、このような組成物は、表2で同定されている遺伝子及び遺伝子断片から選択される遺伝子及び/又は遺伝子断片と特異的にハイブリッド形成する2つ以上のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの集合を含むことができる。この集合は、配列を増幅するためのプライマー対を含むことができる。ある好ましい実施形態において、増幅はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、より好ましくは定量PCR(qPCR)を使用して実施することができる。好ましい一実施形態において、集合はより多くのプローブ、例えば約10、50、200、400、1000以上のプローブを含み、それぞれは配列番号1〜1558の配列の1つの一部又は全体と特異的にハイブリッド形成する。好ましい一実施形態において、核酸プローブは固体支持体上で固定化される。特に好ましい実施形態では、それらはアレイフォーマットで、最も好ましくはミニチュア又はマイクロアレイ式に固定化される。そのようなマイクロアレイは当技術分野で公知であり、時には「DNAチップ」、「マイクロチップ」、「生物学的チップ」及び他の類似の用語で呼ばれ、表1及び2で表されているものに加えてOAによって変化した遺伝子又は遺伝子断片のすべてのアレイを含むことができる。
【0079】
他の実施形態において、これらの組成物は、表1及び2で同定されている遺伝子及び遺伝子断片によってコードされるタンパク質又はタンパク質断片と特異的に結合することが可能な2つ以上のタンパク質結合物質を含む。好ましい一実施形態において、このような結合物質は抗体であり、集合は配列番号1〜1558によってコードされる2つ以上のタンパク質又はペプチドをそれぞれ検出するための2つ以上の抗体を含む。好ましくは、これらの組成物は、配列番号1〜396の遺伝子及び遺伝子断片によってコードされるタンパク質又はタンパク質断片と特異的に結合することが可能な2つ以上のタンパク質結合物質を含む。より好ましくは、これらの組成物は、配列番号1〜217の遺伝子及び遺伝子断片によってコードされるタンパク質又はタンパク質断片と特異的に結合することが可能な2つ以上のタンパク質結合物質を含む。そのような結合物質はタンパク質又はペプチドが特異的に結合するいかなる分子であってもよく、その例としてはDNA(DNA結合タンパクの場合)、抗体、細胞膜受容体、ペプチド、コファクター、レクチン、糖類、多糖類、細胞、細胞膜、オルガネラ及びオルガネラ膜がある。好ましい一実施形態において、集合はより多くの抗体、例えば約10、50、200、400、1000以上を含み、それぞれは表1及び/又は2で同定されている遺伝子又は遺伝子断片によってコードされるタンパク質又はペプチドの一部又は全体と免疫特異的に結合する。好ましい一実施形態において、抗体は固体支持体上で固定化される。特に好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブについて上述したようにそれらはアレイフォーマットで、最も好ましくはミニチュア又はマイクロアレイ式に固定化され、また、表1及び2で同定されている遺伝子又は遺伝子断片に加えてOAによって変化したタンパク質アレイの全体を含むことができる。
【0080】
本発明の他の実施形態は、本明細書で記載されている方法のいずれかで、OAで差次的に発現される遺伝子の発現プロファイルに影響を及ぼすと同定される物質又は化合物に関する。好ましくは、そのような物質はOAの治療及び/又は予防で有効となる。
【0081】
本発明の他の態様の特徴は、本明細書で記載されるアッセイの1つ又は複数で用いられるテストキットである。キットの1種は、本明細書で記載されているOA関連の遺伝子及び遺伝子断片に対応する核酸を増幅させるための1対又は複数対のプライマーを含む。キットは、様々な生理的状態の組織に由来するmRNA全体の試料を、対照として使用するために更に含むことができる。キットは、ハイブリダイゼーション及び/又は増幅反応で使用する緩衝液、ヌクレオチド塩基及び他の組成物を含むこともできる。各溶液又は組成物はバイアル又は瓶に入れることができ、すべてのバイアルは市販用に箱詰めすることができる。
【0082】
他の種類のキットは1つ又は複数の核酸又はタンパク質結合プローブを含み、核酸プローブは、本発明のある態様に従うOA関連の遺伝子又は遺伝子断片と特異的にハイブリッド形成するか、或いはタンパク質結合プローブは、OA関連の遺伝子又は遺伝子断片によってコードされるタンパク質と特異的に結合する。好ましくは、タンパク質結合プローブは、OA関連の遺伝子又は遺伝子断片によってコードされるタンパク質に免疫特異的な抗体である。好ましい実施形態において、核酸又はタンパク質結合プローブは固体支持体上で固定化される。特に好ましい実施形態において、キットは、固定化された核酸又はタンパク質結合プローブのアレイを含み、アレイは、本明細書で記載されている複数のOA関連の遺伝子若しくは遺伝子断片、又はそれらによってコードされるタンパク質に特異的なプローブを含む。これらのキットは、既知の生理状態の組織からのmRNA又はタンパク質の適当な対照試料を、アッセイで対照として使用するために含むこともできる。それらは、アッセイを実施するための緩衝液及び試薬を更に含むことができる。キット内の各溶液、試薬又は組成物はバイアル又は瓶に入れることができ、すべてのバイアルは市販のために箱詰めされる。好ましくは、キットは遺伝子発現のアッセイを実施するための説明書を更に含むことができる。
【0083】
他の態様において、本発明はOAに関係する遺伝子に関して細胞の遺伝子発現プロファイルの変化の誘発を通して細胞の生物学的プロファイルを変化させる方法を提供する。この方法は、配列番号1〜1558から選択される核酸配列を有する1つ又は複数の遺伝子の発現を変化させる化合物の有効量を細胞に投与することを含む。一部の実施形態において、この化合物は配列番号1〜396から選択される核酸配列を有する1つ又は複数の遺伝子の発現に影響を及ぼす。一部の実施形態において、この化合物は配列番号1〜217から選択される核酸配列を有する1つ又は複数の遺伝子の発現に影響を及ぼす。他の実施形態において、この化合物は表6で示す遺伝子産物を有する1つ又は複数の遺伝子の発現に影響を及ぼす。本発明は、OAに関係する遺伝子の発現に影響を及ぼすための、配列番号1〜1558から選択される配列を有する1つ又は複数の遺伝子の発現を調整する化合物の有効量に細胞を曝露することを含む方法も提供する。一部の実施形態において、この化合物は配列番号1〜396から選択される核酸配列を有する1つ又は複数の遺伝子の発現に影響を及ぼす。一部の実施形態において、この化合物は配列番号1〜217から選択される核酸配列を有する1つ又は複数の遺伝子の発現に影響を及ぼす。他の実施形態において、この化合物は表6で示す遺伝子産物を有する1つ又は複数の遺伝子の発現に影響を及ぼす。
【0084】
一部の実施形態において、細胞は、骨関節炎の症状と関連する細胞である。いくつかの実施形態では、これらの細胞は軟骨細胞である。一部の実施形態において、化合物はin vitroで細胞に投与される。一部の実施形態において、化合物はin vivoで細胞に投与される。化合物は、任意の投与経路を通して対象に投与することができる。好ましくは、対象は脊椎動物である。より好ましくは、対象はイヌ、ネコ及びヒトを含む哺乳動物である。
【0085】
遺伝子発現における変化は、好ましくは少なくとも1.01倍の差である。より好ましくは、それは少なくとも1.05、1.10、1.25、1.50、1.75、2.0、2.25、2.50、2.75、3.0、3.25、3.50、3.75、4.0倍の差又はそれ以上である。
【0086】
コンドロイチン硫酸は、表7〜12で詳細に示すように、多種多様なOA関連の遺伝子に影響を及ぼすことが示された。グルコサミンも、表13〜18で詳細に示すように、様々なOA関連の遺伝子に影響を及ぼすことがわかった。表19〜20で示すように、1α,25−ジヒドロキシビタミンD3及び24R,25−ジヒドロキシビタミンD3も、OA関係の遺伝子の発現に影響を及ぼした。エイコサペンタエン酸(EPA)及びアラキドン酸(AA)も、表21〜23で示すようにOA関係の遺伝子に影響を及ぼすことが示された。
【0087】
以下の実施例は、本発明を更に説明するために提供される。それらは本発明の例示が目的であり、それを限定するものではない。
【実施例1】
【0088】
軟骨細胞からのRNAの抽出
