説明

イミノキナゾリノン類の製造方法

【課題】 医薬及び農薬の製造原料又は有効成分として有用なイミノキナゾリノン類の新規かつ経済的な製造方法を提供する。
【解決手段】 一般式(II)で表されるアニリン類とハロゲン化ギ酸エステル類と反応させ、フェニルカルバミン酸エステル類とし、該フェニルカルバミン酸エステル類を、ラジカル開始剤の存在下にハロゲン化剤と反応させ、ハロメチルフェニルカルバミン酸エステル類とし、該ハロメチルフェニルカルバミン酸エステル類をヒドラジンと反応させることにより、アミノキナゾリン類とし、該アミノキナゾリン類をアルデヒド類と反応させることにより、一般式(I)で表されるイミノキナゾリノン類を製造する。
【化1】


【効果】 医薬及び農薬の製造原料又は有効成分として有用なイミノキナゾリノン類を効率的かつ安価に提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬及び農薬の製造原料又は有効成分として有用なイミノキナゾリノン類の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関わるイミノキナゾリノン類は相当するハロメチルフェニルカルバミン酸エステル類を出発原料とし、ヒドラジンとの環化反応の後、アルデヒド類と反応させて製造できることが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ハロメチルフェニルカルバミン酸エステル類はフェニルカルバミン酸エステル類をハロゲン化することにより製造できることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−342186号公報
【特許文献2】特開平10−298156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明に関わるイミノキナゾリノン類の製造を公知の方法で実施すると出発原料として高価なハロメチルフェニルカルバミン酸エステル類を使用する必要があり、工業的に入手容易かつ安価な出発原料を用いて経済性に優れたイミノキナゾリノン類の製造方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、イミノキナゾリノン類の製造において、工業的に入手容易かつ安価なアニリン類を出発原料とすることを特徴とする一連の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、下記一般式(II)
【化1】

(式中、Rは同一又は異なっても良く、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C1-C6アル
キル基、C1-C6アルキルカルボニル基、カルボキシル基、C1-C6アルコキシカルボニル基、ハロC1-C6アルキル基又はハロ C1-C6アルコキシ基を示し、nは0〜4の整数を示す。)
で表されるアニリン類と一般式(III)

XCO21 (III)

(式中、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示し、R1はC1-C6アルキル基又はフェニル基を示す。)で表されるハロゲン化ギ酸エステル類とを反応させ、一般式(IV)
【化2】

(式中、R、R1及びnは前記に同じ。)で表されるフェニルカルバミン酸エステル類と
し、
【0007】
該フェニルカルバミン酸エステル類を単離し又は単離せずしてラジカル開始剤の存在下にハロゲン化剤と反応させ、一般式(V)
【化3】

(式中、Yは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示し、R、R1及びnは前記に同じ。
)で表されるハロメチルフェニルカルバミン酸エステル類とし、該ハロメチルフェニルカルバミン酸エステル類を単離し又は単離せずしてヒドラジンと反応させ、一般式(VI)
【化4】

(式中、R及びnは前記に同じ。)で表されるアミノキナゾリノン類とし、
【0008】
該アミノキナゾリノン類を単離し又は単離せずして一般式(VII)

2CHO (VII)

(式中、R2はフェニル基、同一又は異なっても良く、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ
基、 C1-C6アルキル基、ハロ C1-C6アルキル基、 C1-C6アルコキシ基又はハロ C1-C6アルコキシ基から選択される一つ以上の置換基を有する置換フェニル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基又は3−チエニル基を示す。)で表されるアルデヒド類と反応させることを特徴とする一般式(I

