説明

イノシン含有組成物を用いて樹状細胞を成熟させるための方法および組成物

有効量のイノシン含有化合物を樹状細胞に適用することにより、インビボまたはエキソビボで樹状細胞の成熟を刺激する方法。有効量のイノシン含有化合物を樹状細胞に適用して樹状細胞の成熟を刺激し、そして成熟した樹状細胞を披験体中に投与することにより、披験体における疾患を処置するインビボまたはエキソビボでの方法。未熟な樹状細胞をドナーの哺乳動物から単離し;エキソビボでイノシン含有化合物の存在下で未熟な樹状細胞を成熟させ;そしてこの宿主哺乳動物の免疫応答を増強するのに十分な量の成熟した樹状細胞を宿主哺乳動物に投与することにより、宿主哺乳動物の免疫応答を増強する方法。樹状細胞のインビボまたはエキソビボでの成熟のためのイノシン含有化合物を含有する組成物。樹状細胞をインビボまたはエキソビボで成熟させるための、イノシン含有化合物を含む、組成物、薬学的組成物、アジュバント、免疫賦活剤、およびキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(技術分野)
本発明は、宿主の哺乳動物において免疫応答を増強する方法に関する。具体的には、本発明は、樹状細胞の成熟、機能性、および有効性を増加させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
保護的免疫は、先天性免疫および適応性免疫の両方の連合作用(joint action)に起因する。適応性免疫(Bリンパ球およびTリンパ球により媒介される)は、抗原特異的レセプターおよび免疫学的「記憶」の発生を介して、病原体由来構成要素の非常に特異的な認識により特徴付けられる。適応性免疫の確立は、発達するのに時間がかかり、そして微生物に対する曝露の後の数日から数週間の間、機能していない。対照的に、先天性免疫は、炎症性サイトカインの産生および食作用を包含する一連の規定された抗微生物戦略を用いて、固有というよりもむしろ保存された、病原体の構造決定基の認識を介して迅速に応答する。先天性免疫は、種々の細胞構成要素(例えば、ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージ、顆粒球、好中球、および樹状細胞)を含む。先天性免疫は、感染の初期段階の間、宿主の防御において重要である。さらに、先天性免疫は、主に樹状細胞のシグナル伝達を介して、特定の「教育(instructional)」サイトカインを産生することおよび共刺激分子のT細胞との相互作用を産生することにより、後の適応性応答を駆動および指令する。従って、樹状細胞は、導入された病原体に対して、初期の応答および後期の応答の両方における極めて重要な役割を果たす。
【0003】
身体の事実上全ての組織および器官において見出される樹状細胞は、適応性免疫応答(Th1、Th2、CD8およびB細胞を含む)および先天性免疫系への影響の両方の中で、広い範囲の応答を調節する抗原提示細胞である。樹状細胞は、複数の下位集合、ならびに細胞の系統および分化段階の両方について変動する個々の生物学的機能を包含する細胞の複合系を含む。
【0004】
2種の別個の造血前駆細胞の系統:(1)骨髄性細胞および(2)リンパ球系細胞に由来する樹状細胞の3種の別個のヒト部分母集団が存在する。樹状細胞の部分集合および成熟段階は、マーカーの組み合わせにより規定される(図1を参照のこと)。所定の経路の下流での経過は、特定のサイトカインにより駆動され、そして培養技術の最近の進歩は、種々のサブタイプ(代表的には、CD34+骨髄細胞もしくは臍帯血細胞由来、または末梢血由来のいずれか)およびインビトロで増殖すべき成熟レベルの多くを可能にしている。
【0005】
骨髄性細胞系統内では、二種の発生上の経路が可能である。一つは、単球由来樹状細胞(CD14由来細胞、DC1、またはM−DCとしてもまた知られている)を産生する。M−DCについての前駆体は、末梢血に存在し、そしてインビトロで、代表的には、GM−CSFおよびIL−4と一緒に培養され得る。一旦、単球ではなく樹状細胞への分化が約束されると、これらはCD14ははっきりせず、CD1b/cは、+であると認識される。成熟が完了すると、これらの細胞は、顕著な量のIL−12を分泌し、それ自体がT細胞のTh1型応答への分極化の原因になり、従って、DC1として命名される。
【0006】
第2の骨髄性樹状細胞の経路は、CD14非依存性ランゲルハンス細胞の樹状細胞サブタイプを産生し、このCD14非依存性ランゲルハンス細胞の樹状細胞サブタイプの分化は、分化がTGFβの存在に決定的に依存する。
【0007】
第3の下部母集団は、リンパ球由来形質細胞様樹状細胞(DC2またはP−DCとしてもまた知られている)である。このP−DCは、形質細胞様の形態学を示す直前の前駆細胞に由来する。P−DC前駆細胞はまた、新規に記載されたマーカーBDCA−2およびBDCA−4を用いて末梢血中に見出され得、そしてこれらのインビトロでの増殖は、IL−3+/−CD40リガンド(CD40L)に依存する。この樹状細胞サブタイプは、もともと、IL−12産生の欠損に起因してTh2 T細胞の発生を促進すると考えられていた;しかし、より最近には、この樹状細胞サブタイプは、I型インターフェロン(IFNαおよびIFNβ)の主要な産生細胞であるとして同定され、そしてこれは、適切な刺激があれば少量のIL−12を産生する。
【0008】
P−DCおよびM−DCの両方の主要機能が、抗原提示細胞として作用する一方で、これらが刺激に応答して分泌するサイトカインおよびケモカインの型の点から、これらは幾分異なる機能能力ならびにT細胞における種々の型(すなわち、Th1、Th2、Tregなど)の分化を促進する能力を有する。機能的な受容能力におけるこれらの相違は、部分的には、外来病原体すなわち「危険な」シグナルを最初に認識する種々のレセプターの代替的な発現に関する。このようなレセプターとしては、Toll様レセプター(TLR)、熱ショックタンパク質レセプター(CD91)、スカベンジャーレセプター、マンノースおよびその他のレクチンレセプターならびに補体に関するレセプターが挙げられる。例えば、P−DCのみがTLR7およびTLR9を発現し、これらは、イミダゾキノリンおよびCpGモチーフにそれぞれ結合する。M−DCは、TLR1〜TLR6を発現し、これは、多様な細菌細胞壁構成要素(例えば、LPS、ペプチドグリカン、フラゲリンなど)およびウイルス要素(例えば、dsRNA)に結合する。
【0009】
樹状細胞の機能は、その系統および成熟段階に依存して異なる。未熟な樹状細胞は、末梢組織または血液循環中に存在し、これらは、連続的に、抗原性環境を試料採取する。一般的にいえば、未熟な樹状細胞は、外来性の物質/病原体を捕捉し、それらを消化するのに適している。しかし、これらは、T細胞に刺激的様式で抗原を提示するのに特に適しているわけではない。微生物、微生物の生成物、または組織損傷(「危険シグナル」として総称される)との遭遇の際、樹状細胞は、クラスIペプチド主要組織適合性複合体およびクラスIIペプチド−主要組織適合性複合体の表面発現の増加を介した樹状細胞表面上の抗原の試料採取工程を処理工程および提示する工程を含めて、成熟表現型への分化を開始する。樹状細胞は、ケモカインレセプター発現の変化により媒介されて、同時にリンパ節に移動する。さらに、この樹状細胞は、共刺激分子(CD86、CD80など)の発現をアップレギュレートし、これらの分子は、T細胞との有効な相互作用にとって必要とされる。
【0010】
従って、成熟の際、樹状細胞は、抗原取り込みがあまりできなくなり、そしてT細胞への提示(MHCクラスI分子およびMHCクラスII分子、ならびに種々の共刺激分子(例えば、CD80、CD86)の発現の増加)ができるようになる。さらに、樹状細胞は、先天性免疫系の非常に多様な細胞構成要素および非細胞構成要素と相互作用する。ナチュラルキラー細胞およびその他の先天性の細胞型への影響は、成熟樹状細胞、代表的には、活性化サイトカイン(例えば、IL−12、IFNα/β、TNFおよびIL−1)およびケモカイン(例えば、インターロイキン8(IL−8))の産生により媒介される。しかし、表面分子(例えば、CD1)を介した直接の相互作用もまた生じ得る。
【0011】
標準的な実施において、ヒト末梢血単球由来樹状細胞前駆体は、血液単核細胞調製物から組織培養皿への約90分間の細胞接着を伴うプロセス、続いてサイトカインGM−CSFおよびIL4との6日〜7日の期間の間の培養により単離される。この時点で、第2の「危険」シグナルまたは病原体由来シグナル(例えば、TNFもしくはLPS)が添加され、最終成熟段階を刺激し、この最終成熟段階が、さらに6日間までの培養を続け得る。十分に成熟した状態までのインビトロおよびインビボでの分化は、第2の「危険シグナル」(例えば、ウイルス産物または細菌産物(例えば、LPS)由来のシグナル)を必要とすることに注意することが重要である。この最終成熟工程は、抗原提示、同時刺激分子の発現、サイトカインおよびケモカインの分泌、ならびに未処理のT細胞のその後の刺激の増加と相関しており、これらの全てが、効果的な病原体保護にとって重要である。
