説明

インクジェットプリンタ

【課題】フラッシング動作中に吐出したインクがプリントヘッドに跳ね返らないようにする。
【解決手段】
プラテン45には、プリントヘッドHのプリント領域に対応して複数の吸着孔60が形成される一方、プリントヘッドHのフラッシング領域に対応してフラッシング孔61が形成される。プリントヘッドHは、フラッシング孔61に向かって所定量のインクを吐出させるフラッシング動作を行うようにヘッド制御部203によって制御される。ヘッド制御部203は、フラッシング動作に用いられるインク量に応じてプリントヘッドHの主走査方向Xの移動速度を変更し、変更した移動速度でプリントヘッドHを主走査方向Xに移動させながらフラッシング動作を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、文字や画像(以下、文字や画像を総称して単に「画像」という)を記録する手段として、インクジェットプリンタが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。このインクジェットプリンタでは、搬送経路に沿って間欠搬送される記録紙に向かって、その搬送停止時に該記録紙搬送方向に直交する主走査方向に走査しながらインクを吐出することで、記録紙に画像を印刷している。
【0003】
ここで、インクを吐出しない状態がしばらく続くと、プリントヘッドのインク吐出ノズル(以下、単に、「ノズル」という)先端にあるインクが増粘してしまう。その結果、吐出能力の低下を招き、酷い場合にはノズル目詰まりに至るおそれがある。
【0004】
このような問題を防止するため、インクジェットプリンタでは、プリントヘッドの走査するプリント領域から外れた場所にフラッシング孔を形成しておき、このフラッシング孔の上方でプリントヘッドを停止させ、「フラッシング」あるいは「空吐出」と呼ばれるプリントヘッドのノズルの吐出能力回復処理を行うようにしている。すなわち、インク吸収材等を配置したフラッシング領域において、増粘したインクをプリントヘッドのノズルから強制的に排出するようにしている。
【0005】
特許文献1,2のインクジェットプリンタでは、フラッシング孔の直下に斜面部が設けられており、プリントヘッドから吐出されたインクは斜面部に付着する。そして、斜面部にある程度インクが付着すると、インクは滴状となってインク吸収材に向かって落下し、吸収されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−168105号公報
【特許文献2】特開2000−280488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のインクジェットプリンタでは、フラッシング孔とインク吸収材との間に斜面部を設けるようにした構成であるため、プリンタが大型化してしまったり、部品点数が増えることでコストアップに繋がるといった問題がある。
【0008】
そこで、フラッシング孔にインク吸収材を収容した形態を採用する方が好ましいと考えられるが、この形態では、フラッシング動作に用いられるインク量が多い場合に、吐出したインクがインク吸収材の表面で跳ね返ってプリントヘッドが汚れてしまうという問題がある。
【0009】
具体的に、プリントヘッドを停止させた状態でフラッシング動作を行うと、フラッシング孔に向かって連続的に吐出されたインクは、インク吸収材の同じ位置に着弾することとなる。そのため、インク吸収材にインクが吸収される前に次のインクが吐出され、インク吸収材の表面でインクが跳ね返ってしまい、プリントヘッドの表面に付着してしまうという問題があった。このように、プリントヘッドの表面に付着したインクが増粘すると、ノズルが目詰まりしてノズル抜けが発生してしまう。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フラッシング動作中に吐出したインクがプリントヘッドに跳ね返らないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、搬送経路に沿って間欠搬送される記録紙に向かって、その搬送停止時に該記録紙搬送方向に直交する主走査方向にプリントヘッドを走査しながらインクを吐出することで、該記録紙に画像を印刷するインクジェットプリンタを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0012】
すなわち、第1の発明は、前記プリントヘッドの下方に設けられ、該プリントヘッドのプリント領域に対応して複数の吸着孔が形成された吸着部と、
前記プリント領域から主走査方向に外れた位置に設けられ、該プリントヘッドのフラッシング領域に対応してフラッシング孔が形成されたフラッシング部と、
前記フラッシング孔に向かって所定量のインクを吐出させるフラッシング動作を行うように前記プリントヘッドの動作を制御するヘッド制御部とを備え、
前記ヘッド制御部は、前記フラッシング動作に用いられるインク量に応じて、前記プリントヘッドの主走査方向の移動速度を変更するとともに、該変更された移動速度で該プリントヘッドを主走査方向に移動させながら該フラッシング動作を行わせるように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