【化5】

(式中、R、R2及びnは前記に同じ。)で表されるイミノキナゾリノン類の製造方法に
関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所望のイミノキナゾリノン類を簡便かつ安価に製造、供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(I)で表されるイミノキナゾリノン類の定義において、「ハロゲン原
子」とは塩素原子、臭素原子、沃素原子又はフッ素原子を示し、「C1-C6アルキル」とは
、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−
ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等の直鎖又は分枝状の炭素原子数1〜6個のアルキル基を示し、「ハロ C1-C6アルキル」とは、例えばトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル基、2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル基等の同一又は異なっても良い1以上のハロゲン原子により置換された直鎖又は分枝状の炭素原子数1〜6個のアルキル基を示す。
【0011】
本発明の置換イミノキナゾリノン類の製造方法を図式的に示すと、以下の通り表される。
【化6】

(式中、Y、R、R1、R2及びnは前記に同じ。)
即ち、一般式(II)で表されるアニリン類と一般式(III)で表されるハロゲン化ギ酸
エステル類とを塩基の存在下、不活性溶媒の存在下又は不存在下に反応させることにより、一般式(IV)で表されるフェニルカルバミン酸エステル類とし、該フェニルカルバミン酸エステル類を単離し又は単離せずして、不活性溶媒中、ラジカル開始剤の存在下にハロゲン化剤と反応させることにより、一般式(V)で表されるハロメチルフェニルカルバミ
ン酸エステル類とし、該ハロメチルフェニルカルバミン酸エステル類を単離し又は単離せずして、不活性溶媒の存在下又は不存在下にヒドラジンと反応させることにより、一般式(VI)で表されるアミノキナゾリン類とし、該アミノキナゾリン類を単離し又は単離せずして、不活性溶媒の存在下又は不存在下に一般式(VII)で表されるアルデヒド類と反応
させることにより、一般式(I)で表されるイミノキナゾリノン類を製造することができ
る。
【0012】
一般式(II)→ 一般式(IV)
一般式(III)で表されるハロゲン化ギ酸エステル類としては、クロロギ酸メチル、ク
ロロギ酸エチル、クロロギ酸フェニル、ブロモギ酸メチル、ブロモギ酸エチル等が例示できる。その使用量は、一般式(II)で表されるアニリン類に対して0.5当量から過剰量を使用することができるが、好ましくは1当量〜3当量程度であり、 より好ましくは1
当量〜1.5当量程度である。
本反応で使用する塩基としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類、トリエチルアミン、ジエチルアニリン、ピリジン等の有機塩基類が例示でき、これらの塩基は単独で又は二種以上を混合して使用しても良い。又、これら塩基はそのまま使用しても、水溶液として使用しても良い。塩基の使用量は、一般式(II)で表されるアニリン類に対して1当量〜10当量程度であり、好ましくは1当量〜3当量程度であり、より好ましくは1当量〜2当量程度である。
【0013】
本反応で使用する不活性溶媒としては、本反応の進行を著しく阻害しないものであれば良く、特に制限はないが、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ターシャリーブ
チルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、水等が使用できる。これらの溶媒は単独で又は二種以上を混合して使用することもできる。
【0014】
本反応の反応温度は0℃〜溶媒の沸点の範囲で実施することができるが、好ましくは約10℃〜約200℃、より好ましくは約10℃〜約100℃の範囲である。反応時間は反応規模、反応温度によって一定しないが、1分間〜24時間の範囲で適宜選択すれば良い。反応終了後、目的物を含む反応系から常法に従って単離すれば良く、必要に応じて再結晶、カラムクロマトグラフィー等で精製することにより目的物を製造することができる。又、必要に応じて濃縮、抽出、洗浄、分液等の操作で精製することにより、単離することなく次工程へ供することができる。
【0015】
一般式(IV)→ 一般式(V)
本反応で使用するハロゲン化剤としては、塩素、臭素、ヨウ素、塩化スルフリル、臭化スルフリル、N−クロロサクシミド、N−ブロモサクシミド、N−ヨードサクシミド、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン等が例示できる。ハロゲン化剤の使用量は、一般式(IV)で表されるフェニルカルバミン酸エステル類に対して、通常0.5当量〜3当量程度であり、好ましくは0.8当量〜1.5当量である。