【0012】
微生物の危険性および細胞についてのストレスの適切な認識は、宿主の生存にとって極めて重要である。なぜなら、これは、局所的防御メカニズムの活性化ならびに分化した免疫細胞の動員および活性化をもたらすからである。従って、樹状細胞および先天性免疫系のその他の細胞は、いわゆる「パターン認識レセプター」(PRR)を用いて、そうするための種々の手段を進化させてきた。このPRRは、分子パターン(病原体関連分子パターンすなわちPAMP)をプロセシングされていない抗原(例えば、微生物の大きな集団により共有されるが宿主中に見出される微生物と区別される、病原体の細胞壁成分または核酸)において認識する。樹状細胞は、PRR(CD14、マンノースレセプター、DEC205、およびtoll様レセプター(TLR)のファミリーが挙げられる)を発現する。
【0013】
先行技術において、代表的には微生物由来の物質が、免疫応答を非特異的に刺激するために使用されてきた(例えば、フロイントアジュバント中へのマイコバクテリアの封入)。先天性免疫応答およびとりわけ樹状細胞についての理解の進歩で、これらの物質の全てではないにしてもほとんどが、樹状細胞に対して作用することが明白になった。最近のいくつかの刊行物が、非メチル化CpGモチーフ(CpG)と二種の合成イミダゾキノリン化合物(レジクイモド(Resiquimod)およびイミクイモド(Imiquimod))とを含む、免疫賦活化オリゴヌクレオチドの使用を開示している。上に記載されるように、所定の化合物により使用される特定のTLRが、同定されている(すなわち、TLR9は、CpGを認識する)。P−DC系統またはM−DC系統のいずれかへの特定のTLRの相互に排他的な発現(例えば、TLR9はP−DC系統へ制限される)のために、これは、これらの化合物の機能的な結果が、所定の系統の機能的レパートリーに限定され得ることを示唆している。理想的な広範囲スペクトルの抗病原体因子は、いくつかの先天的細胞型に対するより広い標的化を示し得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、より生産的な免疫原性応答のための樹状細胞の成熟を誘導する化合物および関連する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
本発明は、樹状細胞のインビボまたはエキソビボでの成熟を促進する、組成物、キット、および方法を提供する。本発明は、樹状細胞から成熟表現型へのインビボまたはエキソビボでの刺激を与える。より具体的には、本発明は、有効量のイノシン含有化合物を樹状細胞に適用することにより、インビボまたはエキソビボでの樹状細胞の成熟を刺激する方法を与える。さらに、本発明は、有効量のイノシン含有化合物を樹状細胞に適用し、これらの成熟を刺激し;そして、成熟した樹状細胞を被験体中に投与することにより、その被験体における疾患を処置する方法を提供する。さらに、未熟な樹状細胞をドナーの哺乳動物から単離し;イノシン含有化合物の存在下で、抗原の存在下または非存在下のいずれかで、この未熟な樹状細胞を成熟させ、そしてこの成熟した樹状細胞を、この宿主哺乳動物の免疫応答を高めるのに有効な量で宿主哺乳動物中に投与することにより、宿主哺乳動物の免疫応答を高める方法が提供される。本発明はまた、イノシン含有化合物の存在下で、インビボまたはエキソビボでの樹状細胞を成熟させる方法を提供し、このイノシン含有化合物は、刺激的様式で抗原のT細胞に対する提示の増加をもたらす。本発明は、ワクチンの形態で投与されるイノシン含有化合物と抗原を合わせ、これによって、そのワクチン抗原に対する応答を高める工程を提供し、ここで、上記イノシン含有化合物は、アジュバントと見なされる。最終的に、本発明は、樹状細胞のインビボまたはエキソビボでの成熟のための組成物を提供し、この組成物は、イノシン含有化合物を包含する。
【0016】
本発明の他の利点は、添付の図面と一緒に考慮された場合、詳細な説明を参照することによって本発明がより深く理解されるにつれて、容易に理解される。
【0017】
(発明の詳細な説明)
一般的に、本発明は、イノシン含有化合物の適用を介して、インビボまたはエキソビボでの樹状細胞の成熟を加速させるための組成物、方法、およびキットに関する。本発明はまた、感作された樹状細胞を個体に投与することにより、または、成熟した樹状細胞とイノシン含有化合物との同時インキュベーション(co−incubation)によるインビトロでのT細胞を活性化した後、これらを、個体に投与することにより、個体のT細胞を活性化させるのに有用である。本発明はまた、樹状細胞をインビボで感作する際にも有用である。本発明はまた、樹状細胞刺激アジュバントとして作用することにより、ワクチンに対する免疫学的応答を増強するためにもまた有用である。
【0018】
本明細書中で使用された場合、「樹状細胞」とは、特定の抗原に応答するようにナイーブなT細胞を感作する原因となる身体中の抗原提示細胞として定義され、ここで、そのT細胞はさらに、「エフェクター」細胞または「記憶」T細胞へと分化し、このエフェクター細胞は、ヘルパーT細胞もしくは細胞傷害性T細胞のような機能を有し得る。樹状細胞はまた、種々のサイトカインおよびケモカインを分泌し、これらのサイトカインおよびケモカインは、T細胞の機能を刺激し、そしてT細胞に指令するのみならず、その他の免疫細胞(先天性免疫系の細胞(例えば、ナチュラルキラー細胞を含む)を刺激し、この免疫細胞は、病原体の即時の非病原体特異的死滅を提供する。樹状細胞としては、形質細胞様樹状細胞(本明細書中ではこれ以後、「P−DC」)および骨髄様樹状細胞または単球樹状細胞(本明細書中ではこれ以後、「M−DC」)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書中で用いられる場合、用語「イノシン含有化合物」は、イノシン分子を包含する任意の化合物を意味する。このようなイノシン分子としては、イソプリノシン、イノシン5’−モノホスフェート、メチルイノシン5’−モノホスフェート(本明細書中ではこれ以後、「MIMP」)、これらのポリマー(例えば、ダイマーおよびトリマー)、これらの相同体、これらの誘導体、ならびに当業者にとって公知の任意のイノシン含有化合物が挙げられるが、これらに限定されない。イノシン含有化合物は、免疫系をより応答性にするにすることにより、抗原もしくは化合物に対する個体の免疫応答を高める。このイノシン含有化合物はまた、免疫応答に影響し、その結果、より低用量の抗原または化合物しか個体中の免疫応答を達成するのに必要とされない。このイノシン化合物はまた、イノシン分子にリン酸結合または−S基を介して結合しているか、またはイノシン分子を含むオリゴヌクレオチドであり得る。
【0020】
好ましい実施形態では、MMPは、イノシン分子として利用される。MIMPは、天然に存在するプリンヌクレオシドイノシンモノホスフェート(より具体的には、イノシン5’−モノホスフェート)の合成アナログである。インビトロおよびインビボでの今日までの研究は、MIMPの免疫賦活化活性は、主にT細胞依存性免疫応答を標的とし、そして細胞媒介性免疫機能を優先的に増強する(図2〜図4を参照のこと)。
【0021】
イノシン5’−モノホスフェートは、大きな免疫増強能力を有する重要なプリンである。イノシン5’−モノホスフェート(具体的にはMIMP)は、Haddenら、に対する米国特許第5,614,504号に記載されており、この米国特許は、本明細書中に参考として援用される。この免疫モジュレーターは、細胞内の細菌病原体およびウイルスの感染の処置において有効である。イノシン5’−モノホスフェートは、一般式:
【0022】
【化1】

を有し、ここで、上記R基は、アルキル、アルコキシ、アルギニン、第2級アミノ化合物、(MIMPを形成するための)−OCH等からなる群より選択される部分である。このR基は、多くの機能を有する。例えば、このR基は、保護機能(例えば、MIMPの加水分解を、酵素(例えば、5’−ヌクレオチダーゼ、ホスホジエステラーゼ等)により阻害する)を有する。
【0023】
このイノシン−5’−モノホスフェート誘導体は、酵素耐性(「保護されたIMP」)であり、そして免疫増強物質である。本明細書中に記載されたようなイノシン−5’−モノホスフェートのこれらの保護された誘導体は、ペプチドと所望のアルコール、第1級アミン、またはイノシン−5’−モノホスフェートとの縮合(好ましくは、縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミドなど)の存在下での縮合)により容易に調製され得る。適切なアルコールとしては、1個の炭素原子〜20個の炭素原子の一価アルコール(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、およびn−デシルアルコール)が挙げられる。
【0024】