正常及び骨関節炎のイヌ軟骨細胞(N瞬間冷凍)を取得して、−80℃で保存した。骨関節炎の軟骨細胞は、人工股関節全置換術を行った、臨床的に骨関節炎と診断されたイヌに由来した。300〜500mgをN下で磨砕(乳鉢及び乳棒)して、清潔な前冷却された50ml管へ移した。トリゾール(Trizol)(2ml/100mg)を加え、混合物はポリトロンを使用して30秒を2回、次に1分間(高速)均質化した。次にホモジネートを10,000×gで10分間、4℃で遠心分離した。上清を取り出し、0.2溶のクロロホルムを上清に加えて攪拌し、10,000×gで15分間、4℃で遠心分離した。上の水相を取り出して、5溶の4Mチオシアン酸グアニジン、25mMクエン酸ナトリウム、0.5%サルコシル(sarkosyl)、0.1Mβ−メルカプトエタノール、及び0.475溶の100%エタノールを上の水相に加えた。次に、RNAの更なる精製のために、減圧マニホルドを(製造元の使用説明書に従って)使用して溶液をQiagen RNAqueousミニカラム(カタログ#74104)に加えた。次いで、精製されたRNAをエタノール沈殿させて濃縮物とし、DEPC水で再懸濁させ、DNアーゼIで処理して残りのDNAを取り出した。製造元の使用説明書に従ってDNアーゼI処理のためにAmbion(カタログ#1906)からのDNA−free(商標)DNアーゼ処理キットを使用した。
【0089】
ベックマンDU640B分光光度計を使用して260nm(Beckman Coulter,Inc.、4300N.Harbor Boulevard、P.O.3100、Fullerton、CA 92834−3100)でRNAを定量した。260nmの吸光度1は、40μgRNA/mlと等量である。典型的収率は、0.65〜0.8μg/μlであった。RNAの質は、260nm/280nmでの吸光度で判定し、典型的比率は1.7〜2.0であった。質は、電気泳動法により1%アガロースゲル/ホルムアルデヒド/トリス−ホウ酸塩−EDTA(TBE)、pH7.8緩衝液(90mMトリス、90mMホウ酸、2mM EDTA)でも分析した。15μlのゲルローディング溶液(10mMトリスpH7.5、1mM EDTA、0.02%ブロムフェノールブルー、10%グリセリン)と混合した後に、約1〜3.5μgのRNAをロードした(2〜5μl)。ゲルで、50ボルトで3〜4時間泳動させ、1:10,000に希釈したSYBRグリーンI(Molecular Probes,Inc.、PO Box 22010、Eugene、OR 97402−0469、4849 Pitchford Ave.、Eugene、OR 97402−9165)により30分間暗条件下で染色し、日立FMBIO II蛍光スキャナー(Hitachi Genetic Systems、1201 Harbor Bay Parkway Ste.150、Alameda、CA 94502)を505nmで使用してスキャンした。
【実施例2】
【0090】
ディファレンシャルディスプレイ
蛍光ディファレンシャルディスプレイは、3つの固定プライマーの1つを80の任意のプライマー(GenHunter)の1つと組み合わせて使用して実施した。全部で、240のPCR反応を実行した。反応物はPAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)を使用して分離し、蛍光スキャナー(FMBIOII、Hitachi)を使用して可視化した。差次的に発現された遺伝子を表しているバンドを切り取り、再増幅し、サイズを確認するためにアガロースゲルで泳動させた。これらを、その後サブクローニングして(PCR TRAP、GenHunter)、配列決定をした。
【0091】
ディファレンシャルディスプレイは、GenHunterのRNAimage(登録商標)キット又はRNAspectra(商標)緑蛍光mRNAディファレンシャルディスプレイシステム(GenHunter Corporation、624 Grassmere Park Drive、Suite 17、ナッシュビル、TN 37211)を使用して実施した。約200ngのRNAを以下の反応(最終濃度)で逆転写した:RT緩衝液(25mMトリスCl、pH8.3、37.6mMのKCl、1.5mMのMgCl、5mMのDTT)、各625μmのdNTP、50pmolのH−T11Gプライマー(GenHunter)(5’AAGCTTTTTTTTTTTG 3’)(配列番号1559)、又はH−T11Cプライマー(GenHunter)(5’AAGCTTTTTTTTTTTC 3’)(配列番号1560)、又はH−T11Aプライマー(GenHunter)(5’AAGCTTTTTTTTTTTA 3’)(配列番号1561)で総容積が19μl。MMLV逆転写酵素の1μl(100単位/μl)を、サーモサイクラー(thermocycler)(GeneAmp PCR System 9700、PE Applied Biosystems、850 Lincoln Center Dr.、Foster CA 94404)の37℃の段階へ加え10分間放置し、以下の反応を実施した:65℃で5分間、37℃で60分間、75℃で5分間、その後4℃を維持。逆転写反応物の2μlを、以下のポリメラーゼ連鎖反応で使用した:PCR緩衝液(10mMトリスCl、pH8.4、50mMのKCl、1.5mMのMgCl、0.001%ゼラチン)、各50μMのdNTP、5pmolのフルオレセイン標識H−T11Gプライマー(GenHunter)(フルオレセイン標識プライマー、5’AAGCTTTTTTTTTTTG 3’)(配列番号1562)、又はフルオレセイン標識H−T11Cプライマー(GenHunter)(フルオレセイン標識プライマー、5’AAGCTTTTTTTTTTTC 3’)(配列番号1563)又はフルオレセイン標識H−T11Aプライマー(GenHunter)(フルオレセイン標識プライマー、5’AAGCTTTTTTTTTTTA 3’)(配列番号1564)、キットで200pMで提供されるH−APプライマーの1つ、Amplitaq DNAポリメラーゼ(PE Applied Biosystems、850 Lincoln Center Dr.、Foster CA 94404)の1単位、合計20μl。
【0092】
以下のサーモサイクラー反応を使用した:94℃で15秒、40℃で2分、72℃で30秒を40サイクル、その後72℃で5分及び4℃を維持。
【0093】
各PCR試料5μlを5μlのブルーデキストランローディング緩衝液及び10μlの脱イオンホルムアミドと混合し、TBE緩衝液中で3時間、6%ポリアクリルアミドゲル上で55ワットの電気泳動にかけた。Hitachi FMBIO IIを使用してゲルを505nmでスキャンした。差次的に発現されたcDNAバンドはカミソリで切り取り、1.5mlの管に入れ、100μl滅菌水に10分間浸してから15分間沸騰させた。管を2分間10,000×gで遠心分離し、上清を新しい管へ移した。10μlの3M酢酸ナトリウム、5μlグリコーゲン(10mg/ml)及び450μlの100%エタノールを上清に加え、管は−80℃で一晩置いた。試料を10,000×gで10分間、4℃で遠心分離し、上清を除去した。cDNAペレットを冷たい(−20℃)85%エタノールで洗浄し、1分間上記のように回し、上清を取り出した。cDNAペレットを10μl滅菌水で再懸濁させた。
【0094】
cDNA抽出物の4μl試料を、以下の例外を除いて上記のPCR反応と同じように増幅させた:40μl総反応体積;各20μMdNTP;200pMの非標識プライマーH−T11G、H−T11C、又はH−T11A(GenHunter)及び2ユニットのAmplitaq DNAポリメラーゼ(PE Allpied Biosystems)。PCR条件は、上と同じであった。増幅されたcDNA抽出物の15μlを3μlの6×ローディング色素(0.25%ブロムフェノールブルー、0.25%キシレンシアノールFF、30%グリセリン)と混合し、1.5%アガロースゲルで電気泳動にかけた。ゲルは100ボルトで2〜3時間TBE緩衝液で流し、上記と同じように染色/視覚化した。バンドをカミソリで切り取り、cDNAをQiagenのQIAEX(登録商標)IIゲル抽出キット(Qiagen,Inc.、28159 Avenue Stanford、Valencia、CA 91355)により抽出した。300μlのQX1緩衝液及び10μlのQIAEX(登録商標)II懸濁液を1.5ml管内の各ゲル切片に加え、50℃で10分間インキュベートした。管を、インキュベートの間2分ごとに攪拌した。管を10,000×gで30秒間遠心分離し、上清を捨てた。ペレットを500μlの緩衝液QX1で一度、緩衝液PEで二度洗浄した(各洗浄について上述の攪拌及び遠心分離を行った)。ペレットを10分間風乾させ、それに20μlの滅菌水を加えた。管を5分間室温でインキュベートし、cDNAを上述のように遠心分離により30秒間溶出させた。次いで、上清を新しい1.5mlの管へ移して−20℃で保存した。
【0095】
