説明

インクジェットヘッドの製造方法

【課題】流路抵抗の低減により吐出性能が改善されたノズルを備えたインクジェットヘッドを製造できるインクジェットヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によるインクジェットヘッドの製造方法は、流入口が形成される第1プレートを加工する工程と、チャンバ及び流入口が形成される第2プレートを加工する工程と、第2プレートの上面に第1プレートを接合する工程と、リストリクタ及びリザーバが形成される第3プレートを加工する工程と、ノズルが形成されるようにフェムト秒レーザを照射して第4プレートを加工する工程と、第3プレートの下面に第4プレートを接合する工程と、第2プレートの下面に第3プレートを接合する工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドは電気的信号を物理的力に変換して小さいノズルを介してインクを液滴の形態で吐出させる原理を用いる。図1は従来技術によるインクジェットヘッドの製造方法を示す断面図である。図1に示すように、インクジェットヘッド1は、流入口2aが形成される第1プレート2と、チャンバ3a及びリストリクタ3bが形成される第2プレート3と、フィルタ4a及びリザーバ4bが形成される第3プレート4と、ノズル5aが形成される第4プレート5とを接合して製造される。
【0003】
第1から第4プレート2,3,4,5にはシリコンウエハが用いられ、第1から第4プレート2,3,4,5を接合する工程はシリコンウエハ間の直接接合により行われる。しかし、シリコン直接接合は収率が50%未満であって、量産技術としての使用は困難であった。
【0004】
また、シリコン直接接合により第1から第4プレート2,3,4,5を接合する場合には、ノズル5aが形成される第4プレート5の厚さを所定厚さ以上に設定する必要があり、ノズル5a加工はシリコン・ディープ・リアクティブ・イオン・エッチング(Silicon Deep Reactive Ion Etching)により行われる。
【0005】
シリコン・ディープ・リアクティブ・イオン・エッチングによりノズルを加工すると、図1に示すように、ノズル5aの底部に段差が形成されることがあり、別途のエッチングストップ(etching stop)が存在しないため、エッチング面が不均一であるという問題があった。このようなノズル5aはインクを吐出する過程でバブル(bubble)発生の原因となり、インクジェットヘッド1の吐出性能を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした従来技術の問題点を解決するために、本発明はノズルの吐出特性を改善できるインクジェットヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、インクを貯留するリザーバと、リザーバにインクが供給される流入口と、リザーバからインクの供給を受けるチャンバと、リザーバとチャンバとを連結するリストリクタと、チャンバのインクが吐出されるノズルと、を含むインクジェットヘッドの製造方法であって、流入口が形成される第1プレートを加工する工程と、チャンバ及び流入口が形成される第2プレートを加工する工程と、第2プレートの上面に第1プレートを接合する工程と、リストリクタ及びリザーバが形成される第3プレートを加工する工程と、ノズルが形成されるようにフェムト秒レーザ(femto second laser)を照射して第4プレートを加工する工程と、第3プレートの下面に第4プレートを接合する工程と、第2プレートの下面に第3プレートを接合する工程と、を含むインクジェットヘッドの製造方法が提供される。
【0008】
ここで、第4プレートはガラス(glass)からなり、第3プレートはシリコンからなり、第3プレートと第4プレートを接合する工程は第3プレートの下面に第4プレートを陽極接合(anodic bonding)してなされることができる。
【0009】
また、第1プレートはシリコンからなり、第2プレートはガラスからなり、第1プレートと第2プレートとを接合する工程は第2プレートの上面に第1プレートを陽極接合してなされることができる。
【0010】
また、第2プレートはガラスからなり、第3プレートはシリコンからなり、第2プレートと第3プレートとを接合する工程は第2プレートの上面に第3プレートを陽極接合してなされることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の好ましい実施例によれば、流路抵抗の低減により吐出性能が改善されたノズルを備えるインクジェットヘッドを製造することができる。
【0012】
また、それぞれのプレートを陽極接合してインクジェットヘッドを製造するので、接合信頼性を向上させることができる。