本明細書中で用いられる場合、用語「細胞表面マーカー」、「同時刺激分子」、「細胞表面レセプター」、「レセプター」および「細胞レセプター」は、部分的にまたは完全に細胞の外側表面上に露出され、かつ他の構造物、分子、またはタンパク質と相互作用する、細胞膜糖タンパク質として定義される。細胞表面マーカーとしては、CD1a−c、CD11c、CD14、CD40、CD80、CD83、CD86、CD123、HLA−DR、BDCA−2、BDCA−4、Toll様レセプター(TLR)、熱ショックタンパク質レセプター(CD91)、スカベンジャーレセプター、マンノースレセプター、補体レセプター、レクチンレセプター、および当業者に公知の任意の他の細胞表面マーカーまたは細胞表面レセプターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書中で用いられる場合、用語「有効量」は、続発性免疫不全を処置することについて当該分野で公知であるような考慮事項によって決定される量を意味し、ここで、その有効量は、処置される個体において測定可能な軽減、例えば、改善(改善された生存率、より迅速な回復、症状の改善または排除、感染後の合併症の減少、および、適切な場合、感染因子に対する抗体の力価もしくは力価の増加、腫瘍塊の減少、ならびに当業者に公知であるようなその他の測定可能物が挙げられるが、これらに限定されない)を示すことを提供するのに効果的でなければならない。
【0026】
本明細書中で用いられる場合、用語「抗原」は、抗体、T細胞レセプター、またはパターン認識レセプター(PRR)により特異的に結合され得、これにより、免疫応答を誘導し得る、任意の物質として定義される。抗原の型としては、ウイルス性抗原、細菌性抗原、腫瘍抗原、および自己抗原が挙げられるが、これらに限定されない。従って、本発明に従って調製される樹状細胞は、種々の疾患(感染性疾患、癌、自己免疫疾患、およびバイオテロが挙げられる)の予防ならびに処置のために有効である。
【0027】
用語「核酸」および「オリゴヌクレオチド」は、互換的に使用され、そして複数のヌクレオチド(すなわち、リン酸基に結合され、かつ交換可能な有機塩基(置換されたピリミジン(例えば、シトシン(C)、チミン(T)、もしくはウラシル(U))または置換されたプリン(例えば、アデニン(A)、グアニン(G)、もしくはイノシン(I)のいずれか)に結合された糖(例えば、リボースまたはデオキシリボース)を含む分子)として定義される。これらの用語は、オリゴリボヌクレオチドおよびオリゴデオキシリボヌクレオチドの両方を指す。これらの用語としてはまた、ポリヌクレオシド(すなわち、ポリヌクレオチドからリン酸基を除去したもの)、および任意の他の有機塩基含有ポリマーが挙げられる。核酸分子は、現存する核酸供給源(例えば、ゲノムDNAまたはcDNA)から得られ得るが、また合成的(例えば、オリゴヌクレオチド合成により生成される)でもあり得る。
【0028】
本発明は、先行技術に対して多くの利点を有する。例えば、本発明は、樹状細胞の成熟を高め、そして増強する。結果として、この樹状細胞の成熟した機能的特性の緊密な仕上げ(elaboration)が加速される。樹状細胞の成熟は、T細胞に対する樹状細胞の刺激性活性を増強することにより、抗原に対するより強固な免疫応答(ワクチン、感染因子、および腫瘍細胞に関連する免疫応答を含む)をもたらす。成熟した樹状細胞は、ワクチンおよび病原体に対する、より優れたインビボでの免疫応答を与える。
【0029】
本発明は、種々の方法、組成物、アジュバント、免疫賦活剤、およびキットに関する多くの実施形態を有する。一実施形態では、本発明は、有効量のイノシン含有化合物をこの樹状細胞に適用することにより、樹状細胞の成熟をインビボまたはエキソビボで刺激する方法に関する。このイノシン含有化合物としては、イソプリノシン、イノシン5’−モノホスフェート、メチルイノシン5’−モノホスフェート(MIMP)、イノシン含有オリゴヌクレオチド、これらのポリマー(例えば、ダイマーおよびトリマー)、1種以上のイノシン3’,5’−結合を含むオリゴヌクレオチド、これらの相同体、ならびにこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書中に記載されるように、樹状細胞の成熟により、ナイーブなT細胞をより効果的に刺激し得る樹状細胞が生じ、この刺激されたT細胞は、特定の配置の表現型細胞表面マーカーの発現し、そして特定のサイトカインおよびケモカインを産生し、これらに応答する。より具体的には、成熟は、いくつかの特性:代表的な星状形態;MHC分子(クラスIおよびクラスII)ならびに共刺激分子(CD80、CD86)ならびに成熟DC特異的マーカー(CD83)のアップレギュレーションの獲得として定義される。成熟には、単球細胞マーカー(すなわち、CD14)のダウンレギュレーションおよびマクロピノサイトーシス、ファゴサイトーシス、またはエンドサイトーシスを介した抗原取り込みの減少を誘導する、協調した一連の変化が伴う。MHCおよび共刺激分子の増加と抗原取り込みの減少との組み合わせは、ナイーブなT細胞を刺激する成熟DCの能力の増強に関連する。成熟樹状細胞は、可溶性の抗原をプロセシングする有効性が低下するが、刺激的様式でT細胞に抗原を提示するのに非常に効果的である。DCは、サイトカインおよびケモカインの産生によりT細胞およびその他の免疫細胞型の活性をさらに調節する。
【0031】
樹状細胞の成熟は、関係する表面マーカーの評価により評価され得る。このような表面マーカーとしては、CD1a〜CD1c、CD11c、CD14、CD40、CD80、CD83、CD86、CD123、HLA−DR、Toll様レセプター(TLR)、熱ショックタンパク質レセプター(CD91)、スカベンジャーレセプター、マンノースレセプター、補体レセプター、レクチンレセプターおよび当業者に公知のその他の任意の細胞表面マーカーまたは細胞表面レセプターが挙げられる。本発明はまた、樹状細胞に抗原化合物を負荷すること;有効量のイノシン含有化合物をその樹状細胞に適用し、その成熟を刺激すること;そして成熟した樹状細胞を被験体中に投与することにより、その被験体中の疾患を処置するための方法を与える。この方法はまた、サイトカインおよびケモカインの分泌を促進するさらなる工程を包含し、このサイトカインおよびケモカインは、T細胞におけるTh1応答の発生を促進する。成熟樹状細胞を投与することは、当業者に公知の任意の手段(静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、腫瘍周囲投与が挙げられるが、これらに限定されない)により生じ得る。さらに、この成熟樹状細胞は、当業者にとって周知であるような薬学的に受容可能なキャリアと共に投与され得る。
【0032】
本発明の別の方法は、イノシン含有化合物を樹状細胞に適用し、これにより樹状突起を増加し、そしてこの樹状細胞の機能性を増強することにより、樹状細胞の成熟をインビトロで刺激する方法である。
【0033】
本発明は、宿主哺乳動物の免疫応答を増強するのに有用である。これは、未熟な樹状細胞をドナーの哺乳動物から単離する工程;この未熟な樹状細胞をイノシン含有化合物の存在下でインビトロで成熟させる工程;およびこの成熟樹状細胞を宿主の哺乳動物内に、この宿主哺乳動物の免疫応答を高めるのに有効な量にて投与する工程により、達成される。必要に応じて、この免疫応答の増強は、未熟な樹状細胞に抗原を負荷する工程をさらに包含する。本発明のさらなる方法は、イノシン含有化合物の存在下で樹状細胞を成熟させることにより、刺激的様式でT細胞に対する抗原の提示を増強する方法である。これは、その抗原に応答するT細胞の増殖の増強をもたらす(例えば、実施例の節を参照のこと)。
【0034】
上記方法のいずれにおいても、樹状細胞は、種々の条件でインキュベートされる。例えば、一実施形態において、樹状細胞は、イノシン含有化合物で約24時間(GM−CSF+IL−4の存在下では48時間の総培養)処置される。
【0035】
本発明はまた、種々の組成物を提供する。一実施形態では、種々のインビボの疾患の処置のために、樹状細胞をエキソビボで成熟させるための組成物が提供される。この組成物は、イノシン含有化合物(イソプリノシン、イノシン5’−モノホスフェート、メチルイノシン5’−モノホスフェート(MIMP)、イノシン含有オリゴヌクレオチド、これらのポリマー(例えば、ダイマーおよびトリマー)、1つ以上のイノシン3’,5’−結合を含むオリゴヌクレオチド、これらの相同体、ならびにこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない)である。好ましくは、このイノシン含有化合物は、約1μg/ml〜約300μg/ml(約3μM〜900μMまたは1mg/kg〜300mg/kg)の用量範囲内にある。さらに、この組成物は、種々の疾患(癌、免疫不全、および当業者に公知の任意の他の免疫関連疾患が挙げられるが、これらに限定されない)を処置するのに有用である。さらに、この組成物は、因子(ウイルス、細菌、インフルエンザ、HIV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、炭疽菌、その他の病原体、および当業者に公知の任意のその他の感染因子が挙げられるが、これらに限定されない)により引き起こされる種々の感染症に対応する種々の疾患を処置するために、増強されたT細胞免疫活性を生み出すのに有用である。