第1の発明では、プリントヘッドの下方には、吸着部とフラッシング部とが設けられる。吸着部には、プリントヘッドのプリント領域に対応して複数の吸着孔が形成される。フラッシング部には、プリント領域から主走査方向に外れた位置のフラッシング領域に対応してフラッシング孔が形成される。プリントヘッドは、フラッシング孔に向かって所定量のインクを吐出させるフラッシング動作を行うようにヘッド制御部によって制御される。ヘッド制御部では、フラッシング動作に用いられるインク量に応じてプリントヘッドの主走査方向の移動速度が変更される。さらに、プリントヘッドは、変更された移動速度で主走査方向に移動されながらフラッシング動作が行われる。
【0014】
このような構成とすれば、フラッシング孔の幅方向の一端から他端に亘って、プリントヘッドを所定の移動速度で移動させながらフラッシング動作を行うことで、プリントヘッドから複数回吐出されるインクを全て異なる位置に着弾させることができる。これにより、フラッシング孔に収容されているインク吸収材にインクが吸収される前に次のインクが吐出されたとしても、インクの着弾位置が異なっているため、インク吸収材の表面でインクが跳ね返ることがなく、プリントヘッドの表面にインクが付着することを抑制できる。
【0015】
ここで、所定の移動速度とは、プリントヘッドの移動中にフラッシング動作に用いるインクを全て消費できるような速度である。具体的に、フラッシング動作に用いられるインク量が多い場合には、移動速度を遅くするように変更する一方、インク量が少ない場合には、移動速度を速くするように変更している。このように、プリントヘッドの移動中にフラッシング動作を行うことで、プリントヘッドを停止させた状態でフラッシング動作を行う場合に比べて、フラッシング完了後にプリントヘッドを移動させる時間分だけタイムロスを削減することができる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、
前記ヘッド制御部は、前記フラッシング動作に用いられるインク量に応じて、前記プリントヘッドのフラッシング開始位置を変更するように構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
第2の発明では、ヘッド制御部では、フラッシング動作に用いられるインク量に応じてプリントヘッドのフラッシング開始位置が変更される。
【0018】
このような構成とすれば、フラッシング動作に用いられるインク量が比較的少ない場合に、フラッシング開始位置を、例えばフラッシング孔の幅方向中央位置に変更することで、中央位置から他端に亘って満遍なくインクを吐出することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プリントヘッドを、フラッシング動作に用いられるインク量に応じて変更された移動速度で、フラッシング孔の幅方向の一端から他端に亘って移動させながらフラッシング動作を行うことで、プリントヘッドから複数回吐出されるインクを全て異なる位置に着弾させることができる。これにより、フラッシング孔に収容されているインク吸収材にインクが吸収される前に次のインクが吐出されたとしても、インクの着弾位置が異なっているため、インク吸収材の表面でインクが跳ね返ることがなく、プリントヘッドの表面にインクが付着することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタの外観を示す、プリント前側の斜め右側から見た斜視図である。
【図2】プリンタの内部の構成を示す、プリンタ右側から見た概略図である。
【図3】印刷部及びキャップ部の構成を示す、プリンタ左側から見た図である。
【図4】印刷部のプラテンの構成を示す平面図である。
【図5】記録紙保持部の構成を示す正面断面図である。
【図6】プリンタの制御系の構成を示すブロック図である。
【図7】フラッシング動作時のインクの着弾位置を示す概略図である。
【図8】フラッシング開始位置を変更したときのインクの着弾位置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット式のプリンタAの構成を一部省略して示す斜視図である。このプリンタAは、写真プリントシステムに用いられるものであって、例えば、画像データの取得及びオーダ情報の取得を行い必要な補正処理等を行う受付ブロック200(図6参照)から通信ケーブルを介して伝送される画像データを、オーダ情報に基づいて記録紙Pに対して印刷を行うように構成されている。
【0023】
−全体構成−
図2は、プリンタAの構成を示す概略図である。図2に示すように、このプリンタAは、ロール状の記録紙Pを収容するためにプリンタ下部に設けられた記録紙収容部1と、記録紙収容部1から引き出された記録紙Pに対して画像データの記録印刷を行うようにプリンタ上部に設けられた印刷部2とを備えている。
【0024】