【0013】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来技術によるインクジェットヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例によるインクジェットヘッドを示す断面図である。
【図3】本発明の一実施例によるインクジェットヘッドの製造方法を示す順序図である。
【図4】本発明の一実施例によるインクジェットヘッドの第1プレートを示す断面図である。
【図5】本発明の一実施例によるインクジェットヘッドの第2プレートを示す断面図である。
【図6】本発明の一実施例によるインクジェットヘッドの第1プレートと第2プレートの陽極接合を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施例によるインクジェットヘッドの第3プレートを示す断面図である。
【図8】本発明の一実施例によるインクジェットヘッドのノズル加工を示す断面図である。
【図9】本発明の一実施例によるインクジェットヘッドのノズルを示すイメージである。
【図10】本発明の一実施例による第3プレートと第4プレートの陽極接合を示す断面図である。
【図11】本発明の一実施例による第2プレートと第3プレートの陽極接合を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の特徴及び利点を明確にするために、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
本発明によるインクジェットヘッドの製造方法を添付図面を参照して詳細に説明することに当たって、同一または対応の構成要素には同一の図面符号を付し、これに対する重複説明は省略する。
【0017】
図2は本発明の一実施例によるインクジェットヘッド100を示す断面図である。図2に示すように、本発明の一実施例により製造されるインクジェットヘッド100は、リザーバ34と、流入口14と、チャンバ22と、メンブレン12と、リストリクタ32と、圧電体50と、フィルタ36と、ノズル42と、を含むことができる。
【0018】
チャンバ22はインクを収容し、その一側には圧電体50の振動を伝達させるメンブレン12が形成される。圧電体50が振動すると、チャンバ22のインクはノズル42に移動され、インクジェットヘッド100の外側に吐出される。
【0019】
リザーバ34は流入口14を介してインクジェットヘッド100の外部から供給されたインクを貯留する。リザーバ34に貯留されたインクがチャンバ22に供給される。
【0020】
リストリクタ32は、上述したリザーバ34とチャンバ22とを連通させ、リザーバ34とチャンバ22との間におけるインクの流れを調節する機能を行う手段である。このようなリストリクタ32はリザーバ34やチャンバ22よりも小さい断面積を有するように形成され、圧電体50によりメンブレン12が振動する場合、リザーバ34からチャンバ22に供給されるインクの量を調節することができる。
【0021】
ノズル42はチャンバ22に連結され、チャンバ22から供給されたインクを噴射する機能を行う。圧電体50により発生された振動がメンブレン12を介してチャンバ22に伝達されると、チャンバ22には圧力が加えられることになり、この圧力によりノズル42からインクが噴射されることができる。
【0022】
一方、チャンバ22とノズル42の間にはフィルタ36が形成される。フィルタ36はチャンバ22から発生されたエネルギーをノズル42に集中させる機能と、急激な圧力の変化を緩衝する機能とを有する。
【0023】
上述したそれぞれの構成要素は第1から第4プレート10,20,30,40に形成された後、これらを接合することによりインクジェットヘッド100を製造することができる。以下、本発明の一実施例によるインクジェットヘッド100の製造方法を説明する。
【0024】
図3は本発明の一実施例によるインクジェットヘッド100の製造方法を示す順序図である。図3に示すように、本発明の一実施例によるインクジェットヘッド100の製造方法は、流入口14が形成される第1プレート10を加工する工程と、チャンバ22及び流入口14が形成される第2プレート20を加工する工程と、第2プレート20の上面に第1プレート10を接合する工程と、リストリクタ32及びリザーバ34が形成される第3プレート30を加工する工程と、ノズル42が形成されるようにフェムト秒レーザを照射して第4プレート40を加工する工程と、第3プレート30の下面に第4プレート40を接合する工程と、第2プレート20の下面に第3プレート30を接合する工程と、を含むことにより、流路抵抗が低減されて吐出性能が改善されたノズル42を備えるインクジェットヘッド100を製造することができる。
【0025】