【0036】
インビボでの樹状細胞の機能を改善するための薬学的組成物もまた提供され、この組成物は、有効量のイノシン含有化合物を含む。さらに、樹状細胞を成熟させるのに用いるためのイノシン含有化合物を含むワクチンにおける使用のための免疫賦活剤が提供され、ここで、抗原は、免疫原性が低く、そして複数回投与が必要とされる。従って、樹状細胞を成熟させるのに用いるイノシン含有化合物を含むワクチンのために使用される経口アジュバントまたはその他のアジュバントが、提供される。
【0037】
本発明の組成物はまた、アジュバントを含有する種々の薬学的組成物および/または薬学的成分と組み合わせられ得る。個々の患者の臨床状態、投与部位および投与方法、投与計画、患者の年齢、性別、体重ならびに医師に公知のその他の要因)を考慮に入れながら本発明の組成物が投与され、そして十分な医学的慣習に従って投薬される。従って、本明細書中の目的のために薬学的に「有効な量」は、当該分野において公知の考慮事項により決定される。この量は、改善(改善された生存率もしくはより迅速な回復、または症状の改善もしくは除去、および当業者により適切な手段であるとして選択されるようなその他の指標が挙げられるが、これらに限定されない)を達成するために有効でなければならない。
【0038】
本発明の方法において、本発明の化合物は、種々の方法で投与され得る。本発明の化合物は、化合物としてまたは薬学的に受容可能な塩として投与され得、そして単独でかまたは薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、アジュバントおよびビヒクルと組み合わせた活性成分として投与され得ることが、注意されるべきである。本願化合物は、経口投与、皮下投与、または非経口投与(静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、および鼻内投与ならびに髄腔内投与ならびに注入技術が挙げられるが、これらに限定されない)で投与され得る。上記化合物の移植物もまた有用である。処置される患者は、温血動物、特に、ヒトを含む哺乳動物である。薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、アジュバントおよびビヒクルならびに移植物のキャリアとは、一般的に、本発明の活性成分と反応しない、不活性で、無毒性の、固体もしくは液体の、充填材、希釈剤またはカプセル化物質をいう。投与は、単回投与または7日間の期間にわたる複数回投与であり得る。この処置は、一般的に、疾患プロセスの長さおよび薬物の有効性に比例する長さを有する。
【0039】
本発明の化合物を非経口投与する場合、本発明の化合物は一般的に、注射可能な形態(溶液、懸濁液、エマルジョン)の単位投薬量で処方される。注射に適切な薬学的処方物としては、滅菌した水溶液、滅菌した分散物、または無菌の注射可能な溶液または分散物への再構成のための無菌散剤が挙げられる。このキャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、ポリピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物、および植物油を含有する、溶媒または分散媒体であり得る。
【0040】
適切な流動性は、例えば、コーティング(例えば、レシチン)の使用により、分散物の場合においては必要とされる粒子の大きさの維持により、そして界面活性剤の使用により、維持され得る。非水性ビヒクル(例えば、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、ダイズ油、コーン油、ひまわり油、またはピーナッツ油)およびエステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル)もまた、化合物の組成物のための、溶媒系として使用され得る。さらに、上記組成物の安定性、無菌性および等張性を増強する種々の添加物(抗菌保存剤、抗酸化剤、キレート剤、および緩衝液を含む)が、添加され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベンズ、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)により保証され得る。多くの場合、等張剤(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)が含まれることが望ましい。注射可能な薬学的形態の長期吸収は、吸収を遅延する薬剤(例えば、モノエステル酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によりもたらされ得る。しかし、本発明によれば、使用されるあらゆるビヒクル、希釈剤、または添加物は、この化合物と適合性であらねばならない。
【0041】
滅菌された注射可能な溶液は、本発明を実施する際に利用される化合物を、必要とされる量の適切な溶媒の種々の他の成分と共に組み込むことにより、所望のように調製され得る。
【0042】
本発明の薬学的処方物は、任意の適合性キャリア(例えば、種々のビヒクル、アジュバント、添加物、および希釈剤)を含有する注射可能な処方物として患者に投与され得る;あるいは、本発明において利用される化合物は、徐放性皮下移植物もしくは標的化送達系(例えば、モノクローナル抗体、ベクター化された送達、イオン注入、ポリマーマトリックス、リポソーム、およびミクロスフィア)の形態で患者に非経口投与され得る。本発明において有用な送達系の例としては、米国特許第5,225,182号;同第5,169,383号;同第5,167,616号;同第4,959,217号;同第4,925,678号;同第4,487,603号;同第4,486,194号;同第4,447,233号;同第4,447,224号;同第4,439,196号;および同第4,475,196号が挙げられる。このような移植物、送達系、およびモジュールの他の多くは、当業者に周知である。
【0043】
本発明において利用される化合物の薬理学的処方物は、患者に経口投与され得る。通常の方法(例えば、錠剤、懸濁剤、溶剤、エマルジョン、カプセル剤、散剤、シロップ剤などの中の化合物を投与すること)が使用可能である。薬理学的処方物を経口でかまたは静脈内で送達し、そしてその生物学的活性を保持する、公知の技術が好まれる。
【0044】
一実施形態では、本発明の化合物は、静脈注射により最初に投与され得、血液レベルを適切なレベルにまで至らせる。次いで、患者のレベルが、経口投薬量形態により維持されるが、その他の投薬形態は、患者の状態に依存し、そして上で示されたように、使用され得る。投与される量は、処置される患者によりまちまちである。
【0045】
さらに、哺乳動物中で免疫応答を増強するためのキットが提供され、そのキットは、イノシン含有化合物を含有し、ここで、上記イノシン含有化合物は、哺乳動物における免疫応答を増強するために樹状細胞の成熟を増強する。
【0046】
最後に、樹状細胞のインビボでの成熟またはエキソビボでの成熟のための組成物(イノシン含有化合物を含有する)が提供される。このイノシン含有化合物は、イノシン分子、イノシン分子(本明細書中では、以後「I」)にリン酸結合(本明細書中では、以後「p」)を通して結合されたオリゴヌクレオチド配列(本明細書中では、以後「R」)を有するオリゴヌクレオチドIpRとして定義される一の可能な構造を包含する任意の化合物である。より具体的には、上記オリゴヌクレオチドIpRは、以下の式:
5’R−p−I−p−R3’
を有し、
ここで、Iは、イノシン分子(イソプリノシン、イノシン5’−モノホスフェート、メチルイノシン5’−モノホスフェート(MIMP)、これらのポリマー(例えば、ダイマーおよびトリマー)、これらの相同体、およびこれらの誘導体が挙げられるがこれらに限定されない)であり;
pは、リン酸結合であり;
Rは、少なくとも2のヌクレオチド(C、T、AおよびGが挙げられるが、これらに限定されない)を含むオリゴヌクレオチド配列であり;
nは、0〜100の整数であり;そして
mは、0〜100の整数であり、ここで、n+mは、1以上である。
【0047】
オリゴヌクレオチド配列(R)は、改変され得る。例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも1のヌクレオチドは、リン酸骨格の改変を有する。このリン酸骨格の改変は、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート改変であり得る。いくつかの実施形態において、このリン酸骨格の改変は、オリゴヌクレオチドの5’側またはこのオリゴヌクレオチドの3’側に生ずる。このオリゴヌクレオチド配列(R)は、任意の大きさであり得る。好ましくは、このオリゴヌクレオチドは、2分子〜150分子を有する。
【0048】