前記プリンタAの上部で、印刷部2の搬送下流側には、印刷後の記録紙Pを所定のプリントサイズに切断するカッター部4、切断後の記録紙Pをスイッチバックさせることで印刷面の向きを変更するスイッチバック部5、記録紙Pの裏面に整理番号等を印字するための裏面印字ユニット6、記録紙Pの印刷面を乾燥させるための乾燥ユニット7、ロール状に巻かれた記録紙Pのカールを取り除いて排出するためのデカールユニット8、排出された記録紙Pをそのサイズに応じてプリンタ左右方向(図2の紙面に垂直な方向)の一側に振り分けるためのコンベア装置150、振り分けられたB5サイズやA4サイズ等の大判の記録紙Pを受け止めるための大判トレイ104(図1参照)、及びL版等の写真サイズの記録紙Pを受け止めてオーダ毎に集積するための集積装置210が配設されている。そして、プリンタAは、大判トレイ104や集積装置210以外が筐体3によって覆われており、筐体3の下面には移動用のキャスター3aが取り付けられている。
【0025】
前記記録紙収容部1は、印刷部2のほぼ真下に位置していて、記録紙Pを収容するための2つのマガジンM1,M2を収容可能になっている。マガジンM1,M2は、上下方向に並んで配設されており、各マガジンM1,M2内には、ロール状の記録紙Pが、巻芯Rにより保持された状態で収容されている。
【0026】
なお、本実施形態では、プリンタAは手差し供給ユニット9を備えており、これによって、手差し供給ユニット9から供給されるシート状の記録紙Pに対しても印刷可能になっている。
【0027】
前記印刷部2は、記録紙Pに対してインクを吐出し、それによって多数のインクドットからなる画像を形成するプリントヘッドHと、プリントヘッドHの下方に設けられ記録紙Pを印刷位置に吸着保持する記録紙保持部Dとを備えている。
【0028】
前記プリントヘッドHは、主走査方向Xに延びるガイドレール10(図3参照)に沿って移動可能に構成されている。具体的に、駆動モータ11の回転力がプーリ46を介して駆動ベルト12に伝達され、駆動ベルト12の回転量に応じてプリントヘッドHが主走査方向Xに移動するようになっている。
【0029】
さらに、前記プリントヘッドHは、副走査方向に並ぶ2つのヘッドユニット13,13を有しており、ヘッドユニット13に設けられているインク吐出ノズル15(図5参照)からインクを吐出することで、記録紙Pに対して所定の画像や文字等を印刷できるようになっている。
【0030】
前記インクジェットプリンタAの左右両側の下部には、それぞれ、互いに色相の異なるインクが封入された4つのインクカートリッジ(図示省略)が着脱可能に収容されている。したがって、これらのインクカートリッジをケースから着脱することにより、使用中又は使用済みのものを新しいものに交換できるようになっている。
【0031】
なお、これらのインクカートリッジには、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各インクが封入されている。
【0032】
−記録紙搬送機構−
図2に示すように、前記プリンタAには、ロール状に巻かれた長尺の記録紙Pを収容する記録紙収容部1がプリンタ下部に設けられる一方、記録紙収容部1から記録紙Pを引き出して所定の搬送経路に沿って搬送しつつ画像の印刷や切断等の各種処理を行う記録紙搬送機構が収容された搬送機構収容部20がプリンタ上部に設けられている。
【0033】
本実施形態では、前記記録紙収容部1から記録紙Pを供給する以外にも、手差しトレイ102から手差しローラ対27を介して所定サイズの記録紙を供給できるように構成された手差し供給ユニット9も備えているが、以下、主に記録紙収容部1から記録紙Pを供給する場合について説明する。
【0034】
なお、以下の説明において、手差しトレイ102が設けられる側をプリンタ前側と定義し、その反対側をプリンタ後側と定義する。また、プリンタ前側から見て左側をプリンタ左側と定義し、右側をプリンタ右側と定義する。
【0035】
前記記録紙収容部1には、2つのマガジンM1,M2が収容されており、マガジンM1,M2内に収容された記録紙Pのうち一方が、その先端部から引き出されてガイドローラ21によりガイドされながらマガジンローラ対22によりマガジン外へと送り出される。
【0036】
ここで、マガジンM1から送り出された記録紙Pは、上流側が2つに分岐するガイド部23のプリンタ後側の分岐部23bを通って、記録紙搬送機構をなす供給ローラ24と供給ローラ24に対向配置された一対の圧着ローラ24a,24bとの間に挟み込まれる。一方、マガジンM2から送り出された記録紙Pは、ガイド部23のプリンタ前側の分岐部23aを通って、供給ローラ24と一対の圧着ローラ24a,24bとの間に挟み込まれる。なお、一対の圧着ローラ24a,24bのうちの一方のみを設けるようにしてもよい。
【0037】
前記供給ローラ24の回転により搬送された記録紙Pは、搬送下流側の印刷部2に供給され、プリントヘッドHによって記録紙Pに対して画像の印刷が行われる。
【0038】
印刷後の記録紙Pは、印刷後搬送ローラ対25によりカッター部4に送られて所定のプリントサイズに切断される。切断後の記録紙Pは、3つの切断後搬送ローラ対26によりスイッチバック部5へと受け渡される。なお、これら3つの切断後搬送ローラ対26は、記録紙Pをスイッチバック部5へと受け渡した後に、同時に圧着解除して次に搬送されてくる記録紙Pの受け入れに備える。
【0039】
前記スイッチバック部5では、切断後の記録紙Pを、その先端側から受け入れてスイッチバックローラ対73により引き込んだ後に、搬送方向を水平方向から垂直方向(図2の左右方向から上下方向)に変更して後端側から排出する。