増幅したゲル精製cDNAは、GenHunterのPCR−TRAP(登録商標)クローニングシステムキット(GenHunter Corporation、624 Grassmere Park Drive、Suite 17、ナッシュビル、TN 37211)によりサブクローニングした。5μlの増幅したゲル精製cDNAを300ngのPCR−TRAP(登録商標)ベクター、リガーゼ緩衝液(50mMトリスCl、pH7.8、10mMのMgCl、10mMのDTT、10mMのATP、5μgのBSA)及び200単位のT4DNAリガーゼに加えて混合し、16℃で一晩インキュベートした。10μlのライゲーション反応物を氷上の1.5ml管内の100μlのGHコンピテントセルと混合することによって、GHコンピテントセル(大腸菌del(lac−pro)ara thi(φ80dlacZdelM 15))をライゲーション反応で形質転換させた。管は氷上で45分間インキュベートし、42℃の熱ショックを2分間加え、次に氷上で2分間インキュベートした。400μlのLBブロス(Luria−Bertani、ディフコ)を各管に加え、管は振盪(250rpm)させながら37℃で1時間インキュベートした。これらの形質転換体の200μlをLB−アガー−tetプレート(LB−agar、ディフコ、テトラサイクリン20μg/ml)上に蒔き、37℃で一晩インキュベートした。
【0096】
コロニーは、GenHunterのコロニー溶解物PCRプロトコルを使用して、挿入断片について検査した。コロニーを清潔なピペットチップで拾い、微量遠心管内の50μlのコロニー溶解物緩衝液(GenHunter、0.1%トゥイーン20を含むTE)内に入れた。管を10分間沸騰させ、10,000×gで2分間遠心分離し、該当する溶解物(上清)を新しい微量遠心管へ移した。溶解物の2.0μlをPCR緩衝液、各20μMのdNTP、各200pmolのLgh(5’CGACAACACCGATAATC)(配列番号1565)及びRgh(5’GACGCGAACGAAGCAAC)(配列番号1566)プライマー及び1単位のAmplitaq DNAポリメラーゼ(PE Applied Biosystems)に加え、総容積は20μlであった。以下のサーモサイクラー反応を使用した:1サイクルが94℃で30秒間、52℃で40秒間及び72℃で1分間を30サイクル、その後72℃で5分間及び4℃で維持。PCR生成物を、上と同じように1.5%のアガロースゲルで分析した。
【0097】
3〜5mlのLBブロスに該当するコロニーを接種し、37℃で一晩、250rpmでインキュベートした。プラスミドは、QiagenのQIAprepプラスミドプロトコルに従って単離した。細菌を2×1.5mlの接種ブロスを使用してペレット化し(10,000×g、30秒)、上清を除去した。ペレット化した細菌を250μlの緩衝液P1内に再懸濁させ、次いで250μlの緩衝液P2を加え、管を緩やかに転倒させることによって混合した。350μlの緩衝液N3を加え、管を緩やかに転倒させることによって混合し、次に10分間遠心分離した。上清をQIAprepカラムに加え、30秒間遠心分離した。フロースルーを捨て、0.5mlの緩衝液PBをカラムに加え、管を30秒間遠心分離した。カラムを0.75mlの緩衝液PEで洗浄して、30秒間遠心分離した。フロースルーを捨て、管を更に1分間回した。50μl滅菌水をカラムに加えることによって、DNAをカラムから溶出させた。カラムを室温で1分間インキュベートし、次いで1分間遠心分離した。プラスミドDNAを含む生成上清を上のように定量し(260nmでの吸光度1は50μg/mlに相当する)、典型的収率は350μg/ml及び260nm/280nmの比は1.8であった。
【0098】
シークエンシング反応では、ABI Prism BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reactionキット(PE Applied Biosystems、850 Lincoln Center Dr.、Foster CA 94404)で200〜500ngのプラスミドDNAを使用した。0.8μlのプライマー(0.16μm最終濃度のLgh又はRgh、GenHunter)を、4.0μlのTeminator Reaction Mix(AmpliTaq DNAポリメラーゼ、FS、デオキシヌクレオシド三リン酸、MgCl、トリスHCl緩衝液、pH9.0、ジクロロ(R6G)で標識したA−Dye Terminator、ジクロロ(ROX)で標識したC−Dye Terminator、ジクロロ(R110)で標識したG−Dye Terminator及びジクロロ(TAMRA)で標識したT−Dye Terminatorを含む)と共にプラスミドDNAに加え、滅菌水で10μlの最終体積にした。以下のサーモサイクラー反応を使用した:1サイクルが96℃で10秒間、50℃で5秒間及び60℃で4分間を25サイクル、その後4℃で維持。
【0099】
取り込まれなかったdye−terminatorを、QiagenのDyeExスピンプロトコルに従ってシークエンシング反応から除去した。準備したDyeExスピンカラムを2.0mlの微量遠心管に入れ、750×gで3分間遠心分離した。カラムを新しい管に入れ、シークエンシング反応体をカラムに加えて上のように3分間遠心分離した。溶出液は乾燥するまで74℃に置いた。
【0100】
5μlのホルムアミド/ブルーデキストラン(5:1比率)を、各乾燥シークエンシングペレットに加えた。次いで1.5μlから2.0μlをパーキンエルマーABI Prism 377自動DNAシークエンサーにおける5%ポリアクリルアミドゲル(TBE緩衝液中)に加えた。
【0101】
各単離されたプラスミドクローンを2〜6回シークエンシングした(2〜6の異なるシークエンシング反応、各プライマーにつき1〜3回、Lgh又はRgh)。ABI 377シークエンサーからの配列ファイルをGenetic Computer GroupのWisconsin Packageへ移し、対応するコンセンサス配列を決定した。
【0102】
ディファレンシャルディスプレイを使用して約1750のクローンを単離した。差次的に発現されるように見えたすべての遺伝子を選択した。代表的なポリアクリルアミドゲル画像を図1で示す。図Aはバンド切り出し前のゲルを表し、図Bはバンド切り出し後の同じゲルを表す。クローンのサイズは90bpから1150bpの範囲であり、平均サイズは300bpであった。冗長な配列、二量体、大腸菌断片、100bp未満の断片その他について配列をフィルターにかけた後に、1558が残された。得られた配列(配列番号1〜1558)を表1で示すが、それは本明細書に付属しており、本明細書の一部を形成する。
【0103】
得られた配列を、第1のヒットを得るために、ヒト、マウス及びイヌのパブリックドメインゲノムに対してBLAST分析した。現段階でヒットとみなされるためには、一致するのが配列の50%以上でなければならなく、また予想値(E値)は0.002未満でなければならない。第1のヒットは、それぞれのゲノムを使用して配列を伸長させるために使用した。配列を、ヒットの5’又は3’側に2kb伸長させた。伸長させた配列を次に使用して、パブリックドメインタンパク質データベース(Ensembl、swissprot/trembl)に対してBLAST分析した。それぞれのヒット(この場合予想値が0.002未満のもの)を統合し、注釈のために使用した。場合によってはこの手法でヒットが得られなく、このような状況においては元の配列をswissprot/trembl又はEnsemblタンパク質に対して直接BLAST分析した。この場合、予想値が0.002未満の場合ヒットを考慮した。
【0104】
ディファレンシャルディスプレイによって単離された配列のBLAST分析(2004年1月28日現在)の結果は表2で示すが、それは本明細書に付属しており、本明細書の一部を形成する。これらの配列は、本明細書で発明者らによって使用される遺伝子ID名(クローン番号)により、左端の欄にリストされている。多くの配列は、以前に同定された遺伝子の記載と一致した。記載の欄は、供与源データベース及び対応するデータベースアクセッション番号も含む。表2は、Ensemble遺伝子IDD、Ensemble転写産物ID、Swissprot/Ensemble、OMIM(Online Mendelian Inheritance in Man)、RefSeq、Pfam、InterPro及びHUGOを含むいくつかのデータベースからの追加情報を含む。染色体番号(#)及び配列の多くの染色体位置に関しても情報が示されている。更に、「シグナルペプチド」と表示された欄は、予測されたシグナルペプチドがそのアミノ酸配列で見られる配列を示す。「TMHMM」(Transmembrane Hidden Markov Model)と表示された欄は、予測された膜貫通領域がタンパク質配列で見られる配列を示す。
【0105】
表6は、以前同定された遺伝子に対する相同性を示しているクローンを記載する。
【0106】
【表4−1】