図4は本発明の一実施例によるインクジェットヘッド100の第1プレート10を示す断面図である。先ず、ステップS100で、図4に示すように、シリコンからなる第1プレート10に流入口14を加工する。第1プレート10において、チャンバ22に対応する位置は後で圧電体50が結合されてメンブレン12として作用する。流入口14は第1プレート10の一部をエッチングして形成する。
【0026】
図5は本発明の一実施例によるインクジェットヘッド100の第2プレート20を示す断面図である。ステップS200で、図5に示すように、ガラスからなる第2プレート20にチャンバ22及び流入口14を加工する。チャンバ22及び流入口14は第2プレート20の一部を選択的に除去することで形成することができる。チャンバ22及び流入口14はその形状が複雑ではないため、製造コストを節減できる低価の低精度加工技術である湿式ガラスエッチング(wet glass etching)またはサンドブラスト(sand blast)法を用いることができる。
【0027】
図6は本発明の一実施例によるインクジェットヘッド100の第1プレート10と第2プレート20の陽極接合を示す断面図である。ステップS300で、図6に示すように、第2プレート20の上面に第1プレート10を陽極接合する。
【0028】
上述したように、第1プレート10と第2プレート20はそれぞれシリコンとガラスからなり、これらは陽極接合を用いて接合することができる。したがって、第1プレート10と第2プレート20は堅固に結合され、最終的には、インクジェットヘッド100の信頼性を向上させることができる。
【0029】
図7は本発明の一実施例によるインクジェットヘッド100の第3プレート30を示す断面図である。ステップS400で、図7に示すように、シリコンからなる第3プレート30にリストリクタ32、リザーバ34、及びフィルタ36を加工する。
【0030】
リストリクタ32、リザーバ34、及びフィルタ36は第3プレート30をエッチングすることで形成されることができる。特に、リストリクタ32はインクジェットヘッド100の吐出特性に大きな影響を与える構成要素であって精度加工が要求される。第3プレート30はシリコンからなり、シリコン・ディープ・リアクティブ・イオン・エッチングを用いて加工精度が向上されたリストリクタ32を形成することができる。
【0031】
一方、本実施例ではリストリクタ32が第3プレート30に形成されたことを例にあげて説明したが、インクジェットヘッド100の構造に応じて第2プレート20に形成されることもできることは明らかである。
【0032】
図8は本発明の一実施例によるインクジェットヘッド100のノズル42の加工を示す断面図である。ステップS500で、図8に示すように、ガラスからなる第4プレート40にフェムト秒レーザ55を照射してノズル42を加工する。照射されるフェムト秒レーザ55のスポット(Spot)サイズは、形成されたノズル42の上側が、フィルタ36が形成される流路の直径と同一になるように調節することができる。
【0033】
フェムト秒レーザ55はパルスレーザの一種であって、そのパルスの幅がフェムト秒(femto second)レベルのレーザである。フェムト秒レーザ55はそのエネルギーの総量は大きくないが、エネルギーをフェムト秒レベルまで圧縮するので、高い強度を有する。
【0034】
図9は本発明の一実施例によるインクジェットヘッド100のノズル42を示すイメージである。図9に示すように、ガウス(gaussian)分布を有するフェムト秒レーザが第4プレート40を貫通するように照射されると、第4プレート40には円錐状のノズル42が形成される。このとき、ノズル42の内周面43がその内側に向かって凸状に形成されて、インクの流路抵抗を最小化することができる。したがって、インクジェットヘッド100がノズル42を介してインクを吐出する際に、バブルの発生を防止できてインクジェットヘッド100の吐出性能を改善させることができる。
【0035】
また、フェムト秒レーザは通常の加工レーザであるCOレーザやYAGレーザと異なって、ノズル42周囲への熱拡散を誘発せずにアブレーション(ablation)加工することができる。したがって、形成されたノズル42周囲に破片(debris)が発生しないため、後の接合過程においてこの破片を除去するための追加工程が省略可能である。さらに、フェムト秒レーザは加工速度が速いため、量産性を確保することができる。
【0036】
図10は本発明の一実施例による第3プレート30と第4プレート40の陽極接合を示す断面図である。ステップS600で、図10に示すように、第3プレート30の下面に第4プレート40を陽極接合する。第3プレート30と第4プレート40はそれぞれシリコンとガラスからなり、これらは陽極接合により接合されることができる。
【0037】