【0040】
前記スイッチバック部5から排出された記録紙Pは、供給ローラ対75により裏面印字ユニット6に送られて記録紙Pの裏面に整理番号等が印字された後、乾燥ユニット7へと搬送される。
【0041】
前記乾燥ユニット7では、記録紙Pを搬送ローラ対28によって搬送しながらその印刷面の乾燥処理が行われる。乾燥処理が終了した記録紙Pは、搬送ローラ対29によってデカールユニット8に送られる。
【0042】
前記デカールユニット8では、ロール状に巻かれた記録紙Pのカールを取り除くために、駆動搬送ローラ81とデカールローラ82とで記録紙Pを挟持搬送しながら、デカールローラ82を駆動搬送ローラ81の外周面に沿って図2の時計回り方向に移動させる。これにより、記録紙Pはそのカール方向とは反対方向に曲げられた状態でデカールされて、排出口90からコンベア装置150の搬送ベルト151上に排出される。
【0043】
−各構成要素の詳細−
以下、プリンタAの各構成要素について詳細に説明する。記録紙収容部1には、マガジンM1,M2をそれぞれ載置するためのスライド台30,30が設けられている。スライド台30は、筐体3内の左右両側に設けられてプリンタ前後方向に延びる図示しないリニアガイド等により、プリンタ前後方向にスライド自在に構成されている。これにより、スライド台30をスライド移動させることで、マガジンM1,M2を筐体3内から出し入れできるようになっている。このスライド台30の前面は、筐体3の一部をなすとともに開閉可能な扉部材31によって覆われており、この扉部材31を開放状態にすることで、記録紙Pの取り替え作業が行えるようになっている。
【0044】
なお、以下の説明において、図2の左側をマガジン前側と定義し、右側をマガジン後側と定義する。また、図2の紙面に垂直な方向をマガジン長さ方向(プリンタ左右方向に一致する方向)と定義する。
【0045】
前記マガジンM1,M2は、持ち運び可能に構成された略密閉状の箱型容器とされている。マガジンM1,M2の上面におけるマガジン前側の端部には、マガジンM1,M2内に収容された記録紙PをマガジンM1,M2外へと引き出すための開口部111が形成されている。開口部111は、マガジン長さ方向に延びる略矩形状をなしている。
【0046】
前記マガジンM1,M2内部の記録紙収容室S1,S2に設けられたマガジンローラ対22は、マガジン駆動ローラ32及びマガジン従動ローラ33からなる圧着型ローラ対で構成されている。
【0047】
前記供給ローラ24は、モータ(図示省略)によって駆動され、記録紙Pを記録紙収容部1から引き出して印刷部2側へ搬送する正方向の回転と、記録紙Pを記録紙収容部1内へ戻す逆方向の回転とが切換可能に構成されている。これにより、供給ローラ24よりも搬送下流側のカッター部4で記録紙Pの印刷済みの部分を所定サイズに切断した後、長尺の記録紙Pを上流側に戻して記録紙Pの先頭から印刷を行う場合や、長尺記録紙Pではなく手差し供給ユニット9から記録紙Pを供給する場合等において、長尺の記録紙Pを記録紙収容部1内に戻すことができるようになっている。
【0048】
前記印刷部2は、図3に示すように、プリントヘッドHを主走査方向X(記録紙Pの搬送方向(副走査方向Y)と垂直な方向)に案内する2本のガイドレール10と、2つのプーリ46(図3では1つのみ示す)に巻き掛けられ且つプリントヘッドHをガイドレール10に沿って往復移動させるための駆動ベルト12と、プーリ46を回転駆動させる駆動モータ11と、プリントヘッドHにより印刷を行うことが可能な位置に吸着保持する記録紙保持部D(図2参照)と、この記録紙保持部Dの下流側に配設された圧着型の印刷後搬送ローラ対25とを備えている。ここで、主走査方向Xは、プリンタ左右方向(記録紙Pの幅方向でもある)に相当し、副走査方向Yは、プリンタ前後方向(記録紙Pの長手方向でもある)に相当する。
【0049】
前記プリントヘッドHの底面(後述する記録紙保持部Dと対向する面)には、互いに副走査方向Y(記録紙搬送方向)に間隔をあけて2つのヘッドユニット13が設けられている。
【0050】
前記各ヘッドユニット13は全て同一構成であり、それぞれ、主走査方向Xに配設されて各インクを吐出する複数のノズルアレイ14(図5参照)から構成されている。各ノズルアレイ14には、インク吐出ノズル15が副走査方向Yに列状に配設されている。このインク吐出ノズル15の列は、主走査方向Xに間隔をあけて合計8つ設けられている。これにより、各ヘッドユニット13は、単体でカラー画像を形成可能な構成とされている。
【0051】
ここで、前記各ヘッドユニット13の構成としては特に限定されるものではないが、本実施形態における各ヘッドユニット13は、インク吐出ノズル15毎に設けられ、且つインクの充填された圧力室の容積を、圧電素子(ピエゾ素子)によって変動させることでインクを吐出する一般的なピエゾ方式とされている。また、ヘッドユニット13は2つに限定するものではなく、例えば、1つや3つ以上であってもよい。
【0052】