【表4−2】


【表4−3】


【表4−4】


【表4−5】


【表4−6】


【表4−7】


【表4−8】


【表4−9】


【表4−10】

【実施例3】
【0107】
マイクロアレイの調製
マイクロアレイプローブは、ディファレンシャルディスプレイから単離されたクローンをPCR増幅することによって生成した。プローブは、GMS417(Affymetrix)アレイヤーを使用してポリ−L−リジンコーティングされたスライド上へ2連でスポットした。骨関節炎の軟骨試料は、人工股関節全置換術を行った臨床診断されたイヌの大腿骨頭部から得た。RNAは、HC ExpressArray(Digene)キットを使用してスライドとハイブリッド形成させ、GMS418(Affymetrix)スキャナーを使用して視覚化した。スポットを発見するためにImagene(Biodiscovery)プログラムを使用し、以降のデータ解析はGeneSight(Biodiscovery)を使用して実施した。発現量は、バックグラウンドの減算、対数(底2)変換及びグローバルスライドシグナル正規化の後に表される。
【0108】
マイクロアレイクローン調製
1.5mLのMagnificent Broth(MB)とテトラサイクリン(50mg/ml)を含む培養ブロックに、グリセリンストックから適当なクローンを接種し、振盪しながら37℃で一晩増殖させた。これらの培養物を使用して第2の培養ブロックに接種し、それを振盪しながら37℃で約6時間増殖させた。これらの6時間培養物を使用して2反復の培養ブロックに接種し、それを振盪しながら37℃で一晩増殖させた。培養物を遠心分離して細胞をペレットにし、Qiagen 96穴培養システム(Qiagen)を使用してプラスミドを単離した。プラスミド濃度は、分光光度計を使用して260nmで吸光度を測定することによって測定した。すべてのcDNAプラスミドクローンを、以下のPCR反応(最終濃度)を使用して2反復で増幅させた:10×PCR緩衝液(10mMのトリスHCl、pH8.3、50mMのKCl、2.5mMのMgCl、各500μMのdNTP、600nMのRghプライマー、600nMのLghプライマー、1μL(5単位/μl)のエッペンドルフTaqポリメラーゼ及び1μL(〜100ng/μL)のcDNA鋳型で、合計100μL。反応は以下の条件で実施した:1サイクルが94℃で30秒間、52℃で40秒間及び72℃で1分間を40サイクル、その後72℃で5分間及び4℃で維持。増幅生成物を1.5%のアガロースゲルで確認し、Minelute(Qiagen)プロトコルを使用して精製した。PCRの200μlを濾板に加え、フィルターに結合したcDNAだけを残してすべてのPCR試薬及び液体を引き抜くために減圧にした。30μLの分子グレードの水を濾板に加え、900rpmのオービタル振盪機上で室温で5分間インキュベートした。精製されたcDNAを含む上清を濾板から吸引した。cDNAを45℃のspeed vac内で2時間又は完了するまで乾燥させた。30μLのCorning Universal Printing緩衝液をすべてのcDNAに加え、オービタル振盪機上で室温で一晩再懸濁させた。2μLを濃度解析のために移し、200〜500ng/μLの最終濃度にするために適当な量のCorning Universal Printing緩衝液を加えた。プレートは、各アレイ印刷までとその後も、−20℃で保存した。
【0109】
クローン整列
顕微鏡スライド(Goldsealカタログ#3010)を10%NaOH(Fisherカタログ#S318−500)、57%EtOH溶液に浸漬して、50rpmのオービタル振盪機内で2時間、室温でインキュベートした。スライドを、ミリQ水5×でそれぞれ30秒間洗浄した。スライドが最後の水洗液内にある間に、10%のポリ−L−リジン(シグマカタログ#P8920)、10%の1×PBS(GibcoBRLカタログ#70013−032)をプラスチック容器内でミリQ水を使用して700mLにした。スライドをコーティング溶液に浸漬し、50rpmのオービタル振盪機内で1時間、室温でインキュベートした。スライドを、ミリQ水5×でそれぞれ30秒間洗浄し、500rpmで1分間回転させた。スライドを55℃のオーブン内で10分間インキュベートし、整列前の少なくとも14日間、また長くても3ヵ月間、デシケータ内に保管した。cDNAクローンは、GMS 417 arrayer(Affymetrix)を使用して整列させた。すべてのスライドを、乾燥させるために室温のデシケータ内に一晩置いた。スライドを、沸騰しているミリQ水(蒸気)の上で再水和させ、80℃熱ブロックの上でDNA側を上にして急速乾燥させた。効率的な架橋を確実にするために、スライドを80℃オーブンで2時間焼き、その後Stratalinker(120mJ、ストラタジーン)で架橋させた。すべてのスライドは、cDNAハイブリダイゼーションのために使用するまで、室温のデシケータで保存した。
【0110】
cDNAマイクロアレイハイブリダイゼーション
すべてのRNA試料は、以下の反応を使用して逆転写した:5×Superscript II First Strand緩衝液(インビトロゲン)、1μL(1pmole/μL)RTプライマー(Genisphere)、1μLのSuperase−In(商標)Rnase阻害剤、1μLの各10mMのDNTP、2μLの0.1M DTT、1μLのSuperscript II及び5μgの総RNA。反応を42℃で2時間実施した。3.5μLの0.5M NaOH/50mM EDTAを加え、65℃で10分間インキュベートすることによって反応を停止させた。反応を、5μLの1MトリスHCl、pH7.5を加えることによって中和させた。101.5μLの10mMトリス、pH8、1mMのEDTAを加え、cDNAはMicrocon YM−30(ミリポア)プロトコルに従って精製及び濃縮した。濃縮したcDNAをヌクレアーゼ非含有水で10μLの最終体積にし、以下の試薬を加えた:合計40μLにつき、20μlの2×ハイブリダイゼーション緩衝液(Genisphere)、2μLのdT LNA遮断薬及び8μLのヌクレアーゼ非含有水。ハイブリダイゼーション混合物を80℃で10分間加熱し、lifterSlipの端のマイクロアレイスライド上に載せた。次にスライドをGeneMachines二重ハイブリダイゼーション槽に入れ、60℃水槽に一晩置いた。翌日、3DNA Array 350(Genisphere)プロトコルに従ってスライドを処理した。即ち、スライドを洗浄し(2×SSC−0.2%SDS、2×SSC、0.2×SSC)、1000rpmで1分回転乾燥させ、3DNA捕獲ハイブリダイゼーションを実施した。スライドを洗浄し(2×SSC−0.2%SDS、2×SSC、0.2×SSC)、1000rpmで1分回転乾燥させ、GMS 418アレイスキャナー(Affymetrix)を使用してスキャンした。
【0111】
マイクロアレイ分析
特異クローンに結合したRNA転写物を表しているスキャン画像を定量化し、Imagene分析ソフトウェア(BioDiscovery)を使用してスポット品質管理について検査した。定量化された画像を、Genesight分析ソフトウェア(BioDiscovery)を使用して分析した。分析は、スポット周囲のバックグラウンドの減算、スポット反復の平均算出、すべての試料でバックグラウンドより200を超えて大きくないクローンハイブリダイゼーションシグナルを表しているクローン情報の削除、対数(底2)変換及び各スライドのグローバル正規化(値は平均スポット強度の割合で表される)を反映する。
【実施例4】
【0112】
マイクロアレイを使用した発現分析
RNAを上記のように軟骨から抽出した。マイクロアレイ分析(上記)を、臨床診断されて人工股関節全置換術を行ったイヌからの8つの骨関節炎の軟骨試料、及び8つの正常軟骨試料に対して実施した。標準のt検定(2カテゴリー)を、軟骨試料の骨関節炎についての評価のために最終ハイブリダイゼーションシグナルに対して実施した(p<0.05及びp<0.01、結果はそれぞれ表3及び4で示す)。
【0113】
【表5−1】


