説明

インキ吐出印刷装置及びその洗浄方法

【課題】本発明は、インキ吐出部及び分配器内壁に付着した凝集物を除去し、インキ吐出部のインキ流路を良好に洗浄することができる洗浄方法および洗浄機構を備えたインキ吐出印刷装置を提供する。
【解決手段】インキ吐出部直前に設置されておりインキを各インキ吐出部に分配する役割を持つ分配器に、超音波振動を与える超音波振動子を直接設置し、分配器自体に直接超音波振動を与え、さらに分配器内部から配管・インキ吐出部内部に満たされた洗浄液に振動を伝える事による超音波による分子の振動及び、洗浄液の溶解性により前記インキ吐出部内部・配管・分配器内部を効率的に洗浄することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ吐出印刷装置、特にインキ吐出印刷装置のインキ吐出部、分配器、配管内部の洗浄方法及び、この洗浄機構をそなえたインキ吐出印刷装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、インキ吐出印刷装置は、カラーフィルターの着色層、有機エレクトロルミネッセント素子の発光層及び正孔輸送層、または、色変換フィルターの色変換層のパターン形成、回路基板の回路パターン形成、薄膜トランジスタのパターン形成、マイクロレンズのパターン形成、バイオチップの流路形成へ展開が期待されている。
【0003】
例えば、インキ吐出印刷装置によりカラーフィルターを形成する際、一般にRGBの3色の着色インキを吐出することで着色を行ってカラーフィルターを形成する。インキ吐出印刷装置は、インキを貯蔵するインキ供給手段と、インキを流通する配管と、多数のインキ吐出口を備えたインキ吐出部を含んでいる。
インキ吐出印刷装置ではインキ供給手段から配管を通じてインキ吐出部までインキが供給され、インキ吐出部からインキ吐出口を通じて被印刷体にインキが吐出される。インキ吐出部から吐出されるインキ量はインキ吐出部で制御される。複数のインキ吐出部を有する場合、分配器を設けてインキ吐出部に供給するインキを分配することができる。
【0004】
カラーフィルターの着色層のRBG領域は、非常に少ピッチであるため、インキ吐出印刷方式でカラーフィルターの着色層を形成するためには、着色インキの液滴を微小にしなければならない。通常、着色インキの滴径は数十μm程度である。微小な液滴を吐出するため、インキ吐出部は超微細な構造を有している。
【0005】
ところで、着色インキはインキ吐出部に到達する前に凝集して異物となることがある。異物は、配管、インキ吐出部内部の流路などいたるところで発生し、内壁に付着する。また、これらの異物がインキ吐出部の吐出動作中等に吐出孔の近傍に流れ込むと、インキ吐出の障害となり、インキの吐出安定性及びインキの吐出直進性を低下させてしまう。この為、インキの流路を適度に洗浄し異物を取り除く必要が生じるが、インキ吐出部の流路は微細であるため、洗浄に必要な量の洗浄液を通すことは困難であり、普通に配管に洗浄液を通過させるのみでは十分な洗浄効果が得られない。
【0006】
そこで、配管内部を溶剤で洗浄した後に、次に使用するインキを用いて配管内の洗浄液を加圧圧送して押し出す事で入れ替える方法が用いられているが、この手法ではインキ吐出部の内部など複雑な構造あるいは形状の部分は異物が残りやすく、インキ吐出部壁面等に固着した異物を完全に除去する事は困難である。
【0007】
近年ではインキの多様化に伴い、インキの切り替え時間を速くすることが得に要望されている。そこで洗浄方法も発達し、洗浄時間を短く、且つ微細な構造を有するインキ吐出部壁面に固着する異物を除去する技術として超音波振動を用いる方法が多く提唱されている。一例として、洗浄液を収容して、その洗浄液に超音波振動を加えるインキ吐出部浸漬容器内の洗浄液にインキ吐出部を浸漬し、インキ吐出部浸漬容器内で超音波振動する洗浄液に浸漬したインキ吐出部のインキ流路に洗浄液を流通させることでインキ吐出部のインキ流路内に異物を除去する技術が提案されている。(特許文献1参照)
【0008】
しかし、近年では表示パネルの大型化に伴い、これに用いるカラーフィルターも大面積になっている。このような大面積での印刷をインキ吐出方式により行う為には、多数のインキ吐出部をインキ吐出印刷装置に設置する必要がある。
上記のようなインキ吐出印刷装置のインキ吐出部及び分配器内壁に付着した凝集物を除去し、全てのインキ吐出部のインキ流路を良好に洗浄するためには、インキ吐出印刷装置に設置されている全てのインキ吐出部を浸漬可能とするための巨大サイズの超音波振動を加えるインキ吐出部浸漬容器を設置しなければならず、浸漬容器を備えた洗浄装置だけで非常に大きなスペースを占める事となる。この浸漬容器に収容する洗浄液量も多量に使用しなければならない。また、インキ吐出部に外部から超音波振動を与えるため、インキ吐出部の微細なインキ吐出口を多数有するインキ吐出面を損傷する問題がある。
また、インキ吐出部毎に超音波洗浄を実施する場合でも、インキ吐出部の数だけ超音波振動を加えるインキ吐出部用の浸漬容器を設置する必要があり、洗浄装置の複雑化、洗浄工程の長時間化は免れない。