そして、前記記録紙保持部D上の記録紙Pは、記録紙保持部Dの上流側に設けられた供給ローラ24により一定の単位搬送量で間欠的に(ステップ状に)副走査方向Yに搬送され、この間欠搬送時における記録紙Pの各停止時に、プリントヘッドHが主走査方向に一走査(一往動作又は一復動作)されて、この走査時に、主走査方向の各位置で、各ヘッドユニット13のインク吐出ノズル15からインクが吐出される。つまり、プリントヘッドHの一走査後に、記録紙Pが単位搬送量だけ搬送され、その後、再びプリントヘッドHが一走査され、この動作が繰り返し行われて、所望の画像が記録紙Pに印刷されることになる。
【0053】
また、前記プリントヘッドHの主走査方向Xのプリント領域外の位置には、印刷を行っていない場合にプリントヘッドHが待機するための待機位置が設定されており、この待機位置には、キャップ部51が設けられている。
【0054】
前記キャップ部51は、プリントヘッドHを使用しないときに、インクの増粘を防止すべくプリントヘッドHのヘッドユニット13に密着させるものであり、ヘッドユニット13に対応して副走査方向Yに二列に並ぶ吸引キャップ52を備えている。そして、キャップ部51は、プリントヘッドHの底面に密着する位置と、プリントヘッドHの底面から離れた位置との間で昇降するように構成されている。
【0055】
前記プリントヘッドHのプリンタ後側の端部には、ガイド孔55を有する軸受ホルダ部56が形成され、プリンタ前側の端部には、主走査方向に延びる板状のガイドプレート57が形成されている。そして、プリントヘッドHは、軸受ホルダ部56のガイド孔55にプリンタ後側のガイドレール10を嵌挿した状態で、ガイドプレート57をプリンタ前側のガイドレール10上に載置することで支持されている。このような構成とすれば、紙詰まり等が発生した場合には、プリントヘッドHをプリンタ後側のガイドレール10を支点として上側に回動させることで、詰まった紙を容易に取り除くことができる。
【0056】
一方、前記プリントヘッドHの待機位置においては、プリントヘッドHの下面にキャップ部51が密着した際に、プリントヘッドHが浮き上がるのを防止する機構が設けられている。この機構は、固定部材53に回動可能に支持された押圧ローラ54を含んでいて、ガイドプレート57をこの押圧ローラ54とガイドレール10との間で挟持することで、プリントヘッドHのプリンタ前側の端部が上下方向に移動するのを規制する。これにより、プリントヘッドHにキャップ部51が密着したときの、プリントヘッドHの浮き上がりを防止して、インクの増粘を確実に防止することが可能となる。
【0057】
前記記録紙保持部Dは、図4及び図5に示すように、プリントヘッドHのプリント領域に対応して表面(上面)に開口する複数の吸着孔60が形成され且つフラッシング領域に対応してフラッシング孔61が形成されたプラテン45(吸着部、フラッシング部)と、プラテン45におけるプリントヘッドHのプリント領域下方に設けられ吸着孔60と連通する吸引室62と、プラテン45におけるプリントヘッドHのフラッシング領域下方に設けられフラッシング孔61と連通するフラッシング室63と、吸引室62内の空気を吸引排気することで吸着孔60を介してプラテン45の表面上に負圧を発生させ記録紙Pをプラテン45の表面上に吸着保持する吸引ファン(図示省略)とを備えている。なお、本実施形態では、吸着孔60とフラッシング孔61とを1枚のプラテン45に形成しているが、吸着孔45とフラッシング孔61とをそれぞれ別々の部材に形成しても構わない。
【0058】
前記プラテン45の支持面45aには、副走査方向Yに延びる凹部45bが形成されている。この凹部45bには、インク吸収材72が収容されている。このインク吸収材72は、記録紙P全体に画像を印刷する縁なし印刷を行う際に、プリントヘッドH(ヘッドユニット13)より吐出したインクの一部が支持面45a上の記録紙Pの幅方向の端縁から外側に外れてはみ出したとしても、その外側に外れたインクによりプラテン45の支持面45aが汚れるのを防止するために設けられたものである。このため、凹部45bは、支持面45aにおいて支持面45a上の記録紙Pの幅方向の端縁に対応する位置で且つ副走査方向YにおけるプリントヘッドHに対応する位置において、この端縁に沿って延びる(つまり副走査方向Yに延びる)ように形成されている。
【0059】
前記フラッシング孔61は、インクの増粘を防止するために印刷開始時にプリントヘッドHのインク吐出ノズル15から吐出される少量のインクを受け止めるためのものである。そして、フラッシング室63内には、インク吸収材64が収容されている。フラッシング孔61に吐出された廃インクは、インク吸収材64に吸収され、廃棄管65を介して廃液タンク(図示省略)に貯留される。
【0060】
前記カッター部4は、記録紙Pの搬送経路の下側に配置された固定刃4aと、記録紙Pの搬送経路の上側に配置され、モータ(図示省略)により固定刃4aに対して上下方向に移動する可動刃4bとで構成され、可動刃4bが記録紙Pの上側から下側に移動することで記録紙Pを切断する。この切断による切り屑は、筐体3の下部に配設された屑箱(図示省略)に落下して収容される。
【0061】
前記スイッチバック部5は、記録紙Pをスイッチバックさせて、コンベア装置150の搬送ベルト151上で記録紙Pの印刷面が上面を向くように、記録紙Pの後端側から搬送経路に排出させるものである。
【0062】