【0016】
本反応で使用するラジカル開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMVN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)等のアゾビス系化合物、過酸化ベンゾイル等の過酸系ラジカル開始剤、光等が例示できる。光以外のラジカル開始剤の使用量は、一般式(IV)で表されるフェニルカルバミン酸エステル類に対して、通常0.002当量〜2当量程度を用いることができ、好ましくは0.01当量〜0.05当量程度である。これらのラジカル開始剤は単独で又は二種以上を混合して使用することもできる。
【0017】
本反応で使用する不活性溶媒としては、本反応の進行を著しく阻害しないものであれば良く、例えば塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、フルオロベンゼン等のハロゲン化芳香族系溶媒を使用できる。これらの溶媒は単独で又は二種以上を混合して使用することもできる。
本反応の反応温度は0℃〜溶媒の沸点の範囲で実施することができるが、好ましくは約20℃〜約200℃、より好ましくは約20℃〜約70℃の範囲である。反応時間は反応規模、反応温度によって一定しないが、1分間〜24時間の範囲で適宜選択すれば良い。反応終了後、目的物を含む反応系から常法に従って単離すれば良く、必要に応じて再結晶、カラムクロマトグラフィー等で精製することにより目的物を製造することができる。又、必要に応じて濃縮、抽出、洗浄、分液等で精製することにより、単離することなく次工程へ供することができる。
【0018】
一般式(V)→ 一般式(VI)
本反応で使用するヒドラジンとしては、無水ヒドラジン、抱水ヒドラジン、ヒドラジン塩酸塩、ヒドラジン硫酸塩等が例示でき、無水ヒドラジン、抱水ヒドラジンはそのまま又は水等の不活性溶媒で希釈して使用することができる。又、ヒドラジン塩酸塩、ヒドラジン硫酸塩等の塩はトリエチルアミン等の有機塩基類、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類を加えて遊離のヒドラジンとして
使用すれば良い。ヒドラジンの使用量は、一般式(V)で表されるハロメチルフェニルカ
ルバミン酸エステル類に対して、通常1当量〜10当量程度を用いることができ、好ましくは1当量〜5当量である。
本反応で使用する溶媒としては、本反応の進行を著しく阻害しないものであれば良く、特に制限はないが、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ターシャリーブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、水等が使用できる。これらの溶媒は単独で又は二種以上を混合して使用することもできる。
【0019】
本反応の反応温度は室温から溶媒の沸点の範囲で実施することができるが、好ましくは約20℃〜約200℃、より好ましくは約20℃〜100℃の間である。反応時間は反応規模、反応温度によって一定しないが、1分間〜24時間の範囲で適宜選択すれば良い。反応終了後、目的物を含む反応系から常法に従って単離すれば良く、必要に応じて再結晶、カラムクロマトグラフィー等で精製することにより目的物を製造することができる。又は、必要に応じて濃縮、抽出、洗浄、分液等で精製することにより、単離することなく次工程へ供することができる。
【0020】
一般式(VI)→ 一般式(I)
本反応で使用する一般式(VII)で表されるアルデヒド類の使用量は、一般式(VI)で
表されるアミノキナゾリノン類に対して、0.5当量〜10当量用いることができ、好ましくは0.8当量〜3当量である。
本反応で用いる溶媒としては、本反応の進行を著しく阻害しないものであれば良く、特に制限はないが、メタノール、エタノール、2−プロパノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ターシャリーブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、水等が使用できる。これらの溶媒は単独で又は二種以上を混合して使用することもできる。
【0021】
反応温度は−50℃〜使用する溶媒の沸点域で行えば良いが、好ましくは0℃〜100℃である。反応時間は反応規模、反応温度によって一定しないが、1分間〜24時間の範囲で適宜選択すれば良い。反応終了後、目的物である一般式(I)の化合物を単離するに
は、反応混合物より結晶化した後、濾過、洗浄すれば良く、目的物である一般式(I)で
表されるイミノキナゾリノン類が得られる。そのままでも十分な品質であることもあるが、必要ならば前記反応溶媒を用いて、洗浄又は再結晶等の手段で精製することもできる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1. 3−(3−ピリジルメチリデンアミノ)−3,4−ジヒドロ−6−ペンタフルオロエチル−2(1H)キナゾリノンの製造(各中間体を単離せずに製造した例)