本発明における使用について、オリゴヌクレオチドは、当該分野で周知の多くの手順のうちの任意のものを用いて、デノボで合成され得る。例えば、β−シアノエチルホスホラミダイト法(S.L.BeaucageおよびM.H.Caruthers,(1981)Tet.Let.22:1859)およびヌクレオシドH−ホスホネート法(Gareggら、(1986)Tet.Let.27:4051〜4054;Froehlerら、(1986)Nucl.Acid.Res.14:5399〜5407;Gareggら、(1986)Tet.Let.27:4055〜4058、Gafffneyら、(1988)Tet.Let.29:2619〜2622)が利用され得る。これらの化学反応は、市場で入手可能な種々の自動オリゴヌクレオチド合成機により遂行され得る。あるいは、オリゴヌクレオチドは、公知の技術(例えば、制限酵素、エクソヌクレアーゼ、および/またはエンドヌクレアーゼを用いるもの)を用いて、存在する核酸配列(例えば、ゲノムDNAまたはcDNA)から調製され得る。
【0049】
インビボでの使用に関して、オリゴヌクレオチドは、好ましくは、分解(例えば、エンドヌクレアーゼまたはエクソヌクレアーゼを介した分解)に比較的抵抗性である。オリゴヌクレオチドの安定化は、リン酸骨格改変を介して達成され得る。好ましい安定化オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート改変骨格を有する。このホスホロチオエートODNの薬物動態は、げっ歯類において安定化オリゴヌクレオチドが48時間という全身の半減期を有することを示し、そしてこれらがインビボの適用に対して有用であり得ることを示唆している(Agrawal,S.ら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7595)。ホスホチオエートは、ホスホロアミデートまたはHホスホネート化学反応のいずれかを用いる自動化技術を用いて合成され得る。アリールリン酸塩およびアルキルリン酸塩が製造され得(例えば、米国特許第4,469,863号に記載のように);そして、アルキルホスホトリエステル(荷電酸素部分が、米国特許第5,023,243号および欧州特許第092,574号に記載されているようにアルキル化されたアルキルホスホトリエステル)が、市販されている試薬を用いて、自動化固相合成により調製され得る。その他のDNA骨格の改変および置換を作るための方法が、記載されている(Uhlmann,E.およびPeyman,A.(1990)Chem.Rev.90:544;Goodchild,J.(1990)Bioconjugate Chem.1:165)。
【0050】
インビボでの投与のために、オリゴヌクレオチドが、標的細胞(例えば、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞)の表面への、親和性のより高い結合ならびに/または標的細胞による細胞内取り込みの増加をもたらす分子と会合され得る。オリゴヌクレオチドは、当該分野で周知の技術を用いて、適切な分子とイオン結合または共有結合され得る。種々のカップリング剤または架橋剤(例えば、プロテインA、カルボジイミド、およびN−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP))が使用され得る。あるいは、オリゴヌクレオチドは、周知の技術を用いて、リポソームまたはビロゾーム中に封入される。
【0051】
オリゴヌクレオチドIpRを含有する組成物は、上に記載され、そして記述された薬学的組成物または薬学的処方物と組み合わせられ得る。
【0052】
上記の議論は、本発明の有用性に関する事実に基づく根拠を提供する。本発明に使用される方法および本発明の有用性は、以下の非限定的な実施例および添付の図面により示され得る。
【実施例】
【0053】
(実験の設計、材料および方法:)
投与経路としては、MIMPの皮下投与、腹腔内投与、経口投与が挙げられるが、これらに限定されない。以下に示されるように、GM−CSF+IL−4の存在下で単球由来前駆体がインビトロで培養される場合、MIMPは、ヒトM−DC系統に関して活性である。DC成熟についてのMIMPの活性は、サブタイプの間で区別し、そしてこの発生の進行を追跡する細胞表面マーカーの十分に規定したパネルを用いて評価され得る。M−DCの産生は、以前に記載された慣用的に行われる方法を用いて、正常PB単球細胞から獲得され得る(以下を参照のこと)。DCの増殖に対するエンドトキシンの強い影響力のために、エンドトキシンの低いレベルが全ての実験手順において精力的に維持される。
【0054】
単球由来のDCを取得するために、新たに単離されたヒトPB単球細胞(PBMC)(Ficoll密度遠心分離により調製した)を、10%の子ウシ胎児血清、2mMのL−グルタミン、10mMのHEPES、50 IU/mlのペニシリン、および50μg/mlのストレプトマイシンを含有する補充RPMI1640培地中で1ml当たり5×10個の細胞に調節し、次いで、37℃にて、5%CO加湿インキュベーター中で、プラスチックに1時間〜1.5時間接着させる。あらゆる非接着細胞を注意深く除去した後、ヒトrGM−CSF(Genzume)を20〜500U/mlで、そしてヒトrIL−4(Genzyme)を500U/mlで含有する追加完全培地を添加した。DC成熟誘導化合物(すなわち、MIMP、TNFα)を、GM−CSF+IL−4における培養の開始24時間後に添加する。全ての実験手順をエンドトキシンに乏しい条件下で行った。TNFαの添加は、時として、単球由来DC成熟の原型に対する陽性コントロールとして役立った。MIMPを、種々の用量(0.01〜300μg/mlまたは0.01〜300mg/kg)にて使用し、24時間後にGM−CSFおよびIL−4のみを添加した。最初のデータ(図6を参照のこと)から、MIMPは、1μg/mlと同じくらい低い用量で、非常に活性である。
【0055】
MIMPは、ウイルス病原体および細菌病原体に対するMIMPの一般的保護活性により証明されているように、DCの成熟をインビボで加速し得る(図2〜図3を参照のこと)。MIMPはまた、インフルエンザ免疫に対するDTH応答を増強する能力により示される、ワクチンに対するアジュバントとして作用する(図4)。インビトロでは、MIMPは、M−DCの未熟M−DCからより成熟した形態および細胞表面マーカー発現への転換を加速した(図5および図6を参照のこと)。MIMPはまた、ナイーブなT細胞をより効果的に刺激する、MIMP処理されたDCの能力により、および免疫調節性ケモカイン、IL−8の産生を増加させることにより示されるように、DCの機能性を増強する(図7および図8)。
【0056】
(実施例1:細菌チャレンジおよびウイルスチャレンジに対するインビボでの保護的作用)
今日までのインビトロおよびインビボでの研究は、MIMPの免疫刺激活性は、主としてT細胞依存性免疫応答を標的化し、そして細胞媒介性免疫応答を優先的に高めることを示している。このような活性は、MIMPが樹状細胞の成熟を刺激および/または加速することと一致している。インビボの背景で細胞媒介性免疫を高める明らかな結果が、病原体のチャレンジに対する保護として証明されている。
【0057】
MIMPは、いくつかのインビボの感染性疾患のモデル(いくつかの経路のうちの一つ(すなわち、腹腔内または経口)による投与の前に病原体にさらした感染性疾患および上記投与の後に病原体にさらしたものの両方)に対する保護的な効果を示した。細胞内の細菌病原体、Listeria monocytogenesおよびSalmonella typhimuriumを用いた二つの致死チャレンジマウスモデルにおいて、MIMPを試験した。コントロール動物に、迅速な死の原因となる用量の細菌を与え、それぞれ2.5日の平均生存時間および4日目または5日目までの100%の死亡率を得た。図2に示されているように、感染の5日前にMIMPを腹腔内に与えられた動物、または感染の5日前にMIMPを非経口投与および経口投与の組み合わせで与えられた動物は、平均生存時間(MST)が増加し、そしてリステリアでチャレンジされた動物の40%〜50%を十分に保護した。サルモネラモデルでは(データは示さず)、感染前24時間〜わずか4時間でのMIMPの非経口投与はまた、処置動物のMSTの延長および10%〜20%の保護を示した。適度なレベル(10%)の保護およびMST延長は、MIMPが接種の4時間後に投与され、全用量範囲が0.1mg/kg〜10mg/kgの範囲にわたる場合に見られた。
【0058】
MIMPは、ウイルスチャレンジに対して類似の保護活性を示した。図3に示されているように、FLV(フレンド白血病ウイルス)を用いたマウスの感染は、迅速に死をもたらし、MSTは39日である。効力のストリンジェントな試験では、感染の3日後に処置を開始し、10日間のMIMPの非経口投与(1mg/kg/日)で、MSTが18%増加し、46日になった(図3を参照のこと)。飲料水を介してMIMPを投与した場合に同等レベルの保護が観察されることは、注目に値する。
【0059】