図2に示すように、前記スイッチバック部5には、下側の駆動ローラ73aと上側の従動ローラ73bとからなる圧着型のスイッチバックローラ対73と、このスイッチバックローラ対73の上流側において搬送路を挟むように設けられ、切断後搬送ローラ対26より搬送されてきた記録紙Pをスイッチバックローラ対73へ導く一対の第1ガイド部材74と、スイッチバックした記録紙Pを後述する裏面印字ユニット6へ供給する圧着型の供給ローラ対75と、スイッチバックローラ対73と供給ローラ対75との間において搬送路を挟むように設けられ、スイッチバックした記録紙Pを供給ローラ対75へ導く一対の第2ガイド部材76とが設けられている。
【0063】
前記スイッチバックローラ対73の駆動ローラ73aは、モータ(図示省略)により、記録紙Pを挟持してプリンタ前側へ搬送する正回転と、記録紙Pを挟持してプリンタ後側へ搬送する逆回転とが可能に構成されている。
【0064】
前記スイッチバックローラ対73及び第1ガイド部材74は、モータ(図示省略)により、スイッチバックローラ対73の駆動ローラ73aの回転軸周りに一体的に移動可能になっており、これにより、スイッチバックローラ対73の駆動ローラ73aに対する従動ローラ73bの相対位置が、駆動ローラ73aに対してほぼ真上に位置して、記録紙Pをプリンタ後側へ搬送する第1の位置(図2に実線で記載)と、駆動ローラ73aに対してプリンタ後側に位置して、スイッチバックされた記録紙Pを後端側から裏面印字ユニット6へ供給する第2の位置(図2に仮想線で記載)とに切り換えられるようになっている。
【0065】
前記スイッチバック部5の下側には、上側に開放する記録紙回収箱83が設けられている。この記録紙回収箱83は、エラー(例えば紙詰まりエラー等)が発生した場合に、搬送経路に残された記録紙Pを回収するためのものである。エラー発生時には、搬送経路に残された記録紙Pは、記録紙搬送機構によってスイッチバック部5へと搬送される。スイッチバック部5では、記録紙Pを受け取って記録紙回収箱83へと排出する。これにより、エラー発生時に、搬送経路に残された記録紙Pを、プリンタカバー(筐体3)の必要な箇所を開けたりすることなく容易に取り除くことができる。
【0066】
前記裏面印字ユニット6は、ドットインパクト式のサーマルプリンタからなるものであって、記録紙Pの裏面側(搬送経路に対してプリンタ後側)に配設されている。
【0067】
前記裏面印字ユニット6の搬送下流側には、裏面印字後の記録紙Pを送り出す搬送ローラ対28が配設されている。そして、該搬送ローラ対28の回転により、記録紙Pが搬送下流側の乾燥ユニット7へと搬送される。
【0068】
前記乾燥ユニット7は、乾燥装置153内に空気を取り込むための吸入ファン154と、この吸入ファン154で取り込んだ空気を加熱する加熱ヒータ155と、加熱ヒータ155で加熱された空気を乾燥風として記録紙Pの印刷面に吹き付ける排気ノズル部156とで構成されている。
【0069】
前記デカールユニット8は、駆動搬送ローラ81と、駆動搬送ローラ81の周りに移動可能に構成されたデカールローラ82とを有している。デカールユニット8は、記録紙Pの種類(ロール紙又はシート紙)に応じて、デカールローラ82の位置を搬送位置とデカール位置とに切り換える。
【0070】
前記搬送位置は、デカールローラ82が駆動搬送ローラ81の真上に存在する位置として定義される。この搬送位置では、記録紙Pは、両ローラ81,82によってデカールされることなく搬送される。
【0071】
前記デカール位置は、デカールローラ82を前記搬送位置から駆動搬送ローラ81周りに時計回り方向に回動させた位置として定義される。このデカール位置では、記録紙Pは、両ローラ81,82によってデカールされつつ搬送される。
【0072】
前記デカールユニット8は、乾燥ユニット7から搬送されてきた記録紙Pが、手差し供給部から供給されたシート状の記録紙Pである場合には、デカールローラ82を搬送位置に位置付けるように制御する一方、記録紙PがマガジンM1,M2から引き出されたロール状の記録紙Pである場合には、デカールローラ82をデカール位置に位置付けるように制御する。これにより、手差し供給部から供給された記録紙Pを不必要にカールすることなく、マガジンM1,M2から引き出された記録紙Pを確実にデカールすることができる。
【0073】
前記集積装置210は、コンベア装置150から搬送された記録紙Pを集積するためのものであり、プリンタ前側が開口した箱型の集積本体部211と、集積本体部211内の上下両端に配設されたローラ対(図示省略)に適当なテンションを有した状態で巻き掛けられた無端状の集積ベルト213と、集積ベルト213の外周面に略等間隔に設けられた集積プレート212とを備えている。ローラ対は、集積ベルト213を回転させて集積プレート212を搬送方向に移動させるための駆動モータ(図示省略)に接続されている。
【0074】
前記複数枚の集積プレート212のうち、集積本体部211外部に露出している集積プレート212は、集積ベルト213の回転動作に追従して下方に移動する一方、集積本体部211内部に収容されている集積プレート212は、集積ベルト213の回転動作に追従して上方に移動するように構成されている。すなわち、集積プレート212は、集積ベルト213とともに、ローラ対の周囲を連続して回転可能に構成されている。