【特許文献1】特開2004−358667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その課題とするところはインキ吐出印刷装置の配管、分配器、インキ吐出部等で発生する異物を効率よく除去し、かつ使用する洗浄液の量を少なくした洗浄方法、及びこの洗浄機構を有するインキ吐出印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ところで、本発明者らの検討によると、インキ供給手段と、複数のインキ吐出部と、前記インキ供給手段と配管を通じて連通し、前記インキ供給手段から供給されたインキを前記複数のインキ吐出部に供給するように設けられた分配器と、を含むインキ吐出印刷装置に洗浄液を満たし、分配器に超音波振動を与えたところ、超音波振動が配管、インキ吐出部に伝達し、洗浄液が超音波振動することにより、インキ吐出印刷装置内部の洗浄ができることを見出した。
【0011】
本発明はこのような知見に基づいてなされたもので、請求項1に記載の発明は、インキ供給手段と、複数のインキ吐出部と、前記インキ供給手段と配管を通じて連通し、前記インキ供給手段から供給されたインキを前記複数のインキ吐出部に供給するように設けられた分配器と、をふくむインキ吐出印刷装置において、前記分配器が超音波振動子と接続されていることを特徴とするインキ吐出印刷装置である。
請求項2に記載の発明は、前記分配器と前記インキ吐出部との間にバルブを備えていることを特徴とする請求項1に記載のインキ吐出印刷装置である。
請求項3に記載の発明は、前記分配器に洗浄液供給手段が接続されており、前記分配器と前記洗浄液供給手段の間に、バルブと流量計を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインキ吐出印刷装置である。
請求項4に記載の発明は、前記分配器に乾燥ガス供給手段が接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインキ吐出印刷装置である。
請求項5に記載の発明は、少なくともインキ供給手段と、複数のインキ吐出部と、前記インキ供給手段と配管を通じて連通し、前記インキ供給手段から供給されたインキを前記複数のインキ吐出部に供給するように設けられた分配器を備えているインキ吐出印刷装置の洗浄方法において、前記インキ吐出部、前記配管、前記分配器、前記インキ吐出部に洗浄液を満たした後、前記分配器に超音波振動を与えることを特徴とするインキ吐出印刷装置の洗浄方法である。
請求項6に記載の発明は、前記分配器と前記インキ吐出部の間にバルブを備え、
このバルブを開放することにより、洗浄液を前記インキ吐出部、前記配管、前記分配器、前記インキ吐出部に満たした後、バルブを閉塞し、洗浄した後に再びバルブを開放して洗浄液をインキ吐出部から排出することを特徴とする請求項5に記載のインキ吐出印刷装置の洗浄方法である。
請求項7に記載の発明は、前記分配器に洗浄液供給手段が接続されており、前記分配器と前記洗浄液供給手段の間に、バルブと流量計を備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載のインキ吐出印刷装置の洗浄方法である。
請求項8に記載の発明は、洗浄液をインキ吐出部から排出した後に、乾燥用ガスにより残存した洗浄液を乾燥させる事を特徴とする請求項6又は7に記載のインキ吐出装置の洗浄方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインキ吐出印刷装置は、分配器から超音波振動を発生し、この振動を配管、インキ吐出部に伝達することにより、配管、分配器、インキ吐出部等に発生し、付着した異物を効率良く除去できた。そして、インキ吐出部内部から超音波振動を与えるため、インキ吐出面の損傷を抑えることができた。
また、本発明によると大型の洗浄装置が不要であるので、大型のインキ吐出印刷装置においても十分対応することが出来た。洗浄液にインキ吐出部を浸漬する必要がないため、洗浄液の使用量を低減させることが可能となった。
また、本発明のインキ吐出印刷装置は、バルブと流量計を用いて、洗浄液の流速制御をすることにより、洗浄時の再現性に優れ、効率良く、良好な洗浄が少量の溶剤で洗浄が出来た。
さらに、本発明のインキ吐出装置は乾燥ガス供給手段から乾燥ガスを供給し、洗浄後、洗浄液を完全に乾燥したところ、インキ吐出印刷用のインキ等と洗浄液が混合することが全くないために、ソルベントショックが発生することはなかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のインキ吐出印刷装置を実施の形態に沿って以下に図面を参照しながら詳細に説明する。本発明のインキ吐出印刷装置は、少なくとも、インキ供給手段、インキ吐出部1、インキ吐出部の直前に設置されたインキを各インキ吐出部に分配する役割を持つ分配器2から構成されている。上記分配器2に超音波振動を与える超音波振動子3を直接設置し、分配器2自体に直接超音波振動を与え、さらに分配器2内部から配管、インキ吐出部1内部に満たされた洗浄液に超音波振動を伝えることにより洗浄液の分子も振動させることにより前記インキ吐出部1内部、配管、分配器2内部を効率的に洗浄することができる。