上記の証拠は、前もって病原体(ウイルスおよび細菌の両方)に曝すこと、および後に病原体(ウイルスおよび細菌の両方)に曝すことの両方で利用される一般的な免疫賦活剤ならびに保護因子としてのMIMPの役割を強く支持する。
【0060】
(実施例2:MIMPは、インビボでアジュバントとして作用し、ワクチン抗原に対する遅延型過敏症(DTH)応答を高める)
アジュバントは、混合抗原に対する免疫応答を増強する物質として規定され、この免疫応答は、抗原だけに対する応答よりも強い応答である。古典的に規定されたアジュバント(例えば、フロイント完全アジュバントにおけるマイコバクテリア、サポニン等)の多くは、DCの成熟を活性化および/または高める物質として同定されている。同様に、MIMPは、インビボのインフルエンザワクチン接種に対する免疫応答を増加させる能力により示されるワクチンに対するアジュバントとして作用する。図4は、免疫化抗原(この場合、不活化された(殺された)インフルエンザウイルス)と組み合わされたMIMPが、遅延型過敏症の形態におけるT細胞依存性の応答を惹起することを図示している。具体的には、マウス(生後8ヶ月のメスのBalb/cマウス)を、PBSまたは1000μg MIMP(約30mg/kg)のいずれかの中の不活化した(ホルマリン処理した)マウス適合性PR8(H1N1)インフルエンザウイルスで、0日目および21日目に尾の基部に皮下投与し、マウス1匹(1群当たりマウス10匹)当たり250HA単位、50HA単位、5HA単位のいずれかで2回免疫した。これに続いて、ブースター注射の7日後、脚部に200HAUのインフルエンザだけ(アジュバントなし)を接種した。DTH腫脹を、24時間後に測定した。図4に示されるように、MIMPは、インフルエンザウイルスの各用量において、DTH腫脹応答(垂直軸)を増強する。MIMPにより達成される抗原のみに対する最も有意な増加(p<0.05)は、50fluの抗原および5fluの抗原の用量を用いて、見出された。
【0061】
これらのデータは、種々の抗原(ワクチン中に存在するものを含む)に対する免疫学的応答を増加させるインビボでのDCのアクチベーターとしてのMIMPの使用を、直接的に支持する。これはまた、疾患(感染性の疾患を含む)の処置のためのインビボでのMIMPの使用を支持する。
【0062】
(実施例3:MIMPはM−DC前駆体のインビトロでの形態学的成熟を引き起こす)
MIMPのヒト単球由来DC(M−DC)に対する効果を見ているいくつかのパイロット研究が達成されている。図5Aに写真(40X 倍率のWright染色サイトスピン)において示されているように、MIMP処理は、末梢血(PB)より単離されたヒトM−DCの形態学に重大な影響力を有していた。PB単核細胞調製物由来の接着細胞を、GM−CSFおよびIL−4の存在下で上記のように培養した。これが、「約束された(committed)」が未熟なM−DC(iM−DC)の発生を促進する。図5に示されるように、GM−CSF+IL−4の存在下で、培養の6日後に、これらの細胞(図5Aの左側のパネル)は、比較的丸い外形を有しており、細胞の突起も少ししかなく、そして短い。対照的に、GM−CSF+IL−4+MIMPの存在下で、同一期間が経過した後(MIMPの存在下5日後;図5Bの右側の写真パネル)、細胞は、多くのしかも非常に伸びた樹状様突起を有しており、これは、成熟DC表現型に特有のものである。MIMP処置に起因する形態学上の中間体の変化をまた、わずか2日間で観察した(MIMPの適用の24時間)(データは示さず)。
【0063】
(実施例4:MIMPは、インビボ培養の間の成熟表現型に関連するM−DC前駆体に対して細胞表面マーカーの発現を誘導する)
インビトロMIMP処置細胞のさらなる評価を、CD14、CD1b/c、CD86およびHLA−DRに対する染色、ならびにフローサイトメトリーによる後の分析により行った(図5Bを参照のこと)。ヒト接着単球細胞を、末梢血から前に記載されたように調製し、ヒトrGM−CSF(20U/ml)およびヒトrIL−4(500U/ml)を含有する培地に配置した。MIMP(300μg/ml)を、24時間後に添加した。2色免疫蛍光フローサイトメトリーを、型どおりに記載されているとおりに、培養の2日後および6日後(それぞれMIMP処置の24時間および5日)に行った。
【0064】
図5Bは、インビトロ培養における2日目および6日目の樹状細胞の成熟に関連する細胞表面マーカーのMIMPが誘導した変化を示す。総培養時間は、MIMPの添加の前にGM−CSF+IL−4だけで24時間を含み、例えば2日目は、MIMPの存在下で24時間しかなかった。図5Bは、MIMP処置が、DR+/CD86+細胞の数を増加させ、そしてCD14+(単球マーカー)の損失を加速させたことを示す。すなわち、CD14+およびCD1+を共発現している細胞の数の減少ならびにCD1+(単一陽性)のみを発現している細胞の数の増加を示した。細胞上のCD86の平均蛍光強度の増加もまた、所定の細胞上のこの共刺激分子の密度が増加することを示す。
【0065】
(実施例5:MIMPは、認識された樹状細胞の成熟マーカーであるCD83の発現を増加する)
MIMP処置の後のヒトPB由来M−DC上の認識された樹状細胞の成熟マーカーであるCD83の誘導はまた、フローサイトメトリーにより観察された。図6は、MIMPがCD83の発現が約2倍に増加することを誘導することを図示し、ここで、ヒト末梢血接着性単核細胞を、実施例4に記載のように培養し、そしてGM−CSFおよびIL−4だけの一日後、MIMPの指示量を培養物に添加した。さらに48時間のインキュベーションの後、この細胞を、FITC結合抗ヒトCD83(樹状細胞用の成熟マーカー)で染色した。この細胞を、型どおりに記載されるように、フローサイトメトリーで分析した。この灰色の曲線は、アイソタイプのコントロールを用いたバックグラウンド染色を示し、そしてM1領域は、バックグラウンドレベルを超えた陽性の実験値を示す。MIMPが、試験された最低用量(1μg/ml)でのCD83発現を増加するという知見は、より低い用量ですら樹状細胞に活性であるということを示唆する。
【0066】
これらの例(図5A、図5B、および図6)はまとめて、MIMPが形態学的成熟および成熟したDC表現型と一致した表面マーカーの発現の両方を誘導することを確証する証拠を提供する。
【0067】
(実施例6:MIMP処置樹状細胞は、アロジェニック混合リンパ球反応(MLR)におけるナイーブのT細胞のよりよい刺激剤である)
以前に記載されているように、上記未熟なDCは、抗原を取り込むように設計されているがこれらを有効な刺激様式でナイーブT細胞に提示しない。逆に、成熟DCの明確な特徴の一つは、ナイーブのT細胞応答を刺激する能力である。この能力は、その他のAPC(単球およびB細胞を包含する)の能力をさらに凌いでおり、そしてこのことは、全てのDC系統に当てはまる。この異質遺伝子間の混合白血球反応(MLR)アッセイは、未だに、DC媒介性のナイーブT細胞の活性化のための顕著に特徴を示すインビトロのアッセイで特徴あるままである。このようなアッセイを用いて、PB由来ヒトM−DCのMIMP処置の機能的結果の試験を行った。この実験において、MIMP処置DC(ヒト接着末梢血単核細胞前駆体に由来する)を、古典的なMRLにおいて実質遺伝子型ヒトT細胞を刺激する能力についてアッセイした。MLRに関して、種々の用量のDCを、固定数の実質遺伝子型T細胞に添加した(ナイロンウールの非接着性T細胞)。DCを、MLRにおける使用のために、(実施例4に記載されているように)GM−CSF(100U/ml〜500U/ml)+IL−4(500U/ml)とのMIMP(300μg/ml)(または、TNFα(20ng/ml))ありまたはなしの標準インビトロ培養の3日後〜7日後に収集する。このDCをT細胞と一緒にMLR中で6日間インキュベーションした後、T細胞の増殖を、比色分析ELISAに基づくアッセイを介して、ブロモデオキシウリジン(BrdU)の取り込みにより測定する。応答細胞(T細胞)および刺激細胞(DC)を、バックグラウンドのコントロールとして単独でインキュベートする。
【0068】
図7は、3つの独立した実験をあわせた結果を示しており、ここで、72時間の全培養(MIMPまたはTNFαの存在下では48時間)の上記MIMPをインキュベートしたM−DCは、GM−CSF+IL−4のみまたはGM−CSF+IL−4+TNFαで処理された類似のM−DCよりも、ナイーブT細胞を刺激するのに効果的である。より効果的な刺激は、応答するT細胞の増殖の増加により証明され、ここで、GM−CSF+IL−4のみまたはGM−CSF+IL−4+TNFαのいずれかに加えて添加されたMIMPの効果の増加は、非常に有意であった(GM−CSF+IL−4対GM−CSF+IL−4+MIMP;p<0.00005;GM−CSF+IL−4+TNFa対GM−CSF+IL−4+MIMP:p<0.002)。
【0069】
これらの結果は、MIMPがヒトのPB由来DCの機能的成熟を誘導する請求項を強力に支持するが、形態学的変化および表面の表現型の変化を誘導するだけではない。このような機能的能力は、効果的な細胞媒介性免疫応答により益される状態および疾患の処置に十分に適している。