図11は本発明の一実施例による第2プレート20と第3プレート30の陽極接合を示す断面図である。ステップS700で、図11に示すように、第1プレート10が接合された第2プレート20の下面に、第4プレート40が接合された第3プレート30を陽極接合する。上述したように、第2プレート20と第3プレート30はそれぞれガラスとシリコンからなり、これらも陽極接合により接合されることができる。
【0038】
その後、第1プレート10上のチャンバ22に対応する位置に圧電体50を接合することで、図2に示されたように、インクジェットヘッド100に駆動体を形成することができる。
【0039】
結局、本実施例によるインクジェットヘッド100はシリコン材質とガラス材質を交互に配置し、陽極接合によりインクジェットヘッド100を形成するので、その接合信頼性及び製造収率を向上させることができる。
【0040】
また、フェムト秒レーザを用いて内周面43が内側に向かって凸状に形成される円錐状のノズル42を備えるインクジェットヘッド100の製造方法を提供することにより、ノズル42を介して吐出されるインクの流路抵抗を低減させ、バブルの生成を防止してインクジェットヘッド100の吐出特性を改善させることができる。
【0041】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態の記載の範囲に限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0042】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置及び方法における動作、手順、ステップ、および工程等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「先ず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【0043】
なお、明細書および特許請求の範囲における「上面」は、プレートや基板などが有する一の面を指し、天地方向の「上」の面のみを意味しない。同様に、「下面」は、プレートや基板などが有する他の面を指し、天地方向の「下」の面のみを意味しない。
【符号の説明】
【0044】
10 第1プレート
14 流入口
20 第2プレート
22 チャンバ
30 第3プレート
34 リザーバ
40 第4プレート
42 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを貯留するリザーバと、前記リザーバにインクが供給される流入口と、前記リザーバからインクの供給を受けるチャンバと、前記リザーバと前記チャンバを連結するリストリクタと、前記チャンバのインクが吐出されるノズルと、を含むインクジェットヘッドを製造する方法であって、
前記流入口の一部が形成される第1プレートを加工する工程と、
前記チャンバ及び前記流入口の他の一部が形成される第2プレートを加工する工程と、
前記第2プレートの上面に前記第1プレートを接合する工程と、
前記リストリクタ及び前記リザーバが形成される第3プレートを加工する工程と、
前記ノズルが形成されるようにフェムト秒レーザを照射して第4プレートを加工する工程と、
前記第3プレートの下面に前記第4プレートを接合する工程と、
前記第2プレートの下面に前記第3プレートを接合する工程と、
を含むインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記第4プレートはガラスからなることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記第3プレートはシリコンからなり、
前記第3プレートと前記第4プレートを接合する工程が、
前記第3プレートの下面に前記第4プレートを陽極接合してなされることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記第1プレートはシリコンからなり、前記第2プレートはガラスからなり、
前記第1プレートと前記第2プレートを接合する工程が、
前記第2プレートの上面に前記第1プレートを陽極接合してなされることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記第2プレートはガラスからなり、前記第3プレートはシリコンからなり、
前記第2プレートと前記第3プレートを接合する工程が、
前記第2プレートの下面に前記第3プレートを陽極接合してなされることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−94968(P2010−94968A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118849(P2009−118849)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】