2−メチル−4−ペンタフルオロエチルアニリン4.80g(21.3ミリモル)、炭酸水素ナトリウム2.52g(30.0ミリモル)、テトラヒドロフラン8ml及び水2mlの混合物に室温でクロロギ酸メチル2.35g(27.8ミリモル)を攪拌しながら
3時間かけて滴下した。室温で更に1時間撹拌した後、酢酸エチル26ml及び水10mlを加え、分液した。有機層にクロロベンゼン50mlを加え、常圧下で加温し、酢酸エチル及びクロロベンゼンの混合物を約35ml留去した。得られた2−メチル−4−ペンタフルオロエチルフェニルカルバミン酸メチルの溶液を室温まで冷却後、その溶液に2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.27g(0.88ミリモル)を加えた。40℃で塩化スルフリル3.40g(25.2ミリモル)を攪拌しながら滴下し、滴下終了後40℃で更に1時間撹拌した。炭酸水素ナトリウム0.7gを水12.6mlに溶解した溶液を室温で加えた後、分液した。有機層を減圧下で濃縮し、クロロベンゼンを約15ml留去して、2−クロロメチル−4−ペンタフルオロエチルフェニルカルバミン酸メチルの溶液を得た。得られた2−クロロメチル−4−ペンタフルオロエチルフェニルカルバミン酸メチルの溶液を、抱水ヒドラジン3.12g(62.4ミリモル)と2−プロパノール5mlから調整した溶液に攪拌しながら80℃で滴下した。80℃で更に1時間撹拌し、温水12mlで洗浄後、分液し、3−アミノ−3,4−ジヒドロ−6−ペンタフルオロエチル−2(1H)−キナゾリノンの溶液を得た。得られた3−アミノ−3,4−ジヒドロ−6−ペンタフルオロエチル−2(1H)−キナゾリノンの溶液に2−プロパノール1mlを加え、続いて50℃でニコチンアルデヒド6.45g(60.2ミリモル)を攪拌しながら滴下した。50℃で更に5時間撹拌した後、析出した結晶をろ集した。得られた結晶を水20ml及びクロロベンゼン20mlで順次洗浄して、50℃で乾燥し、目的物である3−(3−ピリジルメチリデンアミノ)−3,4−ジヒドロ−6−ペンタフルオロエチル−2(1H)キナゾリノン5.92gを得た。
収率:75%
物性:融点 298−300℃
【0023】
実施例2. 3−(3−ピリジルメチリデンアミノ)−3,4−ジヒドロ−6−トリフルオロメトキシ−2(1H)キナゾリノンの製造(各中間体を単離せずに製造した例)
2−メチル−4−トリフルオロメトキシアニリン5.10g(26.7ミリモル)、炭酸水素ナトリウム3.31g(39.4ミリモル)、テトラヒドロフラン10ml及び水4mlの混合物に室温でクロロギ酸メチル3.00g(31.7ミリモル)を攪拌しながら3時間かけて滴下した。室温で更に1時間撹拌した後、酢酸エチル40ml及び水20mlを加え、分液した。有機層にクロロベンゼン70mlを加え、常圧下で加温し、酢酸エチル及びクロロベンゼンの混合物を約50ml留去した。得られた2−メチル−4−トリフルオロメトキシフェニルカルバミン酸メチルの溶液を室温まで冷却後、その溶液に2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.28g(0.91ミリモル)を加えた。40℃で塩化スルフリル3.25g(24.1ミリモル)を攪拌しながら滴下し、滴下終了後40℃で更に1時間撹拌した。炭酸水素ナトリウム1.1gを水14.3mlに溶解した溶液を室温で加えた後、分液した。有機層を減圧下で濃縮し、クロロベンゼンを約15ml留去し、2−クロロメチル−4−トリフルオロメトキシフェニルカルバミン酸メチルの溶液を得た。得られた2−クロロメチル−4−トリフルオロメトキシフェニルカルバミン酸メチルの溶液を、抱水ヒドラジン3.51g(70.2ミリモル)と2−プロパノール6mlから調整した溶液に80℃で攪拌しながら滴下した。80℃で更に1時間撹拌し、温水15mlで洗浄後、分液し、3−アミノ−3,4−ジヒドロ−6−トリフルオロメトキシ−2(1H)−キナゾリノンの溶液を得た。得られた3−アミノ−3,4−ジヒドロ−6−トリフルオロメトキシ−2(1H)−キナゾリノンの溶液に2−プロパノール1mlを加え、続いて50℃でニコチンアルデヒド7.12g(66.5ミリモル)を攪拌しながら滴下した。50℃で更に5時間撹拌した後、析出した結晶をろ集した。得られた結晶を水30ml及びクロロベンゼン20mlで順次洗浄して、50℃で乾燥し、目的物である3−(3−ピリジルメチリデンアミノ)−3,4−ジヒドロ−6−トリフルオロメトキシ−2(1H)キナゾリノン6.81gを得た。
収率:76%
物性:融点 264−266℃
【0024】
実施例3. 2−メチル−4−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニルカルバミン酸メチルの製造