【0070】
(実施例7:MIMPは、樹状細胞からのIL−8産生をインビトロで高める)
樹状細胞は、より綿密に研究されており、DCの機能的能力は、複雑さが増加することが明らかにされている。T細胞の刺激機能に加えて、DCはまた、これらが産生するサイトカインおよびケモカインにより、T細胞応答を誘導し、そして偏らせる。これらはまた、サイトカインおよびケモカインを用いて、その他の免疫細胞に注意を喚起し、これらを活性化し、そしてこれらを感染部位または疾患部位に動員する。
【0071】
図8は、実施例4中に記載されたようにGM−CSF(20〜500U/ml)+IL−4(500U/ml)+MIMP(300μg/ml)中で培養された接着性の末梢血単核細胞に由来するヒト樹状細胞のMIMP処置により、化学誘引物質IL−8の産生が、GM−CSF+IL−4のみが存在する際に作られる量を超えて増加することを図示している。インビトロの培養物の上清を、3日目および7日目(MIMPの存在下でそれぞれ2日目および6日目)に収集し、標準的ELISA方法論(R&Dシステム)によりIL−8の存在についてアッセイした。図8において示されたように、図8は、7個の独立した実験からの平均値+/−SEMを表し、MIMP処置DCが3日目には、DCIL−8産生が増加する傾向があり、そして7日目までにはインビトロ溶媒で有意な増強(p=0.03)がある。
【0072】
これらのデータは、GM−CSFおよびIL−4の存在下でのMIMPが、IL8を分泌するDCの能力を増強することを示し、このIL8は、免疫系の先天性部門および適応性部門の両方からの種々の細胞型に対する公知の化学誘引物質(ケモカイン)である。
【0073】
前述の例は、本発明の組成物および方法が、樹状細胞のインビボおよびエキソビボでの成熟を増加させ、そして高め得るという実際の証拠を提供する。本発明の組成物は、樹状細胞をインビボおよびエキソビボで成熟させる際に用いるための免疫賦活剤であり、特定の抗原と組み合わせて(例えば、ワクチンの一部として)か、または抗原(すなわち、感染性因子または腫瘍細胞上に存在する抗原が挙げられるが、これらに限定されない)を用いた刺激のためだけに用いられる。この例は、病原体と戦う宿主の哺乳動物の免疫応答が、イノシン含有化合物を投与することにより増強されるという特定のデータを提供する。このデータは、本発明(抗原に応答するT細胞の刺激の増強および免疫活性化ケモカインIL−8の産生の増強)の使用による樹状細胞の機能的能力の増強をさらに示す。
【0074】
本願を通して、種々の刊行物(米国特許を含む)が、著者および年により参照され、そして特許が、番号により参照される。刊行物の引用はすべて、以下に列挙される。これらの刊行物および特許の開示は、本発明に関係する分野の技術水準をより詳細に記載するために、その全体が、本願中に参考として援用される。
【0075】
本発明は、例示的な様式で記載され、そして使用されている専門用語は、限定のためというよりもむしろ、説明用語に近い。
【0076】
明らかに、本発明の多くの改変および変異物が上記の教示の観点から見て可能である。従って、記載される発明の範囲内では、本発明は、具体的に記載された方法とは別の方法で実行され得ることが理解されるべきである。
【0077】
【化2】

【0078】
【化3】

【0079】
【化4】

【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、ヒトの末梢血由来の樹状細胞の集団を図示する。
【図2】図2は、生存時間を延長するためのマウス(リステリア族のモノサイトジェン(monocytogene)を用いて致死的にチャレンジされたマウス)の経口投与したMIMPによる前処置の効果を示す。
【図3】図3は、MIMPがフロイント白血病ウイルス(FLV)致死的チャレンジマウスモデルの生存を延長することを示している。ここで、6週齢〜8週齢のメスマウスが0.2mlのFLVストックで腹腔内感染され、MIMP処理マウスの平均生存46日間と比較して、30日目〜45日目までに100%の死亡率を引き起こした(コントロールの平均生存時間は、39日目であった)。これは約18%の増加である。
【図4】図4は、免疫抗原(不活化インフルエンザ)と組み合わせられた場合、MIMPがアジュバントとして作用して、その抗原に対するT細胞媒介性の遅延型過敏症(DTH)応答を増強することを図示した棒グラフである。
【図5A】図5Aは、40倍のライト染色シトスピン(Wright stained cytospin)である2枚の写真を示し、この写真は、MIMPがM−DCの形態学的成熟を誘導することを図示する。
【図5B】図5B(★★MFI=平均蛍光強度)は、MIMPが、樹状細胞の成熟に関連する細胞表面マーカーにおける変化を誘導したことを示すチャートである。
【図6】図6は、フローサイトメトリーにより生み出される3枚のヒストグラムを示し、このヒストグラムは、指示された量のMIMPとともに培養されたヒト末梢血接着単核細胞上に、MIMPが、認識される樹状細胞の成熟マーカーであるCD83を誘導することを示す。
【図7】図7は、ナイーブなT細胞の刺激の増強により示されるような樹状細胞の機能的成熟を、MIMPが増加することを図示する棒グラフである。
【図8】図8は、接着性末梢血単核細胞由来のヒト樹状細胞のMIMP処理が、GM−CSFおよびIL4だけの存在下で産生される量を超えて化学誘引物質IL8の産生を増加させ、これによりIL8産生は、インビトロでの培養の7日目までに著しく高められることを図示する棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のイノシン含有化合物を樹状細胞に適用する工程により、樹状細胞の成熟をインビボまたはエキソビボで刺激する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、ここで、該適用する工程は、イソプリノシン、イノシン 5’−モノホスフェート、メチルイノシン 5’−モノホスフェート(MIMP)、これらのダイマーおよびトリマーのようなポリマー、1以上のイノシン3’,5’結合を含むオリゴヌクレオチド、これらの相同体、ならびにこれらの誘導体からなる群より選択されるイノシン含有化合物を適用する工程として定義される、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、ここで、前記適用する工程は、前記イノシン含有化合物を、少なくとも24時間適用する工程としてさらに定義される、方法。
【請求項4】
有効量のイノシン含有化合物を前記樹状細胞に適用してその成熟を刺激し;そして成熟した樹状細胞を被験体中に投与する工程により被験体中の疾患を処置する、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、該方法は、サイトカインおよびケモカインの分泌を促進する工程をさらに包含し、該サイトカインおよびケモカインの分泌は、T細胞におけるTh1応答の発生を促進する、方法。
【請求項6】
インビボの疾患の処置のために、樹状細胞をエキソビボで成熟させるための、組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物であって、ここで、該組成物は、イノシン含有化合物である、組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物であって、ここで、前記イノシン含有化合物は、イソプリノシン、イノシン 5’−モノホスフェート、メチルイノシン 5’−モノホスフェート(MIMP)、イノシン含有オリゴヌクレオチド、ならびにこれらのダイマーおよびトリマーのようなポリマー、一以上のイノシン3’,5’結合を含むオリゴヌクレオチド、これらの相同物、ならびにこれらの誘導体からなる群より選択される、組成物。
【請求項9】
請求項7に記載の組成物であって、ここで、前記イノシン含有化合物は、約0.01mg/kg〜300mg/kgの用量範囲である、組成物。
【請求項10】
請求項7に記載の組成物であって、ここで、前記疾患は、癌、免疫欠乏、および感染性疾患からなる群より選択される、組成物。
【請求項11】
インビボで樹状細胞の機能を増強するための薬学的組成物であって、該薬学的組成物は、有効量のイノシン含有化合物を含有し、ここで、該樹状細胞の機能の増強が、疾患を有する被験体の処置のために利用される、薬学的組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の薬学的組成物であって、ここで、前記イノシン含有化合物は、イソプリノシン、イノシン 5’−モノホスフェート、メチルイノシン 5’−モノホスフェート(MIMP)、イノシン含有オリゴヌクレオチド、ならびにこれらのダイマーおよびトリマーのようなポリマー、一以上のイノシン3’,5’結合を含むオリゴヌクレオチド、これらの相同体、ならびにこれらの誘導体からなる群より選択される、薬学的組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の薬学的組成物であって、ここで、前記イノシン含有化合物は、約0.01mg/kg〜300mg/kgの用量範囲内である、薬学的組成物。