【0075】
前記集積プレート212は、搬送ベルト151の下流側の記録紙Pの受け渡し位置において、プレート表面が水平で且つ搬送ベルト151のベルト面と略面一になるように待機しており、所定のプリントオーダに対応した枚数が集積された後、次のオーダの記録紙Pが搬送される前に、集積ベルト213により下方に搬送される。
【0076】
−制御系の構成−
本実施形態に係るインクジェットプリンタAは、制御系として、図6に示すように、マイクロプロセッサ201(以下、CPUという)と、このCPU201とデータバスを介して接続された搬送制御部202、ヘッド制御部203、プリント制御部204、半導体メモリRAM/ROM205、通信インタフェース206とを備えている。
【0077】
前記搬送制御部202は、記録紙搬送機構の動作制御を行う。ヘッド制御部203は、プリントヘッドHを主走査方向に往復移動させるための駆動ベルト12を駆動させるとともに、各圧電素子に所定波形の電圧を供給することによってプリントヘッドHの制御を行うものである。通信インタフェース206は、受付ブロック200との間で情報の送受信を行うためのものである。プリント制御部204は、受付ブロック200から通信インタフェース206を介して受信した画像データに基づき、記録紙Pに対して画像データの印刷を実現するための制御を行う。ここで、オーダ情報には印刷を行う記録紙Pの大きさ等を特定するためのプリントチャンネル情報と、印刷枚数等を特定するためのプリントフォーム情報とが含まれている。
【0078】
−フラッシング動作の制御−
以下、印刷開始時に、増粘したインクをプリントヘッドHのインク吐出ノズル15から強制的に排出するためのフラッシング動作の制御について説明する。なお、以下に示す例では、フラッシング動作時に、1つのインク吐出ノズル15からインクを4回吐出するものとする。
【0079】
図7(a)は、フラッシング動作時のインクの着弾位置を示す概略図である。図7(a)に示すように、ヘッド制御部203は、プリントヘッドHをフラッシング孔61の上方に移動させ、インクを吐出させる。具体的には、主走査方向Xに間隔をあけて並ぶ8つのインク吐出ノズル15のうち右端のインク吐出ノズル15を、フラッシング孔61内のインク吸収材64の左端に対向するように移動させる。
【0080】
そして、図7(b)に示すように、ヘッド制御部203は、プリントヘッドHをフラッシング孔61内のインク吸収材64の左端から右端に亘って所定の移動速度で移動させながらフラッシング動作を行わせる。
【0081】
ここで、所定の移動速度とは、フラッシング動作に用いられるインク量に応じて変更されるものであり、具体的には、インク吸収材64の左端から右端に亘ってプリントヘッドHを移動させている間に、フラッシング動作に用いるインクを全て消費できるような速度である。
【0082】
例えば、前記プリントヘッドHを停止させていた期間が長い場合には、インクの増粘が進行していると考えられるため、フラッシング動作に用いられるインク量を多くする必要がある。この場合には、プリントヘッドHの移動速度が遅くなるように変更する。
【0083】
一方、前記プリントヘッドHを停止させていた期間が短い場合には、インクの増粘がそれほど進行していないと考えられるため、フラッシング動作に用いられるインク量が少なくて済む。この場合には、プリントヘッドHの移動速度を速くするように変更する。
【0084】
次に、図7(c)に示すように、ヘッド制御部203は、プリントヘッドHの右端から2番目のインク吐出ノズル15をインク吸収材64の左端に対向するように位置付け、インクを吐出させる。なお、図7(c)に示す例では、右端のインク吐出ノズル15がインク吸収材64の右端に位置付けられたときに、2番目のインク吐出ノズル15は、既にインク吸収材64の左端に対向しているため、その位置でインクを吐出させるようにしている。
【0085】
そして、図7(d)に示すように、ヘッド制御部203は、プリントヘッドHをフラッシング孔61内のインク吸収材64の左端から右端に亘って所定の移動速度で移動させながらフラッシング動作を行わせる。以下、このようなフラッシング動作を、残りのインク吐出ノズル15についても同様に行う。
【0086】
このような構成とすれば、フラッシング動作に用いられるインク量に応じてプリントヘッドHの移動速度を変更し、フラッシング孔61内のインク吸収材64の左端から右端に亘って、プリントヘッドHを移動させながらフラッシング動作を行うことで、プリントヘッドHから複数回吐出されるインクを全て異なる位置に着弾させることができる。これにより、インク吸収材64にインクが吸収される前に次のインクが吐出されたとしても、インクの着弾位置が異なっているため、インク吸収材64の表面でインクが跳ね返ることがなく、プリントヘッドHの表面にインクが付着することを抑制できる。
【0087】
なお、本実施形態では、フラッシング動作時に、1つのインク吐出ノズル15からインクを4回吐出する場合について説明したが、このインクの吐出回数は、フラッシング動作を理解しやすくするために例示した回数であり、実際のフラッシング動作では、より多くの回数でインクの吐出が行われる。
【0088】
《実施形態の変形例》