【表5−2】


【表5−3】


【表5−4】


【表5−5】


【表5−6】


【表5−7】


【表5−8】


【表5−9】

【0114】
【表6−1】


【表6−2】


【表6−3】


【表6−4】


【表6−5】


【表6−6】

【0115】
遺伝子転写物を単離するためのディファレンシャルディスプレイの使用で、本発明者らは骨関節炎に関係する転写産物で濃縮されるマイクロアレイチップを開発することができた。骨関節炎のイヌからの試料を分析するためのこのチップの使用により、(1)ディファレンシャルディスプレイからの結果が確認され、(2)分子レベルでのイヌ骨関節炎の更なる解明が可能になる。qPCR(上述)によって分析された転写産物は、マイクロアレイからの差次的発現の分析を検証するものであった。
【実施例5】
【0116】
定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)
定量PCRを使用して、RNA転写物における変化の確認を実施した。製造元の使用説明書通りにRT−PCRのためのSuper Script(商標)II逆転写酵素(インビトロゲン)を使用して逆転写酵素反応を実施した。1μgのRNAを1.5μLの10mM dNTP、1.5μLのランダムヘキサマー及び0.6μLのオリゴdTプライマーに加え、15μLの最終体積にした。試料を68℃で10分間インキュベートし、次いで、GeneAmp PCRシステム9700(Applied Biosystems)を使用して少なくとも1分間、4℃に下げた。上記反応物の一部(0.25×)を取り出して、負のRT反応物(Super Script(商標)II逆転写酵素を含まない陰性対照)として使用した。同じSuper Script(商標)II逆転写酵素キットを使用して、3μLの10×RT緩衝液、6μLの25mM MgCl、3μLの0.1M DTT及び1.5μLのRNアーゼ阻害剤を含むマスターミックスを作製した。負のRT試料のために一部(0.25×)を取り出して0.375μLのHOを加えた。正のRT反応のために、マスターミックスの残りに1.125μLのSuper Script(商標)II逆転写酵素を加えた。次にすべての反応物を42℃で1時間インキュベートし、95℃で5分間沸騰させ、次いで、GeneAmp PCRシステム9700を使用して4℃に下げた。次に試料をRT反応1部に対しHOの29部で希釈して、実験のためのcDNA原液を作製した。
【0117】
プライマー及び5’ヌクレアーゼアッセイプローブは、Primer Express(商標)v1.5(リアルタイム定量PCRプライマー及びプローブ設計チュートリアルのためのApplied Biosystems Primer Express(登録商標)チュートリアル)を使用してディファレンシャルディスプレイからの選択された配列に基づいて設計された。副溝結合プローブ(ABI Custom Oligo Synthesis Factory)をABIに注文した。すべてのオリゴを、TE緩衝液pH=8.0(Ambion)で100μM原液濃度に再構成し、その後、TE緩衝液で5μMの実用原液濃度に希釈した。定量PCR反応のために、製造元の使用説明書通りにTaqMan(登録商標)ユニバーサルPCRマスターミックス(Applied Biosystems)を使用した。プライマー濃度はそれぞれ300μMであり、プローブ濃度は200μMであった(以前の実験から最適と判定された)。定量PCR反応のために、4μLのRT反応及び負のRT反応を使用した。すべての陽性反応は3連で実施し、陰性対照は単独で実施した。TaqMan(登録商標)ユニバーサルマスターミックス(Applied Biosystems、50.0℃で2分間、95.0℃で10分間、及び1サイクルが95℃で15秒間その後60℃で1分間を40〜50サイクル)で記載されている標準のqPCR条件を0.5溶で使用した。試料を、ABI Sequence Detectorプログラムv1.7aを使用してABI Prism 7700 Sequence Detectorで分析した。
【0118】
どの標準曲線を使用しなければならないか判定するために、すべての試料は各プライマー/プローブセットに対して単独で流した。標準曲線は、実験試料からの肝臓RNA又はRNAの連続希釈を使用して作成した。或いは、試料が曲線範囲のいずれにも入らない場合は、最も低いC(サイクル閾値)の試料を再度逆転写し、1:10の連続希釈をそのプライマー/プローブセットの標準曲線として使用する。値を、定量PCRで測定されたG3PDH(グリセルアルデヒド−3−ホスフェート脱水素酵素)レベルに正規化した。インダクションを、最も低い試料の正規化値のそれぞれから計算した。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。
【0119】
表5は、qPCR分析で使用したプライマー及びプローブを示す。
【0120】
【表7−1】