【0014】
超音波振動子は、300kHz以上の周波数の超音波を発振し、洗浄液を励振させる。洗浄液が300kHz以上の周波数の超音波で励振されることで、ノズル内の凝集物を効率良く除去できる。
【0015】
さらに、上記分配器2とインキ吐出部1の間にバルブ4を介しており、このバルブ4の開閉により洗浄液の滞留・流通を制御可能であり、上記分配器2からインキ吐出部1中を洗浄液で完全に満たした後に上記バルブ4を閉じる事によって洗浄液はインキ吐出部1から流れる事なく、滞留した状態となる。この洗浄液が滞留した状態で分配器2に直接設置した超音波振動子3により超音波振動を上記分配器2に直接与えることにより、上記分配器2からインキ吐出部1の内壁の付着した凝集物を除去・洗浄する。
しかる後に、上記バルブ4を開く事によって上記洗浄後の洗浄液をインキ吐出部1内部より外部へ流出させる。
このバルブ4開閉による上記洗浄操作を数回繰り返す事によってインキ吐出印刷装置の配管2、インキ吐出部1及び分配器2内部に付着した凝集物を除去し、インキ吐出部1のインキ流路を洗浄することが出来る。
【0016】
さらに、上記洗浄方法では、洗浄液は分配器2からインキ吐出部1間を満たせばよく、洗浄液の供給量を抑える事が出来ると共に、廃液量を減少させることができる。この際に、上記洗浄機に設置されている洗浄液用流量バルブ及び洗浄液用流量計により洗浄液の流速制御を行うことが望ましい。
【0017】
さらに、上記インキ吐出印刷装置では乾燥ガスにより洗浄後の残洗浄液を配管内より排出し、乾燥させる事を特徴とする。ここで使用する乾燥ガスとしては、特に規定はなく、空気を配管内に圧送しても良いが、窒素・ヘリウム・アルゴン等の不活性ガスを圧送する方が望ましい。
【0018】
上記インキ吐出印刷装置は脱着可能であり、インキ吐出印刷装置洗浄時にインキ吐出印刷装置に設置し、洗浄時以外には取り外すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の洗浄機構を有する塗工装置の洗浄時の一実施例を示す説明図
【符号の説明】
【0020】
1・・・インキ吐出部
2・・・分配器
3・・・超音波振動子
4・・・バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ供給手段と、
複数のインキ吐出部と、
前記インキ供給手段と配管を通じて連通し、前記インキ供給手段から供給されたインキを前記複数のインキ吐出部に供給するように設けられた分配器と、を含むインキ吐出印刷装置において、
前記分配器が超音波振動子と接続されていることを特徴とするインキ吐出印刷装置。
【請求項2】
前記分配器と前記インキ吐出部との間にバルブを備えていることを特徴とする請求項1に記載のインキ吐出印刷装置。
【請求項3】
前記分配器に洗浄液供給手段が接続されており、前記分配器と前記洗浄液供給手段の間に、バルブと流量計を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインキ吐出印刷装置。
【請求項4】
前記分配器に乾燥ガス供給手段が接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインキ吐出印刷装置。
【請求項5】
少なくともインキ供給手段と、複数のインキ吐出部と、前記インキ供給手段と配管を通じて連通し、前記インキ供給手段から供給されたインキを前記複数のインキ吐出部に供給するように設けられた分配器を備えているインキ吐出印刷装置の洗浄方法において、
前記インキ吐出部、前記配管、前記分配器、前記インキ吐出部に洗浄液を満たした後、
前記分配器に超音波振動を与えることを特徴とするインキ吐出印刷装置の洗浄方法。
【請求項6】
前記分配器と前記インキ吐出部の間にバルブを備え、
このバルブを開放することにより、洗浄液を前記インキ吐出部、前記配管、前記分配器、前記インキ吐出部に満たした後、バルブを閉塞し、洗浄した後に再びバルブを開放して洗浄液をインキ吐出部から排出することを特徴とする請求項5に記載のインキ吐出印刷装置の洗浄方法。
【請求項7】
前記分配器に洗浄液供給手段が接続されており、前記分配器と前記洗浄液供給手段の間に、バルブと流量計を備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載のインキ吐出印刷装置の洗浄方法。
【請求項8】
洗浄液をインキ吐出部から排出した後に、乾燥用ガスにより残存した洗浄液を乾燥させる事を特徴とする請求項6又は7に記載のインキ吐出装置の洗浄方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−90141(P2007−90141A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279634(P2005−279634)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】