なお、上述した実施形態では、フラッシング孔61内のインク吸収材64の左端から右端に亘ってプリントヘッドHを移動させながらフラッシング動作を行うようにしたが、この形態に限定するものではない。以下、本実施形態の変形例について説明する。この変形例では、フラッシング動作時に、1つのインク吐出ノズル15からインクを2回吐出するものとする。
【0089】
図8(a)は、フラッシング開始位置を変更したときのインクの着弾位置を示す概略図である。図8(a)に示すように、ヘッド制御部203は、プリントヘッドHをフラッシング孔61の上方に移動させ、インクを吐出させる。具体的には、主走査方向Xに間隔をあけて並ぶ8つのインク吐出ノズル15のうち右端のインク吐出ノズル15を、インク吸収材64の幅方向の中央右寄りの位置に対向するように移動させる。
【0090】
そして、図8(b)に示すように、ヘッド制御部203は、プリントヘッドHをインク吸収材64の中央右寄りの位置から右端に亘って所定の移動速度で移動させながらフラッシング動作を行わせる。すなわち、本変形例では、プリントヘッドHの移動速度を、インクを4回吐出する場合と同じ速度に設定したままで、フラッシング開始位置のみを変更するようにしている。
【0091】
次に、図8(c)に示すように、ヘッド制御部203は、プリントヘッドHの右端から2番目のインク吐出ノズル15をインク吸収材64の左端に対向するように位置付け、インクを吐出させる。なお、図8(c)に示す例では、右端のインク吐出ノズル15がインク吸収材64の右端に位置付けられたときに、2番目のインク吐出ノズル15は、既にインク吸収材64の左端に対向しているため、その位置でインクを吐出させるようにしている。
【0092】
そして、図8(d)に示すように、ヘッド制御部203は、プリントヘッドHをインク吸収材64の左端から中央左寄りの位置に亘って所定の移動速度で移動させながらフラッシング動作を行わせる。
【0093】
次に、図8(e)に示すように、ヘッド制御部203は、プリントヘッドHの右端から3番目のインク吐出ノズル15をインク吸収材64の中央右寄りの位置に対向するように位置付け、インクを吐出させる。
【0094】
そして、図8(f)に示すように、ヘッド制御部203は、プリントヘッドHをインク吸収材64の中央右寄りの位置から右端に亘って所定の移動速度で移動させながらフラッシング動作を行わせる。以下、このようなフラッシング動作を、残りのインク吐出ノズル15についても同様に行う。
【0095】
このような構成とすれば、フラッシング動作に用いられるインク量が比較的少ない場合に、フラッシング開始位置をフラッシング孔61内のインク吸収材64の中央位置に変更することで、中央位置から右端に亘って満遍なくインクを吐出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上説明したように、本発明は、フラッシング動作中に吐出したインクがプリントヘッドに跳ね返らないようにすることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0097】
A インクジェットプリンタ
P 記録紙
X 主走査方向
H プリントヘッド
45 プラテン(吸着部、フラッシング部)
60 吸着孔
61 フラッシング孔
203 ヘッド制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿って間欠搬送される記録紙に向かって、その搬送停止時に該記録紙搬送方向に直交する主走査方向にプリントヘッドを走査しながらインクを吐出することで、該記録紙に画像を印刷するインクジェットプリンタであって、
前記プリントヘッドの下方に設けられ、該プリントヘッドのプリント領域に対応して複数の吸着孔が形成された吸着部と、
前記プリント領域から主走査方向に外れた位置に設けられ、該プリントヘッドのフラッシング領域に対応してフラッシング孔が形成されたフラッシング部と、
前記フラッシング孔に向かって所定量のインクを吐出させるフラッシング動作を行うように前記プリントヘッドの動作を制御するヘッド制御部とを備え、
前記ヘッド制御部は、前記フラッシング動作に用いられるインク量に応じて、前記プリントヘッドの主走査方向の移動速度を変更するとともに、該変更された移動速度で該プリントヘッドを主走査方向に移動させながら該フラッシング動作を行わせるように構成されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1において、
前記ヘッド制御部は、前記フラッシング動作に用いられるインク量に応じて、前記プリントヘッドのフラッシング開始位置を変更するように構成されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−30452(P2012−30452A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171044(P2010−171044)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(311001347)NKワークス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】