2−メチル−4−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]アニリン275.0g(1.00モル)、炭酸水素ナトリウム101.0g(1.20モル)、テトラヒドロフラン300ml及び水300mlの混合物に、冷却下10℃でクロロギ酸メチル104.0g(1.10モル)を攪拌しながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で更に3時間撹拌した。有機層を分液し、水層を酢酸エチル300mlで抽出した。有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄後、減圧下で濃縮した。得られた白色結晶をn−ヘキサン200mlで洗浄して目的物303.2gを得た。
収率:91%
物性:融点 68〜70℃
【0025】
実施例4. 2−クロロメチル−4−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニルカルバミン酸メチルの製造
2−メチル−4−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニルカルバミン酸メチル20.0g(60.0ミリモル)をクロロベンゼン100mlに溶解し35℃まで昇温した。2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.7g(2.3ミリモル)を加えて5分間撹拌した後、塩化スルフリル9.7g(71.9ミリモル)を攪拌しながら1時間かけて滴下した。滴下終了後35℃で更に1時間撹拌した。反応液を水100mlで洗浄し、次に飽和重曹水100mlで2回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。濃縮残渣を酢酸エチル/n−ヘキサン混合溶媒で再結晶して目的物17.9gを得た。
収率:81%
物性:融点 89℃
【0026】
実施例5. 3−アミノ−3,4−ジヒドロ−6−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−2(1H)キナゾリンの製造
包水ヒドラジン291.5g(5.83モル)を2−プロパノール400mlに加え、80℃まで昇温した。次に2−クロロメチル−4−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニルカルバミン酸メチル613.7g(1.67モル)のクロロベンゼン1200ml溶液を攪拌しながら4時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で更に1時間撹拌し、水1200mlを加えた。80℃で更に30分間撹拌した後、分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で溶媒を留去した。残渣にn−ヘキサン500mlを加え析出した結晶をろ集して目的物530.6gをアモルファス状固体として得た。
収率:96%
物性:1H−NMR(400MHz,溶媒DMSO−d6,δ値)
4.5(s,2H),4.7(s,2H),6.9(d,1H),
7.4(m,2H),9.7(s,1H)
【0027】
実施例6. 3−(3−ピリジルメチリデンアミノ)−3,4−ジヒドロ−6−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−2(1H)キナゾリノンの製造
3−アミノ−3,4−ジヒドロ−6−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−2(1H)キナゾリン50.0g(151ミリモル)をテトラヒドロフラン500mlに溶解し、次に40℃でニコチンアルデヒド19.4g(181ミリモル)を攪拌しながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、50℃で更に3時間撹拌し、室温まで冷却した。析出した結晶をろ集し、50mlのテトラヒドロフランで洗浄して目的物61.5gを得た。
収率:96.9%
物性:融点 >300℃
【0028】
実施例7. 3−フェニルメチリデンアミノ−3,4−ジヒドロ−6−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−2(1H)キナゾリノンの製造
3−アミノ−3,4−ジヒドロ−6−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−2(1H)キナゾリノン20.0g(60.4ミリモル)をテトラヒドロフラン100mlに溶解し、次に40℃でベンズアルデヒド7.6g(71.7ミリモル)を攪拌しながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、50℃で更に3時間撹拌し、室温まで冷却した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をn−ヘキサンで洗浄して目的物20.7gを得た。
収率:94%
物性:1H−NMR(400MHz,溶媒DMSO−d6,δ値)
5.2(s,2H),7.1(d,1H),7.4(m,4H),