【表7−2】


【表7−3】

【実施例6】
【0121】
イヌOA軟骨のqPCR分析
上述のように臨床診断されて人工股関節全置換術を行ったイヌからの6つの骨関節炎の軟骨試料、及び8つの正常軟骨試料に対してqPCRを実施した。結果を図2(A〜E)に示す。
【実施例7】
【0122】
処理されたOA試料のマイクロアレイ分析
A.in vitro軟骨細胞細胞培養
イヌ軟骨を、以下の酵素を使用して37℃の振盪水浴上で消化した:トリプシン(0.25%)25分間、ヒアルロニダーゼ(150U/ml)1時間及びコラゲナーゼ(0.78%)一晩。消化した軟骨を濾過して軟骨細胞を得た。ダルベッコの修正イーグル培地(DMEM)+2.4%アルギン酸塩(低融点)+細胞を10ccの注射器から塩化カルシウム(102mM)に滴下して、「ビーズ」を形成させた。軟骨細胞ビーズを、DMEM/F12+P/S(100U/mlのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシン)+10%ウシ胎仔血清(FB)で培養した。培地を1日おきに交換した。処理の終わり(下記参照)に、軟骨細胞ビーズをクエン酸ナトリウム(55mM)及びEDTA(30mM)に溶かした。懸濁液を1800rpmで10分間遠心分離した。細胞をリン酸緩衝液で洗浄し、再び1800rpmで5分間遠心分離した。1mLの溶解結合溶液(Ambion(登録商標)RNAqueous(商標))を単離されたイヌ軟骨細胞ペレットに加え、完全に混合し、RNA単離が実施できるまで−20℃で保存した。
【0123】
B.細胞培養からのRNA単離
製造元の使用説明書通りQuiashredder(Qiagen)カラムを使用して、試料を攪拌してホモジナイズした。ホモジナイズした溶解物を収集し、1等容積の64%エタノールをそれに加えた。次いで、この混合物をRNAqueous(商標)フィルターカートリッジに一度に700μL加え、10,000rpmで1分間遠心分離した。700μLの洗浄溶液#1及び500μLの洗浄溶液#2/3を使用して、各洗浄につき10,000rpmで1分間の遠心分離によりカートリッジを洗浄した。フィルターカートリッジを1分間の遠心分離(10,000rpm)により乾燥させた。RNAを、95〜100℃の溶出溶液の30μLアリコートを使用して、遠心分離(上記)により3回溶出させた。得られたRNAをDNアーゼ処理し、上で述べたように定量した。RNA単離の後、以前に述べたようにRNAをマイクロアレイハイブリダイゼーションのために準備した。
【0124】
C.細胞培養マイクロアレイの統計解析
データを対数(底2)に変換した。データを、分位数正常化を使用して正規化した。正規化の後、一致相関関係を計算した。
【0125】
差次的に発現された遺伝子は、EPA対AA;EPAstim対AAstim;コンドロイチン硫酸及びグルコサミン100μg対対照、100μg対10μg、並びに10μg対対照についてペアードt検定(α=0.05)を使用して判定した。
【0126】
差次的に発現された遺伝子は、先ずAAstim対AAの比及びEPAstim対EPAの比を使用し、続いてAAstim/AA及びEPAstim/EPAの比のペアードt検定(α=0.05)によって判定した。
【0127】
すべてのグルコサミン及びコンドロイチン硫酸分析の一方向の傾向に従う差次的に発現された遺伝子は、3つすべての試料において処理への反応が同じ方向への増加又は減少をもたらした各処理ペアについて判定された。
【0128】
差次的に発現された遺伝子は、1,25 D3対対照及び24,25 D3対対照(α=0.05)の両方についてWelchの修正2サンプルt検定を使用して判定した。
【0129】
1.コンドロイチン硫酸処理
コンドロイチン硫酸は関節の栄養素と認識の上で、軟骨細胞をコンドロイチン硫酸で処理した。軟骨細胞ビーズを、DMEM/F12+P/S+10%FBS内で100μg/mL、10μg/mL又は0μg/mL(対照)のコンドロイチン硫酸で1週間処理した(n=3)。培地を1日おきに交換した。1週間後に、軟骨細胞ビーズをクエン酸ナトリウム(55mM)及びEDTA(30mM)に溶かした。懸濁液を1800rpmで10分間遠心分離した。細胞をリン酸緩衝液で洗浄し、再び1800rpmで5分間遠心分離した。1mLの溶解結合溶液(Ambion(登録商標)RNAqueous(商標))を単離されたイヌ軟骨細胞ペレットに加え、完全に混合し、RNA単離が実施できるまで−20℃で保存した。コンドロイチン硫酸処理からの1試料を、残りのアレイデータとの低い相関関係のために除去した。これにより、この分析はn=3に減少した。結果を表7〜12に示す。
【0130】
【表8】

【0131】
【表9】

【0132】
【表10】

【0133】
【表11−1】


【表11−2】


【表11−3】


【表11−4】

【0134】
【表12−1】


【表12−2】


【表12−3】


【表12−4】

【0135】
【表13−1】


【表13−2】


【表13−3】

【0136】
2.グルコサミン処理
グルコサミン処理を使用して、OA関連遺伝子の差次的発現に及ぼすこの関節健康栄養素の影響を判定した。軟骨細胞ビーズを、DMEM/F12+P/S+10%FBS内で100μg/mL、10μg/mL又は0μg/mL(対照)のグルコサミンで1週間処理した(n=3)。培地を1日おきに交換した。1週間後、軟骨細胞ビーズをクエン酸ナトリウム(55mM)及びEDTA(30mM)に溶解させた。懸濁液を1800rpmで10分間遠心分離した。細胞をリン酸緩衝液で洗浄し、再び1800rpmで5分間遠心分離した。1mLの溶解結合溶液(Ambion(登録商標)RNAqueous(商標))を単離されたイヌ軟骨細胞ペレットに加え、完全に混合し、RNA単離が実施できるまで−20℃で保存した。結果を表13〜18に示す。
【0137】
【表14】

【0138】
【表15】

【0139】
【表16】

【0140】
【表17−1】


【表17−2】

【0141】
【表18】

【0142】
【表19−1】


【表19−2】

【0143】
3.1α,25−ジヒドロキシビタミンD(1,25 D3)及び24R,25−ジヒドロキシビタミンD(24,25 D3)処理
1,25 D3及び24R,25D3を、軟骨細胞内でのプロスタグランジン産生及びビタミンD3代謝産物に対する差次的な反応に及ぼすそれらの既知の影響に基づき、軟骨細胞の処理に使用してOA関連遺伝子の発現に及ぼすこれらの化合物の影響を判定した。軟骨細胞ビーズを、DMEM/F12+P/S+10%FBS内で10−7Mの1,25 D3又は10−7Mの24,25 D3で、或いはビタミンDなしで(当量エタノールを対照に加えた)24時間処理した(n=3)。24時間後、軟骨細胞ビーズをクエン酸ナトリウム(55mM)及びEDTA(30mM)に溶かした。懸濁液を1800rpmで10分間遠心分離した。細胞をリン酸緩衝液で洗浄し、再び1800rpmで5分間遠心分離した。1mLの溶解結合溶液(Ambion(登録商標)RNAqueous(商標))を単離されたイヌ軟骨細胞ペレットに加え、完全に混合し、RNA単離が実施できるまで−20℃で保存した。結果を表19及び表20に示す。
【0144】
【表20−1】