【請求項14】
ワクチン中の使用のための免疫賦活剤であって、該免疫賦活剤は、インビボまたはエキソビボで樹状細胞を成熟させる工程に使用する有効量のイノシン含有化合物を含有し、ここで、抗原は、免疫原性が低く、そして複数回の用量が必要とされる、免疫賦活剤。
【請求項15】
請求項14に記載の免疫賦活剤であって、ここで、前記イノシン含有化合物は、イソプリノシン、イノシン 5’−モノホスフェート、イノシン含有オリゴヌクレオチド、およびメチルイノシン5’−モノホスフェート(MIMP)、これらのダイマーおよびトリマーのようなポリマー、1以上のイノシン3’,5’結合を含むオリゴヌクレオチド、これらの相同体、ならびにこれらの誘導体からなる群より選択される、免疫賦活剤。
【請求項16】
請求項15に記載の免疫賦活剤であって、ここで、前記イノシン含有化合物は、約0.01mg/kg〜300mg/kgの用量範囲内である、免疫賦活剤。
【請求項17】
ワクチンと共に使用されるアジュバントであって、該アジュバントは、樹状細胞を成熟させる工程における使用のための有効量のイノシン含有化合物を含有する、アジュバント。
【請求項18】
請求項17に記載のアジュバントであって、ここで、前記イノシン含有化合物は、イソプリノシン、イノシン5’−モノフォスフェート、メチルイノシン5’−モノフォスフェート(MIMP)、これらのダイマーおよびトリマーのようなポリマー、1以上のイノシン3’,5’結合を含むオリゴヌクレオチド、これらの相同体、ならびにこれらの誘導体からなる群より選択される、アジュバント。
【請求項19】
請求項17に記載のアジュバントであって、ここで、前記イノシン含有化合物は、約0.01mg/kg〜300mg/kgの用量範囲内である、アジュバント。
【請求項20】
有効量のイノシン含有化合物を樹状細胞に適用する工程、および樹状突起を増加する工程、適切な細胞表面マーカーを樹状細胞の細胞表面上に発現する工程、およびこれらの樹状細胞の機能性を増強する工程により、インビトロでの樹状細胞の成熟を刺激する、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、ここで、前記適用工程が、イソプリノシン、イノシン 5’−モノホスフェート、メチルイノシン5’−モノホスフェート(MIMP)、イノシン含有オリゴヌクレオチド、ならびにこれらのダイマーおよびトリマーのようなポリマー、1以上のイノシン3’,5’結合相同体を含むオリゴヌクレオチド、これらの相同体、ならびにこれらの誘導体からなる群より選択されるイノシン含有化合物を適用する工程としてさらに定義される、方法。
【請求項22】
哺乳動物において免疫応答を増強するためのキットであって、該キットは、これらの哺乳動物における免疫応答を増強するために、樹状細胞の成熟の増強のために、有効量のイノシン含有化合物を、約0.01μg/ml〜300μg/mlの用量範囲で含有する、キット。
【請求項23】
請求項22に記載のキットであって、ここで、前記イノシン含有化合物は、イソプリノシン、イノシン5’−モノホスフェート、メチルイノシン5’−モノホスフェート(MIMP)、イノシン含有オリゴヌクレオチド、ならびにこれらのダイマーおよびトリマーのようなポリマー、1以上のイノシン3’,5’結合を含むオリゴヌクレオチド、これらの相同体、ならびにこれらの誘導体からなる群より選択される、キット。
【請求項24】
宿主哺乳動物の免疫応答を増強する方法であって、該方法は、未熟な樹状細胞をドナーの哺乳動物から単離する工程;有効量のイノシン含有化合物の存在下で、抗原の存在下または非存在下のいずれかで該未熟な樹状細胞を成熟させる工程;そして該成熟した樹状細胞を宿主の哺乳動物に、該宿主の哺乳動物の免疫応答を増強するのに有効な量で投与する工程により、宿主哺乳動物の免疫応答を増強する、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、前記未熟な樹状細胞を抗原で負荷する工程をさらに包含する、方法。
【請求項26】
樹状細胞をイノシン含有化合物の存在下で成熟させる工程により、該樹状細胞のT細胞刺激活性を増加する、方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、ここで、前記成熟化工程は、細胞表面マーカーの発現の増加により定義される、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、ここで、前記増加工程が、CD1a〜CD1c、CD11c、CD14、CD40、CD80、CD83、CD86、CD123、HLA−DR、BDCA−2、BDCA−4、Toll様レセプター(TLR)、熱ショックタンパク質レセプター(CD91)、スカベンジャーレセプター、マンノースレセプター、補体レセプター、およびレクチンレセプターからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現する工程としてさらに定義される、方法。
【請求項29】
インビボまたはエキソビボでの樹状細胞の成熟を増強するための組成物であって、該組成物は、イノシン含有化合物を含有する、組成物。
【請求項30】
請求項29に記載の組成物であって、ここで、前記イノシン含有化合物は、リン酸結合(p)を介してイノシン分子(I)に結合されたオリゴヌクレオチド配列(R)を含むオリゴヌクレオチドIpRとして定義される、組成物。
【請求項31】
請求項30に記載の組成物であって、ここで、前記オリゴヌクレオチドIpRは、式:
5’R−p−I−p−R3’
を有し、ここで、Iは、イソプリノシン、イノシン5’−モノホスフェート、メチルイノシン、5’−モノホスフェート(MIMP)、これらの相同体、およびこれらの誘導体からなる群より選択されるイノシン分子であり;
pは、リン酸結合であり;
Rは、C、T、AおよびGからなる群より選択される少なくとも一のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列であり;
nは、0〜100の整数であり;そして
mは、0〜100の整数であり、ここで、n+mは、1より大きいかまたは1と等しい、
組成物。
【請求項32】
請求項30に記載の組成物であって、ここで、前記オリゴヌクレオチドは、約2ヌクレオチド〜150ヌクレオチドを有する、組成物。
【請求項33】
有効量のイノシン含有化合物を個体に投与することにより、該個体の樹状細胞の成熟をインビボで刺激する、方法。
【請求項34】
樹状細胞をイノシン含有化合物に曝露する工程により、免疫調節性のサイトカインおよびケモカインを誘導する、方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、ここで、前記樹状細胞は、ヒト起源である、方法。
【請求項36】
免疫調節性のサイトカインおよびケモカインを誘導するための組成物であって、該組成物は、イノシン含有化合物を含有する、組成物。
【請求項37】
有効量のイノシン含有化合物を投与し、これによって、抗原に対するより強い細胞性免疫応答をもたらす工程により、樹状細胞のT細胞に対する刺激活性を増強する、方法。
【請求項38】
抗原をイノシン含有化合物と組み合わせてワクチンの形態で投与する工程により、ワクチン抗原に対する応答を増強する方法であって、ここで、該イノシン含有化合物は、アジュバントと見なされる、方法。
【請求項39】
イノシン含有化合物および抗原を含有するアジュバント。
【請求項40】
樹状細胞刺激アジュバントを投与する工程により、ワクチンに対する免疫学的応答を増強するための、方法。
【請求項41】
イノシン含有化合物の存在下で、T細胞に対する抗原の提示を刺激するために樹状細胞を成熟させる工程により、抗原のT細胞に対する提示を増加させる、方法。
【請求項42】
T細胞に対する抗原の提示を刺激する工程のための、樹状細胞刺激手段を含む組成物。
【請求項43】
請求項42に記載された組成物であって、ここで、前記樹状細胞刺激手段は、イノシン含有化合物を包含する、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−500211(P2007−500211A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532492(P2006−532492)
【出願日】平成16年4月27日(2004.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/013141
【国際公開番号】WO2005/003295
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505401687)アイ アール エックス セーラピューティクス, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】