7.5(m,2H),7.6(m,2H),7.9(s,1H)
【0029】
実施例8. 3−(3−ピリジルメチリデンアミノ)−3,4−ジヒドロ−6−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−2(1H)キナゾリノンの製造(各中間体を単離せずに製造した例)
2−メチル−4−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]アニリン5.79g(21.0ミリモル)、炭酸水素ナトリウム2.20g(26.2ミリモル)、酢酸エチル8ml及び水2mlの混合物に室温でクロロギ酸メチル2.46g(26.0ミリモル)を攪拌しながら3時間かけて滴下した。室温で更に1時間撹拌した後、酢酸エチル6ml及び水10mlを加え、分液した。有機層にクロロベンゼン30mlを加え、常圧下で加温し、酢酸エチル及びクロロベンゼンの混合物を約20ml留去した。得られた2−メチル−4−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニルカルバミン酸メチルの溶液を室温まで冷却後、その溶液に2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25g(0.81ミリモル)を加えた。40℃で塩化スルフリル3.18g(23.6ミリモル)を攪拌しながら滴下し、滴下終了後40℃で更に1時間撹拌した。炭酸水素ナトリウム0.6gを水11.6mlに溶解した溶液を室温で加えた後、分液した。有機層を減圧下で濃縮し、クロロベンゼンを約10ml留去し、2−クロロメチル−4−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニルカルバミン酸メチルの溶液を得た。得られた2−クロロメチル−4−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニルカルバミン酸メチルの溶液を抱水ヒドラジン2.92g(58.4ミリモル)と2−プロパノール4mlから調整した溶液に80℃で攪拌しながら滴下した。80℃で更に1時間撹拌し、温水12mlで洗浄後、分液し、3−アミノ−3,4−ジヒドロ−6−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−2(1H)−キナゾリノンの溶液を得た。得られた3−アミノ−3,4−ジヒドロ−6−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−2(1H)−キナゾリノンの溶液に2−プロパノール(1ml)を加え、続いて50℃でニコチンアルデヒド2.09g(19.5ミリモル)を攪拌しながら滴下した。50℃で更に5時間撹拌した後、析出した結晶をろ集し、水20ml及びクロロベンゼン20mlで順次洗浄して、50℃で乾燥し、目的物である3−(3−ピリジルメチリデンアミノ)−3,4−ジヒドロ−6−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−2(1H)キナゾリノン6.55gを得た。
収率:78%
物性:融点 >300℃
【0030】
尚、本発明の製造方法で製造できる一般式(I)で表されるイミノキナゾリノン類は特開2001−342186号公報記載の殺虫剤の合成中間体として有用であり、キナゾリノン環1位をアセチル化した後、イミンを還元することによって特開2001−342186号公報記載の殺虫剤を製造することができる。
参考例1. 1−アセチル−3−(3−ピリジルメチルアミノ)−3,4−ジヒドロ−6−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−2(1H)キナゾリノンの製造
3−(3−ピリジルメチリデンアミノ)−3,4−ジヒドロ−6−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−2(1H)キナゾリノン10.5g(25.0ミリモル)、水素化ナトリウム1.4g(35.0ミリモル)及びジメチルアセトアミド60mlを加え、室温で2時間撹拌した。無水酢酸3.6g(35.0ミリモル)を室温で滴下し、更に2時間攪拌した。酢酸0.75g(12.5ミリモル)を室温下で滴下した後、更に10分間撹拌した。濃硫酸2.3g(24.0ミリモル)を室温下で滴下した後、更に10分間撹拌した。次に5%−Pd炭素0.23g(0.06ミリモル)及びヨウ化カリウム0.04g(0.24ミリモル)を加え、室温で常圧水素下にて4時間撹拌した。得られた反応液を7%−炭酸水素ナトリウム水溶液64ml中に注ぎ込み析出した結晶をろ過した後、得られた結晶をn−ヘプタン50mlで洗浄し1−アセチル−3−(3−ピリジルメチルアミノ)−3,4−ジヒドロ−6−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−2(1H)キナゾリノン9.9gを得た。
収率:94%
物性:融点138〜139℃