【表20−2】

【0145】
【表21】

【0146】
4.エイコサペンタエン酸(EPA)及びアラキドン酸(AA)処理
文献によるとEPAは抗炎症剤として作用するとの認識の下、軟骨細胞をエイコサペンタエン酸(EPA)及びアラキドン酸(AA)で処理した。AAは、西洋の典型的食事を代表する対照として使用した。軟骨細胞を、DMEM/HAMS+P/S+10%FBS内で、50μM EPA又は50μM AA(アルブミンを担体として使用)で2週間増殖させた。培地を1日おきに交換した。各組(n=3)を分割して、半分を刺激した単球好中球馴化培地(SMNCM)で1週間処理し、培地を1日おきに交換した。SMNCMを、製造元の使用説明書通りにNycoPrep(商標)を使用してイヌ全血から単球及び好中球を単離することによって作製した。単球及び好中球をリポ多糖(20ng/mL)で72時間刺激した。得られた上清を細胞培養実験でSMNCMとして使用した(SMNCMは、実験中に使用された培地の10%を占めた)。軟骨細胞ビーズをクエン酸ナトリウム(55mM)及びEDTA(30mM)に溶かした。懸濁液を1800rpmで10分間遠心分離した。細胞をリン酸緩衝液で洗浄し、再び1800rpmで5分間遠心分離した。1mLの溶解結合溶液(Ambion(登録商標)RNAqueous(商標))を単離されたイヌ軟骨細胞ペレットに加え、完全に混合し、RNA単離が実施できるまで−20℃で保存した。EPA/AA stim処理からの1試料は、残りのアレイデータとの低い相関関係のために除去した。これにより、これらの分析はn=3に減少した。結果を表21〜23に示す。
【0147】
【表22】