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(II)
【化1】

(式中、Rは同一又は異なっても良く、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C1-C6アル
キル基、C1-C6アルキルカルボニル基、カルボキシル基、C1-C6アルコキシカルボニル基、ハロC1-C6アルキル基又はハロ C1-C6アルコキシ基を示し、nは0〜4の整数を示す。)
で表されるアニリン類と一般式(III)

XCO21 (III)

(式中、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示し、R1はC1-C6アルキル基又はフェニル基を示す。)で表されるハロゲン化ギ酸エステル類とを反応させ、一般式(IV)
【化2】

(式中、R、R1及びnは前記に同じ。)で表されるフェニルカルバミン酸エステル類と
し、該フェニルカルバミン酸エステル類を単離し又は単離せずしてラジカル開始剤の存在下にハロゲン化剤と反応させ、一般式(V)
【化3】

(式中、Yは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示し、R、R1及びnは前記に同じ。
)で表されるハロメチルフェニルカルバミン酸エステル類とし、該ハロメチルフェニルカルバミン酸エステル類を単離し、又は単離せずしてヒドラジンと反応させ、一般式(VI)
【化4】

(式中、R及びnは前記に同じ。)で表されるアミノキナゾリノン類とし、該アミノキナゾリノン類を単離し又は単離せずして一般式(VII)

2CHO (VII)

(式中、R2はフェニル基、同一又は異なっても良く、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ
基、 C1-C6アルキル基、ハロ C1-C6アルキル基、 C1-C6アルコキシ基又はハロ C1-C6アルコキシ基から選択される一つ以上の置換基を有する置換フェニル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基又は3−
チエニル基を示す。)で表されるアルデヒド類と反応させることを特徴とする一般式(I

【化5】

(式中、R、R2及びnは前記に同じ。)で表されるイミノキナゾリノン類の製造方法。
【請求項2】
Rが同一又は異なっても良く、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、ハロC1-C6アルキル基又はハロ C1-C6アルコキシ基を示し、R2がフェニル基、同一又は異なっても良く、ハロ
ゲン原子、C1-C6アルキル基、ハロ C1-C6アルキル基、 C1-C6アルコキシ基又はハロ C1-C6アルコキシ基から選択される一つ以上の置換基を有する置換フェニル基、2−ピリジル
基、3−ピリジル基又は4−ピリジル基を示す請求項1記載の製造方法。


【公開番号】特開2006−36758(P2006−36758A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180639(P2005−180639)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【Fターム(参考)】