【0148】
【表23−1】


【表23−2】

【0149】
【表24−1】


【表24−2】

【0150】
この実験は、様々な治療がOA関連遺伝子の発現に影響を及ぼすことができることを証明した。ある場合には、遺伝子発現に対する影響は統計学的に有意であった(p<0.05)。他の場合、発現の多様性のために変化は統計学的に有意であると証明することができなかったが、発現が1つの方向にのみ(発現の増加又は減少)変化する確かな傾向が見られた。この一方向の変化は、生物学的に関連し且つ重要であると思われる。場合によっては、ある遺伝子の発現のダウンレギュレーションはOAに有益な生物学的影響を及ぼすと思われている。他の遺伝子については、発現の増加が有益な生物学的影響を及ぼす。本発明は、例えば、抗炎症性過程に関係していることが知られている化合物の調節によって実証されている有益効果と相関する遺伝子の識別を可能にする。本発明は、本発明で記載されているOA関連遺伝子の遺伝子発現の調節に基づく有益効果を有するはずである、新化合物の特定も可能にする。
【0151】
これらの結果は、様々な処理で細胞の生物学に影響を及ぼすことができること、及びOA関連遺伝子の遺伝子発現へ直接的影響を及ぼすことができることを証明している。本発明は、動物、特にヒトでOAの候補治療薬及び予防薬を同定するための、化合物の迅速で強力なスクリーニングを可能にする。
【0152】
各特許、特許出願、刊行物及びこの文書で引用又は記載されているデータベース配列へのアクセッション番号の開示は、本明細書で参照により完全に組み込まれている。
【0153】
本明細書で記載されているものに加えて、本発明の様々な修正形態が上の説明から当業者には明らかになろう。そのような修正形態も、添付の特許請求の範囲に入るものとする。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1a】イヌ骨関節炎のディファレンシャルディスプレイ分析において使用される代表的なゲルを示す図である。A.バンド切り出しの前に2反復でロードした骨関節炎対正常の転写産物のディファレンシャルディスプレイ(D=骨関節炎(罹患)、N=正常)。B.バンド切り出し後の同じゲル。
【図1b】イヌ骨関節炎のディファレンシャルディスプレイ分析において使用される代表的なゲルを示す図である。A.バンド切り出しの前に2反復でロードした骨関節炎対正常の転写産物のディファレンシャルディスプレイ(D=骨関節炎(罹患)、N=正常)。B.バンド切り出し後の同じゲル。
【図2a】イヌ軟骨における選択されたOA関連の転写産物の定量PCR分析(qPCR)を示す図である。RNA発現は、任意の単位で示される。(OA AVG=骨関節炎軟骨の平均発現;C AVG=正常対照の平均発現)。
【図2b】イヌ軟骨における選択されたOA関連の転写産物の定量PCR分析(qPCR)を示す図である。RNA発現は、任意の単位で示される。(OA AVG=骨関節炎軟骨の平均発現;C AVG=正常対照の平均発現)。
【図2c】イヌ軟骨における選択されたOA関連の転写産物の定量PCR分析(qPCR)を示す図である。RNA発現は、任意の単位で示される。(OA AVG=骨関節炎軟骨の平均発現;C AVG=正常対照の平均発現)。
【図2d】イヌ軟骨における選択されたOA関連の転写産物の定量PCR分析(qPCR)を示す図である。RNA発現は、任意の単位で示される。(OA AVG=骨関節炎軟骨の平均発現;C AVG=正常対照の平均発現)。
【図2e】イヌ軟骨における選択されたOA関連の転写産物の定量PCR分析(qPCR)を示す図である。RNA発現は、任意の単位で示される。(OA AVG=骨関節炎軟骨の平均発現;C AVG=正常対照の平均発現)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のポリヌクレオチド分子を含み、前記ポリヌクレオチド分子が、骨関節炎及び前骨関節炎ではない対象における発現と比較して骨関節炎又は前骨関節炎の対象で差次的に発現される組合せ。
【請求項2】
前記複数のポリヌクレオチド分子が、配列番号1〜1558から選択される2つ以上の分子又はその断片を含む、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
試料中の核酸の差次的な発現の検出のための、
a)複数のポリヌクレオチド分子を含み、前記ポリヌクレオチド分子が、骨関節炎及び前骨関節炎ではない対象における発現と比較して骨関節炎又は前骨関節炎の対象で差次的に発現される組合せを、試料の核酸とハイブリッド形成させることにより1つ又は複数のハイブリダイゼーション複合体を形成するステップと、
b)前記ハイブリダイゼーション複合体を検出するステップと、
c)前記ハイブリダイゼーション複合体を標準のそれらと比較するステップとを含み、標準及び試料のハイブリダイゼーション複合体の差が試料中の核酸の差次的な発現を示す方法。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチド分子が、配列番号1〜1558から選択される核酸配列又はその断片とハイブリッド形成する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチド分子が、表2で同定されている遺伝子配列から選択される核酸配列又はその断片とハイブリッド形成する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
試料中のポリペプチドの差次的な発現の検出のための、
a)複数のタンパク結合分子を含む組合せを試料のポリペプチドと反応させることにより特異結合を起こさせる、前記タンパク結合分子と結合したタンパク質が、骨関節炎及び前骨関節炎ではない対象における発現と比較して骨関節炎又は前骨関節炎の対象で差次的に発現されるステップと、
b)特異結合を検出するステップと、
c)前記試料中の特異結合を標準のそれと比較するステップとを含み、標準及び試料の特異結合の差が試料中のポリペプチドの差次的な発現を示す方法。
【請求項7】
試料を試験化合物で処理するステップを更に含み、標準との比較が、試験化合物による処理が試料中の核酸又はポリペプチドの差次的な発現を変化させたかどうかを示す、請求項3又は6に記載の方法。
【請求項8】
骨関節炎及び前骨関節炎ではない対象と比較して骨関節炎又は前骨関節炎の対象で差次的に発現される遺伝子の発現を検出するための2つ以上のプローブの集合を含み、前記プローブが2つ以上の
a)表1及び2で同定されている遺伝子若しくは遺伝子断片の2つ以上、又はその断片と特異的にハイブリッド形成する核酸分子、或いは
b)表1及び2で同定されている遺伝子若しくは遺伝子断片の1つ又は複数から選択される配列又はその断片を含む2つ以上の核酸分子の発現から生じるポリペプチドと特異的に結合するポリペプチド結合剤を含む組成物。
【請求項9】
前記遺伝子又は遺伝子断片が、配列番号1〜1558又はその断片を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記遺伝子又は遺伝子断片が、表2で同定されている遺伝子又は遺伝子断片を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
骨関節炎で差次的に発現される複数の遺伝子の発現を検出するための、既知の場所に複数のプローブが結合している基質を含み、前記プローブは、
a)それぞれが、配列番号1〜1558のいずれか又はその断片から選択される異なる配列と特異的にハイブリッド形成する複数のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、或いは
b)それぞれが、配列番号1〜1558のいずれか又はその断片を含む遺伝子又は遺伝子断片から選択される配列を含む核酸分子の発現から生じる異なるポリペプチド又はその断片と特異的に結合する複数のポリペプチド結合剤を含む装置。
【請求項12】
骨関節炎で差次的に発現される1つ又は複数の遺伝子の発現に及ぼす試験化合物の影響を測定するための、
a)標準試料において試験化合物の非存在下で配列番号1〜1558のいずれか又はその断片を含む1つ又は複数の遺伝子又は遺伝子断片の転写産物又は翻訳産物の測定から標準の発現を測定するステップと、
b)試験試料において試験化合物の存在下で配列番号1〜1558のいずれか又はその断片を含む1つ又は複数の遺伝子又は遺伝子断片の転写産物又は翻訳産物の測定から試験発現を測定するステップと、
c)標準発現と試験発現とを比較するステップとを含み、標準発現と比較しての試験発現における変化が、骨関節炎ではない状態と比較して骨関節炎で差次的に発現される遺伝子の発現に及ぼす試験化合物の影響を示す方法。
【請求項13】
前記測定で、複数のプローブを含む組成物を利用し、前期プローブが、配列番号1〜1558のいずれか又はその断片を含む2つ以上の遺伝子又は遺伝子断片を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記標準試料及び検査試料が少なくとも1つの哺乳類対象から得られる請求項12に記載の方法。
【請求項15】
OA関連の遺伝子の発現に及ぼす試験化合物の影響を測定するための、前記遺伝子が、表6で同定されている遺伝子からなる群から選択され、試験化合物の存在下又は非存在下で前記遺伝子の発現から生じる転写産物又は翻訳産物の生産を測定することを含み、試験化合物の存在下での転写産物又は翻訳産物の生産の変化は前記遺伝子の発現に及ぼす試験化合物の影響を示す方法。
【請求項16】
前記遺伝子発現が、OA関連遺伝子の転写調節配列と作動可能に結合しているレポーター遺伝子コード配列を含むDNA構築物を提供し、試験化合物の存在下又は非存在下でレポーター遺伝子産物の形成を測定することによって測定される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
骨関節炎の徴候を示す対象のために診断するか予後診断をするための、
a)対象から試料を得るステップと、
b)配列番号1〜1558のいずれか又はその断片を含む1つ又は複数のOA関連の遺伝子又は遺伝子断片の発現から生じる転写産物又は翻訳産物の生産を前記試料中で測定するステップと、
c)試料の転写産物又は翻訳産物を標準のそれと比較するステップとを含み、前記OA関連の遺伝子又は遺伝子断片のいずれかの発現における差は骨関節炎を示す方法。
【請求項18】
対象において骨関節炎又は骨関節炎の素因の存在を検出するための、配列番号1〜1558のいずれか又はその断片を含む2つ以上の遺伝子又は遺伝子断片とハイブリッド形成する配列から選択される配列の少なくとも約10の連続的なヌクレオチドの1つ又は複数のオリゴヌクレオチドを含み、前記オリゴヌクレオチドが、骨関節炎ではない対象また骨関節炎の素因のない対象での発現と比較して骨関節炎の対象又は骨関節炎の素因を有する対象で差次的に発現される核酸と特異的に結合するキット。
【請求項19】
骨関節炎で差次的に発現される遺伝子の発現を分析するための、2つ以上のプローブの集合を含む容器を含み、前記プローブが1つ又は複数の
a)配列番号1〜1558のいずれか又はその断片を含む2つ以上の遺伝子又は遺伝子断片と特異的にハイブリッド形成するオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、或いは
b)配列番号1〜1558のいずれか又はその断片を含む2つ以上の遺伝子又は遺伝子断片の発現から生じるポリペプチドと特異的に結合するポリペプチド結合剤を含み、
また遺伝子発現のアッセイを実施するための説明書を含むキット。
【請求項20】
配列番号1〜1588から選択される配列又はその断片を有する骨関節炎と関連する少なくとも1つの遺伝子の発現に影響を及ぼすために適当な条件下で化合物の有効量を投与することによる、細胞で骨関節炎関連の遺伝子発現を調整する方法。
【請求項21】
表6で同定されている遺伝子産物を有する骨関節炎と関連する少なくとも1つの遺伝子の発現に影響を及ぼすために適当な条件下で化合物の有効量を投与することによる、細胞で骨関節炎関連の遺伝子発現を調整する方法。
【請求項23】
前記化合物が、ビタミン、ミネラル、栄養補助食品、小分子薬剤、タンパク質、ポリペプチド、核酸、脂肪酸又は多糖類である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物が、エイコサペンタエン酸、アラキドン酸、グルコサミン、コンドロイチン硫酸、1α,25−ジヒドロキシビタミンD3又は24R,25−ジヒドロキシビタミンD3である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
骨関節炎関連の遺伝子を調整する化合物を同定するための、
a)標準試料において試験化合物の非存在下で配列番号1〜1558のいずれか又はその断片を含む1つ又は複数の遺伝子又は遺伝子断片の転写産物又は翻訳産物の測定から標準発現を測定するステップと、
b)試験試料において試験化合物の存在下で配列番号1〜1558のいずれか又はその断片を含む1つ又は複数の遺伝子又は遺伝子断片の転写産物又は翻訳産物の測定から試験発現を測定するステップと、
c)標準発現と試験発現とを比較するステップとを含み、標準発現と比較しての試験発現における変化が、骨関節炎ではない状態と比較して骨関節炎で差次的に発現される遺伝子の発現に及ぼす試験化合物の影響を示す方法。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図2d】
image rotate

【図2e】
image rotate


【公表番号】特表2007−523643(P2007−523643A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551610(P2006−551610)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/003375
【国際公開番号】WO2005/075685
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】